説明

複合化機能性フィラー

【課題】ブレーキ用摩擦材、構造用接着剤、コンクリート等の建築用構造部材及びプラスッチック等の成形材料として配合して使用することが可能であり、圧縮成形するときに機械的強度が高く、湿度依存性の低い特性を有する複合化機能性フィラーを提供する。
【解決手段】樹脂が含浸された多孔質機能性フィラーの樹脂中に少なくとも繊維基材及び/又はウイスカーを配合したことを特徴とする複合化機能性フィラー。前記多孔質機能性フィラーが、層状粘土鉱物の層間にカップリング剤あるいは無機物を挿入し層間架橋体としたフィラー又は前記フィラーの立体化を行って得られる、メソ気孔、ミクロ気孔及びマクロ気孔を併せ持つ多孔質フィラーであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質機能性フィラーの気孔を樹脂で含浸した樹脂含浸多孔質フィラーに、繊維、ウイスカー等を複合化した複合化機能性フィラーに関し、特に、自動車、鉄道車両、産業機械等のブレーキに使用されるブレーキ用摩擦材、構造用接着剤、コンクリート等の建築用構造部材及びプラスッチック等の複合材料の配合材として使用する複合化機能性フィラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、層状粘土鉱物に有機イオン、無機イオン、ゾル粒子あるいはカップリング剤等を挿入して、層間に細孔を形成させて得られる多孔質粘土鉱物は、新しい多孔質機能性フィラーとして注目されている。この材料は原料の粘土鉱物に比べて、大きな比表面積や細孔容積を持ち、また耐熱性や吸着活性が向上するため、ペンキ等の顔料の増粘剤、ゴム組成物の改質剤、触媒、吸着剤、イオン交換体あるいは電子供与体の化合物を層間に導入することによりフォトクロミズム、エレクトロミズム等の特性を備えた複合材料等の機能性材料として工業的利用が試みられている。
【0003】
例えば、スメクタイトのような層状粘土鉱物の層間に、数分子ないし数十分子オーダーサイズの空隙を有する無機酸化物微粒子が充填された粘土層間架橋体は、スメクタイトに重合可能な陽イオン性ヒドロキシ無機金属錯体及び水との混合物を加えて反応させることにより無機酸化物微粒子を層間で形成させたり、層状粘土の層間イオンを長鎖アルキルアンモニウムイオンと交換することにより層間距離を拡大したのち、金属アルコキシ化合物を層間の空隙に導入し、加水分解して酸化物微粒子を層間で形成させる方法などが研究されている。
【0004】
又、別の複合材料の例として、溶媒に分散させた層状粘土鉱物、もしくは層状粘土鉱物の粉末と1〜10nmの範囲にある酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム等のコロイド溶液を室温でもしくは加熱しながら反応させることにより、層状粘土鉱物と無機物の層間架橋体を作製し、薄層化した板状粒子の立体化を行って多孔質機能性材料を調製したり、あるいは層状粘土鉱物の粉末とカップリング剤の層間架橋体を作製し、薄層化した板状粒子の立体化を行って疎水性でマクロ気孔とメソ気孔、ミクロ気孔を併せ持つ層状物質とすることが検討されている。
【0005】
前記のようにして層状粘土鉱物から調製された多孔質の機能性フィラーは、その層状構造から高い潤滑性を示すため、層状粘土鉱物を改質してフェノール樹脂等を配合した車両ブレーキ用摩擦材等への利用が検討されている。しかし、吸湿して膨潤しやすく、潤滑性及び機械的特性が湿度の影響を受けやすい。
多孔質フィラーあるいは多孔質機能性フィラーに樹脂を含浸してフィラーの機械的強度を高めることも検討されているが、構造のばらつきによっては補強効果が十分発揮されない可能性がある。また、従来、樹脂、プラスチック等の補強用として繊維、ウイスカーを使用する場合には、使用される繊維、ウイスカーはそれら同士の絡み合い、凝集により分散性が悪化し、完全な補強効果が得られない場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、層状粘土鉱物を出発原料とする多孔質フィラーは湿度の影響を受けやすいので、繊維あるいはウイスカー等と配合して複合材料にしたときに、潤滑性及び機械的特性が湿度の影響を受けやすいという欠点があった。更に経時により、それらが偏析しやすいという問題があった。
従って、本発明の課題は、ブレーキ用摩擦材、構造用接着剤、コンクリート等の建築用構造部材及びプラスッチック等の成形材料として配合して使用することが可能であり、機械的強度が高く、湿度依存性は低く、偏析を起こしにくい複合材料の配合材料としての機能性フィラーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の手段により上記の課題を解決した。
(1)樹脂が含浸された多孔質機能性フィラーの樹脂中に少なくとも繊維基材及び/又はウイスカーを配合したことを特徴とする複合化機能性フィラー。
(2)前記多孔質機能性フィラーが、層状粘土鉱物の層間にカップリング剤あるいは無機物を挿入し層間架橋体としたフィラー又は前記フィラーの立体化を行って得られる、メソ気孔、ミクロ気孔及びマクロ気孔を併せ持つ多孔質フィラーであることを特徴とする請求項1記載の複合化機能性フィラー。
(3)前記樹脂が熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の複合化機能性フィラー。
(4)前記樹脂が液状樹脂であり、前記多孔質機能性フィラーに該液状樹脂を含浸する際、あるいは含浸後に、前記液状樹脂を硬化剤で架橋させるか又は自己架橋させたものであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の複合化機能性フィラー。
(5)前記多孔質機能性フィラーに含浸された樹脂及び/又は複合化機能性フィラーにマトリックス樹脂として配合される樹脂がフェノール樹脂であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の複合化機能性フィラー。
【発明の効果】
【0008】
本発明の複合化機能性フィラーは、多孔質機能性フィラーに予め樹脂(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂)が含浸されていることにより、カードハウス構造によるマトリックス樹脂との投錨効果に加え、繊維、ウイスカーとマトリックス樹脂との結合から繊維、ウイスカーと同等以上の補強効果を発揮する。また、予め、多孔質機能性フィラーに含浸する樹脂に繊維、ウイスカーが複合化しているため、配合材料の混合時、繊維、ウイスカー単独の場合のような偏析を起こしにくい。
その上、有機化層状粘土鉱物の層間に挿入された挿入化合物により樹脂含浸フィラーが疎水化されるため、成形体の膨潤性が低くなり湿度による特性の変動が小さくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の複合化機能性フィラーは、少なくとも、予め樹脂を含浸した多孔質機能性フィラー、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂、繊維基材及び/又はウイスカーを樹脂含浸溶媒と共に反応装置に投入し、室温〜100℃の温度で、5〜100時間撹拌した後、溶媒を除去・減圧乾燥、粉砕処理の簡単な工程を経て複合化機能性フィラー(試料)とすることが出来る。
複合化機能性フィラーの組成比は、試料全体に対し、多孔質機能性フィラーが5〜20質量部、樹脂が5〜15質量部、繊維基材もしくはフィラーが5〜30質量部である。前記範囲の組成比であれば、別の配合材料を配合して成形したとき、十分成形体の曲げ強度を確保することが出来る。
【0010】
本発明で出発原料の材料として用いる多孔質機能性フィラーは、層状粘土鉱物に有機化合物又は無機物を層間に挿入したマクロ気孔を有する多孔質機能性フィラーである。更に好ましいのは、薄層化した層状粘土鉱物等の板状粒子の立体化を行って疎水性でマクロ気孔とメソ気孔、ミクロ気孔を併せ持つ多孔質機能性フィラーである。本発明では、これらの多孔質機能性フィラーのマクロ気孔に樹脂を含浸した多孔質機能性フィラーを出発原料とする。
使用する多孔質機能性フィラーのマクロ気孔の比率は用途により異なるが、全気孔中の40〜90%にあることが望ましく、好ましくは70〜90%の範囲である。又、成形材料の強度を確保するために、マクロ気孔の気孔径は0.05〜20μmの範囲にあり、ミクロ気孔の気孔径が1μm以上にある多孔質機能性フィラーを使用することが好ましい。マクロ気孔の比率と気孔径が前記範囲外になると複合材料の強度が低下したり、フィラー効果が失われてしまう。
【0011】
多孔質機能性フィラーの原料に使用できるのは、主に層状粘土鉱物であり、例えば、層状構造をもつケイ酸塩鉱物等で、ケイ酸で構成される四面体、AlやMg等を含む八面体等が積層された層状構造を有する物質である。このようなものとしては、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、パイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、マイカ、フッ素化マイカ、カオリナイト、パイロフィロライト等が挙げられ、これらは天然品であっても、合成品であってもよい。また、リン酸ジルコニウム、フッ素処理した膨潤性マイカ等も用いることができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの層状無機化合物のうち、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト等が好ましい。又、アスペクト比は20以上が好ましく、50〜200が更に好ましい。
【0012】
本発明では層状粘土鉱物を出発原料とする多孔質機能性フィラーに、樹脂を含浸させる場合、前処理を行い、層状粘土鉱物の層間距離を広げておくことが好ましい。
具体的には、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、スルホニウムイオン、ホスホニウムイオン等のオニウムイオン基を有する有機物を層間に挿入し、層間距離を広げることが出来る。オニウムイオン基を含む化合物としては、アルキル鎖の炭素数が6以上の、オクタデシルアンモニウムイオン、モノメチルアンモニウムイオン、ジメチルオクタデシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオンを含む化合物を挙げることができる。
これらの化合物は、イオン置換以前の状態としては塩素などのカウンターイオンでオニウム塩として存在するが、イオン交換後は、十分に洗浄、濾過しておく。
【0013】
無機物で層間距離を広げるときは、層状粘土鉱物を無機アルコキシ化合物に懸濁し、混合することによって層間に第四級アンモニウムイオンを挿入した層状粘土鉱物に無機アルコキシ化合物を接触させ層間に導入する。この際の処理温度は室温から100℃程度である。このようにして無機アルコキシ化合物が加水分解して対応する水酸化物を生じ、次いでこれが脱水縮合してその表面にアルキル基を結合した無機酸化物微粒子を形成する。次いで、この生成物から液体を除去・乾燥後、焼成する。この焼成により層間で生成した無機酸化物が生成する。
【0014】
別の例として、層状粘土鉱物を水中に分散しpHをコントロールした後、粘土に対し0.01〜30質量%、好ましくは0.1〜15質量%のシランカップリング剤をメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、アセトニトリル、酢酸等の有機溶媒あるいはそれらの混合溶媒に溶かして分散液に投入し、加熱撹拌する。加熱温度は室温〜80℃の温度範囲である。その後、ろ過及び水洗を行い乾燥処理して有機化層状粘土鉱物を得ることができる。
得られた生成物は、層状粘土鉱物の層間にシランカップリング剤が挿入されたことにより、吸湿による膨潤特性がなくなり、湿度による特性の変動が小さくなる。又、シランカップリング剤の挿入により層状粘土鉱物の底面間隔が拡大し、潤滑性が向上する。
【0015】
次に、本発明において多孔質機能性フィラーの含浸に使用する熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂について説明する。
本発明において多孔質機能性フィラーに含浸する熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ポリプロピレン、ポリウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリエチレンブチレート、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルペンテン、ポリイソブチレン、シクロオレフィンポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアルキレンオキシド、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリシロキサン、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。
【0016】
本発明に用いる熱硬化性樹脂も、限定されないが、フェノール樹脂(ストレートフェノール樹脂、ゴム等による各種変性フェノール樹脂を含む)、尿素樹脂、尿素・メラミン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を挙げることができ、これらの中ではフェノール樹脂とエポキシ樹脂が好ましい。又、熱可塑性エラストマーであるブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム等の比較的低分子量の樹脂も含浸条件を容易に設定できるので好ましい。
【0017】
フェノール樹脂は、レゾール型とノボラック型樹脂に分類され、ノボラック型樹脂は固体であるが、レゾール型樹脂は主に液状で得られる。前記樹脂はフェノール類とアルデヒド類を弱酸性ないしアルカリ性触媒を用いて反応させると、反応性メチロール基を有するフェノール樹脂として得られる。
本発明で用いられる液状レゾール型フェノール樹脂は、公知の手段により得られるものであれば殆どの種類の樹脂を使用できるが、フェノール類としてフェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール、シクロヘキシルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどを用いることができこれらは単独もしくは2種以上混合して使用することができる。また、油変性、ゴム変性等公知の変性を行ったフェノール樹脂の使用も差し支えない。アルデヒド類としてはホルマリン、パラホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド等を単独もしくは2種以上混合して使用することができる。触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酢酸亜鉛、アンモニア、ヘキサミン等の1〜3級アミン等公知の触媒が使用できる。
【0018】
溶媒としてはレゾール型フェノール樹脂を溶解させられるものであれば水、有機溶媒のどちらでも使用できる。有機溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン等のケトン類、セロソルブ類等が好適であるがこれに限定されるものではない。またこれらは2種以上の混合溶媒として使用することも可能である。
【0019】
レゾール型樹脂は樹脂の溶媒として比較的多くの溶媒を選択できるので含浸処理を容易に行うことが出来る。又、自己架橋性があるので含浸処理を行った後架橋すれば、フィラーのマクロ気孔が固体となるので圧縮変形に対して寸度安定性が向上する。
ノボラック型フェノール樹脂もレゾール型樹脂と同様に含浸することが出来るが、含浸溶媒の種類がやや制限される。フィラーに含浸したフェノール樹脂はヘキサメチレンテトラミンのような硬化剤で樹脂を硬化することが望ましい。
【0020】
本発明で使用することの出来るエポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンとビスフェノール類などの多価フェノール類や多価アルコールとの縮合によって得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂や、エピクロルヒドリンとカルボン酸との縮合によって得られるグリジジルエステル型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネートやエピクロルヒドリンとヒダントイン類との反応によって得られるヒダントイン型エポキシ樹脂のような複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0021】
エポキシ樹脂を使用する場合、樹脂の含浸処理中あるいは含浸処理後に硬化剤を添加してマクロ気孔中の樹脂を硬化することが望ましい。硬化剤としてはアミン系硬化剤を使用することが出来る。エポキシ樹脂の硬化剤としては酸無水物系の硬化剤も知られているが、酸無水物系の硬化剤を用いて硬化したエポキシ樹脂中に形成される結合の網目は、エステル結合、あるいは、エステル結合とエーテル結合から構成され、これらは加水分解を起こす可能性があるため本発明には、耐水性の観点からアミン系硬化剤が適している。アミン系硬化剤の具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
【0022】
熱可塑性エラストマーであるブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴムのようなブチル系ゴム等も含浸用樹脂として使用できるが、その場合、数平均分子量が500〜3,000程度の液状ポリマーを多孔質フィラーに含浸した後、加硫促進剤で樹脂を硬化すれば含浸工程の作業効率を高めることが出来る。
【0023】
樹脂の含浸に使用する溶媒は、特に限定されないが、プロトン供与体を含む溶媒、極性溶媒が使用できる。例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、MEK、ジエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノアセチレート、エチレングリコールジアセチレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−テトラデカン等の脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン、酢酸エチル等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよいが、水、アルコール類が使用できれば含浸操作が容易になる。
【0024】
本発明の複合化機能性フィラーは、通常多孔質機能性フィラーと繊維又はウイスカーとを配合、混合したものに樹脂を含浸させることにより製造されるが、多孔質機能性フィラーに熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂を含浸する操作は、溶媒とフィラーを混合した状態又は樹脂を予め溶解した状態で撹拌装置に投入する。含浸を効率よく行うためには、樹脂を溶解した状態でフィラー粒子を分散することが勧められる。従って、樹脂の良溶媒を選択することが含浸操作の要点となる。含浸温度は特に制約されないが、室温から100℃程度の範囲で行うことが出来る。又、樹脂を含浸する際、多孔質フィラーのぬれを良くするために界面活性剤を添加してもよい。
含浸処方もとくに制約されないが、多孔質機能性フィラーと樹脂1質量部に対し、溶媒量は2〜40質量部、好ましくは4〜20質量部混合する。溶媒の量が40質量部を超えると、得られる樹脂含浸有フィラーの脱水、乾燥工程で処理効率が低下し、溶媒量が少なすぎても含浸効率が低下する。
【0025】
繊維基材として上記に加えて添加できるものとして、摩擦材に通常用いられる繊維基材が挙げられる。たとえばスチール、ステンレススチール、銅、黄銅、りん青銅、真鍮、青銅、アルミニウム等の金属繊維;チタン酸カリウム繊維、ガラス繊維、ロックウール等の無機繊維;アラミド繊維、カーボン繊維、ポリイミド繊維、セルロース繊維、アクリル繊維等の有機繊維;セラミック繊維等である。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。繊維のサイズとしては直径0.1〜10μm、長さ5〜300μmの範囲であれば混練り工程で取り扱いやすい。
【0026】
本発明の機能性フィラーの配合に用いるウイスカーの代表的なものとしては、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、窒化珪素等のセラミックウイスカー並びにメタル系ウイスカー、黒鉛、炭化珪素等のカーボン系ウイスカー及び酸化亜鉛、二酸化スズ、酸化マグネシウム、炭酸カルシウムウイスカー等の鉱物ウイスカー等を挙げることができる。それらの中で、本発明においてはチタン酸カリウム及び炭化珪素ウイスカーが好ましい。
使用するウイスカーとしては、直径0.1〜1μm、長さ5〜30μmの範囲で、アスペクト比が50〜200程度のウイスカーを使用できる。ウイスカーが前記の数値範囲にあれば、成形体の曲げ強度を十分確保できるが、前記の範囲を越えると強度が十分でなく、製造にも問題が生じてくる。
【0027】
複合化機能性フィラー(試料)は、配合・成形工程での混合撹拌等を均一にするために、粉砕造粒することが好ましい。その際の粒子の大きさは、平均径が0.02〜7mm、好ましくは0.03〜5mmである。0.02mm未満の場合は配合材料を混練りしにくくなり、7mmを超える場合は、押出機における噛み込みが悪くなり、分散不良の原因となる。
【0028】
上記のようにして得られた複合化機能性フィラーは湿度依存性が大幅に低下し、圧縮変形に対する機械的強度が向上しているため、車両ブレーキ用摩擦材、構造用接着剤、コンクリート等の建築用構造部材及びプラスッチック等配合材料として利用することが出来る。
【0029】
複合材料としてブレーキ用摩擦材を成形する場合、繊維基材、無機充填材、摩擦調整材及び結合材等が配合されるが、層状粘土鉱物を原料とする本発明の樹脂を含浸した複合化機能性フィラーは、銅やアルミニウム、亜鉛等の金属粒子、バーミキュライトやマイカ等の鱗片状無機物、硫酸バリウムや炭酸カルシウム等の粒子と併用して無機充填材として使用することが出来る。
【0030】
摩擦材の製造は周知の製造工程により行うことができ、例えば、予備成形、熱成形、加熱、研磨等の工程を経て摩擦材を作製することができる。ディスクブレーキ用摩擦パッドの製造工程の場合においては、板金プレスにより所定の形状に成形され、脱脂処理及びプライマー処理が施され、そして接着剤が塗布されたプレッシャプレートと、耐熱性有機繊維や無機繊維、金属繊維等の繊維基材と、無機・有機充填材、摩擦調整材及び熱硬化性樹脂バインダ等の粉末原料とを配合し、攪拌により十分に均質化した原材料を常温にて所定の圧力で成形(予備成形)して作製した予備成形体とを、熱成形工程において所定の温度及び圧力で熱成形して両部材を一体に固着し、アフタキュアを行い、最終的に仕上げ処理を施す工程が行われる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
実施例1、比較例1〜3
(多孔質機能性フィラーの調製)
バーミキュライト10gとドデシルトリメチルアンモニウムクロリド8gを、イオン交換水100mlに溶解し、50℃で10時間かきまぜたのち、遠心分離機により、固液分離した。次に分離した固形物をメチルアルコールで2回、イオン交換水で1回洗浄したのち、さらにイオン交換水100mlとドデシルトリメチルアンモニウムクロリド8gを加え、50℃において24時間撹拌した。次いで遠心分離して得た固形分をメチルアルコールで3回洗浄したのち、風乾することによりドデシルトリメチルアンモニウムイオンを層間に挿入した層状粘土鉱物を得た。これを多孔質機能性フィラーとする。
【0033】
上記の多孔質機能性フィラー15g、フェノール樹脂15g、アラミドパルプ7.5g及びエタノール100mlを反応容器に投入し、70℃で良く撹拌した。この混合溶液を80℃で72時間減圧乾燥した後、粉砕処理を経て試料(複合化機能性フィラー)を得た。
【0034】
【表1】

【0035】
(強度試験)
第1表の配合処方で、サイズが50mm×65mm×10mmのテストピースを30MPaの圧力をかけ成形し、強度特性を評価した。
第1表の配合処方で成形したテストピースの試験結果を第2表に示す。曲げ強度試験はJIS D 4311の方法に従って行った。実施例のサンプルは比較例のそれと比較して曲げ強度が高くなっており、樹脂を含浸した多孔質フィラーを使用したことによる投錨効果が確認された。
【0036】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の複合化機能性フィラーは、湿度依存性が低い特性を有し、成形時の機械的強度が高いので、自動車、鉄道車両、航空機及び産業機械等のブレーキ用摩擦材、構造用接着剤、コンクリート等の建築用構造用部材及びプラスッチック等の成形材料等に利用範囲が拡大すると思われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂が含浸された多孔質機能性フィラーの樹脂中に少なくとも繊維基材及び/又はウイスカーを配合したことを特徴とする複合化機能性フィラー。
【請求項2】
前記多孔質機能性フィラーが、層状粘土鉱物の層間にカップリング剤あるいは無機物を挿入し層間架橋体としたフィラー又は前記フィラーの立体化を行って得られる、メソ気孔、ミクロ気孔及びマクロ気孔を併せ持つ多孔質フィラーであることを特徴とする請求項1記載の複合化機能性フィラー。
【請求項3】
前記樹脂が熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の複合化機能性フィラー。
【請求項4】
前記樹脂が液状樹脂であり、前記多孔質機能性フィラーに該液状樹脂を含浸する際、あるいは含浸後に、前記液状樹脂を硬化剤で架橋させるか又は自己架橋させたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合化機能性フィラー。
【請求項5】
前記多孔質機能性フィラーに含浸された樹脂及び/又は複合化機能性フィラーにマトリックス樹脂として配合される樹脂がフェノール樹脂であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の複合化機能性フィラー。

【公開番号】特開2008−189883(P2008−189883A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28265(P2007−28265)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】