説明

触媒コンバータ

【課題】触媒コンバータの中心を貫通するバイパス通路を流れる排気ガスの熱がハニカム体に伝達されることに起因する様々な問題を防止又は未然回避することができる触媒コンバータを提供する。
【解決手段】触媒コンバータは、円筒状ケース20に収容された触媒担持用ハニカム体10と、そのハニカム体10の中心部を貫通するバイパス通路Bとを備える。バイパス通路Bとそれを取り囲むハニカム体10との境界域には、第1内管21及び第2内管22から構成される二重内管が設けられている。第1内管21と第2内管22との間には、二重内管の上流側端部において第1内管21の上流側端部と第2内管22の縮径部23の上流側接触部23aとを固着することで上流側からの排気ガスの進入を不能とした中空断熱層25が確保されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気ガス浄化装置の一種である、又は、排気ガス浄化装置の排気経路の一部に配設して用いられる触媒コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排気ガス浄化用触媒を担持するハニカム体を備えた排気ガス浄化装置が知られている。例えば特許文献1は、薄肉金属板の平板状帯材と波板状帯材とを重積しこれを一括渦巻状に巻回積層して製作した軸方向に多数の網目状通気孔路を有する触媒担持用ハニカムコア体であって、その巻回中心部に円筒状中空部を形成してなるハニカムコア体(つまり軸直交断面が円環状をなすハニカムコア体)を開示する。通常、かかるハニカムコア体の円筒状中空部内には金属円筒(パイプ)が配設されると共に、当該ハニカムコア体は円筒状金属ケース内に装填されて触媒コンバータを構成する。そして、触媒コンバータの実車搭載時には、ハニカムコア体の中心を貫通する前記パイプは、エンジンからの排気ガスにハニカムコア体を迂回させるためのバイパス通路として利用される。
【特許文献1】実公平7−33875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の触媒コンバータでは、単一のパイプによって構成されたバイパス通路を排気ガスが流れるとき、排気ガスの熱が当該パイプ及びそれを取り囲むハニカムコア体に多量に伝達されることで様々な問題を生じていた。例えば、パイプ壁を介して伝達される熱により、ハニカムコア体の内周部と外周部とで熱分布の不均等(即ち径方向への過大な熱勾配)が生まれ、それに起因してハニカムコア体内では周方向の引っ張り応力が生じ、その結果、巻回積層状態にある金属帯材が切れて箔状に欠け落ちたり、帯材の一部が位置ズレを起こして脱落したりすることがあった。また、排気熱によって過度に熱膨張したパイプと円筒状金属ケースとの間でハニカムコア体を圧迫して破損したり、パイプ自体に亀裂を生じたりすることがあった。
【0004】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、触媒コンバータの中心を貫通するバイパス通路を流れる排気ガスの熱がハニカム体に伝達されることに起因する様々な問題を防止又は未然回避することの可能な触媒コンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、軸方向に延びる多数の通気孔路を有する触媒担持用ハニカム体と、そのハニカム体の中心部を軸方向に貫通する中心部通路とを備えた触媒コンバータであって、前記中心部通路とそれを取り囲む前記ハニカム体との境界域には、前記中心部通路を区画形成する第1の内管及びその第1の内管を間隔を隔てて包囲する第2の内管から構成される二重内管が設けられ、前記第2内管の上流側端部には、その全周にわたって縮径部が形成され、前記第1内管と前記第2内管との間には、前記二重内管の上流側端部において第1内管の上流側端部又はその近傍と第2内管の前記縮径部とを固着することで上流側からの排気ガスの進入を不能とした中空断熱層が確保されていることをその要旨としている。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、触媒コンバータの中心部通路を区画形成する第1内管及びその第1内管を間隔を隔てて包囲する第2内管から構成される二重内管により、中心部通路とそれを取り囲むハニカム体との境界域、即ち中心部通路の周囲には、中空断熱層(例えば空気層)が確保される。そして、この中空断熱層は、二重内管の上流側端部において第1内管の上流側端部又はその近傍と第2内管の縮径部とを固着することで上流側からの排気ガスの進入を不能とされている。このため、中心部通路を高温の排気ガスが流れたときでも、その周囲に確保された中空断熱層によって中心部通路からハニカム体への熱伝達が緩和される。従って、ハニカム体の内周部と外周部とで不均等な熱分布(つまり径方向での過大な熱勾配)が生じ難く、仮にそのような熱分布(熱勾配)に起因してハニカム体内で周方向への引っ張り応力が生じたとしても、その周方向引っ張り応力は過大化しないため、ハニカム体の破損を防止することができる。
【0007】
また、二重内管の上流側端部において第1内管と第2内管とを全周にわたって固着すべく第2内管に形成された縮径部は、上流側から中空断熱層内への排気ガスの進入を不能とする排気ガス遮断手段(遮断壁)として機能し、中空断熱層の断熱性能維持に貢献する。また、第2内管の縮径部と第1内管とを二重内管の上流側端部にて相互に固着しているため、両内管の軸方向又は長手方向に沿った範囲内における両内管の固着箇所(固定箇所)が、縮径部に対応する一円周に沿った一箇所(二重内管の上流側端部)だけに限定される。このため、第1内管内に高温の排気ガスが流れて第1内管が第2内管に比べて大きく熱膨張するような場合でも、第1内管は第2内管に拘束されること無く、軸方向に無理なく熱膨張することができる。それ故、第1内管と第2内管との間の熱膨張量の差に基づく熱応力集中の発生を回避でき、熱応力集中による二重内管の破損を防止することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の触媒コンバータにおいて、前記縮径部は、前記第1内管の上流側端部又はその近傍の全周にわたって接触可能な上流側接触部と、該上流側接触部から次第に拡径するテーパ部とから形成されていることをその要旨としている。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、第2内管の縮径部に形成された上流側接触部は、第1内管の上流側端部又はその近傍の全周にわたって接触可能とされているため、当該上流側接触部と第1内管の上流側接触部又はその近傍とを全周にわたって接触させた状態で両者を固着することにより、両内管間の気密性が高められ、第1内管と第2内管との間に形成される中空断熱層の確保がより確実なものとなる。また、二重内管の上流側端部において第1内管と第2内管とを固着するにあたり、第1内管と上流側接触部(第2内管)とを相互に接触させて重ね合わせた状態とすることで両内管の固着が容易かつ確実に行われるようになる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の触媒コンバータにおいて、前記第2内管の下流側端部には、前記第1内管の下流側端部又はその近傍に固定されることなく、当該第1内管の下流側端部又はその近傍の全周にわたって接触可能な下流側接触部が形成されていることをその要旨としている。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、第2内管に形成された下流側接触部は、二重内管の下流側端部に位置すると共に、第1内管の下流側端部又はその近傍の全周にわたって接触して中空断熱層の下流側開口部をほぼ塞ぎ得るため、触媒コンバータの下流側の排気ガスが逆流して中空断熱層へ進入するのを極力防止することができる。また、第2内管の下流側接触部は、第1内管に固定(固着)されておらず、即ち二重内管の下流側端部における第1内管と第2内管とは、非固定状態(非固着状態)とされている。このため、両内管の軸方向又は長手方向に沿った範囲内における両内管の固定箇所(固着箇所)が前記縮径部に対応する一円周に沿った一箇所(二重内管の上流側端部)だけに限定されるという構造が維持され、請求項1で言及したような作用効果(熱応力集中の回避)が保たれる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の触媒コンバータにおいて、前記触媒コンバータは、前記ハニカム体を収容する円筒状ケースを更に備えており、ハニカム体の内周面をその下流側端部及び上流側端部のうちの一方において前記第2内管の外周面に対し連結し、且つ、ハニカム体の外周面をその下流側端部及び上流側端部のうちの他方において前記円筒状ケースの内周面に対し連結することにより、前記ハニカム体が円筒状ケースと二重内管との間に保持されていることをその要旨としている。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、二重内管の第1内管内を高温の排気ガスが流れ、それを取り囲むハニカム体に熱が伝達されてハニカム体の内周部と外周部との間で熱勾配又は熱較差が生じた場合でも、ハニカム体の内周面は下流側端部(又は上流側端部)において第2内管に連結されているだけなので、ハニカム体の内周部と第2内管とは互いに拘束されること無く軸方向に熱膨張できる。同様に、ハニカム体の外周面は上流側端部(又は下流側端部)において円筒状ケースに連結されているだけなので、ハニカム体の外周部と円筒状ケースとは互いに拘束されること無く軸方向に熱膨張できる。それ故、触媒コンバータの中心軸線に対して同心円状の配置関係にある、第2内管、ハニカム体の内周部、ハニカム体の外周部及び円筒状ケースの四者間で大きな熱勾配又は熱較差が生じたとしても、ハニカム体の内部や連結部位には熱応力集中がなく、ハニカム体の破損が防止される。
【0014】
また、ハニカム体の内周面をその下流側端部及び上流側端部のうちの一方において第2内管の外周面に対して連結するときには、ハニカム体の外周面をその下流側端部及び上流側端部のうちの他方において円筒状ケースの内周面に対し連結するという具合に、ハニカム体の内周面側連結位置と外周面側連結位置とを軸方向にずらしている。それ故、上記熱応力集中の回避作用を維持しながらも、円筒状ケースと二重内管との間にハニカム体を安定的に保持することができる。
【0015】
(付記)請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の触媒コンバータにおいて、「前記ハニカム体が、薄肉金属の平板状帯材と波板状帯材とを重積しこれを一括渦巻状に巻回積層して製作すると共にその巻回中心部に円筒状中空部を形成してなる軸方向に延びる多数の通気孔路を有する触媒担持用ハニカム体であること」は好ましい。このようなハニカ
ム体では平板状帯材等が渦巻状の積層構造を構築し、ハニカム体の内周部と外周部とで各階層を構成する帯材の独立性が高まる(つまり各階層間での相互拘束性が弱まる)ので、請求項4に記載したような構成に基づく作用効果がより効果的に発揮される。
【発明の効果】
【0016】
請求項1から請求項4に記載の発明の触媒コンバータによれば、その中心部通路とそれを取り囲むハニカム体との境界域に第1及び第2の内管からなる二重内管を設けて中空断熱層を確保し、中心部通路からハニカム体への熱伝達を緩和することにより、ハニカム体内での不均等な熱分布を回避してハニカム体の破損を防止できる。また上述のように、二重内管における第1及び第2内管間の固着構造(又は非固着構造)や、円筒状ケースと二重内管との間におけるハニカム体の保持構造を工夫することにより、触媒コンバータの各部における熱応力集中を回避して、触媒コンバータの破損を未然防止することが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、中空断熱層の確保をより確実なものとすることができる。また、請求項2に記載の発明によれば、二重内管の上流側端部において第1内管と第2内管との固着を容易かつ確実に行うことができる。請求項3に記載の発明によれば、下流側接触部により、触媒コンバータの下流側の排気ガスが逆流して中空断熱層へ進入することを極力防止できる。請求項4に記載の発明によれば、円筒状ケースと二重内管との間にハニカム体を安定的に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。図1及び図2に示すように、触媒コンバータは、触媒担持用ハニカム体10と、そのハニカム体10を収容する円筒状ケース20と、前記ハニカム体10の中心部を軸方向に貫通する二重内管(21,22)とを備えている。
【0019】
触媒担持用ハニカム体10は、金属製あるいはセラミックス製のいずれでもよいが、その中心部に二重内管(21,22)を配置するための円筒状中空部を形成し易いという点で、金属製のハニカム体であることが好ましい。金属製のハニカム体10は、例えば、耐熱性薄肉鋼板の平板状帯材11と、耐熱性薄肉鋼板を波形に機械加工して得た波板状帯材12とを相互当接させながら重積すると共に、その重積した帯材11,12を巻回案内棒を用いて一括渦巻状に巻回し、その後に巻回案内棒を中心から抜き取ることによって得られる。こうして得られたハニカム体10は、軸方向に延びる多数の網目状通気孔路13を有すると共に、その巻回中心部に円筒状中空部を有してなる略円柱形状をなす。尚、ハニカム体10には所定の触媒物質が担持される。
【0020】
円筒状ケース20は、例えばステンレス鋼で作られた円筒状部材である。円筒状ケース20の内径は前記ハニカム体10の外径よりも若干大きく、且つ、円筒状ケース20の軸方向長(全長)は前記ハニカム体10の軸方向長よりも大きく設定されており、円筒状ケース20の中央内部にハニカム体10を収容することができる。
【0021】
二重内管(21,22)は、第1の内管21及びその第1内管21を所定間隔を隔てて包囲する第2の内管22から構成されている。第1内管21は、ストレート円筒パイプ状のステンレス鋼管からなる。第2内管22は、ストレート円筒パイプ状のステンレス鋼管の両端部がそれぞれ縮径された縮径部23,24を有してなる。第1及び第2内管21,22の全長は円筒状ケース20の全長にほぼ等しく、第2内管22の半径は第1内管21の半径よりも大きい。
【0022】
この触媒コンバータでは、第1内管21、第2内管22及び円筒状ケース20は、それらに共通の中心軸線Lを中心として同心円状に配置される(図1参照)。そして、円筒状ケース20の内周面と第2内管22の外周面との間には、前記ハニカム体10の収容空間が区画形成される。また、最中心部分に配置される第1内管21は、ハニカム体10の中心部を軸方向に貫通する中心部通路としてのバイパス通路Bを区画形成する。そして、バイパス通路Bとハニカム体10との境界域には、二重内管(21,22)が配置されると共に、第1内管21と第2内管22との間には、両内管21,22の半径差にほぼ等しい間隔が全周にわたり確保される。すなわち、二重内管(21,22)の上流側端部及び下流側端部においては、第1内管21と第2内管22とが接触して隙間はないが、二重内管(21,22)の両端部を除く部分においては、第1内管21と第2内管22との間に隙間があって環状の空間(後述する中空断熱層25)が形成されている。
【0023】
図2に示すように、縮径部23は、第2内管22の上流側端部の全周にわたって形成されており、中空断熱層25への排気ガスの進入を不能とする排気ガス遮断壁(排気ガス遮断手段)として機能する。この縮径部23は、第1内管21の上流側端部の全周にわたって接触可能な円筒状の上流側接触部23aと、該上流側接触部23aの最下流側から次第に拡径するテーパ部23bとから形成されている。上流側接触部23aの内径は、第1内管21の外径にほぼ等しい。テーパ部23bは、第2内管22の上流側接触部23aと第2内管22の最大外周部とをつないで傾斜している。二重内管(21,22)の上流側端部においては、第1内管21の上流側端部と第2内管22の上流側接触部23aとが相互に接触され、両内管21,22の上流側端部が重ね合わされた状態で全周にわたって溶接(溶接部は図示せず)により固着されている。このように第1内管21の上流側端部と第2内管22の上流側接触部23aとを全周にわたって溶接で固着することにより、第1内管21の外周面と第2内管22の内周面との間(両内管21,22の両端部を除く)には、触媒コンバータの上流側からの排気ガスの進入を不能とした中空断熱層25が確保される。尚、本実施形態では、中空断熱層25は空気層として存在する。
【0024】
また図2に示すように、縮径部24は、第2内管22の下流側端部の全周にわたって形成されている。この縮径部24は、第1内管21の下流側端部の全周にわたって接触可能な円筒状の下流側接触部24aと、該下流側接触部24aの最上流側から次第に拡径するテーパ部24bとから形成されている。下流側接触部24aの内径は、第1内管の外径にほぼ等しく、前記上流側接触部23aの内径にほぼ等しい。テーパ部24bは、第2内管22の下流側接触部24aと第2内管22の最大外周部とをつないで傾斜している。二重内管(21,22)の下流側端部においても、上述した二重内管(21,22)の上流側端部と同様に、第1内管21の下流側端部と第2内管22の下流側接触部24aとが相互に接触されているが、この下流側接触部24aは、第1内管21の下流側端部に固着(固定)されていない。つまり、前記上流側接触部23aは固着端(固定端)となっているのに対し、下流側接触部24aは自由端となっており、上述した二重内管の上流側端部における第1内管21と第2内管22との固着状態(固定状態)と異なり、二重内管の下流側端部における第1内管21と第2内管22とは、非固着状態(非固定状態)とされている。下流側接触部24aは、第1内管22の下流側端部の全周にわたって接触することで中空断熱層25の下流側の環状開口部をほぼ塞ぐため、触媒コンバータ下流側の排気ガスが逆流して中空断熱層25へ進入するのを極力防止する働きをする。
【0025】
本実施形態では、第1内管21と第2内管22(上流側接触部23a)とが上流側端部のみで相互固着され、第1内管21と第2内管22とは下流側端部において全く固着されていない。このため、両内管21,22の軸方向又は長手方向に沿った範囲内における両内管21,22の固着箇所は、上流側接触部23aに対応する一円周に沿った一箇所だけに限定される。
【0026】
更に図2に示すように、ハニカム体10の上流側端部外周面は、環状ロウ付け部26を介して円筒状ケース20の内周面に対して全周連結されており、又、ハニカム体10の下流側端部内周面は、環状ロウ付け部27を介して第2内管22の外周面に対して全周連結されている。上流側の環状ロウ付け部26(ハニカム体の外周面側連結位置)と下流側の環状ロウ付け部27(ハニカム体の内周面側連結位置)とは軸方向にずれているので、上記二箇所の環状ロウ付け部26,27だけでの保持にもかかわらず、ハニカム体10は円筒状ケース20と二重内管(21,22)との間に安定的に保持される。
【0027】
尚、上記各ロウ付け部26,27で用いられるロウ材としては、例えば銀ロウ,銅ロウ,黄銅ロウ等があげられる。また、使用可能なロウ付け方法としては、真空炉中ロウ付けを例示できる。
【0028】
本実施形態によれば、以下のような作用及び効果を得ることができる。
【0029】
第1内管21及び第2内管22から構成される二重内管において、バイパス通路Bとそれを取り囲むハニカム体10との境界域には、第1内管21の上流側端部と第2内管22の上流側接触部23aとを全周にわたって固着することで中空断熱層25の確保がより確実なものとなる。故に、バイパス通路Bを高温の排気ガスが流れたときでも、その周囲に確保された中空断熱層25によってバイパス通路Bからハニカム体10への熱伝達が緩和され、ハニカム体10の内周部と外周部とで不均等な熱分布(つまり径方向での過大な熱勾配)が生じ難い。従って、熱分布(熱勾配)に起因してハニカム体10内で周方向への引っ張り応力が生じたとしても、その周方向引っ張り応力は過大化せず、ハニカム体10を構成している金属製帯材11,12が切れて箔状に欠け落ちたりすること(ハニカム体の破損)を防止できる。
【0030】
第1及び第2内管21,22の軸方向又は長手方向に沿った範囲内における両内管の固着箇所が、第1内管21の上流側端部及び第2内管22の縮径部23の上流側接触部23aに対応する一円周に沿った一箇所だけに限定されているため、第1内管21内に高温の排気ガスが流れて第1内管21が第2内管22に比べて大きく熱膨張するような場合でも、第1内管21は第2内管22に拘束されること無く、軸方向に無理なく熱膨張することができ、両内管21,22間の熱膨張量の差に基づく熱応力集中を回避できる。もし仮に、両内管21,22の軸方向又は長手方向に沿った範囲内における両内管の固着箇所が二箇所以上あるとき(例えば二重内管の上流側端部のみならず二重内管の下流側端部においても全周固着がある場合)には、第1内管21の軸方向熱膨張が二つの固着箇所によって阻害され、応力集中を招いてしまう。この点、本実施形態によれば、両内管21,22の軸方向固着箇所を一箇所のみとしているので、上述のような熱応力集中は起きず、熱応力集中による二重内管(21,22)の破損を防止することができる。
【0031】
更に本実施形態によれば、第1内管21内を高温の排気ガスが流れ、それを取り囲むハニカム体10に熱が伝達されてハニカム体10の内周部と外周部との間で熱勾配又は熱較差が生じたとしても、ハニカム体10の内周面は下流側の環状ロウ付け部27を介して第2内管22に全周連結されているだけなので、ハニカム体10の内周部(特に最内周に並ぶ通気孔路13群を構成する金属製帯材11,12)と第2内管22とは互いに拘束されること無く軸方向に熱膨張できる。同様に、ハニカム体10の外周面は上流側の環状ロウ付け部26を介して円筒状ケース20に全周連結されているだけなので、ハニカム体10の外周部(特に最外周に並ぶ通気孔路13群を構成する金属製帯材11,12)と円筒状ケース20とは互いに拘束されること無く軸方向に熱膨張できる。それ故、触媒コンバータの中心軸線Lに対して同心円状の配置関係にある、第2内管22、ハニカム体10の内周部、ハニカム体10の外周部及び円筒状ケース20の四者間で大きな熱勾配又は熱較差が生じたとしても、ハニカム体10の内部や連結部位に熱応力が集中することはなく、ハニカム体10の破損を防止することができる。
【0032】
(変更例)本発明の実施形態を以下のように変更してもよい。
円筒状ケース20と二重内管(21,22)との間にハニカム体10を保持する際の取付け方法として、図2に示すロウ付け態様に代えて、図3に示すようなロウ付け態様を採用してもよい。即ち、ハニカム体10の上流側端部内周面を、環状ロウ付け部28を介して第2内管22の外周面に対して全周連結すると共に、ハニカム体10の下流側端部外周面を、環状ロウ付け部29を介して円筒状ケース20の内周面に対して全周連結してもよい。この場合も、上流側の環状ロウ付け部28(ハニカム体の内周面側連結位置)と下流側の環状ロウ付け部29(ハニカム体の外周面側連結位置)とが軸方向にずれているので、上記二箇所の環状ロウ付け部28,29だけでの保持にもかかわらず、ハニカム体10は円筒状ケース20と二重内管(21,22)との間に安定的に保持される。
【0033】
上記実施形態では、第2内管22の上流側接触部23aを第1内管21の上流側端部に固着することとしたが、第1内管21の上流側端部近傍に固着することとしてもよい。また、上記実施形態では、第2内管22の下流側接触部24aを第1内管21の下流側端部の全周にわたって接触させるようにしたが、第1内管21の下流側端部近傍の全周にわたって接触させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】触媒コンバータの概略を示す正面図である。
【図2】図1のA−A線での縦断面を拡大して示す断面図である。
【図3】変更例における図2相当の断面図である。
【符号の説明】
【0035】
10 触媒保持用ハニカム体
13 ハニカム体の網目状通気孔路
20 円筒状ケース
21 第1の内管(第1内管)
22 第2の内管(第2内管)
23 縮径部
23a 上流側接触部
23b テーパ部
24 縮径部
24a 下流側接触部
24b テーパ部
25 中空断熱層
26,27,28,29 環状ロウ付け部
B 中心部通路としてのバイパス通路
L 中心軸線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる多数の通気孔路を有する触媒担持用ハニカム体と、そのハニカム体の中心部を軸方向に貫通する中心部通路とを備えた触媒コンバータであって、
前記中心部通路とそれを取り囲む前記ハニカム体との境界域には、前記中心部通路を区画形成する第1の内管及びその第1の内管を間隔を隔てて包囲する第2の内管から構成される二重内管が設けられ、前記第2内管の上流側端部には、その全周にわたって縮径部が形成され、前記第1内管と前記第2内管との間には、前記二重内管の上流側端部において第1内管の上流側端部又はその近傍と第2内管の前記縮径部とを固着することで上流側からの排気ガスの進入を不能とした中空断熱層が確保されていることを特徴とする触媒コンバータ。
【請求項2】
前記縮径部は、前記第1内管の上流側端部又はその近傍の全周にわたって接触可能な上流側接触部と、該上流側接触部から次第に拡径するテーパ部とから形成されていることを特徴とする請求項1に記載の触媒コンバータ。
【請求項3】
前記第2内管の下流側端部には、前記第1内管の下流側端部又はその近傍に固定されることなく、当該第1内管の下流側端部又はその近傍の全周にわたって接触可能な下流側接触部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の触媒コンバータ。
【請求項4】
前記触媒コンバータは、前記ハニカム体を収容する円筒状ケースを更に備えており、ハニカム体の内周面をその下流側端部及び上流側端部のうちの一方において前記第2内管の外周面に対し連結し、且つ、ハニカム体の外周面をその下流側端部及び上流側端部のうちの他方において前記円筒状ケースの内周面に対し連結することにより、前記ハニカム体が円筒状ケースと二重内管との間に保持されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の触媒コンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−231183(P2006−231183A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48431(P2005−48431)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【Fターム(参考)】