説明

補給方式

【課題】液体吐出装置において、液体が、ゴミを嫌う液、粒子成分を含む液、時間経過で硬化を促進する液、嫌気性接着剤等においても適応できる方法及び装置を提供する。
【解決手段】シリンジ14の出口管路と、吐出管路と、内部に可動部のない流れ抵抗部を設けた液の供給ポートの管路の3つを連結し、液の供給ポートに圧力を付加した液を導入してシリンジ内に液を供給充填し、次に液の供給圧力の付加を停止してシリンジ内に圧力を付加して圧送し、逆流は流れ抵抗部の抵抗力で止め、吐出口より液を吐出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
薬品、接着剤、ペースト等の液体を分析、液送、塗布に使用する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ペーストやエポキシ樹脂等中高粘度液の供給ポートと、吐出用のシリンジと、吐出ノズルを三方弁に装着し、シリンジ内の液を少しずつ押してノズルより液を吐出し、シリンジ内の液が無くなると三方弁を切り替え、供給ポートより液をシリンジに補給する方式のエア圧送式またはピストン押し込み式液体吐出装置は次の欠点がある。
▲1▼三方弁を切り替える際に液中の粒子や洩れた液が三方弁の摺動部に侵入し、摺動部を磨耗さし、磨耗粉が液内に混入する。
▲2▼三方弁の回転用アクチェーター(エア駆動が多い)、カップリング、ソレノイドバルブ、電気制御等が必要で高価である。
▲3▼三方弁の分解、清掃が困難である。
▲4▼アクチェーターの駆動時間が必要でその間は吐出ができず、塗布自動機等のロス時間が発生し、生産性が悪くなる。
【課題】
【0003】
前記欠点を解消する補給方式を提供し、適応が困難であったゴミを嫌う液、粒子成分を含む液、時間経過で硬化促進する液、嫌気性接着剤等を適応出来る様にする。
【解決手段】
【0004】
シリンジの出口管路と、吐出管路と、内部に可動部の無い流れ抵抗部を設けた液の供給ポートの管路の3つを連結する。
【作用】
【0005】
シリンジ内を大気開放又は負圧にしてから、液の供給ポートに圧力を付加した液を導入してシリンジ内に液を供給充填する。
【0006】
次に液の供給圧力の付加を停止してからシリンジ内に、供給ポートに付加した圧力より低く設定した圧力を付加して液を圧送し、液の供給ポートへの逆流は流れ抵抗部の抵抗力で止め、吐出口より液を吐出する。管路の連結部まで液を吐出すると再び液の供給を行う。吐出の初期には吐出量が不安定なことがあるので、捨て打ちを数回行う。自動機、塗布ロボットでは捨て打ちステーションを設ける。
【効果】
【0007】
実験では吐出圧力はKPa単位となり、供給側はMPa単位となり、支障なく使用できる。管路内に可動部や複雑な凹凸部がなく、磨耗やゴミの発生がなく、切り替えの時間も不要で、液の供給ポートかシリンジのどちらかに圧力を印加するだけで液の供給充填又は吐出に切り替えることが出来る。液晶、半導体製造用液、薬液、流動食品への適応に効果がある。供給と吐出を交互に繰り返す用途にも適応できる。
【実施例1】
【0008】
ブロック1はポート2とその管路3、ポート4とその管路5、ポート6とその管路7を刻設し、この3つの管路を連結する管路8を刻設している。ブロック1は管路8の部分で上ブロック9と下ブロック10とに分割し、この分割面に管路8を露出さし、ボルト11で一体に固定している。管路5と管路7は同心、同径にしている。管路8は断面積を小さく、長さを長く刻設している。
【0009】
ポート2にタンク12より液を供給する管継ぎ手13を設置し、ポート4にシリンジ14を連結し、ポート6にノズル15を連結する。シリンジ14は直径、長さを小さくして容積を小さく構成する。
【0010】
ノズル15は微量吐出用の内径の小なるノズルとする。
【0011】
タンク12にエア継ぎ手17を設置し、シリンジ14の後端には小穴を貫通さしたスペーサー18を挟んでエア継ぎ手19を設ける。
【0012】
タンク12のエア継ぎ手17はエア配管20で電磁弁21に連結し、シリンジ14のエア継ぎ手19はエア配管22で電磁弁23に連結する。電磁弁21,23は無励磁時にエア配管20,22内を大気に開放し、励磁した時圧力エアをタンク12又はシリンジ14に印加する。
【0013】
電磁弁21には圧力調整弁24で調圧されたエアを供給し、電磁弁23には圧力調整弁25で調圧されたエアを供給する。
【0014】
電気制御部26は電磁弁21,23の励磁および励磁開放を制御プログラムに沿って制御する。制御プログラムは電磁弁23を吐出信号を受けて指定時間励磁し、指定吐出回数に達すると電磁弁21を指定時間励磁する。
【実施例1の作用】
【0015】
供給信号を制御部26に入力すると電磁弁21が指定時間励磁され、加圧エアがタンク12内に印加され、内部の液は加圧され管継ぎ手13、管路8を通過し、シリンジ14内に流入充満し供給充填を完了する。ノズル15側にも液は流れるが、シリンジ14は電磁弁23で大気に開放され抵抗がほとんど無く、抵抗が大きいノズル先からは流失しないか、又はわずかな流失で済む。シリンジ14後端のスペーサー18は小穴が液の通過の抵抗となりエア配管22への液の流入を防止する。エア配管20に圧力センサを設置し、スペーサー18の小穴に液が達すると圧力が上昇するので、その圧力を検知して電磁弁21を無励磁にする制御も容易である。
【0016】
次に吐出信号を制御部26に入力すると電磁弁23が指定時間励磁され、加圧エアがシリンジ14内を印加し、内部の液は抵抗の大きな管路8への通過は遮断され、ノズル15より吐出する。吐出信号を指定回数入力すると小シリンジ内の液がほぼ無くなるように指定回数をプログラムする。吐出信号が指定回数終了すると再び供給信号によりシリンジ14に液を補給する。
【0017】
以上の作用によりタンク12内の液をシリンジ14に供給充填し、シリンジ14内の液をノズルより分注し微量精密吐出を計る。
【実施例1の効果】
【0018】
外部からの機械的な動きを与えることなく、タンクか、シリンジかのどちらかに圧力を印加するだけで液の供給又は吐出に切り替えることが出来る。
【0019】
ブロック1はボルト11を緩めるだけで上ブロック9と下ブロック10とに分離出きるので、細く長い管路8を露出さし、ゴミ、硬化液の除去、洗浄を容易にする。管路8は平面に刻設されろので、円弧、蛇行等の形状に加工が容易で、抵抗の付加が簡単である。
【0020】
構造が簡単で安価に提供でき、従来のエアディスペンサーの簡易さを損なうことなく高精度吐出を計れる。
【0021】
従来の三方弁のような摺動部がなく、磨耗粉が液内に混入することが無い。適応が困難であったゴミを嫌う液、粒子成分を含む液、時間経過で硬化促進する液、嫌気性接着剤にも適応できる。
【実施例2】
【0022】
実施例2はピストン押し込み方式のディスペンサーで、ピストン31を押し込み装置32で押し込み、小シリンジ30内部の液をノズルより吐出するが、実施例1とは小シリンジの構造が異なるのみなので同一の構造部は説明を省略する。
【0023】
ブロック33(ブロック1と同じ)は押し込み装置32に固定される。
【0024】
小シリンジ30の先端はピストン31の外径より大きい内径の逃し室34を刻設する。他端にはドレンポート36を備えた後端キャップ35を装着する。ピストン31に連接するピストンロッド37は押し込み台38に固定する。押し込み台38は押し込み装置32のボールネジ等の送り機構で押し引きされ、電気制御部39で制御される。
【0025】
大シリンジ40はエア配管41で電磁弁42(電磁弁21と同じ)に連結し、圧力調整弁43で供給圧力を調整する。
【実施例2の作用】
【0026】
小シリンジ30に液の無いとき補給信号を制御部39に入力すると、押し込み台38はピストン31を逃し室34内に押し込み、電磁弁42を励磁して大シリンジ40に加圧エアを印加する。大シリンジ40内の液は小シリンジ30の方に流れてくる。内部の空気は逃し室34でピストン31の外側を通りドレンポート36より外部に排出される。加圧エアの印加を続けると液が小シリンジ30内に流入してくる。液がピストン31の外側に回りこんだときピストン31を逃し室34より引き込み、液の流失を止める。さらにピストン31を引き込み小シリンジ30に液を供給充填する。ピストン31が上昇端にきたら電磁弁42の励磁を切り、大シリンジ40の加圧エアを開放する。
【0027】
次に吐出信号を制御部39に入力すると指定量ピストン31が押し込まれ、内部の液はノズル44より液を吐出する。吐出信号を繰り返しピストン31が逃し室34に突入する直前に供給信号を制御部39に入力して小シリンジ31に液を供給充填する。
【実施例2の効果】
【0028】
実施例1と同様の効果と、ピストン31の位置と連動して電磁弁42の励磁タイミングをプログラムできるので、実施例1のタイマ、カウンタ等の設定が不要になる。
【0029】
ブロック33は押し込み台38に直結できる大きさで構成でき、全体がコンパクトになる。
【0030】
ブロック33は高剛性構造にでき、高圧吐出が計れる。
【0031】
本発明の趣旨は微量精密吐出を計るものであり、シリンジを出来るだけ小容量に設計すると、より微量精密吐出が可能になる。ブロック1の管路5をシリンジとして適応できる。例えばハンダペーストを0.3ミリ直径に塗布すると、その体積は10ナノリットル程度になる。基板上に1000点塗布するとしても、その総量は10マイクロリットルに過ぎない。管路5を直径2ミリ、長さ10ミリに設定すると30マイクロリットルになる。管路5をシリンジとするのは簡単である。実施例1でシリンジ14の代わりにエア継ぎ手を直結すればよい。10マイクロリットルの液を補給するには1秒あれば充分なので、実質的に本ディスペンサーは大シリンジの液が無くなるまで連続使用が可能である。電子部品を実装するためのハンダペースト塗布ロボットに於いて微小ドットの連続塗布に有用で、印刷と同様な微細なパターンの塗布を可能にする。
液の供給充填の時間が短く、3軸ロボットと組み合わせて塗布ロボットとすると生産性の高い塗布ロボットとなる。
【0032】
ブロック1は実施例1のエアディスペンサー用、実施例2のピストン押し込みディスペンサー用のどちらにも同様の構成で適応でき、汎用性が高い。
【実施例3】
【0033】
構成部品を全て市販品としたディスペンサーを詳述する。
【0034】
ユニオンティ50は管継ぎ手51,52,53を持つ。管継ぎ手51には液の供給具54を接続し、管継ぎ手52にはステンレス管57を接続し、管継ぎ手53にはノズル60を接続する。ステンレス管57先にエア継ぎ手58を接続し、さらにエアホース59を接続する。
【0035】
供給具54は市販シリンジとの連結具55と、長いステンレス管56とで構成する。長いステンレス管56はその長さにより流れ抵抗を大きくしている。
【実施例3の作用】
【0036】
連結具55に液を充填したシリンジを接続し、エア圧を印加すると液はユニオンティ50に流入し、ステンレス管57に充満する。エア圧の印加を解除し、次にエアホース59よりステンレス管57に、圧力を低く設定したエア圧を印加すると内部の液はノズル60より吐出する。ステンレス管56へも流れようとするが抵抗が大きいので流れない。ノズル60が詰まると液はステンレス管56へ流れようとするが、印加するエア圧を低く設定しているので流れることは無い。圧力センサを設置して逆流を防止することも可能。
【実施例3の効果】
【0037】
構成部品を全て市販品としているので安価に提供できる。液詰まりの際も掃除することなく廃却するのも安価で済む。
【0038】
ステンレス管56は長いときコイル状に形成するとコンパクトになり、意匠効果もある。
【0039】
ステンレス管56は細くすると短くできるが、詰まり易くなる。焼結金属等で成るフィルターを設置すると抵抗を大きく出来、ゴミの除去も可能になる。抵抗付加の方法として、やや構造が複雑になるが絞り弁を設置することもできる。抵抗の付加方法は適応する液により選択する。
【0040】
ステンレス管57を透明材質の樹脂チューブにすると液の充填度合いを監視できる。
【0041】
ノズル60の吐出抵抗をできるだけ小さくなる構成にすると、印加するエア圧力の調整を別個に設定しなくても可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】 実施例1の断面図
【図2】 実施例2の断面図
【図3】 実施例3の正面図
【符号の説明】
【0043】
1、ブロック 5、管路 12、タンク 14、シリンジ 15、ノズル 23、電磁弁 26、電気制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジの出口管路と、吐出管路と、内部に可動部の無い流れ抵抗部を設けた液の供給ポートの管路の3つを連結し、液の供給ポートに圧力を付加した液を導入してシリンジ内に液を供給充填し、次に液の供給圧力の付加を停止してからシリンジ内に圧力を付加して圧送し、逆流は流れ抵抗部の抵抗力で止め、吐出口より液を吐出する方法。
【請求項2】
液の供給ポートに液を充填した大シリンジを連結した請求項1の方法を特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項2の液体吐出装置を装着したことを特徴とする液体塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−80320(P2008−80320A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290521(P2006−290521)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000212407)
【Fターム(参考)】