説明

複合体及びその製造方法並びに化粧品材料

【課題】材料の大きさ、及び親水性あるいは疎水性を適正に制御することにより、機能性と安全性を両立させることができる複合体及びその製造方法並びに化粧品材料を提供する。
【解決手段】本発明の複合体1は、金属酸化物、金属窒化物及び金属炭化物の群から選択される1種または2種以上を含有する金属化合物粒子11の表面を酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種からなる被覆層12により被覆した表面被覆金属化合物粒子2を、アミノ酸、ポリペプチド、蛋白質及び多糖類の群から選択される1種または2種以上を含むゲル状物質3中に分散した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合体及びその製造方法並びに化粧品材料に関し、特に、化粧品の原材料に用いて好適な複合体及びその製造方法、並びに、この複合体を用いることにより、機能性と安全性を両立させることが可能な化粧品材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、微粒子製造技術の進歩により、ナノメートルサイズの非常に小さな粒子が容易に製造されるようになってきており、化粧品においても、ナノメートルサイズの微粒子を用いることにより従来の製品との差別化が図られている。
例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等の金属化合物粉体の中には、化粧品としての着色性や紫外線遮蔽性を有するものがある。そこで、着色性や紫外線遮蔽性を有する金属化合物粉体を微細化することにより、透明性、着色性、紫外線遮蔽性を発現する着色性化粧品や日焼け止め化粧品が開発されている。
【0003】
しかしながら、金属化合物粉体の微細化は、必ずしも良い面ばかりではなく、不利な面もあることが指摘されている。例えば、粒子径が小さくなると粒子の表面積が増大するために、その表面エネルギーも著しく大きくなり、凝集し易くなる。したがって、この微細な金属化合物粉体を用いて分散液を作製した場合、この分散液を保存している間に微細な金属化合物粉体同士が凝集して粗大粒子に成長し、沈殿等の不具合を引き起こすこととなる。また、この微細な金属化合物粉体を用いて透明な塗膜を形成した場合、この塗膜中で微細な金属化合物粉体同士が凝集してしまうために光の散乱が生じ、粗大な粒子を使用した場合と同様に白色を帯びることとなり、透明性を失うこととなる。
【0004】
この表面エネルギーに起因する凝集を解決したものとしては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の金属化合物を樹脂中に分散させた樹脂粉体が提案されている(特許文献1、2)。
これらの樹脂粉体では、汎用の合成高分子を構成成分とする球状の樹脂粉体中に金属化合物を分散したことにより、樹脂粉体の凝集が生じ難くなっている。
【0005】
また、材料を微細化した場合、この微細な材料が皮膚から吸収され易くなることも指摘されている(非特許文献1)。
化粧品として使用される材料は、人体に対する安全性が確認されたものから選択されており、万が一吸収されたとしても栄養分となるようなものが使用されている。しかしながら、着色あるいは紫外線遮蔽等を目的で添加された材料の場合、この材料が過度に皮膚から吸収されるのは必ずしも好ましくなく、したがって、この材料を用いた化粧品は、過度に皮膚から吸収されることがなく、しかも、使用後は速やかに洗浄除去できることが好ましい。
【0006】
化粧品の皮膚透過性は、皮膚の構造と関連付けて理解されている。すなわち、皮膚を構成する角質層は、角質細胞間脂質と称される脂質により構造的に支えられている。また、経皮吸収は、皮膚表面に塗付された物質が角質層を経て真皮の中にある毛細血管に入ったり、皮下組織に浸透したりする現象である。これらの点によれば、物質の大きさが細胞間の間隙程度の大きさである40nm〜60nmより小さくなると、皮膚透過性が急に高まると考えられている。また、細胞を結合している脂質成分に溶解し易い材料は、皮膚透過性が高いと考えられている。
【特許文献1】特開平8−53568号公報
【特許文献2】特開平9−208927号公報
【非特許文献1】ティンクル.S.S.、「スキン アズ ア ルート オブ イクスポウジャ アンド センズィティゼーション イン クロニック ベリリウム ディズィーズ」、インヴァイアロンメンタル ヘルス パスペクティヴズ、2003年、第111号、p.1202−1208(Tinkle, S. S., "Skin as a Route of Exposure and Sensitization in Chronic Beryllium Disease", Environmental Health Perspectives, 2003, No.111, p.1202-1208)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の化粧品では、それに用いられる材料自体が人体に直接触れるものであることから、化粧品材料として使用可能な汎用の合成高分子には安全性の点での制限があり、この制限が化粧品を製造する上での制約条件となりうるという問題点があった。
また、着色あるいは紫外線遮蔽等を目的で添加された材料では、過度に皮膚から吸収されることがなく、しかも、使用後は速やかに洗浄除去できるという安全性の上での制約があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、化粧品材料としての安全性を確保するための重要な要因である材料の大きさ、及び親水性あるいは疎水性を適正に制御することにより、機能性と安全性を両立させることができる複合体及びその製造方法並びに化粧品材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、化粧品材料について改良すべく鋭意検討を行った結果、表面を酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種により被覆した金属化合物粒子を、アミノ酸、ポリペプチド、蛋白質及び多糖類のうち1種以上を含むゲル状物質中に分散させることとすれば、化粧品に適用可能な材料の大きさ、及び表面の親水性あるいは疎水性を適正に制御することができ、その結果、機能性と安全性を両立させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の複合体は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種により被覆してなる金属化合物粒子を、アミノ酸、ポリペプチド、蛋白質及び多糖類の群から選択される1種または2種以上を含むゲル状物質中に分散してなることを特徴とする。
【0011】
この複合体は、少なくとも一辺の長さが40nm以上かつ100μm以下であることが好ましい。
前記ゲル状物質は極性溶媒を含むことが好ましい。
前記金属化合物は、金属酸化物、金属窒化物及び金属炭化物の群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
前記金属酸化物は、紫外線遮蔽機能を有することが好ましい。
紫外線遮蔽機能を有する前記金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム及び酸化セリウムの群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
【0012】
本発明の複合体の製造方法は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種により被覆してなる金属化合物粒子を分散媒中に分散させて金属化合物粒子分散液とする分散液作製工程と、この金属化合物粒子分散液を生体由来の高分子を含むゲル状物質中に包埋させる包埋工程とを有することを特徴とする。
【0013】
前記高分子は、アミノ酸、ポリペプチド、蛋白質及び多糖類の群から選択される1種または2種以上、またはこれらの前駆体であることが好ましい。
前記包埋工程は、前記金属化合物粒子分散液及び前記高分子を油性溶媒中にて撹拌・混合してW/Oエマルションを生成し、次いで、このW/Oエマルションを加熱または撹拌・混合して微粒子状に凝固させる工程であることが好ましい。
【0014】
本発明の化粧品材料は、本発明の複合体を1質量%以上かつ90質量%以下含有してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の複合体によれば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種により被覆してなる金属化合物粒子を、アミノ酸、ポリペプチド、蛋白質及び多糖類の群から選択される1種または2種以上を含むゲル状物質中に分散したので、金属化合物粒子の表面の親水性あるいは疎水性の度合いを、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種により被覆することで制御することができる。
【0016】
また、金属化合物粒子は、その表面を生体に対して安全な酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種により被覆されているので、安全性を確保することができる。また、金属化合物粒子の表面を酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種により被覆することにより、粒径制御が容易になり、材料としての適正な大きさを維持することができる。
【0017】
本発明の複合体の製造方法によれば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種により被覆してなる金属化合物粒子を分散媒中に分散させて金属化合物粒子分散液とする分散液作製工程と、この金属化合物粒子分散液を生体由来の高分子を含むゲル状物質中に包埋させる包埋工程とを有するので、材料の大きさ、及び親水性あるいは疎水性を適正に制御した複合体を作製することができる。
【0018】
本発明の化粧品材料によれば、本発明の複合体を1質量%以上かつ90質量%以下含有したので、化粧品としての機能性と安全性を両立させた化粧品材料を安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の複合体及びその製造方法並びに化粧品材料を実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0020】
「複合体」
図1は、本発明の一実施形態の複合体の断面構造を示す模式図であり、図において、1は複合体であり、表面被覆金属化合物粒子2をゲル状物質3中に分散した構成である。
【0021】
この複合体1は、少なくとも一辺の長さが40nm以上かつ100μm以下であることが好ましい。その理由は、複合体1の大きさを細胞間の間隙程度の大きさである40nm〜60nm以上とすることにより、化粧品材料に用いた場合に皮膚透過性を抑制し易くするからである。また、一辺の長さが100μm以下が好ましい理由は、化粧品としての美観を有する皮膜が形成し易いからである。
【0022】
表面被覆金属化合物粒子2は、金属化合物粒子11と、この金属化合物粒子11の表面を覆うように形成された被覆層12とにより構成されている。
この表面被覆金属化合物粒子2の二次粒子径(分散粒子径)は、300nm以下が好ましく、より好ましくは100nm以下である。その理由は、表面被覆金属化合物粒子2の粒子径が300nmを超えると、透明性が著しく損なわれ、化粧品に用いられた場合に美観に優れたものが得られないからである。
ここで、表面被覆金属化合物粒子2の二次粒子径(分散粒子径)が300nm以下のときに透明性が高くなる理由は、屈折率の異なるゲル状物質3中における分散粒子の散乱現象及びナノ粒子の自由電子の働きによるものと考えられる。
【0023】
金属化合物粒子11は、金属化合物として金属酸化物、金属窒化物及び金属炭化物の群から選択される1種または2種以上を含有していることが好ましい。
金属酸化物としては、特に制限はないが、例えば、紫外線遮蔽材料として用いる場合には、紫外線の波長帯域に吸収帯を有しかつ安全性が高い金属酸化物が好適である。このような金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム及び酸化セリウムの群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。その理由は、これらの酸化物が人体に有害な紫外線波長帯域に吸収帯を有し、かつ安全性が高く、化粧品材料に適しているからである。
【0024】
そこで、金属酸化物として酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化セリウム等の紫外線遮蔽機能を有する金属酸化物を選択し、得られた表面被覆金属化合物粒子の複合体1中の分散粒子径を100μm以下、より好ましくは30nm以下とすれば、複合体が透明性および紫外線遮蔽機能を有するものとなる。
【0025】
この他に好ましい金属酸化物としては、二酸化ケイ素、酸化鉄(ベンガラ、鉄黒等)、酸化ジルコニウム等、通常の化粧料原料として用いられるものが挙げられる。
金属窒化物としては、窒化ホウ素等が挙げられ、また、金属炭化物としては、炭化ケイ素等が挙げられる。
【0026】
被覆層12を構成する物質としては、人体に対して安全性が高くかつ化粧品材料に適している物質が好ましく、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種が好ましい。ここで、酸化アルミニウム/酸化ケイ素とは、酸化アルミニウムを5質量%以上かつ95質量%以下含み、残部が酸化ケイ素及び不可避不純物からなる酸化アルミニウムと酸化ケイ素の混晶のことである。
【0027】
ここで、被覆層12を構成する物質として、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれかとした理由は、これらの物質が金属化合物粒子3からの金属イオンの溶出を防止するとともに、ゲル状物質3及び金属化合物粒子3に対する親和性を高めて分散されやすくするためである.
【0028】
この被覆層12の厚みは、金属化合物粒子11の表面を十分に覆うことを考慮すると、0.2nm以上かつ30nm以下が好ましく、より好ましくは0.3nm以上かつ10nm以下である。
ここで、被覆層12の厚みを上記の範囲に限定した理由は、厚みが0.2nm未満であると、被覆効果が充分に得られないからであり、一方、厚みが30nmを超えると、光の散乱に起因して光学特性が悪化するからである。
【0029】
ゲル状物質3を構成する成分としては、アミノ酸、ポリペプチド、タンパク質、多糖類及びこれらの複合物の群から選択される1種または2種以上を挙げることができる。これらの成分を作製する方法については、特に制限は無いが、例えば、天然物として産出する原料をゲル状物質3を構成する成分として用いれば、化学合成品と比べて簡単な方法で作製することが可能であるので、量産する方法としては好ましい。この具体的な方法については、後述する実施例により詳細に説明する。なお、天然物として産出する原料とは、蚕が産生する絹を原料とするフィブロイン等である。
【0030】
本実施形態では、1分子中にカルボキシル基(−COOH)とアミノ基(−NH2)の両方を有する有機化合物をアミノ酸と称する。以上の定義によるアミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン等を挙げることができる。
なお、ここでは、アミノ基の代わりに修飾されたアミノ基やイミノ基(−NH−)を有するもの、カルボキシル基の代わりにスルホ基(−SOH)を有するもの等も、アミノ酸に含めるものとする。
【0031】
本実施形態では、アミノ酸により形成されるアミド接合(ペプチド結合)を分子骨格に有する化合物をポリペプチドと称する。また、ペプチド結合を分子骨格に有する巨大分子をタンパク質と称する。なお、ここでは、ポリペプチドとタンパク質との間に明確な区別はしないものとする。以上の定義によるポリペプチド及びタンパク質としては、カゼイン、コラーゲン、アルブミン、ケラチン、フィブロイン等を挙げることができる。
【0032】
本実施形態では、加水分解により、二分子以上の単糖類及び単糖類の誘導体を生成する分子を多糖類と称する。この単糖類とは、これ以上加水分解される虞の無い糖類の最小の構成単位であり、例えば、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトースを挙げることができる。
以上の定義による多糖類としては、デンプン、セルロース、アラビアゴム等を挙げることができる。
なお、糖類の構造体に加えて、アミノ酸などの構造体を含むものも多糖類と称する。以上の定義による多糖類としては、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン酸、ヘパリン等を挙げることができる。
【0033】
このゲル状物質3は、上記の成分を単独、または2種以上を組み合わせ、あるいはその一部として含有することが好ましい。その理由は、これらアミノ酸、ポリペプチド、蛋白質及び多糖類の成分が生体を構成するものであるから、より生体に対する適合性に富んでおり、しかも安全性の高い化粧品材料を作製する目的に適しているからである。
このゲル状物質3は、水溶性アミノ酸、水溶性ポリペプチド、水溶性蛋白質のいずれかを含んでいてもよい。
【0034】
ゲル状物質3の大きさは、少なくとも一辺の長さが40nm以上かつ100μm以下であることが好ましい。
この数値範囲が好ましい理由は、ゲル状物質3の大きさを上記の数値範囲内とすることで、細胞間の間隙程度の大きさである40nm〜60nm以上となり、その結果、皮膚透過性が抑制し易くなるからである。
【0035】
このゲル状物質3は、極性溶媒を含有することが好ましい。その理由は、脂質が極性溶媒に溶解し難い性質を利用して、セラミド等の脂質成分に対する複合体1の溶解性を抑制することができるからである。
極性溶媒としては、脂質を溶解し難く、かつ人体に対して安全な極性溶媒であればよく、特に限定するものではないが、特に水は、生体を構成する物質であるから、極性溶媒として最も好ましい。
【0036】
この複合体1における表面被覆金属化合物粒子2の含有率は、複合体1全体に対して0.5質量%以上かつ90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.8質量%以上かつ88質量%以下である。
その理由は、表面被覆金属化合物粒子2の含有率が0.5質量%未満では、金属化合物粒子の複合体中に占める含有量が少なすぎてしまい、この金属化合物粒子が有する機能を十分に発揮させることが難しくなり、したがって、化粧品材料の配合設計が極めて難しくなるからであり、一方、表面被覆金属化合物粒子2の含有率が90質量%を超えると、金属化合物粒子分散液を作製する段階で、樹脂モノマーに対する表面被覆金属化合物粒子2の量が多すぎてしまい、この分散液の粘度が非常に高くなり、金属化合物粒子に対し効果的に分散エネルギーを与えることができず、したがって、表面被覆金属化合物粒子2を高分散状態にすることが困難になり、さらには複合体1の機械的強度を確保することが難しくなるからである。
【0037】
この複合体1における表面被覆金属化合物粒子2の含有率を上記の範囲とすることで、着色性が有効に発現し、特に紫外線遮蔽性を有する酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化セリウム等の金属酸化物粒子を用いた場合に紫外線遮蔽性が有効に発現することとなる。
【0038】
この複合体1は、水を含有していることが好ましい。その理由は、水が典型的な親水性物質であり、しかも非脂溶性であるために、経皮吸収され難いからである。また、水を含有していることが好ましい他の理由は、肌に対する保湿効果が期待されるからである。もちろん、製品を取り扱う利便上、あるいはその他の理由から、乾燥状態で販売および保存して用いることもできる。
【0039】
この複合体1の形状に特に制限はないが、その形状を制御することにより一定の効果が得られることが期待される。例えば、球状の場合、化粧料の伸び、および滑りを一層改善する効果がある。また、板状の場合、透明性と粒子による被覆性能を高めることができる。
【0040】
「複合体の製造方法」
本実施形態の複合体の製造方法は、金属化合物粒子11の表面を酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種により被覆してなる表面被覆金属化合物粒子2を分散媒中に分散させて金属化合物粒子分散液とする分散液作製工程と、この金属化合物粒子分散液を生体由来の高分子を含むゲル状物質中に包埋させる包埋工程とを有する方法である。
【0041】
この金属化合物粒子分散液では、表面被覆金属化合物粒子2の二次粒子径(分散粒子径)を300nm以下、より好ましくは100nm以下に制御するためには、出発原料である金属化合物粒子11の一次粒子径を100nm以下、好ましくは10nm以下に制御する必要がある。
この金属化合物粒子11としては、金属酸化物粒子、金属窒化物粒子及び金属炭化物粒子の群から選択される1種または2種以上を含有していることが好ましく、金属酸化物粒子としては、例えば、紫外線遮蔽材料として用いる場合には、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム及び酸化セリウムの群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
【0042】
このような金属化合物粒子11は、例えば、特開平2−311314号公報に記載された「超微粒酸化亜鉛の製造方法」に準じて作製することができる。
この方法では、亜鉛の酸性塩と酢酸アンモニウムの混合溶液に硫化水素を通じ、得られた沈殿物から可溶塩を除去し、次いで、この沈殿物を非水溶媒に分散した後、これをオートクレーブにて250〜400℃にて加熱してガス分を除去し、その後、得られた乾燥粉を500〜800℃にて加熱処理することにより、酸化亜鉛粒子を得ることができる。
【0043】
この方法を準用することにより、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化セリウム等の金属酸化物は、金属の酸性塩と酢酸アンモニウムの混合溶液に硫化水素を通じ、得られた沈殿物から可溶塩を除去し、次いで、この沈殿物を非水系溶媒に分散した後、これをオートクレーブにて250〜400℃にて加熱してガス分を除去し、その後、得られた乾粉を500〜800℃にて加熱処理することにより、得ることができる。
また、金属窒化物粒子、金属炭化物粒子についても上記の方法を準用することにより、得ることができる。
以上により、一次粒子径が100nm以下、好ましくは10nm以下の金属化合物粒子11を得ることができる。
【0044】
なお、金属酸化物粒子の場合、その一次粒子径は、30nm以下、より好ましくは10nm以下であれば、工業的に量産可能な範囲でいくら細かくても複合体製造上支障がない。ただし、紫外線遮蔽性の効果を得るためには、3nm以上であることが好ましい。
【0045】
次いで、この金属化合物粒子11の表面に、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種からなる被覆層12を形成し、表面被覆金属化合物粒子2とする。
例えば、金属化合物粒子11を、アミノシラン、メルカプトシラン、グリシドキシシラン、メタクリロキシシラン等のシランカップリング剤を用いて表面修飾し、その後、ケイ酸ナトリウム等のケイ酸アルカリ溶液あるいは金属アルコキシド溶液中に浸漬し、金属化合物粒子11の表面に被覆層12を形成する。
【0046】
上記のシランカップリング剤としては、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β―アミノエチル)−γ―アミノプロピルメトキシシラン、N−(β―アミノエチル)−γ―アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ―メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルジメトキシシラン等を例示することができる。
【0047】
被覆層12が酸化ケイ素の場合、シランカップリング剤により表面修飾した金属化合物粒子11をシリコンメトキシド、シリコンエトキシド、シリコンプロポキシド等のシリコンアルコキシドを含む溶液中に浸漬することにより、金属化合物粒子11の表面にあるシランカップリング剤のシラノール基(−SiOH)上にてシリコンアルコキシドの加水分解反応や縮重合反応が行われ、この金属化合物粒子11の表面に酸化ケイ素からなる被覆層12が形成される。
【0048】
被覆層12が酸化アルミニウムの場合、シランカップリング剤により表面修飾した金属化合物粒子11をアルミニウムプロポキシド、アルミニウムブトキシド等のアルミニウムアルコキシドを含む溶液中に浸漬することにより、金属化合物粒子11の表面にあるシランカップリング剤のシラノール基(−SiOH)上にてアルミニウムアルコキシドの加水分解反応や縮重合反応が行われ、この金属化合物粒子11の表面に酸化アルミニウムからなる被覆層12が形成される。
【0049】
被覆層12が酸化アルミニウム/酸化ケイ素の場合、シランカップリング剤により表面修飾した金属化合物粒子11を、アルミニウムプロポキシド、アルミニウムブトキシド等のアルミニウムアルコキシド、及びシリコンメトキシド、シリコンエトキシド、シリコンプロポキシド等のシリコンアルコキシドを含む溶液中に浸漬することにより、金属化合物粒子11の表面にあるシランカップリング剤のシラノール基(−SiOH)上にてアルミニウムアルコキシド及びシリコンアルコキシドの加水分解反応や縮重合反応が行われ、この金属化合物粒子11の表面に酸化アルミニウム/酸化ケイ素の混晶からなる被覆層12が形成される。
この被覆層12の厚みは、被覆層12を形成する際の溶液の温度及び浸漬の時間を制御することにより、所望の厚みに制御することが可能である。
【0050】
次いで、この表面被覆金属化合物粒子2を分散媒中に分散させ、金属化合物粒子分散液とする。この分散液における表面被覆金属化合物粒子2の分散粒子径は、300nm以下が好ましく、より好ましくは100nm以下である。
分散媒としては、例えば、水や有機溶媒が挙げられ、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、β−オキシエチルメチルエーテル(メチルセロソルブ)、β−オキシエチルエーテル(エチルセロソルブ)、ブチル−β−オキシエチルエーテル(ブチルセロソルブ)等のエーテル類、フェノール類、エステル類、ケトン類、グリコール類、芳香族化合物等が挙げられる。
【0051】
次いで、この金属化合物粒子分散液をゲル状物質中に包埋させ、複合体1とする。
包埋する方法としては、特に制限はないが、目的とする複合体1を作製することができる方法として、以下の方法を例示することができる。
ここで、生体由来の高分子としては、アミノ酸、ポリペプチド、蛋白質及び多糖類の群から選択される1種または2種以上、またはこれらの前駆体であることが好ましい。これらアミノ酸、ポリペプチド、蛋白質及び多糖類については、既に説明してあるので、説明を省略する。
【0052】
上記の前駆体の具体的な例としては、コラーゲン、カードラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、フィブロイン、フィブリン、デキストラン、アルギン酸、アガロース等、及びこれらの複合物が挙げられる。
これらの前駆体は、補助成分として合成高分子を含有してもよい。このような合成高分子の具体的な例としては、(ポリ)ビニルアルコール、(ポリ)グリコール、(ポリ)エチレングリコールジアクレート、(ポリ)ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン、(ポリ)アクリル酸、(ポリ)アクリロニトリル、(ポリ)エチレンイミン、エトキシル化(ポリ)エチレンイミン、エトキシル化(ポリ)アリルアミン、ポリペプチド、及びこれらのモノマー、オリゴマー、マクロマー、コポリマー、あるいはその他の誘導体を含めた種々のポリマー等が挙げられる。なお、人体に対して無害な界面活性剤を含有してもよい。
【0053】
上記の金属化合物粒子分散液及び上記の生体由来の高分子を、油性成分(油性溶媒)中にて撹拌・混合してW/Oエマルションを生成し、次いで、このW/Oエマルションを加熱または撹拌・混合して微粒子状に凝固させる。
この撹拌・混合工程においては、ゲル化剤を添加することも好ましい。このゲル化剤は架橋構造を形成するための物質であり、例えば、塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩、塩化アルミニウム等のアルミニウム塩等の多価カチオンが挙げられる。
なお、本発明において「凝固」とは、水やエタノール等の有機溶媒に溶解しない状態、あるいは、これらの溶媒に溶解し難い状態のことである。
この方法により、目的とする複合体1を容易かつ低コストにて作製することができる。
【0054】
また、生成されたゲル状物質の力学的強度を向上させるために、紫外線を照射することもできる。
また、上記の分散液を100mM〜1Mのゲル化剤水溶液に滴下または混合することにより、1mm以上の大きさのゲル状物質を作製することができる。このゲル状物質は、フードプロセッサ等で微粒子化することも可能である。
【0055】
「化粧品材料」
本実施形態の化粧品材料は、化粧品の基材中に複合体1を1質量%以上かつ90質量%以下、好ましくは3質量%以上かつ80質量%以下含有した化粧品材料である。
この化粧品材料では、複合体1の含有率を上記の範囲内としたことにより、表面被覆金属化合物粒子2に由来する機能と、複合体1としての機械的強度を両立させることができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
(シリカ被覆酸化亜鉛微粒子の調製)
上記の「超微粒酸化亜鉛の製造方法」に準じて、平均一次粒子径が10nmの酸化亜鉛微粒子を作製した。次いで、この酸化亜鉛微粒子340gを、12質量%のケイ酸ナトリウム水溶液60gと水1Lとの混合物に投入して懸濁させ、ホモミキサーを用いて8000rpmにて30分間攪拌し、分散液を得た。
【0058】
次いで、この分散液を加温して70℃とし、20質量%の濃塩酸及び12質量%のケイ酸ナトリウム水溶液を、酸化亜鉛微粒子の表面における被覆量がシリカ換算で5質量%となるように徐々に滴下した。この間、酸化亜鉛微粒子が溶解しないよう常にpHを8以上に保持し、ケイ酸ナトリウム水溶液の滴下終了時にはpHを8とした。
この状態を1時間保持して熟成した後、さらに20質量%の濃塩酸をpHが7を下回らないよう注意しながら滴下した。pHが7で安定したところで塩酸の滴下を終了し、さらに1時間70℃にて熟成を行った。
次いで、この熟成物をロータリーフィルターを用いて、洗浄液の伝導度が80μS/cm以下となるまで濾過洗浄し、得られたスラリーをスプレイドライヤーを用いて乾燥し、シリカ被覆酸化亜鉛微粒子(平均粒径:15nm)を得た。
次いで、このシリカ被覆酸化亜鉛微粒子を脱イオン水中に分散させ、実施例1のシリカ被覆酸化亜鉛微粒子分散液とした。
【0059】
(複合体の調製)
10質量%に調製したゼラチン水溶液(ブタ由来のゼラチン、新田ゼラチン社製)1mLと上記のシリカ被覆酸化亜鉛微粒子分散液1mLを混合し、この混合溶液(水相)を、グリセリン脂肪酸エステルの濃度が1質量%のシクロヘキサン(油相:45℃)20mLに加え、ホモジナイザーにて10分間撹拌(5000rpm)し、W/Oエマルションを作製した。
次いで、このW/Oエマルションを氷冷し、さらに紫外線を照射(100W、8時間)し、微粒状に凝固させた。
次いで、遠心分離(3000rpm、10℃)を行い、上澄みのシクロヘキサンを捨て、分散媒をエタノールに置換した後、同様に遠心分離を行い、分散媒を水に置換し、実施例1の酸化亜鉛含有ゼラチン複合体を得た。
【0060】
(複合体の生成及び形状の確認試験)
得られた酸化亜鉛含有ゼラチン複合体の生成及び形状を確認するために、この酸化亜鉛含有ゼラチン複合体1質量部を純水99質量部と混合して1質量%の分散液とし、この分散液に顕微鏡用グリッドを浸漬した後、室温乾燥し、観察用サンプルを得た。このサンプルを透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し、複合体の生成の有無、複合体の形状、複合体内部に包含された酸化亜鉛微粒子の確認、を行った。
【0061】
(酸化亜鉛微粒子の溶出試験)
得られた酸化亜鉛含有ゼラチン複合体からの酸化亜鉛微粒子の溶出の有無を確認するために、この酸化亜鉛含有ゼラチン複合体1質量部を純水99質量部と混合して1質量%の分散液とし、この分散液を7930型冷却遠心機(久保田製作所社製)を用いて1000rpmにて10分間遠心操作を行い、上澄みを採取した。
この上澄みの粒度分布をレーザードップラー型粒度分布計(DLS, Leeds Northrup Microtrac UPA instrument)を用いて測定した。
ここでは、粒子径が50μm以下の粒子が観測された場合を「溶出あり」と判定した。なお、シリカ被覆酸化亜鉛粉末を比較対照として試験したところ、微粒子の溶出があることが確認された。
【0062】
これらの試験の結果、酸化亜鉛含有ゼラチン複合体は、平均粒子径が約100μmの球形のゲル状体であることが確認された。
また、このゲル状体の内部には、分散粒子径10nm〜50nmのシリカ被覆酸化亜鉛微粒子が分散していることが確認された。
さらに、この酸化亜鉛含有ゼラチン複合体では、シリカ被覆酸化亜鉛微粒子の溶出がないことが分かった。
【0063】
(実施例2)
(複合体の調製)
2質量%のアルギン酸ナトリウム水溶液2mLと、実施例1にて得られたシリカ被覆酸化亜鉛微粒子分散液2mLを混合し、この混合溶液(水相)のうち1mLを、ソルビタンモノオレエート0.1vol%含有シクロヘキサン/n−ヘキサン混合溶液(油相:容積比=4/1)50mLに加え、ホモジナイザーにて10分間撹拌(1000rpm)し、W/Oエマルションを作製した。
次いで、このW/Oエマルションに15質量%の塩化カルシウム水溶液50mLを加えて撹拌・混合し、微粒状に凝固させ、実施例2の酸化亜鉛含有アルギン酸カルシウム複合体を得た。
【0064】
この酸化亜鉛含有アルギン酸カルシウム複合体について、複合体の生成及び形状の確認試験、及び酸化亜鉛微粒子の溶出試験を実施例1に準じて行い、評価した。
これらの試験の結果、酸化亜鉛含有アルギン酸カルシウム複合体は、平均粒子径が約60μmの球形のゲル状体であることが確認された。
また、このゲル状体の内部には、分散粒子径10nm〜50nmのシリカ被覆酸化亜鉛微粒子が分散していることが確認された。
さらに、この酸化亜鉛含有アルギン酸カルシウム複合体では、シリカ被覆酸化亜鉛微粒子の溶出がないことが分かった。
【0065】
(実施例3)
(複合体の調製)
蚕から得られた繭を、炭酸ナトリウム0.3質量%及び石鹸0.5質量%含有した石鹸溶液にて洗浄した後、超純水にて再度洗浄した。
次いで、塩化カルシウムと、超純水と、実施例1で作製した酸化亜鉛分散液と、エタノールとを、モル比で塩化カルシウム:超純水:酸化亜鉛分散液:エタノール=1:5.3:2.7:2の割合で混合し、得られた溶液に上記の繭1gを投入し、85℃にて30分間煮沸し、再生フィブロイン溶液を得た。
【0066】
次いで、この再生フィブロイン溶液0.5mL、シクロヘキサン20mL及び食品用界面活性剤SYグリスターCR310(坂本薬品工業社製)1mLをホモジナイザーカップに入れ、このホモジナイザーにて18000rpmにて10分間ホモジナイズ(乳化)した。次いで、このホモジナイザーカップを氷上にて5分間冷却した後、8℃の雰囲気下にて、300Wの紫外線を15分間照射し、実施例3の複合体を得た。
【0067】
この複合体について、複合体の生成及び形状の確認試験、及び酸化亜鉛微粒子の溶出試験を実施例1に準じて行い、評価した。
これらの試験の結果、この複合体は、平均粒子径が約30μmの球形のゲル状体であることが確認された。
また、このゲル状体の内部には、分散粒子径10nm〜50nmの酸化亜鉛微粒子と推定される微粒子が分散していることが確認された。
さらに、この複合体を塩化アルミニウム水溶液に投入し混合して分散液を作製し、この分散液の酸化亜鉛微粒子の溶出試験を実施例1に準じて行ったところ、酸化亜鉛微粒子の溶出がないことが分かった。
【0068】
次に、実施例1〜3の複合体を用いて化粧用クリームの一種である日焼け止めクリームを作製し、紫外線遮蔽効果等を確認した。
(実施例4)
(日焼け止めクリームの調製)
実施例1の酸化亜鉛含有ゼラチン複合体20質量部とカオリン2質量部とをブレンダーで混合し、この粉末状の混合物を、精製水60質量部にプロピレングリコール4質量部を加えて65℃に加熱したプロピレングリコール水溶液に加えてホモミキサーで分散して加熱溶解し、その後65℃にて30分間保持し水相とした。
【0069】
一方、セチルアルコール1質量部と、ワセリン9質量部と、流動パラフィン1質量部と、シリコーン油1質量部と、グリセリンモノステアリン酸エステル1質量部と、セチルアルコールエーテル1質量部とを、ホモミキサーで混合して加熱溶解し、その後65℃にて30分間保持し油相とした。
次いで、上記の水相に上記の油相を加え、ホモミキサーで均一に乳化、分散させ、その後、これを室温まで冷却させつつ撹拌することで、実施例4の日焼け止めクリームを得た。
【0070】
(日焼け止めクリームの紫外線遮蔽効果)
次いで、この日焼け止めクリーム3gを10cm角の石英ガラス板上に塗布し、この塗布膜の紫外線吸収スペクトルを分光光度計により測定した。その結果、この塗布膜には紫外線遮蔽効果があることが確認された。
【0071】
(実施例5)
実施例1の酸化亜鉛含有ゼラチン複合体を実施例2の酸化亜鉛含有アルギン酸カルシウム複合体に替えた他は、実施例4に準じて実施例5の日焼け止めクリームを得た。
この日焼け止めクリームの紫外線遮蔽効果を実施例4に準じて評価したところ、紫外線遮蔽効果があることが確認された。
【0072】
(実施例6)
実施例1の酸化亜鉛含有ゼラチン複合体を実施例3の複合体に替えた他は、実施例4に準じて実施例6の日焼け止めクリームを得た。
この日焼け止めクリームの紫外線遮蔽効果を実施例4に準じて評価したところ、紫外線遮蔽効果があることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の複合体は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種により被覆してなる金属化合物粒子を、アミノ酸、ポリペプチド、蛋白質及び多糖類の群から選択される1種または2種以上を含むゲル状物質中に分散することにより、粒径制御が容易になり、材料としての適正な大きさを維持することができ、その結果、化粧品としての機能性と安全性を両立させた化粧品材料を安価に提供することができるものであるから、上述した日焼け止めクリームはもちろんのこと、紫外線遮蔽効果を必要とする化粧品材料として広く利用が可能であり、その工業的価値は極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態の複合体の断面構造を示す模式図である。
【符号の説明】
【0075】
1 複合体
2 表面被覆金属化合物粒子
3 ゲル状物質
11 金属化合物粒子
12 被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種により被覆してなる金属化合物粒子を、アミノ酸、ポリペプチド、蛋白質及び多糖類の群から選択される1種または2種以上を含むゲル状物質中に分散してなることを特徴とする複合体。
【請求項2】
少なくとも一辺の長さが40nm以上かつ100μm以下であることを特徴とする請求項1記載の複合体。
【請求項3】
前記ゲル状物質は極性溶媒を含むことを特徴とする請求項1または2記載の複合体。
【請求項4】
前記金属化合物は、金属酸化物、金属窒化物及び金属炭化物の群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1、2または3記載の複合体。
【請求項5】
前記金属酸化物は、紫外線遮蔽機能を有することを特徴とする請求項4記載の複合体。
【請求項6】
紫外線遮蔽機能を有する前記金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム及び酸化セリウムの群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項5記載の複合体。
【請求項7】
酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種により被覆してなる金属化合物粒子を分散媒中に分散させて金属化合物粒子分散液とする分散液作製工程と、この金属化合物粒子分散液を生体由来の高分子を含むゲル状物質中に包埋させる包埋工程とを有することを特徴とする複合体の製造方法。
【請求項8】
前記高分子は、アミノ酸、ポリペプチド、蛋白質及び多糖類の群から選択される1種または2種以上、またはこれらの前駆体であることを特徴とする請求項7記載の複合体の製造方法。
【請求項9】
前記包埋工程は、前記金属化合物粒子分散液及び前記高分子を油性溶媒中にて撹拌・混合してW/Oエマルションを生成し、次いで、このW/Oエマルションを加熱または撹拌・混合して微粒子状に凝固させる工程であることを特徴とする請求項7または8記載の複合体の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし6のいずれか1項記載の複合体を1質量%以上かつ90質量%以下含有してなることを特徴とする化粧品材料。

【図1】
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【公開番号】特開2009−280547(P2009−280547A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136720(P2008−136720)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】