説明

親水性中間層を有する基材及び画像形成性要素

平版印刷版前駆体用の基材は、金属又はポリマー支持体と、明細書に定義した構造(I)のトリアルコキシシリルポリエチレングリコールアクリレートを含む中間層を含む。当該前駆体は、印刷機上現像用のネガ型のものであり、硫酸陽極酸化アルミニウム支持体を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独特の中間層を有する親水性基材、及び前記親水性基材を有する画像形成性要素、例えばネガ型平版印刷版前駆体に関する。本発明は、これらの画像形成性要素の使用方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷版前駆体などの画像形成性材料を製造する際に、輻射線感受性組成物が日常的に使用されている。かかる組成物は、一般的に、輻射線感受性成分、開始剤系、及びバインダーを含み、これらはそれぞれ、物理的特性、画像形成性能及び画像特性の種々の改善をもたらすための研究の対象となってきた。
【0003】
印刷版前駆体の分野における最近の発展は、レーザー又はレーザーダイオードによって画像形成することができ、特に印刷機上(on-press)で画像形成及び/又は現像することができる輻射線感受性組成物の使用に関する。レーザーはコンピューターにより直接制御することができるので、レーザー露光は、中間情報キャリア(又は「マスク」)としてコンベンショナルなハロゲン化銀グラフィックアーツフィルムを必要としない。商業的に入手可能な画像セッターにおいて使用される高性能レーザー又はレーザーダイオードは、一般的に、少なくとも700nmの波長を有する輻射線を放出し、そのため、輻射線感受性組成物は、電磁スペクトルの近赤外領域又は赤外領域において感受性であることが必要である。しかしながら、他の有用な輻射線感受性組成物は、紫外線又は可視光で画像形成するように構成されている。
【0004】
印刷版の製造のために輻射線感受性組成物を使用する2つの可能な方法がある。ネガ型印刷版の場合、輻射線感受性組成物の露光された領域を硬化させ、非露光領域は現像中に洗い落とされる。ポジ型印刷版の場合、露光された領域は現像液中に溶解し、そして非露光領域は画像となる。
【0005】
様々な輻射線感受性組成物及び画像形成性要素が、米国特許第6,309,792号明細書(Hauck他)、米国特許第6,569,603号明細書(Furukawa)、米国特許第6,893,797号明細書(Munnelly他)、米国特許第6,787,281号明細書(Tao他)、米国特許第6,899,994号明細書(Huang他)、米国特許出願公開第2003/0118939号明細書(West他)及び米国特許出願公開第2005/0204943号明細書(Makino他)、並びに欧州特許出願公開第1,079,276号明細書(Lifka他)、欧州特許出願公開第1,182,033号明細書(Fujimaki他)及び欧州特許出願公開第1,449,650号明細書(Goto)に記載されている。
【0006】
画像形成性要素のタイプとは独立に、平版印刷は、一般的に、金属基材(又は「支持体」)、例えばアルミニウム支持体、又は種々の金属組成のアルミニウム合金支持体を使用して行われている。金属シートの表面は、一般的に、その上に配置される層、通常は画像形成性層に対して良好に密着するように、また、印刷中の非画像形成領域内の保水性を改善するために、表面砂目立て処理により粗面化される。種々のアルミニウム支持体材料及びそれらの製造方法が米国特許第5,076,899号明細書(Sakaki他)及び米国特許第5,518,589号明細書(Matsura他)に記載されている。
【0007】
例えば、平版印刷要素のためのアルミニウム含有基材を製造するために、原アルミニウムの連続ウェブを、例えば一連の既知の工程を用いて処理することができる。かかる工程としては、連続アルミニウムウェブを、当該アルミニウムウェブからオイル及びデブリを除去するための脱脂セクション、アルカリエッチングセクション、第1濯ぎセクション、砂目立てセクション(機械的砂目立てもしくは電気化学的砂目立て又はそれらの両方を含むことがある)、第2濯ぎセクション、砂目立て処理後の酸又はアルカリエッチングセクション、第3濯ぎセクション、適切な酸を使用して陽極酸化コーティングをもたらす陽極酸化セクション、第4濯ぎセクション、後処理セクション、最終又は第5濯ぎセクションに通し、そして、巻き戻すか又は画像形成性層配合物を適用するためのコーティングステーション上に移される前に乾燥セクションに通すことが挙げられる。
【0008】
陽極酸化セクションにおいて、アルミニウムウェブを処理して、その表面上に酸化アルミニウム層を形成するので、アルミニウムウェブは印刷プロセス中に必要な高度の耐機械的摩耗性を示す。この酸化物層は、ある程度、既に親水性であり、このことは、水に対して高い親和性を有すること、及び、印刷インクをはじくことに関して有意である。しかし、酸化物層は反応性が高く、画像形成要素内の画像形成性層の成分と相互作用し得る。酸化物層は、アルミニウム基材表面を部分的又は完全に被覆することがある。
【0009】
後処理セクションにおいて、酸化物層を親水性保護層(当業界では「シール」、「サブ層」又は「中間層」としても知られている)で覆うことにより、1種又は2種以上の画像形成性層配合物を適用する前に、その親水性を高める。親水性保護層は、ウェブを後処理溶液中に浸漬することにより、又はウェブ上に溶液を吹き付ける(必要に応じて、回収タンク、フィルタ及び流体供給システムを用いる)ことにより、適用することができる。適切な中間層は、現像中に画像形成性層の可溶性領域が基材から容易に除去され、残留物を残さず、クリーンな親水性バックグラウンドを提供することもできる。親水性中間層は、酸化アルミニウム層を、高アルカリ性現像液により現像時の腐食に対して、また画像形成性層からの染料の浸透に対して保護することもできる。
【0010】
例えば米国特許第4,153,461号明細書(Berghauser他)及び欧州特許第0 537 633号明細書(Elsaesser他)に記載されているように、ポリ(ビニルホスホン酸)(PVPA)、ビニルホスホン酸/アクリル酸(VPA/AA)コポリマー、及びポリ(アクリル酸)(PAA)を含む配合物から、他の親水性中間層が作製される。米国特許第6,218,075号明細書(Kimura他)には、ポリ(ビニルホスホン酸)の種々の組成物による金属基材の処理が記載されている。
【0011】
米国特許第4,427,765号明細書(Mohr他)には、酸性官能基(例えば亜リン酸基又はスルホン酸基)を有する水溶性有機ポリマーを、二価金属カチオンの塩とともに使用することが記載されている。ポリマーと金属カチオンとの錯体を形成すると考えられる、種々の有機ポリマー及び金属カチオンが記載されている。米国特許第5,314,787号明細書(Elsaesser他)には、アルミニウム基材を親水性ポリマー溶液で処理し、続いて、二価又は多価金属カチオンを含有する溶液で処理することが記載されている。
【0012】
さらに、米国特許第7,214,468号明細書(Takahashi他)には、金属酸化物ゾルを含んで成る親水性層を有する可撓性支持体の使用が記載されている。米国特許第5,807,659号明細書(Nishimiya他)及び欧州特許出願公開第1,495,866号明細書(Mitsumoto他)に記載されているように、アルミニウム及びポリマー支持体に反応性官能基を付加する。ホスフェート置換メタクリレートから誘導されたポリマーを含む中間層が欧州特許出願公開第1,788,429号明細書(Loccufier他)に記載されている。
【0013】
欧州特許第1,791,699号明細書(Fiebag他)に記載されている平版印刷要素の金属支持体上の親水性層はホスホノ置換シロキサンを含む。欧州特許第1,787,166号明細書(Strehmel他)には、ホスフェート含有化合物を中間層に使用することが記載されている。
【0014】
米国特許第7,049,048号明細書(Hunter他)には、平版印刷要素中のアルミニウム支持体上の中間層材料であって、酸性基と、3個のアルコキシ又はフェノキシ基で置換されたシリル基とを有するコポリマーを含む中間層材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第6,309,792号明細書
【特許文献2】米国特許第6,569,603号明細書
【特許文献3】米国特許第6,893,797号明細書
【特許文献4】米国特許第6,787,281号明細書
【特許文献5】米国特許第6,899,994号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2003/0118939号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0204943号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第1,079,276号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第1,182,033号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第1,449,650号明細書
【特許文献11】米国特許第5,076,899号明細書
【特許文献12】米国特許第5,518,589号明細書
【特許文献13】米国特許第4,153,461号明細書
【特許文献14】欧州特許第0 537 633号明細書
【特許文献15】米国特許第6,218,075号明細書
【特許文献16】米国特許第4,427,765号明細書
【特許文献17】米国特許第5,314,787号明細書
【特許文献18】米国特許第7,214,468号明細書
【特許文献19】米国特許第5,807,659号明細書
【特許文献20】欧州特許出願公開第1,495,866号明細書
【特許文献21】欧州特許出願公開第1,788,429号明細書
【特許文献22】欧州特許第1,791,699号明細書
【特許文献23】欧州特許第1,787,166号明細書
【特許文献24】米国特許第7,049,048号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
平版印刷要素要素における基材として多くの中間層材料について述べられてきたが、金属又はポリマー基材材料と、上に重なる画像形成性層との間の密着性をさらに改善することができる。この問題は、印刷機上現像用に設計されたネガ型画像形成性層配合物を付着させる硫酸陽極酸化アルミニウム基材の場合に特に顕著である。
【0017】
従って、上に重なる画像形成性層に対して湿度条件下でも望ましい付着性をもたらす親水性中間層組成物を有するさらに改善された親水性基材が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、金属又はポリマー支持体を含み、当該支持体上に下記構造(I):
【0019】
【化1】

【0020】
(式中、R1及びR2は、独立に、水素、又はC1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アシル、C1〜C6アシルオキシ、フェニル、ハロもしくはシアノ基であるか、又はR1及びR2は一緒になって環式基を形成していてもよく、
3は水素、又はC1〜C6アルキル、フェニル、ハロもしくはシアノ基であり、
4及びR5は独立に水素又はメチル基であり、
6は水素又はC1〜C12アルキル基であり、
1は−O−又は−NR−であり、ここでRは水素又はアルキルもしくはアリール基であり
2は−NR’−であり、ここでR’は水素又はアルキルもしくはアリール基であり、
mは15〜200の整数であり、nは1〜12の整数である)
により表されるトリアルコキシシリルポリエチレングリコールアクリレートを含む中間層を有する基材を提供する。
【0021】
本発明は、基材を含み、当該基材上に、画像形成輻射線(例えば赤外線など)への露光後に処理液への不溶性がより高くなる画像形成性層を有し、基材と画像形成性層の間にさらに、
上記構造(I)により表されるトリアルコキシシリルポリエチレングリコールアクリレートを含む中間層、
を含むネガ型画像形成性要素も提供する。
【0022】
幾つかの実施態様において、本発明の画像形成性要素は、本発明の基材を含み、当該基材上に、
遊離基重合性成分と、
画像形成輻射線への露光によって遊離基重合性基の重合を開始するのに十分な遊離基を生成することのできる開始剤組成物と、
主鎖を有し、当該主鎖にペンダントポリ(アルキレンオキシド)側鎖、シアノ基、又は両方が結合しており、必要に応じて離散粒子の形態で存在する一次ポリマーバインダーと、
赤外線吸収性化合物と、
を含む画像形成性層を有する、ネガ型の印刷機上で現像可能な画像形成性要素であり、当該画像形成性要素は、さらに、基材と画像形成性層の間に、上記構造(I)により表されるトリアルコキシシリルポリエチレングリコールアクリレートを含む中間層、を含む。
【0023】
本発明は、
A)赤外の画像形成輻射線を使用して本発明の画像形成性要素を像様露光して露光領域及び非露光領域を生成すること、
B)露光後のベーキング工程有り又は無しで、像様露光された要素を現像して、主に非露光領域のみを除去すること、
を含む方法も提供する。
【0024】
本発明の画像形成性要素の幾つかは、湿し水、平版印刷インク、又はそれらの組み合わせの存在下だけで現像される印刷機上で現像可能なネガ型印刷版前駆体である。
【0025】
本発明の特定のネガ型画像形成性要素及び方法の幾つかにおいて、画像形成性要素は、
赤外線吸収性染料と、
10〜500nmの平均粒径を有する離散粒子の形態にあり、かつ、画像形成性層の総乾燥質量を基準にして少なくとも10%かつ90%以下の量で画像形成性層中に存在する一次ポリマーバインダーとを含み、
開始剤組成物は、ヨードニウム化合物、又は下記構造(IB):
【0026】
【化2】

【0027】
(式中、X及びYは、独立に、ハロ、アルキル、アルコキシ、アリール又はシクロアルキル基であるか、あるいは、2つ若しくは3つ以上の隣接するX又はY基が結合して、それぞれのフェニル基と縮合炭素環式環又は複素環式環を形成していてもよく、p及びqは独立に0又は1〜5の整数であり、ただし、p又はqは少なくとも1である)
により表されるジアリールヨードニウムカチオンと下記構造(IB):
【0028】
【化3】

【0029】
(式中、R1、R2、R3 及びR4は、独立に、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル又はヘテロシクリル基であるか、又は、R1、R2、R3 及びR4のうちの2つ又は3つ以上が連結してホウ素原子を有する複素環式環を形成していてもよく、かかる環は7個以下の炭素、窒素、酸素又は窒素原子を有する)
により表されるホウ素含有アニオンとの組み合わせ含み、
上記中間層が上に配置された硫酸陽極酸化アルミニウム含有支持体を含む基材と、
を含み、
上記中間層において、構造(I)を有するトリアルコキシシリルポリエチレングリコールアクリレートは、独立に水素又はC1〜C4 アルキル基もしくはフェニル基であるR1及びR2 、水素又はC1〜C3アルキルもしくはフェニル基であるR3 、C1〜C4アルキル基であるR6 を有し、X1は−O−又は−NH−であり、X2は−NH−又は−NCH3−であり、mは20〜70の整数であり、nは2〜6の整数である。
【0030】
印刷機上現像された平版印刷版を提供するために本発明の方法を使用できる。
本発明の実施において使用される中間層組成物は、様々な用途、特に上に画像形成性層を含む平版印刷要素に応じて、基材に親水性を付与する。中間層は、要素の他の望ましい特性に悪影響を及ぼさずに、上に重なる画像形成性層に対する接着性の改善をもたらす。構造(I)に示される化合物は、尿素結合の存在のために、現像液への溶解性及び層安定性の改善をもたらすと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
定義
特に断らない限り、本明細書において使用される場合に、「基材」、「画像形成性要素」、「ネガ型平版印刷版前駆体」及び「印刷版前駆体」という用語は、本発明の実施態様を指すことを意味する。
【0032】
さらに、特に断らない限り、本明細書中に記載された種々の成分、例えば、「一次ポリマーバインダー」、「遊離基重合性成分」、「赤外線吸収性化合物」、構造(I)の「トリアルコキシシリルポリエチレングリコール」、「ヨードニウムカチオン」、「ホウ素含有アニオン」、「二次ポリマーバインダー」、「ホスフェート(メタ)アクリレート」、及び同様の用語は、かかる成分の混合物も意味する。従って、単独での当該用語の使用は、単一の成分だけを必ずしも意味するものではない。
【0033】
用語「中間層」とは、我々は、様々な方法で金属又はポリマー支持体(下記)上に配置された層を指すことを意図する。当業者は、この中間層を「サブ層」としてとらえることがあり、我々は、これらの用語によって本発明の実施において同じものを指すことを意図する。
さらに、特に断らない限り、百分率は、乾燥質量での百分率を意味する。
【0034】
ポリマーに関連するあらゆる用語の定義を明らかにするために、International Union of Pure and Applied Chemistry(「IUPAC」)によって発行された「Glossary of Basic Terms in Polymer Science」Pure Appl. Chem. 68, 2287-2311 (1996)を参照されたい。しかし、本明細書中に明記した定義が支配的なものと見なされるべきである。
「グラフト」ポリマー又はコポリマーは、分子量が少なくとも200の側鎖を有するポリマーを意味する。
「ポリマー」という用語は、オリゴマーを包含する高分子量及び低分子量ポリマーを意味し、そしてホモポリマー及びコポリマーを包含する。
「コポリマー」という用語は、2種又は3種以上の異なるモノマーから誘導されたポリマーを意味する。
「主鎖」という用語は、複数のペンダント基が結合しているポリマー中の原子(炭素又はヘテロ原子)の鎖を意味する。このような主鎖の一例は、1種又は2種以上のエチレン系不飽和重合性モノマーの重合から得られた「全炭素(all carbon)」主鎖である。しかしながら、他の主鎖は、ヘテロ原子を含んでいてもよく、この場合、ポリマーは、縮合反応又は何らかの他の手段によって形成される。
【0035】
基材
本発明の実施に使用される中間層は、下記下記構造(I):
【0036】
【化4】

【0037】
により表されるトリアルコキシシリルポリエチレングリコールアクリレートを含む。ここで、R1及びR2は、独立に、水素、又はC1〜C6アルキル(置換もしくは非置換、線状もしくは分岐)、C1〜C6アルケニル(置換もしくは非置換、線状もしくは分岐)、C1〜C6アルコキシ(置換もしくは非置換、線状もしくは分岐)、C1〜C6アシル(置換もしくは非置換、線状もしくは分岐)、C1〜C6アシルオキシ(置換もしくは非置換、線状もしくは分岐)、置換もしくは非置換フェニル、ハロもしくはシアノ基であるか、あるいは、R1及びR2は一緒になって置換又は非置換環式基、例えば環内に3〜7個の原子を有するものを形成していてもよい。幾つかの実施態様において、R1及びR2は、独立に、水素又はC1〜C4アルキル基(置換もしくは非置換)もしくは置換もしくは非置換フェニル基である。より具体的には、R1及びR2は、独立に、水素、又は置換もしくは非置換メチル基であることができる。
3は、水素、あるいはC1〜C6アルキル(置換もしくは非置換、線状もしくは分岐)、置換もしくは非置換フェニル、ハロ又はシアノ基である。例えば、R3は、水素、あるいはC1〜C3アルキル(置換もしくは非置換)、又は置換もしくは非置換フェニル基であることができる。より典型的には、R3は、水素、あるいは置換もしくは非置換メチル基である。
4及びR5は独立に水素又は置換もしくは非置換メチル基である。
6は水素又はC1〜C12アルキル基(置換もしくは非置換、線状もしくは分岐、ベンジル基を包含する)である。R6はC1〜C4アルキル基(置換もしくは非置換)、例えば置換もしくは非置換のメチルもしくはエチル基である。
1は−O−又は−NR−であり、ここで、Rは、水素、あるいは、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜6のアルキル、又は置換もしくは非置換の環内炭素原子数が6又は10であるアリール基である。例えばX1は、−O−又は−NH−、より典型的には−NH−であることができる。
2は−NR’−であり、ここで、R’は、水素、あるいは置換もしくは非置換の炭素原子数1〜6のアルキル基、又は置換もしくは非置換の環内炭素原子数が6又は10であるアリール基である。例えばX2は、−NH−又は−NCH3−、より典型的には−NH−であることができる。
構造(I)において、mは15〜200の整数、典型的には20〜70又は25〜60の整数であり、nは1〜12の整数、もしくは2〜6の整数、又は2〜4の整数である。
【0038】
1つの具体的な実施態様において、中間層組成物は、ジェファミン(Jeffamine)(メタ)アクリルアミドと3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランとの反応生成物を含む。他の有用な中間層組成物は、界面活性剤、例えば、Mason Chemical Campanyから入手可能な市販の製品Masurf(登録商標)1520中に存在するものなどを含む。
【0039】
金属又はポリマー支持体(下記)上の乾燥中間層被覆量は、一般的に少なくとも0.0001かつ0.1g/m2 、典型的には0.007〜0.07g/m2である。中間層配合物がディップ・アンド・リンス(dip and rinse)プロセスにより支持体に適用される場合にはこの被覆量はより少ないことがあり、中間層配合物がスロットコーターを使用することにより支持体に適用される場合にはこの被覆量はより多いことがある(例えば0.03〜0.06g/m2 )。
【0040】
基材は、親水性表面を有するか、又は画像形成側の適用された画像形成性層組成物よりも高い親水性を有する表面を少なくとも有する。基材は支持体を含み、その支持体は、平版印刷版などの画像形成性要素を製造するため通常使用されているいかなるポリマー又は金属支持体材料から構成されたものであってもよい。支持体は、通常、シート、フィルム又は箔(又はウェブ)の形態にあり、色記録がフルカラー画像を記録するように使用条件下で、丈夫で、安定であり、可撓性で、かつ、寸法変化に対する抵抗性を有する。典型的には、支持体は、ポリマーフィルム(例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースエステルポリマー及びポリスチレンのフィルムなど)、ガラス、セラミック類、金属シートもしくは箔、又は剛性紙(樹脂コート紙及び金属化紙など)、又はこれら材料のいずれかの積層体(例えば、ポリエステルフィルム上にアルミニウム箔を積層したもの)などのいかなる自立性材料でもよい。金属支持体としては、アルミニウム、銅、亜鉛、チタン及びこれらの合金のシート又は箔が挙げられる。
ポリマーフィルム支持体及び金属支持体は両方とも、片方又は両方のフラットな表面で、上記中間層組成物により改質される。
【0041】
1つの有用な基材は、アルミニウム支持体で構成されたものであり、このアルミニウム支持体は、物理的(機械的)砂目立て、電気化学的砂目立て、又は化学的砂目立てなどの当該技術分野で知られている方法を用いて処理され、通常はこの後に酸陽極酸化処理される。アルミニウム支持体は、物理的又は電気化学的に粗面化することができ、次いで、リン酸又は硫酸とコンベンショナルな手順を用いて陽極酸化される。有用な基材は、電気化学的に砂目立てされ、硫酸により陽極酸化されたアルミニウム支持体であって、上記の中間層組成物により処理又はコーティングされたアルミニウム支持体である。
【0042】
アルミニウム支持体の硫酸陽極酸化は、一般的に、その表面上に1.5〜5g/m2 、より典型的には3〜4.3g/m2 の酸化物量(被覆量)をもたらす。リン酸陽極酸化は、一般的に、その表面上に1.5〜5g/m2 、より典型的には1〜3g/m2 の酸化物量をもたらす。
【0043】
幾つかの実施態様において、アルミニウム含有支持体の表面は、米国特許出願公開第2008/0003411号明細書(Hunter他)に記載された手順及び化学物質を用いて電気化学的に粗面化することができる。これらの手順の場合、粗面化されたアルミニウム含有支持体を、好ましくは適切な強酸、例えば塩酸、硝酸又はこれらの混合物を含有する電解液中で、交流電流にかけられる。電解液の酸濃度は、一般的には、塩酸の場合に、0.4%から、典型的には0.7%から、2%までであり、硝酸の場合に、0.2%から、典型的には0.4%から、2.5%までである。例えば金属硝酸塩及び塩化物(例えば硝酸アルミニウム及び塩化アルミニウム)、モノアミン、ジアミン、アルデヒド、リン酸、クロム酸、ホウ酸、乳酸、酢酸、及びシュウ酸など(これらに限定されない)の任意の添加剤が、電解液中に防蝕剤又は安定剤として存在していてよい。
【0044】
基材の厚さは、変えることができるが、印刷による摩耗に耐えるように十分厚く、かつ、印刷版を巻けるように十分薄くなければならない。有用な実施態様としては、少なくとも100μmかつ700μm以下の厚さを有する処理されたアルミニウム箔が挙げられる。
【0045】
一般的に、基材として製造するのに使用される支持体は、望ましい引張強度、弾性、結晶化度、導電率、及び平版印刷技術分野においてコンベンショナルな他の物理特性を有する。これらの特性は、周知の処理、例えば熱処理、低温又は高温加工法、又は平版基材製造のためのアルミニウム合金加工技術分野においてコンベンショナルな他の方法を用いて達成することができる。
【0046】
基材は、後で所望のシートに切断することができる連続ウェブとして基材を提供するように、連続ウェブ又はコイル状ストリップとして作製できる。
画像形成性要素の取扱いと「触感」を改善するために、基材の裏面(非画像形成側)に帯電防止剤及び/又はスリップ層もしくは艶消し層をコートしてもよい。
基材は、適用された輻射線感受性組成物を上に有する円筒形表面であってもよく、従って、印刷機の一体部分であってもよい。かかる画像形成された円筒状物の使用については、例えば、米国特許第5,713,287号明細書(Gelbart)に記載されている。
【0047】
中間層組成物は、任意の適切な装置及び方法を使用してコーティング液中の溶液又は分散体として基材に適用できる。例えば、中間層組成物の0.01〜10(質量)%の温かい乃至熱い(30〜90℃)の水溶液中に支持体を10〜30秒間浸漬することにより中間層を形成することができる。代わりに、中間層組成物をコンベンショナルな方法、例えばスピンコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、スロットコーティング、バーコーティング、ワイヤロッドコーティング、ローラーコーティング又は押出ホッパーコーティングなどにより適用できる。組成物は、適切な基材(例えば印刷機上印刷胴(on-press printing cylinder))上に吹き付けることによっても適用できる。
【0048】
中間層組成物を形成するために構造(I)の化合物を溶解するのに有用な溶媒としては、水、アルコール、ケトン、及び水/アルコール混合物が挙げられる。得られる溶液は、フルオロ界面活性剤を含んでもよい。特定の中間層配合物及び適用方法を下記実施例に示すが、当業者は、製造の際に中間層配合物を適用するのにどの既知の方法を採用するかを容易に理解するであろう。
【0049】
画像形成性要素
本発明は、フォトマスクリソグラフィー(photomask lithography)、化学的増幅レジスト、インプリントリソグラフィー(imprint lithography)、マイクロエレクトロニック及びマイクロオプティカルデバイス、印刷回路板、特に平版印刷版前駆体において使用できる。
特に、本発明は、1つの赤外線感受性画像形成性層が本発明の基材上に配置されており、かつ、当該基材に接着されている、ネガ型画像形成性要素に関する。そのため、画像形成輻射線への露光によって、露光領域は現像液又は処理液への溶解性が低くなり、一方、非露光領域はそれらの溶液中で除去可能である。この開示の残りは、本発明のネガ型の実施態様に関し、それらの様々な層及び成分について説明する。
【0050】
画像形成性層
赤外線感受性組成物(及び画像形成性層)は、1又は2以上の遊離基重合性成分を含み、これらの成分の各々は遊離基開始剤を使用して重合することのできる1又は2つ以上の遊離基重合性基を含む。例えば、かかる遊離基重合性成分は、1又は2以上の付加重合性エチレン系不飽和基、架橋性エチレン系不飽和基、開環重合性基、アジド基、アリールジアゾニウム塩基、アリールジアゾスルホネート基、又はこれらの組み合わせを有する1又は2種以上の遊離基重合性モノマー又はオリゴマーを含むことができる。同様に、かかる遊離基重合性基を有する架橋性ポリマーも使用できる。
【0051】
重合又は架橋することができる適切なエチレン系不飽和型化合物としては、アルコールの不飽和エステル、例えばポリオールのアクリレート及びメタクリル酸エステルなどの、重合性基のうちの1又は2つ以上を有するエチレン系不飽和重合性モノマーを含む。オリゴマー及び/又はプレポリマー、例えばウレタンアクリレート及びウレタンメタクリレート、エポキシドアクリレート及びエポキシドメタクリレート、ポリエステルアクリレート及びポリエステルメタクリレート、ポリエーテルアクリレート及びポリエーテルメタクリレート、及び不飽和ポリエステル樹脂などを使用することもできる。実施態様によっては、遊離基重合性成分はカルボキシ基を含む。
【0052】
有用な遊離基重合性成分は、複数のアクリレート及びメタクリレート基並びにそれらの組み合わせなどの付加重合性エチレン系不飽和基を含む遊離基重合性モノマー又はオリゴマー、あるいは遊離基架橋性ポリマーを含む。遊離基重合性化合物としては、複数の重合性基を有する尿素−ウレタン−(メタ)アクリレート又はウレタン−(メタ)アクリレートから誘導されたものが挙げられる。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートに基づくDESMODUR(登録商標)N100脂肪族ポリイソシアネート樹脂(Bayer Corp.、コネチカット州ミルフォード)と、ヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリトリトールトリアクリレートとを反応させることにより、遊離基重合性成分を調製することができる。有用な遊離基重合性化合物としては、KOWA Americanから入手可能なNK Ester A-DPH(ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート)、並びにSartomer Company, Inc.から入手可能なSartomer 399(ジペンタエリトリトールペンタアクリレート)、Sartomer 355(ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート)、Sartomer 295(ペンタエリトリトールテトラアクリレート)、及びSartomer 415[エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート]が挙げられる。
【0053】
多くの他の遊離基重合性成分が当業者に知られており、Photoreactive Polymers: The Science and Technology of Resists, A Reiser, Wiley, New York, 1989、pp.102-177の論文、Radiation Curing: Science and Technology, S.P. Pappas編、Plenum, New York, 1992のpp. 399-440のB.M. Monroeによる論文、及びImaging Processes and Material, J.M. Sturge他編、Van Nostrand Reinhold, New York, 1989のpp. 226-262のA.B. Cohen及びP. Walkerによる論文「Polymer Imaging」を含む多くの文献に記載されている。例えば、有用な遊離基重合性成分は、欧州特許出願公開第1,182,033号明細書(上記)に段落[0170]から記載されており、米国特許第6,309,792号明細書(Hauck他)、米国特許第6,596,603号明細書(Furukawa)及び米国特許第6,893,797号明細書(Munnelly他)にも記載されている。
【0054】
他の有用な遊離基重合性成分としては、同時係属の本願と同じ出願人による米国特許出願第11/949,810号(Bauman, Dwars, Strehmel, Simpson, Savariar-Hauck及びHauckにより2007年12月4日に出願)に記載されているものが挙げられる。
【0055】
上記の遊離基重合性成分に加えて、又は上記の遊離基重合性成分の代わりに、赤外線感受性組成物は、主鎖に結合している側鎖を含むポリマー材料を含んでもよく、当該側鎖は、開始剤組成物(下記)により生成した遊離基に感応して重合(架橋)することのできる1又は2つ以上の遊離基重合性基(例えばエチレン系不飽和基)を含む。1分子当たり少なくとも2個のこれらの側鎖が存在してもよい。遊離基重合性基(又はエチレン系不飽和基)は、ポリマー主鎖に結合した脂肪族又は芳香族アクリレート側鎖の一部であることができる。概して、1分子当たり少なくとも2〜20個のかかる基が存在し、典型的には、1分子当たり2〜10個のかかる基が存在する。
【0056】
かかる遊離基重合性ポリマーは、主鎖に直接結合した、又は遊離基重合性側鎖以外の側鎖の一部として結合した親水性基を含んでいてもよく、かかる親水性基としては、カルボキシ、スルホ又はホスホ基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
このように使用できるポリマーを含む有用な市販製品としては、Bayhydrol(登録商標)UV VP LS 2280、Bayhydrol(登録商標)UV VP LS 2282、Bayhydrol(登録商標)UV VP LS 2317、Bayhydrol(登録商標)UV VP LS 2348及びBayhydrol(登録商標)UV XP 2420(これらは全てBayer Material Scienceから入手可能)、ならびにLaromer(登録商標)LR 8949、Laromer(登録商標)LR 8983及びLaromer(登録商標)LR 9005(これらは全てBASFから入手可能)が挙げられる。
【0058】
上記の1又は2以上の遊離基重合性成分(モノマー、オリゴマー又はポリマー)は、画像形成性層の総乾燥質量を基準として、少なくとも10質量%から80質量%以下、典型的には20〜50質量%の量で画像形成性層中に存在することができる。全ポリマーバインダー(下記)に対する遊離基重合性成分の質量比は、例えば、ラジカル重合性成分と高分子バインダー(下で説明する)との重量比は、一般的に5:95〜95:5、典型的には10:90〜90:10、又は30:70〜70:30である。
【0059】
赤外線感受性組成物は、画像形成輻射線に当該組成物を暴露することにより全ての遊離基重合性成分の重合を開始するのに十分な遊離基を生成することができる開始剤組成物も含む。この開始剤組成物は、少なくとも700nm〜1400nm(典型的には750nm〜1250nm)のスペクトル範囲に対応する輻射線に対して一般的に応答性である。望ましい画像形成波長に適切な開始剤組成物が使用される。
【0060】
開始剤組成物は、1種又は2種以上のヨードニウムカチオンと1種又は2種以上のホウ素含有アニオンとを少なくとも1.2:1かつ3.0:1以下、典型的には1.4:1〜2.5:1、又は1.4:1〜2.0:1のモル比で含むことができる。
【0061】
有用なヨードニウムカチオンは当該技術分野でよく知られており、米国特許出願公開第2002/0068241号(Oohashiら)、国際公開第2004/101280号(Munnellyら)及び米国特許第5,086,086号(Brown-Wensleyら)、第5,965,319号(Kobayashi)及び第6,051,366号(Baumannら)などがあるが、これらに限定されない。例えば、有用なヨードニウムカチオンは、正に帯電したヨードニウム、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−部分と適切な負電荷を帯びた対イオンを含む。かかるヨードニウム塩の代表例はCiba Specialty Chemical(ニュージャージ州タリタウン)からIrgacure(登録商標)250として入手可能である。Irgacure(登録商標)250は、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートであり、75%プロピレンカーボネート溶液で供給されている。
【0062】
ヨードニウムカチオンは適切な数の負電荷を帯びた対イオン、例えばハロゲン化物、ヘキサフルオロリン酸イオン、チオ硫酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、スルホン酸イオン、水酸化物イオン、過塩素酸イオン、当業者に明らかな他のものなどと対になっていてもよい。
【0063】
従って、ヨードニウムカチオンは、1種又は2種以上のヨードニウム塩の一部として供給でき、以下で述べるように、ヨードニウムカチオンは、適切なホウ素含有アニオンをも含むヨードニウムボレートとして供給することもできる。例えば、ヨードニウムカチオン及びホウ素含有アニオンは、下記の構造(IB)及び構造(IBz)の組み合わせである塩の一部として供給することができ、あるいは、ヨードニウムカチオン及びホウ素含有アニオンの両方を異なる供給源から供給することができる。しかしながら、それらが、少なくともヨードニウムボレートから供給される場合に、かかる塩は一般的にモル比1:1のヨードニウムカチオンとホウ素含有アニオンとを供給するため、さらなるヨードニウムカチオンを他の供給源、例えば上記のヨードニウム塩から供給しなければならない。
【0064】
例えば、画像形成性層(及び要素)は、複数種のヨードニウムカチオンの混合物を含むことがあり、それらのうちの幾つかはヨードニウムボレート(下記)から誘導され、他はホウ素不含ヨードニウム塩(上記)から誘導される。両方のタイプのヨードニウム塩が存在する場合に、ヨードニウムボレートから誘導されたヨードニウムとホウ素不含ヨードニウム塩から誘導されたヨードニウムのモル比は5:1以下、典型的には2.5:1以下であることができる。
【0065】
有用なヨードニウムカチオンの1つの部類として、下記構造(IB)により表されるジオアリールヨードニウムカチオンが挙げられる:
【0066】
【化5】

【0067】
ここで、X及びYは、独立に、ハロ基(例えばフルオロ、クロロ又はブロモ)、置換又は非置換の炭素原子数1〜20のアルキル基(例えばメチル、クロロメチル、エチル、2−メトキシエチル、n−プロピル、イソプロピル、イソブチル、n−ブチル、t−ブチル、全ての分岐及び線状ペンチル基、1−エチルペンチル、4−メチルペンチル、全てのヘキシル異性体、全てのオクチル異性体、ベンジル、4−メトキシベンジル、p−メチルベンジル、全てのドデシル異性体、全てのイコシル異性体、及び置換又は非置換モノ及びポリ分岐及び線状ハロアルキル)、置換又は非置換の炭素原子数1〜20のアルキルオキシ(例えば置換又は非置換のメトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、(2−ヒドロキシテトラデシル)オキシ、及び種々の他の線状及び分岐アルキレンオキシアルコキシ基)、炭素環式芳香環内に6又は10個の炭素原子を有する置換又は非置換アリール基(例えばモノ及びポリハロフェニル及びナフチル基などの置換又は非置換フェニル及びナフチル基)、又は環構造内に3〜8個の炭素原子を有する置換又は非置換シクロアルキル基(例えば置換又は非置換のシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル及びシクロオクチル基)である。典型的には、X及びYは独立に、置換又は非置換の炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルキルオキシ基、又は環内に5又は6個の炭素原子を有する置換又は非置換シクロアルキル基であり、より好ましくは、X及びYは、独立に、置換又は非置換の炭素原子数3〜6のアルキル基(具体的には炭素原子数3〜6の分岐アルキル基)である。このように、X及びYは同じか又は異なる基であることが可能であり、種々のX基は同じか又は異なる基であることが可能であり、種々のY基は同じか又は異なる基であることが可能である。「対称的」なホウ酸ジアリールヨードニウム化合物及び「非対称的」なホウ酸ジアリールヨードニウム化合物の両方が考えられるが、「対称的」な化合物が好ましい(すなわち、これらは両フェニル環上に同じ基を有する)。
【0068】
さらに、2つ又は3つ以上の隣接するX又はY基が結合していて、各フェニル環とともに縮合炭素環式又は複素環式環を形成していてもよい。
X及びY基は、フェニル環上の任意の位置に位置していてもよいが、典型的には、これらの基は2−又は4−位のいずれか又は両方に位置する。
どのようなタイプのX及びY基がヨードニウムカチオン中に存在するかとは無関係に、X及びY置換基中の炭素原子数の和は一般的に少なくとも6であり、典型的には少なくとも8であり、そして40以下である。従って、化合物によっては、1又は2個以上のX基が少なくとも6個の炭素原子を含むことができ、そしてYは存在しない(qは0である)。あるいは、1又は2個以上のY基が少なくとも6個の炭素原子を含むこともでき、そしてXは存在しない(pは0である)。さらに、X及びY双方における炭素原子数の和が少なくとも6である限り、1又は2個以上のX基が6個未満の炭素原子を含むことができ、1又は2個以上のY基が6個未満の炭素原子を含むことができる。この場合にも、両フェニル環上に全部で少なくとも6個の炭素原子が存在することができる。
【0069】
構造IBにおいて、p及びqは独立に0又は1〜5の整数であるが、p又はqが少なくとも1であることを条件とする。典型的にはp及びqの両方が少なくとも1であるか、p及びqのそれぞれが1である。このように、X又はY基によって置換されていないフェニル環内の炭素原子は、それらの環位置で水素原子を有することが明らかである。
【0070】
有用なホウ素含有アニオンはホウ素原子に結合した4つの有機基を有する有機アニオンである。かかる有機アニオンは、脂肪族、芳香族、複素環式、又はこれらのうちの任意のものの組み合わせであることができる。一般的に、有機基は、置換又は非置換の脂肪族又は炭素環式芳香族基である。例えば、有用なホウ素含有アニオンは、下記構造(IBz)により表すことできる:
【0071】
【化6】

【0072】
ここで、R1、R2、R3及びR4は、独立に、フルオロアルキル基以外の、置換又は非置換の炭素原子数1〜12のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、全てのペンチル異性体、2−メチルペンチル、全てのヘキシル異性体、2−エチルヘキシル、全てのオクチル異性体、2,4,4−トリメチルペンチル、全てのノニル異性体、全てのデシル異性体、全てのウンデシル異性体、全てのドデシル異性体、メトキシメチル、及びベンジル)、芳香環内に6〜10個の炭素原子を有する置換又は非置換炭素環式アリール基(例えばフェニル、p−メチルフェニル、2,4−メトキシフェニル、ナフチル及びペンタフルオロフェニル基)、置換又は非置換の炭素原子数2〜12のアルケニル基(例えばエテニル、2−メチルエテニル、アリル、ビニルベンジル、アクリロイル及びクロトノチル基)、置換又は非置換の炭素原子数2〜12のアルキニル基(例えばエチニル、2−メチルエチニル及び2,3−プロピニル基)、環構造体中に3〜8個の炭素原子を有する置換又は非置換シクロアルキル基(例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル及びシクロオクチル基)、又は5〜10個の炭素、酸素、硫黄及び窒素原子を有する置換又は非置換ヘテロシクリル基(芳香族基及び非芳香族基の両方を包含する。例えば置換又は非置換のピリジル、ピリミジル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾイリル、インドリル、キノリニル、オキサジアゾリル及びベンゾオキサゾリル基)である。又は、R1、R2、R3及びR4のうちの2又は3つ以上が結合して、ホウ素原子を有する複素環を形成していてもよく、このような環は炭素、窒素、酸素及び窒素原子を最大7個有する。R1からR4までのいずれの基もハロゲン原子を含有せず、特にフッ素原子を含有しない。
【0073】
典型的には、R1、R2、R3及びR4は、独立に、上で定義した置換又は非置換アルキル又はアリール基であり、より典型的には、R1、R2、R3及びR4のうちの少なくとも3つが、同じか又は異なる置換又は非置換アリール基(例えば置換又は非置換フェニル基)である。例えば、R1、R2、R3及びR4の全てが、同じか又は異なる置換又は非置換アリール基であるか、あるいは、これらの基の全てが同じ置換又は非置換フェニル基である。Z- は、フェニル基が置換されているか置換されていない(例えば、全てが非置換フェニル基である)テトラフェニルボレートであることができる。
【0074】
幾つかの代表的なホウ酸ヨードニウム化合物として、4−オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、[4−[(2−ヒドロキシテトラデシル)−オキシ]フェニル]フェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフェニルボレート、4−メチルフェニル−4’−へキシルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、4−メチルフェニル−4’−シクロヘキシルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−ヘキシルフェニル−フェニルヨードニウム−テトラフェニルボレート、4−メチルフェニル−4’−シクロヘキシルフェニルヨードニウムn−ブチルトリフェニルボレート、4−シクロヘキシルフェニル−4’−フェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、2−メチル−4−t−ブチルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、4−メチルフェニル−4’−ペンチルフェニルヨードニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、4−メトキシフェニル−4’−シクロヘキシルフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4’−ドデシルフェニルヨードニウムテトラキス(4−フルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、及びビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(1−イミダゾリル)ボレートが挙げられる。これらの化合物のうちの2種又は3種の混合物を、ホウ酸ヨードニウム開始剤組成物において使用することもできる。
【0075】
かかるホウ酸ジアリールヨードニウム化合物は、一般的に、ヨウ化アリールと置換又は非置換アレーンとを反応させ、続いてホウ酸アニオンとイオン交換することにより調製できる。様々な調製方法の詳細が、米国特許第6,306,555号明細書(Schulz他)及びこの特許明細書中で引用された文献、及びCrivelloによる, J. Polymer Sci., Part A: Polymer Chemistry, 37, 4241-4254 (1999)に記載されている。
【0076】
ホウ素含有アニオンは、下記のような赤外線吸収性染料(例えばカチオン染料)の一部として供給されてもよい。かかるホウ素含有アニオンは、一般的に、構造(IBz)について先に記載したように定義される。
【0077】
ヨードニウムカチオン及びホウ素含有アニオンは、一般的に、画像形成性層の総乾燥質量を基準として少なくとも1%かつ15%以下、典型的には少なくとも4%かつ10%以下の量で画像形成性層中に存在する。様々な開始剤成分の最適な量は、様々な化合物及び所望とされる輻射線感受性組成物の感度に応じて異なり、当業者は容易に分かるであろう。
【0078】
画像形成性層は、例えば、米国特許第6,884,568号明細書(Timpeら)に記載されているような、メルカプトトリアゾール類、メルカプトベンゾイミダゾール類、メルカプトベンゾオキサゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンゾオキサジアゾール類、メルカプトテトラゾール類などの複素環式メルカプト化合物などを、輻射線感受性組成物の総固形分を基準にして少なくとも0.5質量%、かつ、10質量%以下の量で含んでもよい。有用なメルカプトトリアゾール類としては、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−メチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−メルカプト−1−フェニル−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾール、及び5−(p−アミノフェニル)−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾールが挙げられる。
【0079】
幾つかの有用な開始剤組成物は、以下の組み合わせを含む:
ホウ素不含ヨードニウム塩のみから供給されたヨードニウムカチオンと、カチオン性赤外染料を含む他の塩から別に供給されたホウ素含有アニオン、
ホウ素不含ヨードニウム塩から供給されたヨードニウムカチオンと、ヨードニウムボレートのみに由来するホウ素含有アニオン、又は
ホウ素不含ヨードニウム塩及びヨードニウムボレートの両方から供給されたヨードニウムカチオンと、ヨードニウムボレート及び他の供給源(例えばカチオン性IR染料など)の両方に由来するホウ素含有アニオン。
【0080】
輻射線感受性組成物は、一般的に、画像形成輻射線を吸収するか又は上記電磁スペクトルの赤外領域(例えば700〜1400nm)にλmaxを有する画像形成輻射線に対して組成物を増感する1種又は2種以上の輻射線吸収性化合物、例えば赤外線吸収性化合物などを含む。
【0081】
赤外線吸収性染料は、画像形成性層の総乾燥質量を基準にして、輻射線感受性組成物中に、一般的に少なくとも0.5%かつ10%以下、典型的には少なくとも1%かつ10%以下の量で存在することができる。この目的のために必要な具体的な量は、使用される個々の化合物に応じて、当業者が容易に判るであろう。
【0082】
画像形成性層は、少なくとも2,000かつ1,000,000、少なくとも10,000〜200,000以下、又は少なくとも10,000かつ100,000以下の分子量を有する一次ポリマーバインダーも含む。
【0083】
一次ポリマーバインダーは、輻射線感受性組成物(又は画像形成性層)の総乾燥質量を基準にして、少なくとも10質量%かつ80質量%(典型的には15〜40質量%)を構成することができる。ポリマーバインダーは、均質である、すなわち、ポリマーバインダーは、コーティング溶剤中に溶解されているか、又は離散粒子として存在することができる。
【0084】
有用な一次ポリマーバインダーとしては、(メタ)アクリル酸及び酸エステル樹脂[例えば(メタ)アクリレート]、ポリビニルアセタール、フェノール樹脂、1種又は2種以上の(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、スチレン、N−置換環状イミド又は無水マレイン酸から誘導されたポリマー、例えば欧州特許出願公開第1,182,033号明細書(Fujimaki他)並びに米国特許第6,309,792号明細書(Hauck他)、米国特許第6,352,812号(Shimazu他)、米国特許第6,569,603号明細書(Furukawa他)及び米国特許第6,893,797号明細書(Munnelly他)に記載されているものなどが挙げられるが、これらに限定されない。米国特許第7,175,949号明細書(Tao他)に記載されているビニルカルバゾールポリマー、及び米国特許第7,279,255号明細書(Tao他)に記載されているペンダントビニル基を有するポリマーも有用である。粒子状の形態のポリエチレングリコールメタクリレート/アクリロニトリル/スチレンのコポリマー、カルボキシフェニルメタクリルアミド/アクリロニトリル/メタクリルアミド/N−フェニルマレイミドの溶解されたコポリマー、ポリエチレングリコールメタクリレート/アクリロニトリル/ビニルカルバゾール/スチレン/メタクリル酸のコポリマー、N−フェニルマレイミド/メタクリルアミド/メタクリル酸のコポリマー、ウレタン−アクリル中間体A(p−トルエンスルホニルイソシアネートとヒドロキシエチルメタクリレートの反応生成物)/アクリロニトリル/N−フェニルマレイミドのコポリマー、及びN−メトキシメチルメタクリルアミド/メタクリル酸/アクリロニトリル/n−フェニルマレイミドのコポリマーも有用である。
【0085】
多くの実施態様において、画像形成性層は、10〜500nm、典型的には150〜450nmの平均粒度を有する離散粒子の形態で存在し、当該層中に概して均一に分散された1又は2種以上の一次ポリマーバインダーを含む。この粒子状ポリマーバインダーは、室温で離散粒子として存在し、例えば水性分散体中に存在する。しかしながら、当該粒子は、例えば、コーティングされた画像形成性層配合物を乾燥するために使用される温度で、部分的に合着又は変形していてもよい。この環境でも、粒子構造は崩壊されない。かかるポリマーバインダーは、屈折率により求めた場合に、一般的に、少なくとも30,000、典型的には少なくとも50,000〜100,000、又は60,000〜80,000の分子量(Mn)を有する。
【0086】
幾つかの有用な一次ポリマーバインダーとしては、画像形成性要素を「印刷機上」現像可能なものにすることのできるペンダントポリ(アルキレンオキシド)側鎖を有するポリマーのポリマーエマルジョン又は分散体が挙げられる。かかる一次ポリマーバインダーは米国特許第6,582,882号明細書(Pappas他)及び米国特許第6,889,994号明細書(上記)並びに米国特許出願第2005/0123853号明細書(Munnelly他)に記載されている。これらの一次ポリマーバインダーは、離散粒子として画像形成性層中に存在する。
【0087】
他の有用な一次ポリマーバインダーは、疎水性骨格を有し、以下のa)及びb)の反復単位の両方又はb)の反復単位のみを含んでなる:
a)疎水性骨格に直接結合したペンダントシアノ基を有する反復単位、及び
b)ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含んでなる親水性ペンダント基を有する反復単位。
【0088】
これらのポリマーバインダーは、ポリ(アルキレンオキシド)セグメント、例えばポリ(エチレンオキシド)セグメント又はポリ(プロピレンオキシド)セグメントを含む。これらのポリマーは、主鎖ポリマー及びポリ(アルキレンオキシド)ペンダント側鎖を有するグラフトコポリマーでも、(アルキレンオキシド)含有反復単位のブロックと非(アルキレンオキシド)含有反復単位のブロックとを有するブロックコポリマーでもよい。グラフトコポリマー及びブロックコポリマーのどちらも、さらに、疎水性骨格に直接結合したペンダントシアノ基を有していてもよい。アルキレンオキシド構成単位は、一般的にC1〜C6アルキレンオキシド基、より典型的にはC1〜C3アルキレンオキシド基である。アルキレン部分は、直鎖状でも、分岐状でも、それらの置換体でもよい。
【0089】
たんに一例として、かかる反復単位は、シアノ、シアノ置換アルキレン基、又はシアノ末端アルキレン基を含んでなるペンダント基を含んでいてもよい。反復単位は、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート又はこれらの組み合わせなどのエチレン性不飽和重合性モノマーから誘導することもできる。しかし、他の従来手段によりシアノ基をポリマー中に導入することができる。かかるシアノ含有ポリマーバインダーの例は、例えば、米国特許出願公開2005/003285(Hayashiら)に記載されている。
【0090】
一例として、かかる一次ポリマーバインダーは、以下の好適なエチレン性不飽和重合性モノマー又はマクロマーの組み合わせ又は混合物の重合により形成できる:
A)アクリロニトリル、メタクリロニトリル又はこれらの組み合わせ、
B)アクリル酸又はメタクリル酸のポリ(アルキレンオキシド)エステル、例えばポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート又はこれらの組み合わせ、及び
C)必要に応じて、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、ヒドロキシスチレン、アクレートエステル、メタクリレートエステル(例えばメチルメタクリレート及びベンジルメタクリレート)、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのモノマー、又はかかるモノマーの組み合わせ。
【0091】
かかる一次ポリマーバインダー中のポリ(アルキレンオキシド)セグメントの量は、0.5〜60質量%、好ましくは2〜50質量%である。ブロックコポリマー中の(アルキレンオキシド)セグメントの量は、一般的に5〜60質量%、好ましくは10〜50質量%である。ポリ(アルキレンオキシド)側鎖を有する一次ポリマーバインダーが離散粒子の形態で存在することも可能である。
【0092】
一次ポリマーバインダーは、一般的に、画像形成性層の総乾燥質量を基準にして、少なくとも10%かつ90%以下、典型的には10〜70%の量で輻射線感受性組成物中に存在する。これらのバインダーは、全てのポリマーバインダー(一次ポリマーバインダーと任意の二次ポリマーバインダーの合計)の乾燥質量の100%以下を構成することができる。
【0093】
一次ポリマーバインダーに加えて、画像形成性層中にさらなるポリマーバインダー(「二次」ポリマーバインダー)も使用できる。かかるポリマーバインダーは、上記のもの以外の、ネガ型輻射線感受性組成物用として当該技術分野で知られているもののいずれであってもよい。二次ポリマーバインダーは、画像形成性層の乾燥被覆質量を基準にして1.5〜70質量%、典型的には1.5〜40質量%の量で存在することができ、二次ポリマーバインダーは、全てのポリマーバインダーの乾燥質量の30〜60質量%を構成することができる。
【0094】
二次ポリマーバインダーは、複数(少なくとも2つ)のウレタン部分を含む主鎖を有する粒子状ポリマーであってもよい。かかるポリマーバインダーは、動的光散乱により求めた場合に、少なくとも2,000、典型的には少なくとも100,000〜500,000、又は100,000〜300,000の分子量(Mn)を有する。これらのポリマーバインダーは、一般的に、粒子状の形態で画像形成性層中に存在する。このことは、それらのポリマーバインダーが、室温で離散粒子として存在し、例えば水性分散体中に存在することを意味する。しかしながら、当該粒子は、例えば、コーティングされた画像形成性層配合物を乾燥するために使用される温度で、部分的に合着又は変形していてもよい。この環境でも、粒子構造は崩壊されない。ほとんどの実施態様において、これらのポリマーバインダーの平均粒度は10〜300nmであり、典型的には、平均粒度は30〜150nmである。粒子状の二次ポリマーバインダーは、一般的に、商業的に得られ、固形分が少なくとも20%かつ50%以下である水性分散体として使用される。これらのポリマーバインダーは、同じ又は異なる分子におけるウレタン部分の間で少なくとも部分的に架橋されていてよく、この架橋はポリマーの製造中に起こりうる。この反応にもかかわらず、画像形成中の反応で利用可能な遊離基重合性基が残る。
【0095】
二次ポリマーバインダーは、均質なもの、すなわちコーティング溶剤中に溶解されたものであることができ、あるいは離散粒子として存在してもよい。二次ポリマーバインダーとしては、(メタ)アクリル酸及び酸エステル樹脂[例えば(メタ)アクリレート]、ポリビニルアセタール、フェノール樹脂、スチレン、N−置換環状イミド又は無水マレイン酸から誘導されたポリマー、例えば欧州特許出願公開第1,182,033号明細書(Fujimaki他)、並びに米国特許第6,309,792号明細書(Hauck他)、米国特許第6,352,812号(Shimazu他)、米国特許第6,569,603号明細書(Furukawa他)及び米国特許第6,893,797号明細書(Munnelly他)に記載されているものなどが挙げられるが、これらに限定されない。米国特許第7,175,949号明細書(Tao他)に記載されているビニルカルバゾールポリマー、及び米国特許第7,279,255号明細書(Tao他)に記載されているペンダントビニル基を有するポリマーも有用である。粒子状の形態のポリエチレングリコールメタクリレート/アクリロニトリル/スチレンのコポリマー、カルボキシフェニルメタクリルアミド/アクリロニトリル/メタクリルアミド/N−フェニルマレイミドから誘導された溶解されたコポリマー、ポリエチレングリコールメタクリレート/アクリロニトリル/ビニルカルバゾール/スチレン/メタクリル酸から誘導されたコポリマー、N−フェニルマレイミド/メタクリルアミド/メタクリル酸から誘導されたコポリマー、ウレタン−アクリル中間体A(p−トルエンスルホニルイソシアネートとヒドロキシエチルメタクリレートの反応生成物)/アクリロニトリル/N−フェニルマレイミドから誘導されたコポリマー、及びN−メトキシメチルメタクリルアミド/メタクリル酸/アクリロニトリル/n−フェニルマレイミドから誘導されたコポリマーが有用である。
【0096】
さらなる有用な二次ポリマーバインダーは、粒子状のポリ(ウレタン−アクリル)混成体であり、これは、画像形成性層中に分配(通常は均一に)される。これらの混成体の各々は、50,000〜500,000の分子量を有し、粒子は10〜10,000nm(好ましくは30〜500nm、より好ましくは30〜150nm)の平均粒径を有する。これらの混成体は、それらの製造に使用される個々の反応物に依存して、「芳香族的」又は「脂肪族的」な性質を有するものであることができる。2種又は3種以上のポリ(ウレタン−アクリル)混成体の粒子のブレンドも使用できる。いくつかのポリ(ウレタン−アクリル)混成体はAir Products and Chemicals, Inc.(ペンシルベニア州アレンタウン所在)から分散体で市販されており、例えば、ポリ(ウレタン−アクリル)混成体のHybridur(登録商標)540、560、570、580、870、878及び880ポリマー分散体として市販されている。これらの分散体は、一般的に、適切な水性媒体中に固形分少なくとも30%でポリ(ウレタン−アクリル)混成体粒子を含み、水性媒体は、市販の界面活性剤、消泡剤、分散剤、腐食防止剤及び任意の顔料及び水混和性有機溶剤を含んでもよい。
【0097】
画像形成性層は、スピロラクトン又はスピロラクタム着色剤前駆体を含んでもよい。かかる化合物は、一般的に、酸の存在により環が開いて着色化学種又はより強く着色した化学種をもたらすまで一般的に無色であるか又は薄く着色している。
【0098】
例えば、有用なスピロラクトン及びスピロラクタム着色剤前駆体としては、下記構造(CF):
【0099】
【化7】

【0100】
により表される化合物が挙げられる。ここで、Xは−O−又は−NH−であり、R5及びR6は一緒になって炭素環式又は複素環式縮合環を形成している。炭素環式縮合環は飽和又は不飽和のものであることができ、典型的には炭素原子数が5〜10である大きさのものである。典型的には、6員ベンゼン縮合環が存在する。これらの環は置換されたものであっても、置換されていないものであってもよい。
7及びR8は、独立に、置換又は非置換の炭素環式基であり、当該基は飽和(アリール基)又は不飽和(シクロアルキル基)である。典型的には、これらは置換又は非置換の環内に6又は10個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリール基(例えばピロール基及びインドール基)である。代わりに、R7及びR8とが一緒になって、先に定義したような置換又は非置換の炭素環式又は複素環式環を形成していてもよい。
【0101】
より有用な着色剤前駆体は下記構造(CF−1):
【0102】
【化8】

【0103】
(式中、Yは窒素原子又はメチン基であり、R7及びR8は上記のとおりである)
により表すことができる。Yがメチン基である化合物が特に有用である。
【0104】
有用な着色剤前駆体としては、クリスタル・バイオレット・ラクトン(Crystal Violet Lactone)、マラカイト・グリーン・ラクトン(Malachite Green Lactone)、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−クロロ−7−(β−エトキシエチルアミノ)フルオラン、3−(N,N,N−トリエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−クロロ−7−o−クロロフルオラン、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノフルオラン、2−アミノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メトキシ−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−(4−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−ベンジルアミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7,8−ベンゾフルオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス((1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、及び3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
【表1】

【0106】
上記の着色剤前駆体は、画像形成性層の総乾燥質量を基準にして、少なくとも1質量%かつ10質量%以下、典型的には3〜6質量%の量で存在することができる。
【0107】
輻射線感受性組成物(画像形成性層)は、それぞれ一般的には200を超え、典型的には少なくとも300で、かつ、1000以下の分子量を有する1又は2種以上のホスフェート(メタ)アクリレートをさらに含んでもよい。「ホスフェート(メタ)アクリレート」とは、「ホスフェートメタクリレート類」や、アクリレート部分中のビニル基上に置換基を有する他の誘導体も包含することを我々は意図する。かかる化合物及び画像形成性層におけるそれらの使用は、ここで引用した米国特許第7,175,969号明細書(Ray他)により詳しく記載されている。
【0108】
本発明において有用な代表的なホスフェート(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールメタクリレートホスフェート(Aldrich Chemical Co.から入手可能)、Nippon Kayaku(日本国)からKayamer PM-2として入手可能な2−ヒドロキシエチルメタクリレートのホスフェート、Kayamer PM-21(Nippon Kayaku、日本国)として入手可能なジ(カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレート)のホスフェート、及びUni-Chemical Co., Ltd.(日本国)からPhosmer M、Phosmer MH、Phosmer PE、Phosmer PEH、 Phosmer PP、及びPhosmer PPHとして入手可能なポリエチレングリコールメタクリレートホスフェートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
ホスフェート(メタ)アクリレートは、輻射線感受性組成物中に、組成物の総乾燥質量を基準にして、少なくとも0.5%かつ20%以下、典型的には、少なくとも0.9%かつ10%以下の量で存在することができる。
【0110】
画像形成性層は、少なくとも200かつ4000以下の分子量を有するポリ(アルキレングリコール)又はそのエーテル若しくはエステルである「一次添加剤」を含んでもよい。この一次添加剤は、画像形成性層の総乾燥質量を基準として少なくとも2質量%かつ50質量%以下の量で存在する。特に有用な一次添加剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールモノメタクリレートのうちの1又は2種以上が挙げられるが、これらに限定されない。また、Sartomer SR9036(エトキシル化(30)Aジメタクリレート)、CD9038(エトキシル化(30)ビスフェノールAジアクリレート)、SR399(ジペンタエリトリトールペンタアクリレート)及びSR494(エトキシル化(5)ペンタエリトリトールテトラアクリレート)、及び類似の化合物(これらは全てSartomer Company, Inc.から入手できる)も有用である。幾つかの実施態様において、一次添加剤は、重合性ビニル基を含有しないことを意味する「非反応性」であってよい。
【0111】
画像形成性層は、当該画像形成性層の総乾燥質量を基準として20質量%以下の量で、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルイミダゾール)、又はポリエステルである「二次添加剤」を含むこともできる。
【0112】
画像形成性層へのさらなる添加剤としては、カラー現像剤又は酸性化合物が挙げられる。カラー現像剤としては、我々は、米国特許出願第2005/0170282号明細書(Inno他)に記載されているような、単量体フェノール系化合物、有機酸又はそれらの金属塩、オキシ安息香酸エステル、酸クレイ(acid clays)その他の化合物を包含することを意図する。フェノール系化合物の具体例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−イソプロピリデン−ジフェノール(ビスフェノールB)、p−t−ブチルフェノール、2,4−ジニトロフェノール、3,4−ジクロロフェノール、4,4’−メチレン−ビス(2,6’−ジ−t−ブチルフェノール)、p−フェニルフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェノール)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキセン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2’−メチレンビス(4−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(α−フェニル−p−クレゾール)チオジフェノール、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)スルホニルジフェノール、p−ブチルフェノール−ホルマリン縮合物、及びp−フェニルフェノール−ホルマリン縮合物が挙げられるが、これらに限定されない。有用な有機酸又はそれらの塩の例としては、フタル酸、フタル酸無水物、マレイン酸、安息香酸、没食子酸、o−トルイル酸、p−トルイル酸、サリチル酸、3−t−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸、5−α−メチルベンジルサリチル酸、3,5−ビス(α−メチルベンジル)サリチル酸、3−t−オクチルサリチル酸、及びそれらの亜鉛、鉛、アルミニウム、マグネシウム及びニッケル塩が挙げられるが、これらに限定されない、オキシ安息香酸エステルの例としては、p−オキシ安息香酸エチル、p−オキシ安息香酸ブチル、p−オキシ安息香酸ヘプチル、及びp−オキシ安息香酸ベンジルが挙げられるが、これらに限定されない。かかるカラー現像剤は、画像形成性層の総乾燥質量を基準にして0.5〜5質量%の量で存在することができる。
【0113】
画像形成性層は、分散剤、保湿剤、殺生物剤、可塑剤、塗布性又は他の特性のための界面活性剤、粘度上昇剤、pH調整剤、乾燥剤、消泡剤、保存剤、抗酸化剤、現像助剤、レオロジー調整剤、又はこれらの組み合わせ、あるいは平版印刷分野において一般的に使用されている任意の他の添加物などの種々の任意選択の化合物を、コンベンショナルな量で含むこともできる。有用な粘度上昇剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びポリ(ビニルピロリドン)が挙げられる。
【0114】
画像形成性要素
画像形成性要素は、本発明の基材に上記輻射線感受性組成物を適切に適用して画像形成性層を形成することによって形成できる。この基材は、親水性を高めるために、輻射線感受性組成物の適用前に、下記のような種々の方法で処理又はコーティングすることができる。典型的には、輻射線感受性組成物を含んでなる1つの画像形成性層だけが存在する。
【0115】
この要素は、例えば国際公開第99/06890号(Pappas他)に記載されているように、画像形成性層に適用された又は画像形成性層の上に配置されたオーバーコート(例えば「酸素不透過性トップコート」)として従来知られているものを含んでもよい。かかるオーバーコート層は、水溶性ポリマー、例えばポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ビニルイミダゾール)や、ビニルピロリドン、エチレンイミン及びビニルイミダゾールのうちの2種以上から得られるコポリマー、かかるポリマーの混合物などを含むことができ、一般的に、少なくとも0.1g/m2かつ4g/m2 以下の乾燥コーティング量を有し、このうち、水溶性ポリマーは、オーバーコートの乾燥質量の少なくとも90%かつ100%以下を構成する。多くの実施態様において、このオーバーコートは存在せず、画像形成性層が画像形成性要素の最外層である。
【0116】
輻射線感受性組成物は、任意の適切な装置及び方法、例えばスピンコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、スロットコーティング、バーコーティング、ワイヤロッドコーティング、ローラーコーティング又は押出ホッパーコーティングなどを使用して、コーティング液中の溶液又は分散体として基材に適用できる。組成物は、適切な基材(例えば印刷機上印刷胴(on-press printing cylinder))上に吹き付けることによっても適用できる。典型的には、輻射線感受性組成物を適用し乾燥させて画像形成性層を形成し、その層のにオーバーコート配合物を適用する。
【0117】
かかる製造法の例は、遊離基重合性成分、一次ポリマーバインダー、ヨードニウムカチオン及びボレートアニオンを含む開始剤組成物、赤外線吸収性化合物、及び輻射線感受性組成物の任意の他の成分を、適切な有機溶剤又はそれらの混合物[例えばメチルエチルケトン(2−ブタノン)、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、iso−プロピルアルコール、アセトン、γ−ブチロラクトン、n−プロパノール、テトラヒドロフラン、及び当業界でよく知られている他のもの、並びにこれらの混合物など]の中で混合し、得られた溶液を基材に適用し、適切な乾燥条件下で蒸発により溶剤を除去することである。いくつかの代表的なコーティング溶剤及び代表的な画像形成性層配合物は下記実施例に記載する。適切な乾燥後、画像形成性層のコーティング質量は一般的には、少なくとも0.1g/m2かつ5g/m2以下、あるいは少なくとも0.5g/m2かつ3.5g/m2以下である。
【0118】
現像性を高めるために、又は熱絶縁層として機能するように、画像形成性層の下方に層が存在してもよい。下層は、現像液中に可溶性であるか又は少なくとも分散性であるべきであり、典型的には比較的低い熱伝導係数を有する。
【0119】
各層組成物の溶融混合物から従来の押出コーティング法により様々な層を適用することができる。典型的には、かかる溶融混合物は揮発性有機溶剤を含まない。
【0120】
他の配合物をコーティングする前に溶剤を除去するために、各種の層配合物の適用の間に中間乾燥工程を用いることができる。従来の時間及び温度での乾燥工程は、各種の層の混合を防止することにも役立つ。
【0121】
基材上に各種の層を適用し乾燥したら、本明細書に援用する米国特許第7,175,969号明細書(上記)に記載されているように、画像形成性要素への又は画像形成性要素からの水分の移行を実質的に妨げる不透水性材料中に画像形成性層を封じることができる。
【0122】
画像形成条件
使用中、画像形成性要素は、輻射線感受性組成物中に存在する輻射線吸収性化合物に応じて、波長700〜1500nmで、近赤外線又は赤外線などの画像形成又は露光輻射線の適切な供給源に暴露される。例えば、画像形成は、例えば、少なくとも700nmかつ1400nm以下、典型的には少なくとも750nmかつ1250nmの波長で、赤外線レーザーからの画像形成又は露光輻射線を使用して行うことができる。必要に応じて、同じ時間で、複数の波長の画像形成輻射線を使用して画像形成を行うことができる。
【0123】
画像形成性要素を露光するために使用されるレーザーは、その信頼性及びメンテナンスの少なさのために、通常、ダイオードレーザーであるが、他のレーザー、例えば気体又は固体レーザーも使用できる。レーザー画像形成のための出力、強度及び露光時間の組み合わせは、当業者は容易に分かるであろう。現在のところ、商業的に利用的な画像セッターにおいて使用される高性能レーザー又はレーザーダイオードは、少なくとも800nmかつ850nm以下、又は少なくとも1060nmかつ1120nmの波長の赤外線を放出する。
【0124】
画像形成装置は、単にプレートセッターとして機能することができるか、あるいは、平版印刷機内に直接組み込まれていてもよい。後者の場合、印刷は、画像形成及び現像の直後に開始することができ、これにより印刷機設定時間をかなり短縮することができる。画像形成装置は、画像形成性部材をドラムの内側又は外側の円筒面に装着した状態で、フラットベッド記録器として、又はドラム型記録器として構成することができる。有用な画像形成装置の一例は、波長830nmの近赤外線を放出するレーザーダイオードを含む、Eastman Kodak Company(カナダ国ブリティッシュコロンビア州バーナビー所在)から入手可能な複数の型式のKodak(登録商標)Trendsetterプレートセッターとして入手することができる。他の適切な画像形成源としては、波長1064nmで作動するCrescent 42Tプレートセッター(イリノイ州シカゴ所在のGerber Scientificから入手可能)、及びScreen PlateRite 4300シリーズ又は8600シリーズのプレートセッター(イリノイ州シカゴ所在のScreenから入手可能)が挙げられる。さらなる有用な輻射線源としては、要素が印刷版胴に取り付けられている間に要素に画像を形成するために使用することができるダイレクト画像形成印刷機が挙げられる。好適なダイレクト画像形成印刷機の例としては、Heidelberg SM74-DI印刷機(オハイオ州デイトン所在のHeidelbergから入手可能)が挙げられる。
【0125】
赤外線による画像形成は、一般的に、画像形成性層の感度に依存して、少なくとも30mJ/cm2かつ500mJ/cm2以下、典型的には少なくとも50mJ/cm2かつ300mJ/cm2以下の画像形成エネルギーで行うことができる。
【0126】
本発明の実施においてはレーザー画像形成が好ましいが、熱エネルギーを像様に提供する任意の他の手段によって画像形成を行うこともできる。例えば米国特許第5,488,025号明細書(Martin他)に記載された「サーマル印刷」として知られているものにおいて熱抵抗ヘッド(サーマル印刷ヘッド)を使用して画像形成を達成することができる。サーマル印刷ヘッドは、商業的に利用可能である(例えばFujitsu Thermal Head FTP-040 MCS001、及びTDK Thermal Head F415 HH7-1089)。
【0127】
現像及び印刷
画像形成性要素の画像形成によって、画像形成(露光)領域及び非画像形成(非露光)領域の潜像を含む画像形成された要素が生じる。この画像形成された要素を、適切な現像液又は処理液で現像すると、主に、各種層の非露光領域のみが除去され、基材の親水性表面が露出する、そのため、画像形成性要素波「ネガ型」(例えばネガ型平版印刷版前駆体)である。露光(又は画像形成)領域はインクを受容し、非露光(又は非画像形成)領域において基材はインクをはじく。
【0128】
現像は、画像形成性層の非画像形成(非露光)領域を除去するのに十分な時間にわたって、しかし露光領域を除去するほどには長くない時間にわたって実施される。従って、画像形成性層の非画像形成(非露光)領域は、現像液又は処理液中で「可溶性」又は「除去可能」と記述される。なぜならば、これらの領域は、画像形成性層の画像形成(露光)領域よりも容易に、現像液中で除去、溶解又は分散されるからである。従って「可溶性」という用語は、「分散性」であることをも意味する。
【0129】
オフプレス(off-press)現像に有用な現像液としては、12未満のpHを一般的に有し、一般的に、水と混和性である1又は2種以上の有機溶剤、例えば2−エチルエタノール及び2−ブトキシエタノールなどの単相溶液である有機溶剤含有アルカリ性現像液が挙げられる。代表的な溶剤含有アルカリ性現像液としては、ND−1ディベロッパー、955ディベロッパー、956ディベロッパー、989ディベロッパー及び980ディベロッパー(全てEastman Kodak Companyから入手可能)、HDN−1ディベロッパー(Fujiから入手可能)、並びにEN 232ディベロッパー(Agfaから入手可能)が挙げられる。
【0130】
一般的に、現像液は、現像液を含有するアプリケーターで外層を擦るか又は拭うことにより、画像形成された要素に適用される。あるいは、画像形成された要素に、現像液をブラシ塗布することもでき、又は露光された領域を除去するのに十分な力で外層に吹き付けることにより、現像液を適用することができる。現像液中に画像形成された要素を浸漬することもできる。全ての場合において、現像画像が生成し、特に、本発明の親水性アルミニウム含有基材を有する平版印刷版において、現像画像が生成する。
【0131】
現像に続いて、画像形成された要素を水で濯ぎ、そして適切な様式で乾燥させることができる。乾燥させた要素を、コンベンショナルなガム引き用溶液(好ましくはアラビアゴム)で処理することもできる。
【0132】
紫外線又は可視光へのブランケット又はフラッド露光を伴うか又は伴わずに、ポストベーキング作業を実施することもできる。画像形成され現像された要素を、得られる印刷版のランレングスを増加させるために、ポストベーク工程においてベーキングしてもよい。ベーキングは、220℃〜240℃で、7〜10分間、又は120℃で30分間で実施できる。あるいは、ポストベーキング作業なしで、ブランケット紫外線又は可視光露光を行うことができる。
【0133】
画像形成され現像された要素の印刷面に平版印刷インク及び湿し水を適用することにより、印刷を実施することができる。最外層の露光(除去されない)領域がインクを取り込み、画像形成及び現像により露出した基材の親水性表面が湿し水を取り込む。インクは、次いで、好適な受容性材料(例えば、布、紙、金属、ガラス又はプラスチック)に転写され、その上に画像の所望の刷りを提供する。必要に応じて、画像形成された部材から受容性材料へインクを転写するために、中間「ブランケット」ローラーを使用することができる。画像形成された部材は、必要に応じて、コンベンショナルなクリーニング手段を使用して、刷りの間にクリーニングすることができる。
【0134】
代わりに、画像形成後で処理前に露光後ベーキング(又は予熱)ステップ有り又は無しで、画像形成された要素を、主に非露光領域のみを除去することにより画像形成された前駆体を「現像」し、しかも、画像形成及び現像された表面全体にわたって保護層及びコーティングをもたらす単一処理液を使用してオフプレスで処理することができる。この第2の側面において、処理液は、印刷版上の平版印刷画像を汚染又は損傷(例えば、酸化、指紋、塵埃又は擦過傷から)から保護することのできるガムのように挙動することができる。処理液は、適切な量の酸又は塩基を使用して調製された場合に、一般的に2を超え且つ11.5以下、典型的には6〜11又は6〜10.5のpHを有する水溶液である。かかる処理液、それらの成分、及び画像形成されたネガ型画像形成性要素を現像するためのそれらの使用についてのさらなる詳細は、引用により本明細書に援用する、同時係属の本願と同じ出願人による米国特許出願第11/949,817号明細書(2007年12月4日にK. Ray, Tao及びClarkにより出願)に示されている。
【0135】
一般的に、画像形成後、単一処理液を、画像形成された前駆体に、ラビング、吹き付け(spraying)、ジェッティング(jetting)、ディッピング、浸漬(immersing)、コーティング、又はワイピングにより適用でき、又は、画像形成された前駆体を、単一処理液を含むローラー、含浸パッド又はアプリケーターに接触させることによって、画像形成された要素に適用することができる。例えば、画像形成された要素に処理液をはけ塗りすることができ、あるいは、画像形成された要素上に処理液を注ぎかけるか、又は、例えば欧州特許出願公開第1,788,431 A2号(上記)の[0124]に記載されているようなスプレーノズルシステムを使用して非露光領域を除去するのに十分な力で画像形成面に吹き付けることにより単一処理液を適用することができる。画像形成された要素を単一処理液中に浸漬し、手又は器具により擦ってもよい。
【0136】
単一処理液を適用しながら画像形成された要素をラビング又はブラッシングするために少なくとも1つのローラーを有する適切な装置中の処理ユニット(又はステーション)で適用することもできる。かかる処理ユニットを使用することによって、画像形成された層の非露光領域を基材からより完全かつ迅速に除去することができる。残留した単一処理液は、除去(例えば、スキージ又はニップローラーを使用して)されても、あるいは、すすぎ工程なしに、得られた印刷版上に残し(そして乾燥させ)てもよい。機械的手段(例えばブラシ又はフラシローラーなど)が使用される前に、処理液と前駆体の画像形成されたコーティングとの間の相互作用に十分な時間、画像形成された前駆体上に処理液が存在することが可能なプロセッサーシステム及び装置を使用して処理を行うことが望ましい。
【0137】
本発明の多くの実施態様において、画像形成されたネガ型要素は、以下でより詳しく述べるように、ほとんどの実施態様において、露光後のベーキング工程が省かれる。画像形成された要素は、印刷機に取り付けられ、画像形成性層中の非露光領域は、適切な湿し水、平版印刷インク、又はその両方によって、印刷時における初期刷り時に除去される。水性湿し水の典型的な成分としては、pH緩衝剤、減感剤、界面活性剤及び湿潤剤、保湿剤、低沸点溶剤、殺生物剤、消泡剤及び金属イオン封鎖剤が挙げられる。湿し水の代表例は、Varn Litho Etch 142W + Varn PAR(アルコール代替物)(イリノイ州アディソン所在のVarn Internationalから入手可能)である。
【0138】
非画像形成領域、すなわち画像形成及び現像工程により露出した親水性基材の表面が湿し水を取り込み、画像形成された層の画像形成(非除去)領域がインクを取り込む。次に、インクは、適切な受容性材料(例えば、布地、紙、金属、ガラス又はプラスチック)に転写され、これら材料上に望ましい刷り上がりの画像をもたらす。必要に応じて、中間の「ブランケット」ローラーを使用して、インクを、画像形成された部材から受容材料に転写することができる。画像形成された部材は、刷りの間、必要に応じて、従来のクリーニング手段を使用してクリーニングできる。
以下の例は本発明の実施を具体的に説明するものであるが、いかなる場合であっても本発明を限定しようとするものではない。
【実施例】
【0139】
特に断らない限り、例に用いられた化学組成物は、例えば、Aldrich Chemical Company(ウィスコンシン州ミルウォーキー)等の1つ又は2つ以上の商業的供給源から得ることができるものである。
例で用いた成分及び物質並びに評価に用いた分析法は、以下のとおりである。
Byk(登録商標)336はByk Chemie(コネチカット州ワリングフォード)から入手可能な界面活性剤である。
Blue 63はYamamoto Chemicals(日本国)製のスピロラクトンロイコ染料であり、下記構造:
【0140】
【化9】

【0141】
を有する。
グラフトポリマーAは、アクリロニトリル/スチレン/ポリ(エチレングリコール)、70/20/10のグラフトコポリマーであり、n−プロパノール/水(76/24)中24%の固形分で使用される。このポリマーは、米国特許第7,261,998号明細書(Hayashi他)にコポリマー10として記載されている。
開始剤Aは、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフェニルボレートである。
IR染料Aは下記構造:
【0142】
【化10】

【0143】
を有するシアニン赤外線吸収性染料である。
Irgacure 250はCiba Specialty Chemicals(ニューヨーク州タリタウン)から入手可能な、ヨードニウム(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヘキサフルオロホスフェートである。
Klucel MはHercules Inc.(デラウェア州ウィルミントン)から入手可能なヒドロキシプロピルセルロース材料である。
Masurf(登録商標)1520は、Mason Chemicals(イリノイ州アーリントンハイツ)から入手したフルオロ界面活性剤である。
MEHQはヒドロキノンモノメチルエーテル(4−メトキシフェノールとしても知られている)を表す。
MEKはメチルエチルケトンを表す。
オリゴマーAは、DESMODUR(登録商標)N100(Bayer Corp.(コネチカット州ミルフォード)製の、ヘキサメチレンジイソシアネートをベースとする脂肪族ポリイソシアネート樹脂)をヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリトリトールトリアクリレートと反応させることにより調製されたウレタンアクリレートである(2−ブタノン中800質量%溶液)。
Sartomer SR 494はSartomer Company, Inc.(ペンシルベニア州エクストン)から入手したエトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレートである。
Sipomer PAM-100はRhodia(ニュージャージ州クランバリー)から入手した、4〜5個のエチレングリコール単位を有するエチレングリコールメタクリレートホスフェートである。
SLE−Aはポリ(エチレングリコール)二酸(MW 600)である。
SLE−Bは1−[N−[ポリ(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)]−2−アミノエチル]−2−イミダゾリジノンである。
【0144】
合成例1:中間層配合物A(IC−A):
ステップ1: MEK(330.8g、分子篩上で乾燥)、100gのジェファミン(Jeffamine)ED-2003(Huntsmanから入手可能な、主にポリエチレングリコール主鎖を有するポリエーテルジアミン、MW=2000、0.10当量)、及び5.06gのトリエチルアミン(0.05当量)を、加熱マントル、温度調節器、機械的攪拌機、凝縮器、圧力均等化滴下漏斗及び窒素注入口を備えた4つ口1000mlフラスコに入れた。次に、反応温度を35℃未満に保ちながら、5.22g(0.05当量)の塩化メタクリロイルを25℃で15分間で加えた。2時間後に温度を50℃に上昇させ、さらに1時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却した。塩酸トリエチルアミン(TEA:HCl塩)を濾過により除去した。MEHQ(0.055g)を溶液に加えた。MEKを真空(100mm)及び加熱(45℃)下で除去した。約100gの中間体が得られた。
【0145】
ステップ2: ステップ1で得られた中間体(52.8g、0.022当量)、50.0gのMEK(分子篩上で乾燥)、及び0.05gのMEHQを、加熱マントル、温度調節器、機械的攪拌機、凝縮器、圧力均等化滴下漏斗及び窒素注入口を備えた4つ口250mlフラスコに入れた。反応混合物を30℃に加熱し、4.95gの3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(0.02当量)を10分間で加えた。反応混合物を30℃に2時間保った。反応の完了は、2275cm-1のイソシアネート赤外吸収バンドの消失により決定した。MEKを真空(100mm)及び加熱(45℃)下で除去した。約55gの粘着性の物質が得られ、この物質を、さらなる使用のために、次に、水中に溶解(10質量%溶液)させた。10%水溶液は透明であった。
【0146】
合成例2:中間層配合物A1(IC−A1):
ステップ1: MEK(331.9g、分子篩上で乾燥)、90gのジェファミン(Jeffamine)ED-900(0.20当量、主にポリエチレングリコール主鎖を有するポリエーテルジアミン、MW=2000、Huntsmanから入手可能)、及び10.19gのトリエチルアミン(0.1当量)を、加熱マントル、温度調節器、機械的攪拌機、凝縮器、圧力均等化滴下漏斗及び窒素注入口を備えた4つ口1000mlフラスコに入れた。次に、反応温度を35℃未満に保ちながら、10.45g(0.1当量)の塩化メタクリロイルを25℃で15分間で加えた。2時間後に温度を50℃に上昇させ、さらに1時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却した。塩酸トリエチルアミン(TEA:HCl塩)を濾過により除去した。MEHQ(0.055g)を溶液に加えた。MEKを真空(100mm)及び加熱(45℃)下で除去した。約90gの中間体が得られた。
【0147】
ステップ2: ステップ1で得られた中間体(35.5g、0.033当量)、59.2gのMEK(分子篩上で乾燥)、及び0.03gのMEHQを、加熱マントル、温度調節器、機械的攪拌機、凝縮器、圧力均等化滴下漏斗及び窒素注入口を備えた4つ口250mlフラスコに入れた。反応混合物を30℃に加熱し、7.42gの3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネートを15分間で加えた。反応混合物を30℃に2時間保った。反応の完了は、2275cm-1のイソシアネート赤外吸収バンドの消失により決定した。MEKを真空(100mm)及び加熱(45℃)下で除去した。約39gの粘着性の物質が得られ、この物質を、さらなる使用のために、次に、水中に溶解(10質量%溶液)させた。10%水溶液はわずかに濁っていた。
【0148】
比較合成例1:中間層配合物B(IC−B):
ステップ1: MEK(330.8g、分子篩上で乾燥)、100gのポリエチレングリコール(0.10当量、MW=2000、Alfa Aesarから入手可能)、及び5.06gのトリエチルアミン(0.05当量)を、加熱マントル、温度調節器、機械的攪拌機、凝縮器、圧力均等化滴下漏斗及び窒素注入口を備えた4つ口1000mlフラスコに入れた。次に、反応温度を35℃未満に保ちながら、5.22g(0.05当量)の塩化メタクリロイルを25℃で15分間で加えた。2時間後に温度を50℃に上昇させ、さらに1時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却した。塩酸トリエチルアミン(TEA:HCl塩)を濾過により除去した。MEHQ(0.055g)を溶液に加えた。MEKを真空(100mm)及び加熱(45℃)下で除去した。約90gの中間体が得られた。
【0149】
ステップ2: ステップ1で得られた中間体(56.9g、0.0275当量)、63.4gのMEK(分子篩上で乾燥)、0.05gのMEHQ、及び0.315gのD22(ジラウリン酸ジブチル錫)を、加熱マントル、温度調節器、機械的攪拌機、凝縮器、圧力均等化滴下漏斗及び窒素注入口を備えた4つ口250mlフラスコに入れた。反応混合物を60℃に加熱し、6.18gの3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(0.025当量)を20分間で加えた。反応混合物を60℃に3時間保った。反応の完了は、2275cm-1のイソシアネート赤外吸収バンドの消失により決定した。MEKを真空(100mm)及び加熱(45℃)下で除去した。約60gの粘着性の物質が得られ、この物質を、さらなる使用のために、次に、水中に溶解(10質量%溶液)させた。10%水溶液はわずかに濁っていた。
【0150】
比較合成例2:中間層配合物C(IC−C):
ステップ1: MEK(383.8g、分子篩上で乾燥)、112.5gのポリエチレングリコール(0.15当量、MW=1500、Alfa Aesarから入手可能)、及び7.59gのトリエチルアミン(0.075当量)を、加熱マントル、温度調節器、機械的攪拌機、凝縮器、圧力均等化滴下漏斗及び窒素注入口を備えた4つ口1000mlフラスコに入れた。次に、反応温度を35℃未満に保ちながら、7.84g(0.075当量)の塩化メタクリロイルを25℃で15分間で加えた。2時間後に温度を50℃に上昇させ、さらに1時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却した。塩酸トリエチルアミン(TEA:HCl塩)を濾過により除去し、0.0825gのMEHQ(0.055g)を溶液に加えた。MEKを真空(100mm)及び加熱(45℃)下で除去した。約110gの中間体が得られた。
【0151】
ステップ2: ステップ1で得られた中間体(51.8g、0.033当量)、110.6gのMEK(分子篩上で乾燥)、0.05gのMEHQ、及び0.3gのD22(ジラウリン酸ジブチル錫)を、加熱マントル、温度調節器、機械的攪拌機、凝縮器、圧力均等化滴下漏斗及び窒素注入口を備えた4つ口250mlフラスコに入れた。混合物を60℃に加熱し、7.42gの3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(0.03当量)を20分間で加えた。反応混合物を30℃に3時間保った。反応の完了は、2275cm-1のイソシアネートの赤外吸収バンドの消失により決定した。MEKを真空(100mm)及び加熱(45℃)下で除去した。約55gの粘着性の物質が得られ、この物質を、さらなる使用のために、次に、水中に溶解(10質量%溶液)させた。10%水溶液はわずかに濁っていた。
【0152】
比較合成例3:中間層配合物D(IC−D):
ステップ1: MEK(361.5g、分子篩上で乾燥)、100.0gのポリエチレングリコール(0.20当量、MW=1500、Alfa Aesarから入手可能)、及び10.19gのトリエチルアミン(0.10当量)を、加熱マントル、温度調節器、機械的攪拌機、凝縮器、圧力均等化滴下漏斗及び窒素注入口を備えた4つ口1000mlフラスコに入れた。次に、反応温度を35℃未満に保ちながら、10.43g(0.10当量)の塩化メタクリロイルを25℃で15分間で加えた。2時間後に温度を50℃に上昇させ、さらに1時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却した。塩酸トリエチルアミン(TEA:HCl塩)を濾過により除去した。0.056gのMEHQを溶液に加えた。MEKを真空(100mm)及び加熱(45℃)下で除去した。約105gの中間体が得られた。
【0153】
ステップ2: ステップ1で得られた中間体(58.8g、0.055当量)、71.2gのMEK(分子篩上で乾燥)、0.05gのMEHQ、及び0.36gのD22(ジラウリン酸ジブチル錫)を、加熱マントル、温度調節器、機械的攪拌機、凝縮器、圧力均等化滴下漏斗及び窒素注入口を備えた4つ口250mlフラスコに入れた。反応混合物を60℃に加熱し、12.36gの3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(0.05当量)を20分間で加えた。反応混合物を30℃に2時間保った。反応の完了は、2275cm-1のイソシアネートの赤外吸収バンドの消失により決定した。MEKを真空(100mm)及び加熱(45℃)下で除去し、約75.6gの粘着性の物質が得られ、この物質を、さらなる使用のために、次に、水中に溶解(10質量%溶液)させた。10%水溶液は濁っていた。
【0154】
比較合成例4:中間層配合物E(IC−E):
ステップ1: MEK(77.3g、分子篩上で乾燥)及び24.73gの3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(0.10当量)を、加熱マントル、温度調節器、機械的攪拌機、凝縮器、圧力均等化滴下漏斗及び窒素注入口を備えた4つ口250mlフラスコに入れた。混合物を60℃に加熱し、12.36gの3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(0.05当量)を20分間で加えた。混合物を60℃に加熱シ、52.6gのポリ(エチレングリコール)メタクリレート(0.10当量、MW=526)の予備混合物を30分間かけて加えた。反応混合物を60℃に3時間保った。反応の完了は、2275cm-1のイソシアネートの赤外吸収バンドの消失により決定した。MEKを真空(100mm)及び加熱(45℃)下で除去し、約75gの液体物質が得られ、この物質を、さらなる使用のために、次に、水中に溶解(10質量%溶液)させた。この10%水溶液は濁っていた(乳状)。
【0155】
比較用基材例1:基材U(中間層なし)の作製:
この例は、基材U、すなわち、中間層を含まないアルミニウム平版印刷機材の作製を例示する。厚さ0.30mmのアルミニウムシートを、慣用的な方法を用いて、アルカリ洗浄し、塩酸を用いて電気化学的に砂目立てし、苛性溶液中でエッチングし、硫酸中で陽極酸化し、十分にすすぎ、乾燥させた。得られた後処理されていない基材Uは約0.36(K)のDmin、約2.5g/m2 の酸化物量、及び約0.58μmのRa粗さを有していた。酸化物層は約1μmの厚さを有していた。基材Uは、市販のABDick印刷版で試験した場合にインクを撥くことが分かった。
【0156】
基材例1:基材A(基材U上にIC−A中間層)の作製:
この例は、基材Aの作製を例示する。イソプロピルアルコール(4.18g)及び水(89.91g)中にIC−A(4.55g、水中10%)及びMasurf(登録商標)1520(1.36g、水中1%)を溶解させることにより中間層コーティング配合物を調製した。この配合物を上記基材Uの試料の上にスロットコーティングし、約200°F(93.3℃)で回転ドラム上で80秒間乾燥させて、約0.06g/m2のコーティング量を有する薄い中間層をもたらした。得られた基材は、市販のABDick印刷版で試験した場合にインクを撥くことが分かった。
【0157】
基材例2:基材A1(基材U上にIC−A1中間層)の作製:
この例は、基材Aの作製を例示する。イソプロピルアルコール(4.18g)及び水(89.91g)中にIC−A1(4.55g、水中10%)及びMasurf(登録商標)1520(1.36g、水中1%)を溶解させることにより中間層コーティング配合物を調製した。この配合物を上記基材Uの試料の上にコーティングし、約200°F(93.3℃)で回転ドラム上で80秒間乾燥させて、約0.06g/m2のコーティング量を有する薄い中間層をもたらした。得られた基材は、市販のABDick印刷版で試験した場合にインクを撥くことが分かった。
【0158】
比較用基材例2:基材B(基材U上にIC−B中間層)の作製:
この例は、基材Bの作製を例示する。イソプロピルアルコール(4.18g)及び水(89.91g)中にIC−B(4.55g、水中10%)及びMasurf(登録商標)1520(1.36g、水中1%)を溶解させることによりコーティング配合物を調製した。この配合物を上記基材Uの試料の上にスロットコーティングし、約93.3℃で回転ドラム上で80秒間乾燥させて、約0.06g/m2の乾燥コーティング量を有する薄い中間層をもたらした。得られた基材は、市販のABDick印刷版で試験した場合にインクを撥くことが分かった。
【0159】
比較用基材例3:基材C(基材U上にIC−C中間層)の作製:
この例は、基材Cの作製を例示する。イソプロピルアルコール(4.18g)及び水(89.91g)中にIC−C(4.55g、水中10%)及びMasurf(登録商標)1520(1.36g、水中1%)を溶解させることによりコーティング配合物を調製した。この配合物を上記基材Uの試料の上にスロットコーティングし、約93.3℃で回転ドラム上で80秒間乾燥させて、約0.06g/m2の乾燥コーティング量を有する薄い中間層をもたらした。得られた基材は、市販のABDick印刷版で試験した場合にインクを撥くことが分かった。
【0160】
比較用基材例4:基材D(基材U上にIC−D中間層)の作製:
この例は、基材Dの作製を例示する。イソプロピルアルコール(4.18g)及び水(89.91g)中にIC−D(4.55g、水中10%)及びMasurf(登録商標)1520(1.36g、水中1%)を溶解させることによりコーティング配合物を調製した。この配合物を上記基材Uの試料の上にスロットコーティングし、約93.3℃で回転ドラム上で80秒間乾燥させて、約0.06g/m2の乾燥コーティング量を有する薄い中間層をもたらした。得られた基材は、市販のABDick印刷版で試験した場合にインクを撥くことが分かった。
【0161】
比較用基材例5:基材E(基材U上にIC−E中間層)の作製:
この例は、基材Eの作製を例示する。イソプロピルアルコール(4.18g)及び水(89.91g)中にIC−E(4.55g、水中10%)及びMasurf(登録商標)1520(1.36g、水中1%)を溶解させることによりコーティング配合物を調製した。この配合物を上記基材Uの試料の上にスロットコーティングし、約93.3℃で回転ドラム上で80秒間乾燥させて、約0.06g/m2の乾燥コーティング量を有する薄い中間層をもたらした。得られた基材は、市販のABDick印刷版で試験した場合にインクを撥くことが分かった。
【0162】
発明例1:基材Aを有する印刷機上で現像可能な画像形成性要素(A):
下記表Iに示す画像形成性層コーティング組成物を調製し、70%のn−プロパノールと20%のMEKと10%の水の溶媒混合物中の4.5%w/w溶液とした。スロットコーターを使用して2.5cm3/ft2(26.9cm3/m2)で基材Aの試料にこの組成物を適用し、乾燥させて、乾燥画像形成性層の被覆量を1.0g/m2とした。コーティングドラム温度は82.8℃であり、時間は80秒間であった。室温に冷却後、印刷機上で現像可能な画像形成性要素(平版印刷版前駆体)を得た。
【0163】
版のエージングの硬化を加速するために、様々な条件下で、画像形成性要素の試料を処理した。1つの試験で、画像形成性要素を間紙及び箔で包み、48℃で5分間処理した(乾燥エージング試験)。別の試験で、画像形成性要素を、湿度チャンバー内に、38℃及び相対湿度80%で5日間つり下げた(湿度エージング試験)。さらに別の試験では、画像形成性要素を、暗所(段ボール箱の内側)で室温で5〜10日間放置した(自然エージング試験)。
【0164】
様々なエージング条件(自然、乾燥及び湿度エージング)の後の画像形成性要素の全ての試料を、Kodak(登録商標)Trendsetter 3244xプレートセッターにより50〜125mJ/cm2で露光した。画像形成された要素を、次に、Van Sonゴム系黒色インクを装填した市販のABDick複写機に直接取り付けた。湿し水は、1ガロン当り3オンス(23.4ml/リットル)のVarn 142Wエッチ及び1ガロン当り3オンス(23.4ml/リットル)のPARアルコール代替物であった。印刷機を稼働して200刷り印刷し、次に、印刷版の現像を200番目のシートを使用して下記のとおり目視評価により評価した:(現像結果については下記IIを参照)
1:50mJ/cm2で良好な品質の画像、クリーンなバックグラウンド。
2:露光領域と非露光領域との間でクリアーな区別、バックグラウンドは完全にはクリーンでない。
3:露光領域と非露光領域との間の区別がなく、両方ともインクが多量に付着する。
【0165】
この例における画像形成性要素(A)は、乾燥エージング試験後及び湿度エージング試験後に非常に良好な現像(バックグラウンドがクリーン)を示した。
印刷機ランレングス試験では、画像形成性要素(A)は、Kodak(登録商標)Trendsetter 3244xプレートセッターにより15ワットで150mJ/cm2で露光後、1.5%の炭酸カルシウムを含む磨耗インクを使用してKomori印刷機により20,000枚の良好な印刷物を与えた。
【0166】
発明例2:基材A1を有する印刷機上で現像可能な画像形成性要素(A1):
下記表Iに示す画像形成性層コーティング組成物を調製し、70%のn−プロパノールと20%のMEKと10%の水の溶媒混合物中の4.5%w/w溶液とした。スロットコーターを使用して2.5cm3/ft2(26.9cm3/m2)で基材Aの試料にこの組成物を適用し、乾燥させて、乾燥画像形成性層の被覆量を1.0g/m2とした。コーティングドラム温度は82.8℃であり、時間は80秒間であった。室温に冷却後、印刷機上で現像可能な画像形成性要素(平版印刷版前駆体)を得た。
【0167】
版のエージングの硬化を加速するために、様々な条件下で、画像形成性要素の試料を処理した。1つの試験で、画像形成性要素を間紙及び箔で包み、48℃で5分間処理した(乾燥エージング試験)。別の試験で、画像形成性要素を、湿度チャンバー内に、38℃及び相対湿度80%で5日間つり下げた(湿度エージング試験)。さらに別の試験では、画像形成性要素を、暗所(段ボール箱の内側)で室温で5〜10日間放置した(自然エージング試験)。
【0168】
様々なエージング条件(自然、乾燥及び湿度エージング)の後の画像形成性要素の全ての試料を、Kodak(登録商標)Trendsetter 3244xプレートセッターにより50〜125mJ/cm2で露光した。画像形成された要素を、次に、Van Sonゴム系黒色インクを装填した市販のABDick複写機に直接取り付けた。湿し水は、1ガロン当り3オンス(23.4ml/リットル)のVarn 142Wエッチ及び1ガロン当り3オンス(23.4ml/リットル)のPARアルコール代替物であった。印刷機を稼働して200刷り印刷し、次に、印刷版の現像を200番目のシートを使用して下記のとおり目視評価により評価した:(現像結果については下記IIを参照)
1:50mJ/cm2で良好な品質の画像、クリーンなバックグラウンド。
2:露光領域と非露光領域との間でクリアーな区別、バックグラウンドは完全にはクリーンでない。
3:露光領域と非露光領域との間の区別がなく、両方ともインクが多量に付着する。
【0169】
この例における画像形成性要素(A1)は、乾燥エージング試験後及び湿度エージング試験後に非常に良好な現像(バックグラウンドがクリーン)を示した。
印刷機ランレングス試験では、画像形成性要素(A1)は、Kodak(登録商標)Trendsetter 3244xプレートセッターにより15ワットで150mJ/cm2で露光後、1.5%の炭酸カルシウムを含む磨耗インクを使用してKomori印刷機により17,000枚の良好な印刷物を与えた。
【0170】
比較例1〜4:基材U、B、C及びDを有する印刷機上で現像可能な画像形成性要素(U)、(B)、(C)及び(D):
下記表Iに示す画像形成性層コーティング組成物の各々を調製し、70%のn−プロパノールと20%のMEKと10%の水の溶媒混合物中の4.5%w/w溶液とした。スロットコーターを使用して2.5cm3/ft2(26.9cm3/m2)で基材U、B、C及びDの試料に組成物の各々をそれぞれ適用し、乾燥させて、乾燥画像形成性層の被覆量を1.0g/m2とした。コーティングドラム温度は82.8℃であり、時間は80秒間であった。室温に冷却後、印刷機上で現像可能な画像形成性要素(平版印刷版前駆体)を得た。
【0171】
画像形成性要素の試料を、発明例1について先に記載したような様々な条件下で処理した。様々なエージング条件(自然、乾燥及び湿度エージング)の後の画像形成性要素の全てを発明例1に記載したように露光し、次に、上記のようにABDick複写機に直接取り付けた。印刷機を200刷り稼働し、次に、発明例1について記載したように目視評価により現像を評価した(上記表II参照)。
【0172】
この例における画像形成性要素(U)及び(D)は、乾燥エージング後及び湿度エージングの両方で非常に不十分な現像(強いバックグラウンド)を示した。
この例における画像形成性要素(B)及び(C)は、乾燥エージング後及び湿度エージングの両方で良好な現像(バックグラウンドがクリーン)を示した。
印刷機ランレングス試験では、画像形成性要素(B)及び(C)は、Kodak(登録商標)Trendsetter 3244xプレートセッターにより15ワットで150mJ/cm2で露光後、1.5%の炭酸カルシウムを含む磨耗インクを使用してKomori印刷機により、それぞれ、わずかに15,000枚及び10,000枚の良好な印刷物を与えた。
【0173】
【表2】

【0174】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属又はポリマー支持体を含み、当該支持体上に下記構造(I):
【化1】

(式中、R1及びR2は、独立に、水素、又はC1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アシル、C1〜C6アシルオキシ、フェニル、ハロもしくはシアノ基であるか、又はR1及びR2は一緒になって環式基を形成していてもよく、
3は、水素、又はC1〜C6アルキル、フェニル、ハロもしくはシアノ基であり、
4及びR5は独立に水素又はメチル基であり、
6は水素又はC1〜C12アルキル基であり、
1は−O−又は−NR−であり、ここでRは水素又はアルキルもしくはアリール基であり
2は−NR’−であり、ここでR’は水素又はアルキルもしくはアリール基であり、
mは15〜200の整数であり、nは1〜12の整数である)
により表されるトリアルコキシシリルポリエチレングリコールアクリレートを含む中間層を有する基材。
【請求項2】
1及びR2が独立に水素又はC1〜C4 アルキル基もしくはフェニル基であり、R3が水素又はC1〜C3アルキルもしくはフェニル基であり、R6 がC1〜C4アルキル基であり、X1が−O−、−NH−又は−NCH3−であり、X2が−NH−又は−NCH3−であり、mは20〜70の整数であり、nは2〜6の整数である、請求項1に記載の基材。
【請求項3】
1及びR2が独立に水素又はメチル基であり、R3、R4 及びR5が独立に水素又はメチル基であり、R6 がメチル又はエチル基であり、X1が−O−又は−NH−であり、X2が−NH−であり、mは25〜60の整数であり、nは2〜4の整数である、請求項2に記載の基材。
【請求項4】
前記中間層が、ジェファミン(メタ)アクリルアミドと3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランとの反応生成物である、請求項1に記載の基材。
【請求項5】
前記中間層が0.1g/m2以下の乾燥被覆量で存在する、請求項1に記載の基材。
【請求項6】
アルミニウム含有支持体を含む請求項1に記載の基材。
【請求項7】
基材を含み、当該基材上に、画像形成輻射線への露光後に処理液への不溶性がより高くなる画像形成性層を有し、基材と画像形成性層の間にさらに、
下記構造(I):
【化2】

(式中、R1及びR2は、独立に、水素、又はC1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アシル、C1〜C6アシルオキシ、フェニル、ハロもしくはシアノ基であるか、又はR1及びR2は一緒になって環式基を形成していてもよく、
3は、水素、又はC1〜C6アルキル、フェニル、ハロもしくはシアノ基であり、
4及びR5は独立に水素又はメチル基であり、
6は水素又はC1〜C12アルキル基であり、
1は−O−又は−NR−であり、ここでRは水素又はアルキルもしくはアリール基であり
2は−NR’−であり、ここでR’は水素又はアルキルもしくはアリール基であり、
mは15〜200の整数であり、nは1〜12の整数である)
により表されるトリアルコキシシリルポリエチレングリコールアクリレートを含む中間層、
を含むネガ型画像形成性要素。
【請求項8】
輻射線吸収性化合物を含む、請求項7に記載の画像形成性要素。
【請求項9】
前記輻射線吸収性化合物が赤外線吸収性化合物である、請求項8に記載の画像形成性要素。
【請求項10】
基材を含み、当該基材上に、
遊離基重合性成分、
画像形成輻射線への露光によって遊離基重合性基の重合を開始するのに十分な遊離基を生成することのできる開始剤組成物、
主鎖を有し、当該主鎖にペンダントポリ(アルキレンオキシド)側鎖、シアノ基、又は両方が結合しており、必要に応じて離散粒子の形態で存在する一次ポリマーバインダー、及び
赤外線吸収性化合物、
を含む画像形成性層を有する、ネガ型の印刷機上で現像可能な画像形成性要素であって、当該画像形成性要素は、さらに、基材と画像形成性層の間に、下記構造(I):
【化3】

(式中、R1及びR2は、独立に、水素、又はC1〜C6アルキル、C1〜C6アルケニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アシル、C1〜C6アシルオキシ、フェニル、ハロもしくはシアノ基であるか、又はR1及びR2は一緒になって環式基を形成していてもよく、
3は、水素、又はC1〜C6アルキル、フェニル、ハロもしくはシアノ基であり、
4及びR5は独立に水素又はメチル基であり、
6は水素又はC1〜C12アルキル基であり、
1は−O−又は−NR−であり、ここでRは水素又はアルキルもしくはアリール基であり、
2は−NR’−であり、ここでR’は水素又はアルキルもしくはアリール基であり、
mは15〜200の整数であり、nは1〜12の整数である)
により表されるトリアルコキシシリルポリエチレングリコールアクリレートを含む中間層、
を含む、ネガ型の印刷機上で現像可能な画像形成性要素。
【請求項11】
前記輻射線吸収性化合物が赤外線吸収性染料であり、当該赤外線吸収性染料は、前記画像形成性層の総乾燥質量を基準にして0.5〜30%の量で存在する、請求項10に記載の画像形成性要素。
【請求項12】
前記一次ポリマーバインダーが、10〜500nmの平均粒径を有する離散粒子の形態にあり、かつ、画像形成性層の総乾燥質量を基準にして少なくとも10%かつ90%以下の量で前記画像形成性層中に存在する、請求項10に記載の画像形成性要素。
【請求項13】
前記開始剤組成物が、ヨードニウム化合物、又はジアリールヨードニウムカチオンとホウ素含有アニオンとの組み合わせを含み、前記ジアリールヨードニウムカチオンが下記構造(IB):
【化4】

(式中、X及びYは、独立に、ハロ、アルキル、アルコキシ、アリール又はシクロアルキル基であるか、あるいは、2つ若しくは3つ以上の隣接するX又はY基が結合して、それぞれのフェニル基と縮合炭素環式環又は複素環式環を形成していてもよく、p及びqは独立に0又は1〜5の整数であり、ただし、p又はqは少なくとも1である)
により表され、
前記ホウ素含有アニオンが下記構造(IB):
【化5】

(式中、R1、R2、R3 及びR4は、独立に、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル又はヘテロシクリル基であるか、又は、R1、R2、R3 及びR4のうちの2つ又は3つ以上が連結してホウ素原子を有する複素環式環を形成していてもよく、かかる環は7個以下の炭素、窒素、酸素又は窒素原子を有する)
により表される、請求項10に記載の画像形成性要素。
【請求項14】
1及びR2が独立に水素又はC1〜C4 アルキル基もしくはフェニル基であり、R3が水素又はC1〜C3アルキルもしくはフェニル基であり、R6 がC1〜C4アルキル基であり、X1が−O−、−NH−又は−NCH3−であり、X2が−NH−又は−NCH3−であり、mは20〜70の整数であり、nは2〜6の整数である、請求項10に記載の画像形成性要素。
【請求項15】
1及びR2が独立に水素又はメチル基であり、R3、R4 及びR5が独立に水素又はメチル基であり、R6 がメチル又はエチル基であり、X1が−O−又は−NH−であり、X2が−NH−であり、mは25〜60の整数であり、nは2〜4の整数である、請求項1に記載の画像形成性要素。
【請求項16】
前記中間層が、ジェファミン(メタ)アクリルアミドと3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランとの反応生成物を含み、前記中間層が0.007〜0.07g/m2 の乾燥被覆量で存在する、請求項10に記載の画像形成性要素。
【請求項17】
前記基材が硫酸陽極酸化アルミニウム含有支持体を含み、当該支持体上に前記中間層が配置されている、請求項10に記載の画像形成性要素。
【請求項18】
A)赤外の画像形成輻射線を使用して請求項7に記載の画像形成性要素を像様露光して露光領域及び非露光領域を生成すること、
B)露光後のベーキング工程有り又は無しで、像様露光された要素を現像して、主に非露光領域のみを除去すること、
を含む方法。
【請求項19】
前記画像形成性要素が、湿し水、平版印刷インク、又はそれらの組み合わせの存在下だけで現像される印刷機上で現像可能なネガ型印刷版前駆体である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記画像形成性要素が、
赤外線吸収性染料と、
10〜500nmの平均粒径を有する離散粒子の形態にあり、かつ、画像形成性層の総乾燥質量を基準にして少なくとも10%かつ90%以下の量で前記画像形成性層中に存在する一次ポリマーバインダーと、
ヨードニウム化合物、又は下記構造(IB):
【化6】

(式中、X及びYは、独立に、ハロ、アルキル、アルコキシ、アリール又はシクロアルキル基であるか、あるいは、2つ若しくは3つ以上の隣接するX又はY基が結合して、それぞれのフェニル基と縮合炭素環式環又は複素環式環を形成していてもよく、p及びqは独立に0又は1〜5の整数であり、ただし、p又はqは少なくとも1である)
により表されるジアリールヨードニウムカチオンと下記構造(IB):
【化7】

(式中、R1、R2、R3 及びR4は、独立に、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル又はヘテロシクリル基であるか、又は、R1、R2、R3 及びR4のうちの2つ又は3つ以上が連結してホウ素原子を有する複素環式環を形成していてもよく、かかる環は7個以下の炭素、窒素、酸素又は窒素原子を有する)
により表されるホウ素含有アニオンとの組み合わせを含む開始剤組成物と、
前記中間層が上に配置された硫酸陽極酸化アルミニウム含有支持体を含む基材を含み、
前記中間層において、構造(I)を有する前記トリアルコキシシリルポリエチレングリコールアクリレートは、独立に水素又はC1〜C4 アルキル基もしくはフェニル基であるR1及びR2 、水素又はC1〜C3アルキルもしくはフェニル基であるR3 、C1〜C4アルキル基であるR6 を有し、X1は−O−、−NH−又は−NCH3−であり、X2は−NH−又は−NCH3−であり、mは20〜70の整数であり、nは2〜6の整数である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
請求項18に記載の方法により形成された、印刷機上で現像された平版印刷版。

【公表番号】特表2011−525156(P2011−525156A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514599(P2011−514599)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/003606
【国際公開番号】WO2009/154740
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】