説明

複素環ヒドロキシアミン類の調製方法及び該方法に用いる中間体及び触媒

下記工程(a)及び(b)を含む式(1)の化合物の調製方法:
【化1】


(式中:XはS、O又はNR3であり、R3はH又は有機基であり;RはH 又は有機基であり;R1及びR2はそれぞれ独立にH、場合によっては置換されているアルキル又は場合によっては置換されているアリールであり;Gは置換基であり;nは0〜3である)
(a)式(2)の化合物を式NHR1R2の化合物と反応させて式(3)の化合物を与える工程;
【化2】


(式中、X、R、G及びnは上述のとおりであり、R4は場合によっては置換されているアルキル、場合によっては置換されているアルケニル、場合によっては置換されているアルキニル、場合によっては置換されているアリール、場合によっては置換されているヘテロアリール又はこれらの組み合わせである)
(b)式(3)の化合物を還元して式(1)の化合物を与える工程。
式(2)の化合物の調製方法、式(3)の新規な化合物及び下記式の好ましい触媒が提供される:
【化3】


(式中:R6は、中性の場合によっては置換されているヒドロカルビル配位子、中性の場合によっては置換されている過ハロゲン化ヒドロカルビル配位子、又は場合によっては置換されているシクロペンタジエニル配位子を表し;Aは、場合によっては置換されている窒素を表し;Bは、場合によっては置換されている窒素、酸素、硫黄又はリンを表し;Eは、結合基を表し;Mは水素移動型還元を触媒し得る金属を表し;Yは、アニオン性基、塩基性配位子又は空位を表し;ただしA又はBの少なくとも1種は置換窒素を含み、置換基は少なくとも1種のキラル中心を有し;ただしYが空位ではない場合にはA又はBの少なくとも1種は水素原子を有する)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複素環ヒドロキシアミン類の調製方法及び新規な置換ヘテロシクリル及び触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
複素環ヒドロキシアミン類は、多くの医薬品の合成における重要な中間体である。例えば、デュロキセチン(Duloxetine)((+)−N−メチル−3−(1−ナフタレニルオキシ)−2−チオフェンプロパンアミン)、5−HT及びノルエピネフリン摂取阻害剤は、鬱病及び尿失禁の潜在的な治療薬としてかなり有望であることが示されている(米国特許US 5,023,269号明細書、米国特許US 4,956,388号明細書及び「review」Current Opinion in Investigational Drugs(PharmaPress Ltd.)(2000)、1(1),116−121)。
【0003】
デュロキセチン(Duloxetine)の製造方法は、Deeterらの"Tetrahedron Letters"、31(49)、7101−04(1990);EP654264号明細書;US5,023,269号明細書;Liuらの"Chirality"、12(1)、26−29(2000);EP457559号明細書;及びWheelerらの"J.Labelled Compd. Radiopharm"、36(3)、213−223(1995)に記載されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば式(1):
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、
XはS、O又はNR3(式中、R3はH又は有機基である)であり;
RはH又は有機基であり;
R1及びR2はそれぞれ独立に、H、場合によっては置換されているアルキル又は場合によっては置換されているアリールであり;
Gは置換基であり;
nは0〜3である)の化合物の調製方法が提供される。本方法は、
(a)式(2)の化合物を式NHR1R2の化合物と反応させて、式(3)の化合物を与える工程と;
【0007】
【化2】

【0008】
(式中、X、R、G及びnは上述のとおりであり、R4は場合によっては置換されているアルキル、場合によっては置換されているアルケニル、場合によっては置換されているアルキニル、場合によっては置換されているアリール、場合によっては置換されているヘテロアリール又はこれらの組み合わせである)
(b)式(3)の化合物を還元して、式(1)の化合物を与える工程と、
を含む。
【0009】
本発明の第2の側面は、式(2)の化合物を式NHR1R2の化合物と反応させて式(3)の化合物を与えることによる式(3)の化合物の調製方法を提供する。
本発明の第3の側面は、式(3)の化合物を還元して式(1)の化合物を与える、式(1)の化合物の調製方法を提供する。
【0010】
XがNR3の場合、R3は好ましくはH、場合によっては置換されているアルキル又は場合によっては置換されているアリールであり、より好ましくはH又は場合によっては置換されているC1-4アルキルである。XがNR3の場合、R3はHであることが特に好ましい。
【0011】
好ましくは、XはSである。
好ましくは、nは0である。
好ましくは、Rは、H、場合によっては置換されているアルキル、場合によっては置換されているアルケニル、場合によっては置換されているアルキニル、場合によっては置換されているアリール、場合によっては置換されているヘテロシクリル、又はこれらの組み合わせ、又はベンジル、ベンゾイルもしくはテトラヒドロピラニルなどのヒドロキシ保護基である。
【0012】
Rが場合によっては置換されているアルキル、場合によっては置換されているアルケン又は場合によっては置換されているアルキンである場合、直鎖、分枝又は環式分子でもよい。
【0013】
Rは、H;場合によっては置換されているアルキル、特に場合によっては置換されているC1-4アルキル;又は場合によっては置換されているアリール、特に場合によっては置換されているフェニル又は場合によっては置換されているナフチルであることが特に好ましい。
【0014】
RはH又はナフチルであることが特に好ましい。
Rに対する任意の置換基は、好ましくは、アルキル(好ましくはC1-4−アルキル)、場合によっては置換されているアルコキシ(好ましくはC1-4−アルコキシ)、場合によっては置換されているアリール(好ましくはフェニル)、場合によっては置換されているアリールオキシ(好ましくはフェノキシ)、ポリアルキレンオキシド(好ましくはポリエチレンオキシド又はポリプロピレンオキシド)、カルボキシ、ホスフェート、スルホ、ニトロ、シアノ、ハロ、ウレイド、−SO2F、ヒドロキシ、エステル、−NRaRb、−CORa、−CONRaRb、−NHCORa、カルボキシエステル、スルホン、及び−SO2NRaRb(式中、Ra及びRbはそれぞれ独立にH又は場合によっては置換されているアルキル(特にC1-4−アルキル)を表し、又は−NRaRb、−CONRaRb及び−SO2NRaRbの場合には、Ra及びRbはこれらが取り付けられる窒素原子と一緒に脂肪族もしくは芳香族環系を表す);又はこれらの組み合わせから選択される。
【0015】
置換基Gは、好ましくはRに関する任意の置換基から選択される。
好ましくは、R1及びR2はH又は場合によっては置換されているC1-4アルキルである。好ましい実施形態において、R1及びR2の一方はHであり、他方は場合によっては置換されているC1-4アルキルである。特に好ましい実施形態において、R1及びR2の一方はHであり、他方はメチルである。
【0016】
R1及びR2に対する任意の置換基は好ましくは、場合によっては置換されているアルコキシ(好ましくはC1-4−アルコキシ)、場合によっては置換されているアリール(好ましくはフェニル)、場合によっては置換されているアリールオキシ(好ましくはフェノキシ)、ポリアルキレンオキシド(好ましくはポリエチレンオキシドもしくはポリプロピレンオキシド)、カルボキシ、ホスフェート、スルホ、ニトロ、シアノ、ハロ、ウレイド、−SO2F、ヒドロキシ、エステル、−NRaRb、−CORa、−CONRaRb、−NHCORa、カルボキシエステル、スルホン及び−SO2NRaRb(式中、Ra及びRbは、それぞれ独立に、H又は場合によっては置換されているアルキル(特にC1-4−アルキル)であり、−NRaRb、−CONRaRb及び−SO2NRaRbの場合には、Ra及びRbは結合している窒素原子と一緒に脂肪族もしくは芳香族環系を表す);又はこれらの組み合わせから選択される。
【0017】
本発明の方法により調製された式(1)の化合物は、好ましくは式(4):
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、X、G、n、R、R1及びR2は上述のものである)
の化合物である。
式(2)の化合物において、R4は好ましくは、場合によっては置換されているアルキル又は場合によっては置換されているアリールであり、より好ましくは場合によっては置換されているC1-12アルキル又は場合によっては置換されているベンジルである。R4は場合によっては置換されているC1-4 アルキルであり、特にエチルであることが特に好ましい。
【0020】
R4に関する好ましい任意の置換基は、R1及びR2に関する置換基である。
式(2)の化合物は、好ましくは、式(5):
【0021】
【化4】

【0022】
(式中、X、G及びnは上述のとおりである)
の化合物をアシル化して形成され、式(6):
【0023】
【化5】

【0024】
(式中、X、G、n及びR4は上述のとおりである)
の化合物を与え、こうして形成されたβ−ケト基の還元を行い、場合によっては、こうして形成されたヒドロキシ基をアルキレート化することにより形成される。
【0025】
式(5)の化合物は、好ましくはジアルキルカーボネートによりアシル化される。
式(6)の化合物中のβ−ケト基の還元は、当該分野で公知の任意の式(6)におけるような化合物中のβ−ケト基を還元することができる方法により行うことができる。
【0026】
好ましくは、式(6)の化合物中のβ−ケト基の還元は、水素ガス以外の水素源との反応により達成される。水素源は好ましくは、蟻酸;イソプロパノール;シクロヘキサジエン;有機蟻酸塩、特にトリエチルアミン又はアンモニア;無機蟻酸塩、特にカリウム、ナトリウム又はリチウムである。より好ましくは、式(2)の化合物を与える式(6)の化合物中のβ−ケト基の還元は、蟻酸及びトリエチルアミンの混合物、好ましくは蟻酸とトリエチルアミンとのモル比が10:1〜1:1であり、特にモル比が5:2である混合物との反応によりなされ得る。
【0027】
式(6)の化合物中のβ−ケト基の還元は、好ましくは立体特異性還元である。この還元の生成物は、(S)もしくは(R)異性体のいずれかであってもよい。好ましくは、生成物は、少なくとも80%e.e.、より好ましくは少なくとも90%e.e.、特に少なくとも95%e.eにて製造される。好ましくは、還元生成物は式(7):
【0028】
【化6】

【0029】
(式中、X、G、n及びR4は上述のとおりである)
の化合物である。
式(6)の化合物中β−ケト基の還元が立体特異性還元である場合、β−ケト基の立体特異性還元の分野で公知の任意の方法により行われ得る。これらは、化学触媒(例えば、Genet、J.P;Ratovelomanana−Vidal、V.;Cano de Andrade、M. C.;Pfister、X.;Guerreiro、P.;Lenoir、J. Y. Tetrahedron Lett. 1995、36、4801;Guerreiro、P.;Cano de Andrade、M. C.;Henry、J. C.;Tranchier、J. P.;Phansavath、P.;Ratvelomanana−Vidal、V.;Genet、J. P.;Homri、T.;Touati、A. R.;Ben Hassine、B. C.R. Acad. Sci. Paris 1999、2、175;(これらは参照として本願明細書中に組み込まれる);Wiley−VGH (ISBN 0−471−40027−0)発行のOjimaによる "Catalytic Asymmetric Synthesis"、 Wiley inter−science (ISBN 0−471−29805−0)発行のLin、 Li 及びChanによる"Principle and Applications of Asymmetric Synthesis"に記載されている反応を参照せよ)又は生物学的触媒、例えば全細胞、酵素、細胞調製液(cell preparation)又はセルフリー抽出液の使用を含む。
【0030】
好ましい触媒は、WO97/20789国際公開パンフレット、O98/42643国際公開パンフレット及びWO02/44111国際公開パンフレット(これらは参照として本願明細書に組み込まれる)に記載されている水素移動型不斉還元触媒(asymmetric transfer hydrogenation catalyst)である。
【0031】
特に好ましい水素移動型還元触媒(transfer hydrogenation catalyst)は、WO97/20789国際公開パンフレット、WO98/42643国際公開パンフレット及びWO02/44111国際公開パンフレットに記載されているタイプのRu、Rh又はIr触媒であり、場合によっては置換されているジアミン配位子、例えば、場合によっては置換されているエチレンジアミン配位子、及び場合によっては置換されている中性の芳香族配位子、例えばp−シメン、及び場合によっては置換されているシクロペンタジエン配位子を含む群から選択される配位子を含む。例としては、
【0032】
【化7】

【0033】
を挙げることができる。
特に好ましい触媒は、WO97/20789国際公開パンフレット、WO98/42643国際公開パンフレット及びWO02/44111国際公開パンフレットに記載されているタイプの場合によっては置換されているジアミン配位子を含むRu、Rh又はIr触媒であり、場合によっては置換されているジアミン配位子の少なくとも1の窒素原子は、キラル中心を含有する基、特にキラル中心を含有するスルホニル基で置換されている。
【0034】
本発明の方法で用いるために最も好ましい水素移動型還元触媒は、一般式:
【0035】
【化8】

【0036】
(式中、
R6は、中性の場合によっては置換されているヒドロカルビル配位子、中性の場合によっては置換されている過ハロゲン化ヒドロカルビル配位子又は場合によっては置換されているシクロペンタジエニル配位子を表し;
Aは、場合によっては置換されている窒素を表し;
Bは、場合によっては置換されている窒素、酸素、硫黄又はリンを表し;
Eは、結合基を表し;
Mは、水素移動型還元(transfer hydrogenation)を触媒し得る金属を表し;
Yは、アニオン性基、塩基性配位子又は空位を表し;
ただし、A又はBの少なくとも1種は置換窒素を含み、置換基は少なくとも1種のキラル中心を有し;
ただし、Yが空位ではない場合には、A又はBの少なくとも1種は水素原子を有する)
を有する。
【0037】
好ましくは、Aは、−NR7−、−NR8−、−NHR7、−NR7R8又は−NR8R9(式中、R7はH、C(O)R9、SO2R9、C(O)NR9R13、C(S)NR9R13、C(=NR13)SR14又はC(=NR13)OR14を表し、R8及びR9はそれぞれ独立に、場合によっては置換されているヒドロカルビル基、過ハロゲン化ヒドロカルビル基又は場合によっては置換されているヘテロシクリル基を表し、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素又はR9について定義した基を表す)を表し;Bは、−O−、−OH、OR10、−S−、−SH、SR10、−NR10−、−NR11−、−NHR11、−NR10R11、−NR10R12、−PR10−又は−PR10R12(式中、R11はH、C(O)R12、SO2R12、C(O)NR12R15、C(S)NR12R15、C(=NR15)SR16又はC(=NR15)OR16を表し、R10及びR12はそれぞれ独立に、場合によっては置換されているヒドロカルビル基、過ハロゲン化ヒドロカルビル基又は場合によっては置換されているヘテロシクリル基を表し、R15及びR16 はそれぞれ独立に、水素又はR12について定義した基を表す)を表し;ただし、A又はBの少なくとも1種は置換窒素を含み、R7、R8、R9、R10、R11又はR12によって表される置換基は、少なくとも1種のキラル中心を有する。
【0038】
より好ましくは、Aは、−NR7−、−NR8−、−NHR7、−NR7R8又は−NR8R9(式中、R7はH、C(O)R9、SO2R9、C(O)NR9R13、C(S)NR9R13、C(=NR13)SR14又はC(=NR13)OR14を表し、R8及びR9はそれぞれ独立に、場合によっては置換されているヒドロカルビル基、過ハロゲン化ヒドロカルビル基又は場合によっては置換されているヘテロシクリル基を表し、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素又はR9について定義された基を表す)を表し;Bは、−NR10−、−NR11−、−NHR11、−NR10R11又は−NR10R12(式中、R11はH、C(O)R12、SO2R12、C(O)NR12R15、C(S)NR12R15、C(=NR15)SR16又はC(=NR15)OR16を表し、R10及びR12はそれぞれ独立に、場合によっては置換されているヒドロカルビル基、過ハロゲン化ヒドロカルビル基又は場合によっては置換されているヘテロシクリル基を表し、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素又はR12について定義された基を表す)を表し;ただし、A又はBの少なくとも1種は置換窒素を含み、R7、R8、R9、R10、R11又はR12で表される置換基は少なくとも1種のキラル中心を有する。
【0039】
好ましくは、A又はBのいずれかが−NR7−、−NHR7、NR7R8、−NR11−、−NHR11又はNR10R11(式中、R8及びR10は上述のとおりであり、R7又はR11はC(O)NR9R13、C(S)NR9R13、C(=NR13)SR14、C(=NR13)OR14、C(O)NR12R15、C(S)NR12R15、C(=NR15)SR16又はC(=NR15)OR16によって表される基である)により表される基として存在する場合、R9、R12、R14、R15又はR16の少なくとも1種は、少なくとも1種のキラル中心を有する、場合によっては置換されているヒドロカルビル基、過ハロゲン化ヒドロカルビル基又は場合によっては置換されているヘテロシクリル基である。
【0040】
より好ましくは、A又はBのいずれかが−NR7−、−NHR7、NR7R8、−NR11−、−NHR11又はNR10R11(式中、R8及びR10は上述の通りであり、R7又はR11は−C(O)R9又は−C(O)R12で表されるアシル基である)で表されるアミド基である場合、R9及びR12は、少なくとも1種のキラル中心を有する、場合によっては置換されているヒドロカルビル基、過ハロゲン化ヒドロカルビル基又は場合によっては置換されているヘテロシクリル基である。R7又はR11によって表されてもよいアシル基の例としては、(R)−2−メチル−2−(4−メチルフェニル)エタノイル;(R)−2−メチル−2−(4−イソブチルフェニル)エタノイル;(R)−2−メチル−2−(6−メトキシ−2−ナフチル)エタノイル;(S)−2−ヒドロキシ−2−(2−クロロフェニル)エタノイル;及び(R)−2−メチル−2−(3−ピリジル)エタノイルを挙げることができる。
【0041】
最も好ましくは、A又はBのいずれかが−NR7−、−NHR7、NR7R8、−NR11−、−NHR11又はNR10R11(式中、R8及びR10は上述のとおりであり、R7又はR11は−S(O)2R9又は−S(O)2R12によって表されるスルホニル基である)で表されるスルホンアミド基として存在する場合、R9及びR12は少なくとも1種のキラル中心を有する、場合によっては置換されているヒドロカルビル基、過ハロゲン化ヒドロカルビル基又は場合によっては置換されているヘテロシクリル基である。好ましいスルホニル基としては、(1R)1−(7,7−ジメチル−2−オキソビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル)メタンスルホニル、(1S)1−(7,7−ジメチル−2−オキソビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル)メタンスルホニル、(1R、2S)1−(7,7−ジメチル−2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル)メタンスルホニル、(1R、2R)1−(7,7−ジメチル−2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル)メタンスルホニル、(1S、2R)1−(7,7−ジメチル−2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル)メタンスルホニル、(1S、2S)1−(7,7−ジメチル−2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル)メタンスルホニル、(2S)1−(6、6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン)−2−エタンスルホニル、(2R)1−(6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン)−2−エタンスルホニル、(2S)1−(6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン)−2−メタンスルホニル、(2R)1−(6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン)−2−メタンスルホニル、(1R、2R、5R) 5−イソプロピル−2−メチルシクロヘキサンスルホニル、及び(1S、2S、5R)5−イソプロピル−2−メチルシクロヘキサンスルホニル、(1S、2S、5R)2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサンスルホニルを挙げることができる。
【0042】
A及びBの正確な性質は、A及び/又はBが金属に形式的に結合しているか、又は孤立電子対を介して金属に配位しているかによって決定されるであろうことが認められるであろう。
【0043】
1種以上のR8-10及びR12-16により表されてもよいヒドロカルビル基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基及びこれらの任意の組み合わせ、例えばベンジル基、α−メチルベンジル基及びトリチル基などのアラールキル基及びアルカリール基などを含む。
【0044】
R8-10及びR12-16 の1種以上で表わすことができるアルキル基は、20個以下の炭素原子、特に1〜7個の炭素原子、好ましくは1〜5個の炭素原子を有する直鎖及び分枝アルキル基を含む。アルキル基が分枝アルキル基である場合、アルキル基は10個以下の分枝鎖炭素原子、好ましくは4個以下の分枝鎖原子を含むことが多い。ある種の実施形態において、アルキル基は、一般に最も大きな環に3〜10個の炭素原子を含み、場合によっては1種以上の結合環を特徴づける環式であってもよい。R8-10及びR12-16 で表すことができるアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、t−ブチル基及びシクロヘキシル基を挙げることができる。
【0045】
R8-10及びR12-16の1種以上で表すことができるアルケニル基は、C2-20、好ましくはC2-6アルケニル基を含む。1種以上の炭素−炭素二重結合が存在していてもよい。アルケニル基は、1種以上の置換基、特にフェニル置換基を有するものでもよい。アルケニル基の例としては、ビニル基、スチリル基、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基及びインデニル基を挙げることができる。
【0046】
R8-10及びR12-16の1種以上で表すことができるアルケニル基は、C2-20、好ましくはC2-10アルキニル基を含む。1種以上の炭素−炭素三重結合が存在していてもよい。アルキニル基は、1種以上の置換基、特にフェニル置換基を有するものでもよい。アルキニル基の例としては、エチニル基、プロピル基及びフェニルエチニル基を挙げることができる。
【0047】
R8-10及びR12-16の1種以上で表すことができるアリール基は、1個の環又はシクロアルキル、アリール又は複素環を含み得る2個以上の縮合環を含むものでもよい。R8-10及びR12-16で表すことができるアリール基の例としては、フェニル基、トリル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、アニシル基、ナフチル基及びフェロセニル基を挙げることができる。R8-10及びR12-16の1種以上で表すことができる過ハロゲン化ヒドロカルビル基は、独立に、過ハロゲン化アルキル基及びアリール基、及びこれらの組み合わせ、例えばアラールキル基及びアルカリール基を含む。R8-10及びR12-16で表すことができる過ハロゲン化アルキル基の例としては、−CF3、−C2F5及びC8H3F15を挙げることができる。
【0048】
R8-10及びR12-16の1種以上で表すことができる複素環基は、独立に、芳香族、飽和環系及び部分不飽和環系を含み、1個の環又はシクロアルキル、アリール又は複素環を含み得る2個以上の縮合環を含んでいてもよい。複素環基は、少なくとも1種の複素環を含み、最も大きな複素環は一般に3〜7個の環原子を含み、ここで少なくとも1種の原子は炭素であり、少なくとも1種の原子はN、O、S又はPのいずれかである。R8-10及びR12-16で表すことができる複素環基の例としては、ピリジル基、ピリミジル基、ピロリル基、チオフェニル基、フラニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、イミダゾイル基、オキサゾリル基、ピペリジニル基、モルフォルニル基及びトリアゾイル基を挙げることができる。
【0049】
R8-10及びR12-16のいずれかが置換ヒドロカルビル基又は複素環基である場合、置換基は、反応速度又は反応の立体選択性に不利な影響を与えないようなものでなければならない。任意の置換基としては、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基、チオール基、アシル基、ヒドロカルビル基、過ハロゲン化ヒドロカルビル基、ヘテロシクリル基、ヒドロカルビルオキシ基、モノもしくはジ−ヒドロカルビルアミノ基、ヒドロカルビルチオ基、エステル基、カルボキシ基、カーボネート基、アミド基、スルホニル基及びスルホンアミド基を挙げることができ、ヒドロカルビル基はR8について上記に定義したとおりである。1種以上の置換基が存在していてもよい。R8-10及びR12-16は、それぞれ1種以上のキラル中心を含む。
【0050】
R6によって表すことができる中性の場合によっては置換されているヒドロカルビル配位子もしくは過ハロゲン化ヒドロカルビル配位子は、場合によっては置換されているアリール配位子及びアルケニル配位子を含む。
【0051】
R6によって表すことができる場合によっては置換されているアリール配位子は、1個の環又はシクロアルキル、アリールもしくは複素環を含む2個以上の縮合環を含むものでもよい。好ましくは、配位子は、6員芳香族環を含む。アリール配位子の1個の環又は複数の環は、しばしばヒドロカルビル基で置換されている。置換パターン及び置換基の数は変動するし、存在する環の数によって影響され得るが、しばしば1〜6個のヒドロカルビル置換基が存在し、好ましくは2、3又は6個のヒドロカルビル基が存在し、より好ましくは6個のヒドロカルビル基が存在する。好ましいヒドロカルビル置換基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、メンチル基、ネオメンチル基及びフェニル基を挙げることができる。特に、アリール配位子が単環である場合、配位子は好ましくはベンゼン又は置換ベンゼンである。配位子が過ハロゲン化ヒドロカルビルである場合、配位子はポリハロゲン化ベンゼン、例えばヘキサクロロベンゼン又はヘキサフルオロベンゼンであることが好ましい。ヒドロカルビル置換基がエナンチオマー中心及び/又はジアステレオマー中心を含む場合、これらのエナンチオマー的精製形態及び/又はジアステレオマー的精製形態が用いられることが好ましい。ベンゼン、p−シミル、メシチレン及びヘキサメチルベンゼンが特に好ましい配位子である。
【0052】
R6によって表すことができる場合によっては置換されているアルケニル配位子は、好ましくは2個以上の炭素−炭素二重結合、好ましくは2個だけの炭素−炭素二重結合を有するC2-30、好ましくはC6-12のアルケン又はシクロアルケンを含む。炭素−炭素二重結合は、存在していてもよい他の不飽和系に場合によっては共役してもよいが、好ましくは互いに共役する。アルケン又はシクロアルケンは、好ましくはヒドロカルビル置換基で置換されていてもよい。アルケンは1個だけの二重結合を有する場合、場合によっては置換されているアルケニル配位子は、2個の別個のアルケン類を含み得る。好ましいヒドロカルビル置換基は、メチル、エチル、イソプロピル及びフェニルを含む。場合によっては置換されているアルケニル配位子の例としては、シクロ−オクタ−1,5−ジエン及び2,5−ノルボルナジエンを挙げることができる。シクロ−オクタ−1,5−ジエンが特に好ましい。
【0053】
R6で表すことができる場合によっては置換されているシクロペンタジエニル基は、エタ−5結合可能なシクロペンタジエニル基を含む。シクロペンタジエニル基は、しばしば、1〜5個のヒドロカルビル基で置換され、好ましくは3〜5個のヒドロカルビル基で置換され、より好ましくは5個のヒドロカルビル基で置換されている。好ましいヒドロカルビル置換基は、メチル、エチル及びフェニルを含む。ヒドロカルビル置換基がエナンチオマー中心及び/又はジアステレオマー中心を含む場合、これらのエナンチオマー的に精製された形態及び/又はジアステレオマー的に精製された形態を用いることが好ましい。場合によっては置換されているシクロペンタジエニル基の例としては、シクロペンタジエニル基、ペンタメチル−シクロペンタジエニル基、ペンタフェニルシクロペンタジエニル基、テトラフェニルシクロペンタジエニル基、エチルテトラメチルペンタジエニル基、メンチルテトラフェニルシクロペンタジエニル基、ネオメンチル−テトラフェニルシクロペンタジエニル基、メンチルシクロペンタジエニル基、ネオメンチルシクロペンタジエニル基、テトラヒドロインデニル基、メンチルテトラヒドロインデニル基及びネオメンチルテトラヒドロインデニル基を挙げることができる。ペンタメチルシクロペンタジエニルが特に好ましい。
【0054】
Mで表すことができる金属は、水素移動型還元(transfer hydrogenation)を触媒することができる金属を含む。好ましい金属としては遷移金属を挙げることができ、より好ましくは周期律表VIII群の金属、特にルテニウム、ロジウム又はイリジウムを挙げることができる。金属がルテニウムである場合、原子価状態IIで存在することが好ましい。金属がロジウム又はイリジウムである場合、R6が中性の場合によっては置換されているヒドロカルビル配位子又は中性の場合によっては置換されている過ハロゲン化ヒドロカルビル配位子である場合には原子価状態Iで存在することが好ましく、R6が場合によっては置換されているシクロペンタジエニル配位子である場合には原子価状態IIIで存在することが好ましい。
【0055】
Yで表すことができるアニオン性基は、ヒドリド基、ヒドロキシ基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルアミノ基及びハロゲン基を含む。好ましくは、ハロゲンがYによって表される場合、ハロゲンは塩素である。ヒドロカルビルオキシ基又はヒドロカルビルアミノ基がYによって表される場合、基は反応に利用される水素供与体の脱プロトン化(deprotonation)により誘導されてもよい。
【0056】
Yによって表すことができる塩基性配位子は、水、C1-4アルコール類、C1-8一級又は二級アミン類、又は反応系に存在している水素供与体を含む。好ましいYによって表すことができる塩基性配位子は水である。
【0057】
基A及びBは結合基Eによって結合されている。結合基Eは、A及びBの両者を金属Mに結合又は配位させるように、A及びBの適切な配座を達成する。A及びBは、通常は、2、3又は4個の原子を介して結合している。A及びBを結合させるE内の原子は、1種以上の置換基を有するものでもよい。E内の原子、特にA又はBに対してα位にある原子は、複素環、好ましくは飽和環、特に5、6又は7−員環を形成する態様などで、A及びBに結合していてもよい。このような環は1種以上の他の環と縮合してもよい。しばしば、A及びBを結合する原子は炭素原子である。好ましくは、A及びBを結合する炭素原子の1個以上は、A又はBに加えて置換基を有する。置換基としては、上述の置換基R8を挙げることができる。有利に、このような置換基はいずれも、金属Mと配位しない基であるように選択される。好ましい置換基としては、上述のハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、ヒドロカルビル基、過ハロゲン化ヒドロカルビル基及びヘテロシクリル基を挙げることができる。最も好ましい置換基は、C1-6アルキル基及びフェニル基である。
【0058】
最も好ましくは、A及びBは、2個の炭素原子によって、特に、場合によっては置換されているエチル部位によって結合されている。A及びBが2個の炭素原子によって結合されている場合、 好ましくは炭素原子の一方又は両者が置換されているか、又はA及びBを結合する2個の炭素原子が芳香族又は脂肪族環基、特に5、6又は7−員環の一部を構成してもよい。このような環1個が縮合して、1個以上のこのような環となってもよい。Eが2個の炭素原子分離(separation)を表し、炭素原子の一方又は両者が上記定義の場合によっては置換されているアリール基を有するか、あるいはEが場合によってはフェニル環に縮合されているシクロペンタン環もしくはシクロヘキサン環を含む2個の炭素原子分離(separation)を表す実施形態が特に好ましい。
【0059】
Eは、好ましくは少なくとも1個の立体特異性中心を有する化合物の一部を構成する。A及びBを結合する 2、3又は4個の原子の任意のもの又は全部が、これらの原子の1個以上の上に少なくとも1の立体特異性中心を規定するように置換されている場合、基A又はBの一方に隣接する原子に少なくとも1の立体特異性中心が位置づけられることが好ましい。少なくとも1のこのような立体特異性中心が存在する場合、エナンチオマー的に精製された状態で存在することが有利である。
【0060】
Bが−O−又は−OHを表し、E内の隣接する原子が炭素である場合、カルボン酸基の一部を形成しないことが好ましい。
A−E−Bにより表され得る化合物、又は脱プロトン化(deprotonation)によりA−E−Bを誘導することができる化合物は、しばしば置換アミノアルコール類であり、置換4−アミノアルカン−1−オル類、置換1−アミノアルカン−4−オル類、置換3−アミノアルカン−1−オル類、置換1−アミノアルカン−3−オル類、特に置換2−アミノアルカン−1−オル類、置換1−アミノアルカン−2−オル類、置換3−アミノアルカン−2−オル類及び置換2−アミノアルカン−3−オル類、特に置換2−アミノエタノール類又は置換3−アミノプロパノール類を含み、又は置換ジアミン類であり、置換1,4−ジアミノアルカン類、置換1,3−ジアミノアルカン類、特に置換1,2−もしくは2,3−ジアミノアルカン類、特に置換エチレンジアミン類を含む。さらに、A−E−Bによって表され得る置換アミノアルコール類は、置換2−アミノシクロペンタノール類及び置換2−アミノシクロヘキサノール類であり、好ましくはフェニル環に縮合している。さらに、A−E−Bによって表され得るジアミン類は、置換1,2−ジアミノシクロペンタン類及び置換1,2−ジアミノシクロヘキサン類であり、好ましくはフェニル環に縮合している。ジアミンがA−E−Bによって表される場合、好ましくは少なくとも1種のアミノ基は、キラルスルホニル基でN−スルホネート化されており、好ましくはカンファースルホニルである。アミノアルコール類又はジアミン類は、窒素上でキラル中心を含有する置換基で置換されており、アミノアルコール類又はジアミン類もまた結合基E上でC1-4−アルキル基、特にメチル基などの少なくとも1種のアルキル基又は少なくとも1種のアリール基、特にフェニル基で置換されていることが有利である。
【0061】
A−E−Bによって表すことができる化合物及びこの化合物を誘導することができるプロトン化された等価物の特定の例は以下のとおりである。
【0062】
【化9】

【0063】
好ましくは、これらのエナンチオマー的に精製された形態及び/又はジアステレオマー的に精製された形態が用いられる。例としては、(1R)1−(7,7−ジメチル−2−オキソビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル)メタンスルホニル、(1S)1−(7,7−ジメチル−2−オキソビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル)メタンスルホニル、(1R、2S)1−(7,7−ジメチル−2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル)メタンスルホニル、(1R、2R)1−(7,7−ジメチル−2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル)メタンスルホニル、(1S、2R)1−(7,7−ジメチル−2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル)メタンスルホニル、(1S、2S)1−(7,7−ジメチル−2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル)メタンスルホニル、(2S)1−(6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン)−2−エタンスルホニル、(2R)1−(6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン)−2−エタンスルホニル、(2S)1−(6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン)−2−メタンスルホニル、(2R)1−(6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン)−2−メタンスルホニル、(1R、2R、5R)5−イソプロピル−2−メチルシクロヘキサンスルホニル、(1S、2S、5R)5−イソプロピル−2−メチルシクロヘキサンスルホニル、(1S、2S、5R)2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサンスルホニルを挙げることができる。
【0064】
最も好ましくは、A−E−B、R6及びYの性質は、触媒がキラルであるように選択される。このような場合、エナンチオマー的に精製された形態及び/又はジアステレオマー的に精製された形態が好ましく用いられる。
【0065】
本発明のプロセスにおいて用いることができるこれらの好ましい触媒の例としては、以下のものを挙げることができる。
【0066】
【化10】

【0067】
これらの特に好ましい触媒の一例は、国際公開パンフレットWO98/42643の実施例6に記載されている条件下で、ロジウムペンタメチルシクロペンタジエンジクロライドダイマーと(S)−N−カンファースルホニル−(S、S)−ジフェニルエチレンジアミンを反応させることにより調製することができ、下記式の触媒を与える。
【0068】
【化11】

【0069】
これらの特に好ましい触媒の他の例としては、クロロロジウム−エタ−5−ペンタメチルシクロペンタジエニルN−[(1S、2S)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエチル]−1−[(1R)−7,7−ジメチル−2−オキソビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル]メタンスルホンアミド、クロロロジウム−エタ−5−ペンタメチルシクロペンタジエニルN−[(1R、2R)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエチル]−1−[(1R)−7,7−ジメチル−2−オキソビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル]メタンスルホンアミド、クロロロジウム−エタ−5−ペンタメチルシクロペンタジエニルN−[(1S、2S)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエチル]−1−[(1S)−7,7−ジメチル−2−オキソビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル]メタンスルホンアミド、クロロロジウム−エタ−5−ペンタメチルシクロペンタジエニルN−[(1R、2R)−2−アミノ−1、2−ジフェニルエチル]−1−[(1S)−7,7−ジメチル−2−オキソビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル]メタンスルホンアミド、クロロロジウム−エタ−5−ペンタメチルシクロペンタジエニルN−[(1S、2S)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエチル]−1−[(1R、2R)−7,7−ジメチル−2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル]メタンスルホンアミド、クロロロジウム−エタ−5−ペンタメチルシクロペンタジエニルN−[(1S、2S)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエチル]−1−[(1R、2S)−7,7−ジメチル−2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル]メタンスルホンアミド、クロロロジウム−エタ−5−ペンタメチルシクロペンタジエニルN−[(1S、2S)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエチル]−1−[(1S、2R)−7,7−ジメチル−2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル]メタンスルホンアミド、クロロロジウム−エタ−5−ペンタメチルシクロペンタジエニルN−[(1S、2S)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエチル]−1−[(1S、2S)−7,7−ジメチル−2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル]メタンスルホンアミド、クロロロジウム−エタ−5−ペンタメチルシクロペンタジエニルN−[(1R、2R)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエチル]−1−[(1R、2R)−7,7−ジメチル−2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル]メタンスルホンアミド、クロロロジウム−エタ−5−ペンタメチルシクロペンタジエニルN−[(1R、2R)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエチル]−1−[(1R、2S)−7,7−ジメチル−2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル]メタンスルホンアミド、クロロロジウム−エタ−5−ペンタメチルシクロペンタジエニルN−[(1R、2R)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエチル]−1−[(1S、2R)−7,7−ジメチル−2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル]メタンスルホンアミド、クロロロジウム−エタ−5−ペンタメチルシクロペンタジエニルN−[(1R、2R)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエチル]−1−[(1S、2S)−7,7−ジメチル−2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル]メタンスルホンアミドを挙げることができる。
【0070】
還元反応は、場合によっては二相性条件下で行うことができ、好ましくは酸素欠乏条件、例えば窒素雰囲気下で行う。この反応の好ましい温度範囲は、−30℃〜90℃、特に0℃〜50℃である。
【0071】
XがSである場合、式(8):
【0072】
【化12】

【0073】
(式中、R5は場合によっては置換されているC1-8アルキルである)
の化合物を含む好ましい式(2)の化合物は、塩基、好ましくはジアルキルカーボネートに対応するアルキル塩のアルカリ塩(例えば、ジアルキルカーボネートがジエチルカーボネートの場合にはナトリウムエトキシド)、非求核性塩基、例えばNaOtBu、KOtBu、LiOtBu、リチウムジイソプロピルアミド、Naヘキサメチルジシルアジド、Kヘキサメチルジシルアジド、Liヘキサメチルジシルアジド、液体アンモニア中Na、ナトリウムアミド又は活性ルイス酸を有するアミン塩基(例えばMg塩を有するトリエチルアミン)の存在下で、2−アセチルチオフェンをジアルキルカーボネート、より好ましくはジエチルカーボネートと反応させることにより調製することができる。特に好ましい塩基は、ヒドリド塩類、特にナトリウムヒドリド及び非求核性塩基、特にNaOtBuである。
【0074】
R5は好ましくは、場合によっては置換されているC1-4アルキルであり、特にエチルである。
次いで、式(8)の化合物は、好ましくは上述の立体特異性還元により還元されて、式(9)の化合物を与える。
【0075】
【化13】

【0076】
(式中、R5は上述のとおりである)
工程(a)における式(2)の化合物のアミド化は、当該分野で公知の任意の手段により行うことができる。
【0077】
好ましくは、本プロセスの工程(a)は、用いられる試薬に対して非反応性である任意の有機溶媒又は有機溶媒の混合物の存在下で行われる。極性非プロトン性溶媒が特に好ましい。適切な溶媒の例としては、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、DMF及びエーテル類を挙げることができる。
【0078】
本発明の工程(a)は、好ましくは−20℃〜150℃の温度範囲で行われる。より好ましくは−10℃〜100℃の温度範囲で行われる。
本発明の工程(a)は、有利には少なくとも90%、より有利には少なくとも95%の式(3)の化合物への変換率まで進行させることができる。
【0079】
本発明の第2の側面のプロセスの工程(a)の反応時間は、例えば、試薬濃度、試薬の相対量、触媒の存在、溶媒の性質、特に反応温度などの多数の因子に依存する。典型的な反応時間は、1分〜200時間の範囲の試薬添加時間に加えて、5分〜6時間の反応時間が一般的である。
【0080】
本発明の好ましい実施形態において、R1及びR2の一方がHであり他方がメチルである場合、工程(a)は、好ましくは式(2)の化合物とメチルアミンとの反応を含む。
式(2)の化合物とメチルアミンが共に単相系又は多相系のいずれかである溶液中にあることが特に好ましい。
【0081】
工程(a)に対する好ましい溶媒系は、水及び水不混和性溶媒、特にトルエンを含む。
工程(b)における式(3)の化合物の還元は、当該分野で公知の適宜の方法を用いて行うことができる。これらの方法としては、リチウムアルミニウムヒドリドによる還元、ジイソブチルアルミニウムヒドリドによる還元、リチウムボロヒドリドによる還元、メタノール、カテコールボランもしくはボランと共にリチウムボロヒドリドによる還元、又は好ましくはエタノール、CH3SO2H、H2SO4、ピリジン、メタノール、TiCl4又はCoCl2などの活性剤と共にナトリウムボロヒドリドによる還元を挙げることができる。
【0082】
好ましくは、工程(b)における式(3)の化合物の還元はリチウムアルミニウムヒドリドによる。
本プロセスの工程(b)は、溶媒なしに行うことができるが、好ましくは用いられる試薬に対して非反応性である有機溶媒又は有機溶媒の混合物の存在下で行われる。適切な溶媒の例としては、トルエン、メタノール、ヘキサン、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、オクタノール、アセトニトリル及びジメチルフォルムアミドを挙げることができる。テトラヒドロフランが特に好ましい。
【0083】
本プロセスの工程(b)は、好ましくは酸素欠乏下で行われる。酸素は、例えば、不活性ガス、特に窒素を反応混合物に通過させることにより除くことができる。
本プロセスの工程(b)は、減圧下で行うことができる。
【0084】
本発明の第2の側面の工程(b)は、好ましくは−20℃〜150℃の温度範囲、より好ましくは10℃〜70℃の温度範囲で行われる。
本発明の第2の側面の工程(b)は、有利に、式(1)の化合物への少なくとも90%の変換率、より好ましくは少なくとも95%の変換率まで進行させることができる。
【0085】
本発明の第2の側面の工程(b)の反応時間は、例えば、試薬濃度、試薬の相対量、特に反応温度などの多数の因子に依存する。典型的な反応時間は、1分〜200時間の範囲の試薬添加時間に加えて、2時間〜48時間の反応時間が一般的である。
【0086】
本発明の好ましい実施形態は、下記工程(a)及び(b)を含む式(10)の化合物の調製プロセスを提供する。
【0087】
【化14】

【0088】
(a)式(9)の化合物:
【0089】
【化15】

【0090】
(式中、R5は場合によっては置換されているC1-8アルキルである)
をメチルアミンと反応させて式(11)の化合物を与える工程:
【0091】
【化16】

【0092】
及び
(b)式(11)の化合物を還元して式(10)の化合物を与える工程。
工程(b)における好ましい還元剤は、リチウムアルミニウムヒドリドである。
【0093】
本発明のより好ましい実施形態は、下記工程(i)〜(iv)を含む式(10)の化合物の調製プロセスを提供する。
【0094】
【化17】

【0095】
(i)2−アセチルチオフェンをアセチル化して式(8)の化合物を与える工程:
【0096】
【化18】

【0097】
(式中、R5は場合によっては置換されているC1-8アルキルである)
(ii)式(8)の化合物を還元して式(9)の化合物を与える工程:
【0098】
【化19】

【0099】
(式中、R5は場合によっては置換されているC1-8アルキルである)
(iii)式(9)の化合物をメチルアミンと反応させて式(11)の化合物を与える工程:
【0100】
【化20】

【0101】
及び
(iv)式(11)の化合物を還元して式(10)の化合物を与える工程。
工程(i)〜(iv)の条件は、上述したとおりであり、上述のように好ましい。
【0102】
本発明の第4の側面によれば、上述の式(3)の化合物が提供される。
好ましい式(3)の化合物において、R及びXは本発明の第1の側面において好ましいとして挙げたものである。
【0103】
好ましい式(3)の化合物は式(12)の化合物である。
【0104】
【化21】

【0105】
より好ましい式(3)の化合物は、式(11)の化合物である。
式(1)〜(12)の化合物の多くは、塩の形態で存在していてもよい。これらの塩は、本発明の範囲内に含まれる。
【0106】
式(1)〜(12)の化合物は、公知の技術を用いて塩から変換することができる。
式(1)〜(12)の化合物は、本明細書に示した以外の互変異性型で存在していてもよい。これらの互変異性体は、本発明の範囲内に含まれる。
【0107】
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例1】
【0108】
ステージ1
エチル−3−オキソ3−(2−チオフェニル)プロパノエートの調製
【0109】
【化22】

【0110】
窒素雰囲気下で室温にてナトリウムヒドリド(60%鉱物油中分散、100g、2.5 mol)を無水ヘキサン(2×250ml)で洗浄した。次いで、撹拌しながら、無水テトラヒドロフラン(THF)(340 ml)を添加して、その後、20分間で無水THF(340 ml)中2−アセチルチオフェン(136 ml、1.25mol)を添加した。次に、反応混合物を35℃まで暖めた。30分後、無水THF(660 ml)中ジエチルカーボネート(305.5 ml、2.5 mol)を1時間かけて添加した。さらに1時間後、反応混合物を−10℃まで冷却し、水(475 ml)で急冷し、氷酢酸(145 ml)を添加した。混合物を20分間撹拌し、次いで、室温まで暖めた。有機相を分離し、水相を酢酸エチル(3×200ml)で抽出した。集めた有機抽出物を塩水(2×200ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮して標題化合物を粗暗橙色油として98%の収率(242.8g)で得た。

ステージ2
エチル−3−(S)−ヒドロキシ3−(2−チオフェニル)プロパノエートの調製
【0111】
【化23】

【0112】
ロジウムペンタメチルシクロペンタジエンジクロライドダイマー(1.8705g、0.0030mol)及び(S)−N−カンファースルホニル−(S、S)−ジフェニルエチレンジアミン(2.582g、0.0061mol)をTHF(378.5ml)中で0℃にて窒素雰囲気下で撹拌し、触媒溶液を形成した。
【0113】
エチル−3−オキソ3−(2−チオフェニル)プロパノエート(300g、1.513mol、ステージ1から)をTHF(378.5 ml)中で10℃にて撹拌し、窒素を1.2Lmin-1の速度で散布した。触媒溶液(78.5 ml)の一部を添加して、蟻酸とトリエチルアミンとの混合物(モル比5:2)(327.1g)を52.1 mlhr-1の速度で仕込んだ。触媒溶液(75 ml)の別の部分を1.5hrごとに添加した。GCにより反応が完全に進行したことが示された後、約24時間後に、飽和ナトリウム水素カーボネート水溶液(1L)を室温にて添加して、反応を緩和させた。水相をトルエン(400ml)で抽出した。集めた有機相を塩水(400ml、10% w/w溶液)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機溶液を減圧下で濃縮して、暗茶色油を97.5%の収率(295.4 g)で得た。

ステージ3
3−(S)−ヒドロキシ−N−メチル3−(2−チオフェニル)プロパンアミドの調製
【0114】
【化24】

【0115】
エチル−3−(S)−ヒドロキシ3−(2−チオフェニル)プロパノエート(270g、ステージ2から)をトルエン(675ml)中に溶解させた。これに、メチルアミン水溶液(675ml、40% w/w)を15分間、室温にて撹拌しながら添加した。反応が完全に進行したなら1時間後に、撹拌を中止して有機相を水相から分離した。塩(100g)を水相に添加し、次いで酢酸イソプロピル(2×500ml)で抽出した。有機抽出物及び元の有機相を一緒に合わせた。シリカ(250g)を添加して、得られた懸濁液を20分間撹拌した。混合物を濾過して、シリカ(250g)を再び添加して、濾過する前に混合物を20分間撹拌した。得られた溶液を減圧下で濃縮して橙色結晶(90.5g、36%)を生成物として得た。

ステージ4
(S)−3−(N−メチル)アミノ1−(2−チオフェニル)プロパン−1−オルの調製
【0116】
【化25】

【0117】
3−(S)−ヒドロキシ−N−メチル3−(2−チオフェニル)プロパンアミド(80g)を窒素下で撹拌しながら無水THF(320ml)中に溶解させた。リチウムアルミニウムヒドリド(648ml、1M)のTHF溶液を温度を50℃に保つ速度にて添加した。すべてのリチウムアルミニウムヒドリド溶液を添加した後、反応混合物を50℃に50分間保持した。次いで、混合物を−10℃まで冷却して、イソプロパノール(100ml)をゆっくり添加した。飽和硫酸ナトリウム溶液(310ml)を次に添加して、混合物を濾過した。濾過残渣を酢酸エチル(2×100 ml)で洗浄し、水相を分離した。有機相を飽和塩水(2×100ml)で洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥させた。次に、有機溶液を減圧下で濃縮して、暗橙色油(65g、88%)を得た。この油をトルエン中に溶媒和させ、0℃にて一晩撹拌して、フィルターで濾過して乾燥した最終生成物として結晶を得た。
【実施例2】
【0118】
エチル−3−オキソ3−(2−チオフェニル)プロパノエートの生物的還元によるエチル−3−(S)−ヒドロキシ 3−(2−チオフェニル)プロパノエートの調製
酵母培養物をYM(酵母及び菌)寒天中、28℃、72時間で成長させた。平板培地からの単コロニーを滅菌成長培地50mlに接種することにより液体培養物を調製した。滅菌成長培地の組成(1リットルあたり)は、250mlバッフルフラスコ中、グルコース(10g)、酵母エキス(2g)、微量金属溶液(1ml)、K2HPO4(1.9g)、NaH2PO4 2H2O(2.02g)、(NH42SO4(1.8g)、MgSO4 7H2O(0.2g)及びFeCl3(0.97mg)である。オービタルシェーカー(orbital shaker)上で28℃にて24時間成長させた後、細胞を4000rpmで10分間、遠心分離することにより集めて、細胞沈殿物をpH 7.5の0.1Mリン酸バッファ5mlに再度懸濁させた。細胞懸濁液を上述のように遠心分離して、上清液を廃棄して細胞沈殿物を上述のバッファ5ml中に再度懸濁させた。生物的還元は、細胞懸濁液5mlをグルコース4g/l及び実施例1ステージ1からのエチル−3−オキソ3−(2−チオフェニル)プロパノエート20μlを含有する上述のバッファ5mlに添加することにより開始した。細胞をオービタルシェーカー上で28℃にて24時間、培養した。エチル−3−ヒドロキシ3−(2−チオフェニル)プロパノエートの形成は、細胞懸濁液1mlを取り出して、14Krpmで1分間遠心分離して細胞を沈殿させて、上清液を逆相HPLCにより分析することにより監視した。分析は、28℃のカラム温度で0.1%水性TFA及びアセトニトリル(70:30)で1ml/minで溶出するHichrom RPBカラム(25cm×4.6mm i.d.)で行った。反応物質及び生成物は254nmにおける吸光度により検出した。エチル−3−オキソ3−(2−チオフェニル)プロパノエートの保持時間は12.7分であり、エチル−3−ヒドロキシ3−(2−チオフェニル)プロパノエートの保持時間は9.3分であった。エチル−3−ヒドロキシ3−(2−チオフェニル)プロパノエートの形成を示す生物還元反応は、4K rpmで10分間の遠心分離を行い、等量のメチル−tert−ブチルエーテルで上清液を2回抽出することにより、進行させた。集めた抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、次いで、溶媒を蒸発乾燥させた。残渣をイソヘキサン及び2−プロパノール(70:30)中に溶解させ、エチル−3−ヒドロキシ 3−(2−チオフェニル)プロパノエートのエナンチオマー組成物をキラル相HPLCにより決定した。分析は、28℃のカラム温度でイソヘキサン及び2−プロパノール(90:10)で1ml/minで溶出するChiralcel ODカラム(25cm×4.6mm i.d. Daicel Ltd)で行った。エチル−3−オキソ3−(2−チオフェニル)プロパノエート及びエチル−3−ヒドロキシ3−(2−チオフェニル)プロパノエートのエナンチオマーを235nmにおける吸光度によって検出した。エチル−3−オキソ3−(2−チオフェニル)プロパノエートの保持時間は16.5分であり、エチル−3−(S)−ヒドロキシ3−(2−チオフェニル)プロパノエートの保持時間は10.3分であり、エチル−3−(R)−ヒドロキシ3−(2−チオフェニル)プロパノエートの保持時間は24.0分であった。結果を下記tableにまとめた。
【0119】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の化合物:
【化1】

(式中、
XはS、O又はNR3(式中、R3はH又は有機基である)であり;
RはH又は有機基であり;
R1及びR2はそれぞれ独立にH、場合によっては置換されているアルキル又は場合によっては置換されているアリールであり;
Gは置換基であり;
nは0〜3である)
の調製方法であって、
(a)式(2)の化合物と式NHR1R2の化合物とを反応させて式(3):
【化2】

(式中、X、R、G及びnは上述のとおりであり、R4は場合によっては置換されているアルキル、場合によっては置換されているアルケニル、場合によっては置換されているアルキニル、場合によっては置換されているアリール、場合によっては置換されているヘテロアリール又はこれらの組み合わせである)
の化合物を与える工程と;
(b)式(3)の化合物を還元して式(1)の化合物を与える工程と、
を含む方法。
【請求項2】
式(2)の化合物:
【化3】

を式NHR1R2の化合物と反応させて式(3)の化合物:
【化4】

(式中、X、G、n、R、R1、R2及びR4は請求項1に規定したものである)
を与える式(3)の化合物の調製方法。
【請求項3】
式(3)の化合物:
【化5】

を還元して、式(1)の化合物:
【化6】

(式中、X、G、n、R、R1及びR2 は請求項1に規定したものである)
を与える式(1)の化合物の調製方法。
【請求項4】
式(1)の化合物は、式(4):
【化7】

(式中、X、G、n、R、R1及びR2は請求項1に規定したものである)
の化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
XはSである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
RはH又はナフチルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
R1及びR2の一方はHであり、他方はメチルである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法に従い、式(10)の化合物:
【化8】

を調製する方法であって、
(a)式(9)の化合物:
【化9】

(式中、R5は場合によっては置換されているC1-8アルキルである)
とメチルアミンとを反応させて、式(11)の化合物:
【化10】

を与える工程と、
(b)式(11)の化合物を還元して式(10)の化合物を与える工程と、
を含む調製方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法に従い、式(10)の化合物:
【化11】

を調製する方法であって、
(i)2−アセチルチオフェンをアセチル化して、式(8)の化合物:
【化12】

(式中、R5は場合によっては置換されているC1-8アルキルである)
を与える工程と;
(ii)式(8)の化合物を還元して、式(9)の化合物:
【化13】

(式中、R5は場合によっては置換されているC1-8アルキルである)
を与える工程と;
(iii)式(9)の化合物をメチルアミンと反応させて、式(11)の化合物:
【化14】

を与える工程と;
(iv)式(11)の化合物を還元して、式(10)の化合物を与える工程と;
を含む調製方法。
【請求項10】
式(3)の化合物:
【化15】

(式中、
XはS、O又はNR3(式中R3 はH又は有機基である)であり;
RはH又は有機基であり;
R1及びR2はそれぞれ独立にH、場合によっては置換されているアルキル又は場合によっては置換されている アリールであり;
Gは置換基であり;
nは0〜3である)
【請求項11】
式(12):
【化16】

(式中、X、G、n、R、R1及びR2 は請求項10に規定したものである)
である、請求項10に記載の式(3)の化合物。
【請求項12】
XはSである、請求項10又は11に記載の化合物。
【請求項13】
RはH又はナフチルである、請求項10〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
R1及びR2の一方はHであり他方はメチルである、請求項10〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
式(11):
【化17】

である、請求項10〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
式:
【化18】

(式中、
R6は、中性の場合によっては置換されているヒドロカルビル配位子、中性の場合によっては置換されている過ハロゲン化ヒドロカルビル配位子、又は場合によっては置換されているシクロペンタジエニル配位子を表し;
Aは場合によっては置換されている窒素を表し;
Bは場合によっては置換されている窒素、酸素、硫黄又はリンを表し;
Eは結合基を表し;
Mは水素移動型還元を触媒することができる金属を表し;
Yはアニオン性基、塩基性配位子又は空位を表し;
ただし、A又はBの少なくとも1種は置換窒素を含み、置換基は少なくとも1種のキラル中心を有し;
ただし、Yが空位でない場合にはA又はBの少なくとも1種は水素原子を有する)
の触媒。
【請求項17】
Aは、NR7−、−NR8−、−NHR7、−NR7R8又は−NR8R9(式中、R7はH、C(O)R9、SO2R9、C(O)NR9R13、C(S)NR9R13、C(=NR13)SR14又はC(=NR13)OR14を表し、R8及びR9はそれぞれ独立に、場合によっては置換されているヒドロカルビル基、過ハロゲン化ヒドロカルビル基又は場合によっては置換されているヘテロシクリル基を表し、R13及びR14はそれぞれ独立に水素又はR9について規定した基を表す)を表し;Bは、−O−、−OH、OR10、−S−、−SH、SR10、−NR10−、−NR11−、−NHR11、−NR10R11、−NR10R12、−PR10−又は−PR10R12(式中、R11はH、C(O)R12、SO2R12、C(O)NR12R15、C(S)NR12R15、C(=NR15)SR16又はC(=NR15)OR16を表し、R10及びR12はそれぞれ独立に、場合によっては置換されているヒドロカルビル基、過ハロゲン化ヒドロカルビル基又は場合によっては置換されているヘテロシクリル基を表し、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素又はR12について定義した基を表す)を表し;ただし、A又はBの少なくとも一方は置換窒素を有し、R7、R8、R9、R10、R11又はR12で表される置換基は少なくとも1種のキラル中心を有する、請求項16に記載の触媒。
【請求項18】
Aは−NR7−、−NR8−、−NHR7、−NR7R8又は−NR8R9(式中、R7はH、C(O)R9、SO2R9、C(O)NR9R13、C(S)NR9R13、C(=NR13)SR14又はC(=NR13)OR14を表し、R8及びR9はそれぞれ独立に、場合によっては置換されているヒドロカルビル基、過ハロゲン化ヒドロカルビル基又は場合によっては置換されているヘテロシクリル基を表し、R13及びR14 はそれぞれ独立に、水素又はR9について定義した基を表す)を表し;Bは−NR10−、−NR11−、−NHR11、−NR10R11、又は−NR10R12(式中、R11はH、C(O)R12、SO2R12、C(O)NR12R15、C(S)NR12R15、C(=NR15)SR16又はC(=NR15)OR16を表し、R10及びR12はそれぞれ独立に、場合によっては置換されているヒドロカルビル基、過ハロゲン化ヒドロカルビル基又は場合によっては置換されているヘテロシクリル基を表し、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素又はR12について定義した基を表す)を表し;ただし、A又はBの少なくとも一方は置換窒素を有し、R7、R8、R9、R10、R11又はR12で表される置換基は、少なくとも1種のキラル中心を有する、請求項17に記載の触媒。
【請求項19】
A又はBのいずれかは、−NR7−、−NHR7、NR7R8、−NR11−、−NHR11又はNR10R11(式中R8及びR10は上述のとおりであり、式中R7又はR11は−S(O)2R9又は−S(O)2R12(R9及びR12は少なくとも1種のキラル中心を有する、場合によっては置換されているヒドロカルビル基、過ハロゲン化ヒドロカルビル基又は場合によっては置換されているヘテロシクリル基である)により表されるスルホニル基である)で表されるスルホンアミド基として存在する、請求項17又は18に記載の触媒。
【請求項20】
R7又はR11の一方は(1R)1−(7,7−ジメチル−2−オキソビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル)メタンスルホニル、(1S)1−(7,7−ジメチル−2−オキソビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル)メタンスルホニル、(1R、2S)1−(7,7−ジメチル−2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル)メタンスルホニル、(1R,2R)1−(7,7−ジメチル−2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル)メタンスルホニル、(1S,2R)1−(7,7−ジメチル−2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル)メタンスルホニル、(1S,2S)1−(7,7−ジメチル−2−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル)メタンスルホニル、(2S)1−(6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン)−2−エタンスルホニル、(2R)1−(6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン)−2−エタンスルホニル、(2S)1−(6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン)−2−メタンスルホニル、(2R)1−(6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン)−2−メタンスルホニル、(1R,2R,5R) 5−イソプロピル−2−メチルシクロヘキサンスルホニル、又は(1S,2S,5R) 5−イソプロピル−2−メチルシクロヘキサンスルホニル、(1S,2S,5R)2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサンスルホニルである、請求項19に記載の触媒。
【請求項21】
Eは結合基であり、A及びBが場合によっては置換されている2、3又は4個の原子を介して結合される、請求項16〜20のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項22】
式:
【化19】

の配位子及びジアステレオマー又はその分解した形態。

【公表番号】特表2006−513145(P2006−513145A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535693(P2004−535693)
【出願日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【国際出願番号】PCT/GB2003/003982
【国際公開番号】WO2004/024708
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(500060825)アベシア・リミテッド (10)
【Fターム(参考)】