説明

複合成形品

【課題】ポリノルボルネン系樹脂の成形体からなる基材にBMC又はSMCからなる積層材を積層して一体化する場合に、大きな変形を抑制する。
【解決手段】基材4の線膨張係数に対応する収縮の度合いをXとし、積層材5を基材4に積層して成形する際に積層材5に起こる成形時収縮の度合いをYとしたとき、Y/Xが0.75以上1.25以下となるように積層材5の成形時収縮の度合いYが設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリノルボルネン系樹脂の成形体からなる基材の少なくとも一部に、バルクモールディングコンパウンド又はシートモールディングコンパウンドからなる積層材を積層して一体化した複合成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の複合成形品としては、ポリノルボルネン系樹脂を予め成形した成形体からなる基材を成形型内に配置し、この基材の表面にバルクモールディングコンパウンド(以下、BMCともいう)又はシートモールディングコンパウンド(以下、SMCともいう)からなる成形材料を供給して、成形型で成形することによって基材と一体化したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のような複合成形品を成形する際には、成形型が例えば100℃以上に加熱されており、その雰囲気下で積層材が成形される。このとき、積層材が基材に接着し、硬化が進むことになる。成形中の積層材には、一般に、硬化が進むことによる収縮(硬化収縮)が起こるとともに、成形型の温度低下による線膨張係数に対応した収縮も起こる。一方、基材には、既に成形されていることから、成形型の温度低下による線膨張係数に対応した収縮のみが起こることになる。
【0004】
また、異なる樹脂材を積層してなる複合積層品としては、第1の層を構成する樹脂材と、第1の層に隣接する第2の層を構成する樹脂材との線膨張係数を略同等にしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−67229号公報
【特許文献2】特開平8−318588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように特許文献1の積層材の成形時においては、基材には、該基材の線膨張係数に対応した収縮が起こる一方、積層材には、硬化収縮と、該積層材の線膨張係数に対応した収縮とが起こることになる。積層材に硬化収縮が起こる分、成形の際の積層材の収縮度合いは、基材の収縮度合いよりも大きくなりがちであり、両者の差が大きく開いてしまうことが考えられる。
【0007】
よって、基材と積層材との線膨張係数のみを、特許文献2に開示されているように略同等にした場合には、積層材が基材に接着した状態で硬化及び冷却される過程で、両者の収縮度合いの差に起因して複合成形品に大きな反りや撓み等の変形が生じる虞れがある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ポリノルボルネン系樹脂の成形体からなる基材にBMC又はSMCからなる積層材を積層して一体化する場合に、大きな変形を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、ポリノルボルネン系樹脂の成形体からなる基材の少なくとも一部に、バルクモールディングコンパウンド又はシートモールディングコンパウンドからなる積層材を積層して成形することによって一体化された複合成形品において、上記基材の線膨張係数に対応する収縮の度合いをXとし、上記積層材を上記基材に積層して成形する際に該積層材に起こる成形時収縮の度合いをYとしたとき、Y/Xが0.75以上1.25以下となるように上記積層材の成形時収縮の度合いが設定されていることを特徴とするものである。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、積層材には、有機繊維が混合されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、積層材の成形時収縮度合い(Y)を、基材の線膨張係数に対応する収縮度合い(X)で除した値を、0.75以上1.25以下の範囲としたことにより、従来例のように基材と積層材との線膨張係数のみを同じにした場合に比べて、成形時における基材と積層材との収縮度合いの差が小さくなる。これにより、複合成形品の変形量を小さくできる。
【0012】
第2の発明によれば、積層材に有機繊維を混合したことによって積層材の強度が向上し、これにより、複合成形品の剛性を高めることができる。また、有機繊維の混合量によって積層材の線膨張係数を変えることができる。つまり、有機繊維を混合することで、積層材の補強を行いながら、積層材の成形時収縮率が上記範囲内となるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態にかかるシンクの縦断面図である。
【図2】実施形態にかかるシンクの製造要領を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態にかかる複合積層品である住宅の台所用シンク1を示すものである。このシンク1は、図示しない天板に取り付けられて使用されるものである。天板には、シンク1の形状に対応した貫通孔が形成されており、シンク1は天板の裏側から貫通孔周縁部に対し接着剤等を用いて接着されている。
【0016】
シンク1は、凹形状をなす本体部2と、本体部2における上方への開放部周縁から略水平方向に延出するフランジ3とを備えている。フランジ3の上面が天板に接着されるようになっている。尚、フランジ3を天板に接着する際には、周知の接着剤を用い、クランプ器具等でフランジ3を天板に押し付けるようにして所定時間保持する。
【0017】
また、シンク1は、全体が2層構造とされており、シンク1の裏側を構成する基材4と、シンク1の表側を構成する積層材5とが一体化されてなるものである。
【0018】
(基材)
基材4は、ポリノルボルネン系樹脂の成形体からなるものであり、厚みは、約2mm〜7mm程度とされている。基材4の厚みは、シンク1に要求される性能によって変更することが可能であり、上記範囲に限られるものではない。
【0019】
本実施形態では、ポリノルボルネン系樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエン(DCPD)を主原料としたオレフィン系架橋タイプの熱硬化性樹脂である。ジシクロペンタジエンの線膨張係数は、JIS K7197による測定法で、8.0×10−5mm/mm・Kである。
【0020】
基材4としては、JIS K7197による測定法で得られた線膨張係数が、8.0×10−5mm/mm・K以外のジシクロペンタジエンで成形したものであってもよい。例えば、ガラス繊維や、充填材をジシクロペンタジエンに配合することで、線膨張係数を低くすることが可能であり、その数値としては、例えば4.0×10−5mm/mm・K程度であってもよい。
【0021】
本実施形態で使用可能なノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン環を有するものであればよく、上記したものに限られるものではない。
【0022】
(積層材)
積層材5は、BMCを成形してなるものであり、厚みは、約1mm〜5mm程度とされている。積層材5の厚みは、シンク1に要求される性能によって変更することが可能であり、上記範囲に限られるものではない。
【0023】
表1に示すように、BMC(BMC−A)は、ビニルエステル樹脂(エポキシアクリレート樹脂)、硬化剤、紫外線吸収剤、内部離型剤、低収縮剤、樹脂チップ、増粘剤、有機繊維、充填剤等を混合してなるものである。
【0024】
【表1】

【0025】
BMC−Aのトータルの重量は382部である。ビニルエステル樹脂は、100部を占めている。ビニルエステル樹脂は、靱性があるとともに、耐汚染性が高いので、シンク1の積層材5として好ましい。
【0026】
硬化剤は2部を占めている。紫外線吸収剤は1部を占めている。内部離型剤は、5部を占めている。低収縮剤は、5部を占めている。樹脂チップは、樹脂を細かく砕いたものであり、6部を占めている。増粘剤は、2部を占めている。有機繊維は、例えばビニロン等であり、11部を占めている。充填剤は、例えば水酸化アルミニウム等であり、250部を占めている。BMC−Aには、表に示したもの以外にも、例えば、トナーや重合禁止剤等も混合されている。
【0027】
有機繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、フェノール繊維、ポリビニルアルコール繊維、ナイロン繊維等がある。有機繊維の長さは、例えば1mm以上26mm以下に設定されている。有機繊維の長さを短くすれば、成形時のBMCの流動性が高まる反面、長い場合に比べて強度が低下するので、シンク1としては、上記範囲とするのが成形性と強度を両立できて好ましい。また、有機繊維の直径は、例えば、10μm程度が好ましい。
【0028】
増粘剤としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム等が挙げられる。
【0029】
充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、タルク、カオリン、クレー、セライト、バーライト、バライタ、シリカ、ケイ砂、アルミニウム、ガラスフリット、アルミナ微粉等であってもよい。
【0030】
上記BMC−Aの線膨張係数は、JIS K7197による測定法で、4.4×10−5mm/mm・Kである。また、上記BMC−Aは硬化が進むことによって収縮する。これを本明細書では硬化収縮という。この収縮率(硬化収縮率)は、0.52%である。硬化収縮率とは、BMC−Aを所定の型で成形した際、型の内寸をH1とし、成形後の製品の外寸をH2とした際、(H1−H2)/H1×100で算出される値である。
【0031】
BMC−Aを成形する際には、成形型における成形面温度が100℃以上の高温とされるので、BMC−Aには、硬化が進む過程で、成形面温度の低下による線膨張係数に対応した収縮と、上記硬化収縮との2つの収縮が起こる。これら2つの収縮を合わせたものを成形時収縮という。上記BMC−Aの場合、成形時収縮の値は、11.40×10−5mm/mm・Kとなる。
【0032】
成形時収縮の値、線膨張係数、硬化収縮率は、BMCの各成分の配合割合や配合物によって変更することが可能である。例えば、上記BMC−Aの配合割合をベースとして、ビニルエステル樹脂を50部とし、不飽和ポリエステル樹脂を50部としたBMC(BMC−B)では、線膨張係数は上記測定法で4.5×10−5mm/mm・Kであり、硬化収縮率は0.36%である。成形時収縮の値は、9.76×10−5mm/mm・Kとなる。
【0033】
また、上記BMC−Aをベースとして、ビニルエステル樹脂を0とし、不飽和ポリエステル樹脂を100部としたBMC(BMC−C)では、線膨張係数は上記測定法で4.8×10−5mm/mm・Kであり、硬化収縮率は0.20%である。成形時収縮の値は、8.27×10−5mm/mm・Kとなる。
【0034】
また、上記BMC−Bをベースとして、有機繊維を0としたBMC(BMC−D)では、線膨張係数は上記測定法で4.5×10−5mm/mm・Kであり、硬化収縮率は0.30%である。成形時収縮の値は、9.05×10−5mm/mm・Kとなる。
【0035】
また、上記BMC−Bをベースとして、有機繊維を0とし、無機繊維としてのガラス繊維を30部としたBMC(BMC−E)では、線膨張係数は上記測定法で3.9×10−5mm/mm・Kであり、硬化収縮率は0.40%である。成形時収縮の値は、9.48×10−5mm/mm・Kとなる。尚、無機繊維としては、例えば炭素繊維であってもよい。
【0036】
また、上記BMC−Bをベースとして、有機繊維を6部とし、無機繊維としてのガラス繊維を15部としたBMC(BMC−F)では、線膨張係数は上記測定法で4.0×10−5mm/mm・Kであり、硬化収縮率は0.51%である。成形時収縮の値は、10.90×10−5mm/mm・Kとなる。
【0037】
また、上記BMC−Bをベースとして、充填剤を150部としたBMC(BMC−G)では、線膨張係数は上記測定法で5.3×10−5mm/mm・Kであり、硬化収縮率は0.40%である。成形時収縮の値は、11.10×10−5mm/mm・Kとなる。
【0038】
また、上記BMC−Bをベースとして、充填剤を200部としたBMC(BMC−H)では、線膨張係数は上記測定法で4.8×10−5mm/mm・Kであり、硬化収縮率は0.29%である。成形時収縮の値は、9.29×10−5mm/mm・Kとなる。
【0039】
また、上記BMC−Bをベースとして、充填剤を300部としたBMC(BMC−I)では、線膨張係数は上記測定法で4.1×10−5mm/mm・Kであり、硬化収縮率は0.25%である。成形時収縮の値は、7.96×10−5mm/mm・Kとなる。
【0040】
充填剤を増やしていくと、線膨張係数、硬化収縮率及び成形時収縮の値が全て低下する。
【0041】
また、上記BMC−Bをベースとして、低収縮剤を0としたBMC(BMC−J)では、線膨張係数は上記測定法で4.1×10−5mm/mm・Kであり、硬化収縮率は0.36%である。成形時収縮の値は、9.27×10−5mm/mm・Kとなる。
【0042】
また、上記BMC−Bをベースとして、低収縮剤を10部としたBMC(BMC−K)では、線膨張係数は上記測定法で4.8×10−5mm/mm・Kであり、硬化収縮率は0.26%である。成形時収縮の値は、8.94×10−5mm/mm・Kとなる。
【0043】
また、上記BMC−Bをベースとして、低収縮剤を20部としたBMC(BMC−L)では、線膨張係数は上記測定法で4.8×10−5mm/mm・Kであり、硬化収縮率は0.26%である。成形時収縮の値は、8.98×10−5mm/mm・Kとなる。
【0044】
(シンクの製造要領)
次に、上記シンク1の製造要領について説明する。まず、図示しない基材成形装置を用いてジシクロペンタジエンを成形し、基材4を得る。
【0045】
そして、基材4にBMCを積層して成形する。このBMCを成形する成形装置10は、図2に示すように、下型11と、上型12とを備えており、図示しない型駆動装置によって上型12を下型11に対し接離する方向に移動させて型締め状態と型開き状態とに切り替えられるようになっている。下型11及び上型12を型閉じするとキャビティが形成される。下型11におけるキャビティに臨む面には、図2(a)に示すように基材4の裏側が保持されるようになっている。また、図2(b)に示すように、上型12におけるキャビティに臨む面(成形面)によってBMCが成形されるようになっている。
【0046】
また、下型11及び上型12には、キャビティに臨む面の温度を制御する加熱装置が設けられており、各型11,12の面の温度を個別に調整することができるようになっている。成形面の温度は、例えば、120℃〜150℃程度の高温に設定可能となっている。
【0047】
はじめに、図2(a)に示すように、成形装置10の下型11及び上型12を開いた状態として、基材4を下型11に保持させる。基材4は、下型11によって加熱されるので線膨張係数に対応して膨張する。そして、下型11に保持されている基材4の表面にBMCを供給する。このBMCは、上記BMC−Bである。
【0048】
そして、図2(b)に示すように、型駆動装置によって上型12を下型11に接近させて型閉じ状態とする。このときにBMC−Aが上型12によって基材4に押し付けられて上型12と基材4との間で積層材5の形状となるように成形される。
【0049】
BMC−Bは、基材4の表面に接着する。この接着は化学的結合によるものである。従って、成形後には、積層材5と基材4とは界面剥離しない。
【0050】
成形時、BMC−Bには、硬化収縮が起こるとともに、下型11及び上型12の温度が低下していくことに起因して線膨張係数に対応する収縮が起こる。つまり、BMC−Bには、成形時収縮が起こる。一方、基材4は、下型11及び上型12の温度が低下していくことに起因して線膨張係数に対応する収縮のみが起こる。
【0051】
BMC−Bの成形時収縮の値は、9.76×10−5mm/mm・K(Yとする)であり、基材4の線膨張係数は、8.0×10−5mm/mm・K(Xとする)である。Y/Xは1.22であり、XとYの差は十分に小さい。
【0052】
これにより、従来例のように基材4と積層材5との線膨張係数のみを同じにした場合に比べて、成形時における積層材5の収縮度合いと基材4の収縮度合いとの差が小さくなる。従って、シンク1の変形量を小さくでき、よって、シンク1の見栄えを良好にできる。
【0053】
本発明者がY/Xの値を変えてシンク1の成形試験をした結果、Y/Xが0.75未満である場合、又は1.25よりも大きい場合には、基材4と積層材5との収縮度合いの差が大きくなり過ぎて、得られたシンク1の変形量が大きい。シンク1の変形量が大きいとは、シンク1が全体的に大きく湾曲してフランジ3が撓み、フランジ3を天板に接着するのがクランプ器具を用いても困難な程度である。
【0054】
上記BMC−B〜E,H〜Lのいずれを用いても、Y/Xは0.75以上1.25以下であるため、シンク1の見栄えを良好にできる。
【0055】
一方、BMC−Aを用いた場合には、Y/Xは1.43であり、BMC−Fを用いた場合には、Y/Xは1.36であり、BMC−Gを用いた場合には、1.39である。BMC−A,F,Gの全ては、Y/Xが1.25よりも大きいため、シンク1の変形量が大きくなり、フランジ3を天板に接着するのがクランプ器具を用いても困難である。
【0056】
また、BMC−D以外のBMC−A〜C、E〜Lには、有機繊維又は無機繊維の少なくとも一方が混合されているので、積層材5の強度が向上し、これにより、シンク1の剛性を高めることができる。また、表に示すように、有機繊維の混合量によって積層材5の成形時収縮の値を変えることができる。
【0057】
また、本発明は、BMCの代わりにSMCを用いることも可能である。SMCを用いた場合には、SMCの成形時収縮の値をYとし、基材4の線膨張係数をXとしたとき、Y/Xが0.75以上1.25以下であれば、シンク1の見栄えを良好にできる。その理由は上述のとおりである。
【0058】
さらに、有機繊維を混合したBMC又はSMCを用いた場合には、例えば、積層材5の表面を研磨した際に有機繊維も削ることができるので、ガラス繊維のみを混合した場合のように繊維が積層材5の表面に目立つようになることはなく、積層材5の表面につやを出すことができる。
【0059】
尚、上記実施形態では、基材4の全体に積層材5を設けているが、これに限らず、基材4の一部にのみ積層材5を設けてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、住宅用のシンクに本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、例えば、バスタブ、床材、壁材等にも適用でき、また、自動車用のボンネット、ドア、トランクリッド、フロントフェンダー等にも適用できる。
【0061】
また、シンクやバスタブは、周壁部が底壁部から上に延びる形状であり、使用時に全体としてみたときに凹形状となるが、ボンネット等は、周壁部が下に延びる凸形状となる。この凸形状のものであっても、本発明は適用できる。凸形状の場合、上層がBMCやSMCからなり、下層がジシクロペンタジエンからなる。BMCやSMCは、意匠面を構成する側とするのが好ましい。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の実施例を説明する。実施例では、表2に示す2種類のBMC(BMC−1、BMC−2)のそれぞれを基材4に積層して成形した。
【0063】
【表2】

【0064】
基材4は、ジシクロペンタジエンである。下型11及び上型12の成形面の温度は、130℃である。成形品は、300mm×300mmの略正方形の板材である。成形品の厚みは4mmであり、そのうち、基材4の厚みは2mmであり、積層材5の厚みは2mmである。
【0065】
BMC−1のトータルの重量は231部である。BMC−1の不飽和ポリエステル樹脂は、100部を占めている。硬化剤は2部を占めている。内部離型剤は、5部を占めている。低収縮剤は、5部を占めている。樹脂チップは、6部を占めている。増粘剤は、2部を占めている。有機繊維は、ビニロンであり、11部を占めている。ビニロンの平均繊維長は1mmである。充填剤は、水酸化アルミニウムであり、100部を占めている。BMC−1の線膨張係数は、上記測定法で、4.40×10−5mm/mm・Kである。硬化収縮率は、0.26%である。成形時収縮の値は、8.43×10−5mm/mm・Kである。Y/Xは1.05となる。
【0066】
このBMC−1を成形した後、脱型して常温(25℃)まで冷却し、成形品の湾曲度合いを測定した。測定は、次のようにして行った。成形品の中央部を柱状部材によって定盤に支持し、成形品の中央部における定盤からの高さと、成形品の周縁部における定盤からの高さとの差を求めることによって成形品の湾曲度合いを得るようにした。BMC−1を成形した場合には、成形品の中央部と、周縁部との高さの差は1.5mmであった。この程度の湾曲度合いであれば、実際にシンクの製造に用いても問題とならない。
【0067】
BMC−2のトータルの重量は381部である。BMC−2のビニルエステル樹脂は40部で、不飽和ポリエステル樹脂は60部を占めている。硬化剤は2部を占めている。内部離型剤は、5部を占めている。低収縮剤は、5部を占めている。樹脂チップは、6部を占めている。増粘剤は、2部を占めている。有機繊維は、ビニロンであり、11部を占めている。充填剤は、水酸化アルミニウムであり、250部を占めている。BMC−2の線膨張係数は、上記測定法で、4.90×10−5mm/mm・Kである。硬化収縮率は、0.05%である。成形時収縮の値は、6.65×10−5mm/mm・Kである。Y/Xは0.83となる。
【0068】
このBMC−2を成形した後、上記のように成形品の湾曲度合いを測定した。その結果は、1.7mmであり、実際にシンクの製造に用いても問題とならない。
【0069】
また、Y/Xが0.75未満となるBMC、又は1.25よりも大きくなるBMCを用いた場合には、成形品の湾曲度合いが6mm〜7mmとなり、実際にシンクの製造に用いると、天板への接着が困難になる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明したように、本発明にかかる積層成形品は、例えば、住宅用シンク等に用いることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 複合積層品
2 本体部
3 フランジ
4 基材
5 積層材
10 成形装置
11 下型
12 上型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリノルボルネン系樹脂の成形体からなる基材の少なくとも一部に、バルクモールディングコンパウンド又はシートモールディングコンパウンドからなる積層材を積層して成形することによって一体化された複合成形品において、
上記基材の線膨張係数に対応する収縮の度合いをXとし、
上記積層材を上記基材に積層して成形する際に該積層材に起こる成形時収縮の度合いをYとしたとき、
Y/Xが0.75以上1.25以下となるように上記積層材の成形時収縮の度合いが設定されていることを特徴とする複合成形品。
【請求項2】
請求項1に記載の複合成形品において、
積層材には、有機繊維が混合されていることを特徴とする複合成形品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−178127(P2011−178127A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46948(P2010−46948)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】