説明

複合操作装置

【課題】基板および操作部材の構造をシンプルに形成することが可能な複合操作装置を提供する。
【解決手段】複合操作装置は、同一の中心軸線L1を有するダイアルノブ11およびロータ12を含む操作部材10と、基板PCBに固定されて基準軸線L0方向に貫通する円筒状の孔部21bおよび球面状の外周部21aを有するホルダ21と、ホルダ21に支持されてケース31の開口から一部位が突設されたベース22と、基板PCBに実装されたタクトスイッチ41,4個のタクトスイッチ42(揺動検出センサ)および2個のフォトインタラプラ43(回転検出センサ)とを備える。ベースの揺動支点Oは、基準軸線L0上にあり、かつ基準軸線L0と中心軸線L1とが一致する原位置からロータ12が基準軸線L0と直交する方向にてフォトインタラプラ43に最も近づいたときの最大接近量D2を設定量D1以下とする位置に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合操作装置に関し、特に回転操作と揺動操作とを同時に行い得る操作部材を備えた複合操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の複合操作装置として、例えば下記特許文献1に記載されているように、一体的に回転可能に結合されたノブ(ダイアルノブ)およびロータリエンコーダ(ロータ)を含んでなる操作部材を備えたものが知られている。この複合操作装置では、ロータリエンコーダの摺動子が基板に形成された接点パターン上を摺動するように構成されていて、ノブの回転操作に対応した電気信号が出力されるようになっている。また、別の複合操作装置として、例えば下記特許文献2に記載されているように、操作ノブ(ダイアルノブ)内に、スリット板、発光ダイオードおよびフォトトランジスタ(回転検出センサ)からなる無接点式のロータリスイッチを組み込んだものが知られている。この複合操作装置では、操作ノブとスリット板とが一体的に回転可能に結合されていて、スリット板への光の透過または遮光により操作ノブの回転量および回転方向を表す検出信号が出力されるようになっている。
【特許文献1】特開2005−317376号公報
【特許文献2】特開2003−220893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載された複合操作装置では、基板に接点パターンを形成するようにしているため、基板の構造が複雑になり易いという問題があった。これに対して、上記特許文献2に記載された複合操作装置によれば、基板に接点パターンを形成しなくて済むので、基板の構造をシンプルに形成することが可能である。しかしながら、上記特許文献2に記載された複合操作装置では、操作ノブ内にロータリスイッチを組み込むようにしているため、操作ノブの構造が複雑になり易く、組み付け作業性が悪くなるという問題があった。
【0004】
本発明の課題は、基板および操作部材の構造をシンプルに形成することが可能な複合操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、ダイアルノブおよびロータが同一の中心軸線を有し、かつ一体動作するように結合されてなる操作部材と、基板に固定されて同基板と直交する基準軸線方向に貫通する円筒状の孔部および球面状の外周部を有するホルダと、前記ホルダの外周部に摺動可能に支持される中空球面状の本体部、および前記本体部と一体的に形成されて前記中心軸線を軸線とする中空円筒状の軸部を有し、前記軸部にて前記ダイアルノブおよび前記ロータを前記中心軸線回りに回転可能、かつ前記軸部と共に前記ダイアルノブおよび前記ロータを揺動可能に組み込むベースとを備えた複合操作装置であって、前記基板には、前記ロータの前記中心軸線回りの回転量および回転方向を検出する無接点式の回転検出センサが固定され、かつ前記ベースの揺動支点回りの揺動方向を検出する揺動検出センサが固定されており、前記ベースの揺動支点は、前記基準軸線上にあり、かつ前記基準軸線と前記中心軸線とが一致する前記ロータの原位置から同ロータが同基準軸線と直交する方向にて前記回転検出センサに最も近づいたときの最大接近量を設定量以下とする位置に設定されていることを特徴とする。
【0006】
この複合操作装置では、ロータの中心軸線回りの回転量および回転方向を検出する無接点式の回転検出センサが基板に固定されている。このため、基板に接点パターンを形成しなくて済むので、基板の構造をシンプルに形成することが可能である。また、操作部材に回転検出センサを組み込まなくて済むので、操作部材の構造をシンプルに形成することも可能である。
【0007】
ところで、無接点式の回転検出センサを基板に固定するようにした場合には、操作部材の揺動操作に伴う、ロータの回転検出センサに対する位置の変化を考慮に入れる必要がある。すなわち、操作部材の揺動操作時において、ロータが回転検出センサと干渉しないように両者の位置関係を設定する必要がある。また、回転検出センサの出力値が変化しないように両者の位置関係を設定する必要がある。本発明の複合操作装置では、ロータがベースの揺動支点回りに揺動したとき、ロータが原位置から基準軸線と直交する方向にて前記回転検出センサに最も近づいたときの最大接近量を設定量以下とする位置に、ベースの揺動支点が設定されている。
【0008】
このため、ロータがベースの揺動支点回りに揺動しても、ロータの回転検出センサに対する前記最大接近量が設定量以下となるので、回転検出センサとの干渉を十分に回避することが可能である。
【0009】
本発明の実施に際して、前記回転検出センサは、前記ロータが前記基準軸線と平行な方向にて前記原位置から最も離れたときの最大離間量を設定量以下とする位置に配置されていることも可能である。この場合、前記回転検出センサは、例えば、前記基板上にて対向配置される発光部および受光部を有する赤外センサであり、前記ベースの揺動支点回りの前記ロータの揺動に対して、前記発光部からの赤外光が前記ロータに形成された凹凸状のスリットを透過して前記受光部に至る透過状態、または前記発光部からの赤外光が前記ロータに形成された凹凸状のスリットにより遮光される遮光状態が切り替わらないように設定されているとよい。
【0010】
これによれば、ロータがベースの揺動支点回りに揺動しても、中心軸線と平行な方向にてロータの原位置からの最大離間量が設定量以下となるので、回転検出センサの出力値が変化することを良好に防止することができる。
【0011】
また、本発明の実施に際して、前記操作部材は、さらに中心軸線方向にスライド移動可能に前記ベースの軸部に組み込まれるプッシュノブを備え、前記基板には、前記プッシュノブの中心軸線方向の押動を検出する押動検出センサが固定されており、前記ベースの揺動支点は、前記ロータの原位置からの揺動に伴う前記プッシュノブの前記中心軸線方向における変位量を設定量以下とする位置に設定されていることも可能である。この場合、前記押動検出センサは、例えば、前記プッシュノブと常時接触した状態にあり、前記プッシュノブの押動操作に応じて接点のオンオフが切り替わるメカニカルスイッチであって、前記ベースの揺動支点回りの前記プッシュノブの揺動に対して、前記接点のオンオフが切り替わらないように設定されているとよい。
【0012】
これによれば、ロータがベースの揺動支点回りに揺動しても、中心軸線方向におけるプッシュノブの変位量が設定量以下となるので、押動検出センサの出力値が変化することを良好に防止することができる。
【0013】
また、本発明の実施に際して、前記ベースには、ガイド部が一体的に形成されており、前記ガイド部と、前記基板に設けられたガイド溝部材との協働により、前記ベースが予め設定された所定の方向に揺動可能とされていることも可能である。
【0014】
これによれば、ベースの動作が、ガイド部およびガイド溝部材により規制されるので、揺動検出センサによってベースの揺動を精度良く検出することができる。
【0015】
この場合、前記ガイド溝部材は、平面視にて前記揺動検出スイッチの外側に配置されているとよい。これによれば、揺動検出スイッチがガイド溝部材に比してベースの揺動支点に近い側に配置されているので、ガイド部とガイド溝部材間にガタツキがあっても、揺動検出スイッチの近傍においては、そのガタツキ量の影響が小さくなって、揺動検出スイッチへの影響を良好に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1〜図8は本発明の実施形態に係る複合操作装置を示している。この複合操作装置は、例えば車載のエアコンパネル、オーディオ機器、ナビゲーション装置などの機能を切り替えるためのものであり、ケース31の開口から一部位が突設された操作部材10と、基板PCBに固定されてケース31で覆われるホルダ21と、ホルダ21に支持されてケース31の開口から一部位が突設されたベース22と、基板PCBに実装されたタクトスイッチ41,4個のタクトスイッチ42および2個のフォトインタラプラ43とを備えている。なお、図1は本発明の実施形態に係る複合操作装置の分解斜視図、図2は図1の複合操作装置が組み付けられた状態での平面図(後述するダイアルノブ11、プッシュノブ13などを除く)、図3は図2の3−3断面図(後述するダイアルノブ11、プッシュノブ13などを含む)、図4は図2の4−4断面図(後述するダイアルノブ11、プッシュノブ13などを含む)、図5は基板PCB上のスイッチ等41〜43とホルダ21を示す平面図、図6は図1の複合操作装置が組み付けられた状態での平面図(操作部材10を除く)、図7は図3の7(a)−7(a)断面図等、図8は基板PCB上のスイッチ等41〜43のみを示す平面図である。
【0017】
操作部材10は、同一の中心軸線L1を有し、かつ一体動作するように結合されたダイアルノブ11、ロータ12およびプッシュノブ13を含んで構成されている。ダイアルノブ11、ロータ12およびプッシュノブ13については、後述する。
【0018】
ホルダ21は、摺動特性に優れた例えばPOM樹脂で形成されており、スクリュにより基板PCBに固定されている。このホルダ21は、基板PCBと直交する基準軸線L0を有し、筒状に形成されていて、球面状の外周部21aと、基準軸線L0方向に貫通する円筒状の孔部21bとを備えている(図3、図4および図5参照)。
【0019】
ベース22は、摺動特性に優れた例えばPOM樹脂やABS樹脂で形成されており、中空球面状の本体部22aと、この本体部22aと一体に形成されて中心軸線L0方向に延び出す軸部22bとを備えている。本体部22aは、ホルダ21の外周部21aに摺動(円弧運動)可能に支持されている。具体的には、本体部22aは、ホルダ21の内部に設定された所定の揺動支点O回りに揺動可能とされている。なお、ベース22が原位置にある状態では、ベース22を始めとする操作部材10の中心軸線L1が、基準軸線L0と一致している(図3、図4および図6参照)。
【0020】
ベース22の軸部22bは、外側円筒部22b1と内側円筒部22b2を有する2重の中空円筒状に形成されていて、その下部にてホルダ21の孔部21b内に収容され、その上部が本体部22aから上向きに突設されている。
【0021】
ベース22の本体部22aには、図2に示す平面視にて径方向に延びる4個のアーム部22cが一体形成されている。各アーム部22cは、互いに90°間隔で配置されている。各アーム部22cの先端部近傍の下部には、スイッチ押し下げ部22dが一体形成されている。
【0022】
各スイッチ押し下げ部22dは、ベース22が原位置にあるとき、それぞれと対向配置されたタクトスイッチ42と接触した状態にある。この状態では、180°の対称位置に配置された一対のスイッチ押し下げ部22dとタクトスイッチ42との両接触位置が、ベース22の揺動支点Oを通る水平軸線H1上に位置し、別の一対のスイッチ押し下げ部22dとタクトスイッチ42との両接触位置が、水平軸線H1と直交する水平軸線H2上に位置するようになっている。
【0023】
各アーム部22cの先端には、図7(a)にて一つのアーム部22cを代表して示すように、ガイド部22eが一体成形されている。ガイド部22eは、正面視にて逆T字断面形状をなし、図示上向きに突出した上側係合突起22e1と、図示左右方向に突出して凸状の湾曲面を有する左右側係合突起22e2とを有している。
【0024】
ガイド部22eは、基板PCBに立設されたガイド溝部材23のガイド溝23aに嵌入されている。ガイド溝部材23のガイド溝23aは、ガイド部22eにおける左右側係合突起22e2の水平軸線H1回りの摺動を許容し(図7(d)参照)、かつ水平軸線H2回りの上下方向の摺動を許容する溝幅に形成されるとともに、上部にてガイド部22eの上側係合突起22e1と係合してアーム部22cの上方への移動を規制する係合孔部23a1を有している(図7(b)参照)。
【0025】
ベース22が、ガイド部22eとガイド溝部材23との協働により、水平軸線H2回りに揺動したとき、図3に示した180°の間隔に対称配置された一対のアーム22cのうちの一方(図3では左側のアーム22c)が上向きに変位し(図7(b)および図10参照)、他方(図3では右側のアーム22c)が下向きに変位するように揺動する(図7(c)および図10参照)。このとき、ベース22の中心軸線L1が基準軸線L0から所定の傾斜角度θだけ揺動するように、別の一対のアーム22cが、水平軸線H2回りに回転する(図7(d)参照)。
【0026】
ケース31は、例えばABS樹脂、PC/ABS樹脂で形成されており、スクリュにより基板PCBに固定されている(図3および図4参照)。ケース31は、その裏面にてベース22の本体部22aと常時接触した凹部球面状のベース押さえ部31aを有している。ケース31が基板PCBに固定された状態では、ベース22の本体部22aがベース押さえ部31aとホルダ21の外周部21aとにより挟持されていて、ベース22の本体部22aがホルダ21の外周部21aから離脱することが阻止されている。
【0027】
ダイアルノブ11は、例えばABS樹脂で形成されており、外側円筒部11aと内側段付き円筒部11bを有する2重の中空円筒状に形成されていて、内側段付き円筒部11bに形成された円環溝11b1にてベース22における軸部22bの外側円筒部22b1に中心軸線L1回りに回転可能に支持されている(図3および図4参照)。外側円筒部11aは、操作者が指で摘んで回転操作可能な把持部として機能する。内側円筒部11bは、周方向にて複数の爪部を有し、各爪部とロータ12の係合孔部との係合により、ロータ12と一体化されている。
【0028】
ロータ12は、例えばPOM樹脂やABS樹脂で形成されており、ベース22における軸部22bの外側円筒部22b1と内側円筒部22b2間のスペースに、軸部22bに対して中心軸線L1回りに回転可能、かつ軸部22bと共に揺動可能に組み込まれている(図3および図4参照)。なお、ロータ12は、ベース22における軸部22bの外側円筒部22b1との爪係合により、上方への抜けが阻止されている。
【0029】
ロータ12の外周面中央部には、周方向にて凹凸部12aが形成され、ベース22の軸部22b内に組み込まれた板ばね14(例えば、ステンレス鋼やばね用りん青銅製のもの)によって弾撥的に付勢されており(図1および図2参照)、ロータ12の中心軸線L1回りの回転時に操作者に対して節度感(クリック感)を与えるようになっている。ロータ12の下端部には、周方向にて凹凸状のスリット12bが形成されている。凹凸状のスリット12bは、後述するフォトインタラプタ43の赤外光を透過または遮光する機能を果たす。
【0030】
プッシュノブ13は、例えば無色透明のPMMA樹脂やPC樹脂で形成されており、ベース22における軸部22bの内側円筒部22b2内に組み込まれていて、円板状の天壁部13aと、この天壁部13aと一体形成されて中心軸線L1の下方に延び出す板状の軸部13bとを備えている(図3および図4参照)。プッシュノブ13の天壁部13aは、塗装処理された後、所定の文字部分のみが透明となるようにレーザーカットされ、基板PCBに設けられた発光ダイオード(図示省略)により照光されるようになっている。
【0031】
プッシュノブ13の軸部13bは、その両側面部位にて中心軸線方向L1(長手方向)に延びるレール部を有し、このレール部と、ベース22における軸部22bの内側円筒部22b2に形成されたレール溝との係合により、ベース22に対して中心軸線方向L1にスライド移動可能とされている。なお、軸部13bは、ベース22における軸部22bの内側円筒部22b2との間に設けられたばね(図示省略)により常時上方へ付勢されているが、内側円筒部22b2との爪係合により、内側円筒部22b2からの抜けが阻止されている。
【0032】
プッシュノブ13の軸部13bの下端には、スイッチ押し下げ部13cが形成されている。スイッチ押し下げ部13cは、タクトスイッチ41と常時接触した状態にあり、プッシュノブ13が押動操作されていないとき、スイッチ押し下げ部13cとタクトスイッチ41との接触位置が、ベース22の揺動支点Oの位置とほぼ一致するように設定されている。
【0033】
プッシュノブ13の天壁部13aは、円環状のダイアルベゼル15内に収容されるようになっている。ダイアルベゼル15は、例えばABS樹脂の表面がメッキ処理された装飾用の部材であり、爪係合によりダイアルノブ11の上部に取り付けられている(図1および図3参照)。
【0034】
ダイアルノブ11とケース31との間には、ベゼル16が設けられている(図1および図3参照)。ベゼル16は、例えばABS樹脂の表面がメッキ処理された装飾用の部材であり、爪係合によりケース31に取り付けられている。また、ダイアルノブ11の外側円筒部11aとベース22の外側円筒部22b1との間には、カラー17が設けられている(図1および図3参照)。カラー17は、ダイアルノブ11とベゼル16との隙間から板ばね14が見えるのを防止する役目を果たし、例えばABS樹脂で形成されていて、爪係合によりベース22の外側円筒部22b1に取り付けられている。
【0035】
タクトスイッチ41(押動検出センサ)は、基板PCBの中央部にて基準軸線L0が交差する位置に設けられている(図6および図8参照)。このタクトスイッチ41は、接点のオンオフが切り替わるメカニカルスイッチであり、プッシュノブ13の押動操作に伴うスイッチ押し下げ部13cの下向きの変位により接点がオンとなり、スイッチ押し下げ部13cの上向きの変位により接点がオフとなる。なお、押動検出センサは、タクトスイッチ41のようなメカニカルスイッチに限らず、例えば赤外センサ、磁気センサ、静電容量センサ、圧力センサなどの各種位置検出センサを用いることが可能である。この場合は、センサの出力値の変化量に基づいて、図示を省略するCPUによるプログラム処理や、制御回路による判定処理によってオンオフが判定されることとなる。
【0036】
タクトスイッチ42(揺動検出センサ)は、ベース22における各アーム部22cのスイッチ押し下げ部22dにそれぞれ対応して設けられている(図6および図8参照)。各タクトスイッチ42も、タクトスイッチ41と同様、接点のオンオフが切り替わるメカニカルスイッチであり、ベース22の揺動操作に伴う各スイッチ押し下げ部22dの下向きの変位により接点がオンとなり、スイッチ押し下げ部22dの上向きの変位により接点がオフとなる。なお、揺動検出センサは、各タクトスイッチ42のようなメカニカルスイッチに限らず、押動検出センサの場合と同様、各種位置検出センサを用いることが可能である。
【0037】
フォトインタラプタ43(回転検出センサ)は、ロータ12の外周位置(タクトスイッチ41を中心としたほぼ点対称位置)にて一対設けられており、ロータ12の凹凸状のスリット12bに対して、それぞれ位相をずらして配置されている(図6および図8参照)。各フォトインタラプタ43は、発光部43aおよび受光部43bを有する例えば赤外センサである。発光部43aと受光部43bは、対向配置されていて、発光部43aと受光部43b間を、ロータ12の凹凸状のスリット12bが通過するようになっており、スリット12bを透過する赤外光とスリット12bにより遮光される赤外光に対応したパルス信号に基づいて、ロータ12の回転方向と回転量が判定されるようになっている。
【0038】
以上のように構成された本実施形態では、ロータ12の中心軸線回りの回転量および回転方向を検出する無接点式のフォトインタラプタ43が基板PCBに固定されている。このため、基板PCBに接点パターンを形成しなくて済むので、基板PCBの構造をシンプルに形成することが可能である。また、操作部材10にフォトインタラプタを組み込まなくて済むので、操作部材10の構造をシンプルに形成することも可能である。
【0039】
ところで、この実施形態では、ベースの揺動支点Oが、基準軸線L0上にあり、かつ基板PCBを基準としたベースの揺動支点Oの高さ位置が、各フォトインタラプタ43の発光部43aと受光部43bにおける赤外光の検出位置とほぼ同じ高さに設定されている(図4参照)。すなわち、ロータ12が図9に示すようにベース22の揺動支点O回りに揺動したとき、図11にて二点鎖線または破線で示すように、ロータ12が原位置から基準軸線L0と直交する水平方向にて各フォトインタラプタ43に最も近づいたときの最大接近量D2を設定量D1以下とする位置に、ベースの揺動支点Oが設定されている。ここで、設定量D1は、ロータ12が原位置にある状態でのロータ12のスリット部12bと発光部43aまたは受光部43b間の距離を表す。
【0040】
これにより、ロータ12がベース22の揺動支点O回りに揺動して、ロータ12の中心軸線L1が基準軸線L0から所定の傾斜角度θだけ回転しても、ロータ12におけるスリット12bの各フォトインタラプタ43に対する最大接近量D2が設定量D1以下となるので、各フォトインタラプタ43との干渉を十分に回避することが可能である。
【0041】
また、この実施形態では、各フォトインタラプタ43が基準軸線L0から所定距離内に配置されている。すなわち、ロータ12が、図9に示すようにベース22の揺動支点O回りに揺動したとき、図11にて二点鎖線または破線で示すように、ロータ12が原位置から基準軸線L0と平行な方向にて最も離れたときの最大離間量D4を設定量D3以下とする位置に、各フォトインタラプタ43が配置されている。ここで、設定量D3は、ロータ12が基準軸線L0と平行な方向に変位しても、発光部43aからの赤外光がロータ12のスリット12bを透過して受光部43bに至る透過状態、または発光部43aからの赤外光がスリット12bにより遮光される遮光状態が切り替わらない距離に設定されている。
【0042】
これにより、ロータ12がベース22の揺動支点O回りに揺動して、ロータ12の中心軸線L1が基準軸線L0から所定の傾斜角度θだけ回転しても、基準軸線L0と平行な方向におけるロータ12の原位置からの最大離間量D4が設定量D3以下となるので、各フォトインタラプタ43の出力値が変化することを良好に防止することができる。
【0043】
また、この実施形態では、ロータ12の原位置からの揺動に伴うプッシュノブ13の中心軸線方向L1における変位量をほぼゼロとする位置に、ベース22の揺動支点Oが設定されている。すなわち、ベース22の揺動支点Oは、図9および図10に示したように、ベース22の揺動支点O回りのプッシュノブ13の揺動に対して、タクトスイッチ41の接点のオンオフが切り替わらないように設定されている。
【0044】
これにより、ロータ12がベース22の揺動支点O回りに揺動しても、中心軸線L1方向におけるプッシュノブ13の変位量がほぼゼロとなるので、タクトスイッチ41の出力値が変化することを良好に防止することができる。
【0045】
また、この実施形態では、ベース22におけるアーム部22cには、ガイド部22eが一体形成されており、ガイド部22eと、基板PCBに設けられたガイド溝部材23との協働により、ベース22が水平軸線H1またはH2回りに揺動可能とされている。
【0046】
これにより、ベース22の動作が、ガイド部22eおよびガイド溝部材23により規制されるので、タクトスイッチ42によってベース22の揺動を精度良く検出することができる。
【0047】
また、各ガイド部22eおよびガイド溝部材23は、平面視にて各タクトスイッチ42の外側に配置されている。これにより、各タクトスイッチ42が各ガイド溝部材23に比してベース22の揺動支点Oに近い側に配置されているので、ガイド部23eとガイド溝部材23間にガタツキがあっても、各タクトスイッチ42の近傍においては、そのガタツキ量の影響が小さくなって、各タクトスイッチ42への影響を良好に低減することができる。
【0048】
(変形実施形態)
上記実施形態では、ベース22が水平軸線H1またはH2回りに揺動して4方向の揺動操作が検出されるように構成としたが、これに限らず、例えばベース22が水平軸線H1およびH2のうちの何れか一つの軸線回りに揺動して2方向の揺動操作のみが検出されるように構成してもよい。
【0049】
なお、上記実施形態では、ロータ12の原位置からの揺動に伴うプッシュノブ13の中心軸線方向L1における変位量がほぼゼロとなる位置をベース22の揺動支点Oに設定したが、ベース22の揺動支点O回りのプッシュノブ13の揺動に対してタクトスイッチ41の接点のオンオフが切り替わらない設定量以下の範囲内で、ベース22の揺動支点Oが中心軸線方向L1に変位するように設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係る複合操作装置の分解斜視図。
【図2】図1の複合操作装置が組み付けられた状態での平面図(ダイアルノブ、プッシュノブなどを除く)。
【図3】図2の3−3断面図(ダイアルノブ、プッシュノブなどを含む)。
【図4】図2の4−4断面図(ダイアルノブ、プッシュノブなどを含む)。
【図5】図1の複合操作装置を構成する基板上のスイッチ等とホルダを示す平面図。
【図6】図1の複合操作装置が組み付けられた状態での平面図(操作部材を除く)。
【図7】(a)は図3の7(a)−7(a)断面図。(b)はガイド部が水平軸線H2回りに上方へ変位した状態を示す説明図。(c)はガイド部が水平軸線H2回りに下方へ変位した状態を示す説明図。(d)はガイド部が水平軸線H2回りに回転した状態を示す説明図。
【図8】図1の複合操作装置を構成する基板上のスイッチ等を示す平面図。
【図9】図3のベースが揺動支点O回りに所定の傾斜角度θだけ揺動した場合の説明図。
【図10】図4のベースが揺動支点O回りに所定の傾斜角度θだけ揺動した場合の説明図。
【図11】図9のフォトインタラプタの要部拡大図。
【符号の説明】
【0051】
PCB 基板
L1 中心軸線
L0 基準軸線
H1,H2 水平軸線
O 揺動支点
10 操作部材
11 ダイアルノブ
11a 外側円筒部
11b 内側段付き円筒部
12 ロータ
12b スリット
13 プッシュノブ
13a 天壁部
13b 軸部
13c スイッチ押し下げ部
21 ホルダ
21a 外周部
21b 孔部
22 ベース
22a 本体部
22b 軸部
22c アーム部
22d スイッチ押し下げ部
22e ガイド部
23 ガイド溝部材
23a ガイド溝
31 ケース
31a ベース押さえ部
41 タクトスイッチ(押動検出センサ)
42 タクトスイッチ(揺動検出センサ)
43 フォトインタラプラ(回転検出センサ)
43a 発光部
43b 受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイアルノブおよびロータが同一の中心軸線を有し、かつ一体動作するように結合されてなる操作部材と、
基板に固定されて同基板と直交する基準軸線方向に貫通する円筒状の孔部および球面状の外周部を有するホルダと、
前記ホルダの外周部に摺動可能に支持される中空球面状の本体部、および前記本体部と一体的に形成されて前記中心軸線を軸線とする中空円筒状の軸部を有し、前記軸部にて前記ダイアルノブおよび前記ロータを前記中心軸線回りに回転可能、かつ前記軸部と共に前記ダイアルノブおよび前記ロータを揺動可能に組み込むベースとを備えた複合操作装置であって、
前記基板には、前記ロータの前記中心軸線回りの回転量および回転方向を検出する無接点式の回転検出センサが固定され、かつ前記ベースの揺動支点回りの揺動方向を検出する揺動検出センサが固定されており、
前記ベースの揺動支点は、前記基準軸線上にあり、かつ前記基準軸線と前記中心軸線とが一致する前記ロータの原位置から同ロータが同基準軸線と直交する方向にて前記回転検出センサに最も近づいたときの最大接近量を設定量以下とする位置に設定されていることを特徴とする複合操作装置。
【請求項2】
前記回転検出センサは、前記ロータが前記基準軸線と平行な方向にて前記原位置から最も離れたときの最大離間量を設定量以下とする位置に配置されている請求項1に記載の複合操作装置。
【請求項3】
前記回転検出センサは、前記基板上にて対向配置される発光部および受光部を有する赤外センサであり、前記ベースの揺動支点回りの前記ロータの揺動に対して、前記発光部からの赤外光が前記ロータに形成された凹凸状のスリットを透過して前記受光部に至る透過状態、または前記発光部からの赤外光が前記ロータに形成された凹凸状のスリットにより遮光される遮光状態が切り替わらないように設定されている請求項1または2に記載の複合操作装置。
【請求項4】
前記操作部材は、さらに前記中心軸線方向にスライド移動可能に前記ベースの軸部に組み込まれるプッシュノブを備え、前記基板には、前記プッシュノブの前記中心軸線方向の押動を検出する押動検出センサが固定されており、
前記ベースの揺動支点は、前記ロータの原位置からの揺動に伴う前記プッシュノブの前記中心軸線方向における変位量を設定量以下とする位置に設定されている請求項1〜3に記載の複合操作装置。
【請求項5】
前記押動検出センサは、前記プッシュノブと常時接触した状態にあり、前記プッシュノブの押動操作に応じて接点のオンオフが切り替わるメカニカルスイッチであって、前記ベースの揺動支点回りの前記プッシュノブの揺動に対して、前記接点のオンオフが切り替わらないように設定されている請求項4に記載の複合操作装置。
【請求項6】
前記ベースには、ガイド部が一体的に形成されており、前記ガイド部と、前記基板に設けられたガイド溝部材との協働により、前記ベースが予め設定された所定の方向に揺動可能とされている請求項1〜5に記載の複合操作装置。
【請求項7】
前記ガイド溝部材は、平面視にて前記揺動検出スイッチの外側に配置されている請求項6に記載の複合操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−64638(P2009−64638A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230717(P2007−230717)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】