説明

複合構造用ナノチューブ強化中間層

本明細書に、カーボンナノチューブ中間層アセンブリ、カーボンナノチューブ中間層アセンブリを製造する方法、及びカーボンナノチューブ中間層アセンブリを有する複合部品を製造する方法が開示されている。一実施形態においては、本発明の実施形態による複合構造を製造する方法は、基板の片側又は両側に複数のカーボンナノチューブを作製し、基板を第1繊維層に付着させるステップを含む。本方法はさらに、第2繊維層を第1繊維層に隣接して配置することにより、第1及び第2繊維層の間に複数のカーボンナノチューブを配置するステップを含むことができる。本方法は、第1及び第2繊維層に樹脂を注入して、樹脂を硬化させるステップを更に含むことができる。一実施形態では、カーボンナノチューブ基板を溶解接着によって第1繊維層に付着させることができる。別の実施形態においては、カーボンナノチューブ基板を第1繊維層に縫合して付着させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
下記の本発明は概して複合構造に関し、更に具体的には複合構造に使用されるナノチューブ強化中間層に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂材料、又は一般に知られるように「複合」材料は、高い強度重量比、耐食性、及び他の好適な特性のために、航空宇宙、自動車及び海洋への応用に頻繁に用いられている。従来の複合材料は通常、ガラス、カーボン、又は織物構成及び/又は不織物構成のポリアリミド繊維「層」を含む。繊維層を未硬化のマトリクス材(例えばエポキシ樹脂)で互いに積層させることによって、複合部品を製造することができる。その後積層体に熱及び/又は圧力を加えることによって硬化させて完成部品を作製することができる。
【0003】
複合部品はプリプレグ材料から、又は「プリフォーム」として結集した乾燥繊維層から製造することができる。プリプレグは、マトリクス材(例えばエポキシ樹脂)を予め含浸させた布、マット、ロービング、テープ又は他の形態の、成形準備ができた材料であり、未硬化又は半硬化した状態で使用するために保存される。プリプレグシートを、完成部品の形に成形面上に積層する。次に圧力をかけてプリプレグシートを圧縮し、熱を加えて硬化サイクルを完了することができる。プリフォームは、プリプレグアセンブリとは異なり、成形面上での樹脂注入プロセスのために準備された乾燥布及び/又は繊維のアセンブリである。プリフォーム層は普通、最終処理を行う前および最終処理を行っている間その形状を維持するために、互いに仮縫い及び/又は縫合されている、又はそうでなければ安定化されている。プリフォームが一旦安定化したら、液体成形プロセスを用いてプリフォーム層に樹脂を注入することができる。その次に部品を加圧及び/又は加熱することによって硬化させることができる。
【0004】
複合部品の繊維材料により、繊維の方向に比較的高い強度が得られる。しかしながら、耐衝撃性は硬化されたマトリクス材の特性によっておおむね決定される。耐衝撃性を高める一つの方法は、例えば熱可塑性材料等の粒子をマトリクス材に加えることである。熱可塑性材料は、通常裸眼では見えない、例えば異物片等によって発生した部品の亀裂伝播を抑えることができる。
【0005】
複合部品の耐衝撃性と破壊靱性を高める別の方法は、複合材料の交互層の間の接合線の構造的特性(すなわち中間層の特性)を強化させることである。カーボンナノチューブを中間層に加えることは、複合材料の中間層特性を向上させる一つの方法である。カーボンナノチューブは、(10ナノメートル(すなわち、1×10−8メートル)規模の)非常に小さな円筒でできている純粋な炭素の秩序分子である。カーボンナノチューブは並外れた強度を呈し、通常のカーボン繊維の30倍の強さを持つことができ、同等の重量を持つ鋼鉄よりも100倍強い。
【0006】
2つの繊維層の間にカーボンナノチューブを導入する一つの方法は、ナノチューブを接合線樹脂に加えることである。しかしながら、この方法の一つの不利点は、液体樹脂においてナノチューブの均一な分布を維持することがしばしば難しいということである。この方法の別の不利点は、樹脂にナノチューブを浮遊させた結果、隣接する繊維層の間のナノチューブの方向が不ぞろいになることである。さらに、わずかな量のナノチューブを液体樹脂に加えることによっても、液体樹脂の粘度が大幅に上がり、このため液体樹脂の加工性が下がる。したがって、複合部品のメーカーにとっては、カーボンナノチューブを繊維層の間に適切な配向で均一に分布する方法を有することが有利である。
【発明の概要】
【0007】
本発明は概して、複合構造用ナノチューブ強化中間層に関するものである。本発明の一態様にしたがって複合構造を製造する方法は、複数のカーボンナノチューブを基板上に作製し、基板を第1繊維層に付着させるステップを含む。本方法はさらに、第2繊維層を第1繊維層に隣接して配置することにより、第1繊維層と第2繊維層の間に複数のカーボンナノチューブを配置するステップを含む。本方法はその後、第1及び第2繊維層に樹脂を注入し、樹脂を硬化して複合構造を固くするステップに進む。この方法の一実施形態では、基板を第1繊維層に接着して樹脂注入の前にカーボンナノチューブを配置する。別の実施形態では、基板を第1繊維層に糸で縫いつける。更に別の実施形態では、基板をタッキファイヤーで第1繊維層に留める。
【0008】
本発明の別の態様に従って構成された複合構造は、第1及び第2繊維層の間に配置された中間層を含んでいる。中間層は、基板に取り付けられた複数のカーボンナノチューブを含むため、ナノチューブは基板に対して少なくともおおむね垂直であり、基板上に均一に分布している。複合構造は、第1及び第2繊維層に注入されたマトリクス材を更に含むことができる。一実施形態では、複数のカーボンナノチューブは、基板の第1側面から延びる複数の第1カーボンナノチューブと、基板の第2側面から延びる複数の第2カーボンナノチューブを含むことができる。
【0009】
本発明の別の態様による複合構造を製造するシステムは、基板上に複数のカーボンナノチューブを作製する手段と、複数のカーボンナノチューブが第1繊維層から離れるように延在するように、基板を第1繊維層に付着させる手段を備えている。本システムはさらに、第2繊維層を基板上に配置して、第1繊維層と第2繊維層の間に複数のカーボンナノチューブを配置する手段を備えることができる。本システムは、基板と、第1及び第2繊維層に樹脂を注入する手段と、樹脂を硬化させる手段をさらに備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は航空機の製造及び保守方法のフロー図である。
【図2】図2は航空機のブロック図である。
【図3】図3Aは本発明の一実施形態による繊維層に付着されたカーボンナノチューブ強化中間層の断面側面図であり、図3Bは図3Aのカーボンナノチューブ強化中間層の拡大した断面側面図である。
【図4】図4Aは本発明の別の実施形態による繊維層に付着されたカーボンナノチューブ強化中間層の断面側面図であり、図4Bは図4Aのカーボンナノチューブ強化中間層の拡大した断面側面図である。
【図5】図5は図4Aのカーボンナノチューブ強化中間層の部分的に切り取った等角図である。
【図6】図6Aは本発明の一実施形態に従って構成された第1カーボンナノチューブ強化中間層を有する第1複合積層板の等角図であり、図6Bは本発明の別の実施形態に従って構成された第2カーボンナノチューブ強化中間層を有する第2複合積層体の等角図である。
【図7】図7Aは図6Aの第1複合積層体の一部を拡大した断面等角図であり、図7Bは図6Bの第2複合積層体の一部を拡大した断面等角図である。
【図8】図8は本発明の一実施形態による複合部品を製造する方法を図示したフロー図である。
【図9】図9は本発明の別の実施形態による複合構造を製造する方法を図示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
下記の開示では、複合構造用ナノチューブ強化中間層と、ナノチューブ強化中間層を製造する方法と、航空機用複合部品及びナノチューブ強化中間層を有する他の構造体を製造する方法が説明される。下記の説明、及び図1A〜9において記載されている特定の詳細事項は、本発明の種々の実施形態を完全に理解するためのものである。複合部品及び複合部品製造にしばしば付随する周知の構造及びシステムを説明する他の詳細事項は、種々の実施形態の説明を不必要に分かりにくくしないために記載されていない。
【0012】
図面に示す詳細事項、寸法、角度及び他の特徴の多くは、特定の実施形態を単に図示するためのものである。したがって、本発明の精神又は範囲を逸脱することなしに、他の実施形態が他の詳細事項、寸法、角度及び特徴を有することができる。さらに、本発明の更なる実施形態を下に説明する詳細事項の幾つかを省いて実行することができる。
【0013】
図面においては、同じ参照番号は、同じ又は少なくとも全体的に同様の要素を特定している。全ての特定の要素の説明をしやすくするために、全ての参照番号の最も重要な数字又は複数の数字は、その要素が最初に示される図面に属する。例えば、要素310は図3Aを参照して最初に示され、説明されている。
【0014】
さらに具体的に図面を参照すると、本発明の実施形態は図1に示す航空機の製造及び保守方法100、及び図2に示す航空機102において説明することができる。試作段階においては、本方法100は航空機102の仕様及び設計104と、材料調達106を含むことができる。製造段階においては、航空機102の部品及びサブアセンブリの製造108と、システム統合110がおこなわれる。そのあとに、航空機102は、検査及び納入112を経て就航114されることができる。顧客によって就航されている間、航空機102には所定の保守及び点検116(変更、再構成、改装等も含むことができる)が予定される。
【0015】
本方法100の各プロセスは、図1のフロー図の右側の格子線内の「X」によって示されるように、システムインテグレータ、第三者、及び/又はオペレータ(例えば顧客等)によって行う又は実施することができる。この説明のために、システムインテグレータは限定しないが、任意の数の航空機メーカー、及び主要システムの下請け業者を含むことができ;第三者は限定しないが、任意の数の供給メーカー、下請け業者、及びサプライヤを含むことができ;オペレータは、航空会社、リース会社、軍部、サービス組織等であってよい。
【0016】
図2に示すように、例示の方法100によって製造された航空機102は、複数のシステム120及び内装122を有する機体118を含むことができる。高レベルシステム120の例は、一以上の推進システム124、電気システム126、油圧システム128、及び環境システム130が挙げられる。
【0017】
本明細書に具現化された装置及び方法は、製造及び保守方法100の任意の一以上の段階において採用することができる。例えば、製造プロセス108に対応する部品又はサブアセンブリは、航空機102が就航されている間に製造される部品又はサブアセンブリと同様の方法で加工又は製造することができる。また、一以上の装置の実施形態、方法の実施形態、又はそれらの組み合わせを例えば、航空機102の組立を実質的に迅速に行うことによって、又は航空機102の費用を削減することによって、製造段階108、110において用いることが可能である。同様に、一以上の装置の実施形態、方法の実施形態、又はそれらの組み合わせを、航空機102が就航されている間、例えば限定しないが保守及び点検116が実施されている間に使用することができる。
【0018】
図3Aは本発明の一実施形態に従って構成された中間層アセンブリ300の断面側面図である。図示した実施形態においては、中間層アセンブリ300は繊維層302に付着した中間層310を含む。繊維層302は、複数の方向性を持つ、たとえばカーボン、ガラス、ポリアラミド等の単向性、織物、不織物、組物、及び/又はワープニット繊維を含む技術的に周知の様々な種類の繊維材料を含むことができる。例えば、一実施形態では、繊維層302は複数の方向に織ったカーボン繊維を含むことができる。別の実施形態においては、繊維層302は単一の方向性を持ったカーボン繊維を含むことができる。
【0019】
図3Bは図3Aの中間層310を拡大した断面側面図である。中間層310は覆い又は基板312上でおおむね垂直に配向しているカーボンナノチューブ314の比較的均一な分布形態を含む。基板312は、限定しないが、カーボンナノチューブの製造又は「生成」にしばしば必要とされる比較的高温に耐えることができるカーボンファイバー、ガラス繊維、セラミック繊維(例えばアルミナ繊維)及び/又は他の柔軟性材料を含むことができる。基板312はまた、限定しないが、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニルサルフォン、ポリエステル−ポリアリレート(例:Vectran(登録商標))、ポリアラミド(例:Kevlar(登録商標))、ポリベンゾオキサゾール(例:Zylon(登録商標))、ビスコース(例:Rayon(登録商標))等を含むことができる。基板312はさらに、ナノチューブ成長プロセスにおいて基板繊維の適切な配向性を保つために必要な場合に、結合剤(例えば、可塑性樹脂;図示せず)を含むことができる。
【0020】
カーボンナノチューブ314は、技術的に周知の任意の適切な方法を使用して、基板312上に「生成」する又はそうでなければ作製することができる。上記方法は、例えばアーク放電法、レーザー切断法、及び化学蒸着(CVD)法を含むことができる。CVDでカーボンナノチューブを製造する方法は基本的に、触媒生成、そしてその後のナノチューブ合成を含む2つのステッププロセスである。触媒はスパッタリングによって、又はそうでなければ基板312上に遷移金属(例:Fe、Cu、Ti等)を積層することによって生成することができ、その後化学エッチング又は熱アニールによって触媒をパターニングして、触媒粒子の核生成を誘発する。この結果、基板312上に触媒のクラスターが形成され、ここからカーボンナノチューブ314を生成することが可能になる。炭素源(例えばメタン、エチレン、又は一酸化炭素等)からなるガスは、それのみ、あるいは他のガスと混ざった状態のいずれかで、約650〜900℃の範囲に及ぶ温度でパターニングされた触媒上を流れる。
【0021】
カーボンナノチューブ314が基板312の片側で成長した後に、接着層316を基板312の他の側に形成することができる。接着層316は、例えば限定しないが、熱硬化性又は熱可塑性樹脂(例えば、ナイロンベース又はポリエステルベースの樹脂)等の溶解接着剤、又は技術的に周知の他の適切な接着剤を含むことができる。
【0022】
図示した実施形態においては、基板312上のカーボンナノチューブ314は、接着層316を繊維層302に(例えば溶解接着によって)接着させることにより、繊維層302に付着されている。溶解接着は、接着層316の温度を上昇させて材料(例えば熱可塑性樹脂)を溶かし、これによって繊維層302を接着させることによって実施される。中間層の繊維層への溶解接着は、2003年5月2日出願の米国特許出願第10/428500号明細書に詳しく説明されている。この方法で中間層310を繊維層302に接着させることによって、おおむね垂直に配向した状態でカーボンナノチューブ314を繊維層302の表面上に比較的均一に分布させることができる。
【0023】
図4Aは本発明の別の実施形態に従って構成された中間層アセンブリ400の断面側面図である。中間層アセンブリ400は、繊維層402に付着した中間層410を含む。図4Bは中間層410の拡大した断面側面図である。図4Bに示すように、中間層410は、基板412の第1側面413a上の複数の第1カーボンナノチューブ414aと、基板412の第2側面413b上の複数の第2カーボンナノチューブ414bを含んでいる。基板412は、図3A及び3Bを参照して上述した基板312と、構造及び機能において少なくともおおむね同じようなものであってよい。同様に、複数の第1及び第2カーボンナノチューブ414を、それぞれ基板412の第1及び第2側面413a及び413b上に、上に説明したように技術的に周知の任意の適切な方法を用いて形成することができる。基板412の両側にカーボンナノチューブ414が形成されると、中間層410を繊維層402に接着させにくくなり得る。上記の実施形態においては、図5を参照しながら下にさらに詳細に説明するように、縫合、仮縫い及び/又は他の形態の構造的又は機械的留め具等の他の方法を用いて、中間層アセンブリ410を繊維層402に付着させることができる。
【0024】
図5は図4Aの中間層アセンブリ400の部分的に切り取った等角図である。図示した実施形態においては、中間層410は糸520で繊維層402に(例えば表編み、又は縫いつけにより)縫合されている。糸520は中間層410と繊維層402を貫通して延在している。縫合は、繊維層402、中間層410、糸520等の性質により、色々なパターン、密度、及び/又は縫合長さとなってよい。例えば、図示した実施形態においては、糸520はトリコット縫合を形成している。しかしながら他の実施形態においては、例えば限定しないが、ロック縫い、鎖縫い等を含む他の縫合パターンを使用することができる。糸520は例えば限定しないが、ポリエステル−ポリアリレート(例:Vectran(登録商標))、ポリアラミド(例:Kevlar(登録商標))、ポリベンゾオキサゾール(例:Zylon(登録商標))、Viscose(例:Rayon(登録商標))、アクリル、ポリアミド、カーボン、グラスファイバー等を含む、様々な厚みの種々の好適な材料から選択することができる。編成又は縫合ステップは、プレフォームとして中間層アセンブリ400を使用する前に、又はプレフォームの形態で繊維層402を最初に積層した後に、手動で又は自動的に実施することが可能である。中間層410を繊維層402に縫合する様々な方法は、2004年10月27日出願の米国特許出願第10/974426号明細書に詳しく説明されている。図5においては中間層410は糸520で繊維層402に縫合されているが、他の実施形態においては、中間層410は他の種類の留め具によって繊維層402に付着させることができる。例えば、他の実施形態においては、中間層410を例えば限定しないが、プラスチック製リベット、挿入具、ステープル等の機械的留め具で繊維層402に付着させることができる。
【0025】
図6Aは本発明の一実施形態にしたがって構成された第1複合積層体630aの等角図であり、図6Bは別の実施形態にしたがって構成された第2複合積層体630bの等角図である。図6Aをまず参照すると、第1複合積層体630aは成形面640上に形成された複数の中間層アセンブリ600(個別には第1中間層アセンブリ600a及び第2中間層アセンブリ600bとして特定される)を含む。図示した実施形態においては、中間層アセンブリ600は図3A及び3Bを参照して上述した中間層アセンブリ300と、構造及び機能において少なくともおおむね同じである。さらに具体的には、中間層アセンブリ600はそれぞれ、対応する繊維層302(個別には第1繊維層302a及び第2繊維層302bとして特定される)に溶解接着又は別の方法で付着された中間層310(個別には第1中間層310a及び第2中間層310bとして特定される)を含む。中間層アセンブリ600は積み重ねられることにより、交互に繊維層/中間層/繊維層の配置になるように形成される。第3繊維層602aを第2中間層アセンブリ600bの上に置くことが可能である。
【0026】
図示目的で3つの繊維層と2つの中間層を図6Aに示したが、任意の数の中間層及び繊維層を様々な配向で(例えば+45/0/−45/90の方向)本発明にしたがって使用することができる。例えば、様々な実施形態は各繊維層の間、及び/又は積層体の外側の対応するナノチューブ強化中間層を有する3つ以上の繊維層を含むことができる。さらに、様々な中間層及び繊維層が異なる厚さ、異なる材料組成等を有することが可能である。
【0027】
所望の数の中間層アセンブリ600と繊維層602aが、所望の配向で成形面640上に形成されたら、第1複合積層体630aを技術的に周知の様々な液体成形プロセスを用いて完成複合部品として形成することが可能である。上記方法は例えば、真空補助樹脂トランスファー成形法(VARTM)を含む。VARTM法では、プレフォームの上に真空バッグが載せられ、真空による圧力差を利用してプレフォームの中に樹脂が注入される。次にこの積層体をオートクレーブ、オーブン等に挿入し加熱して樹脂を硬化することができる。他の液体成形プロセスは、樹脂トランスファー成形法(RTM)及び樹脂フィルム注入法(RFI)を含む。RTMにおいては、閉じた型内のプレフォームに加圧下で樹脂が注入される。RFIでは、半固体の樹脂がプレフォームの下あるいは上に置かれ、積層体の上にはツールが配置される。積層体アセンブリは次に真空バッグ処理が施され、オートクレーブ内に挿入されて半固体樹脂が溶解し、この結果樹脂がプレフォームに注入される。
【0028】
別の実施形態においては、成形面640に載せる前に、中間層アセンブリ600及び/又は第3繊維層602に樹脂(例:プリプレグ)を含浸させることができる。部品はその次に、積層体を真空バッグの下に挿入しマトリクス材に高温及び/又は高圧を加えて硬化させることにより、硬化させることができる。前述の実施例で述べたように、実施形態は特定の液体成形プロセス又は更に言うならば液体成形に制限されるものではない。
【0029】
次に図6Bを参照すると、第2複合積層体630bは、成形面640上に積み重ねられた状態の複数の中間層アセンブリ650(個別には第1中間層アセンブリ650a及び第2中間層アセンブリ650bとして特定される)を含む。図示した実施形態では、中間層アセンブリ650は、図4A及び4Bを参照して上述した中間層アセンブリ400と、構造及び機能において少なくともおおむね同様である。例えば、各中間層アセンブリ650は、対応する繊維層402(個別には第1繊維層402a及び第2繊維層402bとして特定される)に糸520で縫合あるいは別の方法で留められた中間層410(個別には第1中間層410a及び第2中間層410bとして特定される)を含む。中間層アセンブリ650は積み重ねられることにより、交互に繊維層/中間層/繊維層の配置になるように形成される。第3繊維層602bを第2中間層アセンブリ650bの上に置くことが可能である。図示目的で3つの繊維層と2つの中間層を図6Bに示したが、任意の数の中間層及び繊維層を様々な配向で(例えば0/90/0の方向)本発明にしたがって使用することができる。さらに、様々な中間層及び繊維層が異なる厚さ、異なる材料組成等を有することが可能である。
【0030】
所望の数の中間層アセンブリ650及び繊維層602bが、成形面640上に形成されたら、第2複合積層体630bを技術的に周知の様々な液体成形プロセスを用いて完成部品として形成することが可能である。上記方法は例えば、図6Bを参照して上述したように、真空補助樹脂トランスファー成形法(VARTM)、樹脂トランスファー成形法(RTM)、及び樹脂フィルム注入法(RFI)を含むことができる。別の実施形態では、成形面640上に載せる前に、中間層アセンブリ650及び/又は第3繊維層602bにプリプレグ状態の樹脂を注入することができる。液体成形法又はプリプレグ法のいずれが用いられても、第2複合積層体630bを、真空圧を用いて圧縮(減量)した後、温度を上げて硬化してマトリクス材を硬化させる。
【0031】
図7Aは図6Aの第1複合積層体630aの一部を拡大した断面図であり、図7Bは図6Bの第2複合積層体630bの一部を拡大した断面図である。図7Aに示すように、カーボンナノチューブ314は、第1中間層アセンブリ600aから上向きに隣接する繊維層302bまで延びている。この構成により、2つの繊維層302の間の界面の強度を増すことが可能になり、完成した複合部品の破壊靱性と衝撃耐性が向上する。
【0032】
図7Bに示すように、複数の第1カーボンナノチューブ414aは第1中間層410aの第1側面413aから延びており、複数の第2カーボンナノチューブ414bは第1中間層410aの第2側面413bから外向きに延びている。この結果、複数の第1カーボンナノチューブ414aは第1繊維層402aの一部に延びており、複数の第2カーボンナノチューブ414bは第2繊維層402bの一部に延びている。図7Bに示す両面を有するナノチューブ構成により、図7Aの片側しかないナノチューブ配置構成よりも中間層の強度と破壊靱性をさらに向上させることができる。
【0033】
図8は本発明の一実施形態によるカーボンナノチューブ中間層アセンブリを有する複合部品を製造する方法を示すフロー図である。本方法は、カーボンナノチューブが基板の第1側面、又は基板の第1側面及び基板の第2側面の両方に形成されるブロック802から開始する。カーボンナノチューブが基板の第1側面にのみ形成された場合、本方法はブロック804に進み接着層(例えば熱可塑性接着層、接着剤、結合剤等)が基板の第2側面に形成される。本方法はブロック806において、ナノチューブで覆われた基板を繊維層に(例えば溶解接着によって)接着して中間層アセンブリを形成する。ブロック806の後は、本方法は決定ブロック808に進む。
【0034】
ブロック802に戻ると、カーボンナノチューブは基板の両側に形成され、本方法はブロック810に進みナノチューブで覆われた基板を繊維層に機械的に固定(たとえば糸又は他の好適な材料で縫合することによって)し中間層アセンブリを形成する。ブロック810の後に、本方法は決定ブロック808に進む。
【0035】
決定ブロック808においては、予め中間層アセンブリをマトリクス材(例:エポキシ樹脂)に含浸させ、その後の使用のためにプリプレグアセンブリを保存するか、あるいはプレフォームの形で乾燥した中間層アセンブリを使用するかのいずれかが決定される。中間層アセンブリを前もって含浸させると決定した場合、本方法はブロック818に進み中間層アセンブリにマトリクス材(例:エポキシ樹脂)を注入する。ここで、中間層アセンブリは、技術的に周知の任意の好適な方法を用いて未硬化のマトリクス材料を注入してプリプレグ繊維層を形成することができる。ブロック820では、プリプレグ中間層アセンブリを使用前の長期間必要に応じて保存することができる。プリプレグ中間層アセンブリの使用準備ができたら、本方法はブロック822に進み、プリプレグ中間層アセンブリを成形面において所望の配向で、一以上のプリプレグ繊維層及び/又は一以上の追加のプリプレグ中間層アセンブリと組み合わせる。本方法はブロック824において、プリプレグアセンブリに真空バッグ処理を行い積層体を圧縮し、加熱及び/又は加圧してアセンブリを硬化させ複合部品を硬化させる。ブロック824の後に本方法は終了する。
【0036】
図9は本発明の別の実施形態による複合構造を製造するための方法900を示すフロー図である。本方法はブロック902において、基板上に複数のカーボンナノチューブを作製するステップを含む。本方法はブロック904において、基板を第1繊維層に付着させるステップを含む。ブロック906において、第2繊維層は第1繊維層に隣接して配置され、複数のカーボンナノチューブが第1及び第2繊維層の間に配置される。ブロック908においては、第1及び第2繊維層に樹脂が注入され、ブロック910において樹脂が硬化される。ブロック910の後に本方法は終了する。
【0037】
決定ブロック808に戻ると、乾燥した中間層アセンブリからプレフォームを形成する決定がなされた際には、本方法はブロック812に進み、中間層アセンブリを成形面において、一以上の繊維層及び/又は一以上の追加の中間層アセンブリと組み合わせる。本方法はブロック814において、技術的に周知の任意の好適な液体成形プロセスを用いて、プレフォームにマトリクス材を注入する。本方法はブロック816において、樹脂が注入されたアセンブリを真空下におき気泡を取り除いた後に、アセンブリを加熱及び/又は加圧して硬化させて完成した複合部品を形成する。ブロック816の後に本方法は終了する。
【0038】
上述した方法は、航空機の構造を含む、広い範囲の異なる構造用の複合部品を製造するのに使用することができる。例えば、これらの方法は航空機の外板、フレーム、補強材、及び/又は様々な航空機の部分を形成するのに使用することができる。接着剤、留め具、及び/又は技術的に周知の他の好適な取付け方法を用いて、複合部品を互いに組立てて航空機の構造(例えば、機体、翼、尾翼等)を形成することができる。
【0039】
前述したように、当然ながら本発明の特定の実施形態を図示目的で本明細書に説明したが、本発明の様々な実施形態の思想及び範囲を逸脱することなく、種々の修正を施すことが可能である。さらに、本発明の特定の実施形態に関連する種々の利点をこれらの実施形態において上述したが、他の実施形態でも上記利点を得ることができ、また全ての実施形態が本発明の範囲内に収まるために上記利点を必ずしも呈する必要はない。したがって、本発明は添付の請求項による以外には限定されることはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合構造を製造する方法であって、
基板上に複数のカーボンナノチューブを作製するステップ、
基板を第1繊維層に付着させるステップ、
第2繊維層を第1繊維層に隣接して配置することにより複数のカーボンナノチューブを第1繊維層及び第2繊維層の間に配置するステップ、
第1及び第2繊維層に樹脂を注入するステップ、及び
樹脂を硬化させて複合構造を硬化させるステップ
を含む方法。
【請求項2】
基板を第1繊維層に付着させるステップが、第1繊維層に基板を接着するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基板が接着層を含み、基板を第1繊維層に付着させるステップが、接着層と第1繊維層を加熱して基板を第1繊維層に溶解接着させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
基板を第1繊維層に付着させるステップが、基板を第1繊維層に機械的に留め付けるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
基板を第1繊維層に付着させるステップが、基板を糸で第1繊維層に縫合するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
基板上に複数のカーボンナノチューブを作製するステップが、柔軟基板上に複数のカーボンナノチューブを生成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
基板が第1側面及び第2側面を有し、基板上に複数のカーボンナノチューブを作製するステップが、基板の第1側面から少なくともおおむね垂直に延びるカーボンナノチューブの第1部分を作製し、基板の第2側面から少なくともおおむね垂直に延びるカーボンナノチューブの第2部分を作製するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
複数のカーボンナノチューブを第1繊維層及び第2繊維層の間に配置するステップが、複数のカーボンナノチューブを、第1及び第2繊維層に対して少なくともおおむね垂直に延びるように方向付けするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
基板と第1及び第2繊維層に樹脂を注入するステップが、第2繊維層を基板に隣接させて配置する前に、基板と第1繊維層に予め樹脂の第1部分を含浸させ、第2繊維層に予め樹脂の第2部分を含浸させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
基板上に複数のカーボンナノチューブを作製するステップが、第1柔軟基板上に複数の第1カーボンナノチューブを生成するステップを含み、基板を第1繊維層に付着させるステップが、第1柔軟基板と第1繊維層を加熱して、第1柔軟基板を第1繊維層に溶解接着させるステップを含み、当該方法がさらに、
第2柔軟基板上に複数の第2カーボンナノチューブを生成するステップ、
第2柔軟基板と第2繊維層を加熱して、第2柔軟基板を第2繊維層に溶解接着するステップ、及び
第3繊維層を第2繊維層に隣接して配置することにより、複数の第2カーボンナノチューブを第2繊維層と第3繊維層の間に配置するステップを含み、
第1及び第2繊維層に樹脂を注入するステップが、第1及び第2柔軟基板と、第1、第2、及び第3繊維層に樹脂を注入するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第3繊維層の上に追加のカーボンナノチューブ強化繊維層を積層させるステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
複合構造が航空機の複合構造であり、当該方法がさらに、航空機の一部分に硬化した複合構造を取り付けるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
複合構造用のカーボンナノチューブ強化中間層アセンブリを製造する方法であって、
柔軟基板上に複数のカーボンナノチューブを生成するステップ、及び
柔軟基板を繊維層に付着させるステップ
を含む方法。
【請求項14】
柔軟基板上に複数のカーボンナノチューブを生成するステップが、化学蒸着法で遷移金属触媒上に複数のカーボンナノチューブを生成するステップを含み、柔軟基板を繊維層に付着させるステップが、基板及び繊維層を加熱することにより、基板の少なくとも一部を溶かしてカーボンナノチューブを繊維層に接着するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
基板が第1側面と第2側面を有し、柔軟基板上に複数のカーボンナノチューブを生成するステップが、基板の第1側面から少なくともおおむね垂直に延びるカーボンナノチューブの第1部分を作製し、基板の第2側面から少なくともおおむね垂直に延びるカーボンナノチューブの第2部分を作製するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
柔軟基板を繊維層に付着させるステップが、繊維層をほぼ垂直なカーボンナノチューブでおおむね均一な配分で覆うステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
柔軟基板に接着層を積層するステップをさらに含み、繊維層に柔軟基板を付着させるステップが接着層の少なくとも一部を溶かすステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
柔軟基板上に複数のカーボンナノチューブを生成するステップが、柔軟基板の第1側面上に複数の第1カーボンナノチューブを生成し、柔軟基板の第2側面上に複数の第2カーボンナノチューブを生成するステップを含み、柔軟基板を繊維層に付着させるステップが、柔軟基板の少なくとも一部を繊維層に縫合するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
第1繊維層;
第2繊維層;
第1及び第2繊維層の間に配置されて、
基板;及び
基板に付着され且つ基板に対して少なくともおおむね垂直である複数のカーボンナノチューブ;
を含む中間層;ならびに、
第1及び第2繊維層に注入されたマトリクス材
を備える、複合構造。
【請求項20】
複数のカーボンナノチューブが、基板の第1側面から延びる複数の第1カーボンナノチューブであり、中間層が、基板の第2側面から延びる複数の第2カーボンナノチューブをさらに含む、請求項19に記載の複合構造。
【請求項21】
基板が第1繊維層に溶解接着されている、請求項19に記載の複合構造。
【請求項22】
複合構造を製造するシステムであって、
基板上に複数のカーボンナノチューブを作製する手段と、
複数のカーボンナノチューブが第1繊維層から離れて延びるように基板を第1繊維層に付着させる手段と、
基板の上に第2繊維層を配置して、第1繊維層及び第2繊維層の間に複数のカーボンナノチューブを配置する手段と
を備えるシステム。
【請求項23】
基板と第1及び第2繊維層に樹脂を注入する手段;並びに、
樹脂を硬化させる手段
を更に備える、請求項22に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−527302(P2010−527302A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508491(P2010−508491)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/062386
【国際公開番号】WO2009/014788
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】