説明

親水性/親油性系を含む高分子構造体

ヒドロキシルポリマー含有組成物、特に高分子構造体、特に繊維の形態の高分子構造体へと加工できるヒドロキシルポリマー含有組成物が提供されている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒドロキシルポリマー含有組成物、特に高分子構造体、特に繊維の形態の高分子構造体へと加工できるヒドロキシルポリマー含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子構造体及びその高分子構造体が得られるヒドロキシルポリマー含有組成物は、一般に当該技術分野において既知である。詳細には、デンプンフィラメント及び/又は繊維などのヒドロキシルポリマー含有高分子構造体が、一般に当該技術分野において既知である。しかしながら,先行技術のヒドロキシルポリマー含有組成物、典型的にはヒドロキシルポリマー含有組成物、及び/又はポリマー加工によって作製されるデンプンフィラメント及び/又は繊維は、べたついた、粘着質の感触を有する傾向にあり、並びに水膨潤性及び/又は水溶性である。先行技術のデンプンフィラメント及び/又は繊維のこれらの特徴の両方が、消費者製品における、特に繊維性構造体及び/又はこうした繊維性構造体から製造される衛生ティッシュ製品などの製品におけるこうしたフィラメント及び/又は繊維の使用にマイナスの影響を与える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、先行技術のヒドロキシルポリマー含有組成物及び/又はそれらから得られる高分子構造体の欠点を克服する、ヒドロキシルポリマー含有組成物及び/又はこのようなヒドロキシルポリマー含有組成物から得られる高分子構造体を確立することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、先行技術のヒドロキシルポリマー含有組成物及びそれらから得られる高分子構造体に存在する欠点に悩まされない、ヒドロキシルポリマー含有組成物及びこれらから得られる高分子構造体を提供することによって、上述の要求を満たす。
【0005】
本発明の1つの態様では、ヒドロキシルポリマーを含む水性混合物;親水性構成成分及び親油性構成成分を含む親水性/親油性系;及び架橋剤を含む架橋系;を含むヒドロキシルポリマー含有組成物であって、前記親水性構成成分は前記水性混合物中での前記親油性構成成分の分散性を促進する、ヒドロキシルポリマー含有組成物が提供される。換言すれば、親水性構成成分は親油性構成成分を、水性混合物全体に渡って均一に、又は実質的に均一に分散できるようにする。
【0006】
本発明の別の態様では、本発明に従うヒドロキシルポリマー含有組成物から誘導される高分子構造体が提供される。
【0007】
本発明の更に別の態様では、本発明に従う1以上の高分子構造体を含む繊維性構造体が提供される。
【0008】
本発明の更にまた別の態様では、本発明に従う繊維性構造体を含む単プライ又は多プライの衛生ティッシュ製品が提供される。好ましくは、前記ティッシュ製品は、本明細書に記載される湿潤降伏応力試験方法によって測定した場合に少なくとも約1〜約10のひずみにおいて約1000〜約6000Paの湿潤降伏応力を示し、並びに/又は本明細書に記載の湿潤バルク試験方法によって測定した場合に、乾燥バルクの少なくとも約40%及び/又は少なくとも約50%の湿潤バルクを示す。
【0009】
本発明の更に別の態様では、本発明に従うヒドロキシルポリマー含有組成物の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の更に別の態様では、本発明に従う高分子構造体の製造方法が提供される。
【0011】
本発明のなお更に別の態様では、本発明の方法に従って製造される繊維形態の高分子構造体が提供される。
【0012】
したがって、本発明は、ヒドロキシルポリマー含有組成物、このヒドロキシルポリマー含有組成物から誘導される高分子構造体、この高分子構造体を含む繊維性構造体、この繊維性構造体を含む衛生ティッシュ製品、及び前記ヒドロキシルポリマー含有組成物の製造方法と高分子構造体の製造方法とを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(定義)
「繊維」又は「フィラメント」とは本明細書で使用する時、長軸と直角であるその繊維の2つの互いに直行する軸と比較して非常に長い長軸を有する、細長い(slender)、肉細の(thin)、及び高度に可撓性の物体を意味する。好ましくは、長軸と直角な繊維の断面の等価直径に対するその長軸の長さの縦横比は、100/1よりも大きく、より具体的には500/1よりも大きく、なおより具体的には1000/1よりも大きく、さらにより具体的には5000/1よりも大きい。この繊維は、連続した、或いは実質的に連続した繊維であってよく、又はそれらは不連続の繊維であってもよい。
【0014】
本発明の繊維は、本明細書に記載される繊維直径試験方法によって測定した場合に、約50ミクロン未満、及び/若しくは約20ミクロン未満、及び/若しくは約10ミクロン未満、及び/若しくは約8ミクロン未満、及び/若しくは約6ミクロン未満、及び/若しくは約4ミクロン未満の繊維直径を有していてよい。
【0015】
「紡績加工温度」とは本明細書で使用する時、ヒドロキシルポリマー含有繊維が形成される時に、そのヒドロキシルポリマー含有繊維がロータリー紡績ダイの外側面で細長化される(attenuated)温度を意味している。
【0016】
「ヒドロキシルポリマー含有組成物」とは本明細書で使用する時、少なくとも1つのヒドロキシルポリマーを含む組成物を意味する。1つの例では、ヒドロキシルポリマー含有組成物は分解する前に溶融しない物質を少なくとも1つ含む。例えば、ヒドロキシルポリマーは溶融するというよりもむしろ、水に溶解することができ、その後繊維形成プロセスの間に乾燥される(水の除去)ことができる。
【0017】
(A.ヒドロキシルポリマー含有組成物)
本発明のヒドロキシルポリマー含有組成物はヒドロキシルポリマーを含む。「ヒドロキシルポリマー」とは本明細書で使用する時、10重量%よりも多くの、及び/若しくは20重量%よりも多くの、及び/若しくは25重量%よりも多くのヒドロキシル基を含有するあらゆるポリマーを意味する。
【0018】
ヒドロキシルポリマー含有組成物は、少なくとも1つがヒドロキシルポリマーであるポリマー類、並びに/又は無機及び有機の両方の充填剤類、並びに/又は繊維類及び/若しくは発泡剤類のブレンドを含有する複合物であってもよい。
【0019】
ヒドロキシルポリマー含有組成物は既に形成されていてもよい。一実施形態では、ヒドロキシルポリマーは、ヒドロキシルポリマー含有組成物を形成するために、水のような液体との接触によって可溶化されてもよい。こうした液体は、本発明の目的のためには外的な可塑剤の機能を果たすものとみなしてよい。あるいは、ヒドロキシルポリマー含有組成物がその組成物を本発明に従う高分子構造体にポリマー加工するための好適な特性を示すようにそのヒドロキシルポリマー含有組成物を製造するための、当業者に既知のあらゆる他の好適なプロセスを使用してよい。
【0020】
ヒドロキシルポリマー含有組成物は、そのヒドロキシルポリマー含有組成物から高分子構造体を製造する時に、約23℃〜約100℃、及び/若しくは約65℃〜約95℃、及び/若しくは約70℃〜約90℃の温度を有し、並びに/又はその温度に曝されてよい。ヒドロキシルポリマー含有組成物は、後述するように、フィルム及び/又は発泡性高分子構造体を製造する場合、一般により高い温度を有し、並びに/又はそのような温度に曝されてよい。
【0021】
ヒドロキシルポリマー含有組成物のpHは、約2.5〜約10、及び/若しくは約3〜約9.5、及び/若しくは約3〜約8.5、及び/若しくは約3.2〜約8、及び/若しくは約3.2〜約7.5であってよい。
【0022】
ヒドロキシルポリマー含有組成物は、本明細書に記載されるヒドロキシルポリマー含有組成物の剪断粘度試験方法に従って測定した場合、3,000sec-1の剪断速度及び紡績加工温度において測定した時に、約300Pa.s未満、及び/若しくは約0.1Pa.s〜約300Pa.s、及び/若しくは約1Pa.s〜約250Pa.s、及び/若しくは約3Pa.s〜約200Pa.sの剪断粘度を有してよい。
【0023】
一実施例では、本発明のヒドロキシルポリマー含有組成物の標準化された剪断粘度は、本明細書に記載される剪断粘度変化試験方法に従い3、000sec-1の剪断速度において測定した場合に、70分後に初期剪断粘度値の1.3倍を超えて、及び/若しくは130分後に初期剪断粘度値の2倍を超えて増大してはならない。
【0024】
別の実施例では、本発明のヒドロキシルポリマー含有組成物は、そのヒドロキシルポリマー含有組成物の少なくとも約5重量%、及び/又は少なくとも約15重量%、及び/又は少なくとも約20重量%及び/若しくは30重量%及び/若しくは40重量%及び/若しくは45重量%及び/若しくは50重量%から約75重量%及び/若しくは80重量%及び/若しくは85重量%及び/若しくは90重量%及び/若しくは95重量%及び/若しくは99.5重量%までのヒドロキシルポリマーを含んでいてよい。ヒドロキシルポリマーは架橋の前に、約100,000g/モルより大きな重量平均分子量を有していてよい。
【0025】
架橋系はヒドロキシルポリマー含有組成物中に存在していてもよく、及び/又はそのヒドロキシルポリマー含有組成物のポリマー加工の前にそのヒドロキシルポリマー含有組成物に添加されてもよい。
【0026】
ヒドロキシルポリマー含有組成物は、a)そのヒドロキシルポリマー含有組成物の少なくとも約5重量%、及び/又は少なくとも約15重量%、及び/又は少なくとも約20重量%及び/若しくは30重量%及び/若しくは40重量%及び/若しくは45重量%及び/若しくは50重量%から約75重量%及び/若しくは80重量%及び/若しくは85重量%までのヒドロキシルポリマーと;b)そのヒドロキシルポリマー含有組成物の約0.1重量%〜約10重量%の架橋剤を含む架橋系と;c)そのヒドロキシルポリマー含有組成物の約10重量%及び/若しくは15重量%及び/若しくは20重量%から約50重量%及び/若しくは55重量%及び/若しくは60重量%及び/若しくは70重量%までの外的な可塑剤、例えば水、を含んでいてよい。
【0027】
本発明の架橋系は、架橋剤に加えて、架橋促進剤を更に含んでいてもよい。
【0028】
「架橋促進剤」とは、本明細書で使用する時、架橋剤を活性化することにより、その架橋剤をその不活性状態からその活性状態へと変化させることができるあらゆる物質を意味する。換言すれば、架橋剤が不活性状態にある場合、ヒドロキシルポリマー含有組成物中に存在するヒドロキシルポリマーは、本明細書に記載する剪断粘度変化試験方法に従って判定されるような許容可能でない架橋を受けない。
【0029】
本発明に従う架橋剤がその活性状態にある場合には、高分子構造体中に存在するヒドロキシルポリマーは、本明細書に記載される初期総湿潤引張強度試験方法に従って判定されるような、架橋剤を介した許容可能な架橋を受けてもよく、好ましくはそのような架橋を受ける。
【0030】
ヒドロキシルポリマーを架橋する際、以下の略図に示されるように、架橋剤はヒドロキシルポリマーを架橋した結果として、高分子構造体の一体化した部分となる:
ヒドロキシルポリマー − 架橋剤 − ヒドロキシルポリマー
架橋促進剤には、架橋剤の変化/活性化後に存在し得る物質の誘導体が挙げられる。例えば、酸の形態に化学的に変化する架橋促進剤の塩、及びその逆のもの。
【0031】
好適な架橋促進剤の非限定例としては、2〜6のpKaを有する酸類又はそれらの塩類が挙げられる。架橋促進剤はブレンステッド酸類及び/又はそれらの塩類、好ましくはそれらのアンモニウム塩類であってもよい。
【0032】
加えて、マグネシウム及び亜鉛塩などの金属塩類を単独で、又はブレンステッド酸類及び/若しくはそれらの塩類と組み合わせて、架橋促進剤として使用することができる。
【0033】
好適な架橋促進剤の非限定例としては、酢酸、安息香酸、クエン酸、ギ酸、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、フタル酸、リン酸、コハク酸、及びこれらの混合物、並びに/又はそれらの塩類、好ましくはグリコール酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム及び硫酸アンモニウムなどのそれらのアンモニウム塩が挙げられる。
【0034】
(ヒドロキシルポリマー含有組成物の合成)
本発明のヒドロキシルポリマー含有組成物は、ベント式二軸スクリュー押出機のようなスクリュー押出成形機を用いて調製されてよい。
【0035】
APVベイカー(APV Baker)(英国ピーターボロー(Peterborough))二軸スクリュー押出機のバレル10が、図1Aに概略的に示されている。バレル10は8つの領域に分離されており、領域1〜8として識別される。バレル10は図1Bに概略的に示されている押出スクリュー及び混合要素を取り囲んでおり、押出成形プロセスの間、収容容器としての役割を果たす。固体供給ポート12が領域1内に配置され、液体供給ポート14が領域1内に配置されている。押出成形機から出る前に混合物の水分のような液体含有量を冷却して減少させるために、ベント16が領域7内に含まれている。ヒドロキシルポリマー含有組成物がベント16を通って流出するのを防ぐために、APVベイカー(APV Baker)から市販されている任意のベント用詰め物を利用することができる。バレル10を通るヒドロキシルポリマー含有組成物の流れは領域1から始まり、領域8においてバレル10を出る。
【0036】
二軸スクリュー押出機のためのスクリュー及び混合要素の構成は図1Bに概略的に示されている。二軸スクリュー押出機は、直列に設置された複数のツインリードスクリュー(TLS)(A及びBで示されている)及びシングルリードスクリュー(SLS)(C及びDで示されている)を含む。スクリュー要素(A〜D)は連続リードの数及びこれらのリードのピッチにより特徴付けられる。
【0037】
リードはスクリュー要素の芯に巻きつく(所与のねじれ角における)フライトである。リードの数はそのスクリューの長さに沿ったいずれかの所与の位置において芯に巻きついているフライトの数を示す。リードの数が増すと、スクリューの容積が減少し、スクリューの能力を生じさせる圧力が増大する。
【0038】
スクリューのピッチは、フライトが芯の1回の回転を完了するために必要な距離である。それは、フライトの1回の完全な回転当たりのスクリュー要素の直径の数として表される。スクリューのピッチが減少すると、スクリューによって生ずる圧力が増大し、スクリューの容積が減少する。
【0039】
スクリュー要素の長さは、その要素の長さをその要素の直径で割った比として報告される。
【0040】
この実施例はTLS及びSLSを使用している。スクリュー要素Aはピッチ1.0及び長さ比1.5のTLSである。スクリュー要素Bはピッチ1.0及びL/D比1.0のTLSである。スクリュー要素Cはピッチ1/4及び長さ比1.0のSLSである。スクリュー要素Dはピッチ1/4及び長さ比1/2のSLSである。
【0041】
混合要素として機能する双葉パドル(Bilobal paddles)Eもまた、混合を強化するためにSLS及びTLSスクリュー要素と直列に含まれる。流量及び対応する混合時間を制御するために、種々の形状の双葉パドル(bilobal paddles)及び反転要素F(反対方向へとねじ込まれるシングル及びツインリードスクリュー)が用いられる。
【0042】
領域1において、ヒドロキシルポリマーが、K−トロン(K-Tron)(ニュージャージー州ピットマン(Pitman))重量計量フィーダー(loss-in-weight feeder)を用いて、230g/分の速度で固体供給ポートに供給される。このヒドロキシルポリマーは、押出成形機(領域1)の内部で、液体供給部においてミルトンロイ(Milton Roy)(ペンシルベニア州アイビーランド(Ivyland))ダイヤフラムポンプ(7.2L(1.9ガロン)/時間ポンプヘッド)を用いて146g/分の速度で添加される水、外的な可塑剤と組み合わされ、ヒドロキシルポリマー/水スラリーを形成する。このスラリーは次いで押出成形機のバレルへと運び込まれて蒸解される(cooked)。表1に、押出成形機の各領域の温度、圧力、及び対応する働きが記載されている。
【0043】
【表1】

スラリーが押出成形機を出た後、ヒドロキシルポリマー/水スラリーの一部が捨てられ、その他の部分(100g)はゼニス(Zenith)(登録商標)、PEP II型(ノースカロライナ州サンフォード(Sanford))内に供給され、SMX形式スタティックミキサー(コッホ−グリッチ(Koch-Glitsch)、イリノイ州ウッドリッジ(Woodridge))へと送られる。スタティックミキサーを使用して架橋剤、架橋促進剤、水のような外的な可塑剤、などの追加の添加剤をヒドロキシルポリマー/水スラリーと組み合わせ、ヒドロキシルポリマー含有組成物を形成する。これらの添加剤は、プレップ100HPLCポンプ(PREP 100 HPLC pumps)(クロム・テック(Chrom Tech)、ミネソタ州アップルバレー(Apple Valley))によってスタティックミキサーへと送られる。これらのポンプは高圧低容積添加能力を提供する。
【0044】
本発明のヒドロキシルポリマー含有組成物は、ヒドロキシルポリマー含有高分子構造体へとポリマー加工される準備が整う。
【0045】
(B.ポリマー加工)
「ポリマー加工」とは、本明細書で使用する時、ヒドロキシルポリマー含有組成物からヒドロキシルポリマーを含む高分子構造体を形成するあらゆる操作及び/又はプロセスを意味する。
【0046】
ポリマー加工操作の非限定例には、押出成形、成型(molding)及び/又は繊維紡糸が挙げられる。押出成形及び成型(molding)(キャスティング又はブローンのどちらでも)は典型的にはフィルム、シート及び種々の特性の押出成形品を生成する。成型(molding)としては、射出成形、ブロー成形及び/又は圧縮成形を挙げることができる。繊維紡糸としては、スパンボンディング、メルトブロー、連続フィラメント製造及び/又はトウ繊維製造(tow fiber producing)を挙げることができる。
【0047】
(C.高分子構造体)
ヒドロキシルポリマー含有組成物に1以上のポリマー加工操作を施して、そのヒドロキシルポリマー含有組成物を本発明に従うヒドロキシルポリマー、及び任意に架橋系を含む高分子構造体へと加工することができる。
【0048】
「高分子構造体」とは本明細書で使用する時、本発明に従うヒドロキシルポリマー含有組成物を加工した結果として形成されるあらゆる物理的構造体を意味する。本発明に従う高分子構造体の非限定例には、繊維、フィルム、及び/又は発泡体が挙げられる。
【0049】
架橋系は架橋剤を介してヒドロキシルポリマー同士を架橋し、硬化工程を経て又は硬化工程を経ずに本発明の高分子構造体を生成する。換言すれば、本発明に従う架橋系は、加工されたヒドロキシルポリマー含有組成物のヒドロキシルポリマー同士を架橋剤を介して、本明細書に記載される初期総湿潤引張強度試験方法によって判定したときに許容可能に架橋して、一体型の高分子構造体を形成する。架橋剤は高分子構造体に対する「構築ブロック」である。架橋剤なくしては、本発明に従う高分子構造体は形成し得ない。
【0050】
本発明の高分子構造体は、繊維、フィルム、又は発泡体上へのコーティングのような、先に存在する形態に適用されるコーティング及び/若しくは他の表面処理は含まない。
【0051】
一実施形態では、ポリマー加工操作によって生成される高分子構造体は、約110℃〜約200℃、及び/若しくは約120℃〜約195℃、及び/若しくは約130℃〜約185℃の硬化温度で、約0.01秒及び/若しくは1秒及び/若しくは5秒及び/若しくは15秒から約60分まで、並びに/又は約20秒〜約45分、及び/又は約30秒〜約30分の間、硬化されてもよい。別の硬化法には、UV、e−ビーム、IRなどの放射法及びその他の温度上昇法を挙げることができる。
【0052】
更に、高分子構造体はまた、上記の室温で硬化した後で又は上記の室温で硬化する代わりに、室温で数日間硬化されてもよい。
【0053】
高分子構造体は、本明細書に記載の初期総湿潤引張強度試験方法によって測定された場合、少なくとも約1.18g/cm(3g/インチ)及び/若しくは少なくとも約1.57g/cm(4g/インチ)及び/若しくは少なくとも約1.97g/cm(5g/インチ)から約23.62g/cm(60g/インチ)及び/若しくは約21.65g/cm(55g/インチ)及び/若しくは約19.69g/cm(50g/インチ)までの初期総湿潤引張強度を示し得る。
【0054】
一実施形態では、本発明の高分子構造体は、その高分子構造体の少なくとも約20重量%及び/若しくは30重量%及び/若しくは40重量%及び/若しくは45重量%及び/若しくは50重量%から約75重量%及び/若しくは80重量%及び/若しくは85重量%及び/若しくは90重量%及び/若しくは95重量%及び/若しくは99.5重量%までのヒドロキシルポリマーを含んでいてよい。
【0055】
一実施形態では、高分子構造体は、本明細書に記載される接触角試験方法によって測定した場合に、1秒後に40°未満の接触角を示す。
【0056】
本発明の高分子構造体としては、メルトスパン繊維及び/若しくはスパンボンド繊維、短繊維、中空繊維、成形繊維(例えば多葉断面繊維(multi-lobal fibers)及び多成分繊維、特に2成分繊維)を挙げることができる。多成分繊維、特に2成分繊維は、サイド・バイ・サイド、シース−コア、分割パイ(segmented pie)、リボン、海島型構造、又はこれらの組み合わせであってよい。シースはコアの周囲で連続でも非連続でもよい。シースとコアとの重量比は、約5:95〜約95:5であることができる。本発明の繊維は、円、楕円、星形、方形、及びその他の種々の偏心を含む異なる幾何学的形状であってもよい。
【0057】
本発明の繊維は、本明細書に記載される繊維直径試験方法によって測定した場合に、約50ミクロン未満、及び/若しくは約20ミクロン未満、及び/若しくは約10ミクロン未満、及び/若しくは約8ミクロン未満、及び/若しくは約6ミクロン未満、及び/若しくは約4ミクロン未満の繊維直径を有していてよい。
【0058】
別の実施形態では、本発明の高分子構造体は、本発明のヒドロキシルポリマーを他のポリマーと共に含む多成分繊維のような、多構成要素高分子構造体を包含していてもよい。多成分繊維とは、本明細書で使用する時、互いの空間的関係において1つより多くの別個の部分を有する繊維を意味する。多成分繊維は、互いの空間的関係において2つの別個の部分を有する繊維として定義される2成分繊維を包含する。多成分繊維の異なる構成成分は、繊維の断面にわたって実質的に区別可能な区域に配置され、繊維の長さに沿って連続して伸長することができる。
【0059】
このような多成分繊維、具体的には2成分繊維の非限定例は、本発明のヒドロキシルポリマーが繊維のコアに相当し、他のポリマーがシースに相当し、このシースが繊維のコアを取り囲んでいるか実質的に取り囲んでいる、2成分繊維である。このような高分子構造体が誘導されるヒドロキシルポリマー含有組成物には、ヒドロキシルポリマー及びその他のポリマーの両方が包含されてよい。
【0060】
別の多成分繊維、特に2成分繊維の実施形態では、シースがヒドロキシルポリマーと架橋剤を有する架橋系とを含み、コアがヒドロキシルポリマーと架橋剤を有する架橋系とを含んでいてもよい。シース及びコアに関して、ヒドロキシルポリマーは同じであっても異なっていてもよく、架橋剤は同じであっても異なっていてもよい。更に、ヒドロキシルポリマーの濃度は、同じであっても異なっていてもよく、架橋剤の濃度は同じであっても異なっていてもよい。
【0061】
本発明の1以上の高分子構造体が、多高分子構造体製品、例えばその高分子構造が繊維の形態である場合には繊維性構造体及び/又はウェブなどへと組み込まれてもよい。このような多高分子構造体製品は、最終的に、顔用ティッシュ、浴用ティッシュ、ペーパータオル及び/又はふき取り用品などの単プライ又は多プライの衛生ティッシュ製品、女性ケア製品、おむつ、筆記用紙、ティッシュの芯のような芯、並びに他の種類の紙製品のような商品へと組み込まれてよい。
【0062】
(高分子構造体の合成)
以下は、本発明に従う高分子構造体を調製するためのプロセスの非限定例である。
【0063】
i)繊維形成
ヒドロキシルポリマー含有組成物は、上述のヒドロキシルポリマー含有組成物の合成に従って調製される。図2に示されているように、ヒドロキシルポリマー含有組成物は高分子構造体へと加工されてよい。押出成形機102中に存在するヒドロキシルポリマー含有組成物は、1回転当たり0.6立方センチメートル(cc/rev)の容量を有するゼニス(Zenith)(登録商標)PEP II型(米国ノースカロライナ州サンフォード(Sanford)のパーカー・ハニフィン社(Parker Hannifin Corporation)、ゼニスポンプ部(Zenith Pumps division)により製造)のようなポンプ103を用いてダイ104に送り込まれる。ダイ104へのデンプンのようなヒドロキシルポリマーの流量は、ポンプ103の1分当たりの回転数(rpm)を調節することによって制御される。押出成形機102と、ポンプ103と、ダイ104と、任意でミキサー116とを接続するパイプが、電気的に加熱され及び65℃にサーモスタット制御される。
【0064】
ダイ104は、約1.524mm(約0.060インチ)のピッチP(図3)だけ互いに離間された円形押出ノズル200の幾つかの列を有する。ノズル200は、約0.305mm(約0.012インチ)の個々の内径D2、及び約0.813mm(約0.032インチ)の個々の外径(D1)を有する。各個別のノズル200は、約1.9mm(約0.075インチ)の厚さを有するプレート260に形成された環状の及び末広がりのオリフィス250(図3及び4)によって取り囲まれている。プレート260内の複数個の末広がりのオリフィス250のパターンは、押出ノズル200のパターンに対応している。オリフィス250は、細長化(attenuation)空気のために、約1.372ミリメートル(約0.054インチ)の、大きい方の直径D4(図3及び4)及び1.17ミリメートル(約0.046インチ)の、小さい方の直径D3を有する。プレート260は、ノズル200を通して押し出されている初期繊維110が、オリフィス250を通して供給されるほぼ円筒形の湿った空気の流れにより囲まれ細長化される(attenuated)ように固定された。ノズルは、プレート260の表面261を超えて、約1.5mm〜約4mm、より具体的には約2mm〜約3mmの距離まで伸びることができる(図3)。図5に示されているように、複数個の境界空気オリフィス300は、平面図に見られるように、複数個のノズルの各側の外側の2列のノズルを塞ぐ(plugging)ことにより形成され、境界層の各オリフィスが本明細書の上記の環状の開口250からなるようになされている。加えて、残りのキャピラリーノズルの1つおきの横列及び1つおきの縦列が遮断されて(blocked)、活性なキャピラリーノズルの間の間隔を増している。
【0065】
図2に示されているように、細長化(attenuation)空気は、供給源106からの圧縮空気を電気抵抗加熱器108、例えば、米国ペンシルベニア州ピッツバーグのエマーソン・エレクトリックのクロマロックス部門(Chromalox,Division of Emerson Electric)により製造された加熱器により加熱することにより供給することができる。グローブバルブ(図示せず)により制御される約240〜約420キロパスカル(kPa)の絶対圧力の蒸気105の適切な量が、電気的に加熱されサーモスタット制御される送出パイプ115中の条件で加熱された空気を飽和又はほとんど飽和するために添加される。凝縮水は、電気的に加熱されサーモスタット制御される分離器107中で除去される。細長化(attenuating)空気は、パイプ115中で測定すると約130kPa〜約310kPaの絶対圧力を有する。押出されている高分子構造繊維110は、約20重量%及び/又は25重量%から約50重量%及び/又は55重量%までの水分含有量を有する。高分子構造繊維110は、乾燥空気流109により乾燥されるが、この乾燥空気流109は、電気抵抗加熱器(図示せず)により約149℃(約300°F)〜約315℃(約600°F)の温度を有し、乾燥ノズル112を通して供給され、押し出されている初期繊維の全般的方向に対してほぼ直角に放出される。高分子構造繊維は約45%の湿分含量から約15%まで湿分含量(すなわち約55%の濃度〜約85%の濃度)に乾燥され、例えば小孔のある可動ベルトのような収集装置111上に収集される。
【0066】
このプロセスのパラメータは以下の通りである。
【0067】
【表2】

ii)発泡体形成
発泡体形成のためのヒドロキシルポリマー含有組成物は、水分の含有量がより少なく、典型的にヒドロキシルポリマーの重量の約10〜21%となることを除いては、繊維形成の場合と同様に調製される。より少ない水を用いてヒドロキシルポリマーを可塑化するので、押出成形機領域5〜8(図1A)において、より高い温度、典型的には150〜250℃が必要である場合がある。また利用可能である水が少ないので、領域1において架橋系、特に架橋剤を水と共に添加することが必要である場合もある。押出成形機中での時期尚早な架橋を回避するために、ヒドロキシルポリマー含有組成物のpHは7〜8の間となされなければならず、これは架橋促進剤、例えばアンモニウム塩を用いることによって達成可能である。ダイは押出成形された材料が出てくる場所に配置され、典型的には160〜210℃に保持される。約400〜1500ミクロンの範囲の粒径まで粒状となされた変性高アミロースデンプン類(例えばデンプンの50重量%よりも多い、及び/若しくは75重量%よりも多い、及び/若しくは90重量%よりも多いアミロース)がこの用途のために好ましい。マイクロタルク(microtalc)又は、硫酸ナトリウム若しくは塩化ナトリウムなどのアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属塩などの造核剤(nucleating agent)をデンプン重量の約1〜8%の量で加えることもまた、有利である場合がある。発泡体は種々の形態に成形され得る。
【0068】
iii)フィルム形成
フィルム形成のためのヒドロキシルポリマー含有組成物は、添加される水分含有量がより少なく、典型的にヒドロキシルポリマーの重量の3〜15%であること及びグリセロールなどのポリオールの外的な可塑剤がヒドロキシルポリマーの重量の10〜30%包含されることを除いては、発泡体形成の場合と同様に調製される。発泡体形成の場合と同様に、領域5〜7(図1A)は160〜210℃に保持されるが、スリットダイの温度はより低く、60〜120℃の間である。発泡体形成の場合と同様に、領域1において架橋系、特に架橋剤を水と共に加えてよく、またヒドロキシルポリマー含有組成物のpHは7〜8の間となされなければならず、これは架橋促進剤、例えばアンモニウム塩を用いることにより達成可能である。
【0069】
本発明のフィルムは当該技術分野で既知のあらゆる好適な製品に利用されてよい。例えば、このフィルムは包装材料に使用されてもよい。
【0070】
(ヒドロキシルポリマー)
本発明に従うヒドロキシルポリマーには、好ましくは繊維又はフィラメントの形態の、本発明の高分子構造体に組み込むことができるあらゆるヒドロキシル含有ポリマーが包含される。
【0071】
一実施形態では、本発明のヒドロキシルポリマーは10重量%よりも多い、及び/若しくは20重量%よりも多い、及び/若しくは25重量%よりも多いヒドロキシル部分を包含する。
【0072】
本発明に従うヒドロキシルポリマーの非限定例としては、デンプン及びデンプン誘導体などのポリオール類、セルロースエーテル及びエステル誘導体などのセルロース誘導体、キトサン及びキトサン誘導体、ポリビニルアルコール類及び種々の他の多糖類(ガム類、アラビナン類及びガラクタン類など)、並びにタンパク質類が挙げられる。
【0073】
ヒドロキシルポリマーは好ましくは、約10,000g/モルよりも大きい、及び/若しくは約40,000g/モルよりも大きい、及び/若しくは約10,000〜約80,000,000g/モル、及び/若しくは約10,000〜約40,000,000g/モル、及び/若しくは約10,000〜約10,000,000g/モルの重量平均分子量を有する。更に高い及び更に低い分子量のヒドロキシルポリマー類を、好ましい重量平均分子量を有するヒドロキシルポリマー類と組み合わせて使用してもよい。本明細書で使用する時、「重量平均分子量」は、「コロイド及び界面A、物理化学及び工学の状況」(Colloids and Surfaces A.Physico Chemical & Engineering Aspects)162巻、2000、107〜121頁に見出されるプロトコルに従って、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて決定される重量平均分子量を意味する。
【0074】
天然デンプンは、当該技術分野において周知のように、化学的又は酵素的に変性され得る。例えば、天然デンプンは酸希釈(acid-thinned)、ヒドロキシエチル化、又はヒドロキシプロピル化、若しくは酸化することができる。
【0075】
本明細書では「多糖類」とは、天然多糖類及び多糖類誘導体又は変性多糖類を意味する。好適な多糖類としては、ゴム類、アラビナン類、ガラクタン類、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
本発明のヒドロキシルポルマー(単独又は組み合わせ)として用いるのに好適なポリビニルアルコール類は次の一般式によって特徴付けることができ:
【0077】
【化1】

各Rは、C1〜C4アルキル;C1〜C4アシルからなる群から選択され;及びx/x+y+z=0.5〜1.0である。
【0078】
(親水性/親油性系)
本発明の親水性/親油性系は親水性構成成分及び親油性構成成分を含む。この親水性/親油性系は、約40°未満及び/若しくは約25°未満〜約−30℃及び/若しくは約−15℃のTgを示す。
【0079】
親水性/親油性系の非限定例は、ラテックスグラフト化デンプン類、スチレン/ブタジエンラテックス類、ビニル/アクリル系ラテックス類、アクリル系ラテックス類、アクリレート変性ラテックス類、水分散性フルオロポリマー類、水分散性シリコーン類、及びこれらの混合物からなる群から選択される成分を含む。
【0080】
一実施形態では、親水性/親油性系は、(ホリバ・インターナショナル(Horiba International)、カリフォルニア州アービング(Irving)から市販されているLB500によって測定した場合)約10nmから及び/若しくは約75nmから及び/若しくは約100nmから約6μmまで及び/若しくは約3μmまで及び/若しくは約1.5μmまでの平均粒径を示す。一実施形態では、親水性/親油性系は約10nm〜約6μmの平均粒径を示す。
【0081】
一実施形態では、親水性構成成分と親油性構成成分とは互いに共有結合されている。
【0082】
別の実施形態では、親水性構成成分と親油性構成成分とは互いに共有結合されていない。
【0083】
一実施形態では、親水性構成成分及び親油性構成成分はこの親水性/親油性系において、親水性構成成分の重量パーセント 対 親油性構成成分の重量パーセントが約30:70〜約1:99、及び/又は約20:80〜約5:95で存在する。
【0084】
更に別の実施形態では、親水性/親油性系は本発明のヒドロキシルポリマー含有組成物中において、デンプンの約0.5重量%から及び/又は約1重量%から約3重量%まで及び/又は約10重量%までの濃度で存在する。
【0085】
一実施形態では、親水性/親油性系はヒドロキシルポリマー内で不連続な相を含む。換言すれば、ヒドロキシルポリマーは連続相中に存在してもよく、及び親水性/親油性系はこのヒドロキシルポリマーの連続相内の不連続な相中に存在してもよい。
【0086】
(a.親水性構成成分)
好適な親水性構成成分の非限定例は、アルキルアリールスルホネート類、エトキシル化アルコール類、エトキシル化アルキルフェノール類、エトキシル化アミン類、エトキシル化脂肪酸類、エトキシル化脂肪酸エステル類及び油類、グリセロールエステル類、プロポキシル化及びエトキシル化脂肪酸類、プロポキシル化及びエトキシル化脂肪族アルコール類、プロポキシル化及びエトキシル化アルキルフェノール類、四級界面活性剤類、ソルビタン誘導体、アルコールスルフェート類、エトキシル化アルコールスルフェート類、スルホスクシネート類及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0087】
(b.親油性構成成分)
好適な親油性構成成分の非限定例は、飽和及び不飽和の動物油及び植物油類、鉱物油、ペトロラタム、天然及び合成ワックス類、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0088】
(c.界面活性剤構成成分)
本発明の親水性/親油性系は、親水性構成成分として機能してもよく、又は機能しなくてもよい、界面活性剤構成成分を含んでもよい。好適な界面活性剤構成成分の非限定例としては、シロキサン系界面活性剤、及びオルガノスルホスクシネート界面活性剤が挙げられる。
【0089】
好適な界面活性剤構成成分物質の1つの部類として、シロキサン系界面活性剤(シロキサン系物質)を挙げることができる。この用途におけるシロキサン系界面活性剤は、他の用途向けのシロキサンポリマーであってもよい。シロキサン系界面活性剤の重量平均分子量は、典型的には、500〜20,000g/モルである。ポリ(ジメチルシロキサン)から誘導されるこのような物質は、当該技術分野において周知である。
【0090】
好適なシロキサン系界面活性剤の非限定的な市販例は、TSF4446並びにNu Wet550及び625、並びにXS69−B5476(ゼネラル・エレクトリック・シリコーンズ(General Electric Silicones)から市販);ジェナミン(Jenamine)(登録商標)HSX(デルコン(DelCon)から市販)、シルウェット(Silwet)L7087、L7200、L8620、L77及びY12147(オーシースペシャリティーズ(OSi Specialties)から市販)である。
【0091】
好適な界面活性剤構成成分物質の第2の好ましい部類は、有機物の性質をもつ。好ましい物質は、炭素原子数約6〜約20個の炭素鎖を有するオルガノスルホスクシネート界面活性剤類である。それぞれ炭素数約6〜約20個の炭素鎖を有する、ジアルキル鎖を含有するオルガノスルホスクシネート類が最も好ましい。また、アリール又はアルキルアリール、置換又は非置換、分枝鎖又は直鎖、飽和又は不飽和の基を含有する鎖も好ましい。
【0092】
好適なオルガノスルホスクシネート界面活性剤類の市販の非限定例は、エアゾール(Aerosol)OT及びエアゾール(Aerosol)TR−70(サイテック(Cytec)製)の商品名で入手可能である。
【0093】
一実施形態では、界面活性剤は、存在する場合、本発明のヒドロキシルポリマー含有組成物中に、デンプン(ヒドロキシルポリマー?)の約0.01重量%〜約0.5重量%、及び/若しくは約0.025重量%〜約0.4重量%、及び/若しくは約0.05重量%〜約0.30重量%の濃度で存在してよい。
【0094】
(架橋系)
「架橋系」とは、本明細書で使用する時、架橋剤及び任意で架橋促進剤を含み、その中に架橋系が存在するヒドロキシルポリマー含有組成物が、本明細書に記載される剪断粘度変化試験方法に従い、70分後に1.3倍未満の標準化剪断粘度変化を示し、及び/又は130分後に2倍未満の標準化剪断粘度変化を示す架橋系を意味する。この試験法を満足しない架橋剤及び/又は架橋系は、本発明の範囲に入らない。
【0095】
好ましくは、本発明の架橋系を含むヒドロキシルポリマー含有組成物から生成される高分子構造体は、本明細書に記載される初期総湿潤引張強度試験方法によって測定された場合に、少なくとも約1.18g/cm(3g/インチ)及び/又は少なくとも約1.57g/cm(4g/インチ)及び/又は少なくとも約1.97g/cm(5g/インチ)から約23.62g/cm(60g/インチ)及び/若しくは約21.65g/cm(55g/インチ)及び/若しくは約19.69g/cm(50g/インチ)までの初期総湿潤引張強度を示す。
【0096】
本発明の架橋系内の架橋剤の濃度、架橋剤の種類、もし存在するならば架橋促進剤の濃度、及びもし存在するならば架橋促進剤の種類は、その架橋系が剪断粘度変化試験方法に基づいて許容できないものであるかどうか、及び/又は初期総湿潤引張強度試験方法に基づいてヒドロキシルポリマーの許容可能な架橋を提供するかどうかに影響を与え得る因子である。
【0097】
「架橋剤」とは、本明細書で使用する時、本発明に従うヒドロキシルポリマー含有組成物内のヒドロキシルポリマーを架橋することができる、あらゆる物質を意味する。
【0098】
好適な架橋剤の非限定例には、グリオキサールと、尿素類(構造V、X=O)、チオ尿素類(構造V、X=S)、グアニジン類(構造V、X=NH、N−アルキル)、メチレンジアミド類(構造VI)、及びメチレンジカルバメート類(構造VII)並びにこれらの誘導体とのアルキル置換又は非置換環状付加物に由来して生ずる化合物;並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0099】
一実施形態では、架橋剤は次の構造を有し:
【0100】
【化2】

式中、X、はO、又はS、若しくはNH、若しくはN−アルキルであり、R1及びR2は独立してであり、
【0101】
【化3】

式中、R3及びR8は独立して、H、直鎖又は分枝鎖C1〜C4アルキル、CH2OH、及びこれらの混合物からなる群から選択され、R4は独立して、H、直鎖又は分枝鎖C1〜C4アルキル、及びこれらの混合物からなる群から選択され;xは0〜100であり;及びqは0〜10であり、RHは独立してH、直鎖又は分枝鎖C1〜C4アルキル、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0102】
一実施形態では、R3、R8及びR4のすべてが1つのユニット内でC1〜C4アルキルであることはない。
【0103】
別の実施形態では、R3、R8及びR4のうちの1つだけが1つのユニット内でC1〜C4アルキルである。
【0104】
別の実施形態では、架橋剤は次の構造を有し:
【0105】
【化4】

式中、R2は独立して
【0106】
【化5】

であり、式中、R3及びR8は独立して、H、直鎖又は分枝鎖C1〜C4アルキル、CH2OH、及びこれらの混合物からなる群から選択され、R4は独立して、H、直鎖又は分枝鎖C1〜C4アルキル、及びこれらの混合物からなる群から選択され;xは0〜100であり;及びqは0〜10であり、RHは独立して、H、直鎖又は分枝鎖C1〜C4アルキル、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0107】
一実施形態では、R3、R8及びR4のすべてが1つのユニット内でC1〜C4アルキルであることはない。
【0108】
別の実施形態では、R3、R8及びR4のうちの1つだけが1つのユニット内でC1〜C4アルキルである。
【0109】
更に別の実施形態では、架橋剤は次の構造を有し:
【0110】
【化6】

式中、R2は独立して
【0111】
【化7】

であり、式中、R3及びR8は独立して、H、直鎖又は分枝鎖C1〜C4アルキル、CH2OH、及びこれらの混合物からなる群から選択され、R4は独立して、H、直鎖又は分枝鎖C1〜C4アルキル、及びこれらの混合物からなる群から選択され;xは0〜100であり;及びqは0〜10であり、RHは独立して、H、直鎖又は分枝鎖C1〜C4アルキル、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0112】
一実施形態では、R3、R8及びR4のすべてが1つのユニット内でC1〜C4アルキルであることはない。
【0113】
別の実施形態では、R3、R8及びR4のうちの1つだけが1つのユニット内でC1〜C4アルキルである。
【0114】
更に他の実施形態では、架橋剤は、次の構造(構造VIII、IX、及びX)のうちの1つを有し:
【0115】
【化8】

式中、X、はO、又はS、若しくはNH、若しくはN−アルキルであり、R1及びR2は独立して
【0116】
【化9】

であり、式中、R3及びR8は独立して、H、直鎖又は分枝鎖C1〜C4アルキル、CH2OH、及びこれらの混合物からなる群から選択され、R4は独立して、H、直鎖又は分枝鎖C1〜C4アルキル、及びこれらの混合物からなる群から選択され;xは0〜100であり;及びqは0〜10であり、RHは独立して、H、直鎖又は分枝鎖C1〜C4アルキル、及びこれらの混合物からなる群から選択され;xは0〜100であり;yは1〜50であり;R5は独立して、−(CH2n−(式中、nは1〜12)、−(CH2CH(OH)CH2)−、から選択され、
【0117】
【化10】

式中、R6及びR7は独立して、H、直鎖又は分枝鎖C1〜C4アルキル、及びこれらの混合物からなる群から選択され、式中、R6及びR7は単一のユニット内で両方ともC1〜C4アルキルであることはできず;zは1〜100である。
【0118】
一実施形態では、R3、R8及びR4のすべてが1つのユニット内でC1〜C4アルキルであることはない。
【0119】
別の実施形態では、R3、R8及びR4のうちの1つだけが1つのユニット内でC1〜C4アルキルである。
【0120】
架橋剤は次の構造を有していてもよく:
【0121】
【化11】

式中、R1及びR2は独立して、
【0122】
【化12】

であり、式中、R3及びR8は独立して、H、直鎖又は分枝鎖C1〜C4アルキル、CH2OH、及びこれらの混合物からなる群から選択され、R4は独立して、H、直鎖又は分枝鎖C1〜C4アルキル、及びこれらの混合物からなる群から選択され;xは0〜100であり;及びqは0〜10であり、RHは独立して、H、直鎖又は分枝鎖C1〜C4アルキル、及びこれらの混合物からなる群から選択され;xは1〜100であり;yは1〜50であり;R5は独立して、−(CH2n−(式中、nは1〜12)である。
【0123】
一実施形態では、R3、R8及びR4のすべてが1つのユニット内でC1〜C4アルキルであることはない。
【0124】
別の実施形態では、R3、R8及びR4のうちの1つだけが1つのユニット内でC1〜C4アルキルである。
【0125】
更に別の実施形態では、架橋剤は次の構造を有し:
【0126】
【化13】

式中、R1及びR2は独立して、
【0127】
【化14】

であり、式中、R3及びR8は独立して、H、直鎖又は分枝鎖C1〜C4アルキル、CH2OH、及びこれらの混合物からなる群から選択され、R4は独立して、H、直鎖又は分枝鎖C1〜C4アルキル、及びこれらの混合物からなる群から選択され;xは0〜100であり;及びqは0〜10であり、RHは独立して、H、直鎖又は分枝鎖C1〜C4アルキル、及びこれらの混合物からなる群から選択され;xは1〜100であり;yは1〜50であり;R5は独立して、−(CH2n−(式中、nは1〜12)、−(CH2CH(OH)CH2)−、から選択され、
【0128】
【化15】

式中、R6及びR7は独立して、H、直鎖又は分枝鎖C1〜C4アルキル、及びこれらの混合物からなる群から選択され、式中、R6及びR7は単一のユニット内で両方ともC1〜C4アルキルであることはできず;zは1〜100である。
【0129】
一実施形態では、R3、R8及びR4のすべてが1つのユニット内でC1〜C4アルキルであることはない。
【0130】
別の実施形態では、R3、R8及びR4のうちの1つだけが1つのユニット内でC1〜C4アルキルである。
【0131】
一実施形態では、架橋剤はイミダゾリジノン(構造V、X=O)(式中、R2=H、Me、Et、Pr、Bu、(CH2CH2O)pH、(CH2CH(CH3)O)pH、(CH(CH3)CH2O)pH(式中、pは0〜100であり、R1はメチルである))を含む。上述の市販の架橋剤、すなわち、バスフ(BASF)からのフィクサプレット(Fixapret)NFはR1=メチル、R2=Hを有している。
【0132】
別の実施形態では、架橋剤は、イミダゾリジノン(構造V、X=O)(式中、R2=H、Me、Et、Pr、Buであり、R1=Hである)を含む。ジヒドロキシエチレン尿素(DHEU)はイミダゾリジノン(構造V、X=O)(式中、R1及びR2の両方がHである)を含む。DHEUはEP特許0294007A1における手順に従って合成できる。
【0133】
理論に束縛されないが、架橋系は、以下の構造に表されるように、ヒドロキシルポリマー鎖をアミド結合(amidal linkages)を介して共に架橋することによって機能する。架橋後、架橋剤(crosslinker)は高分子構造の一部となる。
【0134】
【化16】

上記のすべての式において、OR2部分が結合されている炭素はHにも結合されているが、これは簡潔化の理由で構造式には示されていないということが、当業者には理解される。
【0135】
本明細書に記載された剪断粘度変化試験方法及び/又は初期総湿潤引張強度試験方法によって判定した場合に許容可能でないという理由で本発明の一部ではない市販の架橋剤の非限定例としては、パーマフレッシュ(Permafresh)EFC(オムノバ・ソリューションズ社(OMNOVA Solutions,Inc)から入手可能)、フィクサプレット(Fixapret)ECO(バスフ(BASF)から入手可能)、及びパレツ(Parez)490(バイエル社(Bayer Corporation)から入手可能)が挙げられる。
【0136】
(他の成分)
本発明のヒドロキシルポリマー含有組成物は、可塑剤、希釈剤、酸化剤、乳化剤、結合抑制剤、潤滑剤、加工助剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、難燃剤、染料、顔料、充填剤、他のタンパク質及びそれらの塩、他のポリマー(熱可塑性ポリマー、粘着付与樹脂、増量剤、湿潤強度向上樹脂、及びそれらの混合物など)からなる群から選択される添加剤を更に含んでいてもよい。
【0137】
(ヒドロキシルポリマー含有組成物の製造方法)
一実施形態では、次の工程を含む、ヒドロキシルポリマー含有組成物の製造方法:
a.ヒドロキシルポリマーを含む水性混合物を準備する工程と;
b.前記水性混合物に親水性/親油性系を添加する工程と、前記親水性/親油性系が、親水性構成成分及び親油性構成成分を含み、ここで、前記親水性構成成分が、前記親油性構成成分の前記水性混合物中への分散性を促進し;
c.架橋剤を含む架橋系を前記水性混合物に添加する工程と;が提供される。
【0138】
別の実施形態では、次の工程を含む、高分子構造体の製造方法:
a.ヒドロキシルポリマーを含む水性混合物と、親水性構成成分及び親油性構成成分を含む親水性/親油性系と、ここで前記親水性構成成分が、前記親油性構成成分の前記水性混合物中への分散性を促進し、架橋剤を含む架橋系とを含むヒドロキシルポリマー含有組成物を準備する工程と;
b.前記ヒドロキシルポリマー含有組成物をポリマー加工して、高分子構造体を形成する工程と;が提供される。
【0139】
(試験方法)
(A.ヒドロキシルポリマー含有組成物の剪断粘度試験方法)
本発明のヒドロキシルポリマー含有組成物の剪断粘度は、キャピラリー・レオメーター、ゲットファート・レオグラフ(Goettfert Rheograph)6000(米国、サウスカロライナ州ロックヒル(Rock Hill)のゲットファート(Goettfert)USAにより製造)を用いて測定される。測定は、1.0mmの直径D及び30mmの長さL(すなわちL/D=30)を有するキャピラリーダイを用いて行われる。ダイはレオメーターの20mmバレルの低い方の末端に取り付けられ、これは約75℃のダイ試験温度に保持される。ダイ試験温度に予め加熱されたヒドロキシルポリマー含有組成物の試料60gをレオメーターのバレル部分内に装填する。試料からすべての混入空気を取り除く。一連の選択された速度、1,000〜10,000sec-1で、バレルからキャピラリーダイを通して試料を押す。見かけ剪断粘度は、試料がバレルからキャピラリーダイを通って進むときに試料に生じる圧力低下及びキャピラリーダイを通る試料の流量から、レオメーターのソフトウェアを用いて計算することができる。log(見かけの剪断粘度)をlog(剪断速度)に対してプロットして、そのプロットを次式に従う指数法則に当てはめることができる:η=Kγn-1、(式中Kはその材料の粘度定数であり、nはその材料の剪断速度依存指数(thinning index)であり、γは剪断速度である)。本明細書の組成物の報告される見かけ剪断粘度は、剪断速度3,000sec-1に対する補間により指数法則関係を用いて計算される。
【0140】
(B.剪断粘度変化試験方法)
試験されるべき架橋系を含む本発明の単一のヒドロキシルポリマー含有組成物の3つの試料の粘度を、3つの別個の60ccシリンジを充填することによって測定する:1つの試料の剪断粘度はヒドロキシルポリマー含有組成物の剪断粘度試験方法に従い直ちに測定される(初期剪断粘度)(最初の読みを得るために試料がレオメーター内に設置された時刻から約10分を要する)。この第1の試料の初期剪断粘度が剪断速度3,000sec-1で測定したとき5〜8Pa.sの範囲内にない場合には、その単一のヒドロキシルポリマー含有組成物の初期剪断粘度が剪断速度3,000sec-1で測定したとき5〜8Pa.sの範囲内となるようにその単一のヒドロキシルポリマー含有組成物を調節して、その後この剪断粘度変化試験方法を繰り返さなければならない。ヒドロキシルポリマー含有組成物の初期剪断粘度が剪断速度3,000sec-1で測定して5〜8Pa.sの範囲内に入ったら、次に他の2つの試料を対流式オーブン中で80℃でそれぞれ70分及び130分保存した後、同じ試験方法によって測定する。70分及び130分の試料に対する3,000sec-1での剪断粘度は、初期剪断粘度で除され、70分及び130分の試料に関する標準化された剪断粘度変化を得る。標準化された剪断粘度変化が70分後に1.3倍以上、及び/又は130分後に2倍以上であるならば、その場合はヒドロキシルポリマー含有組成物内の架橋系は許容できないものであり、したがって本発明の範囲内に入らない。しかしながら、標準化された剪断粘度変化が70分後に1.3倍未満、及び/又は(好ましくは、及び)130分後に2倍未満であるならば、その場合はその架橋系は許容できないものではなく、すなわちその架橋系を含むヒドロキシルポリマー組成物に関して本発明の範囲内である。好ましくは、その架橋系は、初期総湿潤引張強度試験方法によって測定した場合に、その架橋系を含むヒドロキシルポリマー含有組成物から誘導される高分子構造体に関して許容可能である。
【0141】
好ましくは、標準化された剪断粘度変化は70分後に1.2倍未満、及び/又は130分後に1.7倍未満となり、より好ましくは70分後に1.1倍未満、及び/又は130分後に1.4倍未満となる。
【0142】
(C.初期総湿潤引張強度試験方法)
電子引張試験機(スウィング−アルバートEJA材料試験機(Thwing-Albert EJA Materials Tester)、スウィング−アルバート・インスツルメント社(Thwing-Albert Instrument Co.))(ペンシルベニア州フィラデルフィア、ダットンロード10960、19154(10960 Dutton Rd.,Philadelphia,Pa.,19154))を使用し、約10.16cm(4.0インチ)/分のクロスヘッド速度及び約2.54cm(1.0インチ)のゲージ長さで、2.54cm(1インチ)の幅及び7.62cm(3インチ)より長い長さの高分子構造体のストリップを用いて操作する。ストリップの2つの端部が機械の上側つかみ具内に配置され、ストリップの中央がステンレススチールのペグ(直径0.5cm)の周りに配置される。ストリップがスチールのペグの周囲で均一に曲げられていることを確認した後、ストリップを約20℃の蒸留水に5秒間浸漬させてから、クロスヘッドの移動を開始する。試験の初期結果は、負荷(グラム重量)対クロスヘッドの変位(開始点からのセンチメートル)の形態の一連のデータである。
【0143】
試料は、本明細書ではMD(機械方向、すなわち連続巻取りリール及び形成生地と同じ方向)及びCD(機械横方向、すなわちMDから90°)と称される2つの配向において試験される。MD及びCD湿潤引張強度は上記の装置及び以下の様な計算式を用いて決定される:
初期総湿潤引張強度=ITWT(gf/インチ)=最大荷重(Peak Load)MD(gf)/2(インチ幅)+最大荷重CD(gf)/2(インチ幅)
次いで、初期総湿潤引張強度の値はそれが試験されたストリップの坪量に対して標準化される。使用された標準化坪量は36g/m2であり、以下のように計算される:
標準化{ITWT}={ITWT}×36(g/m2)/ストリップの坪量(g/m2
本発明の架橋系を含む高分子構造体の初期総湿潤引張強度が少なくとも1.18g/cm(3g/インチ)、及び/若しくは少なくとも1.57g/cm(4g/インチ)、及び/若しくは少なくとも1.97g/cm(5g/インチ)であるならば、その場合その架橋系は許容可能であり、本発明の範囲内である。好ましくは、初期総湿潤引張強度は約23.62g/cm(60g/インチ)以下、及び/若しくは約21.65g/cm(55g/インチ)以下、及び/若しくは約19.69g/cm(50g/インチ)以下である。
【0144】
(D.接触角試験方法)
接触角試験は、スウィング・アルバート・インストルメント社(Thwing Albert Instrument Company)によって供給されるフィブロDAT高速接触角測定装置(Fibro DAT high speed contact angle measurement device)で実施される。試験は0.1分のタイムアウトまで行われ、繊維構造体試料の表面上に32μlの水滴を適用する。次にフィブロDAT(Fibro DAT)によって得られる高速画像をコンピュータ分析して接触角の時間に対するグラフ表示を作成する。5回の測定の平均を取り、1秒に等しい時間における接触角を対照点として使用する。従って、1秒後の40°の接触角とは、その接触角が、対照点を測定した1秒後に測定されているということを意味している。
【0145】
(E.湿潤バルク試験方法)
本文書の目的のためには、「湿潤バルク」は乾燥繊維性構造体の試料正方形を積み重ねた束の最初の高さと、その積み重ね束を完全に湿潤させた後の同じ積み重ね束の高さとの比として定義される。積み重ね束の高さは、安定な試験台の上に支持されたデジタルマイクロメータ(ミツトヨシリーズ543アブソリュートデジマチックインジケータ(Mitutoyo Series 543 Absolute Digimatic Indicator)、ミツトヨ・コーポレーション(Mitutoyo Corporation)、日本、神奈川)を用いて測定される。積み重ね束上の荷重を最小限にするために、そのマイクロメータの内部バネは非連結とすべきである。マイクロメータには直径2.54cm(1インチ)のテストフットが取り付けられている。その他の必要な装備には、直径100mm×15mmのペトリ皿と、そのペトリ皿の内側にフィットするように裁断された、およそ0.635cm(0.25インチ)の開口を有するノンスティックテフロン(登録商標)(non-stick Teflon)メッシュの粗いナイロンスクリーンの一片が包含され、両品目ともVWRサイエンティフィック(VWR Scientific)から市販されている。
【0146】
試験手順は次の工程を包含する。スクリーンをペトリ皿の内部に置き、このペトリ皿をマイクロメータのテストフットの下の中央に配置された試験スタンドの基部に置く。マイクロメータアセンブリを次に、テストフットがスクリーンに接触するまで下降させる。次にマイクロメータをゼロに合わせる。試験すべき繊維性構造体(類)を2.54cm×2.54cm(1インチ×1インチ)試料正方形へと裁断する。マイクロメータのテストフットを上昇させた後、8枚の試料正方形を均一の配置で順々に重ねてそのマイクロメータテストフットの下のペトリ皿の中のスクリーン上に置く。次いでマイクロメータテストフットを試料正方形の積み重ね束上に静かに下ろす。次いで初期のマイクロメータの読みを記録する。次に、50mLの脱イオン水を全50mLが約3秒間かけてペトリ皿へと加えられるように制御された態様で、添加の結果として正方形試料の積み重ね束にほとんど、又は全く水が接触しないようにゆっくりと加える。30秒後、試料正方形の積み重ね束の最終の高さを記録する。試料正方形の積み重ね束全体が十分に湿潤していれば(読みに影響し得る試料内の乾燥点が無いならば)、測定は終了される。試料正方形の積み重ね束全体が十分に湿潤していないならば、更に60秒待ってから最終の高さを記録し、その後測定を終了する。試料正方形の積み重ね束全体がなお十分に湿潤していないならば、その試験は中止し、試料正方形の積み重ね束が十分に湿潤しなかったことを記録する。必要ならば、試験を繰り返す。
【0147】
試料正方形の積み重ね束の最終高さを試料正方形の積み重ね束の初期高さで除して100%を掛けることによって湿潤バルクを計算し、これによってこの繊維性構造体の湿潤バルクが乾燥バルクのパーセントとして与えられる。
【0148】
(F.湿潤降伏応力試験方法)
測定すべき繊維性構造体試料を20mm円盤に裁断し、0.1mg単位で秤量する。繊維性構造体の円盤の積み重ね束に負荷をかけ、シールドセル(Sealed Cell)を装備したレオロジカ・ストレステック・レオメータ(Reologica Stresstech rheometer)の試料カップ中の中央に置く。レオメーターの備品(fixture)は深さ0.3mm、間隔0.6mmの鋸歯状突起を有する直径20mmの平行板備品(fixture)である。1000μLのメカニカルピペット(エッペンドルフ・ピペットマン(Eppendorf Pippetteman))を使用して、水の質量の繊維性構造体の質量に対する比率が3.5となるように試料に水を加える。次いで試料をレオメーター中に置き、セル圧を69kPa(10psig)まで上昇させる。試験を実行するために、レオメーターの垂直力(normal force)センサーをゼロに合わせ、一番上の板によって加えられる垂直力(normal force)が3ニュートンになるまで2つの平行板の間の間隙を減少させる。間隙は試験の間この点で一定に保たれる。30秒の平衡時間の後、次の設定を用いて湿潤降伏応力試験を開始する:
【0149】
【表3】

試験により、応力のひずみに対するグラフが得られる。グラフ及び/又はレオメーターから特定のひずみに対する湿潤降伏応力値を読み取る。
【0150】
(方法G.繊維直径試験方法)
適当な坪量(およそ5〜20g/平方メートル)の繊維を含むウェブを、およそ20mm×35mmの方形に裁断する。次に繊維を比較的不透明にするために、SEMスパッターコーター(米国ペンシルベニア州、EMS社(EMS Inc))を用いて、試料を金でコーティングする。典型的なコーティングの厚さは50〜250nmである。次いで試料を2枚の標準顕微鏡スライドの間に載せて、小さなバインダークリップを用いて圧縮する。試料をオリンパス(Olympus)BHS顕微鏡で10X対物レンズを用い顕微鏡光コリメータレンズ(light-collimating lens)をできるだけ対物レンズから遠ざけるように動かして画像化する。画像をニコン(Nikon)D1デジタルカメラを用いて撮影する。画像の空間距離を較正するためにガラス顕微鏡ミクロメーターを使用する。画像のおよその解像度は1μm/ピクセルである。画像は典型的には、繊維及び背景に対応する強度ヒストグラムにおけるはっきりした二峰性分布を示す。許容可能な二峰性分布を達成するために、カメラ調節又は異なる坪量が用いられる。典型的には試料1つ当たり10枚の画像が撮られ、画像分析結果が平均される。
【0151】
画像は、B.ポアデイヒミ(Pourdeyhimi)、R.及びR.デント(Dent)によって「不織布の繊維直径分布測定(Measuring fiber diameter distribution in nonwovens)」(織物研究誌(Textile Res.J.)69(4)233〜236、1999年)に記載されているものと同様の方法で分析される。デジタル画像をマトラボ(MATLAB)(バージョン6.3)及びマトラボ画像加工ツールボックス(MATLAB Image Processing Tool Box)(バージョン3)を使用してコンピュータにより分析する。画像は最初に白黒(grayscale)に変換される。次いで画像を、閾値化された白黒ピクセルの種類内の相違を最小限にする閾値を用いて白黒ピクセルへと二値化する。画像は二値化されると、各繊維の中心が画像中に位置決めされるように骨格化される(skeltonized)。二値化された画像の距離の変換もまた計算される。骨格化された(skeltonized)画像と距離地図のスカラ積が、ピクセル強度がゼロかその位置での繊維の半径かのどちらかである画像を提供する。2つの重なり合う繊維間の接合部の1つの半径内でのピクセルは、それらが示す距離がその接合部の半径よりも小さい場合はカウントされない。次いで残りのピクセルを用いて、画像中に収容された繊維直径の長さ加重ヒストグラム(length-weighted histogram)を計算する。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1A】本発明で使用するのに好適な二軸スクリュー押出機のバレルの概略的側面図。
【図1B】図1Aのバレルで使用するのに好適なスクリュー及び混合要素の構成の概略的側面図。
【図2】本発明に従う高分子構造体を合成するためのプロセスの概略的側面図。
【図3】細長化(attenuation)領域を示す本発明のプロセスの概略的部分側面図。
【図4】図3の直線4−4に沿って取られた概略平面図であり、本発明の高分子構造体を提供するために配置される複数個の押出ノズルの、1つの可能な配置を示している。
【図5】図4の図に類似した図であり、細長化(attenuation)領域の周囲に境界空気を提供するためのオリフィスの、1つの可能な配置を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシルポリマー含有組成物であって:
a.ヒドロキシルポリマーを含む水性混合物と;
b.親水性構成成分及び親油性構成成分を含む親水性/親油性系と;
c.架橋剤を含む架橋系と;
を含み、前記親水性構成成分が、前記親油性構成成分の前記水性混合物中での分散性を促進する、ヒドロキシルポリマー含有組成物。
【請求項2】
前記ヒドロキシルポリマーが、ポリビニルアルコール、デンプン、デンプン誘導体、キトサン、キトサン誘導体、セルロース誘導体、ガム類、アラビナン類、ガラクタン類、タンパク質類、及びこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、前記ヒドロキシルポリマーが、デンプン及び/若しくはデンプン誘導体及び/若しくはポリビニルアルコールを含み、より好ましくは、前記ヒドロキシルポリマーが、10,000〜80,000,000g/モルの重量平均分子量を有することを特徴とする、請求項1に記載のヒドロキシルポリマー含有組成物。
【請求項3】
前記親水性/親油性系が、ラテックスグラフト化デンプン類、スチレン/ブタジエンラテックス類、ビニル/アクリル系ラテックス類、アクリル系ラテックス類、アクリレート変性ラテックス類、水分散性フルオロポリマー類、水分散性シリコーン類、及びこれらの混合物からなる群から選択される成分を含む、請求項1又は2のいずれか一項に記載のヒドロキシルポリマー含有組成物。
【請求項4】
前記親水性構成成分が、アルキルアリールスルホネート類、エトキシル化アルコール類、エトキシル化アルキルフェノール類、エトキシル化アミン類、エトキシル化脂肪酸類、エトキシル化脂肪酸エステル類及び油類、グリセロールエステル類、プロポキシル化及びエトキシル化脂肪酸類、プロポキシル化及びエトキシル化脂肪族アルコール類、プロポキシル化及びエトキシル化アルキルフェノール類、四級界面活性剤類、ソルビタン誘導体、アルコールスルフェート類、エトキシル化アルコールスルフェート類、スルホスクシネート類並びにこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のヒドロキシルポリマー含有組成物。
【請求項5】
前記親油性構成成分が、飽和及び不飽和の動物油及び植物油類、鉱物油、ペトロラタム、天然及び合成ワックス類、並びにこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のヒドロキシルポリマー含有組成物。
【請求項6】
前記ヒドロキシルポリマーが、連続相であり、かつ前記親水性/親油性系が、前記ヒドロキシルポリマー中に不連続相として存在することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒドロキシルポリマー含有組成物。
【請求項7】
前記親水性/親油性系が、10nm〜6μmの平均粒径を示すことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のヒドロキシルポリマー含有組成物。
【請求項8】
前記親水性構成成分が、前記親油性構成成分に共有結合されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のヒドロキシルポリマー含有組成物。
【請求項9】
前記架橋剤が、ポリカルボン酸類、イミダゾリジノン類、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のヒドロキシルポリマー含有組成物。
【請求項10】
前記架橋系が、架橋促進剤を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のヒドロキシルポリマー含有組成物。
【請求項11】
前記親水性/親油性系が、界面活性剤構成成分を含み、好ましくは前記界面活性剤構成成分が、オルガノスルホスクシネート界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のヒドロキシルポリマー含有組成物。
【請求項12】
高分子構造体であって、好ましくは前記高分子構造体が、1秒後に40°未満の接触角を示し、及び/又は好ましくは前記高分子構造体が、50μm未満の直径を有する繊維の形態である、請求項1〜11のいずれか一項に記載のヒドロキシルポリマー含有組成物から誘導される高分子構造体。
【請求項13】
前記高分子構造体のうちの少なくとも1つが繊維の形態である、請求項12に記載の1つ以上の高分子構造体を含む繊維性構造体。
【請求項14】
衛生ティッシュ製品であって、好ましくは前記ティッシュ製品が、少なくとも1〜10のひずみにおいて1000〜6000Paの湿潤降伏応力を示し、及び/又は好ましくは前記ティッシュ製品が、乾燥バルクの少なくとも40%の湿潤バルクを示す、請求項13に記載の繊維性構造体を含む単プライ又は多プライの衛生ティッシュ製品。
【請求項15】
次の工程:
a.ヒドロキシルポリマーを含む水性混合物を準備する工程と;
b.前記水性混合物に親水性/親油性系を添加する工程と、前記親水性/親油性系が、親水性構成成分及び親油性構成成分を含み、前記親水性構成成分が、前記親油性構成成分の前記水性混合物中への分散性を促進し;
c.架橋剤を含む架橋系を前記水性混合物に添加する工程と;
を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のヒドロキシルポリマー含有組成物の製造方法。
【請求項16】
次の工程:
a.ヒドロキシルポリマーを含む水性混合物と、親水性構成成分及び親油性構成成分を含む親水性/親油性系と、ここで前記親水性構成成分が、前記親油性構成成分の前記水性混合物中への分散性を促進し、架橋剤を含む架橋系とを含むヒドロキシルポリマー含有組成物を準備する工程と;
b.前記ヒドロキシルポリマー含有組成物をポリマー加工して、高分子構造体を形成する工程と;
を含むことを特徴とする、請求項12に記載の高分子構造体の製造方法。


【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−520590(P2007−520590A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543921(P2006−543921)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/040848
【国際公開番号】WO2005/061603
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】