説明

視力矯正用回折レンズ

光を、2つ以上の回折次数に分割して、焦点距離または範囲を異ならせる第1の回折構造16と、多次数回折(MOD)構造とも呼ばれる、異なる波長の光を複数の異なる回折次数に回折して、共通の焦点距離または範囲にする第2の回折構造17とを有するレンズボディ14上の、視力矯正用回折レンズ。二焦点用途において、該第1及び第2の回折構造16、17は、相まって、該レンズの遠視力矯正のための基本度数と、近見視力矯正のための付加度数とを規定する。該第1の回折構造16は、ブレーズド(すなわち、鋸歯状)の、正弦波の、正弦波ハーモニック16a、方形波または他の形状プロファイルを有することができる。正弦波ハーモニック構造16aを有する多焦点レンズ10は、MOD構造17と伴う、または伴わずに、屈折基本度数を与えるように形成されたレンズボディ25の上にあってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視力矯正用の回折レンズに関し、特に、眼内レンズ(intraocular implants;IOLs)、コンタクトレンズまたはメガネ(眼鏡)レンズ等の、様々な視力矯正用途に用いるのに適した少なくとも遠視力及び近見視力の矯正における治療上の視力矯正のための回折レンズに関する。本発明は、さらに、そのような回折レンズを実現する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多次数回折(multiorder diffractive;MOD)レンズは、異なる波長の複数のスペクトル成分を共通の焦点に合わせるのに有用であり、米国特許第5,589,982号明細書に記載されている。MODレンズは、共通の焦点に対して、異なる波長の光を異なる回折次数に屈折させる、段差高さ画成ゾーン境界を有する多数の環状ゾーンからなる構造を有する。対照的に、非MODの多焦点回折レンズを介した、多数の異なる波長からなる視光は、異なる波長の光は異なる距離で焦点が合うため、ぼやけて見える可能性がある。MODレンズは、この問題を補正するが、治療用の二焦点矯正用眼科用レンズを実現するのに有用な、2つの異なる焦点距離、例えば、近くの及び遠くの焦点距離を備えていない。
【0003】
非MOD回折レンズは、所定の波長で異なる次数の光を異なる焦点距離に回折させる回折プロファイルを有する可能性がある。そのような非MOD多焦点回折レンズは、単一のレンズ面に設けることができ、または、1つのレンズの異なる面上に分割されたゾーンを有してもよい。非MOD多焦点レンズの実施例は、米国特許第5,017,000号明細書、同第5,144,483号明細書、同第3,004,470号明細書、同第4,340,283号明細書及び同第4,210,391号明細書に記載されている。また他の非MOD多焦点レンズは、米国特許第5,117,306号明細書にあるような、色収差を補正する追加的な非MOD回折面を有する。
【0004】
非MOD多焦点回折レンズを用いる実際の眼科用二焦点用途を実現するために、遠視力補正用レンズに、屈折力を付加することができる。屈折/回折複合型レンズは、例えば、米国特許第5,229,797号明細書、同第5,104,212号明細書、同第6,120,148号明細書、同第5,760,871号明細書及び同第5,116,111号明細書に記載されている。それらの屈折/回折ハイブリッドレンズは、レンズ本体に曲率を付加するのに必要な追加的なレンズ材料により、非屈折回折レンズよりも厚い。しかし、コンタクトレンズやIOL等の治療用途においては、多くの場合、厚さの低減が望ましい。従って、遠視力の矯正に対して屈折力に依存することなく、回折構造を用いることができる二焦点用途のための回折眼科用レンズを提供することが望ましいであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の特徴は、2つの回折構造が、遠視力矯正のための基本的な度数と、近見視力矯正のための追加的な度数とを有する遠近両用レンズを実現できる、多次数回折構造(MOD)及び非MOD回折構造を用いる回折レンズを実現できることである。
【0006】
本発明の別の特徴は、コンタクトレンズ、眼内レンズ及びメガネレンズを含む様々な視力矯正用途に適応することができる少なくとも近見視力及び遠視力の矯正のための回折レンズを実現できることである。
【0007】
本発明のさらなる特徴は、非MOD回折構造を、調和的であり、かつ鋭いエッジがないものとすることができる、MOD構造及び非MOD回折構造を有する視力矯正用回折レンズを実現できることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
簡単に説明すると、本発明は、本明細書において、波面分割回折構造(wavefront splitting diffractive structure;WSD)と呼ぶ、異なる焦点距離または範囲に対して、光を2つ以上の回折次数に分割する第1の回折構造と、本明細書において、多次数回折構造(MOD)と呼ぶ、共通の焦点距離または範囲に対して、異なる波長の光を、複数の異なる回折次数で回折させる第2の回折構造とを有するレンズを具現する。該第1の回折構造と第2の回折構造は、少なくとも遠視力及び近見視力矯正を伴うレンズを協働して形成する。該第1及び第2の回折構造は、同じ面に一体化することができ、または、該レンズの異なる面に設けることもできる。すなわち、該レンズに入射する光は、該レンズにおけるそのような構造の次数により、該第1の回折構造によって回折され、その後、該第2の回折構造によって回折され、逆もまた同様であり、あるいは、該第1の回折構造と第2の回折構造とを組合わせたプロファイルを有するレンズの単一の回折構造によって回折される。
【0009】
上記WSD構造は、異なる焦点距離または範囲に対して、2つ以上の次数で高回折効率を有する何らかの回折面とすることができる。例えば、該WSD構造は、ブレーズド(すなわち、鋸歯状)、正弦波、正弦波ハーモニック、方形波、または他の形状のプロファイルを有することができる。
【0010】
二焦点用途の場合、上記WSD構造は、その回折次数の各々に対して、2つの異なる屈折力を有し、上記MOD構造は、1つの屈折力である。上記レンズの基本的な度数は、その次数のうちの1つにおける、該MOD構造の屈折力と該WSD構造の屈折力との組合せによって与えられ、該レンズの追加的な度数は、その他の次数における、該MOD構造の度数と、該WSD構造の度数との組合せによって与えられる。
【0011】
三焦点用途の場合、上記WSD構造は、近見矯正と遠視力矯正との間の中間距離視力矯正のために、上記MOD構造の度数と組合わせた場合に、中間度数を付加する3つの回折次数を有する。3つ以上の異なる次数を、3つ以上の視力矯正距離を有する多焦点用途におけるWSD構造に同様に設けることができる。
【0012】
必要に応じて、基板またはコーティング等の光学要素を、円滑な外面を形成するために、該MOD構造を有する面に設けてもよい。
【0013】
上記レンズのMOD構造は、この構造に入射する光が、そこで光移相を受けるゾーン境界を画成し、mの大きさが、同じ焦点に対して1以上になるような異なる回折次数mにおける各波長の光を回折する、多数のゾーンによって特徴付けられる。該ゾーンは、半径方向にrで離間しており、上記半径は、等式φ(r)=2πpjを解くことによって得られ、ただし、φ(r)は、回折レンズから出る波面の位相関数を表し、pは、複数の波長のうちの1つのゾーン境界における2π位相跳躍の数を表し、ただし、pは、1以上の整数である。該MOD構造は、米国特許第5,589,982号明細書により詳細に記載されている。
正弦波ハーモニックWSD構造は、上記ゾーンの各々の中で、及びゾーン間の境界で連続的である複数のゾーンを有する構造として画成され、それによって、典型的には、ブレーズド(すなわち、鋸歯状)の、または、方形波の回折構造の鋭いエッジを伴わないそのような構造を実現できる。該正弦波ハーモニックWSD構造のゾーンの各々は、〔数5〕で特徴付けられる半径方向配置を有することができる。
【0014】
【数5】

ただし、a及びφは、それぞれ、1〜jmaxの項jの有限数の振幅及び位相であり、ζは、該ゾーン内の0と1における、または0と1の間の部分位置である。
【0015】
本発明はさらに、レンズの必要とされる基本的な度数に従って、該レンズのためのMOD構造を選定した後、該レンズのための正弦波ハーモニックWSD構造を選定することにより、二焦点眼科用レンズを形成する方法を提供し、遠視力矯正のための基本的な度数と、近見視力矯正のための追加的な度数は、MOD構造とWSD構造の組合せに従う。三焦点または他の多焦点レンズも、近見視力矯正と遠視力の矯正との間の1つ以上の中間視力矯正距離のために同様に形成することができる。
【0016】
さらに、必要に応じて、上記レンズのMOD構造によって既に存在している基本的な度数を補足するために、または該基本的な度数に付加するために、屈折力を該レンズに付加してもよい。
【0017】
別法として、屈折力が、MOD構造の代わりに、該レンズの基本的な度数を与えてもよい。このような多焦点レンズは、正弦波ハーモニックWSD構造と、屈折基本度数を備えるように形成されたレンズボディとを有し、MOD構造を有していない。
【0018】
さらに、その1つ以上の回折構造内のレンズによって、および/またはそのような回折構造を有する1つ以上の面に屈折曲率を付加することにより、乱視を矯正することができる。
【0019】
本発明のレンズは、コンタクトレンズ、メガネレンズ、または、眼内レンズ、あるいは、眼の視力矯正に役立つ他の光学素子等の様々な眼科用途に用いることができる。コンタクトレンズ用途においては、WSD構造のエッジが円滑であるため、該構造を、眼(または、まぶたの内側)に接触するレンズの表面に直接設けることができ、その結果、コンタクトレンズの使用者が、鋭いエッジの存在によって引き起こされるであろう不快な刺激を伴うことなく、快適に身に着けることができるので、正弦波ハーモニックである該WSD構造を用いることが有利である。さらに、そのような正弦波ハーモニックWSD構造を有するレンズは、コーティングまたは基板の追加によって、表面を滑らかにする必要がないため、容易に製造することができ、また、適用コストを低くすることができる。
【0020】
また、本発明は、眼科用用途または非眼科用用途において、少なくとも1つの正弦波ハーモニック回折構造を有する回折光学要素を具現することができる。
【0021】
本発明の上記の特徴及び効果は、添付図面と共に以下の説明を読めば、より明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1A、図1B及び図1C参照すると、単一の要素であるレンズボディ14の両面に前面12及び裏面13を有するレンズ10が示されている。前面12は、WSD構造16を有し、裏面13は、MOD構造17を有する。WSD構造16及びMOD構造17の環状ゾーンまたは領域の実施例は、それぞれ、図1A及び図1Bに示されている。レンズボディ14の曲率は、ゼロまたはゼロに近い屈折力を生成し、その結果、IOL用途で接触するレンズは、非常に薄く、例えば、0.2〜0.8mm厚で形成することができる。レンズ10の直径は、その特定の眼科用途、コンタクト、IOLまたはメガネによる。IOLにおけるレンズは、例えば、米国特許第6,406,494号明細書、6,176,878号明細書、5,096,285号明細書または米国特許出願公報第2002/0120329A1号明細書、同第2002/0016630A1号明細書、同第2002/0193876A1号明細書、同第2003/0014107A1号明細書または同第2003/0018385A1号明細書に記載されているような典型的なIOLsとして、追加的な触覚または支持構造を有してもよく、あるいは、米国特許第4,769,033号明細書に示されているような典型的な触覚構造を伴わなくてもよい。別法として、WSD構造16は、図1Dに示すように、WSD構造16が裏面13に、MOD構造17が前面12にあってもよい。
【0023】
MOD構造17は、本明細書に参照により組み込まれる米国特許第5,589,982号明細書に記載されている。該MOD構造は、レンズの使用者の目による遠視力矯正のための基本的な度数を主にまたは全体的に与える段差高さを備えるゾーンを有する。
【0024】
WSD構造16は、MOD構造17と共に、レンズの使用者の眼による近見視力矯正のためのレンズ10の追加的な度数を与える。(主要デザイン波長において)2以上の次数で高回折効率を有するWSD構造を実現できるどのような回折面も用いることができる。例えば、該WSD構造は、ブレーズド(すなわち、鋸歯状)、正弦波、正弦波ハーモニック、方形波、または他の形状のプロファイルを有することができる。正弦波ハーモニックWSD構造は、図10A〜図18と共に、より詳細に説明する。
【0025】
レンズ10は、コンタクト、IOLの光学部またはメガネの製造に典型的に用いられる透過性材料(例えば、プラスチック、シリコーン、ガラス、または特定のコンタクト、IOL、またはメガネ用途に典型的に用いられるポリマー)で構成することができる。エッチング、成形またはダイレクトダイヤモンドターニング等の、回折光学面を形成する典型的なプロセスは、該レンズのそれぞれの面上に、MOD構造及びWSD構造のゾーンを形成することができる。例えば、ニューハンプシャー州、KeeneのPrecitech,Inc.の超精密切削加工旋盤を、レンズ表面に沿って所望のプロファイルを形成するために、基板レンズ材料上の本明細書に記載したいずれかの回折構造を機械加工するのに、または、該レンズを製造する際に、そのような回折構造の複製を(例えば、成形により)可能にするマスタリングツールを製造するのに用いることができる。
【0026】
眼科用途により、回折面を有するレンズ10の面に沿った外側面は、滑らかにする必要がある可能性がある。従って、滑らかな外側面19を有する光学要素18は、図1C及び図1Dのレンズの場合、それぞれ、図2A及び図2Bに示すように、レンズ10の裏面13と一体化され、または、図1C及び図1Dのレンズの場合、それぞれ、図3A及び図3Bに示すように、レンズ10の前面12と一体化される。光学要素18は、レンズ10の材料の屈折率とは異なる屈折率を有する光学的に透過性の材料(例えば、プラスチック、シリコーン、ガラスまたはポリマー)からなる基板または(塗布されたまたは硬化した)コーティングとすることができ、その結果、光は、該レンズの回折構造によって適切に回折することができる。光学要素18は、レンズ10に取付けられるときに、当該面に対向するために、該回折面の逆のプロファイルで形成された面20を有する。そのため、光学要素18が基板に相当する場合、その面20は、接合され(例えば、液状接着剤)、結合され、または他の方法で一緒にシールされたとき、そのような回折構造面と一致する。
【0027】
その他の眼科用途においては、レンズ10の両面の外側面は、滑らかにする必要がある可能性がある。この場合、図1C及び図1Dのレンズの前面12及び裏面13は、それぞれ、図4A及び図4Bに示すように、光学要素18a及び18bと一体化してもよい。各光学要素18a及び18bは、それぞれ、各々の回折構造面と対向する、滑らかな外側面19a及び19bと、面20a及び20bとを有する。必要に応じて、図2A、図2B、図3Aまたは図3Bの光学要素18の外側面19、または、図4A及び図4Bの光学要素18a及び18bの面19a及び19bは、眼科用途に適する滑らかな面を得るために、処理(例えば、切断および/または研磨)する必要がある可能性がある。回折面プロファイルに滑らかな面を与えるための光学要素18、または18a及び18bの一体化は、例えば、米国特許第5,129,718号明細書、同第5,760,871号明細書または同第5,104,212号明細書に、あるいは、米国公開出願第2001/0018012号明細書に記載されているようにすることができる。
【0028】
二焦点視力矯正を実現できるように組合わせたMOD構造及びWSD構造を有するレンズ10を、以下の2つの実施例で説明する。
【実施例1】
【0029】
この実施例において、眼科用レンズの処方は、近見視力のための+2ジオプター(diopter;D)の付加度数を用いた、遠視力のための−7ジオプターの矯正を要する。すなわち、該レンズの2つの度数(φで示す)は、
φdistance=−7D
φnear=−5D(=−7D+2D=φdistance+φadd
上記レンズは、レンズボディ14を形成する薄い基板の一方の側に(すなわち、面12または13に沿って)所要の遠視力を有するMOD構造17と、他方の側(または面)に、主に0〜+1の次数で機能するブレーズド面を有するWSD構造16とからなる。
【0030】
上記MOD構造の回折ゾーンの半径方向位置(r)は、
【0031】
【数6】

によって与えられる。
[φ=1/Fの場合、組み込まれる米国特許第5,589,982号明細書の等式(1)を参照]
この実施例において、選択された設計波長λ=555nm(明所視応答のピーク)である。明所視応答とは、高照度下での光の波長の人の目の知覚の効率を指す。p=10の場合、上記MOD構造の場合の10mmのクリアな開口直径内のゾーン半径は、
・MOD構造(−7D)
【0032】
【表1】

該ゾーンの高さ(h)は、
【0033】
【数7】

によって与えられる。
[上記の組み込まれる特許の等式(4)を参照]
ただし、pは、上記の組み込まれる米国特許で論じられているMOD構造のMOD番号であり、nlensは、レンズボディ材料の屈折率であり、nmediumは、空気または基板18、18aまたは18b等の媒質の屈折率である。
【0034】
該レンズが空気中にある場合、nmedium(λ)=1.0である。また、該レンズが、nlens(λ)=1.5の屈折率を有する材料で構成されている場合には、hの高さ=11.1μmとなる。別法として、該レンズのMOD構造面が、屈折率nmedium(λ)=1.336の媒質に対向する場合、該ゾーンの高さは、h=33.84μmに増加する。
【0035】
レンズボディ14を形成する基板の他方の側(または、面)上のWSD構造は、付加度数φaddに等しい度数を有する。そのため、該回折ゾーンの半径方向位置は、
【0036】
【数8】

となる。10mmのクリアな開口直径内のゾーン半径は、
・波面分割構造(+2D)
【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

上記WSD構造の場合のゾーンの高さは、光路差(OPD)の波長の2分の1の最大値が導入されるように選択される。このことは、0及び+1の両方の回折次数において、40.5%の回折効率をもたらす。次数0は、該MOD構造と相まって(該WSD構造は、該レンズに度数を付加しないため)遠方のイメージを生成し、一方、次数+1は、該MOD構造と相まって、近くのイメージを生成する。該ゾーンの高さは、
【0039】
【数9】

である。上記レンズが空気中にある場合、nmedium(λ)=1.0である。また、該レンズが、nlens(λ)=1.5の屈折率を有する材料で構成されている場合、h=0.555μmとなる。別法として、該レンズが、nmedium(λ)=1.336の屈折率の媒質中にある場合には、該ゾーンの高さは、h=1.69μmに増加する。
【実施例2】
【0040】
この実施例は、実施例1と同じ眼科処方(+2Dの付加度数を用いた、−7Dの遠視力)を有するが、方形波回折面を有するWSD構造16を用いる。
【0041】
方形波面は、各ゾーンの半分に対して光路差(OPD)の2分の1波長(または、等価的に、πラジアンの位相シフト)を導入し、該ゾーンの残りの半分に対して、ゼロのOPDを導入する。方形波回折面は、+1〜−1の回折次数において、かなりのエネルギを有するため、この場合におけるMOD構造の度数は、φMOD=−6Dであり、方形波WSD面の度数は、φSQW=+1Dである。その結果として生じる総レンズ度数は、前の実施例と同様に、
φdistance=φMOD−φSQW=−6D−1D=−7D
φnear=φMOD+φSQW=−6D+1D=−5D=φdistance+φadd
該MOD構造の回折ゾーンの半径方向位置(r)は、
【0042】
【数10】

で与えられる。ここでもまた、選定される設計波長は、λ=555nm(明所視応答のピーク)である。p=10の場合、上記MOD構造の場合の10mmのクリアな開口直径内の該ゾーンの半径は、
・MODレンズ(−6D)
【0043】
【表4】

該レンズが空気中にある場合、nmedium(λ)=1.0である。また、該レンズが、nlens(λ)=1.5の屈折率を有する材料で構成されている場合、h=11.1μmとなる。別法として、該レンズのMOD構造面が、nmedium(λ)=1.336の屈折率の媒質に対向する場合、該ゾーンの高さは、h=33.84μmに増加する。
【0044】
レンズボディ14を形成する基板の他方の側(面)上の方形波WSD構造16の回折ゾーンの半径方向位置は、
【0045】
【数11】

である。10mmのクリアな開口直径内のゾーン半径は、
・方形波回折面(±1D)
【0046】
【表5】

各回折ゾーンの半分に対する、方形波回折面の高さは、光路差(OPD)の波長の2分の1が導入されるように選択される。このことは、+1及び−1の両方の回折次数において、40.5%の回折効率をもたらす。次数−1は、該MOD構造と相まって、遠方のイメージを生成し、一方、次数+1は、該MOD構造と相まって、近くのイメージを生成する。該方形波の高さは、
【0047】
【数12】

である。上記レンズが空気中にある場合、nmedium(λ)=1.0である。また、該レンズが、nlens(λ)=1.5の屈折率を有する材料で構成されている場合、h=0.555μmとなる。別法として、該レンズの方形波回折面が、nmedium(λ)=1.336の屈折率の媒質に対向する場合、方形波の高さは、h=1.69μmに増加する。
【0048】
図5A〜図5Fを参照すると、レンズ10の異なるものの場合の光線図の実施例が示されている。眼科用途においては、これらの図は、例えば、メガネ(すなわち、該目から一定距離のレンズ10)、IOL(すなわち、該眼内のレンズ10)、または、コンタクト(すなわち、角膜の外側面上のレンズ10)の場合のような目の光学系も含むことになる。図5A〜図5Dは、同じ二焦点処方であるが、異なる次数を形成するための、異なる度数のWSD構造及びMOD構造の使用を示す。図5Aにおいて、該レンズは、次数+1で−5Dの近見(付加)度数と、ブレーズドプロファイル(0,+1次数)を有する+2D度数のWSD構造16及び−7D度数のMOD構造17から生じる0次数での−7D遠視(基本)度数とを有する。図5Bにおいては、該レンズは、ブレーズドプロファイルを有する−2D度数のWSD構造16と、−5D度数のMOD構造17とを有する。別の実施例においては、図5Cのレンズは、+2D度数のWSD構造16及び+4D度数のMOD構造17を用いて、0次数で+4Dの遠視(基本)度数と、+1次数で+6Dの近見(付加)度数とを実現できる。図5Dのレンズは、−2D度数のWSD構造16及び+6D度数のMOD構造17を用いて、+1次数で+4Dの遠視(基本)度数と、0次数で+6Dの近見(付加)度数とを実現できる。図5E及び図5Fは、それぞれ、方形波プロファイル(+1,−1次数)を備えるWSD構造16と、−6D及び+5D度数の異なる度数のMOD構造17とを有するレンズ10を示す。図5Eのレンズは、+1次数で−5Dの近見(付加)度数と、−1次数で−7Dの遠視(基本)度数とをもたらす。図5Fのレンズは、−1次数で+4Dの遠視(基本)度数と、+1次数で+6Dの近見(付加)度数とをもたらす。従って、二焦点の近見(付加)及び遠視(基本)度数を実現できるMOD構造の度数を伴う、その回折次数の各々におけるWSD構造の度数の追加的な度数が存在する。該WSD構造によって、該レンズに入射する光の異なる波長は、レンズ設計波長に関する範囲内で、異なる距離で焦点が合うが、該WSD構造は、該MOD構造よりもかなり度数が弱いため、パフォーマンスはほとんど影響を受けない。換言すれば、レンズ10の付加度数及び基本度数は、該WSD構造により、該設計波長に関して、異なる可視波長でわずかに変化してもよい。
【0049】
これらの実施例が示すように、MOD構造と組合わせたときに、WSD構造面上の異なるプロファイル形状を選択することができ、該形状は、所望の基本度数に従って選択され、所望の近見及び遠視の視力矯正を伴う二焦点レンズ10を実現できる。実施例1及び実施例2は、それぞれ、図5A及び図5Eによる実施例のために図示されている。図5E及び図5Fのように、+1〜−1次数の光を分割する正弦波プロファイルも用いることができる。0及び+1の次数の分割の場合、WSD構造16の回折度数は、フル付加度数になり、+1及び−1の次数の分割は、この回折面が、近くのイメージ及び遠くのイメージの両方に対する度数に寄与するため、付加度数の半分になる。+1及び−1の分割を伴う回折面は、度数が、0及び+1の次数を有する回折面とは対照的に、各ゾーンにおいて小さいため、より大きくかつより少ないゾーンを有し、色収差の可能性が少ない。
【0050】
三焦点レンズは、正弦波プロファイルの変調度がわずかに変化して、+1、0及び−1の次数で等しいエネルギを生じるWSD構造16を選択することにより、レンズ10で形成することもできる。例えば、図6A及び図6Bは、それぞれ、−6D及び+5Dの異なる度数のMOD構造を有するそのようなWSD構造を示す。図6Aのレンズは、−1の次数で−7Dの遠視度数を、0の次数で−6Dの中間度数を、および+1の次数で−5Dの近視度数を実現できる。図6Bのレンズは、−1の次数で+4Dの遠視度数を、0の次数で+5Dの中間度数を、+1の次数で+6Dの近視度数を実現できる。3以上の次数を有するWSD構造は、二焦点または三焦点以外の他の多焦点レンズを形成するのに用いることができる。
【0051】
説明に役立つように、図1Cのレンズ10が図5A〜図5Dまたは図6A、図6Bに示されているが、図1D、図2A、図2B、図3A、図3B、図4A、図4B、図5A、図5B、図7Aまたは図7Bのレンズのうちのいずれかを、図5A〜図5Dまたは図6A、図6Bの実施例による各WSD及びMOD構造のための度数及びプロファイルの選択により、用いることができる。必要に応じて、レンズの使用者に対して異なる処方を提供するために、図5A〜図5Dまたは図6A、図6BのWSD構造及びMOD構造に対して、異なる度数を用いてもよい。これらの図及びその他の図における回折構造に示されているリングの数は例示的なものであり、異なる数のリング、間隔及び高さを用いてもよい。
【0052】
好ましくは、レンズ10は、わずかな屈折力を有し、または、屈折力を有していない。必要に応じて、図7に示すように、レンズ10aのレンズボディ14aに曲率を付加することにより、屈折度数を与えてもよい。レンズ10aは、WSD構造16及びMOD構造17が、それぞれ、前面12a及び裏面13aに設けられている点で、レンズ10と同様である。別法として、WSD構造16及びMOD構造17は、それぞれ、裏面13a及び前面12aに設けてもよい。光学要素18は、前述したように、レンズまたはレンズ系に1つまたは2つの滑らかな外面を設けるために、レンズ10の一方の面または両面に一体化してもよい。
【0053】
レンズ10aの屈折力は、MOD構造17及びMOD構造16と相まって、遠視力矯正のために、該レンズの基本度数に影響を及ぼす。該MOD構造は既にレンズ10aの基本度数に寄与しているため、必要な屈折力の量は、従来のハイブリッド屈折回折レンズの場合のように、レンズに該MOD構造がない場合よりもかなり少ない。従って、レンズ10よりも厚いレンズ10aは、MOD構造17を用いることにより、MOD構造を伴わない、等しい度数の屈折力を有する回折レンズよりもかなり薄く作ることができる。
【0054】
図8A〜図8Cについて説明すると、WSD構造16とMOD構造17は、組合わせて、レンズ10の面22に沿った単一の回折構造21とすることができ、図8Aは、該レンズの前面に沿った面22を示し、図8Bは、該レンズの裏面のこの面を示す。前述したように、滑らかな外面19を形成するために、光学要素18を回折構造21と一体化してもよい。好ましくは、図8A〜図8Cのレンズ10は、小さな屈折力を有し、あるいは、屈折力を有していないが、必要に応じて、図9に示すように、曲率をレンズボディ14bに付加して、レンズ10bを形成してもよい。図9においては、レンズ10bが、滑らかな面19cを備えた光学要素18cと共に示されており、光学要素18cは、回折構造21と一体化されている。しかし、レンズ10bは、光学要素18cなしで形成してもよい。回折構造21は、MOD構造17に付加されたWSD構造16の重ね合わせに相当し、逆もまた同様である。すなわち、例えば、図5A〜図5F及び図6A、図6Bの同じ処方は、単一の面22を用いて提供することができる。
【0055】
光学要素18(図2A、図2B、図3A、図3B及び図8C)は、レンズ10と一体化すると、レンズ10の一部になり、同様に、図4A及び図4Bの光学要素18a及び18bは、レンズ10と一体化すると、レンズ10の一部になる。また、図9の光学要素18cは、レンズ10bに一体化すると、該レンズの一部になる。レンズ10、10a及び10bは、それぞれ、単一要素のレンズボディ14、14a及び14bとして図示されているが、該レンズボディは、単一の要素であってもよく、または、一緒に一体化された多数の光学要素で構成してもよい。さらに、これらの図においては、光学要素18、18a、18b及び18cに対して単一の層が図示されているが、該層は、光学要素(例えば、基板および/またはコーティング)からなる単一の層または多数の層であってもよい。
【0056】
例えば、米国特許第5,016,977号明細書に記載されている1つ以上のWSD構造16、MOD構造17または回折構造21での非円形ゾーン(双曲線または楕円形)の使用により、レンズ10、10a、および10bにおいて乱視も矯正することができる。この場合、該ゾーンの間隔は、上記の実施例1及び実施例2に示されているような同じ寸法ではなく、該レンズの水平方向の寸法と垂直方向の寸法が異なっている。該レンズは、そのような回折構造を備える1つ以上の面のプロファイルに屈折曲率を付加することにより、乱視も矯正することができる。別法として、または、さらに、乱視は、典型的な屈折レンズで用いられるようなレンズボディ内での屈折により、レンズ10、10a及び10bで矯正することができる。
【0057】
上述したように、WSD構造16は、正弦波ハーモニック(または、周期的な)回折構造、特定の種類のまたはクラスの正弦波プロファイル波面分割回折構造とすることができる。(以下において、余弦の項で説明しているが、上記面は、正弦および/または余弦の項で等価的に表すことができる。)図10A、図10B及び図10Cは、それぞれ、図1A、図1B及び図1Cと同様であるが、正弦波ハーモニックWSD構造16により、レンズ10の前面にWSD構造16が形成され、かつ該レンズの裏面にMOD構造17が形成されている該レンズの実施例を示す。別法として、WSD16a及びMOD17は、それぞれ、該レンズの裏面及び前面にあってもよい。該正弦波ハーモニックWSD構造は、図10Cに最も良く示されているように、ゾーン内に、およびゾーン間の境界に沿って、連続する滑らかに変化する回折波面分割面を形成し、該面の高さのスケールは、説明のため合っていない。このことは、(図1CのWSD16に実施例として最も良く示されているような)ブレーズド回折構造からなる断続的なゾーン境界または方形波回折構造とは対照的に、急でないゾーン間の境界(または、変わり目)をもたらす。
【0058】
好ましくは、多焦点レンズ10において、正弦波ハーモニックWSD構造16aは、+1、−1または+1、0、−1の回折次数で付加度数を与える。例えば、該正弦波ハーモニックWSD構造は、実施例2で説明したような、+1、−1の次数を有する方形波WSD回折構造の代わりに用いることができる。他の回折次数も、該正弦波ハーモニックWSD構造によって与えることができる。従って、該正弦波ハーモニックWSD構造は、図2A、図2B、図3A、図3B、図4A、図4B、図8A、図8Bまたは図8Cのレンズ10に、あるいは、それぞれ、図7及び図9のレンズ10a及び10bを形成する際に用いることができる。該正弦波ハーモニックWSD構造は、特に、連続的で、滑らかに変化する面が好ましい場合に、本発明のレンズを形成する際に有用である。次に、該正弦波ハーモニックWSD構造を表す光学式について説明する。
【0059】
上記正弦波ハーモニックWSD構造は、複数のゾーンzを有し、この場合、各ゾーンは、一般に、余弦の項の有限数の合計を表す次の等式によって記述される半径方向の位置を有する。
【0060】
【数13】

ただし、a及びφは、それぞれ、j次のハーモニックの項の始点(ζ=0)における振幅及び位相であり、ただし、jは、1〜jmaxの整数である。ζは、回折ゾーン内の分数位置(0<ζ<1)であると考えることができる。該面は、
【0061】
【数14】

等により、各ゾーン内で、およびゾーン間の境界において、連続的であり、かつ連続的に微分可能である。
【0062】
個々の余弦の項は周期的であるため、この面を表す他の等価的方法がある。他の表現は、用途により、より有用である可能性がある。例えば、(周期Lを有する)線形の一定の周期の格子は、
【0063】
【数15】

として書き表すことができ、ただし、格子周期νは、ν=1/Lである。
【0064】
回転対称回折レンズ(DOE)は、通常、rでの度数級数、径方向座標、例えば、
【0065】
【数16】

からなる位相関数によって表される。上記の等式において、λは、設計波長と呼ばれている。この場合、上記面は、等式
【0066】
【数17】

によって与えることができる。上記表面曲率または凹形曲線zによって表される該面が、プラスチックまたは空気等の、Δnで与えられる屈折率の変化で2つの媒質を分離する場合、該要素の場合の透過関数は、位相関数
【0067】
【数18】

である。zの周期性は、膨張係数
【0068】
【数19】

を用いて、t(ζ)をフーリエ級数
【0069】
【数20】

として展開することができることを意味する。その結果、回折次数mにおける回折効率(η)は、
【0070】
【数21】

によって与えられる。従って、上記正弦波ハーモニック回折面は、所望の値の(または、できる限り所望の値に近い)特定のηが生成されるように、多数の項(jmax)を選定し、a及びφを見つけ出すことによって設計される。一般的に、このことは、減衰最小二乗またはシンプレックス等の数値最適化ルーチンを用いて行うことができる。これらの数値最適化ルーチンは、例えば、PressらのNumerical Recipes in C,Cambridge University Press,Ch.10,392〜455頁、1988〜1992に記載されている。数値最適化を実行するために、所望の回折効率に基づいて、適切な誤差関数(メリット関数、目的関数ともいう)が構成される。多くの誤差関数が可能であり、実例の1つは、
【0071】
【数22】

であり、ただし、ηは、次数mでの回折効率であり、
【0072】
【数23】

は、次数mでのターゲット(所望の)効率であり、Δηは、次数mの場合の効率に対する許容誤差である。該許容誤差は、誤差関数における重み係数として作用する。総計は、ターゲット効率で全ての次数mにわたる。最適化ルーチンは、Mの値を最小化しようとする。
【0073】
全ての回折光学要素で同様に、回折効率の分布は、個々のゾーンプロファイルの形態(すなわち、a及びφ)によって決まり、回折次数の配置は、該ゾーンの配置の詳細による。
【0074】
上記正弦波ハーモニック回折構造は、光路差(OPD)によって等価的に記述することができる。一般的に、表面プロファイルによってもたらされるOPDは、設計波長λを単位にして、
【0075】
【数24】

で与えられる。ただし、Δnは、該表面における屈折率の変化である。従って、該正弦波ハーモニック面の等価表現は、
【0076】
【数25】

の形式のOPD関数であり、ただし、
【0077】
【数26】

である。
【0078】
以下に、正弦波ハーモニックWSD構造の4つの実施例を、OPDにおけるWSD面のプロファイルを記載することによって説明する。それらの実施例は、光学設計ソフトウェアMATLABのバージョン7.0.4におけるfminsearch関数を用いて生成した。
(正弦波ハーモニックWSDの実施例1)
この実施例において、正弦波ハーモニックWSD構造は、等しい効率を有する2つの次数1及び−1を有し、jmaxの項の数は、9に等しくなるように選択されている。許容誤差Δη=Δη−1=0.1で、
【0079】
【数27】

のターゲット回折効率を用いると、η=0.392、η−1=0.392の回折効率が生じ、ただし、下付き文字は、回折次数を意味する。上述したOPD(ζ)の等式において、振幅及び位相は、次のようになる。
【0080】
【表6】

図11は、この実施例のプロファイルの単一の周期を示し、この場合、垂直軸は、上記面によってもたらされる波のOPDを示す。
【0081】
第1の(m=+1)次数において、+1ジオプター(D)の度数、マイナスの第1の次数(m=−1)において、−1ジオプター(D)の度数を用いて二焦点レンズを構成する際の、この面の使用を考察する。近軸度数Pを有する回転対称レンズは、位相関数
【0082】
【数28】

で表され、ただし、効率c=−P/2である。この実施例の場合、P=1及びD=0.001mm−1であるため、c=−0.0005mm−1である。λ=555nmの設計波長であり、かつn=1.4の屈折率である場合の、結果として生じる表面の凹形曲線を図12に示す(3mmのクリアな開口半径の場合)。
【0083】
この実施例の正弦波ハーモニックWSD構造は、+2Dの付加度数を伴う−7Dの遠視度数の眼科処方に対して、先の実施例(実施例2)のレンズのWSD構造として用いることができ、この場合、正弦波ハーモニックWSD構造は、+1及び−1の回折次数において等しい回折効率を有することが好ましい。
(正弦波ハーモニックWSDの実施例2)
この実施例において、正弦波ハーモニックWSD構造は、異なる効率を有する2つの次数1及び−1を有し、jmaxの項の数は、9に等しくなるように選択されている。許容誤差Δη=Δη−1=0.1で、
【0084】
【数29】

のターゲット回折効率を用いると、η=0.463、η−1=0.307の回折効率が生じる。上述したOPD(ζ)の等式において、振幅及び位相は、次のようになる。
【0085】
【表7】

図13は、この実施例のプロファイルの単一の周期を示し、この場合、垂直軸は、上記面によってもたらされる波のOPDを示す。
【0086】
前述の正弦波ハーモニックWSDの実施例1と同じ二焦点レンズのパラメータを用いた場合の結果として生じる面を図14に示す。この実施例の違いは、各次数の場合の2つのイメージが、先の実施例の等しい重みではなく、0.463:0.307の比で重みが付けられていることである。
【0087】
この実施例の正弦波ハーモニックWSD構造は、+2Dの付加度数を伴う−7Dの遠視度数の眼科処方に対して、先の実施例(実施例2)のレンズのWSD構造として用いることができ、この場合、ハーモニックWSD構造は、+1及び−1の回折次数において等しくない回折効率を有することが好ましい。
(ハーモニックWSDの実施例3)
この実施例において、正弦波ハーモニックWSD構造は、異なる効率を有する3つの次数1、−1及び0を有し、jmaxの項の数は、9に等しくなるように選択されている。許容誤差Δη=Δη−1=Δη=0.1で、
【0088】
【数30】

η〜=0.2のターゲット回折効率を用いると、η=0.396、η−1=0.296、η=0.198の回折効率が生じる。上述したOPD(ζ)の等式において、振幅及び位相は、次のようになる。
【0089】
【表8】

図15は、該プロファイルの単一の周期を示し、この場合、垂直軸は、上記面によってもたらされる波のOPDを示す。
【0090】
この面は、m=0の次数を有し、有用なイメージも生成する三焦点レンズとして使用することができる。該レンズの位相関数は、3つの度数、すなわち、+1D、0D及び−1Dを有するレンズをもたらす。λ=555nmの設計波長であり、かつn=1.4の屈折率である場合の、結果として生じる表面の凹形曲線を図16に示す(3mmのクリアな開口半径の場合)。
【0091】
この実施例のこの正弦波ハーモニックWSD構造は、図6A及び図6Bに関して上述したような三焦点レンズを形成するのに用いることができる。
(正弦波ハーモニックWSDの実施例4)
先の3つの正弦波ハーモニックWSDの実施例は、平坦な(平面の)基板上に実装した。また、屈折力を有する面、すなわち、湾曲面上で正弦波ハーモニック面を用いることも可能である。例えば、Plens=−5Dの屈折力を有するレンズについて考察する。該レンズの厚さが十分に小さい場合、薄いレンズの式を該レンズの度数に用いることができる。すなわち、
【0092】
【数31】

ただし、r及びrは、該面の曲率半径である。r=8mmという値が選択され、n=1.4のままである場合、上記の等式は、本発明者等の−5Dの実施例のレンズの場合のrを解くのに用いることができ、r1=8.889mmである。rに対して−5Dの基本屈折度数で正弦波ハーモニックWSDの実施例1に用いる面を適用すると、2つの度数、すなわち、−6D(−5 −1)及び−4D(−5 +1)を有する二焦点レンズが形成される。(小さな限定された厚さを有する)該レンズを図17に示し、前面24は、正弦波ハーモニックWSD構造であり、レンズボディ25は、基本度数を与える屈折曲率で形成され、裏面26は滑らかである。別法として、該裏面は、該ハーモニックWSD構造を有してもよく、該前面は滑らかである。この実施例においては、MOD構造は必要ない。(調波の項を有する)面24の凹形曲線を図18に示す。該面上の余弦的変動は、正弦波ハーモニックWSDの実施例1と同じであり(高さ約0.75μm)、図17に示すスケールでは見えない。
【0093】
従って、多次数能力を実現するため、上記正弦波ハーモニックWSD構造は、上記レンズの付加度数を与え、MOD構造または該レンズボディの屈折曲率のいずれかは、該レンズの基本度数を与える。さらに、該レンズの基本度数は、所望する場合には、MOD構造と、該レンズボディの屈折曲率との組合せによって与えてもよい。
【0094】
正弦波ハーモニック回折面を説明する際に、余弦項が示されているが、そのような項は、同等の面を定義するのに、正弦項であってもよく、あるいは、余弦項と正弦項の組合せでもよい。このことは、次の実施例ではっきり分かる。同じ振動数νの余弦及び正弦の合計を考察する。振幅は、a及びaであり、始点における位相は、φ及びφである。
【0095】
【数32】

これは、振幅a及び位相φの場合の単一の余弦(または、正弦)の項と等しい。このことは、上記の式と、
【0096】
【数33】

とを比較することによって理解することができる。cos(2πνx)及びsin(2πνx)の係数を平均化すると、
【0097】
【数34】

となる。(a、a、φ及びφがxとは無関係であることを思い起こしていただきたい)。
【0098】
及びφを解くと(各等式を二乗して加えてaを見つけて、等式を割ってφを見つける。)
【0099】
【数35】

すなわち、結果として生じる面が完全に同様である場合、余弦及び正弦の両方の項を用いることに対しては、利点はない。従って、上記正弦波ハーモニックWSD構造は、余弦および/または正弦の両方の項で表すことができるため、これまで、正弦波プロファイルのタイプまたはクラスと呼ばれる。
【0100】
上記正弦波ハーモニック回折構造の実施例によって示されているように、該エッジは、とりわけ滑らかであり、その結果、このような構造は、滑らかなエッジが望ましい眼科用途(例えば、コンタクトレンズ)または非眼科用途に有用である。さらに、1つ以上の正弦波ハーモニック回折構造は、MOD構造と共に、または、該MOD構造を伴うことなく、および上記ボディに沿った屈折曲率を伴って、または伴わずに、光学要素の該ボディに設けることができる。
【0101】
上記説明から、視力矯正用の回折レンズ及びそのようなレンズを形成する方法が提供されることがはっきりと理解できるであろう。本発明に従って、本明細書に記載したレンズにおける変更及び変形例は、間違いなく当業者が思いつくであろう。従って、上記の説明は、例示的なものとして取扱い、限定的な意味で取扱うべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1A】レンズの前面にWSD構造を、裏面にMOD構造を有する、本発明の第1の実施形態の多次数回折レンズの前面の平面図であり、前面のレンズ面上のWSD構造の環状領域を示す。
【図1B】レンズの前面にWSD構造を、裏面にMOD構造を有する、本発明の第1の実施形態の多次数回折レンズの裏面の平面図であり、裏面のレンズ面上のMOD構造の環状領域を示す。
【図1C】それぞれ前面及び裏面上のWSD構造及びMOD構造の側面プロファイルを示す、図1A及び図1Bのレンズを介した断面図である。
【図1D】WSD構造及びMOD構造が、それぞれ裏面及び前面上のプロファイルであり、図1A及び図1Bが、この代替的なレンズの裏面及び前面の図を表す、第1の実施形態の代替的なレンズの断面図である。
【図2A】滑らかな裏面を形成するために、レンズの裏面に一体化された光学要素の付加を伴う、図1Cのレンズの断面図である。
【図2B】滑らかな裏面を形成するために、レンズの裏面に一体化された光学要素の付加を伴う、図1Dのレンズの断面図である。
【図3A】滑らかな前面を形成するために、レンズの前面に一体化された光学要素の付加を伴う、図1Cのレンズの断面図である。
【図3B】滑らかな前面を形成するために、レンズの前面に一体化された光学要素の付加を伴う、図1Dのレンズの断面図である。
【図4A】滑らかな前面及び裏面を形成するために、レンズの前面及び裏面に一体化された光学要素の付加を伴う、図1Cのレンズの断面図である。
【図4B】滑らかな前面及び裏面を形成するために、レンズの前面及び裏面に一体化された光学要素の付加を伴う、図1Dの断面図である。
【図5A】二焦点用途の場合の、本発明のレンズの実施例の場合の光線図である。
【図5B】二焦点用途の場合の、本発明のレンズの実施例の場合の光線図である。
【図5C】二焦点用途の場合の、本発明のレンズの実施例の場合の光線図である。
【図5D】二焦点用途の場合の、本発明のレンズの実施例の場合の光線図である。
【図5E】二焦点用途の場合の、本発明のレンズの実施例の場合の光線図である。
【図5F】二焦点用途の場合の、本発明のレンズの実施例の場合の光線図である。
【図6A】三焦点用途の場合の、本発明のレンズの実施例に対する光線図である。
【図6B】三焦点用途の場合の、本発明のレンズの実施例に対する光線図である。
【図7】WSD構造を伴う第1の面と、MOD構造を伴う第2の面とを有し、レンズボディが、屈折力をレンズに与える曲率を有する、本発明の第2の実施形態の多次数回折レンズの断面図である。
【図8A】WSD構造とMOD構造とが、レンズの前面に沿って単一のプロファイルに結合され、裏面が回折構造を有していない、本発明の第3の実施形態の多次数回折レンズの断面図である。
【図8B】WSD構造とMOD構造とが、レンズの裏面に沿って単一のプロファイルに結合され、前面が回折構造を有していない、本発明の代替的な第3の実施形態の多次数回折レンズの断面図である。
【図8C】滑らかな裏面を形成するために、レンズの裏面に一体化された光学要素の付加を伴う、図8Bのレンズの断面図である。
【図9】レンズの裏面に沿って単一の回折構造に結合されたWSD構造及びMOD構造を有し、レンズボディが、レンズに屈折力を与える曲率を有し、滑らかな前面を形成するために、光学要素が、レンズの前面に一体化されている、本発明の第4の実施形態の多次数回折レンズの断面図である。
【図10A】連続する滑らかに変化するプロファイルを有する正弦波ハーモニックWSD構造がレンズの裏面に設けられている、図1A及び図1Bと同様の多次数回折レンズの前面の平面図である。
【図10B】連続する滑らかに変化するプロファイルを有する正弦波ハーモニックWSD構造がレンズの裏面に設けられている、図1A及び図1Bと同様の多次数回折レンズの裏面の平面図である。
【図10C】図10A及び図10Bのレンズを介した断面図である。
【図11】本発明のレンズのWSD構造の場合の、正弦波ハーモニック回折面の第1の実施例の期間0〜期間1の波の光路差(OPD)のグラフである。
【図12】鋭くない、すなわち、実質的に滑らかなエッジと、表面上のプロファイルの周期性とを示す、正弦波ハーモニック回折面の第1の実施例の表面曲率(凹形曲線)対半径方向位置の実施例のグラフである。
【図13】本発明のレンズのWSD構造のための正弦波ハーモニック回折面の第2の実施例の場合の、図11と同様のグラフである。
【図14】本発明のレンズのWSD構造のための正弦波ハーモニック回折面の第2の実施例の場合の、図12と同様のグラフである。
【図15】本発明のレンズのWSD構造のための正弦波ハーモニック回折面の第2の実施例の場合の、図11と同様のグラフである。
【図16】本発明のレンズのWSD構造のための正弦波ハーモニック回折面の第2の実施例の場合の、図12と同様のグラフである。
【図17】湾曲面の場合の正弦波ハーモニック回折面の実施例を有するレンズの断面図である。
【図18】図16の湾曲面に沿った正弦波ハーモニック回折面の第4の実施例の場合の、表面曲率(凹形曲線)対半径方向位置のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の面を有するレンズボディと、
異なる波長の光を2つ以上の回折次数に分割して、異なる焦点距離または範囲にする第1の回折構造と、
光を複数の異なる回折次数に回折して共通の焦点距離または範囲にする第2の回折構造であって、前記第1及び第2の回折構造が、前記第1及び第2の面の同じ面または異なる面に設けられている、前記第2の回折構造と、
を備え、前記第1及び第2の回折構造が相まって、少なくとも近見視力及び遠視力の矯正を実現できる、眼科用レンズ。
【請求項2】
前記第2の回折構造が第2の度数を有し、
前記第1の回折構造が、前記第1の回折構造の前記回折次数の各々による、少なくとも2つの異なる第1の度数を有し、
前記レンズが、前記第2の回折構造の前記第2の度数と前記第1の回折構造の前記第1の度数のうちの1つとの組合せによる、前記遠視力矯正のための基本度数を有し、
前記レンズが、前記第2の回折構造の前記第2の度数と前記第1の回折構造の前記第1の度数のうちの他方との組合せによる、前記近見視力矯正のための付加度数を有する、請求項1に記載のレンズ。
【請求項3】
前記第2の回折構造の前記第2の度数が、主に、または全体的に、前記第1の回折構造との前記組合せで、前記レンズの前記基本度数に寄与する、請求項2に記載のレンズ。
【請求項4】
前記第2の回折構造は、前記回折構造に入射する光が光学的位相シフトを受けるゾーン境界を画成し、かつ前記回折構造の場合の焦点距離または範囲に対して、mが1よりも大きくなるように、異なる回折次数で前記波長の各々の光を回折する、複数のゾーンによって特徴付けられる多次数回折構造に相当する、請求項1に記載のレンズ。
【請求項5】
前記レンズボディは、それぞれ、前記第1及び第2の面を形成する2つの側面を有し、前記第1の面は、前記レンズの前面に相当する前記側面の一方に沿っており、前記第2の面は、前記レンズの裏面に相当する前記側面の他方に沿っている、請求項1に記載のレンズ。
【請求項6】
前記レンズボディは、それぞれ、前記第1及び第2の面を形成する2つの側面を有し、前記第2の面は、前記レンズの前面に相当する前記側面の一方に沿っており、前記第1の面は、前記レンズの裏面に相当する前記側面の他方に沿っている、請求項1に記載のレンズ。
【請求項7】
前記レンズボディが、ゼロのまたはゼロに近い屈折力を有する、請求項1に記載のレンズ。
【請求項8】
前記レンズボディが、前記レンズに屈折力を与える、請求項1に記載のレンズ。
【請求項9】
光学要素をさらに備え、前記第1の面または前記第2の面の一方が、前記光学要素と一体化されており、前記光学要素が、前記レンズに滑らかな外面を提供する、請求項1に記載のレンズ。
【請求項10】
2つの光学要素をさらに備え、前記第1の面及び前記第2の面が、前記光学要素のうちの異なるものに一体化されており、前記光学要素が、前記レンズに滑らかな外面を提供する、請求項1に記載のレンズ。
【請求項11】
前記光学要素が、基板またはコーティングの一方に相当する、請求項9に記載のレンズ。
【請求項12】
前記光学要素が、それぞれ、基板またはコーティングの一方に相当する、請求項10に記載のレンズ。
【請求項13】
前記第1及び第2の回折構造が、前記第1または第2の面の一方に沿って、単一の回折構造に結合されている、請求項1に記載のレンズ。
【請求項14】
前記第1及び第2の面の前記一方に沿って、前記レンズと一体化された光学要素をさらに備える、請求項13に記載のレンズ。
【請求項15】
前記レンズが、眼内レンズの一部である、請求項1に記載のレンズ。
【請求項16】
前記レンズがコンタクトレンズに相当する、請求項1に記載のレンズ。
【請求項17】
前記レンズがメガネに相当する、請求項1に記載のレンズ。
【請求項18】
前記第1及び第2の回折構造のうちの少なくとも一方が乱視を矯正する、請求項1に記載のレンズ。
【請求項19】
前記第1及び第2の回折構造のうちの少なくとも一方が、乱視を矯正する屈折曲率を有する、請求項1に記載のレンズ。
【請求項20】
前記レンズボディが、単一の光学要素で構成されている、請求項1に記載のレンズ。
【請求項21】
前記レンズボディが、一緒に一体化された複数の光学要素で構成されている、請求項1に記載のレンズ。
【請求項22】
前記第1の回折構造が、前記第1の回折構造の次数の各々で実質的に等しい光エネルギを分割する、請求項1に記載のレンズ。
【請求項23】
前記第1の回折構造が、一定量の光を、前記第1の回折構造の次数の各々に与える、請求項1に記載のレンズ。
【請求項24】
前記第1の回折構造が、ブレーズド、正弦波、正弦波ハーモニックまたは方形波プロファイルのうちの1つを有する、請求項1に記載のレンズ。
【請求項25】
前記レンズボディが、IOL用途またはコンタクトレンズ用途に対して十分に薄い、請求項1に記載のレンズ。
【請求項26】
前記第1の回折構造が、光を2つの次数に分割し、前記第1及び第2の回折構造が相まって、前記レンズの二焦点のものに近見視力及び遠視力矯正を与える、請求項1に記載のレンズ。
【請求項27】
前記第1の回折構造が、光を3つの回折次数に分割し、前記第1及び第2の回折構造が相まって、前記レンズの三焦点のものに近見視力、中間視力及び遠視力矯正を与える、請求項1に記載のレンズ。
【請求項28】
前記第1の回折構造が、前記ゾーンの各々の中で、および前記ゾーン間の境界において、連続的である複数のゾーンを有する正弦波ハーモニック回折構造に相当する、請求項1に記載のレンズ。
【請求項29】
前記レンズがコンタクトレンズに相当し、前記第1の回折構造がその上に配設されている、前記第1及び第2の面のうちの前記一方が、使用者の眼に配置される前記レンズの面に相当する、請求項28に記載のレンズ。
【請求項30】
前記レンズは、前記第1の回折構造に前記眼を刺激する鋭いエッジがないため、前記使用者の眼に配置される際に、前記使用者によって快適に装着される、請求項29に記載のレンズ。
【請求項31】
前記第1及び第2の回折構造が、前記第1または第2の面のうちの一方に沿って、単一の回折構造に結合されている、請求項28に記載のレンズ。
【請求項32】
前記第1及び第2の面のうちの前記一方に沿って、前記レンズと一体化された光学要素をさらに備え、前記光学要素が、前記レンズに滑らかな外面を与える、請求項31に記載のレンズ。
【請求項33】
前記第1の回折構造が、複数のゾーンを有する回折構造であり、前記ゾーンの各々が、
【数1】

による位置を有し、ただし、a及びφが、それぞれ、1〜jmaxのjの項の有限数の振幅及び位相であり、ζが、前記ゾーン内の0と1の間の分数位置である、請求項28に記載のレンズ。
【請求項34】
光学要素をさらに備え、前記光学要素は、前記第2の回折構造がその上に配設されて滑らかな面が形成されている、前記第1及び第2の面のうちの前記一方と一体化されている、請求項28に記載のレンズ。
【請求項35】
前記光学要素が、基板またはコーティングの一方に相当する、請求項34に記載のレンズ。
【請求項36】
基本度数及び付加度数を有する二焦点眼科用レンズを形成する方法であって、
前記レンズの必要な基本度数に従って、光を複数の異なる回折次数に回折して共通の焦点距離または範囲にするために、前記レンズに対して第1の回折構造を選定するステップと、
光を2つ以上の回折次数に分割して異なる焦点距離または範囲にするために、前記レンズに対して第2の回折構造を選定するステップであって、遠視力矯正のための前記基本度数および近見視力矯正のための前記付加度数が、前記第1の回折構造と第2の回折構造との組合せによるものである、前記ステップと、
を備える、方法。
【請求項37】
前記レンズが、第1及び第2の面を有し、前記第1及び第2の回折構造が、前記第1及び第2の面の同じ面または異なる面に配設されている、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の回折構造は、前記回折構造に入射する光が光学的位相シフトを受けるゾーン境界を画成し、かつ前記回折構造の場合の焦点距離または範囲に対して、mが1以上であるように、異なる回折次数で前記波長の各々の光を回折する複数のゾーンによって特徴付けられる多次数回折構造に相当する、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記レンズが第1及び第2の面を有し、前記方法がさらに、
前記レンズの少なくとも一方の面に、前記レンズに滑らかな外面を与える光学基板を付加するステップを、
備える、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
ゼロまたはゼロに近い屈折力を有するように、前記レンズのボディを選定するステップをさらに備える、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
屈折力を有するように、前記レンズのボディを選定するステップをさらに備える、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記第1及び第2の回折構造のうちの少なくとも一方が乱視を矯正する、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記第1及び第2の回折構造のうちの少なくとも一方が、乱視を矯正するための屈折特性を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記第2の回折構造が、前記ゾーンの各々の中で、および前記ゾーン間の境界において、連続的である複数の前記ゾーンを有する正弦波ハーモニック回折構造に相当する、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
前記第2の回折構造が、複数のゾーンを有する回折構造であり、前記ゾーンの各々が、
【数2】

による位置を有し、ただし、a及びφが、それぞれ、1〜jmaxのjの項の有限数の振幅及び位相であり、ζが、前記ゾーン内の0と1の間の分数位置である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
第1及び第2の面を有するレンズボディと、
光を2つ以上の回折次数に分割して、異なる焦点距離または範囲にする第1の回折構造と、
光を複数の異なる回折次数に回折して共通の焦点距離または範囲にする第2の回折構造であって、前記第1及び第2の回折構造が、前記第1及び第2の面の同じ面または異なる面に設けられている、前記第2の回折構造と、
を備え、前記第1の回折構造と第2の回折構造とが相まって、異なる距離または範囲における視力矯正のための複数の異なる焦点距離または範囲を与える、光学要素。
【請求項47】
前記異なる焦点距離または範囲が、近見視力及び遠視力の矯正を有する二焦点レンズを形成する2つである、請求項46に記載の光学要素。
【請求項48】
前記異なる焦点距離または範囲が、近見視力、中間視力及び遠視力の矯正を有する三焦点レンズを形成する3つである、請求項46に記載の光学要素。
【請求項49】
前記第1の回折構造が、正弦波ハーモニック回折構造に相当する、請求項46に記載の光学要素。
【請求項50】
半径rを有し、異なる波長の光を2つ以上の回折次数に分割して異なる焦点距離または範囲にし、2つ以上の異なる度数を形成する正弦波ハーモニック回折構造を有するレンズボディを備える眼科用レンズであって、前記レンズボディが、前記レンズに屈折基本度数を与え、前記正弦波回折構造が、異なる振動数で、少なくともrで正弦的に変化する、レンズ。
【請求項51】
前記レンズボディが、光を複数の異なる回折次数に回折して共通の焦点距離または範囲にし、これによって、前記屈折光学度数を結合して、前記レンズの基本光学度数を与える、請求項50に記載のレンズ。
【請求項52】
前記正弦波ハーモニック回折構造が複数のゾーンを有し、前記ゾーンの各々が、
【数3】

による位置を有し、ただし、a及びφが、それぞれ、1〜jmaxのjの項の有限数の振幅及び位相であり、ζが、前記ゾーン内の0と1の間の分数位置である、請求項50に記載のレンズ。
【請求項53】
前記レンズが、眼内レンズの1つの一部であり、または、前記レンズが、コンタクトレンズまたはメガネに相当する、請求項50に記載のレンズ。
【請求項54】
前記レンズボディが、単一のまたは多数の光学要素によって形成されている、請求項50に記載のレンズ。
【請求項55】
複数のゾーンの各々が、
【数4】

による位置を有し、ただし、a及びφが、それぞれ、1〜jmaxのjの項の有限数の振幅及び位相であり、ζが、前記ゾーン内の0と1の間の分数位置である、前記複数のゾーンを有する、少なくとも1つの回折構造を備える、回折光学要素。
【請求項56】
前記構造が滑らかに変化している、請求項55に記載の回折光学要素。
【請求項57】
前記構造が、前記ゾーンの各々の中で、および前記ゾーン間の境界において、連続的であり、それによって、鋭いエッジを伴うことなく、前記構造を形成する、請求項55に記載の回折光学要素。
【請求項58】
前記回折構造が、光を少なくとも2つの回折次数に回折して、異なる焦点距離または範囲にする、請求項55に記載の回折光学要素。
【請求項59】
前記回折構造が、光を少なくとも2つの回折次数に回折して、異なる焦点距離または範囲にする第1の回折構造に相当し、前記回折光学要素が、光を複数の異なる回折次数に回折して、共通の焦点距離または範囲にする第2の回折構造をさらに備える、請求項55に記載の回折光学要素。
【請求項60】
前記回折構造を有するレンズボディをさらに備え、前記レンズボディが、屈折光学度数を前記光学要素に与えるように形成されている、請求項55に記載の回折光学要素。
【請求項61】
半径rを有し、異なる振動数で、少なくともrで正弦的に変化する回折構造を備える回折光学要素。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2008−511019(P2008−511019A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527898(P2007−527898)
【出願日】平成17年8月15日(2005.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/028848
【国際公開番号】WO2006/023404
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(505464947)アポロ オプティカル システムズ インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】