説明

複合材料,充填材、及び高熱伝導部材

【課題】
高熱伝導性と成形性を両立した樹脂と充填材を有する複合材料を提供することにある。また、このような複合材料を用い、成形された高熱伝導部材を提供することである。
【解決手段】
樹脂と、樹脂中に分散された充填材とを有する複合材料であって、前記充填材の少なくとも一部が分岐構造を持つ繊維状の充填材であり、前記分岐構造を持つ繊維状充填材の最大長が10μm以下であることを特徴とする複合材料を提供する。分岐構造を持つ繊維状充填材は、数平均繊維径が500nm以下の無機酸化物・無機窒化物よりなることが好ましい。樹脂は、熱可塑性樹脂・熱硬化性樹脂とも使用することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填材を導入した複合材料、及び高熱伝導部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高性能化とともに、電子機器中に発生する熱量も増加の一途をたどっており、機器中に発生する熱量を効率良く機器外に放熱する技術の開発が進められている。高熱伝導性の複合材料を電子機器の筐体,接着シート,封止材などに用いて電子機器の放熱性を向上する技術がこれまでに開示されている。一般的に、高熱伝導性の複合材料は、多量の充填材と、樹脂と、から構成され、多量の充填材が形成する熱伝導経路が複合材料を高熱伝導化している。
【0003】
繊維状の充填材が球形の充填材に比べて効率よく樹脂の熱伝導率を向上させることが知られており、特開平9−314718号公報(特許文献1)では、さらに充填材の接触点を焼結により結合させた窒化アルミニウム繊維不織布に樹脂を加熱圧縮して、高熱伝導率を有するシート状の複合材料を作製する技術を開示している。この技術では、焼結により繊維同士の接触点を結合させることで、繊維状充填材が形成する熱伝導経路の熱伝導効率を向上させ、複合材料の更なる高熱伝導化を実現している。しかし、特許文献1の方法では、多数の繊維状充填材間の焼結点が樹脂の流動性を低下させるため、複合材料の成形性が消失するという問題点がある。実際に特許文献1では、前記窒化アルミニウム不織布を粉砕して樹脂中に分散した複合材料がプレス成形できないことに言及している。高熱伝導性の複合材料は、用途に応じた形状に成形する必要があるものが多く、成形性を有することが望ましい。しかし、接点が結合された繊維状充填材を有し、かつ、成形性を有する高熱伝導性の複合材料はこれまでに報告されていない。
【0004】
【特許文献1】特開平9−314718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高熱伝導性と成形性を両立した複合材料、前記複合材料に供する充填材、並びに前記複合材料を用いた高熱伝導部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための本発明の特徴点は、無機材料よりなり、分岐構造を持つ繊維状の充填材と、樹脂とを含有する複合材料において、前記充填材の最大長が10μm以下であることを特徴とする複合材料にある。繊維充填材としては、無機酸化物,窒化物よりなるものがよい。特に、酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムがよい。充填材の繊維径は500ナノメートル以下であり、充填材の粉末の最大径の平均値が10μm以下であることが好ましい。
【0007】
繊維状充填材としては、無機酸化物,窒化物を主成分とするものが好ましい。無機酸化物,窒化物は、樹脂に比べて熱伝導率が高く、また高熱伝導樹脂の充填材として良く用いられているため、本発明の充填材への置換えが容易である。また、特に、酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムがよい。酸化アルミニウム,窒化アルミニウムは、無機酸化物の中でも熱伝導率が高いためである。酸化アルミニウムよりなる分岐構造を持つ繊維状充填材は、有機物繊維シート材にアルミニウム化合物を吸着させる工程と、アルミニウム化合物の吸着した有機物繊維シート材を酸化ガスの存在下で加熱して有機物繊維材を除去し、アルミニウム化合物よりなるシート材を得る工程と、アルミニウム化合物よりなるシート材を加熱してアルミニウム化合物をα化アルミナとする工程とを有することを特徴とする繊維状充填材の製造方法により製造される。また、窒化アルミニウムよりなる分岐構造を持つ充填材は、有機物繊維シート材にアルミニウム化合物を吸着させる工程と、アルミニウム化合物の吸着した有機物繊維シート材を酸化ガスの存在下で加熱して有機物繊維材を除去し、アルミニウム化合物よりなるシート材を得る工程と、アルミニウム化合物よりなるシート材をアンモニアガス雰囲気下で加熱してアルミニウム化合物を窒化アルミニウムとする工程とを有することを特徴とする繊維状充填材の製造方法により製造される。また、本発明の複合材料は、高い熱伝導性とともに絶縁性を求められる部材として使用されることが多い。したがって繊維状充填材としては酸化物・窒化物等の無機化合物が好ましい。特に絶縁性が求められる部分では、金属単体・合金などの繊維状充填材を使用すると、絶縁性が低下するため好ましくない。
【0008】
本発明の樹脂としては、熱可塑性樹脂,熱硬化性樹脂とも使用可能である。熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂,不飽和ポリエステル樹脂、熱可塑性樹脂としてはアクリル樹脂が例示される。なお、熱硬化性樹脂は、硬化前は充填材を混合しても成形可能であるが、一旦硬化(ネットワーク化)させてしまうと成型ができなくなるため、硬化処理前に成形する必要がある。
【0009】
本発明の複合材料は、高い熱伝導を求められる樹脂部材に適用される。用途として、例えば、積層板,プリント配線板,コイルの絶縁保護材,放熱シート,モールド樹脂などが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、高熱伝導性と成形性を両立した複合材料、前記複合材料に供する充填材、並びに前記複合材料を用いた高熱伝導部材が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の複合材料は、分岐構造を持つ繊維状充填材と、樹脂とを含有する。前記複合材料中の充填材含有率は、25重量パーセント以上,85重量パーセント未満であることが望ましい。充填材含有率が25重量パーセント未満では、充填材を配合した効果が十分に得られない。また、85重量パーセント以上の複合材料は、成形性に問題がある。なお、前記複合材料には、前記分岐構造を持つ繊維状充填材以外の充填材を含有しても良いが、前記分岐構造を持つ繊維状充填材が、全充填材の50重量パーセント以上であることが望ましく、30重量パーセント未満では、充填材による熱伝導率向上効果が十分に得られない。
【0012】
本発明の複合材料に含まれる、分岐構造を持つ繊維状充填材は、分岐構造を持つ繊維状充填材であれば特に制限はない。ここで分岐構造とは、繊維状物質の側面から繊維状物質が突き出している構造を言い、1つの繊維状物質の側面から突き出している繊維状物質の数に制限はない。また、繊維状物質の側面から突き出している繊維状物質から、別の繊維状物質が突き出していても良い。前記分岐構造を持つ繊維状充填材は、無機酸化物と無機窒化物から選ばれる1つ以上を有することが望ましい。前記無機酸化物の例として、酸化アルミニウム,酸化ジルコニウム,酸化珪素、などが挙げられる。また、無機窒化物の例として、窒化アルミニウムなどが挙げられる。前記分岐構造を持つ繊維状充填材の最大長は、10μm以下であることが望ましい。前記最大長が10μmより大きいと、前記複合材料の成形性に問題がある。また、前記分岐構造を持つ繊維状充填材の数平均繊維径は、500nm以下であることが望ましい。前記数平均繊維径が500nmより小さいと、前記複合材料の作製時において、前記樹脂の流動性が向上するため、前記複合材料の成形性が高い。
【0013】
本発明の複合材料に含まれる樹脂は、一般に成形材として用いられる樹脂であれば特に制限はない。例として、エポキシ樹脂,アクリル樹脂,不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。前記樹脂は、樹脂作製時の重合開始剤,分子量制御剤,樹脂硬化剤,酸化防止剤,反応触媒などを含有してもよい。
【0014】
本発明の複合材料は、その作製方法が一方法に限定されるものではないが、例として、分岐構造を持つ繊維状充填材の作製(工程1)、前記充填材と樹脂との混合(工程2)の2工程を経由して作製される。
【0015】
前記工程1では、前記分岐構造を持つ繊維状充填材が作製できれば制限はないが、例としては、熱分解除去可能な繊維状物質を有する不織布を充填材前駆体の溶液中に浸して、前記充填材前駆体を前記繊維状物質の表面に吸着し、その後前記繊維状物質を熱分解除去して、前記分岐構造を持つ繊維状充填材を作製する工程が挙げられる。また、必要に応じて、無機酸化物を有し前記分岐構造を持つ繊維状充填材を、無機窒化物を有し分岐構造を持つ繊維状充填材に変換する窒化工程を、前記工程1に含めてもよい。前記窒化工程の例として、前記無機酸化物を有する前記分岐構造を持つ繊維状充填材を、アンモニアガス雰囲気下で焼成する工程が挙げられる。前記不織布は、熱分解除去可能な繊維状物質から構成されていることが望ましい。前記繊維状物質の例として、セルロース繊維,カーボン繊維,アラミド繊維,ナイロン繊維,ビニロン繊維,ポリエステル繊維,ポリオレフィン繊維,レーヨン繊維、などの有機物の繊維が挙げられる。前記充填材前駆体は、前記分岐構造を持つ繊維状充填材を構成する物質が熱処理により形成できる物質であれば制限はない。例として、Al(OR)3(Rはアルキル基:例えばR=メチル基,エチル基,プロピル基,イソプロピル基,ブチル基,イソブチル基など),Si(OR)4(Rはアルキル基:例えばR=メチル基,エチル基,プロピル基,イソプロピル基,ブチル基,イソブチル基など)などが挙げられる。前記充填材前駆体の溶液に用いる溶媒は、充填材前駆体が溶解可能であれば特に制限はない。例として、メタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノール,アセトン,メチルエチルケトン,トルエン,ヘキサン,シクロヘキサン、などが挙げられる。なお、前記分岐構造を持つ繊維状充填材の作製後に、必要に応じて、前記分岐構造を持つ繊維状充填材を粉砕してもよい。
【0016】
前記工程2は、前記分岐構造を持つ繊維状充填材と、樹脂と、を混合できる工程であれば制限はない。例として、溶媒に、前記分岐構造を持つ繊維状充填材と、前記樹脂とを添加して混合した後、溶媒を蒸発させる方法が挙げられる。前記溶媒は、前記分岐構造を持つ繊維状充填材と、前記樹脂と、が分散可能である溶媒であれば特に制限はないが、前記分岐構造を持つ繊維状充填材と、前記樹脂と、を混合した後に、蒸発除去させる必要があるため、沸点の低い溶媒であることが望ましい。例として、メタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノール,アセトン,メチルエチルケトン,ジメチルアセトアミド、などが挙げられる。前記分岐構造を持つ繊維状充填材と、前記樹脂と、の混合方法は、混合が達成できれば特に制限はない。混合時には、ボールミル,マグネチックスターラ,超音波洗浄器などを用いて混合してもよい。溶媒の蒸発方法は特に限定されないが、例として、エバポレータを用いた蒸発法や、混合物をシート状に塗布して蒸発表面積を増加させて溶媒を蒸発させる方法、などが挙げられる。後者において、蒸発し難い溶媒を用いる場合には、ホットプレートなどによりシート状塗布物に熱を加えて、溶媒の蒸発を促進させてもよい。なお、本工程2において、樹脂が液状の場合には、前記溶媒を用いることなく、前記分岐構造を持つ繊維状充填材と、前記樹脂と、を直接混合してもよい。上記の手順により、本発明の複合材料を作製できる。
【0017】
一方、前記工程1で作製した、分岐構造を持つ繊維状充填材と、樹脂単量体と、を、前記工程2と同様の方法で混合した後に、前記樹脂単量体、を重合する方法を用いて、本発明の複合材料を作製することも可能である。樹脂単量体が液状の場合には、前記溶媒を用いることなく、前記充填材と前記樹脂単量体とを直接混合してもよい。また、前記分岐構造を持つ繊維状充填材と、前記樹脂単量体と、の混合物中に、重合開始剤,分子量制御剤,樹脂硬化剤,酸化防止剤,反応触媒などを含有してもよい。
【0018】
また、前記の工程2で作製した、分岐構造を持つ繊維状充填材と、樹脂と、の混合物を、前記混合物中に共存させた樹脂硬化剤を用いて硬化して、本発明の複合材料を作製することもできる。樹脂硬化剤は、樹脂が硬化できる材料であれば特に制限はない。用途に応じて、光照射型の樹脂硬化剤や熱硬化型の樹脂硬化剤などを使用することができる。前記混合物の硬化は、減圧雰囲気下で、前記混合物を加圧しながら行うことが望ましい。
【0019】
本発明の高熱伝導部材は、前記の複合材料を成形して作製することができる。成形方法に特に制限はなく、例としては、ホットプレス法,注型法,圧縮法,トランスファー法,射出法,押出し法,積層法、などが挙げられる。また、成形方法に応じて、前記複合材料を成形中に硬化させてもよく、その際には前記複合材料中に共存する樹脂硬化剤を用いて硬化させてもよい。本発明の高熱伝導部材の用途として、積層板,プリント配線板,コイルの絶縁保護材,放熱シート,モールド樹脂などが挙げられる。
【0020】
[実施例]
以下に具体例を用いて本発明及びその効果をさらに説明する。なお、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。下記の通り、充填材及び複合材料を作成し、物性の評価を行った。評価方法は下記の通りである。
【0021】
<電子顕微鏡観察>
走査型電子顕微鏡(日立製作所製S−4800形)を用いて、Ptスパッタを施した試料を観察した。加速電圧は0.8kVとした。
【0022】
<結晶解析>
リガク製広角X線回折装置(RIN2500HL)を用いてX線回折曲線を測定し、試料中の結晶相の同定を行った。また、シェラー式により、試料中結晶の結晶子径を評価した。
【0023】
<充填材含有率測定>
TA Instruments製Q500型熱重量測定装置を用いて、作製した複合材料の熱重量分析を行い、得られた熱重量曲線から充填材含有率を計算した。昇温速度を10℃/minとして、測定温度範囲を室温から950℃とした。
【0024】
<熱伝導率測定>
熱伝導率は、試料の定圧比熱,密度,熱拡散率の積から求めた。定圧比熱,密度は、充填材の重量分率(wf)を用いて(1)式,(2)式から計算した。熱拡散率(α[mm2/s])は、ai-Phase mobile1(株式会社アイフェイズ製)を用いて、温度波熱分析法により評価した。
【0025】
【数1】

(Cpf:充填材の比熱、Cpm=樹脂の比熱)
【0026】
【数2】

(ρf:充填材の密度,ρm:エポキシ樹脂の密度)
【実施例1】
【0027】
下記手順に従って充填材Aを作製した。エタノール(100ml)中に粉末状のアルミニウムイソプロポキシド(AIP,3.0g)を添加し、窒素雰囲気下で1時間撹拌した。その後、得られた上澄み液を遠心分離して未溶解のAIP粉末を除去し、AIPエタノール溶液を得た。その後、定量ろ紙(ADVANTEC製5C)を窒素雰囲気下でAIPエタノール溶液に1分間浸漬/4分間乾燥した。上記の操作を15回繰り返して、AIP吸着ろ紙を得た。その後、AIP吸着ろ紙を500℃で2時間焼成して、ろ紙中のセルロースを分解除去した。その後、得られたシートを1200℃で4時間焼成して、シート中のアルミナをα相化し、充填材Aを得た。充填材Aの電子顕微鏡像の模式図を図1に示す。この図から、充填材Aが分岐構造を有し、数平均繊維径が200nmで、最大長が5μmの充填材であることがわかった。また、充填材AのX線回折測定から、充填材Aが結晶子径93nmのα−アルミナ結晶であることがわかった。
【実施例2】
【0028】
下記手順に従って充填材Bを作製した。エタノール(100ml)中にテトラエチルオルソシリケート(TEOS)(和光純薬製,3.0g)を添加し、TEOSエタノール溶液を得た。その後、定量ろ紙(ADVANTEC製5C)を窒素雰囲気下でTEOSエタノール溶液に1分間浸漬/4分間乾燥した。上記の操作を15回繰り返して、TEOS吸着ろ紙を得た。その後、TEOS吸着ろ紙を500℃で2時間焼成して、ろ紙中のセルロースを分解除去し、充填材Bを得た。充填材Bの電子顕微鏡像の模式図を図2に示す。この図から、充填材Bが分岐構造を有し、数平均繊維径が500nmで、最大長が10μmの充填材であることがわかった。
【実施例3】
【0029】
まず、下記手順に従って充填材Cを作製した。エタノール(100ml)中に粉末状のアルミニウムイソプロポキシド(AIP,3.0g)を添加し、窒素雰囲気下で1時間撹拌した。その後、得られた上澄み液を遠心分離して未溶解のAIP粉末を除去し、AIPエタノール溶液を得た。その後、定量ろ紙(ADVANTEC製5C)を窒素雰囲気下でAIPエタノール溶液に1分間浸漬/4分間乾燥した。上記の操作を15回繰り返して、AIP吸着ろ紙を得た。その後、AIP吸着ろ紙を500℃で2時間焼成して、ろ紙中のセルロースを分解除去した。その後、得られたシートをアンモニアガス雰囲気下で1300℃焼成(2時間)して、シート中のアルミナを窒化アルミニウムに変換し、充填材Cを得た。充填材Cの電子顕微鏡像の模式図を図3に示す。この図から、充填材Cが分岐構造を有し、数平均繊維径が500nmで、最大長が5μmの充填材であることがわかった。また、充填材CのX線回折測定から、充填材Cが、微量の酸化アルミニウム結晶を含むものの、ほぼ完全な窒化アルミニウム結晶であることがわかった。
【実施例4】
【0030】
下記手順に従い、充填材Dを作製した。エタノール(100ml)中に粉末状のアルミニウムイソプロポキシド(AIP,3.0g)を添加し、窒素雰囲気下で1時間撹拌した。その後、得られた上澄み液を遠心分離して未溶解のAIP粉末を除去し、AIPエタノール溶液を得た。その後、定量ろ紙(ADVANTEC製5C)を窒素雰囲気下でAIPエタノール溶液に1分間浸漬/4分間乾燥した。上記の操作を15回繰り返して、AIP吸着ろ紙を得た。その後、AIP吸着ろ紙を500℃で2時間焼成して、ろ紙中のセルロースを分解除去した。その後、得られたシートを1200℃で4時間焼成して、シート中のアルミナをα相化した。得られたシート(50g)と、アルミナビーズ(直径2mm,50g)と、を、容量が200mlのプラスチック製円筒容器に入れ、前記プラスチック製円筒容器をミックスロータ上で48時間回転させた。その後、アルミナビーズを除去し、充填材Dを得た。充填材Dの電子顕微鏡像の模式図を図4に示す。この図から、充填材Dが分岐構造をほとんど持たないことがわかった。また、充填材Dは、数平均繊維径が200nmで、最大長が3μmであることがわかった。
【実施例5】
【0031】
まず、下記手順に従って充填材Eを作製した。エタノール(100ml)中にテトラエチルオルソシリケート(和光純薬製,3.0g)を添加し、TEOSエタノール溶液を得た。その後、定量ろ紙(ADVANTEC製5C)を窒素雰囲気下でTEOSエタノール溶液に1分間浸漬/4分間乾燥した。上記の操作を15回繰り返して、TEOS吸着ろ紙を得た。その後、TEOS吸着ろ紙を500℃で2時間焼成して、ろ紙中のセルロースを分解除去した。得られたシート(50g)と、ジルコニアビーズ(直径2mm,50g)と、を、容量が200mlのプラスチック製円筒容器に入れ、前記プレスチック製円筒容器をミックスロータ上で48時間回転させた。その後、ジルコニアビーズを除去し、充填材Eを得た。充填材Eの電子顕微鏡像の模式図を図5に示す。この図から、充填材Eが分岐構造をほとんど持たないことがわかった。また、充填材Eは、数平均繊維径が500nmで、最大長が7μmであることがわかった。
【実施例6】
【0032】
まず、下記手順に従って充填材Fを作製した。エタノール(100ml)中に粉末状のアルミニウムイソプロポキシド(AIP,3.0g)を添加し、窒素雰囲気下で1時間撹拌した。その後、得られた上澄み液を遠心分離して未溶解のAIP粉末を除去し、AIPエタノール溶液を得た。その後、定量ろ紙(ADVANTEC製5C)を窒素雰囲気下でAIPエタノール溶液に1分間浸漬/4分間乾燥した。上記の操作を15回繰り返して、AIP吸着ろ紙を得た。その後、AIP吸着ろ紙を500℃で2時間焼成して、ろ紙中のセルロースを分解除去した。その後、得られたシートをアンモニアガス雰囲気下で1300℃焼成(2時間)して、シート中のアルミナを窒化アルミニウムに変換した。得られたシート(50g)と、アルミナビーズ(直径2mm,50g)と、を、容量が200mlのプラスチック製円筒容器に入れ、前記プラスチック製円筒容器をミックスロータ上で48時間回転させた。その後、アルミナビーズを除去し、充填材Fを得た。充填材Fの電子顕微鏡像の模式図を図6に示す。この図から、充填材Fが分岐構造をほとんど持たないことがわかった。また、充填材Fは、数平均繊維径が500nmで、最大長が4μmであることがわかった。また、充填材FのX線回折測定から、充填材Fが、微量の酸化アルミニウム結晶を含むものの、ほぼ完全な窒化アルミニウム結晶であることがわかった。
【実施例7】
【0033】
分岐構造を持たないアルミナ繊維の間を、焼結剤を用いて結合させた不織布(焼結不織布)を作製し、焼結不織布を粉砕して接触点を有する充填材Gを作製した。まず、下記の手順に従って、前記焼結不織布を作製した。分岐構造を持たないアルミナファイバ(MAFTEC−ALS:三菱化学産資株式会社製:繊維径3.5μm,50g)と、焼結剤(アルミナゾル,2g)をイオン交換水(1000g)に添加し、撹拌して、前記アルミナ繊維と、前記焼結剤との分散水溶液を調製した。前記分散水溶液を吸引濾過して得られるシート濾過物を、1200℃で4時間焼成して、焼結不織布を作製した。
【0034】
次に、焼結不織布を、ボールミルを用いて粉砕し、充填材Gを作製した。焼結不織布(50g)と、アルミナビーズ(直径2mm:50g)とを、容量が200mlのプラスチック製円筒容器に入れ、ミックスロータ上で48時間回転させた。その後、アルミナビーズを除去し、充填材Gを得た。充填材GのX線回折曲線から、前記焼結不織布がα−アルミナから構成されていることがわかった。図7に、充填材Gの電子顕微鏡像の模式図を示す。前記充填材Gは、平均繊維径が3.5μm程度であり、前記繊維間の接触点が焼結されていることがわかった。また、充填材Gの最大長は、25μm程度であった。
【0035】
上記充填材A〜Gの特徴を表1に示す。各種化合物を成分とする分岐構造のある充填材,分岐構造のほとんどない充填材を作製した。また、それぞれ数平均繊維径,最大長の異なる充填材を得た。
【0036】
【表1】

【実施例8】
【0037】
次に充填材Aと、エポキシ樹脂とからなる複合材料Aを作製した。充填材A(25g),エピコート828(エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン製:38.6g),MHAC−P(樹脂硬化剤:日立化成工業製:36.0g),2E4MZ−CN(硬化反応触媒:四国化学製:0.4g)を混合し、テトラヒドロフランを加えて全重量が800gの混合液を作製した。マグネチックスターラを用いて前記混合液を撹拌して充填材Aを一様に分散させた。その後、塗工機を用いて混合液をシート状に塗工し、テトラヒドロフランを蒸発させた。得られた混合物のシートを、膜厚が100μmのスペーサ存在下で減圧プレス(6MPa)しながら、180℃で3時間放置し、エポキシ樹脂を硬化させて、表面が平滑な膜厚100μmの複合材料Aを得た。熱重量分析の結果、複合材料Aの充填材含有率が25重量パーセントであることがわかった。図8に複合材料Aの断面の電子顕微鏡像の模式図を示す。この図から、複合材料A中に分岐構造を持つ繊維状充填材が分散していることが確認された。なお、複合材A中にボイド等の欠陥はほとんど観察されなかった。
【0038】
次に、複合材料Aの熱伝導率を評価した。複合材料Aの熱伝導率は1.3W/mKであった。
【実施例9】
【0039】
次に充填材Aと、エポキシ樹脂と、からなる複合材料Bを作製した。充填材A(45g),エピコート828(エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン製:28.3g),MHAC−P(樹脂硬化剤:日立化成工業製:26.4g),2E4MZ−CN(硬化反応触媒:四国化学製:0.3g)を混合し、テトラヒドロフランを加えて全重量が800gの混合液を作製した。マグネチックスターラを用いて前記混合液を撹拌して充填材Aを一様に分散させた。その後、塗工機を用いて混合液をシート状に塗工し、テトラヒドロフランを蒸発させた。得られた混合物のシートを、膜厚が100μmのスペーサ存在下で減圧プレス(6MPa)しながら、180℃で3時間放置し、エポキシ樹脂を硬化させて、表面が平滑な膜厚100μmの複合材料Bを得た。熱重量分析の結果、複合材料Bの充填材含有率が45重量パーセントであることがわかった。図9に複合材料Bの断面の電子顕微鏡像の模式図を示す。この図から、複合材料B中に分岐構造を持つ繊維状充填材が分散していることが確認された。なお、複合材B中にボイド等の欠陥はほとんど観察されなかった。
【0040】
次に、複合材料Bの熱伝導率を評価した。複合材料Bの熱伝導率は1.9W/mKであった。
【実施例10】
【0041】
次に充填材Aと、エポキシ樹脂と、からなる複合材料Cを作製した。充填材A(65g),エピコート828(エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン製:18.0g),MHAC−P(樹脂硬化剤:日立化成工業製:16.8g),2E4MZ−CN(硬化反応触媒:四国化学製:0.2g)を混合し、テトラヒドロフランを加えて全重量が800gの混合液を作製した。マグネチックスターラを用いて前記混合液を撹拌して充填材Aを一様に分散させた。その後、塗工機を用いて混合液をシート状に塗工し、テトラヒドロフランを蒸発させた。得られた混合物のシートを、膜厚が100μmのスペーサ存在下で減圧プレス(6MPa)しながら、180℃で3時間放置し、エポキシ樹脂を硬化させて、表面が平滑な膜厚100μmの複合材料Cを得た。熱重量分析の結果、複合材料Cの充填材含有率が65重量パーセントであることがわかった。図10に複合材料Cの断面の電子顕微鏡像の模式図を示す。この図から、複合材料C中に分岐構造を持つ繊維状充填材が分散していることが確認された。なお、複合材C中にボイド等の欠陥はほとんど観察されなかった。
【0042】
次に、複合材料Cの熱伝導率を評価した。複合材料Cの熱伝導率は3.4W/mKであった。
【実施例11】
【0043】
次に充填材Aと、エポキシ樹脂と、からなる複合材料Dを作製した。充填材A(85g),エピコート828(エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン製:7.7g),MHAC−P(樹脂硬化剤:日立化成工業製:7.2g),2E4MZ−CN(硬化反応触媒:四国化学製:0.1g)を混合し、テトラヒドロフランを加えて全重量が800gの混合液を作製した。マグネチックスターラを用いて前記混合液を撹拌して充填材Aを一様に分散させた。その後、塗工機を用いて混合液をシート状に塗工し、テトラヒドロフランを蒸発させた。得られた混合物のシートを、膜厚が100μmのスペーサ存在下で減圧プレス(6MPa)しながら、180℃で3時間放置し、エポキシ樹脂を硬化させて、表面が平滑な膜厚100μmの複合材料Dを得た。熱重量分析の結果、複合材料Dの充填材含有率が85重量パーセントであることがわかった。図11に複合材料Dの断面の電子顕微鏡像の模式図を示す。この図から、複合材料D中に分岐構造を持つ繊維状充填材が分散していることが確認された。なお、複合材D中にボイド等の欠陥はほとんど観察されなかった。
【0044】
次に、複合材料Dの熱伝導率を評価した。複合材料Dの熱伝導率は13.2W/mKであった。
【実施例12】
【0045】
次に充填材Aと、アクリル樹脂と、からなる複合材料Eを作製した。充填材A(45g)、メタクリル酸メチル(アクリル樹脂単量体:和光純薬製:54.7g)と、過酸化ラウロイル(重合開始剤:Lancaster製:0.3g)と、を混合し、混合液を作製した。マグネチックスターラを用いて前記混合液を撹拌して充填材Aを一様に分散させた。その後、得られた混合液を、65℃密閉下で3時間放置し、表面が平滑な膜厚100μmの複合材料Eを得た。熱重量分析の結果、複合材料Eの充填材含有率が45重量パーセントであることがわかった。図12に複合材料Eの断面の電子顕微鏡像の模式図を示す。この図から、複合材料E中に分岐構造を持つ繊維状充填材が分散していることが確認された。なお、複合材料E中にボイド等の欠陥はほとんど観察されなかった。
【0046】
次に、複合材料Eの熱伝導率を評価した。複合材料Eの熱伝導率は2.0W/mKであった。
【実施例13】
【0047】
次に充填材Aと、不飽和ポリエステル樹脂と、からなる複合材料Fを作製した。充填材A(45g),WP−2763(不飽和ポリエステル樹脂:日立化成工業製:54.2g),CT−50(樹脂硬化剤:日立化成工業製:0.8g)を混合し、テトラヒドロフランを加えて全重量が800gの混合液を作製した。マグネチックスターラを用いて前記混合液を撹拌して充填材Aを一様に分散させた。その後、塗工機を用いて混合液をシート状に塗工し、テトラヒドロフランを蒸発させた。得られた混合物のシートを、膜厚が100μmのスペーサ存在下で減圧プレス(6MPa)しながら、100℃で2時間、130℃で1時間放置し、不飽和ポリエステル樹脂を硬化させて、表面が平滑な膜厚100μmの複合材料Fを得た。熱重量分析の結果、複合材料Fの充填材含有率が45重量パーセントであることがわかった。図13に複合材料Fの断面の電子顕微鏡像の模式図を示す。この図から、複合材料F中に分岐構造を持つ繊維状充填材が分散していることが確認された。なお、複合材料F中にボイド等の欠陥はほとんど観察されなかった。
【0048】
次に、複合材料Fの熱伝導率を評価した。複合材料Fの熱伝導率は1.9W/mKであった。
【実施例14】
【0049】
次に充填材Bと、エポキシ樹脂と、からなる複合材Gを作製した。充填材B(45g),エピコート828(エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン製:28.3g),MHAC−P(樹脂硬化剤:日立化成工業製:26.4g),2E4MZ−CN(硬化反応触媒:四国化学製:0.3g)を混合し、テトラヒドロフランを加えて全重量が800gの混合液を作製した。マグネチックスターラを用いて前記混合液を撹拌して充填材Bを一様に分散させた。その後、塗工機を用いて混合液をシート状に塗工し、テトラヒドロフランを蒸発させた。得られた混合物のシートを、膜厚が100μmのスペーサ存在下で減圧プレス(6MPa)しながら、180℃で3時間放置し、エポキシ樹脂を硬化させて、表面が平滑な膜厚100μmの複合材料Bを得た。熱重量分析の結果、複合材料Gの充填材含有率が45重量パーセントであることがわかった。図14に複合材料Gの断面の電子顕微鏡像の模式図を示す。この図から、複合材料G中に分岐構造を持つ繊維状充填材が分散していることが確認された。なお、複合材料G中にボイド等の欠陥はほとんど観察されなかった。次に、複合材料Gの熱伝導率を評価した。複合材料Gの熱伝導率は0.5W/mKであった。
【0050】
本実施例で用いたシリカのように、アルミナ,窒化アルミニウム以外の充填材であっても、複合材料が提供可能である。このような複合材料は、特に、アルミナ・窒化アルミニウムが使用しにくい部材に使用する場合には有用である。
【実施例15】
【0051】
次に充填材Cと、エポキシ樹脂と、からなる複合材Hを作製した。充填材C(45g),エピコート828(エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン製:28.3g),MHAC−P(樹脂硬化剤:日立化成工業製:26.4g),2E4MZ−CN(硬化反応触媒:四国化学製:0.3g)を混合し、テトラヒドロフランを加えて全重量が800gの混合液を作製した。マグネチックスターラを用いて前記混合液を撹拌して充填材Cを一様に分散させた。その後、塗工機を用いて混合液をシート状に塗工し、テトラヒドロフランを蒸発させた。得られた混合物のシートを、膜厚が100μmのスペーサ存在下で減圧プレス(6MPa)しながら、180℃で3時間放置し、エポキシ樹脂を硬化させて、表面が平滑な膜厚100μmの複合材料Hを得た。熱重量分析の結果、複合材料Hの充填材含有率が45重量パーセントであることがわかった。図15に複合材料Hの断面の電子顕微鏡像の模式図を示す。この図から、複合材料H中に分岐構造を持つ繊維状充填材が分散していることが確認された。なお、複合材料H中にボイド等の欠陥はほとんど観察されなかった。
【0052】
次に、複合材料Hの熱伝導率を評価した。複合材料Hの熱伝導率は2.6W/mKであった。
【0053】
[比較例1]
本比較例では、分岐構造を持たないアルミナ繊維である充填材Dと、エポキシ樹脂との複合材料Iを作製した。充填材D(25g),エピコート828(エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン製:38.6g),MHAC−P(樹脂硬化剤:日立化成工業製:36.0g),2E4MZ−CN(硬化反応触媒:四国化学製:0.4g)を混合し、テトラヒドロフランを加えて全重量が800gの混合液を作製した。マグネチックスターラを用いて前記混合液を撹拌して充填材Dを一様に分散させた。その後、塗工機を用いて混合液をシート状に塗工し、テトラヒドロフランを蒸発させた。得られた混合物のシートを、膜厚が100μmのスペーサ存在下で減圧プレス(6MPa)しながら、180℃で3時間放置し、エポキシ樹脂を硬化させて、表面が平滑な膜厚100μmの複合材料Iを得た。熱重量分析の結果、複合材料Iの充填材含有率が25重量パーセントであることがわかった。図16に複合材料Iの断面の電子顕微鏡像の模式図を示す。この図から、複合材料I中に分岐構造を持たない繊維状充填材が分散していることが確認された。なお、複合材料I中にボイド等の欠陥はほとんど観察されなかった。
【0054】
次に、複合材料Iの熱伝導率を評価した。複合材料Iの熱伝導率は0.8W/mKであった。
【0055】
[比較例2]
本比較例では、充填材の量を変化させ、分岐構造を持たないアルミナ繊維である充填材Dと、エポキシ樹脂との複合材料Jを作製した。充填材D(85g),エピコート828(エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン製:7.7g),MHAC−P(樹脂硬化剤:日立化成工業製:7.2g),2E4MZ−CN(硬化反応触媒:四国化学製:0.1g)を混合し、テトラヒドロフランを加えて全重量が800gの混合液を作製した。マグネチックスターラを用いて前記混合液を撹拌して充填材Dを一様に分散させた。その後、塗工機を用いて混合液をシート状に塗工し、テトラヒドロフランを蒸発させた。得られた混合物のシートを、膜厚が100μmのスペーサ存在下で減圧プレス(6MPa)しながら、180℃で3時間放置し、エポキシ樹脂を硬化させて、表面が平滑な膜厚100μmの複合材料Jを得た。熱重量分析の結果、複合材料Jの充填材含有率が85重量パーセントであることがわかった。図17に複合材料Jの断面の電子顕微鏡像の模式図を示す。この図から、複合材料J中に分岐構造を持たない繊維状充填材が分散していることが確認された。なお、複合材料J中にボイド等の欠陥はほとんど観察されなかった。
【0056】
次に、複合材料Jの熱伝導率を評価した。複合材料Jの熱伝導率は8.0W/mKであった。
【0057】
[比較例3]
本比較例では、分岐構造を持たないアルミナ繊維である充填材Dと、アクリル樹脂との複合材料Kを作製した。充填材D(45g),メタクリル酸メチル(アクリル樹脂単量体:和光純薬製:54.7g)と、過酸化ラウロイル(重合開始剤:Lancaster製:0.3g)と、を混合し、混合液を作製した。マグネチックスターラを用いて前記混合液を撹拌して充填材Dを一様に分散させた。その後、得られた混合液を、65℃密閉下で3時間放置し、表面が平滑な膜厚100μmの複合材料Kを得た。熱重量分析の結果、複合材料Kの充填材含有率が45重量パーセントであることがわかった。図18に複合材料Kの断面の電子顕微鏡像の模式図を示す。この図から、複合材料K中に分岐構造を持たない繊維状充填材が分散していることが確認された。なお、複合材料K中にボイド等の欠陥はほとんど観察されなかった。次に、複合材料Kの熱伝導率を評価した。複合材料Kの熱伝導率は1.2W/mKであった。
【0058】
[比較例4]
本比較例では、分岐構造を持たないアルミナ繊維からなる充填材Dと、不飽和ポリエステル樹脂との複合材料Lを作製した。充填材D(45g),WP−2763(不飽和ポリエステル樹脂:日立化成工業製:54.2g),CT−50(樹脂硬化剤:日立化成工業製:0.8g)を混合し、テトラヒドロフランを加えて全重量が800gの混合液を作製した。マグネチックスターラを用いて前記混合液を撹拌して充填材Dを一様に分散させた。その後、塗工機を用いて混合液をシート状に塗工し、テトラヒドロフランを蒸発させた。得られた混合物のシートを、膜厚が100μmのスペーサ存在下で減圧プレス(6MPa)しながら、100℃で2時間、130℃で1時間放置し、不飽和ポリエステル樹脂を硬化させて、表面が平滑な膜厚100μmの複合材料Lを得た。熱重量分析の結果、複合材料Lの充填材含有率が45重量パーセントであることがわかった。図19に複合材料Lの断面の電子顕微鏡像の模式図を示す。この図から、複合材料L中に分岐構造を持たない繊維状充填材が分散していることが確認された。なお、複合材料L中にボイド等の欠陥はほとんど観察されなかった。
【0059】
次に、複合材料Lの熱伝導率を評価した。複合材料Lの熱伝導率は1.1W/mKであった。
【0060】
[比較例5]
次に充填材Eと、エポキシ樹脂と、からなる複合材Mを作製した。充填材E(45g),エピコート828(エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン製:28.3g),MHAC−P(樹脂硬化剤:日立化成工業製:26.4g),2E4MZ−CN(硬化反応触媒:四国化学製:0.3g)を混合し、テトラヒドロフランを加えて全重量が800gの混合液を作製した。マグネチックスターラを用いて前記混合液を撹拌して充填材Eを一様に分散させた。その後、塗工機を用いて混合液をシート状に塗工し、テトラヒドロフランを蒸発させた。得られた混合物のシートを、膜厚が100μmのスペーサ存在下で減圧プレス(6MPa)しながら、180℃で3時間放置し、エポキシ樹脂を硬化させて、表面が平滑な膜厚100μmの複合材料Mを得た。熱重量分析の結果、複合材料Mの充填材含有率が45重量パーセントであることがわかった。図20に複合材料Mの断面の電子顕微鏡像の模式図を示す。この図から、複合材料M中に分岐構造を持たない繊維状充填材が分散していることが確認された。なお、複合材料M中にボイド等の欠陥はほとんど観察されなかった。次に、複合材料Mの熱伝導率を評価した。複合材料Mの熱伝導率は0.3W/mKであった。
【0061】
[比較例6]
次に充填材Fと、エポキシ樹脂と、からなる複合材Nを作製した。充填材F(45g),エピコート828(エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン製:28.3g),MHAC−P(樹脂硬化剤:日立化成工業製:26.4g),2E4MZ−CN(硬化反応触媒:四国化学製:0.3g)を混合し、テトラヒドロフランを加えて全重量が800gの混合液を作製した。マグネチックスターラを用いて前記混合液を撹拌して充填材Fを一様に分散させた。その後、塗工機を用いて混合液をシート状に塗工し、テトラヒドロフランを蒸発させた。得られた混合物のシートを、膜厚が100μmのスペーサ存在下で減圧プレス(6MPa)しながら、180℃で3時間放置し、エポキシ樹脂を硬化させて、表面が平滑な膜厚100μmの複合材料Nを得た。熱重量分析の結果、複合材料Nの充填材含有率が45重量パーセントであることがわかった。図21に複合材料Nの断面の電子顕微鏡像の模式図を示す。この図から、複合材料N中に分岐構造を持たない繊維状充填材が分散していることが確認された。なお、複合材料N中にボイド等の欠陥はほとんど観察されなかった。次に、複合材料Nの熱伝導率を評価した。複合材料Nの熱伝導率は1.6W/mKであった。
【0062】
[比較例7]
本比較例では、分岐構造を持たないアルミナ繊維間の接触点を、焼結剤を用いて結合した不織布(焼結不織布)を作製し、前記焼結不織布を粉砕して作製した充填材Gと、エポキシ樹脂との複合材料Oを作製した。充填材G(45g),エピコート828(エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン製:28.3g),MHAC−P(樹脂硬化剤:日立化成工業製:26.4g),2E4MZ−CN(硬化反応触媒:四国化学製:0.3g)を混合し、テトラヒドロフランを加えて全重量が800gの混合液を作製した。マグネチックスターラを用いて前記混合液を撹拌して充填材Oを一様に分散させた。その後、塗工機を用いて混合液をシート状に塗工し、テトラヒドロフランを蒸発させた。得られた混合物のシートは、凹凸が多く、全体的に不均一であった。得られた混合物のシートを、膜厚が100μmのスペーサ存在下で減圧プレス(6MPa)しながら、180℃で3時間放置し、エポキシ樹脂を硬化させて複合材料Oを得た。複合材料Oは、表面に凹凸が多く、一部に亀裂が観察された。また、膜厚に大きなばらつきがあったため、複合材料Oの熱伝導率は評価できなかった。
【0063】
表2に、上記の実施例及び比較例をまとめた。
【0064】
【表2】

【0065】
実施例8〜11(複合材料A,B,C,D)と比較例1,2(複合材料I,J)との比較から、充填材含有率が25〜85重量パーセントの範囲で、分岐構造を持つ繊維状充填材を用いた複合材料の熱伝導率が、分岐構造を持たない繊維状充填材を用いた複合材料の熱伝導率より大きいことが示された。この理由として、繊維状充填材が分岐構造を有することにより、繊維状充填材が形成する熱伝導経路の熱伝導効率が向上したことが考えられる。
【0066】
また、実施例(複合材料A〜H)と比較例3(複合材料O)との比較から、分岐構造を持つ繊維状充填材の最大長を10μm以下にすることにより、成形性と高熱伝導性を両立した複合材料が作製できることが示された。以上より、本発明の優位性が示された。また、数平均繊維径が極端に大きい場合には、繊維状充填材と樹脂とが充分に混合されず、充填材が一様に分散しにくくなり、成形性が低下するおそれがある。しかし、実施例の結果より数平均繊維径は500nm以下であれば、充分に成形が可能であった。
【0067】
また、分岐構造を有する充填材は、複合材料の熱伝導率を向上させる効果が高く、従来より少量の充填材であっても目標とする熱伝導率が達成できることとなる。一般に、複合材料の成形性は充填材含有率が低いほど良いため、本実施例の複合材料は成形性の良さが必要とされる部材に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】充填材Aの電子顕微鏡像の模式図。
【図2】充填材Bの電子顕微鏡像の模式図。
【図3】充填材Cの電子顕微鏡像の模式図。
【図4】充填材Dの電子顕微鏡像の模式図。
【図5】充填材Eの電子顕微鏡像の模式図。
【図6】充填材Fの電子顕微鏡像の模式図。
【図7】充填材Gの電子顕微鏡像の模式図。
【図8】複合材料A断面の電子顕微鏡像の模式図。
【図9】複合材料B断面の電子顕微鏡像の模式図。
【図10】複合材料C断面の電子顕微鏡像の模式図。
【図11】複合材料D断面の電子顕微鏡像の模式図。
【図12】複合材料E断面の電子顕微鏡像の模式図。
【図13】複合材料F断面の電子顕微鏡像の模式図。
【図14】複合材料G断面の電子顕微鏡像の模式図。
【図15】複合材料H断面の電子顕微鏡像の模式図。
【図16】複合材料I断面の電子顕微鏡像の模式図。
【図17】複合材料J断面の電子顕微鏡像の模式図。
【図18】複合材料K断面の電子顕微鏡像の模式図。
【図19】複合材料L断面の電子顕微鏡像の模式図。
【図20】複合材料M断面の電子顕微鏡像の模式図。
【図21】複合材料N断面の電子顕微鏡像の模式図。
【符号の説明】
【0069】
1 充填材A
2 充填材B
3 充填材C
4 充填材D
5 充填材E
6 充填材F
7 充填材G
11 エポキシ樹脂
12 アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル)
13 不飽和ポリエステル樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、樹脂中に分散された充填材とを有する複合材料であって、
前記充填材の少なくとも一部が分岐構造を持つ繊維状の充填材であり、前記分岐構造を持つ繊維状充填材の最大長が10μm以下であることを特徴とする複合材料。
【請求項2】
請求項1に記載の複合材料であって、前記分岐構造を持つ繊維状充填材の数平均繊維径は500nm以下であることを特徴とする複合材料。
【請求項3】
請求項1に記載の複合材料であって、前記分岐構造を持つ繊維状充填材は、無機酸化物または無機窒化物を含有することを特徴とする複合材料。
【請求項4】
請求項1に記載の複合材料であって、前記分岐構造を持つ繊維状充填材は、酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムを含有することを特徴とする複合材料。
【請求項5】
請求項1に記載の複合材料であって、前記樹脂は、エポキシ樹脂,アクリル樹脂,不飽和ポリエステル樹脂のうち1つ以上を含有することを特徴とする複合材料。
【請求項6】
請求項1に記載の複合材料であって、前記複合材料中に占める前記充填材の含有量が25〜85重量%であることを特徴とする複合材料。
【請求項7】
請求項1に記載の複合材料であって、前記充填材のうち、前記分岐構造を持つ繊維状充填材の含有量が50重量%以上であることを特徴とする複合材料。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の複合材料を用いたことを特徴とする高熱伝導部材。
【請求項9】
分岐構造を持つ繊維状の充填材であって、最大長が10μm以下であることを特徴とする繊維状充填材。
【請求項10】
請求項9に記載の繊維状充填材であって、数平均繊維径が500nm以下であることを特徴とする繊維状充填材。
【請求項11】
請求項9に記載の繊維状充填材であって、無機酸化物または無機窒化物を含有することを特徴とする繊維状充填材。
【請求項12】
請求項9に記載の繊維状充填材であって、酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムを含有することを特徴とする繊維状充填材。
【請求項13】
有機物繊維シート材に、アルミニウム化合物を吸着させる工程と、アルミニウム化合物の吸着した有機物繊維シート材を酸化ガスの存在下で加熱して有機物繊維材を除去し、アルミニウム化合物よりなるシート材を得る工程と、アルミニウム化合物よりなるシート材を加熱してアルミニウム化合物をα化アルミナとする工程とを有することを特徴とする繊維状充填材の製造方法。
【請求項14】
有機物繊維シート材に、アルミニウム化合物を吸着させる工程と、アルミニウム化合物の吸着した有機物繊維シート材を酸化ガスの存在下で加熱して有機物繊維材を除去し、アルミニウム化合物よりなるシート材を得る工程と、アルミニウム化合物よりなるシート材をアンモニアガス雰囲気下で加熱してアルミニウム化合物を窒化アルミニウムとする工程とを有することを特徴とする繊維状充填材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−167329(P2009−167329A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8624(P2008−8624)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】