説明

複合ケーブル

【課題】曲げが加わる場所などへ敷設される場合であっても、光ファイバの曲げによる伝送損失の発生を防ぎ、デジタル信号などの大容量の信号を高速度で伝送させるのに好適な複合ケーブルを提供する。
【解決手段】本発明に係る複合ケーブルは、導体上に絶縁被覆を有する絶縁心線を複数本撚り合わせてなる撚線と、複数本の光ファイバを並列に配置させたテープ状光ファイバと、が一括被覆部材によって一括被覆されている略矩形状の断面を有する複合ケーブルにおいて、前記一括被覆部材の厚さD(mm)と、前記光ファイバのクラッドの外径d(mm)との関係が下記式を満たすことを特徴とする。
D/d≧30

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のメタル線と光ファイバとを有する複合ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータや液晶ディスプレイなどの機器間において、例えば写真や動画などといった映像信号を劣化させずに大容量、高速度で伝送させるために、デジタル信号にて伝送することが行われている。
【0003】
このような機器間には、例えば、導体の周囲に絶縁被覆が施されてなり、電源供給や制御信号の伝送などに用いられる絶縁心線(メタル線)と、デジタル信号などの大容量の信号を高速度で伝送させるための光ファイバとを複数有し、これら複数のメタル線、光ファイバの周囲を被覆部材にて一括被覆した複合ケーブルが用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、4本の光ファイバと4本のメタル線が一括して収納された光DVI(Digital Visual Interface)ケーブルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−310197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複合ケーブルにおける光ファイバも、複合ケーブル以外で使用される光ファイバと同様に、その特性上、外部からの側圧によって光ファイバが曲げなどの影響を受けた場合、曲げによる曲げ歪によって伝送損失が発生してしまうが、例えば、機器接続部へ複合ケーブルを接続する場合や、曲げが加わる場所へ複合ケーブルを敷設する場合に、複合ケーブルへ曲げが加わることによって伝送損失が発生してしまうため、機器間においてデジタル信号などの大容量の信号を高速度で伝送させることができなくなるおそれがある。
【0007】
特に、複合ケーブルが局所的に小さな曲率半径で曲げられた場合に、複合ケーブルが座屈して光ファイバが断線するおそれがある。あるいは、光ファイバが断線に至らなくとも、曲げによる伝送損失の増加が顕著になり、デジタル信号などの大容量の信号を高速度で伝送させることが出来なくなってしまう。
【0008】
そこで本発明は、曲げが加わる場所などへ敷設される場合であっても、光ファイバの曲げによる伝送損失の発生を防ぎ、デジタル信号などの大容量の信号を高速度で伝送させるのに好適な複合ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、導体上に絶縁被覆を有する絶縁心線を複数本撚り合わせてなる撚線と、複数本の光ファイバを並列に配置させたテープ状光ファイバと、が一括被覆部材によって一括被覆されている略矩形状の断面を有する複合ケーブルにおいて、前記一括被覆部材の厚さD(mm)と、前記光ファイバのクラッドの外径d(mm)との関係が下記式
D/d≧30
を満たすことを特徴とする複合ケーブルを提供するものである。
【0010】
また、前記一括被覆部材は、100%以上の降伏点伸びを有することが好ましい。
【0011】
また、前記光ファイバは、コアとクラッドの比屈折率差が1.7%以上であるマルチモード光ファイバからなることが好ましい。
【0012】
また、前記光ファイバは、波長1.31μmにおけるモードフィールド径が9.0μm以下、かつ、実効カットオフ波長が1260nm以下であるシングルモード光ファイバからなることが好ましい。
【0013】
また、前記光ファイバは、コアの周囲に形成されたクラッドに複数の空孔を有するホーリーファイバからなることが好ましい。
【0014】
また、前記一括被覆部材の幅方向に並列に配置された前記撚線と前記テープ状光ファイバとの外側に、前記一括被覆部材の収縮、膨張を抑止させる抑止体が設けられていることが好ましい。前記抑止体と前記一括被覆部材との間に、前記抑止体を前記一括被覆部材に密着させる被覆部材が設けられていてもよい。
【0015】
また、前記一括被覆部材は、該一括被覆部材の厚さ方向に位置して対向する一対の側面の少なくとも一方の側面に、凹状の溝からなる凹部が形成されていると好ましい。前記凹部は、該凹部の幅方向の長さが前記テープ状光ファイバの幅方向の長さよりも長くてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、曲げが加わる場所などへ敷設される場合であっても、光ファイバの曲げによる伝送損失の発生を防ぎ、デジタル信号などの大容量の信号を高速度で伝送させるのに好適な複合ケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る複合ケーブルの断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るマルチモードファイバを用いた複合ケーブルと一般的なマルチモードファイバを用いた複合ケーブルの曲げ損失特性の比較を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るホーリーファイバの断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る光ファイバを用いた複合ケーブルと一般的なシングルモードファイバを用いた複合ケーブルの曲げ損失特性の比較を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る複合ケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態を図に従って説明する。
【0019】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態に係る複合ケーブルの断面図を図1に示す。図1に示す複合ケーブル1は、撚線2と、テープ状光ファイバ3と、抑止体6、6とが、一括被覆部材4で一括被覆されて構成される。
【0020】
本実施の形態に係るテープ状光ファイバ3は、クラッド径が例えば80μmのマルチモードファイバである光ファイバ3aを4心並べてテープ状に被覆して構成される。テープ状光ファイバ3は、複合ケーブル1の曲げ方向に対する一括被覆部材の中心線5と同心線上に配置される。光ファイバ3aであるマルチモードファイバのコアとクラッドの比屈折率差は1.7%である。
【0021】
撚線2は、低速の制御信号、及び電源を伝送するための導体上に絶縁被覆を有する絶縁心線2aとして、錫メッキ線をドレン線と一緒に7本撚り合わせたメタルユニットとして構成される。撚線2は、テープ状光ファイバ3の横に、複合ケーブル1の曲げ方向に対する一括被覆部材の中心線5と同心線上に配置されて構成される。
【0022】
一括被覆部材4は、難燃剤を配合した樹脂から構成されていても良い。一括被覆部材4を構成する樹脂の降伏点伸びは例えば580%である。本実施の形態において、一括被覆部材4は、例えば幅方向の幅が6.4mm、厚さ方向の厚さが2.8mmとされるが、これに限定されるものではない。
【0023】
なお、上記「幅方向」とは、複合ケーブルの断面において、該断面が略矩形状であって、一括被覆部材の断面の長手方向のことであり、一方「厚さ方向」とは、複合ケーブルの断面において、該断面が略矩形状であって、一括被覆部材の断面の短手方向のことである。例えば、「一括被覆部材の幅方向」とは、複合ケーブルの断面における一括被覆部材の長手方向のことである。
【0024】
すなわち、本実施の形態において、一括被覆部材4の曲げ方向は、一括被覆部材4の厚さ方向であり、一括被覆部材4の曲げ方向の一括被覆部材の厚さD(mm)と、内蔵する光ファイバのクラッド径d(mm)の関係は、例えば、
D/d=2.8/(80×10−3)=35
というように、D/d≧30を満たしていることが望ましい。
【0025】
(抑止体)
複合ケーブル1には、撚線2とテープ状光ファイバ3を結ぶ軸線上、すなわち複合ケーブル1の曲げ方向に対する一括被覆部材の中心線5の同心線上であって、撚線2および/またはテープ状光ファイバ3よりも外側の一括被覆部材4の内部に、金属線からなり、一括被覆部材4の収縮、膨張を抑止するための抑止体6が設けられている。抑止体6は、図1では一例として撚線2の断面視左方に1つと、テープ状光ファイバ3の断面視右方に1つの合計2つが配置されている。抑止体6は、撚線2および/またはテープ状光ファイバ3の外側に少なくとも1つ設けられることが好ましい。
【0026】
本実施の形態において、抑止体6は軟銅線から構成されているが、本発明の実施の形態としてはこれに限定されるものではなく、抑止体6は、複合ケーブルを曲げても折れず、一括被覆部材の膨張、収縮に対する抗体であれば良い。
【0027】
該抑止体6の周囲には被覆部材7が形成される。抑止体6と被覆部材7とは、一括被覆部材4が温度変化により収縮、膨張する際に発生する力よりも強い接着力を持つ接着手段により接着される。そして、被覆部材7は、一括被覆部材4と同じ材料から構成されており、周知の方法を用いて一括被覆部材4を押出被覆する際に、一括被覆部材4の熱により被覆部材7は一括被覆部材4に溶着する。これにより、抑止体6は、被覆部材7を介して一括被覆部材4と強固に接合される。
【0028】
なお、被覆部材7は、抑止体6と一括被覆部材4との間に設けられているものであれば、抑止体6の周囲全体を被覆するように設けられている場合に限らず、抑止体6の周囲の一部を被覆するように設けられているものであってもよい。
【0029】
また、抑止体は、例えば、一括被覆部材あるいは被覆部材にくい込む撚線構造などのような一括被覆部材あるいは被覆部材に対して滑らない構造を有していても良い。
【0030】
金属線から構成された抑止体6の線膨張係数は、例えば10〜30×10−6/℃と、PE等の樹脂で構成された一括被覆部材4の線膨張係数100〜200×10−6/℃と比較して著しく小さい。従って、複合ケーブル1の使用環境温度が変化し、特に低温環境時に一括被覆部材4が収縮しようとしても、抑止体6が被覆部材7を介して一括被覆部材4と強固に接合しているため、一括被覆部材4が抑止体6の収縮量を超えて収縮しなくなり、一括被覆部材4が収縮することによって光ファイバ3aへ曲げが加わるのを抑止することができる。
【0031】
石英から構成される光ファイバ3aの線膨張係数は、例えば0.4〜0.55×10−6/℃であり、100〜200×10−6/℃である一括被覆部材4の線膨張係数と光ファイバ3aの線膨張係数との差よりも、10〜30×10−6/℃である金属線から構成された抑止体6の線膨張係数と光ファイバ3aの線膨張係数との差の方が小さい。よって、一括被覆部材4の使用環境温度の変化に基づく収縮、膨張が、金属線から構成された抑止体6の収縮量、或いは膨張量に抑えられることによって、一括被覆部材4の収縮、膨張に起因する光ファイバ3aへの曲げ歪みの発生、あるいは一括被覆部材4の端面から光ファイバ3aが突きだして、光ファイバ3aが機器との接続部に設けられた固定部材から外れてしまうなどの問題を防ぐことができる。とりわけ、光ファイバ3aへの曲げ歪の発生を防ぐことにより、該曲げ歪に起因する機械的歪みが引き起こす光ファイバ3aの断線、あるいはマクロベンドによる伝送損失に起因する信号劣化などの問題を回避することが可能となるものである。
【0032】
このように、本実施の形態に係る複合ケーブル1では、一括被覆部材4の幅方向に並列に配置された撚線2とテープ状光ファイバ3との外側に抑止体6を設け、さらに、抑止体6と一括被覆部材4との間に被覆部材7を設けたことにより、撚線2およびテープ状光ファイバ3と一括被覆部材4との密着力を高めなくとも、温度変化による一括被覆部材4の収縮、膨張によってコネクタから端末が外れてしまうことと、光ファイバの曲げ歪みの発生との両方を抑制することが可能となる。
【0033】
また、撚線2やテープ状光ファイバ3と一括被覆部材4との密着力を高めた場合、光ファイバ3aや絶縁心線2aを端末部でコネクタ等に取り付ける端末加工の際に、一括被覆部材4から光ファイバ3a、絶縁心線2aを分離することが難しく、作業性が悪くなるなどの問題を招くおそれがあるが、本実施の形態においては、撚線2およびテープ状光ファイバ3と一括被覆部材4との密着力を高める必要が無いため、一括被覆部材4から光ファイバ3a、絶縁心線2aを容易に分離することができる。すなわち、温度変化による一括被覆部材4の収縮、膨張に起因する伝送損失の増加を抑制しつつ、光ファイバ3aや絶縁心線2aを端末部でコネクタに取付ける端末加工の際の作業性の向上を図ることができるという効果も得られる。
【0034】
(最適条件についての根拠)
光ファイバに曲げを加えた時、光ファイバの表面歪は3%以下にするのが好ましい。光ファイバの表面歪が3%以上となると、光ファイバの高強度破断が生ずる可能性があるためである。
【0035】
図2に、一般的なマルチモードファイバと、本実施の形態に係る、コアとクラッドの比屈折率差は1.7%であるマルチモードファイバである光ファイバ3aとをそれぞれ用いた複合ケーブルの曲げ損失特性の比較を示す。
【0036】
なお、一般的なマルチモードファイバのコアとクラッドとの比屈折率差は約1.0%である。また、一般的なマルチモードファイバのクラッド径d、本実施の形態に係る光ファイバのクラッド径dは、ともに0.080mm(=80μm)であり、クラッド径dに対する一括被覆部材の厚さDは2.3mm(D/d=28.75)、クラッド径dに対する一括被覆部材の厚さDは2.4mm(D/d=30.0)である。
【0037】
図2に示すグラフにおいて、縦軸は光ファイバの伝送損失増加量を表し、横軸は光ファイバの曲げ半径を表す。
【0038】
図2において、同じ曲げ半径で比較すると、本実施の形態に係る光ファイバ3aを用いたD/d≧30である複合ケーブルは、従来のマルチモードファイバを用いたD/d<30である複合ケーブルよりも伝送損失増加量が低く抑えられることが分かる。
【0039】
図2に示すデータより、本実施の形態の複合ケーブル1(D/d≧30の複合ケーブル)に、コアとクラッドとで1.7%以上の比屈折率差を有するマルチモードファイバを用いれば、曲げ印加時の光損失の増加を軽減できることがわかる。
【0040】
(降伏点伸びとシワ発生について)
表1は、図2で用いた本実施の形態に係る複合ケーブル(コアとクラッドの比屈折率差が1.7%であるマルチモードファイバを用いた複合ケーブル)において、降伏点伸びの異なる一括被覆部材を被覆し作製した複合ケーブルを、一直線状にした状態から180°に折り返したときに、折り返し部分(曲げ部分)にシワの発生などがないかを目視にて外観を確認した結果を示したものである。
【0041】
なお、表1の各複合ケーブルにおいて、一括被覆部材の厚さD、およびマルチモード光ファイバのクラッドの外径dは、全てD=2.4mm、d=0.080mm(80μm)、つまり、D/d=30とした。また、表1中における「○」は、曲げ部分にシワや塑性変形などの外観不良が発生していないことを示し、「×」は、曲げ部分にシワや塑性変形などの外観不良が発生していることを示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1の通り、降伏点伸びが100%以上である実施例1〜3においては、複合ケーブルに小さな曲げが加わっても曲げ部分の表面にシワの発生や、塑性変形などの発生がないことがわかる。これに対して、降伏点伸びが100%未満(60%)の比較例1では、複合ケーブルに小さな曲げが加わってしまうと、曲げ部分の表面にシワや、塑性変形などが発生してしまうことがわかる。
【0044】
従って、本実施の形態に係る複合ケーブルにおいては、少なくとも降伏点伸びが100%以上である一括被覆部材を被覆することが好ましい。
【0045】
[第1の実施の形態の変形例]
以上、第1の実施の形態に係る複合ケーブル1を構成する光ファイバ3aを、クラッド径80μmのマルチモードファイバに基づいて説明した。しかし、本発明の実施の形態として、光ファイバ3aには、
(1)波長1.31μmにおけるモードフィールド径が9.0μm以下、かつ、実効カットオフ波長が1260nm以下であるシングルモード光ファイバ
(2)コアの周囲に形成されたクラッドに複数の空孔を有するホーリーファイバ
を用いてもよい。
【0046】
このうち、上記(2)のホーリーファイバとは、コアの周知に複数の空孔を有する光ファイバである。ホーリーファイバの代表的な断面構造を図3に示す。
【0047】
図3に示すように、ホーリーファイバ3bは、空孔31を6個有する。コア32の周囲には内径約10μmの空孔31が円周方向に関して等間隔にホーリーファイバ3bの全長にわたって形成されている。クラッド33の径は125μm、コア32の径は約9μmである。
【0048】
ホーリーファイバ3bは、曲げや捻りへの耐性が大きく、曲げによる伝送損失の増加が抑えられる光ファイバである。このため、小さい曲率半径で曲げられた場合でも、従来のシングルモードファイバと比較し伝送特性の損失が低い光ファイバである。
【0049】
なお、本発明の実施の形態として上述のホーリーファイバを使用する場合には、一括被覆部材4の厚さ方向は、D/d≧30の関係式を満たすよう、
D=d×30=(125×10−3)×30=3.75
3.75mm以上とする必要がある。
【0050】
図4は、一般的なシングルモードファイバと、上記(1)に示す波長1.31μmにおけるモードフィールド径が9.0μm以下、実効カットオフ波長が1260nm以下である光ファイバ、及び上記(2)に示すホーリーファイバをそれぞれ用いた複合ケーブルの曲げ損失特性の比較を示す図である。なお、図4における複合ケーブルは全てD=3.75mm、d=0.125mmである複合ケーブルを用いた。図4に示すグラフにおいて、縦軸は光ファイバの伝送損失増加量を表し、横軸は光ファイバの曲げ半径を表す。
【0051】
図4において、同じ曲げ半径で比較すると、一般的なシングルモードファイバよりも、上記(1)の光ファイバは伝送損失増加量が低く抑えられ、上記(2)のホーリーファイバは上記(1)の光ファイバよりも更に低く伝送損失増加量が抑えられることが分かる。
【0052】
図4に示すデータより、上記(1)、(2)に示す光ファイバを用いることにより、複合ケーブル1に曲げが印加された時の伝送損失の増加を軽減できることがわかる。
【0053】
[第2の実施の形態]
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る複合ケーブルの断面図である。
【0054】
図5に示す複合ケーブル11は、一括被覆部材4の厚さ方向に位置する側面に、凹状の溝からなる凹部8、8が形成された構成のみが図1に示す第1の実施の形態と異なっていることから、図1に示す本発明の第1の実施の形態と共通する部分の説明は省略し、異なっている部分のみ図5に基づいて説明する。
【0055】
図5に示す複合ケーブル11を構成する一括被覆部材4には、該一括被覆部材4の厚さ方向に位置して対向する一対の側面の少なくとも一方の側面に、凹状の溝からなる凹部8、8が形成されている。
【0056】
凹部8、8は、該凹部の幅方向の長さがテープ状光ファイバ3の幅方向の長さよりも長いことが好ましい。
【0057】
このように、凹部8、8が一括被覆部材4の表面に形成されていることにより、複合ケーブル11の外観を目視しただけでテープ状光ファイバ3の位置を特定することができるという効果が得られる。また、複合ケーブル11に、撚線2とテープ状光ファイバ3を結ぶ軸線と垂直な方向から側圧が作用した場合、すなわち、一括被覆部材4の厚さ方向に位置して対向する一対の側面の少なくとも一方の側面に側圧が加わった場合に、該側圧によってテープ状光ファイバ3に伝送損失の増加を招く曲げ歪が発生するのを防止でき、側圧に起因する伝送損失の増加を抑制出来るという効果が得られる。
【0058】
本発明の実施の形態において凹部8、8の形成される範囲は特に限定されるものではないが、上記効果を鑑みると、テープ状光ファイバ3の幅と同じか、それを超える幅であることが望ましい。
【0059】
なお、本実施の形態において、一括被覆部材4の曲げ方向の一括被覆部材の厚さD(mm)は、複合ケーブル11を構成する一括被覆部材4の、凹部8、8が無い部分の厚さである。すなわち、本実施の形態において、D/d≧30におけるDは、図5に示すように、一括被覆部材4の、凹部8、8が無い部分の厚さにより定義される。
【0060】
以上、本発明の各実施の形態を説明したが、上記に記載した各実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、各実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0061】
1,11…複合ケーブル、2…撚線、2a…絶縁心線、3…テープ状光ファイバ、3a…光ファイバ、4…一括被覆部材、5…曲げ方向に対する一括被覆の中心線、6…抑止体、7…被覆部材、8…凹部、30…ホーリーファイバ、31…空孔、32…コア、33…クラッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体上に絶縁被覆を有する絶縁心線を複数本撚り合わせてなる撚線と、
複数本の光ファイバを並列に配置させたテープ状光ファイバと、が一括被覆部材によって一括被覆されている略矩形状の断面を有する複合ケーブルにおいて、
前記一括被覆部材の厚さD(mm)と、前記光ファイバのクラッドの外径d(mm)との関係が下記式を満たすことを特徴とする複合ケーブル。
D/d≧30
【請求項2】
前記一括被覆部材は、100%以上の降伏点伸びを有する請求項1に記載の複合ケーブル。
【請求項3】
前記光ファイバは、コアとクラッドの比屈折率差が1.7%以上であるマルチモード光ファイバからなる請求項1又は2に記載の複合ケーブル。
【請求項4】
前記光ファイバは、波長1.31μmにおけるモードフィールド径が9.0μm以下、かつ、実効カットオフ波長が1260nm以下であるシングルモード光ファイバからなる請求項1又は2に記載の複合ケーブル。
【請求項5】
前記光ファイバは、コアの周囲に形成されたクラッドに複数の空孔を有するホーリーファイバからなる請求項1又は2に記載の複合ケーブル。
【請求項6】
前記一括被覆部材の幅方向に並列に配置された前記撚線と前記テープ状光ファイバとの外側に、前記一括被覆部材の収縮、膨張を抑止させる抑止体が設けられている請求項1から5のいずれか1項に記載の複合ケーブル。
【請求項7】
前記抑止体と前記一括被覆部材との間に、前記抑止体を前記一括被覆部材に密着させる被覆部材が設けられている請求項6に記載の複合ケーブル。
【請求項8】
前記一括被覆部材は、該一括被覆部材の厚さ方向に位置して対向する一対の側面の少なくとも一方の側面に、凹状の溝からなる凹部が形成されている請求項1から7のいずれか1項に記載の複合ケーブル。
【請求項9】
前記凹部は、該凹部の幅方向の長さが前記テープ状光ファイバの幅方向の長さよりも長い請求項8に記載の複合ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−54415(P2011−54415A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202185(P2009−202185)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】