説明

複雑な層構造の厚さ分析のための方法および装置

半導体ウェハのパターン形成領域の層厚を測定するための厚さ測定装置は、パターン形成領域から取られた反射データを得、そこから周波数スペクトルを得るためのスペクトルアナライザと、前記スペクトルを探索して前記スペクトル内のピーク周波数を見出すためのピーク検出器であって、前記探索をそれより前の学習段階で見出されたピーク周波数に対応する領域に限定するように動作可能であるピーク検出器と、前記ピーク周波数付近の前記スペクトルをフィルタリングするための、前記ピーク検出器に関連付けられた周波数フィルタと、前記学習段階で得たパラメータを使用して、前記フィルタリングされたスペクトルの最尤適合を実行し、少なくとも所望の層厚を得るための最尤フィッタと、を備える。高分解能の非実時間学習段階でそれより前に得られたパラメータを用いて最尤適合を実行することにより、実時間に高分解能の結果が提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複雑な層構造の物理的パラメータを測定するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスおよび同様の製品、例えばフラットパネルディスプレイ、MEMS、およびメモリディスクなどの製造工程は多数の工程段階を含み、そこで層が堆積され、エッチングされ、コーティングされ、かつ研磨によって磨耗される。生産ラインを流れる各ユニットに対する工程段階の実行を管理するために、それぞれの工程段階の前、途中、および後に層の物理的パラメータを監視することが重要である。工程段階の中には、金属配線、誘電体またはSiトレンチ、フォトレジストパターン等のようなパターンをウェハ上に形成するための層の選択的エッチングまたは堆積を含むものがある。
【0003】
層の厚さを測定する方法は周知であり、とりわけ、
層の頂面および層の底部界面からの反射光間の干渉から層の厚さ、屈折率、および消衰係数を突き止めることのできる反射率測定法と、
頂部および底部界面から反射した光間の極性の相違から層の物理的パラメータを突き止めることのできる偏光解析法と、
を挙げることができる。
【0004】
最も正確な測定は、層パラメータ、つまり厚さ、屈折率、および消衰係数が測定ビームスポット面積内で一定である試料で達成される。該工程で生産される半導体デバイスのようなユニットは、デバイスの異なる位置で異なる層厚を持つ、非常に複雑なパターン構造から構成される。パターンの空間および幅は様々であるが、0.1ミクロンより小さくすることができ、技術の要求は絶えずもっと小さい特長を求める。
【0005】
生産ラインで使用される工程の実行を監視する一般的方法は、生産ユニットをパターン形成された領域で測定することを含まず、代わりに、前にパターン形成されていない試料を使用し、それらが工程を通過し、次いで単層測定技術の古典的な方法を使用して測定される。
【0006】
複雑なパターン構造を避ける別の方法は、視覚システムを使用してデバイスを描画し、パターン認識アルゴリズムを使用してデバイス内の大きい非パターン形成領域を見出し、かつ非常に正確な運動機構を使用して測定スポットを非パターン形成領域に誘導する、精巧な位置合わせ機構を測定ツールに含めることである。該方法は、非パターン形成領域を生産ユニット内に収めるために、測定スポットを十分に小さくする必要がある。ひとたび位置合わせが完了すると、古典的方法を使用して、非パターン形成領域で測定が行われる。製造工程中にウェハの非パターン形成領域で選択され、そこから厚さDを得ることのできる測定スポットの一例として、本明細書では図1bについて言及する。
【0007】
上記の方法は、生産ラインで使用する場合、限界がある。証拠試料または非パターン形成領域での測定は、異なる物理的現象が発生するパターン形成領域の上の層の真の厚さと必ずしも相関しない。試験試料を生産するために必要な特別運転は、機械を使用する実際の生産時間を短縮する効果を持ち、かつ追加原料を消費する。他方、位置合わせ技術を使用する実生産ユニットの測定は、時間がかかり、精巧なハードウェアを必要とし、かつプロセスチャンバ内で実行して工程を実時間監視することができない。
【0008】
PCT特許出願第WO0012958号は、TMSとして知られる測定システムを記載しており、それはパターン形成されたデバイス表面の層内から反射する広幅のスポット光ビームを使用して、透明層の厚さの横方向の変化の測定を、特にSiO層で実行する。既存の方法とは異なり、それは図1cに示すような、ウェハの高密度パターン形成された領域に対しても使用することができる。反射率係数は一般的に周波数ドメインに変換され、そこから、それに関する情報を異なるパラメータを有する層に由来する情報から分離することによって、SiO層の物理的パラメータを決定することが可能になる。
【0009】
TMS法の不利点は、測定の分解能に限界があることである。ウェハ層が小さくなるにつれて、TMSを使用して層間を分解することは困難になり、かつ分解能精度が高くなると、いっそう集中的な計算が必要になる。いっそう集中的な計算は、実時間で作業することができるというTMSの本質的利点を損ねる。
【発明の開示】
【0010】
したがって本発明の第一態様では、半導体ウェハのパターン形成領域の層厚を測定するための厚さ測定装置において、
パターン形成領域から取られた反射データを得、そこから周波数スペクトルを得るためのスペクトルアナライザと、
スペクトルを探索してスペクトル内のピーク周波数を見出すための、スペクトルアナライザに関連付けられたピーク検出器であって、探索を学習段階で見出されたピーク周波数に対応する領域に限定するように動作可能であるピーク検出器と、
ピーク周波数付近のスペクトルをフィルタリングするための、ピーク検出器に関連付けられた周波数フィルタと、
学習段階で得たパラメータを使用して、フィルタリングされたスペクトルの最尤適合を実行し、少なくとも層厚を得るための最尤フィッタ(maximum likelihood fitter)と、
を備えた装置を提供する。
【0011】
反射データは、パターン形成領域の多色光照射から得ることが好ましい。
【0012】
スペクトルアナライザは、分光計と、分散補正器と、波数変換器と、フーリエ変換器とを備えることが好ましい。
【0013】
学習段階で見出されたピーク周波数は、初期試料の層厚に対応することが好ましい。
【0014】
初期試料の層厚は、学習段階でスペクトル分析を使用して、スペクトルアナライザによって得られたものより高い分解能でスペクトルを構成することによって、決定することが好ましい。
【0015】
周波数フィルタは、各ピークの両側で極小を見出し、極小によって画定される範囲をフィルタリングすることによって、各ピークにフィルタリングを実行するように動作可能であることが好ましい。
【0016】
本発明の第二態様では、半導体ウェハのパターン形成領域の層厚を測定するための厚さ測定装置において、
a)半導体ウェハのそれぞれのパターン形成領域から反射スペクトルを得るための入力スペクトルアナライザと、
b)学習モードユニットであって、
スペクトルを探索してスペクトル内のピーク周波数を見出すために、スペクトルアナライザに関連付けられたピーク検出器であって、パターン形成領域の層の期待される厚さに対応する領域に探索を制限するように動作可能であるピーク検出器と、
ピーク周波数付近のスペクトルをフィルタリングするために、ピーク検出器に関連付けられた周波数フィルタと、
最尤適合で使用するためにフィルタリングされたスペクトルからパラメータを得るための高分解能スペクトルアナライザと、
パラメータを使用してフィルタリングされたスペクトルの最尤適合を実行して学習モード層厚を得るための最尤フィッタと、
を備えた学習モードユニットと、
c)ランモードユニットであって、
スペクトルを探索してスペクトル内のピーク周波数を見出すために、スペクトルアナライザに関連付けられたピーク検出器であって、学習モードによって見出されたピーク周波数に対応する領域に探索を制限するように動作可能であるピーク検出器と、
ピーク周波数付近のスペクトルをフィルタリングするために、ピーク検出器に関連付けられた周波数フィルタと、
学習モードユニットによって得られたパラメータを使用してフィルタリングされたスペクトルの最尤適合を実行して層厚を得るための最尤フィッタと、
を備えたランモードユニットと、
を備えて成る装置を提供する。
【0017】
高分解能スペクトルアナライザは、入力スペクトルアナライザによって得られた分解能より高い分解能で新しいスペクトルを構成することによって、パラメータを得るように動作可能であることが好ましい。
【0018】
本発明の第三態様では、半導体ウェハのパターン形成領域の層厚を測定するための方法において、
パターン形成領域から取られた反射データを得ることと、
そこから周波数スペクトルを得ることと、
学習段階で見出されたピーク周波数に対応する領域に限定して、スペクトルを探索してスペクトル内のピーク周波数を見出すことと、
ピーク周波数付近のスペクトルをフィルタリングすることと、
学習段階で得られたパラメータを使用して、フィルタリングされたスペクトルの最尤適合を実行して層厚を得ることと、
を含む方法を提供する。
【0019】
反射データは、パターン形成領域の多色光照射から得ることが好ましい。
【0020】
周波数スペクトルを得ることが、反射データのスペクトルを測定し、分散を補正し、波数について変換し、フーリエ変換を実行することを含むことが好ましい。
【0021】
学習段階で見出されたピーク周波数は、初期試料の層厚に対応することが好ましい。
【0022】
初期試料の層厚は、学習段階でスペクトル分析を使用して、スペクトルアナライザによって得られたより高い分解能でスペクトルを構成することによって決定することが好ましい。
【0023】
スペクトルをフィルタリングすることが、各ピークの両側で極小を見出し、各ピークについて極小によって画定される範囲全体でフィルタリングを実行することを含むことが好ましい。
【0024】
本発明の第四態様では、半導体ウェハのパターン形成領域の層厚を測定するための方法において、
a)半導体ウェハのそれぞれのパターン形成領域から反射スペクトルを得る段階と、
b)学習段階であって、
パターン形成領域の層の期待される厚さに対応する領域に探索を制限しながら、スペクトルを探索してスペクトル内のピーク周波数を見出すことと、
ピーク周波数付近でスペクトルをフィルタリングすることと、
最尤適合で使用するためのパラメータをフィルタリングされたスペクトルから得ることと、
パラメータを使用してフィルタリングされたスペクトルの最尤適合を実行して、学習モード層厚を得ることと、
を含む学習段階と、
c)ラン段階であって、
学習段階で見出されたピーク周波数に対応する領域に探索を制限しながら、スペクトルを探索してスペクトル内のピーク周波数を見出すことと、
ピーク周波数付近でスペクトルをフィルタリングすることと、
学習段階で得たパラメータを使用してフィルタリングされたスペクトルの最尤適合を実行して、層厚を得ることと、
を含むラン段階と、
を含む方法を提供する。
【0025】
フィルタリングされたスペクトルから最尤適合に使用するためのパラメータを得る段階は、得られた反射スペクトルのより高い分解能バージョンを構成することを含むことが好ましい。
【0026】
本発明の第五態様では、複数のステーションを有する半導体ウェハ生産ラインを管理するための装置において、連続ステーションがウェハに特長を追加するためにウェハに連続工程を実行するためのものであり、ステーションの少なくとも一つが、それぞれのウェハのパターン形成表面部で層の測定を達成するための測定ユニットを有し、測定ユニットが、
パターン形成領域から取られた反射データを得、かつそこから周波数スペクトルを得るためのスペクトルアナライザと、
探索を学習段階で見出されたピーク周波数に対応する領域に制限しながら、スペクトルを探索してスペクトル内でピーク周波数を見出すためにスペクトルアナライザに関連付けられたピーク検出器と、
ピーク周波数付近のスペクトルをフィルタリングするために、ピーク検出器に関連付けられた周波数フィルタと、
学習段階で得られたパラメータを使用してフィルタリングされたスペクトルの最尤適合を実行して層厚を得るための最尤フィッタと、
を備えて成る装置を提供する。
【0027】
反射データはパターン形成領域の多色光照射から得ることが好ましい。
【0028】
スペクトルアナライザは、分光計と、分散補正器と、波数変換器と、フーリエ変換器とを備えることが好ましい。
【0029】
学習段階で見出されたピーク周波数は、初期試料の層厚に対応することが好ましい。
【0030】
初期試料の層厚は、学習段階でスペクトル分析を使用して、スペクトルアナライザによって得られたものより高い分解能でスペクトルを構成することによって、決定することが好ましい。
【0031】
周波数フィルタは、各ピークの両側で極小を見出し、極小によって画定される範囲をフィルタリングすることによって、各ピークにフィルタリングを実行するように動作可能であることが好ましい。
【0032】
測定ユニットは、所定のステーションでプロセシングの前、途中、および後に厚さ測定を行なうように配置することが好ましい。次いで厚さの測定値を使用して、工程の管理を達成することができる。
【0033】
本発明の第六態様では、複数のステーションを有する半導体ウェハ生産ラインを管理するための装置において、連続ステーションがウェハに特長を追加するためにウェハに連続工程を実行するためのものであり、ステーションの少なくとも一つが、それぞれのウェハのパターン形成表面部で層の測定を達成するための測定ユニットを有し、測定ユニットが、
a)半導体ウェハのそれぞれのパターン形成領域から反射スペクトルを得るための入力スペクトルアナライザと、
b)学習モードユニットであって、
パターン形成領域の層の期待される厚さに対応する領域に探索を制限しながら、スペクトルを探索してスペクトル内のピーク周波数を見出すために、スペクトルアナライザに関連付けられたピーク検出器と、
ピーク周波数付近のスペクトルをフィルタリングするために、ピーク検出器に関連付けられた周波数フィルタと、
最尤適合で使用するためにフィルタリングされたスペクトルからパラメータを得るための高分解能スペクトルアナライザと、
パラメータを使用してフィルタリングされたスペクトルの最尤適合を実行して学習モード層厚を得るための最尤フィッタと、
を備えた学習モードユニットと、
c)ランモードユニットであって、
学習モードユニットによって見出されたピーク周波数に対応する領域に探索を制限しながら、スペクトルを探索してスペクトル内のピーク周波数を見出すために、スペクトルアナライザに関連付けられたピーク検出器と、
ピーク周波数付近のスペクトルをフィルタリングするために、ピーク検出器に関連付けられた周波数フィルタと、
学習モードユニットによって得られたパラメータを使用してフィルタリングされたスペクトルの最尤適合を実行して層厚を得るための最尤フィッタと、
を備えたランモードユニットと、
を備えて成る装置を提供する。
【0034】
高分解能スペクトルアナライザは、入力スペクトルアナライザによって得られた分解能より高い分解能で新しいスペクトルを構成することによって、パラメータを得るように動作可能であることが好ましい。
【0035】
測定ユニットは、所定のステーションでプロセシングの前、途中、および後に厚さ測定を行なうように配置することが好ましい。次いで測定値を使用して、工程の管理を達成することができる。
【0036】
本発明をよりよく理解するため、かつそれをいかに実行に移すことができるかを示すために、以下、純粋に実施例として添付の図面を参照しながら説明する。
【0037】
特に図面の詳細に関連して、図示する細部は例であって、本発明の好適な実施形態を分かりやすく説明することだけを目的としており、本発明の原理および概念的側面の最も有用かつ理解し易い説明と信じるものを提供するために提示するものであることを強調しておく。これに関し、本発明の基本的な理解に必要である以上に詳細に発明の構造上の詳細を示そうとは試みず、図面に即して行なう説明は、本発明の幾つかの形態をいかに実際に具現することができるかを当業者に明らかにするものである。
図面の簡単な記述
図1aはパターンを持たない層状製品ウェハの簡易図である。
図1bは金属配線のような下にあるパターンを持つ層状製品ウェハの簡易図である。該ウェハは、依然として従来の厚さ測定法を実行することのできる非パターン形成領域をさらに有する。
図1cは図1bと同様の層状ウェハの簡易図であるが、パターンがウェハ全体に導入され、パターン形成領域に実行される測定を示す。
図2はTMSシステムを用いて層状ウェハ製品の層厚の情報を得るために、いかに光反射を使用することができるかを示す簡易光線図である。
図3は本発明の第一の好適な実施形態に係る二部分層厚測定装置を示す簡易ブロック図である。
図4は図3の学習モードユニットをさらに詳しく示す簡易ブロック図である。
図5は図3の学習モードユニットで使用される学習モード工程を示す簡易流れ図である。
図6は学習モードで高分解能スペクトルを算出するための工程を示す簡易流れ図である。
図7は学習およびランモード両方の最尤適合の方法を示す簡易流れ図である。
図8は図3のランモードユニットをより詳細に示す簡易ブロック図である。
図9は図8のランモードユニットで使用される手順を示す簡易流れ図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本実施形態は、その内容をそっくりそのまま参照によってここに組み込むPCT特許出願第WO0012958号のTMSシステムを使用する、二段階システムを説明する。第一の学習の段階で、半導体ウェハ製品の典型的な試料のTMSに基づく層特性抽出が所定の製造段階に対して行われる。この段階は、当初とられたものより高い分解能のスペクトルの推定のような技術を使用して、できるだけ正確に実行される。そのような技術は非常に計算集約的であり、したがって現時点では実時間処理には適さない。高分解能スペクトルの推定は、最尤適合の出発点を生成するために使用される。第二段階では、所定の段階に到達した実際の半導体製品の測定が行なわれ、試料に対する層厚のずれが決定される。第二段階はまた最尤適合をも使用するが、第二段階では、最尤推定は第一段階から得たパラメータによってシードされる。したがって、計算に必要な資源を低減することは好ましいが、第二段階では、第一段階の高分解能推定を維持することが好ましい。
【0039】
本発明の少なくとも一つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明はその適用を以下の説明に記載しあるいは図面に示す構造の詳細および構成部品の構成の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は他の実施形態に適用可能であり、あるいは様々な方法で実施または実行される。また、本書で使用する語法および用語は、説明のためのものであって、限定するものとみなすべきではないことも理解されたい。
【0040】
本発明の概論として、PCT特許出願第WO0012958号のTMS測定法について詳述する。
【0041】
今、図1aを参照すると、それは生産工程の中間段階にあるシリコンウェハの断面を示す簡易図である。シリコンウェハ2はその上に付着されたフォトレジスト層4を有する。図1aにおいて、フォトレジスト層4は均一であり、層の厚さDを決定するために必要なものは単純な測定だけである。
【0042】
今、図1bを参照すると、それは、チップに特長を供給するためにパターン形成を適用し始める、さらなる中間処理段階にあるシリコン層を示す簡易図である。さらに詳しくは、金属構造6が二酸化シリコン(SiO)層10によって被覆される。図示する通り、表面の非パターン形成部上にスポットを選択することができ、再び、厚さDを得るために単純な測定を行なう必要があるだけである。
【0043】
今、図1cを参照すると、それは、生産工程の別の中間段階にある別のシリコンウェハの断面を示す簡易図である。図1cにおいて、ウェハ2はSiO層10によって被覆された一連の金属配線構造6を含む。さらに詳細に下述するように、TMS測定システムは、透明もしくは半透明な薄膜の厚さを測定するのに特に適している。本例では、SiO層10は、金属配線構造6のために異なる位置では厚さが異なる。こうして、典型的なウェハでは三つの異なる層厚D〜Dを識別することができる。上記の厚さの相違は従来の測定システムで正確に測定することができない。しかし、TMSシステムは、付加されたウェハ層または除去された層のそのような厚さの変化を測定することができ、さらに測定は現場で、特定の分解能限界まで、実時間で行われる。TMSプロセスの動作の基本的理論についての以下の説明は、これをいかに達成することができるかを理解するのに役立つであろう。
【0044】
今、図2を参照すると、それは異なる屈折率を有する一連の層への斜めの光の入射を示す簡易光線図である。
【0045】
図2において、透明な三つの層0、1、および2を構成する材料は、光のビームによる照射を受ける。入射光線12は第一層境界14に衝突して、反射光線16および屈折光線18に分割される。屈折光線18は第二層境界20に衝突して、再び分割される。今回は反射光線22だけが示されている。反射光線22は第一層境界14に衝突すると、再び屈折して、第三屈折光線24を構成する。
【0046】
多波長光を使用して得られた反射パターンを使用して、透明な薄膜の厚さを測定するための幾つかの方法が公知である。図2に示したビームが単色(単波長)光ビームであり、かつそれが透明薄膜に到達すると、ビームの一部は上面(頂面とも言う)(層0/層1界面)から反射し、一部は底面(層1/層2界面)から反射する。
【0047】
図2に示したものを数学的に表現すると、
λは光の波長であり、
φは入射光(および層0/層1界面から反射した光)の位相角であり、
φ+φは、層1/層2界面から反射した光の位相角であり、
01は、層0/層1界面のフレネル反射係数であり、
12は、層1/層2界面のフレネル反射係数であり、
01は、層0/層1界面のフレネル透過係数であり、
10は、層1/層0界面のフレネル透過係数であり、
Iは入射光の強度であり、
I=Icos(2πct/λ+φ) (式1)
ここでIは最大強度振幅であり、cは光の速度である。
【0048】
薄膜表面に直角に到達する光の場合、頂面および底面からの反射係数は、次の通りである。
01=(n−n)/(n+n) (式2a)
12=(n−n)/(n+n) (式2b)
01=2n/(n+n) (式2c)
10=2n/(n+n) (式2d)
ここでn、n、nはそれぞれ層0、1、および2の屈折率である。
【0049】
上面から反射した光は底面から反射した光と干渉し、層厚および層屈折率の関数である総合反射係数(R)をもたらす。この反射は、次の通り周知のフレネル方程式によって説明することができる。
R=(r01+r12+2r0112cos2Φ)/(1+r0112+2r0112cos2Φ) (式3)
ここで、
Φ=2πn/λ (式4)
であり、ここで、dは層厚である。
【0050】
薄膜に多波長光(白色光)を照射し、各波長(λ)の反射率を測定すると、λの関数としてのR、つまりR(λ)が得られる。
【0051】
複雑な(つまり横方向に変化する)トポグラフィを有する製品ウェハに大きいスポットの多波長光を照射すると、単独で得た各々の厚さの別個の反射の合成である反射ビームを生じる。
R(λ,d,…,d)=Σ(r(i−1),i+ri(i+1)+2r(i−1),ii(i+1)cos2Φ)/(1+r(i−1),ii(i+1)+2r(i−1),ii(i+1)cos2Φ) (式5a)
【0052】
式5は多層の場合に適用されることに注目されたい。側方の場合、つまり、厚さが側方に変化する場合、次のように記述することができる。
R(λ,d,…,d)=ΣR(λ,d) (式5b)
【0053】
単純な数学的操作によって、反射係数を次式によって表わすことができる。
R(λ,d,…,d)=Σ[1−A/(1+BCos(2Φ))]*G (式6)
ここで、
=(1−r(i−1),i)(1−ri(i+1))/(1+r(i−1),ii(i+1)) (式6a)
=2r(i−1),ii(i+1)/(1+r(i−1),ii(i+1)) (式6b)
であり、
は、厚さdiを持つ所定の層の多厚構造の総反射に対する相対的貢献を説明する因子である。
【0054】
反射係数の周波数分解の多数の方法のいずれかを適用して引数(Φ)の各々を提供することができ、式3および4から、層の屈折率が既知であると仮定して、層厚を決定することが可能である。代替的に、層厚が既知である場合、層の屈折率を決定することが可能である。
【0055】
周波数分解を実行する幾つかの方法があり、その幾つかを下に提示する。
数学的分解
1)直交変換法群、例えばフーリエ変換
2)最尤原理に基づく方法群
3)パラメトリックモデルに基づく方法群
4)部分空間分解法群。
【0056】
電気的分解
電気周波数フィルタは、電気および電子システムに幅広く使用されている。そのようなフィルタは、周波数ドメインに窓を規定し、該窓の範囲内の入力信号の成分の振幅を出力するように働く。反射信号(電気信号に変換された)を一組のフィルタまたは可変周波数を持つ単一フィルタに通過させると、所望の分解がもたらされる。
【0057】
上記方法、すなわち列挙した数学的分解および電気的分解の各々は、別個に使用した場合、シリコンチップの生産ラインのような実際的な環境の文脈において、それ独自の限界を有する。直交変換および特にフーリエ変換は高速であり、かつ使用し易いが、達成される分解能レベルが限定される。周知の関係、レイリー限界は、有限引数T1...Tnに対して実行されるフーリエ変換がDfmin=1/(Tn−T1)の最小周波数分解能を有することを示す。光がUV〜可視範囲、例えば300nm〜1000nmの白色光であり、誘電層が例えば1.45の屈折率を有するSiOである場合、最小厚さ分解能は約148nmであり、それは場合によっては、管理することが望ましい側方厚さ変化のレベルに対して十分ではない。
【0058】
最尤原理を使用する方法は、層数および物理的パラメータ(d、n、およびk)を変数として使用し、最良適合が達成されるまでこれらの変数を変化させて、反射係数データを理論的反射係数に適合させることを含む。実際の生産ラインでは、関連変数についての必要な事前の知識は限定される可能性が高く、膨大な分析によってのみ見出すことができ、それは試験対象試料にとって破滅的になることがある。変数の事前の知識無しには、適合アルゴリズムは複雑すぎて正確な結果を出すことができず、計算に長い時間がかかり、場合によっては無効な結果を導くことがある。したがって、最尤に基づく方法は、工程監視および管理に必要とされる種類の実時間測定には現実的ではない。
【0059】
パラメトリックモデルに基づく方法を部分空間分解に照らして比較すると、後者はより優れたスペクトル分解能をもたらす。他方、それぞれの計算コストはほぼ等しい。さらに、利用可能なパラメトリックモデル方法は基本的に確率論型の信号用である。対照的に、本発明で考慮する信号の種類は典型的に、決定論的であり、形状的には正弦曲線である(式3参照)。
【0060】
部分空間分解の方法は一般的に、独立信号源のスペクトル分析専用である。残念ながら、ウェハ層構造において、信号源すなわち層境界が実際に独立源として適格であるとは言えない。各層境界がそれ自体の信号を発生させるというのが事実である。例えば、金属配線パターンの上の誘電層の堆積では、金属配線の上の誘電体の厚さおよび金属配線間の誘電体の厚さは二つの異なる厚さであり、それらは別個に取り扱わなければならない。しかし、堆積層の厚さの変化はそれらの両方を一緒に変化させるので、それらは相互に独立していない。上記不利点にもかかわらず、適切なデータに正しく実行された場合、部分空間分解技術はフーリエ変換よりずっと優れた分解能で層を分離することができる。しかし、生産ライン環境に内在する限界および部分空間混合の問題は、結果の正確さおよび安定性を限定する。概して、部分空間分解法は、ウェハ厚さの測定に使用した場合、結果に系統的なずれを生じる傾向がある。
【0061】
今、図3を参照すると、それは、本発明の好適な実施形態に係る二段階測定システムを示す簡易図である。学習モードユニット30はフーリエ変換、高分解能分析、およびTMS結果の最尤適合を実行し、フーリエ解析および実時間TMS結果に対する最尤適合を実行するランモードユニット32と関連して構成される。上述の通り、最尤法を使用することの本質的な難しさは、適合プロセスのための初期値を得ることにある。したがって、本実施形態は試料の非実時間解析を実行し、非実時間解析の結果を実時間最尤適合のための出発点として使用する。学習モードでは、下述するように、最尤適合のための出発点を得るために、好ましくは部分空間分解法によって、高分解能スペクトルが作成される。該方法は一組のトライアル試料から非常に高精度の結果を見出し、次いで該結果は、最尤プロセスを含むが高分解能スペクトルを算出しない、実時間測定モードをシードするためのパラメータとして使用される。学習モードはこうして一組のトライアル試料から正確な厚さデータを得るが、試料はプロセスを完全に反映する。学習モードは、それが常にプロセスを完全に反映するように、新しいパターン構造が作成されるたびに、異なる材料が導入されたときはいつでも、または異なる厚さ範囲が導入されたときはいつでも、実行することが好ましい。学習モードの結果は次いで、製品の型、工程の型、および材料を特定するラベルの下でコンピュータメモリに格納することが好ましい。
【0062】
ランモードユニット32はその後、層堆積工程を管理するために測定が必要になるたびに、実時間解析のために使用される。ランモードは「学習モード」からのデータを、最尤度に基づくプロセスをシードするための初期パラメータまたは初期推定値として使用し、最終結果に達するまで計算を続ける。こうして該システムは、上に概説した最尤法および高分解能(部分空間分解)法の両方の不利点を克服する。非常に正確な事前の知識が学習モードから得られるので、最尤推定により実時間に安定した正確な結果をもたらすことが可能である。
【0063】
以下の図において、学習およびラン段階についてより詳細に検討する。
【0064】
1)学習モード
今、図4を参照すると、それは、上述した学習モードを実行するための本発明の好適な実施形態に係る装置を示す簡易ブロック図である。同時に、図5を参照すると、それは学習モードに含まれる手順を示す流れ図である。
【0065】
動作の第一部分は、学習モードおよびランモードの両方とも同じである。
【0066】
どちらの場合も、試料40のパターン形成された表面の初期スペクトルが分光計42によって取られる。
【0067】
層の屈折率の事前データを使用して、屈折率分散(N[λ(i)])を使用した波長軸の補正が、分光計42の下流に接続された分散補正器44で実行される。補正は、生成される層材料の型に依存する解析公式によって実行することが好ましい。
i=1:nの場合、λcor(i)=λ(i)/N[λ(i)]。
ここでλcor(i)は補正された波長であり、
λ(i)はi番目の波長であり、
N[λ(i)]は波長λにおける屈折率Nの分散関数を表わす。今、補正された波長λcorで均等な信号は、線形補間を使用してx=2π/λcorで均等になるように変換されることが好ましい。変換は波数変換器48で実行され、それは分散補正器46の下流で接続される。
【0068】
波数変換器48はフーリエ変換ユニット50に接続され、反射係数y=R(x)でフーリエ変換を実行して、次式を生じる。
S(f)=FT[y]
【0069】
期待される厚さ52の値は、用途の事前の知識ならびに特定の工程および製品に基づいて定められる。その後のランモードとは対照的に、期待される値は特に正確ではなさそうである。
【0070】
フーリエ変換ユニットの下流に接続されているのは、エタロンピークセレクタ54である。思い起こされる通り、TMS信号は層境界に対応するピークを含み、「エタロン」スペクトルピークは、それぞれの期待される厚さに対応する周波数値に最も近い、変換後の信号の顕著なピークに割り当てられる名称である。エタロンピークセレクタ54は、期待される厚さを使用して信号内の出発点に到達し、そこからエタロンピークを見出す。
【0071】
厚さと周波数との間の変換に使用される係数は、次の恒等式から定義することができる。
厚さ=0.5×n/(1/λmin−1/λmax)×周波数
ここでnは信号内の点の個数であり、
λmin、λmaxはそれぞれ補正後の波長λcorの最小および最大波長であり、
したがって係数は、
0.5×n/(1/λmin−1/λmax)
となる。
【0072】
変換された信号で識別された全てのエタロンピークから配列を描くことができる。そのような配列をここでは「VecPeak」と呼び、それはウェハからの反射パターンに寄与する全ての厚さを表わす。
【0073】
エタロンピークセレクタ54の下流にはスペクトルフィルタ56がある。スペクトルフィルタの目的は、期待される厚さの周囲の様々なスペクトルまたはエタロンピークの周波数境界を見出すことである。好ましくは、周波数境界は、期待される厚さに対応するエタロン周波数ピークの境界をつける周波数を見出すことによって得られる。
【0074】
次いで補正された引数(R(λcor))を持つ原信号はスペクトルフィルタ56によってフィルタリングされて、上で見出された境界内に存する信号のエタロンピーク部分だけが残る。
【0075】
スペクトルフィルタ56の後に続くのは、本書で高分解能スペクトルコンストラクタとも呼ぶ高分解能スペクトルアナライザ58である。今、フィルタリングされたスペクトル信号は、初期入力スペクトルより高い分解能を持つスペクトルを導出するために、数学的プロセスに入る。高分解能スペクトル分析を図6に示す。それは、高分解能スペクトルを生成するための分析の段階を示す簡易流れ図である。
【0076】
第一段階S1において、フィルタリングされた信号の四次キュムラントを取る。
【0077】
所定の信号に対し、段階S2では四次キュムラントから自動相関行列(T)を構成する。
【0078】
自動相関行列の形成に続いて、段階S3で自動相関行列のSVD(単一値分解)が実行され、したがって、
T=U×E×V
となる。
ここでTは上述した自動相関行列であり、
Eは降順の自動相関行列の固有値の対角行列であり、
Uは行列Tの対応する固有ベクトルの行列であり、VはVの共役転置行列であり、
VはT’の対応する固有ベクトルの行列であり、
T’はTの転置行列である。
【0079】
上記の手順において、段階S4は、最大固有値の個数に等しい数量であるモデル位数(p)を見出す。該手順はすぐ後の固有値とは著しく異なる固有値を探索し、したがって(E(p,p)>>E(p+1,p+1))となる。したがって、上に規定したモデル位数は段階S5で、関連固有ベクトルを二群、すなわち信号部分空間Usをスパンする固有ベクトルと、直交雑音部分空間Unをスパンする固有ベクトルに分割する。つまりU={Us|Un}である。段階S6において、高分解能スペクトルは次のように形成される。
得られたモデル位数pおよびデータセットに対し、高分解能スペクトルは次のように算出される。
HR(f)=1/[W(f)×W(f)
ここでW(f)は周波数fに対するベクトルwのフーリエ変換であり、
ここでW={1|(1−up x up−1Up x up}であり、
upおよびUpはそれぞれ行列Usの第一列ベクトルおよび残部であり、
添字「」は共役ベクトルまたは行列を表し、
添え字「」は転置ベクトルまたは行列を表す。
【0080】
HR(f)の極大値の位置を今、初期厚さ値(Dini)とみなすことができる。
【0081】
今、図4に戻って、高分解能スペクトルアナライザ58の下流には最尤フィッタ60がある。該フィッタは初期厚さ値(Dini)を使用して、フィルタリングされたデータセットを式(6)によって定義された曲線に適合させる。
【0082】
さらなるパラメータGini、Aini、およびBiniは、予備推定手順によって得られる。適合手順は式(6)に対し近似1/(1+z)〜1−zを使用し、図7に示すようにその後の一連の動作に従って、初期パラメータの分析結果を得ることが好ましい。
第一にS10で、測定データの極値点xExt(m)、yExt(m)の座標を決定するために、探索が実行される。
第二にS11で、データyAverに対し平均の推定が行われる。
第三にS12で、システムの係数が算出される。
Cn=Vxz (式7)
ここでCn=yExt(m)−yAverであり、
V={V1|V2|V3|…}はシステム行列であり、それは次式
yAverxcos[4πxxExt(m)xD(nD)]for i=1
によって定義される列ベクトルViから構成され、
Vi={
cos[4πxxExt(m)xD(i−1)]−cos[4πxxExt(m)xD(nD)]for i=2:nD
であり、
nDは探索された厚さ(Dini)の個数である。
システムは式(7)から、
z=V−1xCn
を決定し、値A、Gの決定は段階S13で次のように行われる。
ini=z(1)/[z(1)+1];
z(i+1)/A for i=2:nD−1;
ini(i)={

ini=const
【0083】
上で推定されたパラメータAini、Bini、GiniおよびDiniは、最尤適合のための初期推定である。次に、この適合の結果は、学習モードの結果を構成する。決定されたA、B、GおよびDの値は最終的に段階S14で、見出された各厚さ毎にデータベース72に格納される。
【0084】
2)ランモード
今、図8を参照すると、それは図3のランモードユニット32の簡易ブロック図である。明らかなように、ランモードユニットは学習モードユニット30に類似しているが、同一ではない。
【0085】
ランモードユニット30は、その動作のために、同一プロセシングを通過してきた試料から学習モードによって得られたパラメータを必要とする。
【0086】
ランモードでは、学習モードと同様に、試料40が照射され、分光計42によって反射情報が得られ、分析される。分散補正器44は従来通り、分散分析関数46を使用する。補正は、材料の種類等に基づくパラメータを使用して実行される。
【0087】
波数変換器48では、波長λで現在均等な信号から2π/λで均等なものへの変換が、線形補間を使用して実行される。
【0088】
従来通り、信号はフーリエ変換器50によって周波数領域に変換される。しかし、エタロンピークセレクタ70に来ると、学習工程中にすでに得られた周波数帯域(または厚さ)72を出発点として使用して選択が実行され、そこから実際のエタロンピークが見出され、エタロンスペクトルが生成される。エタロンピークセレクタ70の動作は、測定される現在の厚さが学習段階で見出された厚さとは異なるが、著しくは異ならないという想定に基づく。したがって、そのような期待される厚さ付近の小範囲における検査で実際のエタロンピークが見出されるはずであり、それは期待される厚さおよびずれΔDによって記述することができる。このように、期待される厚さは所定の工程に共通である一方、ずれは個々のウェハの特性であり、かつそれほどではないにしても個々の厚さの特性である。認識可能なピークが全く検出されないことが起こり得、その場合、それぞれの厚さおよび対応する層が存在しないと推測されることは理解されるであろう。
【0089】
その後スペクトルフィルタ56は、学習プロセスによって得られかつその後実際のエタロンスペクトルに対して補正された周波数帯域内の信号の帯域フィルタリングを実行することができる。
【0090】
ランモードには、高分解能スペクトルアナライザが無い。代わりに、適合段階に必要なパラメータは、学習モードのデータベース72から直接取られる。
【0091】
最後に、最尤フィッタ60は、学習モードで見出された最適化パラメータとしての初期Gi、Ai、Bi、およびエタロンピークセレクタに関連して上述したシフトコレクタ手順によって補正されたDi+ΔDを使用して、学習モードで上述したように適合を実行する。
【0092】
最良適合が達成されると、現在の試料の様々な厚さDiおよび面積比Giの最終結果を管理システムデータベースに適宜格納し、かつ/または所望の工程の管理に貢献するように、スクリーン、ホスト通信、プロセスツール通信等のようなシステムの出力ユニットに送信することが好ましい。
【0093】
こうして、実時間で動作し、かつウェハ製造工程管理のための測定を達成するために使用することのできる、正確な高分解能厚さ測定システムが達成される。
【0094】
ウェハ製造に使用される場合を好適な実施形態を記述したが、該測定システムは、薄膜または透明もしくは半透明な層の高分解能実時間厚さ測定を必要とするどのような場合にも適用可能であることを理解されたい。
【0095】
分かり易くするために別個の実施形態の文脈で記載した本発明の特定の特長は、単一の実施形態に組み合わせて提供することもできることを理解されたい。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で記載した本発明の様々な特長を、別個にまたはいずれかの適切な部分組合せとして提供することもできる。
【0096】
特に別途定義しない限り、本書で使用する技術および科学用語は全て、本発明が属する技術分野の通常の熟練者が一般的に理解するのと同じ意味を持つ。本書に記載するのと同様または同等の方法を本発明の実践または試験に使用することができるが、本書では適切な方法を記載する。
【0097】
本書に明記した全ての出版物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によってそっくりそのままここに組み込む。矛盾が生じた場合、定義を含め、本特許明細書を優先する。加えて、材料、方法、および例は単なる解説であって、限定するつもりはない。
【0098】
本発明は上に特に示しかつ説明したものに限定されないことを当業者は理解されるであろう。それどころか、本発明の範囲は添付の請求の範囲の記載によって定義され、本書で上述した様々な特長の組合せおよび部分組合せの両方を含むだけでなく、上記の説明を読んだ後当業者が思いつくそれらの変形および変化をも含む。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1aパターンを持たない層状製品ウェハの簡易図である。図1bは金属配線のような下にあるパターンを持つ層状製品ウェハの簡易図である。図1cは図1bと同様の層状ウェハの簡易図である。
【図2】TMSシステムを用いて層状ウェハ製品の層厚の情報を得るために、いかに光反射を使用することができるかを示す簡易光線図である。
【図3】本発明の好適な実施形態に係る二部分層厚測定装置を示す簡易ブロック図である。
【図4】図3の学習モードユニットをさらに詳しく示す簡易ブロック図である。
【図5】図3の学習モードユニットで使用される学習モード工程を示す簡易流れ図である。
【図6】学習モードで高分解能スペクトルを算出するための工程を示す簡易流れ図である。
【図7】学習およびランモード両方の最尤適合の方法を示す簡易流れ図である。
【図8】図3のランモードユニットをより詳細に示す簡易ブロック図である。
【図9】図8のランモードユニットで使用される手順を示す簡易流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハのパターン形成領域の層厚を測定するための厚さ測定装置であって、
パターン形成領域から取られた反射データを得、そこから周波数スペクトルを得るためのスペクトルアナライザと、
前記スペクトルを探索して前記スペクトル内のピーク周波数を見出すための、前記スペクトルアナライザに関連付けられたピーク検出器であって、前記探索を学習段階で見出されたピーク周波数に対応する領域に限定するように動作可能であるピーク検出器と、
前記ピーク周波数付近の前記スペクトルをフィルタリングするための、前記ピーク検出器に関連付けられた周波数フィルタと、
前記学習段階で得たパラメータを使用して、前記フィルタリングされたスペクトルの最尤適合を実行し、少なくとも前記層厚を得るための最尤フィッタと、
を備えた装置。
【請求項2】
前記反射データは、前記パターン形成領域の多色光照射から得られる請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スペクトルアナライザは、分光計と、分散補正器と、波数変換器と、フーリエ変換器とを備える請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記学習段階で見出された前記ピーク周波数は、初期試料の層厚に対応する請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記初期試料の前記層厚は、前記学習段階でスペクトル分析を使用して、前記スペクトルアナライザによって得られたものより高い分解能でスペクトルを構成することによって、決定される請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記周波数フィルタは、各ピークの両側で極小を見出し、前記極小によって画定される範囲をフィルタリングすることによって、各ピークにフィルタリングを実行するように動作可能である請求項1に記載の装置。
【請求項7】
半導体ウェハのパターン形成領域の層厚を測定するための厚さ測定装置であって、
a)半導体ウェハのそれぞれのパターン形成領域から反射スペクトルを得るための入力スペクトルアナライザと、
b)学習モードユニットであって、
前記スペクトルを探索して前記スペクトル内のピーク周波数を見出すために、前記スペクトルアナライザに関連付けられたピーク検出器であって、前記パターン形成領域の層の期待される厚さに対応する領域に前記探索を制限するように動作可能であるピーク検出器と、
前記ピーク周波数付近の前記スペクトルをフィルタリングするために、前記ピーク検出器に関連付けられた周波数フィルタと、
最尤適合で使用するために前記フィルタリングされたスペクトルからパラメータを得るための高分解能スペクトルアナライザと、
前記パラメータを使用して前記フィルタリングされたスペクトルの最尤適合を実行して少なくとも学習モード層厚を得るための最尤フィッタと、
を備えた学習モードユニットと、
c)ランモードユニットであって、
前記スペクトルを探索して前記スペクトル内のピーク周波数を見出すために、前記スペクトルアナライザに関連付けられたピーク検出器であって、前記学習モードユニットによって見出されたピーク周波数に対応する領域に前記探索を制限するように動作可能であるピーク検出器と、
前記ピーク周波数付近の前記スペクトルをフィルタリングするために、前記ピーク検出器に関連付けられた周波数フィルタと、
前記学習モードユニットによって得られた前記パラメータを使用して前記フィルタリングされたスペクトルの最尤適合を実行して前記層厚を得るための最尤フィッタと、
を備えたランモードユニットと、
を備えて成る装置。
【請求項8】
前記高分解能スペクトルアナライザは、前記入力スペクトルアナライザによって得られた分解能より高い分解能で新しいスペクトルを構成することによって、前記パラメータを得るように動作可能である請求項7に記載の装置。
【請求項9】
半導体ウェハのパターン形成領域の層厚を測定するための方法であって、
パターン形成領域から取られた反射データを得ることと、
そこから周波数スペクトルを得ることと、
学習段階で見出されたピーク周波数に対応する領域に限定して、前記スペクトルを探索して前記スペクトル内のピーク周波数を見出すことと、
前記ピーク周波数付近の前記スペクトルをフィルタリングすることと、
前記学習段階で得られたパラメータを使用して、前記フィルタリングされたスペクトルの最尤適合を実行して前記層厚を得ることと、
を含む方法。
【請求項10】
前記反射データは、前記パターン形成領域の多色光照射から得られる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記周波数スペクトルを得ることが、前記反射データのスペクトルを測定し、分散を補正し、波数について変換し、フーリエ変換を実行することを含む請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記学習段階で見出された前記ピーク周波数は、初期試料の層厚に対応する請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記初期試料の前記層厚は、前記学習段階でスペクトル分析を使用して、前記スペクトルアナライザによって得られた分解能より高い分解能でスペクトルを構成することによって決定される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記スペクトルを前記フィルタリングすることが、各ピークの両側で極小を見出し、各ピークについて前記極小によって画定される範囲全体でフィルタリングを実行することを含む請求項9に記載の方法。
【請求項15】
半導体ウェハのパターン形成領域の層厚を測定するための方法であって、
a)半導体ウェハのそれぞれのパターン形成領域から反射スペクトルを得る段階と、
b)学習段階であって、
前記パターン形成領域の層の期待される厚さに対応する領域に探索を制限しながら、前記スペクトルを探索して前記スペクトル内のピーク周波数を見出すことと、
前記ピーク周波数付近で前記スペクトルをフィルタリングすることと、
最尤適合で使用するためのパラメータを前記フィルタリングされたスペクトルから得ることと、
前記パラメータを使用して前記フィルタリングされたスペクトルの最尤適合を実行して、学習モード層厚を得ることと、
を含む学習段階と、
c)ラン段階であって、
前記学習段階で見出されたピーク周波数に対応する領域に探索を制限しながら、前記スペクトルを探索して前記スペクトル内のピーク周波数を見出すことと、
前記ピーク周波数付近で前記スペクトルをフィルタリングすることと、
前記学習段階で得た前記パラメータを使用して前記フィルタリングされたスペクトルの最尤適合を実行して、前記層厚を得ることと、
を含むラン段階と、
を含む方法。
【請求項16】
前記フィルタリングされたスペクトルから最尤適合に使用するためのパラメータを得る前記段階は、前記得られた反射スペクトルのより高い分解能バージョンを構成することを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
複数のステーションを有する半導体ウェハ生産ラインを管理するための装置であって、連続ステーションが前記ウェハに特長を追加するためにウェハに連続工程を実行するためのものであり、前記ステーションの少なくとも一つが、それぞれのウェハのパターン形成表面部で層の測定を達成するための測定ユニットを有し、測定ユニットが、
パターン形成領域から取られた反射データを得、かつそこから周波数スペクトルを得るためのスペクトルアナライザと、
探索を学習段階で見出されたピーク周波数に対応する領域に制限しながら、前記スペクトルを探索して前記スペクトル内でピーク周波数を見出すために前記スペクトルアナライザに関連付けられたピーク検出器と、
前記ピーク周波数付近の前記スペクトルをフィルタリングするために、前記ピーク検出器に関連付けられた周波数フィルタと、
前記学習段階で得られたパラメータを使用して前記フィルタリングされたスペクトルの最尤適合を実行して前記ウェハ生産ラインのための管理信号として使用できる前記層厚を得るための最尤フィッタと、
を備えて成る装置。
【請求項18】
前記反射データは前記パターン形成領域の多色光照射から得られる請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記スペクトルアナライザは、分光計と、分散補正器と、波数変換器と、フーリエ変換器とを備える請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記学習段階で見出された前記ピーク周波数は、初期試料の層厚に対応する請求項17に記載の装置。
【請求項21】
前記初期試料の前記層厚は、前記学習段階でスペクトル分析を使用して、前記スペクトルアナライザによって得られた分解能より高い分解能でスペクトルを構成することによって、決定される請求項17に記載の装置。
【請求項22】
前記周波数フィルタは、各ピークの両側で極小を見出し、前記極小によって画定される範囲をフィルタリングすることによって、各ピークにフィルタリングを実行するように動作可能である請求項17に記載の装置。
【請求項23】
前記測定ユニットは、所定のステーションでプロセシングの前、途中、および後に厚さ測定を行なうように配置される請求項17に記載の装置。
【請求項24】
複数のステーションを有する半導体ウェハ生産ラインを管理するための装置であって、連続ステーションが前記ウェハに特長を追加するためにウェハに連続工程を実行するためのものであり、前記ステーションの少なくとも一つが、それぞれのウェハのパターン形成表面部で層の測定を達成するための測定ユニットを有し、測定ユニットが、
a)半導体ウェハのそれぞれのパターン形成領域から反射スペクトルを得るための入力スペクトルアナライザと、
b)学習モードユニットであって、
前記パターン形成領域の層の期待される厚さに対応する領域に探索を制限しながら、前記スペクトルを探索して前記スペクトル内のピーク周波数を見出すために、前記スペクトルアナライザに関連付けられたピーク検出器と、
前記ピーク周波数付近の前記スペクトルをフィルタリングするために、前記ピーク検出器に関連付けられた周波数フィルタと、
最尤適合で使用するために前記フィルタリングされたスペクトルからパラメータを得るための高分解能スペクトルアナライザと、
前記パラメータを使用して前記フィルタリングされたスペクトルの最尤適合を実行して学習モード層厚を得るための最尤フィッタと、
を備えた学習モードユニットと、
c)ランモードユニットであって、
前記学習モードユニットによって見出されたピーク周波数に対応する領域に探索を制限しながら、前記スペクトルを探索して前記スペクトル内のピーク周波数を見出すために、前記スペクトルアナライザに関連付けられたピーク検出器と、
前記ピーク周波数付近の前記スペクトルをフィルタリングするために、前記ピーク検出器に関連付けられた周波数フィルタと、
前記学習モードユニットによって得られた前記パラメータを使用して前記フィルタリングされたスペクトルの最尤適合を実行して前記ウェハ生産ラインのための管理信号として使用できる前記層厚を得るための最尤フィッタと、
を備えたランモードユニットと、
を備えて成る装置。
【請求項25】
前記高分解能スペクトルアナライザは、前記入力スペクトルアナライザによって得られた分解能より高い分解能で新しいスペクトルを構成することによって、前記パラメータを得るように動作可能である請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記測定ユニットは、所定のステーションでプロセシングの前、途中、および後に厚さ測定を行なうように配置される請求項24に記載の装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【公表番号】特表2006−504092(P2006−504092A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546350(P2004−546350)
【出願日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【国際出願番号】PCT/IL2003/000888
【国際公開番号】WO2004/038321
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(505158345)テヴエト プロセス コントロール テクノロジーズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】