説明

複合材料シート製造機および複合材料シートの製造方法

【課題】塗工液の乾燥時間の更なる短縮化と基材の熱変形の更なる抑制とによって、製造効率および歩留まりを向上させることができる複合材料シート製造機および複合材料シートの製造方法を提供すること。
【解決手段】熱風乾燥炉3内における熱風による塗工液の乾燥を、逆転温度よりも低温の雰囲気温度の下で行い、熱処理炉5内における過熱蒸気による塗工液の乾燥および硬化を、逆転温度よりも高温の雰囲気温度の下で行うこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料シート製造機および複合材料シートの製造方法に係り、特に、基材上に塗工液を硬化してなる塗工層を備えた複合材料シートを製造するのに好適な複合材料シート製造機および複合材料シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基材上に塗工技術を用いて形成された塗工層を備えた複合材料シートが、種々の用途に利用されている。例えば、PET、PEN、PES、ブチラールまたはナイロン等の樹脂材料を基材としたものは、耐熱性フィルムや電子用カバーレイフィルム等に利用されている。
【0003】
この種の複合材料シートの製造に際しては、例えば、特許文献1に示すように、長尺の基材を、ローラ等の搬送装置によって塗工位置まで搬送し、この塗工位置に搬送された基材上に、ダイコートやグラビアコート等の塗工方法を用いて塗工液を塗布するようになっていた。そして、塗工液が塗布された基材を搬送装置によって炉内に搬送した上で、この炉内において基材上の塗工液をヒータを用いて加熱することによって、塗工液を乾燥硬化するようになっていた。このようにして、基材上に塗工液を硬化してなる塗工層が形成された複合材料シートが得られるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−231149号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】特願2008−318144号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような複合材料シートを効率的に製造するためには、炉内における塗工液の乾燥を短時間のうちに十分に行うようにすることが有効である。しかしながら、単純に炉内の雰囲気温度を高めただけでは、基材の種類によっては基材に大きな熱変形が生じてしまうことによって、複合材料シートを適切に製造することができなくなってしまう。
【0007】
ここで、出願人は、非特許文献1において、基材上に塗布された塗工液(有機溶液)の乾燥を過熱蒸気によって行う複合材料シート製造機を提案している。この複合材料シート製造機によれば、過熱蒸気によって基材上の塗工液に対して瞬時に大きな熱エネルギを付与することができるので、基材の熱変形を抑制しつつ塗工液を短時間のうちに乾燥することができる。
【0008】
本発明は、このような過熱蒸気を用いた塗工液の乾燥の利点を活かしつつも、塗工液の乾燥時間の更なる短縮化と基材の熱変形の更なる抑制とを図るべくなされたものである。すなわち、本発明は、塗工液の乾燥時間の更なる短縮化と基材の熱変形の更なる抑制とを両立させることによって、製造効率および歩留まりを向上させることができる複合材料シート製造機および複合材料シートの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、本発明に係る複合材料シート製造機は、連続した基材上に塗工液を塗布した後に、この塗布された塗工液を乾燥して硬化することによって、前記基材上に前記塗工液が硬化されてなる塗工層を備えた複合材料シートを製造する複合材料シート製造機において、前記基材をその長手方向に搬送する搬送装置と、この搬送装置による前記基材の搬送経路上に配設され、前記搬送装置によって搬送される前記基材上に前記塗工液を塗布する塗工装置と、前記基材の搬送経路上における前記塗工装置の下流側に、前記塗工装置による前記塗工液の塗布後の前記基材をその長手方向において搬入および搬出自在に配設された熱風乾燥炉と、この熱風乾燥炉内に熱風を供給することによって、前記熱風乾燥炉内に搬入された前記基材上の前記塗工液を加熱して乾燥する熱風供給装置と、前記基材の搬送経路上における前記熱風乾燥炉の下流側に、前記熱風乾燥炉における前記塗工液の乾燥後の前記基材をその長手方向において搬入および搬出自在に配設された熱処理炉と、この熱処理炉内に過熱蒸気を供給することによって、前記熱処理炉内に搬入された前記基材上の前記塗工液を加熱して乾燥および硬化する過熱蒸気供給装置とを備え、その温度よりも低温の雰囲気温度の下では乾燥空気雰囲気下における希釈溶液または溶液の蒸発速度が過熱蒸気雰囲気下における前記蒸発速度より速くなり、その温度よりも高温の雰囲気温度の下では前記過熱蒸気雰囲気下における前記蒸発速度が前記乾燥空気雰囲気下における前記蒸発速度より速くなるような温度である逆転温度よりも低温の雰囲気温度の下で、前記熱風乾燥炉内における前記塗工液の乾燥を行い、前記逆転温度よりも高温の雰囲気温度の下で、前記熱処理炉内における前記塗工液の乾燥および硬化を行うことを特徴としている。
【0010】
そして、このような構成によれば、熱風乾燥炉内における熱風による塗工液の乾燥を逆転温度よりも低温の雰囲気温度の下で行い、熱処理炉内における過熱蒸気による塗工液の乾燥および硬化を逆転温度よりも高温の雰囲気温度の下で行うことによって、塗工液の乾燥時間を従来よりも短縮することができるとともに、基材の熱変形を従来よりも有効に抑制することができる。
【0011】
また、本発明に係る複合材料シートの製造方法は、連続した基材上に塗工液を塗布した後に、この塗布された塗工液を乾燥して硬化することによって、前記基材上に前記塗工液が硬化されてなる塗工層を備えた複合材料シートを製造する複合材料シートの製造方法において、前記基材をその長手方向に搬送する前記基材の搬送経路上において、搬送される前記基材上に前記塗工液を塗布し、次いで、前記基材の搬送経路上における前記塗工液の塗布が行われた位置に対する下流側の位置において、その温度よりも低温の雰囲気温度の下では乾燥空気雰囲気下における希釈溶液または溶液の蒸発速度が過熱蒸気雰囲気下における前記蒸発速度より速くなり、その温度よりも高温の雰囲気温度の下では前記過熱蒸気雰囲気下における前記蒸発速度が前記乾燥空気雰囲気下における前記蒸発速度より速くなるような温度である逆転温度よりも低温の雰囲気温度の下で、前記基材上の前記塗工液を熱風によって加熱して乾燥し、次いで、前記基材の搬送経路上における前記塗工液の熱風による乾燥が行われた位置に対する下流側の位置において、前記逆転温度よりも高温の雰囲気温度の下で、前記基材上の前記塗工液を過熱蒸気によって加熱して乾燥および硬化することを特徴としている。
【0012】
そして、このような方法によれば、熱風による塗工液の乾燥を逆転温度よりも低温の雰囲気温度の下で行い、過熱蒸気による塗工液の乾燥および硬化を逆転温度よりも高温の雰囲気温度の下で行うことによって、塗工液の乾燥時間を従来よりも短縮することができるとともに、基材の熱変形を従来よりも有効に抑制することができる。
【0013】
さらに、前記基材を樹脂材料によって形成してもよい。
【0014】
そして、このような方法によれば、基材を金属に比べれば相対的に熱による変形が大きい樹脂材料によって形成することによって、基材の熱変形の抑制効果は更に大きなものとなる。
【0015】
さらにまた、前記熱風による前記塗工液の乾燥を、前記基材のガラス転移温度よりも低温の雰囲気温度の下で行うようにしてもよい。
【0016】
そして、このような方法によれば、基材の熱変形を更に有効に抑制することができる。
【0017】
また、前記基材をポリエチレンナフタレートによって形成し、前記過熱蒸気による前記塗工液の乾燥および硬化を、前記基材の融点よりも12℃低温の雰囲気温度からこれよりも低温側にわたる所定の温度範囲内に属する雰囲気温度の下で行うようにしてもよい。
【0018】
そして、このような方法によれば、過熱蒸気による塗工液の乾燥および硬化を、ポリエチレンナフタレートからなる基材の熱変形を確実に抑制しつつ十分な高温下で行うことができるので、塗工液の乾燥時間を更に短縮することができる。
【0019】
さらに、前記基材をポリエチレンテレフタレートによって形成し、前記過熱蒸気による前記塗工液の乾燥および硬化を、前記基材の融点よりも30℃低温の雰囲気温度からこれよりも低温側にわたる所定の温度範囲内に属する雰囲気温度の下で行うようにしてもよい。
【0020】
そして、このような方法によれば、過熱蒸気による塗工液の乾燥および硬化を、ポリエチレンテレフタレートからなる基材の熱変形を確実に抑制しつつ十分な高温下で行うことができるので、塗工液の乾燥時間を更に短縮することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、塗工液の乾燥時間の短縮化と基材の熱変形の抑制とを両立させることができ、ひいては、製造効率および歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る複合材料シート製造機の実施形態を示す構成図
【図2】本発明に係る複合材料シート製造機の実施形態において、過熱蒸気供給装置を示す拡大図
【図3】本発明に係る複合材料シート製造機および複合材料シートの製造方法の実施形態において、複合材料シートの一例を示す側面図
【図4】本発明に係る複合材料シート製造機および複合材料シートの製造方法の実施形態において、蒸発速度の温度特性を示すグラフ
【図5】本発明に係る複合材料シート製造機および複合材料シートの製造方法の実施形態において、MD方向に延伸されたPENからなる基材についての熱変形特性を示すグラフ
【図6】本発明に係る複合材料シート製造機および複合材料シートの製造方法の実施形態において、TD方向に延伸されたPENからなる基材についての熱変形特性を示すグラフ
【図7】本発明に係る複合材料シート製造機および複合材料シートの製造方法の実施形態において、MD方向に延伸されたPETからなる基材についての熱変形特性を示すグラフ
【図8】本発明に係る複合材料シート製造機および複合材料シートの製造方法の実施形態において、TD方向に延伸されたPETからなる基材についての熱変形特性を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る複合材料シート製造機および複合材料シートの製造方法の実施形態について、図1乃至図8を参照して説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態における複合材料シート製造機1は、基材送り出し室2と、この基材送り出し室2に連通された熱風乾燥炉3と、この熱風乾燥炉3に第1の連通部4を介して連通された熱処理炉としてのキュア炉5と、このキュア炉5に第2の連通部6を介して連通されたシート巻き取り室7とを有している。なお、熱風乾燥炉3とキュア炉5とは、それぞれ脚部9を介して複合材料シート製造機1の設置面よりも鉛直上方に離間した位置に設置されている。
【0025】
図1に示すように、基材送り出し室2内には、扁平な連続した(長尺な)基材8が巻回収容された送り出しロール10が回転自在に配設されており、この送り出しロール10は、基材8をその搬送方向における下流側へと送り出すようになっている。この送り出しロール10は、シート巻き取り室7内に配設された後述する巻き取りロール12とともに基材8の搬送装置を構成するようになっている。なお、基材8としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ブチラールまたはナイロン等の樹脂材料からなる基材や、銅箔やアルミ箔等の金属箔からなる基材を用いることができる。
【0026】
また、図1に示すように、基材送り出し室2の内部における送り出しロール10に対して基材8の搬送方向の下流側の位置には、基材送り出し室2内における搬送装置による基材8の搬送経路を形成する複数個のガイドローラ11が回転自在に配設されている。そして、送り出しロール10から送り出された基材8は、各ガイドローラ11に順次巻回されて搬送を保持されるようにして下流側に搬送されるようになっている。なお、各ガイドローラ11の中には、基材8にテンションを付与するように付勢されたガイドローラ11Aも含まれている。また、基材送り出し室2内における基材8の搬送経路は、水平方向における複合材料シート製造機1の外側方向に向かった後に水平方向における複合材料シート製造機1の内側方向かつ鉛直上方向に折り返すような搬送経路に形成されており、これによって基材送り出し室2の省スペース化が可能となっている。
【0027】
さらに、図1に示すように、基材送り出し室2内における基材8の搬送経路上には、塗工装置14が配設されており、この塗工装置14は、送り出しロール10によって送り出される基材8上に塗工液を塗布するようになっている。
【0028】
なお、塗工液としては、例えば、セラミックスラリーを用いることができる。このセラミックスラリーは、セラミック粉末と、トルエン、イソプロピルアルコール(IPA)等の有機溶剤等からなる溶媒と、エチルセルロース、アクリル樹脂またはポリビニルブチラール等からなるバインダとによって構成される。また、この他にも、塗工液としては、例えば、イミド系樹脂の一つであるポリイミド樹脂(PI)の前駆体としてのアミック酸溶液を用いることができる。このアミック酸溶液は、酸無水物とジアミンの重合体からなる有機溶剤と、溶媒としての高沸点水溶性溶剤の一種であるNMP(N−メチル−2−ピロリドン)とによって構成される。さらに、この他にも、塗工液としては、リチウムイオン電池の電極の活物質のペースト(例えば、コバルト酸リチウムにバインダを混入したもの等)や、スーパーキャパシタの形成に用いられる塗工液を採用することができる。塗工液の種類は、基材8の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0029】
また、塗工装置14としては、ダイコータ、リバースコータ、ナイフコータもしくはグラビアロールの直径が50mm以下のマイクログラビアコータ等を用いることができる。ただし、基材8としてポリイミド樹脂製のものを用いる場合には、ポリイミド樹脂の吸水性が強く、空気を巻き込むと基材8が粘度の変化を起こしたり白濁化を起こすことによって品質が劣化する可能性が高いので、空気が触れないダイコータを用いることが好ましい。
【0030】
そして、このような基材送り出し室2内を搬送された基材8は、基材送り出し室2を出て熱風乾燥炉3の内部に搬入されるようになっている。図1に示すように、熱風乾燥炉3は、複合材料シート製造機1全体の基材8の搬送経路上における塗工装置14の下流側に配設されており、この熱風乾燥炉3は、塗工装置14によって塗工液が塗布された基材8を、その長手方向において搬入および搬出自在とされている。
【0031】
図1に示すように、熱風乾燥炉3内には、複数個のガイドローラ15が回転自在に配設されており、これらのガイドローラ15は、熱風乾燥炉3における搬入口3aから排出口3bに向かって間隔を設けるようにして配置されている。そして、これら複数個のガイドローラ15によって、熱風乾燥炉3内における基材8の搬送経路が形成されている。すなわち、熱風乾燥炉3内に搬入された基材8は、その塗工液が塗布された塗布面を鉛直上方に向けるとともに、塗布面に対向する底面を熱風乾燥炉3内の各ガイドローラ15に順次保持されるようにして下流側に向かって搬送されるようになっている。
【0032】
また、図1に示すように、熱風乾燥炉3内における各ガイドローラ15に対する上部対向位置には、第1の熱風供給装置16および第2の熱風供給装置17からなる2台の熱風供給装置16,17が、互いに基材8の搬送方向に間隔を設けるようにして配設されている。
【0033】
第1の熱風供給装置16は、熱風乾燥炉3内の上流側に熱風を供給することによって、熱風乾燥炉3内における上流側の搬送経路上を搬送される基材8上の塗工液を加熱して乾燥するようになっている。第1の熱風供給装置16の具体的な構成について述べると、図1に示すように、第1の熱風供給装置16は、熱風乾燥炉3内における基材8の搬送経路に平行とされた第1の熱風用ノズル部18を有している。この第1の熱風用ノズル部18は、熱風乾燥炉3内における上流側の搬送経路上の基材8に対してその塗工面側(図1における上方)において近接する位置に配置されている。第1の熱風用ノズル部18における上部には、第1の熱風供給管20が連結されており、この第1の熱風供給管20は、熱風乾燥炉3における上壁部に形成された第1の開孔3cを介して熱風乾燥炉3の外部に突出されている。また、図1に示すように、第1の熱風供給管20における上端部には、第1の熱風の流路21を介して第1の送風加熱部22が連結されており、この第1の送風加熱部22には、不図示の第1の送風ファンが連結されている。このような第1の熱風供給装置16においては、第1の送風ファンによって発生した風が、第1の送風加熱部22において加熱された上で、熱風として第1の熱風供給管20内に流入するようになっている。そして、第1の熱風供給管20内に流入した熱風は、第1の熱風供給管20から第1の熱風用ノズル部18へと供給された後に、この第1の熱風用ノズル部18によって図1における下方へと噴射されるようになっている。これにより、第1の熱風用ノズル部18に臨む基材8上の塗工液に熱風が上方から吹き付けられるようになっている。なお、第1の送風加熱部22は、第1の送風ファンから送られた風を、ニクロム線等の熱抵抗体を用いた電気加熱によって加熱するものであってもよい。
【0034】
一方、第2の熱風供給装置17は、熱風乾燥炉3内の下流側に熱風を供給することによって、熱風乾燥炉3内における下流側の搬送経路上を搬送される基材8上の塗工液を加熱して乾燥するようになっている。図1からも分かるように、第2の熱風供給装置17は、第1の熱風供給装置16における熱風による乾燥が行われた塗工液に対して、更なる熱風による乾燥を行うようになっている。第2の熱風供給装置17の具体的な構成は、第1の熱風供給装置16と同様とされている。すなわち、図1に示すように、第2の熱風供給装置17は、熱風乾燥炉3内における基材8の搬送経路に平行とされた第2の熱風用ノズル部25を有しており、この第2の熱風用ノズル部25は、熱風乾燥炉3内における下流側の搬送経路上の基材8に対してその塗工面側において近接する位置に配置されている。第2のノズル部18における上部には、第2の熱風供給管26が連結されており、この第2の熱風供給管26は、熱風乾燥炉3における上壁部に形成された第2の開孔3dを介して熱風乾燥炉3の外部に突出されている。また、図1に示すように、第2の熱風供給管26における上端部には、第2の熱風の流路27を介して第2の送風加熱部28が連結されており、この第2の送風加熱部28には、不図示の第2の送風ファンが連結されている。第2の熱風供給装置17においては、第2の送風ファンによって発生した風が、第2の送風加熱部28において加熱された上で、熱風として第2の熱風供給管26内に流入するようになっている。そして、第2の熱風供給管26内に流入した熱風は、第2の熱風供給管26から第2の熱風用ノズル部25へと供給された後に、この第2の熱風用ノズル部25によって図1における下方へと噴射されるようになっている。これにより、第2の熱風用ノズル部25に臨む基材8上の塗工液に熱風が上方から吹き付けられるようになっている。なお、第2の送風加熱部28は、第1の送風加熱部22と同様に、第2の送風ファンから送られた風を、ニクロム線等の熱抵抗体を用いた電気加熱によって加熱するものであってもよい。
【0035】
そして、このような熱風乾燥炉3内における熱風による塗工液の乾燥が行われた基材8は、排出口3bを通って熱風乾燥炉3から排出された後に、第1の連通部4を経てキュア炉5内に搬入されるようになっている。
【0036】
図1に示すように、キュア炉5は、複合材料シート製造機1全体の基材8の搬送経路上における熱風乾燥炉3の下流側に配設されており、このキュア炉5は、熱風乾燥炉3内における塗工液の乾燥が行われた基材8を、その長手方向において搬入および搬出自在とされている。
【0037】
図1に示すように、キュア炉5の内部には、複数個のガイドローラ31が回転自在に配設されており、これらのガイドローラ31は、キュア炉5における搬入口5aから排出口5bに向かって間隔を設けるようにして配置されている。そして、これら複数個のガイドローラ31によって、キュア炉5内における基材8の搬送経路が形成されている。すなわち、キュア炉5内に搬入された基材8は、その塗布面を鉛直上方に向けるとともに、その底面をキュア炉5内の各ガイドローラ31に順次保持されるようにして下流側に向かって搬送されるようになっている。
【0038】
また、図1に示すように、キュア炉5内における各ガイドローラ31に対する上部対向位置には、過熱蒸気供給装置32が配設されており、この過熱蒸気供給装置32は、キュア炉5内に過熱蒸気を供給することによって、キュア炉5内に搬入された基材8上の塗工液を、低酸素雰囲気下で加熱して乾燥および硬化するようになっている。ここで、低酸素雰囲気としては、例えば、酸素濃度が500PPM以下(より好ましくは100PPM以下)の雰囲気を挙げることができる。なお、過熱蒸気の理論上の酸素濃度は5PPMとされているが、このような過熱蒸気の理論上の酸素濃度の雰囲気を実現することができるのであれば、このような酸素濃度が5PPMの雰囲気を低酸素雰囲気として採用するようにしてもよい。
【0039】
過熱蒸気供給装置32の具体的な構成について述べると、図1に示すように、過熱蒸気供給装置32は、キュア炉5内における基材8の搬送方向下流側に向かって順次連設された第1の過熱蒸気用ノズル部34、第2の過熱蒸気用ノズル部35、第3の過熱蒸気用ノズル部36および第4の過熱蒸気用ノズル部37からなる4個の過熱蒸気用ノズル部34,35,36,37を有している。第1の過熱蒸気用ノズル部34における上部には、第1の分岐管39が、第2の過熱蒸気用ノズル部35における上部および第3の過熱蒸気用ノズル部36における上部には、第2の分岐管40が、第4の過熱蒸気用ノズル部37における上部には、第3の分岐管41がそれぞれ連結されている。これら第1〜第3の分岐管39,40,41は、その上流側の端部において1本の過熱蒸気供給管42としてまとめられている。なお、過熱蒸気供給管42は、キュア炉5における上壁部に形成された開孔5cを介してキュア炉5の外部に突出されている。また、図2に示すように、過熱蒸気供給管42における上端部には、過熱蒸気の流路43を介して過熱蒸気発生ユニット45が連結されており、この過熱蒸気発生ユニット45には、図示しない蒸気ボイラによって生成された湿り蒸気が所定の流速で供給されるようになっている。
【0040】
そして、このような構成を有する過熱蒸気供給装置32は、まず、過熱蒸気発生ユニット45に供給された湿り蒸気を過熱蒸気発生ユニット45によって加熱することによって、過熱蒸気を発生させるようになっている。なお、過熱蒸気発生ユニット45は、例えば、流入口および吐出口を有する筒状の導電体の外側に巻回したコイルに高周波交流電流を流すことによって導電体に渦電流を発生させ、この渦電流によって導電体に生じたジュール熱を利用して流入口に流入した湿り蒸気を誘導加熱して過熱蒸気へと変換し、この過熱蒸気を所定の流速で吐出口から吐出させるものであってもよい。さらに、このようにして過熱蒸気発生ユニット45によって発生された過熱蒸気は、流路43および過熱蒸気供給管42を順次経た後に、図1に示す第1〜第3の分岐管39,40,41によって分流されるようになっている。そして、第1の分岐管39に分流された過熱蒸気は、第1の過熱蒸気用ノズル部34から鉛直下方に向かって噴射されることによって、キュア炉5内における上流側を通る基材8上の塗工液に供給されるようになっている。また、第2の分岐管40に分流された過熱蒸気は、第2の過熱蒸気用ノズル部35および第3の過熱蒸気用ノズル部36から鉛直下方に向かって噴射されることによって、キュア炉5内における中流側を通る基材8上の塗工液に供給されるようになっている。さらに、第3の分岐管41に分流された過熱蒸気は、第4の過熱蒸気用ノズル部37から鉛直下方に向かって噴射されることによって、キュア炉5内における下流側を通る基材8上の塗工液に供給されるようになっている。
【0041】
このような過熱蒸気供給装置32によって、キュア炉5内の基材8は、基材8上の塗工液が、過熱蒸気による膜凝縮伝熱によって高い熱エネルギを付与されることによって、塗工液中の水分がほぼ完全に蒸発して除去されることになる。そして、過熱蒸気供給装置32によって加熱された基材8は、図3に示すように、基材8上の塗工液が乾燥硬化されてなる薄膜層47が形成された複合材料シート48の状態としてキュア炉5から排出されるようになっている。
【0042】
図1に示すように、シート巻き取り室7の内部には、キュア炉5から排出された複合材料シート48が、第2の連通部6を経て搬入されるようになっており、このシート巻き取り室7内には、搬入された複合材料シート48を巻き取るための巻き取りロール12が配設されている。巻き取りロール12は、モータによって駆動されるようになっている。
【0043】
また、シート巻き取り室7内における巻き取りロール12に対する上流側の位置には、シート巻き取り室7内における複合材料シート48の搬送経路を形成する複数個のガイドローラ49が回転自在に配設されている。そして、シート巻き取り室7内に搬入された複合材料シート48は、各ガイドローラ49に順次巻回されるようにして巻き取りロール12に巻き取られるようになっている。
【0044】
図1に示すように、第1の連通部4における上壁部には、第1の排気口51が形成されており、また、第2の連通部6における上壁部には、第2の排気口52が形成されている。さらに、これら第1の排気口51および第2の排気口52には、図示はしないが、排気管を介して排気ブロワが連結されている。そして、キュア炉5内において基材8上に供給された過熱蒸気は、搬入口5aまたは排出口5bを通って第1の連通部4または第2の連通部6に流入した上で、排気ブロワの吸引力によって吸引されて排気されるようになっている。また、第1の連通部4および第2の連通部6に流入した過熱蒸気が結露して水滴になることを防止するために、各連通部4,6に結露防止用のヒータ(図示せず)を設けたり、万一結露した水滴を除去するためのドレン抜き(図示せず)を設けるようにしてもよい。そのようにすれば、塗工液から除去された有害物質(例えば、アミック酸溶液の溶媒であるNMP)を、排気と一緒に複合材料シート製造機1の系外に取り出して、凝縮分離等の処理によって無害化することができ、環境汚染を防止することができる。
【0045】
そして、このような構成を備えた上で、本実施形態における複合材料シート製造機1は、熱風乾燥炉3内における塗工液の乾燥を、逆転温度よりも低温の雰囲気温度の下で行い、キュア炉5内における塗工液の乾燥および硬化を、逆転温度よりも高温の雰囲気温度の下で行うように構成されている。ただし、逆転温度とは、当該温度よりも低温の雰囲気温度の下では、乾燥空気雰囲気下における希釈溶液または溶液の蒸発速度が過熱蒸気雰囲気下における前記蒸発速度より速くなり、当該温度よりも高温の雰囲気温度の下では、前記過熱蒸気雰囲気下における前記蒸発速度が前記乾燥空気雰囲気下における前記蒸発速度より速くなるような温度のことをいう。この逆転温度は、一般に、170℃とされている。なお、塗工液は、希釈溶液または溶液に含まれる概念である。
【0046】
ここで、熱風乾燥炉3内における塗工液の乾燥を逆転温度よりも低温の雰囲気温度の下で行うためのより具体的な手段としては、例えば、次のような手段を考えることができる。すなわち、熱風乾燥炉3内における基材8の搬送経路の近傍位置に、熱風乾燥炉3内の温度を測定する温度センサを設けておき、この温度センサの測定結果を送風加熱部22,28の電気制御系(図示せず)にフィードバックさせる。そして、熱風乾燥炉3内の温度センサの測定結果が常に逆転温度よりも低温となるように送風加熱部22,28による送風の加熱温度を送風加熱部22,28の電気制御系によって電気的に制御させるようにする。より具体的には、熱風乾燥炉3内の温度センサの測定結果が逆転温度よりも低温の所定値を上回っている場合には、送風加熱部22,28による送風の加熱温度を現在の温度よりも一定温度下げ、当該温度センサの測定結果が当該所定値を下回っている場合には、送風加熱部22,28による送風の加熱温度を現在の温度よりも一定温度上げるようにしてもよい。また、熱風乾燥が開始される前に、予め熱風乾燥炉3内を逆転温度よりも低温の雰囲気温度になるように予備加熱するために、熱風乾燥炉3内に遠赤外線ヒータのような加熱手段を設けるようにしてもよい。
【0047】
また、キュア炉5内における塗工液の乾燥および硬化を逆転温度よりも高温の雰囲気温度の下で行うためのより具体的な手段としては、例えば、次のような手段を考えることができる。すなわち、キュア炉5内における基材8の搬送経路の近傍位置に、キュア炉5内の温度を測定する温度センサを設けておき、この温度センサの測定結果を過熱蒸気発生ユニット45の電気制御系(図示せず)にフィードバックさせる。そして、キュア炉5内の温度センサの測定結果が常に逆転温度よりも高温となるように過熱蒸気発生ユニット45から発生する過熱蒸気の温度を過熱蒸気発生ユニット45の電気制御系によって電気的に制御させるようにする。より具体的には、キュア炉5内の温度センサの測定結果が逆転温度よりも高温の所定値を下回っている場合には、過熱蒸気発生ユニット45から発生する過熱蒸気の温度を現在の温度よりも一定温度上げ、当該温度センサの測定結果が当該所定値を上回っている場合には、過熱蒸気発生ユニット45から発生する過熱蒸気の温度を現在の温度よりも一定温度下げるようにしてもよい。なお、過熱蒸気乾燥が開始される前に、予めキュア炉5内を所定の雰囲気温度(逆転温度よりも高温の雰囲気温度であってもよい)になるように予備加熱するために、キュア炉5内に図1に示すような遠赤外線ヒータ55や不図示の熱風ヒータのような加熱手段を設けるようにしてもよい。
【0048】
次に、図4は、過熱蒸気、乾燥空気(換言すれば乾き空気)および湿り空気のそれぞれの雰囲気下における水分の蒸発速度についての雰囲気温度特性を示すグラフである。図4から分かるように、逆転温度である170℃よりも低温の雰囲気温度の下では、乾燥空気雰囲気下における蒸発速度が最も速くなり、過熱蒸気雰囲気下における蒸発速度が最も遅くなる。しかし、このような蒸発速度の関係は、170℃を堺に逆転し、170℃よりも高温の雰囲気温度の下では、過熱蒸気雰囲気下における蒸発速度が最も速く、乾燥空気雰囲気下における蒸発速度が最も遅くなる。
【0049】
また、図5は、基材8の一例としての二軸延伸装置によってMD(Machine Direction)方向に延伸されたPENからなる基材8についてのTMA(Thermomechanical Analysis)(熱機械分析)によって得られた熱変形特性を示すグラフである。ここで、TMAは、試料に一定荷重を加えながら試料を加熱していき、加熱温度の変化に応じた試料の変形量を計測する手法として知られている。図5および後述する図6〜図8においては、いずれも、試料としての基材8に当該基材8の延伸方向への一定荷重を加えている。ここで、図5には、基材8を熱風のみによって加熱した場合における熱変形特性(実線部)と、基材8を過熱蒸気のみによって加熱した場合における熱変形特性(破線部)とが示されている。なお、図5における横軸の値は温度〔℃〕であり、縦軸の値は、基材8の変形量としての基材8の延伸方向の寸法変化量〔μm〕である。また、図5における縦軸の値の符号が正の場合には、基材8が膨脹するような熱変形が生じたことを示しており、縦軸の値の符号が負の場合には、基材8が収縮するような熱変形が生じたことを示している。
【0050】
さらに、図6は、基材8の一例としての二軸延伸装置によってTD(Transverse Direction)方向に延伸されたPENからなる基材8についてのTMAによって得られた熱変形特性を示すグラフである。図6にも、基材8を熱風乾燥のみによって加熱した場合における熱変形特性(実線部)と、基材8を過熱蒸気のみによって加熱した場合における熱変形特性(破線部)とが示されている。また、図6における横軸および縦軸の値は、図5と同様である。
【0051】
さらにまた、図7は、基材8の一例としての二軸延伸装置によってMD方向に延伸されたPETからなる基材8についてのTMAによって得られた熱変形特性を示すグラフである。図7にも、基材8を熱風乾燥のみによって加熱した場合における熱変形特性(実線部)と、基材8を過熱蒸気のみによって加熱した場合における熱変形特性(破線部)とが示されている。また、図7における横軸および縦軸の値は、図5および図6と同様である。
【0052】
また、図8は、基材8の一例としての二軸延伸装置によってTD方向に延伸されたPETからなる基材8についてのTMAによって得られた熱変形特性を示すグラフである。図8にも、基材8を熱風乾燥のみによって加熱した場合における熱変形特性(実線部)と、基材8を過熱蒸気のみによって加熱した場合における熱変形特性(破線部)とが示されている。また、図8における横軸および縦軸の値は、図5〜図7と同様である。
【0053】
ここで、図4によれば、本実施形態のように、乾燥空気雰囲気下における水分の乾燥に相当する熱風乾燥炉3内における熱風による塗工液の乾燥を、逆転温度よりも低温の雰囲気温度の下で行い、尚かつ、過熱蒸気雰囲気下における水分の乾燥に相当するキュア炉5内における過熱蒸気による塗工液の乾燥を、逆転温度よりも高温の雰囲気温度の下で行えば、塗工液が最短時間で乾燥されることが分かる。
【0054】
また、例えば、図5、図8によれば、低温側から逆転温度(170〔℃〕)近辺に至る温度範囲においては、過熱蒸気による基材8の加熱を行った場合における基材8の変形量よりも、熱風による基材8の加熱を行った場合における基材8の変形量が小さくなることが分かる。さらに、図5〜図8によれば、逆転温度よりも高温の温度範囲においては、総合的に見た場合に、過熱蒸気による基材8の加熱を行った場合における基材8の変形量の方が、熱風による基材8の加熱を行った場合における基材8の変形量よりも小さくなることが分かる。このことは、本実施形態のように、熱風による塗工液の乾燥と過熱蒸気による塗工液の乾燥とを逆転温度を境として切り替えて適用すれば、塗工液の乾燥時間の短縮化に加えて、更に、基材8の熱変形を有効に抑制することができることを示している。
【0055】
さらに、PENのガラス転移温度は155℃であるところ、図5および図6に示すように、逆転温度以下の温度範囲のうちの155℃以下の温度範囲においては、熱風によるPENからなる基材8の加熱を行った場合における当該基材8の熱変形量が特に小さいことが分かる。また、PETのガラス転移温度は110℃であるところ、図7および図8に示すように、逆転温度以下の温度範囲のうちの110℃以下の温度範囲においては、熱風によるPETからなる基材8の加熱を行った場合における当該基材8の熱変形量が特に小さいことが分かる。このようなことから、基材8を樹脂材料によって形成する場合には、熱風乾燥炉3内における熱風による塗工液の乾燥を、基材8のガラス転移温度よりも低温の雰囲気温度の下で行うことが望ましい。そのようにすれば、基材8の熱変形をさらに有効に抑制することができる。
【0056】
さらにまた、PENの融点は262℃であるところ、図5および図6に示すように、過熱蒸気によるPENからなる基材8の加熱は、250℃までは当該基材8の熱変形の問題がなく行うことができることが分かる。このようなことから、基材8をPENによって形成する場合には、キュア炉5内における過熱蒸気による塗工液の乾燥および硬化を、PENの融点(262℃)よりも12℃低温の雰囲気温度からこれよりも低温側にわたる所定の温度範囲内(例えば、240〜250℃)に属する雰囲気温度(好ましくは、250℃)の下で行うようにしてもよい。そのようにすれば、PENからなる基材8の熱変形が生じない雰囲気温度における可及的に高い雰囲気温度の下で塗工液を乾燥させることができるので、塗工液の乾燥時間を更に短縮することができる。
【0057】
同様に、PETの融点は260℃であるところ、図7および図8に示すように、過熱蒸気によるPETからなる基材8の加熱は、230℃までは当該基材8の熱変形の問題がなく行うことができることが分かる。このようなことから、基材8をPETによって形成する場合には、キュア炉5内における過熱蒸気による塗工液の乾燥および硬化を、PETの融点(260℃)よりも30℃低温の雰囲気温度からこれよりも低温側にわたる所定の温度範囲内(例えば、220〜230℃)に属する雰囲気温度(好ましくは、230℃)の下で行うようにしてもよい。そのようにすれば、PETからなる基材8の熱変形が生じない雰囲気温度における可及的に高い雰囲気温度の下で塗工液を乾燥させることができるので、塗工液の乾燥時間を更に短縮することができる。
【0058】
以上述べたように、本実施形態によれば、熱風乾燥炉3内における熱風による塗工液の乾燥を逆転温度よりも低温の雰囲気温度の下で行い、キュア炉5内における過熱蒸気による塗工液の乾燥および硬化を逆転温度よりも高温の雰囲気温度の下で行うことによって、塗工液の乾燥速度を向上させることができるとともに、基材8の熱変形を抑制することができる。
【0059】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 複合材料シート製造機
3 熱風乾燥炉
5 キュア炉
8 基材
14 塗工装置
16 第1の熱風供給装置
17 第2の熱風供給装置
32 過熱蒸気供給装置
47 塗工層
48 複合材料シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した基材上に塗工液を塗布した後に、この塗布された塗工液を乾燥して硬化することによって、前記基材上に前記塗工液が硬化されてなる塗工層を備えた複合材料シートを製造する複合材料シート製造機において、
前記基材をその長手方向に搬送する搬送装置と、
この搬送装置による前記基材の搬送経路上に配設され、前記搬送装置によって搬送される前記基材上に前記塗工液を塗布する塗工装置と、
前記基材の搬送経路上における前記塗工装置の下流側に、前記塗工装置による前記塗工液の塗布後の前記基材をその長手方向において搬入および搬出自在に配設された熱風乾燥炉と、
この熱風乾燥炉内に熱風を供給することによって、前記熱風乾燥炉内に搬入された前記基材上の前記塗工液を加熱して乾燥する熱風供給装置と、
前記基材の搬送経路上における前記熱風乾燥炉の下流側に、前記熱風乾燥炉における前記塗工液の乾燥後の前記基材をその長手方向において搬入および搬出自在に配設された熱処理炉と、
この熱処理炉内に過熱蒸気を供給することによって、前記熱処理炉内に搬入された前記基材上の前記塗工液を加熱して乾燥および硬化する過熱蒸気供給装置と
を備え、
その温度よりも低温の雰囲気温度の下では乾燥空気雰囲気下における希釈溶液または溶液の蒸発速度が過熱蒸気雰囲気下における前記蒸発速度より速くなり、その温度よりも高温の雰囲気温度の下では前記過熱蒸気雰囲気下における前記蒸発速度が前記乾燥空気雰囲気下における前記蒸発速度より速くなるような温度である逆転温度よりも低温の雰囲気温度の下で、前記熱風乾燥炉内における前記塗工液の乾燥を行い、前記逆転温度よりも高温の雰囲気温度の下で、前記熱処理炉内における前記塗工液の乾燥および硬化を行うこと
を特徴とする複合材料シート製造機。
【請求項2】
連続した基材上に塗工液を塗布した後に、この塗布された塗工液を乾燥して硬化することによって、前記基材上に前記塗工液が硬化されてなる塗工層を備えた複合材料シートを製造する複合材料シートの製造方法において、
前記基材をその長手方向に搬送する前記基材の搬送経路上において、搬送される前記基材上に前記塗工液を塗布し、
次いで、前記基材の搬送経路上における前記塗工液の塗布が行われた位置に対する下流側の位置において、その温度よりも低温の雰囲気温度の下では乾燥空気雰囲気下における希釈溶液または溶液の蒸発速度が過熱蒸気雰囲気下における前記蒸発速度より速くなり、その温度よりも高温の雰囲気温度の下では前記過熱蒸気雰囲気下における前記蒸発速度が前記乾燥空気雰囲気下における前記蒸発速度より速くなるような温度である逆転温度よりも低温の雰囲気温度の下で、前記基材上の前記塗工液を熱風によって加熱して乾燥し、
次いで、前記基材の搬送経路上における前記塗工液の熱風による乾燥が行われた位置に対する下流側の位置において、前記逆転温度よりも高温の雰囲気温度の下で、前記基材上の前記塗工液を過熱蒸気によって加熱して乾燥および硬化すること
を特徴とする複合材料シートの製造方法。
【請求項3】
前記基材を樹脂材料によって形成すること
を特徴とする請求項2に記載の複合材料シートの製造方法。
【請求項4】
前記熱風による前記塗工液の乾燥を、前記基材のガラス転移温度よりも低温の雰囲気温度の下で行うこと
を特徴とする請求項3に記載の複合材料シートの製造方法。
【請求項5】
前記基材をポリエチレンナフタレートによって形成し、前記過熱蒸気による前記塗工液の乾燥および硬化を、前記基材の融点よりも12℃低温の雰囲気温度からこれよりも低温側にわたる所定の温度範囲内に属する雰囲気温度の下で行うこと
を特徴とする請求項3または請求項4に記載の複合材料シートの製造方法。
【請求項6】
前記基材をポリエチレンテレフタレートによって形成し、前記過熱蒸気による前記塗工液の乾燥および硬化を、前記基材の融点よりも30℃低温の雰囲気温度からこれよりも低温側にわたる所定の温度範囲内に属する雰囲気温度の下で行うこと
を特徴とする請求項3または請求項4に記載の複合材料シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−64406(P2011−64406A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215637(P2009−215637)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(591091629)株式会社康井精機 (9)
【Fターム(参考)】