説明

角度選択的な透過性を有する日光防御装置

【課題】本発明は、不透明な又は一部のみ透光性の材料の構造層(5、6)と両面が接合される少なくとも1つの光学的に透明な誘電体層(1、7)から成る日光防御装置に関する。
【解決手段】2つの構造層(5、6)は、所定の角度範囲で外側の構造層(6)に入射する光学的放射が2つの構造層(5、6)の相互作用によって遮断され、異なる角度範囲で第2の構造層(6)に入射する光学的放射の一部が妨げられずに構造層(5、6)を通過することができるように、採光開口(14)及び遮光区域(12、13)が形成される構造になっている。日光防御装置は、移動部品を用いずに防眩効果を得ると同時に下方を見ることを可能にするように、太陽放射の角度選択的な透過を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的に透明な誘電体層又は層列上の不透明な又は一部のみ透光性の材料の少なくとも1つの第1の構造層と、不透明な又は一部のみ透光性の材料の第2の構造層とを備え、第1の構造層及び第2の構造層が、採光開口又は採光区域及び遮光区域又は減光区域が形成される構造になっている、日光防御装置、より好ましくはグレージングに関する。
【背景技術】
【0002】
ファサード建築、より好ましくはオフィスビルのファサード建築では、グレージング領域の割合が近年増加し続けている。しかしながら、昼光の利用可能性がより大きいという好影響に加えて、これは、オフィスルームの過熱にもつながるため、十分な日光防御が行われなければならない。他方、この日光防御は、十分な日光防御を与えて眩しくないようにしつつも、屋外が少なくとも部分的に見えるようにすることで良好な室内照明が得られるようにすべきである。
【0003】
ルーバ又は織物製のローラブラインド等の日光防御装置の柔軟で調整可能な設計に加えて、固定式又は可動式の壁掛け(hangings)も存在する。例えば、特許文献1及び特許文献2は、断面幾何形状が光の方向付けに関して最適化されている平行配置の水平金属棒から構成される日光防御装置を示している。同時に棒間の隙間から透視が可能となる。
【0004】
貫通スロットを有するエキスパンドメタルが積層されている複合ガラスパネルが市販されている。貫通スロットは、予め切れ目が入っている金属板の展伸変形によって形成される。このような日光防御装置は、例えば、本願の図3及び図4に関連して特許文献3でも簡単に述べられており、これは貫通開口を有しない日光防御装置を扱っている。
【0005】
さらに、スクリーン印刷パターン又は薄膜太陽電池のパターンでコーティングされている日光防御機能を有するグレージングが市販されており、この場合、不透明な又は透光性の印刷が施された区域間に通気開口があり、それらを通して透視が可能である。しかしながら、このようなタイプのグレージングは、太陽放射を角度選択的に透過させることができない。
【0006】
特許文献4は、入射光の強度を制御することを可能にする日光防御・防眩装置を開示している。この日光防御・防眩装置は、互いに対して変位し得る2つのパネル又は板を備え、これらのそれぞれには、他方のパネル又は板に面している側に光学的に不透明な材料の構造層が設けられ、2つの構造層は、採光開口及び遮光区域が形成される構造になっている。2つのパネル又は板を変位させることにより、採光開口が他方のパネルの遮光領域で覆われる面積の割合が変わり続ける。このようにして、最大採光と最小採光との間で採光を設定することができる。空気が充填されている2つのパネル又は構造層間の中間空間の幅によって、直接入射光に対する拡散光の割合を予め選択することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ特許第10161151 A1号
【特許文献2】ドイツ特許第10139583 A1号
【特許文献3】米国特許第3453039号
【特許文献4】ドイツ特許第19611061 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、光学的放射の、より好ましくは入射太陽放射の角度選択的な透過を可能にし、これを行うのに可動部品を用いずに済む、日光防御装置を示すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、特許請求項1に記載の日光防御装置で解決される。日光防御装置の有利な形態は、従属請求項の主題であるか、又は以下の説明及び例示的な実施形態から得ることができる。
【0010】
提案される日光防御装置は、少なくともほぼ一定の厚さの光学的に透明な誘電体すなわち光屈折層又は層列上の、光学的に不透明な又は一部のみ透光性の材料の少なくとも1つの第1の構造層と、光学的に不透明な又は一部のみ透光性の材料の第2の構造層とを備え、第1の構造層及び第2の構造層は、採光開口又は採光区域及び遮光区域又は減光区域が形成される構造になっている。この場合、一部のみ透光性の材料とは、選択された層厚の構造層が入射放射に関して40%以下、好ましくは10%以下、特に好ましくは3%以下の光透過度を有するようにする透明又は透光性材料を意味する。これは、十分なパーセンテージの入射放射を反射及び/又は吸収する材料の選択によって達成される。
【0011】
提案される日光保護装置では、第2の構造層は、光学的に透明な層又は層列のうち第1の構造層とは反対に位置する側と直接接触し、当該光学的に透明な層又は層列と接合される。こうして互いに対して強固又は静的に配置された2つの構造層の構造は、一部のみ透光性の材料を用いる場合に、所定の角度範囲で第2の構造層に入射する光学的放射が2つの構造層の相互作用によって遮断されるか又は少なくとも適切に弱められ、異なる角度範囲で第2の構造層に入射する光学的放射の一部が妨げられずに採光開口又は採光区域を経て構造層を通過することができるようなものである。ここで、角度範囲は、第2の構造層に対して垂直に、すなわち入射放射の側に向いた日光防御装置の表面に対して垂直に位置付けられる基準面で規定される。この場合、第2の構造層は、外部に面した、すなわち太陽光の方を向いた日光防御装置の層を構成する。
【0012】
提案される日光防御装置では、日光防御、透視、及び大半の太陽高度で防眩効果も得ることができる。静的日光防御装置は、互いに対して可動である構成要素を全く用いずに済む。角度選択的な透過は、2つの構造層間に位置付けられてこれらを接合する光屈折層又は層列と相互作用するこれらの構造層を適当に寸法設定するだけで達成される。2つの構造層の寸法設定によって、これらの構造層間のこの光屈折媒体を通すだけで、妨げられずに下方が見えると同時に十分な太陽放射防眩効果を得ることができる。
【0013】
最も単純な形態では、日光防御装置は、両側に構造層が施されている光学的に透明な層又は層列から構成される。この場合及び以下の全形態の透明な層又は層列は、透明ガラス材料又はプラスチック材料(例えば、アクリルガラス又はポリカーボネート)のパネルによって形成することができる。2つの構造層の構造は、不透明な又は一部のみ透光性の材料の平行ストリップの縞パターンを形成する。この場合、2つの構造層の構造の周期性は同じである。これらは、例えば、スクリーン印刷技法を用いて施すことができる。接着ストリップの利用も可能であるが、その場合、金属又はプラスチックのストリップを用いることが好ましい。接着ストリップの適用を改善するために、これらは、細いリガメントによって所定の場所を相互接続され得るため、適用又は貼着の過程中にストリップの距離が十分に固定される。
【0014】
提案される日光防御装置の特に好ましい形態では、少なくとも第2の構造層の遮光区域は、太陽電池によって形成される。これにはアモルファス太陽電池が特に適している。層構造が適切に寸法設定されているとき、直射日光は、非常に低い太陽高度でしか提案される日光防御装置の層構造を通して差し込むことができないため、第1の構造層の遮光区域も太陽電池によって形成される場合、太陽電池で100%覆われている個々のパネルと同様に直射日光の放射に関して高い効率を太陽電池で非常に有利に得ることができる。
【0015】
原則として、第1の構造層及び第2の構造層のストリップは、異なる材料から、例えば第2の構造層のストリップはアモルファス太陽電池の材料から、第1の構造層のストリップはスクリーン印刷によって施される材料から構成されてもよく、又はその反対であってもよい。ストリップは、内側と外側とで色が異なっていてもよく、その場合、外側は、日光防御装置の使用目的で放射の方を向いた、例えばファサード要素又は窓の外側の方を向いた側を示し、内側は、放射の方を向かない側、すなわち例えばファサード要素又は窓の内側を示す。例えば、スクリーン印刷によって二重印刷で層構造に施される場合、様々な色を得ることができる。そのためには、片側から見える色が最初に印刷されてから、その上に裏面から見える色が印刷される。二重印刷の技法は、既知であり、スクリーン印刷の色(screen print colours、Siebdruckscheibe:スクリーン印刷のパネル)ですでに用いられている。提案される日光防御装置の使用目的では、スクリーン印刷が日光防御のために外側では高反射性、例えば白色であり、防眩効果のために内側ではそれよりも暗い例えば薄灰色であれば実用的である。二重印刷により、ユーザを妨害することなく日光防御装置で覆われているファサードを任意の方法で外部に具現することができる。例示的な場合では、外側(第2の)構造層の内側は、第1の構造層の白色の外側を通して間接的に照明される。これは、外側構造層の裏面の色が濃すぎなければ屋内の部屋への昼光供給に好影響を及ぼす。防眩効果/透視(=暗色の裏面)と昼光供給(=明色の裏面)との間で妥協が見られ得る。
【0016】
提案される日光防御装置のさらなる展開では、より好ましくは第2の構造層でアモルファス太陽電池を用いる場合、第2の構造層は、光学的に透明な層又は層列とは反対の側が第2の光学的に透明な層又は層列と接合される。この第2の光学的に透明な層又は層列も、ガラスパネル又はプラスチックパネルであることが好ましい。この場合、第2の構造層の構造又はストリップは、製造時に例えばスクリーン印刷によってこの第2の透明な層又は層列に施すことができ、その後で第1の透明な層又は層列との接続が行われる。全体的構成は、2つのガラスパネル又はプラスチックパネルがそれらの間に位置付けられる接着フィルム(例えばPVBフィルム)を介して接合される、複合ガラスパネルとして実現されることが好ましい。この場合、接着フィルムは、光学的放射に対するさらなる大きな屈折(refractory)作用を防止するために、用いられる2つのパネルのガラス材料又はプラスチック材料の屈折率に近い屈折率を有するべきである。明らかに、粘着性接着剤の使用等、他の接合技法の使用も可能である。
【0017】
提案される日光防御装置では、内側、すなわち第1の構造層のうちまだ空いている側に、さらなる光学的に透明な層又は層列を施すこともできる。このとき、美的要件を考慮に入れるために特定の色を有する層の使用も可能である。第3の層又は層列と呼ばれる本特許出願の内側層又は層列には、さらなる遮蔽機能はない。これは、妥当な場合には付加的なコーティングを施して、同様にガラスパネル又はプラスチックパネルから形成され得る。この場合、日光防御装置は、接着フィルムによって互いに接合されて構造層が間に位置付けられる3つのガラスパネル又はプラスチックパネルを有する、複合ガラスパネルとして実現されることが好ましい。
【0018】
絶縁グレージング又は複層グレージング(例えば、ダブルグレージング又はトリプルグレージング)としての提案される日光防御装置の実施の形態も可能である。ダブルグレージングの場合、2つの構造層及び1つ又は複数の光学的に透明な層又は層列から構成される構成要素が、ダブルグレージングの外側パネルを形成することが好ましい。内側パネルとしての利用、又はパネルが3つ以上ある場合は中間パネルとしての利用も可能であることが自明である。この外側グレージング要素とガラスパネル又はプラスチックパネルである内側グレージング要素との間には、ガス又はガス混合物が充填されている中間空間があり、これは気密シールされることが好ましい。既知の方法では、例えば空気、アルゴン、又はクリプトンがガス又はガス混合物として考えられ得る。外側グレージング要素のうちこの中間空間に隣接する側又は内側グレージング要素のうちこの中間空間に隣接する側は、例えば断熱コーティング(例えば、Low−Eソフトコーティング)でさらにコーティングされ得る。
【0019】
提案される日光防御装置は、概して、グレージングされる全ファサード区域でグレージング要素として用いることができる。好ましくは、日光防御装置は、外を見るのに直接関与しない区域で用いられる。さらに、自明の応用分野は、より好ましくは、ガラスファサード又はバルコニー手すり並びに住宅又は非住宅建築の手すり領域である。構造層の遮光区域に薄膜太陽電池を用いることにより、薄膜太陽電池でのグレージングの特性の最適化が得られる。
【0020】
日光(solar)防御装置は、1つ又は複数の透明な層から成る別個のパネルの形態で、又は絶縁若しくは複層グレージングとして、窓及びファサード建築の通常の製造技術を用いて製造することができる。
【0021】
提案される日光防御装置での2つの構造層のストリップの寸法は、この日光防御装置を用いる場合に、上方から入射する太陽光が2つの構造層の遮光又は一部のみ透光性のストリップで遮断されるか、又は少なくとも、60%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは97%以上弱められつつも、下方への直接視界が確保され続けるようになっている。第2の構造層の遮光又は一部のみ透光性の区域は、総合すると、第1の構造層の遮光又は一部のみ透光性の区域よりも小さな面積を光学的に透明な層又は層列上で占める。2つの構造層のストリップの幅、距離、及び相互のずれにより、日光防御装置を通過しないか又はこれによって少なくとも大幅に弱められる入射太陽放射の角度範囲を決めることができ、放射の一部が妨げられずに日光防御装置を通過できる角度範囲を設定することができる。これらの構造層の幾何形状に関する4自由度は、以下の例示的な実施形態でより詳細に説明されるように4つの角度α、β、γ、及びσの範囲を指定することで示され得る。角度範囲は、基準面に関係し、日光防御装置の層に対する表面法線に関して示される。
【0022】
日光防御装置を用いる場合、ストリップの適当な寸法設定及び向きは、日光防御装置と建物のうち日光防御装置が用いられる側の向きとに応じて変わる。鉛直ファサードの場合、すなわち日光防御装置が鉛直に取り付けられている場合、日光防御装置の表面法線は、太陽の実質的プロファイル角を規定する際の基準となる水平面も構成する。鉛直方向に直立していないファサード、すなわち傾斜したファサードの場合、傾斜がもたらす偏差が得られるが、これは、当業者であれば本日光防御装置の寸法設定の際に容易に考慮に入れることができる。
【0023】
日光防御装置又はファサードの表面法線が正確に南向きではない場合、防御作用を最適化するために、日光防御装置を用いる場合のストリップは水平面に対して傾斜して延びることもできる。したがって、ストリップは、南向きの鉛直ファサードでは水平の向きであることが好ましいが、南向きではないファサードでは対応する程度だけ水平面から傾けられる。
【0024】
第1の構造層及び/又は第2の構造層が一部のみ透光性の材料から形成される日光防御装置の一実施の形態では、材料の全透過度の20%未満になる指向性(directed)拡散透過度を有する暗色の実質的に明らかに透明の材料が選択されることが好ましい。この一例は、2%の全透過度を有するフィルム材料である。このように、同時に上向きの方向がよく見えない十分な防眩効果を多くの場合になおも得ることができる。
【0025】
さらなる実施の形態では、透過度を切り替えることができる材料、例えばエレクトロクロミック材料又はガスクロミック材料が、第1の構造層及び/又は第2の構造層に用いられる。このような材料では、透過度を広範囲で、例えば1%〜70%の範囲で制御することができる。
【0026】
図面と関連した例示的な実施形態によって、提案される日光防御装置を以下でより詳細に再度説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】日光防御装置の一実施形態の第1の例である。
【図2】一般的な角度データを用いた図1の例である。
【図3】日光防御装置の一実施形態の第2の例である。
【図4】日光防御装置の一実施形態の第3の装置である。
【図5】日光防御装置の一実施形態の第4の例である。
【図6】異なる向きのファサードでの日光防御装置のストリップの種々の向きの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、グレージング要素又はファサード要素として用いられ得るものとして、本発明による例示的な日光防御装置の断面図の細部を示す。この例では、日光防御装置が取り付けられる鉛直ファサードを仮定した。
【0029】
この例の日光防御装置は、ガラスパネル1の第1の光学的に透明な層列と、接着フィルム7とを備える。ガラスパネル1は、内側が第1の構造層5と接合され、外側が接着フィルム7を介して第2の構造層6と接合される。第2の構造層6には、日光防御装置の外側を形成して例えばガラスパネルと同様であり得る第2の透明層2が配置される。日光防御装置に埋め込まれている第2の構造層6は、遮光ストリップ13のストリップパターンから構成され、遮光ストリップ13間には、同様に平行な向きの採光開口14が形成される。日光防御装置の内側を形成する第1の構造層5も、対応するストリップ12及び採光開口14から成る。
【0030】
図では、ストリップ12、13の幅のみがそれぞれ示されているが、ストリップは図面の平面に対して垂直な方向に延びている。
【0031】
日光防御装置の2つの構造層5、6のストリップ12、13の寸法設定を行うと、上(top)から入射する光15は、斜入射であっても日光防御装置を通して内部空間に入ることができない。これは、図1に示す光線の向きによって示される。それにもかかわらず、同様に図1に示すように、観察者16には、日光防御装置を通して水平面から下(bottom)まで内側から全く妨げられずに見える。ほぼストリップ形態で入射する光17は、全反射の限界角σlimitで日光防御装置の光学的に透明な材料に向けられる。したがって、非常に高く昇った太陽は、光が光学的に透明な材料を通してσlimitよりも平坦に進むことになるため、この実施形態では内部に直接差し込むことができない。ガラスパネル(n=約1.55)の場合、全反射の限界角は40度〜42度となる。他方の側では、表面法線18に対して角度σで入射する光線が、妨害されずに辛うじて通過することができる。これは、すでに非常に低い位置にある太陽に対応する。この実施形態での表面法線18は、水平面にも対応する。しかしながら、これは、日光防御装置の鉛直向きのファサード又は非鉛直向きの配置には当てはまらない(例えば、図6を参照)。
【0032】
したがって、図2は、一般形態の日光防御装置の実施形態に関連する角度を示す。図2の日光防御装置の構成は、図1の日光防御装置の構成と同一であり、接着フィルム7としてN=1.5の屈折率を有するPVBが用いられる。特定のプロファイル角σから、太陽はフェードアウトする。本例では、この場合、構造層5、6のストリップ12、13が水平に延びる南向きファサードを仮定する。図2では、単に例示として水平面19が表面法線18と平行に描かれている。
【0033】
角度α、β、及びσは、ファサード又は日光防御装置の表面法線18に対してではなく水平面19に対して測定されている。角度α、β、γ、及びσは、表面法線18に対して規定されている。傾斜したファサード(例えば、屋根のグレージング)では、表面法線18及び水平面19が対応しない。全ての角度が、個々の層の層平面又は日光防御装置の表面に対して、本例では図面又は紙面に対して垂直な向きの基準面に関係する。この基準面に入射しない太陽放射の場合、角度データは、基準面における放射率(radiation factor、Strahlungsvektor:放射ベクトル)の射影に適用される(プロファイル角)。
【0034】
4つの角度α、β、γ、及びσはそれぞれ、日光防御装置の表面法線18に対して規定されている。角度α及びγは、最も近くに位置する第1の構造層5のストリップの2つのストリップ縁に対する、第2の構造層6の各ストリップの上縁の位置を指定する。角度βは、第1の構造層5及び第2の構造層6の互いに最も近くに位置するストリップの下縁間の接続線の傾きを規定し、角度σは、第2の構造層6のストリップの下縁とその下に位置する第1の構造層(5)のストリップの上縁との間の接続線の傾きを規定する(図2を比較)。
【0035】
角度α、β、γ及びσは、以下の一般形態で角度α、β、γ、及びσから屈折則を用いて得られる(又はその逆)。
Sin(ξ)/sin(ξ)=nmaterial/nsurroundings
この場合、接着層7の屈折率は、ガラスの屈折率に非常によく対応すると仮定した。そうでない場合、境界面におけるさらなる屈折を考慮に入れなければならない。しかしながら、これは屈折則で容易に可能である。微細構造、すなわちマイクロストリップの場合、回折が現われるため屈折則自体が適用されない。しかしながら、ここで提案される構造は依然として用いることができる。この場合、それにもかかわらず太陽放射の十分なフェードアウトが保証されるように、全反射の限界角σlimitは、幾何光学から得られるものよりも幾分大きいと仮定しなければならない。
【0036】
角度βは、日光が層構造のストリップへの斜入射によって日光防御装置を通過することができる角度を示す。
【0037】
角度βは、屈折則に基づいてβに関して以下の角度、すなわち−20度≦β≦20度、特に好ましくは−10度≦β≦0度が得られるように設定すべきである。60度>|β|>20度の形態も同様に可能である。しかしながら、これらは好ましくない実施形態である。βに関する角度データは、ファサードの傾斜とは無関係に適用される。これらは、単に考えられる太陽の位置から得られる。
【0038】
角度αは、屈折則に基づいてαに関して以下の角度、すなわち−20度≦α≦90度、好ましくは0度≦α≦90度、特に好ましくは45度≦α≦90度が得られるように設定すべきであり、このとき、αは自動的にσlimitよりも小さい。最適には、αは90度、すなわちα=σlimitである。
【0039】
角度γに関しては、好ましくは以下の範囲、すなわち−30度≦γ≦80度、好ましくはσlimit≦γ≦80度、特に好ましくはσlimit≦γ≦σlimit+20度が選択される。最適な場合、γはσlimitと一致する。
【0040】
αがσlimitよりも大きな形態は、光が上方から差し込むことができないように第1の構造層の隙間又はスロットをさらに下方に位置付けなければならないため、好ましくない実施形態である。これは、内側の空き領域の面積の割合を小さくすることで、透明度を低下させる。γがσlimitよりも小さな形態も、太陽が上方から要素に差し込むことができるため、同様に好ましくない実施形態である。
【0041】
第1の層構造の構造要素又はストリップの距離Dは、−20度≦σ=σ≦70度、好ましくは0度≦σ=σ≦45度、特に好ましくは5度≦σ=σ≦25度のプロファイル角σから直射日光がフェードアウトするように、ファサードの傾斜とは無関係に選択するべきである。角度α、β、及びγに基づく寸法決定のように、これには、日光防御装置が用いられるファサードの傾斜がわかっている必要がある。
【0042】
図3は、本日光防御装置の可能な一実施形態のさらなる例を示す。図1及び図2とは対照的に、この実施形態では内側にさらなる光学的に透明な層列が設けられる。本例のこの第3の透明な層列は、ガラスパネル3及び例えばPVBの接着フィルム8から成る。したがって、図3は、構造層5、6が完全に密閉される3重(3-way)複合ガラスパネルを示す。
【0043】
図3の例では、光学的に透明な層としてn=1.5のガラスパネルの場合に、構造又はストリップの最適な形状が特定の寸法にされた。例示的な寸法及び角度は、図から得ることができる。中間のガラスパネル1が別の厚さである場合、ストリップ12、13の高さ及び距離はそれに従って変わる。角度は同じままである。
【0044】
図4及び図5は、ダブルグレージングに挿入される日光防御装置の可能な実施形態を専ら示す。この目的で、透明な層又はパネル1〜3と構造層5及び6とを有する層列は、ダブルグレージングの外側グレージング要素9を形成する。ガラスパネルである内側グレージング要素4と外側グレージング要素9との間には、気密シールされる中間空間10が形成され、これは例えば、厚さが16mmでアルゴンが充填され得る。図4の例では、外側グレージング要素9の内側には、付加的なコーティング11、例えば断熱コーティング(例えばLow−Eソフトコーティング)が設けられる。
【0045】
これに対して図5の実施形態は、ダブルグレージングと同じ構成を示すが、この場合、第2の内側グレージング要素4の外側にコーティング11が設けられる。従来のガラスパネルへの塗布が標準プロセスとなるため、コーティング11のこの配置はより費用効果的に実現することができる。外側グレージング要素に必要とされるようなその後の積層時に、コーティングが損傷を受ける危険がある。グレージング要素の外側に続いて施されるコーティングはさらに、特製の外側グレージング要素のために特殊プロセスを必要とするため、このコーティングを有する従来のガラスパネルほど費用効果的に利用可能ではない。
【0046】
南向きではないファサードでは、2つの構造層5、6のストリップ12、13は、図6によって示されるように鉛直面又は水平面から傾けられるべきである(W. Lorenz "The glazing unit for solar control, day lighting and energy conservation", Solar energy Vol. 70 No.2, PP 109-130, 2001を参照)。この図では、種々のファサード要素20が、図に示すコンパスの方位に関して異なる向きで隣り合わせて例示的且つ概略的に示されている。正確に南向きではないファサード要素の場合、様々な向きに関して図6から概略的に明らかであるように、垂直面又は水平面から構造層のストリップ12、13を傾けることが好ましい。
【0047】
好ましくは、日光防御装置全体は、内側から外側への所定の角度範囲の、より好ましくは下向きの透視が可能になるように具現される。しかしながら、内側層の1つ又は複数を透明ではなく透光性に具現することも可能である。透光性の実施形態では、構造は防眩及び日光防御としての役割しか果たさない。光は、外部の下から要素を通って入ることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ガラスパネル
2 第2の透明層
3 ガラスパネル
4 内側グレージング要素
5 第1の構造層
6 第2の構造層
7 接着フィルム
8 接着フィルム
9 外側グレージング要素
10 中間空間
11 コーティング
12 第1の構造層のストリップ
13 第2の構造層のストリップ
14 採光開口
15 上からの入射光
16 観察者
17 下から入射するグレージング光
18 表面法線
19 水平面
20 ファサード要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的に透明な誘電体層又は層列(1、7)上の不透明な又は一部のみ透光性の材料の第1の構造層(5)と、不透明な又は一部のみ透光性の材料の第2の構造層(6)とを備え、前記第1の構造層(5)及び前記第2の構造層(6)が、採光開口又は採光区域(14)及び遮光区域又は減光区域(12、13)が形成される構造になっている、日光防御装置、より好ましくはグレージングであって、
前記第2の構造層(6)は、前記光学的に透明な層又は層列(1、7)のうち前記第1の構造層(5)とは反対の側と接合され、前記2つの構造層(5、6)の構造は、前記第2の構造層(6)に対して垂直の向きの基準面で規定される所定の角度範囲で、該第2の構造層(6)に入射する光学的放射が前記2つの構造層(5、6)の相互作用によって遮断されるか又は弱められ、同じ前記基準面に関して異なる角度範囲で前記第2の構造層(6)に入射する光学的放射の一部が妨げられずに前記構造層(5、6)を通過することができるようなものであることを特徴とする、日光防御装置。
【請求項2】
前記第2の構造層(6)の前記遮光区域(13)は、太陽電池、より好ましくはアモルファス太陽電池から形成されることを特徴とする、請求項1に記載の日光防御装置。
【請求項3】
前記第1の構造層(5)の前記遮光区域(12)は、太陽電池、より好ましくはアモルファス太陽電池から形成されることを特徴とする、請求項2に記載の日光防御装置。
【請求項4】
前記第2の構造層(6)のうち前記光学的に透明な層又は層列(1、7)とは反対に位置する側は、第2の光学的に透明な誘電体層又は層列(2)と接合されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の日光防御装置。
【請求項5】
前記第2の光学的に透明な層又は層列(2)は、ガラスパネル又はプラスチックパネルであるか、又はこれらを含むことを特徴とする、請求項4に記載の日光防御装置。
【請求項6】
前記第2の構造層(6)は、前記ガラスパネル又はプラスチックパネルに施されることを特徴とする、請求項5に記載の日光防御装置。
【請求項7】
前記光学的に透明な層又は層列(1、7)は、接着フィルム(7)を有するガラスパネル又はプラスチックパネル(1)を含み、該ガラスパネル又はプラスチックパネル(1)は、前記接着フィルム(7)を介して前記第2の構造層(6)及び前記第2の光学的に透明な層又は層列(2)の前記ガラスパネル又はプラスチックパネルに接合固定されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の日光防御装置。
【請求項8】
前記光学的に透明な層又は層列(1、7)は、ガラスパネル又はプラスチックパネル(1)であるか、又はこれらを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の日光防御装置。
【請求項9】
前記2つの構造層(5、6)の構造は、垂直配置の場合に、上方からの入射光が遮断されるか又は弱められ、下方からの入射光が特定の割合で通過することができるようなものであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の日光防行装置。
【請求項10】
前記第2の構造層(6)の前記遮光区域又は減光区域(13)は、前記第1の構造層(5)の前記遮光区域又は減光区域(12)よりも小さな面積を占めることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の日光防御装置。
【請求項11】
前記第1の構造層(5)のうち前記光学的に透明な層又は層列(1、7)と反対の側は、第3の光学的に透明な誘電体層又は層列(3、8)と接合されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の日光防御装置。
【請求項12】
前記第3の光学的に透明な層又は層列(3、8)は、接着フィルム(8)を介して前記第1の構造層(5)及び前記光学的に透明な層又は層列(1、7)と接合されるガラスパネル又はプラスチックパネル(3)を含むことを特徴とする、請求項11に記載の日光防御装置。
【請求項13】
前記光学的に透明な層又は層列が接合されている前記2つの構造層(5、6)は、ダブルグレージングの外側グレージング要素(9)を形成し、該外側グレージング(9)と内側グレージング(4)との間に、ガス又はガス混合物が充填されている中間空間(10)があることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の日光防御装置。
【請求項14】
前記内側グレージング要素(4)は、前記中間空間(10)に向いている側に日光防御コーティング又は断熱コーティング(11)が設けられることを特徴とする、請求項13に記載の日光防御装置。
【請求項15】
前記2つの構造層(5、6)の前記遮光区域又は減光区域(12、13)は、互いに平行に延びるストリップを形成することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の日光防御装置。
【請求項16】
前記ストリップは、スクリーン印刷によって施されることを特徴とする、請求項15に記載の日光防御装置。
【請求項17】
前記ストリップは、接着ストリップとして施されることを特徴とする、請求項15に記載の日光防御装置。
【請求項18】
前記2つの構造層(5、6)のそれぞれ最も近いストリップの互いに面している上縁間の直線状の接続線が、前記基準面上で前記第1の構造層から始まって前記構造層(5、6)に対する前記表面法線(18)に対して角度αで延び、該角度γには、以下:−34度≦α≦60度、好ましくは0度≦α≦42度、特に好ましくは27度≦α≦42度、最適にはα=σlimitが適用され、σlimitは、前記全反射の限界角であることを特徴とする、請求項15〜17のいずれか1項に記載の日光防御装置。
【請求項19】
前記2つの構造層(5、6)の互いに最も近いストリップそれぞれについて、前記第2の構造層(6)の前記ストリップの上縁と前記第1の構造層(5)の前記ストリップの下縁との間の直線状の接続線が、前記基準面上で前記第1の構造層(5)から始まって前記構造層(5、6)に対する前記表面法線(18)に対して角度γで延び、該角度γには、−30度≦γ≦80度、好ましくはσlimit≦γ≦80度、特に好ましくはσlimit≦γ≦(σlimit+20)度、最適にはγ=σlimitが適用され、σlimitは、前記全反射の限界角であることを特徴とする、請求項15〜18のいずれか1項に記載の日光防御装置。
【請求項20】
前記2つの構造層(5、6)のそれぞれ最も近いストリップの互いに面している下縁間の直線状の接続線が、前記基準面上で前記第1の構造層(5)から始まって前記構造層(5、6)に対する前記表面法線(18)に対して角度βで延び、該角度βには、−34度≦β≦60度、好ましくは−10度≦β≦15度、特に好ましくはβ=0度が適用されることを特徴とする、請求項15〜19のいずれか1項に記載の日光防御装置。
【請求項21】
前記水平面(19)に対する前記表面法線の固定された向きで前記日光防御装置を用いる場合、前記第1の構造層(5)の隣接ストリップそれぞれの上縁と下縁との間の距離Dが、−20度≦σ≦70度、好ましくは0度≦σ≦45度、特に好ましくは5度≦σ≦25度の太陽プロファイル角σからの太陽放射が前記構造層(5、6)の相互作用によって遮断されるように選択されることを特徴とする、請求項15〜17のいずれか1項に記載の日光防御装置。
【請求項22】
前記第1の構造層(5)及び/又は前記第2の構造層(6)は、40%以下、好ましくは10%以下、特に好ましくは3%以下の透光性を有する材料から形成されることを特徴とする、請求項15〜21のいずれか1項に記載の日光防御装置。
【請求項23】
前記第1の構造層(5)及び/又は前記第2の構造層(6)は、前記材料の全透過度の20%未満になる指向性拡散透過度を有する材料から形成されることを特徴とする、請求項22に記載の日光防御装置。
【請求項24】
前記第1の構造層(5)及び/又は前記第2の構造層(6)は、切り替え可能な透過度を有する材料から形成されることを特徴とする、請求項15〜23のいずれか1項に記載の日光防御装置。
【請求項25】
前記切り替え可能な透過度を有する前記材料は、エレクトロクロミック又はガスクロミック材料であることを特徴とする、請求項24に記載の日光防御装置。
【請求項26】
建物のグレージング又はグレージングの一部としての、請求項15〜25のいずれか1項に記載の日光防御装置の使用。
【請求項27】
ファサード要素又はファサード要素の一部としての、請求項15〜25のいずれか1項に記載の日光防御装置の使用。
【請求項28】
手すりカバーとしての、請求項15〜25のいずれか1項に記載の日光防御装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−541623(P2009−541623A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516883(P2009−516883)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【国際出願番号】PCT/DE2007/001064
【国際公開番号】WO2008/003281
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(591037214)フラウンホッファー−ゲゼルシャフト ツァ フェルダールング デァ アンゲヴァンテン フォアシュンク エー.ファオ (259)
【Fターム(参考)】