説明

複合材料の調製方法

本発明は、基材、第1層、および第2層を含む複合材料の調製方法であって、第1化合物を基材上に蒸着させ、それによって第1層を形成する第1蒸着ステップと、およびトリアジン化合物を含む第2化合物を第1層上に蒸着させ、それによって第2層を形成する第2蒸着ステップとを含み、第1および第2蒸着ステップを、第1層が0重量%から10重量%のトリアジン化合物を含むように実施する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、複合材料の調製方法に関する。本発明は、さらに前記方法を実施するための装置に関する。
【0002】
複合材料の調製方法は、国際公開第99/66097号によって知られている。国際公開第99/66097号の方法では、層を基材上に蒸着させる。蒸着させる化合物は、トリアジン化合物を含む。
【0003】
本発明の目的は、追加の特性、バリア特性など改善された特性、またはその組合せを有する複合材料を調製することができる改善された方法を提供することである。
【0004】
前記目的は、
・第1化合物を基材上に蒸着させ、それによって第1層を形成する第1蒸着ステップと、
・トリアジン化合物を含む第2化合物を第1層上に蒸着させ、それによって第2層を形成する第2蒸着ステップと
を含み、
第1および第2蒸着ステップを、第1層が0重量%から10重量%のトリアジン化合物を含むように実施する、基材、第1層、および第2層を含む複合材料の調製方法によって実現する。
【0005】
本発明による方法の利点は、第1蒸着ステップが、実現可能な所望の任意の特性を基材に組み込むことができ、第2蒸着ステップ、しかもトリアジン化合物が第1層中に0重量%から10重量%存在するようなその実施によって、第1層の機能を損なうことなく、バリア特性が基材に与えられることである。
【0006】
本発明による方法では、基材、第1層、および第2層を含む複合材料を調製する。基材は、層の支持体として働く材料である。それは、層が堆積する対象物である。基材は、本質的に均質な材料からなってもよいし、あるいはそれ自体不均質、すなわち複合材料でもよい。基材は、様々な層を含むことができる。基材は、本質的に平坦でもよいし、あるいは複雑な3次元形状を有してもよい。適切な基材の例は、フィルムなどの軟質包装材、成形型、ビンなどの硬質包装材、または予め造形した包装箱である。
【0007】
基材は、ポリマー材料、紙、厚紙、金属、またはセラミックを含むことが好ましい。基材それ自体が、第1層に含まれる化合物に十分に接着しない場合、蒸着ステップの前に、基材の前処理を実施することが必要になることがある。このような前処理の例は、コロナ処理およびプラズマ処理である。
【0008】
本発明による方法は、第1蒸着ステップを含む。このステップは、当技術分野で知られている方法によって実施することができる。第1蒸着ステップを、減圧下、すなわち大気圧未満の圧力下で実施することが好ましい。より好ましくは1000Pa未満、または1Pa未満、さらには0.5Pa未満、最も好ましくは0.001Pa〜0.01Paの圧力で、第1蒸着ステップを実施する。
【0009】
第1蒸着ステップ中では温度勾配が存在する。第1化合物は、それが蒸発するような温度にまで加熱されなければならず、一方基材は、蒸気が接触した後その上に堆積するように十分低い温度でなければならない。これらの状況はすべて、当業者によく知られている。
【0010】
第1蒸着ステップでは、第1化合物を蒸発させる。続いて、蒸気を基材に接触させ、その上に堆積させる。ここでまたこれ以降では、化合物という用語は、純物質、または2種以上の物質の混合物を意味する。第1化合物は、それが働くように意図された目的に適した任意の化合物とすることができる。これらの化合物、およびその意図された目的は、したがって当技術分野で知られている。第1化合物として適した好ましい物質の例は、アルミニウムなどの金属;酸化アルミニウム(AlO)など、金属の堆積後に酸化によって形成可能な金属酸化物;酸化ケイ素(SiO)など他の酸化物である。有機化合物も、第1化合物として働くことができる。好ましい実施形態では、第1化合物は、トリアジン化合物を含まない。
【0011】
堆積した後に、第1化合物は第1層を形成する。第1層の厚さは、意図された目的に応じて異なり、したがって広範囲になり得る。第1層の厚さは、好ましくは100μm未満、より好ましくは10μm未満、さらに好ましくは1μm未満である。最も薄い厚さは、好ましくは少なくとも2nm、より好ましくは少なくとも10nmである。第1化合物の基材に対する接着が十分でないとわかる場合、蒸着ステップの前に基材の前処理の実施が必要になることがある。このような前処理の例は、コロナ処理およびプラズマ処理である。
【0012】
本発明による方法は、第1蒸着ステップに続いて第2蒸着ステップを含む。この第2蒸着ステップは、第1蒸着ステップと同じ原理に従って実施する。すなわち、第2化合物を蒸発させる。次いで、蒸気を輸送し、第1層上に堆積させ、したがって第2層を形成する。第1および第2蒸着ステップは、一つの連続プロセスとして実施してもよいし、あるいは2つの別個の連続プロセスまたは回分プロセスとして実施してもよい。
【0013】
1,3,5−トリアジンの多くが、本発明によるその用途において、気体バリア特性、無毒性、耐引っ掻き性、一定の厚さの透明な層を形成する可能性などいくつかの有益な特性を示すので、第2化合物はトリアジン化合物、好ましくは1,3,5−トリアジンを含む。本発明による方法で第2化合物に利用できるトリアジンの例は、メラミン、メレム、メラム、アンメリン、アンメリド、シアヌル酸、2−ウレイドメラミンと、シアヌル酸メラミンなどのメラミン塩と、アクリレート、エポキシ、ビニルエーテルなどの重合性基で官能化させたメラミンである。第2化合物は、トリアジン化合物の混合物を含むことができ、官能化、樹脂形成、重合、または架橋などその後の化学反応のための化合物など追加の化合物を含むこともできる。
【0014】
蒸着させた場合、トリアジン化合物は、通常は化学的に反応していない。それは、そのとき非樹脂性の結晶形態をとり、通常は1個の単結晶形態ではなく、境界によって隔てられた結晶粒の形態をとる。このような結晶粒は、一般に結晶性化合物では、当業者によく知られている。驚くべきことに、本発明による複合材料の第2化合物によって付与されるバリア特性は、とりわけ堆積させた結晶粒のサイズ、特にトリアジン含有結晶粒のサイズに応じて異なることが判明した。本明細書では、結晶粒径を、1個の結晶粒のうち、基材の表面に平行な(すなわち、上から見える)最大の寸法と定義する。第2層中のトリアジン含有結晶粒のサイズは、バリア特性など重要な特性を決定する上で、第2層の厚さと同じくらい重要となり得る、あるいはそれ以上に重要となることさえあり得る。特定の理論的説明に拘泥するものではないが、最適のバリア特性は、当業者が予想できることに反して、堆積させた層の厚みに焦点を絞るのではなく、結晶粒間の境界の量とサイズに焦点を絞ることによって実現されると考えられる。結晶粒間の境界は、バリア特性を複合材料に与える上で、相対的に弱い場所であると考えられる。したがって、平均結晶粒径が小さすぎる場合、境界が多すぎて、バリア特性が悪影響を受ける。一方、平均結晶粒径が大きすぎる場合、境界領域はそれ自体過度に大きくなり、したがってやはりバリア特性が悪影響を受けると考えられる。平均結晶粒径は、好ましくは少なくとも10nm、より好ましくは少なくとも50nm、さらに好ましくは少なくとも100nm、最も好ましくは少なくとも200nmである。平均結晶粒径は、好ましくは最大2000nm、より好ましくは最大1000nm、さらに好ましくは最大600nm、最も好ましくは最大400nmである。本明細書では、平均結晶粒径は、数平均であることを意味している。好ましい一実施形態では、第2化合物は、本質的にトリアジン化合物からなり、したがってトリアジン結晶構造は、大幅には分断されていない。
【0015】
蒸着させた結晶粒の平均径は、とりわけ結晶粒が成長する表面上の核形成点の数に応じて異なる。核形成点の数が多くなれば、平均結晶粒径は小さくなる。したがって、蒸着させた結晶粒の平均径は、結晶粒がそこから成長する核形成点の数に影響を与える第2蒸着ステップ中のこれらの処理条件を調整することによって変えることができる。本発明によれば、核形成点の数は、堆積温度、すなわちトリアジン含有第2化合物が加熱される温度と、第1層との温度差が増大するとともに、増加することが判明した。また、第2蒸着ステップが行われる圧力が増大する場合、核形成点の数は減少することも判明した。さらに、第1層の性質も、形成されつつある核形成点の数に影響を与えることに留意されたい。したがって、当業者は、先に挙げられた温度差および圧力のパラメータに関する教示を使用して、上記に挙げた範囲内の平均結晶粒径を実現するために、第2蒸着ステップに最適の処理条件はどのようなものかを実験によって決定することができる。
【0016】
非樹脂性結晶の形のトリアジン化合物を含む第2層は、気体バリア特性など所望の特性を示すが、トリアジン化合物を物理的または化学的に変更する後続のステップを実施することが有利となることがある。このような後続のステップの例は、架橋ステップであり、プラズマ、コロナ、UV、または電子ビームによる処理である。架橋ステップでは、トリアジン化合物は、自分自身と、または別の化合物と反応する。前記他の化合物は、第2層に共蒸着させることができ、あるいは第2層が形成された後にそれと接触させることができる。このような他の化合物の例は、ガス状ホルムアルデヒドである。前記後続のステップの実施は、耐引っ掻き性や耐湿性などある種の特定の特性を向上させるために望ましいことがある。
【0017】
第1層の場合と同様に、第2層の厚さは、その意図された目的に応じて広範囲になり得る。第2層の厚さは、好ましくは100μm未満、より好ましくは10μm未満、さらには1μm未満である。最も薄い厚さは、好ましくは少なくとも2nm、より好ましくは少なくとも10nmである。
【0018】
少量のトリアジン化合物が第1層に存在すると、第1化合物の性質および複合材料の所望の特性に応じて有益な効果をもたらすことができるが、第1および第2蒸着ステップの実施中に、トリアジン化合物が第1層の大部分を成さないようにすることが重要である。例えば、第1および第2蒸着ステップを互いの直後に実施し、したがって第1化合物の蒸気と第2化合物の蒸気が互いに混じり合う場合、多量のトリアジン化合物が第1層に存在することになる恐れがある。トリアジン化合物が第1層の大部分となる可能性の別の例は、第2層の蒸着を行うとき第1層がまだ固化していない場合である。第1層は、10重量%を超えるトリアジン化合物を含むべきでない。第1層は、トリアジン化合物を好ましくは5重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらには1重量%未満しか含まない。好ましい一実施形態では、第1層は、本質的にどのトリアジン化合物も含まない。第1層が、第2化合物に含まれているトリアジンを10重量%を超えて含まないようにするために必要とされる技術的措置は、第1および第2蒸着ステップを実施する具体的な方式に応じて異なる。このような措置の例としては、第1化合物の蒸気と第2化合物の蒸気の間にスクリーンなどの物理的バリアを存在させること;2つの蒸気供給源の間に、50cm、100cm、500cm、または好ましくは1000cm、さらには3000cmの間隔が認められるように、十分な間隔を設けること;連続生産の場合に、基材、または一層もしくは複数の層が付いた基材を通過させるのに十分な大きさの開口部のみが認められるように、第1および第2蒸着ステップを個別のチャンバで実施することが挙げられる。後者の場合、2つのチャンバをそれよりも大きいチャンバの中に配置し、したがって系全体の条件、特に圧力に関する条件を制御できることが好ましい場合がある。
【0019】
第1および第2蒸着ステップにおける圧力は、事実上等しいものとすることができる。しかし、本発明による方法の一実施形態では、第2蒸着ステップにおける圧力は、第1蒸着ステップにおける圧力より少なくとも0.0005Pa低いかまたは高い。これは、蒸着ステップを実施するのに最適な圧力が化合物によって異なり、したがってこの実施形態では、各蒸着ステップを特定の化合物に最適の圧力で実施することができるので、有利である。別の利点は、圧力の差別化によって、前後の操作の特徴を考慮に入れることが可能になることである。このような操作の一例は、基材が連続フィルムである場合のフィルムの巻き取りである。このような巻き取りステップを実施する容易さは、圧力に依存することが知られている。さらに、少なくとも一方の蒸着ステップを減圧下で実施する場合、両方の蒸着ステップを最低圧力、すなわち最高の真空度で実施する必要はなく、したがって最高の真空度を実現するのに必要とされる厳しい技術的措置は、一方の蒸着ステップでしか必要でない。第2蒸着ステップは、第1蒸着ステップより、好ましくは少なくとも0.005または0.01Pa、より好ましくは少なくとも0.1Pa、さらには少なくとも1Pa高いかまたは低い。第1と第2の蒸着ステップ間の圧力差は、100000Pa、好ましくは10000Pa、より好ましくは1000Paより大きくないことが一般に望ましい。第1および第2蒸着ステップにおける圧力条件の選択をする代替の一実施形態では、2つのステップ間の圧力差が、少なくとも5倍、好ましくは10倍、より好ましくは25倍である。
【0020】
本発明の一実施形態では、第1層がガスバリアまたは流体バリアを提供するような第1化合物を選択する。アルミニウムやその酸化物など金属および/または金属酸化物は、このようなバリア作用を提供する適切な物質の例である。この方式では、第1および第2層の組み合わされたバリア作用によって、複合材料のバリア特性の保証の強化が行われ、特に引っ掻きまたはその他の損傷が生じた場合、第2層も保護層として働く。
【0021】
本発明による方法の好ましい一実施形態では、前記方法を1000Pa未満の圧力で実施する。圧力は、好ましくは10Pa以下、より好ましくは1×10−1Pa以下、より好ましくは4×10−3Pa以下、さらに好ましくは5×10−4Pa以下、最も好ましくは1×10−4Pa以下、さらには5×10−5Pa以下である。第2蒸着ステップを、第1蒸着ステップの直後またはすぐ後、すなわち5分以内、または1分以内、または45秒以内、さらには30秒以内、特に20または10秒以内、最も具体的には5秒以内、さらには2秒以内に実施することが好ましい。2つの蒸着ステップを短時間で実施することを確実にする一方法は、2つのステップが1個の真空チャンバ、または隣接する2つの真空チャンバで実施され、基材が、コンベヤーベルトなど知られた手段、またはシステム、あるいは基材がフィルムである場合はロールによって輸送される連続または半連続方法によるものである。第1蒸着ステップ中は、基材を、温度Tの第1冷却表面に接触させる。基材がフィルムの形態をとる場合、第1冷却表面は、通常はコーティングドラムとも呼ばれる温度調整ロールの形態をとる。通常、温度は、蒸着させない基材の一部分を、基材がフィルムの場合は温度調整ロール、またはコーティングドラムなどの冷却面または加熱面と接触させることによって調整する。本発明に関しては、フィルムは、厚さが最高2000μm、好ましくは最高1000μm、特に最高800μm、最も好ましくは最高500μmの本質的に平坦な基材を意味する。実際には、10μm〜50μmの領域のフィルムの厚さも極めて一般的である。
【0022】
第1蒸着ステップ中は、基材の温度は、第1冷却表面の影響を受けて変化する。基材の温度は、第1化合物が基材上に堆積するときの温度の影響も受ける。第1化合物の性質に応じて、この影響が著しくなる恐れがある。例えば、アルミニウムような金属は、通常は1000℃をはるかに超えた温度で蒸発する。第1冷却表面との接触の結果として、また第1化合物に存在するときの熱エネルギーの結果として、第1層付き基材は、第1蒸着ステップの終了後に、その結果の平均的温度を有する。続いて、第1層付き基材は、第2蒸着ステップに進む。この時点における第1層付き基材の平均温度を、本明細書では温度TS1と定義する。第2蒸着ステップ中は、第1層付き基材を、温度Tの第2冷却表面に接触させる。本発明によるこの実施形態では、TS1とTの差が50℃未満になるように、Tを選択すべきである。驚くべきことに、第2蒸着ステップ中にTS1とTの差が減少すると、第2層と第1層の間の接着が向上することが判明した。したがって、本発明によるこの実施形態の利点は、改善された特性、特に第1層と第2層の間の接着に関する特性が改善された複合材料が得られることである。TS1とTの差が30℃未満、または20℃未満、特に10℃未満、さらには5℃になるように、Tを選択することが好ましい。
【0023】
上記のことから、Tの設定レベルが、TS1に影響を及ぼすことは当業者に明らかであろう。特に、第1蒸着ステップと第2蒸着ステップの実施の間隔が好ましくは短時間である点、かつ蒸着ステップを実施するのが減圧であり、第1層付き基材とその周辺雰囲気との熱交換が大幅に低減される点からそうである。したがって、Tの設定レベルは、その結果設定しなければならないTのレベルにも影響を及ぼす。Tを下げると、他の状況がすべて同じであれば、第1蒸着ステップ中に基材がより強力に冷却されることになり、したがってTS1もより低くなり、それによってTの操作領域がより低い温度レベルに設定されることになろう。Tは、Tが好ましくは−20℃〜+75℃、より好ましくは−10℃〜+60℃、特に0℃〜+50℃になり得るように選択する。これには、例えばポリマーフィルムを含む基材など非常に高いまたは低い温度に耐えることができない基材を、本発明による方法で処理することができるという利点がある。
【0024】
当業者に知られているように、例えば基材を接触させる冷却表面、および/または基材を冷却表面と接触させる時間を増大または低減させることによって、ある確定したTが結果的に得られる基材温度に及ぼす効果に影響を与えることが可能である。好ましくは、当業者に知られているこれらおよび他の重要なパラメータは、Tが−30℃〜+30℃、特に−15℃〜+20℃となることができ、Tが、−20℃〜+75℃、より好ましくは−10℃〜+60℃、特に0℃〜+50℃となることができるように選択する。これには、第1冷却表面の温度を設定するために必要とされる温度調整措置が、一般に使用されるパラメータの範囲内であるという利点がある。
【0025】
第1化合物は、アルミニウム、酸化アルミニウム、または酸化ケイ素を含み、さらには本質的にそれからなることが好ましく、第2化合物は、メラミンを含み、さらには本質的にそれからなることが好ましい。
【0026】
本発明による方法の代替実施形態では、平均温度TS1の第1層付き基材を、第2蒸着ステップ中に、調整可能な温度Tの第2冷却表面と接触させ、それによってプロセスを、TS1とTの差が30℃未満に維持されるように操作する。好ましくは、前記TS1とTの差を10℃未満、特に5℃未満に維持する。先の実施形態と同様に、TS1とTの差が減少すると、第1層と第2層の接着が向上するという利点がある。先の実施形態に比べて、この実施形態には、第1蒸着ステップを第1蒸着ステップとはより無関係に操作することが可能になるという利点がある。したがって、例えば第1層付きの基材が第2蒸着ステップに入る時その温度を調整することが可能となり得る。TS1は、Tが好ましくは−20℃〜+75℃、より好ましくは−10℃〜+60℃、特に0℃〜+50℃となることができるように調整する。
【0027】
第2蒸着ステップが完了した直後に、ここで調製した複合材料は、平均温度Tを有する。特定の状況に応じて、Tは、室温を超えていることがある。そういう場合には、第2蒸着ステップに続いてすぐに、Tを周囲温度まで下げる冷却ステップを実施することが好ましい。この冷却ステップは、周囲空気への暴露、または温度調整空気への暴露など、それ自体公知の技法によって実施することができる。この実施形態では、Tを下げる冷却速度は、10℃/時以下とすべきである。これには、亀裂形成などによって複合材料自体の構造を大幅に劣化させることなく、複合材料に存在する任意の熱応力を緩和することができるという利点がある。これは、特に第1化合物が金属などの非有機化合物を含む場合重要である。冷却速度は、8℃または5℃/時以下であることが好ましく、冷却速度は、3℃/時以下であることがより好ましい。
【0028】
本発明による方法の別の実施形態では、基材および第1層を、第2蒸着ステップの前、またはその間に機械的負荷ステップにかける。本明細書では、機械的負荷ステップは、基材に加えられた外部応力の結果として基材を物理的に変形させるステップであると理解されるが、基材に関する限り、変形は永久でないことが好ましい。機械的負荷ステップの例は、引張り、曲げ、湾曲、およびねじりである。基材がフィルムの場合、機械的負荷ステップの例は、ロールへのフィルムのガイドである。基材を、好ましくは少なくとも0.3%、より好ましくは少なくとも0.5%または1%、最も好ましくは少なくとも3%変形する。複合材料の構造上の損傷を回避するために、基材を好ましくは100%以下、より好ましくは50%以下、最も好ましくは25%以下変形する。機械的負荷ステップ中に、基材および第1層に、実施の場合と同様に機械的応力をかける。前記応力の結果として、第1層に小欠陥が生じる恐れがある。機械的負荷ステップが第2蒸着ステップの前またはその間に行われるので、これらの欠陥は第2化合物で覆われる。この方式では、複合材料がその用途で応力にかけられた場合に、例えば気体バリア特性など第1化合物でも第2化合物でも求められるある種の特性、および特に第2化合物で求められる特性がよりよく保存されるように、本発明による複合材料を実施向けに前処理する。
【0029】
本発明による複合材料の調製方法の別の実施形態は、第3層、さらにはもっと別の層を第2層上に適用するステップを含む。第3層またはそれ以上の層の存在は、例えば装飾用途または保護に関する特性、電気導電率、および/または極性などの化学的性質など、複合材料について追加のもしくは異なる特性が必要である場合に望ましいものとなり得る。第2層上に適用される第3層またはそれ以上の層の例は、第3層として印刷層、第4層として接着層、第5層として密封層である。第3層またはそれ以上の層を、例えば蒸着、被覆、積層など適切な任意の手段によって適用することができる。
【0030】
本発明による方法を実施する装置は、トリアジン化合物が10%以下しか第1層に存在しないことが保証されるようにある種の要件を満たすべきである。したがって、本発明は、第1化合物、および第2化合物を蒸発させる手段と、第1化合物と第2化合物を蒸着中に分離する手段とを備えるような装置にも関する。これらの手段は、とりわけ化合物の性質に応じて様々な形をとり得る。前記手段の例は、第1化合物と第2化合物の蒸発手段の間隔が少なくとも50、100、または1000cmであること;第1化合物と第2化合物の蒸発手段の間にバリアを設けること;第1および第2蒸着ステップを実施するためのチャンバを個別に設けることである。
【0031】
機械的負荷ステップを基材に実施する場合には、本発明による方法を実施する装置は、前記機械的負荷ステップを適用するための手段を備えるべきである。このような手段の例は、基材が本質的に平坦である場合、ロールまたは一連のロールである。
【0032】
本発明を、以下の実施例および比較実験によってさらに説明する。
[実施例1]
【0033】
基材として、厚さ12μmの延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムを選択した。OPPフィルム上に、第1化合物であるアルミニウムを蒸着させた。第1および第2蒸着ステップを回分法ステップとして実施した。第2化合物は、メラミン(供給業者:DSM)からなるものであった。メラミンの堆積温度は、310℃であった。第2蒸着ステップ中の圧力は、10−5Paであった。基材および第1層は、温度−20℃であった。第2層は、厚さ140nmであった。平均結晶粒径は60nmであった。アルミニウム層は、メラミンを0%含んでいた。上記に記載したように調製した複合材料について、酸素透過度(OTR)を0%相対湿度(RH)で測定した。OTRは、通例立方センチメートル/平方メートル/日(cc/m.日)で表す。OTR値が低くなれば、酸素に関するバリア特性は良好になる。本発明による複合材料のOTRは、10cc/m.日であると決定した。
[比較実験1]
【0034】
アルミニウムの第1層しか堆積させない、すなわち第2蒸着ステップを実施しない点を除いて、実施例1と同じ条件で処理したOPPフィルムのOTRを、0%RHで測定し、18cc/m.日であると決定した。この比較実験によって、蒸着させるアルミニウムが優れたバリア特性をOPPフィルムなどの基材に与えることが知られている場合でさえ、驚くべきことに、本発明による複合材料はバリア特性をさらにもっと向上させることが示されている。
[比較実験2]
【0035】
メラミンをOPPフィルム上に蒸着させた。メラミンの蒸着温度は310℃であった。この複合材料のOTRを0%RHで測定し、80cc/m.日であると決定した。この値は、すでに、約1600cc/m.日であることが知られているOPPフィルムそれ自体のOTRより大幅に良好である。しかし、このOTRは、実施例1の本発明による複合材料のOTRより大幅に不良である。
[比較実験3]
【0036】
比較実験2で調製された複合材料のOTRを50%RHで測定し、200cc/m.日を超えると決定された。この結果は、OPPフィルムが基材でありかつメラミンが基材上に直接蒸着されている複合材料のバリア特性が湿度によって悪影響を受けていることを示唆している。
[実施例2]
【0037】
実施例1で調製された複合材料OTRを50%RHで測定し、10.2cc/m.日であると決定した。この実施例は、アルミニウムが第1化合物として選択されかつメラミンが第2化合物として選択された本発明による複合材料のバリア特性は、相対湿度の大幅な変動の影響を受けないことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、第1層、および第2層を含む複合材料の調製方法であって、
第1化合物を基材上に蒸着させ、それによって第1層を形成する第1蒸着ステップと、
トリアジン化合物を含む第2化合物を第1層上に蒸着させ、それによって第2層を形成する第2蒸着ステップと
を含み、
第1および第2蒸着ステップを、第1層が0重量%から10重量%のトリアジン化合物を含むように実施する方法。
【請求項2】
第1化合物が金属を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1化合物が、アルミニウム、酸化アルミニウム、または酸化ケイ素を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第2層中のトリアジン化合物が結晶質である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第1化合物がアルミニウムを含み、第2化合物がメラミンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記方法を1000Pa未満の圧力で実施し、
基材を、第1蒸着ステップ中に、温度Tの第1冷却表面と接触させ、それによって第2蒸着ステップに進入時に得られる基材の平均温度を温度TS1とし、
基材を、第2蒸着ステップ中に、温度Tの第2冷却表面と接触させ、それによってTを、TS1とTの差が30℃未満になるように選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
を、TS1とTの差が10℃未満、特に5℃未満となるように選択する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
を、Tが−10℃〜+60℃、特に0℃〜+50℃となるように選択する請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
が、−30℃〜+30℃、特に−15℃〜+20℃である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
平均温度TS1の第1層付き基材を、第2蒸着ステップ中に、調整可能な温度Tの第2冷却表面と接触させ、それによってプロセスを、TS1とTの差が30℃未満に維持されるように操作する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記TS1とTの差を10℃未満、特に5℃未満に維持する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
S1を、Tが−10℃〜+60℃、特に0℃〜+50℃となり得るように調整する請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
第2蒸着ステップの直後に、冷却ステップで、複合材料の温度Tを10℃/時以下で周囲温度まで下げる請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
冷却ステップで、Tを5℃/時以下、特に3℃/時以下で下げる請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第2蒸着ステップにおける圧力が、第1蒸着ステップにおける圧力より少なくとも0.005Pa低いかまたは高い請求項6に記載の方法。
【請求項16】
基材および第1層を、第2蒸着ステップの前またはその間に、機械的負荷ステップにかける請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
トリアジン化合物を架橋するステップを含む請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
基材、第1層、または第2層をプラズマ処理するステップを含む請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
第3層を第2層の上面に設けるステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項の方法によって得ることができる複合材料。

【公表番号】特表2007−503529(P2007−503529A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532115(P2006−532115)
【出願日】平成16年5月10日(2004.5.10)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000312
【国際公開番号】WO2004/101843
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】