説明

複合成形品の製造方法

【課題】表面に意匠としての凹凸模様が形成された窯業系の住宅外装材を生産する際に使用される型板において反りやねじれの少ない型板を効率よく低コストで生産する方法を提供する。
【解決手段】強化繊維材料9を含有する繊維強化樹脂層よりなる表層部、発泡粒子を含有している発泡粒子含有樹脂層よりなる芯部、および該表層部と該芯部との間に存在する分離層11よりなる一体化されたフォームコア・サンドイッチ構造の複合成形品の製造方法において、上下2層の表層部の凹凸模様が形成された表層部に非膨張性発泡粒子8を配置して製造することにより、反りやねじれの発生を防ぎ、形成された凹凸模様は変形せずに耐摩耗性にもすぐれた耐久性のある物理的強度に優れ、ボイドやピンホールも抑制された複合成形品をえた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂層(FRP)からなる表層部の間に発泡粒子含有樹脂層からなる芯部を有しかつ全体が一体化した複合成形品を製造する方法に関するものである。
さらに詳しくは、繊維強化樹脂層(FRP)で形成された緻密な上下2層の表層部の間に無数の発泡粒子を密に充填した発泡粒子含有樹脂層からなる芯部を挟み込むように一体成形した複合成形品であって、特に窯業系の住宅外装材の表面に意匠としての凹凸模様をつける型板として使用される軽量でかつ強靭なフォームコア・サンドイッチ構造の板状の複合成形品を、効率よくかつ低コストで製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表層部が繊維強化樹脂層(FRP)で、芯部が発泡粒子含有樹脂層からなる軽量なフォームコア・サンドイッチ構造の複合成形品は、軽量性と強靭性にすぐれているため、航空機、鉄道車両、船舶等の輸送機器の部材、各種構造材料、建設用部材、内外装部材、医療機器や電気通信機器等の基板や筐体、スポーツ用品、コンテナ類のパネル等、広い用途がある。
【0003】
かかるフォームコア・サンドイッチ構造の複合成形品の製造法としては、芯部形成材料に膨張性発泡粒子(又は該粒子と非膨張性発泡粒子との混合物)と液状成形樹脂とを用いて、発泡粒子含有樹脂組成物からなる芯部と繊維強化樹脂(FRP)の表層部とからなる複合成形品を一挙に成形する方法が提案されている(特許1981141号公報)。
この方法は、成形用の型内に、強化用繊維質シートと分離膜とを設置し、その上に膨張性発泡粒子と液状成形樹脂との混合物を層状に供給し、さらにその上を分離膜及び強化用繊維質シートで覆い、型を閉じた後、該型内を加熱することによって膨張性発泡粒子を膨脹させ、それによって型内に生ずる圧力を利用して液状成形樹脂を上下の強化用繊維質シートに浸透させた後、硬化させることによって、フォームコア・サンドイッチ構造の複合成形品を製造する方法である。
【0004】
この方法によれば、繊維強化樹脂(FRP)からなる緻密な表層部の間に無数の発泡した粒子を含む発泡粒子含有樹脂組成物からなる芯部を有しかつ全体が一体化した軽量で強靭な複合成形品が効率的に製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許1981141号 公報
【特許文献2】特許2996788号 公報
【特許文献3】特開平08−276524号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来法の膨張性発泡粒子を用いて成形する方法は、一工程でフォームコア・サンドイッチ構造の複合成形品を成形することができるという利点を有する。
一方、表面に意匠としての凹凸模様が形成された窯業系の住宅外装材を生産する際に使用される型板を、従来法によるフォームコア・サンドイッチ構造の複合成形品から製造する場合、型板を製造した直後あるいはこの型板を長期使用していくなかで、型板に反りやねじれなどの不具合が発生するという問題が発生していた。
上記型板の成形面には、住宅外装材の表面に石目模様などのデザイン性に富んだ複雑な意匠としての凹凸模様が忠実に再現されている必要性が有る。一方、成形面の裏側にあたる型板の裏面は、略平滑な面であることが要求されていた。すなわち、凹凸模様が形成されている成形面と略平滑な裏面とでは表面形状が異なっている。
上記型板には窯業系の住宅外装材を製造する際に要求される過酷な条件、すなわち、アルカリ性の高湿度雰囲気や50kg/cm2を超える成形圧力にも耐える材質でできていて、1枚ごとのバラツキも小さい寸法精度を有し、温度と湿度の変化に起因する寸法変化も少なく、凹凸模様の鮮明性、ボイドやピンホールなどの型板を成形する際に気泡によって形成される欠点も存在してはならず、そして模様崩れを含めて長期の使用に耐える耐久性、耐摩耗性を満足させるなど、窯業系の住宅外装材に使用される型板にはさまざまな性能が要求されており、これらの要求性能を満たしたうえで、反りやねじれの少ない型板を効率よく低コストで生産する製造方法が望まれていた。
【0007】
そこで、本発明の第1の目的は、反りやねじれの発生が抑制されたフォームコア・サンドイッチ構造の複合成形品を工業的に有利に成形する方法を提供することにある。特に窯業系の住宅外装材の型板に好適に使用されるフォームコア・サンドイッチ構造の複合成形品の製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の第2の目的は、住宅外装材を製造する型板であって、住宅外装材の意匠面に形成される石目模様などのデザイン性に富んだ複雑な凹凸模様を忠実に再現できる凹凸模様が形成されていながら、使用される環境条件が厳しくとも、変形せずに耐摩耗性にもすぐれた耐久性のある物理的強度に優れた凹凸模様を有するフォームコア・サンドイッチ構造の複合成形品を工業的に有利に成形する製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の第3の目的は、ボイドやピンホールのない凹凸模様を有するフォームコア・サンドイッチ構造の複合成形品の製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明は、窯業系の住宅外装材の型板に使用されるフォームコア・サンドイッチ構造の複合成形品に好適な製造方法として発明されたが、本発明は窯業系の住宅外装材の型板に限定されるのではなく、分野を問わず、表面には凹凸模様が形成されているが、裏面には凹凸模様が形成されて居らず略平滑な形状の、軽量で剛性を有する板状の複合成形品を効率的に製造する方法を提供する発明である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、強化繊維材料を含有する繊維強化樹脂層よりなる表層部、発泡粒子を含有している発泡粒子含有樹脂層よりなる芯部、および該表層部と該芯部との間に存在する分離層よりなる一体化されたフォームコア・サンドイッチ構造の複合成形品の製造方法であって、
特に、上下2層の表層部において、一方の表層部の表面には凹凸模様が形成され、他方の表層部の表面には略平滑な面が形成されていて、さらに凹凸模様が形成された一方の表層部には非膨張性発泡粒子が含有されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上述べた如く、本発明方法では、表面に凹凸模様が形成された表層部の樹脂組成物として芯部から分離層を通ってきた熱硬化性の液状成形樹脂を使用して、さらに従来の強化繊維材料に加えて非膨張性発泡粒子を使用して繊維強化樹脂層を形成するので、成形時に圧力が加えられた時に非膨張性発泡粒子が凹凸模様を形成する表層部の狭い部分にも入り込みます。
この結果、液状成形樹脂の硬化過程での体積収縮が補われるほか、非膨張性発泡粒子のベアリング効果によって、ボイドやピンホールのない良好な凹凸模様が形成された成形品を得ることができ、さらに芯部の膨張性発泡粒子の反発力によって成形材料を成形用の型の内壁面に押し付けた状態で成形することが可能となり、より表面性の優れた成形物を得ることができる。
さらに、凹凸模様が形成された表層部に非膨張性発泡粒子を配合することにより、略平滑な面が形成された表層部との表面形状の差異に起因する収縮率のアンバランスを解消することが可能となって、反りやねじれやクラックのない高品質な成形体を得ることができる。
【0013】
かくして、本発明方法により製造される、凹凸模様が形成された表面と略平滑な裏面が形成されたフォームコア・サンドイッチ構造の複合成形品は、軽量かつ強靭であり、しかも、ボイドやピンホール等がなく表面外観にも優れていて、意匠面の表面硬度も高く、従来問題となっていた、反りの発生を抑制できる製造方法を提供します。上記効果は、窯業系の住宅外装材の型板として好適でありますが、窯業系の住宅外装材の型板以外であっても、凹凸模様が形成された表面と略平滑な裏面が形成された板状のフォームコア・サンドイッチ構造の複合成形品を反りの発生を抑制し、軽量で剛性を有する任意の形状の複合成形品が求められる各種用途に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】膨張性発泡粒子が発泡する前の積層体の模式図。
【図2】膨張性発泡粒子が発泡し、液状成形樹脂が分離膜を通過し、表層部内の強化繊維材料、非膨張性発泡粒子の周囲に浸透していく積層体の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、具体的に説明するが、これらは本発明を説明するためのものであって、これらの実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
まず、本発明の方法で使用する主要成形材料、すなわち強化繊維材料、分離層に使用される分離膜、膨張性発泡粒子、非膨張性発泡粒子、液状成形樹脂、離型シート並びに、必要に応じて補助的に使用される各種材料および成形型について説明する。
【0017】
[成形型]
本発明方法では、まず成形用の型を用意する。この型は成形温度に応じ、金型、木型、樹脂型等のうちから適宜選択して使用される。この型は通常上型と下型との組み合わせからなり、上型は平滑な表面を有しているのに対して、下型には住宅外装材の表面に凹凸模様の意匠面を形成するためのキャビティが形成されている。
上型の成形面は略平滑な面で有ればよいので、プレスの上定盤の成形面に相当する部分が平滑であれば、該上定盤を上型として使用しても良い。あるいは、略平滑な面を有する上型を上定盤に固定して使用しても良い。
【0018】
[強化繊維材料]
本発明方法で主要成形材料の一つとして用いる強化繊維材料としては、強化用繊維からなる強化用繊維質シートがあげられる。強化用繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、シリコンカーバイド繊維、金属繊維、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、高強度ポリオレフィン繊維及びこれらの2種以上の混合繊維等が使用される。これらの繊維の他に、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール系繊維、レーヨン繊維、天然繊維等も使用することができる。なかでもガラス繊維、炭素繊維やパラ系アラミド繊維のような高強度、高弾性率繊維を用いるのが好ましい。
【0019】
強化用繊維質シートの形態としては、前記の各繊維を、織物(平織、綾織、スダレ織等)、編物、不織布、マット、紙、一方向引き揃え層状に集合したロービング等をシート状構造物の形態にしたものが用いられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。なお、該繊維質シートは予め液状成形樹脂を含浸させたプリプレグとして供給することもできる。
【0020】
[分離膜]
本発明方法では、後述のごとく、成形時の加圧によって芯部部位に存在する液状成形樹脂及び発泡粒子(膨張性発泡粒子単独、または膨張性発泡粒子と非膨張性発泡粒子の混合粒子)からなる発泡粒子含有樹脂層の中から液状成形樹脂が搾り出されて、上下の強化用繊維質シートに浸透してその一部は上下の表面にまで達する。この際、発泡粒子が強化用繊維質シート内に入り込まないよう粒子の移動を阻止し、樹脂のみを選択的に上下の表層部へ移動させることが緻密で表面性の良好な表層部を形成する上で必要であり、この部分は分離層と呼ばれる。なお、この分離層は、芯部の発泡粒子を表層部へ通さないのみならず表層部の非膨張性発泡粒子も芯部へ移動させない。
【0021】
このため、分離層として、上下の強化用繊維質シートにおける発泡粒子含有樹脂層と接する面(芯部側)に、それぞれ、発泡粒子は通さないが液状成形樹脂は通す分離機能を有する膜(本発明では「分離膜」と称する)を添わせるように配置する。
【0022】
上下の強化用繊維質シートと発泡粒子含有樹脂層との間に介在させる前記分離膜としては、目開きの小さい薄手の繊維質シート及び/又は多孔質シート等が用いられる。かかる繊維質シートの具体例としては、各種天然繊維、合成繊維、無機繊維等からなる織物、編物、不織布、組物、紙等があげられ、多孔質シートの具体例としては、連通気孔を有するシート又はフィルムであって、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン等の発泡シートやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン等のシートを延伸、抽出して得られる多孔膜等が用いられる。
【0023】
分離膜の目開きは、発泡粒子の種類や大きさに応じて適宜選択される。また、分離膜の材料としては、容易に成形品の形状に合わせ得るように伸縮性を有するものを選択することもできる。分離膜は、その一部が液状成形樹脂を通さない材料で構成されているものであってもよい。例えば、分離機能を有する材料からなる部分とそれとは異なった機能を有する材料からなる部分とを繋ぎ合わせたもの、分離機能を有するシート状物の一部を予め樹脂等でその目開きを封止処理したもの、繊維質シートがポリプロピレン繊維シートであってその融着可能な部分が加熱処理によって部分的に融着して一部の目開きを潰したもの、分離機能を有する材料の一部に非多孔性フィルムを貼りつけたもの等でもよい。
【0024】
なお、分離膜として、それ自体が強化材としての機能を有する、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等からなる目開きの小さい繊維質シートを用いることもできる。この場合は、この繊維質シートで強化用繊維質シートと分離膜とを兼用させることができる。ただし、強化用繊維質シートと分離膜とを別個に配置した方が、強化用繊維質シートの目開きを自由に選択することができ、例えば、一方向繊維配列プリプレグや三次元織編物のプリフォーム等も強化用繊維質シートとして使用することができ、成形品表面に要求される外観、特性に応じた材料を任意に選ぶことができるので好ましい。
【0025】
例えば「ユニセル」等の商品名で市販されている目開きの小さい薄手の長繊維不織布が分離機能や取扱い性等多くの面で優れており、分離膜として特に好適である。
【0026】
[発泡粒子]
発泡粒子としては、非膨張性発泡粒子と膨張性発泡粒子が使用される。
凹凸模様部を形成する表層部に使用される発泡粒子は、非膨張性発泡粒子が使用される。
芯部に使用される発泡粒子には、膨張性発泡粒子単独または膨張性発泡粒子と非膨張性発泡粒子の混合物が使用される。
【0027】
[膨張性発泡粒子]
ここで用いる膨張性発泡粒子としては、発泡により体積が少なくとも2倍、好ましくは3〜6倍、更に好ましくは6倍以上に増大するものであり、使用する成形用の液状成形性樹脂に溶解しないものである。また発泡空間部に液状樹脂が入らないように発泡が独立気泡となるものが用いられる。
【0028】
かかる膨張性発泡粒子としては、例えばポリウレタン、フェノール、ポリウレア、メラミン、ポリイミド等の硬化型フォームやその前駆体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリルニトリル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、PPO、ポリアミド、ポリカーボネート、PBT、ポリイミド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0029】
膨張性発泡粒子として特に好ましいものは、「マイクロスフェアー」、「エクスパンセル」、「エスレンビーズ」等の商品名で知られる熱膨張性又は発泡性の物質を内包する熱膨張性樹脂粒子である。
【0030】
[非膨張性発泡粒子]
非膨張性発泡粒子は、本発明の複合成形品の製造方法の一連の過程において、その形状や大きさが実質的に変化しない粒子であって中空又は気泡を含有する軽量の粒子である。
かかる非膨張性発泡粒子の具体例としては、「ガラスバルーン」、「シリカバルーン」、「シラスバルーン」等と称される無機中空粒子と膨張性発泡粒子を予め加熱膨脹させた中空樹脂粒子があげられる。
膨張性発泡粒子を予め加熱膨脹させた中空樹脂粒子は、成形時の加圧で圧縮変形する点において、剛性を有する性質を持つ無機中空粒子とは相違する。
【0031】
凹凸模様面を持つ表層部に使用される非膨張性発泡粒子としては無機中空粒子が好適に使用される、なかでもガラス中空体からなる中空ガラスビーズは、以下に述べる特徴を有しているので、複合成形品の表面に凹凸模様を形成するのに好適な非膨張性発泡粒子である。
(1)中空ガラスビーズは、0.25〜0.8と低比重であり、凹凸模様面を持つ表層部の繊維強化樹脂層に中空ガラスビーズを添加することによって、凹凸模様面を持つ表層部の軽量化を図ることができる。さらに、繊維強化樹脂層の弾性率を上げ、剛性を持たせる。
(2)真円度の高い中空ガラスビーズはベアリング効果のために流動性が良く、ガラスチョップドストランドの様な繊維状のフィラーと比較して流動抵抗が非常に小さく、樹脂単体の場合と比較しても樹脂の流動性を損なうことなく、芯部から分離層を通過して表層部に入りこんだ液状成形樹脂の流動性を確保して、セルフレベリング効果を高めて成形性を向上させる。
(3)中空ガラスビーズのような真円度の高い球形フィラーは、方向性がないので、フィラーの長手方向に引っ張り応力が残留するガラスチョップドストランドのような繊維状フィラーのように、残留歪による変形や反りやクラックが生じにくい。さらに、球形の等方性フィラーであることから、異方性収縮による変形や反りやクラックを防ぐことができる。
(4)中空ガラスビーズが表層部に添加される事により、表層部の樹脂層に剛性が付与され、その結果、凹凸模様の変形を防止し、耐摩耗性も向上する。
【0032】
[液状成形樹脂]
一方、前記発泡粒子と混合する液状成形樹脂は、通常の成形に用いられる熱硬化性樹脂でよく、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリビニルエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリ(ジシクロペンタジエン)樹脂、石油樹脂等を用いることができる。なかでも、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂等が好ましい熱硬化性樹脂である。これらの熱硬化性樹脂は、通常、それぞれ必要な硬化剤又は開始剤、硬化促進剤、稀釈剤等と共に硬化性樹脂組成物として使用される。
【0033】
本発明方法における発泡粒子及び液状成形樹脂の配合割合は、得られる成形品の密度や強靭性、成形のしやすさ等によっても異なるが、一般に重量比にして1/100〜10/100の範囲が好ましい。
【0034】
本発明方法では、前記の発泡粒子及び液状成形樹脂と共に、多孔質コア部形成のため補助的に使用し得る材料として、成形品の機械的特性を改善する目的で、カーボン、シリコンカーバイド、チタン酸カリ、ボロン、アラミド等の短繊維やウィスカー等の6mmよりも短い繊維を添加することができる。
【0035】
[離型シート]
また、略平滑な面を持つ表層部と上型との間であって、略平滑な面を持つ表層部側に配置された強化用繊維質シートにおける分離膜と接しない面(すなわち成形品の外側)に沿って離型シートを配置して加圧成形を行うことにより、複合成形品の略平滑な面の表面性状や複合成形品と上型との離型性を改善することができる。
【0036】
上記離型性シートとしては、成形後に略平滑な面を持つ表層部の平滑面から容易に剥離し得る種類の可撓性フィルムが好適であり、成形後に離型性シートを複合成形品から取り除くことにより、成形性並びに表面性の改善とさらに生産性の向上を図ることができる。
ここで用いる離型性シートとしては、ポリプロピレン、ナイロン、フッ素樹脂等の可撓性フィルムがあげられる。
【0037】
上記離型シートを使用することにより、あえて上型を使用すること無しに、プレスの上定盤を上型の代用として成形加工することも可能となる。
【0038】
本発明方法においては、複合成形品の機械的性質、特に曲げ荷重に対する剛性を改善しさらに反りねじれを防ぐことを目的として、表層部内の局所に強化材を適当な間隔で設置せしめてもよく、複合成形品の形態・用途によってはその方が好ましいことが多い。かかる表層部内に部分的に設置する強化材の例としては、組み紐、ロープ、ブレード、ロッド、コルゲート物、ハニカム等が用いられ、それらの材質としてはガラス、アラミド、ポリエステル、ナイロン、セルロース等が用いられるが、特にガラス繊維製組み紐が好ましい。また、パウダー、チョップドストランド、ファイバー等のガラス繊維を略平滑な面を持つ表層部に配置して成形すると、反り・ねじれの防止に効果的である。
【0039】
[成形方法]本発明方法によれば、前記の各成形材料を準備し、下記(a)〜(f)の工程を順次実施することによって、目的とするフォームコア・サンドイッチ構造を有する複合成形品を製造する。
(a)液状成形樹脂及び発泡粒子からなる発泡粒子含有樹脂組成物を調製する発泡粒子含有樹脂調製工程、ここでの発泡粒子は膨張性発泡粒子単独または、膨張性発泡粒子と非膨張性発泡粒子の混合粒子のどちらかが使用される、
(b)凹凸模様を形成する下型の成形面に非膨張性発泡粒子を配置する非膨張性発泡粒子調整工程、
(c)非膨張性発泡粒子/強化繊維材料/分離膜/前記発泡粒子含有樹脂調製工程(a)で調製した発泡粒子含有樹脂組成物/分離膜/強化繊維材料/離型シートよりなる積層体を調製する積層体調製工程、
(d)該積層体に上下方向からの加圧を実施して、発泡粒子含有樹脂組成物の層中の液状成形樹脂を、分離膜を介して上下の表層部を構成する強化繊維材料中に浸透させながら、さらに、凹凸模様が形成される表層部の非膨張性発泡粒子の一つ一つを覆うように液状成形樹脂を浸透させる液状成形樹脂含浸工程、
(e)得られた含浸積層体を所定の温度に加熱された型内で加熱することによって、膨張性発泡粒子を体積膨張させ、さらに液状成形樹脂を硬化させて成形する硬化工程、
(f)そして、型を開いて、得られた複合成形品を取り出す脱型工程、
を順次実施することによって、繊維強化樹脂からなる表層部の間に発泡粒子含有樹脂からなる芯部が存在しかつ全体が一体化した複合成形品が製造される。
【0040】
この際重要なことは、
(い)凹凸模様面が形成される表層部に非膨張性発泡粒子を配置すること、
(ろ)芯部の発泡粒子として膨張性発泡粒子または膨張性発泡粒子と非膨張性発泡粒子の混合物を使用すること、
(は)発泡粒子含有樹脂組成物層の上下に分離膜と強化繊維材料を配置した積層体を形成させること、そして
(に)(は)の積層体に対して加熱および加圧処理を実施して該積層体中の発泡粒子含有樹脂組成物の層を効果的かつ均質に形成せしめるとともに、液状成形樹脂を上下の表層部の強化繊維材料中に均一に浸透させ、かつ凹凸模様部が形成される表層部にある非膨張性発泡粒子の一つ一つを覆うように液状成形樹脂を浸透させることである。
【0041】
本発明の成形方法における液状成形樹脂含浸工程と硬化工程に使用されるプレスにおいて、略平滑な面を有する上型をプレスの上定盤に固定するか、あるいは、略平滑な面を有する上型を使用せずに上定盤を上型の代用として使用すると、凹凸模様が形成された下型をプレスの下定盤に固定することなく、プレス作業を実行する事ができる。
凹凸模様が形成された下型をプレスの下定盤に固定しないので、凹凸模様が形成された下型をプレスの外に出して積層体調整工程を実施することが可能となる。
(d)液状成形樹脂含浸工程と(e)硬化工程は成形用の型内で実施されるが、それに先立つ工程(a)〜(c)は型内または型外のどちらでも実施が可能である。
【0042】
成形用の型は成形温度及び圧力に応じて金型、木型、樹脂型のうちから適宜選択して使用される。また、上下1対の金型を用いず、成形用の型としては凹凸模様が形成された下型のみを用い、上型を使用せずにプレスの上定盤と略平滑な面を形成する表層部との間に離型シートを用いて成形すると効率良く生産することができる。
【0043】
非膨張性発泡粒子調整工程では、該非膨張性発泡粒子は、複合成形品の凹凸模様部の全面に配置されても良いし、複合成形品の凸部に多く配置しても良い。該非膨張性発泡粒子を配置する量は、複合成形品の凹凸模様の形状、繊維強化樹脂層並びに発泡粒子含有樹脂層の構成比と構成する材料によって、最適な量が決定される。
【0044】
積層体調製工程では、非膨張性発泡粒子が配置された下型の上に、強化繊維材料及び分離膜と液状成形樹脂及び発泡粒子からなる発泡粒子含有樹脂組成物を、非膨張性発泡粒子/強化繊維材料/分離膜/発泡粒子含有樹脂組成物/分離膜/強化繊維材料/離型シートの順に配置した積層体をセットして、型を閉じて加熱成形する。
【0045】
なお、前記積層体のセット作業はプレスの中で実施しても良いが、生産効率の観点からは、予めプレスの外で下型に形成するのが好ましい。なお、前記積層体の一部を下型の外で積層すると生産効率をさらに向上させる。
【0046】
なお、型内に前述した表層部強化材(ガラス組み紐等)を配置して成形する場合は、成形品の要求される曲げ方向に対して必要な曲げ剛性を得るための強化方向に沿うように、表層部の強化繊維材料に内接するように強化材を配置する。
【0047】
前記積層体を形成するに当り、前記発泡粒子含有樹脂組成物中にガス(気泡)が含まれると成形品の凹凸模様面や繊維強化樹脂層等にボイドやピンホールが発生しやすくなるため、前記発泡粒子含有樹脂組成物の調製時にガスが入り込まないように配慮するのが好ましく、必要に応じ、発泡粒子含有樹脂組成物調製後に真空処理等により脱泡しておくこともできる。
【0048】
本発明方法では、前記積層体を成形用の型に入れた後、積層体を上下方向に加圧(押圧)し、分離膜の内側から前記組成物中の液状成形樹脂を搾り出して、上下の強化用繊維質シート中へ十分に浸透させると共に、分離膜の内側に発泡粒子が緊密に詰まった多孔質コア層前駆体とも言うべき層を形成させ、積層体中に入り込んだガス(気泡)も除去する。
【0049】
成形用の型内の芯部に発泡粒子含有樹脂組成物を詰め込む量は、発泡粒子の配合率、膨張性発泡粒子の加熱時の体積膨張率を考慮して、適宜選定すべきである。
次に、この型を外部から加熱するかもしくは液状樹脂の硬化発熱又はその両方によって昇温させ、発泡粒子含有樹脂層の膨張性発泡粒子を発泡等により体積膨張させる。
【0050】
この際、膨張性発泡粒子の体積膨張を液状成形樹脂が流動性を保っている状態で起こさせることにより、膨張性発泡粒子の膨張圧力で表層部形成用の強化繊維材料と分離層が下型の凹凸模様面と上型の略平滑な面に押し付けられ、該下型の凹凸模様面に沿った外形を形成させると同時に、液状の樹脂が押出され、液状成形樹脂の一部が該分離層を通り抜けて、表層部形成用の強化繊維材料に浸透する。
更には、下型の凹凸模様面に配置された非膨張性発泡粒子を押しつけた後、液状成形樹脂は非膨張性発泡粒子を覆うように凹凸模様面を形成する表層部の最外層に到達し、液状成形樹脂がレベリングして複合成形品のなめらかな表面を形成する。そして樹脂の過剰分は型の溜まり部分に集めるか又はベントから抜き、型内の樹脂を硬化させることにより、所望の複合成形品を得る。
【0051】
硬化は、通常、型の所定箇所を液状成形樹脂の硬化温度以上に加熱することによりおこなわれる。かくして成形された複合成形品は、型を開いて製品として取り出される。また液状成形樹脂の種類によっては更にポストキュアすることもある。
【0052】
成形に際し、上型は予め加熱しておくことが好ましい。上型の予熱温度は液状成形樹脂の硬化開始温度以上とするのが適当である。
【0053】
本発明方法では、積層体を型内にセットして型を閉じた後、液状成形樹脂を硬化させて成形する。型の加熱は電熱ヒータや熱媒体を通じるジャケットにより行うのが一般的であるが、誘導加熱や誘電加熱等を採用することもでき、また、樹脂の硬化による発熱を利用してもよい。
【0054】
加熱によって液状成形樹脂が硬化して得られた成形品を取り出し、目的とするフォームコア・サンドイッチ構造の複合成形品を得る。
【0055】
[複合成形品の特性]
前述の方法によって製造される複合成形品は、繊維強化樹脂により形成された緻密な表層部の間に、粒子が細密充填に近い密度で緊密に詰まった均一な多孔質コア層が挟み込まれかつ一体に成形された複合成形品であって、全体として軽量でしかも強靭なフォームコア・サンドイッチ構造を有している。その上、ボイドやピンホールを実質的に含まず、表面特性も優れており、品質の優れた複合成形品である。
さらに、凹凸模様の意匠面が形成される表層部に非膨張性発泡粒子が含有されて反りやねじれのない複合成形品である。
【0056】
かくして、本発明方法による複合成形品は、板状の軽量で強靭な成形品であり、その平均厚みは1〜100mm、好適には1.5〜50mmのものである。また、繊維強化樹脂(FRP)からなる表層部は上下の2層を有しその間に軽量な多孔質コア層が存在する3層構造を呈し、該複合成形品の表面方向から直角方向に切断した断面を観察すると表層部と多孔質コア層とは分離膜を介した明確な境界面を有している。表層部の厚さ(上下2層の合計)/多孔質コア層の厚さの割合は2:1〜1:50の範囲、好適には2:1〜1:30の範囲が望ましい。この割合及び厚みは成形品全体として均一であることは必ずしも必要でなく、表面を形成する凹凸模様面によって部分的に変化している。
【0057】
上述の如く本発明の方法は、膨張性発泡粒子の体積膨張の圧力を利用して表層部形成用材料である強化繊維材料及び分離層を型の内部制約面に押し付けるとともに、表層部に液状成形樹脂を浸透・硬化させることで、表層部の非膨張性発泡粒子と混合されて、非膨張性発泡粒子と液状成形樹脂の混合物となって凹凸模様を有する外形を形成する。液状成形樹脂はその一部が表層部のFRPを形成するとともに、下型側には成形品の凹凸模様を有する外形面と、上型側内は略平滑な表面を形成し、残りが発泡部の発泡粒子と結合させることにより、発泡部・表層部の一体化を図ることを基本的な特徴としている。
なお、分離層としては、全体が熱膨張後の膨張性発泡粒子を通さず液状成形樹脂は通す分離機能を有するものであって、さらに、表層部の非膨張性発泡粒子は芯部に逆流しない。
【0058】
また、本発明の効果を損わない限り、芯部には、膨張性発泡粒子と液状成形樹脂以外に第四成分として上述の如き体積膨張の期待できない非膨張性発泡粒子や短繊維・顔料などを添加することもできる。
【0059】
その結果、発泡粒子が高密度に充填され、しかも空隙(ボイド)等を含まない強固な芯部とピンホール等がなく表面性及び外観の優れた緻密な繊維強化樹脂層からなる表層部が形成され、かつかかる芯部と表層部とが強固に結合一体化した複合成形品が形成される。
【実施例】
【0060】
以下に本発明の実施例を詳述するが、実施例は本発明の理解を助けるためのものであって、この実施例によって本発明の範囲が制限されるものではない。なお、実施例中に単に「部」又は「%」とあるは、とくに断わらない限り重量に基づく値である
【0061】
[実施例]
エポキシ樹脂((株)アデカ製「アデカレジンEP−4300」70部と硬化剤(三菱ガス化学(株)製「1.3−ビスアミノメチルシクロヘキサン」)14部とを室温で混合した後、膨張性発泡粒子(松本油脂製薬(株)製「マツモトマイクロスフェアーF82」)3部と非膨張性発泡粒子(住友スリーエム(株)製「グラスバブルズK37」)15部とを添加混合して、発泡粒子含有樹脂組成物を調製した。
この発泡粒子含有樹脂組成物と、分離膜として帝人ユニセル(株)「RT−0109」、強化繊維材料として日東紡(株)「ガラスマットMC380A、ガラスMC450A」、離型シートとして王子特殊紙(株)「王子アルファンSS121#20」、凹凸模様面を形成する表層部への非膨張性発泡粒子として水野陶土(株)「レックス500」8部を使用して積層体を作成し、反りとねじれとクラックが無く、意匠としての凹凸模様が忠実に再現されたフォームコア・サンドイッチ構造の複合成形品を得た。
【符号の説明】
【0062】
1 プレスの上定盤
2 プレスの下定盤
3 凹凸模様面が形成された下型
4 発泡粒子含有樹脂組成物
5 発泡前の膨張性発泡粒子
6 液状成形樹脂
7 発砲後の膨張性発泡粒子
8 非膨張性発泡粒子
9 強化繊維材料
10 強化繊維材料
11 分離膜
12 離型シート
13 熱プレス処理の圧締方向
14 熱プレス処理の圧締方向
15 液状成形樹脂が分離膜を通過して表層部に侵入する経路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維材料を含有する繊維強化樹脂層よりなる2つの表層部、2つの表層部に挟まれた発泡粒子を含有する発泡粒子含有樹脂層よりなる芯部、および、該表層部と該芯部との間に存在する分離層からなる板状に一体化された複合成形品において、該複合成形品の一方の表層部の表面には凹凸模様が形成されて他方の表層部の表面には略平滑な面が形成されていて、凹凸模様が形成されている一方の表層部は非膨張性発泡粒子を含有していることを特徴とする複合成形品の製造方法であって、
凹凸模様が形成された成形型を、凹凸模様を上に向けて成形プレスの下定盤に配置し、
上記凹凸模様が形成された成形型の成形面上に非膨張性発泡粒子を配置し、
上記非膨張性発泡粒子の上に強化繊維材料、そして該強化繊維材料の上に膨張後の膨張性発泡粒子は通さないが液状成形樹脂は通す分離膜を配置し、
上記分離膜の上に、芯部の発泡粒子として膨張性発泡粒子及び液状成形樹脂の混合物を配置し、
上記膨張性発泡粒子及び液状成形樹脂の混合物の上に分離膜、強化繊維材料を順に配置し、成形型を閉じて、上記膨張性発泡粒子を発泡させて体積膨張を生じさせ、これにより分離膜及び強化繊維材料を成形型の内壁面に押しつけるとともに、液状成形樹脂の一部を分離膜を透過させて表層部の強化繊維材料に浸透させて、そして凹凸模様が形成される一方の表層部の非膨張性発泡粒子の周囲に液状成形樹脂を入り込ませて、その状態で液状成形樹脂を硬化させて、得られた複合成形品を型から取り出すことを特徴とする複合成形品の製造方法
【請求項2】
芯部の発泡粒子が、膨張性発泡粒子と非膨張性発泡粒子との混合粒子である請求項1に記載の複合成形品の製造方法
【請求項3】
凹凸模様が形成された表層部の非膨張性発泡粒子が無機中空粒子である請求項1〜2のいずれかに記載の複合成形品の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−230341(P2011−230341A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101801(P2010−101801)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000110860)ニチハ株式会社 (182)
【Fターム(参考)】