説明

複合繊維強化プラスチック及び補強パネル

【課題】シンチレータ用無機結晶成形体の線膨張係数と同等の線膨張係数を有し、且つ、軽量で優れた機械的特性を備える複合繊維強化プラスチックを提供することを課題とする。
【解決手段】線膨張係数の異なる、少なくとも二種類の無機繊維プリプレグを積層して成る複合繊維強化プラスチックであって、線膨張係数が異方性を有し、特定方向の線膨張係数が3ppm/K以上40ppm/K以下であり、前記特定方向と直交する方向の線膨張係数よりも大きく、引張強度が70MPa以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機繊維プリプレグを積層して成る複合繊維強化プラスチック(複合FRP)に関する。詳しくは、X線やγ線、β線等の放射線検出器に用いられるシンチレータ用無機結晶成形体を保護する補強パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
シンチレータは、医療、工業用のX線撮影や、X線、γ線、α線やβ線などの放射線を検出する放射線検出装置に幅広く使用されている。シンチレータには、BGO結晶(BiGe12)やLSO結晶(LuSiO)、GSO結晶(GdSiO)、PWO結晶(PbWO)、NaI結晶、CsI結晶等の無機結晶成形体が使用されており、この無機結晶成形体は特定の波長領域の放射線のエネルギーを吸収することで、可視光又はそれに近い光信号を生み出し、その光信号から対象となる放射線の持つエネルギー量を検知することができる。
【0003】
上記した無機結晶成形体は、機械的に脆弱であり特に宇宙分野で使用する場合には、衛星の打ち上げの際に加わる重力などの負荷や衝撃により無機結晶体が破損しやすいため、前記無機結晶成形体の外面を高強度な材料で補強して使用されてきた。そしてこれらの補強材料として機械的特性、化学特性、耐衝撃性等にも優れ、さらに比較的比重が小さく軽量で剛性の高い繊維強化プラスチックが使用されている。(非特許文献)
【0004】
しかしながら、従来の繊維強化プラスチック補強材料では、無機結晶成形体の線膨張係数と前記繊維強化プラスチック補強材料の線膨張係数が異なることによる大きな問題が生じている。
【0005】
すなわち、上記したように衛星の打ち上げの際に加わる重力等の負荷や衝撃による熱エネルギーの発生、あるいは宇宙空間を飛行中の温度変化等によって無機結晶成形体内に発生する熱膨張・収縮による形状の変化と、補強材料の線膨張特性が追従できないことに起因して、無機結晶成形体から補強材料の離脱、検知精度の低下、あるいは破壊等が発生する致命的な問題である。
【0006】
繊維強化プラスチック材料の線膨張係数を制御する方法として、特許文献1に繊維強化プラスチックからなるグリッド構造において、繊維強化プラスチックを構成する強化繊維と樹脂母材との間の熱歪みが釣り合っていることにより、全体における熱膨張係数が0±1×10−7/Kの範囲内であることを特徴とするグリッド構造が提案されている。しかしながら、線膨張係数を小さくすることで膨張を抑制することは可能であるが、シンチレータ用無機結晶成形体の補強材として用いる場合には、使用環境の温度変化による無機結晶成形体の熱歪あるいは形状の変化量を吸収することはできない。
【0007】
また、特許文献2では、少なくとも一つは負の線膨張係数を有する強化繊維を含む二種以上の強化繊維を組み合せることにより、各々の線膨張係数を調整した一又は二以上の強化繊維からなるシートを組み合せて、線膨張係数を抑制した面内疑似等方性繊維強化樹脂複合材料が提案されている。上記方法では負の線膨張係数を有する強化繊維を用いるため、線膨張係数を大きい方向に制御することが困難である。同時に、面内擬似等方性の繊維強化プラスチックは、材料のいずれの方向においても所定の機械的特性が得られ、同時に線膨張係数も等方性を有するため、補強材として一方向のみの熱歪に追従することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−9453
【特許文献2】WO00/64668
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】インターネット「12.6硬X線検出器(HXD)」公開
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の背景に鑑みてなされたものであり、その目的はシンチレータ用無機結晶成形体の線膨張係数と同等の線膨張係数を有し、且つ、軽量で優れた機械的特性を備える複合繊維強化プラスチックを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、線膨張係数の異なる少なくとも二種類の無機繊維プリプレグを積層して成る複合繊維強化プラスチック(複合FRP)であって、前記複合FRPは線膨張係数が異方性を有し、特定方向の線膨張係数が3ppm/K以上40ppm/K以下であり、前記特定方向と直交する方向の線膨張係数よりも大きく、前記複合FRPの引張強度が70MPa以上であることを特徴とする。
【0012】
本発明の複合FRPは、特定方向の線膨張係数において異方性を有する。特定方向とは、例えばX方向、Y方向あるいはZ方向のいずれの方向であってもよく、使用状況において熱的影響(熱膨張、熱歪)を受けやすい方向をいう。
【0013】
本発明において特定方向の線膨張係数は、3ppm/K以上40ppm/K以下であり、前記特定方向と直交する方向の線膨張係数よりも大きい方が好ましい。線膨張係数が上記範囲であると線膨張係数の異なる構造体の補強材料として用いた場合に幅広い多くの構造体や材料に対応できる。また、例えばシンチレータに用いられる無機結晶成形体の形状的アスペクト比又は線膨張係数の異方性等によって発生する熱歪や熱応力を緩和させることができるからである。
【0014】
また、本発明において複合FRPの引張強度は70MPa以上であることが好ましい。複合FRPの引張強度はプリプレグの積層方向や無機繊維の種類を変えることによって所望の強度を設計することができる。
【0015】
以下に線膨張係数と機械的特性の設計について説明する。例えば、代表的な繊維強化プラスチックである、カーボン繊維強化プラスチック(CFRP)の一般的な線膨張係数は繊維方向において約−2.0〜2.0ppm/Kで引張強度は800〜4300MPaであり、比重は1.5〜1.85である。また、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)の線膨張係数は繊維方向において約7〜12ppm/Kで引張強度は約2000MPa以下であり、比重は1.6〜2.1である。
【0016】
本発明の複合FRPの製造に際しては、上記特性を持つCFRPとGFRPの複合化した特性を得るために、各繊維から成るプリプレグの積層角度(繊維織物や繊維束の角度)や、積層枚数、あるいは各繊維のプリプレグの積層割合、さらには各繊維の繊維径や材質などのファクターから緻密な設計のもとに製造することができる。
【0017】
上記した設計に基づくと、本発明の複合FRPにおいて、機械的特性を向上させるためには、カーボン繊維の割合を多くすることになる。また、特定方向の機械的特性を向上させるためには、0度(繊維束の方向に対して)の角度で積層していくことになる。
【0018】
また、線膨張係数を上げていくためには、ガラス繊維の割合を多くする必要がある。さらに特定方向の線膨張係数のみを向上させるためにはガラス繊維束の方向が0度になるように設計することが必要である。
【0019】
また、本発明の複合FRPの一用途であるシンチレータ用無機結晶成形体の補強パネルにおいては、衛星に搭載されて宇宙に打ち上げられるため、軽量化が必須条件になる。このような条件において軽量化のためには、ガラス繊維の割合を少なくしなければならなくなる。上述のような要素を勘案するなかで、所望の複合FRPを設計することができる。
【0020】
本発明の複合FRPは、線膨張係数は異方性を有し、引張強度などの機械的特性は面内擬似等方性であって、その特性はより高い方が好ましい。すなわち、線膨張係数に対しては、シンチレータ用無機結晶成形体の線膨張係数に追従でき熱歪や熱変形量を吸収し、且つ、補強体としての機械的特性は等方性の特性を有し前記成形体の全体を保護できることが好ましい。
【0021】
次に、請求項2の発明は、請求項1に記載された複合FRPにおいて、前記無機繊維は炭素繊維、ガラス繊維、クオーツ繊維、玄武岩繊維から選ばれる少なくとも一つの無機繊維であることを特徴とする。宇宙衛星のシンチレータ用無機結晶成形体の補強パネルとして使用する場合には、軽量、且つ高強度であることが望まれるため、炭素繊維とガラス繊維を用いることが好ましい。これらの各繊維はマトリックス樹脂が含浸されたプリプレグの形体で市販されているものを使用できる。
【0022】
前記プリプレグに含まれる無機繊維は、フィラメント、ブレイド、ヤーン、ストランド、フィラメント束、紡績糸などの形状で使用できる。また、織物、編物、不織布などに加工してから使用しても良い。
【0023】
また、前記プリプレグに含まれる無機繊維とマトリックス樹脂の割合は、成形性、機械的特性、線膨張係数等の観点から無機繊維の割合が45〜75体積%であることが好ましく、更に、50〜65体積%がより好ましい。無機繊維の割合が75体積%以上であると、プリプレグの積層時にボイドが発生しやすく、機械強度の低下の原因になる。
【0024】
本発明で用いられるプリプレグのマトリックス樹脂は、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール、ユリア・メラミン、ポリイミドや、これらの共重合体、変性体、或いはブレンドした熱硬化性樹脂を用いることができる。中でも、宇宙衛星に搭載するシンチレータ用無機結晶成形体の補強パネルに用いる場合は、衛星内の基材や測定器に影響を与えるアウトガスの問題からエポキシ樹脂がより好ましい。
【0025】
次に、請求項3の発明は、請求項1〜2のいずれかに記載の複合FRPより成るシンチレータ用無機結晶成形体の補強パネルである。本発明の複合FRPは、宇宙衛星に搭載するシンチレータ用無機結晶成形体を保護するための補強パネルとして使用した場合、線膨張係数が異方性を有するため、前記無機結晶成形体そのものの線膨張係数の異方性や、前記無機結晶成形体及び衛星構造体の幾度学的形状の異方性によって生じる形状変化や熱歪を吸収し、且つ高強度で軽量であるため好適に使用できる。
【0026】
また、シンチレータ用無機結晶成形体としてはBGO、LSO等の結晶体が使用され、これらの結晶体の機械的、あるいは熱的特性に合わせて補強パネルを設計できる。
【0027】
次に、請求項4の発明は、請求項3に記載の補強パネルにおいて、前記補強パネルがシンチレータ用無機結晶成形体に接着剤によって固着されていることを特徴とする。従来技術では、シンチレータ用無機結晶成形体と補強パネルの線膨張係数を合わせることが難しかったことから、無機結晶成形体と補強パネルの間隙にシリコーンゴムなどを封入し、耐震性と熱膨張係数差による熱歪を吸収していた。
【0028】
しかしながら本発明により、シンチレータ用無機結晶成形体の熱歪と補強パネルの線膨張係数を近づけることが可能になったため、シンチレータ用無機結晶成形体と補強パネルを直接接着材によって固着でき、より強固に補強できる。
【0029】
シンチレータ用無機結晶とFRP補強材の間で生じる線膨張係数による熱応力は下記の式から求めることが出来る。
σ=EΔαΔT
なお、式中
σ:補強材とシンチレータ用無機結晶成形体間で発生する熱応力(MPa)
E:シンチレータ用無機結晶成形体のヤング率(GPa)
Δα:補強材とシンチレータ用無機結晶成形体の線膨張係数差(/K)
ΔT:温度変化(K)
である。また、シンチレータ用無機結晶成形体の表面に反射層を設ける場合は、反射層の引張強度や線膨張係数についても考慮する必要がある。実際には、無機結晶成形体や周辺構造体の幾度学的形状により、この値は更に大きくなったり小さくなったりする。
【0030】
宇宙観測衛星に搭載したシンチレータ用無機結晶成形体温度変化は一般に−40℃〜60℃であることから、本特許の複合FRPを補強パネルとして使用する場合には最大の温度変化が60度Cにおいて発生する熱応力の値がシンチレータ用無機結晶成形体の引張強度以下になるように補強パネルの線膨張係数を制御する必要がある。
【0031】
次に、請求項5の発明は、請求項3に記載の補強パネルにおいて、前記シンチレータ用無機結晶成形体の表面に反射層が設けられ、該反射層表面と前記補強パネルが接着剤によって固着されていることを特徴とする。宇宙空間における放射線をより効率よく検出するためには前記反射層を設けることが好ましい。また、反射層を備えるシンチレータ用無機結晶成形体においても、より強固に補強するためには、該反射層表面と前記補強パネル面を直接接着剤によって固着することが好ましい。
【0032】
次に、請求項6の発明は、請求項5に記載の補強パネルにおいて、前記反射層は、硫酸バリウム、酸化チタン、ESR素材、フッ素樹脂素材から選ばれる少なくとも1つの反射層であることを特徴とする。
【0033】
次に、請求項7の発明は請求項4又は5に記載の補強パネルにおいて、前記接着剤は、エポキシ、シリコン、ウレタン、アクリレート系接着剤から選ばれる少なくとも一つの接着材であることを特徴とする。前記接着剤は、使用する環境によって選ばれ、航空・宇宙用途で使用する場合には、アウトガス問題の観点から、エポキシ系接着剤が好適に使用される。また、接着強度を高め安定させるためには、無機結晶成形体および補強パネルの表面をエッチングなどで表面処理やプライマー処理(接着助剤)などを用いても良い。
【0034】
次に、請求項8の発明は請求項3〜7のいずれかに記載の複合パネルにおいて 前記補強パネルの厚みが0.6mm以上4.0mm以下であることを特徴とする。宇宙衛星に搭載するシンチレータ用無機結晶成形体の補強パネルとしては線膨張係数、機械的特性、軽量化に加えて、コンパクトな外形であることが要求され、このような特性を満たすためには補強パネルの厚みは、0.6mm以上4.0mm以下に成形できることが好ましい。異方性の線膨張係数を有しながら、必要とする機械的特性を満たし、且つ軽量化が図れるからである。
【発明の効果】
【0035】
本発明の複合FRPは、線膨張係数が異方性を有し、且つ、軽量で高強度、高剛性などの優れた特性を備えているため、シンチレータ用無機結晶成形体の補強パネルとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。本発明の諸特性は下記に記載の測定器と測定条件で行った。
【0037】
(1)線膨張係数の評価
複合FRPの線膨張係数は熱分析装置(Thermo puls TMA8310リガク社製)を用いJIS K7197に基づき測定した。
(測定条件)
荷重:0.049N、昇温速度:5℃/min
冷却速度:3℃/min
測定温度:−50〜100℃
雰囲気:窒素雰囲気(100mL/min)
(2)引張強度の評価
引張材料試験機インストロン4505(インストロン・リミテッド社製)を用いJIS K7164(6号形)基づき測定した。
(測定条件)
試験数 :n=5
引張速度 :1mm
/min
試験片サイズ:厚み1.2mm、幅45±0.5mm、長さ215+3−0mm
【実施例1】
【0038】
シンチレータ用無機結晶成形体として、BGO結晶成形体の諸特性からこの結晶体の補強パネルとして最適な複合FRPを作製した。前記BGO結晶成形体の諸特性を表1に示す。また、BGO結晶成形体は44mm×66mm×66mmの形状から熱歪等を算出した。
【表1】

【0039】
(複合FRPの作製)
原材料プリプレグ(A)としてトレカプリプレグP3252S−15(東レ(株)製)及び原料プリプレグ(B)としてS−2ガラスUDプリプレグMTM28−1/S2−GLASS UD(Advanced Composites Group社製)を用意した。プリプレグ(A)は、無機繊維がPAN系炭素繊維T700Sであり、マトリックス樹脂にエポキシ樹脂を使用した一方向プリプレグである。また、プリプレグ(B)は、無機繊維がS−2ガラス繊維であり、マトリックス樹脂はエポキシ樹脂に使用した一方向プリプレグである。
【0040】
なお、プリプレグ(A)の繊維質量含有率(Wf)は、66.5%である。また、プリプレグ(B)樹脂含有量(Rc)は、30%である。
【0041】
上記2種類の原材料プリプレグを用い、それぞれ□200mmに切断し離型処理した成形型に投入しプリプレグ(A),(B)を積層した。積層方法は繊維の配向方向に対する角度を0/+45/−45/90/0/90/−45/+45/0度で、合計9枚のプリプレグを積層した。前記の積層状態において、プリプレグ(B)は0度方向に積層し、プリプレグ(A)はその他の角度に合致する部分に積層し、プリプレグ(A),(B)の積層体を作製した。
【0042】
その後、前記積層体を真空バックした後、真空を保持したまま、588kPaの圧力で加圧及び、130度Cの温度で2.5時間加熱し、硬化させて厚み1.2mmの複合FRP(a)を作製した。
【0043】
前記複合FRP(a)の線膨張係数を測定した結果、繊維の配向方向0度の方向の線膨張係数は5.4ppm/Kであり、繊維の配向方向90度方向の線膨張係数は4.1ppm/Kであった。
【0044】
また、引張強度は繊維の配向方向0度方向の引張強度は597MPaであり、繊維の配向方向90度方向の引張強度は553MPaであった。
【0045】
本実施例で作製した複合FRP(a)の線膨張係数は表1のBGO結晶成形体の線膨張係数と差がもっとも大きい場合でも、3.46ppm/K以下であることから、宇宙観測用衛星に用いた場合に発生する温度変化が最大の60度Cであっても、熱応力が23.2MPa以下になるため、BGO結晶成形体が破壊されないことが確認できた。
【0046】
(比較例1)
プリプレグ(A)のみを用い繊維の配向方向に対する角度を0/+45/−45/90/90/−45/+45/0で積層し、以後の作製条件は実施例1と同様の条件で複合FRP(b)を作製した。
【0047】
前記複合FRP(b)の厚みは1.1mmであり、線膨張係数は繊維の配向方向の0度および90度方向ともに2.3ppm/Kであった。また、引張強度は繊維の配向方向の0度方向および90度方向ともに829MPaであった。
【0048】
この複合FRP(b)を表1に示すBGO結晶成形体の補強パネルとして使用する場合には、BGO結晶成形体の線膨張係数と複合FRP(b)の線膨張係数の差がもっとも大きい場合でも、3.46ppm/K以上であることから、宇宙観測用衛星に用いた場合に発生する温度変化が最大の60度Cであると、熱応力が23.2MPa以上になるため、BGO結晶成形体の構造破壊が予測される。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の複合FRPは、レントゲンやCT等のX線を用いた検出器等の補強パネルに用いることができ、またその他の利用分野としては、宇宙観測に用いるシンチレータの無機結晶成形体等の補強パネルなどに好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線膨張係数の異なる少なくとも二種類の無機繊維プリプレグを積層して成る複合繊維強化プラスチック(複合FRP)であって、前記複合FRPは線膨張係数が異方性を有し、特定方向の線膨張係数が3ppm/K以上40ppm/K以下であり、前記特定方向と直交する方向の線膨張係数よりも大きく、前記複合FRPの引張強度が70MPa以上であることを特徴とする複合FRP。
【請求項2】
前記無機繊維は炭素繊維、ガラス繊維、クオーツ繊維、玄武岩繊維から選ばれる少なくとも一つの無機繊維である請求項1に記載の複合FRP。
【請求項3】
請求項1から2のいずれかに記載の複合FRPよりなるシンチレータ用無機結晶成形体の補強パネル。
【請求項4】
前記補強パネルがシンチレータ用無機結晶成形体に接着剤によって固着されていることを特徴とする請求項3に記載の補強パネル。
【請求項5】
前記シンチレータ用無機結晶成形体の表面に反射層が設けられ、該反射層表面と前記補強パネルが接着剤によって固着されていることを特徴とする請求項3に記載の補強パネル。
【請求項6】
前記反射層は、硫酸バリウム、酸化チタン、ESR素材、フッ素樹脂素材から選ばれる少なくとも1つの反射層である請求項5に記載の補強パネル。
【請求項7】
前記接着剤は、エポキシ、シリコン、ウレタン、アクリレート系接着剤から選ばれる少なくとも一つの接着材である請求項4及び5に記載の補強パネル。
【請求項8】
前記補強パネルの厚みが0.6mm以上4.0mm以下である請求項3から7のいずれかに記載の補強パネル。

【公開番号】特開2010−247475(P2010−247475A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101259(P2009−101259)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名:国立大学法人東京大学 理学系研究科 博士課程論文発表会 主催者名 :国立大学法人東京大学 開催日 :2009年1月13日〜2月3日(発表日1月27日)
【出願人】(391059399)株式会社アイ.エス.テイ (102)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】