説明

親水性の異なるモノマーを含む両連続マイクロエマルションからのコポリマーの形成

コポリマーは、相互接続された細孔を画定し、重合済みのモノマーを含む。該モノマーは、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)よりも高い親水性を有する第1のモノマーと、HEMAと同等の親水性又はHEMAよりも低い親水性を有する第2のモノマーとを含む。ポリマーを形成する方法では、水、界面活性剤、及び多孔性コポリマーを形成するための共重合可能なモノマーの組合せを含む両連続マイクロエマルションを用意する。モノマーの組合せは、第1と第2のモノマーを含む。両連続マイクロエマルションにおけるモノマーを、多孔性コポリマーを形成するために重合する。第1のモノマーは、N−ビニルピロリドン(NVP)又はメタクリル酸(MAA)を含むことができる。第2のモノマーは、HEMA又はメタクリル酸メチル(MMA)を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、概して、人工角膜又はコンタクトレンズの用途に適したポリマー、並びに、特に、両連続マイクロエマルションから形成されるコポリマー及びそれらを形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]Chowらの国際公開第2006/014138号パンフレット(以下「Chow」)では、コンタクトレンズ又は人工角膜において使用することができる薬物送達のためのポリマーを開示している。この技術においては、ポリマーは、水、モノマー、モノマーと共重合可能な界面活性剤、及び薬物を含む両連続マイクロエマルションから形成することができる。Chowにおいて開示されている一実施例では、モノマーは、メタクリル酸メチル(MMA)とメタクリル酸2−ヒドロキシルエチル(HEMA)のモノマーの組合せである。マイクロエマルションにおけるモノマーの濃度は、生じた生成物の特性を変化させるために調整することができる。
【発明の概要】
【0003】
[0003]第1のモノマーと第2のモノマーの組合せをマイクロエマルション中に含めることによって、ポリマーを形成することができることを発見した。第1のモノマーは、HEMAよりも親水性が高く、N−ビニルピロリドン(NVP)又はメタクリル酸(MAA)とすることができる。第2のモノマーの親水性は、HEMAと同等又はHEMAよりも低い。第2のモノマーは、MMAなどのように、疎水性とすることができる。
【0004】
[0004]例えば、多孔性ポリマーを形成することができ、マイクロエマルションの内容物を調整することによって多孔性構造の特性を好都合に調整することができる。改善された酸素透過性及び平衡含水率を有するポリマーも得ることができる。ポリマーの機械的強度を適切なレベルに維持しながら、こうした改善を得ることができる。
【0005】
[0005]したがって、本発明の一態様では、ポリマーを形成する方法を提供する。水、界面活性剤、及び多孔性コポリマーを形成するために共重合可能なモノマーの組合せを含む両連続マイクロエマルションを提供する。モノマーの組合せは、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)よりも高い親水性を有する第1のモノマーと、HEMAと同等の親水性又はHEMAよりも低い親水性を有する第2のモノマーとを含む。両連続マイクロエマルションにおけるモノマーは、重合して多孔性コポリマーを形成する。第1のモノマーは、N−ビニルピロリドン(NVP)又はメタクリル酸(MAA)を含むことができる。第2のモノマーは、HEMA又はメタクリル酸メチル(MMA)を含むことができる。モノマーの組合せは、マイクロエマルション中の総濃度が約38wt%以下とすることができる。第2のモノマーは、マイクロエマルション中の濃度が約10〜約25wt%とすることができる。マイクロエマルション中の水の濃度は約25〜約50wt%とすることができる。マイクロエマルション中の界面活性剤の濃度は約10〜約50wt%とすることができる。マイクロエマルションは、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)などの架橋剤を含むことができる。マイクロエマルションは、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(DMPA)などの重合開始剤を含むことができる。界面活性剤は、ω−メトキシポリ(エチレンオキシド)40ウンデシルα−メタクリレートマクロモノマーなどのポリ(エチレンオキシド)−マクロモノマーとすることができる。
【0006】
[0006]本発明の別の態様によれば、前段落に記載している方法に従って形成されるコポリマーを提供する。
【0007】
[0007]本発明のさらなる態様によれば、相互接続された細孔を画定し、重合済みのモノマーを含むコポリマーを提供する。該モノマーは、HEMAよりも高い親水性を有する第1のモノマーと、HEMAと同等の親水性又はHEMAよりも低い親水性を有する第2のモノマーとを含む。第1のモノマーは、NVP又はMAAを含むことができる。第2のモノマーは、HEMA又はMMAを含むことができる。細孔の孔径は、約10〜約100nmとすることができる。第1のモノマーのコポリマーに対する重量比は、約0.15〜約0.2とすることができる。第2のモノマーのコポリマーに対する重量比は、約0.15〜約0.2とすることができる。コポリマーは、以下の特性の1つ又は複数を有することができる。酸素透過係数が約26などの約10〜約30、平衡含水率が約76wt%以上又は約50〜約76wt%、光透過率が約95%以上などの約88%以上、グルコース拡散透過係数が約1×10−6〜約4×10−6cm−2/s又は約2×10−6cm−2/s以上、アルブミン拡散透過係数が約1.4×10−7cm−2/s以上又は約0.1×10−6〜約2×10−6cm−2/s、引張強度が約2MPa以上又は約1〜約7MPa、ヤング率が約100MPa以上又は約90〜約400MPa。該コポリマーは、本明細書に記載している方法に従って形成することができる。
【0008】
[0008]本発明の他の態様及び特徴は、添付の図と併せて、本発明の特定の実施形態の以下の説明を精査すれば、当業者には明らかとなるであろう。
【0009】
[0009]本発明の実施形態を例示だけのために示している図において、
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】[0010] 図1は、本発明の典型的な実施形態である、コポリマー試料上で培養した角膜上皮細胞の位相コントラスト画像を示す図である。
【図2】[0011] 図2及び図3は、本発明の典型的な実施形態に従って調製された、別のコポリマー試料上で培養して染色した角膜上皮細胞の位相コントラスト画像を示す図である。
【図3】[0011] 図2及び図3は、本発明の典型的な実施形態に従って調製された、別のコポリマー試料上で培養して染色した角膜上皮細胞の位相コントラスト画像を示す図である。
【図4】[0012] 図4〜8は、比較ポリマー上で培養した、角膜上皮細胞の位相コントラスト画像を示す図である。
【図5】[0012] 図4〜8は、比較ポリマー上で培養した、角膜上皮細胞の位相コントラスト画像を示す図である。
【図6】[0012] 図4〜8は、比較ポリマー上で培養した、角膜上皮細胞の位相コントラスト画像を示す図である。
【図7】[0012] 図4〜8は、比較ポリマー上で培養した、角膜上皮細胞の位相コントラスト画像を示す図である。
【図8】[0012] 図4〜8は、比較ポリマー上で培養した、角膜上皮細胞の位相コントラスト画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0013]本発明の典型的な実施形態は、透明で多孔性のポリマーに関する。該ポリマーは、人工角膜又はコンタクトレンズの用途で使用するのに適した物理的、化学的及び生物学的特性を有する。該ポリマーは、第1のモノマー及び第2のモノマーから形成されるコポリマーを含む。第1のモノマーは、N−ビニルピロリドン(NVP)又はメタクリル酸(MAA)とすることができる。第2のモノマーは、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチル(HEMA)である。
【0012】
[0014]本明細書において、品目のリストで、最後の品目の前に「又は」がある場合は、品目のいずれか1つを使用することができ、組み合わされた品目が本質的に非両立又は排他的でない限りは、リストに挙げられた品目のうちいずれか2つ以上の可能な組合せも使用することができる。
【0013】
[0015]いくつかの典型的な実施形態では、該コポリマーは、界面活性剤成分も含み、第1のモノマーと第2のモノマーそれぞれの該コポリマーに対する重量比は、乾燥量基準で、約0.15〜約0.2とすることができる。該界面活性剤は、該モノマーと重合可能であってもよく、ω−メトキシポリ(エチレンオキシド)40−ウンデシルα−メタクリレートマクロモノマー(本明細書では、C−PEO−C11−MA−40として表示する)などのポリ(エチレンオキシド)−マクロモノマー(PEO−マクロモノマー)とすることができる。該マクロモノマーの鎖長は変化させることができる。例えば、該マクロモノマーは、CHO(CHCHO)−(CHVの形とすることができる、又は、SO(CHNCHCHCHN(CHVなどの双性イオン性界面活性剤とすることができる(式中、mは1〜20の範囲の整数であり、nは6〜20の範囲の整数であり、xは10〜110の範囲の整数であり、Vはアクリル酸メチル又は別の共重合可能な不飽和基である)。
【0014】
[0016]いくつかの典型的な実施形態では、該コポリマーは、光透過率が約95%以上、屈折率が約1.35〜約1.45、グルコース拡散透過係数が約1.4×10−6cm/s、アルブミン拡散透過係数が約0.1〜約2×10−6cm/s、平衡含水率が約50〜約76%、酸素透過係数(D)が約10〜約30、引張強度が約1〜約7MPa、及びヤング率が約90〜約400MPaなどの、良好な光透過特性を示すことができる。
【0015】
[0017]一実施形態では、該コポリマーは、酸素透過係数が約26〜約28などの約26以上とすることができる。酸素透過性は、Irving Fatt博士にちなんで名付けられたFATT法としても知られている、ポーラログラフ法を使用して測定することができる。この方法は、201T型オキシジェンパーミオメーター(Oxgen Permeometer)(M201T、Rehder(商標)より入手可能)で実施することができる。さらに詳細には、<http://www.rehder−dev.com/DkEquipment.html>(2009年1月3日現在)を参照されたい。
【0016】
[0018]コポリマーは、平衡含水率が約76又は約77wt%などの約76wt%(重量パーセント)以上とすることができる。コポリマーの平衡含水率(Q)は以下のように計算される
Q=(W−W)×100/W (1)
(式中、Wは飽和重量であり、Wは乾燥重量である)。飽和重量は、該ポリマーを水に浸した後に測定することができ、水に浸す時間は、さらに浸しても総重量がもはや著しくは増加しない程度の時間である。
【0017】
[0019]該コポリマーはまた、光透過率が約88〜約93%などの88%超、屈折率が約0.9〜約1.3、グルコース拡散透過係数が約2.1×10−6〜約3.2×10−6cm−2/sなどの約2×10−6cm−2/s以上、アルブミン拡散透過係数が約1.4×10−7〜約1.8×10−7cm−2/sなどの約1.4×10−7cm−2/s超、引張強度が約2MPa以上、ヤング率が約100MPa以上とすることができる。
【0018】
[0020]医療用途としては、該コポリマーは、安全であるべきであり、ヒトの組織及び細胞に対して生体適合性があるべきである。例えば、コンタクトレンズとして使用するためには、該ポリマーが、気体(例えばO及びCO)、様々な塩、栄養素、水、及び涙液の他の様々な成分などの流体に対して透過性があることが望ましい。該ポリマー全体に分布するナノ細孔の存在により、眼とその周囲にわたって気体、分子、栄養素及びミネラルの輸送を容易にする。該ポリマーが人工角膜において使用される場合には、該ポリマーは、十分な光学的透明度、適切な屈折率、外科手術に耐えられる十分な強度があるべきであり、非毒性、非免疫原性及び非炎症性であるべきである。
【0019】
[0021]本明細書で使用する場合、用語「透明な」は、人工角膜、コンタクトレンズ又は同様の器具に対して許容できる透明度を幅広く表現する。例えば、コポリマーを通過する可視光線の透過度は、人工角膜、コンタクトレンズ又は他の眼科器具の製造において使用される他の材料の可視光線の透過度と同等とすることができる。
【0020】
[0022]一実施形態では、該コポリマーは、相互接続された細孔を画定するポリマーマトリックスを有する。細孔の少なくともいくつかが、1つ又は複数の連続的なネットワークを形成するために互いに結合又は連結される場合に、細孔が相互接続される。細孔は、水、空気又は別の流体などの流体で満たすことができる。該流体は、該ポリマーから放出可能であってもよい。
【0021】
[0023]該細孔の孔径は約30〜80nmとすることができる。該細孔は、円形又は他の断面形状とすることができ、様々なサイズとすることができる。本明細書で使用する場合、孔径とは、細孔の断面の平均的又は有効な直径のことを指す。円形ではない断面の有効な直径は、非円形の断面と同等の断面面積を有する円形の断面の直径に等しい。いくつかの実施形態では、該細孔が水で満たされると、該コポリマーが膨潤性である場合などでは、該細孔のサイズは、該コポリマーにおける含水率に応じて変化することができる。該コポリマーが乾燥している場合には、該細孔のうちのいくつか又は全てが空気などの気体によって満たされ得る、又は部分的に満たされ得る。したがって、該コポリマーは、スポンジのように振る舞うことができる。代替実施形態では、該コポリマーが乾燥状態であり、該ポリマーの含水率が最低又はほぼ最低である場合には、該孔径は、約10〜100nmの範囲とすることができる。
【0022】
[0024]該細孔は、無作為に分布し得る。該細孔のうちのいくつかは、閉じた細孔となり得るが、この場合、これらの細孔は、他の細孔と接続若しくは結合していない、又は、該コポリマーの表面に対して開口していないことを意味している。以下で十分に論じるように、該細孔の全てが相互接続されている必要はない。当業者であれば理解されようが、コポリマーは、使用に応じて、多かれ少なかれ相互接続された細孔を有するように調製することができる。
【0023】
[0025]該コポリマーは、本明細書で記載している典型的な方法に従って形成することができる。
【0024】
[0026]本発明の典型的な実施形態では、本明細書で記載しているコポリマーは以下のように調製することができる。水、界面活性剤、及び多孔性コポリマーを形成するために共重合可能なモノマーの組合せを含む両連続マイクロエマルションを提供する。モノマーの組合せは、第1のモノマーと第2のモノマーとを含む。両連続マイクロエマルション中の重合可能なモノマー及び界面活性剤は、多孔性コポリマーを形成するために重合される。
【0025】
[0027]マイクロエマルションの内容物は、マイクロエマルションが両連続性であるように選択される。その結果、形成されたコポリマーは、相互接続された細孔を有する。
【0026】
[0028]当技術分野で理解されているように、「マイクロエマルション」は、1つの液相の別の液相中への熱力学的に安定な分散を指す。マイクロエマルションは、界面活性剤の界面膜によって安定化することができる。2つの液相のうちの1つは、親水性又は疎油性(水など)であり、他方は、疎水性又は親油性(油など)である。典型的には、マイクロエマルションにおける液滴又はドメイン径は、約100ナノメートル以下であり、したがって、該マイクロエマルションは透明である。マイクロエマルションは、連続性又は両連続性とすることができる。マイクロエマルションの調製は、当技術分野で知られている。例えば、マイクロエマルションを形成するために、超音波処理、渦流撹拌、又は混合物中の異なる相のマイクロ液滴を生成するための他の撹拌技術などの標準的技術によって、成分の混合物を分散させることができる。或いは、該混合物は、微小液滴を生成するために、ナノメートルスケールの細孔を有するフィルターを通過させることができる。
【0027】
[0029]様々な成分の比率及び界面活性剤の親水性−親油性値に応じて、液滴が油で膨潤し、水中に分散することができる(正又はO/Wマイクロエマルションと称される)、若しくは、水で膨潤するが、油中に分散することができる(逆又はW/Oマイクロエマルションと称される)、又はマイクロエマルションは両連続性とすることができる。
【0028】
[0030]両連続マイクロエマルションにおいては、油性ドメイン(モノマーを含む)及び水性ドメイン(水を含む)が無作為に分布し、それぞれが相互接続され、あらゆる三次元方向に拡散する。油性ドメインが重合されると、水性ドメインの存在により、水性ドメイン中に存在していた水で満たされる相互接続された細孔が生じる。
【0029】
[0031]モノマーは主に、油性ドメインに留まるが、モノマーの親水性は水のドメインに拡散することができる。モノマーの親水性が増加すると、水のドメインに延びるモノマー部分が増加し得る。これにより、水ドメインの空間のいくらかは、重合済みモノマーの親水性部分によって占められるので、生じたコポリマーにおける細孔サイズを縮小させる効果があり得る。モノマーの親水性が高くなれば、ますますこの効果は明確になり得る。さらに、コポリマーが形成されるとき、表面領域がモノマーの親水基でより多く満たされるので、生じたコポリマーにおける細孔の内面も、親水性がより高くなり得る。
【0030】
[0032]典型的には、界面活性剤は、2つの異なるドメインの間の界面領域に留まり、分離状態を安定化させる。
【0031】
[0033]界面活性剤は、1種又は複数の界面活性剤を含むことができる。界面活性剤は、モノマーのうちの少なくとも1つと共重合可能でもよい。重合可能な界面活性剤は、ポリマーを形成するために、それ自体と重合することもできるし、他の単量体化合物と重合することもできる。混合物のための界面活性剤としては、マイクロエマルション中のモノマーの少なくとも1つと共重合できるいずれかの適切な界面活性剤とすることができる。理解できることであるが、界面活性剤がコポリマーに共重合される場合、重合後に、界面活性剤をコポリマーから分離する必要はない。このことは、ポリマーの形成過程が単純化されるので、有利となり得る。界面活性剤は、陰イオン性、非イオン性又は双性イオン性とすることができる。典型的な界面活性剤には、上述したものが含まれる。
【0032】
[0034]所与の用途のためのモノマーと界面活性剤の選択及び重量比は、用途次第とすることができる。概して、この選択と重量比は、生じたコポリマーが、使用される環境に適し、適合性があり、所望の特性を有するように選択されるべきである。前に述べたように、コポリマーの特性の調整及び均衡化は、第1と第2のモノマー両方の存在によって好都合に容易になされる。
【0033】
[0035]マイクロエマルション中の水は、純粋な水又は水性液体でもよい。この水は、特定の性質を有する様々な添加物を、任意選択で含むことができる。こうした添加物は、生じたコポリマーにおける1つ又は複数の所望の特性を実現するために選択することができ、薬物、タンパク質、酸素、増量剤、染料、無機電解質、pH調整剤などの1種又は複数を含むことができる。
【0034】
[0036]当業者であれば理解されるように、マイクロエマルションの成分が適切な比であり、液滴又はドメインが適切なサイズである場合に、ナノ多孔性で透明なポリマーマトリックスが得られる。当業者に知られているように、両連続マイクロエマルションを形成するのに適した成分の適切な比率を決定するために、モノマー、水、及び界面活性剤のための三元状態図を作成することができる。単相マイクロエマルションに対応する図の領域を特定し、成分がその特定された領域におさまるように、成分の比率を選択することができる。当業者であれば、生じたコポリマーにおけるある種の望ましい特性を実現するために、この図に従って特性を調整することができるであろう。さらに、両連続マイクロエマルションの形成は、当業者に既知の技術を使用して確認することができる。例えば、混合物の導電率は、マイクロエマルションが両連続性である場合は、著しく上昇し得る。混合物の導電率は、0.1M塩化ナトリウム溶液を混合物中に滴定した後、導電率計を使用して測定することができる。
【0035】
[0037]成分の比率が、それぞれ、水が約25〜約50wt%、モノマーの組合せが約10〜約50wt%、NVPが約10〜約25wt%、MAAが約10〜約50wt%、及び界面活性剤が約10〜約50wt%である場合に、適切な両連続マイクロエマルションを形成することができる。
【0036】
[0038]当業者であれば、本開示で提供する指針によって、生じたコポリマーの様々な特性に対する所望の効果を実現するために、例えば、生じたコポリマーの機械的強度又は親水性を改善するために、モノマー及び界面活性剤の内容物を調整することができるであろう。
【0037】
[0039]典型的な一実施形態では、モノマーの組合せは、マイクロエマルション中の総濃度を約38wt%とすることができる。HEMAの濃度は、約15wt%とすることができる。
【0038】
[0040]マイクロエマルションは、当業者に既知の標準的な技術によって重合することができる。例えば、熱、触媒の添加、マイクロエマルションへの照射、又はマイクロエマルションへのフリーラジカルの導入によって、マイクロエマルションを重合することができる。選択される重合の方法は、マイクロエマルションの成分の性質次第となろう。
【0039】
[0041]マイクロエマルションの重合は、触媒の使用を含むことができる。この触媒は、モノマー及び界面活性剤の重合を促進するいずれの触媒又は重合開始剤とすることができる。選択される特定の触媒は、特定のモノマー及び使用される重合可能な界面活性剤又は重合の方法に依存し得る。例えば、重合は、光開始剤が触媒として使用される場合に、マイクロエマルションを紫外線(UV)照射にさらすことによって実現することができる。典型的な光開始剤としては、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(DMPA)及びジベンジルケトンが挙げられる。レドックス開始剤も使用することができる。典型的なレドックス開始剤としては、過硫酸アンモニウム及びN,N,N’,N’,−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)が挙げられる。過酸化物などのフリーラジカル開始剤を含むことができる熱開始剤も使用することができる。熱開始剤は、温度が上昇するに従って、重合を開始する。例えば、一実施形態では、熱硬化は、ペルカドックス(Perkadox)16を熱開始剤として使用し、約70℃の温度で1時間材料を硬化させることによって実現することができる。光開始剤、レドックス開始剤、又は熱開始剤の組合せも使用することができる。この点については、マイクロエマルション中に開始剤を含めることが有利となり得る。重合開始剤は、マイクロエマルションの約0.1〜約0.4wt%とすることができる。
【0040】
[0042]生じたコポリマーにおけるポリマー分子間の架橋結合を促進するために、架橋剤を混合物に添加することができる。適切な架橋剤としては、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレートなどが挙げられる。
【0041】
[0043]マイクロエマルションは、重合前に、所望の最終形状及び最終サイズに形成することができる。例えば、重合前に、混合物を所望の厚さの層に注ぐ若しくは広げることによって、又は混合物をガラスプレートの間に入れることによって、シート状材料を形成することができる。例えば、重合前に、混合物を型又は鋳型に注ぎ込むことによって、混合物を棒などの所望の形状に形成することもできる。
【0042】
[0044]重合後に、コポリマーをすすぎ、未反応のモノマー及びその他の未反応の物質を除去するために、水で平衡化することができる。すすがれたコポリマーは、医療又は臨床用途での使用に備えて、任意選択で乾燥及び滅菌することができる。乾燥と滅菌の両方は、当業者に知られているいずれの適切な方法でも実施することができる。いくつかの実施形態では、乾燥と滅菌の両方は、コポリマー中に含まれる材料に悪影響を及ぼさないように低温で、例えばエチレンオキシドガス又は紫外線を使用することによって、行うことができる。
【0043】
[0045]重合過程は、一段階で、実行することができる。
【0044】
[0046]生じたコポリマーは、人工角膜又は他の眼科器具又はコンタクトレンズなどの物品を形成するために使用することができる。人工角膜は、角膜創傷治癒の用途のために使用することができる。形成されたコンタクトレンズは、視力矯正若しくは眼の色の変更のために使用することができる、又は糖尿病用のコンタクトレンズとすることができる。
【0045】
[0047]両連続マイクロエマルションから形成されたコポリマーは、相互接続された細孔を画定する。
【0046】
[0048]コポリマーに対するHEMAの重量比は、約0.15〜約0.2とすることができ、コポリマーに対するNVP又はMAAの重量比は約0.15〜約2とすることができる。
【0047】
[0049]他の実施形態では、NVP又はMAAは、1種又は複数の親水性の高い他のモノマーで置き換えることができる。本明細書では、モノマーがHEMAよりも親水性が高い場合は、このモノマーを親水性が「高い」と考える。典型的には、モノマーが親水性の末端基を多く有するほど、モノマーの親水性も高くなる。したがって、高い親水性のモノマーは、その基本構造において、HEMAよりも親水性の末端基を多く有することができる。或いは、高い親水性のモノマーにおける親水基は、HEMAの親水基より個々に高い親水性を有していてもよい。材料の親水性は、その平衡含水率によって測定することができる。理解できることであるが、NVP及びMAAは、親水性が高い。シリコーン系モノマーなどの他の材料もあり、これらもまた高い親水性を示す。したがって、NVP及びMAは、こうした他の材料によって置き換えることができる。親水性の高い材料は、両親媒性でもよい。
【0048】
[0050]HEMAは、親水性がHEMAと同等又はHEMAよりも低い別のモノマーで置き換えることができる。例えば、第2のモノマーは、メタクリル酸メチル(MMA)とすることができる。
【0049】
[0051]本発明の典型的な実施形態では、第1のモノマーと第2のモノマーの組合せ及びそれらの濃縮物は、生じたコポリマーが特定の用途のために所望の特性を有するように、好都合に選択することができる。
【0050】
[0052]選択されるモノマーは、別のモノマー又は界面活性剤と共重合可能であるべきであるが、このモノマーは、それ自体と重合可能とすることもできる。適切な両連続マイクロエマルションを調製するために使用することができる各モノマーの量は、特定の用途に応じて、及び本明細書に示す指針を考慮して、当業者によって決定することができる。
【0051】
[0053]いくつかの実施形態では、第2のモノマーは、HEMA、MMA、アクリル酸2−ヒドロキシルエチル、モノカルボン酸、メタクリル酸グリシジル(GMA)を含むエチレン性不飽和モノマー及びシリコーン系モノマーから選択することができる。
【0052】
[0054]NVP又はMAAなどの親水性の高いモノマーの適切な量が、コポリマーを形成するためにHEMAなどの親水性の低いモノマーの適切の量と組み合わせて使用される場合は、たとえ、両連続マイクロエマルションにおけるモノマーの総濃度が、約38wt%以下などの比較的低い値であったとしても、それでも、生じたコポリマーは、人工角膜又はコンタクトレンズとしての使用に適した十分に高い弾性率及び引張強度を有することが見出された。さらに、生じたコポリマーは、より高い酸素透過性及び平衡含水率、減少したバルク水の吸収、向上した膨潤能力、及び栄養素透過性などの改善された特性を示す。該コポリマーは、またさらに、様々な生体物質と適合性がある。例えば、該コポリマーは、角膜上皮細胞の付着及び増殖を助けることができる。したがって、生じたコポリマーは、コポリマーを通した又はコポリマー中の、改善された流体輸送を可能にするバランスのとれた特性、すなわち、許容される機械的/光学的特性と表面特性などの許容される他の特性の両方を有することができる。
【0053】
[0055]好都合には、本発明の様々な実施形態によるコポリマーは、ヒト皮膚線維芽細胞に対する適合性及び機械的強度を有することができ、眼に装着するためのコンタクトレンズを製造するのに有利に使用することができる。
【0054】
[0056]該コポリマーは、所望の様々な物理的、化学的及び生化学的特性を有することができる。
【0055】
[0057]いくつかの実施形態では、眼科用薬などの薬物は、コポリマーを形成するためのマイクロエマルション中に分散するようにコポリマー中に組み込むことができる。マイクロエマルションは、眼科用薬がコポリマー若しくは細孔又は両方に組み込まれる透明で多孔性のコポリマーを形成するために重合することができる。
【0056】
[0058]該コポリマーは、角膜移植片で使用することができる。材料は、透明性、高い柔軟性、扱いやすさ、及び栄養素に対する透過性があるものとすることができる。これらの材料は、集密的な重層上皮シートを形成して、ヒト角膜上皮細胞(HCEC)の付着及び増殖も助けることができる。これらの材料は、生体適合性を有することができ、人工角膜としてのこれらの材料の使用により、疾患伝播のリスクを排除し、生体基質に関わる組織組成の不一致を減少させることができる。これらの材料は、特定の用途における特殊な要求に適するように特別仕様で形成又は作製することができる。ひとたび移植された材料は、完全な上皮バリアーを提供することができる。
【0057】
[0059]表面の親水性の向上は、表面の湿潤性を改善することができる。したがって、コンタクトレンズ表面の親水性が高くなれば、湿潤性が向上することにより、コンタクトレンズの装着感がより快適なものになり得る。さらに、コンタクトレンズの表面は、使用中に、涙液からのタンパク質及び脂質の沈着の影響を受けやすいということもある。沈着物が蓄積すると、眼の不快感、又は炎症さえ引き起こす恐れがある。洗浄せずに長期間装着した後で、表面がより高い基準の快適性及び生体適合性を満たさない場合、沈着物が広範囲となる恐れがある。本発明の典型的な実施形態は、こうした沈着物を減少させるコンタクトレンズの材料を提供することができる。
【0058】
[0060]本発明のいくつかの実施形態による典型的なコポリマーは、改善された酸素透過性、平衡含水率、屈折率又はグルコース/アルブミン透過性も提供することができる。
【0059】
[0061]試料ポリマーの特性及びこうしたポリマーを形成する典型的な方法を例証するために、以下に記載する。
【0060】
[0062]実施例
【0061】
[0063]実施例I
【0062】
[0064]比較ポリマーを含む試料コポリマーは、以下のように形成した。
【0063】
[0065]各試料のために、前駆体混合物が最初に調製された。様々な試料の混合物の主成分は、表Iに列挙してある。列挙した重量パーセントは、列挙した成分のみの総重量に基づいて算出した。該混合物は、両連続マイクロエマルションを形成した。
【表1】

【0064】
[0066]これらの成分は、各試料それぞれのために、ボルテックス混合によって混合された。
【0065】
[0067]C−PEO−C11−MA−40、HEMA、MMA、及び水のマイクロエマルションの単相領域は、スクリューキャップ試験管において、水を、マイクロエマルションの様々な組成物に滴定することによって決定した。各試料は、ボルテックス混合され、23℃の温度制御された環境において、平衡化された。状態図において、マイクロエマルション領域の相境界を確立するために、透明−混濁点が使用された。0.1M塩化ナトリウム溶液を混合物に滴定した後に、両連続領域のおおよその境界が、導電率計を使用した導電率測定からさらに推定された。試験により、混合物の水性内容物が約20wt%〜60wt%の範囲である場合に、マイクロエマルションを形成することができること、及び水性内容物が約20wt%未満から約20wt%超へ上昇した場合に、混合物の導電率が急激に上昇したことが示された。約20wt%での導電率の急激な上昇の原因は、両連続マイクロエマルションの特性であるマイクロエマルションにおける相互接続された多数の導電チャネルの形成によるものであったと考えられる。
【0066】
[0068]知られているように、重合を阻害する恐れがある相当量の酸素が確実に存在しないようにするために、マイクロエマルションの前駆体を、窒素ガスでプレパージした。試料の前駆体は、2枚のガラスプレートの間又はポリメタクリル酸エステルの型に入れた。次に、前駆体を入れたプレート又は型を、レイオネット(Rayonet)(商標)光反応室に入れ、重合を引き起こすために、約35℃で約2時間紫外線(254nm)にさらした。
【0067】
[0069]重合後に、液体のマイクロエマルションを、当初からマイクロエマルション中に存在する水で満たされた相互接続された細孔を有する固体のポリマーに変換した。重合後に、望ましくない副産物は観察されなかった。
【0068】
[0070]重合済みの試料材料は、プレート又は型から取りだした後に、未重合の残留モノマー、界面活性剤、マレイン酸チモロールなどを除去するために洗浄した。試料材料は、脱イオン蒸留水で、室温〜約60℃の間の温度で1〜2時間連続的に洗浄した。洗浄終了時には、洗浄液中に、190〜350nmの間のUV吸収バンドが存在しないことによって確認されたように、試料材料中には、未反応のモノマー及びチモロールはほとんど存在しなかった。
【0069】
[0071]試料ポリマー膜の断面トポグラフィーが、JEOL6700(商標)電界放射電子銃走査型電子顕微鏡(FEG−SEM)を使用して実施された。該膜は、液体窒素中で凍結破砕し、断面を露出させた。試験前に、これらを室温で約24時間真空乾燥し、次に金の薄層でコーティングした(JEOLイオンスパッタ(ion−sputter)JFC−1100(商標)を使用)。ポリマー試料(各約10mg)の熱挙動は、パーキンエルマー(Perkin Elmer)TGA7(商標)熱重量分析器を使用して、乾燥窒素流下で、30〜600℃(ランプ速度=10℃/分)について評価した。
【0070】
[0072]ポリマー膜の平衡含水率を測定するために、事前に重量を計った乾燥試料を、様々な温度の脱イオン水に浸した。飽和重量を測定する前に、該試料を、少なくとも24時間水に浸した。過剰な表面の水を1枚の濾紙で除去した後に、十分に膨潤した(水で飽和した)それぞれの試料の重量を記録した。平衡含水率を、式(1)に従って算出した。
【0071】
[0073]試料膜の歪み、ヤング率及び引張強度は、インストロン(Instron)(商標)微小力試験器(インストロン4502、米国)を使用して測定した。標準サイズのサンプルを、ASTM(米国材料試験協会)638に従って使用した。ポリマー膜の光透過率は、アジレント(Agilent)5453(商標)UV−可視分光光度計を使用して検査した。
【0072】
[0074]リン酸緩衝食塩水(PBS)中に十分水和させた試料材料の屈折率は、屈折計で測定した。
【0073】
[0075]材料の酸素透過性は、201T型パーミオメーター(Rehder(商標)、M201T)を使用して測定した。
【0074】
[0076]両連続マイクロエマルションから形成された試料の、測定された代表的な特性は、表IIに記している。
【表2】

【0075】
[0077]試料材料は、白色光の透過が約90%という光学的な透明度を有し、屈折率は、約0.9〜約1.3であり、これは、ヒト角膜支質の屈折率(1.38)に匹敵した。
【0076】
[0078]材料のグルコース拡散透過係数は、約2.1×10−6〜約3.6×10−6cm/sであり、これは、角膜支質(約2.5×10−6cm/s)のグルコース拡散透過係数に匹敵した。
【0077】
[0079]アルブミン拡散透過係数は、約0.1×10−7〜約1.8×10−7cm/sであった。
【0078】
[0080]ナノ構造材料は、ナノ多孔性チャネルに関わるより高い透過性のために魅力的であり、移植片と下層組織との間のより強い相互作用、並びに栄養素及び物質のより急速な拡散を可能にした。試料材料は、移植片と周縁部との接合部の周囲に挿入された縫合糸に耐えるのに適した機械的特性を有していた。引張強度は、約1.9〜約5.7MPaで変動し、概して、試料を形成するために使用されるマイクロエマルションにおける水の濃度が減少するのに伴って上昇した。引張強度はまた、試験材料中の含水率が、約60%超に上昇した場合に低下した。引張強度が約1.9MPa以上及びヤング率が約100MPa以上の材料は、角膜移植に使用するための十分な強度及び耐久性を有するであろうことが予想される。
【0079】
[0081]表IIから分かるように、試料材料は、様々な親水性及び酸素透過係数(D)を示した。これらの試料材料の量は、概して、形成混合物中の含水率が増えるのに伴って増えたが、NVP又はMAAをそれぞれ含む試料V及びVIは、たとえこれらの試料が比較的低い含水率の混合物から形成された場合であっても、NVP又はMAAの代わりにMMAを含む試料I、II、III、及びIVと比較すると、高い酸素透過性及び平衡含水率を示した。
【0080】
[0082]したがって、MMAをNVP又はMAAで置き換えることでポリマー生成物が改善した。MMAを別の強力な親水性モノマーで置き換えることで、生成物が改善し得ることも予想される。
【0081】
[0083]熱分析によって、材料の分解温度(T)が、300℃〜350℃の範囲であることが示された。ポリマー材料は、臨床への応用の前に、高圧蒸気殺菌による使用中に滅菌することができるように、より高い熱安定性を有することが望ましいことがある。
【0082】
[0084]各試料材料は、三次元(3D)ナノ構造のスポンジ様ハイドロゲルを形成した。これは、自然の角膜に類似した平衡含水率及び機械的特性を伴う、透明で、生体適合性があり、栄養素に対して透過性があるものであった。例えば、試料材料は、人工角膜としての使用に適した、適切な透明度、機械的強度、酸素透過性、グルコース及び他の栄養素に対する透過性並びに細胞適合性を有していた。
【0083】
[0085]角膜に加えて、試料材料は、連続装用コンタクトレンズ又は移植可能で交換可能なコンタクトレンズとしての使用のためにも適した特性を有していた。
【0084】
[0086]実施例II
【0085】
[0087]初代HCECは、上皮被覆度を評価するために使用された。初代HCECは、10ng/mLのヒト上皮増殖因子(HEGF)、5μg/mLのインスリン、0.5μg/mLのヒドロコルチゾン、8.4ng/mLのコレラ毒素、30μg/mLウシ下垂体抽出物、50μg/mLのゲンタマイシン及び50ng/mLのアンホテリシンBを補給したケラチノサイト増殖培地を含む無血清培地を補給した試料I〜VIに播種した。これらの細胞は、5%CO中で37℃でインキュベートした。この培地は、2日毎に交換した。これらの細胞は、7日後に、ポリマー膜上に集密的な上皮シートを形成した。細胞培養は、倒立位相差顕微鏡下でモニタリングした。
【0086】
[0088]細胞生存率は、FDAで染色することによって決定された。培養物は、PBS中の2μg/mLのFDAと共に、37℃で15分間インキュベートした。各試料は、PBS中で2回洗浄し、0.1mg/mLのヨウ化プロピジウム溶液に室温で2分間入れて、生存不能な細胞を染色した。次に、これらの試料を、PBS中で2回洗浄し、共焦点レーザー顕微鏡(IX70−HLSH100フルオビュー(Fluoview)、オリンパス(Olympus)(商標))下で観察した。
【0087】
[0089]2日目に、上皮細胞は、膜から移動し始めた。3日後、高密度に集合した上皮細胞の集密的なシートを形成した。同一の培養条件下では、初代HCECの増殖率は、試料材料上及び対照組織培養プレート表面上で同一(5%以内)であった。
【0088】
[0090]組織等価物の形態学的解析は、まず、最適切断温度(OCT)凍結用コンパウンド(ティシュー−テク(Tissue−Tek)(商標))中に、それらの組織等価物を埋め込むことによって実施した。5μm切片を切り取り、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。免疫染色は、サイトケラチンK19及びKi67に対するモノクローナル抗体を有する検体をインキュベートすることによって実施した。正常マウス免疫グロブリン及びパンサイトケラチン(AE−1及びAE−3)は、負及び正の対照として、それぞれ使用した。これらの細胞は、その後、二次抗体(1:200に希釈したビチオン化ウマ抗マウス免疫グロブリンG)で1時間インキュベートした。発現したサイトケラチンK19及びKi67は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)複合二次抗体(ヤギ抗マウスIgG)とのインキュベートによる免疫蛍光法によって検出した後、マウントした。免疫染色された細胞は、共焦点レーザー顕微鏡下で調査した。
【0089】
[0091]図1〜8は、試料V(図1)、試料VI(図2及び図3)、試料IV(図4)、試料I(図5及び図6)、及び試料III(図7及び図8)を含む、試料材料上に培養された上皮細胞の代表的な位相画像を示す。
【0090】
[0092]試料VI上で培養された細胞は、より伸張した細胞を含むいくつかの区域を有する角膜上皮細胞の集密的なシートを形成した。図2及び図3で示した角膜上皮細胞は、K19及びKi67それぞれに対して陽性に染色された。図6に示す角膜上皮細胞は、フルオレセイン二酢酸(FDA)に対して陽性に染色された。図7及び図8に示す角膜上皮細胞も、K19及びKi67それぞれに対して陽性に染色された。
【0091】
[0093]試料材料上の細胞は、層形成及び分化の区域を有する健全な形態を示した。上皮シートの細胞のほとんどは、生存可能であることが分かった。培養された角膜上皮細胞はまた、抗体AE1及びAE3、並びにサイトケラチンK19に対して陽性の免疫反応性を示した(例えば図2参照)。Ki67に対して陽性に染色された細胞の大部分は、細胞増殖を示した(例えば図3参照)。
【0092】
[0094]試料材料は、ヒト角膜上皮細胞の増殖と接着を助けるために使用した。試料材料は、角膜上皮細胞の付着及び増殖、並びに層形成を支持することが分かった。細胞毒性は観察されなかった。したがって、材料は、人工角膜移植の足場として使用することができる。
【0093】
[0095]実施例III
【0094】
[0096]試料ポリマー材料(試料I、II及びIII)は、眼及び視力の研究における動物使用のためのARVO(視力及び眼の研究のための協会)声明に従って、ニュージーランド白ウサギの右眼に移植した。レシピエント動物は、4mLの筋肉内へのケタミン及びキシラジン(容積比=1:7)並びに局所へのキシロカインで麻酔した。6mmの円形間質ポケットを角膜輪部から作り、試料コポリマー材料の一片(6mmの直径)を、人工角膜としてポケット(n=3)に挿入した。
【0095】
[0097]試料人工角膜材料が設計され、実施例Iで記載した試料材料から形成され、全層貫通角膜移植処置をする間に挿入された。この試料人工角膜材料は、縫合糸で適当な位置に、元来の角膜と生体統合することによって保持された。ウサギの眼において、生体統合、生存、及び材料の起こり得る合併症を調査した。縫合糸は、手術後1週間で取り除かれた。ウサギの角膜の細隙灯検査は、第1週で再上皮化を示した。初期には若干の混濁が観察されたが、どの移植片も、この間、炎症又は拒絶反応のなんらの徴候も示さなかった。手術後1週間の移植片の切片は、手術を受けていない反対側の角膜と比較しても、正常な組織学的外観を示した。フルオレセインナトリウムによる染色は示さず、完全な上皮バリアーの存在を示した。ヘマトキシリン及びエオシンで染色したウサギ眼の切片も、移植片を覆う重層上皮を示し、移植片が宿主の角膜内によく統合していることを示した。
【0096】
[0098]ウサギに有害反応は観察されなかった。人工角膜は、光学的な透明度を維持した。トポグラフィー測定も、人工角膜の表面が滑らかで、正常な眼と同様なプロフィールであることを示した。移植された試料ポリマーは、角膜細胞の再生を促進し、宿主と移植片との安定的な統合を示すことが観察された。
【0097】
[0099]明確には上で述べていない本発明の他の特徴、利益、及び利点は、本明細書及び図面から当業者であれば理解することができる。
【0098】
[00100]本発明の典型的な実施形態を上に記載したにすぎないが、当業者であれば、多くの変更形態が、これらの実施形態において、本発明の新規の教示及び利点から著しく逸脱することなく可能であることが容易に理解されるであろう。
【0099】
[00101]むしろ、本発明は、特許請求の範囲によって定義しているような範囲内の全てのこうした変更形態を包含することを意図している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、界面活性剤、及び多孔性コポリマーを形成するために共重合可能なモノマーの組合せを含み、
前記モノマーの組合せが、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)よりも高い親水性を有する第1のモノマー、及び、HEMAと同等の親水性又はHEMAよりも低い親水性を有する第2のモノマーを含む、両連続マイクロエマルションを用意するステップと、
前記多孔性コポリマーを形成するために、前記両連続マイクロエマルションにおける前記モノマーを重合するステップと、
を含む、ポリマーの形成方法。
【請求項2】
前記第1のモノマーが、N−ビニルピロリドン(NVP)又はメタクリル酸(MAA)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のモノマーが、HEMA又はメタクリル酸メチル(MMA)を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記モノマーの組合せが、前記マイクロエマルション中に約38wt%以下の総濃度を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のモノマーが、前記マイクロエマルション中に約10〜約25wt%の濃度を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記マイクロエマルション中の前記水の濃度が、約25〜約50wt%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記マイクロエマルション中の前記界面活性剤の濃度が、約10〜約50wt%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記マイクロエマルションが架橋剤をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
架橋剤がエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロエマルションが、重合開始剤をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記開始剤が、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(DMPA)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記界面活性剤が、ポリ(エチレンオキシド)−マクロモノマーである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記界面活性剤が、ω−メトキシポリ(エチレンオキシド)40ウンデシルα−メタクリレートマクロモノマーである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
相互接続された細孔を画定し、重合されたモノマーを含むコポリマーであって、
前記モノマーが、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)よりも高い親水性を有する第1のモノマー、及び、HEMAと同等の親水性又はHEMAよりも低い親水性を有する第2のモノマーを含む、コポリマー。
【請求項15】
前記第1のモノマーが、N−ビニルピロリドン(NVP)又はメタクリル酸(MAA)を含む、請求項14に記載のコポリマー。
【請求項16】
前記第2のモノマーが、HEMA又はメタクリル酸メチル(MMA)を含む、請求項14又は15に記載のコポリマー。
【請求項17】
前記細孔が、約10〜約100nmの孔径を有する、請求項14〜16のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項18】
前記第1のモノマーの前記コポリマーに対する重量比が、約0.15〜約0.2である、請求項14〜17のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項19】
前記第2のモノマーの前記コポリマーに対する重量比が、約0.15〜約0.2である、請求項14〜18のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項20】
約10〜約30の酸素透過係数を有する、請求項14〜19のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項21】
約26の酸素透過係数を有する、請求項14〜19のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項22】
約76wt%以上の平衡含水率を有する、請求項14〜21のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項23】
約50〜約76wt%の平衡含水率を有する、請求項14〜21のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項24】
約88%以上の光透過率を有する、請求項14〜23のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項25】
約95%以上の光透過率を有する、請求項14〜23のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項26】
約2×10−6cm−2/s以上のグルコース拡散透過係数を有する、請求項14〜25のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項27】
約1×10−6〜約4×10−6cm−2/sのグルコース拡散透過係数を有する、請求項14〜25のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項28】
約1.4×10−7cm−2/s以上のアルブミン拡散透過係数を有する、請求項14〜27のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項29】
約0.1×10−6〜約2×10−6cm−2/sのアルブミン拡散透過係数を有する、請求項14〜27のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項30】
約2MPa以上の引張強度を有する、請求項14〜29のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項31】
約1〜約7MPaの引張強度を有する、請求項14〜29のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項32】
約100MPa以上のヤング率を有する、請求項14〜31のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項33】
約90〜約400MPaのヤング率を有する、請求項14〜31のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項34】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法に従って形成される、請求項14〜33のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項35】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法に従って形成されるコポリマー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−520918(P2012−520918A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500746(P2012−500746)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際出願番号】PCT/SG2009/000097
【国際公開番号】WO2010/107390
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】