説明

複数の発光セルを有する発光装置及びその製造方法

【課題】高電圧交流電源下で最大光出力を増加させることができるように改善された発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置は、サファイア基板より熱伝導率が高い熱伝導性基板110、例えばSiC基板を含む。熱伝導性基板の上部に複数の発光セル100−1〜nが直列接続される。一方、熱伝導性基板と発光セルとの間に半絶縁性バッファ層120が介在する。半絶縁性バッファ層は、例えばAlNまたは半絶縁性GaNであることができる。サファイア基板より熱伝導率が高い熱伝導性基板を採用することによって、従来のサファイア基板に比べて熱放出性能を改善することができ、高電圧交流電源下で駆動される発光装置の最大光出力を増加させることができる。また、半絶縁性バッファ層を採用して熱伝導性基板を介した漏洩電流基板を通じた漏洩電流及び発光セル間の漏洩電流増加を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及びその製造方法に関し、より詳細には、単一のチップ内に直列接続された複数の発光セルを有する発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードは、n型半導体とp型半導体とが互いに接合された構造を有する光電変換半導体素子であって、電子と正孔の再結合によって発光する。このような発光ダイオードは、表示素子及びバックライトとして広く用いられている。また、発光ダイオードは、既存の電球または蛍光灯に比べて消費電力が小さく、寿命が長くて、白熱電球及び蛍光灯を代替して一般照明用途としてその使用領域を広げている。
【0003】
発光ダイオードは、交流電源下ではその電流の方向によってオン/オフ状態を反復する。したがって、発光ダイオードを交流電源に直接接続して使用する場合、発光ダイオードが連続的に光を放射せず、逆方向電流により容易に損傷を受けるという問題点がある。
【0004】
このような発光ダイオードの問題点を解決し、高電圧交流電源に直接接続して使用することができる発光ダイオードが特許文献1に“発光素子を有する発光装置(LIGHT−EMITTING DEVICE HAVING LIGHT−EMITTING ELEMENTS)”という題目で開示されている。
上記特許文献1によれば、LEDがサファイア基板のような絶縁性基板上に2次元的に直列接続され、LEDアレイを形成する。このような2つのLEDアレイがサファイア基板上で逆並列で接続される。その結果、ACパワーサプライにより駆動され得る単一のチップ発光装置が提供される。
【0005】
しかし、サファイア基板は、熱伝導率が相対的に低いため、熱放出が円滑でない。このような熱放出の限界は、発光装置の最大光出力の限界につながる。したがって、高電圧交流電源下で最大光出力を改善するために、発光装置に対する持続的な努力が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第WO2004/023568 Al号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高電圧交流電源下で最大光出力を増加させることができるように改善された発光装置を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、電気伝導性基板を使用する場合にも、基板を介した漏洩電流基板を通じた漏洩電流の増加を防止することができる直列接続された複数の発光セルを有する発光装置を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、基板を介した漏洩電流基板を通じた漏洩電流の増加なく、高電圧交流電源下で最大光出力を増加させることができるように改善された発光装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の発光セルを有する発光装置を開示する。
本発明の一態様に係る発光装置は、サファイア基板より熱伝導率が高い熱伝導性基板を含む。熱伝導性基板の上部に複数の発光セルが直列接続される。一方、熱伝導性基板と発光セルとの間に半絶縁性(semi−insulating)バッファ層が介在する。サファイア基板より熱伝導率が高い熱伝導性基板を採用することによって、従来のサファイア基板に比べて熱放出性能を改善することができるので、高電圧交流電源下で駆動される発光装置の最大光出力を増加させることができる。また、半絶縁性バッファ層を採用して、熱伝導性基板を介した漏洩電流基板を通じた漏洩電流及び発光セル間の漏洩電流の増加を防止することができる。
【0010】
ここで、熱伝導性基板は、サファイア基板に比べて相対的に熱伝導率が高い物質の基板を意味する。また、“半絶縁性”(semi−insulating)は、一般的に比抵抗が常温で略10Ω・cm以上の高抵抗物質を示し、特別な言及がない限り、絶縁性物質をも含むものとして使われる。
熱伝導性基板は、窒化アルミニウム(AlN)または炭化ケイ素(SiC)基板であることができる。また、SiC基板は、半絶縁性またはn型炭化シリコン(SiC)基板であることができる。AlN及びSiC基板は、サファイア基板に比べて約10倍以上の熱伝導率を有する。したがって、AlNまたはSiC基板を採用することによって、サファイア基板を採用した発光装置に比べて、熱放出性能が改善された発光装置を提供することができる。
半絶縁性バッファ層は、非ドープ(undoped)の窒化アルミニウム(AlN)であることができる。AlNは、SiC基板とIII族窒化物との間の適当な結晶構造を有する。
【0011】
これとは異なって、半絶縁性バッファ層は、半絶縁性窒化ガリウム(GaN)であることができる。半絶縁性窒化ガリウム(GaN)は、非ドープの窒化ガリウム(GaN)または電子受容体がドープされた窒化ガリウムであることができる。一般的に非ドープのGaNは、基板の種類によって半絶縁性またはn型半導体特性を示す。非ドープのGaNがn型半導体特性を示す場合、GaNに電子受容体(acceptor)をドープし、半絶縁性GaNを提供することができる。
電子受容体は、アルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属であることができ、特に、鉄(Fe)であることができる。Feは、GaNの構造的な特性に影響を及ぼすことなく、半絶縁性GaNバッファ層を成長させるために採用することができる。
発光セルの各々は、n型半導体層、活性層、及びp型半導体層を含む。発光セルは、n型半導体層と、隣接する発光セルのp型半導体層とが金属配線により各々電気的に接続される。
【0012】
本発明の他の態様に係る発光装置は、半絶縁性基板を含む。半絶縁性基板は、AlNまたはSiC基板であることができる。半絶縁性基板上に複数の発光セルが直列接続される。本態様によれば、AlNまたは半絶縁性SiC基板上に直接複数の発光セルを形成するので、製造工程を単純化させることができる。
【0013】
また、本発明は、複数の発光セルを有する発光装置を製造する方法を開示する。発光装置の製造方法は、サファイア基板より熱伝導率が高い熱伝導性基板を準備する段階を含む。熱伝導性基板上に半絶縁性バッファ層が形成され、半絶縁性バッファ層上にn型半導体層、活性層、及びp型半導体層が形成される。その後、n型半導体層、活性層、及びp型半導体層をパターニングし、各々n型半導体層の一部が露出された複数の発光セルを形成する。次いで、各発光セルのn型半導体層とそれに隣接する発光セルのp型半導体層とを接続し、発光セルを直列接続する金属配線を形成する。これにより、高電圧交流電源下で最大光出力を増加させることができるように改善された発光装置が製造することができる。
【0014】
熱伝導性基板は、AlN基板であるか、半絶縁性またはn型SiC基板であることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発光装置の熱放出性能を改善することができ、高電圧交流電源下で最大出力が増加された発光装置を提供することができる。また、半絶縁性基板または半絶縁性バッファ層を採用して基板を介した漏洩電流基板を通じた漏洩電流の増加を防止することができる複数の発光セルを有する発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る複数の発光セルを有する発光装置を説明するための断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るブリッジ整流器を含む発光装置を説明するための回路図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る複数の発光セルを有する発光装置を製造する方法を説明するための断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る複数の発光セルを有する発光装置を製造する方法を説明するための断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る複数の発光セルを有する発光装置を製造する方法を説明するための断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る複数の発光セルを有する発光装置を製造する方法を説明するための断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る複数の発光セルを有する発光装置を製造する方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
以下の実施形態は、当業者に本発明の思想が十分に伝達され得るようにするために例として提供されるものである。したがって、本発明は、以下説明される実施形態に限定されないわけではなく、他の形態に具体化されることができる。そして、図面において、構成要素の幅、長さ、厚さなどは、便宜のために誇張されて表現されることができる。明細書全体にわたって同じ参照番号は、同じ構成要素を示す。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態による複数の発光セルが直列接続された発光装置を説明するための断面図である。
図1を参照すると、本発明の発光装置は、熱伝導性基板110と、熱伝導性基板110上に形成されたバッファ層120と、バッファ層120上にパターニングされた複数の発光セル100−1〜100−nと、複数の発光セル100−1〜100−nを直列接続するための金属配線170−1〜170−n−1とを含む。
【0019】
熱伝導性基板110は、サファイア基板に比べて相対的に熱伝導率が高い物質の基板である。熱伝導性基板110は、AlN基板であるか、半絶縁性またはn型SiC基板であることができる。
バッファ層120は、その上部に形成される半導体層と熱伝導性基板110との間の格子不整合を緩和するために用いられる。これに加えて、本発明のいくつかの実施形態において、バッファ層120は、発光セル100−1〜100−nと熱伝導性基板110とを絶縁させるために用いられる。また、発光セルは、互いに電気的に分離されなければならない。したがって、バッファ層120は、半絶縁性物質膜で形成される。熱伝導性基板110が半絶縁性AlNまたは半絶縁性SiC基板である場合、バッファ層120は省略することができる。
【0020】
本実施形態で、半絶縁性バッファ層120は、AlNまたは半絶縁性窒化ガリウムGaN層であることができる。非ドープのAlNは、一般的に絶縁特性を示すので、非ドープのAlNは、AlN非ドープとして用いることができる。一方、非ドープのGaNは、成長方法及び基板物質に依存して一般的にn型半導体または半絶縁性を示す。したがって、非ドープのGaNが半絶縁性を有する場合、半絶縁性GaNは、非ドープのGaNである。一方、非ドープのGaNがn型半導体特性を示す場合、これを補償(compensation)するために電子受容体がドープされる。電子受容体は、アルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属であることができ、特に鉄(Fe)またはクロム(Cr)であることができる。
【0021】
サファイア基板上に半絶縁性GaN層を形成する方法は、ヘイクマンなど(Heikman et al.)による“有機金属化学気相蒸着法によるFeドープされた半絶縁性GaNの成長”(Growth of Fe doped semi−insulating GaN by metalorganic chemical vapor deposition)という題目で2002年7月15日に発行されたアプライドフィジックスレータス(Applied Physics Letters)に開示されている。
フェロセン(ferrocene、C1010Fe)を前駆体(precursor)とするMOCVD技術を使用してサファイア基板上に半絶縁性GaN層を形成した。
【0022】
一般的に、サファイア基板上にMOCVD技術を用いて形成された非ドープのGaNは、n型GaNとなる。これは、残余酸素原子がGaN層で電子供与体(donor)として作用するからである。したがって、Feのように、電子受容体として作用する金属物質をドープし、電子供与体で補償することによって、半絶縁性GaNを形成することができる。
【0023】
電子受容体をドープして半絶縁性GaNを形成する技術は、本発明の実施形態で同様に適用することができる。例えば、SiC基板上に形成された非ドープのGaNは、Siなどの不純物によりn型GaNになることができ、したがってFeのような金属物質をドープし、半絶縁性GaNのバッファ層120を形成することができる。この時、半絶縁性バッファ層120の全ての厚さにわたって電子受容体をドープする必要はなく、バッファ層120の一部厚さに限定してFeのような電子受容体をドープすることができる。
【0024】
電子受容体は、イオン注入(ion implantation)技術を用いてドープすることもできる。
半絶縁性バッファ層120は、図に示すように、発光セル100−1〜100−n間で連続的であることができるが、それらの間で分離することもできる。
【0025】
一方、複数の発光セル100−1〜100−nの各々は、PN接合された窒化物半導体層を含む。
本実施形態で、発光セルの各々は、n型半導体層130と、n型半導体層130上の所定領域に形成された活性層140と、活性層140上に形成されたp型半導体層150とを含む。n型半導体層130の上部面の少なくとも一部が露出される。n型半導体層130及びp型半導体層150上にオーミック金属層160、165を形成することもできる。また、n型半導体層130またはp型半導体層150上に1x1019〜1x1022/cm濃度の高濃度n型半導体トンネリング層やセミメタル(semi−metal)層を形成することもでき、その上に透明電極層(図示せず)をさらに形成することもできる。
【0026】
上記のn型半導体層130は、n型AlInGa1−x−yN(0≦x、y≦1)膜であり、n型クラッド(clad)層を含むことができる。また、p型半導体層150は、p型AlInGa1−x−yN(0≦x、y≦1)であり、p型クラッド層を含むことができる。
n型半導体層130は、シリコンSiをドープして形成することができ、p型半導体層150は、亜鉛(Zn)またはマグネシウム(Mg)をドープして形成することができる。
【0027】
活性層140は、電子及び正孔が再結合される領域であって、InGaNを含んでなる。活性層140をなす物質の種類によって発光セルから発光する光の波長が決定される。
活性層140は、量子井戸層と障壁層が反復的に形成された多層膜であることができる。障壁層と井戸層は、一般式AlInGa1−x−yN(0≦x、y、x+y≦1)で表現される2元〜4元化合物半導体層であることができる。
【0028】
発光セルは、金属配線170−1〜170−n−1を介して直列接続される。本実施形態で、金属配線は、ACパワーサプライにより駆動され得る個数の発光セル100−1〜100−nが直列接続される。すなわち、発光装置に印加される交流駆動電圧/電流と単一の発光セルを駆動するために必要な電圧により直列接続される発光セル100の個数が限定される。例えば、220V交流電圧下で3.3V駆動用発光セルは、約67個が直列で接続させることができる。また、110V交流電圧で、3.3V駆動用発光セルは、略34個が直列で接続させることができる。
【0029】
図1に示すように、n個の発光セル100−1〜100−nが直列接続された発光装置において、第1発光セル100−1のn型半導体層130と第2発光セル100−2のp型半導体層150とが第1金属配線170−1を介して接続され、第2発光セル100−2のn型半導体層130と第3発光セル(図示せず)のp型半導体層(図示せず)とが第2金属配線170−2を介して接続される。そして、第n−2発光セル(図示せず)のn型半導体層(図示せず)と第n−1発光セル100−n−1のp型半導体層150とが第n−2金属配線170−n−2を介して接続され、第n−1発光セル100−n−1のn型半導体層130と第n発光セル100−nのp型半導体層150とが第n−1金属配線170−n−1を介して接続される。
【0030】
上記直列接続された発光セルは、国際公開第WO2004/023568 Al号パンフレットに開示されたような、LEDアレイを構成する。
一方、発光装置は、互いに逆並列で接続された2つのLEDアレイを有し、交流電源下で照明用として用いることができる。第1発光セル100−1のp型半導体層150及び第n発光セル100−nのn型半導体層130に各々交流電源に電気的に接続するためのp型パッド及びn型パッド(図示せず)を形成することができる。
【0031】
これとは異なって、発光装置は、交流電流を整流するためにダイオードで構成されたブリッジ整流器を含むことができる。ブリッジ整流器を含む発光装置の回路図を図2に示した。
図2を参照すると、発光セル41a、41b、41c、41d、41e、41fが直列接続されたLEDアレイ41を構成する。一方、交流電源45とLEDアレイ41及び接地とLEDアレイ41の間にダイオードD1、D2、D3、D4を含むブリッジ整流器が配置される。ダイオードD1、D2、D3、D4は、発光セルと同じ工程により形成される。すなわち、発光セルにブリッジ整流器を作製することができる。
【0032】
LEDアレイ41のアノード端子は、ダイオードD1、D2間のノードに接続され、カソード端子は、ダイオードD3、D4間のノードに接続される。一方、交流電源45の端子は、ダイオードD1、D4間のノードに接続され、接地は、ダイオードD2、D3間のノードに接続される。
交流電源45が正の位相を有する場合、ブリッジ整流器のダイオードD1、D3がターンオンされ、ダイオードD2、D4がターンオフされる。したがって、電流は、ブリッジ整流器のダイオードD1、LEDアレイ41及びブリッジ整流器のダイオードD3を経て接地に流れる。
【0033】
一方、交流電源45が負の位相を有する場合、ブリッジ整流器のダイオードD1、D3がターンオフされ、ダイオードD2、D4がターンオンされる。したがって、電流は、ブリッジ整流器のダイオードD2、LEDアレイ41及びブリッジ整流器のダイオードD4を経て交流電源に流れる。
【0034】
その結果として、LEDアレイ41にブリッジ整流器を接続することによって、交流電源45を使用してLEDアレイ41を継続的に駆動させることができる。ここで、ブリッジ整流器の端子が交流電源45及び接地に接続されるように構成したが、両端部が交流電源の両端子に接続されるように構成することもできる。
本実施形態によれば、1つのLEDアレイを交流電源に電気的に接続して駆動させることができるので、LEDアレイの使用効率を高めることができる。
【0035】
以下、複数の発光セルを有する発光装置の製造方法を説明する。
図3〜図7は、本発明の一実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための断面図である。
【0036】
図3を参照すると、熱伝導性基板110上に半絶縁性バッファ層120を形成する。
熱伝導性基板110は、AlN基板またはSiC基板であることができる。また、SiC基板は、半絶縁性またはn型であることができる。
一般的に、SiC単結晶基板は、n型半導体の特性を有する。これは、SiC基板内に含有された窒素(N)が電子供与体として作用しているからであると知られている。したがって、電子受容体、例えばバナジウム(V)をドープし、半絶縁性SiC単結晶を成長させることができる。
【0037】
一方、バナジウムをドープせずに、半絶縁性SiC結晶を成長させる方法が米国特許第6814801号明細書に開示されている。
このような技術を使用して半絶縁性SiC基板を提供することができる。また、SiC基板の表面にイオン注入技術を用いて電子受容体、例えば鉄、バナジウム、炭素またはシリコン(Si)を注入することによって、SiC上部の一部を半絶縁性SiC層に変換させることができる。
【0038】
半絶縁性バッファ層120は、有機金属化学気相成長法(MOCVD)、分子線エピタキシー法(MBE)またはハイドライド気相成長法(HVPE)などを用いて形成される。半絶縁性バッファ層120は、AlNまたは半絶縁性GaN層であることができる。
半絶縁性GaN層は、非ドープのGaNまたは電子受容体がドープされたGaN層であることができる。電子受容体は、アルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属であることができ、特に鉄(Fe)またはクロム(Cr)であることができる。電子受容体は、GaN層を形成する間に前駆体を使用する蒸着技術を用いてドープしたり、GaN層を形成した後、イオン注入技術を用いてドープすることができる。
【0039】
n型SiC基板を使用する場合、半絶縁性バッファ層120は、発光セルとn型SiC基板を電気的に絶縁させてn型SiC基板を介した漏洩電流基板を通じた漏洩電流を防止する。一方、半絶縁性SiC基板を使用する場合、半絶縁性バッファ層120を形成する工程を省略することができる。
【0040】
図4を参照すると、半絶縁性バッファ層120上にn型半導体層130、活性層140、及びp型半導体層150を形成する。これらの半導体層(130、140、150)は、同一工程チャンバーで連続的に形成することができる。
上記のn型半導体層130、活性層140、及びp型半導体層150は、MOCVD法、MBE法またはHVPE法を用いて形成することができ、各々多層で形成することができる。
n型半導体層130またはp型半導体層150上に1x1019〜1x1022/cm濃度の高濃度n型半導体トンネリング層やセミメタル層を形成することができ、その上に透明電極層(図示せず)をさらに形成することができる。
【0041】
図5を参照すると、p型半導体層150、活性層140、及びp型半導体層130をパターニングして、分離された発光セル100−1〜100−nを形成する。
各層は、フォトリソグラフィック及びエッチング技術を用いてパターニングすることができる。例えば、p型半導体層150上にフォトレジストパターンを形成し、これをエッチングマスクとして使用してp型半導体層150、活性層140、及びn型半導体層130を順次にエッチングする。これにより、分離された発光セルが形成される。この時、半絶縁性バッファ層120をエッチングして熱伝導性基板110を露出させることもできる。
【0042】
図6を参照すると、分離された発光セル100−1〜100−nのp型半導体層150及び活性層140をパターニングして、n型半導体層130上部面の一部を露出させる。
パターニング工程は、フォトリソグラフィック及びエッチング技術を使用して行うことができる。すなわち、分離された発光セル100−1〜100−nを有する熱伝導性基板110上にフォトレジストパターンを形成し、これをエッチングマスクとして使用してp型半導体層150及び活性層140の一部をエッチングする。その結果、p型半導体層及び活性層がエッチングされた部分にn型半導体層130が露出される。
エッチング工程は、湿式または乾式エッチング工程により行うことができる。乾式エッチング工程は、プラズマを利用した乾式エッチング工程であることができる。
【0043】
図7を参照すると、p型半導体層150及びn型半導体層130上に各々p型オーミック金属層160及びn型オーミック金属層165を形成する。
オーミック金属層(160、165)は、オーミック金属層(160、165)が形成される領域を開口したフォトレジストパターン(図示せず)を使用し、金属蒸着工程を実行して形成することができる。
p型オーミック金属層160とn型オーミック金属層165は、同一工程により形成することもでき、各々別個の工程により形成することもできる。上記のオーミック金属層(160、165)は、Pb、Sn、Au、Ge、Cu、Bi、Cd、Zn、Ag、Ni及びTiのうちから選択される少なくともいずれか1つの物質層で形成することができる。
【0044】
その後、隣接する発光セルのn型オーミック金属層165とp型オーミック金属層160とを金属配線170−1〜170−n−1で接続する。金属配線は、エアーブリッジ(airbridge)工程またはステップカバー(step−cover)工程などにより形成することができる。
【0045】
エアーブリッジ工程は、国際公開第WO2004/023568 Al号パンフレットに開示されており、この工程について簡単に説明する。
まず、発光セル及びオーミック金属層(160、165)が形成された基板上にオーミック金属層(160、165)を露出させる開口部を有する第1フォトレジストパターンを形成する。その後、電子ビーム蒸着(e−beam evaporation)技術などを使用して金属物質層を薄く形成する。金属物質層は、開口部及び第1フォトレジストパターン上部の全面に形成される。次いで、接続しようとする隣接する発光セル間の領域及び開口部の金属物質層を露出させる第2フォトレジストパターンを形成する。その後、金などをメッキ技術を使用して形成した後、ソルベントなどの溶液で第1及び第2フォトレジストパターンを除去する。その結果、隣接する発光セルを接続する配線だけが残り、他の金属物質層及びフォトレジストパターンは全て除去される。
【0046】
一方、ステップカバー工程は、発光セル及びオーミック金属層を有する基板上に絶縁層を形成することを含む。絶縁層をフォトリソグラフィック及びエッチング技術を使用してパターニングし、p型半導体層及びn型半導体層上部のオーミック金属層(160、165)を露出させる開口部を形成する。次いで、電子ビーム蒸着技術などを使用して開口部を満たし、絶縁層の上部を覆う金属層を形成する。その後、金属層をフォトリソグラフィック及びエッチング技術を使用してパターニングし、互いに隣接する発光セルを接続する配線を形成する。このような、ステップカバー工程は、多様な変形例が可能である。ステップカバー工程を使用すれば、配線が絶縁層により支持されるので、配線に対する信頼性を増加させることができる。
【0047】
一方、両終端に位置する発光セル100−1及び100−nに交流電源に接続するためのp型パッドとn型パッドを形成する。
【0048】
図面では、発光セルが一列で配列されたものとして示されているが、これは、説明の便宜のためのものであり、発光セルは、国際公開第WO2004/023568 Al号パンフレットに示すように、平面上に多様な形態で配列させることができる。
【符号の説明】
【0049】
41 LEDアレイ
41a〜41f 発光セル
45 交流電源
D1〜D4 ダイオード
100−1〜100−n (第1〜第n)発光セル
110 熱伝導性基板
120 (半絶縁性)バッファ層
130 n型半導体層
140 活性層
150 p型半導体層
160、165 (p型及びn型)オーミック金属層
170−1〜170−n (第1〜第n)金属配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サファイア基板より熱伝導率が高い半絶縁性基板と、
前記半絶縁性基板の上部に配置されそれぞれ直列接続される複数の発光セルとを有し、
前記半絶縁性基板は、その下部がSiC基板であり、その上部がイオン注入された半絶縁性SiC層である
ことを特徴とする複数の発光セルを有する発光装置。
【請求項2】
前記複数の発光セルの各々はn型半導体層、活性層、及びp型半導体層を有し、
前記発光セルのn型半導体層と、隣接する前記発光セルのp型半導体層とが金属配線により各々電気的に直列接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の複数の発光セルを有する発光装置。
【請求項3】
前記複数の発光セルは、前記イオン注入された半絶縁性SiC層上に直接形成されることを特徴とする請求項1に記載の複数の発光セルを有する発光装置。
【請求項4】
前記n型半導体層は、前記イオン注入された半絶縁性SiC層上に直接形成されることを特徴とする請求項2に記載の複数の発光セルを有する発光装置。
【請求項5】
前記複数の発光セルのうち1つ以上の発光セルは、第1の半導体層、活性層、及び第2の半導体層を有し、
前記第1の半導体層は、隣接する前記発光セルの前記第2の半導体層と直列接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の複数の発光セルを有する発光装置。
【請求項6】
前記第1の半導体層は、前記イオン注入された半絶縁性SiC層上に直接形成されることを特徴とする請求項5に記載の複数の発光セルを有する発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−129546(P2012−129546A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−39236(P2012−39236)
【出願日】平成24年2月24日(2012.2.24)
【分割の表示】特願2007−553999(P2007−553999)の分割
【原出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(506029004)ソウル オプト デバイス カンパニー リミテッド (101)
【Fターム(参考)】