説明

複合ケーブル

【課題】一括被覆部材の収縮、膨張によって、コネクタから端末が外れてしまうことと、光ファイバの曲げ歪みの発生との両方を抑制することができる複合ケーブルを得る。
【解決手段】導体上に絶縁被覆を有する絶縁心線を複数本撚り合わせてなる撚線と、複数本の光ファイバを並列に配置させたテープ状光ファイバとが、一括被覆部材によって一括被覆されている複合ケーブルにおいて、前記一括被覆部材の幅方向に沿って並列に配置された前記撚線と前記テープ状光ファイバとの外側に、前記一括被覆部材の収縮、膨張を抑止させる抑止体が設けられており、前記抑止体と前記一括被覆部材との間に、前記抑止体を前記一括被覆部材に密着させる被覆部材が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のメタル線と光ファイバとを有する複合ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータや液晶ディスプレイなどの機器間において、例えば写真や動画などといった映像信号を劣化させずに大容量、高速度で伝送させるために、デジタル信号にて伝送することが行われている。
【0003】
このような機器間には、例えば、電源供給や制御信号の伝送などに用いられる絶縁心線(メタル線)と、デジタル信号などの大容量の信号を高速度で伝送させるための光ファイバとを複数有し、これら複数のメタル線、光ファイバの周囲を一括被覆部材にて一括被覆した複合ケーブルが用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
図9に、複合ケーブルの端末をコネクタへ固定させた状態の一例を示す。
【0005】
上述のような複合ケーブルは、例えば図9に示すように、複合ケーブル100の端末がコネクタ101の内部に固定されて、コネクタ101を介して機器に接続される。複合ケーブル100の先端部は、一括被覆部材102が除去されており、この一括被覆部材102が除去された部分の光ファイバ106、および導体に絶縁被覆が施されてなるメタル線107は、コネクタ101に設けられた光ファイバ固定部材105およびメタル線固定部材104によってコネクタ101にそれぞれ固定される。また、一括被覆部材102は、コネクタ101に設けられた一括被覆部材固定部材103によってコネクタ101に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−310197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
複合ケーブルを構成するメタル線、光ファイバ、一括被覆部材は、各々の線膨張係数が異なる。すなわち、一括被覆部材の線膨張係数が光ファイバ、メタル線の線膨張係数よりも大きいため、使用環境の温度が変化した場合、一括被覆部材が光ファイバ、メタル線よりも収縮、あるいは膨張する度合が大きくなる。
【0008】
このため、一括被覆部材の収縮、膨張によって、光ファイバに曲げ歪みが発生してしまうおそれや、コネクタ内部の固定部材から複合ケーブルの端末が外れてしまうおそれがある。とりわけ、光ファイバに曲げ歪みが発生した場合、光ファイバが断線したり、曲げ歪みによる伝送損失が発生してしまう。
【0009】
そこで本発明は、一括被覆部材の収縮、膨張によって、コネクタから端末が外れてしまうことと、光ファイバの曲げ歪みの発生との両方を抑制することができる複合ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、
導体上に絶縁被覆を有する絶縁心線を複数本撚り合わせてなる撚線と、複数本の光ファイバを並列に配置させたテープ状光ファイバとが、一括被覆部材によって一括被覆されている複合ケーブルにおいて、
前記一括被覆部材の幅方向に沿って並列に配置された前記撚線と前記テープ状光ファイバとの外側に、前記一括被覆部材の収縮、膨張を抑止させる抑止体が設けられており、
前記抑止体と前記一括被覆部材との間に、前記抑止体を前記一括被覆部材に密着させる被覆部材が設けられていることを特徴とする複合ケーブルを提供する。
【0011】
前記抑止体は、その表面に凹凸形状を有していてもよい。
【0012】
前記凹凸形状は、前記抑止体の長手方向にわたって交互に形成された大径部と小径部であってもよい。
【0013】
前記凹凸形状は、前記抑止体の長手方向にわたって形成された螺旋状の溝であってもよい。
【0014】
前記テープ状光ファイバの周囲に緩衝材を有していてもよい。
【0015】
前記一括被覆部材は、該一括被覆部材の厚さ方向に位置して対向する一対の側面の少なくとも一方の側面に凹状の溝からなる凹部が形成されていてもよい。
【0016】
前記凹部は、該凹部の底面が前記テープ状光ファイバに臨む位置に形成されていてもよい。
【0017】
前記撚線は、前記テープ状光ファイバを中心として、該テープ状光ファイバの両側に少なくとも1つ配置されていてもよい。
【0018】
複数のテープ状光ファイバを前記一括被覆部材の幅方向および/または厚さ方向に配置させてなるテープ状光ファイバ群と、複数の撚線を前記一括被覆部材の幅方向に並列させて配置させてなる撚線群とが、前記一括被覆部材の幅方向に並列されていてもよい。
【0019】
前記テープ状光ファイバ群は、その厚さが前記撚線の外径よりも小さくてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、一括被覆部材の収縮、膨張によって、コネクタから端末が外れてしまうことと、光ファイバの曲げ歪みの発生との両方を抑制することができる複合ケーブルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る複合ケーブルの断面図である。
【図2】(a)、(b)は、図1の複合ケーブルを固定面上に敷設したときの状態を示す図である。
【図3】図1の複合ケーブルを複数積み重ねたときの状態を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る複合ケーブルの断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る複合ケーブルの断面図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る複合ケーブルの断面斜視図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係る複合ケーブルの断面斜視図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態に係る複合ケーブルの断面図である。
【図9】複合ケーブルの端末をコネクタへ固定させた状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
[第1の実施の形態]
【0023】
本発明の第1の実施の形態を図1に示す。図1において、本発明に係る複合ケーブル1は、導体上に絶縁被覆を有する絶縁心線(メタル線)2aを複数本(図1では7本)撚り合わせてなる撚線2と、石英部材などからなる複数本(図1では4本)の光ファイバ3aを平行(並列)に配置させたテープ状光ファイバ3と、抑止体6とが、一括被覆部材5により一括被覆されて構成される。
【0024】
撚線2と、テープ状光ファイバ3とは、光ファイバ3aを並列させた方向(図1で断面視左右方向)に沿って平行(並列)に配設される。なお、撚線2は、例えば電源供給や制御信号の伝送などに用いられ、テープ状光ファイバ3は、例えばデジタル信号などの大容量の信号を高速度で伝送させるために用いられる。また、撚線2には、必要に応じて接地線(アース線)を含んでいてもよい。
【0025】
そして、本実施の形態においては、図1に示すように、一括被覆部材5の幅方向に沿って並列に配置された撚線2とテープ状光ファイバ3との外側に、一括被覆部材5の収縮、膨張を抑止させる抑止体6が設けられており、抑止体6と一括被覆部材5との間に、抑止体6を一括被覆部材5に密着させる被覆部材7が設けられている。
【0026】
なお、上記「幅方向」とは、複合ケーブルの断面において、任意の部材の断面の長手方向のことであり、「厚さ方向」とは、複合ケーブルの断面において、任意の部材の断面の短手方向のことであり、例えば、「一括被覆部材の幅方向」とは、複合ケーブルの断面における一括被覆部材の長手方向のことである。
(抑止体)
【0027】
複合ケーブル1には、撚線2とテープ状光ファイバ3を結ぶ軸線上、すなわち撚線2とテープ状光ファイバ3との並列方向(図1で断面視左右方向)上であって、撚線2および/またはテープ状光ファイバ3よりも外側の一括被覆部材5の内部に、金属線からなり、一括被覆部材5の収縮、膨張を抑止するための抑止体6が設けられている。抑止体6は、図1では一例として撚線2の断面視左方に1つと、テープ状光ファイバ3の断面視右方に1つの合計2つが配置されている。抑止体6は、撚線2および/またはテープ状光ファイバ3の外側に少なくとも1つ設けられることが好ましい。
【0028】
抑止体6は金属線から構成され、該抑止体6の周囲には被覆部材7が形成されている。抑止体6と被覆部材7とは、一括被覆部材5が温度変化により収縮、膨張する際に発生する力よりも強い接着力を持つ接着手段により接着される。そして、被覆部材7は、一括被覆部材5と同じ材料から構成されており、周知の方法を用いて一括被覆部材5を押出被覆する際に、一括被覆部材5の熱により被覆部材7は一括被覆部材5に溶着する。これにより、抑止体6は、被覆部材7を介して一括被覆部材5と強固に接合される。
【0029】
なお、被覆部材7は、抑止体6と一括被覆部材5との間に設けられているものであれば、抑止体6の周囲全体を被覆するように設けられている場合に限らず、抑止体6の周囲の一部を被覆するように設けられているものであってもよい。
【0030】
金属線から構成された抑止体6の線膨張係数は、例えば10〜30×10−6/℃と、PE等の材料で構成された一括被覆部材5の線膨張係数100〜200×10−6/℃と比較して著しく小さい。従って、複合ケーブル1の使用環境温度が変化し、特に低温環境時に一括被覆部材5が収縮しようとしても、抑止体6が被覆部材7を介して一括被覆部材5と強固に接合しているため、一括被覆部材5が抑止体6の収縮量を超えて収縮しなくなり、一括被覆部材5が収縮することによって光ファイバ3aへ曲げが加わるのを抑止することができる。
【0031】
石英から構成される光ファイバ3aの線膨張係数は、例えば0.4〜0.55×10−6/℃であり、100〜200×10−6/℃である一括被覆部材5の線膨張係数と光ファイバ3aの線膨張係数との差よりも、10〜30×10−6/℃である金属線から構成された抑止体6の線膨張係数と光ファイバ3aの線膨張係数との差の方が小さい。よって、一括被覆部材5の使用環境温度の変化に基づく収縮、膨張が、金属線から構成された抑止体6の収縮量、或いは膨張量に抑えられることによって、一括被覆部材5の収縮、膨張に起因する光ファイバ3aへの曲げ歪みの発生、あるいは一括被覆部材5の端面から光ファイバ3aが突きだして、光ファイバ3aが機器との接続部に設けられた固定部材から外れてしまうなどの問題を防ぐことができる。とりわけ、光ファイバ3aへの曲げ歪の発生を防ぐことにより、該曲げ歪に起因する機械的歪みが引き起こす光ファイバ3aの断線、あるいはマクロベンドによる伝送損失に起因する信号劣化などの問題を回避することが可能となるものである。
【0032】
このように、本実施の形態に係る複合ケーブル1では、一括被覆部材5の幅方向に並列に配置された撚線2とテープ状光ファイバ3との外側に抑止体6を設け、さらに、抑止体6と一括被覆部材5との間に被覆部材7を設けたことにより、撚線2およびテープ状光ファイバ3と一括被覆部材5との密着力を高めなくとも、温度変化による一括被覆部材5の収縮、膨張によってコネクタから端末が外れてしまうことと、光ファイバの曲げ歪みの発生との両方を抑制することが可能となる。
また、撚線2やテープ状光ファイバ3と一括被覆部材5との密着力を高めた場合、光ファイバ3aやメタル線2aを端末部でコネクタ等に取り付ける端末加工の際に、一括被覆部材5から光ファイバ3a、メタル線2aを分離することが難しく、作業性が悪くなるなどの問題を招くおそれがあるが、本実施の形態においては、撚線2およびテープ状光ファイバ3と一括被覆部材5との密着力を高める必要が無いため、一括被覆部材5から光ファイバ3a、メタル線2aを容易に分離することができる。すなわち、温度変化による一括被覆部材5の収縮、膨張に起因する伝送損失の増加を抑制しつつ、光ファイバ3aやメタル線2aを端末部でコネクタに取付ける端末加工の際の作業性の向上を図ることができるという効果も得られる。
(凹部)
【0033】
図1に示すように、一括被覆部材5には、該一括被覆部材5の厚さ方向に位置して対向する一対の側面の少なくとも一方の側面に、凹状の溝からなる凹部8、8が形成されている。
【0034】
凹部8、8は、該凹部の底面がテープ状光ファイバ3に臨む位置に形成されていることが好ましい。
【0035】
このように、凹部8、8が一括被覆部材5の表面に形成されていることにより、複合ケーブル1の外観を目視しただけでテープ状光ファイバ3の位置を特定することができるという効果が得られる。また、複合ケーブル1に、撚線2とテープ状光ファイバ3を結ぶ軸線と垂直な方向から側圧が作用した場合、すなわち、一括被覆部材5の厚さ方向に位置して対向する一対の側面の少なくとも一方の側面に側圧が加わった場合に、該側圧によってテープ状光ファイバ3に曲げが発生するのを防止でき、側圧に起因する伝送損失の増加を抑制出来るという効果が得られる。
【0036】
本発明の実施の形態において凹部8、8の形成される範囲は特に限定されるものではないが、上記効果を鑑みると、テープ状光ファイバ3の幅と同じか、それを超える幅であることが望ましい。
【0037】
図1の複合ケーブルを固定面上に敷設したときの状態を図2に示す。本実施の形態に係る複合ケーブル1を床面や壁面等の固定面に固定する場合に、図2(a)に示すように、複合ケーブル1を構成する一括被覆部材5の表面に形成された凹部8の形状に合わせて形成された固定具(固定部材)を用いて固定することにより、複合ケーブル1の位置決めが容易となり、取扱性が向上する。
【0038】
また、設置場所において作業空間の制約などにより、図2(a)に示すような、複合ケーブル1を包み込む形式の固定具が採用できない場合には、図2(b)に示すように、本実施の形態に係る複合ケーブル1と、固定面である床面あるいは壁面との間に配置され、一括被覆部材5の表面に形成された凹部8の形状に合わせて形成された凸状突起部を有する固定具(固定部材)を用いて固定することができる。当該凸状突起部を有する固定具としては、凸状突起部を形成した両面テープ等を用いることができる。このように、設置場所において作業空間に制約があったとしても、複合ケーブル1を設置する位置に前記凸状突起部を有する固定具を配置し、当該凸状突起部に凹部8を嵌合させることで複合ケーブル1を設置することが可能となり、複合ケーブル1の位置決めが容易となり、取扱性がさらに向上する。
【0039】
図1の複合ケーブルを複数積み重ねたときの状態を図3に示す。図3において、本発明の第1の実施の形態に係る複合ケーブル1が複数本重ねて配置されている。ここで、一括被覆部材5の凹部8が形成された側面において、凹部8は、凹部8が形成されていない部分と同じか、それよりも大きい幅を有するように形成されている。このように、凹部8を、凹部8が形成されていない部分と同じか、それよりも大きい幅で形成することにより、図3に示すように複数の複合ケーブル1をそれぞれ嵌合させ、結合紐などの特別な部材を用いることなく一体に配置することが可能となる。
【0040】
本発明では凹部8により、複合ケーブル1の外観からテープ状光ファイバ3の位置を特定することができることや、複合ケーブル1に作用する側圧に起因する伝送損失の増加を抑制出来ることのみならず、凹部8の形状により、複合ケーブル1敷設時の位置決めが容易となり、取扱性が向上するという効果を得ることができる。
【0041】
なお、上述の抑止体6、凹部8などについては、本発明の第1の実施の形態に基づいて説明したが、第1の実施の形態に限られず、後述の全ての実施の形態に適用できるものである。
[第2の実施の形態]
【0042】
本発明の第2の実施の形態を図4に示す。図4(a)に示す複合ケーブル21は、撚線2及びテープ状光ファイバ3の構成が図1に示す第1の実施の形態と相違する。なお、図1に示す本発明の第1の実施の形態と共通する部分の説明は省略し、異なっている部分のみ図4に基づいて説明する。
【0043】
図4(a)に示す複合ケーブル21は、4本の光ファイバ3aを平行に配置したテープ状光ファイバ3を中心に、該テープ状光ファイバ3の幅方向の両側に撚線2が1つずつ、合計2つ配置された構造になっている。
【0044】
本実施の形態における一括被覆部材5には、テープ状光ファイバ3に臨む位置に、該テープ状光ファイバ3の幅を超える幅をもって凹部8、8が形成されることが好ましい。
【0045】
このように、本発明の実施の形態においては、テープ状光ファイバ3を中心として、その両側にそれぞれ1つ又は複数の撚線2を配置した構成としてもよい。
【0046】
なお、本実施の形態においては、テープ状光ファイバ3を中心として、撚線2がテープ状光ファイバ3の両側に少なくとも1つずつ配置されていればよいので、例えば図4(b)に示すように、テープ状光ファイバ3の両側に撚線2が複数配置される構成としてもよい。また、片側の撚線2が複数で、もう片側が単数(1本)という構成であってもよい。
【0047】
このように、テープ状光ファイバ3を中心として撚線2がテープ状光ファイバ3の両側に少なくとも1つずつ配置されていることにより、一括被覆部材5に形成された凹部8による作用、効果をより効果的に得ることができる。
[第3の実施の形態]
【0048】
本発明の第3の実施の形態を図5に示す。図5に示す複合ケーブル31は、図1に示す複合ケーブル1において、撚線2とテープ状光ファイバ3とをそれぞれ複数配置させたものである。撚線2、及びテープ状光ファイバ3の配置については、例えば図5に示すように、2つのテープ状光ファイバ3を一括被覆部材5の幅方向に並列に配置させ、さらにこれと同様に配置させた2つのテープ状光ファイバ3を一括被覆部材5の厚さ方向に積層させてなるテープ状光ファイバ群と、2つの撚線2を一括被覆部材5の幅方向に並列させて配置させてなる撚線群とを、一括被覆部材5の幅方向に並列させたものが挙げられるが、これに限定されるものではなく、敷設される場所、用途等に応じて撚線2、及びテープ状光ファイバ3の本数、配置位置等は適宜変更することができる。
【0049】
本実施の形態においても、一括被覆部材5には、テープ状光ファイバ3に臨む位置に、該テープ状光ファイバ3の幅を超える幅をもって凹部8、8が形成されることが好ましい。
【0050】
この場合には、テープ状光ファイバ群の厚さは、撚線2の外径dを超えない範囲とすることが望ましい。これは、複合ケーブル31に側圧が作用した場合、テープ状光ファイバ群の厚さが撚線2の外径dを超えて設定されると、該側圧が撚線2に到達する前にテープ状光ファイバ3に作用してしまい、該側圧に起因する光ファイバ3aの伝送損失の増加などの影響を受けてしまうからである。
【0051】
従って、本実施の形態のように、テープ状光ファイバ3と撚線2をそれぞれ複数配置する構成をとる場合には、テープ状光ファイバ群の厚さが撚線2の外径dを超えないよう、一括被覆部材5に形成される凹部8の深さは、一括被覆部材5の厚さ方向において、少なくとも撚線外周端面2bに達する位置まで形成されることが望ましい。
[第4の実施の形態]
【0052】
本発明の第4の実施の形態を図6に示す。図6に示す複合ケーブル41は、1つのテープ状光ファイバ3と1つの撚線2とを備え、テープ状光ファイバ3の位置に対応して一括被覆部材5に凹部8、8が形成される点は本発明の第1の実施の形態と同様であるが、本実施の形態においては抑止体の構成が異なる。
【0053】
すなわち、本実施の形態においては、抑止体12は、その表面が粗面加工されたことによって、凹凸形状を有する。凹凸形状として大径部121と小径部122とが交互に形成された金属線から構成される。当該構成により、一括被覆部材5は大径部121と小径部122とから形成される段差部分に入り込む。これにより、抑止体12と一括被覆部材5とを強固に密着させることができる。また、該段差部分に入り込んだ一括被覆部材5が、一括被覆部材5の複合ケーブル41長手方向の収縮、膨張を抑制するための抵抗となる。このため、温度変化による一括被覆部材5の収縮、膨張を、前記大径部121と前記小径部122とを備えた前記抑止体6により抑制することができる。
【0054】
なお、ここでは抑止体12の表面が粗面加工されることによって凹凸形状を有する例で説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、各々別体の大径部121と小径部122とを交互につなぎ合わせることによって、表面に凹凸形状を有する抑止体12が形成されていてもよい。
【0055】
このように、本実施の形態においては、大径部121と小径部122とから構成される段差により一括被覆部材5の温度変化による収縮が抑制されるため、被覆部材を設ける必要がない。従って、抑止体12と被覆部材との接着工程を省略することができるため、工程の省略化、低コストを図ることができる。
[第5の実施の形態]
【0056】
本発明の第5の実施の形態を図7に示す。図7に示す複合ケーブル51においては、表面に粗面加工がなされた金属線を用いる点では本発明の第4の実施の形態と同様であるが、本実施の形態においては該粗面加工の態様、すなわち抑止体の表面の凹凸形状が第4の実施の形態と異なる。
【0057】
すなわち、本実施の形態においては、表面に粗面加工されて螺旋状の溝が形成された金属線である抑止体13が用いられる。このような螺旋状の溝が形成された抑止体13を用いることにより、一括被覆部材5が溝の内部に入り込むため、抑止体13と一括被覆部材5とを強固に密着させることができる。また、抑止体13の表面に形成された螺旋状の溝に入り込んだ一括被覆部材5が、一括被覆部材5の複合ケーブル51の長手方向の収縮、膨張を抑制するための抵抗となる。このため、温度変化による一括被覆部材5の収縮、膨張は、前記螺旋状溝を備えた抑止体13により抑制することができる。
【0058】
このように、本実施の形態においては、抑止体13の表面に形成された螺旋状の溝により一括被覆部材5の温度変化による収縮、膨張が防止されるため、被覆部材を設ける必要がなく、抑止体13と被覆部材との接着工程を省略することができ、工程の省略化、低コストが図れるという、本発明第4の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
[第6の実施の形態]
【0059】
本発明の第6の実施の形態を図8に示す。図8に示す複合ケーブル61は、1つのテープ状光ファイバ3と1つの撚線2とを備え、テープ状光ファイバ3の位置に対応して一括被覆部材5に凹部8が形成される点は本発明の第1の実施の形態と同様であるが、本実施の形態においてはテープ状光ファイバ3の周囲に緩衝材が設けられている点が異なる。
【0060】
図8において、4本の光ファイバ3aを平行に配置したテープ状光ファイバ3の周囲には、緩衝材14が配置されている。該緩衝材14としては、例えばケブラー等の素材が用いられ得る。また、緩衝材14としてはケブラーに限定されることなく、同等の作用効果を奏する材料を適宜選択することが出来る。
【0061】
テープ状光ファイバ3の周囲に緩衝材14が配置され、テープ状光ファイバ3が拘束されていないことにより、温度変化による一括被覆部材5の収縮、膨張がテープ状光ファイバ3に及ぼす影響をより効果的に低減することができる。すなわち、使用環境温度の変化による一括被覆部材5の収縮、膨張がテープ状光ファイバ3に及ぼす伝送損失の増加等をより効果的に抑制することができるようになる。
【0062】
また、前記緩衝材14によりテープ状光ファイバ3が拘束されていないため、複合ケーブル61をコネクタに取付ける端末加工の際に、一括被覆部材5から光ファイバ3aをより効率的に分離することができ、作業性をより向上させることが可能となる。
【0063】
なお、ここでは図1に示すような第1の実施の形態に係る複合ケーブルにおけるテープ状光ファイバ3の周囲に緩衝材14が配置される構成としたが、例えば図4に示す第2の実施の形態、図5に示す第3の実施の形態、図6に示す第4の実施の形態、図7に示す第5の実施の形態に係る複合ケーブルにおいて、テープ状光ファイバ3の周囲に緩衝材14を配置するものであってもよい。
【0064】
以上、本発明の各実施の形態を説明したが、上記に記載した各実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、各実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0065】
1,21,31,41,51,61…複合ケーブル、2…撚線、2a…絶縁心線、3…テープ状光ファイバ、3a…光ファイバ、5…一括被覆部材、6,12,13…抑止体、7…被覆部材、8…凹部、14…緩衝材、121…大径部、122…小径部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体上に絶縁被覆を有する絶縁心線を複数本撚り合わせてなる撚線と、複数本の光ファイバを並列に配置させたテープ状光ファイバとが、一括被覆部材によって一括被覆されている複合ケーブルにおいて、
前記一括被覆部材の幅方向に沿って並列に配置された前記撚線と前記テープ状光ファイバとの外側に、前記一括被覆部材の収縮、膨張を抑止させる抑止体が設けられており、
前記抑止体と前記一括被覆部材との間に、前記抑止体を前記一括被覆部材に密着させる被覆部材が設けられていることを特徴とする複合ケーブル。
【請求項2】
導体上に絶縁被覆を有する絶縁心線を複数本撚り合わせてなる撚線と、複数本の光ファイバを並列に配置させたテープ状光ファイバとが、一括被覆部材によって一括被覆されている複合ケーブルにおいて、
前記一括被覆部材の幅方向に沿って並列に配置された前記撚線と前記テープ状光ファイバとの外側に、前記一括被覆部材の収縮、膨張を抑止させる抑止体が設けられており、
前記抑止体は、その表面に凹凸形状を有することを特徴とする複合ケーブル。
【請求項3】
前記凹凸形状は、前記抑止体の長手方向にわたって交互に形成された大径部と小径部とからなる請求項2に記載の複合ケーブル。
【請求項4】
前記凹凸形状は、前記抑止体の長手方向にわたって形成された螺旋状の溝からなる請求項2に記載の複合ケーブル。
【請求項5】
前記テープ状光ファイバは、その周囲に緩衝材が設けられている請求項1又は2に記載の複合ケーブル。
【請求項6】
前記一括被覆部材は、該一括被覆部材の厚さ方向に位置して対向する一対の側面の少なくとも一方の側面に、凹状の溝からなる凹部が形成されている請求項1又は2に記載の複合ケーブル。
【請求項7】
前記凹部は、該凹部の底面が前記テープ状光ファイバを臨む位置に形成されている請求項6に記載の複合ケーブル。
【請求項8】
前記撚線は、前記テープ状光ファイバを中心として、該テープ状光ファイバの両側に少なくとも1つ配置されている請求項1又は2に記載の複合ケーブル。
【請求項9】
複数のテープ状光ファイバを前記一括被覆部材の幅方向および/または厚さ方向に配置させてなるテープ状光ファイバ群と、複数の撚線を前記一括被覆部材の幅方向に並列させて配置させてなる撚線群とが、前記一括被覆部材の幅方向に並列されている請求項1又は2に記載の複合ケーブル。
【請求項10】
前記テープ状光ファイバ群は、その厚さが前記撚線の外径よりも小さい請求項9に記載の複合ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−272417(P2010−272417A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124345(P2009−124345)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】