視線誘導装置
【課題】カーブから抜ける際、すなわちコーナーの立ち上がり部分におけるステアリング操作のバラツキを抑えることが可能な視線誘導装置を提供する。
【解決手段】視線誘導装置1は制御開始基準点演算部21を備えている。制御開始基準点演算部21は、自車両がカーブ走行するにあたり、車両位置と道路形状とから自車両の走行経路を推定し、推定した走行経路における車両位置から、道路の内側に向かう接線を算出し、走行経路における車両の走行方向を走行ラインとして検出する。また、制御開始基準点演算部21は、算出した接線と、検出された走行ラインとが為す角度を算出し、角度の変化量が最大となる地点を基準点として算出する。刺激提示装置30は、算出された基準点に基づいて、自車両の運転者に対して視線誘導をすべき旨の報知を行う。
【解決手段】視線誘導装置1は制御開始基準点演算部21を備えている。制御開始基準点演算部21は、自車両がカーブ走行するにあたり、車両位置と道路形状とから自車両の走行経路を推定し、推定した走行経路における車両位置から、道路の内側に向かう接線を算出し、走行経路における車両の走行方向を走行ラインとして検出する。また、制御開始基準点演算部21は、算出した接線と、検出された走行ラインとが為す角度を算出し、角度の変化量が最大となる地点を基準点として算出する。刺激提示装置30は、算出された基準点に基づいて、自車両の運転者に対して視線誘導をすべき旨の報知を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視線誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者の頭部を含む車両前後方向に対し略平行に並進運動する一対以上の光学的刺激要素を運転者の周辺視野内に提示し、光学的刺激要素の並進運動によって注意対象の位置及び方向に視線を誘導する注意誘導装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−331040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、車両の運転技術が低い運転者は、カーブから抜ける際、すなわちコーナーの立ち上がり部分において、運転技術が高い運転者よりもステアリング操作にバラツキが生じ、車両が左右にふらつき易い傾向にある。しかし、従来装置では、注意対象に視線を誘導するものの、ステアリング操作のバラツキを解消することはできない。すなわち、コーナーの立ち上がり部分におけるステアリング操作のバラツキを解消するためには、視線を誘導するタイミングが肝要となるが、視線誘導のタイミングについては適切とはいえず、ステアリング操作のバラツキを解消することはできない。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、カーブから抜ける際、すなわちコーナーの立ち上がり部分におけるステアリング操作のバラツキを抑えることが可能な視線誘導装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の視線誘導装置は、自車両の位置を検出する車両位置検出手段と、自車両前方の道路形状を検出する道路形状検出手段と、前記自車両がカーブ走行するにあたり、前記車両位置検出手段により検出された車両位置と、前記道路形状検出手段により検出された道路形状とから、自車両の走行経路を推定する経路推定手段と、前記経路推定手段により推定された走行経路における車両位置から、前記道路形状検出手段により検出された道路の内側に向かう接線を算出する接線算出手段と、前記経路推定手段により推定された走行経路における車両の走行方向を走行ラインとして検出する走行ライン検出手段と、前記接線算出手段により算出された接線と、前記走行ライン検出手段により検出された走行ラインとが為す角度を算出する角度算出手段と、前記角度算出手段により算出された角度の変化量が最大となる地点を基準点として算出する基準点算出手段と、前記基準点算出手段により算出された基準点に基づいて、自車両の運転者に対して視線誘導をすべき旨の報知を行う報知手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接線と走行ラインとが為す角度を算出し、この角度の変化量が最大となる地点を基準点とし、基準点に基づいて視線誘導をすべき旨の報知を行う。ここで、人の視覚特性には、現在箇所から目的箇所までの距離と角度とを同期させるようにして目的箇所まで達する特性がある。すなわち、距離変化と角度変化とは同期する傾向にあり、これを車両に適用すると自車位置から目的箇所までの視線移動量と方位角とが同期すること
となる。このため、接線と走行ラインとが為す角度、すなわち方位角の変化量が最大となる基準点において、視線移動量の変化率が最大となるようにすることが望ましく、運転者が視線を動かすのに最適な地点(基準点)といえる。従って、基準点に基づいて、自車両の運転者に対して視線誘導をすべき旨の報知を行うことにより、カーブから抜ける際、すなわちコーナーの立ち上がり部分におけるステアリング操作のバラツキを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の視線誘導装置を示すブロック図である。
【図2】図1に示した刺激提示装置の一例を示す概略図である。
【図3】経路推定機能、接線算出機能、走行ライン検出機能及び角度算出機能を説明する図である。
【図4】視線誘導の原理を説明する図である。
【図5】車両位置に対する角度算出機能によって求められた角度を示す図であり、(a)は角度tau(X)を示し、(b)は角度の変化率tau(X)/dtを示している。
【図6】車両がS字カーブを走行する場合における接線算出機能及び角度算出機能を説明する図である。
【図7】本実施形態に係る視線誘導装置の詳細の処理を示すフローチャートであって、視線誘導タイミングの報知が行われる際の処理を示している。
【図8】本実施形態に係る視線誘導装置の詳細の処理を示すフローチャートであって、運転成績の算出等の処理を示している。
【図9】第2実施形態に係る視線誘導装置を示すブロック図である。
【図10】第2実施形態に係る視線誘導装置の詳細の処理を示すフローチャートであって、固有反応時間の算出等の処理を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態の視線誘導装置を示すブロック図である。図1に示すように、視線誘導装置1は、カーブ走行時において道路の内側に向いた運転者の視線を適正箇所に戻すように誘導するものである。すなわち、運転者は、カーブ走行の際に道路の内側を視認し、カーブを抜ける際に視線を正面に戻す。視線誘導装置1は、このような視線を正面に戻す動作を行うべきタイミングを運転者に提供するものである。
【0010】
また、視線誘導装置1は、ナビゲーション装置10と、視線誘導タイミング演算装置20と、刺激提示装置(報知手段)30とを備えている。ナビゲーション装置10は目的地まで車両を誘導する装置である。視線誘導タイミング演算装置20は運転者の視線を誘導するタイミングを演算するものである。刺激提示装置30は自車両の運転者に対して視線誘導をすべき旨の報知、すなわち視線を正面に戻す際の報知を行うものである。
【0011】
図2は、図1に示した刺激提示装置30の一例を示す概略図である。図2に示すように、刺激提示装置30は、運転席の両脇(例えばドアトリム上部位置)に設けられる左側ランプ群31及び右側ランプ群32と、その制御部とから構成されている。ランプ群31,32は、車両前後方向に並ぶ複数(6つ)のランプから構成されている。制御部は、ランプ群31,32の各ランプを車両後方側から前方側に順次点灯させていくものである。制御部は、この点灯により運転者の視覚に刺激を与えて視線誘導をすべき旨の報知を行う。特に、図2に示す刺激提示装置30では、運転者が向けるべき視線方向を、ランプ群31,32の点灯速度によって指定可能となっている。
【0012】
例えば、両者のランプ群31,32の点灯速度を同じとした場合、運転者の視線方向を
正面100に誘導することができる。これにより、正面に視線を戻す際の報知を行うことができる。また、カーブ進入時など視線を正面に対して右寄りや左寄りに向ける際には、以下のように制御する。すなわち、左側ランプ群31の点灯速度を速くし、右側ランプ群32の点灯速度を遅くした場合、運転者の視線方向を右側101に誘導することができ、左側ランプ群31の点灯速度を遅くし、右側ランプ群32の点灯速度を速くした場合、運転者の視線方向を左側102に誘導することができる。なお、ランプ群31,32の設置箇所は、ドアトリム上部限らず、ヘッドライニング正面部、ドアトリム表面部、サンバイザー表面部、インスツルメントパネル表面部、及びフロントピラー表面部などであってもよい。さらに、刺激提示装置30は、図2に示したものに限らず、聴覚刺激で報知するものや、触覚刺激で報知するものであってもよいし、視線誘導箇所を指定できなくともよく、単に視線誘導をすべき旨の報知だけを行うものであってもよい。
【0013】
再度、図1を参照する。ナビゲーション装置10は、車両位置検出部(車両位置検出手段)11及び道路情報検出部(道路形状検出手段)12を有している。車両位置検出部11は、自車両の位置を検出するものであって、GPS衛星からの電波を受信し、受信した電波に応じて自車両の位置を演算して求めるものである。なお、車両位置検出部11は、自律航法により自車両の位置を求めるものであってもよいし、GPS衛星からの電波と自律航法との併用により自車両の位置を求めるものであってもよい。道路情報検出部12は、自車両前方の道路形状を検出するものである。一般的なナビゲーション装置10には、DVDなどの記録媒体に道路形状が記憶されていたり、通信によって自車両周辺の道路形状の情報を受信できたりする。道路情報検出部12は、このような記憶情報や通信により得られる情報から、自車両前方の道路形状を検出する。
【0014】
視線誘導タイミング演算装置20は、制御開始基準点演算部(経路推定手段、接線算出手段、走行ライン検出手段、角度算出手段、基準点算出手段)21と、視線誘導タイミング演算部22とを備えている。制御開始基準点演算部21は、経路推定機能、接線算出機能、走行ライン検出機能、角度算出機能、及び基準点算出機能の5機能を備えている。これら機能について図3〜図6を参照して説明する。
【0015】
図3は、経路推定機能、接線算出機能、走行ライン検出機能及び角度算出機能を説明する図である。なお、図3では、車両が曲率半径Rの走行路、直線走行路への進入を緩和するための緩和曲線の走行路、及び直線走行路の順に走行する場合を例に説明する。まず、車両が曲率半径Rの走行路をカーブ走行しているとする(符号a参照)。このとき、経路推定機能は、車両位置検出部11により検出された車両位置201の情報と、道路形状検出部12により検出された道路の形状の情報とから、自車両の走行経路Cを推定する。すなわち、経路推定機能は、自車両が道路形状に合わせて走行するという予測をもとに走行経路Cを推定する。
【0016】
次いで、接線算出機能は、経路推定機能により推定された走行経路C上の車両位置201,202の情報と、道路形状検出部12により検出された道路形状とに基づいて、接線301,302を算出する。このとき、接線算出機能は、車両位置201,202から道路の内側に向かう接線301,302を算出する。
【0017】
また、走行ライン検出機能は、推定された走行経路Cにおける車両の走行方向を走行ライン401,402として検出する。そして、角度算出機能は、接線301,302と走行ライン401,402とが為す角度501,502を算出する。
【0018】
ところで、車両位置203では、緩和曲線の走行路でのカーブ走行について終盤に差し掛かっている。この場合、接線算出機能は、車両位置203の情報と、道路形状検出部12により検出された道路の形状の情報とから、接線を算出できないと判断する。このため
、接線算出機能は、車両位置203と、車両位置203の前方側における所定距離(例えば車速(m/s)×1.2m)の地点P(走行経路C上の地点)とを結ぶ仮接線303を算出する。また、走行ライン検出機能は、車両位置203における走行方向を走行ライン403として検出する。そして、角度算出機能は、仮接線303と走行ライン403とが為す角度503を算出する。
【0019】
図4は、視線誘導の原理を説明する図である。初期位置P1に存在するコウモリが目的位置P2に到達するまでの飛来の様子を例にとって説明する。コウモリは、初期位置P1に位置している。このため、目的位置P2までは、位置P1,P2を結ぶ直線L1上に飛ぶことが望ましいかのように思える。しかしながら、コウモリは、直線L1上を飛ばず、曲線C1を描くように目的位置P2まで飛ぶ。
【0020】
具体的に説明すると、コウモリは、目的位置P2の上を通過する直線L2を想定した場合、直線L1,L2が為す角度Dを減少させつつ、距離についても減少させるように飛ぶ。このように、コウモリは、距離と角度とを同期させるようにして目的位置P2まで飛ぶ。そして、図4に示すような飛来に関して、距離tau(Y)とし、角度tau(X)とすると、tau(Y)=k×tau(X)なる関係式が成り立つ。
【0021】
そして、上記の関係式は、車両運転時における人の知覚特性にもあてはまる。すなわち、距離tau(Y)は、車両運転時における人の視線移動量に該当し、角度tau(X)は、図3を参照して説明した角度501,502に該当する。このような理論から、運転者がカーブ走行時に正面に対して左寄り又は右寄りに視線を向けている状態から正面に戻す際の最適タイミングを求めることができる。
【0022】
図5は、車両位置に対する角度算出機能によって求められた角度を示す図であり、(a)は角度tau(X)を示し、(b)は角度の変化率tau(X)/dtを示している。図5(a)に示すように、角度tau(X)は、車両が曲率半径Rの走行路から、緩和曲線の走行路を経て、直線路に移行するに従って、減少する傾向にある。そして、角度の変化率tau(X)/dtは、図5(b)に示すように、緩和曲線の走行路において最大となる。すなわち図3に示す走行例においては、車両位置202で角度の変化率tau(X)/dtが最大となる。
【0023】
また、上記したように、視線移動量tau(Y)は、角度tau(X)に同期することから、角度の変化率tau(X)/dtが最大となったときに、視線移動量tau(X)の変化率が最大となることが望ましく、運転者は視線を大きく移動させて視線を正面に戻すことが望ましい。このように、上記理論から、運転者が視線を正面に戻すタイミングを求めることができる。
【0024】
再度、図3を参照する。基準点算出機能は、角度算出機能により算出された角度の変化量が最大となる地点を基準点として算出するものである。すなわち、図3に示す例の場合、車両位置202が基準点となる。この基準点は、運転者が視線を正面に戻すべきタイミングである。
【0025】
再度、図1を参照する。視線誘導タイミング演算部22は、運転者が視線を正面に戻すべきタイミングに、視線を正面に戻せるような視線の誘導タイミングを演算するものである。刺激提示装置30は、視線誘導タイミング演算部22に演算されたタイミングで運転者に視線誘導を報知することとなる。詳細に説明すると、車両が基準点(図3では位置202)に達したときに刺激提示装置30により報知を行っても、運転者が視線を正面に戻す動作は、基準点を過ぎて行われることとなってしまう。従って、視線誘導タイミング演算部22は、車両が基準点に達する前に刺激提示装置30による報知が実行されるよう、
視線誘導の報知タイミングを算出する。人によって反応速度が異なるが、視線誘導タイミング演算部22は、自車両が基準点に達する所定時間(具体的には1.2秒)前から、自車両が基準点に達するまでの間に視線誘導をすべき旨の報知を行うように、視線誘導の報知タイミングを算出する。
【0026】
次に、図6を参照して車両がS字カーブを走行する際の制御開始基準点演算部21の処理を説明する。図6は、車両がS字カーブを走行する場合における接線算出機能及び角度算出機能を説明する図である。図6に示すように、S字カーブは連続する2つのカーブからなっている。接線算出機能及び角度算出機能は、車両が1つ目のカーブを走行している場合(車両位置204参照)、及び2つ目のカーブを走行している場合(車両位置206参照)において、図3を参照して説明した処理と同じ処理を実行する。
【0027】
ところが、車両が位置205に存在している場合、複数の接線305a,305bを算出可能となってしまう。この場合、接線算出機能は、車両位置205から2番目に自車両近い道路内側に向かう接線305bを算出する。また、角度算出機能は、2番目に自車両近い道路内側との接線305bと走行ライン405とが為す角度504bを算出する。すなわち、この場合において、角度算出機能は、1番目に自車両近い道路内側との接線305aと走行ライン405とが為す角度504aを求めないこととなる。これにより、視線誘導装置1は、より適正な視線誘導を行うようにしている。
【0028】
例えば、S字カーブの走行時において運転技術が高い運転者は、1つ目のカーブ進入時に1つ目のカーブの内側を視認する。そして、運転者は、2つ目のカーブ進入時において、1つ目のカーブの内側から2つ目のカーブの内側に視線を移動させる。このように、運転技術が高い運転者は、S字カーブにおいて2つ目のカーブ進入時に正面に視線を戻すことがない。従って、2番目に自車両近い道路内側との接線305bと走行ライン405とが為す角度504bを算出することで、角度の算出についても、運転技術の高いものの視認傾向に合わせることとなり、視線誘導装置1は、より適正な視線誘導を行うことが可能となる。
【0029】
再度、図1を参照する。図1に示すように、視線誘導タイミング演算部22は、制御開始基準点演算部21及び視線誘導タイミング演算部22に加えて、運転成績演算部(運転成績算出手段)23と、記憶部(記憶手段)24と、視線誘導タイミング探索部(タイミング探索手段)25とを備えている。
【0030】
運転成績演算部23は、自車両の左右のふらつき量に応じて運転成績を算出するものである。この運転成績演算部23は、転舵速度の変動を指標として運転成績を求める。具体的に運転成績演算部23は、制御開始基準点演算部21により算出された基準点の情報と、車両位置検出部11から自車位置情報とから、基準点の前後数m間の区間を求め、この区間におけるステアリングセンサ等からのステアリング操舵角信号から転舵速度を算出する。そして、運転成績演算部23は、転舵速度の標準偏差を指標に、バラツキが小さい方が運転成績がよいと判断する。
【0031】
記憶部24は、過去のカーブ走行における運転成績と、過去の刺激提示装置30により視線誘導をすべき旨の報知が行われたタイミングとを対応付けて記憶する。この記憶部24には、初期値として視線誘導タイミング0秒(すなわち基準点において報知)と、運転成績値100(運転成績として十分大きな値)が記憶されている。
【0032】
視線誘導タイミング探索部25は、記憶部24により記憶された運転成績に基づいて、報知のタイミングを探索する。この視線誘導タイミング探索部25は、カーブ走行実績がない場合、視線誘導タイミングを0秒とする。その後,視線誘導タイミング探索部25は
、カーブ走行毎に、視線誘導タイミングを0秒から例えば,0.1秒ずつずらしていき(すなわち基準点−0.1n(nは正の整数)×車速(m/s)の位置で報知されるようにずらしていき)、記録された運転成績値を参照しながら,運転成績が最大になる視線誘導タイミングを探索する。
【0033】
このように視線誘導タイミング探索部25は運転成績が最大になる視線誘導タイミングを探索するため、視線誘導タイミング演算部22は、基準点の情報と、探索結果を参照して、視線を正面等に戻すタイミングを算出し、刺激提示装置30に報知させることとなる。
【0034】
次に、本実施形態に係る視線誘導装置1の詳細な処理を説明する。図7は、本実施形態に係る視線誘導装置1の詳細の処理を示すフローチャートであって、視線誘導タイミングの報知が行われる際の処理を示している。まず、図7に示すようにカーブ走行時において車両位置検出部11は自車両の位置を検出する(S1)。次に、道路情報検出部12は自車位置前方側の道路形状の情報を検出する(S2)。そして、これらの情報は視線誘導タイミング演算装置20に送信される。
【0035】
次に、制御開始基準点演算部21は、経路推定機能により図3に示したような走行経路Cを推定する(S3)。その後、接線算出機能は、走行経路C上の複数の車両位置をサンプル位置として決定する(S4)。そして、接線算出機能は、複数のサンプル位置のうち1つめのサンプル位置で接線を算出可能か否かを判断する(S5)。
【0036】
接線を算出可能であると判断した場合(S5:YES)、接線算出機能は接線を複数算出可能であるか否かを判断する(S6)。接線を複数算出可能でないと判断した場合(S6:NO)、第1の角度算出処理が実行される(S7)。すなわち、接線算出機能は、車両位置から道路の内側に向かう接線を算出し、走行ライン検出機能は、サンプル位置における車両の走行方向を走行ラインとして検出する。次いで、角度算出機能は、接線と走行ラインとが為す角度を算出する。その後、処理はステップS10に移行する。
【0037】
一方、接線を複数算出可能であると判断した場合(S6:YES)、第2の角度算出処理が実行される(S8)。すなわち、接線算出機能は、2番目に自車両近い道路内側との接線を算出し、走行ライン検出機能はサンプル位置における車両の走行方向を走行ラインとして検出する。次いで、角度算出機能は、2番目に自車両近い道路内側との接線と走行ラインとが為す角度を算出する。その後、処理はステップS10に移行する。
【0038】
ところで、ステップS5において接線を算出可能でないと判断した場合(S5:NO)、第3の角度算出処理が実行される(S9)。すなわち、接線算出機能は、車両位置から、車両位置前方の所定距離の地点とを結ぶ仮接線を算出し、走行ライン検出機能は、サンプル位置における車両の走行方向を走行ラインとして検出する。次いで、角度算出機能は、仮接線と走行ラインとが為す角度を算出する。その後、処理はステップS10に移行する。
【0039】
ステップS10において制御開始基準点演算部21は、全てのサンプル位置で角度を算出したか否かを判断する(S10)。全てのサンプル位置で角度を算出していないと判断した場合(S10:NO)、処理はステップS4に移行する。そして、次のサンプル位置についてステップS4〜S9の処理が実行される。
【0040】
一方、全てのサンプル位置で角度を算出したと判断した場合(S10:YES)、基準点算出機能は、角度の変化量を算出し(S11)、変化量の最大値に対応する車両位置を基準点として算出する(S12)。次に、視線誘導タイミング演算部22は、視線の誘導
タイミングを決定する(S13)。このとき、視線誘導タイミング演算部22は、予め定められた時間だけ基準点に達する前に報知されるように視線の誘導タイミングを決定したり、視線誘導タイミング探索部25による探索結果を用いて視線の誘導タイミングを決定したりする。そして、刺激提示装置30は、視線誘導タイミング演算部22による演算結果に従って報知を行う。
【0041】
図8は、本実施形態に係る視線誘導装置1の詳細の処理を示すフローチャートであって、運転成績の算出等の処理を示している。まず、車両がカーブに差し掛かった場合、運転成績演算部23は、制御開始基準点演算部21により算出された基準点の情報と、車両位置検出部11から自車位置情報とから、基準点の前後数m間の区間を求め、この区間を運転成績算出区間として決定する(S21)。
【0042】
そして、運転成績演算部23は、ステアリングセンサ等からのステアリング操舵角信号を入力し(S22)、転舵速度の標準偏差を指標に運転成績を算出する(S23)。次いで、記憶部24は、ステップS23において算出された運転成績と、カーブ走行時において実際に視線誘導の報知が行われたタイミングの情報とを対応付けて記憶する(S24)。
【0043】
このようにして、本実施形態に係る視線誘導装置1によれば、接線と走行ラインとが為す角度を算出し、この角度の変化量が最大となる地点を基準点とし、基準点に基づいて視線誘導をすべき旨の報知を行う。ここで、人の視覚特性には、現在箇所から目的箇所までの距離と角度とを同期させるようにして目的箇所まで達する特性がある。すなわち、距離変化と角度変化とは同期する傾向にあり、これを車両に適用すると自車位置から目的箇所までの視線移動量と方位角とが同期することとなる。このため、接線と走行ラインとが為す角度、すなわち方位角の変化量が最大となる基準点において、視線移動量の変化率が最大となるようにすることが望ましく、運転者が視線を動かすのに最適な地点(基準点)といえる。従って、基準点に基づいて、自車両の運転者に対して視線誘導をすべき旨の報知を行うことにより、カーブから抜ける際、すなわちコーナーの立ち上がり部分におけるステアリング操作のバラツキを抑えることができる。
【0044】
また、接線を算出できない場合、車両位置と車両位置前方側の所定距離の地点とを結ぶ仮接線を算出し、仮接線と走行ラインとが為す角度を算出する。ここで、カーブの形状によってはカーブの終了付近において接線が算出できず、基準点を算出できない場合がある。よって、仮接線を求めることにより、このような場合において基準点を算出して、ステアリング操作のバラツキを抑えることができる。
【0045】
また、接線を複数算出可能な場合、自車両の位置から2番目に自車両近い道路内側に向かう接線を算出し、2番目に自車両近い道路内側との接線と走行ラインとが為す角度を算出する。ここで、カーブが連続するS字カーブなどの場合、接線を複数算出できる。そして、運転技術の高いものは最初のカーブを抜ける際に次のカーブの内側を視認する傾向にある。このため、角度の算出についても、運転技術の高いものの視認傾向に合わせることにより、より適正な視線誘導を行うことができる。
【0046】
また、自車両が基準点に達する所定時間前から、自車両が基準点に達するまでの間に視線誘導をすべき旨の報知を行う。実際に運転者は視線を変化させるのと同時にステアリング操作を行うことができ、視線を変化させた後にステアリング操作を行う傾向がある。このため、基準点到達前に視線誘導を行うことにより、基準点到達時点において実際にステアリング操作を行わせることが可能となり、ステアリング操作のバラツキを抑えることができる。
【0047】
また、運転成績と視線誘導をすべき旨の報知が行われたタイミングとを対応付けて記憶しておき、記憶された運転成績に基づいて、報知のタイミングを探索する。このため、運転者が基準点において視線誘導を行うことができる最適なタイミングを探索することとなり、一層ステアリング操作のバラツキを抑えることができる。
【0048】
次に発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係る視線誘導装置2は第1実施形態のものと同様であるが、構成等が一部異なっている。以下第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0049】
図9は、第2実施形態に係る視線誘導装置2を示すブロック図である。図9に示すように、第2実施形態に係る視線誘導装置2は、新たに、撮像装置(撮像手段)40を備えている。また、視線誘導タイミング演算装置20が、新たに、顔向き検出部(顔向き検出手段)26及び固有反応時間演算部(固有反応時間算出手段)27を有している。
【0050】
撮像装置40は、運転者の顔を撮像するものであって、例えば,インスツルメントパネル上部に設けられたがCCDカメラによって構成されている。顔向き検出部26は、撮像装置40により撮像された運転者の顔の向きを検出するものである。この顔向き検出部26は、運転者の顔のサンプルとの一致度など、種々の方法により運転者の頭部の姿勢角を算出して、顔の向きを検出する。
【0051】
固有反応時間演算部27は、顔向き検出部26によって運転者の顔の向きの変化が検出されてから、ステアリング操作を行うまでの固有反応時間を算出するものである。ここで、発明者らは、運転者がカーブ走行する場合における頭部ヨーレートとステアリング操舵角の関係を調べたところ、常にステアリング操舵角に先行して、頭部が動くという実験結果を得た。すなわち運転者は、頭部を動かした後にステアリング操作を行うこととなる。また、頭部を動かしてからステアリング操作を行うまでの時間は、運転技術が高い者ほど小さくなる傾向があることがわかった。固有反応時間演算部27は、このような運転者の頭部(顔の向き)変化からステアリング操作が行われるまでの固有反応時間を算出することとなる。
【0052】
また、視線誘導タイミング演算部22は、制御開始基準点演算部21により算出された基準点と、固有反応時間演算部27により算出された固有反応時間との情報を入力し、車両が基準点に到達する固有反応時間前に視線誘導が行われるように報知タイミングを算出することとなる。
【0053】
なお、第2実施形態において視線誘導タイミングの報知が行われる際の処理については、図7に示したものと同様である。
【0054】
図10は、第2実施形態に係る視線誘導装置2の詳細の処理を示すフローチャートであって、固有反応時間の算出等の処理を示している。図10に示すように、顔向き検出部26は、撮像装置40によって撮像された運転者の顔画像から顔の向きを検出する(S31)。次に、顔向き検出部26は、前回のステップS21において検出した顔の向きと、今回のステップS21において検出した顔の向きとを比較して、顔の向きに変化があったか否かを判断する(S32)。
【0055】
顔の向きに変化がなかったと判断した場合(S32:NO)、処理はステップS31に移行する。一方、顔の向きに変化があったと判断した場合(S32:YES)、固有反応時間演算部27は、固有反応時間を測定する(S33)。この際、固有反応時間演算部27は、顔の向きが変化してからステアリング操舵角信号によりステアリング操作が確認されるまでの時間を測定し、これを固有反応時間とする。
【0056】
なお、固有反応時間演算部27は、顔の向きが変化してから一定以上の時間(例えば2秒以上の時間)が経過した場合、単にステアリング操作を伴わない顔の向きの変化であったと判断し、処理はステップS31に移行してもよい。
【0057】
そして、固有反応時間演算部27は、固有反応時間を算出すると、これを記憶することとなる(S34)。その後、図10に示す処理は終了する。
【0058】
このようにして、第2実施形態に係る視線誘導装置2によれば、第1実施形態と同様に、カーブから抜ける際、すなわちコーナーの立ち上がり部分におけるステアリング操作のバラツキを抑えることができる。
【0059】
さらに、第2実施形態によれば、運転者の顔の向きの変化を検出してから、ステアリング操作を行うまでの固有反応時間を算出し、自車両が基準点に達する固有反応時間前に視線誘導をすべき旨の報知を行う。ここで、運転者は、ステアリング操作を行う前に先に顔の向きを変化させる傾向にある。しかも、ステアリング操作から顔の向きの変化までの時間については、運転者固有のものである。よって、固有反応時間を算出し、自車両が基準点に達する固有反応時間前に視線誘導をすべき旨の報知を行う。これにより、基準点においてステアリング操作が行われることとなり、ステアリング操作のバラツキを一層抑えることができる。
【0060】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、各実施形態を組み合わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1,2…視線誘導装置
10…ナビゲーション装置
11…車両位置検出部(車両位置検出手段)
12…道路情報検出部(道路情報検出手段)
20…視線誘導タイミング演算装置
21…制御開始基準点演算部(経路推定手段、接線算出手段、走行ライン検出手段、角度算出手段、基準点算出手段)
22…視線誘導タイミング演算部
23…運転成績演算部(運転成績算出手段)
24…記憶部(記憶手段)
25…視線誘導タイミング探索部(タイミング探索手段)
26…顔向き検出部(顔向き検出手段)
27…固有反応時間演算部(固有反応時間算出手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、視線誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者の頭部を含む車両前後方向に対し略平行に並進運動する一対以上の光学的刺激要素を運転者の周辺視野内に提示し、光学的刺激要素の並進運動によって注意対象の位置及び方向に視線を誘導する注意誘導装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−331040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、車両の運転技術が低い運転者は、カーブから抜ける際、すなわちコーナーの立ち上がり部分において、運転技術が高い運転者よりもステアリング操作にバラツキが生じ、車両が左右にふらつき易い傾向にある。しかし、従来装置では、注意対象に視線を誘導するものの、ステアリング操作のバラツキを解消することはできない。すなわち、コーナーの立ち上がり部分におけるステアリング操作のバラツキを解消するためには、視線を誘導するタイミングが肝要となるが、視線誘導のタイミングについては適切とはいえず、ステアリング操作のバラツキを解消することはできない。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、カーブから抜ける際、すなわちコーナーの立ち上がり部分におけるステアリング操作のバラツキを抑えることが可能な視線誘導装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の視線誘導装置は、自車両の位置を検出する車両位置検出手段と、自車両前方の道路形状を検出する道路形状検出手段と、前記自車両がカーブ走行するにあたり、前記車両位置検出手段により検出された車両位置と、前記道路形状検出手段により検出された道路形状とから、自車両の走行経路を推定する経路推定手段と、前記経路推定手段により推定された走行経路における車両位置から、前記道路形状検出手段により検出された道路の内側に向かう接線を算出する接線算出手段と、前記経路推定手段により推定された走行経路における車両の走行方向を走行ラインとして検出する走行ライン検出手段と、前記接線算出手段により算出された接線と、前記走行ライン検出手段により検出された走行ラインとが為す角度を算出する角度算出手段と、前記角度算出手段により算出された角度の変化量が最大となる地点を基準点として算出する基準点算出手段と、前記基準点算出手段により算出された基準点に基づいて、自車両の運転者に対して視線誘導をすべき旨の報知を行う報知手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接線と走行ラインとが為す角度を算出し、この角度の変化量が最大となる地点を基準点とし、基準点に基づいて視線誘導をすべき旨の報知を行う。ここで、人の視覚特性には、現在箇所から目的箇所までの距離と角度とを同期させるようにして目的箇所まで達する特性がある。すなわち、距離変化と角度変化とは同期する傾向にあり、これを車両に適用すると自車位置から目的箇所までの視線移動量と方位角とが同期すること
となる。このため、接線と走行ラインとが為す角度、すなわち方位角の変化量が最大となる基準点において、視線移動量の変化率が最大となるようにすることが望ましく、運転者が視線を動かすのに最適な地点(基準点)といえる。従って、基準点に基づいて、自車両の運転者に対して視線誘導をすべき旨の報知を行うことにより、カーブから抜ける際、すなわちコーナーの立ち上がり部分におけるステアリング操作のバラツキを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の視線誘導装置を示すブロック図である。
【図2】図1に示した刺激提示装置の一例を示す概略図である。
【図3】経路推定機能、接線算出機能、走行ライン検出機能及び角度算出機能を説明する図である。
【図4】視線誘導の原理を説明する図である。
【図5】車両位置に対する角度算出機能によって求められた角度を示す図であり、(a)は角度tau(X)を示し、(b)は角度の変化率tau(X)/dtを示している。
【図6】車両がS字カーブを走行する場合における接線算出機能及び角度算出機能を説明する図である。
【図7】本実施形態に係る視線誘導装置の詳細の処理を示すフローチャートであって、視線誘導タイミングの報知が行われる際の処理を示している。
【図8】本実施形態に係る視線誘導装置の詳細の処理を示すフローチャートであって、運転成績の算出等の処理を示している。
【図9】第2実施形態に係る視線誘導装置を示すブロック図である。
【図10】第2実施形態に係る視線誘導装置の詳細の処理を示すフローチャートであって、固有反応時間の算出等の処理を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態の視線誘導装置を示すブロック図である。図1に示すように、視線誘導装置1は、カーブ走行時において道路の内側に向いた運転者の視線を適正箇所に戻すように誘導するものである。すなわち、運転者は、カーブ走行の際に道路の内側を視認し、カーブを抜ける際に視線を正面に戻す。視線誘導装置1は、このような視線を正面に戻す動作を行うべきタイミングを運転者に提供するものである。
【0010】
また、視線誘導装置1は、ナビゲーション装置10と、視線誘導タイミング演算装置20と、刺激提示装置(報知手段)30とを備えている。ナビゲーション装置10は目的地まで車両を誘導する装置である。視線誘導タイミング演算装置20は運転者の視線を誘導するタイミングを演算するものである。刺激提示装置30は自車両の運転者に対して視線誘導をすべき旨の報知、すなわち視線を正面に戻す際の報知を行うものである。
【0011】
図2は、図1に示した刺激提示装置30の一例を示す概略図である。図2に示すように、刺激提示装置30は、運転席の両脇(例えばドアトリム上部位置)に設けられる左側ランプ群31及び右側ランプ群32と、その制御部とから構成されている。ランプ群31,32は、車両前後方向に並ぶ複数(6つ)のランプから構成されている。制御部は、ランプ群31,32の各ランプを車両後方側から前方側に順次点灯させていくものである。制御部は、この点灯により運転者の視覚に刺激を与えて視線誘導をすべき旨の報知を行う。特に、図2に示す刺激提示装置30では、運転者が向けるべき視線方向を、ランプ群31,32の点灯速度によって指定可能となっている。
【0012】
例えば、両者のランプ群31,32の点灯速度を同じとした場合、運転者の視線方向を
正面100に誘導することができる。これにより、正面に視線を戻す際の報知を行うことができる。また、カーブ進入時など視線を正面に対して右寄りや左寄りに向ける際には、以下のように制御する。すなわち、左側ランプ群31の点灯速度を速くし、右側ランプ群32の点灯速度を遅くした場合、運転者の視線方向を右側101に誘導することができ、左側ランプ群31の点灯速度を遅くし、右側ランプ群32の点灯速度を速くした場合、運転者の視線方向を左側102に誘導することができる。なお、ランプ群31,32の設置箇所は、ドアトリム上部限らず、ヘッドライニング正面部、ドアトリム表面部、サンバイザー表面部、インスツルメントパネル表面部、及びフロントピラー表面部などであってもよい。さらに、刺激提示装置30は、図2に示したものに限らず、聴覚刺激で報知するものや、触覚刺激で報知するものであってもよいし、視線誘導箇所を指定できなくともよく、単に視線誘導をすべき旨の報知だけを行うものであってもよい。
【0013】
再度、図1を参照する。ナビゲーション装置10は、車両位置検出部(車両位置検出手段)11及び道路情報検出部(道路形状検出手段)12を有している。車両位置検出部11は、自車両の位置を検出するものであって、GPS衛星からの電波を受信し、受信した電波に応じて自車両の位置を演算して求めるものである。なお、車両位置検出部11は、自律航法により自車両の位置を求めるものであってもよいし、GPS衛星からの電波と自律航法との併用により自車両の位置を求めるものであってもよい。道路情報検出部12は、自車両前方の道路形状を検出するものである。一般的なナビゲーション装置10には、DVDなどの記録媒体に道路形状が記憶されていたり、通信によって自車両周辺の道路形状の情報を受信できたりする。道路情報検出部12は、このような記憶情報や通信により得られる情報から、自車両前方の道路形状を検出する。
【0014】
視線誘導タイミング演算装置20は、制御開始基準点演算部(経路推定手段、接線算出手段、走行ライン検出手段、角度算出手段、基準点算出手段)21と、視線誘導タイミング演算部22とを備えている。制御開始基準点演算部21は、経路推定機能、接線算出機能、走行ライン検出機能、角度算出機能、及び基準点算出機能の5機能を備えている。これら機能について図3〜図6を参照して説明する。
【0015】
図3は、経路推定機能、接線算出機能、走行ライン検出機能及び角度算出機能を説明する図である。なお、図3では、車両が曲率半径Rの走行路、直線走行路への進入を緩和するための緩和曲線の走行路、及び直線走行路の順に走行する場合を例に説明する。まず、車両が曲率半径Rの走行路をカーブ走行しているとする(符号a参照)。このとき、経路推定機能は、車両位置検出部11により検出された車両位置201の情報と、道路形状検出部12により検出された道路の形状の情報とから、自車両の走行経路Cを推定する。すなわち、経路推定機能は、自車両が道路形状に合わせて走行するという予測をもとに走行経路Cを推定する。
【0016】
次いで、接線算出機能は、経路推定機能により推定された走行経路C上の車両位置201,202の情報と、道路形状検出部12により検出された道路形状とに基づいて、接線301,302を算出する。このとき、接線算出機能は、車両位置201,202から道路の内側に向かう接線301,302を算出する。
【0017】
また、走行ライン検出機能は、推定された走行経路Cにおける車両の走行方向を走行ライン401,402として検出する。そして、角度算出機能は、接線301,302と走行ライン401,402とが為す角度501,502を算出する。
【0018】
ところで、車両位置203では、緩和曲線の走行路でのカーブ走行について終盤に差し掛かっている。この場合、接線算出機能は、車両位置203の情報と、道路形状検出部12により検出された道路の形状の情報とから、接線を算出できないと判断する。このため
、接線算出機能は、車両位置203と、車両位置203の前方側における所定距離(例えば車速(m/s)×1.2m)の地点P(走行経路C上の地点)とを結ぶ仮接線303を算出する。また、走行ライン検出機能は、車両位置203における走行方向を走行ライン403として検出する。そして、角度算出機能は、仮接線303と走行ライン403とが為す角度503を算出する。
【0019】
図4は、視線誘導の原理を説明する図である。初期位置P1に存在するコウモリが目的位置P2に到達するまでの飛来の様子を例にとって説明する。コウモリは、初期位置P1に位置している。このため、目的位置P2までは、位置P1,P2を結ぶ直線L1上に飛ぶことが望ましいかのように思える。しかしながら、コウモリは、直線L1上を飛ばず、曲線C1を描くように目的位置P2まで飛ぶ。
【0020】
具体的に説明すると、コウモリは、目的位置P2の上を通過する直線L2を想定した場合、直線L1,L2が為す角度Dを減少させつつ、距離についても減少させるように飛ぶ。このように、コウモリは、距離と角度とを同期させるようにして目的位置P2まで飛ぶ。そして、図4に示すような飛来に関して、距離tau(Y)とし、角度tau(X)とすると、tau(Y)=k×tau(X)なる関係式が成り立つ。
【0021】
そして、上記の関係式は、車両運転時における人の知覚特性にもあてはまる。すなわち、距離tau(Y)は、車両運転時における人の視線移動量に該当し、角度tau(X)は、図3を参照して説明した角度501,502に該当する。このような理論から、運転者がカーブ走行時に正面に対して左寄り又は右寄りに視線を向けている状態から正面に戻す際の最適タイミングを求めることができる。
【0022】
図5は、車両位置に対する角度算出機能によって求められた角度を示す図であり、(a)は角度tau(X)を示し、(b)は角度の変化率tau(X)/dtを示している。図5(a)に示すように、角度tau(X)は、車両が曲率半径Rの走行路から、緩和曲線の走行路を経て、直線路に移行するに従って、減少する傾向にある。そして、角度の変化率tau(X)/dtは、図5(b)に示すように、緩和曲線の走行路において最大となる。すなわち図3に示す走行例においては、車両位置202で角度の変化率tau(X)/dtが最大となる。
【0023】
また、上記したように、視線移動量tau(Y)は、角度tau(X)に同期することから、角度の変化率tau(X)/dtが最大となったときに、視線移動量tau(X)の変化率が最大となることが望ましく、運転者は視線を大きく移動させて視線を正面に戻すことが望ましい。このように、上記理論から、運転者が視線を正面に戻すタイミングを求めることができる。
【0024】
再度、図3を参照する。基準点算出機能は、角度算出機能により算出された角度の変化量が最大となる地点を基準点として算出するものである。すなわち、図3に示す例の場合、車両位置202が基準点となる。この基準点は、運転者が視線を正面に戻すべきタイミングである。
【0025】
再度、図1を参照する。視線誘導タイミング演算部22は、運転者が視線を正面に戻すべきタイミングに、視線を正面に戻せるような視線の誘導タイミングを演算するものである。刺激提示装置30は、視線誘導タイミング演算部22に演算されたタイミングで運転者に視線誘導を報知することとなる。詳細に説明すると、車両が基準点(図3では位置202)に達したときに刺激提示装置30により報知を行っても、運転者が視線を正面に戻す動作は、基準点を過ぎて行われることとなってしまう。従って、視線誘導タイミング演算部22は、車両が基準点に達する前に刺激提示装置30による報知が実行されるよう、
視線誘導の報知タイミングを算出する。人によって反応速度が異なるが、視線誘導タイミング演算部22は、自車両が基準点に達する所定時間(具体的には1.2秒)前から、自車両が基準点に達するまでの間に視線誘導をすべき旨の報知を行うように、視線誘導の報知タイミングを算出する。
【0026】
次に、図6を参照して車両がS字カーブを走行する際の制御開始基準点演算部21の処理を説明する。図6は、車両がS字カーブを走行する場合における接線算出機能及び角度算出機能を説明する図である。図6に示すように、S字カーブは連続する2つのカーブからなっている。接線算出機能及び角度算出機能は、車両が1つ目のカーブを走行している場合(車両位置204参照)、及び2つ目のカーブを走行している場合(車両位置206参照)において、図3を参照して説明した処理と同じ処理を実行する。
【0027】
ところが、車両が位置205に存在している場合、複数の接線305a,305bを算出可能となってしまう。この場合、接線算出機能は、車両位置205から2番目に自車両近い道路内側に向かう接線305bを算出する。また、角度算出機能は、2番目に自車両近い道路内側との接線305bと走行ライン405とが為す角度504bを算出する。すなわち、この場合において、角度算出機能は、1番目に自車両近い道路内側との接線305aと走行ライン405とが為す角度504aを求めないこととなる。これにより、視線誘導装置1は、より適正な視線誘導を行うようにしている。
【0028】
例えば、S字カーブの走行時において運転技術が高い運転者は、1つ目のカーブ進入時に1つ目のカーブの内側を視認する。そして、運転者は、2つ目のカーブ進入時において、1つ目のカーブの内側から2つ目のカーブの内側に視線を移動させる。このように、運転技術が高い運転者は、S字カーブにおいて2つ目のカーブ進入時に正面に視線を戻すことがない。従って、2番目に自車両近い道路内側との接線305bと走行ライン405とが為す角度504bを算出することで、角度の算出についても、運転技術の高いものの視認傾向に合わせることとなり、視線誘導装置1は、より適正な視線誘導を行うことが可能となる。
【0029】
再度、図1を参照する。図1に示すように、視線誘導タイミング演算部22は、制御開始基準点演算部21及び視線誘導タイミング演算部22に加えて、運転成績演算部(運転成績算出手段)23と、記憶部(記憶手段)24と、視線誘導タイミング探索部(タイミング探索手段)25とを備えている。
【0030】
運転成績演算部23は、自車両の左右のふらつき量に応じて運転成績を算出するものである。この運転成績演算部23は、転舵速度の変動を指標として運転成績を求める。具体的に運転成績演算部23は、制御開始基準点演算部21により算出された基準点の情報と、車両位置検出部11から自車位置情報とから、基準点の前後数m間の区間を求め、この区間におけるステアリングセンサ等からのステアリング操舵角信号から転舵速度を算出する。そして、運転成績演算部23は、転舵速度の標準偏差を指標に、バラツキが小さい方が運転成績がよいと判断する。
【0031】
記憶部24は、過去のカーブ走行における運転成績と、過去の刺激提示装置30により視線誘導をすべき旨の報知が行われたタイミングとを対応付けて記憶する。この記憶部24には、初期値として視線誘導タイミング0秒(すなわち基準点において報知)と、運転成績値100(運転成績として十分大きな値)が記憶されている。
【0032】
視線誘導タイミング探索部25は、記憶部24により記憶された運転成績に基づいて、報知のタイミングを探索する。この視線誘導タイミング探索部25は、カーブ走行実績がない場合、視線誘導タイミングを0秒とする。その後,視線誘導タイミング探索部25は
、カーブ走行毎に、視線誘導タイミングを0秒から例えば,0.1秒ずつずらしていき(すなわち基準点−0.1n(nは正の整数)×車速(m/s)の位置で報知されるようにずらしていき)、記録された運転成績値を参照しながら,運転成績が最大になる視線誘導タイミングを探索する。
【0033】
このように視線誘導タイミング探索部25は運転成績が最大になる視線誘導タイミングを探索するため、視線誘導タイミング演算部22は、基準点の情報と、探索結果を参照して、視線を正面等に戻すタイミングを算出し、刺激提示装置30に報知させることとなる。
【0034】
次に、本実施形態に係る視線誘導装置1の詳細な処理を説明する。図7は、本実施形態に係る視線誘導装置1の詳細の処理を示すフローチャートであって、視線誘導タイミングの報知が行われる際の処理を示している。まず、図7に示すようにカーブ走行時において車両位置検出部11は自車両の位置を検出する(S1)。次に、道路情報検出部12は自車位置前方側の道路形状の情報を検出する(S2)。そして、これらの情報は視線誘導タイミング演算装置20に送信される。
【0035】
次に、制御開始基準点演算部21は、経路推定機能により図3に示したような走行経路Cを推定する(S3)。その後、接線算出機能は、走行経路C上の複数の車両位置をサンプル位置として決定する(S4)。そして、接線算出機能は、複数のサンプル位置のうち1つめのサンプル位置で接線を算出可能か否かを判断する(S5)。
【0036】
接線を算出可能であると判断した場合(S5:YES)、接線算出機能は接線を複数算出可能であるか否かを判断する(S6)。接線を複数算出可能でないと判断した場合(S6:NO)、第1の角度算出処理が実行される(S7)。すなわち、接線算出機能は、車両位置から道路の内側に向かう接線を算出し、走行ライン検出機能は、サンプル位置における車両の走行方向を走行ラインとして検出する。次いで、角度算出機能は、接線と走行ラインとが為す角度を算出する。その後、処理はステップS10に移行する。
【0037】
一方、接線を複数算出可能であると判断した場合(S6:YES)、第2の角度算出処理が実行される(S8)。すなわち、接線算出機能は、2番目に自車両近い道路内側との接線を算出し、走行ライン検出機能はサンプル位置における車両の走行方向を走行ラインとして検出する。次いで、角度算出機能は、2番目に自車両近い道路内側との接線と走行ラインとが為す角度を算出する。その後、処理はステップS10に移行する。
【0038】
ところで、ステップS5において接線を算出可能でないと判断した場合(S5:NO)、第3の角度算出処理が実行される(S9)。すなわち、接線算出機能は、車両位置から、車両位置前方の所定距離の地点とを結ぶ仮接線を算出し、走行ライン検出機能は、サンプル位置における車両の走行方向を走行ラインとして検出する。次いで、角度算出機能は、仮接線と走行ラインとが為す角度を算出する。その後、処理はステップS10に移行する。
【0039】
ステップS10において制御開始基準点演算部21は、全てのサンプル位置で角度を算出したか否かを判断する(S10)。全てのサンプル位置で角度を算出していないと判断した場合(S10:NO)、処理はステップS4に移行する。そして、次のサンプル位置についてステップS4〜S9の処理が実行される。
【0040】
一方、全てのサンプル位置で角度を算出したと判断した場合(S10:YES)、基準点算出機能は、角度の変化量を算出し(S11)、変化量の最大値に対応する車両位置を基準点として算出する(S12)。次に、視線誘導タイミング演算部22は、視線の誘導
タイミングを決定する(S13)。このとき、視線誘導タイミング演算部22は、予め定められた時間だけ基準点に達する前に報知されるように視線の誘導タイミングを決定したり、視線誘導タイミング探索部25による探索結果を用いて視線の誘導タイミングを決定したりする。そして、刺激提示装置30は、視線誘導タイミング演算部22による演算結果に従って報知を行う。
【0041】
図8は、本実施形態に係る視線誘導装置1の詳細の処理を示すフローチャートであって、運転成績の算出等の処理を示している。まず、車両がカーブに差し掛かった場合、運転成績演算部23は、制御開始基準点演算部21により算出された基準点の情報と、車両位置検出部11から自車位置情報とから、基準点の前後数m間の区間を求め、この区間を運転成績算出区間として決定する(S21)。
【0042】
そして、運転成績演算部23は、ステアリングセンサ等からのステアリング操舵角信号を入力し(S22)、転舵速度の標準偏差を指標に運転成績を算出する(S23)。次いで、記憶部24は、ステップS23において算出された運転成績と、カーブ走行時において実際に視線誘導の報知が行われたタイミングの情報とを対応付けて記憶する(S24)。
【0043】
このようにして、本実施形態に係る視線誘導装置1によれば、接線と走行ラインとが為す角度を算出し、この角度の変化量が最大となる地点を基準点とし、基準点に基づいて視線誘導をすべき旨の報知を行う。ここで、人の視覚特性には、現在箇所から目的箇所までの距離と角度とを同期させるようにして目的箇所まで達する特性がある。すなわち、距離変化と角度変化とは同期する傾向にあり、これを車両に適用すると自車位置から目的箇所までの視線移動量と方位角とが同期することとなる。このため、接線と走行ラインとが為す角度、すなわち方位角の変化量が最大となる基準点において、視線移動量の変化率が最大となるようにすることが望ましく、運転者が視線を動かすのに最適な地点(基準点)といえる。従って、基準点に基づいて、自車両の運転者に対して視線誘導をすべき旨の報知を行うことにより、カーブから抜ける際、すなわちコーナーの立ち上がり部分におけるステアリング操作のバラツキを抑えることができる。
【0044】
また、接線を算出できない場合、車両位置と車両位置前方側の所定距離の地点とを結ぶ仮接線を算出し、仮接線と走行ラインとが為す角度を算出する。ここで、カーブの形状によってはカーブの終了付近において接線が算出できず、基準点を算出できない場合がある。よって、仮接線を求めることにより、このような場合において基準点を算出して、ステアリング操作のバラツキを抑えることができる。
【0045】
また、接線を複数算出可能な場合、自車両の位置から2番目に自車両近い道路内側に向かう接線を算出し、2番目に自車両近い道路内側との接線と走行ラインとが為す角度を算出する。ここで、カーブが連続するS字カーブなどの場合、接線を複数算出できる。そして、運転技術の高いものは最初のカーブを抜ける際に次のカーブの内側を視認する傾向にある。このため、角度の算出についても、運転技術の高いものの視認傾向に合わせることにより、より適正な視線誘導を行うことができる。
【0046】
また、自車両が基準点に達する所定時間前から、自車両が基準点に達するまでの間に視線誘導をすべき旨の報知を行う。実際に運転者は視線を変化させるのと同時にステアリング操作を行うことができ、視線を変化させた後にステアリング操作を行う傾向がある。このため、基準点到達前に視線誘導を行うことにより、基準点到達時点において実際にステアリング操作を行わせることが可能となり、ステアリング操作のバラツキを抑えることができる。
【0047】
また、運転成績と視線誘導をすべき旨の報知が行われたタイミングとを対応付けて記憶しておき、記憶された運転成績に基づいて、報知のタイミングを探索する。このため、運転者が基準点において視線誘導を行うことができる最適なタイミングを探索することとなり、一層ステアリング操作のバラツキを抑えることができる。
【0048】
次に発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係る視線誘導装置2は第1実施形態のものと同様であるが、構成等が一部異なっている。以下第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0049】
図9は、第2実施形態に係る視線誘導装置2を示すブロック図である。図9に示すように、第2実施形態に係る視線誘導装置2は、新たに、撮像装置(撮像手段)40を備えている。また、視線誘導タイミング演算装置20が、新たに、顔向き検出部(顔向き検出手段)26及び固有反応時間演算部(固有反応時間算出手段)27を有している。
【0050】
撮像装置40は、運転者の顔を撮像するものであって、例えば,インスツルメントパネル上部に設けられたがCCDカメラによって構成されている。顔向き検出部26は、撮像装置40により撮像された運転者の顔の向きを検出するものである。この顔向き検出部26は、運転者の顔のサンプルとの一致度など、種々の方法により運転者の頭部の姿勢角を算出して、顔の向きを検出する。
【0051】
固有反応時間演算部27は、顔向き検出部26によって運転者の顔の向きの変化が検出されてから、ステアリング操作を行うまでの固有反応時間を算出するものである。ここで、発明者らは、運転者がカーブ走行する場合における頭部ヨーレートとステアリング操舵角の関係を調べたところ、常にステアリング操舵角に先行して、頭部が動くという実験結果を得た。すなわち運転者は、頭部を動かした後にステアリング操作を行うこととなる。また、頭部を動かしてからステアリング操作を行うまでの時間は、運転技術が高い者ほど小さくなる傾向があることがわかった。固有反応時間演算部27は、このような運転者の頭部(顔の向き)変化からステアリング操作が行われるまでの固有反応時間を算出することとなる。
【0052】
また、視線誘導タイミング演算部22は、制御開始基準点演算部21により算出された基準点と、固有反応時間演算部27により算出された固有反応時間との情報を入力し、車両が基準点に到達する固有反応時間前に視線誘導が行われるように報知タイミングを算出することとなる。
【0053】
なお、第2実施形態において視線誘導タイミングの報知が行われる際の処理については、図7に示したものと同様である。
【0054】
図10は、第2実施形態に係る視線誘導装置2の詳細の処理を示すフローチャートであって、固有反応時間の算出等の処理を示している。図10に示すように、顔向き検出部26は、撮像装置40によって撮像された運転者の顔画像から顔の向きを検出する(S31)。次に、顔向き検出部26は、前回のステップS21において検出した顔の向きと、今回のステップS21において検出した顔の向きとを比較して、顔の向きに変化があったか否かを判断する(S32)。
【0055】
顔の向きに変化がなかったと判断した場合(S32:NO)、処理はステップS31に移行する。一方、顔の向きに変化があったと判断した場合(S32:YES)、固有反応時間演算部27は、固有反応時間を測定する(S33)。この際、固有反応時間演算部27は、顔の向きが変化してからステアリング操舵角信号によりステアリング操作が確認されるまでの時間を測定し、これを固有反応時間とする。
【0056】
なお、固有反応時間演算部27は、顔の向きが変化してから一定以上の時間(例えば2秒以上の時間)が経過した場合、単にステアリング操作を伴わない顔の向きの変化であったと判断し、処理はステップS31に移行してもよい。
【0057】
そして、固有反応時間演算部27は、固有反応時間を算出すると、これを記憶することとなる(S34)。その後、図10に示す処理は終了する。
【0058】
このようにして、第2実施形態に係る視線誘導装置2によれば、第1実施形態と同様に、カーブから抜ける際、すなわちコーナーの立ち上がり部分におけるステアリング操作のバラツキを抑えることができる。
【0059】
さらに、第2実施形態によれば、運転者の顔の向きの変化を検出してから、ステアリング操作を行うまでの固有反応時間を算出し、自車両が基準点に達する固有反応時間前に視線誘導をすべき旨の報知を行う。ここで、運転者は、ステアリング操作を行う前に先に顔の向きを変化させる傾向にある。しかも、ステアリング操作から顔の向きの変化までの時間については、運転者固有のものである。よって、固有反応時間を算出し、自車両が基準点に達する固有反応時間前に視線誘導をすべき旨の報知を行う。これにより、基準点においてステアリング操作が行われることとなり、ステアリング操作のバラツキを一層抑えることができる。
【0060】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、各実施形態を組み合わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1,2…視線誘導装置
10…ナビゲーション装置
11…車両位置検出部(車両位置検出手段)
12…道路情報検出部(道路情報検出手段)
20…視線誘導タイミング演算装置
21…制御開始基準点演算部(経路推定手段、接線算出手段、走行ライン検出手段、角度算出手段、基準点算出手段)
22…視線誘導タイミング演算部
23…運転成績演算部(運転成績算出手段)
24…記憶部(記憶手段)
25…視線誘導タイミング探索部(タイミング探索手段)
26…顔向き検出部(顔向き検出手段)
27…固有反応時間演算部(固有反応時間算出手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の位置を検出する車両位置検出手段と、
自車両前方の道路形状を検出する道路形状検出手段と、
前記自車両がカーブ走行するにあたり、前記車両位置検出手段により検出された車両位置と、前記道路形状検出手段により検出された道路形状とから、自車両の走行経路を推定する経路推定手段と、
前記経路推定手段により推定された走行経路における車両位置から、前記道路形状検出手段により検出された道路の内側に向かう接線を算出する接線算出手段と、
前記経路推定手段により推定された走行経路における車両の走行方向を走行ラインとして検出する走行ライン検出手段と、
前記接線算出手段により算出された接線と、前記走行ライン検出手段により検出された走行ラインとが為す角度を算出する角度算出手段と、
前記角度算出手段により算出された角度の変化量が最大となる地点を基準点として算出する基準点算出手段と、
前記基準点算出手段により算出された基準点に基づいて、自車両の運転者に対して視線誘導をすべき旨の報知を行う報知手段と、
を備えることを特徴とする視線誘導装置。
【請求項2】
前記接線算出手段は、前記接線を算出できない場合、前記経路推定手段により推定された走行経路における車両位置と当該車両位置前方側の所定距離の地点とを結ぶ仮接線を算出し、
前記角度算出手段は、前記接線算出手段により算出された仮接線と、前記走行ライン検出手段により検出された走行ラインとが為す角度を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の視線誘導装置。
【請求項3】
前記接線算出手段は、前記接線を複数算出可能な場合、自車両の位置から2番目に自車両近い道路内側に向かう接線を算出し、
前記角度算出手段は、2番目に自車両近い道路内側との接線と、前記走行ライン検出手段により検出された走行ラインとが為す角度を算出する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の視線誘導装置。
【請求項4】
前記報知手段は、自車両が前記基準点に達する所定時間前から、自車両が前記基準点に達するまでの間に視線誘導をすべき旨の報知を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の視線誘導装置。
【請求項5】
自車両の左右のふらつき量に応じて運転成績を算出する運転成績算出手段と、
前記運転成績算出手段により算出された運転成績と前記報知手段により視線誘導をすべき旨の報知が行われたタイミングとを対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段により記憶された運転成績に基づいて、報知のタイミングを探索するタイミング探索手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の視線誘導装置。
【請求項6】
運転者の顔を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された運転者の顔の向きを検出する顔向き検出手段と、
前記顔向き検出手段により運転者の顔の向きの変化を検出してから、ステアリング操作を行うまでの固有反応時間を算出する固有反応時間算出手段と、をさらに備え、
前記報知手段は、自車両が前記基準点に達する固有反応時間前に視線誘導をすべき旨の報知を行う
ことを特徴とする請求項3又は請求項4のいずれかに記載の視線誘導装置。
【請求項1】
自車両の位置を検出する車両位置検出手段と、
自車両前方の道路形状を検出する道路形状検出手段と、
前記自車両がカーブ走行するにあたり、前記車両位置検出手段により検出された車両位置と、前記道路形状検出手段により検出された道路形状とから、自車両の走行経路を推定する経路推定手段と、
前記経路推定手段により推定された走行経路における車両位置から、前記道路形状検出手段により検出された道路の内側に向かう接線を算出する接線算出手段と、
前記経路推定手段により推定された走行経路における車両の走行方向を走行ラインとして検出する走行ライン検出手段と、
前記接線算出手段により算出された接線と、前記走行ライン検出手段により検出された走行ラインとが為す角度を算出する角度算出手段と、
前記角度算出手段により算出された角度の変化量が最大となる地点を基準点として算出する基準点算出手段と、
前記基準点算出手段により算出された基準点に基づいて、自車両の運転者に対して視線誘導をすべき旨の報知を行う報知手段と、
を備えることを特徴とする視線誘導装置。
【請求項2】
前記接線算出手段は、前記接線を算出できない場合、前記経路推定手段により推定された走行経路における車両位置と当該車両位置前方側の所定距離の地点とを結ぶ仮接線を算出し、
前記角度算出手段は、前記接線算出手段により算出された仮接線と、前記走行ライン検出手段により検出された走行ラインとが為す角度を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の視線誘導装置。
【請求項3】
前記接線算出手段は、前記接線を複数算出可能な場合、自車両の位置から2番目に自車両近い道路内側に向かう接線を算出し、
前記角度算出手段は、2番目に自車両近い道路内側との接線と、前記走行ライン検出手段により検出された走行ラインとが為す角度を算出する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の視線誘導装置。
【請求項4】
前記報知手段は、自車両が前記基準点に達する所定時間前から、自車両が前記基準点に達するまでの間に視線誘導をすべき旨の報知を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の視線誘導装置。
【請求項5】
自車両の左右のふらつき量に応じて運転成績を算出する運転成績算出手段と、
前記運転成績算出手段により算出された運転成績と前記報知手段により視線誘導をすべき旨の報知が行われたタイミングとを対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段により記憶された運転成績に基づいて、報知のタイミングを探索するタイミング探索手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の視線誘導装置。
【請求項6】
運転者の顔を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された運転者の顔の向きを検出する顔向き検出手段と、
前記顔向き検出手段により運転者の顔の向きの変化を検出してから、ステアリング操作を行うまでの固有反応時間を算出する固有反応時間算出手段と、をさらに備え、
前記報知手段は、自車両が前記基準点に達する固有反応時間前に視線誘導をすべき旨の報知を行う
ことを特徴とする請求項3又は請求項4のいずれかに記載の視線誘導装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−204795(P2010−204795A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47729(P2009−47729)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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