説明

複合材部品製造方法、複合材部品製造装置及び検査装置

【課題】本発明の目的は、適切に貼り付けられた繊維強化プラスチックテープの貼り付け状態を誤って不適切と判定することを防止することである。
【解決手段】複合材部品製造方法は、繊維強化プラスチックテープを積層する過程を有する。複合材部品製造方法は、繊維強化プラスチックテープの積層中に、繊維強化プラスチックテープ70の貼り始め部位V1から貼り終り部位Vnまでの複数部位V1〜Vnにおいてテープ70の貼り付け状態を判定することを具備する。複数部位V1〜Vnの第1部位においてテープ70が他の繊維強化プラスチックテープと重なっていると判定され、且つ、複数部位V1〜Vnの第2部位においてテープ70と他の繊維強化プラスチックテープとの間に隙間があると判定された場合に積層が停止される。複数部位V1〜Vnの全てにおいてテープ70が他の繊維強化プラスチックテープと重なっていると判定された場合に積層が継続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化プラスチック部材を用いた複合材部品の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック部材は、航空機の構造部材等として用いられている。特許文献1は、ファイバプレスメント(Fiber Placement)法により繊維強化プラスチックテープの積層成形を自動的に実行する自動積層成形装置を開示している。特許文献1は、繊維強化プラスチックテープの貼り付け状態の判定について開示していない。
【0003】
特許文献2は、エッジ検出に基づくパターン検査方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−30296号公報
【特許文献2】特開2001−338304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、適切に貼り付けられた繊維強化プラスチックテープの貼り付け状態を誤って不適切と判定することが防止される複合材部品製造方法、複合材部品製造装置及び検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0007】
本発明による複合材部品製造方法は、繊維強化プラスチックテープを積層する過程を有する。複合材部品製造方法は、繊維強化プラスチックテープの積層中に、第1繊維強化プラスチックテープ(70)の貼り始め部位(V1)から貼り終り部位(Vn)までの複数部位(V1〜Vn)において前記第1繊維強化プラスチックテープの貼り付け状態を判定することを具備する。前記複数部位の第1部位(V3、V4)において前記第1繊維強化プラスチックテープが第2繊維強化プラスチックテープと重なっていると判定され、且つ、前記複数部位の第2部位(V1、V2、Vn)において前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープとの間に隙間があると判定された場合に前記積層が停止される。前記複数部位の全てにおいて前記第1繊維強化プラスチックテープが前記第2繊維強化プラスチックテープと重なっていると判定された場合に前記積層が継続される。
【0008】
前記貼り付け状態を判定することは、移動しながら前記第1繊維強化プラスチックテープを貼り付ける積層ヘッド(23)に取り付けられたカメラ(32)が前記複数部位それぞれの画像を撮影することで複数画像を撮影すること、前記複数部位について、前記複数画像の各画像から検出される輝度立ち上がりの数に基づいて前記第1繊維強化プラスチックテープが前記第2繊維強化プラスチックテープと重なっているか又は前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープの間に隙間があるかを判定することを含む。
【0009】
前記貼り付け状態を判定することは、前記輝度立ち上がりの数が2の場合に前記輝度立ち上がり間の距離に基づいて前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープの間の隙間量を算出することを含む。
【0010】
前記複数部位の全てにおいて前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープとの間に隙間があると判定された場合で、前記複数部位の少なくとも一つにおいて前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープとの間の隙間量が所定の閾値より大きい場合に前記積層が停止される。
【0011】
前記積層は、同一層に配置される繊維強化プラスチックテープどうしが重ならないことを規定した積層プログラム(27)に従って実行される。
【0012】
本発明による複合材部品製造装置(10)は、繊維強化プラスチックテープの積層を実行する自動積層装置(20)と、前記自動積層装置が前記積層において貼り付けた第1繊維強化プラスチックテープ(70)の貼り始め部位(V1)から貼り終り部位(Vn)までの複数部位(V1〜Vn)において前記第1繊維強化プラスチックテープの貼り付け状態を判定する検査装置(30)とを具備する。前記自動積層装置は、前記検査装置が前記複数部位の第1部位(V3、V4)において前記第1繊維強化プラスチックテープが第2繊維強化プラスチックテープと重なっていると判定し、且つ、前記複数部位の第2部位(V1、V2、Vn)において前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープとの間に隙間があると判定した場合に、前記積層を停止する。前記自動積層装置は、前記検査装置が前記複数部位の全てにおいて前記第1繊維強化プラスチックテープが前記第2繊維強化プラスチックテープと重なっていると判定した場合に、前記積層を継続する。
【0013】
前記自動積層装置は、移動しながら前記第1繊維強化プラスチックテープを貼り付ける積層ヘッド(23)を備える。前記検査装置は、前記積層ヘッドに取り付けられたカメラ(32)を備える。前記カメラは、前記複数部位ぞれぞれの画像を撮影することで複数画像を撮影する。前記検査装置は、前記複数部位について、前記複数画像の各画像から検出される輝度立ち上がりの数に基づいて前記第1繊維強化プラスチックテープが前記第2繊維強化プラスチックテープと重なっているか又は前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープの間に隙間があるかを判定する。
【0014】
前記検査装置は、前記輝度立ち上がりの数が2の場合に前記輝度立ち上がり間の距離に基づいて前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープの間の隙間量を算出する。
【0015】
前記自動積層装置は、前記複数部位の全てにおいて前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープとの間に隙間があると判定された場合で、前記複数部位の少なくとも一つにおいて前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープとの間の隙間量が所定の閾値より大きい場合に、前記積層を停止する。
【0016】
前記自動積層装置は、同一層に配置される繊維強化プラスチックテープどうしが重ならないことを規定した積層プログラム(27)に従って前記積層を実行する。
【0017】
前記検査装置は、照明(33)を備える。前記カメラは、前記第1繊維強化プラスチックテープの側端部の真上に配置され且つ前記側端部を向くように前記積層ヘッドに取り付けられる。前記照明は、前記側端部の真上から前記第1繊維強化プラスチックテープの幅方向にずれた位置に配置され且つ前記側端部を向くように前記積層ヘッドに取り付けられる。
【0018】
本発明による検査装置(30)は、繊維強化プラスチックテープの積層を実行する自動積層装置(20)の積層ヘッド(23)に取り付けられたカメラ(32)と、情報処理装置(34)とを具備する。前記積層ヘッドは、前記積層において移動しながら第1繊維強化プラスチックテープ(70)を貼り付ける。前記情報処理装置は、前記カメラが撮影した複数画像に基づいて前記第1繊維強化プラスチックの複数部位(V1〜Vn)における前記第1繊維強化プラスチックテープの貼り付け状態を判定し、前記貼り付け状態の判定結果に基づいて積層停止信号又は積層継続信号を出力する。
【0019】
前記情報処理装置は、前記複数部位の第1部位(V3、V4)において前記第1繊維強化プラスチックテープが第2繊維強化プラスチックテープと重なっていると判定し、且つ、前記複数部位の第2部位(V1、V2、Vn)において前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープとの間に隙間があると判定した場合に、前記積層停止信号を出力し、前記複数部位の全てにおいて前記第1繊維強化プラスチックテープが前記第2繊維強化プラスチックテープと重なっていると判定した場合に、前記積層継続信号を出力する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、適切に貼り付けられた繊維強化プラスチックテープの貼り付け状態を誤って不適切と判定することが防止される複合材部品製造方法、複合材部品製造装置及び検査装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る複合材部品製造装置の上面図である。
【図2】図2は、複合材部品製造装置のA−A断面図である。
【図3】図3は、複合材部品製造装置の積層ヘッドの側面図である。
【図4】図4は、積層ローラー、カメラ、及び照明の上面図である。
【図5】図5は、積層ローラー、カメラ、及び照明の側面図である。
【図6】図6は、複合材部品製造装置のブロック図である。
【図7】図7は、貼り付け中テープの近くに貼り付け済みテープがない場合に関し、(a)貼り付け中テープのある部位における断面図、(b)その部位の画像、(c)画像における輝度分布を示す。
【図8】図8は、貼り付け中テープと隣接する貼り付け済みテープがある場合に関し、(a)貼り付け中テープと貼り付け済みテープとの間に隙間がある部位における断面図、(b)その部位の画像、(c)画像における輝度分布を示す。
【図9】図9は、貼り付け中テープと隣接する貼り付け済みテープがある場合に関し、(a)貼り付け中テープと貼り付け済みテープとが重なっている部位における断面図、(b)その部位の画像、(c)画像における輝度分布を示す。
【図10】図10は、(a)貼り付け準備中の積層ヘッド、(b)貼り付け開始時の積層ヘッド、(c)貼り付け中の積層ヘッド、(d)貼り付け終了時の積層ヘッド、(e)貼り付け待機中の積層ヘッドを示す。
【図11】図11は、テープの貼り始め部位から貼り終り部位までの複数部位のすべてについて隙間と判定された場合の検査データを示す。
【図12】図12は、テープの貼り始め部位から貼り終り部位までの複数部位のある部位において隙間と判定され、他の部位において重なりと判定された場合の検査データを示す。
【図13】図13は、テープの貼り始め部位から貼り終り部位までの複数部位のすべてについて重なりと判定された場合の検査データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付図面を参照して、本発明による複合材部品製造方法、複合材部品製造装置及び検査装置を実施するための形態を以下に説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る複合材部品製造装置10を説明する。複合材部品製造装置10は、繊維強化プラスチックテープの積層を実行して複合材部品を製造する。複合材部品製造装置10は、駆動装置22と、積層ヘッド23を備える。複合材部品製造装置10について、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸が定義されている。Z軸は、鉛直上向きである。駆動装置22は、積層ヘッド23をX軸に平行及びY軸に平行に並進駆動する。
【0024】
図2を参照して、駆動装置22は、積層ヘッド23をZ軸に平行に並進駆動し、Z軸に平行な回転軸S1まわりに回転駆動する。駆動装置22は、上記三つの並進駆動にそれぞれ対応する三つのサーボ機構と、上記回転駆動に対応するサーボ機構を備える。
【0025】
図3を参照して、積層ヘッド23は、駆動装置22によって駆動されて貼り付け対象物体60に対して移動する。積層ヘッド23は、移動しながら繊維強化プラスチックテープ70を貼り付け対象物体60に貼り付ける。ここで、貼り付け対象物体60は、型又は型の上に積層された繊維強化プラスチックテープの積層体である。積層ヘッド23は、テープ供給装置24と、カッター25と、積層ローラー26を備える。積層ヘッド23には、二つの撮影ユニット31が取り付けられている。テープ供給装置24は、テープ70を送り出す。積層ローラー26は、送り出されたテープ70を貼り付け対象物体60に押し付けて貼り付ける。
【0026】
図4を参照して、積層ローラー26は、回転軸S2まわりに回転してテープ70上を転がりながらテープ70を貼り付け対象物体60に押し付ける。回転軸S2は、回転軸S1に垂直であり、テープ70の幅方向に平行である。テープ70は、幅方向の両側にそれぞれ側端部70a及び70bを備える。二つの撮影ユニット31は、テープ70の貼り付け状態を撮影可能なように、積層ローラー26に対して積層ヘッド23の移動方向(進行方向)後方側に配置される。二つの撮影ユニット31は、それぞれ側端部70a及び70bに対応する位置に配置される。以下、側端部70aに対応する撮影ユニット31を左側撮影ユニット31と呼ぶ場合があり、側端部70bに対応する撮影ユニット31を右側撮影ユニット31と呼ぶ場合がある。左側撮影ユニット31は、側端部70aの真上に配置され且つ側端部70aを向くカメラ32と、側端部70aの真上からテープ70の幅方向外側にずれた位置に配置され且つ側端部70aを向く照明33と、側端部70aの真上からテープ70の幅方向内側にずれた位置に配置され且つ側端部70aを向く照明33とを備える。右側撮影ユニット31は、側端部70bの真上に配置され且つ側端部70bを向くカメラ32と、側端部70bの真上からテープ70の幅方向外側にずれた位置に配置され且つ側端部70bを向く照明33と、側端部70bの真上からテープ70の幅方向内側にずれた位置に配置され且つ側端部70aを向く照明33とを備える。つまり、照明33は、側端部70a又は70bの真上から回転軸S2に平行な直線に沿ってずれた位置に配置される。カメラ32は、例えば、CCD(Charge
Coupled Device)カメラである。カメラ32の光軸はZ軸に平行である。照明33は、例えば、LED(Light Emitting Diode)照明である。
【0027】
上述のように照明33が繊維強化プラスチックテープに斜めに光を照射するため、撮影ユニット31が撮影した画像において繊維強化プラスチックテープの側端部が強調される。
【0028】
なお、側端部70aは、左側撮影ユニット31の撮影範囲に含まれるが、右側撮影ユニット31の撮影範囲に含まれない。側端部70bは、右側撮影ユニット31の撮影範囲に含まれるが、左側撮影ユニット31の撮影範囲に含まれない。
【0029】
図5を参照して、カメラ32とテープ70のZ軸方向距離が照明33とテープのZ軸方向距離より大きくなるように、カメラ32及び照明33が配置される。
【0030】
図6を参照して、複合材部品製造装置10は、自動積層装置20と、検査装置30を備える。自動積層装置20は、既述の駆動装置22及び積層ヘッド23に加えて、制御装置21を備える。検査装置30は、既述の二つの撮影ユニット31に加えて、検査用コンピュータとしての情報処理装置34を備える。情報処理装置34は、入力装置35と、出力装置36と、処理装置37と、記憶装置38を備える。
【0031】
自動積層装置20は、積層プログラム(積層手順)27に従って繊維強化プラスチックテープの積層を実行する。制御装置21は、繊維強化プラスチックテープの積層の実行のため、積層プログラム27に基づいて駆動装置22、テープ供給装置24、及びカッター25を制御する。制御装置21は、テープ70の貼り付け中に積層ローラー26の回転軸S2が積層ヘッド23の移動方向に垂直になるように駆動装置22を制御する。更に、制御装置21は、自動積層装置20の動作状態を通知するための動作状態通知信号を検査装置30に出力する。
【0032】
検査装置30は、カメラ32が撮影した画像に基づいて自動積層装置20が貼り付けた繊維強化プラスチックテープの貼り付け状態を判定し、判定結果を示す検査データ40を生成する。記憶装置38は検査データ40を記憶する。検査装置30は、検査データ40に基づいて繊維強化プラスチックテープの貼り付けが適切に行われたか否かを判定し、判定結果を示す検査結果信号を出力する。
【0033】
自動積層装置20は、検査結果信号に基づいて、繊維強化プラスチックテープの積層を停止又は継続する。
【0034】
ここで、積層プログラム27は、複合材部品の同一層に配置されるテープが互いに平行に貼り付けられること、及び、同一層に配置されるテープどうしが重ならないことを規定する。以下、この点を具体的に説明する。積層プログラム27は、図7(a)に示すように、左側撮影ユニット31の撮影範囲にテープ70と同じ層に配置される繊維強化プラスチックテープが存在しないことを規定する場合がある。ここで、積層プログラム27が左側撮影ユニット31の撮影範囲にテープ70と同じ層に配置される繊維強化プラスチックテープが存在しないことを規定する場合とは、例えば、積層プログラム27が、複合材部品のある層に配置される全ての繊維強化プラスチックテープの中でテープ70が一番はじに位置し、且つ、他のテープがすべてテープ70の側端部70b側に位置するように、ある層に配置される全ての繊維強化プラスチックテープを貼り付けることを自動積層装置20に対して指示している場合である。積層プログラム27は、図8(a)に示すように、テープ70の側端部70aの側にテープ70と同じ層に配置される繊維強化プラスチックテープ71が存在し、且つ、テープ71のテープ70側の側端部71bと側端部70aとの間に所定の大きさ(隙間量)の隙間が設けられることを規定する場合がある。この場合の所定の隙間量は、側端部70a及び側端部71bの両方が左側撮影ユニット31の撮影範囲に存在するような値に設定される。しかし、積層プログラム27は、図9(a)に示すように、テープ70の側端部70aの側にテープ70と同じ層に配置される繊維強化プラスチックテープ71が存在し、且つ、テープ70及び71が互いに重なることを規定しない。
【0035】
図7(a)に示すように左側撮影ユニット31の撮影範囲にテープ70以外の繊維強化プラスチックテープが存在しないように貼り付けが実行された場合について説明する。図7(b)に示すように、左側撮影ユニット31のカメラ32が撮影した画像51には、側端部70a以外の側端部は写らない。画像51のW軸は、テープ70の幅方向に平行である。図7(c)は、画像51のW軸上の輝度分布を示している。輝度分布は、側端部70aに対応する立ち上がり(ピーク)のみを有する。
【0036】
図8(a)に示すように左側撮影ユニット31の撮影範囲にテープ70及びテープ71が存在し、テープ70及びテープ71の間に隙間が設けられるように貼り付けが実行された場合について説明する。図8(b)に示すように、左側撮影ユニット31のカメラ32が撮影した画像52には、側端部70a及び71bが写る。画像52のW軸は、テープ70の幅方向に平行である。図8(c)は、画像52のW軸上の輝度分布を示している。輝度分布は、側端部70aに対応する立ち上がりと側端部71bに対応する立ち上がりとを有する。
【0037】
図9(a)に示すように左側撮影ユニット31の撮影範囲においてテープ70とテープ71とが重なるように貼り付けが実行された場合について説明する。テープ71がテープ70よりも先に貼り付けられた場合、図9(a)に示すように側端部70aはテープ71の上に配置され、側端部71bはテープ70の下に配置される。図9(b)に示すように、左側撮影ユニット31のカメラ32が撮影した画像53には、側端部70aのみが写り、側端部71bはテープ70の下になっているために写らない。画像53のW軸は、テープ70の幅方向に平行である。図9(c)は、画像53のW軸上の輝度分布を示している。輝度分布は、側端部70aに対応する立ち上がりのみを有する。
【0038】
処理装置37は、図7(c)及び図9(c)に示されるように画像から検出される輝度の立ち上がりが一つの場合、その画像が撮影された部位において、テープ70が他のテープと重なっていると判定する。処理装置37は、図8(c)に示されるように画像から検出される輝度の立ち上がりが二つの場合、その画像が撮影された部位において、テープ70とテープ70に隣接するテープとの間に隙間が設けられていると判定し、二つの立ち上がりの間の距離Pに基づいて、隙間量を算出する。ここで、公知のエッジ検出方法を応用して輝度の立ち上がりを検出することが可能である。
【0039】
右側撮影ユニット31の撮影範囲にテープ70以外の繊維強化プラスチックテープが存在しない場合又は存在する場合についても、上述の説明と同様のことが成立する。
【0040】
図10を参照して、複合材部品製造装置10が実行する複合材部品製造方法を説明する。
【0041】
自動積層装置20は、積層プログラム27に従って繊維強化プラスチックテープの積層を実行する。図10(a)は、その積層の実行中における積層準備状態を示している。このとき、積層ヘッド23は、貼り付け対象物体60から離れた位置に配置される。
【0042】
制御装置21は、駆動装置22に積層ヘッド23をZ軸方向に移動させ、積層ローラー26と貼り付け対象物体60の間にテープ70の貼り始め部位を挟む。図10(b)は、この状態を示している。
【0043】
制御装置21が動作状態通知信号として貼り付け開始信号を出力した後、自動積層装置20はテープ70の貼り付けを開始する。テープ70の貼り付け中において、制御装置10は、積層プログラム27が指定する経路を積層ヘッド23が移動するように数値制御により駆動装置22を駆動する。テープ70の貼り付け中、テープ供給装置24はテープ70を送り出し、積層ローラー26は送り出されたテープ70を貼り付け対象物体60に押し付けて貼り付ける。テープ70の貼り付け中、制御装置21は、積層ヘッド23のX、Y、Z座標を示す動作状態信号を一定時間間隔で出力する。図10(c)は、テープ70の貼り付け中の状態を示している。
【0044】
制御装置21は、積層プログラム27が指定する貼り付け終了位置に積層ヘッド23が到達したら、駆動装置22に積層ヘッド23の移動を停止させ、カッター25にテープ70を切断させ、貼り付け終了信号を出力する。このとき、積層ローラー26と貼り付け対象物体60の間にテープ70の貼り終り部位が挟まれている。図10(d)は、積層ヘッド23が貼り付け終了位置で停止した状態を示している。
【0045】
制御装置21は、駆動装置22に積層ヘッド23をZ軸方向に移動させ、積層ヘッド23を貼り付け対象物体60から離れた待機位置に保持させる。図10(e)は、積層ヘッド23が待機位置に保持された状態を示している。制御装置21は、積層ヘッド23が待機位置に保持された状態で、検査装置30からの検査結果信号を待つ。
【0046】
テープ70の貼り付け中における検査装置30の動作を説明する。カメラ32は、貼り付け開始信号に応答して一定時間間隔での撮影を開始し、貼り付け終了信号に応答して撮影を終了する。これにより、カメラ32はテープ70の貼り始め部位V1から貼り終り部位Vnまでの複数部位V1〜Vnそれぞれの画像を撮影することで複数画像を撮影する。処理装置37は、積層ヘッド23のX、Y、Z座標を示す動作状態信号に基づいて、複数部位の各部位と貼り始め部位V1との距離Dを算出する。更に、処理装置37は、複数部位V1〜Vnについて、複数画像の各画像から輝度立ち上がりを検出し、各画像から検出される輝度立ち上がりの数に基づいてテープ70が他のテープと重なっているか又はテープ70と他のテープの間に隙間があるかを判定する。処理装置37は、輝度立ち上がりの数が1の場合にテープ70と他のテープが重なっていると判定し、輝度立ち上がりの数が2の場合にテープ70と他のテープの間に隙間があると判定する。処理装置37は、輝度立ち上がりの数が2の場合(隙間があると判定した場合)に輝度立ち上がり間の距離に基づいてテープ70と他のテープの間の隙間量Gを算出する。
【0047】
処理装置37は、検査データ40を生成して記憶装置38に記憶する。検査データ40は、テープ70の貼り始め部位V1から貼り終り部位Vnまでの複数部位V1〜Vnの全てについて、貼り始め部位V1からの距離D、重なり又は隙間の判定結果、及び、隙間と判定された場合の隙間量Gを示す。処理装置37は、検査データ40に基づいてテープ70の貼り付けが適切に実行されたか否かを判定し、判定結果を示す検査結果信号を出力する。
【0048】
図11は、テープ70の貼り始め部位V1から貼り終り部位Vnまでの複数部位V1〜Vnの全てについて、隙間と判定された場合の検査データ40を示している。検査データ40は、貼り始め部位V1からの距離がD1〜Dnの複数部位V1〜Vnにおいて、隙間(GAP)が存在し、隙間量がG1〜Gnであることを示している。ここで、貼り始め部位V1からの距離がD1(=0)の部位が貼り始め部位V1であり、貼り始め部位V1からの距離がDnの部位が貼り終り部位Vnである。図11に示すように、テープ70の貼り始め部位V1から貼り終り部位Vnまでの複数部位V1〜Vnの全てについて隙間と判定された場合、処理装置37は、隙間量G1〜Gnの各々を所定の閾値と比較する。隙間量G1〜Gnの全てが所定の閾値より小さい場合、処理装置37は、テープ70の貼り付けが適切に実行されたと判定し、検査結果信号として積層継続信号を出力する。隙間量G1〜Gnの少なくとも一つが所定の閾値より大きい場合、処理装置37は、テープ70の貼り付けが適切に実行されなかったと判定し、検査結果信号として積層停止信号を出力する。
【0049】
図12は、テープ70の貼り始め部位V1から貼り終り部位Vnまでの複数部位V1〜Vnのうちの貼り始め部位V1からの距離がD1、D2、Dnの部位V1、V2、Vnにおいて隙間と判定され、複数部位V1〜Vnのうちの貼り始め部位V1からの距離がD3、D4の部位V3、V4において重なり(LAP)と判定された場合の検査データ40示している。図12に示すように、テープ70の一つの部位において隙間と判定され、他の部位において重なりと判定された場合、検査装置37は、テープ70の貼り付けが適切に実行されなかったと判定し、検査結果信号として積層停止信号を出力する。
【0050】
図13は、テープ70の貼り始め部位から貼り終り部位までの複数部位の全てについて、重なりと判定された場合の検査データ40を示している。ここで、上述のように積層プログラム27が複合材部品の同一層に配置されるテープどうしが重ならないことを規定しているため、貼り始め部位V1から貼り終り部位Vnまでの複数部位V1〜Vnの全てにおいてテープ70が他のテープと重なる可能性は非常に低い。したがって、図13に示すように複数部位の全てについて重なりと判定された場合、テープ70と同じ層に配置される繊維強化プラスチックテープがカメラ32の撮影範囲に存在しないことを積層プログラム27が規定していると考えられる。図13に示すようにテープ70の貼り始め部位V1から貼り終り部位Vnまでの複数部位V1〜Vnの全てについて重なりと判定された場合、処理装置37は、テープ70の貼り付けが適切に実行されたと判定し、検査結果信号として積層継続信号を出力する。
【0051】
自動積層装置20は、積層継続信号に基づいて繊維強化プラスチックテープの積層を継続する。この場合、制御装置21は、積層継続信号に基づいて、次のテープを貼り付けるために積層ヘッド23を待機位置から移動する。
【0052】
自動積層装置20は、積層停止信号に基づいて繊維強化プラスチックテープの積層を停止する。この場合、作業者は、テープ70の貼り付け状態を目視により判定し、貼り付けのやり直しが必要な場合は自動積層装置20を操作して貼り付けのやり直しをさせ、貼り付けのやり直しの必要がない場合は自動積層装置20を操作して次のテープの貼り付けを実行させる。
【0053】
本実施形態によれば、図13に示されるように複数部位V1〜Vnの全てにおいて重なりと判定された場合に、積層プログラム27に従って適切に貼り付けられたテープ70の貼り付け状態を誤って不適切と判定して必要がないのに積層を停止することが防止される。
【0054】
本実施形態に対して様々な変更を加えることが可能である。
【0055】
例えば、上述した輝度の立ち上がりに基づいて重なりか隙間かの判定を実行し、隙間量を算出する方法のかわりに、ラインレーザーを用いた測定結果に基づいて重なりか隙間かの判定を実行し、隙間量を算出する方法を用いることが可能である。
【0056】
また、上述した検査装置30が検査データ40に基づいて積層継続信号又は積層停止信号を自動的に出力する方法のかわりに、次の方法を用いることが可能である。この方法において、出力装置36は結果データ40を出力する。作業者は、出力された結果データ40に基づいてテープ70が適切に貼り付けられたか否かを判定し、入力装置35を操作することで検査装置30に積層継続信号又は積層停止信号を出力させる。
【符号の説明】
【0057】
10…複合材部品製造装置
20…自動積層装置
21…制御装置
22…駆動装置
23…積層ヘッド
24…テープ供給装置
25…カッター
26…積層ローラー
27…積層プログラム
30…検査装置
31…撮影ユニット
32…カメラ
33…照明
34…情報処理装置
35…入力装置
36…出力装置
37…処理装置
38…記憶装置
40…検査データ
51〜53…画像
60…貼り付け対象物体(型又は積層体)
70、71…テープ
70a、70b、71b…側端部
S1…積層ヘッド回転軸
S2…積層ローラー回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化プラスチックテープを積層する過程を有する複合材部品製造方法であって、
繊維強化プラスチックテープの積層中に、第1繊維強化プラスチックテープの貼り始め部位から貼り終り部位までの複数部位において前記第1繊維強化プラスチックテープの貼り付け状態を判定することを具備し、
前記複数部位の第1部位において前記第1繊維強化プラスチックテープが第2繊維強化プラスチックテープと重なっていると判定され、且つ、前記複数部位の第2部位において前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープとの間に隙間があると判定された場合に前記積層が停止され、
前記複数部位の全てにおいて前記第1繊維強化プラスチックテープが前記第2繊維強化プラスチックテープと重なっていると判定された場合に前記積層が継続される
複合材部品製造方法。
【請求項2】
前記貼り付け状態を判定することは、
移動しながら前記第1繊維強化プラスチックテープを貼り付ける積層ヘッドに取り付けられたカメラが前記複数部位それぞれの画像を撮影することで複数画像を撮影すること、
前記複数部位について、前記複数画像の各画像から検出される輝度立ち上がりの数に基づいて前記第1繊維強化プラスチックテープが前記第2繊維強化プラスチックテープと重なっているか又は前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープの間に隙間があるかを判定すること
を含む
請求項1の複合材部品製造方法。
【請求項3】
前記貼り付け状態を判定することは、前記輝度立ち上がりの数が2の場合に前記輝度立ち上がり間の距離に基づいて前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープの間の隙間量を算出することを含む
請求項2の複合材部品製造方法。
【請求項4】
前記複数部位の全てにおいて前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープとの間に隙間があると判定された場合で、前記複数部位の少なくとも一つにおいて前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープとの間の隙間量が所定の閾値より大きい場合に前記積層が停止される
請求項3の複合材部品製造方法。
【請求項5】
前記積層は、同一層に配置される繊維強化プラスチックテープどうしが重ならないことを規定した積層プログラムに従って実行される
請求項1乃至4のいずれかに記載の複合材部品製造方法。
【請求項6】
繊維強化プラスチックテープの積層を実行する自動積層装置と、
前記自動積層装置が前記積層において貼り付けた第1繊維強化プラスチックテープの貼り始め部位から貼り終り部位までの複数部位において前記第1繊維強化プラスチックテープの貼り付け状態を判定する検査装置と
を具備し、
前記自動積層装置は、前記検査装置が前記複数部位の第1部位において前記第1繊維強化プラスチックテープが第2繊維強化プラスチックテープと重なっていると判定し、且つ、前記複数部位の第2部位において前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープとの間に隙間があると判定した場合に、前記積層を停止し、
前記自動積層装置は、前記検査装置が前記複数部位の全てにおいて前記第1繊維強化プラスチックテープが前記第2繊維強化プラスチックテープと重なっていると判定した場合に、前記積層を継続する
複合材部品製造装置。
【請求項7】
前記自動積層装置は、移動しながら前記第1繊維強化プラスチックテープを貼り付ける積層ヘッドを備え、
前記検査装置は、前記積層ヘッドに取り付けられたカメラを備え、
前記カメラは、前記複数部位それぞれの画像を撮影することで複数画像を撮影し、
前記検査装置は、前記複数部位について、前記複数画像の各画像から検出される輝度立ち上がりの数に基づいて前記第1繊維強化プラスチックテープが前記第2繊維強化プラスチックテープと重なっているか又は前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープの間に隙間があるかを判定する
請求項6の複合材部品製造装置。
【請求項8】
前記検査装置は、前記輝度立ち上がりの数が2の場合に前記輝度立ち上がり間の距離に基づいて前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープの間の隙間量を算出する
請求項7の複合材部品製造装置。
【請求項9】
前記自動積層装置は、前記複数部位の全てにおいて前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープとの間に隙間があると判定された場合で、前記複数部位の少なくとも一つにおいて前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープとの間の隙間量が所定の閾値より大きい場合に、前記積層を停止する
請求項8の複合材部品製造装置。
【請求項10】
前記自動積層装置は、同一層に配置される繊維強化プラスチックテープどうしが重ならないことを規定した積層プログラムに従って前記積層を実行する
請求項6乃至9のいずれかに記載の複合材部品製造装置。
【請求項11】
前記検査装置は、照明を備え、
前記カメラは、前記第1繊維強化プラスチックテープの側端部の真上に配置され且つ前記側端部を向くように前記積層ヘッドに取り付けられ、
前記照明は、前記側端部の真上から前記第1繊維強化プラスチックテープの幅方向にずれた位置に配置され且つ前記側端部を向くように前記積層ヘッドに取り付けられた
請求項6乃至10のいずれかに記載の複合材部品製造装置。
【請求項12】
繊維強化プラスチックテープの積層を実行する自動積層装置の積層ヘッドに取り付けられたカメラと、
情報処理装置と
を具備し、
前記積層ヘッドは、前記積層において移動しながら第1繊維強化プラスチックテープを貼り付け、
前記情報処理装置は、
前記カメラが撮影した複数画像に基づいて前記第1繊維強化プラスチックテープの複数部位における前記第1繊維強化プラスチックテープの貼り付け状態を判定し、
前記貼り付け状態の判定結果に基づいて積層停止信号又は積層継続信号を出力する
検査装置。
【請求項13】
前記情報処理装置は、
前記複数部位の第1部位において前記第1繊維強化プラスチックテープが第2繊維強化プラスチックテープと重なっていると判定し、且つ、前記複数部位の第2部位において前記第1繊維強化プラスチックテープと前記第2繊維強化プラスチックテープとの間に隙間があると判定した場合に、前記積層停止信号を出力し、
前記複数部位の全てにおいて前記第1繊維強化プラスチックテープが前記第2繊維強化プラスチックテープと重なっていると判定した場合に、前記積層継続信号を出力する
請求項12の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−104905(P2011−104905A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263293(P2009−263293)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】