説明

複写機

【課題】複製元であるRFID両面原稿と複製物であるRFID用紙との間で整合性を確保し易い複写機を提供すること。
【解決手段】複写機は,記憶媒体付き原稿の複製が指示された際には,その原稿の両面に画像があるか否かを判断する。そして,原稿の両面に画像がある場合には,(A)原稿の両面の画像を用紙の両面に形成し,その用紙の記憶媒体には,その原稿の記憶媒体のデータと同一のデータを書き込む,(B)原稿の表面の画像と裏面の画像とをそれぞれ別の用紙に形成し,各用紙の記憶媒体には,その原稿の記憶媒体のデータと同一のデータを書き込む,(C)原稿の表面の画像と裏面の画像とをそれぞれ別の用紙に形成し,各用紙の記憶媒体には,互いの記憶媒体に書き込まれたデータを補完することでその原稿の記憶媒体のデータと同一のデータとなるように書き込む,のうちのいずれかを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,RFID(Radio Frequency IDentification)タグ等の記憶媒体にアクセス可能な複写機に関する。さらに詳細には,記憶媒体(以下,便宜上「RFIDタグ」と称する)が添付された原稿(以下,便宜上「RFID原稿」と称する)を複製する機能を有する複写機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,ユーザ情報や画像情報等をRFIDタグに記憶したRFID原稿の利用が検討されている。RFID原稿は,その性質上,RFIDタグに記憶されたデータと用紙上の画像とが対応付けられていることが多く,また記憶されるデータや画像の重要度が高い傾向にある。RFIDタグにアクセス可能な複写機に関連する技術としては,例えば特許文献1に,RFID原稿のうち,用紙上に形成された画像と,その用紙に添付されたRFIDタグ内のデータとの双方を,RFIDタグが添付された用紙に複製する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−337426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら,前記した従来の複写機には,次のような問題があった。すなわち,RFID原稿は,両面に画像が形成されていることもある。このような両面に画像が形成されたRFID原稿(以下,便宜上「RFID両面原稿」と称する)を,RFIDタグが添付された用紙(以下,便宜上「RFID用紙」と称する)に正しく複製できないことがある。例えば,RFID両面原稿を複製する場合には,両面読み取りを指示する必要がある。しかし,RFID両面原稿の複製の際に片面コピーを指示してしまうと,RFIDタグには両面分のデータが複製されるにもかかわらず,画像は一方の面のみの複製となってしまい,他方の面の画像が失われた状態になってしまう。つまり,従来の複写機によるRFID両面原稿の複製では,データが欠落し,複製元であるRFID両面原稿と複製物であるRFID用紙との間で整合性が確保できないおそれがある。
【0004】
本発明は,前記した従来の複写機が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,複製元であるRFID両面原稿と複製物であるRFID用紙との間で整合性を確保し易い複写機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題の解決を目的としてなされた複写機は,原稿の両面の画像を読み取る読取手段と,読取手段にて読み取った画像を用紙上に形成する形成手段と,原稿に添付された記憶媒体のデータを取得する取得手段と,取得手段にて取得したデータの少なくとも一部を,用紙に添付された記憶媒体に書き込む書込手段と,取得手段によって原稿の記憶媒体からデータを取得し,書込手段によってそのデータを少なくとも1枚の用紙の記憶媒体に書き込む動作である複製が指示された際に,その原稿の両面に画像があるか否かを判断する判断手段と,判断手段が原稿の両面に画像があると判断した場合に,(A)原稿の両面の画像を用紙の両面に形成し,その用紙の記憶媒体には,その原稿の記憶媒体のデータと同一のデータを書き込む,(B)原稿の表面の画像と裏面の画像とをそれぞれ別の用紙に形成し,各用紙の記憶媒体には,その原稿の記憶媒体のデータと同一のデータを書き込む,(C)原稿の表面の画像と裏面の画像とをそれぞれ別の用紙に形成し,各用紙の記憶媒体には,互いの記憶媒体に書き込まれたデータを補完することでその原稿の記憶媒体のデータと同一のデータとなるように書き込む,の3つの動作態様(A),(B),(C)のうちのいずれかを実行するように形成手段および書込手段を制御する制御手段とを備えることを特徴としている。
【0006】
本発明の複写機は,原稿の記憶媒体(例えば,RFIDタグ)からデータを取得し,そのデータを少なくとも1枚の用紙の記憶媒体に書き込む処理である記録媒体のデータ複製機能を有している。複製の指示は,ユーザの操作によるものの他,例えば記憶媒体に複製指示が記憶されており,その指示を読み取ったものであってもよい。複製が指示された際には,原稿の両面に画像があるか否かを判断する。そして,原稿の両面に画像がある場合には,上記3つの動作態様(A),(B),(C)のうちのいずれかを実行する。各動作態様は,いずれも記録媒体付き原稿の複製の動作態様であり,原稿の画像および記憶媒体のデータが,1枚の用紙に複製あるいは複数枚の用紙に分けて複製される。
【0007】
すなわち,本発明の複写機は,記憶媒体の複製指示があった場合には,まず,原稿の両面に画像があるか否かを判断する。そして,両面に画像があると判断した場合には,上記動作態様(A),(B),(C)のうちのいずれかを実行する。これらの動作態様では,原稿の両面画像を,1枚の用紙の両面あるいは2枚の用紙の片面ずつに分けて形成し,原稿の記憶媒体のデータを,1枚の用紙あるいは2枚の用紙に書き込む。このことから,画像のデータと記憶媒体のデータとの両方が記憶された出力物を確実に得られる。つまり,動作態様(A)は,原稿と同じ情報を有するものが出力される完全複製であるから原稿のデータは失われない。動作態様(B),(C)は,2枚の用紙に分かれてしまい,用紙ごとの情報は不完全であるが,2枚の用紙を合わせて画像のデータと記憶媒体のデータとをすべて入手することになる。これにより,原稿のデータを失うことなく,信頼性が高い複製処理を実現できる。
【0008】
また,本発明の複写機の制御手段は,少なくとも動作態様(A)の実行が可能であり,原稿の記憶媒体に所定の条件を満たす情報が記憶されている場合には,動作態様(A)を実行するとよりよい。つまり,例えば,重要度が高いと見なされる原稿については,あらかじめ記憶媒体に所定の情報を記憶することで,動作態様(A)による複製を実行する。例えば,重要度が高いことを示す情報(例えば,「完全複製」の文字列)が記憶媒体に書き込まれている場合には,動作態様(B),(C)の実行を制限し,動作態様(A)のみを実行する。動作態様(A)は,動作態様(B),(C)と異なり,原稿の情報(画像および記憶媒体のデータ)が1枚の用紙に完全複製される。そのため,他面の紛失等によってデータが不完全になることはなく,管理が容易である。
【0009】
また,制御手段の動作態様(C)では,各用紙の記憶媒体に書き込まれるデータに重複がないとよりよい。すなわち,記憶媒体のデータを分割して記憶する場合には,データを重複させて記憶することも考えられるが,データを重複なく記憶することで,各記憶媒体に書き込まれるデータを少量化できる。
【0010】
また,制御手段の前記動作態様(C)では,一方の用紙の記憶媒体には他方の用紙の記憶媒体の存在を示す情報を書き込むとよりよい。例えば,データの前半部分が記憶された記憶媒体には,「前半」の文字列を記憶することで,他の記憶媒体の存在を示すことができる。また,互いの記憶媒体に,共通の認識記号を記憶してもよい。このような情報を書き込むことで,データが分割されていることを認識できる。
【0011】
また,制御手段の前記動作態様(C)では,表面に対応するデータと裏面に対応するデータとを特定し,表面に対応するデータを表面の画像を形成した用紙の記憶媒体に書き込み,裏面に対応するデータを裏面の画像を形成した用紙の記憶媒体に書き込むとよりよい。すなわち,用紙の記憶媒体に,その用紙の画像に適切なデータを書き込むことで,そのデータの使い勝手がよい。
【0012】
また,本発明の複写機の制御手段は,動作態様(A),(B),(C)の少なくとも2つの動作態様が実行可能であり,どの動作態様を実行するかの選択肢を登録し,その登録内容に従って動作を行うとよりよい。すなわち,動作態様を登録することで,複製を指示する度に選択する必要がない。よって,複製指示の際の,動作態様の設定の手間を省くことができる。
【0013】
また,本発明の複写機は,原稿の画像の読み取り前にその原稿に記憶媒体があるか否かを判断し,記憶媒体がある場合にはその原稿の読取動作を両面読み取りに制限するとよりよい。すなわち,記憶媒体が添付されている原稿は,重要度が高い傾向にある。そこで,そのような原稿に添付された記憶媒体のデータの複製では,両面読み取りを行う。これにより,データの適正な管理を期待できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば,複製元であるRFID両面原稿と複製物であるRFID用紙との間で整合性を確保し易い複写機が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下,本発明にかかる印刷装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,RFIDタグにアクセス可能であり,原稿に添付されたRFIDタグからデータを取得し,そのデータを用紙に添付されたRFIDタグに書き込む複製機能を有する複合機(MFP:Multi Function Peripheral )に本発明を適用したものである。
【0016】
[MFPの全体構成]
実施の形態のMFP100は,図1に示すように,用紙に画像を印刷する画像形成部10(形成手段の一例)と,原稿の画像を読み取る画像読取部20(読取手段の一例)とを備えている。また,画像読取部20の前面側には,液晶ディスプレイからなる表示部41と,スタートキー,ストップキー,テンキー等から構成されるボタン群42とを備えた操作パネル40が設けられ,この操作パネル40により動作状況の表示やユーザによる入力操作が可能になっている。
【0017】
[画像読取部の構成]
画像読取部20は,原稿を読み取って画像データを作成する。具体的に本形態の画像読取部20は,図2に示すように,原稿の画像を読み取るスキャナ部21と,原稿の自動搬送を行うADF(Auto Document Feeder:自動原稿供給装置)22とを備えている。スキャナ部21は,その上面に位置する透明なプラテンガラス23,24と,その内部に位置するイメージセンサ25とを備えている。
【0018】
ADF22は,読み取り前の原稿を載置する原稿トレイ221と,読み取り後の原稿を載置する排出トレイ222とを備えている。具体的に,原稿トレイ221は,排出トレイ222の上方に配設されている。そして,ADF22は,原稿トレイ221に載置された原稿を1枚ずつ取り出し,その原稿の読み取りが行われた後,その原稿を排出トレイ222上に排出する。また,ADF22は,スキャナ部21の上方を開閉可能に覆い,プラテンガラス23,24を含む原稿載置台26上に載置された原稿に対する原稿押さえカバーとしての機能も兼ねる。
【0019】
原稿の読取方式としては,フラットベッド(原稿固定走査)方式と,ADF(原稿移動走査)方式とがある。フラットベッド方式の場合,原稿を1枚ずつプラテンガラス24(以下,「FBガラス24」とする)上に載置する。その状態で,イメージセンサ25が副走査方向(主走査方向に直交方向,図2の矢印A方向)に移動し,その際に主走査方向に1ラインずつ原稿の画像が読み取られる。一方,ADF方式の場合,原稿を纏めて原稿トレイ221に載置する。そして,イメージセンサ25がプラテンガラス23(以下,「ADFガラス23」とする)に対向する位置に移動し,固定される。その状態で,原稿がADFガラス23に対向する位置(読取位置)に搬送され,その際に主走査方向に1ラインずつ原稿の画像が読み取られる。
【0020】
続いて,ADF22について詳説する。ADF22の内部には,各種のローラよって原稿トレイ221と排出トレイ222とを連結する略U字形状の搬送路27が設けられている。具体的に,ADF22の搬送路27は,原稿トレイ221からADF22内に取り込まれ,幾つものローラを経由してUターンし,ADFガラス23上を通って排出トレイ222に向かう経路を構成している。そして,ADFガラス23上の通過時に,原稿の画像が読み取られる。
【0021】
さらに,ADF22内には,原稿の両面の画像の読み取りを行うための両面読取機構が備えられている。図2中の搬送路28は,一方の面の画像読み取りが行われた原稿の,他方の面にも画像読み取りが行われるように,原稿を反転してADFガラス23に再搬送するための搬送経路である。また,ADF22のケースに設けられたスリット29は,原稿の一部をADF22外に送り出し,原稿を反転させるために設けられている。
【0022】
具体的に,ADF22の内部には,スイッチバックローラ281と,第1案内フラップ282と,第2案内フラップ283とが設けられ,搬送路28を構成している。すなわち,搬送路28は,第1案内フラップ282から第2案内フラップ283を経由してスイッチバックローラ281に向かう経路になる。
【0023】
ADF22による両面読み取りでは,原稿トレイ221から送り出され,各種のローラを経由し,読取位置にて表面の画像が読み取られる。その後,原稿を,第1案内フラップ282によって搬送路28に案内し,第2案内フラップ283を経由してスイッチバックローラ281まで搬送する。そして,スイッチバックローラ281にて,原稿の搬送方向を反転させる。このとき,第1案内フラップ282および第2案内フラップ283の向きを切り換える。そして,原稿は,第2案内フラップ283にて再び搬送路27に搬送され,読取位置まで導かれて裏面の画像が読み取られる。これにより,原稿は,表裏が反転され,裏面の画像が読み取られることになる。その後,原稿は,第1案内フラップ282を経由して排紙ローラ274から排出トレイ222に排出される。
【0024】
また,ADF22は,所定範囲内に存在するRFIDタグを検知し,そのRFIDタグに対してデータの読み出しおよび書き込みを行うことが可能なR/W装置51(取得手段の一例)を備えている。R/W装置51は,RFID原稿が原稿トレイ221上に載置された場合に,そのRFIDタグにアクセス可能な範囲に配置される。
【0025】
[画像形成部の構成]
画像形成部10は,パーソナルコンピュータ(PC)等の情報端末装置から送られてくる画像データや画像読取部20で読み取った原稿の画像データを基に画像を形成し,当該画像を用紙に印刷する。本形態の画像形成部10は,周知の電子写真方式によって画像を形成するものであり,図3に示すように,画像を形成するプロセス部50と,未定着のトナー像を定着させる定着装置8と,画像形成前の用紙を載置する給紙カセット91と,画像形成後の用紙を載置する排紙トレイ92とを備えている。
【0026】
画像形成部10内には,底部に位置する給紙カセット91に収容された用紙が,給紙ローラ73,プロセス部50,定着装置8を通り,排紙ローラ74を介して上部の排紙トレイ92への導かれるように,略S字形状の搬送経路71が設けられている。すなわち,画像形成部10は,給紙カセット91に載置されている用紙を1枚ずつ取り出し,その用紙をプロセス部50に搬送し,プロセス部50にて形成されたトナー像をその用紙に転写する。さらに,トナー像が転写された用紙を定着装置8に搬送し,トナー像をその用紙に熱定着させる。そして,定着後の用紙を排紙トレイ92に排出する。
【0027】
プロセス部50は,感光体1と,感光体1の表面を一様に帯電する帯電装置2と,感光体1の表面に光を照射して静電潜像を形成する露光装置3と,静電潜像に対してトナーによる現像を行う現像装置4と,感光体1上のトナー像を用紙に転写させる転写装置5と,感光体1上の残留トナーを除去するクリーニングブレード6とを有している。
【0028】
プロセス部50では,感光体1の表面が帯電装置2によって一様に帯電される。その後,露光装置3からの光により露光され,用紙に形成すべき画像の静電潜像が形成される。次いで,現像装置4を介して,トナーが感光体1に供給される。これにより,感光体1上の静電潜像は,トナー像として可視像化される。
【0029】
さらに,画像形成部10内には,用紙の両面に印刷を行うための両面印刷機構が備えられている。図3中の搬送路72は,一方の面に印刷が行われた用紙の,他方の面にも印刷が行われるように,用紙を反転してプロセス部50に再搬送するための搬送経路である。
【0030】
画像形成部10による両面印刷では,表面の搬送路(正搬送路)である搬送路71を経由して表面に画像形成された用紙を排紙ローラ74で停止させ,用紙の搬送方向を反転させる。そして,その用紙を排紙ローラ74から再搬送路である搬送路72に搬送し,プロセス部50と給紙カセット91との間の位置を通過させ,再度プロセス部50まで導く。これにより,用紙の表裏が反転され,裏面に画像形成されることになる。
【0031】
また,画像形成部10は,所定範囲内に存在するRFIDタグを検知し,そのRFIDタグに対してデータの読み出しおよび書き込みを行うことが可能なR/W装置52(書込手段の一例)を備えている。R/W装置52は,RFID用紙が搬送路71,72上に搬送された場合に,そのRFIDタグにアクセス可能な範囲に配置される。
【0032】
[MFPの電気的構成]
続いて,MFP100の電気的構成について説明する。MFP100は,図4に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM34と,ASIC35と,ネットワークインタフェース36と,FAXインタフェース37とを備えた制御部30を有している。
【0033】
CPU31は,MFP100における画像読取機能,画像形成機能等の各種機能を実現するための演算を実行し,制御の中枢となるものである。ROM32には,MFP100を制御するための各種制御プログラムや各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。NVRAM(Non Volatile RAM)34は,不揮発性を有する記憶手段であって,各種設定ないし画像データ等を保存する記憶領域として利用される。
【0034】
CPU31は,ROM32から読み出した制御プログラムや各種センサから送られる信号に従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,MFP100の各構成要素(例えば,画像形成部10を構成する露光装置の点灯タイミング,用紙の搬送路を構成する各種ローラの駆動モータ(不図示),画像読取部20を構成するイメージセンサユニットの移動用モータ(不図示))を,ASIC35を介して制御する。
【0035】
ネットワークインターフェース36は,インターネット等のネットワークに接続され,PC等の情報処理装置との接続を可能にしている。FAXインターフェース37は,電話回線に接続され,相手先のFAX装置との接続を可能にしている。そして,ネットワークインターフェース36やFAXインターフェース37を介してジョブのやりとりを行うことができる。
【0036】
[複製処理]
続いて,MFP100における複製処理について説明する。MFP100は,原稿の画像複製機能(原稿の画像読み取り,その読み取った画像データの画像形成)に加え,RFIDタグのデータ複製機能(RFIDタグのデータの取得,その取得したデータの書き込み)を備えている。そして,以下の説明では,片面コピーによるRFIDタグの複製指示があった場合の複製処理について説明する。
【0037】
MFP100では,片面コピーによるRFIDタグの複製の動作態様を,複製指示前にあらかじめ設定する。本形態では,操作パネル40の表示部41に,図5に示すような設定画面を表示し,ユーザに動作態様の選択を促す。そして,ユーザがラジオボタン411によって1つの動作態様を選択することで動作態様が設定される。
【0038】
具体的に本形態では,次の4つの動作態様が選択可能である。1つ目は,RFID両面原稿の画像を,1枚のRFID用紙に両面印刷し,その原稿のRFIDタグのデータを,その用紙のRFIDタグに全複製する動作態様(以下,「動作態様A」とする)である。すなわち,動作態様Aでは,片面コピーの指示であったとしても,図6に示すように,RFID両面原稿81の両面の画像を,RFID用紙85の両面に複製する。さらに,RFID両面原稿81のRFIDタグ82の全データを,RFID用紙85のRFIDタグ86に複製する。動作態様Aでは,原稿の両面画像の複製とRFIDタグの全複製とが1枚のRFID用紙に行われるため,データの欠落は生じない。
【0039】
2つ目は,RFID両面原稿の画像を,2枚のRFID用紙に分けて片面印刷し,原稿のRFIDタグのデータを,各用紙のRFIDタグに全複製する動作態様(以下,「動作態様B」とする)である。すなわち,動作態様Bでは,図7に示すように,RFID両面原稿81の両面の画像を,RFID用紙85とRFID用紙87とに分けてそれぞれの片面に複製する。さらに,RFID両面原稿81のRFIDタグ82の全データを,RFID用紙85のRFIDタグ86およびRFID用紙87のRFIDタグ88に複製する。動作態様Bでは,原稿の画像が2枚の用紙に分かれて形成されるが,用紙同士が補完し合うことで原稿の両面の画像が記録される。また,各用紙のRFIDタグに全複製が行われるため,データの欠落は生じない。
【0040】
3つ目は,RFID両面原稿の画像を,2枚のRFID用紙に片面印刷し,原稿のRFIDタグのデータを,各用紙のRFIDタグに一部ずつ複製し,両RFIDタグで全データを保持する動作態様(以下,「動作態様C」とする)である。すなわち,動作態様Cでは,図8に示すように,RFID両面原稿81の両面の画像を,RFID用紙85とRFID用紙87とに分けてそれぞれの片面に複製する。さらに,さらに,RFID両面原稿81のRFIDタグ82の全データを2分割し,分割した各データをRFID用紙85のRFIDタグ86とRFID用紙87のRFIDタグ88とにそれぞれ複製する。分割されたデータには,分割されたデータであることを示す情報(例えば,「前」,「後」)が追加される。動作態様Cでは,原稿の画像が2枚の用紙に分かれて形成されることに加え,RFIDタグのデータも2分割されるが,分割されたデータ同士が補完し合うことで原稿のRFIDタグのデータと同じになる。そのため,データの欠落は生じない。また,全データを書き込む動作態様Bと比較して,書き込むデータ量が少ない。
【0041】
4つ目は,RFID両面原稿の画像を,2枚のRFID用紙に片面印刷し,RFIDタグのデータの複製は行わない動作態様(以下,「動作態様D」とする)である。すなわち,RFIDタグのデータは重要度が高い傾向にある。そこで,動作態様Dでは,RFIDタグのデータの重要性を考慮し,不完全な複製指示(つまり,RFID両面原稿であるにもかかわらず片面コピーの指示)の場合は,RFIDタグのデータの複製を行わない。動作態様Dは,データの完全性よりも安全性を重視した態様となる。
【0042】
ユーザによる選択結果は,MFP100に登録される。すなわち,選択結果がNVRAM34に記憶される。そして,MFP100は,登録内容に従って,片面コピーによるRFIDタグの複製指示があった場合の動作を行う。なお,初期状態では,動作態様Aがデフォルト設定されており,ユーザによる選択がない状態では動作態様Aが優先的に選択される。
【0043】
以下,片面コピーによるRFIDタグの複製指示があった場合の,複製処理(読取手段,形成手段,取得手段,書込手段,判断手段,制御手段の一例)の手順について,図9のフローチャートを参照しつつ説明する。なお,本処理は,ユーザによるRFIDタグの複製指示を契機に実行される。
【0044】
まず,画像読取部20のR/W装置51によって,原稿に添付されたRFIDタグのデータを取得する(S101)。次に,RFIDタグのデータが取得できたか否か,すなわち原稿にRFIDタグが添付されているか否かを判断する(S102)。
【0045】
RFIDタグのデータが取得できなかった場合には(S102:NO),RFIDタグのデータの複製ができない。そこで,原稿の画像の片面コピーのみを行う。すなわち,原稿の表面の画像のみを読み取り(S121),用紙にその表面の画像のみを形成し(S122),本処理を終了する。
【0046】
RFIDタグのデータが取得できた場合には(S102:YES),原稿の両面読み取りを行う(S103)。そして,読み取った画像を解析し,原稿の裏面に画像が有るか否かを判断する(S104)。裏面に画像がなかった場合には(S104:NO),表面のみの片面コピーであったとしても画像データの欠落は生じない。そこで,画像形成部10のR/W装置52によって,用紙に添付されたRFIDタグに,S101で取得したRFIDタグの全データを書き込む(S141)。そして,その用紙に表面の画像のみを形成する(S142)。すなわち,ユーザの指示通り,片面コピーによるRFIDタグのデータの複製を行う。
【0047】
裏面に画像があった場合には(S104:YES),表面のみの片面コピーでは画像データの欠落を生じる。そこで,S101で取得したRFIDタグのデータに,特定の情報が含まれているか否かを判断する(S105)。本形態では,RFIDタグのデータに,動作態様Aを意味する「完全複製」の情報が含まれているか否かを判断する。「完全複製」の情報が含まれている場合には(S105:YES),動作態様Aの動作を行う。つまり,用紙に添付されたRFIDタグに,RFIDタグの全データを書き込み(S161),その用紙の両面に画像を形成する(S162)。すなわち,「完全複製」の情報が抽出された場合には,MFP100に記憶されている設定よりも優先して動作態様Aの動作を行う。これにより,RFIDタグからの指示によって,動作態様を決定できる。
【0048】
「完全複製」の情報が含まれていない場合には(S105:NO),MFP100に登録されている動作態様に従って,画像およびRFIDタグのデータの記録処理を行う(S106)。
【0049】
図10は,S106の記録処理の手順を示すフローチャートである。本記録処理では,まず,MFP100に登録されている動作態様を取得する(S201)。次に,登録されている動作態様が動作態様Aであるか否かを判断する(S202)。動作態様Aである場合には(S202:YES),用紙に添付されたRFIDタグに,RFIDタグの全データを書き込む(S221)。そして,その用紙の両面に画像を形成する(S222)。すなわち,1枚のRFID用紙に,画像およびRFIDタグのデータを記録する。
【0050】
登録されている動作態様が動作態様Aでなければ(S202:NO),動作態様Bであるか否かを判断する(S203)。動作態様Bである場合には(S203:YES),原稿のRFIDタグの全データを,1枚目の用紙のRFIDタグに書き込む(S241)。そして,その用紙に原稿の表面の画像を形成する(S242)。次に,原稿のRFIDタグの全データを,2枚目の用紙のRFIDタグにも書き込む(S243)。そして,その用紙に原稿の裏面の画像を形成する(S244)。すなわち,原稿の両面画像を,2枚の用紙に分けて片面コピーし,各用紙のRFIDタグに原稿のRFIDタグの全データを書き込む。
【0051】
登録されている動作態様が動作態様Bでなければ(S203:NO),動作態様Cであるか否かを判断する(S204)。動作態様Cである場合には(S204:YES),原稿のRFIDタグの前半部分のデータと,後半部分と組み合わせて全データとなることを示す情報とを,1枚目の用紙のRFIDタグに書き込む(S261)。そして,その用紙に原稿の表面の画像を形成する(S262)。次に,原稿のRFIDタグの後半部分のデータと,前半部分と組み合わせて全データとなることを示す情報とを,2枚目の用紙のRFIDタグに書き込む(S263)。そして,その用紙に原稿の裏面の画像を形成する(S264)。すなわち,原稿の両面画像を,2枚の用紙に分けて片面コピーし,さらに原稿のRFIDタグのデータを各用紙のRFIDタグに2分して書き込む。
【0052】
なお,動作態様Cでは,RFIDタグのデータを,表面の画像および裏面の画像と対応させて分割することが好ましい。例えば,表面に問題1から10が記載され,裏面に問題11から20が記載されており,RFIDタグには問題1から20の答えが記憶されている場合には,表面の画像が形成される1枚目の用紙のRFIDタグには問題1から10の答えを記憶し,裏面の画像が形成される2枚目の用紙のRFIDタグには問題11から20の答えを記憶するように分割する。これにより,複製された用紙の使い勝手が向上する。この場合,RFIDタグには,表面の画像に対応するデータであるか裏面の画像に対応するデータであるかを識別できる情報があらかじめ格納されている。
【0053】
また,RFIDタグのデータは,必ずしも2等分する必要はない。すなわち,分割された2つのデータを補完し合うことで原稿のRFIDタグの全データを保持できていればよく,その記憶割合は問わない。つまり,図11に示すように,1枚目の用紙85のRFIDタグ86に全てのデータを記憶し,2枚目の用紙87のRFIDタグ88には1枚目の用紙85のRFIDタグ86を参照する旨の情報のみを記憶するようにしてもよい。
【0054】
登録されている動作態様が動作態様Cでなければ(S204:NO),動作態様Dであると判断できる。そこで,原稿の表面の画像を1枚目の用紙に形成し(S205),原稿の裏面の画像を2枚目の用紙に形成する(S206)。すなわち,RFIDタグにアクセスすることなく本処理を終了する。
【0055】
なお,本形態では,あらかじめ動作態様をMFP100に登録し,複製指示後はその登録内容に従って自動的に動作態様を決定しているが,複製指示の度にユーザが手動で決定してもよい。この場合,例えばS201にてMFP100に登録されている動作態様を取得する処理に代わり,動作態様の選択を受け付ける画面(例えば図5に示した設定画面)を表示し,ユーザからの選択を受け付ける。その後,ユーザの選択に従って動作するようにしてもよい。
【0056】
以上詳細に説明したように本形態のMFP100は,RFIDタグのデータの複製の際,原稿の両面に画像があるか否かを判断し,両面に画像があると判断した場合には,片面コピーの設定にかかわらず,動作態様A,B,C,Dのうちのいずれかを実行する。これらの動作態様のうち,動作態様A,B,Cでは,原稿の両面画像を,1枚の用紙の両面あるいは2枚の用紙の片面ずつに分けて形成し,原稿のRFIDタグのデータを,1枚の用紙あるいは2枚の用紙に書き込む。このことから,MFP100の複製処理では,画像のデータとRFIDタグのデータとの両方が記憶された出力物を確実に得られる。つまり,動作態様Aは,原稿と同じ情報を有するものが出力される完全複製であるから両データは失われない。動作態様B,Cは,2枚の用紙に分かれてしまい,用紙ごとの情報は不完全であるが,2枚の用紙を合わせて画像のデータとRFIDタグのデータとをすべて入手することになる。これにより,複製元である原稿のデータを失うことなく,信頼性が高い複製処理を実現できる。
【0057】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,複合機(MFP)に限らず,複写機等,原稿読取機能および画像形成機能を備えるものであれば適用可能である。また,画像形成部の画像形成方式は,電子写真方式に限らず,インクジェット方式であってもよい。また,カラー画像の形成が可能であっても,モノクロ画像専用であってもよい。
【0058】
また,実施の形態では,原稿のRFIDタグにアクセスするR/W装置51と,用紙のRFIDタグにアクセスするR/W装置52とをそれぞれ設けているが,1つのR/W装置によって原稿のRFIDタグと用紙のRFIDタグとの両方にアクセス可能にしてもよい。
【0059】
また,実施の形態では,4つの動作形態が選択可能であったが,これら4つの動作形態をすべて必須とするものではない。例えば,3つしか選択肢がなくてもよい。また,動作形態A,B,Cのうちの1つが動作可能であり,動作形態の選択機能を有しないものであってもよい。すなわち,動作形態A,B,Cのうちの少なくとも1つの動作が可能であれば,RFID両面原稿のデータを失うことなく複製できる。例えば,完全複製のみをサポートするために動作態様Aのみを実行するように構成してもよい。また,画像形成部10が両面印刷をサポートしていない場合には動作態様B,Cのみを実行するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施の形態にかかる複合機の概略構成を示す斜視図である。
【図2】実施の形態にかかる複合機の,画像読取部の概略構成を示す図である。
【図3】実施の形態にかかる複合機の,画像形成部の概略構成を示す図である。
【図4】実施の形態にかかる複合機の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】RFID両面原稿を,片面コピーによる複製指示で複製する際の設定画面の一例を示す図である。
【図6】RFID両面原稿の画像を,1枚のRFID用紙に両面印刷し,原稿のRFIDタグのデータを,用紙のRFIDタグに全複製する動作態様(動作態様A)のイメージを示す図である。
【図7】RFID両面原稿の画像を,2枚のRFID用紙に片面印刷し,原稿のRFIDタグのデータを,各用紙のRFIDタグに全複製する動作態様(動作態様B)のイメージを示す図である。
【図8】RFID両面原稿の画像を,2枚のRFID用紙に片面印刷し,原稿のRFIDタグのデータを,各用紙に一部ずつ複製し,2つのRFIDタグで全データを保持する動作態様(動作態様C)のイメージを示す図である。
【図9】片面コピーによるRFIDタグの複製指示があった場合における複製処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】複製処理中の記録処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】RFID両面原稿の画像を,2枚のRFID用紙に片面印刷し,原稿のRFIDタグのデータを,各用紙に一部ずつ複製し,2つのRFIDタグで全データを保持する動作態様(動作態様C)の応用例のイメージを示す図である。
【符号の説明】
【0061】
10 画像形成部
20 画像読取部
30 制御部
40 操作パネル
41 表示部
51 R/W装置
52 R/W装置
100 MFP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の両面の画像を読み取る読取手段と,
前記読取手段にて読み取った画像を用紙上に形成する形成手段と,
原稿に添付された記憶媒体のデータを取得する取得手段と,
前記取得手段にて取得したデータの少なくとも一部を,用紙に添付された記憶媒体に書き込む書込手段と,
前記取得手段によって原稿の記憶媒体からデータを取得し,前記書込手段によってそのデータを少なくとも1枚の用紙の記憶媒体に書き込む動作である複製が指示された際に,その原稿の両面に画像があるか否かを判断する判断手段と,
前記判断手段が原稿の両面に画像があると判断した場合に,
(A)原稿の両面の画像を用紙の両面に形成し,その用紙の記憶媒体には,その原稿の記憶媒体のデータと同一のデータを書き込む,
(B)原稿の表面の画像と裏面の画像とをそれぞれ別の用紙に形成し,各用紙の記憶媒体には,その原稿の記憶媒体のデータと同一のデータを書き込む,
(C)原稿の表面の画像と裏面の画像とをそれぞれ別の用紙に形成し,各用紙の記憶媒体には,互いの記憶媒体に書き込まれたデータを補完することでその原稿の記憶媒体のデータと同一のデータとなるように書き込む,
の3つの動作態様(A),(B),(C)のうちのいずれかを実行するように前記形成手段および前記書込手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする複写機。
【請求項2】
請求項1に記載する複写機において,
前記制御手段は,少なくとも動作態様(A)の実行が可能であり,原稿の記憶媒体に所定の条件を満たす情報が記憶されている場合には,前記動作態様(A)を実行することを特徴とする複写機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する複写機において,
前記制御手段の前記動作態様(C)では,各用紙の記憶媒体に書き込まれるデータに重複がないことを特徴とする複写機。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する複写機において,
前記制御手段の前記動作態様(C)では,一方の用紙の記憶媒体には他方の用紙の記憶媒体の存在を示す情報を書き込むことを特徴とする複写機。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載する複写機において,
前記制御手段の前記動作態様(C)では,表面に対応するデータと裏面に対応するデータとを特定し,表面に対応するデータを表面の画像を形成した用紙の記憶媒体に書き込み,裏面に対応するデータを裏面の画像を形成した用紙の記憶媒体に書き込むことを特徴とする複写機。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載する複写機において,
前記制御手段は,前記動作態様(A),(B),(C)の少なくとも2つの動作態様が実行可能であり,どの動作態様を実行するかの選択肢を登録し,その登録内容に従って動作を行うことを特徴とする複写機。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載する複写機において,
原稿の画像の読み取り前にその原稿に記憶媒体があるか否かを判断し,記憶媒体がある場合にはその原稿の読取動作を両面読み取りに制限することを特徴とする複写機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−145853(P2010−145853A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324491(P2008−324491)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】