説明

角膜の再上皮形成を促進できる粘膜付着性多糖を含有する眼科用組成物

角膜上皮に対する保護活性を有するアラビノガラクタンを含有し、角膜病変の回復を刺激する人工涙として使用するのに特に適切で、且つまた、コンタクトレンズ使用者にとって特に有用であって、水溶液中に1重量%〜10重量%のアラビノガラクタン、及び可能なその他の賦形剤、中でも、張性調節剤、pH修正剤、緩衝剤、及び塩化ベンザルコニウム以外の保存剤を含有する眼科用溶液。本発明による組成物は、実質的に無視してよい粘度を有するが、適用区域における相当の耐久時間を確実にするのに十分な粘膜付着性を有する。良好な許容性に加え、前記組成物は、かなりの再上皮形成能力を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角膜の再上皮形成を促進できる粘膜付着性多糖を含有する眼科用組成物に関する。より詳細には、本発明は、角膜上皮に対して保護作用を有するアラビノガラクタン類を含有し、角膜病変の回復を刺激するための人工涙液として使用するのに特に推奨され、且つコンタクトレンズを装着している人に対して特に有用である眼科用溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、角膜は、眼球の繊維質被膜の前方部分であり、その中で、残りの部分は強膜から構成されるので、角膜は、ほんの6分の1を構成し、この2つの構造は、連続し且つ隣接している。実際、角膜は、強膜のそれに比較してより小さい曲率半径を有し、その結果、僅かに前方に突き出て見える。透明性及び無血管性というその特有の特徴のため、及びそれを完全な凹凸レンズとしているその形状のため、角膜は、眼の光屈折系の欠くことのできない要素を構成している。
【0003】
その前方表面は、凸状楕円形であり、垂直直径より僅かに大きな水平直径を有し、それゆえ、これらの2方向で異なる曲率半径を有する。この相違は、生理学的乱視を引き起こす。後方表面は、凹状円形であり、前方表面とは異なり、すべての方向で同一の直径及び半径を有する。角膜の厚さは、中央領域の約0.5mmから周辺領域の約0.7mmに及ぶ。
【0004】
組織学的に、角膜は、外側から内側に向かって、次の通り、すなわち、上皮、ボウマン膜、ストロマ、デスメ膜及び内皮である、5つの層から構成される。
【0005】
角膜は、完全透明性及び空気とのその接触表面の平坦性のおかげでその光学的機能を遂行する。後者の特徴は、上皮を覆っている涙膜(涙液膜)の存在によるものであり、上皮それ自体は、表面層に微小撚からなる網が存在するため粗い。涙液膜は、上皮を、滑らかで均一なものにし、高度の光学的品質をもつようにする。
【0006】
涙液膜は、さらに、球結膜及び眼瞼結膜を覆い、外側から内側に向かって次の通り、すなわち、脂質層、水層及び粘液層である3つの重なり合った層から構成される。結膜上皮の杯細胞によって産生されるムチンが、上皮の全表面を滑らかにし、上皮上に膜の水性成分を均一に分配することを可能にし、マイボーム及びツアイス腺が分泌する脂質層は、涙液膜の蒸発を防止する機能を有する。
【0007】
既に言及したように、透明性は、角膜の基本的特性である。これは、この組織の絶対的な無血管性、ストロマの構造的特徴によって、並びに角膜自体の水の代謝回転及び脱膨満(deturgescence)を支配し、その吸水膨潤を防止し、水和率を約78%の正常値に維持するある特殊な生理学的過程によって可能になる。
【0008】
角膜のその他の生理学的特徴は、その鏡面性(その表面での光反射)であり、これは、上皮の完全性、及び透過性(水の代謝回転及び/又は薬物などの外来物質の浸透に対して必須の機能)に関連している。
【0009】
種々の刺激に対するかなりの感受性は、最終的に、膜の大きな神経刺激に関連しており、それは、高齢で、及び若干の炎症性及びジストロフィー性の変性変化で低下する。
【0010】
最も一般的に見出される角膜変化は、疲労性、ジストロフィー性、又は変性的な性質をもつ過程における初期症状、或いは明らかな疾患状態を意味することができる。機械的外傷の性質をもつ変化の中には、角膜上皮の表面摩擦による、或いは金属、ガラス又はプラスチックの粒子、木材又は植物の残渣などの外来物体との接触による角膜擦過傷;特定の力で眼に入り、ある深さまで貫通する物体による裂傷及び穿孔;角膜上皮層の破損又は剥離という自然的症状の発現からなる再発性角膜びらん;弱酸又は弱塩基、熱又は紫外線により引き起こされる火傷がある。
【0011】
角膜上皮の破壊は、いかなる箇所でも、その一部で、潜在的に破壊的な結果を伴う病原体侵入の危険を増大させる。結膜は、実際、子宮外生命のまさに最初の瞬間から、微生物がコロニーを形成する身体組織の1つであり、連鎖球菌(緑色連鎖球菌(St.viridans))、ブドウ球菌(表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、黄色ブドウ球菌(S.aureus))、好血性細菌、プロピオニバクテリウムアクネ(Propionibacterium acnes)などの常在性微生物の中には、真性病原体と考えられるすべての特徴を有するものもある。
【0012】
結膜の生態系は、バランスが保たれ、生物学的に活動的である傾向があり、この平衡を乱す組織、微生物又は環境因子が現われない限り、このように留まり、それによって、結膜の環境を微生物又は宿主にとって好ましい領域にする。該組織の諸因子は、結膜組織の組織学的構造、及び涙膜を構成する分泌物によって決まり、これらの諸因子は、細菌、ウイルス及び菌類によってもたらされる各種角膜感染症の病理発生における共同原因として作用する。これらは、特に角膜病変の存在下で角膜組織を侵し、角膜潰瘍に至る可能性のある極めて重大で無能力にさえする類の角膜炎を起こす場合がある。細菌性角膜炎は、急性疼痛、上皮及び時によっては角膜ストロマの潰瘍、並びに結膜分泌物によって特徴付けられる。この種の眼病変の病因病原体は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、肺炎球菌(St.pneumoniae)、緑膿菌(Ps.aeruginosa)、シトロバクター(Citrobacter)、クレブシエラ(Klebsiella)、エンテロバクター(Enterobacter)である。さらに、マイコバクテリウム・ケロネイ(Mycobacterium chelonei)及びマイコバクテリウム・フォーチュイタム(Mycobacterium fortuitum)は、慢性角膜潰瘍性病変を引き起こす可能性がある。糸状菌型の病因病原体に関して、真菌性角膜炎は、角膜上皮病変上にコロニーを形成する繊維状腐生植物菌及び酵母によって主として引き起こされる。最後に、アカントアメーバ(Acanthamoeba)による角膜炎は、この寄生体によって引き起こされる慢性角膜炎の稀な形態(視力を脅かす可能性もある)であり、以前に潰瘍形成を呈示している対象における角膜ストロマの輪状多病巣性化膿で特徴付けられる。
【0013】
組織破壊又は物質の喪失を引き起こすすべての角膜変化(外傷性、炎症性又は変性型のいずれか)は、この膜の無血管性のために、その他の組織のそれとは一部異なる生理学的機構により迅速に修復される。病変の特徴による影響を受け、敗血症性潰瘍形成の存在下で確かにより問題である治癒過程は、この層に限定された表在性傷害の場合のみならず実質組織に影響を及ぼす場合も、常に表皮レベルで始まる。すなわち、続いて起こるコラーゲン再生現象の発現を調節するのに必要な「表皮キャップ」の形成として例示できるストロマ病変の治癒における上皮の相互作用が存在する。
【0014】
単なる表皮創傷又は擦過傷は、さらにこの領域の細胞要素の顕著な有糸分裂活性のおかげで迅速に修復される。実際、外傷の瞬間に、表面細胞の剥離、及び無傷の隣接細胞の傷害区域への変位及び遊走という生理学的機構の一時的中断が起こる。中断は、欠陥区域が完全に覆われ、上皮要素の再生が、正常な構造的特徴の復元を確実にする時点で終了する。
【0015】
変化が上皮である場合、その完全な回復は、膜の完全な鏡面性及び透明性の復元を保証する。
【0016】
角膜擦過傷の特殊ではあるが稀ではない原因が、コンタクトレンズである。擦過傷の原因には、生理学的、毒物的又は機械的な類の種々の諸因子が含まれ、コンタクトレンズによって誘発される角膜擦過傷は、特に、それらの使用、それらの挿入及び取り外しの困難性、レンズ−角膜関係の問題、損傷レンズ、又はレンズの下に捕捉された外来性物体による可能性がある。これらの擦過傷は、硬質だけでなく軟質レンズの使用からも由来する可能性があるが、硬質レンズの使用者においてより一般的である。500名の軟質コンタクトレンズ使用者で実施された研究は、彼らの3分の1が、眼のことで感染症をもたらす可能性のあるかなり深刻な問題を抱えており、彼らのほぼ50%が、少なくとも一眼に軽い病変の徴候を有することを示した(R.J.Derickら、CLAO J.、1989年、10月〜12月、15(4)巻、268〜70頁)。
【0017】
角膜擦過傷は、かくして、誰をも襲う可能性のある問題であるが、コンタクトレンズは、疑いなく、角膜上で摩擦を引き起こし、且つ、発症の可能性を高め、コンタクトレンズの使用者は、非使用者の約3倍多い角膜病変を患う。
【0018】
コンタクトレンズの使用は、また、レンズが角膜上皮に対する正常な酸素供給を妨害することに由来する、或いは巨大乳頭結膜炎若しくは角膜血管新生、又はより一般的なドライアイ症候群の場合などの生理学的状態に由来する一連のその他の問題を引き起こす可能性がある。「ドライアイ」又は乾性角結膜炎としても知られている後者は、涙液の量及び品質の低下によって引き起こされる障害である。その病理の典型的な症状は、眼の刺激及び灼熱感、砂又は外来性物体の感覚、羞明、疼痛及び視覚のかすみである。長期に及ぶ場合には、視力自体を危うくする潰瘍形成が存在する可能性がある。
【0019】
ドライアイを治療するため又はその関連症状を低減するため、多くの人工涙液製剤が、売り出され、涙液代替物を提供し、且つ眼の乾燥感を軽減するために、角膜上に(又は結膜円蓋中に)滴下することによって周期的に適用される。角膜表面上での耐久性を高め、さらには、良好な許容性をもたせるために、これらの製剤は、一般には、高分子量の薬剤(合成、半合成又は天然起源の通常は水溶性のポリマー)を添加することによって粘性を付与される。高い角膜前耐久時間をもたせるために、涙液代替物は、ムチン分散液の特性にできるだけ近い諸特性をもたなければならない、すなわち、できるかぎり多く粘液模擬物質のように作用すべきであるという仮定のもとに、セルロース誘導体(特に、カルボキシメチルセルロースのようなセルロースエステル類、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロースエーテルのアルコール誘導体)、グリコサミノグリカン(特に、多くの人及び動物の組織及び体液中に存在し、眼科用製剤中で広く使用される多糖であるヒアルロン酸)、適切なレオロジー特性を有する多糖類(タマリンドゴムから抽出される多糖、TSPなど)などの天然起源の高分子化合物をベースにした組成物が選択される。
【0020】
さらに、要求される角膜表面の潤滑特性を提供できるようにするため、これらの涙液代替物は、ある一定の粘度(たとえ、好ましい溶液中でも、この粘度は、瞬きする場合のように製品を剪断応力にさらした場合に、劇的に低下する)を常に有し、視力のかすみを伴い、且つ角膜上又は眼瞼の縁端に残留物を残す可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
コンタクトレンズの使用に関わる前述の諸問題に関して、涙液補給物として使用される可能性のある製品が、視野を不鮮明にしたり、或いはレンズ及び眼瞼縁に残留物を残したりしないように、低い粘度(十分に許容されること及び眼に対して刺激的効果をもたないことに加え)を有することは、代わりに極めて重要である。角膜上皮の完全性を確実にし、コンタクトレンズ材料とのなんらかの否定的な相互作用及び/又は反応を防止できることは、このような製品にとって同様に重要である。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によれば、特定の天然多糖ポリマー、アラビノガラクタン類を含有し、粘度を実質上無視できるように製剤された眼科用溶液が、十分に許容されることに加え、角膜表面から短時間で流れ去ることを回避するのに十分な粘膜付着性を所持し、再上皮形成を促進する顕著な能力を所持することが見出された。実際、本発明と関連した研究の枠内で、傷害された上皮をもつ眼に適用されたこれらの組成物は、回復を加速することが立証された。結果として、コンタクトレンズの使用と関連して提案された組成物は、発生する可能性のある角膜擦過傷の治癒を刺激し、上皮の傷害及び任意の合併症の悪化を防止することができる。既に言及したように、目的に対して製品を革新的且つ理想的にする、製品のもう1の重要な特徴は、それが、適切な粘膜付着特性を所持するが、水溶液の粘度を変えず、従って、コンタクトレンズを装着している対象及び非使用者の両者において視覚を妨害しないことである。同時に、その粘膜付着特性は、製品が眼の結膜及び角膜の表面を覆っている粘液との各種の結合を確立することを可能にし、これらの結合は、眼前方領域における製品のより大きな耐久性を可能にし、かくして、製品を特徴付ける再上皮形成及び水和活性を実行することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
角膜表面用潤滑ポリマーとしてのアラビノガラクタンを含有する人工涙液として使用するための眼科用溶液は、米国特許第4039662号(Hechtら、Alcon Laboratories Incへ譲渡)中に既に記載されている。しかし、この場合、多糖の再上皮形成特性は、強調又は活用されず、とりわけ、その有用性は、製剤中に塩化ベンザルコニウムが必ず存在することが条件付けられた。この文献の記載によれば、実際、塩化ベンザルコニウム(殺生物剤として眼科用組成物中で既に使用されている物質)を組み込むことは、多糖と組み合わせた、又は多糖と複合体を形成したこの化合物が、角膜表面に吸収された状態での製品の耐久性の原因であり、その結果、角膜前方膜の安定剤としてのその機能を遂行すると考えられるので、提案されている製剤にとって決定的に重要な要素である。この観察に沿って、該引用文献は、アラビノガラクタンをベースにし、且つ必須成分として塩化ベンザルコニウムを含有する眼科用溶液を提案している。
【0024】
一方、本発明の枠組み中で実施された研究によれば、アラビノガラクタン類によって示される再上皮形成及び角膜表面の保護特性、並びにほとんど粘度がなくともアラビノガラクタン類に角膜前方膜における高い耐久時間を付与するそれらの粘膜付着特性は、塩化ベンザルコニウムが共存することをいかなる点でも条件としていない。従って、本発明によるアラビノガラクタン類を含有する再上皮形成組成物は、該組成物が保存剤の包含をたとえ必要としても、その目的に適した多くのその他の製品を使用できるので、塩化ベンザルコニウムの存在を除外する。
【0025】
周知のように、アラビノガラクタン類は、10,000〜120,000ダルトンの範囲の分子量、及びガラクトピラノース単位の鎖から構成される中心構造を有する長鎖で密に分枝した多糖の部類に属す。アラビノガラクタン類は、天然には、各種の微生物系、特にマイコバクテリア中に見出され、そこでは、ペプチドグリカン及びミコール酸と複合して細胞壁を形成している。多くの食用及び非食用植物は、主として糖タンパク質の形態でのアラビノガラクタンの豊富な供給源である。ムラサキバレンギク(Echinacea purpurea)、バプティシアティントリア(Baptisia tintoria)及びニオイヒバ(Thuja occidentalis)など、免疫刺激特性が認められている多くのハーブ類は、かなりの量のアラビノガラクタンを含有する。カラマツ(Larex)属植物、特にセイブカラマツ(Larex occidentalis)、さらにはダフリアカラマツ(Larex dahurica)(中央アジア起源)、例えばヨーロッパカラマツ(Larex dicidua)(ヨーロッパ)及びカラマツ(Larex leptolepis)(日本)の木質組織は、特に、アラビノガラクタンに富む。実際、カラマツ材は、アラビノガラクタンの最も一般的な工業的供給源であり、この多糖は、この供給源から抽出され、化粧品工業などの工業的目的のためのみならず、とりわけ、飲料中の繊維質に富む食餌及び栄養成分として、さらには免疫調節剤として食品工業で使用される。
【0026】
従って、本発明は、具体的には、塩化ベンザルコニウムを含有しないことで特徴付けられる、水溶液中に1重量%〜10重量%のアラビノガラクタンを含有し、角膜保護活性及び再上皮形成活性を有する涙液代替物として使用するための眼科用組成物を提供する。本発明により提案される使用に対して最も適切なアラビノガラクタン濃度は、具体的には、水溶液中、3重量%〜5重量%の範囲の多糖濃度である。
【0027】
本発明の好ましい実施形態によれば、提案される組成物中で使用されるアラビノガラクタンは、薬学上許容される等級のカラマツからのアラビノガラクタンである。詳細には、本発明による製剤で優先的に使用されるアラビノガラクタン(アラビノガラクタンCAS#9036−66−2)は、FiberAid(登録商標)AGの商品名を有し、LAREX(登録商標)社(Cohasset、ミネソタ州、米国)によって米国特許第5756098号に従って製造される。このアラビノガラクタンは、微細な白色粉末(分子量=45kダルトン)の形態を呈し、冷水に対して分散可能であるが完全可溶ではない。
【0028】
カラマツから単離されるすべてのアラビノガラクタン類は、窒素を含まない多糖である。分子の3分の1は、(1→3)−β−D−ガラクトピラナン型の主鎖から構成され、残りは、各ガラクトース単位に対して(1→6)の位置で結合したその大きさが単糖からオリゴ糖まで変化する側方基からなる。側方基の分布は一様でない。しばしば、側方基は、二糖β−D−Galp−(1→6)−β−D−Galp又はβ−L−Arap−(1→3)−α−L−Arafである。頻度は少ないが、モノマーβ−D−Galp又はモノマーα−L−Arafも存在する。ガラクトース及びアラビノース単位は、約6:1のモル比で存在する。
【0029】
アラビノグルカンに関する形態学的研究は、このポリマーが大きな配座自由度を有し、多くの異なる形状を取り得るが、主鎖は、一般に、柔軟性のない三重スパイラルらせん構造を有し、一方、側方基は、多くの露出したヒドロキシ基を有する柔軟な分枝を形成する(R.Chandrasekaran、S.Janaswamy、2002年、Carbohydrate Research)。このことが、眼のムチン分子との水素結合を確立することを可能にするポリマーの粘膜接着特性の根底にある理由であると考えられる。
【0030】
本発明の若干の具体的実施形態によれば、眼科用組成物は、アラビノガラクタンに加えて、溶液に所望の容量オスモル濃度値を付与する1種又は複数の張性調節剤も含有する。提案される眼科用溶液は、涙液に対して等張性又はわずかに低張性でよいので、張性調節剤は、組成物中に容量オスモル濃度が150〜300mOsm/Lの範囲である溶液を提供するような量で存在する。好ましくは、前記の1種又は複数の張性調節剤は、マンニトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、デキストロース、ホウ酸、及びソルビトールからなる群から選択される。
【0031】
アラビノガラクタンは、種々のpH値で緩衝化された水溶液中でも安定であることが判明したので、医薬分野で既知である成分と同様に添加できるその他の成分は、pH修正剤としての1種又は複数の眼科的に許容される酸又は塩基、及び/又は1種以上の緩衝剤である。詳細には、使用できる緩衝剤は、リン酸塩緩衝剤、ホウ酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、重炭酸塩緩衝剤、トリズマ緩衝剤(トリ−ヒドロキシメチル−アミノメタン)からなる群から選択できる。さらに、その他の緩衝剤系も、本発明による組成物中で有利に使用できる。
【0032】
製品を1回投与単位で包装しない場合、組成物は、保存剤、及び塩化ベンザルコニウム以外の抗微生物剤を含むこともできる。製品と適合性のある可能な保存剤は、特に、メルチオレートナトリウム又はチメロサール、硝酸又は酢酸フェニル水銀、フェネチルアルコール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、酢酸又はグルコン酸クロルヘキシジン、及びクロロブタノールである。
【0033】
最後に、エデト酸塩又はEDTAのようなキレート化剤でさえ、必要なら、本発明によるアラビノガラクタン類を含有する組成物に添加できる。
【0034】
本発明の別の態様によれば、本発明は、また、角膜保護及び再上皮形成活性を有する眼科用組成物を製造するための、水溶液中に1重量%〜10重量%、好ましくは3重量%〜5重量%のアラビノガラクタンを含有する眼科用溶液の使用を提供する。既に言及したように、前記眼科用組成物の製剤は、なんの問題もなく、塩化ベンアルコニウムの使用を排除できる。
【0035】
より具体的には、本発明の教示によるアラビノガラクタンの使用で実現される眼科用組成物は、コンタクトレンズ使用者に対して指示される涙液代替物である。いくつかの具体的な実施形態において、前記の眼科用組成物は、角結膜の病変及び炎症の治療のために指示される涙液代替物であり、後者の場合、より具体的には、コンタクトレンズの使用によって引き起こされた角膜擦過傷の治療のために推奨される眼科用組成物でよい。
【0036】
本発明による角膜保護及び再上皮形成活性を有する涙液代替物として使用できるアラビノガラクタン含有組成物の若干の例を、非制限的例を挙げることによって以下に示す。
組成物1
アラビノガラクタン 2%w/w
マンニトール 300mOsmol/kgになるまで
リン酸塩緩衝液(pH7.4) 100%w/wになるまで
組成物2
アラビノガラクタン 3%w/w
マンニトール 300mOsmol/kgになるまで
脱イオン水 100%w/wになるまで
組成物3
アラビノガラクタン 6%w/w
NaCl 300mOsmol/kgになるまで
脱イオン水 100%w/wになるまで
組成物4
アラビノガラクタン 2%w/w
マンニトール 300mOsmol/kgになるまで
硝酸フェニル水銀 0.002%w/w
リン酸塩緩衝液(pH5.9) 100%w/wになるまで
組成物5
アラビノガラクタン 5%w/w
NaCl 300mOsmol/kgになるまで
メルチオレートナトリウム 0.008%w/w
脱イオン水 100%w/wになるまで
【0037】
前記組成物を調製するため、正確に重量を測定したポリマーを、脱イオン水又はリン酸塩緩衝液に分散し、完全に溶解するまで撹拌しながら保持した。このようにして得られた溶液に、適切な量のその他の賦形剤(マンニトール、NaCl及び/又は保存剤)を、それらがさらに完全に溶解するまでさらに撹拌しながら添加した。
【0038】
このようにして得られた組成物は、0.22μmの膜を通して濾過することによって滅菌できる。
【0039】
本発明の具体的特徴、及びその利点は、単に例証目的のために以下で説明するその具体的実施形態の1つを、それらに関して実施された実験の結果、及び従来技術と比較するためのデータと一緒に参照することによってより明白となろう。若干の実験結果は、また、添付図面の図中に例示される。
【実施例】
【0040】
(粘度試験)
異なる濃度(0.2、0.5、0.8、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10重量%)の、以後AGと呼ぶアラビノガラクトース溶液(LAREX(登録商標)、Cohasset、ミネソタ州、米国のFiberAid(登録商標)AG)を、共軸円筒測定体(Z40及びZ41)を備えたRheostress RS150(Haake)回転粘度計を使用して、25℃の一定温度での粘度試験に供した。溶液の粘度値を、添付図面の図1にグラフで報告する。
【0041】
0〜200sec−1の範囲の速度勾配値についてレオグラムを実施し、グラフから、Rheowinソフトウェアを使用する数学的処理によって剪断応力(τ)と速度勾配(γ)の間の相互関係を評価した。このようにして、AG製品の溶液は、ニュートンレオロジー的挙動を有し、チキソトロピーを示さないことが見出された。
【0042】
AG溶液のニュートン挙動は、それら溶液の非粘性(コンタクトレンズを装着時の眼に適用する予定の溶液の場合に望ましい特徴)のためであり、その結果、レンズと角膜の間の空間中へ浸透する液体は、視覚のいかなるかすみも引き起こさない。
【0043】
(粘膜付着試験)
1.固体マトリックス上での粘膜付着試験
本発明によるアラビノガラクタン(FiberAid(登録商標)AG、Larex(登録商標))の粘膜付着特性を、2つの粘膜表面(その間に供試サンプルを置く)を引き離すのに必要な力を測定することによって評価した。粘膜表面は、濾紙に吸着されたブタ胃ムチン(TCI、東京)の25%水性分散液から構成した(Saettoneら、1989年、Int.J.Pharm.、51巻、203〜212頁)。
【0044】
使用する装置は、微量測定用スケール、可動台座、及び2つの表面(供試サンプル及び粘膜層)を引き離すのに必要な力を伸びの関数として記録できるコンピューター処理装置から構成した(ソフトウェアTP5008、TiePie Engineering、Leeuwarden、オランダ)。
【0045】
付着の仕事量は、適切な量のポリマー材料を液圧プレス(Perkin−Elmer)を使用して3,000kg/cmの圧力で圧縮することによって調製した直径13mm、厚さ1mmの供試多糖ポリマーからなる固体マトリックスに関して測定した。
【0046】
得られた結果を、同一方法で調製した粘膜付着剤として文献で既知のTS−多糖(TSP)を用いた同一サイズの固体マトリックスに関して測定された付着の仕事量と比較した。得られた結果を次表で報告する。
【0047】
【表1】

【0048】
2.ムチン−ポリマー付着結合強度のレオロジー的評価
アラビノガラクタン(AG)の粘膜付着特性をより詳細に調べるために、ポリマーを添加した後にムチン分散液中に引き起こされる粘度変化を測定することからなるSaettoneら(Saettoneら、1994年、Journal of Ocular Pharmacology、10巻、83〜92頁)及びHassan及びGallo(Hassan、Gallo、1990年、Pharm.Res.、7巻、491〜495頁)の方法に従った。この方法により、生体付着よる粘度要素ηを、式η=η−η−η(ここで、η、η及びηは、それぞれ、系、ムチン及びポリマーに特有な粘度係数)により計算した。ηの値は、続いて次式:Δη/η=η/ηにより正規化した。
【0049】
次いで、ムチン−ポリマーの相互作用による粘度変化の測定を、i)15%のムチン単独(η)、ii)それらのそれぞれの有効濃度でのAG及び参照として使用されるその他のポリマー(η)、iii)前に示した同一濃度でのムチン−ポリマー混合物(η)、を含有する水溶液について実施した。
【0050】
使用する組成物は次の通りとした。すなわち、
1.15%w/wのブタ胃ムチン水溶液(MGS、TCI、東京)
2.5%w/wのAG水溶液(FiberAid(登録商標)AG、LAREX(登録商標))
3.0.5%w/wのTSP水溶液(Farmigea、Pisa)
4.0.2%w/wのヒアルロン酸水溶液(Chemofin、Milano)
5.15%w/wのムチン及び5%w/wのAGからなる水性分散液
6.15%w/wのムチン及び0.5%w/wのTSPからなる水性分散液
7.15%w/wのムチン及び0.2%w/wのヒアルロン酸からなる水性分散液。
【0051】
粘度測定は、共軸円筒測定体(Z40及びZ41)を備えたRheostress RS150(Haake)回転粘度計を使用して32℃の一定温度で実施した。0〜500sec−1の範囲の速度勾配値に対してレオグラムを得た。
【0052】
ポリマー溶液は、ニュートン挙動を示し、得られたグラフを、Rheowinソフトウェアを用いて実施される数学的処理により剪断応力(τ)と速度勾配(γ又はDで示される)の間の線形相互関係を評価するのに使用した。
【0053】
ヒアルロン酸、ムチン及びムチン−ポリマー分散液は、擬似塑性的挙動を示す。Rheowinソフトウェアを用いて実施され、得られるグラフの数学的相互関係は、次の通り、すなわち、τ=aDである。Dの特定値を選択し、次いでそれぞれの式からτを得ることによって、ニュートン製剤の粘度及び擬似塑性的製剤の見掛け粘度を計算した(D=200s−1)。
【0054】
すべての組成物に対する粘度値を下表2に報告し、使用したポリマーに対するパラメーターΔη/ηの値を表3に報告する。
【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
結果が示すように、AGが5%w/wの水溶液は、対照としたポリマー(TPS及びHAに対してそれぞれ9.16mPa・s及び24.40mPa・s)よりもはるかに低い粘度(1.38mPa・s)を呈し、AGの正規化値Δη/ηは、TSPの値と同様の大きさをもつ。このことは、AGが、眼の結膜及び角膜表面を覆っている粘液と各種の相互作用を形成できることを示している。従って、視野を不鮮明にせず、且つコンタクトレンズの使用を妨げない非粘性ポリマーではあるが、AGは、眼前方領域における製品の長期耐久性、並びにそれによる角膜表面の長期保護及び水和を可能にする相互作用を確実にする。
【0058】
(コンタクトレンズ−ポリマー相互作用の研究)
コンタクトレンズと研究に供されるポリマーとの相互作用の程度を評価するため、アラビノガラクタンの蛍光性誘導体(FITC−AG)を以下で報告するように調製した。
【0059】
正確に重量を測定したアラビノガラクタン(FiberAid(登録商標)AG、Larex(登録商標))1gを、数滴のピリジンを含有する10mLのジメチルスルホキシドに溶解した。この溶液に0.1gのイソチオシアン酸フルオレセイン(Sigma−Aldrich、ドイツ)を、続いて20mgのジラウリン酸ジブチル錫(Sigma−Aldrich、ドイツ)を添加した。このようにして得られた混合物を95℃で2時間加熱した。沈殿させ、エタノールで洗浄して未反応物を除去した後、FITC−AGを、濾過して80℃で乾燥した(A.N.de Belder及びK.Granath、1973年、Carbohydrate Research、30巻、375〜378頁)。
【0060】
試験のため、脱イオン水で次の溶液、すなわち、
1.FITC−AGが5%w/w
2.フルオレセインナトリウム(SF)(Sigma−Aldrich、セントルイス、米国)が0.0223%w/w
の水溶液を調製した。
【0061】
SF溶液の濃度は、5%w/wFITC−AG溶液と同じ蛍光を有するように選択した。試験には1日使い捨てのソフトコンタクトレンズ(Focus Dailies(登録商標)、Ciba Vision、ドイツ)を使用した。
【0062】
コンタクトレンズを、50μLの5%w/wFITC−AG溶液又は0.0223%w/wSF溶液を添加した、1mLのタンパク質不含人工涙液中に浸漬し、30分間静置した。次いで、レンズを、100mLの人工涙液中に15分間、磁気撹拌機でゆっくり撹拌しながら浸漬することによって洗浄した。次いで、処理したレンズを、365nmのウッドランプを用いて対照としての未処理のコンタクトレンズと比較して観察した。
【0063】
いずれのレンズも、認識可能な蛍光の痕跡を示さず、AGポリマーは、採用した条件でレンズ表面上に残留しないことを示している。
【0064】
人工涙液は、mg/脱イオン水100mLで表現して次の組成を有した、すなわち、MgClが4.75、CaClが7.97、KHCOが260.00、NaClが754.00(Burgalassiら、1999年)。
【0065】
(シダ状結晶形成試験)
涙液の最内側層は、通常の状態では結膜の杯細胞によって産生される粘液質の糖タンパク質から構成される。粘液の最も重要な物理的特徴の1つが、粘液を室温で蒸発させた場合にシダ状の形態で結晶化するその能力である。
【0066】
涙粘液結晶化の各種態様は、涙膜の安定性の条件に関する有用な指標をもたらすことができ、4つのタイプに分類される。すなわち、
タイプI:シダ状結晶形成は、個々のシダ状結晶の間に少しも空間がない一様な様式で存在する。シダ状結晶は、大きく且つ密に分枝している。
タイプII:シダ状形態での結晶化は、なお豊富であるが、個々のシダ状結晶は、大きさがより小さく、且つ広範には分枝していない。シダ状結晶の間にかなりの空間がある。
タイプIII:シダ状結晶形成は、部分的な様式で存在し、シダ状結晶は小さく且つ分枝は乏しく、シダ状結晶の間にかなりの空間がある。
タイプIV:シダ状結晶形成は存在せず、剥離細胞と混合された変性粘液材料を象徴する繊維又は集塊がある。
【0067】
最初の2種のシダ状結晶形成は、良好な状態の粘液層及び涙膜を有する正常な眼で典型的である。タイプIIIは、過渡期の1つの形態であると思われ、粘液がその完全性及び機能を維持することが困難な状態を示す。タイプIVは、涙液の粘液成分の大きな変化を示す。
【0068】
タイプI及びタイプIIに類似のシダ状結晶の形態で結晶化するすべての眼科用溶液は、結膜の杯細胞が産生する粘液質糖タンパク質に構造的に類似している。
【0069】
従って、シダ状結晶形成試験は、AGが、眼表面に存在する粘液に類似した特徴を伴って結晶化する潜在的能力を評価するために実施される。試験は、10μLの2.5%w/wAG溶液及び2μLの人工涙液から構成される前以て調製された混合物を、顕微鏡スライド上、室温(25±1℃)で24時間蒸発させることからなる。
【0070】
2.5%AG溶液は、撹拌しながら、脱イオン水中に適切な量のポリマー(FiberAid(登録商標)AG、Larex(登録商標))を分散させることによって調製した。蒸発後、残留物を、10×拡大レンズを備えた偏光Reichert−Jung Microstar顕微鏡を使用して観察した。
【0071】
AG溶液を結晶化すると、ヒトの涙液で得られるものに極めて類似したシダ様の分枝構造が生じた。得られた結果(レオロジー相互作用試験でも確認された)は、研究に供されたポリマーが、眼粘液の糖タンパク質構造と適合するという仮説を支持している。従って、病理学的理由により眼粘液が不足している場合に、該ポリマーが天然粘液成分の代理を務めることができるという仮説を立てることができる。
【0072】
(生物学的試験)
1.角膜前方耐久時間の評価
この研究では、コンタクトレンズ−ポリマー相互作用の研究に関する節で既に説明したとおりに調製されたアラビノガラクタンの蛍光性誘導体(FITC−AG)を使用した。
【0073】
生物学的標本におけるFITC−AGの定量的測定は、蛍光分析により実施した。装置は、適切な積分ソフトウェアを備えた島津RF−551型蛍光検出器で構成した。検出は、490nmの励起波長及び514nmの発光波長で実施した。
【0074】
試験は、体重が2〜2.5kgのニュージーランドアルビノウサギで実施した。FITC−AGが5%w/wの水性組成物50μLをウサギの下部結膜嚢に投与した。点眼後、適切な時間間隔(1、3、5、10、20、30、45及び60分)で、涙液の標本(1.0μL)を、ミクロ毛細管(Microcaps、Drummond Scientific、ニュージャージー州、米国)を使用し、角膜上皮とのいかなる接触をも回避して、下部結膜嚢の縁端部分から採取した。涙液の標本を、エッペンドルフ試験管に移し、次いで、50μLの水で希釈した後、蛍光分析で分析した。
【0075】
添付の図2は、涙液における時間経過に伴うFITC−AGの蛍光のパーセント減少(1分後の産生物の蛍光を100%として)を示す。蛍光は、投与後10分で常に高く、20分後に減少し、60分後でもなお検知可能であり、角膜前方領域での長期耐久性を強調している。
【0076】
2.ドライアイ症候群の誘導及び治療
この研究は、AG濃度が5%w/wで、適切な量のマンニトール(4.41%w/w)を添加することによって等張性を付与され、6.46のpHを有する、アラビノガラクタン(FiberAid(登録商標)AG、Larex(登録商標))水溶液(以後、AG−Solと呼ぶ)を使用した。
【0077】
AG−Sol組成物を調製するため、重量を正確に測定したポリマーを脱イオン水(Milli−Q、Millipore)に分散し、このようにして得られた溶液を、磁気撹拌機で撹拌しながら80℃で30分間加熱した。冷却後、マンニトールを添加した。
【0078】
このようにして得られた溶液を、0.22μmの滅菌フィルター(Minisart Sartorius)を使用して層流フードのもとで濾過し、ガラス瓶に充填した。
【0079】
角膜上皮の病変がドライアイ症候群と関連している場合における、アラビノガラクタンの流涙に対する影響を評価するため、in vivoでの実験を実施した。
【0080】
試験は、体重が2〜2.5kgのニュージーランドアルビノウサギを使用して実施した。
【0081】
涙の産生を低減し、ドライアイを誘導するために、1.0%硫酸アトロピン(AS)水溶液の1適を、1日に3回(午前9時、午後1時及び5時)、連続5日間、動物の両眼に点眼した(S.Burgalassiら、1999年、Ophthalm.Res.、31巻、229〜235頁)。各AS投与の5分後、アラビノガラクタンを含有するAG−Sol組成物50μLを、それら動物の右眼のみに点眼した。
【0082】
動物は、時刻0(治療前)、及び治療開始の2日、3日、4日及び5日後にシルマーI試験を受けた。試験は、分泌される涙液量を1日に1回測定することを想定している。測定は、溶液(AS及びAG−Sol)をそれぞれ投与する前に、ウサギの各眼の下部結膜円蓋に置かれたビブラ(bibula)紙片(Alfa Intes)を使用して実施した。ビブラ紙片に沿った涙液の上昇をmmで測定した。硫酸アトロピンのみで治療された眼について得られた値を、本発明によるアラビノガラクタン溶液で治療された眼について得られたものと比較した。
【0083】
薬理学的治療を実施しなかった対照動物群で、涙分泌の基礎値を測定した。
【0084】
得られた結果を、添付図面の図3にグラフで報告する。図は、AG−Sol溶液が、ドライアイの始まりに対していかに保護効果を有するかを示している。
【0085】
さらに、治療開始の3日、4日及び5日後に、ドライアイによって引き起こされる角膜上皮の変化の程度を、1%w/wフルオレセイン水溶液10μLで角膜を着色した後に、青色フィルターを備えたスリットランプで観察することによって評価した。上皮変化の場合、角膜表面の着色区域、すなわち、蛍光陽性眼を観察する。
【0086】
下表4では、得られた結果を、被治療眼中の蛍光陽性眼のパーセンテージとして報告する。同じ結果を、AG−Sol溶液で治療した後に蛍光陽性を生じた眼のパーセンテージを、ASで処置しただけの対照動物における蛍光陽性眼のパーセンテージに対してグラフで比較した、添付の図4の柱状グラフで報告する。
【0087】
【表4】

【0088】
表4及び図4に示した結果から、非治療眼で、蛍光陽性の割合は、日ごとに増加し、治療5日目で、ほとんど60%に達し、一方、AG−Sol溶液で治療した眼では、蛍光陽性の割合は、治療4〜5日目で、より低い約17%の値で一定に留まる。
【0089】
3.再上皮形成能力の評価
以下で報告する試験では、ウサギの角膜上に生じた病変の、次の組成物を投与した後の回復時間を評価する。すなわち、
1.AG−Sol水溶液(5%AG、4.41%マンニトール)
2.0.04%TS−多糖(TSP)水溶液
3.0.00144%ヒアルロン酸(HA)水溶液。
【0090】
本発明による製品の目的は、多糖をベースにした従来技術の人工涙と同じくらい粘性ではなく、その結果、コンタクトレンズの使用者にとって特に有用である涙補充液を提供することなので、TSP及びHAを含む対照溶液2)及び3)の濃度は、同一のレオロジー挙動(すなわち、ニュートン流)及びAG−Sol溶液と同一の粘度値を有するように選択したことに留意すべきである。
【0091】
試験は、体重が2〜2.5kgのニュージーランドアルビノウサギで実施した。ウサギを、Zoletil 100(登録商標)(Laboratories Virdac、フランス)の筋内注射(0.15mL/kg)で麻酔し、開瞼器を使用して眼を開けたままに保持し、10μLの塩酸オキシブプロカイン(Novesina(登録商標)、MiPharm、イタリア)を点眼することによって表面で麻酔した。
【0092】
角膜病変を引き起こすために、10μLのn−ヘプタノールを染みこませた直径6mmの微生物学用紙円盤を角膜中央領域上に60秒間置いた。円盤を取り除いた後、眼表面を、1mLの生理学的溶液(Burgalassiら、2000年、Eur.J.Ophthalmol.、10巻、71〜76頁)で完全に洗浄した。
【0093】
時刻0(染みこんだ紙を除去し、洗浄した直後)、及び病変を生じさせて3、7、18、24、27、29、31、34、41、44、48及び51時間に、眼表面を、10μLの1%w/wフルオレセインナトリウム水溶液で着色し、病変の直径を、特殊なマイクロメーターを使用して測定した。
【0094】
治療される動物は、傷害された眼中に100μLの試験溶液を1日に5回(午前9、11時、午後1、3及び5時)受け入れた。
【0095】
角膜病変が達成された動物の1つの群は、自然治癒にまかせ、対照群として使用した。
【0096】
添付図面中の図5では、時間経過に伴う動物群の角膜病変の回復動向をグラフで報告する。データは、時刻0での面積を100%とした、病変面積のパーセント減少として報告した。同一データを下表5に数字で報告する。
【0097】
【表5】

【0098】
上表及び図5から、組成物投与の27時間後から始まる、本発明による組成物AG−Solのみが、対照値に較べて有意に差のある回復速度を示すことに気づくことができる。実際、AG−Solは、治療開始後27、29、31、34及び41時間後に統計的に有意な差異を呈示し、その他の組成物の場合、この差異は29時間後のTSPでのみ有意である。
【0099】
4.塩化ベンザルコニウムの存在下での再上皮形成能力の評価
試験は、次の組成物、すなわち、
1)AG−Sol水溶液(5%AG、4.41%マンニトール)
2)AG−Bz水溶液(5%AG、4.00%マンニトール、0.01%塩化ベンザルコニウム)
を投与した後にウサギの角膜に生じた病変の回復時間を評価する。
【0100】
試験は、体重が2〜2.5kgのニュージーランドアルビノウサギで実施した。ウサギを、Zoletil 100(登録商標)(Laboratories Virdac、フランス)の筋内注射(0.15mL/kg)で麻酔し、開瞼器を使用して眼を開けたままに保持し、10μLの塩酸オキシブプロカイン(Novesina(登録商標)、MiPharm、イタリア)を点眼することによって表面で麻酔した。
【0101】
角膜病変を引き起こすために、10μLのn−ヘプタノールを染みこませた直径6mmの微生物学用紙円盤を角膜中央領域上に60秒間置いた。円盤を取り除いた後、眼表面を、1mLの生理学的溶液(Burgalassiら、2000年、Eur.J.Ophthalmol.、10巻、71〜76頁)で完全に洗浄した。
【0102】
時刻0(染みこんだ紙を除去し、洗浄した直後)、及び病変を生じさせた3、7、18、24、27、29、31、34、41、44、48及び51時間に、眼表面を、10μLの1%w/wフルオレセインナトリウム水溶液で着色し、病変の直径を、特殊なマイクロメーターを使用して測定した。
【0103】
治療される動物は、傷害された眼中に100μLの試験溶液を1日に5回(午前9、11時、午後1、3及び5時)受け入れた。
【0104】
角膜病変が達成された動物の1つの群は、自然治癒にまかせ、対照群として使用した。
【0105】
図6及び6aでは、2つの異なる細部濃度での、動物群の時間経過に伴う角膜病変の回復傾向をグラフで報告する。データは、時刻0での面積を100%とした、病変面積のパーセント減少として報告した。
【0106】
塩化ベンザルコニウムが存在すると、AGによる回復速度が減速するように変更され、AG−Bz組成物で治療された動物の完全回復は51時間後に現われ、一方、AG−Solで治療された動物では44時間後程度の早期に現われる。このことは、角膜保護を目的とする組成物に両方の化合物を使用することが不利であることの理由である。
【0107】
(被治療角膜の組織学的評価)
再上皮形成過程が、実験的に誘導された病変の完全治癒を提供することに加えて、上皮細胞の適切な層状化を生じさせ、結果として、本来の角膜構造を再構成するか否かを評価するため、組織学的分析を実施した。
【0108】
角膜の標本を、角膜病変を生じさせてから24時間後、完全回復後(上皮で蛍光検出がもはや観察されない時点)、回復から1週間後に採取し、pH7.4の0.1Mリン酸塩緩衝液中の10%パラホルムアルデヒド溶液中で固定した。次いで、標本を、緩衝液を用いる12時間の間に行なわれる数度の洗浄にかけ、濃度が逓増する一連のエチルアルコール溶液中で脱水し、光学顕微鏡法のための特殊樹脂(JB−4、包埋キット、Polyscience Inc.)中に4℃で包埋した。包埋された標本を、検鏡用切片作成法で薄片とし、ニッスル染色にかけた後、顕微鏡下で観察した。
【0109】
病変を生じさせてから24時間後に、隣接する完全上皮細胞の傷害された領域への単層の形成を伴う変位及び遊走が存在したので、生理学的修復機構がはっきりわかった。代わりに、上皮は、完全回復が起こった場合、細胞表面剥離の生理学的機構の中断が終了し、且つ欠損領域の完全補償及び上皮要素の再生が、正常な構造的特徴の復原を確実にする場合にのみ、本来の厚さ(角膜中央領域で55〜60μm)及び層状化構造を再建する。該状態は、回復の1週間後において変化しないでそのままであり、再生過程が完了したことを示している。
【0110】
角膜病変を生じさせた後に実施し、前記第3節の生物学的試験で報告した同一製品を用いて行なわれた治療は、使用した製品に応じて、病変回復時間の減少を種々の程度にまで至らしめた。このことは、使用したポリマーの修復機構に対する種々の影響を想定することにつながる。従って、組織の形態学的態様におけるなんらかの差異を明確にするために、再上皮形成段階を調べることが必須となる。
【0111】
この目的のため、再上皮形成能力評価法(第3節、生物学的試験)を、上記で報告した通りの病変及びポリマー組成物を用いる治療を実施することによって反復した。動物を、角膜病変が完全に回復する前に、すなわち、病変の回復が、使用した装置ではもはや測定できないが、眼表面での蛍光捕捉がなお認められる時点で、直ちに屠殺した。
【0112】
このようにして治療された角膜標本を、前に示したと同じ方法を用いる組織学的分析に供し、再構成された上皮の厚さを、それぞれの場合について測定した。
【0113】
測定は、各回とも、再生縁端から同一距離で実施し、種々の治療後に再形成された上皮の厚さの差異を明確にした。実際、次の結果が得られた。すなわち、
−非治療対照(自然回復)、6μm
−AG−Sol(5%AG、4.41%マンニトール)で治療した標本、18μm
−0.5%TS−多糖で治療した標本、18μm
−0.2%ヒアルロン酸で治療した標本、12μm。
【0114】
これらの結果は、欠陥区域を再構成しつつある上皮は、観察したどの場合においても、たとえAG−Sol及びTS−多糖組成物で治療した標本においてさえ、まだ生理学的厚さを有さず、その厚さは、自然的回復にまかされた対照より相当に厚いことを示している。
【0115】
それぞれの画像(示さない)の観察は、また、試験された角膜標本間の形態学的多様性を明確にした。実際、調べた4つの場合において、新上皮の配列にかなりの差異が存在した。すなわち、
■対照眼由来の標本は、層状化をほとんど又はまったく伴わない未だ良好に組織化されていない構造を示した。
■AG−Sol組成物で治療した上皮は、組織の配列に関して、本来の上皮に近い類似性を示した。
■TS−多糖で治療した標本は、不十分に層状化された新組織を示し、この上皮の厚さがAG−Solで治療した標本の厚さと同じであるという事実にも拘わらず、それは、実際上、標準よりも大きな、大きなサイズの少数の細胞に関する事柄であることが多かった。
■最後に、HAでの治療は、たとえ得られた最終厚さがより薄くとも、新上皮の不連続な層状化をもたらした。
【0116】
これらの結果は、AGを含有する組成物で治療した後に測定される角膜病変のより大きな回復速度は、この製品が引き起こす上皮要素再生の刺激によるという結論につながる。上皮細胞のより大きな複製能力は、組織の早期層状化につながり、かくして、より多数の細胞が欠損ゾーンを被覆するようにする。
【0117】
(細胞毒性の研究)
AGを単独で、又は塩化ベンザルコニウム(Bz)の存在下に含有する溶液の細胞毒性を評価した。ポリマーの原液は、ダルベッコ変性イーグル培地(DMEM、Sigma Chemical Co.、セントルイス、ミズーリ州、米国)中で直接的に調製した(1.AG5%w/w、2.AG5%w/w+Bz0.01%w/w)。次いで、これらの溶液を、DMEMを使用して1:2、1:5、1:10、1:100及び1:1000に希釈した。
【0118】
使用した細胞系は、ウサギ角膜上皮細胞(形質転換RCE SV40、N.95081046、ECACC、英国)とした。RCE系は、ウサギ角膜上皮細胞の初代培養を組換えレトロウイルスSV−40で感染させることによって創生された。該細胞は、典型的なしっかり覆われた組織形態の上皮及び層状化能力、並びに接着斑及び微絨毛の発達を示す。
【0119】
細胞増殖培地は、Hamの栄養混合物F12(1:1)、L−グルタミン(1%v/v、2mM)、ペニシリン(100Ul/mL)、ストレプトマイシン(0.1mg/mL)、アンホテリシンB(0.25μg/mL)、熱失活ウシ胎児血清(15%v/v)(Gibco 英国)、インスリン(5μg/mL)、上皮増殖因子(10ng/mL)(Sigma Chemical Co.、セントルイス、ミズーリ州、米国)で強化したダルベッコ変性イーグル培地(DMEM、Sigma Chemical Co.、セントルイス、ミズーリ州、米国)とした。細胞は、5%のCOを含む飽和湿度の雰囲気中、37℃で増殖させた。
【0120】
RCE細胞で試験した溶液の毒性程度の評価は、市販の細胞増殖試薬WST−1(Roche Diagnostics(登録商標)S.p.A.、Monza)を使用して、比色法により実施した。試験は、ミトコンドリアの活性による、テトラゾリウム塩WST−1の可溶性着色化合物(ホルマザン)への開裂をベースにしている。この変換は、生存細胞によってのみなされ得るので、生じたホルマザンの量は、生存細胞の数に直接的に相関している。
【0121】
RCE細胞を、96ウェルのスライド(Corning Costar(登録商標)、ミラノ、イタリア)上に5×10細胞/ウェルの濃度で配置した。24時間後、90%の集密で、増殖培地を除去し、供試溶液(溶液100μL)で置換えた。60分間接触させた後(5%のCOを含む加湿雰囲気中、37℃で)、反応培地を除去し、細胞をDMEM F12で2回洗浄し、次いで、100μLの新鮮な増殖培地及び10μLのWST−1試薬を各ウェルに添加した。細胞を、再び2時間インキュベートし(5%のCOを含む加湿雰囲気中、37℃で)、スライドを9秒間静かに振とうし、適切な分光光度計(Microtiter reader550(登録商標)、Bio−Rad Laboratories、Hercules、カリフォルニア州)を使用し、培地の吸光度を450nmで測定した。WST−1試薬に対する最適インキュベーション時間は、一連の予備実験を通して決定した。
【0122】
分光測定の読みは、細胞を含まず、培地及びWST−1(それぞれ、100及び10μL)のみの混合物を含む「ブランク」ウェルと対照して実施した。結果は、医薬品を含まない培地のみで処置した細胞を含む非治療ウェル(対照、Abs)に対する治療ウェル(Abstr)の次式によるパーセント吸光度として表現した。
【数1】

【0123】
結果は、細胞をAGのみ又はAG+Bz混合物を含有する溶液で治療した場合の細胞活力を、AG濃度の対数に関するパーセンテージとしてグラフで表現した図7に示す。AGは、試験したすべての濃度でいかなる細胞毒性も示さない。Bzの添加は、とりわけ高濃度で毒性の増加を引き起こす。従って、塩化ベンザルコニウムの存在は、さらに、in−vivo実験によって示されるように、有意の細胞毒性を伴い、AGの再上皮形成活性を低下させる。
【0124】
本発明を、若干のその具体的実施形態に関して開示してきたが、当業者は、添付する特許請求の範囲から逸脱しないで変形形態又は修正形態を提起できることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】水溶液中にアラビノガラクタンを含有する本発明による組成物の、多糖濃度が変化した場合の粘度変化を示す図である。
【図2】アラビノガラクタンを含有する本発明による溶液の、アラビノガラクタンの蛍光性誘導体を測定することによって評価した角膜前方耐久時間の傾向を示す図である。
【図3】ドライアイを実験的に誘発するために硫酸アトロピン(AS)で処置されたウサギで実施されたシルマーI試験で得られた結果を示す図であり、前記ウサギの一眼に、治療として、アラビノガラクタンを含有する本発明による組成物(AG−Sol)をさらに投与した。
【図4】蛍光を用いて実施した角膜上皮変化試験の結果の柱状グラフを示す図であり、スリットランプによる観察は図3の同じウサギで実施した。
【図5】ウサギに実験的に誘導され、次いで、本発明による組成物(AG)、或いは比較のためにタマリンドゴム多糖(TSP)又はヒアルロン酸(HA)で治療された角膜病変の回復試験の結果をグラフで報告した図である。
【図6】図5の試験でのように実験的に誘導された角膜病変の回復試験の結果をグラフによって報告した図であり、本発明の組成物(AG−Sol)、及び塩化ベンザルコニウムも含有する類似溶液(AG−Bz)の間で比較している。
【図6a】図5の試験でのように実験的に誘導された角膜病変の回復試験の結果をより詳細なグラフによって報告した図であり、本発明の組成物(AG−Sol)、及び塩化ベンザルコニウムも含有する類似溶液(AG−Bz)の間で比較している。
【図7】アラビノガラクタンを含有する本発明による溶液(AG−Sol)、又は塩化ベンザルコニウムも含有する類似の溶液(AG−Bz)に曝露した後の細胞活力から見た細胞毒性試験の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液中に1重量%〜10重量%のアラビノガラクタンを含有し、保護及び再上皮形成活性を有する涙液代替物として使用するための眼科用組成物であって、塩化ベンザルコニウムを含有しないことを特徴とする眼科用組成物。
【請求項2】
水溶液中に3重量%〜5重量%のアラビノガラクタンを含有する、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項3】
前記アラビノガラクタンが、薬学上許容される等級のカラマツアラビノガラクタンである、請求項1又は2に記載の眼科用組成物。
【請求項4】
1種又は複数の張性調節剤も含有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の眼科用組成物。
【請求項5】
前記1種又は複数の張性調節剤が、水溶液中で150から300mOsm/Lの容量オスモル濃度を有する溶液を提供するような量で存在する、請求項4に記載の眼科用組成物。
【請求項6】
前記1種又は複数の張性調節剤が、マンニトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、デキストロース、ホウ酸、及びソルビトールからなる群から選択される、請求項5に記載の眼科用組成物。
【請求項7】
pH修正剤として1種又は複数の薬学上許容される酸又は塩基も含有する、請求項1から6までのいずれか一項に記載の眼科用組成物。
【請求項8】
1種又は複数の緩衝剤も含有する、請求項1から7までのいずれか一項に記載の眼科用組成物。
【請求項9】
前記緩衝剤が、リン酸塩緩衝剤、ホウ酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、重炭酸塩緩衝剤、トリズマ(トリス−ヒドロキシメチル−アミノメタン)緩衝剤からなる群から選択される、請求項8に記載の眼科用組成物。
【請求項10】
塩化ベンザルコニウムを除く1種又は複数の保存剤も含有する、請求項1から9までのいずれか一項に記載の眼科用組成物。
【請求項11】
前記保存剤が、メルチオレートナトリウム又はチメロサール、硝酸又は酢酸フェニル水銀、フェネチルアルコール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、酢酸又はグルコン酸クロロヘキシジン、及びクロロブタノールからなる群から選択される、請求項10に記載の眼科用組成物。
【請求項12】
1種又は複数のキレート化剤も含有する、請求項1から11までのいずれか一項に記載の眼科用組成物。
【請求項13】
前記キレート化剤がEDTAである、請求項12に記載の眼科用組成物。
【請求項14】
水溶液中に1重量%〜10重量%のアラビノガラクタンを含有する眼科用溶液の、角膜保護及び再上皮形成活性を有する眼科用組成物を製造するための使用。
【請求項15】
前記溶液が、塩化ベンザルコニウムを含有しない、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記眼科用溶液が、3重量%〜5重量%のアラビノガラクタンを含有する、請求項14又は15に記載の使用。
【請求項17】
前記眼科用組成物が、コンタクトレンズ使用者に対して推奨される涙代替物である、請求項14から16までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記眼科用組成物が、角結膜の病変及び炎症を治療するための涙液代替物である、請求項14から17までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記眼科用組成物が、コンタクトレンズの使用によって引き起こされる角膜擦過傷の治療のために指示される、請求項18に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図6a】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−504635(P2009−504635A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525730(P2008−525730)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際出願番号】PCT/IT2006/000616
【国際公開番号】WO2007/020671
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(508041150)オポクリン ソシエタ ペル アチオニ (1)
【Fターム(参考)】