説明

複合シート、及び複合シートの製造方法

【課題】切断端面の見栄えが良い複合シート、及びキリコが生じない複合シートの製造方法を提供する。
【解決手段】平面状をなす平面フィルム11と、この平面フィルム11に重ね合わせて接合された立体構造をなす立体フィルム12とを備えた連続複合シートSを切断して、前記立体フィルム12が前記平面フィルム11と略垂直な切断端面14を備えている複合シート1を製造する方法であって、前記連続複合シートSの切断すべき箇所S1を刃9に対応する切断位置21に配置するとともに、前記切断位置21の両側において連続複合シートSを保持し、その保持状態を維持しつつ平面フィルム11と直交する方向から前記刃9を入れて前記連続複合シートSの切断すべき箇所S1を切断して前記切断端面14を有した複合シート1を得ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梱包時の緩衝材等として用いられる気泡シート等の複合シート、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の複合シートとして、バックフィルムと称される平面状をなす平面フィルムと、この平面フィルムに重ね合わせて接合されたキャップフィルムと称される立体構造をなす立体フィルムとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ところで、一定寸法に裁断したこの種の複合シートは、連続複合シートを適宜切断して作られるが、その切断の際に発生するキリコ(切り粉)の処理に手間がかかるという問題がある。すなわち、この種のキリコは薄いフィルムの破片であるため、静電気等により梱包対象物に付着する傾向がある。そのため、このような複合シートを梱包に用いた場合、そのキリコが梱包対象物に悪影響を及ぼすことがあり、キリコを完全に除去することが強く要請されている。この要請に応えるため、バキューム等によりキリコを除去する装置が種々開発されているが、完全にキリコを取り除くことは難しく、何らかの対策が望まれている。
【0004】
本発明者らは、このような事情に着目し、キリコを取り除くという発想を大きく転換させ、キリコが発生する根本原因を究明すべく種々の研究を行った。その結果、フィルムの二度切り現象が生じていることを発見し、これがキリコを発生させる要因となっていることがわかった。
【0005】
すなわち、従来、連続複合シートPSを切断する際には、図8及び図9に示すように、受け面の端に段差を設けておき、この段部端面と刃P9とによって連続複合シートPSを剪断するように切断していた。ところが、このような方法で切断を行うと、図8に示すように、刃P9が連続複合シートPSの上面に入刀された直後に、その力によって連続複合シートPSが段差に沿って下方に屈曲することになる。そのため、図9に示すように、さらに刃P9が下方に移動すると、気泡を含んだ立体フィルムP12が変形した状態で再度その立体フィルムP12を切断することがあり、二度切断して切り離された立体フィルムP12の小片が前記キリコP15となる、ということが明らかになった。
【0006】
本発明者らは、かかる究明結果に基づいて、二度切りが生じないような方法を種々試行し、本発明を完成させるに至った。そして、本発明の方法によれば、キリコが生じないだけでなく、従来の図10に示すような複合シートP1に比べてその切断端面の見栄えが良好な複合シートが得られることもわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−231268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる究明結果に基づいて、切断端面の見栄えが良い複合シート、及びキリコが生じない複合シートの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以上のような課題を解決するために、次のような構成を採用したものである。すなわち、本発明に係る複合シートは、平面状をなす平面フィルムと、この平面フィルムに重ね合わせて接合された立体構造をなす立体フィルムとを備え、この立体フィルムが、前記平面フィルムと略垂直な切断端面を備えていることを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、切断端面が綺麗に形成されているので、見栄えを良いものとすることができる。
【0011】
平面状をなす平面フィルムと、この平面フィルムに重ね合わせて接合された立体構造をなす立体フィルムとを備えた連続複合シートを切断して前記複合シートを製造する方法の好適な一態様としては、前記連続複合シートの切断すべき箇所を刃に対応する切断位置に配置するとともに、前記切断位置の両側において連続複合シートを保持し、その保持状態を維持しつつ平面フィルムと直交する方向から前記刃を入れて前記連続複合シートの切断すべき箇所を切断するものが考えられる。
【0012】
このようなものであれば、連続複合シートの立体フィルムを二度切りしてしまうことを防ぐことができ、従来問題となっていたキリコの発生を防ぐことができる。そのため、このような方法によって作られた複合シートは、従来種々試行した手間のかかるキリコの取り除き作業が不要となるだけでなく、この複合シートを梱包時の緩衝材として用いる場合であっても、梱包対象物にキリコが付着するおそれもなくなる。
【0013】
なお、刃は、連続複合シートに対して接離する方向に直線移動することによって連続複合シートを切断するものや、回転しながら連続複合シートを切断するものであってもよい。
【0014】
前記切断位置の両側に受け面をそれぞれ設けておけば、前記連続複合シートを前記受け面にそれぞれ押し付けた状態で保持することができる。
【0015】
前記受け面に対向する位置に押圧体を配しておけば、前記連続複合シートを前記押圧体によって前記受け面に押し付けた状態で保持することができる。
【0016】
前記立体フィルムの好適な一例としては、前記平面フィルムと協働して多数の独立した気泡を形成する立体形状をなしているものが考えられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以上のような構成であるから、切断端面の見栄えが良い複合シート、及びキリコが生じない複合シートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態にかかる複合シートの平面図。
【図2】図1におけるA−A線断面図。
【図3】同実施形態にかかる連続複合シートの切断装置を模式的に示す側面図。
【図4】同実施形態にかかる連続複合シートの切断装置を模式的に示す側面図。
【図5】同実施形態にかかる連続複合シートの切断装置を模式的に示す側面図。
【図6】同実施形態にかかる連続複合シートの切断装置を模式的に示す側面図。
【図7】同実施形態にかかる連続複合シートの切断装置を模式的に示す側面図。
【図8】従来の連続複合シートの切断装置を模式的に示す側面図。
【図9】従来の連続複合シートの切断装置を模式的に示す側面図。
【図10】従来の連続複合シートの切断装置によって切断された複合シートを模式的に示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
この複合シート1は、例えば、梱包時の緩衝材等として用いられるものであり、図1ないし図7に示すように、連続複合シートSを切断装置2を用いて一定寸法に適宜切断して作られるものである。具体的には、この複合シート1は、図1及び図2に示すように、バックフィルムと称される平面状をなす平面フィルム11と、この平面フィルム11に重ね合わせて接合されたキャップフィルムと称される立体構造をなす立体フィルム12とを備えたものであり、この立体フィルム12が、前記平面フィルム11と略垂直な切断端面14を備えている。前記立体フィルム12は、前記平面フィルム11と協働して多数の独立した気泡13を形成する立体形状をなしている。
【0021】
本実施形態においては、シート状の素材として、例えば、図1及び図2に示すように、多数の気泡形成用突起を有してなるキャップフィルムと、このキャップフィルムの突起開放側に添着したバックフィルムとからなる2層構造を有する気泡シートを用いている。この気泡シートは、キャップフィルム及びバックフィルムからなる2層構造を有する従来品と同様であり、材料としては、常用のポリエチレンをはじめ、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ナイロンその他種々のプラスチックが使用できる。
【0022】
この複合シート1を製造する切断装置2は、図3ないし図7に示すように、一定の幅寸法を有する長尺な連続複合シートSを受け台6上に送るとともに、その連続複合シートSの切断すべき箇所S1が前記受け台6上に設定された切断位置21に達した段階でその送り動作を停止させるための送り機構3と、この送り機構3により送られて停止した連続複合シートSを受け台6上に保持するための保持機構4と、この保持機構4により保持された連続複合シートSを前記切断位置21において切断するための切断機構5とを備えている。
【0023】
前記送り機構3は、図3ないし図7に示すように、連続複合シートSを挟持して長手方向に搬送する送りローラ7などを主体に構成した通常のものである。
【0024】
前記保持機構4は、図3ないし図7に示すように、前記受け台6における切断位置21の両側に設けられた対をなす受け面61と、これら受け面61に対向する位置にそれぞれ配された押圧体8とを主体に構成されたものである。この保持機構4は、前記連続複合シートSが停止した際に、前記押圧体8を降下させて前記連続複合シートSを前記受け面61に押し付けた状態で保持するものである。本実施形態では、保持機構4を切断機構5の近傍に配置している。押圧体8の昇降には、種々のアクチュエータを使用することが可能である。受け面61は、前記連続複合シートSを水平に案内することができる平滑な水平面であり、前記切断位置21を挟んで上流側及び下流側にそれぞれ設けられている。
【0025】
前記切断機構5は、図3ないし図7に示すように、前記受け台6の切断位置21に対応する部位に設けられた刃進入部62と、この刃進入部62の上方に配設された刃9とを主体に構成されたもので、刃先91が刃進入部62に進入するまで降下するようになっている。刃9の昇降には、種々のアクチュエータを使用することが可能である。刃9は、下縁に刃先91を有する平板状のもので、水平姿勢を維持しつつ、平面フィルム11に対して垂直に降下し得るようになっている。
【0026】
次に、図面を参照しながら、この切断装置2を用いて前記連続複合シートSの切断すべき箇所S1を切断して前記切断端面14を有した複合シート1を得る手順を説明する。
【0027】
まず、図3に示すように、前記送り機構3により送られてくる前記連続複合シートSが所定箇所で停止し、その連続複合シートSの切断すべき箇所S1が刃9に対応する切断位置21に配置される。
【0028】
次いで、図4に示すように、前記押圧体8が降下し、前記切断位置21の両側において連続複合シートSが保持される。すなわち、前記連続複合シートSの切断すべき箇所S1の前後の部位が、押圧体8によってそれぞれ受け台6の受け面61に押し付けられ、保持される。
【0029】
その保持状態で、図5に示すように、前記刃9が降下し、図6に示すように、平面フィルム11と直交する方向から前記連続複合シートSの切断すべき箇所S1が切断される。そして、切断された複合シート1は、図7に示すように、シート受け22上に順次積み重ねられる。なお、切断位置の下流側にも送り機構を設けて切断された複合シートを送りローラによって送るようにしてもよい。
【0030】
以上の動作を繰り返すことによって、一定寸法の複合シート1が順次製造される。この複合シート1の搬送方向の両端に露出する切断端面14は、図1及び図2に示すように、立体フィルム12が、前記平面フィルム11と略垂直に切り取られた形状となっている。
【0031】
以上に述べたように、本実施形態に係る複合シート1は、平面状をなす平面フィルム11と、この平面フィルム11に重ね合わせて接合された立体構造をなす立体フィルム12とを備え、この立体フィルム12が、前記平面フィルム11と略垂直な切断端面14を備えているので、従来の二度切りが行われていたものに比べてその切断端面14の見栄えを良好にすることができる。
【0032】
また、前記連続複合シートSの切断すべき箇所S1を刃9に対応する切断位置21に配置するとともに、前記切断位置21の両側において連続複合シートSを保持し、その保持状態を維持しつつ平面フィルム11と直交する方向から前記刃9を入れて前記連続複合シートSの切断すべき箇所S1を切断して前記切断端面14を有した複合シート1を得るようにしているので、切断時における立体フィルム12の二度切りの発生及びキリコの発生を防止することができる。すなわち、従来の方法によれば、例えば1200mm幅の連続気泡シートから280mm×280mmのカットシートを切り出す場合、長辺サイズ5mm以上のキリコの発生は1000枚当り約40片であるとの調査結果を得ていたが、本実施形態によれば、幅300mmの連続気泡シートを200回切断した場合であってもキリコは全く発生しなかった。
【0033】
特に、前記立体フィルム12が、前記平面フィルム11と協働して多数の独立した気泡13を形成する立体形状をなしている2層の気泡シートの場合、多数の気泡13が形成されているので、各箇所で二度切りが行われるとキリコが大量に発生することになるが、本実施形態の複合シート1は、前述したような方法で切断されているので、キリコを発生させることなく製品とすることができる。また、本実施形態に示したように、気泡13が平面視一直線上に並ぶ連続複合シートSの巾方向に沿って切断する場合には、気泡13が千鳥状に並ぶ流れ方向に沿って切断する場合に比べて、その効果がより明確になる。なお、気泡シートの流れ方向とは、巾方向に対して直角方向に延びる長手方向のことを指し、この方向は巾方向に比べて、引き裂きにくいという性質を有する。
【0034】
また、前記切断位置21の両側に受け面61をそれぞれ設けておき、前記連続複合シートSを前記受け面61にそれぞれ押し付けた状態で保持するので、受け面61側に配される立体フィルム12の頂点部分を平らな状態に保つことができるとともに、平面フィルム11の上方から刃9によって力が加わった場合にも、両側で押さえ付けられているため、平面フィルム11及び立体フィルム12が変形することを防止または抑制することができる。
【0035】
特に、本実施形態においては、前記受け面61に対向する位置に押圧体8を配しておき、前記連続複合シートSを前記押圧体8によって前記受け面61に押し付けた状態で保持するので、立体フィルム12側は平らな受け面61に保持され、平面フィルム11側も平らな押圧体8の下面に保持され、切断時に連続複合シートSを所望の姿勢に維持することができる。
【0036】
さらに、保持機構4を切断機構5の近傍に配置しているので、刃先91が連続複合シートSに当接する際における連続複合シートSの切断すべき箇所S1の変形を可及的に防ぐことができ、連続複合シートSに対して垂直に切断することができる。
【0037】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限られない。
【0038】
例えば、複合シートは、上述した気泡シートに限られず、気泡を有しない合成樹脂シートや、合成樹脂製以外のシートも含まれる。気泡を有しない合成樹脂シートの具体的な一例としては、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂によって作られる2枚のシート(本発明の平面フィルムに相当)と、これらのシートを連結して平行に走る多数のリブ(本発明の立体フィルムに相当)とからなるいわゆるプラスチック段ボール等が挙げられる。また、気泡シートにあっても、2層構造のもの以外にも、前記キャップフィルムの突起先端側に添着したライナーフィルムをさらに有したいわゆる3層構造のものであってもよい。
【0039】
切断装置の送り機構は、必須の構成要素ではなく、連続複合シートの切断すべき箇所を手動で切断位置に配したり、切断後の複合シートを手動で受け面から取り除くようにしてもよい。
【0040】
また、前記受け面に対向する位置に押圧体を配する代わりに、例えば、前記受け面に吸引器に連続させた多数の孔を設けておき、前記連続複合シートを前記吸引器によって前記受け面に吸着した状態で保持するようにしてもよい。
【0041】
刃は、上述した実施形態で示したような平行に上下移動するものに限られず、一端側を枢着するとともに他端側を回動させて切断するようなものであってもよい。また、立体フィルムが、前記平面フィルムと略垂直な切断端面を備えるように切断するものであれば、直線状の刃に限られず、曲線状をなす刃や角張った形状の刃であってもよい。
【0042】
さらに、本実施形態で説明した切断装置2の代わりに、例えば、押圧体と刃を同一のアクチュエータで作動させる等、保持機構による保持動作と切断機構による切断動作とを略同時に行うものであってもよい。
【0043】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0044】
S…連続複合シート
1…複合シート
11…平面フィルム
12…立体フィルム
13…気泡
14…切断端面
21…切断位置
61…受け面
8…押圧体
9…刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状をなす平面フィルムと、この平面フィルムに重ね合わせて接合された立体構造をなす立体フィルムとを備え、この立体フィルムが、前記平面フィルムと略垂直な切断端面を備えていることを特徴とする複合シート。
【請求項2】
平面状をなす平面フィルムと、この平面フィルムに重ね合わせて接合された立体構造をなす立体フィルムとを備えた連続複合シートを切断して請求項1記載の複合シートを製造する方法であって、
前記連続複合シートの切断すべき箇所を刃に対応する切断位置に配置するとともに、前記切断位置の両側において連続複合シートを保持し、その保持状態を維持しつつ平面フィルムと直交する方向から前記刃を入れて前記連続複合シートの切断すべき箇所を切断して前記切断端面を有した複合シートを得ることを特徴とする複合シートの製造方法。
【請求項3】
前記切断位置の両側に受け面をそれぞれ設けておき、前記連続複合シートを前記受け面にそれぞれ押し付けた状態で保持する請求項2記載の複合シートの製造方法。
【請求項4】
前記受け面に対向する位置に押圧体を配しておき、前記連続複合シートを前記押圧体によって前記受け面に押し付けた状態で保持する請求項3記載の複合シートの製造方法。
【請求項5】
前記立体フィルムが、前記平面フィルムと協働して多数の独立した気泡を形成する立体形状をなしている請求項2、3または4記載の複合シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−162045(P2012−162045A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25695(P2011−25695)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】