説明

複合エネルギ吸収体

【課題】費用対効果がより高くてより効果的なエネルギ吸収体の提供。
【解決手段】複合モジュール式エネルギ吸収アセンブリは、一つ又はそれ以上のγ構造体100を有する。γ構造体は、基部12’と、該基部内に画成された複数の凹部16’とを有する。凹部16’は、関連する基部12’から伸びる、少なくとも一つの壁部20’を有する。凹部16’のうちの少なくともいくつかは、その壁部が、衝撃力の主要入射成分と実質的に平行となるような向きに構成されている。壁部20’はつぶれる。複合アセンブリは、所定距離にわたってエネルギ吸収作用を最大化するために、該アセンブリに衝突する物体を減速させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合エネルギ吸収体に衝突する物体を減速させる複合エネルギ吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な用途において、機械的エネルギを吸収する多数の装置が開示されている。例としては、輸送コンテナで使用される保護梱包、緩衝ヘルメット、バンパーや車載用コンポーネントが挙げられる。理想的には、最も有効なエネルギ吸収体は、衝突する物体が上記吸収体の衝突面を変位させる長さにわたって、一定の抵抗力を働かせて該衝突する物体を減速させる。最も有効な曲線は、傾きが一定で0である。例えば、エラストマ固形体は、往々にしてバネとして作用するが、この場合には力−たわみ曲線は本質的に所定の傾斜を有する直線となる。多くの発泡材は同様の力−たわみ曲線を示すが、該曲線は一般的に一定の傾斜を有するものではない。
【0003】
「自動車用熱成形プラスチック製エネルギ吸収体」と題された米国特許第3,933,387号は、互いに結合しかつ支持するプラスチック製積層シートから伸びている同一の頭部が平坦になったピラミッドを構成するエネルギ吸収媒体に関する(同特許明細書中、第1カラム、7〜9行目、及び第3カラム、20〜22行目)。該明細書は、エネルギを吸収する吸収体を形成するために、複数のシートを互いに近接して積み重ねることを教示している。各シートのピラミッド体は、対向するシートに構成された四辺形に突出しており、また各ピラミッド体の縁部は、周囲の4つのピラミッド体の対応する縁部と接触している(同特許明細書中、第3カラム、32〜36行目)。
【0004】
「エネルギ吸収構造体」と題され、所有権者が同じの米国特許第5,700,545号は、たわむ長さにわたってほぼ一定の抵抗力を呈し、該抵抗力が正確に一定の場合には、エネルギを吸収する上で、理論的に最も有効になるエネルギ吸収装置を開示している。この特許の開示は、参照により本願明細書に組み込まれる。エネルギは、ストランド(strand)を構成する材料間に開口を有して、相互接続されたストランド材料から構成された格子によって吸収されるため、変形時には、該ストランド材料は少なくとも部分的に合体し、該開口は、少なくとも部分的に閉じる。
【0005】
所有権者が同じの米国特許第6,017,084号は、ほぼ全ての金属製構造体が、実質的に衝突面内にあるような方向に構成されているストランド(strand)構造体を開示している。金属製ストランドの帯状体は、衝突を受ける部材によって結合されている。これにより、アセンブリのコスト及び重量が低減される。
【0006】
所有権者が同じの米国特許第6,199,942号は、基部および/または該基部内に形成された凹部の構造体内で、金属製ストランドを組み合わせて溝の中に構成する構造を記載している。いずれかまたはどちらの構造も、衝撃からの保護を可能にする。
【0007】
自動車環境におけるこれら及びその他のエネルギ吸収部材は、乗車人を保護するために使用され、また、車内における頭部損傷保護のための規格(連邦自動車安全基準第201条(Federal Moter Vehicles Safty Standard 201)を満たすために様々な用途において使用できるがこの規格は参照により本明細書に組み込まれる。上記規格は、車内コンポーネントを、時速15マイルで衝突するときの10lbmの頭部保護試験によってテストしなければならないことを要求している。HIC(d)(head injury criteria(dummy))(頭部損傷基準値)の測定値は、FMVSS 201に記載された公式に従って計算される。HIC(d)の値は、1000を越えてはならない。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5731602号明細書
【特許文献2】米国特許第4631221号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の技術には、比較的高コストなこと、及びそれほど有効でないアプローチに由来する未解決の製造上の問題がある。射出成形、反応型成形、押出し成形、ブロー成形、ハニカム構造及び金属ストランドの製造は、比較的コストが高い。さらに、成形技術によっては非常に薄い壁厚を成形するのは困難なことがある。
【0010】
これら及び関連するアプローチの見地から、より軽量で、可能な限り短い衝突距離でより大きな衝撃エネルギを吸収できるものであって、有利な経済的条件で製造できるものに対する要望がある。
【0011】
また、特許文献1及び特許文献2に開示のエネルギ吸収部材は、いずれもエネルギー吸収部材の内部に内包された流体が外部からの衝撃を受けて小さな空隙を介して外部に移動するときに生ずる減衰力に依存するものであり、従って、エネルギー吸収体の構造が必然的に複雑になり、製造コストも大きくなる傾向にある。
【0012】
本発明の目的は、費用対効果がより高くてより効果的なエネルギ吸収体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、本願明細書中で「γ」(gamma)及び「δ」(delta)と称する、挿入構造体からなる複合モジュール式エネルギ吸収アセンブリを含む。該γ構造体は、基部と、該基部内に画成された凹部とを有する。該凹部は、基部から伸びる壁部を有する。該壁部は、変形の後でスプリングのように元に戻ることを可能にするために、一部塑性的に、かつ一部弾力的に潰れることがある。γ構造体は、所有権者が同じの米国特許第6,199,942号に記載された第2の構造体と同様である。
【0014】
上記δ構造体は、上記γ構造体と作用的に連結されるように配置する。該δ構造体は、交差してセルを画成する、相互接続されたストランドから構成される格子を有する。該セルのいくつかは、衝撃力と実質的に平行な平面内に向くように構成されている。γ構造体と同様に、上記セルはエネルギーを吸収するときには、一部塑性的に、かつ一部弾力的に潰れる。δ構造体によるエネルギ吸収作用は、所定の距離にわたって最大化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
まず図1から図3について説明すると、基部12と、該基部に関連し、アセンブリが変形できるように少なくとも一つのエネルギ吸収モジュール14とが示されている。図1から図3は、本願明細書中で「γ」構造11と称するものを示している(図10から図12)。各エネルギ吸収モジュール14は、上記基部に画成され、また上記基部と一体化している、複数の凹部16を有する。上記凹部のうちの少なくともいくつかは、実質的に平坦、またはドーム状の床部18を有し、少なくとも一つの壁部が該床部から基部へ伸びている。床部18と上記少なくとも一つの壁部との間には、中間セグメント22が挿入されている。該中間セグメントは、平均半径Rを有し、あるいは、円形でなくてもよい(本願明細書中では「曲線をなす」という)。モジュール式エネルギ吸収アセンブリ10は、多くの用途において、裏返し状態でも十分に機能することは明白である。
【0016】
上記凹部のうちの少なくともいくつかは、その床部が、衝撃力の主要入射成分24(図3)と実質的に直交するような方向に構成されている。1つの凹部を取って見ると、その壁部は、衝撃力の主要入射成分に対して角度αをなして傾斜している。角度αは、該壁部により所定の距離にわたってエネルギ吸収作用を最大化するために、0から45度の間の範囲になるように選定される。上記壁部は、エネルギ吸収時に、少なくとも一部がつぶれ、また、凹部のうちの少なくともいくつかは、少なくとも一部が圧縮され、または破壊される場合がある。隣り同士の凹部によって提供される相互の支持から生ずる調和した方法で、アセンブリは、該アセンブリに対して衝撃力を持って衝突する物体を減速させるように機能する。壁部がつぶれた場合には、一部の該変形は弾性的に生じ、それにより、初期の変形の後で、少なくとも部分的にはスプリングのように元に戻ること(以下、「スプリングバック」)を可能にする。
【0017】
即ち、本発明は、凹部が形成されたシート材を包含する。該シートは、凹部が形成された後も連続している。好ましくは、凹部は、基部及び該凹部が形成される元となる基部及びシートと一体化している。熱成形が製造法方として選択された場合、壁部の厚さは、基部に近い方を所定の凹部の床部に近い方よりも小さくすることができることが認識されよう。
【0018】
引き続き図3について説明すると、γ構造体の凹部18は、距離Sだけ離間している仮想中心線Cを有する。図3の実施形態に示す凹部の平均の深さをDで示す。符号dは、隣り合った凹部と連通する溝26の平均深さを示す。また、凹部は、基部又は基底面12で測定される凹部の直径を示す符号Wで特徴づけられる。図示のように、基部は、符号Tで示される厚さを有する。他のデザイン上の変数は、壁部20と溝26との結合部を特徴づける半径r(図3)である。
【0019】
図1から図3においては、壁部20が所定の凹部の床部18によって結合されていると共に、隣り合った凹部の壁部が、基部12又は溝26によって結合されていることに注意されたい。
【0020】
引き続き図3について説明すると、線24は衝撃力の主要入射成分を示し、これに対して、壁部20が角度αで傾斜する(ただし、αは1から45度の範囲にある)。作用時には、壁部は、少なくとも部分的につぶれる(あるいは、破壊により構造的一体性を失う)。凹部のうちのいくつか又は全ては、エネルギ吸収作用時に、一部的に弾性的に圧縮されることで、衝突する物体を減速させる。
【0021】
好適な実施形態においては、少なくとも一つの壁部は、通常、円錐台を構成するように形成され、また、中間部分は、約0.5mmの平均半径Rを有する。
【0022】
衝撃試験は、良好な結果を示したが、この場合、DとWの比は、約0.5から0.3の間であり、WとSの比は、約0.2から0.7の間である。凹部が、深さDと側部の厚さTの比が約4から20の間で特徴づけられる場合も、良好な結果が得られた。特定の用途におけるエネルギ吸収作用に応じて、溝dの深さは、凹部の深さDまで可能である。
【0023】
様々な用途において、所定の形状の凹部の場合に、凹部間の間隔Sが、特定の変形特性に影響を及ぼすことが実験により示されている。好ましくは、凹部のうちの少なくともいくつかの仮想中心Cが、衝突物体の方向から見た場合に、正三角形の頂点にある。
【0024】
次に図4、5について説明すると、溝ではなく、構造補強リブが凹部のうちの少なくともいくつかを結合している本発明のγ構造体の別の実施形態が示されている。
【0025】
好適な実施形態においては、凹部は、種々の深さd(図3)及び形状を有する溝26によって結合されている。一般に、溝26は、その深さdが基部12の下に構成された床部18の深さDよりも小さくなるように形成されている。
【0026】
次に、図6、7について説明すると、本発明のγ構造体の第2の別の実施形態が示されている。この実施形態においては、モジュール式エネルギ吸収アセンブリは、互いに角度βで傾斜している2つ又はそれ以上のモジュール30、32を備える。モジュール32において、凹部20’は、(モジュール30、32に関連する)軸C’−C’と軸C−Cとが平行であるように、基部12に対して直交して伸びる仮想線C’−C’によって特徴づけられる。図6、7を見ると、角度βが本質的に交差面の勾配を規定していることが認識されよう。しかし、実際には、交差するモジュール30、32の基部は、湾曲線又は結合線に沿って連続的に交差しなくてもよく、それよりも、曲線をなす交差セグメント(図示せず)によって結合することができる。モジュール32が、モジュール30の基部12の一部を折り曲げることによって軸C’−C’が軸C−Cに対して傾斜するように形成することができるということも認識できる。
【0027】
上記凹部は、円錐台、楕円体の一部、双曲面の一部あるいは同様の構造として形成することができ、また、所定のエネルギ吸収モジュール内に前記構造が混じり合った状態で構成することができる。別法として、凹部のうちの少なくともいくつかは、カップ、円錐形、円錐台状体、多面体、四面体、プリズム、平行六面体として形成される。
【0028】
引き続き図7について説明すると、(左側の)第1のモジュールにおいて、角度αは、代表的な凹部の中心線Cに対する壁部20の傾斜角度を示す。第2のモジュールにおいて、角度γは、衝撃力24’の主要入射成分の方向に対する壁部20’の傾斜を示す。
【0029】
本開示の観点から、凹部の深さD、溝の深さd、凹部間の間隔S、壁部の傾斜α、γ、モジュール間の勾配β及び凹部の形状の適切な組合せにより、開示したモジュール式エネルギ吸収アセンブリのエネルギ吸収特性を、特定の用途の要求に合わせるように構成することができることは明らかである。
【0030】
次に、図8、9について説明すると、本発明のγ構造体の別の実施形態が示されているが、この場合にはモジュール式エネルギ吸収アセンブリ10が、基部12の全域で不規則な中心線の間の距離を含む間隔で配置された凹部を含む。図9においては、凹部の深さが、符号D’、D’’、D’’’などで示されている。凹部間の間隔は、符号S’、S’’、S’’’などで示されている。カスタマイズされた傾斜角度は、符号α’、α’’で示されている。
【0031】
さらに別の実施形態では、ワイヤ、チューブ等を収容することができるように、かつ上記アセンブリの側に一つ又はそれ以上の流体導管を設けることができるように、基部内にほぼ画成された一つ又はそれ以上のトラフ(trough)又はキャッチ(止め具)(図示せず)の形成を包含する。
【0032】
FMVSS 201の式に従って算出されたHIC(d)の値が1000を越えないことを義務づける量的な容認基準については先立って説明してきた。以下の表は、開示した発明のHIC(d)の値と競合製品が示す値とを比較したものである。
【0033】

【0034】
エネルギ吸収アセンブリを取付ける基盤又は構造の外形の突然の変化に対応できるように、隣り合うエネルギ吸収モジュールの間に一つ又はそれ以上の折り曲げ線を形成することについては上述した。このようにする目的は、エネルギ吸収モジュールの仮想中心線を衝撃応答面に対して実質的に垂直に指向させるためである。衝突環境により、それらの軸は、基部(基底面)に沿って、あるいは、凹部及び/又はリブを結合する仮想線に沿って伸びる。
【0035】
本発明に開示した実施形態を製造する一つの好適な方法は、熱可塑性シートから始まる熱成形プロセスを用いることである。多くの種類の熱可塑性樹脂を、様々なサイズ及び厚さで用いることができる。開示した熱可塑性プロセスにおいて使用する適切な材料としては、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、アセテート、ポリカーボネート、ポリスチレン、(低密度又は高密度の)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)が挙げられる。その他の適当な材料としては、条件に合った凝固範囲及び軟化特性を有する熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0036】
シートの厚さTは、熱成形プロセス工程及びそれによって形成されるモジュール式エネルギ吸収アセンブリだけでなく、製造コストにも著しく影響を及ぼす。一般に、軽く、薄い厚さの合成樹脂を使用した場合、本願明細書に開示したタイプのアセンブリを製造するときには、要求される材料はより少なくなる。逆に、重い材料を使用すると、より多くの材料が必要となりコストが増加する。他の条件が同じならば、本願明細書に記載した設計要素の適切な選択により、特定の作用環境の要求に合わせたエネルギ吸収アセンブリを製造すると共に、製造コストを下げることができる。
【0037】
熱成形は、壁部の厚さの比較的薄いγ構造体の形成を可能にする。射出成形等の他の方法によって薄い壁部を形成するには、加熱されたときの比較的高い流動性(以下、メルト・フロー)熱い金型(以下、ホット・モールド)、長い凝固時間等を有するポリマーを使用することになり製造コストを上昇させる。
【0038】
従来の熱成形技術の有用な概要は、J.Florianの「Practical Thermo Forming」第2版の2〜5章で見ることができるが、これは参照により本願明細書に組み込まれる。
【0039】
好適な実施形態においては、複合モジュール式エネルギ吸収アセンブリは、一つ又はそれ以上のγ構造体100(図10)を含む。γ構造体のうちの少なくとも一つは、基部12’を有する。基部12’には、複数の凹部16’が画成されている。凹部16’のうちの少なくともいくつかは、対応する基部12’から伸びる、一つ又はそれ以上の壁部20’を有する。凹部16’のうちのいくつか又は全ては、開口部(図示せず)を画成したりまたは画成しない床部18’を有する。
【0040】
図11、12に最も良く示されているように一つまたはそれ以上のδ構造体200が、γ構造体100のうちの少なくともいくつかと作用するように係合して配置されている。一つの実施形態においては、γ構造体200のうちの少なくともいくつかは、相互接続されたストランドからなる格子210を有する。該ストランド(strand)は、複数のセル220を画成するように交差する。該セルのうちの少なくともいくつかは、所定の距離にわたってエネルギ吸収作用を最大化するために、各セルの面が衝撃力F(図10)と実質的に平行になるように指向されている。上記格子は、部分的に可塑的につぶれ、また部分的に弾性的に復元する。セル220のうちの少なくともいくつかは、エネルギ吸収時に部分的に閉じる。
【0041】
互いに間に挟まれるγ構造体とδ構造体の多数の組合せが、開示した複合モジュール式エネルギ吸収アセンブリのエネルギ吸収特性を得るのに有効であることが認識されよう。例えば、積み重ねの組合せとしては、一つまたはそれ以上のγ構造体を一つまたはそれ以上のδ構造体と互いに挟んだもの、γ構造体のみのもの、あるいはδ構造体のみのものが挙げられる。
【0042】
したがって、開示した複合モジュール式エネルギ吸収アセンブリは、単一の構造を用いたものよりも、より有効なエネルギ吸収体を提供する。
【0043】
いくつかの実施形態においては、δ構造体は、所有権者が同じの米国特許第6,199,942号に記載された第1の構造に似ている。開示した発明の範囲に含まれる別の実施形態においては、セルの格子は、凹凸状、螺旋状、ジグザグ状(所有権者が同じの米国特許第6,199,942号に記載(図1))、あるいは、有効なエネルギ吸収作用という目的を達成するのに適したその他の形態に形成することができる。
【0044】
一つの実施形態においては、複合モジュール式エネルギ吸収アセンブリは、γ構造体とδ構造体との間に挟まれている音響緩衝部300を有する。
【0045】
別の実施形態においては、突出部310(図10)が、γ構造体100の一つまたはそれ以上の基部から伸びている。各突出部310は、γ構造及びδ構造体のうちの少なくともいくつかの間に挟まれており、騒音を低減し、かつクッションの役割を実現するように機能する。別法として、一つまたはそれ以上の突出部310は、γ構造体100と、複合モジュール式エネルギ吸収アセンブリが作用的に係合する支持構造又は基盤(図示せず)との間に挟まれている。
【0046】
引き続き図13から図15について説明すると、一つ又はそれ以上のγ構造体100は、隣り合ったγ構造体の基部12’が互いに近接して並列されるように積み重ねることができることが認識されよう。図13は部分断面図であり、2つのγ構造体の隣接する基部12’が互いに作用し合うように係合して配置され、かつ関連する床部18’が離間している。
【0047】
図14は、入れ子状に重なったγ構造体の断面図であり、隣接するγ構造体の床部18’が近接して並列しており、また関連する基部12’も近接して並列している。
【0048】
状況に応じて、モジュール式エネルギ吸収アセンブリは、図15に示すように、γ構造体の床部18’の上面が、隣接する、裏返されたγ構造体の床部18’の上面と近接して並列するように積み重ねられた、一つ又はそれ以上のγ構造体によって構成することができる。
【0049】
本発明のさらに別の実施形態においては、凹部のうちの少なくともいくつかには、少なくとも部分的に、空気以外の同質又は異質の媒質が充填されている。例えば、凹部のうちのいくつかには、少なくとも部分的に、ペレットが充填されている。好ましくは、このようなペレット又はビーズは、樹脂、又はガラス、あるいはその他のセラミックスで形成することができる。凹部のうちのいくつかに少なくとも部分的に充填される媒質のその他の実例としては、リブ又は溝、発泡体、及びその他の流体等が挙げられる。このような構造は、つぶれるときの動きを有利になるように変化させると共に、複合モジュール式エネルギ吸収アセンブリの構造を補強することにもなる。
【0050】
別の実施形態においては、上記流体は、凹部内に収容される袋の中の空気も含まれる。別法として、凹部自体が流体を含むように構成してもよい。
【0051】
上述したように、図13から図15は、積み重ねられた円錐体の別の形態を示す。一連の実験においては、総高約40mmの吸収体の種々の形態の性能を調べた。第一の目的は、2つの積み重ねられた20mmの実例の様々な積み重ね方の相対的衝撃性能を決定することであった。図13に、その一つの積み重ね方を示す。該実施形態は、平面を見たときに円錐体が直列又はずれた状態で、一列に配置されている。(図14の実施例と同様の)40mmのサンドイッチ状の実施例の性能と、(図4の実施例と同様の)40mmの高さの円錐体の実施例の性能を比較した。図15に示すように、γ構造体の床部の上面が、隣接する、裏返されたγ構造体の床部の上面と近接して並列されるように、2つのγ構造体が積み重ねられた状態で、2つのγ構造体の性能を観察した。
【0052】
それぞれの形状の性能を評価するために、時速15マイルで衝突する制限付きの頭部保護試験での落下塔試験によって、頭部損傷基準値(HIC(d))を判定した。その結果、円錐体を互いに反対向きに向き合わせた2つの積み重ねた20mmの高さの実施例(図13)が最高の性能であることを示した。サンドイッチ状の実施例(図14)は良好に機能したが、性能は最高ではなかった。
【0053】
この実験や、他の実験で判ったことは、HIC(d)を最適化するためには、特に、構造体は、円錐体が互いに反対向きに積み重ねられ、かつ略等しい厚さを有していなければならないことが示された。
【0054】
本発明の実施形態を図示及び説明してきたが、それらの実施形態が、本発明の可能な全ての構成を図示及び説明するものではない。本願明細書で用いた用語は、限定のためのものではなく、説明のための用語であり、本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、種々の変更が可能であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に従って製造されたモジュール式エネルギ吸収アセンブリの部 分斜視図である。
【図2】図1の底面図である。
【図3】図2の線3−3に沿った、図2に示された本発明の断面図である。
【図4】開示した発明の別の実施形態の部分斜視図である。
【図5】図4の線5−5に沿った、図4に示された実施形態の断面図である。
【図6】開示した発明の第2の別の実施形態の部分斜視図である。
【図7】図6の実施形態の線7−7に沿った断面図である。
【図8】開示した発明の第3の別の実施形態の部分斜視図である。
【図9】図8に示された実施形態の線9−9に沿った断面図である。
【図10】挿入されたγ構造体及びδ構造体を含む複合モジュール式エネルギ吸収アセンブリの端面図である。
【図11】図10の上面図である。
【図12】図11の底面図である。
【図13】2つのγ構造体の隣り合った基部が互いに作用的に連結され、かつ対応する床部が離間している、本発明の別の実施形態の部分断面図である。
【図14】隣り同士のγ構造体の床部が近接して並列し、かつ対応する基部が近接して並列している、入れ子状に重ねられたγ構造体の部分断面図である。
【図15】隣り同士のγ構造体の床部が近接して並列している、さらに別の実施形態の部分断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のγ構造体であって、
該一対のγ構造体の少なくとも一つが、基部と、前記基部内に画成された複数の凹部であって、該複数の凹部のうちの少なくともいくつかが、床部と、該基部と該床部との間に延在する少なくとも一つの壁部を有することを特徴とし、
前記複数の凹部のうちの少なくともいくつかが、その壁部が衝撃力の主要入射成分に対して角度αの傾斜を有するように配向されており、前記αが0から45度の間であることにより、衝撃力の吸収の要因が、主に、前記壁部の少なくとも一部が凹部内の空気圧の抵抗力が伴わない方法で少なくとも部分的に崩壊することに基づくことを特徴とし、
更に、前記基部で測定した前記凹部の直径(W)と前記凹部の平均の深さ(D)との比率(D/W)が0.3〜0.5の範囲に入ることを特徴とする一対のγ構造体
を備える複合モジュール式エネルギ吸収アセンブリ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2009−257584(P2009−257584A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68720(P2009−68720)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【分割の表示】特願2003−505043(P2003−505043)の分割
【原出願日】平成14年6月19日(2002.6.19)
【出願人】(503026347)オークウッド エネルギー マネージメント インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】