説明

視神経障害治療剤

【課題】一般式[I]で表される構造を有するウレア化合物の新たな薬理作用を見出すこと。
【解決手段】一般式[I]で表される構造を有するウレア化合物またはその塩類は、優れたTRPV1媒介性疾患治療作用を有する。式中、Aは低級アルキレン基または低級アルケニレン基を示し、;Rは水素原子、アルキル基またはアルケニル基を示し、該アルキル基およびアルケニル基は任意の置換基で置換されていてもよく;RおよびRは同一または異なって水素原子または低級アルキル基を示し、該低級アルキル基は単環式のシクロアルキル基、多環式のシクロアルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TRPV1特異的アゴニストを有効成分として含む視神経障害の治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
網膜は内境界膜、神経線維層、神経節細胞層、内網状層、内顆粒層、外網状層、外顆粒層、外境界膜、視細胞層および網膜色素上皮層の10層から成る、厚さ0.1〜0.5mmの組織であり、その中には視細胞、双極細胞、神経節細胞、水平細胞およびアマクリン細胞という網膜神経細胞が存在する。網膜神経細胞は光刺激を電気信号に変換して、脳へ伝達するといった視覚情報の受容と伝達において重要な役割を果たしている。
【0003】
その伝達メカニズムについて詳述すると、目から入った視覚情報は視細胞により電気信号化されて、水平細胞、双極細胞および/またはアマクリン細胞を経由した後に神経節細胞に伝達される。次いで、その電気信号は神経節細胞の軸索を含む視神経線維の束である視神経を経由して脳に伝達される。
【0004】
ところで、視神経(「網膜神経細胞」を含む。以下、同じ)が種々の原因により障害を受けると視神経の恒常性が維持できなくなり、視覚情報の脳への伝達が妨げられて、失明、視野狭窄といった視野障害を生じる。視神経を障害する原因は色々と考えられるが、主な原因としては、1)眼圧上昇、2)網膜血流循環障害・網膜虚血、3)興奮性アミノ酸上昇などが挙げられ、それらの病態に伴うグルタミン酸シグナルカスケードの活性化や網膜神経節細胞の軸索障害とそれらにつづく網膜神経細胞のアポトーシスにより、視神経が障害されるものと考えられている。
【0005】
視神経障害を伴う代表的な眼疾患として、緑内障に伴う視神経障害、緑内障症性視野狭窄、緑内障性視神経萎縮、緑内障性視神経症等の緑内障性疾患、網膜中心動脈閉塞症、網膜動脈分枝閉塞症、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、糖尿病性網膜症、黄斑変性、網膜色素変性症、未熟児網膜症、網膜剥離、網膜色素上皮剥離、レーベル病等の網膜疾患、虚血性視神経症等の虚血性障害が挙げられる。
【0006】
緑内障は、網膜神経節細胞死により特徴的な視神経乳頭陥凹と視野障害をきたす疾患である。緑内障には原発性開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、血管新生緑内障等の病型が存在するが、通常緑内障と言えば原発性開放隅角緑内障又は正常眼圧緑内障のことを言う。
【0007】
一方、血管新生緑内障は、その原因が通常の緑内障とは大きく異なる。血管新生緑内障は主として糖尿病網膜症に付随して生じる合併症である。糖尿病網膜症に由来する眼局所の虚血による酸欠状態により前眼部に血管新生が起こり、この新生血管が隅角を圧迫、閉塞させて眼圧の上昇を来す。通常の緑内障に前眼部の血管新生は寄与しないと考えられている。
【0008】
TRPV1はTransient Receptor Potentialスーパーファミリーに属する6回膜貫通領域を有するカルシウムイオン透過性の高い非選択性陽イオンチャンネルで、別名をバニロイド受容体1(VR1)またはカプサイシン受容体といい、唐辛子の辛味成分であるカプサイシン、およびカプサイシンの誘導体であるレジニフェラトキシンなどのバニロイドがTRPV1のアゴニストとして知られている。一方、TRPV1のアンタゴニストとしてはヨードレジニフェラトキシンやカプサゼピン等の化合物が知られている。
【0009】
TRPV1は主として感覚神経に存在しているが、上皮、骨、膀胱、消化管および肺をはじめ多数の内臓器官の神経組織のみならず非神経組織においても発現されている。
【0010】
酸(pH5.9以下)、熱(セ氏43度以上)などの侵害刺激によって活性化されることが知られており、TRPV1の活性化がもたらす生理的な作用は多岐にわたっている(非特許文献1参照)。
【0011】
一方、本発明における有効成分であるウレア誘導体は、TNF−α産生阻害作用を有し、関節リウマチ(RA)等の自己免疫疾患治療薬として使用できることが特許文献1に、前記ウレア誘導体が血管新生抑制作用を有し、固形腫瘍、腫瘍の増殖・転移、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障等の血管新生が関与する疾患の治療薬として使用できることが特許文献2に、前記ウレア誘導体が脱髄疾患モデルにおける治療効果を示し多発性硬化症等の脱髄疾患の治療薬として使用できることが特許文献3にそれぞれ記載されている。
【0012】
しかしながら、これらの特許文献に前記ウレア誘導体の緑内障に伴う視神経障害又は緑内障性視野狭窄の予防効果及び治療効果を示唆する記載はない。さらに、脱髄疾患として特許文献3に挙げられている多発性硬化症、ギラン・バレー症候群等の治療には副腎皮質ホルモンまたはその誘導体、例えばデキサメタゾンが用いられるが、一般に緑内障患者には副腎皮質ホルモンおよびその誘導体は禁忌であり、脱髄疾患の治療薬が直ちに緑内障に伴う視神経障害等の治療に有用であると考えることはできない。
【特許文献1】特開2002−53555号公報
【特許文献2】特開2003−226686号公報
【特許文献3】特開2006−143707号公報
【非特許文献1】戴毅・野口光一 医学のあゆみ 2004 Vol.211 No.5 pp389-392
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
TRPV1特異的アゴニストの新たな医薬用途を見出すこと、新規な緑内障治療薬として好適な化合物を探索すること、及び、公知のウレア誘導体の新たな医薬用途を見出すことは興味深い課題である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明者らは、医薬として有用な下記一般式[I]で示される公知のウレア誘導体(特開2002−53555)に着目した。一般式[I]で示されるウレア誘導体の一部は、TRPV1アゴニストであることが報告されている(Muraiら、European Journal of Pharmacology, in press, doi:10.1016/j.ejphar.2008.04.037)。本発明者らが一般式[I]で示されるウレア誘導体のTRPV1アゴニスト活性及び緑内障治療活性の探索研究を行ったところ、これらのウレア誘導体が、TRPV1特異的アゴニストであることを見出した。さらにこれらのウレア誘導体が、興奮性アミノ酸によって誘発される視神経の障害を抑制することを見出した。加えて、これらのウレア誘導体とは骨格が大きく異なり、かつ、TRPV1特異的アゴニストとして知られるカプサイシンにも興奮性アミノ酸誘発視神経障害の抑制作用があることを見出した。これらの作用から、TRPV1特異的アゴニストが視神経障害、特に緑内障に起因する視神経障害又は緑内障性視野狭窄の予防剤又は治療剤として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明は、TRPV1アゴニスト活性を有する化合物、好ましくは、TRPV1特異的アゴニスト活性を有する化合物、特に、下記一般式[I]で示される化合物またはその塩類(以下特記なき限り「本化合物」とする)、または、カプサイシンを有効成分とする、視神経障害、特に緑内障に起因する視神経障害又は緑内障性視野狭窄の予防剤又は治療剤に関するものである。
【化1】

【0016】

[式中、Aは低級アルキレン基または低級アルケニレン基を示し、;Rは水素原子、アルキル基またはアルケニル基を示し、該アルキル基およびアルケニル基は任意の置換基で置換されていてもよく;RおよびRは同一または異なって水素原子または低級アルキル基を示し、該低級アルキル基は単環式のシクロアルキル基、多環式のシクロアルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。]
TRPV1特異的アゴニスト活性を有する化合物、特に、上記一般式[I]で示される本化合物、または、カプサイシンは、興奮性アミノ酸によって誘発される視神経障害の抑制効果を有しており、視神経障害、特に緑内障に起因する視神経障害又は緑内障性視野狭窄の予防剤又は治療剤として有用である。
【0017】
一般式[I]で規定された各基について詳しく説明する。
【0018】
低級アルキレン基とはメチレン基、メチルメチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、トリメチレン基、メチルメチレン基、テトラメチレン基、メチルテトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基を示し、該アルキレン基は低級アルキル基で置換されていてもよく、すなわち分枝のアルキレン基であってもよく;好ましくは低級アルキレン基とは1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基を示し、該アルキレン基は単数または複数のメチル基で置換されていてもよく;さらに好ましくは、低級アルキレン基とは1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基を示し、1個のメチル基で置換されていてもよい。
【0019】
低級アルケニレン基とは、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基等の1個以上の二重結合を有し、2〜6個の炭素原子を有するアルケニレン基を示し、該アルケニレン基は低級アルキル基で置換されていてもよく、すなわち分枝のアルケニレン基であってもよく;好ましくは低級アルケニレン基とは2〜6個の炭素原子を有する直鎖アルケニレン基を示し、該アルケニレン基は単数または複数のメチル基で置換されていてもよく;さらに好ましくは、低級アルケニレン基とは2〜6個の炭素原子を有する直鎖アルケニレン基を示し、1個のメチル基で置換されていてもよい。
【0020】
アルキル基とはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソオクチル基、t-ブチル基、3,3−ジメチルブチル基等の1〜12個の炭素原子を有する直鎖または分枝のアルキル基を示す。
【0021】
低級アルキル基とは、アルキル基のうち、特に1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝のアルキル基を示し、好ましくは直鎖の1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を示す。
【0022】
アルケニル基とはビニル基、アリル基、3−ブテニル基、5−ヘキセニル基、イソプロペニル基等の2〜12個の炭素原子を有する直鎖または分枝のアルケニル基を示し、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝のアルケニル基であり、特に好ましくは2〜6個の炭素原子を有する直鎖のアルケニル基である。
【0023】
単環式のシクロアルキル基とは、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基等の3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基を示し、好ましくは5〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基を示し、より好ましくはシクロヘキシル基を示す。
【0024】
多環式のシクロアルキル基とは、アダマンチル基等の4〜10個の炭素原子を有する多環式シクロアルキル基を示し、好ましくは10個の炭素原子を有する多環式シクロアルキル基を示し、より好ましくはアダマンチル基を示す。
【0025】
アリール基とは、フェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素環を示し、好ましくはフェニル基を示す。
【0026】
ハロゲン原子とはフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示し、好ましくはフッ素原子を示す。
【0027】
任意の置換基とは、例えばハロゲン原子、トリハロゲノメチル基、低級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基またはメトキシ基を示し、好ましくはハロゲン原子、トリハロゲノメチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、フラニル基、チオフェニル基、チアゾリル基またはモルフォリノ基を示し、さらに好ましくはトリハロゲノメチル基を示す。
【0028】
本発明における塩類とは医薬として許容される塩であれば特に制限はなく、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩、酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸等の有機酸との塩、また、ナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩などが挙げられる。また、本化合物の第四級アンモニウム塩も本発明における塩類に包含される。さらに、本化合物に幾何異性体または光学異性体が存在する場合には、それらの異性体も本発明の範囲に含まれる。なお、本化合物は水和物または溶媒和物の形態をとっていてもよい。
【0029】
前記一般式[I]で示される化合物において、本発明の視神経障害の予防剤又は治療剤に用いられる好ましい化合物は、
1) Aが低級アルキレン基または低級アルケニレン基であり;
2) Rが低級アルキル基であり、該低級アルキル基は任意の置換基で置換されていてもよく;
かつ、
3) R2が水素原子であり、かつ、R3が単環式のシクロアルキル基、多環式のシクロアルキル基またはアリール基で置換された低級アルキル基であるか
または、
R3が水素原子であり、かつ、R2が単環式のシクロアルキル基、多環式のシクロアルキル基またはアリール基で置換された低級アルキル基である、
化合物である。
【0030】
前記一般式[I]で示される化合物において、本発明の視神経障害の予防剤又は治療剤に用いられるより好ましい化合物は、
1) Aが低級アルキレン基であり;
2) Rが低級アルキル基であり、該低級アルキル基は任意の置換基で置換されていてもよく;
3) R3が水素原子であり、
かつ、
4) R2が単環式のシクロアルキル基、または多環式のシクロアルキル基で置換された低級アルキル基である、
化合物である。
【0031】
ここで、該単環式のシクロアルキル基または多環式のシクロアルキル基で置換された低級アルキル基は、単環式のシクロアルキル基または多環式のシクロアルキル基で置換された直鎖の低級アルキル基であることが好ましい。
【0032】
前記一般式[I]で示される化合物において、本発明の視神経障害の予防剤又は治療剤に用いられるさらに好ましい化合物は、
Aがトリメチレン基またはメチルトリメチレン基であり;Rが直鎖低級アルキル基であり、該直鎖低級アルキル基は任意の置換基で置換されていてもよく;Rがアダマンチルエチル基またはアダマンチルプロピル基であり;かつ、Rが水素原子である、
化合物である。
【0033】
本発明による視神経障害の予防剤又は治療剤は、前記一般式[I]で示される化合物のうち、好ましい具体的化合物として、
1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−ペンチル−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア (化合物1)、
1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]−1−(3,3,3−トリフルオロプロピル)ウレア (化合物2)、
1−[3−(1−アダマンチル)プロピル]−1−プロピル−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア (化合物3)、
1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[1−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]−1−ペンチルウレア (化合物4)、
1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[2−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]−1−ペンチルウレア (化合物5)、
(+)−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[2−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]−1−ペンチルウレア (化合物6)、および、
(E)−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−ペンチル−3−[3−(4−ピリジル)−2−プロペニル]ウレア (化合物7)、
からなる群から選択される化合物またはその塩類を有効成分として含有する。
【0034】
上記化合物1〜7のうち、1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−ペンチル−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]ウレアを有効成分として含有する視神経障害の予防剤又は治療剤が特に好ましい。。
【0035】
本化合物に含まれる代表的な化合物の構造式を以下に示す。
【表1】

【0036】

本化合物は、例えば特開2002−53555号公報記載の方法によって製造できる。
【0037】
本化合物の有用性を調べるべく、まず、前述したMuraiらの報告に準じて本化合物がTRPV1アゴニストであることを確認した。詳細は後述の薬理試験の項に記載するが、本化合物はTRPV1を含む神経細胞膜標本に、公知アゴニストであるカプサイシンよりも高い結合親和性を示し、かつ、本化合物による神経細胞終末からの神経伝達物質の遊離促進作用はTRPV1アンタゴニストであるカプサゼピンによって拮抗された。これらの実験結果から、本化合物は優れたTRPV1アゴニストであることが示された。
【0038】
次に、本化合物がTRPV1特異的アゴニストであることを確認するために、TRPV1とのリガンドの交差性が知られる受容体に対する結合活性を確認した。本化合物はCB1受容体等の受容体に対して結合活性を持たず、TRPV1特異的アゴニストであることが示された。
【0039】
さらに、TRPV1特異的アゴニスト活性を有する化合物の新たな治療活性の探索を行った。本化合物またはTRPV1特異的アゴニストであることが報告されているカプサイシンの視神経保護作用をN−メチル−D−アスパラギン酸(以下、「NMDA」ともいう)誘発視神経障害モデルを用いて検討したところ、本化合物またはカプサイシンがNMDAによって誘発されるニューロフィラメント軽鎖(以下、NFLともいう)の発現量減少を回復させ、網膜神経細胞の細胞死を抑制し、優れた視神経障害の抑制効果を有することを見いだした。すなわち、本化合物およびカプサイシンに代表されるTRPV1特異的アゴニストは視神経障害、例えば、緑内障に起因する視神経障害、緑内障性視野狭窄、緑内障性視神経萎縮、循環不全並びに虚血性視神経障害、網膜血管閉塞症等の視神経障害を伴う疾患の治療剤として有用であり、特に緑内障に起因する視神経障害、緑内障性視野狭窄又は緑内障性視神経萎縮等の緑内障性疾患の予防剤又は治療剤として有用であり、正常眼圧緑内障に伴う視神経障害、正常眼圧緑内障に伴う緑内障性視野狭窄又は正常眼圧緑内障に伴う緑内障性視神経萎縮の予防剤又は治療剤として特に好適に使用される。また、本化合物およびカプサイシンに代表されるTRPV1特異的アゴニストは、網膜神経細胞、特に網膜神経節細胞の軸索輸送障害の改善剤、網膜神経細胞死、特に網膜神経節細胞の抑制剤、又は、網膜神経細胞、特に網膜神経節細胞におけるNFL発現回復剤として有用である。
【0040】
本化合物の投与は非経口でも経口でも行うことができる。投与剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、注射剤、点眼剤、眼軟膏剤、懸濁剤、徐放性眼内インプラント等が挙げられる。本化合物の製剤例は特開2002−53555、特開2003−226686の公報に記載されているが、これらの特許文献記載の方法に限らず、汎用されている技術を用いて本化合物を製剤化することができる。
【0041】
錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の経口剤は、乳糖、結晶セルロース、デンプン、植物油等の増量剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の崩壊剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、シリコン樹脂等のコーティング剤、ゼラチン皮膜等の皮膜剤などを必要に応じて本化合物に加えて、調製することができる。
【0042】
本化合物の投与量は症状、年令、剤型等によって適宜選択できるが、経口剤であれば通常1日当り0.1〜5000mg、好ましくは1〜1000mgを1回または数回に分けて投与すればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下に本発明の製剤例および薬理試験の結果を示す。尚、これらの例示は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0044】
[製剤例]
本化合物の経口剤、注射剤及び点眼剤としての一般的な製剤例を以下に示す。
【0045】
1)錠剤
処方1(100mg中)
本化合物 1 mg
乳糖 66.4mg
トウモロコシデンプン 20 mg
カルボキシメチルセルロース カルシウム 6 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 4 mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6mg

上記処方の錠剤に、コーティング剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、シリコン樹脂等通常のコーティング剤)2mgを用いてコーティングを施し、目的とするコーティング錠を得る(以下の処方の錠剤も同じ)。また、本化合物および添加物の量を適宜変更することにより、所望の錠剤を得ることができる。
【0046】
2)カプセル剤
処方1(150mg中)
本化合物 5 mg
乳糖 145 mg

本化合物および乳糖の混合比を適宜変更することにより、所望のカプセル剤を得ることができる。
【0047】
3)注射剤
処方1(10ml中)
本化合物 10〜100 mg
塩化ナトリウム 90 mg
水酸化ナトリウム 適量
塩酸 適量
滅菌精製水 適量

本化合物および添加物の混合比を適宜変更することにより、所望の注射剤を得ることができる。
【0048】
4)点眼剤
処方1(100ml中)
本化合物 100mg
塩化ナトリウム 900mg
ポリソルベート80 適量
水酸化ナトリウム 適量
塩酸 適量
滅菌精製水 適量

本化合物および添加物の混合比を適宜変更することにより、所望の点眼剤を得ることができる。
【0049】
[薬理試験]
1.ラット脊髄膜標本における本化合物の結合活性
ラット脊髄に存在する知覚神経にはTRPV1が発現していることが知られている。Szallasiらは、ラット脊髄神経細胞膜標本を用い、TRPV1アゴニストであるレジニフェラトキシンの膜標本に含まれるバニロイド受容体への結合と、カプサイシン拮抗薬であるカプサゼピンによる拮抗実験の結果を報告している(Journal of Phamacology and Experimental Therapeutics,267巻、728−733ページ.)。Szallasiらの方法に準じ、本化合物のラット脊髄膜標本に含まれるバニロイド受容体への結合活性を検討した。
【0050】
(被験化合物含有液等の調製)
被験化合物、競合化合物をそれぞれ含み、かつ、1%DMSOを含む精製水からなる被験化合物含有液および競合化合物含有液を調製した。競合化合物にはトリチウム標識レジニフェラトキシン(H−RTX)を用い、競合化合物含有液中のH−RTXの濃度は0.2nMとした。
【0051】
(膜標本の調製)
ラット脊髄を定法に従いホモジナイズし、数回洗浄した後遠心分離し、得られたペレットを10mg/mLとなるようにインキュベーション緩衝液 (10 mM HEPES, pH 7.4, 0.25 mg/ml BSA, 0.75 mM CaCl2, 5 mM KCl, 2 mM MgCl2, 5.8 mM NaCl, 137 mM Sucrose)に懸濁して膜標本を調製した。
【0052】
(結合実験)
被験化合物含有液5.25μLおよび膜標本500μLを混合した後、この混合物に20μLの競合化合物含有液を加え、全体を37℃で60分インキュベートした。生じた膜/H−RTX複合体をろ過して回収し、洗浄した後、シンチレーションカウンターにて放射活性を測定した。
【0053】
(実験結果の解析)
種々の濃度の被験化合物を含有する被験化合物含有液を用いて上記実験を行い、以下の通り結果の解析を行った。
【0054】
以下の式により被験化合物の各濃度における阻害率(%)を求めた。
【数1】

【0055】

次に、各濃度での阻害率をプロットし、50%阻害濃度(IC50)およびヒル係数を非線形回帰分析により求めた。回帰式には以下の2パラメーターロジスティック式を用いた。
【数2】

【0056】

ここで、Xは化合物の濃度(対数)を、Yは阻害率(%)を示しており、Yはbottomから始まりtopまでシグモイド曲線を描いて変化した。bottomとして0%を、topとして100%を使用した。
【0057】
また、阻害定数(Ki値)を以下の式で求めた。
【0058】
Ki=IC50/(1+放射標識リガンド濃度/解離定数)
ここで、解離定数には、同実験系における確立された解離定数(バニロイド受容体として、0.046nM)を用いた。
【0059】
このようにして求めた本化合物の実験結果として、化合物1の実験結果を例示する。
【0060】
化合物1の阻害曲線を例示すると図1のようになり、化合物1のラット脊椎神経細胞膜標本バニロイド受容体に対するIC50値は191±28nM(三回の同様の実験の平均±SEM)、Ki値は35.8±5.2nM、ヒル係数は1.83±0.449であった。また、同様な実験系で求めたカプサイシンのIC50値は3.14±0.76μMであり、Ki値は0.587±0.142μMであった。以上のことから、本化合物はバニロイド受容体に対して、公知アゴニストであるカプサイシンと比較して極めて強い結合親和性を有することが示された。
【0061】
2.ラット脊髄後根神経節由来神経細胞を用いるTRPV1アゴニスト誘発 CGRP遊離系における本化合物の効果
脊椎後根神経節(DRG)にはTRPV1が発現していることが知られており、TRPV1の活性化によって神経末端から神経伝達物質であるCGRPが遊離されることが知られている。Ahluwaliaらの方法(European Journal of Neuroscience,17巻、2611ページ、2003年)に準じ、ラットDRG由来培養神経細胞における本化合物のCGRP遊離活性を検討した。
【0062】
(被験化合物含有液等の調製)
被験化合物を秤量してDMSOに溶解し、この溶液を培地にて希釈して被験化合物含有液を調製した。尚、被験化合物含有液はそれぞれ0.4%のDMSOを含有するように調製した。陽性対照としてTRPV1アゴニストであるカプサイシンを、被験化合物に対する競合化合物としてTRPV1アンタゴニストであるカプサゼピンをそれぞれ用い、同様に競合化合物含有液を調製した。
【0063】
(実験方法)
ラット脊髄より摘出した後根神経節を細切した後、コラゲナーゼ-DNase I溶液にて37℃、1時間酵素処理を行ない、次いでトリプシンDNase I溶液にて37℃、20分間酵素処理を行なった。遊離した神経細胞を洗浄して回収し、Poly−D−lysine/laminin coated培養皿に播種して37℃、5%二酸化炭素条件下、神経培養因子を添加した神経細胞用培地(NGF/NCS培地)で1日培養した。培地をシトシンアラビノシド含有NGF/NCS培地に交換してさらに2日培養した。培地をNGS/NCS培地に交換して1日培養し、カプサゼピンの存在下または非存在下30分培養した後、さらに化合物1を添加して10分間培養し、培養上清を回収した。
【0064】
培養上清中のCGRPの測定は市販のELISA法による定量キットを用い、キットの説明書どおりに操作して測定した。一群3例にて検討を行い、各群の培養上清中CGRP濃度の平均およびSEMを求めた。統計解析は、スチューデントのt検定またはダネットの多重比較により実施した。
【0065】
(実験結果)
試験結果の例として、カプサゼピンの非存在下に化合物1のCGRP遊離に対する用量反応性を検討した結果(平均+SEM)を図2に、化合物1のCGRP遊離作用に対するカプサゼピン10μM(終濃度)による競合阻害実験の結果(同)を図3に示す。これらの図において、##はスチューデントのt検定により無処置群に対する危険率が1%以下であることを、**はダネットの多重比較により無処置群に対する危険率が1%以下であることを、++はスチューデントのt検定により化合物処置群に対する危険率が1%以下であることを示す。
【0066】
図2より明らかなように、化合物1は用量依存的にCGRPを遊離し、その作用は陽性対照であるカプサイシンよりも低濃度で同程度の作用強度であった。一方、図3より明らかなように化合物1によるCGRP遊離はカプサゼピンにより拮抗され、その拮抗の程度はカプサイシンの場合と同程度であった。これらの実験結果から、本化合物はTRPV1に特異的なアゴニストであることが示された。
【0067】
以上の薬理試験の結果から、本化合物は優れたTRPV1アゴニストであることが認められる。
【0068】
3. ヒトTRPV1発現細胞における本化合物の細胞内カルシウム流入の測定
TRPV1はイオンチャンネル型受容体であり、その活性化により細胞内にカルシウムイオンの流入が生じることが知られている。Phelpsらの方法 (Eur. J. Pharmacol., 513: 57-66, 2005) に準じ、ヒトTRPV1をコードする遺伝子をトランスフェクトしたCHO細胞を用いて本化合物のヒトTRPV1の活性化作用を検討した。
【0069】
(被験化合物含有液等の調製)
CHO細胞はDMEMで懸濁し、3.5×104 cell/wellとなるように培養プレートに播種した。被験化合物又はコントロール化合物をDMSOに溶解し、それぞれを含むHBSSからなる10倍濃縮の被験化合物含有液およびコントロール化合物含有液を調製した。コントロール化合物にはカプサイシンを用い、コントロール化合物、被験化合物含有液中の薬物の濃度は10μMとした。
【0070】
(カルシウム流入実験)
CHO細胞にカルシウム指示薬を添加し、37℃ 30minインキュベートした後、さらに22℃ 30minインキュベートし、平衡化した。これらのインキュベートに続き、1/10量の被験化合物、コントロール化合物(終濃度1μM)またはHBSS液を添加し、細胞内のカルシウム濃度指示薬の蛍光強度の変化を測定した。
【0071】
(実験結果の解析)
コントロール化合物である1μMカプサイシンによる刺激時の蛍光強度に対する被験化合物による刺激時の蛍光強度の割合を以下の式で求め%表示する。
【数3】

【0072】

このようにして求めた本化合物の実験結果を表2に例示する。
【表2】

【0073】

4.NMDA誘発ラット網膜障害モデルにおける視神経細胞死に対するTRPV1特異的アゴニストの作用
NMDA誘発ラット網膜障害モデル(Invest Ophthalmol Vis Sci. 2003;44:385−392)を用いて、本化合物及びカプサイシンの有用性を評価した。NMDA誘発ラット網膜障害モデルは、NMDAを硝子体内に投与することによりNMDA型のグルタミン酸受容体を活性化させ、神経細胞内のカルシウム濃度を上昇させることにより、主に網膜神経節細胞の細胞死及び網膜内網状層の菲薄化を誘発させたモデル動物であり、緑内障に起因する視神経障害のモデル動物として汎用されている。本モデル動物は眼圧上昇を伴わず視神経障害を生じることから、特に正常眼圧緑内障のモデルとして好適に使用されると考えられる。
【0074】
(NMDA誘発ラット網膜障害モデルの作製方法)
ラットに100%(V/V)酸素 0.5L/分と100%(V/V)亜酸化窒素 1.5L/分の混合気体で気化させた3%(V/V)ハロセンを吸入させ全身導入麻酔し、1%(V/V)ハロセンで維持麻酔した。2mmol/Lとなるようにリン酸緩衝液(以下、「PBS」ともいう)に溶解したNMDA溶液を5μL(NMDAとして10nmol)硝子体内に投与した。
【0075】
(薬物投与方法)
基剤を1%(W/V)メチルセルロース液(メチルセルロースを精製水に溶解させて調製)と設定し、化合物1、カプサイシンいずれも上記基剤に懸濁して経口投与溶液を調製した。NMDA硝子体内投与1時間前に基剤単独、または化合物1投与溶液(3mg/kg)、またはカプサイシン投与溶液(10mg/kg)を1回経口投与した。
【0076】
(評価方法)
NMDA誘発ラット網膜障害モデルにおいて、視神経軸索の主構成成分であり軸索の形態維持に重要な、ニューロフィラメント軽鎖(NFL)の網膜組織中での発現量を指標に、薬物処置の有効性を検討した。NMDAの硝子体内投与1日後に、ラットに100mg/kgペントバルビタールナトリウム注射液を腹腔内投与して全身麻酔を行った。眼球を摘出後、網膜を単離した。群毎に2−3匹4−6眼分をプールした網膜をホモジナイズし、QIAzolTM Lysis Reagent(QIAGEN)及びRNeasy(登録商標) 96 Kit(QIAGEN)を用いてtotalRNAを抽出し、PrimeScript(登録商標) RT reagent Kit(TAKARA)を用い、キットの取扱説明書にしたがってcDNAを合成した。合成したcDNAをQuantiTect(登録商標) Multiplex PCR Master Mix(QIAGEN)中にグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(以下、「GAPDH」ともいう)のプライマー・プローブ(AppliedBiosystems)、NFLのプライマー・プローブ(Sigma[オーダーメード])とともに加え、定量的PCR装置(AppliedBiosystems)でPCR反応を実施し、NFL及びGAPDHの発現量を測定した。得られた結果から、数4に従いNFLの発現量をハウスキーピング遺伝子であるGAPDHの発現量で補正する事により、相対的NFLの発現量を算出した。その後、数5に従い、PBS硝子体内投与を行った群を100%、NMDA硝子体内投与に基剤経口投与を行った群を0%とした場合の各薬剤のNMDAによるNFL減少に対する回復率(%)を算出した。
【0077】
なお、本発明に用いたNFLのプライマー及びプローブの塩基配列は以下の通りである。
【0078】
NFLプライマー1:ACAAGCAGAATGCAGACATCA
NFLプライマー2:GGAGGTCCTGGTACTCCTTC
NFLプローブ:CCATCTCGCTCTTCGTGCTTCGC
【数4】


【数5】

【0079】

(結果)
表3から明らかなように、化合物1及びカプサイシンはいずれもNMDA誘発ラット網膜障害モデルにおいて生じるNFL減少を顕著に回復させる事が示された。
【表3】

【0080】

以上の薬理試験の結果から、本化合物がカプサイシンと同様にTRPV1特異的アゴニスト作用を有し、本化合物及びカプサイシンに代表されるTRPV1特異的アゴニストが、緑内障に起因する視神経障害、緑内障性視野狭窄、循環不全並びに虚血性視神経障害、又は、網膜血管閉塞症などの眼疾患に起因する視神経障害、特に緑内障に起因する視神経障害、緑内障性視野狭窄又は緑内障性視神経萎縮等の緑内障性疾患に対して顕著な予防又は治療効果を有することが示された。また、化合物1はカプサイシンと比較して1/3の濃度で同程度のNFL回復作用を示したことから、カプサイシンよりも強力なNFL回復作用を有し、視神経障害に対してより有用であることが認められる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】化合物1の阻害曲線を示すグラフである。
【図2】カプサゼピンの非存在下に化合物1のCGRP遊離に対する用量反応性を検討した結果(平均+SEM)を示すグラフである。
【図3】化合物1のCGRP遊離作用に対するカプサゼピン10μM(終濃度)による競合阻害実験の結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TRPV1アゴニスト活性を有する化合物を有効成分として含む視神経障害の予防剤又は治療剤。
【請求項2】
TRPV1アゴニスト活性を有する化合物が、TRPV1特異的アゴニストである請求項1記載の視神経障害の予防剤又は治療剤。
【請求項3】
TRPV1特異的アゴニスト活性を有する化合物が下記一般式[I]で表される化合物またはその塩類である請求項2記載の視神経障害の予防剤又は治療剤。
【化1】


[式中、Aは低級アルキレン基または低級アルケニレン基を示し、;Rは水素原子、アルキル基またはアルケニル基を示し、該アルキル基およびアルケニル基は任意の置換基で置換されていてもよく;RおよびRは同一または異なって水素原子または低級アルキル基を示し、該低級アルキル基は単環式のシクロアルキル基、多環式のシクロアルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。]
【請求項4】
1) Aが低級アルキレン基または低級アルケニレン基であり;
2) Rが低級アルキル基であり、該低級アルキル基は任意の置換基で置換されていてもよく;
かつ、
3) R2が水素原子であり、かつ、R3が単環式のシクロアルキル基、多環式のシクロアルキル基またはアリール基で置換された低級アルキル基であるか
または、
R3が水素原子であり、かつ、R2が単環式のシクロアルキル基、多環式のシクロアルキル基またはアリール基で置換された低級アルキル基である
請求項3に記載の視神経障害の予防剤又は治療剤。
【請求項5】
1) Aが低級アルキレン基であり;
2) Rが低級アルキル基であり、該低級アルキル基は任意の置換基で置換されていてもよく;
3) R3が水素原子であり、
かつ、
4) R2が単環式のシクロアルキル基または多環式のシクロアルキル基で置換された低級アルキル基である
請求項4に記載の視神経障害の予防剤又は治療剤。
【請求項6】
Aがトリメチレン基またはメチルトリメチレン基であり;Rが直鎖低級アルキル基であり、当該直鎖低級アルキル基は任意の置換基で置換されていてもよく;Rがアダマンチルエチル基またはアダマンチルプロピル基であり;かつ、Rが水素原子である
請求項5に記載の視神経障害の予防剤又は治療剤。
【請求項7】
化合物が、
1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−ペンチル−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア 、
1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]−1−(3,3,3−トリフルオロプロピル)ウレア、
1−[3−(1−アダマンチル)プロピル]−1−プロピル−3−[3−(4−ピリジル)プロピル]ウレア 、
1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[1−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]−1−ペンチルウレア、
1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[2−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]−1−ペンチルウレア、
(+)−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−3−[2−メチル−3−(4−ピリジル)プロピル]−1−ペンチルウレア、および、
(E)−1−[2−(1−アダマンチル)エチル]−1−ペンチル−3−[3−(4−ピリジル)−2−プロペニル]ウレア、
からなる群から選択される
請求項6記載の視神経障害の予防剤又は治療剤。
【請求項8】
TRPV1特異的アゴニスト活性を有する化合物がカプサイシンである請求項2記載の視神経障害の予防剤又は治療剤。
【請求項9】
視神経障害が緑内障に伴う視神経障害、緑内障性視野狭窄、又は緑内障性視神経萎縮である請求項1〜8に記載の視神経障害の予防剤又は治療剤。
【請求項10】
視神経障害が網膜神経細胞の障害である請求項1〜8に記載の眼疾患の予防剤又は治療剤。
【請求項11】
網膜神経細胞の障害が網膜神経節細胞の軸索輸送障害である請求項10に記載の眼疾患の予防剤又は治療剤。
【請求項12】
TRPV1アゴニスト活性を有する化合物を有効成分として含む網膜神経細胞死の抑制剤。
【請求項13】
網膜神経細胞が網膜神経節細胞である請求項12記載の抑制剤。
【請求項14】
TRPV1アゴニスト活性を有する化合物を有効成分として含むニューロフィラメント軽鎖ポリペプチドの発現量回復剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−24219(P2010−24219A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267027(P2008−267027)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000177634)参天製薬株式会社 (177)
【Fターム(参考)】