説明

複合半透膜、その製造方法、ならびにそれを用いたエレメント、流体分離装置、および水処理方法

微多孔性支持膜上に形成されたポリアミドからなる分離機能層を備える複合半透膜であって、陽電子消滅寿命測定法により測定されるとき、該ポリアミドからなる分離機能層が0.25nm以上0.35nm以下の平均孔半径を有しかつ0.2nm%以上0.3nm%以下の空孔量を有する複合半透膜。一官能性酸ハロゲン化合物が該ポリアミド膜に結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体混合物の選択的分離に有用な複合半透膜およびその製造方法に関する。例えば本発明は、微多孔性支持膜上に形成されたポリアミドからなる分離機能層を備える複合半透膜であって、海水や汽水からホウ素を除去するのに有利な複合半透膜、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複合半透膜による海水の脱塩が試みられてきており、そして現在、世界中の水処理プラントで実用化されてきている。複合半透膜は、一般に微多孔性支持膜上に分離機能層を被覆してなる。その分離機能層を架橋芳香族ポリアミドにより形成した場合、ベンゼン環を含むため該層は硬く剛直であるという利点があり、また、芳香族多官能性アミンと芳香族多官能性酸ハロゲン化物との界面重縮合により該層を容易に形成できるという利点がある他、塩除去率が高く、透過流束が高いといった利点も知られている(特開平1−180208号および特開平2−115027号)。
【0003】
しかし、今日、当該技術において水質基準はますます厳しく管理されている。特に海水中わずかに含まれるホウ素を通常の処理で飲料水に適用できる濃度に低減することは困難であり、この問題を解決するための複合半透膜がいくつか提案されている(特開平11−19493号および特開2001−259388号)。しかし、これらの膜では、25℃、pH6.5、ホウ素濃度5ppm、およびTDS濃度3.5重量%の海水を5.5MPaの操作圧力で透過させるとき、見込まれる膜透過流束は0.5m/m・日以下であり、またホウ素除去率はせいぜい91〜92%程度であるため、さらに高い溶質除去性能を有する複合半透膜の開発が望まれてきた。
【0004】
複合半透膜の溶質除去性能を向上させるために、複合半透膜の分離機能層の孔径を小さくすればよいと考えられる。しかし、それと同時に、十分な水透過能力を得るため、孔径を適度に大きくする必要がある。一方、複合半透膜の分離機能層中の孔径が小さくても、半透膜の孔数および空孔量が多い場合、透過水の容量は増加するが溶質除去性能は低下すると考えられる。すなわち、溶質除去性能を向上させ、かつ透過水の容量を維持するためには、複合半透膜の分離機能層における孔径と空孔量の両方を適度に調整する必要がある。薄膜における孔径分布および空孔量を測定する手段の一つとして、従来、陽電子消滅寿命測定法を利用する方法が開示されている(特開2001−142233号および特開平11−169689号)。しかし、これらの方法により、孔半径および空孔量と溶質除去率との相関性は見出されておらず、従って、複合半透膜のホウ素除去性能を示す指標は、これまで得られていなかった。
【0005】
複合半透膜の溶質除去性能を向上させる手段として、反応溶液に新規な反応剤を添加する方法が挙げられる。この方法は、従来法とそれほど変わらないため、簡便な改良法として有用である。例えば、複合半透膜において、架橋ポリアミドが、分子中に2以上のアミノ基を有するポリアミン成分と、新規な反応剤としての酸成分(それは、分子中に2以上のハロゲン化カルボニル基を有する線状脂肪族ポリ酸ハロゲン化物からなる)とにより構成されることが開示されている(特許第3031763号)。該方法により、高い塩除去率と高い透過流束を有する複合半透膜およびその製造方法が提供されると記載されているが、この方法によってもホウ素除去率をさらに向上させることは不可能である。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、高い塩除去率を有するとともに、ホウ酸のような中性領域において非解離の物質に対しても高い除去性能を有する複合半透膜およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
上記目的および他の目的を達成するため、本発明は以下を提供する。
【0008】
(I)微多孔性支持膜上に形成されたポリアミドからなる分離機能層を備える複合半透膜であって、陽電子消滅寿命測定法により測定されるとき、該ポリアミドからなる分離機能層が0.25nm以上0.35nm以下の平均孔半径を有しかつ0.2nm%以上0.3nm%以下の空孔量を有する、複合半透膜。
【0009】
(II)微多孔性支持膜上に形成されたポリアミドからなる分離機能層を備える複合半透過膜であって、該ポリアミドからなる分離機能層中のポリアミド分子には共有結合を介して以下の式(1)〜(3)から選ばれるアシル基が結合している、複合半透膜。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、nは0または1を示し、XはO、S、またはNRを示し、R、R、およびRはそれぞれ水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示し、RおよびRの少なくとも一方は水素原子であり、RおよびRはそれぞれ水素原子、カルボキシ基以外の一つまたは複数の置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、またはカルボキシ基以外の一つまたは複数の置換基を有していてもよい炭素数1〜12の芳香族基を示し、Rはカルボキシ基以外の一つまたは複数の置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基またはカルボキシ基以外の一つまたは複数の置換基を有していてもよい炭素数1〜12の芳香族基を示し、かつR、R、R、およびRの任意の原子は共有結合を介して環構造を形成していてもよい)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、n、R、およびRは上記と同義であり、Yはハロゲン原子を示し、RおよびRはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基以外の一つまたは複数の置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、またはカルボキシ基以外の一つまたは複数の置換基を有していてもよい炭素数1〜12の15芳香族基を示し、かつRおよびRの原子は共有結合を介して環構造を形成していてもよい)、および
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、Rは、炭素数1〜12の5員環芳香族基を示し、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる原子を該環内に2以上有するものであり、かつカルボキシ基以外の一つまたは複数の置換基を有していてもよい)。
【0016】
(III)該ポリアミドからなる分離機能層中のポリアミド分子に共有結合を介して以下の式(1)〜(3)から選ばれるアシル基が結合している、(I)に記載の複合半透膜。
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、n、X、Y、およびR〜Rは(II)で定義されたものと同義である。)
(IV)該ポリアミドからなる分離機能層が、多官能性アミンを含む水溶液と、多官能性酸ハロゲン化物および以下の式(4)〜(6)から選ばれる酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液とを微多孔性支持膜上で接触させることによる界面重縮合により形成された架橋ポリアミドからなる、(I)または(II)に記載の複合半透膜。
【0019】
【化5】

【0020】
(式中、n、X、Y、およびR〜Rは(II)で定義されたものと同義であり、かつZはハロゲン原子を示す。)
(V)該ポリアミドからなる分離機能層が、多官能性アミンを含む水溶液と、多官能性酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液と、(IV)の式(4)〜(6)から選ばれる酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液とを微多孔性支持膜上で接触させることによる界面重縮合により形成された架橋ポリアミドからなる、(I)または(II)に記載の複合半透膜。
【0021】
(VI)式(4)〜(6)から選ばれる酸ハロゲン化物が、メトキシアセチルクロリド、エトキシアセチルクロリド、フェニルオキシアセチルクロリド、2−メチルフェニルオキシアセチルクロリド、2−エチルフェニルオキシアセチルクロリド、(4−クロロフェニル)オキシアセチルクロリド、(フェニルチオ)アセチルクロリド、ベンジルオキシアセチルクロリド、2−フルオロプロピオニルクロリド、2−クロロプロピオニルクロリド、2−ブロモプロピオニルクロリド、ヘプタフルオロブチリルクロリド、アセトキシアセチルクロリド、トリフルオロアセチルクロリド、トリクロロアセチルクロリド、(−)−メンチルオキシアセチルクロリド、およびイソオキサゾール−5−カルボニルクロリドからなる群から選ばれる少なくとも1つである、(IV)に記載の複合半透膜。
【0022】
(VII)式(4)〜(6)から選ばれる酸ハロゲン化物が、メトキシアセチルクロリド、エトキシアセチルクロリド、フェニルオキシアセチルクロリド、2−メチルフェニルオキシアセチルクロリド、2−エチルフェニルオキシアセチルクロリド、(4−クロロフェニル)オキシアセチルクロリド、(フェニルチオ)アセチルクロリド、ベンジルオキシアセチルクロリド、2−フルオロプロピオニルクロリド、2−クロロプロピオニルクロリド、2−ブロモプロピオニルクロリド、ヘプタフルオロブチリルクロリド、アセトキシアセチルクロリド、トリフルオロアセチルクロリド、トリクロロアセチルクロリド、(−)−メンチルオキシアセチルクロリド、およびイソオキサゾール−5−カルボニルクロリドからなる群から選ばれる少なくとも1つである、(V)に記載の複合半透膜。
【0023】
(VIII)25℃、pH6.5、ホウ素濃度5ppm、およびTDS濃度3.5重量%の海水を5.5MPaの操作圧力で透過させるときに、下式の関係を満足する、(I)または(II)に記載の複合半透膜。
【0024】
ホウ素除去率(%)≧96−4×膜透過流束(m/m・日)
(IX)25℃、pH6.5、ホウ素濃度5ppm、およびTDS濃度3.5重量%の海水を5.5MPaの操作圧力で透過させるときに、膜透過流束が0.5m/m・日以上でありかつホウ素除去率が94%以上である、(I)または(II)に記載の複合半透膜。
【0025】
(X)25℃、pH6.5、ホウ素濃度5ppm、およびTDS濃度3.5重量%の海水を5.5MPaの操作圧力で透過させるときに、TDS透過係数が0.1×10−8m/s以上3×10−8m/s以下である、(I)または(II)に記載の複合半透膜。
【0026】
(XI)(I)または(II)に記載の複合半透膜を製造する方法であって、
2個以上の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有する多官能性アミンを含む水溶液を微多孔性支持膜と接触させること、
2個以上の酸ハロゲン化物基を有する多官能性酸ハロゲン化物を含む、水と非混和性の有機溶媒の溶液を接触させて、界面重縮合により架橋ポリアミドからなる分離機能層を該微多孔性支持膜上に形成すること、および
(IV)の式(4)〜(6)から選ばれる酸ハロゲン化物を該多官能性酸ハロゲン化物に対して5mol%以上の量で含む有機溶媒溶液を該分離機能層と接触させることを備える、方法。
【0027】
(XII)(I)または(II)に記載の複合半透膜を製造する方法であって、
2個以上の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有する多官能性アミンを含む水溶液を微多孔性支持膜と接触させること、
2個以上の酸ハロゲン化物基を有する多官能性酸ハロゲン化物を含み、かつ、(IV)の式(4)〜(6)から選ばれる酸ハロゲン化物を該多官能性酸ハロゲン化物に対して1〜50mol%の量で含む、水と非混和性の有機溶媒の溶液を接触させて、界面重縮合により架橋ポリアミドからなる分離機能層を該微多孔性支持膜上に形成することを備える、方法。
【0028】
(XIII)(I)または(II)に記載の複合半透膜を備える、複合半透膜エレメント。
【0029】
(XIV)(XIII)に記載の複合半透膜エレメント備える、流体分離装置。
【0030】
(XV)(I)または(II)に記載の複合半透膜を用いることを含む、水処理方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明が提供する複合半透膜は、高い塩除去性能を有し、かつ、中性領域で非解離であり従ってこれまでの逆浸透膜では高度に除去することが難しかった物質も高い除去率で排除することができる。したがって、この複合半透膜は、特に、海水の脱塩において、これまで高度に除去することが難しかったホウ素を高い除去率で排除することができるため、逆浸透による飲料水の製造に好適に用いることができる。
【0032】
本発明の複合半透膜は、陽電子消滅寿命測定法により測定されるとき、該複合半透膜の分離機能層が0.25nm以上0.35nm以下の平均孔半径を有しかつ0.2nm%以上0.3nm%以下の空孔量を有することを特徴とする。
【0033】
陽電子消滅寿命測定法とは、陽電子が試料に入射してから消滅するまでの時間(数百ピコ秒から数十ナノ秒オーダー)を測定し、その消滅寿命に基づいて、0.1〜10nmの空孔の大きさ、その数密度、およびその大きさの分布などの情報を非破壊的に評価する手法である。かかる測定法の詳細は、例えば「第4版実験化学講座」第14巻、485頁、日本化学会編,丸善株式会社(1992)に記載されている。
【0034】
この方法は陽電子線源の種類によって二種類に分類される。一つは、放射性同位体(22Na)を用いる22Na法であり、この方法は、樹脂、粉末、繊維、液体などの空孔評価に適する。もう一つは、陽電子線源として電子線型加速器から発せられる陽電子ビームを用いる陽電子ビーム法であり、この方法は、種々の基材上に形成された厚み数百nm程度の薄膜に対する空孔評価に有用である。特に後者の陽電子ビーム法は、複合半透膜の分離機能層の測定法としてより好ましい。というのも、複合半透膜を測定試料とした場合でも試料を乾燥状態に維持するだけでその分離機能層を測定することができ、複合半透膜から分離機能層を分離するなどの特別な加工を必要としないからである。
【0035】
陽電子ビーム法では、試料に入射させる陽電子ビームのエネルギー量によって、試料表面からの深さ方向の測定域を調節する。エネルギーを高くするほど試料表面からより深い部分が測定域に含まれることになるが、その深度は試料の密度によって左右される。複合半透膜の分離機能層を測定する際に、1keV程度のエネルギーの陽電子ビームを照射すれば、通常、試料表面から50〜150nmの深さの領域が測定される。また、150〜300nm程度の厚みを有する分離機能層に対し、分離機能層の中心部を選択的に測定することができる。
【0036】
陽電子と電子は、クーロン力で互いに結合して、中性の水素様原子であるポジトロニウムPsを生成する。Psには、陽電子と電子のスピンが反平行か平行かによってパラポジトロニウム(p−Ps)とオルトポジトロニウム(o−Ps)がある。この2つの種は、1:3の比(スピン統計によって求められる)で形成される。それぞれの種の平均寿命はp−Psで125ps、o−Psで140nsである。凝集状態の物質において、o−Psは自己の結合されているものとは別の電子と重なって消滅する(ピックオフ消滅と呼ばれる現象)確率が高くなり、その結果o−Psの平均寿命は数nsに減少する。絶縁材料におけるo−Psの消滅は、該材料の空孔壁に存在する電子とo−Psとが重なり合うことによるので、空孔サイズが小さいほど消滅速度が速くなる。すなわちo−Psの消滅寿命τは、絶縁材料中に存在する空孔の大きさ(径)と関係づけることができる。
【0037】
o−Psの上記ピックオフ消滅による消滅寿命τは、陽電子消滅寿命測定法により測定される陽電子消滅寿命曲線を、非線形最小二乗プログラムPOSITRONFIT(例えばP.Kierkegaard他、Computer Physics Communications,Vol.3,p.240,North Holland Publishing Co.(1972)にその詳細が記載されている)により4成分に分割して得られる第4成分の解析結果から求めることができる。
【0038】
本発明による複合半透膜の分離機能層における平均孔半径Rは、上記の陽電子消滅寿命τに基づいて、以下の式(7)から求めている。式(7)は、厚さΔRの電子層にある半径Rの空孔にo−Psが存在すると仮定した場合の関係を示しており、ΔRは経験的に0.166nmと求められている(Nakanishi他,Journal of Polymer Science,Part B:Polymer Physics,Vol.27,p.1419,John Wiley & Sons,Inc.(1989)にその詳細が記載されている)。
【0039】
【数1】

【0040】
本発明による複合半透膜の分離機能層における空孔量は、以下の方法により求めることができる。上記の方法で求められた複合半透膜の分離機能層の平均孔半径をR(nm)とすると、球近似された平均孔体積V(nm)は、V=(4πR)/3で表すことができる。この体積から、複合半透膜の分離機能層の空孔量(nm%)は、V×Iで表すことができる。ここでIは入射する全陽電子数に対するo−Psの割合(%)である。空孔量V×Iの使用例は、例えば上記Nakanishiの文献等に開示されている。
【0041】
複合半透膜が十分な透水量とともに十分な溶質除去能力を持つためには、平均孔半径が0.25nm以上0.35nm以下であることが好ましい。それと同時に、空孔量が0.2nm%以上0.3nm%以下であることがより好ましい。というのも、そのような複合半透膜は、ホウ酸のような中性領域で非解離の溶質に対して高い除去率を示し、かつ十分な透水量を維持するからである。
【0042】
また、本発明の複合半透膜は、微多孔性支持膜上に形成されたポリアミドからなる分離機能層を備え、該ポリアミドからなる分離機能層中のポリアミド分子に以下の式(1)〜(3)から選ばれるアシル基が結合している複合半透膜であることが好ましい。
【0043】
【化6】

【0044】
(式中、n、X、Y、およびR〜Rは上記で定義したものと同義である。)
分離機能層のポリアミドは、多官能性アミン、多官能性酸ハロゲン化物と、カルボニル基のβ位またはγ位にヘテロ原子を有する酸ハロゲン化物との界面重縮合により形成されることが好ましく、また、該多官能性アミンおよび該多官能性酸ハロゲン化物の少なくとも一方が三官能性以上の多官能性化合物を含むことが好ましい。
【0045】
分離機能層の厚みは、十分な分離性能および透過水量を得るため、通常0.01μm以上1μm以下であり、好ましくは0.1μm以上0.5μm以下である。
【0046】
多官能性アミンは、一分子中に少なくとも2個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有するアミンを意味する。具体例として、2個以上のアミノ基がベンゼン環のオルト位、メタ位、またはパラ位に結合した芳香族多官能性アミン(例えば、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、および3,5−ジアミノ安息香酸)、脂肪族アミン(例えば、エチレンジアミンおよびプロピレンジアミン)、脂環式多官能性アミン(例えば、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、1,3−ビスピペリジルプロパン、および4−アミノメチルピペラジン)などを挙げることができる。中でも、膜の選択的分離性、透過性、および耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有する芳香族多官能性アミンが好ましい。このような多官能性芳香族アミンとして、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、および1,3,5−トリアミノベンゼンが好ましい。これらの中でも、入手しやすさおよび取り扱いやすさから、m−フェニレンジアミン(以下「m−PDA」と呼ぶ)がより好ましい。これらの多官能性アミンは、単独で用いてもよく、その混合物として用いてもよい。
【0047】
多官能性酸ハロゲン化物は、一分子中に少なくとも2個のハロゲノカルボニル基を有する酸ハロゲン化物を意味する。その具体例には、三官能性酸ハロゲン化物(例えばトリメシン酸クロリド、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸トリクロリド、1,2,4−シクロブタントリカルボン酸トリクロリドなど)、二官能性酸ハロゲン化物(例えばビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、およびナフタレンジカルボン酸クロリドなどの芳香族二官能性酸ハロゲン化物)、脂肪族二官能性酸ハロゲン化物(例えばアジポイルクロリドおよびセバコイルクロリド)、脂環式二官能性酸ハロゲン化物(例えばシクロペンタンジカルボン酸ジクロリド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド、およびテトラヒドロフランジカルボン酸ジクロリド)などを挙げることができる。多官能性アミンとの反応性を考慮すると、多官能性酸ハロゲン化物は多官能性酸塩化物であることが好ましい。膜の選択的分離性および耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の塩化カルボニル基を有する多官能性芳香族酸塩化物が好ましい。中でも、入手しやすさや取り扱いやすさの観点から、トリメシン酸クロリドがより好ましい。これらの多官能性酸ハロゲン化物は、単独で用いてもよいし、その混合物として用いてもよい。
【0048】
微多孔性支持膜上に形成されたポリアミドからなる分離機能層を備え、上記のように製造したポリアミドからなる分離機能層のポリアミド分子に式(1)〜(3)から選ばれるアシル基が結合する複合半透膜は、好ましい。というのも、該ポリアミドからなる分離機能層は、陽電子消滅寿命測定法により測定されるとき、0.25nm以上0.35nm以下の平均孔半径および0.2nm%以上0.3nm%以下の空孔量を有するため、該複合半透膜は高いホウ素除去性能を示すからである。
【0049】
また、式(1)〜(3)から選ばれるアシル基を分離機能層に存在させる方法も特に限定されるものではない。例えば、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との界面重縮合により形成された分離機能層の表面に以下の式(4)〜(6)から選ばれる酸ハロゲン化物の溶液を接触させることにより、あるいは、多官能性アミンと多官能性芳香族酸ハロゲン化物との界面重縮合の際に以下の式(4)〜(6)から選ばれる酸ハロゲン化物を共存させることにより、共有結合を介して該分離機能層中に該アシル基を存在させることができる。
【0050】
【化7】

【0051】
(式中、n、X、Y、R〜RおよびZは上記で定義したものと同義である。)
すなわち、微多孔性支持膜上にポリアミドからなる分離機能層を形成することは、ポリアミドからなる分離機能層を、界面重縮合のため微多孔性支持膜上で、多官能性アミンの水溶液、多官能性酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液、および上記式(4)〜(6)から選ばれる酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液と接触させることにより行うことができ、あるいは、ポリアミドからなる分離機能層を、界面重縮合のため微多孔性支持膜上で、多官能性酸ハロゲン化物および上記式(4)〜(6)から選ばれる酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液および多官能性アミン溶液と接触させることにより行うことができる。特に、ポリアミドからなる分離機能層を、界面重縮合のため微多孔性支持膜上で、多官能性アミンの水溶液と接触させ、そして、多官能性酸ハロゲン化物および上記式(4)〜(6)から選ばれる酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液と接触させることにより得られる複合半透膜は、25℃、pH6.5、ホウ素濃度5ppm、およびTDS濃度3.5重量%の海水を5.5MPaの操作圧力で透過させるとき、ホウ素除去率(%)≧96−4×膜透過流束(m/m・日)の関係を満たすものであり、さらに、0.5m/m・日以上の膜透過流束および94%以上のホウ素除去率を有するものである。従って、該複合半透膜は、これまで得られなかった高いホウ素除去性能を有するものであるため、好ましい。
【0052】
式(4)〜(6)から選ばれる酸ハロゲン化物として、メトキシアセチルクロリド、エトキシアセチルクロリド、フェニルオキシアセチルクロリド、2−メチルフェニルオキシアセチルクロリド、2−エチルフェニルオキシアセチルクロリド、(4−クロロフェニル)オキシアセチルクロリド、(フェニルチオ)アセチルクロリド、ベンジルオキシアセチルクロリド、2−フルオロプロピオニルクロリド、2−クロロプロピオニルクロリド、2−ブロモプロピオニルクロリド、ヘプタフルオロブチリルクロリド、アセトキシアセチルクロリド、トリフルオロアセチルクロリド、トリクロロアセチルクロリド、(−)−メンチルオキシアセチルクロリド、およびイソオキサゾール−5−カルボニルクロリドなどが挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
このようにして得られる複合半透膜は、25℃、pH6.5、ホウ素濃度5ppm、およびTDS濃度3.5重量%の海水を5.5MPaの操作圧力で透過させるとき、0.1×10−8m/s以上3×10−8m/s以下のTDS透過係数を有することが好ましい。TDS透過係数がこの範囲である場合、本発明の効果であるホウ素除去性能を十分得ることができる。溶質の透過係数は以下の方法により求めることができる。以下の式は、非平衡熱力学に基づく逆浸透法の輸送方程式として知られるものである。
【0054】
【数2】

【0055】
ここで、Jvは膜透過体積流束(m/m/s)、Lpは膜の純水透過係数(m/m/s/Pa)、ΔPは膜両側の圧力差(Pa)、σは膜の溶質反射係数、Δπは膜両側の浸透圧差(Pa)、Jsは溶質の膜透過流束(mol/m/s)、Pは溶質の透過係数(m/s)、Cmは膜表面の溶質濃度(mol/m)、Cpは膜透過液濃度(mol/m)、Cは膜両側の濃度(mol/m)である。膜両側の平均濃度Cは、逆浸透膜の場合のように膜両側の濃度差が非常に大きな場合、実質的に意味がない。そこで式(8)を膜厚に対して積分することにより得られる次式がよく用いられる。
【0056】
【数3】

【0057】
ただし、
【0058】
【数4】

【0059】
であり、Rは真の除去率であり、以下のとおり定義される。
【0060】
【数5】

【0061】
ΔPを種々変化させるとき、式(7)からLpが算出される。Jvを種々変化させてRを測定し、Rと1/Jvをプロットしたものに対して式(9)および(10)をカーブフィッティングすることで、Pとσを同時に求めることができる。
【0062】
本発明の複合膜における微多孔性支持膜は、イオン等の分離性能を実質的に有さず、膜の分離性能を実質的に有する分離機能層を補強するため使用される。微多孔性支持膜における孔のサイズや孔の分布は特に限定されない。例えば、該支持膜は、均一な細孔を有することが好ましく、あるいは、分離機能層で被覆されるフィルム面側からもう一方の面側まで徐々にサイズが大きくなる細孔の分布を有することが好ましく、そして、分離機能層で被覆されるフィルム面側の孔径が0.1nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0063】
微多孔性支持膜の材料や形状も特に限定されない。例えば、ポリエステルおよび芳香族ポリアミドから選ばれる少なくとも一種を主成分とする布で補強されたポリスルホン、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、またはそれらの混合物が好ましい。使用される材料として、化学的、機械的、熱的に安定性の高いポリスルホンが特に好ましい。
【0064】
具体的には、次に示す化学式の繰り返し単位を有するポリスルホンがより好ましい。その孔径が制御しやすく、寸法安定性が高いためである。
【0065】
【化8】

【0066】
例えば、上記ポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を、基材(例えば、ポリエステルの密に織った布または不織布)上にキャストして所定の厚みを有する層をその上に形成し、それを水中で湿式固化させることにより、微多孔性支持膜が得られる。そのようにして形成される支持膜の表面の大部分は、直径が10nm以下の細孔を有する。
【0067】
上記の微多孔性支持膜および基材の厚みは、複合半透膜の強度、およびエレメントを製造するときの充填密度に影響する。十分な機械的強度および充填密度を得るため、その厚みは50μm以上300μm以下であることが好ましく、100μm以上250μm以下であることがより好ましい。また、多孔質支持体の厚みは、10μm以上200μm以下であることが好ましく、30μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0068】
微多孔性支持膜の形態は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、または原子間力顕微鏡により観察できる。例えば、走査型電子顕微鏡で観察する場合、基材から多孔質支持体を剥がした後、これを凍結切片法により薄片にして断面観察用試料を調製する。この試料に白金、白金−パラジウムまたは四酸化ルテニウム、好ましくは四酸化ルテニウムを薄くコーティングし、3〜6kVの加速電圧で高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)により観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡には、例えば株式会社日立製作所のS−900型電子顕微鏡を使用できる。得られた電子顕微鏡写真から、多孔質支持体の膜厚および表面孔径を求める。なお、本発明において示される厚みおよび孔径は平均値である。
【0069】
次に、本発明の複合半透膜の製造方法について以下に説明する。
【0070】
複合半透膜を構成する分離機能層の骨格は、例えば、微多孔性支持膜の表面において、上記多官能性アミンを含む水溶液と、多官能性酸ハロゲン化物を含む、水と非混和性の有機溶媒の溶液とを界面重縮合させることにより、形成することができる。
【0071】
多官能性アミンを含む水溶液における多官能性アミンの濃度は、2.5重量%以上10重量%以下であることが好ましく、3重量%以上5重量%以下であることがより好ましい。該濃度がこの範囲であると、十分な塩除去性能および透水性を得ることができ、それによりTDS透過係数を3×10−8m/s以下にすることができる。多官能性アミンを含む水溶液には、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との反応を妨げない限り、任意の他の界面活性剤、有機溶媒、アルカリ性化合物、および酸化防止剤が含まれていてもよい。界面活性剤は、微多孔性支持膜表面の濡れ性を向上させ、アミン水溶液と非極性溶媒との間の表面張力を減少させる効果がある。有機溶媒は、界面重縮合反応の触媒として働くことがあり、それを反応系に添加することにより界面重縮合反応を促進できる場合がある。
【0072】
界面重縮合を微多孔性支持膜上で行うために、まず、上述の多官能性アミン水溶液を該フィルムに接触させる。該溶液を該フィルムの表面に均一にかつ連続的に接触させることが好ましい。具体的に、例えば、多官能性アミンを含む水溶液を微多孔性支持膜に塗布したり、多官能性アミンを含む水溶液に微多孔性支持膜を浸漬したりすることができる。微多孔性支持膜と多官能性アミンを含む水溶液との接触時間は、1分以上10分以下が好ましく、1分以上3分以下がより好ましい。
【0073】
多官能性アミンを含む水溶液を微多孔性支持膜に接触させた後、該フィルム上に液滴が残らないよう、よく該フィルムを液切りする。よく液切りすることで、フィルム上に残った液滴が表面欠陥となるような膜性能の低下を抑制することができる。液切りは、例えば、特開平2−78428号に記載されるように行うことができる。具体的には、多官能性アミンを含む水溶液と接触させた後、微多孔性支持膜を垂直に保持して、過剰な水溶液を自然に流下させたり、あるいは、エアーノズルから吹き付ける窒素などの風に微多孔性支持膜をさらして強制的に液切りしたりする。このようにして液切りした後、フィルム表面を乾燥させ、水溶液の水の部分を除去することができる。
【0074】
次いで、多官能性アミンを含む水溶液と接触させた後の支持膜を、多官能性酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液とさらに接触させて、界面重縮合によりポリアミドからなる架橋された分離機能層の骨格を形成させる。
【0075】
有機溶媒溶液中の多官能性酸ハロゲン化物の濃度は、0.01重量%以上10重量%以下が好ましく、0.2重量%以上2.0重量%以下がさらに好ましい。濃度がこの範囲であると、十分な反応速度が得られ、また副反応を抑制することができる。また、この有機溶媒溶液にN,N−ジメチルホルムアミドのようなアシル化触媒を添加すると、界面重縮合が促進され、さらに好ましい。
【0076】
有機溶媒は、水と非混和性であることが好ましく、酸ハロゲン化物を溶解することが好ましく、そして微多孔性支持膜を破壊しないことが好ましい。そのため、アミノ化合物および酸ハロゲン化物に対して不活性なものを用いることができる。好ましい例として、例えば、n−ヘキサン、n−オクタン、およびn−デカンなどの炭化水素化合物が挙げられる。
【0077】
多官能性酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液をアミノ化合物水溶液の相と接触させる方法は、多官能性アミンを含む水溶液で微多孔性支持膜を被覆する方法と同様に行うことができる。
【0078】
上述したように、酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液をアミノ化合物の水溶液相と接触させて界面重縮合を行い、微多孔性支持膜上に架橋ポリアミドからなる分離機能層を形成した後、過剰の溶媒を該フィルムから除去することが好ましい。その除去のため、例えば、該フィルムを垂直に保持して過剰の有機溶媒を自然に流下させることができる。この場合、該フィルムを垂直に保持する時間は、1分以上5分以下であることが好ましく、1分以上3分以下であることがより好ましい。時間がこの範囲であれば、分離機能層を完全に形成することができ、また、層の過剰な乾燥による欠陥を生じさせることがない。
【0079】
本発明の複合半透膜を製造する方法において、架橋ポリアミドからなる分離機能層は、例えば、多官能性酸ハロゲン化物および上記式(4)〜(6)から選ばれる酸ハロゲン化物を含む上記有機溶媒溶液を接触させることにより、あるいは、多官能性酸ハロゲン化物の上記水溶液を接触させて界面重縮合を行った後、上記多官能性酸ハロゲン化物を支持膜と接触させ、そして、上記式(4)〜(6)から選ばれる酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液をさらに接触させることにより、微多孔性支持膜上に形成される。
【0080】
この場合、有機溶媒溶液中の多官能性酸ハロゲン化物の濃度も、0.01重量%以上10重量%以下が好ましく、0.02重量%以上2重量%以下がより好ましい。濃度が0.01重量%以上であれば、十分な反応速度を得ることができる。濃度が10重量%以下であれば、副反応を抑制することができる。また、この有機溶媒溶液に、界面重縮合を促進するため、N,N−ジメチルホルムアミドのようなアシル化触媒を添加することはさらに好ましい。
【0081】
多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との界面重縮合により実質的な分離機能層を形成した後、上記式(4)〜(6)から選ばれる酸ハロゲン化物を支持膜と接触させる場合、その濃度は、多官能性酸ハロゲン化物に対して5mol%以上であることが好ましい。濃度が5mol%以上であれば、本発明の効果であるホウ素除去性能を十分に得ることができる。濃度が100mol%以下であれば、試薬処理のための経済的コストを増大させることなく、未反応試薬による環境の悪化を抑制することができる。従って、濃度は100mol%以下であることが好ましい。さらに濃度は、5mol%以上50mol%以下がより好ましい。一方、多官能性酸ハロゲン化物と酸ハロゲン化物とを同じ有機溶媒溶液に混合して分離機能層を形成する場合は、酸ハロゲン化物の濃度は、多官能性酸ハロゲン化物に対して1mol%以上50mol%以下であることが好ましく、1mol%以上30mol%以下であることがより好ましい。濃度を1mol%以上にすれば、本発明の目的であるホウ素除去性能を十分に得ることができる。濃度を50mol%以下にすれば、塩除去性能および透過流束の低下を抑制することができる。
【0082】
上述の方法により得られた複合半透膜は、50℃以上150℃以下、好ましくは70℃以上130℃以下で、1〜10分間、好ましくは2〜8分間の熱水処理工程などを付加することにより、その除去性能および透水性を向上させることができる。
【0083】
このように形成される本発明の複合半透膜は、スパイラル型の複合半透膜エレメントに好適である。該エレメントにおいて、本発明の膜は、プラスチックネットなどの原水路材およびトリコットなどの透過水路材と共に、そして必要に応じて該エレメントの耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した集水管の周りに巻きつけられる。このエレメントを直列または並列に接続して圧力容器に収納し、複合半透膜モジュールを構成することができる。
【0084】
この複合半透膜ならびにそのエレメントおよびモジュールは、それらに原水を供給するポンプおよび原水を前処理する装置と組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、原水を、飲料水などの透過水と、膜を透過しなかった濃縮水とに分離することができ、そして目的とする水を得ることができる。
【0085】
流体分離装置に対する操作圧力が高い場合、ホウ素除去率は高くなるが、運転に必要なエネルギーも高くなる。従って、複合半透膜の耐久性を考慮すると、膜に原水を透過させる操作圧力は、1.0MPa以上10MPa以下が好ましい。処理すべき原水の温度が高い場合、ホウ素除去率は上昇する。一方、温度が低い場合、膜透過流束は減少する。従って、温度は5℃以上45℃以下が好ましい。原水のpHが高い場合、原水中のホウ素がホウ化物イオンに解離するためホウ素除去率が向上する。しかし、海水などの高塩濃度の水は、マグネシウムのスケールを形成する恐れがあり、また、高pHの水は膜を劣化させる恐れがある。従って、中性領域で装置を運転することが好ましい。
【0086】
実施例および比較例に基づいて本発明を以下に詳細に説明する。特に断らない限り「%」は「重量%」である。
【0087】
実施例および比較例における測定は次のとおり行った。
【0088】
塩除去率(脱塩率)
温度25℃、pH6.5に調整した海水(そのTDS濃度約3.5%およびホウ素濃度約5.0ppm)を操作圧力5.5MPaで複合半透膜に供給し、透過水中の塩濃度を測定した。膜による塩の除去率は次の式から求めた。
【0089】
【数6】

【0090】
膜透過流束
海水を複合半透膜に供給し、膜1mを通過する一日あたりの透水量(m)を膜透過流束(m/m・日)とした。
【0091】
ホウ素除去率
原水中のホウ素濃度と透過水中のホウ素濃度を、ICP発光分光光度計で測定し、次の式からホウ素の除去率を求めた。
【0092】
【数7】

【0093】
TDS透過係数
「膜処理技術大系」、上巻、171頁、中垣 正幸 監修,フジテクノシステム(1991)に記載の以下の式からTDS透過係数を求めた。
【0094】
【数8】

【0095】
膜評価法
上記式(1)〜(3)から選ばれるアシル基の存在は、分離機能層を支持膜から取り出した試料の固体NMRスペクトルを測定することにより、あるいは、強アルカリ水溶液中で加熱して加水分解した試料のHPLC測定やH−NMRスペクトル測定により、分析することができる。
【0096】
陽電子ビーム法による陽電子消滅寿命測定法
特に加工することなく複合半透膜における分離機能層の陽電子消滅寿命測定を行う場合、以下のように陽電子ビーム法を用いて測定を行うことができる。すなわち、減圧下室温で分離機能層を乾燥させ、1.5cm×1.5cm角に切断して検査試料とした。陽電子ビーム発生装置を装備した薄膜対応陽電子消滅寿命測定装置(この装置は、例えば、Radiation Physics and Chemistry,58,603,Pergamon(2000)で詳細に説明されている)にて、ビーム強度1keV、室温、真空下で、光電子増倍管を使用して二フッ化バリウム製シンチレーションカウンターにより総カウント数500万で検査試料を測定し、POSITRONFITにより解析を行った。解析により得られた第4成分の平均寿命τから、平均孔半径R、平均孔体積V、相対強度I、および空孔量V×Iを分析することができる。
【0097】
実施例1〜14および比較例1〜4
ポリエステル不織布(透水率0.5〜1cc/cm・秒)上に、ポリスルホン15.3%のジメチルホルムアミド(DMF)溶液を200μmの厚みで室温(25℃)においてキャストし、次いで、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することにより微多孔性支持膜を調製した。このようにして形成した微多孔性支持膜(厚さ210〜215μm)を、メタフェニレンジアミン(以下「mPDA」と呼ぶ)3.4%の水溶液中に2分間浸漬し、次いで垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルからの窒素気流にさらすことにより、支持膜表面から余分な溶液を除去した。その後、トリメシン酸クロリド(以下「TMC」と呼ぶ)0.15%を含みかつ表2記載の酸ハロゲン化物(化合物1〜17の化学構造は表1に記載)をTMCに対して20モル%の量で含むn−デカン溶液を、その表面が完全に濡れるように塗布し、そしてそのまま1分間保持した。次に、該フィルムを1分間垂直に保持して、それから余分な溶液を除去し、該フィルムを液切りした。次いで、これを90℃の熱水で2分間洗浄し、pH7、塩素濃度200mg/lに調整した次亜塩素酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬し、次いで、亜硫酸水素ナトリウム濃度が1,000mg/lの水溶液中に浸漬して、余分な次亜塩素酸ナトリウムを還元除去した。さらに、このフィルムを95℃の熱水で2分間再洗浄した。こうして得られた複合半透膜を評価したところ、膜透過流束、塩除去率、ホウ素除去率、およびTDS透過係数は表2に示すとおりとなった。膜透過流束とホウ素除去率との関係を図1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
実施例15〜21
TMC0.15%のn−デカン溶液において表3記載の濃度の酸クロリドを用いたこと以外は、実施例1〜14および比較例1〜4と同様にして複合半透膜をそれぞれ作製した。それらの複合半透膜を評価したところ、膜透過流束、塩除去率、ホウ素除去率、およびTDS透過係数の物理データは表3に示すとおりとなった。
【0101】
【表3】

【0102】
実施例22〜25
実施例1〜21および比較例1〜4と同じ微多孔性支持膜を、mPDA3.4%の水溶液中に2分間浸漬し、次いで垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルからの窒素気流にさらすことによって支持膜表面から余分な溶液を取り除いた。その後、TMC0.15%のn−デカン溶液をその表面が完全に濡れるように塗布し、そのまま1分間保持した。次に、該フィルムを垂直に1分間保持して液切りした。次に表4に示す酸クロリドのn−デカン溶液をその表面が完全に濡れるように塗布し、そのまま1分間保持した。次に、該フィルムを垂直に1分間保持して液切りした。次いで、それを風乾してデカン溶媒を除去し、その後、水道水の流水で洗浄して、該フィルムに残存する薬品を除去した。その後、これを、90℃の熱水で2分間洗浄し、pH7、塩素濃度200mg/lに調整した次亜塩素酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬してから、1,000mg/lの亜硫酸水素ナトリウムを含む水溶液に浸漬した。さらに、該フィルムを95℃の熱水で2分間再洗浄した。
【0103】
このようにして得られた複合半透膜を評価したところ、膜透過流束、塩除去率、ホウ素除去率、およびTDS透過係数は表4に示すとおりとなった。
【0104】
【表4】

【0105】
実施例26
実施例18で作製した複合半透膜に対し、陽電子ビーム法による陽電子消滅寿命測定法および膜透過性の評価を行った。その結果を表5および図2に示す。
【0106】
比較例5
実施例1〜25および比較例1〜4と同じ微多孔性支持膜を、mPDA3.4%の水溶液中に2分間浸漬し、次いで垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルからの窒素気流にさらすことによって支持膜表面から余分な溶液を取り除いた。その後、TMC0.165%のn−デカン溶液をその表面が完全に濡れるように塗布し、そのまま1分間保持した。次に、該フィルムを垂直に1分間保持して液切りした。次に、それを風乾してデカン溶媒を除去し、その後、水道水の流水で洗浄して、該フィルムに残存する薬品を除去した。その後、これを、90℃の熱水で2分間洗浄し、pH7、塩素濃度200mg/lに調整した次亜塩素酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬してから、1,000mg/lの亜硫酸水素ナトリウムを含む水溶液に浸漬した。さらに、該フィルムを95℃の熱水で2分間再洗浄した。
【0107】
このようにして得られた複合半透膜の陽電子消滅寿命測定法および膜透過性の評価を実施例26と同様に行った。その結果を表5および図2に示す。
【0108】
比較例6
実施例1〜25および比較例1〜4と同じ微多孔性支持膜を、トリアミノベンゼン0.55%、mPDA1.45%およびエチレンジアミン0.15%の水溶液中に2分間浸漬し、次いで、垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルからの窒素気流にさらすことにより支持膜表面から余分な溶液を取り除いた。その後、TMC0.0675%およびテレフタル酸クロリド0.0825%のn−デカン溶液をその表面が完全に濡れるように塗布し、そのまま1分間保持した。次に、該フィルムを垂直に1分間保持して液切りした。続いてそれを風乾してデカン溶媒を除去し、1%炭酸ナトリウムおよび0.3%ドデシル硫酸ナトリウムの水溶液に5分間浸漬してから、水道水の流水で洗浄して該フィルムに残存する薬品を除去した。その後、これを70℃の熱水で2分間洗浄し、pH7および塩素濃度500mg/lに調整した次亜塩素酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬してから、1,000mg/lの亜硫酸水素ナトリウムを含む水溶液中に浸漬した。
【0109】
このようにして得られた複合半透膜の陽電子消滅寿命測定法および膜透過性の評価を実施例26と同様に行った。その結果を表5および図2に示す。
【0110】
比較例7
実施例1〜25および比較例1〜4と同じ微多孔性支持膜を、トリアミノベンゼン0.46%、mPDA1.2%、エチレンジアミン0.12%およびε−カプロラクタム1%の水溶液中に2分間浸漬し、次いで垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルからの窒素気流にさらすことにより支持膜表面から余分な溶液を取り除いた。その後、TMC0.1%のn−デカン溶液をその表面が完全に濡れるように塗布し、そのまま1分間保持した。次に、該フィルムを垂直に1分間保持して液切りした。次いで、それを風乾してデカン溶媒を除去し、1%炭酸ナトリウムおよび0.3%ドデシル硫酸ナトリウムの水溶液に5分間浸漬してから、水道水の流水で洗浄して該フィルムに残存する薬品を除去した。その後、それを70℃の熱水で2分間洗浄し、pH7および塩素濃度500mg/lに調整した次亜塩素酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬してから、1,000mg/lの亜硫酸水素ナトリウムを含む水溶液中に浸漬した。
【0111】
このようにして得られた複合半透膜の陽電子消滅寿命測定法および膜透過性の評価を実施例26と同様に行った。その結果を表5および図2に示す。
【0112】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0113】
上述したとおり、本発明の複合半透膜は、高い塩除去率および高い透過度を達成するものであり、また、ホウ素のような中性領域において非解離性の物質をも阻止するものである。従って、該膜は、原子力発電所の冷却水の処理、メッキ廃水の処理、および高濃度の汽水または海水からの飲料水の製造に好適である。
【0114】
特定の実施態様により本発明を詳細に説明してきたが、当業者に明らかなとおり、種々の変更および修飾を本発明の精神および範囲を逸脱することなく本発明において行うことができる。ここで引用したすべての参考文献は、それらの内容がそっくり本明細書に記載されたものとする。
【0115】
本願は、日本国特許出願第2004−315955号(2004年10月29日出願)に基づくものであり、その内容全体はこの引用により本明細書に記載されたものとする。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】実施例1〜25および比較例1〜4で作製した膜の、膜透過流束とホウ素除去率との関係を示すグラフである。
【図2】実施例26および比較例5〜7で作製した複合半透膜における分離機能層の空孔量V×Iとホウ素除去率の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微多孔性支持膜上に形成されたポリアミドからなる分離機能層を備える複合半透膜であって、陽電子消滅寿命測定法により測定されるとき、該ポリアミドからなる分離機能層が0.25nm以上0.35nm以下の平均孔半径を有しかつ0.2nm%以上0.3nm%以下の空孔量を有する、複合半透膜。
【請求項2】
該ポリアミドからなる分離機能層中のポリアミド分子には共有結合を介して以下の式(1)〜(3)から選ばれるアシル基が結合している、請求項1に記載の複合半透膜。
【化1】

(式中、nは0または1を示し、XはO、S、またはNRを示し、R、R、およびRはそれぞれ水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示し、RおよびRの少なくとも一方は水素原子であり、RおよびRはそれぞれ水素原子、カルボキシ基以外の一つまたは複数の置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、またはカルボキシ基以外の一つまたは複数の置換基を有していてもよい炭素数1〜12の芳香族基を示し、Rはカルボキシ基以外の一つまたは複数の置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基またはカルボキシ基以外の一つまたは複数の置換基を有していてもよい炭素数1〜12の芳香族基を示し、かつR、R、R、およびRの任意の原子は共有結合を介して環構造を形成していてもよい)
【化2】

(式中、n、R、およびRは上記と同義であり、Yはハロゲン原子を示し、RおよびRはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基以外の一つまたは複数の置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、またはカルボキシ基以外の一つまたは複数の置換基を有していてもよい炭素数1〜12の芳香族基を示し、かつRおよびRの原子は共有結合を介して環構造を形成していてもよい)、および
【化3】

(式中、Rは、炭素数1〜12の5員環芳香族基を示し、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる原子を該環内に2以上有するものであり、かつカルボキシ基以外の一つまたは複数の置換基を有していてもよい)。
【請求項3】
該ポリアミドからなる分離機能層が、多官能性アミンを含む水溶液と、多官能性酸ハロゲン化物および以下の式(4)〜(6)から選ばれる酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液とを微多孔性支持膜上で接触させることによる界面重縮合により形成された架橋ポリアミドからなる、請求項1に記載の複合半透膜。
【化4】

(式中、n、X、Y、およびR〜Rは請求項2で定義されたものと同義であり、かつZはハロゲン原子を示す。)
【請求項4】
該ポリアミドからなる分離機能層が、多官能性アミンを含む水溶液と、多官能性酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液と、請求項3の式(4)〜(6)から選ばれる酸ハロゲン化物を含む有機溶媒溶液とを微多孔性支持膜上で接触させることによる界面重縮合により形成された架橋ポリアミドからなる、請求項1に記載の複合半透膜。
【請求項5】
式(4)〜(6)から選ばれる酸ハロゲン化物が、メトキシアセチルクロリド、エトキシアセチルクロリド、フェニルオキシアセチルクロリド、2−メチルフェニルオキシアセチルクロリド、2−エチルフェニルオキシアセチルクロリド、(4−クロロフェニル)オキシアセチルクロリド、(フェニルチオ)アセチルクロリド、ベンジルオキシアセチルクロリド、2−フルオロプロピオニルクロリド、2−クロロプロピオニルクロリド、2−ブロモプロピオニルクロリド、ヘプタフルオロブチリルクロリド、アセトキシアセチルクロリド、トリフルオロアセチルクロリド、トリクロロアセチルクロリド、(−)−メンチルオキシアセチルクロリド、およびイソオキサゾール−5−カルボニルクロリドからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項3に記載の複合半透膜。
【請求項6】
式(4)〜(6)から選ばれる酸ハロゲン化物が、メトキシアセチルクロリド、エトキシアセチルクロリド、フェニルオキシアセチルクロリド、2−メチルフェニルオキシアセチルクロリド、2−エチルフェニルオキシアセチルクロリド、(4−クロロフェニル)オキシアセチルクロリド、(フェニルチオ)アセチルクロリド、ベンジルオキシアセチルクロリド、2−フルオロプロピオニルクロリド、2−クロロプロピオニルクロリド、2−ブロモプロピオニルクロリド、ヘプタフルオロブチリルクロリド、アセトキシアセチルクロリド、トリフルオロアセチルクロリド、トリクロロアセチルクロリド、(−)−メンチルオキシアセチルクロリド、およびイソオキサゾール−5−カルボニルクロリドからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項4に記載の複合半透膜。
【請求項7】
25℃、pH6.5、ホウ素濃度5ppm、およびTDS濃度3.5重量%の海水を5.5MPaの操作圧力で透過させるときに、下式の関係を満足する、請求項1に記載の複合半透膜。
【数1】

【請求項8】
25℃、pH6.5、ホウ素濃度5ppm、およびTDS濃度3.5重量%の海水を5.5MPaの操作圧力で透過させるときに、膜透過流束が0.5m/m・日以上でありかつホウ素除去率が94%以上である、請求項1に記載の複合半透膜。
【請求項9】
25℃、pH6.5、ホウ素濃度5ppm、およびTDS濃度3.5重量%の海水を5.5MPaの操作圧力で透過させるときに、TDS透過係数が0.1×10−8m/s以上3×10−8m/s以下である、請求項1に記載の複合半透膜。
【請求項10】
請求項1に記載の複合半透膜を製造する方法であって、
2個以上の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有する多官能性アミンを含む水溶液を微多孔性支持膜と接触させること、
2個以上の酸ハロゲン化物基を有する多官能性酸ハロゲン化物を含む、水と非混和性の有機溶媒の溶液を接触させて、界面重縮合により架橋ポリアミドからなる分離機能層を該微多孔性支持膜上に形成すること、および
請求項3の式(4)〜(6)から選ばれる酸ハロゲン化物を該多官能性酸ハロゲン化物に対して5mol%以上の量で含む有機溶媒溶液を該分離機能層と接触させることを備える、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の複合半透膜を製造する方法であって、
2個以上の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有する多官能性アミンを含む水溶液を微多孔性支持膜と接触させること、および
2個以上の酸ハロゲン化物基を有する多官能性酸ハロゲン化物を含み、かつ、請求項3の式(4)〜(6)から選ばれる酸ハロゲン化物を該多官能性酸ハロゲン化物に対して1〜50mol%の量で含む、水と非混和性の有機溶媒の溶液を接触させて、界面重縮合により架橋ポリアミドからなる分離機能層を該微多孔性支持膜上に形成することを備える、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の複合半透膜を備える、複合半透膜エレメント。
【請求項13】
請求項12に記載の複合半透膜エレメント備える、流体分離装置。
【請求項14】
請求項1に記載の複合半透膜を用いることを含む、水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−517737(P2008−517737A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515553(P2007−515553)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【国際出願番号】PCT/JP2005/020254
【国際公開番号】WO2006/046781
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】