説明

複写機用弾性ベルト

【課題】従来ような方法で弾性ベルトの弾性層を難燃化すると、複写機内で用いられる弾性ベルトとして要求されるクッション性を満たさないことがあった。本発明は難燃性の弾性層を含む複写機用弾性ベルトを提供することにある。
【解決手段】耐熱性樹脂層1と、前記耐熱性樹脂層1の外側に形成された難燃性を有する弾性層2とを含む複写機用弾性ベルト3であって、前記弾性層2の変位回復率が90%以上となる複写機用弾性ベルトに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性の複写機用弾性ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンタのような複写機内で、トナーの転写・定着に用いられるベルトには、ポリイミドやポリアミドイミドのような高強度・高弾性率の特性を有する耐熱性樹脂が用いられることが一般的である。しかし、これらの耐熱性樹脂のみで画質および用紙対応力の更なる向上を目指すことには限界があるため、耐熱性樹脂ベルトの外側に弾性層を付与することで、トナーの転写・定着の効率を上げることが行われている。例えば、特許文献1においては、ポリイミド層の外側にシリコーンゴムの弾性層を設けたポリイミド複合管状物が挙げられている。
【0003】
近年、複写機内で用いられる弾性ベルトは、複写機のコンパクト化に伴い電源部の近くに配置される場合や、高い消費電力の大型レーザープリンタへ利用される場合などがあり、弾性ベルト自体に難燃性が求められるようになりつつある。ここで、弾性ベルトを難燃化させる方法として、弾性層のエラストマー材料であるオレフィン系液状エラストマーにハロゲン系化合物と三酸化アンチモンを併用して配合する方法(例えば特許文献2)や、もしくは水酸化マグネシウム等の金属水和物を大量に添加する方法(例えば特許文献3)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−36559号公報
【特許文献2】特開平8−239548号公報
【特許文献3】特開2002−114878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記ような方法で弾性ベルトの弾性層を難燃化すると、複写機内で用いられる弾性ベルトとして要求されるクッション性を満たさないことがあった。本発明は、前記従来の技術を鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、難燃性の弾性層を含む複写機用弾性ベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、耐熱性樹脂層と、前記耐熱性樹脂層の外側に形成された難燃性を有する弾性層とを含む複写機用弾性ベルトであって、前記弾性層の変位回復率が90%以上となる複写機用弾性ベルトである。
【0007】
弾性ベルトの耐熱性樹脂層の外側に形成された弾性層が難燃性を有することで、複写機内からの火気発生を抑制することができる。また、弾性ベルトの弾性層の変位回復率が90%以上であるため、本発明の弾性ベルトを中間転写や定着ベルトとして問題なく使用することができる。
【0008】
本発明の弾性層は、オレフィン系液状エラストマーと硬化触媒とを含有し、難燃剤として室温で液状のリン酸エステル系難燃剤とポリリン酸アンモニウムを含有することが好ましい。室温で液状のリン酸エステル系難燃剤は、オレフィン系液状エラストマー100重量部に対して30重量部〜50重量部の範囲内で含有することが好ましく、さらに40重量部〜50重量部の範囲内で含有することが好ましい。また、ポリリン酸アンモニウムは、オレフィン系液状エラストマー100重量部に対して80重量部〜150重量部の範囲内で含有することが好ましく、さらに80重量部〜100重量部の範囲内で含有することが好ましい。室温で液状のリン酸エステル系難燃剤とポリリン酸アンモニウムの含有量がこのような範囲内にある場合、弾性層に難燃性を付与することができ、弾性層を形成する際の加工性も良い。
【0009】
本発明に用いられる室温で液状のリン酸エステル系難燃剤としては、液状の樹脂材料のゲル化防止および成形体の硬化抑制、表面平滑性の維持を達成するため、可塑効果のあるトリクレジルホスフェートが特に好ましい。
【0010】
本発明の耐熱性樹脂層は、高耐熱性、高強度、高弾性率、可撓性、寸法安定性などの理由からポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂を用いることが好ましい。ポリイミド樹脂を用いる場合は、機械特性が高く、強度的に優れたフィルムを製造することができる。一方、ポリアミドイミド樹脂を用いる場合、200℃前後の低い温度で製膜可能であるため、成形の点で有利である。さらにポリアミドイミド樹脂を用いて製造したフィルムは、ポリイミド樹脂を用いて製造したフィルムに次ぐ機械特性を有しており、さまざまな用途に対して強度的に問題なく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本願発明に係る複写機用弾性ベルトの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の弾性ベルトの例を図1に示す。
【0013】
本発明の複写機用弾性ベルト3は、耐熱性樹脂層1と、前記耐熱性樹脂層1の外側に弾性層2を配した2層を含む複写機用の弾性ベルト3であって、前記弾性層2が難燃性を有し、前記弾性層2の変位回復率が90%以上である複写機用弾性ベルト3である。
【0014】
本発明において用いられる耐熱性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂等が挙げられるが、高耐熱性、高強度、高弾性率、可撓性、寸法安定性などの理由からポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂が好ましい。
〔耐熱性樹脂層がポリイミド樹脂層の場合〕
本発明の耐熱性樹脂層1としてはポリイミド樹脂層を形成することが好ましい。ここで、ポリイミド樹脂としては、複写機用の中間転写ベルト、定着ベルト等の分野において使用される公知のポリイミド樹脂が限定なく使用可能であり、耐熱性および機械強度の点から、とりわけ、芳香族ポリイミド樹脂を使用することが好ましい。
【0015】
ポリイミド樹脂は、ポリアミド酸溶液を所定形状に成形し、溶媒の除去後に、イミド転化反応を行うことにより形成される。ポリアミド酸溶液は、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸を含有するものであって、テトラカルボン酸二無水物あるいはその誘導体とジアミンとの略等モルを有機極性溶媒中で反応させて得ることができる。
【0016】
本発明において好ましいポリイミドを構成する前記テトラカルボン酸二無水物としては、具体的には、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。特に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)が好ましい。
【0017】
また、このようなテトラカルボン酸二無水物と反応させるジアミンの具体例としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)、p−フェニレンジアミン(PDA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−t−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ペンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルへプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロポキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルへプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ピペラジン、
2N(CH23O(CH22OCH2NH2
2N(CH2)S(CH23NH2
2N(CH23N(CH22(CH23NH2
等があげられる。特に、p−フェニレンジアミン(PDA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)が好ましい。
【0018】
上記のテトラカルボン酸二無水物、ジアミン成分はいずれも1種のみで用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0019】
本発明の耐熱性樹脂層1としてポリイミド樹脂層を形成する方法としては、任意の適切な方法が採用される。例えば、回転する金型内にポリアミド酸溶液を供給し、遠心力により均一な塗膜とする方法、ノズルを金型内面に沿うように挿入し、回転する金型内に樹脂溶液をノズルから吐出させて、ノズルまたは金型を走行させながら螺旋状に塗布する方法、螺旋状の塗布を粗く行った後に、金型との間に一定のクリアランスを有する走行体(弾丸状、球状)を走行させる方法等が挙げられる。これらの方法によってポリアミド酸溶液を製膜した後、加熱処理工程を経て耐熱性樹脂層1を形成する。
【0020】
前記耐熱性樹脂層1がポリイミド樹脂層の場合、前記加熱処理工程は温度80℃〜180℃で15分間〜60分間加熱し、次に温度250℃〜400℃で10分間〜60分間加熱することで行われる。
〔耐熱性樹脂層がポリアミドイミド樹脂層の場合〕
また、本発明においては、耐熱性樹脂層1としてポリアミドイミド樹脂層を形成することが好ましい。ここでポリアミドイミド樹脂としては、複写機用の中間転写ベルト、定着ベルト等の分野において使用される公知のポリアミドイミド樹脂が限定なく使用可能である。
【0021】
ポリアミドイミド樹脂は、酸クロリド法またはイソシアネート法などの公知の方法で製造することが出来る。例えば酸成分と、ジアミンまたはジイソシアネートとを、任意の適切な方法により縮重合して製造することが出来る。具体的には、酸成分とジアミンまたはジイソシアネートとを、N,N’−ジメチルアセトアミドやNMP等の極性溶媒中、所定温度(通常60℃〜200℃程度)に加熱することにより製造することができる。
【0022】
前記酸成分としてはトリメリット酸およびその酸無水物または酸塩化物、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、プロピレングリコールビストリメリテート酸のテトラカルボン酸およびこれらの酸無水物、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、セバチン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ジカルボキシポリブタジエン、ジカルボキシポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ジカルボキシポリ(スチレン−ブタジエン)などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジカルボン酸、ダイマー酸などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸などが挙げられ、これらの中では反応性、耐熱性、溶解性などの点からトリメリット酸無水物および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸などが好ましい。
【0023】
また、前記酸成分と反応させるジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミンおよびこれらのジイソシアネート、1,4−ジアミノジシクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンなどの脂環族ジアミンおよびこれらのジイソシアネート、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンおよびこれらのジイソシアネートなどが挙げられ、これらの中では耐熱性、機械的特性、溶解性などの点から4,4’−ジアミノジフェニルメタン(ジイソシアネート)、イソホロンジアミン(イソシアネート)、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(ジイソシアネート)などが好ましい。
【0024】
上記の酸成分、ジアミン成分はいずれも1種のみで用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明の耐熱性樹脂層1としてポリアミドイミド樹脂層を形成する方法としては、上記ポリイミド樹脂層を形成する場合と同様に、任意の適切な方法が採用される。例えば、回転する金型内にポリアミドイミド樹脂溶液を供給し、遠心力により均一な塗膜とする方法、ノズルを金型内面に沿うように挿入し、回転する金型内に樹脂溶液をノズルから吐出させて、ノズルまたは金型を走行させながら螺旋状に塗布する方法、螺旋状の塗布を粗く行った後に、金型との間に一定のクリアランスを有する走行体(弾丸状、球状)を走行させる方法等が挙げられる。これらの方法によってポリアミドイミド樹脂溶液を製膜した後、加熱処理工程を経て耐熱性樹脂層1を形成する。
【0026】
前記耐熱性樹脂がポリアミドイミドの場合、前記加熱処理の温度は好ましくは、100℃〜300℃であり、さらに好ましくは150℃〜250℃である。加熱処理の時間は、好ましくは10分〜60分である。加熱処理は二段階で行ってもよい。加熱処理を二段階で行うことにより表面に欠陥の無いフィルムを製膜することができる。
〔弾性層の形成方法〕
本発明の弾性層2の主成分としては、オレフィン系液状エラストマーが挙げられる。オレフィン系液状エラストマーの具体例としては、出光興産製のポリブタジエン(R−45HT、R−15HT)、ポリイソプレン(Poly−ip)などが挙げられる。特に、コストやプロセスの簡略化などに利点のあるR−45HTを用いることが好ましい。
【0027】
本発明の弾性層2は、オレフィン系液状エラストマーと硬化触媒とを含有し、オレフィン系液状エラストマー100重量部に対して、難燃剤として室温で液状のリン酸エステル系難燃剤を30重量部〜50重量部の範囲内で含有することが好ましく、さらに40重量部〜50重量部の範囲内で含有することが好ましい。また、オレフィン系液状エラストマー100重量部に対して、ポリリン酸アンモニウムを80重量部〜150重量部の範囲内で含有することが好ましく、さらに80重量部〜100重量部の範囲内で含有することが好ましい。このような範囲内にある場合、弾性層に難燃性を付与することができ、また弾性層を形成する際の加工性も良い。
【0028】
本発明に用いられるリン酸エステル系難燃剤としては、均一分散の点から室温で液状であることが好ましい。特に、液状の樹脂材料のゲル化防止および成形体の硬化抑制、表面平滑性の維持を達成するため、可塑効果のあるトリクレジルホスフェートを含むことが好ましい。室温で液状のリン酸エステル系難燃剤を用いることで、弾性層表面の平滑化および柔軟性の維持を達成することができる。
【0029】
本発明に用いられるポリリン酸アンモニウムとしては、鈴裕化学製(FCP−770)が挙げられる。
【0030】
本発明の弾性層2は、架橋剤としてイソシアネートを含有しても良い。イソシアネートの含有量としては、弾性層2のオレフィン系エラストマーの[−OH基]数に対して[−NCO基]数が1.05となるように、加えることが好ましい。イソシアネートとしては、大日本インキ化学工業(株)製のバーノックDN−980が挙げられる。
〔弾性ベルトの製造方法〕
本発明の弾性ベルト3の製造方法としては、任意の適切な方法が採用される。例えば、耐熱性樹脂層1の外側に弾性層2を塗布した後乾燥する方法等が挙げられる。
【0031】
また、耐熱性樹脂層1と弾性層2には、複写機用ベルト3として好ましい特性にするために添加物を含んでいてもよい。例えば、定着ベルトとして使用する場合、フィラーとして窒化ホウ素を添加することにより、熱伝導性を向上させてもよい。また、中間転写ベルトとして使用する場合、カーボンブラックやポリアニリン等の導電性フィラーを添加して、中間転写ベルトとして適切な導電性を持つように調整してもよい。
【0032】
本発明の弾性ベルトの弾性層2の表面に、CTFE−VDF共重合体、フッ素アクリル樹脂、フッ素系ビニルエーテル、溶剤可溶型ポリエステルのいずれかを主成分とするトップコート層を配していてもよい。このようなトップコート層を配することで、トナーの離型性が高められる。
【実施例】
【0033】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
本願の実施例および比較例に用いられる耐熱性樹脂層であるポリイミド樹脂製ベルトは、以下の製造方法によって製造される。
〔ポリイミド樹脂製ベルトの製造方法〕
1800gのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に乾燥したカーボンブラック(テグサジャパン製、スペシャルブラック4)200g添加し、ボールミルにて12時間室温で攪拌し、濃度15重量%のカーボンブラック分散液を得た。
【0035】
このカーボン液1219.0gを5000mLの4つ口フラスコに移し、NMP2875.3gとp−フェニレンジアミン(PDA)104.2gと4 ,4 ’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)193.0gを仕込み、常温で攪拌させながら溶解した。次いで、3,3 ’,4 ,4 ’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)567.3gを添加し、温度25℃で1時間反応させた後、75℃で20時間加熱することにより、B型粘度計による溶液粘度が160Pa・sのカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液(固形分濃度20wt%)を得た。
【0036】
上記ポリアミド酸溶液を内径300mm、長さ900mmの金型内面にディスペンサーで厚さ170μmに塗布後、1500rpmで10分間回転させ均一な塗布面を得た。
次に、20rpmで回転させながら、金型の外側より100℃の熱風を30分間あてた後、その後350℃まで4℃/分の昇温速度で昇温し、350℃で15分保持した。その後、冷却し、金型内面からベルトを離型し、目的とするポリイミド樹脂製ベルトを得た。このポリイミド樹脂製ベルトの総厚さは75μmであった。
【0037】
実施例1
オレフィン系液状エラストマー(Poly bd R−45HT 出光興産製)100重量部に対して、樹脂の硬化触媒(ジラウリン酸ジブチルすず(IV) 和光純薬工業製)0.01重量部、室温で液状のリン酸エステル系難燃剤としてトリクレジルホスフェート(TCP 大八化学製)50重量部を攪拌混合した。これらの混合物にポリリン酸アンモニウム(FCP−770 鈴裕化学製)80重量部を攪拌しながらゆっくりと加えた。均一に攪拌できたら、オレフィン系液状エラストマーの[−OH基]数に対して[−NCO基]数が1.05となるように、イソシアネート(バーノックDN−980 DIC製)を加えて、攪拌・混合した。作製した混合物を真空脱泡し、液状の樹脂組成物を得た。作製した液状の樹脂組成物をポリイミド樹脂製ベルトの外側に加熱乾燥後の厚みが400μmとなるように塗布し、120℃×1hの加熱乾燥を行い、耐熱性樹脂層をポリイミド樹脂層とした弾性ベルトを得た。
【0038】
実施例2
実施例1において、ポリリン酸アンモニウム(FCP−770 鈴裕化学製)を100重量部とした以外は、実施例1と同様の方法で弾性ベルトを得た。
【0039】
実施例3
実施例1において、ポリリン酸アンモニウム(FCP−770 鈴裕化学製)を150重量部とした以外は、実施例1と同様の方法で弾性ベルトを得た。
【0040】
実施例4
実施例1において、トリクレジルホスフェート(TCP 大八化学製)を30重量部、ポリリン酸アンモニウム(FCP−770 鈴裕化学製)を150重量部とした以外は、実施例3と同様の方法で弾性ベルトを得た。
【0041】
比較例1
実施例1において、トリクレジルホスフェート(TCP 大八化学製)とポリリン酸アンモニウム(FCP−770 鈴裕化学製)を含有しないこと以外は、実施例1と同様の方法で弾性ベルトを得た。
【0042】
比較例2
実施例1において、ポリリン酸アンモニウム(FCP−770 鈴裕化学製)を含有しないこと以外は、実施例1と同様の方法で弾性ベルトを得た。
【0043】
比較例3
実施例1において、トリクレジルホスフェート(TCP 大八化学製)を含有せず、ポリリン酸アンモニウム(FCP−770 鈴裕化学製)を100重量部含有するとした以外は、実施例1と同様の方法で弾性ベルトを得た。
【0044】
比較例4
実施例1において、トリクレジルホスフェート(TCP 大八化学製)を含有せず、ポリリン酸アンモニウム(FCP−770 鈴裕化学製)を200重量部とした以外は、実施例1と同様の方法で弾性ベルトを得た。
【0045】
比較例5
実施例1において、ポリリン酸アンモニウム(FCP−770 鈴裕化学製)を50重量部含有するとした以外は、実施例1と同様の方法で弾性ベルトを得た。
【0046】
比較例6
実施例1において、ポリリン酸アンモニウム(FCP−770 鈴裕化学製)を含有せず、トリクレジルホスフェート(TCP 大八化学製)の代わりに、室温で粉状のリン酸エステル系難燃剤であるトリフェニルホスフェート(TPP 大八化学製)50重量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法で弾性ベルトを得た。
【0047】
比較例7
実施例1において、ポリリン酸アンモニウム(FCP−770 鈴裕化学製)を含有せず、トリクレジルホスフェート(TCP 大八化学製)の代わりに、室温で粉状のリン酸エステル系難燃剤であるレゾルシノールビス−ジキシレニルホスフェート(PX−200 大八化学製)50重量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法で弾性ベルトを得た。
【0048】
〔難燃性の評価〕
無風のドラフトチャンバーにて、ベルトの弾性層にブンゼンバーナーの炎を10秒間接触させ、難燃性の評価を行った。評価としては、着火後、自己消火したものを○、着火して燃焼し続けるものを×とした。
【0049】
〔変位回復率の評価〕
弾性ベルトを試験片のサイズ(縦1cm、横1cmの正方形)に切り取り、熱機械分析装置(TMA4000SA BrukerAXS製)に載置し、φ1mmの先端を持つガラス製のプローブを弾性層側から10g/minの速度で荷重をかけ、1gの荷重をかけたときの変位をゼロ点とし、21gの荷重をかけたところで、50g/minの速度で荷重を解除した。変位回復率としては、押し込み前(つまり、1gの荷重をかけたとき)の弾性層の厚みを100%としたときの、荷重解除10秒後の弾性層の厚みから計算した。
【0050】
表1に実施例1〜4および比較例1〜5の配合量と評価結果を示す。
【0051】
【表1】

【0052】
(※1:比較例4については、ゲル化したため弾性層を形成できず、難燃性と変位回復率の試験は行っていない。)
【0053】
表2に比較例6および比較例7の配合量と評価結果を示す。
【0054】
【表2】

【0055】
(※2:比較例6,7については、弾性層の表面に難燃剤がブリードアウトしたため、難燃性と変位回復率の試験は行っていない。)
【0056】
実施例1〜4より、オレフィン系液状エラストマー100重量部に対して、液状の難燃性リン酸エステルを30重量部〜50重量部の範囲内、難燃性ポリリン酸アンモニウムを80重量部〜150重量部の範囲内で含有する場合、難燃性があり、弾性層の変位回復率が90%以上である弾性ベルトが作製できる。一方、比較例1では、液状の難燃性リン酸エステルと難燃性ポリリン酸アンモニウムが含まれていないため、難燃性が得られなかった。また、比較例2のように弾性層に液状の難燃性リン酸エステルのみを含有させても難燃性は得られず、比較例3のように弾性層の難燃性ポリリン酸アンモニウムのみ含有させても難燃性は得られなかった。一方、比較例4のように、難燃性ポリリン酸アンモニウムを過剰に入れた場合は、弾性層がゲル化してしまい、ベルトを成形することができなかった。さらに、比較例5のように、両者が含まれていたとしても、両者の含有量が上記範囲内にないため、所望の難燃性が得られなかった。
【0057】
比較例6および比較例7は、弾性層に難燃剤として室温で粉状のリン酸エステル系難燃剤のみを含有させたものである。室温で粉状のリン酸エステル系難燃剤を用いたために、経時で弾性層の表面にリン酸エステル系難燃剤がブリードアウトしてしまい、複写機用の弾性ベルトとしては不適であった。
【符号の説明】
【0058】
1 耐熱性樹脂層
2 弾性層
3 複写機用弾性ベルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性樹脂層と、前記耐熱性樹脂層の外側に形成された難燃性を有する弾性層とを含む複写機用弾性ベルトであって、前記弾性層の変位回復率が90%以上となる複写機用弾性ベルト。
【請求項2】
前記弾性層が、オレフィン系液状エラストマーと硬化触媒とを含み、前記オレフィン系液状エラストマー100重量部に対して、30重量部〜50重量部の範囲内で室温で液状のリン酸エステル系難燃剤と、80重量部〜150重量部の範囲内でポリリン酸アンモニウムと、を含有することを特徴とする請求項1に記載の複写機用弾性ベルト。
【請求項3】
前記室温で液状のリン酸エステル系難燃剤が、トリクレジルホスフェートであることを特徴とする請求項2に記載の複写機用弾性ベルト。
【請求項4】
前記耐熱性樹脂層がポリイミド樹脂層又はポリアミドイミド樹脂層であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の複写機用弾性ベルト。


【図1】
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【公開番号】特開2012−73292(P2012−73292A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215988(P2010−215988)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】