説明

解体機

【課題】 左,右の押えアームを連動して押動させる連動作動モードと、左,右の押えアームを互いに独立して押動させる独立作動モードとを適宜に切換える。
【解決手段】 左,右のパイロット弁39,40と左,右のシリンダ制御弁28,32との間に、左,右の作動モード切換弁42,45、第1,第2の高圧選択弁48,49等からなる作動モード切換手段41を設ける構成とする。これにより、左,右の作動モード切換弁42,45を連動作動位置に切換えたときには、左,右のパイロット弁39,40のうちいずれか一方を操作することにより左,右の押えアーム20,21を連動して回動させ、左,右の作動モード切換弁42,45を独立作動位置に切換えたときには、左,右の押えアーム20,21を左,右のパイロット弁39,40の操作に応じて互いに独立して回動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスクラップ工場等において自動車等の解体対象物を解体するのに好適に用いられる解体機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、廃車処理された解体対象物となる自動車は、スクラップ工場で解体される。この場合、自動車は種々の材料を用いて構成されているので、それぞれの原材料としてリサイクルするために、例えば主として鋼材を材料としたシャーシ、外装パネル(ボンネット、フェンダ、ドア)等のボディと、アルミニウム合金を材料としたエンジン、トランスミッション等とを分けるように解体作業が行われる。
【0003】
ここで、このような自動車等の解体作業に用いられる解体機は、通常、自走可能な車体と、該車体に設けられ解体対象物を解体する作業装置と、左,右方向に離間して車体に上,下方向に回動可能に取付けられた左,右の押えアームとを備えて構成されている。そして、解体機は、左,右の押えアームによって解体対象物を押え込んだ状態で、グラップル等を備えた作業装置を用いて解体対象物の解体作業を行うようになっている。
【0004】
ところで、この種の従来技術による解体機は、通常、左,右の押えアームが梁材によって連結され、左,右の押えアームは、車体に対し常に一体となって上,下方向に回動しつつ解体対象物を強固に押え込むことができる構成となっている。
【0005】
一方、他の従来技術による解体機として、左,右の押えアームが互いに独立して上,下方向に回動する構成となったものが知られており、この解体機によれば、例えば自動車のルーフ部とフロントノーズ部のように、解体対象物のうち地上からの高さ位置が異なる部位を、左側の押えアームと右側の押えアームとによってそれぞれ押え込むことができる(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】実開平5−13699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、左,右の押えアームが互いに独立して上,下方向に回動する解体機においては、例えば解体対象物のうち地上からの高さ位置が等しい部位を、左,右の押えアームを連動させて同時に押え込む場合には、オペレータが、左側の押えアームを操作するための操作装置と、右側の押えアームを操作するための操作装置とを同時に操作する必要がある。
【0008】
この場合、左,右の押えアーム用の操作装置を同時に操作する作業は、オペレータにとって煩雑であり、左,右の押えアームを連動させて解体作業を行うときの作業性が低下してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、左,右の押えアームを連動して押動させる連動作動モードと、左,右の押えアームを互いに独立して押動させる独立作動モードとを適宜に切換えることができ、解体作業の作業性を高めることができるようにした解体機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明は、自走可能な車体と、該車体に設けられ解体対象物を解体する作業装置と、左,右方向に離間して前記車体に上,下方向に回動可能に取付けられ前記解体対象物を押える左,右の押えアームと、油圧源から圧油が給排されることにより前記左,右の押えアームを押動する左,右の押えアームシリンダと、前記油圧源から前記左,右の押えアームシリンダに給排される圧油の方向を制御する左,右の油圧パイロット式のシリンダ制御弁と、オペレータの操作に応じて前記左,右のシリンダ制御弁にパイロット信号を出力する左,右のパイロット弁とを備えてなる解体機に適用される。
【0011】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記左,右のパイロット弁と前記左,右のシリンダ制御弁との間には、前記左,右のパイロット弁のうちいずれか一方が操作されたときに前記左,右のシリンダ制御弁に同時にパイロット信号を出力し前記左,右の押えアームを連動して押動させる連動作動モードと、前記左,右のパイロット弁の操作に応じて前記左,右のシリンダ制御弁に個別にパイロット信号を出力し前記左,右の押えアームを独立して押動させる独立作動モードとに選択的に切換えられる作動モード切換手段を設けたことにある。
【0012】
請求項2の発明は、前記作動モード切換手段は、モード切換信号に基づいて出力ポートから前記左,右のシリンダ制御弁の双方にパイロット信号を出力する連動作動位置とモード切換信号に基づいて出力ポートから対応する前記左,右のシリンダ制御弁の一方に直接的にパイロット信号を出力する独立作動位置とに切換えられる左,右の作動モード切換弁と、前記左,右の作動モード切換弁の出力ポートと前記左,右のシリンダ制御弁との間の管路にそれぞれ設けられ、前記作動モード切換弁が前記連動作動位置にある場合に前記左,右のパイロット弁のいずれか一方を操作したときに当該いずれか一方のパイロット弁からのパイロット信号を前記左,右のシリンダ制御弁に同時に出力する高圧選択弁とにより構成したことにある。
【0013】
請求項3の発明は、前記左,右のシリンダ制御弁は、前記左,右の押えアームシリンダを伸長させる伸長位置と、前記左,右の押えアームシリンダを縮小させる縮小位置と、前記左,右の押えアームシリンダを停止させる中立位置との3位置に切換えられる油圧パイロット式の方向制御弁により構成し、前記左,右のパイロット弁は、オペレータの操作に応じた伸長側のパイロット圧と縮小側のパイロット圧とを出力する減圧弁型のパイロット弁により構成し、前記左,右の作動モード切換弁は、前記モード切換信号に応じて、前記左,右のパイロット弁のうちいずれか一方のパイロット弁からのパイロット圧が出力されたときにこのパイロット圧を前記高圧選択弁に出力する連動作動位置と、前記左,右のパイロット弁からのパイロット圧を前記左,右のシリンダ制御弁に直接的に出力する独立作動位置とに切換えられる電磁パイロット式の方向制御弁により構成したことにある。
【0014】
請求項4の発明は、前記左,右のパイロット弁の近傍には、前記左,右の作動モード切換弁に対し前記モード切換信号を出力するスイッチを設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、作動モード切換手段を連動作動モードに切換えたときには、左,右のパイロット弁のうちいずれか一方を操作することにより、左,右のシリンダ制御弁に同時にパイロット信号が出力されるので、左,右の押えアームシリンダに油圧源からの圧油が同時に給排され、左,右の押えアームを連動して押動させることができる。
【0016】
一方、作動モード切換手段を独立作動モードに切換えたときには、左,右のパイロット弁の操作に応じて左,右のシリンダ制御弁に個別にパイロット信号が出力されるので、左,右の押えアームシリンダに油圧源からの圧油が個別に給排され、左,右の押えアームを、左,右のパイロット弁の操作に応じて互いに独立して押動させることができる。
【0017】
このため、例えば解体対象物のうち地上からの高さ位置が等しい部位を、連動して回動する左,右の押えアームによって一緒に押え込む動作と、解体対象物のうち地上からの高さ位置が異なる部位を、独立して回動する左,右の押えアームによって個別に押え込む動作とを、解体対象物の形状に応じて適宜に切換えることができるので、例えば凸凹形状を有する解体対象物を解体するときの作業性を高めることができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、モード切換信号によって作動モード切換弁を連動作動位置に切換えた状態で、左,右のパイロット弁のいずれか一方を操作すると、この操作された一方のパイロット弁からのパイロット信号のみが高圧選択弁によって選択され、左,右のシリンダ制御弁に同時に出力されることにより、一方のパイロット弁に対する操作に応じて左,右の押えアームを連動して押動させることができる。
【0019】
一方、モード切換信号によって作動モード切換弁を独立作動位置に切換えた状態で、左,右のパイロット弁を操作すると、左,右のパイロット弁に対する操作に応じたパイロット信号がそれぞれ左,右のシリンダ制御弁に直接的に出力されることにより、左,右の押えアームを互いに独立して押動させることができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、モード切換信号によって作動モード切換弁を連動作動位置に切換えることにより、左,右のパイロット弁のうち一方のパイロット弁からオペレータの操作に応じたパイロット圧が出力され、このパイロット圧は高圧選択弁を通じて左,右のシリンダ制御弁に同時に出力される。これにより、左,右のシリンダ制御弁を、同時に中立位置から伸長位置または縮小位置へと切換えることができ、左,右の押えアームを連動させて押動させることができる。
【0021】
一方、モード切換信号によって作動モード切換弁を独立作動位置に切換えることにより、左,右のパイロット弁から左,右のシリンダ制御弁に対し、オペレータの操作に応じたパイロット圧がそれぞれ個別に出力される。これにより、左,右のシリンダ制御弁を、それぞれ個別に中立位置から伸長位置または縮小位置へと切換えることができ、左,右の押えアームを互いに独立して押動させることができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、モード切換信号を出力するスイッチを、オペレータによって操作される左,右のパイロット弁の近傍に設けたので、オペレータは、左,右のパイロット弁を操作しつつ、解体作業の内容に応じて適宜にスイッチを操作することにより、左,右の作動モード切換弁を連動作動位置と独立作動位置とに随時切換えることができる。このため、左,右の押えアームを連動して押動させる連動作動モードと、左,右の押えアームを互いに独立して押動させる独立作動モードとを、解体作業の内容に応じて迅速に切換えることができ、解体作業の作業性を一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る解体機の実施の形態について、自動車の解体作業に用いられる解体機を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0024】
図中、1は解体機を示し、該解体機1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載され該下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体3と、上部旋回体3の前部側に俯仰動可能に設けられた後述の作業装置19と、下部走行体2の前部側に設けられた後述する左,右の押えアーム20,21とにより大略構成されている。
【0025】
ここで、下部走行体2は、図2等に示すように、センタフレーム4A及び該センタフレーム4Aの左,右両側に配設された左,右のサイドフレーム4B,4B等からなるトラックフレーム4と、各サイドフレーム4Bの長さ方向の一端側に設けられた駆動輪5と、各サイドフレーム4Bの長さ方向の他端側に設けられた遊動輪6と、これら駆動輪5と遊動輪6とに巻回して設けられた履帯7とにより大略構成されている。
【0026】
この場合、図2ないし図4に示すように、トラックフレーム4を構成するセンタフレーム4Aは、左前側、右前側、左後側、右後側の4本の脚部4C,4C,…を有し、上方からみてほぼX型をなしている。そして、左前側の脚部4Cと右前側の脚部4Cには、それぞれ前方に向けて突出する左,右のアームブラケット4D,4Eが固着され、これら左,右のアームブラケット4D,4Eには、後述する左,右の押えアーム20,21が取付けられる構成となっている。
【0027】
一方、上部旋回体3は、下部走行体2を構成するトラックフレーム4のセンタフレーム4A上に旋回可能に設けられた旋回フレーム8と、該旋回フレーム8の前部左側に設けられ運転室を画成するキャブ9と、旋回フレーム8の後端側に設けられ作業装置19との重量バランスをとるカウンタウエイト10と、カウンタウエイト10の前側に設けられ、エンジン、油圧ポンプ等の搭載機器(図示せず)を収容する建屋カバー11とにより大略構成されている。
【0028】
この場合、図7に示すように、キャブ9内には、オペレータが着席する運転席12が設けられ、該運転席12の左,右両側には、上部旋回体3及び作業装置19の動作を制御する左,右の操作レバー13,14が配設されている。また、運転席12の前側には、下部走行体2の走行を制御する左,右の走行レバー・ペダル15,16が配設され、これら左,右の走行レバー・ペダル15,16を挟む左,右両側には、左,右の押えアーム20,21の動作を制御する左,右の押えアーム用ペダル17,18が配設されている。
【0029】
19は上部旋回体3の前部側に俯仰動可能に設けられた作業装置で、該作業装置19は、旋回フレーム8の前部側に回動可能に取付けられたブーム19Aと、該ブーム19Aの先端側に回動可能に取付けられたアーム19Bと、該アーム19Bの先端側に回動可能に取付けられたグラップル19Cと、これらを駆動するブームシリンダ19D、アームシリンダ19E、グラップルシリンダ19Fとにより大略構成されている。
【0030】
そして、作業装置19は、図1等に示す解体対象物としての自動車ボディAをグラップル19Cによって把持し、例えばブーム19A、アーム19Bによってグラップル19Cを持上げることにより、この自動車ボディAを解体するものである。
【0031】
20,21は左,右方向に離間して下部走行体2の前部側に設けられた左,右の押えアームで、これら左,右の押えアーム20,21は、下部走行体2のトラックフレーム4に上,下方向に回動可能に取付けられ、作業装置19によって自動車ボディAを解体するときに、この自動車ボディAを上方から押え込むものである。
【0032】
ここで、左押えアーム20は、図2ないし図4に示すように、長さ方向の中間部が上方に向けて山形に屈曲することにより、全体としてほぼ「く」字型をなして前,後方向に延びた中空な角筒体により構成されている。また、左押えアーム20の基端側には左,右一対の板状のブラケット20Aが固着され、左押えアーム20の先端側には、自動車ボディAを押え込むときの滑りを止める複数の爪20B,20B,…が下向きに突設されている。
【0033】
そして、左押えアーム20のブラケット20Aの下端側は、トラックフレーム4の左アームブラケット4Dに軸22を介して取付けられ、自由端となった左押えアーム20の先端側は、後述の左押えアームシリンダ23の伸縮により、軸22を中心として図3に示す上げ位置と図4に示す下げ位置との間で上,下方向に回動する構成となっている。
【0034】
一方、右押えアーム21も、左押えアーム20と同様に、全体としてほぼ「く」字型をなして前,後方向に延びた中空な角筒体により構成され、その基端側にはブラケット21Aが固着され、先端側には複数の爪21B,21B,…が下向きに突設されている。
【0035】
そして、右押えアーム21のブラケット21Aの下端側は、トラックフレーム4の右アームブラケット4Eに軸22を介して取付けられ、自由端となった右押えアーム21の先端側は、左押えアーム20と同様に、後述の右押えアームシリンダ24の伸縮により軸22を中心として上,下方向に回動する構成となっている。
【0036】
23はトラックフレーム4と左押えアーム20との間に設けられた左押えアームシリンダで、該左押えアームシリンダ23は、左押えアーム20を押動するものである。ここで、左押えアームシリンダ23のボトム側は、トラックフレーム4の左アームブラケット4Dに回動可能にピン結合され、ロッド側は、左押えアーム20のブラケット20Aの上端側に回動可能にピン結合されている。従って、左押えアームシリンダ23が左押えアーム20の基端側を押動することにより、左押えアーム20の先端側が上げ位置と下げ位置との間で回動する構成となっている。
【0037】
24はトラックフレーム4と右押えアーム21との間に設けられた右押えアームシリンダで、該右押えアームシリンダ24は、右押えアーム21を押動するものである。ここで、右押えアームシリンダ24のボトム側は、トラックフレーム4の右アームブラケット4Eに回動可能にピン結合され、ロッド側は、右押えアーム21のブラケット21Aの上端側に回動可能にピン結合されている。従って、右押えアームシリンダ24が右押えアーム21の基端側を押動することにより、右押えアーム21の先端側が上げ位置と下げ位置との間で回動する構成となっている。
【0038】
次に、左押えアームシリンダ23と右押えアームシリンダ24の動作を制御するための油圧回路について、図8を参照して説明する。
【0039】
図中、25はタンク26と共に油圧源を構成する油圧ポンプで、該油圧ポンプ25は、例えば解体機1の建屋カバー11内に配置され、エンジン(図示せず)によって回転駆動されることにより、タンク26内の作動油を高圧の圧油として吐出するものである。そして、油圧ポンプ25は、主管路27A,27Bを通じて左押えアームシリンダ23と、右押えアームシリンダ24とに接続されている。
【0040】
28は油圧ポンプ25及びタンク26と左押えアームシリンダ23との間に位置して主管路27A,27Bの途中に設けられた左シリンダ制御弁で、該左シリンダ制御弁28は、左押えアームシリンダ23に給排される圧油の方向を切換えるもので、伸長側の油圧パイロット部28Aと縮小側の油圧パイロット部28Bとを有する6ポート3位置の油圧パイロット式の方向制御弁によって構成されている。
【0041】
29A,29Bは左シリンダ制御弁28の油圧パイロット部28A,28Bに接続されたパイロット管路で、これら各パイロット管路29A,29Bは、パイロットポンプ30からのパイロット圧を油圧パイロット部28A,28Bに導くものである。ここで、パイロット管路29Aの一端側は後述する第1の高圧選択弁48の出力側に接続され、他端側は油圧パイロット部28Aに接続されている。一方、パイロット管路29Bの一端側は後述する第2の高圧選択弁49の出力側に接続され、他端側は油圧パイロット部28Bに接続されている。
【0042】
そして、左シリンダ制御弁28は、パイロットポンプ30からのパイロット圧(パイロット信号)が、パイロット管路29Aを通じて油圧パイロット部28Aに供給されたときには、中立位置(a)から左押えアームシリンダ23を伸長させる伸長位置(b)に切換えられる。一方、左シリンダ制御弁28は、パイロット圧がパイロット管路29Bを通じて油圧パイロット部28Bに供給されたときには、中立位置(a)から左押えアームシリンダ23を縮小させる縮小位置(c)に切換えられる構成となっている。
【0043】
31A,31Bはパイロット管路29A,29Bの途中にそれぞれ設けられたチェック弁を示している。ここで、チェック弁31Aは、パイロット管路29A内のパイロット圧が左シリンダ制御弁28の油圧パイロット部28Aから第1の高圧選択弁48側へと逆流するのを阻止し、チェック弁31Bは、パイロット管路29B内のパイロット圧が左シリンダ制御弁28の油圧パイロット部28Bから第2の高圧選択弁49側へと逆流するのを阻止するものである。
【0044】
32は油圧ポンプ25及びタンク26と右押えアームシリンダ24との間に位置して主管路27A,27Bの途中に設けられた右シリンダ制御弁で、該右シリンダ制御弁32は、右押えアームシリンダ24に給排される圧油の方向を切換えるもので、左シリンダ制御弁28と同様に、伸長側の油圧パイロット部32Aと縮小側の油圧パイロット部32Bとを有する6ポート3位置の油圧パイロット式の方向制御弁によって構成されている。
【0045】
33A,33Bは右シリンダ制御弁32の油圧パイロット部32A,32Bに接続されたパイロット管路で、これら各パイロット管路33A,33Bは、パイロットポンプ30からのパイロット圧を油圧パイロット部32A,32Bに導くものである。ここで、パイロット管路33Aの一端側は後述する第1の高圧選択弁48の出力側に接続され、他端側は油圧パイロット部32Aに接続されている。一方、パイロット管路33Bの一端側は後述する第2の高圧選択弁49の出力側に接続され、他端側は油圧パイロット部32Bに接続されている。
【0046】
そして、右シリンダ制御弁32は、パイロットポンプ30からのパイロット圧が、パイロット管路33Aを通じて油圧パイロット部32Aに供給されたときには、中立位置(a)から右押えアームシリンダ24を伸長させる伸長位置(b)に切換えられる。一方、右シリンダ制御弁32は、パイロット圧がパイロット管路33Bを通じて油圧パイロット部32Bに供給されたときには、中立位置(a)から右押えアームシリンダ24を縮小させる縮小位置(c)に切換えられる構成となっている。
【0047】
34A,34Bはパイロット管路33A,33Bの途中にそれぞれ設けられたチェック弁を示している。ここで、チェック弁34Aは、パイロット管路33A内のパイロット圧が右シリンダ制御弁32の油圧パイロット部32Aから第1の高圧選択弁48側へと逆流するのを阻止し、チェック弁34Bは、パイロット管路33B内のパイロット圧が右シリンダ制御弁32の油圧パイロット部32Bから第2の高圧選択弁49側へと逆流するのを阻止するものである。
【0048】
35A,35Bは左押えアームシリンダ23と左シリンダ制御弁28との間に位置して主管路27A,27Bの途中にそれぞれ設けられたリリーフ弁を示している。そして、リリーフ弁35Aは、左押えアームシリンダ23のボトム側油室23Aに圧油が給排されるときに主管路27A,27B内に発生した過大な圧力をタンク26へとリリーフし、リリーフ弁35Bは、左押えアームシリンダ23のロッド側油室23Bに圧油が給排されるときに主管路27A,27B内に発生した過大な圧力をタンク26へとリリーフするものである。
【0049】
36A,36Bは左押えアームシリンダ23と左シリンダ制御弁28との間に位置して主管路27A,27Bの途中にそれぞれ設けられたチャージ用のチェック弁を示している。そして、チェック弁36Aは、左押えアームシリンダ23のボトム側油室23A内に負圧が生じたときにタンク26内の作動油を補給し、チェック弁36Bは、左押えアームシリンダ23のロッド側油室23B内に負圧が生じたときにタンク26内の作動油を補給するものである。
【0050】
37A,37Bは右押えアームシリンダ24と右シリンダ制御弁32との間に位置して主管路27A,27Bの途中にそれぞれ設けられたリリーフ弁を示している。そして、リリーフ弁37Aは、右押えアームシリンダ24のボトム側油室24Aに圧油が給排されるときに主管路27A,27B内に発生した過大な圧力をタンク26へとリリーフし、リリーフ弁37Bは、右押えアームシリンダ24のロッド側油室24Bに圧油が給排されるときに主管路27A,27B内に発生した過大な圧力をタンク26へとリリーフするものである。
【0051】
38A,38Bは右押えアームシリンダ24と右シリンダ制御弁32との間に位置して主管路27A,27Bの途中にそれぞれ設けられたチャージ用のチェック弁を示している。そして、チェック弁38Aは、右押えアームシリンダ24のボトム側油室24A内に負圧が生じたときにタンク26内の作動油を補給し、チェック弁38Bは、右押えアームシリンダ24のロッド側油室24B内に負圧が生じたときにタンク26内の作動油を補給するものである。
【0052】
39はパイロットポンプ30と左シリンダ制御弁28の油圧パイロット部28A,28Bとの間に設けられた減圧弁型パイロット弁(以下、左パイロット弁という)で、該左パイロット弁39は、オペレータの操作に応じて、左シリンダ制御弁28の伸長側の油圧パイロット部28A、または縮小側の油圧パイロット部28Bに対し、パイロットポンプ30からのパイロット圧を出力するものである。
【0053】
ここで、左パイロット弁39は、一対の減圧弁39A,39Bを有する減圧弁型パイロット弁により構成され、オペレータがキャブ9内に配置された左押えアーム用ペダル17を踏込み操作することにより、減圧弁39A,39Bのうちいずれか一方が作動し、左押えアーム用ペダル17の踏込み操作量に応じたパイロット圧を、左シリンダ制御弁28の油圧パイロット部28Aまたは28Bに出力する構成となっている。
【0054】
40はパイロットポンプ30と右シリンダ制御弁32の油圧パイロット部32A,32Bとの間に設けられた減圧弁型パイロット弁(以下、右パイロット弁という)で、該右パイロット弁40は、オペレータの操作に応じて、右シリンダ制御弁32の伸長側の油圧パイロット部32A、または縮小側の油圧パイロット部32Bに対し、パイロットポンプ30からのパイロット圧を出力するものである。
【0055】
ここで、右パイロット弁40は、左パイロット弁39と同様に、一対の減圧弁40A,40Bを有する減圧弁型パイロット弁により構成され、オペレータがキャブ9内に配置された右押えアーム用ペダル18を踏込み操作することにより、減圧弁40A,40Bのうちいずれか一方が作動し、右押えアーム用ペダル18の踏込み操作量に応じたパイロット圧を、右シリンダ制御弁32の油圧パイロット部32Aまたは32Bに出力する構成となっている。
【0056】
41は本実施の形態による作動モード切換手段を示し、この作動モード切換手段41は、左,右のパイロット弁39,40と左,右のシリンダ制御弁28,32との間に設けられている。
【0057】
ここで、作動モード切換手段41は、左,右のパイロット弁39,40のうちいずれか一方が操作されたときに左,右のシリンダ制御弁28,32に同時にパイロット圧を出力し左,右の押えアーム20,21を連動して押動させる連動作動モードと、左,右のパイロット弁39,40の操作に応じて左,右のシリンダ制御弁28,32に個別にパイロット圧を出力し左,右の押えアーム20,21を独立して押動させる独立作動モードとに選択的に切換えられるものである。そして、作動モード切換手段41は、後述する左,右の作動モード切換弁42,45と、第1,第2の高圧選択弁48,49とを含んで構成されている。
【0058】
42は左シリンダ制御弁28と左パイロット弁39との間に設けられた左作動モード切換弁で、該左作動モード切換弁42は、電磁パイロット部42Aを有する6ポート2位置の電磁パイロット式の方向制御弁により構成されている。ここで、左作動モード切換弁42は、後述するスイッチ装置50からのモード切換信号が電磁パイロット部42Aに出力されていないとき、即ち、スイッチ装置50から低レベルのモード切換信号が出力されているときには、ばね42Bによって連動作動位置(d)を保持し、左パイロット弁39からのパイロット圧を後述する第1,第2の高圧選択弁48,49を介して左,右のシリンダ制御弁28,32に出力する。一方、左作動モード切換弁42は、電磁パイロット部42Aにモード切換信号が出力されたとき、即ち、スイッチ装置50から高レベルのモード切換信号が出力されたときには独立作動位置(e)に切換り、左パイロット弁39からのパイロット圧を対応する左シリンダ制御弁28に出力するものである。
【0059】
また、左作動モード切換弁42の出力側には、後述する第1の高圧選択弁48に接続される伸長側管路43Aと、後述する第2の高圧選択弁49に接続される縮小側管路43Bと、チェック弁31Aよりも下流側でパイロット管路29Aに接続される伸長側バイパス管路44Aと、チェック弁31Bよりも下流側でパイロット管路29Bに接続される縮小側バイパス管路44Bとが接続されている。
【0060】
従って、左作動モード切換弁42が連動作動位置(d)にあるときには、左パイロット弁39の減圧弁39Aから出力されたパイロット圧が、伸長側管路43Aを通じて第1の高圧選択弁48に導かれ、左パイロット弁39の減圧弁39Bから出力されたパイロット圧が、縮小側管路43Bを通じて第2の高圧選択弁49に導かれる構成となっている。
【0061】
一方、左作動モード切換弁42が独立作動位置(e)にあるときには、左パイロット弁39の減圧弁39Aから出力されたパイロット圧が、伸長側バイパス管路44A及びパイロット管路29Aを通じて左シリンダ制御弁28の伸長側の油圧パイロット部28Aに直接的に出力され、左パイロット弁39の減圧弁39Bから出力されたパイロット圧が、縮小側バイパス管路44B及びパイロット管路29Bを通じて左シリンダ制御弁28の縮小側の油圧パイロット部28Bに直接的に出力される構成となっている。
【0062】
45は右シリンダ制御弁32と右パイロット弁40との間に設けられた右作動モード切換弁で、該右作動モード切換弁45は、左作動モード切換弁42と同様に、電磁パイロット部45Aを有する6ポート2位置の電磁パイロット式の方向制御弁により構成されている。ここで、右作動モード切換弁45は、後述するスイッチ装置50からのモード切換信号が電磁パイロット部45Aに出力されていないとき、即ち、スイッチ装置50から低レベルのモード切換信号が出力されているときには、ばね45Bによって連動作動位置(d)を保持し、右パイロット弁40からのパイロット圧を後述する第1,第2の高圧選択弁48,49を介して左,右のシリンダ制御弁28,32に出力する。一方、右作動モード切換弁45は、電磁パイロット部45Aにモード切換信号が出力されたとき、即ち、スイッチ装置50から高レベルのモード切換信号が出力されたときには独立作動位置(e)に切換り、右パイロット弁40からのパイロット圧を対応する右シリンダ制御弁32に出力するものである。
【0063】
また、右作動モード切換弁45の出力側には、第1の高圧選択弁48に接続される伸長側管路46Aと、第2の高圧選択弁49に接続される縮小側管路46Bと、チェック弁34Aよりも下流側でパイロット管路33Aに接続される伸長側バイパス管路47Aと、チェック弁34Bよりも下流側でパイロット管路33Bに接続される縮小側バイパス管路47Bとが接続されている。
【0064】
従って、右作動モード切換弁45が連動作動位置(d)にあるときには、右パイロット弁40の減圧弁40Aから出力されたパイロット圧が、伸長側管路46Aを通じて第1の高圧選択弁48に導かれ、右パイロット弁40の減圧弁40Bから出力されたパイロット圧が、縮小側管路46Bを通じて第2の高圧選択弁49に導かれる構成となっている。
【0065】
一方、右作動モード切換弁45が独立作動位置(e)にあるときには、右パイロット弁40の減圧弁40Aから出力されたパイロット圧が、伸長側バイパス管路47A及びパイロット管路33Aを通じて右シリンダ制御弁32の伸長側の油圧パイロット部32Aに直接的に出力され、右パイロット弁40の減圧弁40Bから出力されたパイロット圧が、縮小側バイパス管路47B及びパイロット管路33Bを通じて右シリンダ制御弁32の縮小側の油圧パイロット部32Bに直接的に出力される構成となっている。
【0066】
48は左,右の作動モード切換弁42,45の出力ポートと左,右のシリンダ制御弁28,32の伸長側の油圧パイロット部28A,32Aとを接続する管路に設けられた第1の高圧選択弁で、該第1の高圧選択弁48は、左,右のパイロット弁39,40のいずれか一方を伸長側に操作したときに、左,右のシリンダ制御弁28,32の伸長側の油圧パイロット部28A,32Aに対し、同時にパイロット圧を出力するものである。
【0067】
ここで、第1の高圧選択弁48の入力側は、伸長側管路43Aを介して左作動モード切換弁42に接続されると共に、伸長側管路46Aを介して右作動モード切換弁45に接続されている。また、第1の高圧選択弁48の出力側は、パイロット管路29Aを介して左シリンダ制御弁28の伸長側の油圧パイロット部28Aに接続されると共に、パイロット管路33Aを介して右シリンダ制御弁32の伸長側の油圧パイロット部32Aに接続されている。
【0068】
49は左,右の作動モード切換弁42,45の出力ポートと左,右のシリンダ制御弁28,32の縮小側の油圧パイロット部28B,32Bとを接続する管路に設けられた第2の高圧選択弁で、該第2の高圧選択弁49は、左,右のパイロット弁39,40のいずれか一方を縮小側に操作したときに、左,右のシリンダ制御弁28,32の縮小側の油圧パイロット部28B,32Bに対し、同時にパイロット圧を出力するものである。
【0069】
ここで、第2の高圧選択弁49の入力側は、縮小側管路43Bを介して左作動モード切換弁42に接続されると共に、縮小側管路46Bを介して右作動モード切換弁45に接続されている。また、第2の高圧選択弁49の出力側は、パイロット管路29Bを介して左シリンダ制御弁28の縮小側の油圧パイロット部28Bに接続されると共に、パイロット管路33Bを介して右シリンダ制御弁32の縮小側の油圧パイロット部32Bに接続されている。
【0070】
従って、左,右の作動モード切換弁42,45が連動作動位置(d)を保持した状態では、第1の高圧選択弁48は、左パイロット弁39から伸長側管路43Aを通じて導入されるパイロット圧と右パイロット弁40から伸長側管路46Aを通じて導入されるパイロット圧のうち高圧側のパイロット圧を選択し、選択したパイロット圧をパイロット管路29A,33Aを通じて左,右のシリンダ制御弁28,32の伸長側の油圧パイロット部28A,32Aに同時に出力する。
【0071】
また、左,右の作動モード切換弁42,45が連動作動位置(d)を保持した状態では、第2の高圧選択弁49は、左パイロット弁39から縮小側管路43Bを通じて導入されるパイロット圧と右パイロット弁40から縮小側管路46Bを通じて導入されるパイロット圧のうち高圧側のパイロット圧を選択し、選択したパイロット圧をパイロット管路29B,33Bを通じて左,右のシリンダ制御弁28,32の縮小側の油圧パイロット部28B,32Bに同時に出力する。
【0072】
このため、左,右の作動モード切換弁42,45の電磁パイロット部42A,45Aに対してモード切換信号が出力されず、左,右の作動モード切換弁42,45が連動作動位置(d)を保持した状態で、左,右のパイロット弁39,40のうちいずれか一方を伸長側に操作したときには、左,右のシリンダ制御弁28,32の伸長側の油圧パイロット部28A,32Aに同時にパイロット圧が供給される。これにより、左,右のシリンダ制御弁28,32が同時に中立位置(a)から伸長位置(b)に切換り、左,右の押えアームシリンダ23,24が伸長するので、左,右の押えアーム20,21を連動させて下げ位置(図4の位置)へと回動させることができる構成となっている。
【0073】
また、左,右の作動モード切換弁42,45が連動作動位置(d)を保持した状態で、左,右のパイロット弁39,40のうちいずれか一方を縮小側に操作したときには、左,右のシリンダ制御弁28,32の縮小側の油圧パイロット部28B,32Bに同時にパイロット圧が供給される。これにより、左,右のシリンダ制御弁28,32が同時に中立位置(a)から縮小位置(c)に切換り、左,右の押えアームシリンダ23,24が縮小するので、左,右の押えアーム20,21を連動させて上げ位置(図3の位置)へと回動させることができる構成となっている。
【0074】
一方、左,右の作動モード切換弁42,45が独立作動位置(e)に切換った状態では、左パイロット弁39の減圧弁39Aから出力されたパイロット圧は、伸長側バイパス管路44A、パイロット管路29Aを通じて左シリンダ制御弁28の伸長側の油圧パイロット部28Aに直接的に供給され、左パイロット弁39の減圧弁39Bから出力されたパイロット圧は、縮小側バイパス管路44B、パイロット管路29Bを通じて左シリンダ制御弁28の縮小側の油圧パイロット部28Bに直接的に供給される。
【0075】
また、左,右の作動モード切換弁42,45が独立作動位置(e)に切換った状態では、右パイロット弁40の減圧弁40Aから出力されたパイロット圧は、伸長側バイパス管路47A、パイロット管路33Aを通じて右シリンダ制御弁32の伸長側の油圧パイロット部32Aに直接的に供給され、右パイロット弁40の減圧弁40Bから出力されたパイロット圧は、縮小側バイパス管路47B、パイロット管路33Bを通じて右シリンダ制御弁32の縮小側の油圧パイロット部32Bに直接的に供給される。
【0076】
このため、左,右の作動モード切換弁42,45の電磁パイロット部42A,45Aに後述のスイッチ装置50からモード切換信号が出力され、左,右の作動モード切換弁42,45が独立作動位置(e)に切換った状態では、左パイロット弁39に対する操作に応じたパイロット圧が、左シリンダ制御弁28の油圧パイロット部28Aまたは28Bに個別に出力され、右パイロット弁40に対する操作に応じたパイロット圧が、右シリンダ制御弁32の油圧パイロット部32Aまたは32Bに個別に出力される。
【0077】
これにより、左,右のシリンダ制御弁28,32が、互いに独立して中立位置(a)から伸長位置(b)または縮小位置(c)に切換り、左,右の押えアーム20,21を互いに独立して上,下方向に回動させることができる構成となっている。
【0078】
50は左,右の作動モード切換弁42,45の電磁パイロット部42A,45Aにモード切換信号を出力するスイッチ装置で、該スイッチ装置50は、並列に接続された2個のスイッチ50A,50Bにより構成されている。そして、スイッチ装置50は、各スイッチ50A,50Bがいずれも開成しているときには、低レベルのモード切換信号を左,右の作動モード切換弁42,45の電磁パイロット部42A,45Aにそれぞれ出力し、各スイッチ50A,50Bのいずれか一方が閉成したときには、バッテリ51からの電流を高レベルのモード切換信号として、左,右の作動モード切換弁42,45の電磁パイロット部42A,45Aにそれぞれ出力する構成となっている。
【0079】
この場合、図7に示すように、一方のスイッチ50Aは、左押えアーム用ペダル17(左パイロット弁39)の近傍に配置された左操作レバー13に設けられ、他方のスイッチ50Bは、右押えアーム用ペダル18(右パイロット弁40)の近傍に配置された右操作レバー14に設けられている。これにより、オペレータは、左,右の押えアーム用ペダル17,18を踏込み操作しつつ、解体作業の内容に応じて適宜にスイッチ50Aまたは50Bを操作することができ、左,右の作動モード切換弁42,45を連動作動位置(d)と独立作動位置(e)とに随時切換えることができる構成となっている。
【0080】
本実施の形態による解体機1は上述の如き構成を有するもので、以下、この解体機1を用いて自動車ボディAを解体する作業について説明する。
【0081】
まず、左,右の押えアーム20,21を連動させて自動車ボディAを押え込む場合には、オペレータは、左,右の操作レバー13,14に設けたスイッチ50A,50Bを開成させた状態で、左,右の押えアーム用ペダル17,18に対する踏込み操作を行う。
【0082】
この場合、左,右の作動モード切換弁42,45の電磁パイロット部42A,45Aには、スイッチ装置50からのモード切換信号が出力されないので、左,右の作動モード切換弁42,45は、それぞれ連動作動位置(d)を保持する。
【0083】
この状態で、左,右のパイロット弁39,40のうちいずれか一方を伸長側に操作したときには、第1の高圧選択弁48が、左パイロット弁39から伸長側管路43Aを通じて導入されるパイロット圧と、右パイロット弁40から伸長側管路46Aを通じて導入されるパイロット圧のうち高圧側を選択し、選択したパイロット圧をパイロット管路29A,33Aを通じて左,右のシリンダ制御弁28,32の伸長側の油圧パイロット部28A,32Aに同時に出力する。
【0084】
これにより、左,右のシリンダ制御弁28,32が同時に中立位置(a)から伸長位置(b)に切換り、左,右の押えアームシリンダ23,24が伸長するので、左,右の押えアーム20,21を連動させて下げ位置(図4の位置)へと回動させることができる。この結果、例えば図1に示すように、左,右の押えアーム20,21によって自動車ボディAのルーフ部を同時に押え込むことができ、この状態で、作業装置19のグラップル19Cを用いて効率良く自動車ボディAを解体することができる。
【0085】
また、左,右のパイロット弁39,40のうちいずれか一方を縮小側に操作したときには、第2の高圧選択弁49が、左パイロット弁39から縮小側管路43Bを通じて導入されるパイロット圧と、右パイロット弁40から縮小側管路46Bを通じて導入されるパイロット圧のうち高圧側を選択し、選択したパイロット圧をパイロット管路29B,33Bを通じて左,右のシリンダ制御弁28,32の縮小側の油圧パイロット部28B,32Bに同時に出力する。
【0086】
これにより、左,右のシリンダ制御弁28,32が同時に中立位置(a)から縮小位置(c)に切換り、左,右の押えアームシリンダ23,24が縮小するので、左,右の押えアーム20,21を連動させて上げ位置(図3の位置)へと回動させることができる。
【0087】
このように、左,右の操作レバー13,14に設けたスイッチ50A,50Bを開成させた状態では、左,右の作動モード切換弁42,45が連動作動位置(d)を保持する。従って、オペレータが、左,右の押えアーム用ペダル17,18のうちいずれか一方を踏込むことにより、左,右のパイロット弁39,40のうちいずれか一方のみを伸長側または縮小側に操作するだけで、左,右の押えアーム20,21を連動させて上,下方向に回動させることができる。この結果、例えば自動車ボディAのルーフ部のように、解体対象物のうち地面からの高さ位置がほぼ等しい部位を、連動する左,右の押えアーム20,21によって確実に押え込むことができ、作業装置19を用いて自動車ボディAを解体するときの作業性を高めることができる。
【0088】
次に、左,右の押えアーム20,21を互いに独立させて自動車ボディAを押え込む場合には、オペレータは、左,右の操作レバー13,14に設けたスイッチ50A,50Bのうちいずれか一方を閉成させた状態で、左,右の押えアーム用ペダル17,18に対する踏込み操作を行う。
【0089】
この場合、左,右の作動モード切換弁42,45は、スイッチ装置50からの高レベルのモード切換信号が電磁パイロット部42A,45Aに出力されることにより、連動作動位置(d)から独立作動位置(e)に切換る。
【0090】
この状態で、左パイロット弁39を伸長側に操作すると、左パイロット弁39の減圧弁39Aから出力されたパイロット圧は、伸長側バイパス管路44A、パイロット管路29Aを通じて左シリンダ制御弁28の伸長側の油圧パイロット部28Aに直接的に供給される。これにより、左シリンダ制御弁28が単独で中立位置(a)から伸長位置(b)に切換り、左押えアームシリンダ23が独立して伸長するので、左押えアーム20を独立して下げ位置へと回動させることができる。
【0091】
一方、右パイロット弁40を伸長側に操作すると、右パイロット弁40の減圧弁40Aから出力されたパイロット圧は、伸長側バイパス管路47A、パイロット管路33Aを通じて右シリンダ制御弁32の伸長側の油圧パイロット部32Aに直接的に供給される。これにより、右シリンダ制御弁32が単独で中立位置(a)から伸長位置(b)に切換り、右押えアームシリンダ24が独立して伸長するので、右押えアーム21を、左押えアーム20の動作とは無関係に下げ位置へと回動させることができる。
【0092】
この結果、例えば図5及び図6に示すように、左押えアーム20によって自動車ボディAのフロントノーズ部を押え込むと共に、右押えアーム21によって自動車ボディAのルーフ部を押え込むことができ、この状態で、作業装置19のグラップル19Cを用いて効率良く自動車ボディAを解体することができる。
【0093】
また、左パイロット弁39を縮小側に操作したときには、左パイロット弁39の減圧弁39Bから出力されたパイロット圧は、縮小側バイパス管路44B、パイロット管路29Bを通じて左シリンダ制御弁28の縮小側の油圧パイロット部28Bに直接的に供給される。これにより、左シリンダ制御弁28が単独で中立位置(a)から縮小位置(c)に切換り、左押えアームシリンダ23が独立して縮小するので、左押えアーム20を独立して上げ位置へと回動させることができる。
【0094】
一方、右パイロット弁40を縮小側に操作したときには、右パイロット弁40の減圧弁40Bから出力されたパイロット圧は、縮小側バイパス管路47B、パイロット管路33Bを通じて右シリンダ制御弁32の縮小側の油圧パイロット部32Bに直接的に供給される。これにより、右シリンダ制御弁32が単独で中立位置(a)から縮小位置(c)に切換り、右押えアームシリンダ24が独立して縮小するので、右押えアーム21を、左押えアーム20の動作とは無関係に上げ位置へと回動させることができる。
【0095】
このように、左,右の操作レバー13,14に設けたスイッチ50A,50Bのうちいずれか一方を閉成させた状態では、左,右の作動モード切換弁42,45が独立作動位置(e)に切換る。従って、オペレータが、左,右の押えアーム用ペダル17,18を踏込むことにより、左,右のパイロット弁39,40をそれぞれ伸長側または縮小側に操作すると、左押えアーム20を左パイロット弁39の操作に応じて独立して上,下方向に回動させることができ、右押えアーム21を右パイロット弁40の操作に応じて独立して上,下方向に回動させることができる。この結果、例えば自動車ボディAのルーフ部とフロントノーズ部のように、解体対象物のうち地面からの高さ位置が異なる部位を、互いに独立して回動する左,右の押えアーム20,21によって確実に押え込むことができ、作業装置19を用いて自動車ボディAを解体するときの作業性を高めることができる。
【0096】
かくして、本実施の形態によれば、左,右のパイロット弁39,40と左,右のシリンダ制御弁28,32との間に、左,右の作動モード切換弁42,45、第1,第2の高圧選択弁48,49等からなる作動モード切換手段41を設ける構成としたので、左,右の作動モード切換弁42,45を連動作動位置に切換えたときには、左,右のパイロット弁39,40のうちいずれか一方を操作することにより左,右の押えアーム20,21を連動して回動させることができ、左,右の作動モード切換弁42,45を独立作動位置に切換えたときには、左,右の押えアーム20,21を左,右のパイロット弁39,40の操作に応じて互いに独立して回動させることができる。
【0097】
このため、解体対象物のうち地上からの高さ位置が等しい部位(例えば、自動車ボディAのルーフ部)を、連動して回動する左,右の押えアーム20,21によって一緒に押え込む動作(図1参照)と、解体対象物のうち地上からの高さ位置が異なる部位(例えば、自動車ボディAのルーフ部とフロントノーズ部)を、独立して回動する左,右の押えアーム20,21によって個別に押え込む動作(図5、図6参照)とを、解体対象物の形状に応じて適宜に切換えることができるので、凸凹形状を有する解体対象物を解体するときの作業性を高めることができる。
【0098】
また、左,右の作動モード切換弁42,45にモード切換信号を出力するスイッチ50A,50Bを、左,右のパイロット弁39,40を操作する左,右の押えアーム用ペダル17,18の近傍に配置された左,右の操作レバー13,14に設ける構成としたので、オペレータは、左,右の押えアーム用ペダル17,18を踏込み操作しつつ、解体作業の内容に応じて適宜にスイッチ50Aまたは50Bを操作することができる。この結果、左,右の押えアーム20,21を連動して回動させる連動作動モードと、左,右の押えアーム20,21を互いに独立して回動させる独立作動モードとを、解体作業の内容に応じて迅速に切換えることができ、解体作業の作業性を一層高めることができる。
【0099】
なお、上述した実施の形態では、左,右の作動モード切換弁42,45にモード切換信号を出力するスイッチ装置50を、並列接続された2個のスイッチ50A,50Bによって構成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば1個または3個以上のスイッチによって構成してもよい。
【0100】
また、上述した実施の形態では、スイッチ50A,50Bを左,右の操作レバー13,14に設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば左,右の走行レバー・ペダル15,16、左,右の操作レバー13,14が設けられたコンソールボックス等の、左,右のパイロット弁39,40の近傍となる他の部位に設ける構成としてもよい。
【0101】
さらに、上述した実施の形態では、解体機1によって自動車ボディAを解体する場合を例示したが、本発明はこれに限らず、例えば大型な家電製品、事務機器等の他のスクラップ材を解体する作業に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の実施の形態による解体機を示す正面図である。
【図2】解体機の左,右の押えアーム等を図1中の矢示II―II方向からみた断面図である。
【図3】左押えアーム、左押えアームシリンダ等を、押えアームを上げ位置とした状態で示す図2中の矢示III―III方向からみた断面図である。
【図4】左押えアーム、左押えアームシリンダ等を、押えアームを下げ位置とした状態で示す図3と同様な断面図である。
【図5】左,右の押えアームを独立作動モードとした解体機を示す一部破断の正面図である。
【図6】左,右の押えアームを独立作動モードとした解体機を図5中の矢示VI―VI方向からみた左側面図である。
【図7】解体機のキャブ内を示す一部破断の拡大図である。
【図8】左,右の押えアームシリンダを駆動する油圧系統を示す油圧回路図である。
【符号の説明】
【0103】
1 解体機
2 下部走行体
3 上部旋回体
19 作業装置
20 左押えアーム
21 右押えアーム
23 左押えアームシリンダ
24 右押えアームシリンダ
25 油圧ポンプ(油圧源)
26 タンク(油圧源)
28 左シリンダ制御弁
32 右シリンダ制御弁
39 左パイロット弁
40 右パイロット弁
41 作動モード切換手段
42 左作動モード切換弁
45 右作動モード切換弁
48 第1の高圧選択弁
49 第2の高圧選択弁
50 スイッチ装置
50A,50B スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、該車体に設けられ解体対象物を解体する作業装置と、左,右方向に離間して前記車体に上,下方向に回動可能に取付けられ前記解体対象物を押える左,右の押えアームと、油圧源から圧油が給排されることにより前記左,右の押えアームを押動する左,右の押えアームシリンダと、前記油圧源から前記左,右の押えアームシリンダに給排される圧油の方向を制御する左,右の油圧パイロット式のシリンダ制御弁と、オペレータの操作に応じて前記左,右のシリンダ制御弁にパイロット信号を出力する左,右のパイロット弁とを備えてなる解体機において、
前記左,右のパイロット弁と前記左,右のシリンダ制御弁との間には、
前記左,右のパイロット弁のうちいずれか一方が操作されたときに前記左,右のシリンダ制御弁に同時にパイロット信号を出力し前記左,右の押えアームを連動して押動させる連動作動モードと、前記左,右のパイロット弁の操作に応じて前記左,右のシリンダ制御弁に個別にパイロット信号を出力し前記左,右の押えアームを独立して押動させる独立作動モードとに選択的に切換えられる作動モード切換手段を設ける構成としたことを特徴とする解体機。
【請求項2】
前記作動モード切換手段は、
モード切換信号に基づいて出力ポートから前記左,右のシリンダ制御弁の双方にパイロット信号を出力する連動作動位置とモード切換信号に基づいて出力ポートから対応する前記左,右のシリンダ制御弁の一方に直接的にパイロット信号を出力する独立作動位置とに切換えられる左,右の作動モード切換弁と、
前記左,右の作動モード切換弁の出力ポートと前記左,右のシリンダ制御弁との間の管路にそれぞれ設けられ、前記作動モード切換弁が前記連動作動位置にある場合に前記左,右のパイロット弁のいずれか一方を操作したときに当該いずれか一方のパイロット弁からのパイロット信号を前記左,右のシリンダ制御弁に同時に出力する高圧選択弁とにより構成してなる請求項1に記載の解体機。
【請求項3】
前記左,右のシリンダ制御弁は、前記左,右の押えアームシリンダを伸長させる伸長位置と、前記左,右の押えアームシリンダを縮小させる縮小位置と、前記左,右の押えアームシリンダを停止させる中立位置との3位置に切換えられる油圧パイロット式の方向制御弁により構成し、
前記左,右のパイロット弁は、オペレータの操作に応じた伸長側のパイロット圧と縮小側のパイロット圧とを出力する減圧弁型のパイロット弁により構成し、
前記左,右の作動モード切換弁は、前記モード切換信号に応じて、前記左,右のパイロット弁のうちいずれか一方のパイロット弁からのパイロット圧が出力されたときにこのパイロット圧を前記高圧選択弁に出力する連動作動位置と、前記左,右のパイロット弁からのパイロット圧を前記左,右のシリンダ制御弁に直接的に出力する独立作動位置とに切換えられる電磁パイロット式の方向制御弁により構成してなる請求項2に記載の解体機。
【請求項4】
前記左,右のパイロット弁の近傍には、前記左,右の作動モード切換弁に対し前記モード切換信号を出力するスイッチを設ける構成としてなる請求項2または3に記載の解体機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−274474(P2009−274474A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124796(P2008−124796)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】