複合式ボールペン用レフィル及びそれを収容した複合式ボールペン
【課題】 耐ドライアップ性能に優れ、初期及び経時後の書き出しが良好であると共に、筆跡のかすれや垂れ下がりを生じることなく、安定した筆記性能を永続させることができ、良好な筆跡を形成可能な複合式ボールペン用レフィルを提供する。
【解決手段】 ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又は接続部材を介して装着したインキ収容管に、顔料と、水と、剪断減粘性付与剤と、増粘抑制剤としてポリオキシエチレン基を有する界面活性剤と、イオン性物質とから少なくともなり、インキ中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し1質量%以上であり、インキ組成物中に水溶性有機溶剤を含有しないボールペン用水性インキ組成物を充填した複合式ボールペン用レフィル。
【解決手段】 ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又は接続部材を介して装着したインキ収容管に、顔料と、水と、剪断減粘性付与剤と、増粘抑制剤としてポリオキシエチレン基を有する界面活性剤と、イオン性物質とから少なくともなり、インキ中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し1質量%以上であり、インキ組成物中に水溶性有機溶剤を含有しないボールペン用水性インキ組成物を充填した複合式ボールペン用レフィル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合式ボールペン用レフィル及びそれを収容した複合式ボールペンに関する。更に詳細には、ペン先における耐ドライアップ性能に優れた複合式ボールペン用レフィル及びそれを収容した複合式ボールペンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ボールペンに収容されるインキ組成物は、水を主溶剤とした水性インキ組成物が汎用されつつあり、そのうち、剪断減粘性を有するインキ組成物は、低粘度水性ボールペンの筆跡が滲む欠点を解消できるものである。
前記インキ組成物に剪断減粘性を付与する物質(剪断減粘性付与剤)としては、キサンタンガム等の多糖類が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
しかし、前記剪断減粘性付与剤は耐ドライアップ性能を阻害することがあり、水溶性有機溶剤等の湿潤剤や尿素等の固体湿潤剤といった添加剤を併用して耐ドライアップ性能を向上させる試みがなされるとしても、乾燥防止効果は不十分であり、しかも、インキ粘度が上昇してかすれ等の筆記不良を生じ易くなる。
具体的には、尿素を過度に添加すると、筆記先端部から水分が蒸発して水溶性有機溶剤の濃度が上昇し、固形分が前記筆記先端部に析出する、所謂、花咲き現象を生じて見栄えが悪くなると共にかすれ等を生じる。更に、水溶性有機溶剤や尿素を多量に添加すると、多湿環境下で筆記先端部を下向きに放置した際、垂れ下がりが発生するなどの弊害を生じ易くなる。
前述のように、インキ組成物に耐ドライアップ性を向上させる手段は多々存在するものの、筆跡のかすれや垂れ下がり等のボールペンに要求される他の性能の低下をもたらすことがあった。
特に、軸筒内に複数の複合式ボールペン用レフィルを収容し、非筆記時に筆記先端部(ボールペンチップ)が常に大気中に開放された状態の複合式ボールペンに使用する場合、筆跡のかすれや垂れ下がりを生じると、単一のボールペン用レフィルを収容した出没式ボールペンと比較して商品価値を大きく損なう虞がある。
【特許文献1】特開昭59−74175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は前記した複合式ボールペン用レフィル及びそれを収容した複合式ボールペンの問題点を解消するものであって、即ち、種々の筆記性能を阻害することなく、耐ドライアップ性を満足する複合式ボールペン用レフィル及びそれを収容した複合式ボールペンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又は接続部材を介して装着したインキ収容管に、顔料と、水と、剪断減粘性付与剤と、増粘抑制剤としてポリオキシエチレン基を有する界面活性剤と、イオン性物質とから少なくともなり、インキ中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し1質量%以上であり、インキ組成物中に水溶性有機溶剤を含有しないボールペン用水性インキ組成物を充填した複合式ボールペン用レフィル、或いは、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又は接続部材を介して装着したインキ収容管に、顔料と、水と、水溶性有機溶剤と、剪断減粘性付与剤と、増粘抑制剤と、イオン性物質とから少なくともなり、インキ中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し1質量%以上であり、前記水溶性有機溶剤がインキ組成物中10質量%以下であり、且つ、増粘抑制剤がポリオキシエチレン基を有する界面活性剤であるボールペン用水性インキ組成物を充填した複合式ボールペン用レフィルを要件とする。
更には、前記インキ組成物中に含まれるイオン性物質がインキ中で解離して形成される陽イオンが一価陽イオンであること、前記一価陽イオンがアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンから選ばれること、前記インキ組成物中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し2〜15質量%であること、前記顔料が(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料であること、前記マイクロカプセル顔料が、色濃度−温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して有色状態と無色状態の互変性を呈し、該顔料は有色状態から温度が上昇する過程では、温度t3に達すると消色し始め、温度t3より高い温度t4以上の温度域で完全に無色状態となり、無色状態から温度が下降する過程では、温度t3より低い温度t2に達すると着色し始め、温度t2より低い温度t1以下の温度域で完全に着色状態となり、前記温度t2と温度t3の間の温度域で着色状態或いは無色状態が選択的に保持されるヒステリシス特性を示し、温度t1は−50〜0℃の範囲にあり、温度t4が50〜90℃の範囲にあること、前記インキ収容管が光遮蔽性であること、前記ボールペン用レフィルに収容されたインキ組成物の後端面にインキ消費に伴って追従するインキ逆流防止体を配設してなること等を要件とする。
更には、前記複合式ボールペン用レフィルを複数本軸筒内に収容し、出没機構の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペンを要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、前記剪断減粘性付与剤と特定の増粘抑制剤とイオン性物質を併用しているので、インキ中の水分が蒸発してもインキ粘度が過度に上昇することなく、よって、耐ドライアップ性能に優れ、初期及び経時後の書き出しが良好であると共に、筆跡のかすれや垂れ下がりを生じることなく、安定した筆記性能を永続させることができ、良好な筆跡を形成可能な複合式ボールペン用レフィル及びそれを収容した複合式ボールペンが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の複合式ボールペン用レフィルに充填されるボールペン用水性インキ組成物は、水の他に水溶性有機溶剤を添加しない、或いは、添加してもインキ組成物全量中10質量%以下であり、且つ、増粘抑制剤としてポリオキシエチレン基を有する界面活性剤を含有してなる。
前記界面活性剤はポリオキシエチレン基を分子内に有するものであればノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれを用いることも可能であるが、汎用性、入手性の観点からノニオン系界面活性剤及びアニオン系界面活性剤が好ましい。
前記ノニオン系界面活性剤はエーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型があり、エーテル型としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレン水素添加ステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物の酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等が挙げられ、エーテルエステル型としては、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル等が挙げられ、エステル型としてはポリエチレングリコール脂肪酸エステル等、含窒素型としては、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
前記アニオン系界面活性剤はカルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩があり、カルボン酸塩としてはポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩等が挙げられ、スルホン酸塩としてはポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二塩等が挙げられ、硫酸エステル塩としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、第2高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等が挙げられ、リン酸エステル塩としてはポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩等が挙げられる。
更に、前記界面活性剤としてポリオキシエチレン基を分子内に有するフッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤を用いることもできる。
前記界面活性剤はHLBが5以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上のものが好適に用いられる。HLBが5未満ではインキ組成物中に均一に溶解又は分散し難く、所望の増粘抑制効果を発現でき難くなる。また、ポリオキシエチレン基の含有数が多い程増粘抑制効果が大きくなる傾向があり、ポリオキシエチレン基を10以上含有するものが好ましく、20以上含有するものがより好ましい。
前記増粘抑制剤はインキ全量に対して0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%の範囲で用いられる。0.1質量%より少ないと耐ドライアップ性の効果が少なく、20質量%より多いと初期からインキ中で剪断減粘性付与剤が膨潤不良状態となり、所望のインキ粘度を示し難い。
【0007】
前記ボールペン用水性インキ組成物は、前記増粘抑制剤とイオン性物質が配合されるため、水溶性有機溶剤の添加による積極的な耐ドライアップ防止性能の向上は必要なく、従って、水溶性有機溶剤を添加しない、或いは、ごく少量、即ち、0を超え、且つ、10質量%以下(0質量%<水溶性有機溶剤の添加量≦10質量%)、好ましくは5質量%以下の水溶性有機溶剤が添加された系で有効な増粘抑制機能を発現できる。
また、水溶性有機溶剤全量が従来のインキ組成物よりも少ない、或いは、全く含まれないため、水溶性有機溶剤の吸水性によって筆記先端部にインキが溜まり(垂れ下がり)、良好な筆跡の形成を損なったり、誤って衣類を汚染する不具合を防止することもできる。
水溶性有機溶剤を含有する系においては、前記水溶性有機溶剤全量中に溶解度パラメーターが8〜11、好ましくは8〜10の水溶性有機溶剤を80〜100質量%、好ましくは90〜100質量%含有することにより、耐ドライアップ性の効果を更に向上させることができる。
前記溶解度パラメーターが8〜11の水溶性有機溶剤としては、ブチルアルコール、総炭素数5又は6の多価アルコール類、総炭素数4〜13のグリコールエーテル類、炭素数5〜9のグリコールアセテート類、炭素数5〜10のグリコールモノエーテルアセテート類、炭素数5〜10のヒドロキシカルボン酸エステル類、炭素数4〜12のカルボン酸アミド類等が好適に用いられる。
以下に好適な溶解度パラメーターが8〜11の水溶性有機溶剤を例示する。
前記多価アルコール類としては炭素数5又は6の水酸基を2個有するジオール類が好適であり、1,2−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、ヘキシレングリコール(2−メチル−2,4−ペンタンジオール)、3−メチル−1,5−ペンタンジオールが挙げられる。
前記グリコールエーテル類としては、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等が挙げられる。
グリコールアセテート類としては、ジエチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、グリセリンジアセテート、グリセリントリアセテート等が挙げられる。
グリコールモノエーテルアセテート類としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸エステル類としては乳酸エステルが好適であり、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル等が挙げられる。
カルボン酸アミド類としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンのオリゴマー、ε−カプロラクタム等が挙げられる。
【0008】
前記インキ組成物中にはイオン性物質を含有してなり、且つ、インキ中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。
剪断減粘性付与剤と増粘抑制剤を含む系において、前記イオン性物質を含有することによって、初期及び経時後も永続して耐ドライアップ性能を維持することができる。
前記イオン性物質は、インキ組成物中でイオン化して陽イオンと陰イオンを生じるが、2価以上の陽イオンはインキ組成物中の他の成分と反応して不溶性塩を形成し易く、それによって筆記時にかすれ等を生じることもあるため、イオン性物質はイオン化して一価陽イオンを生じる物質が好ましく、筆記性能を維持しつつ、経時後の耐ドライアップ性能を維持する効果に優れる。
なお、一価陽イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンや、モノアルキルアンモニウムイオン、ジアルキルアンモニウムイオン、トリアルキルアンモニウイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン等の脂肪族アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、アニリニウムイオン等の芳香族アンモニウムイオンが挙げられ、アルカリ金属イオンが好適である。
前記イオン性物質を以下に示す。
無機塩類としては、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩等が挙げられ、具体的には、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム等を例示できる。前記無機塩のうち、インキ組成物のpHに影響を与えない中性無機塩が好適であり、ハロゲン化アルカリが挙げられる。
有機塩類としては低分子量の各種有機酸の塩類や界面活性剤、水溶性樹脂、水溶性染料等が挙げられる。
低分子量の有機酸の塩類としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等が挙げられる。
前記カルボン酸塩としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、安息香酸、p−ブチル安息香酸、p−フェニル安息香酸等の置換安息香酸類、α−ナフタレン酢酸、シュウ酸、コハク酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメシン酸、乳酸、りんご酸、グリコール酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシイソ酪酸、酒石酸、メバロン酸、クエン酸、イソクエン酸、ソルビン酸等から得られるカルボン酸塩が挙げられる。
前記スルホン酸塩としては、ペンタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、ヘプタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸類、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレンスルホン酸ジスルホン酸等のナフタレンジスルホン酸、1−ナフトール−3−スルホン酸等のナフトールスルホン酸、1−ナフトール−2,5−ジスルホン酸等のナフトールジスルホン酸、4−アミノ−5−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンスルホン酸のアミノナフトールスルホン酸等の芳香族スルホン酸から得られるスルホン酸塩が挙げられる。
前記硫酸エステル塩としては、モノヘキシル硫酸、モノオクチル硫酸、モノデシル硫酸、モノドデシル硫酸等から得られる塩類が挙げられる。
前記リン酸エステル塩としては、モノラウリルリン酸、モノステアリルリン酸、モノデシルリン酸、モノイソデシルリン酸等から得られる塩類が挙げられる。
これらの塩類は塩としてインキ中に添加することができるが、インキを調製する際に前記カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル、リン酸エステル等の有機酸に水酸化アルカリやアンモニア水や各種アミン等を加えて中和し、インキ中で直接、塩を形成してもよい。
前記界面活性剤には非イオン性界面活性剤とイオン性界面活性剤があり、イオン性界面活性剤が本発明のイオン性物質として有効である。前記イオン性界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられるが、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が好ましく、より好ましくはインキ組成物はアルカリ性に調整されることが多いことや種類の多様性等の点からアニオン性界面活性剤が用いられる。
前記アニオン性界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等があり、カルボン酸塩としては脂肪酸石鹸、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、高分子ポリカルボン酸塩等が挙げられる。
スルホン酸塩としてはアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、スルホコハク酸アルキル二塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン塩、ジメチル−5−スルホイソフタレートナトリウム塩等が挙げられる。
硫酸エステル塩としては硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアマイドの硫酸エステル塩等が挙げられる。
リン酸エステル塩としてはポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、アルキルリン酸塩等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては脂肪族アミン塩、脂肪族第4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としてはカルボキシベタイン型両性界面活性剤、アミノカルボン酸塩、イミダゾリウムベタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
水溶性樹脂としては分子中にイオン性基を有するものが有効であり、カルボキシメチルセルロース等のカルボキシル基を有するセルロース誘導体の塩類、アルギン酸塩、ポリアクリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合樹脂やスルホン酸−アクリル酸共重合樹脂等のアクリル酸共重合樹脂の塩類、エチレン−マレイン酸共重合樹脂等のマレイン酸共重合樹脂の塩類等が挙げられる。
水溶性染料もイオン性基を有するものであれば、本発明のイオン性物資として有効であり、具体的には酸性染料、直接染料、塩基性染料が挙げられるが、インキ組成物はアルカリ性に調整されることが多いことや種類の多様性等の点で酸性染料及び直接染料が好適である。
前記イオン性物質は増粘抑制剤と共にボールペン用水性インキ組成物に添加されることにより増粘抑制効果を発現させるものであり、インキ中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し1質量%以上であることが必要であり、インキ組成物全量に対し2〜15質量%の範囲、好ましくは3〜10質量%の範囲が実用的な範疇である。
15質量%を超えると、初期のインキ粘度が十分ではなく(高いインキ粘度を示さず)、よって、顔料の分散安定性を損なったり、筆跡に滲みを生じたり、垂れ下がりを生じ易くなるといった不具合を生じる。
また、2種類以上のイオン性物質を併用することもできる。
【0009】
着色剤としては顔料が用いられる。
前記顔料としては、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料の他、既に界面活性剤や水溶性樹脂を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等が用いられ、例えば、界面活性剤を用いた水分散顔料としては、
C.I.Pigment Blue 15:3B〔商品名:Sandye Super Blue GLL、顔料分22%、山陽色素(株)製〕、
C.I. Pigment Red 146〔商品名:Sandye Super Pink FBL、顔料分24%、山陽色素(株)製〕、
C.I.Pigment Yellow 81〔商品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業(株)製〕、
C.I.Pigment Red220/166〔商品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業(株)製〕等を挙げることができる。
また、水溶性樹脂を用いた水分散顔料としては、
C.I.Pigment Black 7〔商品名:WA color Black
A250、顔料分15%、大日精化工業(株)製〕、
C.I.Pigment Green 7〔商品名:WA−S color Green、顔料分8%、大日精化工業(株)製〕、
C.I.Pigment Violet 23〔商品名:マイクロピグモ WMVT−5、顔料分20%、オリエント化学工業(株)製〕、
C.I.Pigment Yellow 83〔商品名:エマコールNSイエロー4618、顔料分30%、山陽色素(株)製〕が挙げられる。
蛍光顔料としては、各種蛍光染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。
【0010】
また、前記顔料として熱変色性顔料を用いることもできる。
前記熱変色性顔料としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が好適に用いられる。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料が適用できる(図1参照)。
【0011】
また、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔHB=8〜50℃)を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t1)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t2〜t3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料も適用できる(図2参照)。
【0012】
前記可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性について説明する。
図2において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t4(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t3(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t2(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t1(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
変色温度域は前記t1とt4間の温度域であり、着色状態と消色状態の両状態が共存でき、色濃度の差の大きい領域であるt2とt3の間の温度域が実質変色温度域である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。また、前記ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0013】
前記色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度t1を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−50〜0℃、好ましくは−40〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度t4を摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち50〜95℃、好ましくは50〜90
℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
【0014】
以下に前記(イ)、(ロ)、(ハ)の各成分について説明する。
(イ)成分の電子供与性呈色性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等が挙げられる。
以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,6−ジフェニルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−フェニル、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等を挙げることができる。
更には、蛍光性の黄色〜赤色の発色を発現させるのに有効なピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を用いることもできる。
【0015】
(ロ)成分の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群〔酸ではないが、組成物中で酸として作用して(イ)成分を発色させる化合物群〕、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等を挙げることができる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
【0016】
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0017】
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。前記(ハ)成分としては、エステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類、酸アミド類を挙げることができる。
前記(ハ)成分としては、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。
【0018】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n−ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデシル、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシル等を挙げることができる。
【0019】
ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナダカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、ステアロン等を挙げることができる。
また、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等を挙げることができる。
【0020】
エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
アルコール類としては、炭素数10以上の脂肪族一価の飽和アルコールが有効であり、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール等を挙げることができる。
酸アミド類としては、ヘキサン酸アミド、ヘプタン酸アミド、オクタン酸アミド、ノナン酸アミド、デカン酸アミド、ウンデカン酸アミド、ラウリル酸アミド、トリデカン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ドコサン酸アミド等を挙げることができる。
【0021】
また、前記(ハ)成分として、特開2006−137886号公報に記載されている下記一般式(1)で示される化合物が好適に用いられる。
【化1】
〔式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、mは0〜2の整数を示し、X1、X2のいずれか一方は−(CH2)nOCOR2又は−(CH2)nCOOR2、他方は水素原子を示し、nは0〜2の整数を示し、R2は炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y1及びY2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1〜3の整数を示す。〕
前記式(1)で示される化合物のうち、R1が水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、更にR1が水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
なお、式(1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(2)で示される化合物が用いられる。
【化2】
式中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12〜22のアルキル基である。
前記化合物として具体的には、オクタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチルを例示できる。
【0022】
更に、前記(ハ)成分として、特開2006−188660号公報に記載されている下記一般式(3)で示される化合物を用いることもできる。
【化3】
(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1〜3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。)
前記化合物として具体的には、オクタン酸1,1−ジフェニルメチル、ノナン酸1,1−ジフェニルメチル、デカン酸1,1−ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1−ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1−ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1−ジフェニルメチルを例示できる。
【0023】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(4)で示される化合物を用いることもできる。
【化4】
(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、マロン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、こはく酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、こはく酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(2,4−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−〔4−(2−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステルを例示できる。
【0024】
更に、(ロ)成分として炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物(特開平11−129623号公報)、特定のヒドロキシ安息香酸エステル(特開2001−105732号公報)、没食子酸エステル(特開2003−253149号公報)等を用いた可逆熱変色性組成物を内包した加熱発色型のマイクロカプセル顔料を適用することもできる(図3参照)。
【0025】
前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分の配合割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の変色特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜50、好ましくは0.5〜20、(ハ)成分1〜800、好ましくは5〜200の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。
ここで、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料中、或いは、インキ中に非熱変色性の染料、顔料等の着色剤を配合して、有色(1)から有色(2)への互変的色変化を呈することもできる。
【0026】
前記可逆熱変色性組成物のマイクロカプセル化は、界面重合法、界面重縮合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与したり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
【0027】
前記マイクロカプセル顔料の形態は円形断面の形態のものの適用を拒まないが、非円形断面の形態が効果的である。
筆記により形成される筆跡は、前記マイクロカプセル顔料が被筆記面に対して長径側(最大外径側)を密接させて濃密に配向、固着されており、高濃度の発色性を示すと共に、前記筆跡をゴム等の摩擦体による摩擦による外力に対して、前記マイクロカプセル顔料は外力を緩和する形状に微妙に弾性変形し、マイクロカプセルの壁膜の破壊が抑制され、熱変色機能を損なうことなく有効に発現させることができる。
ここで、前記非円形断面形状のマイクロカプセル顔料は、最大外径の平均値が0.5〜5.0μm、好ましくは1〜4μm、より好ましくは1〜3μmの範囲にあり、且つ、可逆熱変色性組成物:壁膜=7:1〜1:1(質量比)、好ましくは6:1〜1:1の範囲を満たすことが好ましい。
前記マイクロカプセル顔料(円形断面形状のものを含む)の最大外径の平均値が5.0μmを越えると毛細間隙からの流出性の低下を生じ易く、最大外径の平均値が0.5μm未満では高濃度の発色性を示し難くなる。
可逆熱変色性組成物の壁膜に対する比率が前記範囲より大になると、壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、圧力や熱に対する耐性の低下を生じ易く、壁膜の可逆熱変色性組成物に対する比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を生じ易くなる。
【0028】
その他、金属光沢顔料、蓄光性顔料、二酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム等の白色顔料、香料や香料を内包したカプセル顔料等を例示できる。
前記金属光沢顔料としては、アルミニウムや真鍮等の金属光沢顔料、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆した金属光沢顔料(パール顔料)、透明又は着色透明フィルムに金属蒸着膜を形成した金属光沢顔料、透明性樹脂層を複数積層した虹彩性フィルムを細かく裁断した虹彩性を有する金属光沢顔料が例示できる。
前記顔料は一種又は二種以上を適宜混合して使用することができ、インキ組成中1〜40質量%、好ましくは2〜30質量%、より好ましくは3〜30質量%の範囲で用いられる。
また、必要に応じて顔料分散剤を添加できる。前記顔料分散剤としてはアニオン、ノニオン等の界面活性剤、ポリアクリル酸、スチレンアクリル酸等のアニオン性高分子、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の非イオン性高分子等が用いられる。
着色剤として顔料を用いたインキ組成物は、染料を用いたインキ組成物と比較して固形分が多いため、インキ中の水分が蒸発するとインキ粘度が上昇して筆跡のかすれを生じ易い。本願発明に適用されるインキ組成物は、顔料を用いても耐ドライアップ性を維持することができると共に、かすれを生じ難いため、複合式ボールペン用レフィルに充填される顔料系ボールペン用水性インキ組成物としての有用性に優れたものである。
【0029】
前記剪断減粘性付与剤について説明する。
インキ組成物の剪断減粘性とは静止状態あるいは応力の低い時は著しく高粘度で流動し難い性質を有し、応力が増大すると低粘度化して良流動性を示すレオロジー特性を言うものであり、チクソトロピー性あるいは擬似可塑性とも呼ばれる液性を意味している。よって、インキ組成物は筆記時の高剪断応力下においては三次元構造が一時的に破壊されインキの粘度が低下し、筆記先端部のインキは筆記に適した低粘度インキとなり、紙面に転移される。非筆記時にはインキの粘度が高くなり、インキの漏出を防止したり、インキの分離、逆流を防ぐことができる。又、インキ物性を経時的に安定に保つことができる。
特に、筆記先端部にボールを抱持したボールペンは、筆記時の高剪断応力下においてはボール近傍のインキが筆記に適した低粘度となり、ボールとボールハウスの間隙を毛細管力によって移動して紙面に転移されるインキ特性が必要であり、また、非筆記時には、ボール近傍も含めてすべてのインキの粘度が高くなり、インキの漏出を防止したり、インキの分離、逆流を防止する必要があり、E型回転粘度計による100rpmにおけるインキ粘度が20〜200mPa・s(25℃)を示し、且つ、剪断減粘性指数が0.1〜0.8を示すインキ組成物が好適である。
尚、剪断減粘性指数nは実験式T=Kjn(T:剪断応力値、j:剪断速度、Kは計算された定数)に数値をあてはめることにより得られる。
【0030】
前記剪断減粘性付与剤としては、水に可溶乃至分散性の物質が効果的であり、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、高分子成分がグルコース、グルクロン酸、フコース、ラムノースから構成されたガム、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アミド等のHLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸の塩類等を例示でき、単独或いは混合して使用することができる。
前記剪断減粘性付与剤は、インキ組成物中0.1〜20質量%の範囲で用いることができる。
前記剪断減粘性付与剤と、増粘抑制剤としてポリオキシエチレン基を有する界面活性剤と、イオン性物質を併用することにより、インキ中の水分が減少した際、剪断減粘性付与剤は半膨潤状態となり、その結果、インキ粘度は殆ど上昇しない。
なお、前記剪断減粘性付与剤としては、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカンが好適に用いられ、インキの安定性に優れる。
なお、剪断減粘性付与剤と前記増粘抑制剤とイオン性物質を含有するインキ組成物において、インキ全量中から水が40質量%蒸発した時の粘度/初期のインキ粘度(E型回転粘度計、1rpm、20℃で測定)で示される数値(x)が2以下、好ましくは0.01〜1.5、より好ましくは0.01〜1である。
数値(x)が2以下であると複合式ボールペン用レフィルに収容して実用に供した際、耐ドライアップ性能に優れ、初期及び経時後の書き出しが良好であると共に、安定した筆記性能を持続させることができる。
前記数値が2を越えるとインキ中の水が40質量%蒸発した時の粘度と初期のインキ粘度の変化が大きく、よって、粘度上昇によりかすれや筆記不能を生じ易くなる。
【0031】
上記成分以外に、必要に応じて炭酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1,2−ベンズチアゾリン−3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、金属石鹸、脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、燐酸系活性剤、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩等の潤滑剤、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、α−トコフェロール、カテキン、カテキン誘導体、合成ポリフェノール、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、亜硫酸塩、スルホキシル酸塩、亜ジチオン酸塩、チオ硫酸塩、二酸化チオ尿素、ホルムアミジンスルフィン酸、グルタチオン等の酸化防止剤、尿素、ノニオン系界面活性剤、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤、ジメチルポリシロキサン等の消泡剤、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等の水溶性樹脂、分散剤等を使用してもよい。
更に、硫黄系極圧剤として、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−メチル−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ジチアン、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ジチアン、2,5−ジヒドロキシ−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、1,4−チアザン、チアゾリジン、2,4−チアゾリジンジオン、ロダニン、チオアミドとしては、チオアセトアミド、チオプロピオンアミド、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール等を添加することにより、初期及び経時後も良好且つ安定したインキ吐出性を維持することができる。
これらの化合物にはイオン性物質が含まれており、増粘抑制剤と併用することにより増粘抑制効果を奏する化合物については、イオン性物質として兼用して用いたり、前記したイオン性物質と併用して用いることができる。
【0032】
前記インキ組成物は、ボールペンチップを筆記先端部に装着した複合式ボールペン用レフィルに充填される。
ボールペン用レフィルの構造、形状は特に限定されるものではないが、例えば、インキ組成物を充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に抱持したボールペンチップに直接又は接続部材(ホルダー)を介して連通しており、さらにインキ組成物の端面にはインキ逆流防止体組成物が密接しているボールペン用レフィルを例示できる。
ボールペンチップの構造は、汎用の機構が有効であり、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部にボールを抱持する機構、金属材料のドリル等による切削加工により、チップ部を形成して、ボール抱持部にボールを抱持する機構、バネ体によりボールを前方に付勢させた機構、或いは、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けた機構を例示できる。
前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.3〜1.5mm径程度のものが適用できるが、好ましくは0.3〜0.7mm、より好ましくは0.3〜0.5mmのものが用いられる。
前記インキ組成物を収容するインキ収容管は、金属製の他、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる成形体が用いられる。
【0033】
前記インキ収容管に収容したインキの後端にはインキ逆流防止体を充填することもできる。
前記インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α−オレフィン、α−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
前記不揮発性液体及び/又は難揮発性液体には、ゲル化剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物を例示できる。
更に、前記液状のインキ逆流防止体組成物と、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
【0034】
前記インキ組成物中に(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を含む場合、光遮蔽性を有するインキ収容管を用いてインキ組成物の耐光劣化を防止することが好ましく、金属製、或いは、着色剤を含む熱可塑性樹脂からなる成形体が用いられる。また、透明性を有するインキ収容管を用いる場合は、レフィルを収容する軸筒が光遮蔽性であることが好ましい。
更に、インキ収容管と軸筒を共に光遮蔽性を有する材料で形成することもできる。
【0035】
前記ボールペン用レフィルは、軸筒内に複数本を収納し、出没機構の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペンに用いられる。
出没機構の操作方法としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
前記ノック式は、軸筒後端部や軸筒側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記回転式は、軸筒後部に回転部を有し、該回転部を回すことによりボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライドを操作することによりボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
なお、前記ボールペン用レフィルを構成する軸筒は樹脂製、金属製、セラミック製等が挙げられる。
前記複合式ボールペンにおいて、軸筒の直径は12.5mm以下、好ましくは11.5mm以下、より好ましくは10.5mm以下であることにより、手帳やペンケースへの収容性に優れ、しかも、0.5mm未満のボールを備えたボールペン用レフィルを収容して用いると小さな文字を筆記できるため、手帳に記入し易く、より実用性を満足させることができる。
【0036】
前記インキ組成物が(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を含む場合、インキ組成物を収容した複合式ボールペンより形成される筆跡は、指による摩擦や加熱具又は冷熱具の適用により変色させることができる。
前記加熱具としては、抵抗発熱体を装備した通電加熱変色具、温水等を充填した加熱変色具、ヘアドライヤーの適用が挙げられるが、好ましくは、簡便な方法により変色可能な摩擦部材や摩擦体が用いられる。
前記摩擦部材や摩擦体としては、弾性感に富み、摩擦時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好適であるが、プラスチック成形体、石材、木材、金属、布帛であってもよい。
なお、消しゴムを使用して筆跡を摩擦することもできるが、摩擦時に消しカスが発生するため、好ましくは前述のような摩擦部材が用いられる。
前記摩擦部材や摩擦体の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブタジエンスチレンブロック共重合体)が好適に用いられるが、シリコーン樹脂は摩擦により消去した部分に樹脂が付着し易く、繰り返し筆記した際に筆跡がはじかれる傾向にあるため、SEBS樹脂がより好適に用いられる。
前記摩擦部材は筆記具と別体の任意形状の部材(摩擦体)であってもよいが、筆記具に固着させることにより、携帯性に優れる。
前記摩擦部材を固着する箇所は、軸筒先端開口部、或いは、軸筒後端部が挙げられる。
更に、ボールペン用レフィルと同形状の摩擦部材を複合式ボールペンに収容して用いることもできる。
冷熱具としては、ペルチエ素子を利用した冷熱変色具、冷水、氷片等の冷媒を充填した冷熱変色具、冷蔵庫や冷凍庫の適用が挙げられる。
また、前記複合式ボールペンと、摩擦体とを組み合わせて筆記具セットを得ることもできる。
【実施例】
【0037】
以下の表にボールペン用水性インキ組成物の配合を示す。
なお、表中の数値は質量%を示す。
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
表中の原料の内容を注番号に沿って説明する。
(1)C.I.ピグメントブラック7
(2)C.I.ピグメントレッド254
(3)C.I.ピグメントブルー15:3
(4)BASF社製、商品名:ルビテックK−30
(5)三晶(株)製、商品名:ケルザン
(6)日光ケミカルズ(株)製、商品名:PEN−4620
(7)日光ケミカルズ(株)製、商品名:TP−10
(8)日光ケミカルズ(株)製、商品名:GO−460
(9)日光ケミカルズ(株)製、商品名:BC−40TX
(10)日光ケミカルズ(株)製、商品名:BPS−20
(11)花王(株)製、商品名:デモールN
(12)第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフAL、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルリン酸モノエステル及びジエステル混合物
【0040】
表中の可逆熱変色性顔料は以下の方法により調製した。
可逆熱変色性顔料aの調製
(イ)電子供与性呈色性有機化合物として3−(4−ジエチルアミノ−2−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド2.0部、(ロ)電子受容性化合物として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン3.0部、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0部、酢酸エチル40部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、70℃で約1時間攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を攪拌しながら徐々に添加し、さらに液温を90℃に保って約6時間攪拌を続けて可逆熱変色性顔料の懸濁液を得た。
前記懸濁液から、遠心分離により可逆熱変色性顔料を単離し、青色から無色に変色する可逆熱変色性顔料aを得た(固形分:60%、平均粒子径:3μm)。
可逆熱変色性顔料aは無色の状態から冷却すると−6℃から青色に発色し始めて、−14℃で青色の完全発色状態となり、この状態から加温すると48℃から消色し始めて60℃で無色の完全消色状態となる変色挙動を示した。前記変色挙動は繰返し再現することができた。
前記可逆熱変色性顔料aを予め−14℃以下に冷却して完全に発色させて着色剤として用いた。
【0041】
可逆熱変色性顔料bの調製
可逆熱変色性組成物の(イ)成分を2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン4.5部、(ロ)成分を2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン7.5部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン4.5部、(ハ)成分をカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部に変更した以外は可逆熱変色性顔料aと同様の方法により黒色から無色に変色する可逆熱変色性顔料bを得た(固形分:60%、平均粒子径:2μm)。
可逆熱変色性顔料bは無色の状態から冷却すると−9℃から黒色に発色し始めて、−20℃で黒色の完全発色状態となり、この状態から加温すると40℃から消色し始めて57℃で無色の完全消色状態となる変色挙動を示した。前記変色挙動は繰返し再現することができた。
前記可逆熱変色性顔料bを予め−20℃以下に冷却して完全に発色させて着色剤として用いた。
【0042】
可逆熱変色性顔料cの調製
可逆熱変色性組成物の(イ)成分を2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−〔1〕−ベンゾピラノ〔2,3−g〕ピリミジン−5,1’(3’H)−イソベンゾフラン〕−3−オン2.0部、(ロ)成分を2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン3.0部、(ハ)成分をカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部に変更した以外は可逆熱変色性顔料aと同様の方法によりピンク色から無色に変色する可逆熱変色性顔料cを得た(固形分:60%、平均粒子径:2μm)。
可逆熱変色性顔料cは無色の状態から冷却すると−6℃からピンク色に発色し始めて、−14℃でピンク色の完全発色状態となり、この状態から加温すると48℃から消色し始めて58℃で無色の完全消色状態となる変色挙動を示した。前記変色挙動は繰返し再現することができた。
前記可逆熱変色性顔料cを予め−14℃以下に冷却して完全に発色させて着色剤として用いた。
【0043】
可逆熱変色性顔料dの調製
可逆熱変色性組成物の(イ)成分を1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン2.5部、(ロ)成分を2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン3.0部、(ハ)成分をカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部に変更した以外は可逆熱変色性顔料aと同様の方法により橙色から無色に変色する可逆熱変色性顔料dを得た(固形分:60%、平均粒子径:2μm)。
可逆熱変色性顔料dは無色の状態から冷却すると−9℃から橙色に発色し始めて、−18℃で橙色の完全発色状態となり、この状態から加温すると45℃から消色し始めて64℃で無色の完全消色状態となる変色挙動を示した。前記変色挙動は繰返し再現することができた。
前記可逆熱変色性顔料dを予め−18℃以下に冷却して完全に発色させて着色剤として用いた。
【0044】
可逆熱変色性顔料eの調製
可逆熱変色性組成物の(イ)成分を4−〔2,6−ビス(2−エトキシフェニル)−4−ピリジニル〕−N,N−ジメチルベンゼンアミン3.0部、(ロ)成分を2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン10.0部、(ハ)成分をカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部に変更した以外は可逆熱変色性顔料aと同様の方法により黄色から無色に変色する可逆熱変色性顔料eを得た(固形分:60%、平均粒子径:2μm)。
可逆熱変色性顔eは無色の状態から冷却すると−15℃から黄色に発色し始めて、−25℃で黄色の完全発色状態となり、この状態から加温すると40℃から消色し始めて59℃で無色の完全消色状態となる変色挙動を示した。前記変色挙動は繰返し再現することができた。
前記可逆熱変色性顔料eを予め−25℃以下に冷却して完全に発色させて着色剤として用いた。
【0045】
表中の各配合物を混合し、1時間攪拌することにより、ボールペン用水性インキ組成物が得られる。
【0046】
x値の測定
前記インキ組成物の各x値〔インキ中の水がインキ全量に対して40質量%蒸発した時の粘度/初期のインキ粘度(E型回転粘度計、1rpm、20℃で測定)〕を測定した。
耐ドライアップ試験
前記インキ組成物を直径0.5mmのボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたインキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填して複合式ボールペン用レフィルを得た。
前記複合式ボールペン用レフィルを倒立状態(筆記先端部が下向き)で50℃で30日間放置した後、筆記を行ない、筆跡の状態を目視により観察した。
前記インキ組成物の各x値、耐ドライアップ試験結果を以下の表に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
尚、前記表中の判定結果は以下の通り。
耐ドライアップ試験
◎:均一でかすれのない良好な筆跡が得られる。
○:かすれのない筆跡が得られる。
×:筆跡にかすれが見られる。
【0050】
実施例1
複合式ボールペン用レフィルの作製(図4参照)
前記インキ組成物A、B、Cを、それぞれ直径0.3mmのボールを抱持するステンレススチール製ボールペンチップ2が接続部材3を介して嵌着されたポリプロピレン製の透明なインキ収容管4に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体5を充填して複合式ボールペン用レフィル1を得た。
【0051】
複合式ボールペンの作製(図5参照)
前記のようにして得た三本の複合式ボールペン用レフィルを透明な軸筒7(直径10.5mm)内に組み込み、出没機構の操作体8の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペン6を得た。
前記複合式ボールペンを用いて前述の耐ドライアップ試験を行なうと、いずれのボールペン用レフィルを用いても形成される筆跡は均一でかすれがなく、良好な筆跡を形成することができた。
【0052】
実施例2
複合式ボールペン用レフィルの作製(図6参照)
前記インキ組成物A、Bを、それぞれ直径0.4mmのボールを抱持するステンレススチール製ボールペンチップ2が接続部材3を介して嵌着されたポリプロピレン製の透明なインキ収容管4に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体5を充填した。
次いで、インキ収容管の後部に各インキ組成物と同一色の操作体8を嵌着して複合式ボールペン用レフィル1を得た。
【0053】
複合式ボールペンの作製(図7参照)
前記のようにして得た二本の複合式ボールペン用レフィルを、後部に開閉自在の蓋部9を有する透明な軸筒7(直径10.5mm)に組み込み、蓋部を閉めた後、出没機構の操作体8の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペン6を得た。
前記複合式ボールペンを用いて前述の耐ドライアップ試験を行なうと、いずれのボールペン用レフィルを用いても形成される筆跡は均一でかすれがなく、良好な筆跡を形成することができた。
【0054】
実施例3
複合式ボールペン用レフィルの作製
前記インキ組成物D、Fを、それぞれ直径0.4mmのボールを抱持するステンレススチール製ボールペンチップが接続部材を介して嵌着されたポリプロピレン製の透明なインキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填して複合式ボールペン用レフィルを得た。
【0055】
複合式ボールペンの作製(図8参照)
前記のようにして得た二本の複合式ボールペン用レフィルを光遮蔽性(不透明)軸筒7(直径11mm)内に組み込み、出没機構の操作体8の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペン6を得た。
なお、前記複合式ボールペンの軸筒後端部には、SEBS樹脂製の摩擦部材10を設けてなる。
前記複合式ボールペンを用いて前述の耐ドライアップ試験を行なうと、いずれのボールペン用レフィルを用いても形成される筆跡は均一でかすれがなく、良好な筆跡を形成することができた。
更に、前記筆跡は、摩擦部材により摩擦することにより消色させることができた。
【0056】
実施例4
複合式ボールペン用レフィルの作製
前記インキ組成物D、F、Gをそれぞれを直径0.4mmのボールを抱持するステンレススチール製ボールペンチップが接続部材を介して嵌着されたポリプロピレン製の光遮蔽性(不透明)インキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填した。
次いで、インキ収容管の後部に各インキ組成物と同一色の操作体を嵌着して複合式ボールペン用レフィルを得た。
【0057】
複合式ボールペンの作製(図9参照)
前記のようにして得た三本の複合式ボールペン用レフィルを、後部に開閉自在の蓋部9を有する透明な軸筒7(直径11mm)に組み込み、蓋部を閉めた後、出没機構の操作体8の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペン6を得た。
なお、前記軸筒先端の開口部近傍には、SEBS樹脂製の摩擦部材10を設けてなる。
前記複合式ボールペンを用いて前述の耐ドライアップ試験を行なうと、いずれのボールペン用レフィルを用いても形成される筆跡は均一でかすれがなく、良好な筆跡を形成することができた。
更に、前記筆跡は、摩擦部材により摩擦することにより消色させることができた。
【0058】
実施例5
複合式ボールペン用レフィルの作製
前記インキ組成物E、Hをそれぞれ直径0.4mmのボールを抱持するステンレススチール製ボールペンチップが接続部材を介して嵌着されたポリプロピレン製の光遮蔽性(不透明)インキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填した。
次いで、インキ収容管の後部に各インキ組成物と同一色の操作体を嵌着して複合式ボールペン用レフィルを得た。
【0059】
摩擦部材の作製(図10参照)
前記複合式ボールペン用レフィルに用いたインキ収容管4の先端部にSEBS樹脂成形物を設け、後端部に前記複合式ボールペン用レフィルに用いた操作体8(透明)を嵌着して摩擦部材10を得た。
【0060】
複合式ボールペンの作製(図11参照)
前記のようにして得た二本の複合式ボールペン用レフィルと摩擦部材10を、後部に開閉自在の蓋部9を有する光遮蔽性(不透明)軸筒7(直径11mm)に組み込み、蓋部を閉めた後、出没機構の操作体8の作動によっていずれかのボールペン用レフィル、或いは、摩擦部材の筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペン6を得た。
前記複合式ボールペンを用いて前述の耐ドライアップ試験を行なうと、いずれのボールペン用レフィルを用いても形成される筆跡は均一でかすれがなく、良好な筆跡を形成することができた。
更に、前記筆跡は、摩擦部材により摩擦することにより消色させることができた。
【0061】
実施例6
複合式ボールペン用レフィルの作製
前記インキ組成物Aを直径0.3mmのボールを抱持するステンレススチール製ボールペンチップが接続部材を介して嵌着されたポリプロピレン製の透明なインキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填して複合式ボールペン用レフィルを得た。
インキ組成物Aを用いて、直径0.4mmのボールを使用する以外は前記と同様の方法により複合式ボールペン用レフィルを得た。
インキ組成物Aを用いて、直径0.5mmのボールを使用する以外は前記と同様の方法により複合式ボールペン用レフィルを得た。
【0062】
複合式ボールペンの作製
前記のようにして得た三本の複合式ボールペン用レフィルを透明な軸筒(直径10mm)内に組み込み、出没機構の操作体の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペンを得た。
前記複合式ボールペンを用いて前述の耐ドライアップ試験を行なうと、いずれのボールペン用レフィルを用いても形成される筆跡は均一でかすれがなく、良好な筆跡を形成することができた。
【0063】
実施例7
複合式ボールペン用レフィルの作製
前記インキ組成物Aを直径0.5mmのボールを抱持するステンレススチール製ボールペンチップが接続部材を介して嵌着されたポリプロピレン製の透明なインキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填した。
次いで、インキ収容管の後部に各インキ組成物と同一色の操作体を嵌着して複合式ボールペン用レフィルを得た。
前記インキ組成物Fを直径0.5mmのボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着された光遮蔽性(不透明)インキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填した。
次いで、インキ収容管の後部に各インキ組成物と同一色の操作体を嵌着して複合式ボールペン用レフィルを得た。
【0064】
摩擦部材の作製
前記複合式ボールペン用レフィルに用いた光遮蔽性(不透明)インキ収容管先端部にSEBS樹脂成形物を設け、後端部に前記複合式ボールペン用レフィルに用いた操作体(白色)を嵌着して摩擦部材を得た。
【0065】
複合式ボールペンの作製
前記のようにして得た二本の複合式ボールペン用レフィルと摩擦部材を、後部に開閉自在の蓋部を有する透明な軸筒(直径11mm)に組み込み、蓋部を閉めた後、出没機構の操作体の作動によっていずれかのボールペン用レフィル、或いは、摩擦部材の筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペンを得た。
前記複合式ボールペンを用いて前述の耐ドライアップ試験を行なうと、いずれのボールペン用レフィルを用いても形成される筆跡は均一でかすれがなく、良好な筆跡を形成することができた。
更に、前記筆跡のうち一方は、摩擦部材により摩擦することにより消色させることができた。
【0066】
実施例8
複合式ボールペン用レフィルの作製
前記インキ組成物E、F、Hをそれぞれ直径0.4mmのボールを抱持するステンレススチール製ボールペンチップが接続部材を介して嵌着されたポリプロピレン製の透明なインキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填して複合式ボールペン用レフィルを得た。
【0067】
複合式ボールペンの作製
前記のようにして得た三本の複合式ボールペン用レフィルを透明な軸筒(直径11mm)内に組み込み、出没機構の操作体の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペンを得た。
【0068】
筆記具セットの作製
前記複合式ボールペンと、SEBS樹脂製の摩擦体(立方体形状)を組み合わせて筆記具セットを得た。
前記複合式ボールペンを用いて前述の耐ドライアップ試験を行なうと、いずれのボールペン用レフィルを用いても形成される筆跡は均一でかすれがなく、良好な筆跡を形成することができた。
更に、前記筆跡は、摩擦体により摩擦することにより消色させることができた。
【0069】
比較例1
複合式ボールペン用レフィルの作製
前記インキ組成物I、J、Kを、それぞれ直径0.3mmのボールを抱持するステンレススチール製ボールペンチップが接続部材を介して嵌着されたポリプロピレン製の透明なインキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填して複合式ボールペン用レフィルを得た。
【0070】
複合式ボールペンの作製
前記のようにして得た三本の複合式ボールペン用レフィルを透明な軸筒(直径10.5mm)内に組み込み、出没機構の操作体の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペンを得た。
前記複合式ボールペンを用いて前述の耐ドライアップ試験を行なうと、全てのボールペン用レフィルから形成される筆跡はかすれが見られ、商品価値の乏しいものであった。
【0071】
比較例2
複合式ボールペン用レフィルの作製
前記インキ組成物L、Nを、それぞれ直径0.4mmのボールを抱持するステンレススチール製ボールペンチップが接続部材を介して嵌着されたポリプロピレン製の透明なインキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填して複合式ボールペン用レフィルを得た。
【0072】
複合式ボールペンの作製
前記のようにして得た二本の複合式ボールペン用レフィルを光遮蔽性(不透明)軸筒(直径11mm)内に組み込み、出没機構の操作体の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペンを得た。
なお、前記複合式ボールペンの軸筒後端部には、SEBS樹脂製の摩擦部材を設けてなる。
前記複合式ボールペンを用いて前述の耐ドライアップ試験を行なうと、全てのボールペン用レフィルから形成される筆跡はかすれが見られ、商品価値の乏しいものであった。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【図2】色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【図3】加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【図4】本発明の複合式ボールペン用レフィルの一実施例を示す断面図である。
【図5】図4の複合式ボールペン用レフィルを収容した複合式ボールペンの断面図である。
【図6】本発明の複合式ボールペン用レフィルの他の実施例を示す断面図である。
【図7】図6の複合式ボールペン用レフィルを収容した複合式ボールペンの断面図である。
【図8】本発明の複合式ボールペンの他の実施例を示す断面図である。
【図9】本発明の複合式ボールペンの他の実施例を示す断面図である。
【図10】本発明に適用される摩擦部材の一実施例を示す断面図である。
【図11】図10の摩擦部材を収容した複合式ボールペンの断面図である。
【符号の説明】
【0074】
t1 加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全発色温度
t2 加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の発色開始温度
t3 加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の消色開始温度
t4 加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全消色温度
T1 加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全消色温度
T2 加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の消色開始温度
T3 加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の発色開始温度
T4 加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全発色温度
ΔH ヒステリシス幅
1 複合式ボールペン用レフィル
2 ボールペンチップ
3 接続部材
4 インキ収容管
5 インキ逆流防止体
6 複合式ボールペン
7 軸筒
8 操作体
9 蓋部
10 摩擦部材
【技術分野】
【0001】
本発明は複合式ボールペン用レフィル及びそれを収容した複合式ボールペンに関する。更に詳細には、ペン先における耐ドライアップ性能に優れた複合式ボールペン用レフィル及びそれを収容した複合式ボールペンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ボールペンに収容されるインキ組成物は、水を主溶剤とした水性インキ組成物が汎用されつつあり、そのうち、剪断減粘性を有するインキ組成物は、低粘度水性ボールペンの筆跡が滲む欠点を解消できるものである。
前記インキ組成物に剪断減粘性を付与する物質(剪断減粘性付与剤)としては、キサンタンガム等の多糖類が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
しかし、前記剪断減粘性付与剤は耐ドライアップ性能を阻害することがあり、水溶性有機溶剤等の湿潤剤や尿素等の固体湿潤剤といった添加剤を併用して耐ドライアップ性能を向上させる試みがなされるとしても、乾燥防止効果は不十分であり、しかも、インキ粘度が上昇してかすれ等の筆記不良を生じ易くなる。
具体的には、尿素を過度に添加すると、筆記先端部から水分が蒸発して水溶性有機溶剤の濃度が上昇し、固形分が前記筆記先端部に析出する、所謂、花咲き現象を生じて見栄えが悪くなると共にかすれ等を生じる。更に、水溶性有機溶剤や尿素を多量に添加すると、多湿環境下で筆記先端部を下向きに放置した際、垂れ下がりが発生するなどの弊害を生じ易くなる。
前述のように、インキ組成物に耐ドライアップ性を向上させる手段は多々存在するものの、筆跡のかすれや垂れ下がり等のボールペンに要求される他の性能の低下をもたらすことがあった。
特に、軸筒内に複数の複合式ボールペン用レフィルを収容し、非筆記時に筆記先端部(ボールペンチップ)が常に大気中に開放された状態の複合式ボールペンに使用する場合、筆跡のかすれや垂れ下がりを生じると、単一のボールペン用レフィルを収容した出没式ボールペンと比較して商品価値を大きく損なう虞がある。
【特許文献1】特開昭59−74175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は前記した複合式ボールペン用レフィル及びそれを収容した複合式ボールペンの問題点を解消するものであって、即ち、種々の筆記性能を阻害することなく、耐ドライアップ性を満足する複合式ボールペン用レフィル及びそれを収容した複合式ボールペンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又は接続部材を介して装着したインキ収容管に、顔料と、水と、剪断減粘性付与剤と、増粘抑制剤としてポリオキシエチレン基を有する界面活性剤と、イオン性物質とから少なくともなり、インキ中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し1質量%以上であり、インキ組成物中に水溶性有機溶剤を含有しないボールペン用水性インキ組成物を充填した複合式ボールペン用レフィル、或いは、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又は接続部材を介して装着したインキ収容管に、顔料と、水と、水溶性有機溶剤と、剪断減粘性付与剤と、増粘抑制剤と、イオン性物質とから少なくともなり、インキ中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し1質量%以上であり、前記水溶性有機溶剤がインキ組成物中10質量%以下であり、且つ、増粘抑制剤がポリオキシエチレン基を有する界面活性剤であるボールペン用水性インキ組成物を充填した複合式ボールペン用レフィルを要件とする。
更には、前記インキ組成物中に含まれるイオン性物質がインキ中で解離して形成される陽イオンが一価陽イオンであること、前記一価陽イオンがアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンから選ばれること、前記インキ組成物中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し2〜15質量%であること、前記顔料が(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料であること、前記マイクロカプセル顔料が、色濃度−温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して有色状態と無色状態の互変性を呈し、該顔料は有色状態から温度が上昇する過程では、温度t3に達すると消色し始め、温度t3より高い温度t4以上の温度域で完全に無色状態となり、無色状態から温度が下降する過程では、温度t3より低い温度t2に達すると着色し始め、温度t2より低い温度t1以下の温度域で完全に着色状態となり、前記温度t2と温度t3の間の温度域で着色状態或いは無色状態が選択的に保持されるヒステリシス特性を示し、温度t1は−50〜0℃の範囲にあり、温度t4が50〜90℃の範囲にあること、前記インキ収容管が光遮蔽性であること、前記ボールペン用レフィルに収容されたインキ組成物の後端面にインキ消費に伴って追従するインキ逆流防止体を配設してなること等を要件とする。
更には、前記複合式ボールペン用レフィルを複数本軸筒内に収容し、出没機構の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペンを要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、前記剪断減粘性付与剤と特定の増粘抑制剤とイオン性物質を併用しているので、インキ中の水分が蒸発してもインキ粘度が過度に上昇することなく、よって、耐ドライアップ性能に優れ、初期及び経時後の書き出しが良好であると共に、筆跡のかすれや垂れ下がりを生じることなく、安定した筆記性能を永続させることができ、良好な筆跡を形成可能な複合式ボールペン用レフィル及びそれを収容した複合式ボールペンが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の複合式ボールペン用レフィルに充填されるボールペン用水性インキ組成物は、水の他に水溶性有機溶剤を添加しない、或いは、添加してもインキ組成物全量中10質量%以下であり、且つ、増粘抑制剤としてポリオキシエチレン基を有する界面活性剤を含有してなる。
前記界面活性剤はポリオキシエチレン基を分子内に有するものであればノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれを用いることも可能であるが、汎用性、入手性の観点からノニオン系界面活性剤及びアニオン系界面活性剤が好ましい。
前記ノニオン系界面活性剤はエーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型があり、エーテル型としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレン水素添加ステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物の酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等が挙げられ、エーテルエステル型としては、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル等が挙げられ、エステル型としてはポリエチレングリコール脂肪酸エステル等、含窒素型としては、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
前記アニオン系界面活性剤はカルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩があり、カルボン酸塩としてはポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩等が挙げられ、スルホン酸塩としてはポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二塩等が挙げられ、硫酸エステル塩としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、第2高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等が挙げられ、リン酸エステル塩としてはポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩等が挙げられる。
更に、前記界面活性剤としてポリオキシエチレン基を分子内に有するフッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤を用いることもできる。
前記界面活性剤はHLBが5以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上のものが好適に用いられる。HLBが5未満ではインキ組成物中に均一に溶解又は分散し難く、所望の増粘抑制効果を発現でき難くなる。また、ポリオキシエチレン基の含有数が多い程増粘抑制効果が大きくなる傾向があり、ポリオキシエチレン基を10以上含有するものが好ましく、20以上含有するものがより好ましい。
前記増粘抑制剤はインキ全量に対して0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%の範囲で用いられる。0.1質量%より少ないと耐ドライアップ性の効果が少なく、20質量%より多いと初期からインキ中で剪断減粘性付与剤が膨潤不良状態となり、所望のインキ粘度を示し難い。
【0007】
前記ボールペン用水性インキ組成物は、前記増粘抑制剤とイオン性物質が配合されるため、水溶性有機溶剤の添加による積極的な耐ドライアップ防止性能の向上は必要なく、従って、水溶性有機溶剤を添加しない、或いは、ごく少量、即ち、0を超え、且つ、10質量%以下(0質量%<水溶性有機溶剤の添加量≦10質量%)、好ましくは5質量%以下の水溶性有機溶剤が添加された系で有効な増粘抑制機能を発現できる。
また、水溶性有機溶剤全量が従来のインキ組成物よりも少ない、或いは、全く含まれないため、水溶性有機溶剤の吸水性によって筆記先端部にインキが溜まり(垂れ下がり)、良好な筆跡の形成を損なったり、誤って衣類を汚染する不具合を防止することもできる。
水溶性有機溶剤を含有する系においては、前記水溶性有機溶剤全量中に溶解度パラメーターが8〜11、好ましくは8〜10の水溶性有機溶剤を80〜100質量%、好ましくは90〜100質量%含有することにより、耐ドライアップ性の効果を更に向上させることができる。
前記溶解度パラメーターが8〜11の水溶性有機溶剤としては、ブチルアルコール、総炭素数5又は6の多価アルコール類、総炭素数4〜13のグリコールエーテル類、炭素数5〜9のグリコールアセテート類、炭素数5〜10のグリコールモノエーテルアセテート類、炭素数5〜10のヒドロキシカルボン酸エステル類、炭素数4〜12のカルボン酸アミド類等が好適に用いられる。
以下に好適な溶解度パラメーターが8〜11の水溶性有機溶剤を例示する。
前記多価アルコール類としては炭素数5又は6の水酸基を2個有するジオール類が好適であり、1,2−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、ヘキシレングリコール(2−メチル−2,4−ペンタンジオール)、3−メチル−1,5−ペンタンジオールが挙げられる。
前記グリコールエーテル類としては、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等が挙げられる。
グリコールアセテート類としては、ジエチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、グリセリンジアセテート、グリセリントリアセテート等が挙げられる。
グリコールモノエーテルアセテート類としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸エステル類としては乳酸エステルが好適であり、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル等が挙げられる。
カルボン酸アミド類としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンのオリゴマー、ε−カプロラクタム等が挙げられる。
【0008】
前記インキ組成物中にはイオン性物質を含有してなり、且つ、インキ中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。
剪断減粘性付与剤と増粘抑制剤を含む系において、前記イオン性物質を含有することによって、初期及び経時後も永続して耐ドライアップ性能を維持することができる。
前記イオン性物質は、インキ組成物中でイオン化して陽イオンと陰イオンを生じるが、2価以上の陽イオンはインキ組成物中の他の成分と反応して不溶性塩を形成し易く、それによって筆記時にかすれ等を生じることもあるため、イオン性物質はイオン化して一価陽イオンを生じる物質が好ましく、筆記性能を維持しつつ、経時後の耐ドライアップ性能を維持する効果に優れる。
なお、一価陽イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンや、モノアルキルアンモニウムイオン、ジアルキルアンモニウムイオン、トリアルキルアンモニウイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン等の脂肪族アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、アニリニウムイオン等の芳香族アンモニウムイオンが挙げられ、アルカリ金属イオンが好適である。
前記イオン性物質を以下に示す。
無機塩類としては、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩等が挙げられ、具体的には、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム等を例示できる。前記無機塩のうち、インキ組成物のpHに影響を与えない中性無機塩が好適であり、ハロゲン化アルカリが挙げられる。
有機塩類としては低分子量の各種有機酸の塩類や界面活性剤、水溶性樹脂、水溶性染料等が挙げられる。
低分子量の有機酸の塩類としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等が挙げられる。
前記カルボン酸塩としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、安息香酸、p−ブチル安息香酸、p−フェニル安息香酸等の置換安息香酸類、α−ナフタレン酢酸、シュウ酸、コハク酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメシン酸、乳酸、りんご酸、グリコール酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシイソ酪酸、酒石酸、メバロン酸、クエン酸、イソクエン酸、ソルビン酸等から得られるカルボン酸塩が挙げられる。
前記スルホン酸塩としては、ペンタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、ヘプタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸類、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレンスルホン酸ジスルホン酸等のナフタレンジスルホン酸、1−ナフトール−3−スルホン酸等のナフトールスルホン酸、1−ナフトール−2,5−ジスルホン酸等のナフトールジスルホン酸、4−アミノ−5−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンスルホン酸のアミノナフトールスルホン酸等の芳香族スルホン酸から得られるスルホン酸塩が挙げられる。
前記硫酸エステル塩としては、モノヘキシル硫酸、モノオクチル硫酸、モノデシル硫酸、モノドデシル硫酸等から得られる塩類が挙げられる。
前記リン酸エステル塩としては、モノラウリルリン酸、モノステアリルリン酸、モノデシルリン酸、モノイソデシルリン酸等から得られる塩類が挙げられる。
これらの塩類は塩としてインキ中に添加することができるが、インキを調製する際に前記カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル、リン酸エステル等の有機酸に水酸化アルカリやアンモニア水や各種アミン等を加えて中和し、インキ中で直接、塩を形成してもよい。
前記界面活性剤には非イオン性界面活性剤とイオン性界面活性剤があり、イオン性界面活性剤が本発明のイオン性物質として有効である。前記イオン性界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられるが、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が好ましく、より好ましくはインキ組成物はアルカリ性に調整されることが多いことや種類の多様性等の点からアニオン性界面活性剤が用いられる。
前記アニオン性界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等があり、カルボン酸塩としては脂肪酸石鹸、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、高分子ポリカルボン酸塩等が挙げられる。
スルホン酸塩としてはアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、スルホコハク酸アルキル二塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン塩、ジメチル−5−スルホイソフタレートナトリウム塩等が挙げられる。
硫酸エステル塩としては硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアマイドの硫酸エステル塩等が挙げられる。
リン酸エステル塩としてはポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、アルキルリン酸塩等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては脂肪族アミン塩、脂肪族第4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としてはカルボキシベタイン型両性界面活性剤、アミノカルボン酸塩、イミダゾリウムベタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
水溶性樹脂としては分子中にイオン性基を有するものが有効であり、カルボキシメチルセルロース等のカルボキシル基を有するセルロース誘導体の塩類、アルギン酸塩、ポリアクリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合樹脂やスルホン酸−アクリル酸共重合樹脂等のアクリル酸共重合樹脂の塩類、エチレン−マレイン酸共重合樹脂等のマレイン酸共重合樹脂の塩類等が挙げられる。
水溶性染料もイオン性基を有するものであれば、本発明のイオン性物資として有効であり、具体的には酸性染料、直接染料、塩基性染料が挙げられるが、インキ組成物はアルカリ性に調整されることが多いことや種類の多様性等の点で酸性染料及び直接染料が好適である。
前記イオン性物質は増粘抑制剤と共にボールペン用水性インキ組成物に添加されることにより増粘抑制効果を発現させるものであり、インキ中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し1質量%以上であることが必要であり、インキ組成物全量に対し2〜15質量%の範囲、好ましくは3〜10質量%の範囲が実用的な範疇である。
15質量%を超えると、初期のインキ粘度が十分ではなく(高いインキ粘度を示さず)、よって、顔料の分散安定性を損なったり、筆跡に滲みを生じたり、垂れ下がりを生じ易くなるといった不具合を生じる。
また、2種類以上のイオン性物質を併用することもできる。
【0009】
着色剤としては顔料が用いられる。
前記顔料としては、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料の他、既に界面活性剤や水溶性樹脂を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等が用いられ、例えば、界面活性剤を用いた水分散顔料としては、
C.I.Pigment Blue 15:3B〔商品名:Sandye Super Blue GLL、顔料分22%、山陽色素(株)製〕、
C.I. Pigment Red 146〔商品名:Sandye Super Pink FBL、顔料分24%、山陽色素(株)製〕、
C.I.Pigment Yellow 81〔商品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業(株)製〕、
C.I.Pigment Red220/166〔商品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業(株)製〕等を挙げることができる。
また、水溶性樹脂を用いた水分散顔料としては、
C.I.Pigment Black 7〔商品名:WA color Black
A250、顔料分15%、大日精化工業(株)製〕、
C.I.Pigment Green 7〔商品名:WA−S color Green、顔料分8%、大日精化工業(株)製〕、
C.I.Pigment Violet 23〔商品名:マイクロピグモ WMVT−5、顔料分20%、オリエント化学工業(株)製〕、
C.I.Pigment Yellow 83〔商品名:エマコールNSイエロー4618、顔料分30%、山陽色素(株)製〕が挙げられる。
蛍光顔料としては、各種蛍光染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。
【0010】
また、前記顔料として熱変色性顔料を用いることもできる。
前記熱変色性顔料としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が好適に用いられる。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料が適用できる(図1参照)。
【0011】
また、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔHB=8〜50℃)を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t1)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t2〜t3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料も適用できる(図2参照)。
【0012】
前記可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性について説明する。
図2において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t4(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t3(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t2(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t1(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
変色温度域は前記t1とt4間の温度域であり、着色状態と消色状態の両状態が共存でき、色濃度の差の大きい領域であるt2とt3の間の温度域が実質変色温度域である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。また、前記ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0013】
前記色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度t1を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−50〜0℃、好ましくは−40〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度t4を摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち50〜95℃、好ましくは50〜90
℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
【0014】
以下に前記(イ)、(ロ)、(ハ)の各成分について説明する。
(イ)成分の電子供与性呈色性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等が挙げられる。
以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,6−ジフェニルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−フェニル、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等を挙げることができる。
更には、蛍光性の黄色〜赤色の発色を発現させるのに有効なピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を用いることもできる。
【0015】
(ロ)成分の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群〔酸ではないが、組成物中で酸として作用して(イ)成分を発色させる化合物群〕、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等を挙げることができる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
【0016】
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0017】
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。前記(ハ)成分としては、エステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類、酸アミド類を挙げることができる。
前記(ハ)成分としては、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。
【0018】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n−ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデシル、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシル等を挙げることができる。
【0019】
ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナダカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、ステアロン等を挙げることができる。
また、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等を挙げることができる。
【0020】
エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
アルコール類としては、炭素数10以上の脂肪族一価の飽和アルコールが有効であり、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール等を挙げることができる。
酸アミド類としては、ヘキサン酸アミド、ヘプタン酸アミド、オクタン酸アミド、ノナン酸アミド、デカン酸アミド、ウンデカン酸アミド、ラウリル酸アミド、トリデカン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ドコサン酸アミド等を挙げることができる。
【0021】
また、前記(ハ)成分として、特開2006−137886号公報に記載されている下記一般式(1)で示される化合物が好適に用いられる。
【化1】
〔式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、mは0〜2の整数を示し、X1、X2のいずれか一方は−(CH2)nOCOR2又は−(CH2)nCOOR2、他方は水素原子を示し、nは0〜2の整数を示し、R2は炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y1及びY2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1〜3の整数を示す。〕
前記式(1)で示される化合物のうち、R1が水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、更にR1が水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
なお、式(1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(2)で示される化合物が用いられる。
【化2】
式中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12〜22のアルキル基である。
前記化合物として具体的には、オクタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチルを例示できる。
【0022】
更に、前記(ハ)成分として、特開2006−188660号公報に記載されている下記一般式(3)で示される化合物を用いることもできる。
【化3】
(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1〜3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。)
前記化合物として具体的には、オクタン酸1,1−ジフェニルメチル、ノナン酸1,1−ジフェニルメチル、デカン酸1,1−ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1−ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1−ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1−ジフェニルメチルを例示できる。
【0023】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(4)で示される化合物を用いることもできる。
【化4】
(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、マロン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、こはく酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、こはく酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(2,4−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−〔4−(2−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステルを例示できる。
【0024】
更に、(ロ)成分として炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物(特開平11−129623号公報)、特定のヒドロキシ安息香酸エステル(特開2001−105732号公報)、没食子酸エステル(特開2003−253149号公報)等を用いた可逆熱変色性組成物を内包した加熱発色型のマイクロカプセル顔料を適用することもできる(図3参照)。
【0025】
前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分の配合割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の変色特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜50、好ましくは0.5〜20、(ハ)成分1〜800、好ましくは5〜200の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。
ここで、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料中、或いは、インキ中に非熱変色性の染料、顔料等の着色剤を配合して、有色(1)から有色(2)への互変的色変化を呈することもできる。
【0026】
前記可逆熱変色性組成物のマイクロカプセル化は、界面重合法、界面重縮合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与したり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
【0027】
前記マイクロカプセル顔料の形態は円形断面の形態のものの適用を拒まないが、非円形断面の形態が効果的である。
筆記により形成される筆跡は、前記マイクロカプセル顔料が被筆記面に対して長径側(最大外径側)を密接させて濃密に配向、固着されており、高濃度の発色性を示すと共に、前記筆跡をゴム等の摩擦体による摩擦による外力に対して、前記マイクロカプセル顔料は外力を緩和する形状に微妙に弾性変形し、マイクロカプセルの壁膜の破壊が抑制され、熱変色機能を損なうことなく有効に発現させることができる。
ここで、前記非円形断面形状のマイクロカプセル顔料は、最大外径の平均値が0.5〜5.0μm、好ましくは1〜4μm、より好ましくは1〜3μmの範囲にあり、且つ、可逆熱変色性組成物:壁膜=7:1〜1:1(質量比)、好ましくは6:1〜1:1の範囲を満たすことが好ましい。
前記マイクロカプセル顔料(円形断面形状のものを含む)の最大外径の平均値が5.0μmを越えると毛細間隙からの流出性の低下を生じ易く、最大外径の平均値が0.5μm未満では高濃度の発色性を示し難くなる。
可逆熱変色性組成物の壁膜に対する比率が前記範囲より大になると、壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、圧力や熱に対する耐性の低下を生じ易く、壁膜の可逆熱変色性組成物に対する比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を生じ易くなる。
【0028】
その他、金属光沢顔料、蓄光性顔料、二酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム等の白色顔料、香料や香料を内包したカプセル顔料等を例示できる。
前記金属光沢顔料としては、アルミニウムや真鍮等の金属光沢顔料、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆した金属光沢顔料(パール顔料)、透明又は着色透明フィルムに金属蒸着膜を形成した金属光沢顔料、透明性樹脂層を複数積層した虹彩性フィルムを細かく裁断した虹彩性を有する金属光沢顔料が例示できる。
前記顔料は一種又は二種以上を適宜混合して使用することができ、インキ組成中1〜40質量%、好ましくは2〜30質量%、より好ましくは3〜30質量%の範囲で用いられる。
また、必要に応じて顔料分散剤を添加できる。前記顔料分散剤としてはアニオン、ノニオン等の界面活性剤、ポリアクリル酸、スチレンアクリル酸等のアニオン性高分子、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の非イオン性高分子等が用いられる。
着色剤として顔料を用いたインキ組成物は、染料を用いたインキ組成物と比較して固形分が多いため、インキ中の水分が蒸発するとインキ粘度が上昇して筆跡のかすれを生じ易い。本願発明に適用されるインキ組成物は、顔料を用いても耐ドライアップ性を維持することができると共に、かすれを生じ難いため、複合式ボールペン用レフィルに充填される顔料系ボールペン用水性インキ組成物としての有用性に優れたものである。
【0029】
前記剪断減粘性付与剤について説明する。
インキ組成物の剪断減粘性とは静止状態あるいは応力の低い時は著しく高粘度で流動し難い性質を有し、応力が増大すると低粘度化して良流動性を示すレオロジー特性を言うものであり、チクソトロピー性あるいは擬似可塑性とも呼ばれる液性を意味している。よって、インキ組成物は筆記時の高剪断応力下においては三次元構造が一時的に破壊されインキの粘度が低下し、筆記先端部のインキは筆記に適した低粘度インキとなり、紙面に転移される。非筆記時にはインキの粘度が高くなり、インキの漏出を防止したり、インキの分離、逆流を防ぐことができる。又、インキ物性を経時的に安定に保つことができる。
特に、筆記先端部にボールを抱持したボールペンは、筆記時の高剪断応力下においてはボール近傍のインキが筆記に適した低粘度となり、ボールとボールハウスの間隙を毛細管力によって移動して紙面に転移されるインキ特性が必要であり、また、非筆記時には、ボール近傍も含めてすべてのインキの粘度が高くなり、インキの漏出を防止したり、インキの分離、逆流を防止する必要があり、E型回転粘度計による100rpmにおけるインキ粘度が20〜200mPa・s(25℃)を示し、且つ、剪断減粘性指数が0.1〜0.8を示すインキ組成物が好適である。
尚、剪断減粘性指数nは実験式T=Kjn(T:剪断応力値、j:剪断速度、Kは計算された定数)に数値をあてはめることにより得られる。
【0030】
前記剪断減粘性付与剤としては、水に可溶乃至分散性の物質が効果的であり、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、高分子成分がグルコース、グルクロン酸、フコース、ラムノースから構成されたガム、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アミド等のHLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸の塩類等を例示でき、単独或いは混合して使用することができる。
前記剪断減粘性付与剤は、インキ組成物中0.1〜20質量%の範囲で用いることができる。
前記剪断減粘性付与剤と、増粘抑制剤としてポリオキシエチレン基を有する界面活性剤と、イオン性物質を併用することにより、インキ中の水分が減少した際、剪断減粘性付与剤は半膨潤状態となり、その結果、インキ粘度は殆ど上昇しない。
なお、前記剪断減粘性付与剤としては、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカンが好適に用いられ、インキの安定性に優れる。
なお、剪断減粘性付与剤と前記増粘抑制剤とイオン性物質を含有するインキ組成物において、インキ全量中から水が40質量%蒸発した時の粘度/初期のインキ粘度(E型回転粘度計、1rpm、20℃で測定)で示される数値(x)が2以下、好ましくは0.01〜1.5、より好ましくは0.01〜1である。
数値(x)が2以下であると複合式ボールペン用レフィルに収容して実用に供した際、耐ドライアップ性能に優れ、初期及び経時後の書き出しが良好であると共に、安定した筆記性能を持続させることができる。
前記数値が2を越えるとインキ中の水が40質量%蒸発した時の粘度と初期のインキ粘度の変化が大きく、よって、粘度上昇によりかすれや筆記不能を生じ易くなる。
【0031】
上記成分以外に、必要に応じて炭酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1,2−ベンズチアゾリン−3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、金属石鹸、脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、燐酸系活性剤、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩等の潤滑剤、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、α−トコフェロール、カテキン、カテキン誘導体、合成ポリフェノール、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、亜硫酸塩、スルホキシル酸塩、亜ジチオン酸塩、チオ硫酸塩、二酸化チオ尿素、ホルムアミジンスルフィン酸、グルタチオン等の酸化防止剤、尿素、ノニオン系界面活性剤、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤、ジメチルポリシロキサン等の消泡剤、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等の水溶性樹脂、分散剤等を使用してもよい。
更に、硫黄系極圧剤として、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−メチル−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ジチアン、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ジチアン、2,5−ジヒドロキシ−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、1,4−チアザン、チアゾリジン、2,4−チアゾリジンジオン、ロダニン、チオアミドとしては、チオアセトアミド、チオプロピオンアミド、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール等を添加することにより、初期及び経時後も良好且つ安定したインキ吐出性を維持することができる。
これらの化合物にはイオン性物質が含まれており、増粘抑制剤と併用することにより増粘抑制効果を奏する化合物については、イオン性物質として兼用して用いたり、前記したイオン性物質と併用して用いることができる。
【0032】
前記インキ組成物は、ボールペンチップを筆記先端部に装着した複合式ボールペン用レフィルに充填される。
ボールペン用レフィルの構造、形状は特に限定されるものではないが、例えば、インキ組成物を充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に抱持したボールペンチップに直接又は接続部材(ホルダー)を介して連通しており、さらにインキ組成物の端面にはインキ逆流防止体組成物が密接しているボールペン用レフィルを例示できる。
ボールペンチップの構造は、汎用の機構が有効であり、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部にボールを抱持する機構、金属材料のドリル等による切削加工により、チップ部を形成して、ボール抱持部にボールを抱持する機構、バネ体によりボールを前方に付勢させた機構、或いは、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けた機構を例示できる。
前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.3〜1.5mm径程度のものが適用できるが、好ましくは0.3〜0.7mm、より好ましくは0.3〜0.5mmのものが用いられる。
前記インキ組成物を収容するインキ収容管は、金属製の他、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる成形体が用いられる。
【0033】
前記インキ収容管に収容したインキの後端にはインキ逆流防止体を充填することもできる。
前記インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α−オレフィン、α−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
前記不揮発性液体及び/又は難揮発性液体には、ゲル化剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物を例示できる。
更に、前記液状のインキ逆流防止体組成物と、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
【0034】
前記インキ組成物中に(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を含む場合、光遮蔽性を有するインキ収容管を用いてインキ組成物の耐光劣化を防止することが好ましく、金属製、或いは、着色剤を含む熱可塑性樹脂からなる成形体が用いられる。また、透明性を有するインキ収容管を用いる場合は、レフィルを収容する軸筒が光遮蔽性であることが好ましい。
更に、インキ収容管と軸筒を共に光遮蔽性を有する材料で形成することもできる。
【0035】
前記ボールペン用レフィルは、軸筒内に複数本を収納し、出没機構の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペンに用いられる。
出没機構の操作方法としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
前記ノック式は、軸筒後端部や軸筒側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記回転式は、軸筒後部に回転部を有し、該回転部を回すことによりボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライドを操作することによりボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
なお、前記ボールペン用レフィルを構成する軸筒は樹脂製、金属製、セラミック製等が挙げられる。
前記複合式ボールペンにおいて、軸筒の直径は12.5mm以下、好ましくは11.5mm以下、より好ましくは10.5mm以下であることにより、手帳やペンケースへの収容性に優れ、しかも、0.5mm未満のボールを備えたボールペン用レフィルを収容して用いると小さな文字を筆記できるため、手帳に記入し易く、より実用性を満足させることができる。
【0036】
前記インキ組成物が(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を含む場合、インキ組成物を収容した複合式ボールペンより形成される筆跡は、指による摩擦や加熱具又は冷熱具の適用により変色させることができる。
前記加熱具としては、抵抗発熱体を装備した通電加熱変色具、温水等を充填した加熱変色具、ヘアドライヤーの適用が挙げられるが、好ましくは、簡便な方法により変色可能な摩擦部材や摩擦体が用いられる。
前記摩擦部材や摩擦体としては、弾性感に富み、摩擦時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好適であるが、プラスチック成形体、石材、木材、金属、布帛であってもよい。
なお、消しゴムを使用して筆跡を摩擦することもできるが、摩擦時に消しカスが発生するため、好ましくは前述のような摩擦部材が用いられる。
前記摩擦部材や摩擦体の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブタジエンスチレンブロック共重合体)が好適に用いられるが、シリコーン樹脂は摩擦により消去した部分に樹脂が付着し易く、繰り返し筆記した際に筆跡がはじかれる傾向にあるため、SEBS樹脂がより好適に用いられる。
前記摩擦部材は筆記具と別体の任意形状の部材(摩擦体)であってもよいが、筆記具に固着させることにより、携帯性に優れる。
前記摩擦部材を固着する箇所は、軸筒先端開口部、或いは、軸筒後端部が挙げられる。
更に、ボールペン用レフィルと同形状の摩擦部材を複合式ボールペンに収容して用いることもできる。
冷熱具としては、ペルチエ素子を利用した冷熱変色具、冷水、氷片等の冷媒を充填した冷熱変色具、冷蔵庫や冷凍庫の適用が挙げられる。
また、前記複合式ボールペンと、摩擦体とを組み合わせて筆記具セットを得ることもできる。
【実施例】
【0037】
以下の表にボールペン用水性インキ組成物の配合を示す。
なお、表中の数値は質量%を示す。
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
表中の原料の内容を注番号に沿って説明する。
(1)C.I.ピグメントブラック7
(2)C.I.ピグメントレッド254
(3)C.I.ピグメントブルー15:3
(4)BASF社製、商品名:ルビテックK−30
(5)三晶(株)製、商品名:ケルザン
(6)日光ケミカルズ(株)製、商品名:PEN−4620
(7)日光ケミカルズ(株)製、商品名:TP−10
(8)日光ケミカルズ(株)製、商品名:GO−460
(9)日光ケミカルズ(株)製、商品名:BC−40TX
(10)日光ケミカルズ(株)製、商品名:BPS−20
(11)花王(株)製、商品名:デモールN
(12)第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフAL、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルリン酸モノエステル及びジエステル混合物
【0040】
表中の可逆熱変色性顔料は以下の方法により調製した。
可逆熱変色性顔料aの調製
(イ)電子供与性呈色性有機化合物として3−(4−ジエチルアミノ−2−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド2.0部、(ロ)電子受容性化合物として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン3.0部、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を均一に加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0部、酢酸エチル40部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で微小滴になるように乳化分散し、70℃で約1時間攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を攪拌しながら徐々に添加し、さらに液温を90℃に保って約6時間攪拌を続けて可逆熱変色性顔料の懸濁液を得た。
前記懸濁液から、遠心分離により可逆熱変色性顔料を単離し、青色から無色に変色する可逆熱変色性顔料aを得た(固形分:60%、平均粒子径:3μm)。
可逆熱変色性顔料aは無色の状態から冷却すると−6℃から青色に発色し始めて、−14℃で青色の完全発色状態となり、この状態から加温すると48℃から消色し始めて60℃で無色の完全消色状態となる変色挙動を示した。前記変色挙動は繰返し再現することができた。
前記可逆熱変色性顔料aを予め−14℃以下に冷却して完全に発色させて着色剤として用いた。
【0041】
可逆熱変色性顔料bの調製
可逆熱変色性組成物の(イ)成分を2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン4.5部、(ロ)成分を2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン7.5部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン4.5部、(ハ)成分をカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部に変更した以外は可逆熱変色性顔料aと同様の方法により黒色から無色に変色する可逆熱変色性顔料bを得た(固形分:60%、平均粒子径:2μm)。
可逆熱変色性顔料bは無色の状態から冷却すると−9℃から黒色に発色し始めて、−20℃で黒色の完全発色状態となり、この状態から加温すると40℃から消色し始めて57℃で無色の完全消色状態となる変色挙動を示した。前記変色挙動は繰返し再現することができた。
前記可逆熱変色性顔料bを予め−20℃以下に冷却して完全に発色させて着色剤として用いた。
【0042】
可逆熱変色性顔料cの調製
可逆熱変色性組成物の(イ)成分を2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−〔1〕−ベンゾピラノ〔2,3−g〕ピリミジン−5,1’(3’H)−イソベンゾフラン〕−3−オン2.0部、(ロ)成分を2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン3.0部、(ハ)成分をカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部に変更した以外は可逆熱変色性顔料aと同様の方法によりピンク色から無色に変色する可逆熱変色性顔料cを得た(固形分:60%、平均粒子径:2μm)。
可逆熱変色性顔料cは無色の状態から冷却すると−6℃からピンク色に発色し始めて、−14℃でピンク色の完全発色状態となり、この状態から加温すると48℃から消色し始めて58℃で無色の完全消色状態となる変色挙動を示した。前記変色挙動は繰返し再現することができた。
前記可逆熱変色性顔料cを予め−14℃以下に冷却して完全に発色させて着色剤として用いた。
【0043】
可逆熱変色性顔料dの調製
可逆熱変色性組成物の(イ)成分を1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン2.5部、(ロ)成分を2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン3.0部、(ハ)成分をカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部に変更した以外は可逆熱変色性顔料aと同様の方法により橙色から無色に変色する可逆熱変色性顔料dを得た(固形分:60%、平均粒子径:2μm)。
可逆熱変色性顔料dは無色の状態から冷却すると−9℃から橙色に発色し始めて、−18℃で橙色の完全発色状態となり、この状態から加温すると45℃から消色し始めて64℃で無色の完全消色状態となる変色挙動を示した。前記変色挙動は繰返し再現することができた。
前記可逆熱変色性顔料dを予め−18℃以下に冷却して完全に発色させて着色剤として用いた。
【0044】
可逆熱変色性顔料eの調製
可逆熱変色性組成物の(イ)成分を4−〔2,6−ビス(2−エトキシフェニル)−4−ピリジニル〕−N,N−ジメチルベンゼンアミン3.0部、(ロ)成分を2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン10.0部、(ハ)成分をカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部に変更した以外は可逆熱変色性顔料aと同様の方法により黄色から無色に変色する可逆熱変色性顔料eを得た(固形分:60%、平均粒子径:2μm)。
可逆熱変色性顔eは無色の状態から冷却すると−15℃から黄色に発色し始めて、−25℃で黄色の完全発色状態となり、この状態から加温すると40℃から消色し始めて59℃で無色の完全消色状態となる変色挙動を示した。前記変色挙動は繰返し再現することができた。
前記可逆熱変色性顔料eを予め−25℃以下に冷却して完全に発色させて着色剤として用いた。
【0045】
表中の各配合物を混合し、1時間攪拌することにより、ボールペン用水性インキ組成物が得られる。
【0046】
x値の測定
前記インキ組成物の各x値〔インキ中の水がインキ全量に対して40質量%蒸発した時の粘度/初期のインキ粘度(E型回転粘度計、1rpm、20℃で測定)〕を測定した。
耐ドライアップ試験
前記インキ組成物を直径0.5mmのボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたインキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填して複合式ボールペン用レフィルを得た。
前記複合式ボールペン用レフィルを倒立状態(筆記先端部が下向き)で50℃で30日間放置した後、筆記を行ない、筆跡の状態を目視により観察した。
前記インキ組成物の各x値、耐ドライアップ試験結果を以下の表に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
尚、前記表中の判定結果は以下の通り。
耐ドライアップ試験
◎:均一でかすれのない良好な筆跡が得られる。
○:かすれのない筆跡が得られる。
×:筆跡にかすれが見られる。
【0050】
実施例1
複合式ボールペン用レフィルの作製(図4参照)
前記インキ組成物A、B、Cを、それぞれ直径0.3mmのボールを抱持するステンレススチール製ボールペンチップ2が接続部材3を介して嵌着されたポリプロピレン製の透明なインキ収容管4に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体5を充填して複合式ボールペン用レフィル1を得た。
【0051】
複合式ボールペンの作製(図5参照)
前記のようにして得た三本の複合式ボールペン用レフィルを透明な軸筒7(直径10.5mm)内に組み込み、出没機構の操作体8の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペン6を得た。
前記複合式ボールペンを用いて前述の耐ドライアップ試験を行なうと、いずれのボールペン用レフィルを用いても形成される筆跡は均一でかすれがなく、良好な筆跡を形成することができた。
【0052】
実施例2
複合式ボールペン用レフィルの作製(図6参照)
前記インキ組成物A、Bを、それぞれ直径0.4mmのボールを抱持するステンレススチール製ボールペンチップ2が接続部材3を介して嵌着されたポリプロピレン製の透明なインキ収容管4に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体5を充填した。
次いで、インキ収容管の後部に各インキ組成物と同一色の操作体8を嵌着して複合式ボールペン用レフィル1を得た。
【0053】
複合式ボールペンの作製(図7参照)
前記のようにして得た二本の複合式ボールペン用レフィルを、後部に開閉自在の蓋部9を有する透明な軸筒7(直径10.5mm)に組み込み、蓋部を閉めた後、出没機構の操作体8の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペン6を得た。
前記複合式ボールペンを用いて前述の耐ドライアップ試験を行なうと、いずれのボールペン用レフィルを用いても形成される筆跡は均一でかすれがなく、良好な筆跡を形成することができた。
【0054】
実施例3
複合式ボールペン用レフィルの作製
前記インキ組成物D、Fを、それぞれ直径0.4mmのボールを抱持するステンレススチール製ボールペンチップが接続部材を介して嵌着されたポリプロピレン製の透明なインキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填して複合式ボールペン用レフィルを得た。
【0055】
複合式ボールペンの作製(図8参照)
前記のようにして得た二本の複合式ボールペン用レフィルを光遮蔽性(不透明)軸筒7(直径11mm)内に組み込み、出没機構の操作体8の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペン6を得た。
なお、前記複合式ボールペンの軸筒後端部には、SEBS樹脂製の摩擦部材10を設けてなる。
前記複合式ボールペンを用いて前述の耐ドライアップ試験を行なうと、いずれのボールペン用レフィルを用いても形成される筆跡は均一でかすれがなく、良好な筆跡を形成することができた。
更に、前記筆跡は、摩擦部材により摩擦することにより消色させることができた。
【0056】
実施例4
複合式ボールペン用レフィルの作製
前記インキ組成物D、F、Gをそれぞれを直径0.4mmのボールを抱持するステンレススチール製ボールペンチップが接続部材を介して嵌着されたポリプロピレン製の光遮蔽性(不透明)インキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填した。
次いで、インキ収容管の後部に各インキ組成物と同一色の操作体を嵌着して複合式ボールペン用レフィルを得た。
【0057】
複合式ボールペンの作製(図9参照)
前記のようにして得た三本の複合式ボールペン用レフィルを、後部に開閉自在の蓋部9を有する透明な軸筒7(直径11mm)に組み込み、蓋部を閉めた後、出没機構の操作体8の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペン6を得た。
なお、前記軸筒先端の開口部近傍には、SEBS樹脂製の摩擦部材10を設けてなる。
前記複合式ボールペンを用いて前述の耐ドライアップ試験を行なうと、いずれのボールペン用レフィルを用いても形成される筆跡は均一でかすれがなく、良好な筆跡を形成することができた。
更に、前記筆跡は、摩擦部材により摩擦することにより消色させることができた。
【0058】
実施例5
複合式ボールペン用レフィルの作製
前記インキ組成物E、Hをそれぞれ直径0.4mmのボールを抱持するステンレススチール製ボールペンチップが接続部材を介して嵌着されたポリプロピレン製の光遮蔽性(不透明)インキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填した。
次いで、インキ収容管の後部に各インキ組成物と同一色の操作体を嵌着して複合式ボールペン用レフィルを得た。
【0059】
摩擦部材の作製(図10参照)
前記複合式ボールペン用レフィルに用いたインキ収容管4の先端部にSEBS樹脂成形物を設け、後端部に前記複合式ボールペン用レフィルに用いた操作体8(透明)を嵌着して摩擦部材10を得た。
【0060】
複合式ボールペンの作製(図11参照)
前記のようにして得た二本の複合式ボールペン用レフィルと摩擦部材10を、後部に開閉自在の蓋部9を有する光遮蔽性(不透明)軸筒7(直径11mm)に組み込み、蓋部を閉めた後、出没機構の操作体8の作動によっていずれかのボールペン用レフィル、或いは、摩擦部材の筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペン6を得た。
前記複合式ボールペンを用いて前述の耐ドライアップ試験を行なうと、いずれのボールペン用レフィルを用いても形成される筆跡は均一でかすれがなく、良好な筆跡を形成することができた。
更に、前記筆跡は、摩擦部材により摩擦することにより消色させることができた。
【0061】
実施例6
複合式ボールペン用レフィルの作製
前記インキ組成物Aを直径0.3mmのボールを抱持するステンレススチール製ボールペンチップが接続部材を介して嵌着されたポリプロピレン製の透明なインキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填して複合式ボールペン用レフィルを得た。
インキ組成物Aを用いて、直径0.4mmのボールを使用する以外は前記と同様の方法により複合式ボールペン用レフィルを得た。
インキ組成物Aを用いて、直径0.5mmのボールを使用する以外は前記と同様の方法により複合式ボールペン用レフィルを得た。
【0062】
複合式ボールペンの作製
前記のようにして得た三本の複合式ボールペン用レフィルを透明な軸筒(直径10mm)内に組み込み、出没機構の操作体の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペンを得た。
前記複合式ボールペンを用いて前述の耐ドライアップ試験を行なうと、いずれのボールペン用レフィルを用いても形成される筆跡は均一でかすれがなく、良好な筆跡を形成することができた。
【0063】
実施例7
複合式ボールペン用レフィルの作製
前記インキ組成物Aを直径0.5mmのボールを抱持するステンレススチール製ボールペンチップが接続部材を介して嵌着されたポリプロピレン製の透明なインキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填した。
次いで、インキ収容管の後部に各インキ組成物と同一色の操作体を嵌着して複合式ボールペン用レフィルを得た。
前記インキ組成物Fを直径0.5mmのボールを抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着された光遮蔽性(不透明)インキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填した。
次いで、インキ収容管の後部に各インキ組成物と同一色の操作体を嵌着して複合式ボールペン用レフィルを得た。
【0064】
摩擦部材の作製
前記複合式ボールペン用レフィルに用いた光遮蔽性(不透明)インキ収容管先端部にSEBS樹脂成形物を設け、後端部に前記複合式ボールペン用レフィルに用いた操作体(白色)を嵌着して摩擦部材を得た。
【0065】
複合式ボールペンの作製
前記のようにして得た二本の複合式ボールペン用レフィルと摩擦部材を、後部に開閉自在の蓋部を有する透明な軸筒(直径11mm)に組み込み、蓋部を閉めた後、出没機構の操作体の作動によっていずれかのボールペン用レフィル、或いは、摩擦部材の筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペンを得た。
前記複合式ボールペンを用いて前述の耐ドライアップ試験を行なうと、いずれのボールペン用レフィルを用いても形成される筆跡は均一でかすれがなく、良好な筆跡を形成することができた。
更に、前記筆跡のうち一方は、摩擦部材により摩擦することにより消色させることができた。
【0066】
実施例8
複合式ボールペン用レフィルの作製
前記インキ組成物E、F、Hをそれぞれ直径0.4mmのボールを抱持するステンレススチール製ボールペンチップが接続部材を介して嵌着されたポリプロピレン製の透明なインキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填して複合式ボールペン用レフィルを得た。
【0067】
複合式ボールペンの作製
前記のようにして得た三本の複合式ボールペン用レフィルを透明な軸筒(直径11mm)内に組み込み、出没機構の操作体の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペンを得た。
【0068】
筆記具セットの作製
前記複合式ボールペンと、SEBS樹脂製の摩擦体(立方体形状)を組み合わせて筆記具セットを得た。
前記複合式ボールペンを用いて前述の耐ドライアップ試験を行なうと、いずれのボールペン用レフィルを用いても形成される筆跡は均一でかすれがなく、良好な筆跡を形成することができた。
更に、前記筆跡は、摩擦体により摩擦することにより消色させることができた。
【0069】
比較例1
複合式ボールペン用レフィルの作製
前記インキ組成物I、J、Kを、それぞれ直径0.3mmのボールを抱持するステンレススチール製ボールペンチップが接続部材を介して嵌着されたポリプロピレン製の透明なインキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填して複合式ボールペン用レフィルを得た。
【0070】
複合式ボールペンの作製
前記のようにして得た三本の複合式ボールペン用レフィルを透明な軸筒(直径10.5mm)内に組み込み、出没機構の操作体の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペンを得た。
前記複合式ボールペンを用いて前述の耐ドライアップ試験を行なうと、全てのボールペン用レフィルから形成される筆跡はかすれが見られ、商品価値の乏しいものであった。
【0071】
比較例2
複合式ボールペン用レフィルの作製
前記インキ組成物L、Nを、それぞれ直径0.4mmのボールを抱持するステンレススチール製ボールペンチップが接続部材を介して嵌着されたポリプロピレン製の透明なインキ収容管に充填し、更に、前記インキ後端面に密接させてインキ逆流防止体を充填して複合式ボールペン用レフィルを得た。
【0072】
複合式ボールペンの作製
前記のようにして得た二本の複合式ボールペン用レフィルを光遮蔽性(不透明)軸筒(直径11mm)内に組み込み、出没機構の操作体の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペンを得た。
なお、前記複合式ボールペンの軸筒後端部には、SEBS樹脂製の摩擦部材を設けてなる。
前記複合式ボールペンを用いて前述の耐ドライアップ試験を行なうと、全てのボールペン用レフィルから形成される筆跡はかすれが見られ、商品価値の乏しいものであった。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【図2】色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【図3】加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【図4】本発明の複合式ボールペン用レフィルの一実施例を示す断面図である。
【図5】図4の複合式ボールペン用レフィルを収容した複合式ボールペンの断面図である。
【図6】本発明の複合式ボールペン用レフィルの他の実施例を示す断面図である。
【図7】図6の複合式ボールペン用レフィルを収容した複合式ボールペンの断面図である。
【図8】本発明の複合式ボールペンの他の実施例を示す断面図である。
【図9】本発明の複合式ボールペンの他の実施例を示す断面図である。
【図10】本発明に適用される摩擦部材の一実施例を示す断面図である。
【図11】図10の摩擦部材を収容した複合式ボールペンの断面図である。
【符号の説明】
【0074】
t1 加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全発色温度
t2 加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の発色開始温度
t3 加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の消色開始温度
t4 加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全消色温度
T1 加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全消色温度
T2 加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の消色開始温度
T3 加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の発色開始温度
T4 加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全発色温度
ΔH ヒステリシス幅
1 複合式ボールペン用レフィル
2 ボールペンチップ
3 接続部材
4 インキ収容管
5 インキ逆流防止体
6 複合式ボールペン
7 軸筒
8 操作体
9 蓋部
10 摩擦部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又は接続部材を介して装着したインキ収容管に、顔料と、水と、剪断減粘性付与剤と、増粘抑制剤としてポリオキシエチレン基を有する界面活性剤と、イオン性物質とから少なくともなり、インキ中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し1質量%以上であり、インキ組成物中に水溶性有機溶剤を含有しないボールペン用水性インキ組成物を充填した複合式ボールペン用レフィル。
【請求項2】
ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又は接続部材を介して装着したインキ収容管に、顔料と、水と、水溶性有機溶剤と、剪断減粘性付与剤と、増粘抑制剤と、イオン性物質とから少なくともなり、インキ中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し1質量%以上であり、前記水溶性有機溶剤がインキ組成物中10質量%以下であり、且つ、増粘抑制剤がポリオキシエチレン基を有する界面活性剤であるボールペン用水性インキ組成物を充填した複合式ボールペン用レフィル。
【請求項3】
前記インキ組成物中に含まれるイオン性物質がインキ中で解離して形成される陽イオンが一価陽イオンである請求項1又は2記載の複合式ボールペン用レフィル。
【請求項4】
前記一価陽イオンがアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンから選ばれる請求項3記載の複合式ボールペン用レフィル。
【請求項5】
前記インキ組成物中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し2〜15質量%である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の複合式ボールペン用レフィル。
【請求項6】
前記顔料が(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料である1乃至5のいずれか一項に記載の複合式ボールペン用レフィル。
【請求項7】
前記マイクロカプセル顔料が、色濃度−温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して有色状態と無色状態の互変性を呈し、該顔料は有色状態から温度が上昇する過程では、温度t3に達すると消色し始め、温度t3より高い温度t4以上の温度域で完全に無色状態となり、無色状態から温度が下降する過程では、温度t3より低い温度t2に達すると着色し始め、温度t2より低い温度t1以下の温度域で完全に着色状態となり、前記温度t2と温度t3の間の温度域で着色状態或いは無色状態が選択的に保持されるヒステリシス特性を示し、温度t1は−50〜0℃の範囲にあり、温度t4が50〜90℃の範囲にある請求項6記載の複合式ボールペン用レフィル。
【請求項8】
前記インキ収容管が光遮蔽性である請求項6又は7記載の複合式ボールペン用レフィル。
【請求項9】
前記ボールペンレフィルに収容されたインキ組成物の後端面にインキ消費に伴って追従するインキ逆流防止体を配設してなる請求項1乃至8のいずれか一項に記載の複合式ボールペン用レフィル。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の複合式ボールペン用レフィルを複数本軸筒内に収容し、出没機構の作動によっていずれかのボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペン。
【請求項11】
摩擦部材を備えてなる請求項10記載の複合式ボールペン。
【請求項1】
ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又は接続部材を介して装着したインキ収容管に、顔料と、水と、剪断減粘性付与剤と、増粘抑制剤としてポリオキシエチレン基を有する界面活性剤と、イオン性物質とから少なくともなり、インキ中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し1質量%以上であり、インキ組成物中に水溶性有機溶剤を含有しないボールペン用水性インキ組成物を充填した複合式ボールペン用レフィル。
【請求項2】
ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又は接続部材を介して装着したインキ収容管に、顔料と、水と、水溶性有機溶剤と、剪断減粘性付与剤と、増粘抑制剤と、イオン性物質とから少なくともなり、インキ中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し1質量%以上であり、前記水溶性有機溶剤がインキ組成物中10質量%以下であり、且つ、増粘抑制剤がポリオキシエチレン基を有する界面活性剤であるボールペン用水性インキ組成物を充填した複合式ボールペン用レフィル。
【請求項3】
前記インキ組成物中に含まれるイオン性物質がインキ中で解離して形成される陽イオンが一価陽イオンである請求項1又は2記載の複合式ボールペン用レフィル。
【請求項4】
前記一価陽イオンがアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンから選ばれる請求項3記載の複合式ボールペン用レフィル。
【請求項5】
前記インキ組成物中のイオン性物質の含有量がインキ組成物全量に対し2〜15質量%である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の複合式ボールペン用レフィル。
【請求項6】
前記顔料が(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料である1乃至5のいずれか一項に記載の複合式ボールペン用レフィル。
【請求項7】
前記マイクロカプセル顔料が、色濃度−温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して有色状態と無色状態の互変性を呈し、該顔料は有色状態から温度が上昇する過程では、温度t3に達すると消色し始め、温度t3より高い温度t4以上の温度域で完全に無色状態となり、無色状態から温度が下降する過程では、温度t3より低い温度t2に達すると着色し始め、温度t2より低い温度t1以下の温度域で完全に着色状態となり、前記温度t2と温度t3の間の温度域で着色状態或いは無色状態が選択的に保持されるヒステリシス特性を示し、温度t1は−50〜0℃の範囲にあり、温度t4が50〜90℃の範囲にある請求項6記載の複合式ボールペン用レフィル。
【請求項8】
前記インキ収容管が光遮蔽性である請求項6又は7記載の複合式ボールペン用レフィル。
【請求項9】
前記ボールペンレフィルに収容されたインキ組成物の後端面にインキ消費に伴って追従するインキ逆流防止体を配設してなる請求項1乃至8のいずれか一項に記載の複合式ボールペン用レフィル。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の複合式ボールペン用レフィルを複数本軸筒内に収容し、出没機構の作動によっていずれかのボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合式ボールペン。
【請求項11】
摩擦部材を備えてなる請求項10記載の複合式ボールペン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−115781(P2010−115781A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288299(P2008−288299)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】
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