説明

複合素子の製造方法

【課題】新規複合素子、および複合素子の改善された製造方法を提供する。
【解決手段】(i)2〜20mmの金属、プラスチック又は木材、(ii)10〜300mmのポリイソシアネート重付加物、及び(iii)2〜20mmの金属、プラスチック又は木材、を含む層構造を有する複合素子であって、層(ii)が予め成形されたポリイソシアネート重付加物(x)を含み、該ポリイソシアネート重付加物(x)が、ポリイソシアネート重付加物(xx)により層(i)及び(iii)に粘着結合し、ポリイソシアネート重付加物(x)が容量4〜1000cm3の多部分から構成される複合素子が得られた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合素子、複合素子の製造方法、及び新規複合素子を含む船体及び構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
船、例えば船体及び船倉の被覆、橋、屋根、又は高層建造物を建造するためには、外力による相当量の負荷に耐え得る構造部分を使用する必要がある。このような要求により、上記構造部分は、一般に、適当な構造又は適する支柱(部材)により強化された金属板又は金属支持部材から構成される。従って、安全基準が高いタンカーの船体は、通常は内部船殻と外部船殻とから構成され、各船殻は15mm厚のスチール板により構成され、長さ約2mのスチール製支柱により相互に連結される。これらのスチール板は相当の応力を受けるため、内部及び外部スチール船殻を溶接強化素子により補剛する必要がある。このような伝統的な構成部材を用いる場合には、大量のスチールが必要とされ、及びかなりの時間と労力が消費されるという二重の不都合がある。更に、このような構成部材は質量も嵩むため、船の容量トン数(積載量)が低下し、燃料消費量が増加する。更に、上述のスチールを基礎材料とする伝統的な構造素子には、集中的な手入れが必要である。外表面と、外部船殻と内部船殻との間のスチール部分との双方に、腐食から保護するための処理を一定期間ごとに施さなければならないためである。
【0003】
金属とプラスチックの複合体を含むSPS(サンドウィッチ・プレート・システム)素子は、スチール構造体の代替品として公知である。プラスチックを二枚の金属層に接着することにより、公知のスチール構造体と比較して極めて優れた利点を有する複合素子が得られる。このようなSPS素子は、米国特許第6050208号明細書、米国特許第5778813号明細書、ドイツ特許出願公開第19825083号公報、ドイツ特許出願公開第19825085号公報、ドイツ特許出願公開第19825084号公報、ドイツ特許出願公開第19825087号公報、及びドイツ特許出願公開第19835727号公報に開示されている。一般に、このような複合素子は、ポリイソシアネート重付加物製造用の出発材料を単一操作で金属板体間に注入又は噴射することにより製造される。複合素子におけるプラスチック製造に用いられる上述の反応性出発成分は混合中に反応を開始するが、金属板体の間の空間を完全に充填することが満足な製品を得るための必須条件であるため、複合成分の製造においては出発成分の注入方法が決定的かつ重要な工程となる。更に、出発成分の反応の結果として相当の熱が発生するため、エラストマー層が次工程での冷却の間に大幅に収縮する可能性がある。そして、収縮が生ずるとエラストマーが金属層から分離することがあるため、望ましくない。
【0004】
【特許文献1】米国特許第6050208号明細書
【特許文献2】米国特許第5778813号明細書
【特許文献3】ドイツ特許出願公開第19825083号公報
【特許文献4】ドイツ特許出願公開第19825085号公報
【特許文献5】ドイツ特許出願公開第19825084号公報
【特許文献6】ドイツ特許出願公開第19825087号公報
【特許文献7】ドイツ特許出願公開第19835727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、改善された複合素子の製造方法を提供することをその目的とする。
【0006】
本発明は、特に層(i)と層(iii)の間の空間に、プラスチック層(ii)を製造するための反応性出発成分を充填する改善した複合素子の製造方法を提供し、複合素子の収縮性と接着性を改善することを目的とする。
【0007】
更に、本発明の上記製造方法により、プレート(i)とプレート(iii)の間にプラスチック層を製造するための反応性出発成分を、プレート(i)とプレート(iii)との間の空間に充填する操作を改善することを本発明の目的とする。
【0008】
更に、本発明は、不完全な素子の割合を低下させ、複合素子のプレート間に液体成分を確実に充填可能とする複合素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記目的が、
(i)2〜20mm、好ましくは2〜10mm、特に好ましくは5〜10mmの金属、プラスチック又は木材、
(ii)10〜300mm、好ましくは10〜100mmのポリイソシアネート重付加物、好ましくはポリウレタン(場合により尿素及び/又はイソシアヌレート構造を含んでいてもよい)、及び
(iii)2〜20mmの金属、好ましくは2〜10mm、特に好ましくは5〜10mmの金属、プラスチック又は木材、好ましくは金属
を含む層構造を有する複合素子であって、前記層(ii)が予め成形されたポリイソシアネート重付加物(x)(すなわち層(ii)中で製造されたものではないもの)を含み、ポリイソシアネート重付加物(x)が、ポリイソシアネート重付加物(xx)により層(i)及び(iii)に粘着結合し、かつポリイソシアネート重付加物(x)が容量4〜1000cm3、好ましくは8〜550cm3の多部分(すなわち容量4〜1000cm3、好ましくは8〜550cm3のそれぞれ独立した部分)から構成される複合素子により解決されることを見出した。上述の(i)、(ii)、及び(iii)各層について記載した長さデータは、各層の厚さについてのものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
層(ii)の全空間を液体成分で充填するか、完全に予備形成されたポリウレタンパネルを層(i)及び層(iii)に粘着結合させるかいずれかであった公知技術に対して、本発明においては、特に、本発明に規定する所定の容量を有するポリウレタンからなる多部分(x)(複数のポリウレタン片)が、層(i)と層(iii)との間に導入される。そして、層(i)と層(iii)との間の、層(ii)が存在し、ポリウレタン片(x)が存在しない空間に、ポリイソシアネート重付加物(xx)の製造に使用される液体出発成分を充填する。ポリイソシアネート重付加物(xx)の製造に用いられる液体出発成分は、ポリウレタン片(x)(湿潤状態にある(x))を完全に包み込むと好ましい。場合によっては層(i)と層(iii)とに直接接触するポリウレタン片(x)の表面以外を完全に包み込むと特に好ましい。ポリイソシアネート重付加物(xx)が硬化した結果、ポリウレタン片(x)は層(i)と層(iii)に対して接着結合すると好ましく、層(ii)に導入かつ固定されると好ましい。
【0011】
この操作は以下の利点を有する。
・比較的大きな空隙(比較的大容量の層(ii))を得ることができる。すなわち、空隙の容量の一部に予め成形されたポリウレタンが導入されるため、射出容量の限界を考慮する必要がない。
・空間に反応系(xx)を装填した場合には、実質的な容量の縮小が生ずるが、予め成形されたポリウレタン(x)を用いるため、製造後の層(ii)の収縮が大幅に低減する。
・公知、慣用の方法により廃材を細分化して、本発明による所定容量を有する部分を得ることにより、リサイクル化が可能となり有効である。
・(x)及び(xx)の成分が化学的に類似している(好ましくは同一種類)ため、(x)、(xx)、(i)及び(iii)の間で非常に良好な接着が行われる。
【0012】
ポリイソシアネート重付加物(x)、及び好ましくは更にポリイソシアネート重付加物(xx)の密度は、900〜1200kg/m3、特に1000〜1100kg/m3であると好ましい。
【0013】
ポリイソシアネート重付加物(x)は、一般に、形状決定装置(shaping unit)による別の操作により製造された多部分(部分片)の形態とされる。ポリイソシアネート重付加物(x)は、比較的大きく形成されたポリイソシアネート重付加物片の細分化、例えば廃材や細分化目的用に特別に予備的に製造された部分、例えばパネルを細分化することにより製造される。細分化は、一般に公知の方法、例えばシュレッダー装置による粉砕等により行われる。
【0014】
ポリイソシアネート重付加物(x)、特に好ましくは更にポリイソシアネート重付加物(xx)も、圧縮した(緻密な)ポリイソシアネート重付加物(compact polyisocyanate polyadducts) であると好ましい。
【0015】
予め成形されたポリイソシアネート重付加物(x)は、不規則又は規則的な形状、環状又は円形状であり、製造法に応じて形状を決定するのが一般的である。
【0016】
ポリイソシアネート重付加物(x)は、層(ii)の容量の10%〜90%を占めると好ましい。ポリイソシアネート重付加物(xx)の割合が、層(ii)の容量の10%〜90%を占めると好ましい。すなわち層(ii)の空間のうち(x)が存在しない部分に(xx)が存在すると特に好ましい。
【0017】
(x)及び(xx)が同種類の材料である場合にも、予め成形された部分片の界面が液体状の反応系により被覆されるようすることが可能である。
【0018】
本発明の方法を更に詳細に説明する。
【0019】
本発明の複合素子の製造方法では、
(i)2〜20mmの金属、プラスチック又は木材、
(ii)10〜300mmのポリイソシアネート重付加物、及び
(iii)2〜20mmの金属、プラスチック又は木材、
の層構成を有する複合素子が使用され、ポリイソシアネート重付加物(x)が層(ii)の空間に導入され、次いで層(ii)にポリイソシアネート重付加物(xx)を製造するための液体状の出発材料が充填される。
【0020】
充填対象の空間(充填空間)の幅は、0.5〜4m、特に好ましくは1〜3mであり、長さが1〜12m、特に好ましくは4〜8であり、空間の高さ、すなわち層(i)と層との間(iii)の間の距離が20〜150mm、特に好ましくは30〜60mmである。すなわち、層(i)と層(iii)も同様に、少なくとも上記長さと上記幅とを有すると好ましい。
【0021】
本発明の充填工程は、以下の二工程に分割されると好ましい。
【0022】
第一の充填工程では、予め成形された好ましくは清浄な、特に好ましくは埃、油脂、油分の付着していないポリイソシアネート重付加物(x)を、後に層(ii)となる空間に導入する。上述のように、ポリイソシアネート重付加物(x)は層(ii)の全体を占めないほうが好ましい。更に、予備成形されたポリイソシアネート重付加物(x)は、(xx)を製造するために使用される液体状の反応性出発成分が装填される金型へ導入される前、又は金型内でのいずれかにおいて乾燥されると好ましい。乾燥は、一般的方法、例えば熱く、好ましくは乾燥した空気を用いて行われる。
【0023】
第二工程では、層(ii)のポリイソシアネート重付加物(x)で充填されている以外の残存空間を、(xx)の製造に用いられる液体出発成分で好ましくは完全に充填する。
【0024】
最終充填工程で充填すべき空間(R)がちょうど良く充填され溢れ出ることがないように、(xx)を製造するための出発材料の使用量を判断することは難しい。そして、最終充填工程では、空間が保持可能な量よりも多量の出発成分(層(ii)を製造するための出発成分)が層(i)及び層(iii)に導入されると好ましい。この結果生ずる溢出は、開口部(v)を通して取り除かれる。層(i)と層(iii)との間の空間が、(xx)の製造用の出発成分で完全に充填されるとすぐに、好ましくは透明で、オリフィス(iv)及び(v)が閉鎖された状態の管内の、液面の上昇を指標として充填を停止することができる。オリフィスは、例えばプラスチック又は金属製のプラグの、好ましくはねじにより閉鎖される。プラグはオーバーフロー容器に設けられると好ましく、又はオーバーフロー容器と層(i)及び/又は(iii)の間に設けられることも好ましい。オリフィス(iv)は固定状態の混合ヘッドにより混合物(a)及び(b)の硬化工程が終了するまで閉鎖状態に維持されると好ましい。層(i)と層(iii)の間の充填空間は、オリフィス(iv)及び(v)のみを有すると好ましく、放出端部、好ましくは混合ヘッドがオリフィス(iv)に存在し、オリフィス(v)より所望の減圧を行うことが可能である。好ましい実施の形態では、充填空間に空気が入り込まないため、減圧が可能である。
【0025】
通常は、層(i)及び層(iii)は、(i)と(iii)との間の充填空間に液体を充填するための放出端部を固定するための特徴的部分は有さない。放出端部という用語は、液体を充填するための慣用の装置、例えばタンクのノズル、管状体、混合ヘッド、静的混合機等を有する慣用の機器を意味する。放出端部が混合ヘッドであると好ましい。このような混合端部は、一般に公知であり、ポリウレタン組成物用の慣用の計量給送装置と組み合わせて市販されている。放出端部、好ましくは混合ヘッドは、層(i)に対して、搬送機器の放出端部をねじにより取り付けられるか、搬送機器の放出端部用のホルダにより3箇所以上、好ましくは3〜6箇所、特に好ましくは4又は5箇所で固定されると好ましい。液体は層(i)及び/又は(iii)に設けられた1個以上のオリフィス(iv)を通して、層(i)と層(iii)の間のスペースに導入されると好ましい。取り付けのため、例えば混合ヘッド、ねじ山を有し混合ヘッドの取り付けに用いられるボルト、又は混合ヘッドのホルダーを層(i)中に導入することも好ましい。ボルトは、層(i)への導入を更に容易にするために、ねじ山から遠い側の先端にテーパーが施されていると好ましい。ボルトは直径6〜20mm、全長8〜42mmであると好ましい。ボルトの取り付けの後に外側、すなわち層(iii)の反対側を向く層(i)の面で外方を向くねじ山は、層(iii)の反対側4mm〜30mmの長さを有すると好ましい。ボルトは、Hilti社等から市販されているボルトドライバーによりねじ込むこと等により導入される。従って、層(i)は、液体導入用のオリフィス(vi)に、上述の放出端部を層(i)中に螺合するためのねじ山を有すると好ましい。放出端部と層(i)との間の密閉性を向上させるために、弾性材料から構成されるO−リングを層(i)と混合ヘッドの間に固定することも好ましい。このようなO−リングは公知であり、オリフィスと混合ヘッドの径に合うサイズのものが得られる。このため、混合ヘッドは、層(i)及び(iii)に設けられた、出発材料導入のためのオリフィス(iv)にしっかりと固定されることが好ましい。
【0026】
放出端部が層(i)に直接固定されておらず、層(i)にねじ結合されたホルダーに固定されると極めて好ましい。ホルダーは、プラスチック、木材等の慣用の材料、又は好ましくは慣用の金属から構成可能である。ホルダーは、対応のナット等により層(i)に結合したねじ山を通過させ、かつ固定するための穴を具備する構成であると好ましい。更に、ホルダーは放出端部の固定素子、例えばプラグ結合部、スクリュー結合部、又は放出端部が弾性帯状体によりホルダーに把持されるようにする縁部を有する。特に好ましくは、傾斜を防ぐために、放出端部がホルダーに3箇所以上で固定されていると好ましい。これにより、ホルダーは層(i)に固定される3個以上のねじ山部によりねじ止めされ、混合ヘッドがホルダーに固定されると好ましい。複合素子の完成の後、ボルトは、例えば層(i)の表面上で切断されてもよい。
【0027】
層(i)と層(iii)との間の空間の充填は、好ましくは連続的に、慣用の搬送機、例えば高圧機器及び低圧機器、好ましくは高圧機器を用いて行われる。充填は、高圧機器を用いて、1個以上、好ましくは1個の混合ヘッドを用いて行われると好ましく、ここで出発成分が混合される。層(i)及び(iii)の間の充填は、(i)及び(iii)が垂直に配置されていても行われるが、上述したように水平な配置により行うと好ましい。放出は充填容量に対応して変更可能である。層(ii)を均一に硬化するために、層(ii)の製造に用いられた成分により充填空間が0.5〜20分の間に充填可能となるような放出及び搬送装置を選択する。使用する装置は低圧機器であると好ましく、高圧機器であると特に好まく、更にピストン給送が行われると好ましく、軸方向のピストン給送が行われると好ましい。更に、使用する装置における貯蔵容器が攪拌子を有すると好ましく、更に加熱可能であることも好ましく、貯蔵容器−混合ヘッドと−貯蔵容器の循環が行われると好ましい。また、放出速度が0.1〜3.0kg/secであると好ましく、0.5〜2.0kg/secであると特に好ましい。
【0028】
層(i)及び(iii)は、本発明の厚さを有する、慣用のプラスチック、木材、好ましくは金属板、例えば鉄、スチール、銅及び/又はアルミニウム板として好ましく使用される。新規複合素子の製造に使用される層(i)及び(iii)の双方は、下塗り又は仕上げ等の被覆(塗布)をしてもよく、及び/又は例えば、慣用のプラスチックで被覆処理してもよい。層(i)及び(iii)は被覆を施さないで用いられると好ましい。層(i)及び(iii)の表面は、複合素子の製造前に、クリーニング及び表面粗さ増大のため、砂又はスチールボール、好ましくはコランダム又は黄鉄鉱によりブラスト(吹き付け仕上げ)してもよい。ブラスト処理は、ブラスト材料を、例えば高圧下に表面に打ち付ける慣用の方法により行うことができる。このような処理を行う適当な装置が市販されている。材料(a)と材料(b)との反応後、層(ii)と接触する層(i)及び層(iii)の表面をこのように処理することにより、層(i)及び層(iii)に対する層(ii)の粘着性が実質的に向上する。ブラスト処理は、層(ii)を製造するための成分を層(i)と層(iii)との間の空間に導入する直前に行うと好ましい。層(ii)を付着させる層(i)及び層(iii)の表面は、粘着性の低下を生じさせる無機及び/又は有機物質、例えば埃、泥、油脂、又は一般に離型剤として公知の物質を保持していないことが好ましい。
【0029】
層(i)及び層(iii)は、平行して配置されると好ましい。層(i)と層(iii)との間の層(ii)で充填される空間の側端部はシールされると好ましく、特にプラスチック、紙材、又は金属箔又は金属板、特に好ましくは金属板でシールすると好ましく、これらは粘着結合、溶接、圧着、特に溶接により結合されると好ましい。これらの材料は必要に応じてスペーサーとして機能してもよい。
【0030】
充填空間は、乾燥させると好ましい。乾燥処理を行うと、特に、水に反応性の液体成分、例えばイソシアネートが不都合な二次反応を起こさないという利点が得られる。乾燥処理は充填の直前に行われると好ましく、熱風又は圧縮空気により行われるとよい。更に、層(i)及び(iii)の間の充填空間は、層(i)及び/又は層(iii)を20℃〜150℃に、10分〜180分間加熱して乾燥させてもよい。層(i)及び(iii)の間の充填空間は、層(i)及び/又は層(iii)に形成されたオリフィス(iv)及び(v)、及び層(i)及び層(iii)間の充填空間を経て空気を通過させる送風機を用いて乾燥させると好ましい。
【0031】
オリフィス(iv)及び(v)は、層(i)及び/又は(iii)における直径0.5〜5.0cmの穴であると好ましい。
【0032】
層(i)と層(iii)との間の層(ii)を製造するための出発材料で充填される空間は、層(i)及び(iii)の間の全空間である必要はない。層(i)及び(iii)は端部において層(ii)より突出していてもよい。すなわち層(ii)を介在させた層(i)と層(iii)の結合は、層(i)と層(iii)の間の一部分で行われてもよい。例えば、層(i)と層(iii)により囲まれた空間内部にシールを施し、層(i)及び/又は(iii)の端部が突出するように、出発材料を充填する前に層(i)と層(iii)の間の空間をシールしてもよい。
【0033】
(xx)の製造用に用いられる液体状の出発成分が不足し、これを調節しない場合にも、これをエラーとして除外する必要はほとんどないことが、好適な製造方法の開発段階で認識されるに至った。一回の投入量に限りがあるため、(xx)の製造用に用いられる出発材料についての調節を行わずに材料が不足すると、層(i)及び(iii)の間の空間の充填が不完全となり得る。反応が迅速であり、かつ(ii)が(i)及び(iii)に対して非常に良好に粘着することにより、不完全な充填が行われると複合素子中の(ii)を含まない範囲が拡大し、出発成分による充填はもはや不可能ともなる。この様な複合素子は、廃棄を免れない。出発材料の損失を回避するため、充填される金型の密閉性(tightness)を非常に慎重に検査することが有益であることがわかっている。通常、層(i)と(iii)とは、相互に平行な配置等、好適な配置で固定される。一般に、層(i)と層(iii)との間の空間が10mm〜300mmの厚さを有するように配置距離が選択される。層(i)及び層(iii)の固定は、例えばスペーサを用いて、例えば金型中又は適当なホルダー中で行われる。中間空間の端部は、通常、層(i)及び(iii)の間の空間が(x)及び液体又は(xx)の製造用の出発材料で完全に充填可能であり、これらの成分の充填完了以前の流失が防止されるようにシールされる。シールは、慣用のプラスチック、紙又は金属フィルム及び/又はシートを用いて、例えば粘着結合、溶接又は圧着により行われる。必要に応じて、これらをスペーサとして用いてもよい。この好ましい形態のシールは、上述の好ましいオリフィス(iv)及び(v)には適用されない。
【0034】
出発成分を充填する前に空間(R)の漏れを検査することは、圧力差の測定により好ましく行われる。圧力差の測定という用語は、空間(R)と外部環境との間に、所定期間、圧力差を設ける試験を意味し、例えば空間(R)内部を外部環境に対して減圧又は過圧とすることにより行われる。これは、空間(R)に空気又はガスをポンプ給送する、慣用の真空ポンプ又は公知のコンプレッサにより行われる。空間(R)中に安定な過圧状態又は減圧状態が得られた場合には、空間層(ii)を製造するための出発成分を充填可能な十分に密閉された(気密な)キャビティであることを示すものである。空間(R)を出発成分で充填するために設けられたオリフィス(iv)及び(v)、又は通気オリフィス、又は流出オリフィス(過剰量の出発成分の放出用)も、一時的に密閉すると好ましい。必要に応じて、これらのオリフィスの少なくとも1個を、真空ポンプ又はコンプレッサを空間(R)に連結するために用いてもよい。
【0035】
充填に用いる金型は、平行に配列された層(i)及び(iii)から構成されると好ましく、層(i)及び(iii)の間にシールを有することも好ましい。これにより、充填の間の液体の放出が回避される。このように、層(ii)は層(i)及び(iii)の間に、粘着により配置されると好ましい。
【0036】
(xx)の製造に用いられる液体は、(a)イソシアネート及び(b)イソシアネートに対して反応性の化合物を含む。すなわち、層(ii)は、ポリイソシアネート重付加物を含むと好ましい。本明細書において、出発材料又は出発成分とは、特に(a)イソシアネート及び(b)イソシアネートに対して反応性の化合物を意味するが、更に必要に応じて(c)気体、(d)触媒、(e)助剤、及び/又は(f)発泡剤を含む場合もある。予備成形されたポリイソシアネート付加物(x)も、出発成分に対して好ましく使用される。(x)と(xx)の出発成分が同一であると特に好ましく、構造も同一であると特に好ましい。
【0037】
成分(a)と(b)とから(ii)を得る反応は、1〜50容量%の気体(c)の存在下に行われると好ましい。ポリマーポリオールは成分(b)として好ましく使用される。成分(a)と(b)との反応は、発泡剤(f)の存在下で行われると好ましい。
【0038】
ポリイソシアネート重付加物の製造に用いた出発成分は、通常は0〜100℃、好ましくは20〜60℃で混合され、上述のように層(i)と層(iii)との間の空間に導入される。撹拌子又は螺旋状の撹拌子により機械的な混合を行ってもよい。或いは、高圧機器を用いた場合に生ずるが、高圧下でA及びB成分の噴流が交わり、更に高圧下に混合ヘッドで混合する向流法により混合を行うと好ましい。この場合には、各成分の噴流を分割することも可能である。反応温度、すなわち反応が起こる温度は、材料の厚さに応じて、通常>20℃、好ましくは50℃から150℃とされる。
【0039】
本発明により製造された複合素子におけるポリイソシアネート重付加物(ii)は、−45℃〜+50℃の温度範囲で>275MPaの弾性率(DIN53457)、層(i)及び(iii)の接着性>4MPa(DIN53530)、−45℃〜+50℃の温度範囲での伸び>30%(DIN53504)、引っ張り強さ>20MPa(DIN53504)、及び圧縮強さ>20MPa(DIN53421)を有すると好ましい。
【0040】
従って、(xx)の形成は、(a)イソシアネートと、(b)イソシアネートに対して反応性の化合物とを、場合により発泡剤(f)及び/又はポリイソシアネート重付加物の容量に対して1〜50容量%の1種類以上の気体(c)、(d)触媒及び/又は(e)助剤の存在下に反応させることにより行われる。このようなポリイソシアネート重付加物(ii)の製造は、広く文献に記載されている。
【0041】
新規方法における出発材料(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)の例を以下に記載する。
【0042】
適するイソシアネート(a)は、公知の脂肪族、脂環式又はアリール脂肪族及び/又は芳香族イソシアネート、好ましくはジイソシアネートである。これらは公知方法によりビウレット化されていてもよく、及び/又はイソシアヌレート化されていてもよい。具体例は、アルキレン基の炭素原子数4〜12個のアルキレンジイソシアネート、例えばドデカン1,12−ジイソシアネート、2−エチルテトラメチレン1,4−ジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、テトラメチレン1,4−ジイソシアネート、リシンエステルジイソシアネート(LDI)、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)、シクロヘキサン1,3−及び/又は1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン2,4−及び2,6−ジイソシアネート及び 対応の異性体混合物、ジシクロヘキシルメタン4,4´−、2,2´−及び2,4´−ジイソシアネート及び対応の異性体混合物、1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアネートメチルシクロヘキサン(IPDI)、トリレン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン4,4´−、2,4´−及び/又は2,2´−ジイソシアネート(MDI)、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート及び/又は上記イソシアネートの2種類以上の混合物である。エステル、尿素、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン及び/又はウレタン基を含むジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートも新規方法で使用可能である。2,4’−、2,2’−及び/又は4,4’−MDI及び/又はポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートが好ましく使用され、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートと少なくとも1種類のMDI異性体とを含む混合物が特に好ましく用いられる。
【0043】
例えば、イソシアネートに対して反応性の基であるヒドロキシル、チオール、及び/又は第一級及び/又は第二級アミノ基を有し、一般に分子量が60〜10000g/モルの化合物、例えばポリマーポリオール、ポリエーテルポリアルコール、ポリエステルポリアルコール、ポリチオエーテルポリオール、ヒドロキシ含有ポリアセタール、及びヒドロキシル含有脂肪族ポリカーボネートから成る群から選択されるポリオール、又はこれらのポリオールの2種類以上の混合物を、イソシアネートに対して反応性の化合物(b)として使用可能である。このような化合物は、イソシアネートに対して2〜6の官能価と、400〜8000の分子量を有し、通常、当業者に公知である。
【0044】
適するポリエーテルポリアルコールの例は、アルキレンオキサイド、例えばテトラヒドロフラン、1,3−プロピレンオキサイド、1,2−又は2,3−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、及び好ましくはエチレンオキサイド及び/又は1,2−プロピレンオキサイドと、慣用の開始剤物質との付加反応により公知技術により製造可能なものである。使用可能な開始剤物質は、例えば、1個以上のヒドロキシル基、好ましくは2〜4個のヒドロキシル基、及び/又は1個以上のアミノ基、好ましくは2〜4個のアミノ基を含む、公知の脂肪族、アリール脂肪族、脂環式及び/又は芳香族化合物である。例えば、エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2−又は1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、糖質、例えばスクロース、ペンタエリトリトール、ソルビトール、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ネオペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4´−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2−(エチルアミノ)エチルアミン、3−(メチルアミノ)プロピルアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン及び/又はN,N´−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミンを開始剤物質として使用可能である。
【0045】
各アルキレンオキサイドは、単独で用いても、順次連続的に用いても、混合物として用いてもよい。ポリオール中に第一級ヒドロキシル基をもたらすアルキレンオキサイドが好ましく用いられる。特に好ましく用いられるポリオールは、エチレンオキサイドでアルコキシル化された後にアルコキシル化され、これにより第一級ヒドロキシル基を有するポリオールである。
【0046】
通常、ポリウレタン化学で公知の化合物、好ましくはスチレン/アクリロニトリルグラフトポリオールを、特殊なポリエーテルポリオールのポリマーポリオールとして使用することが可能である。
【0047】
ポリマーポリオールを用いることにより、ポリイソシアネート重付加物、例えばポリウレタンの収縮を実質的に抑制することが可能であり、これにより層(ii)を層(i)及び(iii)に良好に粘着させることが可能となる。収縮を低下させるための他の方法として、必要に応じて発泡剤(f)及び/又はガス(c)を好ましく使用することができる。
【0048】
適するポリエステルポリオールは、例えば、炭素原子数2〜12の有機ジカルボン酸、好ましくは炭素原子数4〜6の脂肪族ジカルボン酸と、炭素原子数2〜12、好ましくは2〜6の多価アルコールと、から製造可能である。ポリエステルポリオールは、官能価が2〜4、特に2又は3であり、分子量は480〜3000、好ましくは600〜2000、特に600〜1500である。
【0049】
新規複合素子は、イソシアネートとの反応の成分(b)として、特にイソシアネートに対する平均官能価1.5〜8、好ましくは2〜6、分子量400〜8000のポリエーテルポリアルコールを用いることにより好適に得られる。
【0050】
ポリエーテルポリアルコールを使用すると、ポリエステルポリアルコールを用いた場合に比較して、ポリイソシアネートの加水分解による解裂に対しての安定性が増し、かつ粘度が低いことによる大きな利点が得られる。加水分解に対する安定性の向上は、造船において特に重要な利点である。ポリエーテルポリアルコールと、これを含む層(ii)を製造するための反応混合物の粘度が低いことにより、複合素子の製造のための、層(i)と層(iii)との間の空間への反応混合物充填が、迅速かつ容易に行われるようになる。特に造船の構造部材は寸法が非常に大きいため、低粘度の液体は極めて有利に用いられる。
【0051】
イソシアネートに対して反応性の化合物としては、一般的な分子量400〜8000の上記化合物の他に、場合により、分子量60から400未満のジオール及び/又はトリオールを、新規方法の連鎖延長剤及び/又は架橋剤として更に使用してもよい。しかしながら、連鎖延長剤、架橋剤、又は必要に応じてこれらの混合物が、強度(hardness)等の機械特性の調節をするために用いると有効である場合がある。このような連鎖延長剤及び/又は架橋剤は、分子量60〜300であると好ましい。例えば、炭素原子数2〜14、好ましくは4〜10の脂肪族、脂環式及び/又はアリール脂肪族ジオール、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,10−デカンジオール、o−、m−、p−ジヒドロキシシクロヘキサン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、好ましくは1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及びビス(2−ヒドロキシエチル)ヒドロキノン、トリオール、例えば1,2,4−及び1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサン、グリセロール、及びトリメチロールプロパン、エチレンオキサイド及び/又は1,2−プロピレンオキサイド基づき、上記ジオール及び/又はトリオールを開始剤分子として用いた低分子量ヒドロキシル基含有ポリアルキレンオキサイド、及び/又はジアミン、例えばジエチレントルエンジアミン及び/又は3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミンが好適に用いられる。
【0052】
連鎖延長剤、架橋剤、又はこれらの混合物をポリイソシアネート重付加物の製造に用いる場合の使用量は、イソシアネートに対して反応性の化合物(b)の総質量に対して0〜30質量%、好ましくは1〜30質量%である。
【0053】
層(ii)の製造における硬化の推移を最適化するために、脂肪族、アリール脂肪族、脂環式及び/又は芳香族カルボン酸を(b)として使用してもよい。このようなカルボン酸の具体例は、蟻酸、酢酸、琥珀酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、フェニル酢酸、フタル酸、トルエンスルホン酸、これらの酸の誘導体、これらの酸の異性体、及びこれらの酸の所望の混合物である。これらの酸の使用質量は、(b)の総質量に対して0〜5質量%、好ましくは0.2〜2質量%とすることができる。
【0054】
アミンにより開始されたポリエーテルポリアルコールを使用することにより、層(ii)の製造に用いられる反応混合物の硬化の挙動を改善させることも可能である。化合物(b)及び層(ii)の製造に用いられる他の成分は、水とイソシアネート基との反応による二酸化炭素の発生を回避するために、水含有率をできる限り低くして使用すると好ましい。
【0055】
1バールでの沸点が−50℃未満の公知化合物、例えば空気、二酸化炭素、窒素、ヘリウム及び/又はネオンを、層(ii)を製造するための成分(c)として使用することが可能である。空気が好ましく使用される。成分(c)は成分(a)に対して、特に好ましくは成分(a)及び(b)に対して不活性であると好ましい。すなわち、成分(a)及び(b)に対する上記気体の反応性がほとんど検出不可能であること、好ましくは完全に検出不可能であることが好ましい。気体(c)の使用は、発泡性ポリウレタンの製造における慣用の発泡剤の使用法と根本的に異なる。慣用の発泡剤(f)を液体状で使用する場合又は気体状の物理的発泡剤が用いられる場合には、発泡剤はポリオール成分に対してわずかな可溶性を示すか、又は発熱により反応中に気化する。そして、水とイソシアネート基とが反応する場合には、気体状の二酸化炭素が発生する。本発明では、成分(c)が、例えばポリオール成分等中に、エーロゾルとしての気体状態で含まれていると好ましい。
【0056】
イソシアネートと、イソシアネートに対して反応性の化合物との反応を大幅に促進させる公知の化合物は、触媒(d)として使用可能であり、イソシアネートに対して反応性の化合物の総質量に対する触媒の総合使用割合は0.001〜15質量%、特に0.05〜6質量%である。例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N´,N´−テトラメチルジアミノジエチルエーテル、ビス(ジメチルアミノプロピル)尿素、N−メチル−及びN−エチルモルホリン、N−シクロヘキシルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルブタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン-1,6−ジアミン、ペンタメチレンジエチレントリアミン、ジメチルピペラジン、N−ジメチルアミノエチルピペリジン、1,2−ジメチルイミダゾール、1−アゾビシクロ[2.2.0]オクタン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(Dabco)、及びアルカノールアミン化合物、例えばトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチル−及びN−エチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、2−(N,N−ジメチルアミノエトキシ)エタノール、N,N’,N”−トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロトリアジン、例えばN,N’,N”−トリス(ジメチルアミノプロピル)-s-ヘキサヒドロトリアジン、塩化鉄(ii)、塩化亜鉛、オクタン酸鉛、好ましくは錫塩、例えばジオクタン酸錫、ジエチルヘキサン酸錫、ジラウリル酸ジブチル錫及び/又はジブチルジラウリル錫メルカプチド、2,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、水酸化テトラアルキルアンモニウム、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、アルキル金属アルコレート、例えばナトリウムメチレート、カリウムイソプロピレート、及び/又は炭素原子数10〜20であり、場合によりOH側鎖を有する長鎖脂肪酸のアルカリ金属塩が使用可能である。
【0057】
反応を加速するために、成分(d)の存在下で層(ii)の製造を行うと非常に有効であることがわかっている。
【0058】
必要に応じて、(e)助剤が、ポリイソシアネート重付加物(ii)の製造用の反応混合物中に含まれていてもよい。この例には、充填剤、界面活性物質、染料、顔料、難燃剤、加水分解安定剤、殺菌剤及び静菌剤及び気泡安定剤がある。
【0059】
適する界面活性物質の例は、出発材料の均一化を促進する作用を有し、プラスチックの構造を調整するためにも有用とされうる化合物である。これらの例には、乳化剤、例えばヒマシ油硫酸ナトリウム塩、脂肪酸ナトリウム塩、及び、脂肪酸とアミンとの塩、例えばオレイン酸とジエチルアミンとの塩、ステアリン酸とジエタノールアミンとの塩、及びリシノール酸とジエタノールアミンとの塩、スルホン酸塩、例えばドデシルベンゼンジスルホン酸アルカリ金属塩又はアンモニウム塩、ジナフチルメタンジスルホン酸及びリシノール酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩がある。界面活性物質は、一緒に使用するイソシアネートに対して反応性の化合物(b)100質量%に対して、通常は0.01〜5質量%の量で使用される。
【0060】
適する難燃剤の例は、リン酸トリクレシル、リン酸トリス(2−クロロエチル)、リン酸トリス(2−クロロプロピル)、リン酸トリス(1,3−ジクロロプロピル)、リン酸トリス(2,3−ジブロモプロピル)、エチレン二リン酸テトラキス(2−クロロエチル)、メタンホスホン酸ジエチル、ジエタノールアミノメチルホスホン酸ジエチル、及び市販のハロゲン含有ポリオール難燃剤である。上記のハロゲン置換リン酸塩の他に、無機又は有機難燃剤、例えば赤リン、アルミニウム水和物、三酸化アンチモン、酸化砒素、ポリ燐酸アンモニウム、及び硫酸カルシウム、膨張黒鉛、シアヌール酸誘導体、例えばメラミン、又は2種類以上の難燃剤の混合物、例えばポリリン酸アンモニウム及びメラミン、及び必要に応じてコーンスターチ又はポリリン酸アンモニウム、メラミン及び膨張黒鉛及び/又は、必要に応じて芳香族ポリエステルを、ポリイソシアヌレート重付加物の難燃化のために使用することが可能である。一般に、難燃剤は、イソシアネートに対して反応性の化合物の総質量に対して5〜50質量%、好ましくは5〜25質量%の量で用いると有利であることがわかっている。
【0061】
充填剤、特に強化用充填剤とは、例えば慣用の有機及び無機充填剤、強化材、増量剤、表面被覆の磨耗挙動を改善するための組成物、塗料等の公知材料を意味する。具体例は、無機充填剤、例えばシート状のケイ酸塩等のケイ酸塩鉱物材料、例えばアンチゴライト(antigorite)、蛇紋石、普通角閃石、角閃石、クリソタイル及びタルク、金属酸化物、例えばカオリン、アルミナ、酸化チタン、及び酸化鉄、金属塩、例えば白亜及びバライト、及び無機顔料、例えば硫化カドミウム、硫化亜鉛、及びガラス等である。カオリン(陶土)、ケイ酸アルミニウム、及び硫酸バリウムとケイ酸アルミニウムの共沈物、天然及び合成の繊維状鉱物材料、例えばウォラストナイト、及び短繊維金属(short metal)及びガラスファイバーを好ましく使用することができる。適する有機充填剤の例は、炭素、メラミン、ロジン、シクロペンタジエニル樹脂、及びグラフトポリマー及びセルロースファイバー、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、芳香族及び/又は脂肪族ジカルボン酸エステルに基づくポリエステル繊維、及び、特に炭素繊維である。無機及び有機充填剤は、それぞれ単独で使用しても、混合物として使用してもよい。
【0062】
層(ii)に対して好ましくは10〜70質量%の充填剤を、層(ii)の製造における(e)助剤として用いると好ましい。好ましく使用される充填剤は、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、バライト、ガラス繊維及び/又はガラス微小球体である。充填剤粒子のサイズは、層(ii)の製造に用いられる成分の、層(i)及び層(iii)の間の空間への導入が阻害されないように選定されると好ましい。充填剤の粒径が<0.5mmであると特に好ましい。
【0063】
充填剤は、ポリオール成分との混合物として、ポリイソシアネート重付加物を製造するための反応で用いられると好ましい。
【0064】
ポリイソシアネート重付加物の熱膨張係数はスチール等に比較して大きいが、充填剤は、ポリイソシアネート重付加物の熱膨張係数を低下させてスチールの膨張係数と同等にするという作用を有する。これにより、熱負荷を受けた層の間の応力が低下するため、層(i)、(ii)及び(iii)の間の永続的に強い結合を得るために特に有効である。
【0065】
市販されている当業者に公知の慣用の気泡安定剤は、例えば公知のポリシロキサン/ポリオキシアルキレンブロック共重合体、例えばTegosteb2219(Goldschmidt社製)を、層(ii)の製造のための成分(e)として好ましく使用することができる。層(ii)の製造における気泡安定剤の使用割合は、層(ii)の製造のために使用される成分(b)、(e)及び場合に応じて(d)の質量に対して、0.001〜10質量%であると好ましく、0.01〜2質量%であると極めて好ましい。上述の気泡安定剤を使用することにより、層(ii)の製造用の反応混合物中で成分(c)が安定化する。
【0066】
ポリウレタン化学で公知の発泡剤、例えば物理的発泡剤及び/又は化学的発泡剤を、発泡剤(f)として使用することが可能である。物理的発泡剤は、1バールで、一般に−50℃よりも高い沸点を有する。物理的発泡剤の例は、CFC、HCFC、HFC、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素であり、それぞれ炭素原数が4〜6のもの、又はこれらの物質、例えばトリクロロフルオロメタン(沸点24℃)、クロロジフルオロメタン(沸点−40.8℃)、ジクロロフルオロエタン(沸点32℃)、クロロジフルオロエタン(沸点−9.2℃)、ジクロロトリフルオロエタン(沸点27.1℃)、テトラフルオロエタン(沸点−26.5℃)、ヘキサフルオロブタン(沸点24.6℃)、イソペンタン(沸点28℃)、n−ペンタン(沸点36℃)及びシクロペンタン(沸点49℃)の各種混合物である。
【0067】
適する化学的発泡剤、すなわちイソシアネート基等との反応により気体生成物を生成する発泡剤には、例えば水、水和により水を含む化合物、カルボン酸、tert−アルコール、例えばtert−ブタノール、カルバメート、例えばEP−A1000955、特に2ページ、5〜31行、及び3ページ、21〜42行に記載されているカルボネート、例えばアンモニウムカルボネート、及び/又はアンモニウムジカルボネート、及び/又はグアニジンカルバメートがある。
【0068】
水及び/又はカルバメートが、発泡剤(f)として好ましく使用される。
【0069】
発泡剤(f)は、層(ii)を350〜1200kg/m3の好ましい密度で得るために必要な量で用いられると好ましい。当業者が通常用いる単純な慣用的な実験により測定可能である。発泡剤(f)は、ポリイソシアネート重付加物の総質量に対して、特に好ましくは0.05〜10質量%、更に0.1〜5質量%の使用量で用いられる。
【0070】
層(ii)の質量は、定義上、層(ii)の製造に用いられる成分(a)、(b)、及び場合により(c)、(d)、(e)及び/又は(f)の質量に対応する。
【0071】
新規ポリイソシアネート重付加物の製造において、イソシアネートと、イソシアネートに対して反応性の化合物は、イソシアネート(a)のNCO基の当量数対、イソシアネートに対して反応性の化合物(b)の反応性水素原子(場合により(f)を含む)の合計の割合が、0.85:1〜1.25:1、好ましくは0.95:1〜1.15:1、特に1:1〜1.05〜1となるように反応させられる。一部分のイソシアヌレート基が層(ii)中で結合した状態にある場合、NCO基の、反応性水素原子の総量に対する割合は1.5:1〜60:1、好ましくは1.5:1〜8:1の範囲で用いられるのが一般的である。
【0072】
ポリイソシアネート重付加物は、一般に、ワンショット法、又はプレポリマー法で、高圧又は低圧法等により製造される。
【0073】
2成分法を用い、イソシアネートに対して反応性の化合物(b)と、場合により発泡剤(f)と、更に、場合により触媒(d)及び/又は助剤(e)を成分(A)(ポリオール成分)中で合体し、これらを十分に混合すると好ましく、成分(B)としてイソシアネート(a)を使用すると特に好ましいことがわかっている。
【0074】
成分(c)は、成分(a)、(b)及び場合により(f)、(d)及び/又は(e)を含む反応混合物、及び/又は各成分(a)、(b)、上述の(A)及び/又は(B)に対して添加される。(c)と混合する成分は、液体状で存在すると好ましい。各成分は成分(b)に混合されると好ましい。
【0075】
対応の成分と成分(c)との混合は、一般に公知の方法で行われる。例えば、公知の充填装置、例えばエア充填装置により好ましくは加圧下で、例えば加圧容器から、又はコンプレッサで圧縮し、ノズル等を通して(c)を対応の成分に供給する。更に、対応の成分を(c)と実際に混合する際、通常は液体成分中で成分(c)の気泡が好ましくは0.0001〜10mm、特に好ましくは0.0001〜1mmの大きさとなるように混合が行われる。
【0076】
層(ii)の製造に用いられる反応混合物中の成分(c)の含有率は、公知の計測機器により、反応混合物の密度を介して高圧機器の戻り配管中で測定される。混合物における成分(c)の含有率は、制御装置により調節可能であり、密度を基準として自動的に調節されると好ましい。成分濃度は、循環速度が非常に遅いとしても、機器中で材料が平常に循環する間にオンラインで測定及び調整可能である。
【0077】
本発明で得られる複合成分は、特に大きな力に耐えうる構造素子が必要とされる分野、例えば造船における構造部分、例えば、内部壁部と外部壁部とを含む二重船殻を有する船体、船倉の被覆、船倉の隔壁、搭乗/搭載用折りたたみ艦橋(フラップ)、又は橋等の構造物内、又は高層ビル等の建築物における構造素子として使用される。
【0078】
新規複合素子は、核部分として硬質ポリウレタン及び/又はポリイソシアヌレートフォームを含む、一般に断熱用に用いられる伝統的なサンドウィッチ素子とは異なるため、これと混同してはならない。サンドウィッチ素子は、機械的応力が比較的低いため、上述した適用法には不適当である。
【0079】
新規複合素子は、幅0.2m〜5m、好ましくは0.5m〜3m、及び長さ0.5〜10m、好ましくは1m〜5mであると好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)2〜20mmの金属、プラスチック又は木材、
(ii)10〜300mmのポリイソシアネート重付加物、及び
(iii)2〜20mmの金属、プラスチック又は木材、
を含む層構造を有する複合素子であって、前記層(ii)が予め成形されたポリイソシアネート重付加物(x)を含み、該ポリイソシアネート重付加物(x)が、ポリイソシアネート重付加物(xx)により層(i)及び(iii)に粘着結合し、ポリイソシアネート重付加物(x)が容量4〜1000cm3の多部分から構成される複合素子。
【請求項2】
ポリイソシアネート重付加物(x)の密度が900〜1200kg/m3である、請求項1に記載の複合素子。
【請求項3】
ポリイソシアネート重付加物(x)が、圧縮されたポリイソシアネート重付加物のシュレッダー装置による細分化により、又は形状決定装置による製造により得られたものである請求項1に記載の複合素子。
【請求項4】
ポリイソシアネート重付加物(x)の割合が、層(ii)の容量の10%〜90%を占める請求項1に記載の複合素子。
【請求項5】
ポリイソシアネート重付加物(xx)の割合が、層(ii)の容量の10%〜90%を占める請求項1に記載の複合素子。
【請求項6】
(i)2〜20mmの金属、プラスチック又は木材、
(ii)10〜300mmのポリイソシアネート重付加物、及び
(iii)2〜20mmの金属、プラスチック又は木材、
を含む層構造を有する複合素子の製造方法であって、ポリイソシアネート重付加物(x)を前記層(ii)の空間に導入し、次いで層(ii)にポリイソシアネート重付加物(xx)を製造するための液体状の出発材料を充填する、複合素子の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合素子を製造する、請求項6に記載の複合素子の製造方法。
【請求項8】
前記層(ii)の幅が0.5〜4m、長さが1〜12mであり、前記層(i)と前記層(iii)との間の距離が20〜150mmである、請求項6に記載の複合素子の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合素子を含む船又は構造体。

【公表番号】特表2007−513798(P2007−513798A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537147(P2006−537147)
【出願日】平成16年10月23日(2004.10.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011995
【国際公開番号】WO2005/042239
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】