説明

製管用部材、及び既設管の更生方法

【課題】本発明は、高温水が存在する既設管を更生することができる新規な製管用部材、管状体、及び既設管の更生方法を提供することを目的とする。
【解決手段】帯状部材2を螺旋状に巻き回し、帯状部材2の一側縁部と隣り合わせた帯状部材の他側縁部とを順次接合することによって、管状体を製管する際に用いられる製管用部材1であって、この製管用部材1における帯状部材2や接合部材5は、90〜125℃のビカット軟化点を有する塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂を素材として形成されてなり、シール部材3は、シリコーンゴム又はフッ素ゴムを素材として形成されてなり、帯状部材2、又は接合部材5のいずれか少なくとも一方に固定されてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状部材を螺旋状に巻き回し、帯状部材の一側縁部と隣り合わせた帯状部材の他側縁部とを順次接合することによって管状体を製管する際に用いられる製管用部材、及びこの製管用部材を用いた既設管の更生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水管路、上水管路、農業用水路などの既設管が老朽化によってひび割れたり、腐食したりした場合の対策の一つとして、帯状部材を螺旋状に巻き回し、帯状部材の一側縁部と隣り合わせた帯状部材の他側縁部とを順次接合することによって管状体(更生管)を製管し、この管状体を既設管の管路内に敷設することによって既設管を更生する方法が実施されている(例えば、下記特許文献1及び2参照。)。
【0003】
この既設管の更生方法において用いられる帯状部材としては、図6〜図8に示す三つのタイプに大きく分けることができる。
【0004】
図6(a)に示す帯状部材2は、長尺帯状の基板21の片側面長さ方向に沿って、複数本の補強リブ24が並列配置され、更に、基板21の一側縁部に沿って段落ち部27が設けられたものである。この帯状部材2は、管状体に製管される際、段落ち部27が隣り合う帯状部材2の他側縁部に重ね合わされた状態で、接着剤(図示せず)を介して、或いは融着によって接合される(図6(b)参照)。
【0005】
図7(a)に示す帯状部材2は、長尺帯状の基板21の片側面長さ方向に沿って、複数本の補強リブ24が並列配置され、更に、基板21の一側縁部に沿って雄型接合部22が設けられる一方で、他側縁部に沿って雌型接合部23が設けられたものである。この帯状部材2は、管状体に製管される際、雄型接合部22が雌型接合部23に嵌め込まれることによって接合される(図7(b)参照)。
【0006】
図8(a)に示す帯状部材2は、長尺帯状の基板21の片側面長さ方向に沿って、複数本の補強リブ24が並列配置され、更に、基板21の一側縁部と他側縁部とに接合部26が設けられたものである。この帯状部材2は、管状体に製管される際、隣接させた接合部26に別体の接合部材5が嵌め込まれることによって接合される(図8(c))参照)。
【0007】
図6に示す帯状部材2は、接合の際に接着剤が用いられたり、融着されたりすることから、その接合箇所はシールされている。
【0008】
一方、図7及び図8に示す帯状部材2は、嵌め込みによって帯状部材2同士を接合することから、接合箇所をシールする必要があり、通常、接合箇所においてシール部材(図示せず)が介在される。
【0009】
帯状部材2及び接合部材5は、ポリエチレン、ポリプロピレン、或いはポリ塩化ビニルなどの合成樹脂を素材として形成されることが一般的である。一方、シール部材は、熱可塑性エラストマーを素材として形成されることが一般的である。シール部材は、通常、共押出成型によって、帯状部材2又は接合部材5と一体的に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−200547号公報
【特許文献2】特開平6−190922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ポリエチレン、ポリプロピレン、或いはポリ塩化ビニルなどの合成樹脂で形成された帯状部材は良好な可撓性を有することから、容易に螺旋状に巻き回して製管することができる利点がある。しかしながら、既設管の中には、管路に高温水が存在しているものもあり、このような高温水が存在する既設管の管路内に、ポリエチレン、ポリプロピレン、或いはポリ塩化ビニルなどの合成樹脂で形成された帯状部材で製管された管状体を敷設すると、管状体の壁面を構成する帯状部材が軟化して変形が生じたり、接合箇所が外れたりする場合があった。
【0012】
又、熱可塑性エラストマーを素材として形成されたシール部材についても、高温水の熱に晒されることによって、弾力性を喪失したり、軟化したりして、接合箇所のシールが不十分となる場合があった。
【0013】
本発明は、前記技術的課題を解決するために開発されたものであって、耐熱性に優れ、高温水が存在する既設管であっても好適に更生することができる新規な製管用部材、及びこの製管用部材を用いた新規な既設管の更生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第一の製管用部材は、帯状部材を螺旋状に巻き回し、帯状部材の一側縁部と隣り合わせた帯状部材の他側縁部とを順次接合することによって管状体を製管する際に用いられる製管用部材であって、この製管用部材は、長尺帯状の基板の一側縁部に雄型接合部、他側縁部に雌型接合部が設けられてなる帯状部材と、帯状部材に固定され、帯状部材同士の接合時において接合箇所をシールするシール部材とを具備するものであり、前記帯状部材が、90〜125℃のビカット軟化点を有する塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂を素材として形成されてなり、前記シール部材が、シリコーンゴム又はフッ素ゴムを素材として形成されてなることを特徴とする(以下、本発明第一製管用部材と称する。)。
【0015】
本発明第一製管用部材においては、シール部材が、降伏点伸び100%以上の弾性接着剤を介して帯状部材に固定されてなるものが好ましい態様となる。
【0016】
又、本発明第一製管用部材においては、シール部材が、帯状部材に設けられた溝部に嵌め込まれることによって固定されてなるものが好ましい態様となる。
【0017】
本発明の第二の製管用部材は、帯状部材を螺旋状に巻き回し、帯状部材の一側縁部と隣り合わせた帯状部材の他側縁部とを順次接合することによって管状体を製管する際に用いられる製管用部材であって、この製管用部材は、長尺帯状の基板の一側縁部と他側縁部とに各々接合部が設けられてなる帯状部材と、帯状部材同士の接合時において隣接させた接合部同士を接合する接合部材と、帯状部材又は接合部材に固定され、帯状部材同士の接合時において接合箇所をシールするシール部材とを具備するものであり、前記帯状部材及び接合部材が、90〜125℃のビカット軟化点を有する塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂を素材として形成されてなり、前記シール部材が、シリコーンゴム又はフッ素ゴムを素材として形成されてなることを特徴とする(以下、本発明第二製管用部材と称する。)。
【0018】
本発明第二製管用部材においては、シール部材が、降伏点伸び100%以上の弾性接着剤を介して帯状部材、又は接合部材に固定されてなるものが好ましい態様となる。
【0019】
又、本発明第二製管用部材においては、シール部材が、帯状部材、又は接合部材に設けられた溝部に嵌め込まれることによって固定されてなるものが好ましい態様となる。
【0020】
本発明の既設管の更生方法は、帯状部材を、製管機にて螺旋状に巻き回し、帯状部材の一側縁部と隣り合わせた帯状部材の他側縁部とを順次接合することによって管状体を製管し、この管状体を既設管の管路内に敷設する既設管の更生方法であって、この更生方法は、前記本発明第一製管用部材又は前記本発明第二製管用部材における帯状部材を加熱することによって、帯状部材の表面温度を20〜70℃にする加熱工程と、加熱された帯状部材を製管機に供給する供給工程と、既設管内において帯状部材を製管機にて螺旋状に巻き回しつつ、帯状部材の一側縁部と隣り合わせた帯状部材の他側縁部とを順次接合することによって管状体を製管する製管工程と、を実行することを特徴とする(以下、本発明更生方法と称する。)。
【0021】
本発明更生方法においては、加熱工程では、帯状部材が巻き付けられてなるプロファイルドラムを加熱室内に配し、加熱室内の室温を上げることによって、プロファイルドラムごと帯状部材を加熱し、もって、帯状部材の表面温度を20〜70℃にすることが好ましい態様となる。
【0022】
又、本発明更生方法においては、供給工程では、帯状部材を再度加熱しながら製管機に供給することが好ましい態様となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高温水が存在する既設管であっても好適に更生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1(a)は、実施形態1に係る本発明の製管用部材を示す断面図であり、(b)は、その一部を拡大して示す断面図である。
【図2】図2(a)〜(f)は、実施形態1に係る本発明の製管用部材において、嵌め込み手段によりシール部材が固定されているものを例示列挙する断面図である。
【図3】図3は、本発明の製管用部材を製造する製造ラインを示す模式図である。
【図4】図4(a)は、実施形態2に係る本発明の製管用部材における帯状部材を示す断面図であり、(b)は、この帯状部材を接合部材を用いて接合する状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、本発明更生方法を実施している状態を示す説明図である。
【図6】図6(a)は、従来の帯状部材の一例を示す斜視図であり、(b)は、この帯状部材を接合した状態を示す断面図である。
【図7】図7(a)は、従来の帯状部材の他の一例を示す断面図であり、(b)は、この帯状部材を接合した状態を示す断面図である。
【図8】図8(a)は、従来の帯状部材の更に他の一例を示す断面図であり、(b)は、この帯状部材を接合部材を用いて接合する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<実施形態1>
図1に、実施形態1に係る本発明の製管用部材1を示す。この製管用部材1は、帯状部材2と、帯状部材2に固定されたシール部材3とからなる本発明第一製管用部材である。
【0026】
帯状部材2は、90〜125℃のビカット軟化点を有する塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂を素材とするものであり、図1(a)に示すように、長尺帯状の基板21の片側面長さ方向に沿って複数本の補強リブ24が並列配置され、更に、一側縁部に雄型接合部22、他側縁部に雌型接合部23が設けられている。本実施形態に係る製管用部材1は、製管時において、一側縁部に設けた雄型接合部22が隣り合う帯状部材2の他側縁部に設けた雌型接合部23に嵌め込まれることによって隣り合う帯状部材2同士が接合される。
【0027】
ここで、「塩素化ポリ塩化ビニル」とは、ポリ塩化ビニルを塩素化することによって塩素の含有率を高くして、耐熱性を向上させた樹脂のことを意味し、「塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂」とは、塩素化ポリ塩化ビニルに対し、その他の樹脂をブレンドしたり、所望の添加剤を添加したりした樹脂組成物のことを意味する。
【0028】
又、「ビカット軟化点」とは、JIS K7206に規定するB50法に基づき、50℃/hの速度で昇温している伝熱媒体中に試験片を浸漬し、50±1Nの力を負荷した圧子が、試験片の表面から1mm進入したときの温度を意味する。
【0029】
シール部材3は、シリコーンゴム(耐熱安全温度180℃)を素材とするものであり、帯状部材2における雄型接合部22の近辺に沿って固定されている。塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂を素材とする帯状部材2と、熱硬化性樹脂系エラストマーであるシリコーンゴムを素材とするシール部材3とは、共押出成型によって一体的に成型することができないことから、シール部材3は、降伏点伸び100%以上の硬化特性を有する弾性接着剤4を介して帯状部材2に接着固定されている(図1(b)参照)。
【0030】
ここで、「弾性接着剤」とは、硬化後の接着剤層が弾性を有する機能性接着剤のことを意味する。弾性接着剤4の具体例としては、シリコーン系、変性シリコーン系、ウレタン系、エポキシ系、ポリサルファイド系、複合変性ポリマー系などを挙げることができる。中でも、振動、衝撃などの応力の吸収、膨張、収縮などの熱歪みの吸収、熱膨張係数差の大きい異種材料同士の接着性、広範囲の温度領域における安定した弾性、及び接着性能変化が少ないなどの性質を有するシリコーン系、又は変性シリコーン系の弾性接着剤4を用いることが特に好ましい。
【0031】
又、「降伏点伸び」とは、JIS K6251に基づき、試験片(ダンベル状1号形)を引っ張り試験機(JIS K6272)に供し、引っ張られた試験片が切断する前における、引張力が増加しないで伸びが増加する最初のときの伸びを、初期の試験片に対する比率で評価したものである。
【0032】
なお、シール部材3を固定する手段は、弾性接着剤4による接着手段に限られない。例えば、図2(a)〜(f)に示すように、帯状部材2に各種断面形状の溝部25を設けると共に、シール部材3の下部形状を溝部25の断面形状に応じて加工し、溝部25にシール部材3を嵌め込む嵌め込み手段にて固定しても良い。又、嵌め込み手段と接着手段とを併用してもよい。
【0033】
図3に、図1に示す製管用部材1を製造する製造ラインを示す。この製造ラインにおいては、まず原料設備10から押出機11のホッパに向かって素材(塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂)が投入される。押出機11において加熱・混練されて可塑化した素材は、金型12に向かって連続的に押し出され、冷却装置13にて冷却されることによって成型され、長尺の帯状部材2となる。成型された帯状部材2は、引取機14を介して接着機15に送られる。
【0034】
シール部材3は図示しない別工程にて押出成型され、ドラム16に巻き付けられた状態で製造ラインの中ほどに配置される。シール部材3は、ドラム16から順次引き出され、接着機15の上流側において帯状部材2と合流される。
【0035】
合流された帯状部材2とシール部材3は、接着機15にて弾性接着剤4(図示せず)を介して接着されて製管用部材1となる。
【0036】
製管用部材1は、製造ラインの最下流に配された巻取機17において順次巻き取られる。なお、巻取機17による製管用部材1の巻き取りは、製管用部材1における帯状部材2を加熱し、表面温度を20〜70℃(好ましくは40〜70℃)にすることによって、帯状部材2を軟化させた状態で行うことが好ましい。
【0037】
巻取機17の上流側に配された切断機18は、送られてくる製管用部材1を一定間隔で切断し、巻取機17において所定量の製管用部材1が巻き取られるようにするものである。
【0038】
なお、図2に示す、シール部材3が嵌め込みによって固定されてなる製管用部材1を製造するにあたっては、接着機15に替えて、シール部材3を帯状部材2に嵌め込む嵌合機が用いられる。
【0039】
<実施形態2>
図4に、実施形態2に係る本発明の製管用部材1を示す。この製管用部材1は、帯状部材2と、接合部材5と、接合部材5に固定されたシール部材3とからなる本発明第二製管用部材である。
【0040】
帯状部材2は、90〜125℃のビカット軟化点を有する塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂を素材とするものであり、図4(a)に示すように、長尺帯状の基板21の片側面長さ方向に沿って、複数本の補強リブ24が並列配置され、更に、基板21の一側縁部と他側縁部とに接合部26がそれぞれ設けられている。
【0041】
接合部材5は、90〜125℃のビカット軟化点を有する塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂を素材とするものであり、隣接させた接合部26に嵌め込まれることによって隣り合う帯状部材2の一側縁部と他側縁部とを接合するものである(図7(b)参照)。
【0042】
シール部材3は、フッ素ゴム(耐熱安全温度200℃)を素材とするものであり、接合部材5に設けられた凹溝51の溝底部に沿って固定されている。本実施形態において、シール部材3は、接合部材5に対し降伏点伸び100%以上の弾性接着剤4を介して接着固定されている。
【0043】
なお、シール部材3は、帯状部材2における接合部26に設けても良い。又、シール部材3の固定手段としては、接着手段に限られず、嵌め込み手段によって接合部材5又は帯状部材2に固定しても良い。
【0044】
<既設管の更生方法>
図5に、本発明更生方法の一実施形態を示す。本発明更生方法は、帯状部材2を、製管機50にて螺旋状に巻き回し、帯状部材2の一側縁部と隣り合わせた帯状部材2の他側縁部とを順次接合することによって管状体20を製管し、この管状体20を既設管100の管路内に敷設する既設管100の更生方法である。
【0045】
本発明更生方法においては、まず、前記製管用部材1(実施形態1に係る本発明第一製管用部材)における帯状部材2(シール部材3が固定された状態のもの)を加熱することによって、帯状部材2の表面温度を20〜70℃(好ましくは40〜70℃)にする加熱工程を実行する。本実施形態においては、帯状部材2が巻き付けられたプロファイルドラム30を加熱用カバー40内に配し、加熱用カバー40内にてプロファイルドラム30を95℃の蒸気に晒すことによって、帯状部材2の表面温度が40℃になるまで加熱した。加熱用カバー40は、特許請求の範囲における加熱室に相当するものである。
【0046】
なお、加熱工程の際、帯状部材2に固定されたシール部材3も加熱を受けるが、シール部材3として耐熱性の高いシリコーンゴムを素材とするものを用いているから、加熱を受けてもシール部材3の弾性は維持される。
【0047】
次いで、本発明更生方法においては、加熱された帯状部材2を製管機50に供給する供給工程を実行する。本実施形態においては、プロファイルドラム30から帯状部材2を引き出し、立坑101を介して、帯状部材2を既設管100に配された製管機50に順次供給することにより供給工程を実行した。
【0048】
帯状部材2は、塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂を素材とするものであることから可撓性に劣るが、本発明更生方法においては、前記加熱工程において、帯状部材2の表面温度を20〜70℃にすることによって、帯状部材2を軟化させていることから、帯状部材2は容易にプロファイルドラム30から引き出すことができる。これにより、供給工程における応力変形によって帯状部材2が破損することを防止することができる。
【0049】
又、本実施形態においては、補助加熱装置60を製管機50の直前に配し、供給工程の際、既設管100内に順次引き込まれる帯状部材2に熱風を吹き付けることにより、帯状部材2を再度加熱している。これにより、帯状部材2の表面温度を20〜70℃(好ましくは40〜70℃)に維持し、続く製管工程の作業性を向上している。なお、この補助加熱装置60による帯状部材2の再加熱は必ずしも行わなくて良く、例えば、プロファイルドラム30の設置位置と、製管機50との距離が比較的近く、加熱工程において加熱された帯状部材2の表面温度があまり下がらないような場合であれば、補助加熱装置60による帯状部材2の再加熱は省略しても良い。
【0050】
本発明更生方法においては、前記供給工程によって既設管100内に引き込まれた帯状部材2を、製管機50にて螺旋状に巻き回しつつ、帯状部材2の一側縁部と隣り合わせた帯状部材2の他側縁部とを順次接合することによって管状体20を製管する製管工程を実行する。本実施形態においては、製管機50として、既設管100における施工開始地点に定点的に配され、帯状部材2を管状体20に製管しながら、製管された管状体20を順次既設管100における施工終了地点に向かって送り出す「基押し式の製管機50」を用いて製管工程を実行した。
【0051】
製管工程に供される帯状部材2は、加熱工程及び補助加熱装置60による再加熱により軟化していることから、製管工程において帯状部材2は、製管機50にて容易に巻き回されて管状体20となる。
【0052】
又、本実施形態においては、シール部材3を、各種の振動或いは応力をその弾性により緩和・吸収する硬化特性を有する弾性接着剤4にて帯状部材2に固定していることから、製管工程の際、シール部材3と帯状部材2との境界において弾性接着剤4が硬化してなる接着剤層が繰り返しずり変形を受けても、シール部材3は安定的に固定される。これより、製管工程におけるシール部材3の剥がれを防止することができる。
【0053】
前記各工程を経て、既設管100の管路内に敷設された管状体20は、90〜125℃のビカット軟化点を有する塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂を素材とする帯状部材2を螺旋状に巻き回すことによって製管されたものであるから、高温水に恒常的に晒されても、軟化や変形が生じたり、接合箇所の外れが生じたりすることがない。
【0054】
なお、本実施形態においては、前記実施形態1に係る製管用部材1を用いて既設管100を更生しているが、前記実施形態2に係る製管用部材1を用いる場合においても同様の工程によって既設管100を更生することができる。但し、前記実施形態2に係る製管用部材1を用いて既設管100を更生する場合にあっては、加熱工程において帯状部材2と同様にして接合部材5を加熱することが好ましい。
【0055】
又、本実施形態においては、加熱工程において、加熱用カバー40内にてプロファイルドラム30ごと帯状部材2を蒸気で加熱しているが、この加熱手段に限られるものではなく、例えば、帯状部材2に直接加熱空気等を吹き付けることによって帯状部材2を加熱しても良く、又、加熱室として湯を張った温水層を用い、この温水層に帯状部材2、或いはプロファイルドラム30を漬けることによって帯状部材2を加熱しても良い。
【0056】
更に、本実施形態においては、プロファイルドラム30を加熱用カバー40と共に地上に配置しているが、加熱用カバー40内にプロファイルドラム30を配した上で、加熱用カバー40を立坑101内に吊下げたり、プロファイルドラム30を加熱用カバー40と共に既設管100内に配置したりしても良い。
【0057】
加えて、本実施形態においては、製管機50として「基押し式の製管機50」を用いているが、このタイプの製管機50に限られるものではなく、例えば、帯状部材2を巻き回しつつ、既設管100の管路に沿って自走しながら管状体20を製管する「自走式の製管機50」を用いても良い。
【0058】
<製管試験>
表1に示す製管用部材(図1(a)に示す形状のもの)を管状体に製管し、製管性、製管時のシール部材の状態、及び製管後の状態(製管後の管状体下部に対し、90℃の高温水を恒常的(1週間連続)に接触させた後の状態)を目視で評価した。この試験結果を表2に示す。
【0059】
なお、表2における製管性の評価は、
◎:帯状部材が割れることなく製管することができた、
○:製管することはできたが、製管時に何らかの不具合有り、
△:製管することはできたが、一部に割れ有り、
×:製管不可能、
を意味する。
【0060】
又、製管時のシール部材の状態の評価は、
◎:シール部材の剥がれ無し、
○:シール部材の一部に剥がれ有り、
△:シール部材の剥がれは無いが、加熱による変質若しくは変形有り、
×:シール部材の殆どに剥がれ有り、
を意味する。
【0061】
更に、製管後の状態の評価は、
◎:管状体の変形及び接合箇所の外れ無し、
○:高温水との接触箇所において、管状体の一部に変形若しくは接合箇所の外れ有り、
△:管状体の変形は無いが、シール部材のシール能低下、
×:管状体全体にわたって変形又は割れ、或いは接合箇所の外れ有り、
を意味する。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
表2に示す結果から、本発明の製管用部材によれば、高温水が存在する既設管を好適に更生することができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、特に、高温水が存在する既設管を更生するにあたり、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 製管用部材
2 帯状部材
21 基板
22 雄型接合部
23 雌型接合部
24 補強リブ
25 溝部
26 接合部
3 シール部材
4 弾性接着剤
5 接合部材
10 原料設備
11 押出機
12 金型
13 冷却装置
14 引取機
15 接着機
16 ドラム
17 巻取機
18 切断機
20 管状体
30 プロファイルドラム
40 加熱用カバー
50 製管機
60 補助加熱装置
100 既設管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状部材を螺旋状に巻き回し、帯状部材の一側縁部と隣り合わせた帯状部材の他側縁部とを順次接合することによって管状体を製管する際に用いられる製管用部材であって、
この製管用部材は、
長尺帯状の基板の一側縁部に雄型接合部、他側縁部に雌型接合部が設けられてなる帯状部材と、
帯状部材に固定され、帯状部材同士の接合時において接合箇所をシールするシール部材とを具備するものであり、
前記帯状部材が、90〜125℃のビカット軟化点を有する塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂を素材として形成されてなり、
前記シール部材が、シリコーンゴム又はフッ素ゴムを素材として形成されてなることを特徴とする製管用部材。
【請求項2】
請求項1に記載の製管用部材において、シール部材が、降伏点伸び100%以上の弾性接着剤を介して帯状部材に固定されてなる製管用部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製管用部材において、
シール部材が、帯状部材に設けられた溝部に嵌め込まれることによって、帯状部材に固定されてなる製管用部材。
【請求項4】
帯状部材を螺旋状に巻き回し、帯状部材の一側縁部と隣り合わせた帯状部材の他側縁部とを順次接合することによって管状体を製管する際に用いられる製管用部材であって、
この製管用部材は、
長尺帯状の基板の一側縁部と他側縁部とに各々接合部が設けられてなる帯状部材と、
帯状部材同士の接合時において隣接させた接合部同士を接合する接合部材と、
帯状部材又は接合部材に固定され、帯状部材同士の接合時において接合箇所をシールするシール部材とを具備するものであり、
前記帯状部材及び接合部材が、90〜125℃のビカット軟化点を有する塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂を素材として形成されてなり、
前記シール部材が、シリコーンゴム又はフッ素ゴムを素材として形成されてなることを特徴とする製管用部材。
【請求項5】
請求項4に記載の製管用部材において、
シール部材が、降伏点伸び100%以上の弾性接着剤を介して帯状部材、又は接合部材に固定されてなる製管用部材。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の製管用部材において、
シール部材が、帯状部材、又は接合部材に設けられた溝部に嵌め込まれることによって固定されてなる製管用部材。
【請求項7】
帯状部材を、製管機にて螺旋状に巻き回し、帯状部材の一側縁部と隣り合わせた帯状部材の他側縁部とを順次接合することによって管状体を製管し、この管状体を既設管の管路内に敷設する既設管の更生方法であって、
この更生方法は、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の製管用部材における帯状部材を加熱することによって、帯状部材の表面温度を20〜70℃にする加熱工程と、
加熱された帯状部材を製管機に供給する供給工程と、
既設管内において、製管機にて帯状部材を螺旋状に巻き回しつつ、帯状部材の一側縁部と隣り合わせた帯状部材の他側縁部とを順次接合することによって管状体を製管する製管工程と、
を実行することを特徴とする既設管の更生方法。
【請求項8】
請求項7に記載の既設管の更生方法において、
加熱工程では、帯状部材が巻き付けられてなるプロファイルドラムを加熱室内に配し、加熱室内の室温を上げることによって、プロファイルドラムごと帯状部材を加熱し、もって、帯状部材の表面温度を20〜70℃にする既設管の更生方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の既設管の更生方法において、
供給工程では、帯状部材を再度加熱しながら製管機に供給する既設管の更生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−171124(P2012−171124A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32982(P2011−32982)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】