触媒材料及びその製造方法、並びにハニカム構造体
【課題】担持させるハニカム構造体を腐食させることなく、低温で煤の燃焼が可能である触媒材料及びその製造方法、並びに該触媒材料を担持させたハニカム構造体を提供すること。
【解決手段】アルミナからなる基材粒子11と、その上に形成されたアルカリ性アルカリ塩からなるアルカリ層12と、基材粒子11上に分散された酸化銀又は炭酸銀からなる複数の微粒子13とからなる触媒材料1及びその製造方法である。その製造方法においては、混合工程と乾燥工程とを行う。混合工程においては、アルミナゾルに、硝酸銀水溶液を混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合することにより、水中に触媒材料が分散された分散液を得る。乾燥工程においては、分散液から触媒材料を分離して乾燥する。また、セル壁に、触媒材料1が担持されたセラミックハニカム構造体である。
【解決手段】アルミナからなる基材粒子11と、その上に形成されたアルカリ性アルカリ塩からなるアルカリ層12と、基材粒子11上に分散された酸化銀又は炭酸銀からなる複数の微粒子13とからなる触媒材料1及びその製造方法である。その製造方法においては、混合工程と乾燥工程とを行う。混合工程においては、アルミナゾルに、硝酸銀水溶液を混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合することにより、水中に触媒材料が分散された分散液を得る。乾燥工程においては、分散液から触媒材料を分離して乾燥する。また、セル壁に、触媒材料1が担持されたセラミックハニカム構造体である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される煤を燃焼するための触媒材料、及びその製造方法、並びに上記触媒材料を担持したハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディーゼルエンジン等において、エンジンから排出される煤が問題になっている。そこで、一般に、エンジンの排気管に白金アルミナ等よりなる触媒を有する浄化装置を介在させ、排ガス中の煤を除去することが行われている。
この浄化装置においては、触媒材料を担持させたハニカム構造体が容器に収納されており、この容器に煤を含んだ排ガスを透過させることにより排ガス中の煤を除去することができる。
【0003】
また、一般に、ハニカム構造体は、浄化装置内において再生利用される。即ち、排ガスの浄化に用いられたハニカム構造体には煤が蓄積する。そこで、再生過程において、過剰な燃料を燃やしてハニカム構造体の温度を上昇させることにより、ハニカム構造体にたまった煤を燃焼除去することができる。
【0004】
ところが、白金アルミナからなる従来の触媒材料を担持したハニカム構造体は、600℃以上という高温で加熱されなければ煤が燃焼除去されない。そのため、ハニカム構造体を収納する容器の上流には、一般に白金等からなる酸化触媒を別途設けることがおこなわれていた。そして、この酸化触媒に燃料を供給し、そこで高温のガスを発生させ、この高温のガスを下流のハニカム構造体に送り込むことにより、ハニカム構造体を温度600℃以上に加熱して煤の燃焼除去をおこなっていた。
しかし、このような再生過程においては、ハニカム構造体を高温にするために、燃料を多く消費してしまうため、燃費が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、再生時の燃焼温度の低下が可能な触媒材料の開発が要求されていた。具体的には、例えばアルカリ元素を含むアルカリ系触媒材料が提案されている(特許文献1)。かかる触媒材料を担持したハニカム構造体は、比較的低温での燃焼により再生を行うことができる。
【0006】
しかしながら、アルカリ系触媒材料はアルカリ元素濃度と活性温度との間に正の相関がある一方で、アルカリ元素濃度と溶解度との間にも正の相関がある。そのため、低温での燃焼を可能にするため比較的多量のアルカリ元素を用いる必要があった。その結果、アルカリ系触媒材料がハニカム構造体を腐食してしまったり、アルカリ系触媒材料が溶出しハニカム構造体外に排出されて浄化特性を劣化させてしまうおそれがあった。
【0007】
【特許文献1】特開2001−271634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来の問題点を鑑みてなされたものであって、担持させるハニカム構造体を腐食させることなく、低温で煤の燃焼が可能な触媒材料及びその製造方法、並びに該触媒材料を担持させたハニカム構造体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、セラミックスからなるハニカム構造体に担持させて内燃機関から排出される煤を燃焼するために用いられる触媒材料であって、
該触媒材料は、アルミナからなる基材粒子と、該基材粒子上に形成されたアルカリ性アルカリ塩からなるアルカリ層と、上記基材粒子上に分散された酸化銀又は炭酸銀からなる複数の微粒子とからなることを特徴とする触媒材料にある(請求項1)。
【0010】
本発明の触媒材料は、アルミナからなる基材粒子と、該基材粒子上に形成されたアルカリ性アルカリ塩からなるアルカリ層と、上記基材粒子上に分散された酸化銀又は炭酸銀からなる複数の微粒子とからなる。そのため、上記触媒材料は、ハニカム構造体を腐食させることなく、例えば温度300℃〜350℃という低温で煤を燃焼させることができる。
【0011】
即ち、上記触媒材料は、上記基材粒子上に上記アルカリ性アルカリ塩からなる上記アルカリ層と酸化銀又は炭酸銀からなる上記微粒子とを有している。このように上記アルカリ層と上記微粒子という2種類の触媒を担持しているため、上記触媒材料は、低温での煤の燃焼が可能になる。また、上記基材粒子は、アルミナからなるため、上記アルカリ塩と優れた親和性を示す。そのため、アルカリ塩が溶出してしまうことを防止し、上記ハニカム構造体の腐食を防止することができる。
【0012】
第2の発明は、セラミックスからなるハニカム構造体に担持させて内燃機関から排出される煤を燃焼するために用いられる触媒材料の製造方法であって、
アルミナからなる基材粒子と、該基材粒子上に形成されたアルカリ性アルカリ塩からなるアルカリ層と、上記基材粒子上に分散された酸化銀又は炭酸銀からなる複数の微粒子とからなる触媒材料の製造方法において、
アルミナゾルに、硝酸銀水溶液を混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合することにより、水中に上記触媒材料が分散された分散液を得る混合工程と、
上記分散液から上記触媒材料を分離して水洗後、該触媒材料を乾燥することにより上記触媒材料を得る乾燥工程とを有することを特徴とする触媒材料の製造方法にある(請求項4)。
【0013】
本発明の製造方法においては、アルミナゾルに、硝酸銀水溶液を混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合する(混合工程)。これにより、アルミナからなる基材粒子と、該基材粒子上に形成されたアルカリ性アルカリ塩からなるアルカリ層と、上記基材粒子上に分散された酸化銀又は炭酸銀からなる複数の微粒子とからなる触媒材料が水中に分散した上記分散液を得ることができる。次いで、上記触媒材料を例えばろ過、遠心分離等により上記分散液から分離し、水洗した後、乾燥する(乾燥工程)ことにより、上記触媒材料を得ることができる。
【0014】
上記混合工程において、アルミナゾルと硝酸銀水溶液とを混合した後、炭酸アルカリを混合した場合には、上記アルカリ層と炭酸銀からなる微粒子を上記基材粒子上に有する上記触媒材料を得ることができる。
一方、アルミナゾルと硝酸銀水溶液とを混合した後、水酸化アルカリを混合した場合には、上記アルカリ層と酸化銀からなる微粒子を上記基材粒子上に有する上記触媒材料を得ることができる。また、この場合には、空気中の二酸化炭素ガスが反応系内に取り込まれて、少なくとも部分的に炭酸銀からなる微粒子が形成される場合がある。
いずれの場合においても、ハニカム構造体を腐食させることなく、例えば温度300℃〜350℃という低温で煤を燃焼できる触媒材料を得ることができる。
【0015】
第3の発明は、外周壁と、該外周壁の内側においてハニカム状に設けられた隔壁と、該隔壁により仕切られていると共に少なくとも部分的に両端面に貫通してなる複数のセルとを有するセラミックハニカム構造体において、
上記セル壁には、請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒材料あるいは請求項4の製造方法によって得られる触媒材料が担持されていることを特徴とするセラミックハニカム構造体にある(請求項5)。
【0016】
本発明のセラミックスハニカム構造体は、上記第1の発明の触媒材料あるいは上記第2の発明の製造方法によって得られる触媒材料を上記セル壁に担持している。
そのため、上記触媒材料の優れた特徴を生かして、上記セラミックスハニカム構造体は、腐食することなく、低温で煤を燃焼させることができる。
【0017】
第4の発明は、セラミックスからなるハニカム構造体に担持させて内燃機関から排出される煤を燃焼するために用いられる触媒材料であって、
該触媒材料は、Bi2Al4O9にアルカリがドープされたドープ型複合酸化物及び/又はBi2Al4O9相中にアルカリが分散された分散型複合酸化物を含有する触媒粒子からなることを特徴とする触媒材料にある(請求項6)。
【0018】
上記第4の発明の触媒材料は、上記ドープ型複合酸化物及び/又は上記分散型複合酸化物を含有する触媒粒子からなる。そのため、上記触媒材料は、ハニカム構造体を腐食させることなく、例えば温度300℃〜350℃という低温で煤を燃焼させることができる。
即ち、上記触媒材料において、Bi2Al4O9は酸素イオンを伝導することができる。そのため、上記触媒材料においては、酸素分子を電気化学的に乖離させ、Bi2Al4O9中を伝導させることができる。それ故、上記触媒材料に炭素(煤)が付着したときに、活性な酸素を供給することができる。したがって、上記触媒材料は比較的低温で活性化することができ、銀等の金属触媒を用いなくても充分な触媒活性を示すことができる。さらに、Bi2Al4O9にドープされたアルカリ及び/又はBi2Al4O9相に分散されたアルカリは、この効果をさらに増強することができる。そのため、上記触媒材料は、上記のごとく低温で煤を燃焼させることができる。
【0019】
また、上記触媒材料においては、比較的少量のアルカリでも、上述のごとく充分に低温で煤を燃焼させることができる。そのため、アルカリによってハニカム構造体が腐食してしまうことを防止することができる。
また、アルカリがBi2Al4O9にドープされている場合には、より外部に溶出し難くなり、ハニカム構造体の腐食をより防止することができる。
【0020】
第5の発明は、セラミックスからなるハニカム構造体に担持させて内燃機関から排出される煤を燃焼するために用いられる触媒材料の製造方法であって、
Bi2Al4O9にアルカリがドープされたドープ型複合酸化物及び/又はBi2Al4O9相中にアルカリが分散された分散型複合酸化物を含有する触媒粒子からなる触媒材料を製造する方法において、
アルミナ源と硝酸ビスマス水溶液とを混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合することにより、水中に原料混合物が分散された分散液を得る混合工程と、
上記分散液から上記原料混合物を分離して水洗後、該原料混合物を乾燥し焼成することにより、上記触媒材料を得る乾燥・焼成工程とを有することを特徴とする触媒材料の製造方法にある(請求項11)。
【0021】
上記第5の発明の製造方法においては、アルミナ源と硝酸ビスマス水溶液とを混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合する(混合工程)。これにより、水中に原料混合物が分散された分散液を得ることができる。次いで、上記分散液から上記原料混合物を例えばろ過、遠心分離等により上記分散液から分離して水洗した後、乾燥し、焼成する(乾燥・焼成工程)。これにより、Bi2Al4O9が生成すると共に、Bi2Al4O9の少なくとも一部にアルカリがドープされたり、Bi2Al4O9相にアルカリが分散され、上記ドープ型複合酸化物及び/又は上記分散型複合酸化物を含有する上記触媒粒子からなる上記触媒材料を得ることができる。
得られた上記触媒材料は、ハニカム構造体を腐食させることなく、例えば温度300℃〜350℃という低温で煤を燃焼することができる。
【0022】
第6の発明は、外周壁と、該外周壁の内側においてハニカム状に設けられた隔壁と、該隔壁により仕切られていると共に少なくとも部分的に両端面に貫通してなる複数のセルとを有するセラミックハニカム構造体において、
上記セル壁には、請求項6〜10のいずれか一項に記載の触媒材料あるいは請求項11〜13のいずれか一項に記載の製造方法によって得られる触媒材料が担持されていることを特徴とするセラミックハニカム構造体にある(請求項14)。
【0023】
第6の発明のセラミックスハニカム構造体は、上記第4の発明の触媒材料あるいは上記第5の発明の製造方法によって得られる触媒材料を上記セル壁に担持している。
そのため、上記触媒材料の優れた特徴を生かして、上記セラミックスハニカム構造体は、腐食することなく、低温で煤を燃焼させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
まず、上記第1〜第3の発明について説明する。
上記触媒材料は、アルミナからなる基材粒子と、該基材粒子上に形成されたアルカリ性アルカリ塩からなるアルカリ層と、上記基材粒子上に分散された酸化銀又は炭酸銀からなる複数の微粒子とからなる。
上記基材粒子は、例えばアルミナ粒子(一次粒子)が凝集した二次粒子からなる。アルミナ粒子の一次粒子は、例えば粒径約10〜20nm程度である。
また、アルカリ性アルカリ塩は、水溶液中でアルカリ性となるアルカリ金属の塩である。例えばアルカリ金属と弱酸との塩等がある。
【0025】
好ましくは、上記アルカリ性アルカリ塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩から選ばれる1種以上の塩であることがよい(請求項2)。
この場合には、上記アルカリ性アルカリ塩からなる上記アルカリ層が活性酸素を生成し、過酸化物や超酸化物を形成することができる。そして過酸化物及び超酸化物は酸化剤としての役割を果たすことができるため、酸化銀からなる上記微粒子が煤の浄化後に銀になったとしても、簡単に酸化銀を再生させることができる。また、炭酸銀からなる上記微粒子においても、100℃程度の加熱で二酸化炭素を放出させて簡単に酸化銀にすることができる。同様の観点から、上記アルカリ性アルカリ塩は、ルビジウム塩、セシウム塩であることがより好ましい。
【0026】
また、上記微粒子は、酸化銀又は炭酸銀からなる。上記微粒子は、例えば粒径約10〜40nm程度である。
【0027】
また、上記触媒材料は、粒径0.1〜20μmの粒子からなることが好ましい(請求項3)。
粒径が上記の範囲から外れる場合には、ハニカム構造体に担持させることが困難になるおそれがある。具体的には、粒径0.1μm未満の場合には、例えば上記触媒材料を多孔質のハニカム構造体に担持して用いる際に、その細孔内に触媒が入り込むことにより、圧損が増加してしまうおそれがある。一方、20μmを越える場合には、上記触媒材料をハニカム構造体等の基材に担持して用いる際に、上記触媒材料の粒子が基材から脱落するおそれがある。
【0028】
また、上記触媒材料は、上記混合工程と上記乾燥工程とを行うことにより得ることができる。
上記混合工程においては、アルミナゾルに、硝酸銀水溶液を混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合する。これにより、水中に上記触媒材料が分散された分散液を得ることができる。
このとき、アルミナゾルに添加する硝酸銀水溶液の量を適宜調整することにより、上記触媒材料において、アルミナからなる上記基材粒子上に形成される酸化銀又は炭酸銀からなる微粒子の量を調整することができる。また、炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリは、アルミナゾルと硝酸銀水溶液との混合液中の硝酸イオンが少なくとも中和される量を加えることができる。
【0029】
炭酸アルカリは、アルカリ金属の炭酸塩であり、水酸化アルカリは、アルカリ金属の水酸化物である。
具体的には、炭酸アルカリとしては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウムが好ましい。また、水酸化アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムが好ましい。これらの場合には、上記基材粒子上に、それぞれナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、及びセシウム塩からなるアルカリ層を形成することができる。そしてこの場合には、上述のごとく、上記アルカリ性アルカリ塩からなる上記アルカリ層が活性酸素を生成し、過酸化物や超酸化物を形成するため、酸化銀の再生が容易になる。
また、炭酸アルカリを用いた場合には、アルカリ性アルカリ塩である炭酸アルカリからなる上記アルカリ層を形成することができる。また、水酸化アルカリを用いた場合にも、空気中の二酸化炭素が反応系内に取り込まれるため、アルカリ性アルカリ塩である炭酸アルカリを含有する上記アルカリ層を形成することができる。
【0030】
また、上記のごとく、アルミナゾルに、硝酸銀水溶液を混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合すると、ゲル状の触媒材料が分散された上記分散液を得ることができる。この分散液から触媒材料(固形分)を例えば遠心分離、ろ過等により分離し、乾燥することにより粒子状又は粒子が凝集してなる塊状の触媒材料を得ることができる。粉末状の触媒材料は、さらに所望の粒径にまで粉砕することにより得ることができる。
また、上記乾燥工程においては、触媒材料を分離した後であって触媒材料を乾燥させる前に、例えば水洗と分離を繰り返すことにより触媒材料を洗浄する。これにより、触媒材料中に含まれる硝酸アルカリ等の不純物を除去することができる。また、ハニカム構造体等の基材(担体)を腐食させる余剰なアルカリ塩を取り除くことができる。
【0031】
上記触媒材料は、例えばディップコートなどによりセラミックスハニカム構造体等の担体に担持させて用いることができる。
セラミックスハニカム構造体は、例えば外周壁と、該外周壁の内側においてハニカム状に設けられた隔壁と、該隔壁により仕切られていると共に少なくとも部分的に両端面に貫通してなる複数のセルとを有する。セルは、そのすべてが両端面に開口していてもよい。また、セルは部分的に栓材等により閉塞していてもよい。
【0032】
次に、上記第4〜第6の発明について説明する。
上記第4〜上記第6の発明において、上記触媒材料は、Bi2Al4O9にアルカリがドープされたドープ型複合酸化物、及び/又はBi2Al4O9相中にアルカリが分散された分散型複合酸化物を含有する触媒粒子からなる。
アルカリは、水溶液中で塩基性を示す物質である。
【0033】
また、上記触媒粒子は、アルミナにアルカリがドープされたドープ型アルミナを含有することが好ましい(請求項7)
この場合には、アルミナとアルカリとの高い親和性を生かして、上記触媒材料からアルカリをより溶出し難くすることができる。
【0034】
上記触媒粒子は、上記ドープ型アルミナからなる基材粒子と、該基材粒子の表面の少なくとも一部に形成された上記ドープ型複合酸化物及び/又は上記分散型複合酸化物からなる複合酸化物層とを有することが好ましい(請求項8)。
この場合には、上記第5の発明によりかかる構成の上記触媒粒子からなる上記触媒材料を容易に作製することができる。また、この場合には、上記ドープ型アルミナからなる基材粒子がアルカリに対して優れた保持力を示すことができるため、上記触媒材料の耐水性をより向上させることができる。
【0035】
また、上記触媒粒子にはAgを含有する微粒子が担持されていることが好ましい(請求項9)。
この場合には、上記触媒材料の触媒活性をより向上させることができる。
Agを含有する上記微粒子としては、例えば銀、酸化銀、炭酸銀等から選ばれる1種以上からなる微粒子がある。
【0036】
また、上記触媒粒子の粒径は、0.1〜20μmであることが好ましい(請求項10)
上記触媒粒子の粒径が0.1〜20μmという範囲から外れる場合には、上記触媒材料をハニカム構造体に担持させることが困難になるおそれがある。
具体的には、上記触媒粒子の粒径が0.1μm未満の場合には、例えば上記触媒材料を多孔質のハニカム構造体に担持させて用いる際に、その細孔内に触媒粒子が入り込むことにより、圧損が増加してしまうおそれがある。一方、20μmを越える場合には、上記触媒材料をハニカム構造体に担持させて用いる際に、上記触媒粒子がハニカム構造体から脱落し易くなるおそれがある。
【0037】
上記触媒材料は、上記混合工程と上記乾燥・焼成工程とを行うことにより得ることができる。
上記混合工程においては、アルミナ源と硝酸ビスマス水溶液とを混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合する。これにより、水中にゲル状の上記原料混合物が分散された分散液を得る。
上記アルミナ源は、アルミニウムを含有する物質であり、アルカリによってゲル化あるいはゾル化し、ビスマスの存在下で焼成することによりBi2Al4O9を生成する物質である。
【0038】
上記アルミナ源は、硝酸アルミニウム又はアルミナゾルであることが好ましい(請求項12)。
この場合には、後述のごとく、銀を含む微粒子が担持された触媒粒子からなる触媒材料を作製する場合に、酸化銀、炭酸銀以外の不活性な銀塩の生成を抑制することができる。また、上記乾燥・焼成工程における水洗時に不要な不純物を容易に除去することができる。
【0039】
また、上記混合工程においては、上記アルミナ源と硝酸ビスマス水溶液との混合時に硝酸銀を混合することが好ましい(請求項13)。
この場合には、Agを含有する微粒子が担持された触媒粒子からなる触媒材料を得ることができる。具体的には、例えば銀、酸化銀、炭酸銀等から選ばれる1種以上からなる微粒子を担持させることができる。
【0040】
また、硝酸銀水溶液の量を適宜調整することにより、上記触媒材料における上記微粒子の量を調整することができる。
また、炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリは、アルミナ源と硝酸ビスマス水溶液と必要に応じて添加される硝酸銀水溶液との混合液中の硝酸イオンが少なくとも中和される量を加え、若干アルカリ性よりとなるように調製する。pHで7〜9、望ましくは8にすると良い。7より小さいと銀成分を析出させることができず、9より大きいと一部成分の再溶解が起こるため、いずれも仕込み組成と製品の組成ずれが大きくなる。
【0041】
また、上記混合工程において、炭酸アルカリはアルカリ金属の炭酸塩であり、水酸化アルカリはアルカリ金属の水酸化物である。具体的には、上記第1〜第3の発明と同様の物質を用いることができる。
【0042】
上記乾燥・焼成工程においては、上記分散液から上記原料混合物を分離して水洗後、該原料混合物を乾燥し焼成する。
焼成後には、上記混合工程において添加した炭酸アルカリ又は水酸化アルカリ中に含まれるアルカリがBi2Al4O9にドープされたり、Bi2Al4O9相に分散され、上記ドープ型複合酸化物及び/又は上記分散型複合酸化物が生成される。
【0043】
上記原料混合物(固形分)は、例えば遠心分離、ろ過等により分離することができる。
また、分離後、例えば水洗と分離を繰り返すことにより上記原料混合物を洗浄する。これにより、原料混合物中に含まれる硝酸アルカリ等の不純物を除去することができ、また、ハニカム構造体等の基材(担体)を腐食させるおそれがある余剰なアルカリ塩を取り除くことができる。さらに、水洗後の上記原料混合物を乾燥し、乾燥物を焼成することにより、上記ドープ型複合酸化物及び/又は上記分散型複合酸化物を生成することができる。
【0044】
また、上記混合工程において、硝酸ビスマスに対するアルミナ源の量を増加させると、焼成後に、上記ドープ型複合酸化物及び/又は上記分散型複合酸化物の他に、アルミナにアルカリがドープされた上記ドープ型アルミナを生成することができる。
具体的には、例えば硝酸ビスマス中のビスマス1モルに対してアルミナ源中のアルミニウムの量が2モルを越えて添加することにより、焼成後に過剰量のアルミニウムをアルミナとして生成させることができる。さらに、このとき、アルミナにはアルカリがドープされ易く、上記ドープ型アルミナを生成させることができる、
しがたって、この場合には、上記ドープ型複合酸化物及び/又は上記分散型複合酸化物と、上記ドープ型アルミナとを含有する触媒粒子からなる触媒材料を得ることができる。
【0045】
また、上記乾燥・焼成工程において、乾燥後の上記原料混合物は、粒子状又は粒子が凝集してなる塊状になっている。そのため、必要に応じて原料混合物を粉砕することが好ましい。この場合には、焼成時における原料混合物の反応性を向上させ、不純物の少ない触媒材料を得ることができる。
また、焼成後の触媒材料においても、触媒粒子が凝集して塊状になる場合がある。この場合にも、粉砕により所望の粒径に調整することができる。
【0046】
また、上記乾燥・焼成工程においては、上記原料混合物を温度500℃以上で焼成することが好ましい。
温度500℃未満の場合には、上記ドープ型複合酸化物又は/及び上記分散型複合酸化物を生成させることが困難になるおそれがある。より好ましくは、焼成温度は800℃以上がよい。
【0047】
また、上記触媒材料は、上記第1の発明と同様に、例えばディップコートなどによりセラミックスハニカム構造体等の担体に担持させて用いることができる。
セラミックハニカム構造体は、上述のごとく例えば外周壁と、該外周壁の内側においてハニカム状に設けられた隔壁と、該隔壁により仕切られていると共に少なくとも部分的に両端面に貫通してなる複数のセルとを有する。セルは、そのすべてが両端面に開口していてもよい。また、セルは部分的に栓材等により閉塞していてもよい。
【実施例】
【0048】
(実施例1)
次に、本発明の実施例について、図1〜図7を用いて説明する。
本例は、触媒材料を作製し、その触媒特性を評価する例である。
図1に示すごとく、本例の触媒材料1は、アルミナからなる基材粒子11と、この基材粒子11上に形成されたアルカリ性アルカリ塩からなるアルカリ層12と、基材粒子11上に分散された酸化銀又は炭酸銀からなる複数の微粒子13とからなる。
本例の触媒材料1において、アルカリ層12は、セシウム塩、具体的には炭酸セシウム(Cs2CO3)からなり、微粒子13は、炭酸銀(Ag2CO3)からなる。
【0049】
次に、本例の触媒材料の製造方法について説明する。
本例においては、混合工程と乾燥工程とを行うことにより触媒材料を作製する。
混合工程においては、アルミナゾルに、硝酸銀水溶液を混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合することにより、水中に上記触媒材料が分散された分散液を得る。乾燥工程においては、上記分散液から上記触媒材料を分離して該触媒材料を乾燥することにより上記触媒材料を得る。また、乾燥工程においては、上記分散液から上記触媒材料を分離して該触媒材料を乾燥することにより上記触媒材料を得る。
以下、炭酸アルカリとして炭酸セシウム(CsCO3)を用いた場合について詳細に説明する。
【0050】
具体的には、まず、アルミナゾルとAgNO3水溶液とを準備し、アルミナゾルにAgNO3水溶液を混合した。AgNO3水溶液は、アルミナ100重量部に対して10重量部のAg2CO3が担持される量添加した。次いで、撹拌しながらこの混合水溶液にCs2CO3水溶液を滴下した。Cs2CO3水溶液は、混合水溶液中のNO3-イオンと同量(モル)以上のアルカリイオン(Cs+)が添加されるまで滴下した。ゲル状となるため、さらに蒸留水を加えて分散させた。次いで、得られた分散液を遠心分離機で分離し、固形分を得た。この固形分に水を加えさらに遠心分離機で分離を行うことにより、固形分を洗浄した。洗浄操作は2〜3回行った。これにより、CsNO3と余剰の炭酸セシウムを除去することができる。
次いで、固形分を温度120℃で乾燥させた。その後、乳鉢で粉砕して粉末状の触媒材料を得た。これを試料Eとする。
【0051】
また、本例においては、試料Eの比較用として、Ag2O粉体(試料C1)と、アルミナ粒子上にAg粒子が分散された触媒材料(試料C2)を準備した。
試料C1としては、市販のAg2O粉体を用いた。
試料C2は以下のようにして作製した。
即ち、まず、アルミナゾルとAgNO3水溶液とを準備し、アルミナゾルにAgNO3水溶液を混合して混合液を得た。AgNO3水溶液は、アルミナ100重量部に対して5重量部のAgが担持される量添加した。次いで、還元剤としてイミノジエタノールを添加した。イミノジエタノールは、混合液中のAgNO31モル当たりに2〜3モルとなるように添加した。その後、混合液に超音波を印加することにより、金属Agを担持したアルミナ粒子(試料C2)を得た。
【0052】
次に、本例において作製した各試料(試料E、試料C1、試料C2)について、その排ガス浄化用触媒としての特性の評価を行った。評価は、各触媒を炭素微粉と共に加熱したときの炭素微粉の重量変化と熱収支とを示差熱熱重量同時測定装置により測定することによって行った。
具体的には、まず、各試料100重量部と炭素微粉5重量部とを乳鉢で混合した。次いで、混合粉を加熱し、加熱時の加熱温度と重量変化を示差熱熱重量同時測定装置((株)エスエスアイナノテクノロジー製のEXSTAR6000 TG/DTA)を用いて測定した。測定は、10vol%のO2ガスと90Vol%のN2ガスとからなる混合ガスを100ml/minで混合粉にフローさせながら、昇温速度10℃/minで混合粉を加熱することにより行った。また、加熱測定後の各試料に再度炭素微粉を混合して測定を繰り返すことにより触媒特性の劣化を評価した。その結果を図2に示す。なお、図2においては、試料Eについては1回〜3回目の測定結果を示し、試料C1及び試料C2については、1回目の測定結果は省略し、2回目の測定結果を示す。
【0053】
図2より知られるごとく、試料Eにおいては、約280℃〜350℃と400〜530℃に二つの燃焼ピークを有していた。測定を繰り返した場合においても、2つの燃焼ピークはこの温度領域内にとどまっていた。したがって、試料Eは、比較的低温かつ広い温度範囲で煤を燃焼させることができることがわかる。さらに、試料Eは、低温で煤の燃焼を繰り返し行えることがわかる。なお、試料Eについて、エネルギー分散型蛍光X線分析装置((株)島津製作所製のEDX−900HS)により化学分析を行ったところ、アルミナに対するAg及びCsの担持量は、それぞれ5〜6原子%であった。
【0054】
一方、試料C1においては、1回目の測定結果では約220℃という非常に低い温度に炭素微粉末の燃焼ピークが観察された(図示略)。しかし、図2より知られるごとく、2回目の測定結果においては、燃焼ピークが約450℃にまで上昇していた。この理由は、試料C1においては、1回目の燃焼時に金属銀が生成し、これが焼結して再生しないためであると考えられる。
また、試料C2においては、600℃付近という非常に高い温度に燃焼ピークを示した。これは銀粉担体に比べても150℃程度高い温度である。このように高い温度に燃焼ピークを示す理由は、炭素微粒子の燃焼は触媒との接触によって起こるが、接触部の触媒粒子濃度がアルミナによって薄められたためであると考えられる。
【0055】
また、試料E及び試料C1について、Cu−Kα線を用いたX線回折装置((株)リガク製のRINT2000)を用いて、燃焼後の結晶構造を調べた。その結果を図3に示す。なお、図3には、燃焼前の試料C1、即ちAg2O粒子について測定したX線回折(XRD)パターンも併記してある。
図3より知られるごとく、燃焼後においては、試料E及び試料C1のいずれにおいても、Agに由来するピークが観察された。即ち、試料E及び試料C1においては、Ag2Oの少なくとも一部が燃焼後に金属Agに変化することがわかる。しかし、XRDのピーク強度を比較すると、試料Eは、試料C1に比べて金属Agへの変化量が少なくなっていることがわかる。したがって、試料Eは、燃焼後においても低温での触媒活性を維持できることがわかる。
【0056】
また、燃焼前後の試料E及び試料C1を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した。その結果を図4〜図7に示す。図4は燃焼前の試料Eを示し、図5は燃焼後の試料Eを示す。また、図6は燃焼前の試料C1を示し、図7は燃焼後の試料C1を示す。
図6及び図7より知られるごとく、試料C1においては、燃焼後にAg2Oが金属Agに変化し、焼結体が形成されていることがわかる。一方、図4及び図5より知られるごとく、試料Eにおいては、金属Agの焼結体はほとんど観察されなかった。
以上のように、本発明の触媒材料にかかる試料Eは、低温で煤を燃焼できることがわかる。
【0057】
(実施例2)
本例は、実施例1で作製した触媒材料(試料E)を担持させたセラミックスハニカム構造体を作製する例である。
図8〜図10に示すごとく、本例のセラミックハニカム構造体2は、外周壁21と、該外周壁21の内側においてハニカム状に設けられた隔壁22と、該隔壁22により仕切られた複数のセル3とを有する。セル3は、セラミックハニカム構造体2の両端面23、24に部分的に開口している。即ち、一部のセル3は、ハニカム構造体2の両端面23、24に開口し、残りのセル3は、両端面23、24に形成された栓部32によって閉塞している。図8及び図9に示すように、本例においては、セル3の端部を開口する開口部31と、セル3の端部を閉塞する栓部32とは交互に配置されており、所謂市松模様を形成している。そして、隔壁2には、実施例1で作製した触媒材料1(試料E)が担持されている。また、図10に示すごとく、本例のセラミックハニカム構造体2においては、排ガス10の入口側となる上流側端面23及び排ガス10の出口となる下流側端面24に位置するセルの端部は、栓部32が配置された部分と配置されていない部分とをそれぞれ交互に有している。隔壁2には多数の空孔が形成され、排ガス10が通過できるようになっている。
【0058】
また、本例のセラミックハニカム構造体2の全体サイズは、直径160mm、長さ100mmであり、セルサイズは、セル厚さ3mm、セルピッチ1.47mmである。
また、セラミックハニカム構造体2はコーディエライトからなり、そのセル3は、断面が四角形状のものを採用した。セル3は、その他にも例えば、三角形、六角形等の様々な断面形状を採用することができる。
また、本例においては、セル3の端部を開口する開口部31と、セル3の端部を閉塞する栓部32とは交互に配置されており、所謂市松模様を形成している。
【0059】
次に、本例のセラミックハニカム構造体の製造方法につき、説明する。
まず、タルク、溶融シリカ、及び水酸化アルミニウムを所望のコーディエライト組成となるように秤量し、造孔剤、バインダー、水等を加え、混合機にて混合撹拌した。そして、得られた粘土質のセラミック材料を成形機にて押出成形し、ハニカム状の成形体を得た。これを乾燥した後、所望の長さに切断し、外周壁41と、その内側においてハニカム状に設けられた隔壁42と、隔壁42により仕切られていると共に両端面43、44に貫通してなる複数のセル3とを有する成形体4を作製した(図11参照)。次いで、この成形体を温度1400〜1450℃で2〜10時間加熱することにより仮焼して仮焼体4(ハニカム構造体4)を得た。
【0060】
次に、図12に示すごとく、ハニカム構造体4の両端面43、44全体を覆うようにマスキングテープ5を貼り付けた。そして、図13、図14に示すごとく、レーザ発射手段501を備えた貫通穴形成装置50と用いて、セラミックハニカム構造体4の両端面43、44の栓詰めすべき位置325に対応するマスキングテープ5にレーザ光500を順次照射し、マスキングテープを溶融又は焼却除去して貫通穴321を形成した。これにより、セル3の端部における栓部32により栓詰めすべき部分325が貫通穴321により開口し、セル3の端部におけるその他の部分がマスキングテープ5で覆われた状態のセラミックハニカム構造体4を得た。なお、本例においては、セル3の両端面43、44に貫通穴321とマスキングテープ5で覆われた部分とが交互に配置するように、マスキングテープ5に貫通穴5を形成した。なお、本例では、マスキングテープ5として、厚さ0.1mmの樹脂フィルムを用いた。
【0061】
次に、栓部の材料である栓材の主原料となるタルク、溶融シリカ、アルミナ、及び水酸化アルミニウムを所望の組成となるように秤量し、バインダー、水等を加え、混合機にて混合撹拌し、スラリー状の栓材を作製した。このとき、必要に応じて造孔材を添加することもできる。そして、図15に示すごとく、スラリー状の栓材320を入れた容器329を準備した後、上記穴開け工程後のハニカム構造体4の端面43を浸漬した。これにより、マスキングテープ5の貫通穴321からセル3の端部に栓材320を適量浸入させた(図14及び図15参照)。また、ハニカム構造体4のもう一方の端面44についても同様の工程を行った。このようにして、栓詰めすべきセルの開口部325内に栓材320が配置されたハニカム構造体4を得た。
【0062】
次に、ハニカム構造体(仮焼体)4とその栓詰めすべき部分に配置した栓材320とを同時に約1400〜1450℃で焼成した。これにより、マスキングテープ5は焼却除去され、図8に示すごとく、セル3の両端に、その端部を開口する複数の開口部31と、セル3の端部を閉塞する複数の栓部32とが形成されたセラミックハニカム構造体2を作製した。
【0063】
次に、図16に示すごとく実施例1で作製した触媒材料を水に分散させて触媒分散液6を作製した。この触媒分散液6中にセラミックハニカム構造体2を浸漬させた後、乾燥させた。さらに浸漬と乾燥を繰り返すことにより、触媒材料をセラミックハニカム構造体2に担持させた。
このようにして、図8及び図9に示すごとく、触媒材料1を担持したセラミックハニカム構造体2を得た。
【0064】
本例のハニカム構造体2は、実施例1の触媒材料1(試料E)をセル壁22に担持している。そのため、触媒材料1の優れた特徴を生かして、ハニカム構造体2においては、腐食することなく、低温で煤を燃焼させることができる。
【0065】
(実施例3)
本例は、ドープ型複合酸化物及び/又は分散型複合酸化物を含有する触媒粒子からなる触媒材料を作製する例である。
具体的には、本例の触媒材料は、図17に示すごとく、基材粒子71と、その表面の少なくとも一部に形成された複合酸化物層72とを有する触媒粒子7からなる。基材粒子71は、アルミナにアルカリ(Na)がドープされたドープ型アルミナからなる。また、複合酸化物層72は、Bi2Al4O9にアルカリ(Na)がドープされたドープ型複合酸化物、及び/又はBi2Al4O9相中にアルカリ(Na)が分散された分散型複合酸化物からなる。また、触媒粒子7には、Agを含有する微粒子73が担持されている。
【0066】
次に、本例の触媒材料の製造方法について説明する。
本例においては、混合工程と乾燥・焼成工程とを行うことにより触媒材料を作製する。
混合工程においては、アルミナ源と硝酸ビスマス水溶液とを混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合することにより、水中に原料混合物が分散された分散液を得る。乾燥・焼成工程においては、上記分散液から上記原料混合物を分離し、該原料混合物を乾燥し焼成することにより、上記触媒材料を得る。
以下、アルミナ源としてアルミナゾルを用いた場合について、説明する。
【0067】
具体的には、まず、アルミナゾル、Bi(NO3)3水溶液、及びAgNO3水溶液を準備し、アルミナゾルにBi(NO3)3水溶液とAgNO3水溶液とを混合して混合液を得た。このとき、Bi(NO3)3水溶液は、混合後の混合液中において、アルミニウム100モルに対するビスマスの量が5モルとなる割合で添加した。また、AgNO3水溶液は、アルミニウム100モルに対して銀が1モル担持される量で混合した。
【0068】
次いで、撹拌しながらこの混合水溶液にNaOH水溶液を滴下した。NaOH水溶液は、混合水溶液中のNO3-イオンと同量(モル)以上のアルカリイオン(Na+)が添加されるまで滴下した。添加完了後の水溶液のpHは8であった。
このときゲル状となるため、さらに蒸留水を加えてゲル状の原料混合物を分散させた。
【0069】
次に、得られた分散液を遠心分離機で分離し、固形分(原料混合物)を得た。
この固形分に水を加えさらに遠心分離機で分離を行うことにより、固形分を洗浄した。洗浄操作は2〜3回行った。これにより、NaNO3と余剰の水酸化ナトリウムを除去することができる。
次いで、固形分を温度120℃で乾燥させた。その後、乳鉢で粉砕して800℃で4時間焼成した、これにより粉末状の触媒材料を得た。これを試料E1とする。
この試料E1について、エネルギー分散型蛍光X線分析装置((株)島津製作所製のEDX−800HS)により化学分析を行ったところ、触媒材料においては、5at%程度のNaの存在が確認された。
【0070】
また、本例においては、アルミナを含有せず、ドープ型複合酸化物及び/又は分散型複合酸化物を含有する触媒粒子からなる触媒材料(試料E2)を作製した。また、この試料E2の触媒粒子には、Agを含有する微粒子も担持されていない。
試料E2は、混合工程において、アルミナ源(硝酸アルミニウム)と硝酸ビスマス水溶液とを、アルミニウムとビスマスとの混合比がモル比で2:1となるように混合し、硝酸銀水溶液を用いなかった点を除いては上記試料E1と同様にして作製した。
【0071】
具体的には、まず、硝酸アルミニウム水溶液とBi(NO3)3水溶液とを混合した。このとき、硝酸アルミニウムとBi(NO3)3水溶液とを、アルミニウムとビスマスとの比が2:1(モル比)となる割合で混合した。
次いで、上記試料E1と同様に、撹拌しながら混合水溶液にNaOH水溶液を滴下し、得られた分散液を遠心分離機で分離し、固形分(原料混合物)を得た。さらに、試料E1の場合と同様にして、固形分を洗浄し、固形分を温度120℃で乾燥させた後、乳鉢で粉砕して800℃で4時間焼成した、これにより粉末状の触媒材料(試料E2)を得た。
【0072】
また、本例においては、試料E1及び試料E2の優れた特性を明らかにするために比較用の2種類の触媒材料(試料C3及び試料C4)を作製した。
試料C3は、アルカリがドープされていないBi2Al4O9の粒子からなる。
試料C3は、硝酸アルミニウム水溶液に硝酸ビスマスを溶解して得られる懸濁液を蒸発乾固させた後、粉砕し、温度800℃で焼成することによって作製した。
【0073】
また、試料C4は、従来、金属の微粒子を担持させて触媒材料として用いられていたものである。この試料C4は、ZrO2−CeO2複合酸化物の粒子からなる。
試料C4の作製にあたっては、まず、(NH4)2Ce(NO3)6水溶液とZrO(NO3)2水溶液とを準備し、これらを混合して混合液を得た。このとき、(NH4)2Ce(NO3)6水溶液とZrO(NO3)2水溶液とは、ZrO(NO3)2中のジルコニウム7モルに対して(NH4)2Ce(NO3)6中のセリウムが3モルとなるような割合で混合した。次いで、沈殿剤として、イミノジエタノールを添加した。イミノジエタノールは、混合液中のNO3-イオンのモル数と等量になるまで添加した。
次いで、上記試料E1と同様に、得られた分散液を遠心分離機で分離し、固形分(原料混合物)を得た。さらに、試料E1の場合と同様にして、固形分を洗浄し、固形分を温度120℃で乾燥させた後、乳鉢で粉砕して800℃で4時間焼成した、これにより粉末状の試料C4を得た。
【0074】
次に、本例において作製した各試料(試料E1、試料E2、試料C3及び試料C4)について、その排ガス浄化用触媒としての特性の評価を行った。評価は、実施例1と同様に、各試料を炭素微粉と共に加熱したときの炭素微粉の重量変化と熱収支とを示差熱熱重量同時測定装置により測定することによって行った。
具体的には、まず、各試料100重量部と炭素微粉5重量部とを乳鉢で混合した。次いで、混合粉を加熱し、加熱時の加熱温度と重量変化を示差熱熱重量同時測定装置((株)エスエスアイナノテクノロジー製のEXSTAR6000 TG/DTA)を用いて測定した。測定は、10vol%のO2ガスと90Vol%のN2ガスとからなる混合ガスを100ml/minで混合粉にフローさせながら、昇温速度10℃/minで混合粉を加熱することにより行った。その結果を図18に示す。
【0075】
図18より知られるごとく、試料E1においては、約250℃〜500℃という非常に低温でかつ広い温度領域で炭素微粉末を燃焼させることができることがわかる。また、試料E2においても約300℃〜500℃という低温かつ広い温度領域で炭素微粉末を燃焼させることができることがわかる。
このように、Bi2Al4O9にアルカリがドープされたドープ型複合酸化物及び/又はBi2Al4O9相中にアルカリが分散された分散型複合酸化物を含有する試料E1及び試料E2においては、低温でかつ広い温度範囲で煤を燃焼できることがわかる。
【0076】
また、Agの微粒子を含有する試料E1は、上記のごとく試料E2に比べてさらに低温でかつ広い温度領域で炭素微粉末を燃焼することができる。これは、試料E1における微粒子とドープ型複合酸化物及び/又は分散型複合酸化物との相乗効果によるものであると考えられる。図18より知られるごとく、試料E1の燃焼速度プロファイルには低温側に肩があり、その一方で高温側は試料E2のプロファイルと一致している。したがって、試料E1において、高温側の活性は触媒粒子中に含まれるドープ型複合酸化物及び/又は分散型複合酸化物に起因しており、低温側の肩は銀と触媒粒子との相乗効果によるものと考えられる。
【0077】
これに対し、図18より知られるごとく、試料C3及び試料C4においては、試料E1及び試料E2に比べて活性温度が100℃程度高くなっていた。また、ピークの燃焼速度も試料E1及び試料E2に比べて低下していることがわかる。
【0078】
また、試料E1及びE2について、Cu−Kα線を用いたX線回折装置((株)リガク製のRINT2000)を用いて、燃焼後の結晶構造を調べた。その結果を図19に示す。
図19より知られるごとく、試料E1及び試料E2のいずれにおいても、Bi2Al4O9に由来するピークが観察された。また、アルカリ塩のピークは観測されておらず、試料E1及び試料E2において、アルカリ(Na)は、Bi2Al4O9にドープされているか、あるいはBi2Al4O9相中に分散されていると考えられる。
【0079】
(実施例4)
本例は、実施例3で作製した触媒材料(試料E1)を担持させたセラミックスハニカム構造体を作製する例である。
本例のセラミックハニカム構造体は、触媒材料として試料E1を有する点を除いては、実施例2で作製したセラミックハニカム構造体と同様の構造を有する(図8〜図10参照)。
【0080】
本例のセラミックハニカム構造体の作製にあたっては、まず、実施例2と同様にしてセラミックハニカム構造体を作製した。
次いで、実施例3で作製した試料E1を水に分散させて触媒分散液を作製し、この触媒分散液中にセラミックハニカム構造体を浸漬させた後、乾燥させた。さらに浸漬と乾燥を繰り返すことにより、触媒材料(試料E1)をセラミックハニカム構造体に担持させた。
このようにして、触媒材料1として試料E1を担持したセラミックハニカム構造体を得た。
【0081】
本例のハニカム構造体においては、実施例3で作製した触媒材料(試料E1)がセル壁に担持されている。そのため、触媒材料(試料E1)の優れた触媒特徴を生かして、本例のハニカム構造体は、腐食を生じることなく、低温で煤を燃焼させることができる。
また、上記試料E1を担持したセラミックハニカム構造体と同様にして、実施例3で作製した試料E2を担持するセラミックハニカム構造体を作製した。このセラミックハニカム構造体においても、試料E2の優れた触媒特性を生かして、腐食を生じることなく、低温で煤を燃焼させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施例1にかかる、触媒材料の断面構造の一例を示す説明図。
【図2】実施例1にかかる、3種類の触媒材料(試料E、試料C1、及び試料C2)についての重量変化(燃焼率)と加熱温度との関係を示す線図。
【図3】実施例1にかかる、触媒材料(試料E、試料C1)のXRD回折パターンを示す線図。
【図4】実施例1にかかる、燃焼前の触媒材料(試料E)をSEMにより観察した様子を示す写真代用図。
【図5】実施例1にかかる、燃焼後の触媒材料(試料E)をSEMにより観察した様子を示す写真代用図。
【図6】実施例1にかかる、燃焼前の触媒材料(試料C1)をSEMにより観察した様子を示す写真代用図。
【図7】実施例1にかかる、燃焼後の触媒材料(試料C1)をSEMにより観察した様子を示す写真代用図。
【図8】実施例2にかかる、セラミックスハニカム構造体の斜視図。
【図9】実施例2にかかる、セラミックハニカム構造体の長手方向の断面図。
【図10】実施例2にかかる、セラミックハニカム構造体内を排ガスが通過する様子を示すセラミックハニカム構造体の断面説明図。
【図11】実施例2にかかる、ハニカム構造体の斜視図。
【図12】実施例2にかかる、ハニカム構造体の端面にマスキングテープを配置する様子を示す斜視図。
【図13】実施例2にかかる、マスキングテープに貫通穴を形成する様子を示す説明図。
【図14】実施例2にかかる、マスキングテープに貫通穴を形成した状態を示すセラミックハニカム構造体の断面説明図。
【図15】実施例2にかかる、セラミックハニカム構造体を栓材に浸漬する様子を示す説明図。
【図16】実施例2にかかる、セラミックハニカム構造体に触媒材料を担持させる様子を示す説明図。
【図17】実施例3にかかる、触媒粒子の断面構造の一例を示す説明図。
【図18】実施例3にかかる、4種類の触媒材料(試料E1、試料E2、試料C3、及び試料C4)についての重量変化(燃焼率)と加熱温度との関係を示す線図。
【図19】実施例3にかかる、触媒材料(試料E1及び試料E2)のXRD回折パターンを示す線図。
【符号の説明】
【0083】
1 触媒材料
11 基材粒子
12 アルカリ層
13 微粒子
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される煤を燃焼するための触媒材料、及びその製造方法、並びに上記触媒材料を担持したハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディーゼルエンジン等において、エンジンから排出される煤が問題になっている。そこで、一般に、エンジンの排気管に白金アルミナ等よりなる触媒を有する浄化装置を介在させ、排ガス中の煤を除去することが行われている。
この浄化装置においては、触媒材料を担持させたハニカム構造体が容器に収納されており、この容器に煤を含んだ排ガスを透過させることにより排ガス中の煤を除去することができる。
【0003】
また、一般に、ハニカム構造体は、浄化装置内において再生利用される。即ち、排ガスの浄化に用いられたハニカム構造体には煤が蓄積する。そこで、再生過程において、過剰な燃料を燃やしてハニカム構造体の温度を上昇させることにより、ハニカム構造体にたまった煤を燃焼除去することができる。
【0004】
ところが、白金アルミナからなる従来の触媒材料を担持したハニカム構造体は、600℃以上という高温で加熱されなければ煤が燃焼除去されない。そのため、ハニカム構造体を収納する容器の上流には、一般に白金等からなる酸化触媒を別途設けることがおこなわれていた。そして、この酸化触媒に燃料を供給し、そこで高温のガスを発生させ、この高温のガスを下流のハニカム構造体に送り込むことにより、ハニカム構造体を温度600℃以上に加熱して煤の燃焼除去をおこなっていた。
しかし、このような再生過程においては、ハニカム構造体を高温にするために、燃料を多く消費してしまうため、燃費が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、再生時の燃焼温度の低下が可能な触媒材料の開発が要求されていた。具体的には、例えばアルカリ元素を含むアルカリ系触媒材料が提案されている(特許文献1)。かかる触媒材料を担持したハニカム構造体は、比較的低温での燃焼により再生を行うことができる。
【0006】
しかしながら、アルカリ系触媒材料はアルカリ元素濃度と活性温度との間に正の相関がある一方で、アルカリ元素濃度と溶解度との間にも正の相関がある。そのため、低温での燃焼を可能にするため比較的多量のアルカリ元素を用いる必要があった。その結果、アルカリ系触媒材料がハニカム構造体を腐食してしまったり、アルカリ系触媒材料が溶出しハニカム構造体外に排出されて浄化特性を劣化させてしまうおそれがあった。
【0007】
【特許文献1】特開2001−271634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来の問題点を鑑みてなされたものであって、担持させるハニカム構造体を腐食させることなく、低温で煤の燃焼が可能な触媒材料及びその製造方法、並びに該触媒材料を担持させたハニカム構造体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、セラミックスからなるハニカム構造体に担持させて内燃機関から排出される煤を燃焼するために用いられる触媒材料であって、
該触媒材料は、アルミナからなる基材粒子と、該基材粒子上に形成されたアルカリ性アルカリ塩からなるアルカリ層と、上記基材粒子上に分散された酸化銀又は炭酸銀からなる複数の微粒子とからなることを特徴とする触媒材料にある(請求項1)。
【0010】
本発明の触媒材料は、アルミナからなる基材粒子と、該基材粒子上に形成されたアルカリ性アルカリ塩からなるアルカリ層と、上記基材粒子上に分散された酸化銀又は炭酸銀からなる複数の微粒子とからなる。そのため、上記触媒材料は、ハニカム構造体を腐食させることなく、例えば温度300℃〜350℃という低温で煤を燃焼させることができる。
【0011】
即ち、上記触媒材料は、上記基材粒子上に上記アルカリ性アルカリ塩からなる上記アルカリ層と酸化銀又は炭酸銀からなる上記微粒子とを有している。このように上記アルカリ層と上記微粒子という2種類の触媒を担持しているため、上記触媒材料は、低温での煤の燃焼が可能になる。また、上記基材粒子は、アルミナからなるため、上記アルカリ塩と優れた親和性を示す。そのため、アルカリ塩が溶出してしまうことを防止し、上記ハニカム構造体の腐食を防止することができる。
【0012】
第2の発明は、セラミックスからなるハニカム構造体に担持させて内燃機関から排出される煤を燃焼するために用いられる触媒材料の製造方法であって、
アルミナからなる基材粒子と、該基材粒子上に形成されたアルカリ性アルカリ塩からなるアルカリ層と、上記基材粒子上に分散された酸化銀又は炭酸銀からなる複数の微粒子とからなる触媒材料の製造方法において、
アルミナゾルに、硝酸銀水溶液を混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合することにより、水中に上記触媒材料が分散された分散液を得る混合工程と、
上記分散液から上記触媒材料を分離して水洗後、該触媒材料を乾燥することにより上記触媒材料を得る乾燥工程とを有することを特徴とする触媒材料の製造方法にある(請求項4)。
【0013】
本発明の製造方法においては、アルミナゾルに、硝酸銀水溶液を混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合する(混合工程)。これにより、アルミナからなる基材粒子と、該基材粒子上に形成されたアルカリ性アルカリ塩からなるアルカリ層と、上記基材粒子上に分散された酸化銀又は炭酸銀からなる複数の微粒子とからなる触媒材料が水中に分散した上記分散液を得ることができる。次いで、上記触媒材料を例えばろ過、遠心分離等により上記分散液から分離し、水洗した後、乾燥する(乾燥工程)ことにより、上記触媒材料を得ることができる。
【0014】
上記混合工程において、アルミナゾルと硝酸銀水溶液とを混合した後、炭酸アルカリを混合した場合には、上記アルカリ層と炭酸銀からなる微粒子を上記基材粒子上に有する上記触媒材料を得ることができる。
一方、アルミナゾルと硝酸銀水溶液とを混合した後、水酸化アルカリを混合した場合には、上記アルカリ層と酸化銀からなる微粒子を上記基材粒子上に有する上記触媒材料を得ることができる。また、この場合には、空気中の二酸化炭素ガスが反応系内に取り込まれて、少なくとも部分的に炭酸銀からなる微粒子が形成される場合がある。
いずれの場合においても、ハニカム構造体を腐食させることなく、例えば温度300℃〜350℃という低温で煤を燃焼できる触媒材料を得ることができる。
【0015】
第3の発明は、外周壁と、該外周壁の内側においてハニカム状に設けられた隔壁と、該隔壁により仕切られていると共に少なくとも部分的に両端面に貫通してなる複数のセルとを有するセラミックハニカム構造体において、
上記セル壁には、請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒材料あるいは請求項4の製造方法によって得られる触媒材料が担持されていることを特徴とするセラミックハニカム構造体にある(請求項5)。
【0016】
本発明のセラミックスハニカム構造体は、上記第1の発明の触媒材料あるいは上記第2の発明の製造方法によって得られる触媒材料を上記セル壁に担持している。
そのため、上記触媒材料の優れた特徴を生かして、上記セラミックスハニカム構造体は、腐食することなく、低温で煤を燃焼させることができる。
【0017】
第4の発明は、セラミックスからなるハニカム構造体に担持させて内燃機関から排出される煤を燃焼するために用いられる触媒材料であって、
該触媒材料は、Bi2Al4O9にアルカリがドープされたドープ型複合酸化物及び/又はBi2Al4O9相中にアルカリが分散された分散型複合酸化物を含有する触媒粒子からなることを特徴とする触媒材料にある(請求項6)。
【0018】
上記第4の発明の触媒材料は、上記ドープ型複合酸化物及び/又は上記分散型複合酸化物を含有する触媒粒子からなる。そのため、上記触媒材料は、ハニカム構造体を腐食させることなく、例えば温度300℃〜350℃という低温で煤を燃焼させることができる。
即ち、上記触媒材料において、Bi2Al4O9は酸素イオンを伝導することができる。そのため、上記触媒材料においては、酸素分子を電気化学的に乖離させ、Bi2Al4O9中を伝導させることができる。それ故、上記触媒材料に炭素(煤)が付着したときに、活性な酸素を供給することができる。したがって、上記触媒材料は比較的低温で活性化することができ、銀等の金属触媒を用いなくても充分な触媒活性を示すことができる。さらに、Bi2Al4O9にドープされたアルカリ及び/又はBi2Al4O9相に分散されたアルカリは、この効果をさらに増強することができる。そのため、上記触媒材料は、上記のごとく低温で煤を燃焼させることができる。
【0019】
また、上記触媒材料においては、比較的少量のアルカリでも、上述のごとく充分に低温で煤を燃焼させることができる。そのため、アルカリによってハニカム構造体が腐食してしまうことを防止することができる。
また、アルカリがBi2Al4O9にドープされている場合には、より外部に溶出し難くなり、ハニカム構造体の腐食をより防止することができる。
【0020】
第5の発明は、セラミックスからなるハニカム構造体に担持させて内燃機関から排出される煤を燃焼するために用いられる触媒材料の製造方法であって、
Bi2Al4O9にアルカリがドープされたドープ型複合酸化物及び/又はBi2Al4O9相中にアルカリが分散された分散型複合酸化物を含有する触媒粒子からなる触媒材料を製造する方法において、
アルミナ源と硝酸ビスマス水溶液とを混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合することにより、水中に原料混合物が分散された分散液を得る混合工程と、
上記分散液から上記原料混合物を分離して水洗後、該原料混合物を乾燥し焼成することにより、上記触媒材料を得る乾燥・焼成工程とを有することを特徴とする触媒材料の製造方法にある(請求項11)。
【0021】
上記第5の発明の製造方法においては、アルミナ源と硝酸ビスマス水溶液とを混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合する(混合工程)。これにより、水中に原料混合物が分散された分散液を得ることができる。次いで、上記分散液から上記原料混合物を例えばろ過、遠心分離等により上記分散液から分離して水洗した後、乾燥し、焼成する(乾燥・焼成工程)。これにより、Bi2Al4O9が生成すると共に、Bi2Al4O9の少なくとも一部にアルカリがドープされたり、Bi2Al4O9相にアルカリが分散され、上記ドープ型複合酸化物及び/又は上記分散型複合酸化物を含有する上記触媒粒子からなる上記触媒材料を得ることができる。
得られた上記触媒材料は、ハニカム構造体を腐食させることなく、例えば温度300℃〜350℃という低温で煤を燃焼することができる。
【0022】
第6の発明は、外周壁と、該外周壁の内側においてハニカム状に設けられた隔壁と、該隔壁により仕切られていると共に少なくとも部分的に両端面に貫通してなる複数のセルとを有するセラミックハニカム構造体において、
上記セル壁には、請求項6〜10のいずれか一項に記載の触媒材料あるいは請求項11〜13のいずれか一項に記載の製造方法によって得られる触媒材料が担持されていることを特徴とするセラミックハニカム構造体にある(請求項14)。
【0023】
第6の発明のセラミックスハニカム構造体は、上記第4の発明の触媒材料あるいは上記第5の発明の製造方法によって得られる触媒材料を上記セル壁に担持している。
そのため、上記触媒材料の優れた特徴を生かして、上記セラミックスハニカム構造体は、腐食することなく、低温で煤を燃焼させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
まず、上記第1〜第3の発明について説明する。
上記触媒材料は、アルミナからなる基材粒子と、該基材粒子上に形成されたアルカリ性アルカリ塩からなるアルカリ層と、上記基材粒子上に分散された酸化銀又は炭酸銀からなる複数の微粒子とからなる。
上記基材粒子は、例えばアルミナ粒子(一次粒子)が凝集した二次粒子からなる。アルミナ粒子の一次粒子は、例えば粒径約10〜20nm程度である。
また、アルカリ性アルカリ塩は、水溶液中でアルカリ性となるアルカリ金属の塩である。例えばアルカリ金属と弱酸との塩等がある。
【0025】
好ましくは、上記アルカリ性アルカリ塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩から選ばれる1種以上の塩であることがよい(請求項2)。
この場合には、上記アルカリ性アルカリ塩からなる上記アルカリ層が活性酸素を生成し、過酸化物や超酸化物を形成することができる。そして過酸化物及び超酸化物は酸化剤としての役割を果たすことができるため、酸化銀からなる上記微粒子が煤の浄化後に銀になったとしても、簡単に酸化銀を再生させることができる。また、炭酸銀からなる上記微粒子においても、100℃程度の加熱で二酸化炭素を放出させて簡単に酸化銀にすることができる。同様の観点から、上記アルカリ性アルカリ塩は、ルビジウム塩、セシウム塩であることがより好ましい。
【0026】
また、上記微粒子は、酸化銀又は炭酸銀からなる。上記微粒子は、例えば粒径約10〜40nm程度である。
【0027】
また、上記触媒材料は、粒径0.1〜20μmの粒子からなることが好ましい(請求項3)。
粒径が上記の範囲から外れる場合には、ハニカム構造体に担持させることが困難になるおそれがある。具体的には、粒径0.1μm未満の場合には、例えば上記触媒材料を多孔質のハニカム構造体に担持して用いる際に、その細孔内に触媒が入り込むことにより、圧損が増加してしまうおそれがある。一方、20μmを越える場合には、上記触媒材料をハニカム構造体等の基材に担持して用いる際に、上記触媒材料の粒子が基材から脱落するおそれがある。
【0028】
また、上記触媒材料は、上記混合工程と上記乾燥工程とを行うことにより得ることができる。
上記混合工程においては、アルミナゾルに、硝酸銀水溶液を混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合する。これにより、水中に上記触媒材料が分散された分散液を得ることができる。
このとき、アルミナゾルに添加する硝酸銀水溶液の量を適宜調整することにより、上記触媒材料において、アルミナからなる上記基材粒子上に形成される酸化銀又は炭酸銀からなる微粒子の量を調整することができる。また、炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリは、アルミナゾルと硝酸銀水溶液との混合液中の硝酸イオンが少なくとも中和される量を加えることができる。
【0029】
炭酸アルカリは、アルカリ金属の炭酸塩であり、水酸化アルカリは、アルカリ金属の水酸化物である。
具体的には、炭酸アルカリとしては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウムが好ましい。また、水酸化アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムが好ましい。これらの場合には、上記基材粒子上に、それぞれナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、及びセシウム塩からなるアルカリ層を形成することができる。そしてこの場合には、上述のごとく、上記アルカリ性アルカリ塩からなる上記アルカリ層が活性酸素を生成し、過酸化物や超酸化物を形成するため、酸化銀の再生が容易になる。
また、炭酸アルカリを用いた場合には、アルカリ性アルカリ塩である炭酸アルカリからなる上記アルカリ層を形成することができる。また、水酸化アルカリを用いた場合にも、空気中の二酸化炭素が反応系内に取り込まれるため、アルカリ性アルカリ塩である炭酸アルカリを含有する上記アルカリ層を形成することができる。
【0030】
また、上記のごとく、アルミナゾルに、硝酸銀水溶液を混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合すると、ゲル状の触媒材料が分散された上記分散液を得ることができる。この分散液から触媒材料(固形分)を例えば遠心分離、ろ過等により分離し、乾燥することにより粒子状又は粒子が凝集してなる塊状の触媒材料を得ることができる。粉末状の触媒材料は、さらに所望の粒径にまで粉砕することにより得ることができる。
また、上記乾燥工程においては、触媒材料を分離した後であって触媒材料を乾燥させる前に、例えば水洗と分離を繰り返すことにより触媒材料を洗浄する。これにより、触媒材料中に含まれる硝酸アルカリ等の不純物を除去することができる。また、ハニカム構造体等の基材(担体)を腐食させる余剰なアルカリ塩を取り除くことができる。
【0031】
上記触媒材料は、例えばディップコートなどによりセラミックスハニカム構造体等の担体に担持させて用いることができる。
セラミックスハニカム構造体は、例えば外周壁と、該外周壁の内側においてハニカム状に設けられた隔壁と、該隔壁により仕切られていると共に少なくとも部分的に両端面に貫通してなる複数のセルとを有する。セルは、そのすべてが両端面に開口していてもよい。また、セルは部分的に栓材等により閉塞していてもよい。
【0032】
次に、上記第4〜第6の発明について説明する。
上記第4〜上記第6の発明において、上記触媒材料は、Bi2Al4O9にアルカリがドープされたドープ型複合酸化物、及び/又はBi2Al4O9相中にアルカリが分散された分散型複合酸化物を含有する触媒粒子からなる。
アルカリは、水溶液中で塩基性を示す物質である。
【0033】
また、上記触媒粒子は、アルミナにアルカリがドープされたドープ型アルミナを含有することが好ましい(請求項7)
この場合には、アルミナとアルカリとの高い親和性を生かして、上記触媒材料からアルカリをより溶出し難くすることができる。
【0034】
上記触媒粒子は、上記ドープ型アルミナからなる基材粒子と、該基材粒子の表面の少なくとも一部に形成された上記ドープ型複合酸化物及び/又は上記分散型複合酸化物からなる複合酸化物層とを有することが好ましい(請求項8)。
この場合には、上記第5の発明によりかかる構成の上記触媒粒子からなる上記触媒材料を容易に作製することができる。また、この場合には、上記ドープ型アルミナからなる基材粒子がアルカリに対して優れた保持力を示すことができるため、上記触媒材料の耐水性をより向上させることができる。
【0035】
また、上記触媒粒子にはAgを含有する微粒子が担持されていることが好ましい(請求項9)。
この場合には、上記触媒材料の触媒活性をより向上させることができる。
Agを含有する上記微粒子としては、例えば銀、酸化銀、炭酸銀等から選ばれる1種以上からなる微粒子がある。
【0036】
また、上記触媒粒子の粒径は、0.1〜20μmであることが好ましい(請求項10)
上記触媒粒子の粒径が0.1〜20μmという範囲から外れる場合には、上記触媒材料をハニカム構造体に担持させることが困難になるおそれがある。
具体的には、上記触媒粒子の粒径が0.1μm未満の場合には、例えば上記触媒材料を多孔質のハニカム構造体に担持させて用いる際に、その細孔内に触媒粒子が入り込むことにより、圧損が増加してしまうおそれがある。一方、20μmを越える場合には、上記触媒材料をハニカム構造体に担持させて用いる際に、上記触媒粒子がハニカム構造体から脱落し易くなるおそれがある。
【0037】
上記触媒材料は、上記混合工程と上記乾燥・焼成工程とを行うことにより得ることができる。
上記混合工程においては、アルミナ源と硝酸ビスマス水溶液とを混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合する。これにより、水中にゲル状の上記原料混合物が分散された分散液を得る。
上記アルミナ源は、アルミニウムを含有する物質であり、アルカリによってゲル化あるいはゾル化し、ビスマスの存在下で焼成することによりBi2Al4O9を生成する物質である。
【0038】
上記アルミナ源は、硝酸アルミニウム又はアルミナゾルであることが好ましい(請求項12)。
この場合には、後述のごとく、銀を含む微粒子が担持された触媒粒子からなる触媒材料を作製する場合に、酸化銀、炭酸銀以外の不活性な銀塩の生成を抑制することができる。また、上記乾燥・焼成工程における水洗時に不要な不純物を容易に除去することができる。
【0039】
また、上記混合工程においては、上記アルミナ源と硝酸ビスマス水溶液との混合時に硝酸銀を混合することが好ましい(請求項13)。
この場合には、Agを含有する微粒子が担持された触媒粒子からなる触媒材料を得ることができる。具体的には、例えば銀、酸化銀、炭酸銀等から選ばれる1種以上からなる微粒子を担持させることができる。
【0040】
また、硝酸銀水溶液の量を適宜調整することにより、上記触媒材料における上記微粒子の量を調整することができる。
また、炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリは、アルミナ源と硝酸ビスマス水溶液と必要に応じて添加される硝酸銀水溶液との混合液中の硝酸イオンが少なくとも中和される量を加え、若干アルカリ性よりとなるように調製する。pHで7〜9、望ましくは8にすると良い。7より小さいと銀成分を析出させることができず、9より大きいと一部成分の再溶解が起こるため、いずれも仕込み組成と製品の組成ずれが大きくなる。
【0041】
また、上記混合工程において、炭酸アルカリはアルカリ金属の炭酸塩であり、水酸化アルカリはアルカリ金属の水酸化物である。具体的には、上記第1〜第3の発明と同様の物質を用いることができる。
【0042】
上記乾燥・焼成工程においては、上記分散液から上記原料混合物を分離して水洗後、該原料混合物を乾燥し焼成する。
焼成後には、上記混合工程において添加した炭酸アルカリ又は水酸化アルカリ中に含まれるアルカリがBi2Al4O9にドープされたり、Bi2Al4O9相に分散され、上記ドープ型複合酸化物及び/又は上記分散型複合酸化物が生成される。
【0043】
上記原料混合物(固形分)は、例えば遠心分離、ろ過等により分離することができる。
また、分離後、例えば水洗と分離を繰り返すことにより上記原料混合物を洗浄する。これにより、原料混合物中に含まれる硝酸アルカリ等の不純物を除去することができ、また、ハニカム構造体等の基材(担体)を腐食させるおそれがある余剰なアルカリ塩を取り除くことができる。さらに、水洗後の上記原料混合物を乾燥し、乾燥物を焼成することにより、上記ドープ型複合酸化物及び/又は上記分散型複合酸化物を生成することができる。
【0044】
また、上記混合工程において、硝酸ビスマスに対するアルミナ源の量を増加させると、焼成後に、上記ドープ型複合酸化物及び/又は上記分散型複合酸化物の他に、アルミナにアルカリがドープされた上記ドープ型アルミナを生成することができる。
具体的には、例えば硝酸ビスマス中のビスマス1モルに対してアルミナ源中のアルミニウムの量が2モルを越えて添加することにより、焼成後に過剰量のアルミニウムをアルミナとして生成させることができる。さらに、このとき、アルミナにはアルカリがドープされ易く、上記ドープ型アルミナを生成させることができる、
しがたって、この場合には、上記ドープ型複合酸化物及び/又は上記分散型複合酸化物と、上記ドープ型アルミナとを含有する触媒粒子からなる触媒材料を得ることができる。
【0045】
また、上記乾燥・焼成工程において、乾燥後の上記原料混合物は、粒子状又は粒子が凝集してなる塊状になっている。そのため、必要に応じて原料混合物を粉砕することが好ましい。この場合には、焼成時における原料混合物の反応性を向上させ、不純物の少ない触媒材料を得ることができる。
また、焼成後の触媒材料においても、触媒粒子が凝集して塊状になる場合がある。この場合にも、粉砕により所望の粒径に調整することができる。
【0046】
また、上記乾燥・焼成工程においては、上記原料混合物を温度500℃以上で焼成することが好ましい。
温度500℃未満の場合には、上記ドープ型複合酸化物又は/及び上記分散型複合酸化物を生成させることが困難になるおそれがある。より好ましくは、焼成温度は800℃以上がよい。
【0047】
また、上記触媒材料は、上記第1の発明と同様に、例えばディップコートなどによりセラミックスハニカム構造体等の担体に担持させて用いることができる。
セラミックハニカム構造体は、上述のごとく例えば外周壁と、該外周壁の内側においてハニカム状に設けられた隔壁と、該隔壁により仕切られていると共に少なくとも部分的に両端面に貫通してなる複数のセルとを有する。セルは、そのすべてが両端面に開口していてもよい。また、セルは部分的に栓材等により閉塞していてもよい。
【実施例】
【0048】
(実施例1)
次に、本発明の実施例について、図1〜図7を用いて説明する。
本例は、触媒材料を作製し、その触媒特性を評価する例である。
図1に示すごとく、本例の触媒材料1は、アルミナからなる基材粒子11と、この基材粒子11上に形成されたアルカリ性アルカリ塩からなるアルカリ層12と、基材粒子11上に分散された酸化銀又は炭酸銀からなる複数の微粒子13とからなる。
本例の触媒材料1において、アルカリ層12は、セシウム塩、具体的には炭酸セシウム(Cs2CO3)からなり、微粒子13は、炭酸銀(Ag2CO3)からなる。
【0049】
次に、本例の触媒材料の製造方法について説明する。
本例においては、混合工程と乾燥工程とを行うことにより触媒材料を作製する。
混合工程においては、アルミナゾルに、硝酸銀水溶液を混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合することにより、水中に上記触媒材料が分散された分散液を得る。乾燥工程においては、上記分散液から上記触媒材料を分離して該触媒材料を乾燥することにより上記触媒材料を得る。また、乾燥工程においては、上記分散液から上記触媒材料を分離して該触媒材料を乾燥することにより上記触媒材料を得る。
以下、炭酸アルカリとして炭酸セシウム(CsCO3)を用いた場合について詳細に説明する。
【0050】
具体的には、まず、アルミナゾルとAgNO3水溶液とを準備し、アルミナゾルにAgNO3水溶液を混合した。AgNO3水溶液は、アルミナ100重量部に対して10重量部のAg2CO3が担持される量添加した。次いで、撹拌しながらこの混合水溶液にCs2CO3水溶液を滴下した。Cs2CO3水溶液は、混合水溶液中のNO3-イオンと同量(モル)以上のアルカリイオン(Cs+)が添加されるまで滴下した。ゲル状となるため、さらに蒸留水を加えて分散させた。次いで、得られた分散液を遠心分離機で分離し、固形分を得た。この固形分に水を加えさらに遠心分離機で分離を行うことにより、固形分を洗浄した。洗浄操作は2〜3回行った。これにより、CsNO3と余剰の炭酸セシウムを除去することができる。
次いで、固形分を温度120℃で乾燥させた。その後、乳鉢で粉砕して粉末状の触媒材料を得た。これを試料Eとする。
【0051】
また、本例においては、試料Eの比較用として、Ag2O粉体(試料C1)と、アルミナ粒子上にAg粒子が分散された触媒材料(試料C2)を準備した。
試料C1としては、市販のAg2O粉体を用いた。
試料C2は以下のようにして作製した。
即ち、まず、アルミナゾルとAgNO3水溶液とを準備し、アルミナゾルにAgNO3水溶液を混合して混合液を得た。AgNO3水溶液は、アルミナ100重量部に対して5重量部のAgが担持される量添加した。次いで、還元剤としてイミノジエタノールを添加した。イミノジエタノールは、混合液中のAgNO31モル当たりに2〜3モルとなるように添加した。その後、混合液に超音波を印加することにより、金属Agを担持したアルミナ粒子(試料C2)を得た。
【0052】
次に、本例において作製した各試料(試料E、試料C1、試料C2)について、その排ガス浄化用触媒としての特性の評価を行った。評価は、各触媒を炭素微粉と共に加熱したときの炭素微粉の重量変化と熱収支とを示差熱熱重量同時測定装置により測定することによって行った。
具体的には、まず、各試料100重量部と炭素微粉5重量部とを乳鉢で混合した。次いで、混合粉を加熱し、加熱時の加熱温度と重量変化を示差熱熱重量同時測定装置((株)エスエスアイナノテクノロジー製のEXSTAR6000 TG/DTA)を用いて測定した。測定は、10vol%のO2ガスと90Vol%のN2ガスとからなる混合ガスを100ml/minで混合粉にフローさせながら、昇温速度10℃/minで混合粉を加熱することにより行った。また、加熱測定後の各試料に再度炭素微粉を混合して測定を繰り返すことにより触媒特性の劣化を評価した。その結果を図2に示す。なお、図2においては、試料Eについては1回〜3回目の測定結果を示し、試料C1及び試料C2については、1回目の測定結果は省略し、2回目の測定結果を示す。
【0053】
図2より知られるごとく、試料Eにおいては、約280℃〜350℃と400〜530℃に二つの燃焼ピークを有していた。測定を繰り返した場合においても、2つの燃焼ピークはこの温度領域内にとどまっていた。したがって、試料Eは、比較的低温かつ広い温度範囲で煤を燃焼させることができることがわかる。さらに、試料Eは、低温で煤の燃焼を繰り返し行えることがわかる。なお、試料Eについて、エネルギー分散型蛍光X線分析装置((株)島津製作所製のEDX−900HS)により化学分析を行ったところ、アルミナに対するAg及びCsの担持量は、それぞれ5〜6原子%であった。
【0054】
一方、試料C1においては、1回目の測定結果では約220℃という非常に低い温度に炭素微粉末の燃焼ピークが観察された(図示略)。しかし、図2より知られるごとく、2回目の測定結果においては、燃焼ピークが約450℃にまで上昇していた。この理由は、試料C1においては、1回目の燃焼時に金属銀が生成し、これが焼結して再生しないためであると考えられる。
また、試料C2においては、600℃付近という非常に高い温度に燃焼ピークを示した。これは銀粉担体に比べても150℃程度高い温度である。このように高い温度に燃焼ピークを示す理由は、炭素微粒子の燃焼は触媒との接触によって起こるが、接触部の触媒粒子濃度がアルミナによって薄められたためであると考えられる。
【0055】
また、試料E及び試料C1について、Cu−Kα線を用いたX線回折装置((株)リガク製のRINT2000)を用いて、燃焼後の結晶構造を調べた。その結果を図3に示す。なお、図3には、燃焼前の試料C1、即ちAg2O粒子について測定したX線回折(XRD)パターンも併記してある。
図3より知られるごとく、燃焼後においては、試料E及び試料C1のいずれにおいても、Agに由来するピークが観察された。即ち、試料E及び試料C1においては、Ag2Oの少なくとも一部が燃焼後に金属Agに変化することがわかる。しかし、XRDのピーク強度を比較すると、試料Eは、試料C1に比べて金属Agへの変化量が少なくなっていることがわかる。したがって、試料Eは、燃焼後においても低温での触媒活性を維持できることがわかる。
【0056】
また、燃焼前後の試料E及び試料C1を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した。その結果を図4〜図7に示す。図4は燃焼前の試料Eを示し、図5は燃焼後の試料Eを示す。また、図6は燃焼前の試料C1を示し、図7は燃焼後の試料C1を示す。
図6及び図7より知られるごとく、試料C1においては、燃焼後にAg2Oが金属Agに変化し、焼結体が形成されていることがわかる。一方、図4及び図5より知られるごとく、試料Eにおいては、金属Agの焼結体はほとんど観察されなかった。
以上のように、本発明の触媒材料にかかる試料Eは、低温で煤を燃焼できることがわかる。
【0057】
(実施例2)
本例は、実施例1で作製した触媒材料(試料E)を担持させたセラミックスハニカム構造体を作製する例である。
図8〜図10に示すごとく、本例のセラミックハニカム構造体2は、外周壁21と、該外周壁21の内側においてハニカム状に設けられた隔壁22と、該隔壁22により仕切られた複数のセル3とを有する。セル3は、セラミックハニカム構造体2の両端面23、24に部分的に開口している。即ち、一部のセル3は、ハニカム構造体2の両端面23、24に開口し、残りのセル3は、両端面23、24に形成された栓部32によって閉塞している。図8及び図9に示すように、本例においては、セル3の端部を開口する開口部31と、セル3の端部を閉塞する栓部32とは交互に配置されており、所謂市松模様を形成している。そして、隔壁2には、実施例1で作製した触媒材料1(試料E)が担持されている。また、図10に示すごとく、本例のセラミックハニカム構造体2においては、排ガス10の入口側となる上流側端面23及び排ガス10の出口となる下流側端面24に位置するセルの端部は、栓部32が配置された部分と配置されていない部分とをそれぞれ交互に有している。隔壁2には多数の空孔が形成され、排ガス10が通過できるようになっている。
【0058】
また、本例のセラミックハニカム構造体2の全体サイズは、直径160mm、長さ100mmであり、セルサイズは、セル厚さ3mm、セルピッチ1.47mmである。
また、セラミックハニカム構造体2はコーディエライトからなり、そのセル3は、断面が四角形状のものを採用した。セル3は、その他にも例えば、三角形、六角形等の様々な断面形状を採用することができる。
また、本例においては、セル3の端部を開口する開口部31と、セル3の端部を閉塞する栓部32とは交互に配置されており、所謂市松模様を形成している。
【0059】
次に、本例のセラミックハニカム構造体の製造方法につき、説明する。
まず、タルク、溶融シリカ、及び水酸化アルミニウムを所望のコーディエライト組成となるように秤量し、造孔剤、バインダー、水等を加え、混合機にて混合撹拌した。そして、得られた粘土質のセラミック材料を成形機にて押出成形し、ハニカム状の成形体を得た。これを乾燥した後、所望の長さに切断し、外周壁41と、その内側においてハニカム状に設けられた隔壁42と、隔壁42により仕切られていると共に両端面43、44に貫通してなる複数のセル3とを有する成形体4を作製した(図11参照)。次いで、この成形体を温度1400〜1450℃で2〜10時間加熱することにより仮焼して仮焼体4(ハニカム構造体4)を得た。
【0060】
次に、図12に示すごとく、ハニカム構造体4の両端面43、44全体を覆うようにマスキングテープ5を貼り付けた。そして、図13、図14に示すごとく、レーザ発射手段501を備えた貫通穴形成装置50と用いて、セラミックハニカム構造体4の両端面43、44の栓詰めすべき位置325に対応するマスキングテープ5にレーザ光500を順次照射し、マスキングテープを溶融又は焼却除去して貫通穴321を形成した。これにより、セル3の端部における栓部32により栓詰めすべき部分325が貫通穴321により開口し、セル3の端部におけるその他の部分がマスキングテープ5で覆われた状態のセラミックハニカム構造体4を得た。なお、本例においては、セル3の両端面43、44に貫通穴321とマスキングテープ5で覆われた部分とが交互に配置するように、マスキングテープ5に貫通穴5を形成した。なお、本例では、マスキングテープ5として、厚さ0.1mmの樹脂フィルムを用いた。
【0061】
次に、栓部の材料である栓材の主原料となるタルク、溶融シリカ、アルミナ、及び水酸化アルミニウムを所望の組成となるように秤量し、バインダー、水等を加え、混合機にて混合撹拌し、スラリー状の栓材を作製した。このとき、必要に応じて造孔材を添加することもできる。そして、図15に示すごとく、スラリー状の栓材320を入れた容器329を準備した後、上記穴開け工程後のハニカム構造体4の端面43を浸漬した。これにより、マスキングテープ5の貫通穴321からセル3の端部に栓材320を適量浸入させた(図14及び図15参照)。また、ハニカム構造体4のもう一方の端面44についても同様の工程を行った。このようにして、栓詰めすべきセルの開口部325内に栓材320が配置されたハニカム構造体4を得た。
【0062】
次に、ハニカム構造体(仮焼体)4とその栓詰めすべき部分に配置した栓材320とを同時に約1400〜1450℃で焼成した。これにより、マスキングテープ5は焼却除去され、図8に示すごとく、セル3の両端に、その端部を開口する複数の開口部31と、セル3の端部を閉塞する複数の栓部32とが形成されたセラミックハニカム構造体2を作製した。
【0063】
次に、図16に示すごとく実施例1で作製した触媒材料を水に分散させて触媒分散液6を作製した。この触媒分散液6中にセラミックハニカム構造体2を浸漬させた後、乾燥させた。さらに浸漬と乾燥を繰り返すことにより、触媒材料をセラミックハニカム構造体2に担持させた。
このようにして、図8及び図9に示すごとく、触媒材料1を担持したセラミックハニカム構造体2を得た。
【0064】
本例のハニカム構造体2は、実施例1の触媒材料1(試料E)をセル壁22に担持している。そのため、触媒材料1の優れた特徴を生かして、ハニカム構造体2においては、腐食することなく、低温で煤を燃焼させることができる。
【0065】
(実施例3)
本例は、ドープ型複合酸化物及び/又は分散型複合酸化物を含有する触媒粒子からなる触媒材料を作製する例である。
具体的には、本例の触媒材料は、図17に示すごとく、基材粒子71と、その表面の少なくとも一部に形成された複合酸化物層72とを有する触媒粒子7からなる。基材粒子71は、アルミナにアルカリ(Na)がドープされたドープ型アルミナからなる。また、複合酸化物層72は、Bi2Al4O9にアルカリ(Na)がドープされたドープ型複合酸化物、及び/又はBi2Al4O9相中にアルカリ(Na)が分散された分散型複合酸化物からなる。また、触媒粒子7には、Agを含有する微粒子73が担持されている。
【0066】
次に、本例の触媒材料の製造方法について説明する。
本例においては、混合工程と乾燥・焼成工程とを行うことにより触媒材料を作製する。
混合工程においては、アルミナ源と硝酸ビスマス水溶液とを混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合することにより、水中に原料混合物が分散された分散液を得る。乾燥・焼成工程においては、上記分散液から上記原料混合物を分離し、該原料混合物を乾燥し焼成することにより、上記触媒材料を得る。
以下、アルミナ源としてアルミナゾルを用いた場合について、説明する。
【0067】
具体的には、まず、アルミナゾル、Bi(NO3)3水溶液、及びAgNO3水溶液を準備し、アルミナゾルにBi(NO3)3水溶液とAgNO3水溶液とを混合して混合液を得た。このとき、Bi(NO3)3水溶液は、混合後の混合液中において、アルミニウム100モルに対するビスマスの量が5モルとなる割合で添加した。また、AgNO3水溶液は、アルミニウム100モルに対して銀が1モル担持される量で混合した。
【0068】
次いで、撹拌しながらこの混合水溶液にNaOH水溶液を滴下した。NaOH水溶液は、混合水溶液中のNO3-イオンと同量(モル)以上のアルカリイオン(Na+)が添加されるまで滴下した。添加完了後の水溶液のpHは8であった。
このときゲル状となるため、さらに蒸留水を加えてゲル状の原料混合物を分散させた。
【0069】
次に、得られた分散液を遠心分離機で分離し、固形分(原料混合物)を得た。
この固形分に水を加えさらに遠心分離機で分離を行うことにより、固形分を洗浄した。洗浄操作は2〜3回行った。これにより、NaNO3と余剰の水酸化ナトリウムを除去することができる。
次いで、固形分を温度120℃で乾燥させた。その後、乳鉢で粉砕して800℃で4時間焼成した、これにより粉末状の触媒材料を得た。これを試料E1とする。
この試料E1について、エネルギー分散型蛍光X線分析装置((株)島津製作所製のEDX−800HS)により化学分析を行ったところ、触媒材料においては、5at%程度のNaの存在が確認された。
【0070】
また、本例においては、アルミナを含有せず、ドープ型複合酸化物及び/又は分散型複合酸化物を含有する触媒粒子からなる触媒材料(試料E2)を作製した。また、この試料E2の触媒粒子には、Agを含有する微粒子も担持されていない。
試料E2は、混合工程において、アルミナ源(硝酸アルミニウム)と硝酸ビスマス水溶液とを、アルミニウムとビスマスとの混合比がモル比で2:1となるように混合し、硝酸銀水溶液を用いなかった点を除いては上記試料E1と同様にして作製した。
【0071】
具体的には、まず、硝酸アルミニウム水溶液とBi(NO3)3水溶液とを混合した。このとき、硝酸アルミニウムとBi(NO3)3水溶液とを、アルミニウムとビスマスとの比が2:1(モル比)となる割合で混合した。
次いで、上記試料E1と同様に、撹拌しながら混合水溶液にNaOH水溶液を滴下し、得られた分散液を遠心分離機で分離し、固形分(原料混合物)を得た。さらに、試料E1の場合と同様にして、固形分を洗浄し、固形分を温度120℃で乾燥させた後、乳鉢で粉砕して800℃で4時間焼成した、これにより粉末状の触媒材料(試料E2)を得た。
【0072】
また、本例においては、試料E1及び試料E2の優れた特性を明らかにするために比較用の2種類の触媒材料(試料C3及び試料C4)を作製した。
試料C3は、アルカリがドープされていないBi2Al4O9の粒子からなる。
試料C3は、硝酸アルミニウム水溶液に硝酸ビスマスを溶解して得られる懸濁液を蒸発乾固させた後、粉砕し、温度800℃で焼成することによって作製した。
【0073】
また、試料C4は、従来、金属の微粒子を担持させて触媒材料として用いられていたものである。この試料C4は、ZrO2−CeO2複合酸化物の粒子からなる。
試料C4の作製にあたっては、まず、(NH4)2Ce(NO3)6水溶液とZrO(NO3)2水溶液とを準備し、これらを混合して混合液を得た。このとき、(NH4)2Ce(NO3)6水溶液とZrO(NO3)2水溶液とは、ZrO(NO3)2中のジルコニウム7モルに対して(NH4)2Ce(NO3)6中のセリウムが3モルとなるような割合で混合した。次いで、沈殿剤として、イミノジエタノールを添加した。イミノジエタノールは、混合液中のNO3-イオンのモル数と等量になるまで添加した。
次いで、上記試料E1と同様に、得られた分散液を遠心分離機で分離し、固形分(原料混合物)を得た。さらに、試料E1の場合と同様にして、固形分を洗浄し、固形分を温度120℃で乾燥させた後、乳鉢で粉砕して800℃で4時間焼成した、これにより粉末状の試料C4を得た。
【0074】
次に、本例において作製した各試料(試料E1、試料E2、試料C3及び試料C4)について、その排ガス浄化用触媒としての特性の評価を行った。評価は、実施例1と同様に、各試料を炭素微粉と共に加熱したときの炭素微粉の重量変化と熱収支とを示差熱熱重量同時測定装置により測定することによって行った。
具体的には、まず、各試料100重量部と炭素微粉5重量部とを乳鉢で混合した。次いで、混合粉を加熱し、加熱時の加熱温度と重量変化を示差熱熱重量同時測定装置((株)エスエスアイナノテクノロジー製のEXSTAR6000 TG/DTA)を用いて測定した。測定は、10vol%のO2ガスと90Vol%のN2ガスとからなる混合ガスを100ml/minで混合粉にフローさせながら、昇温速度10℃/minで混合粉を加熱することにより行った。その結果を図18に示す。
【0075】
図18より知られるごとく、試料E1においては、約250℃〜500℃という非常に低温でかつ広い温度領域で炭素微粉末を燃焼させることができることがわかる。また、試料E2においても約300℃〜500℃という低温かつ広い温度領域で炭素微粉末を燃焼させることができることがわかる。
このように、Bi2Al4O9にアルカリがドープされたドープ型複合酸化物及び/又はBi2Al4O9相中にアルカリが分散された分散型複合酸化物を含有する試料E1及び試料E2においては、低温でかつ広い温度範囲で煤を燃焼できることがわかる。
【0076】
また、Agの微粒子を含有する試料E1は、上記のごとく試料E2に比べてさらに低温でかつ広い温度領域で炭素微粉末を燃焼することができる。これは、試料E1における微粒子とドープ型複合酸化物及び/又は分散型複合酸化物との相乗効果によるものであると考えられる。図18より知られるごとく、試料E1の燃焼速度プロファイルには低温側に肩があり、その一方で高温側は試料E2のプロファイルと一致している。したがって、試料E1において、高温側の活性は触媒粒子中に含まれるドープ型複合酸化物及び/又は分散型複合酸化物に起因しており、低温側の肩は銀と触媒粒子との相乗効果によるものと考えられる。
【0077】
これに対し、図18より知られるごとく、試料C3及び試料C4においては、試料E1及び試料E2に比べて活性温度が100℃程度高くなっていた。また、ピークの燃焼速度も試料E1及び試料E2に比べて低下していることがわかる。
【0078】
また、試料E1及びE2について、Cu−Kα線を用いたX線回折装置((株)リガク製のRINT2000)を用いて、燃焼後の結晶構造を調べた。その結果を図19に示す。
図19より知られるごとく、試料E1及び試料E2のいずれにおいても、Bi2Al4O9に由来するピークが観察された。また、アルカリ塩のピークは観測されておらず、試料E1及び試料E2において、アルカリ(Na)は、Bi2Al4O9にドープされているか、あるいはBi2Al4O9相中に分散されていると考えられる。
【0079】
(実施例4)
本例は、実施例3で作製した触媒材料(試料E1)を担持させたセラミックスハニカム構造体を作製する例である。
本例のセラミックハニカム構造体は、触媒材料として試料E1を有する点を除いては、実施例2で作製したセラミックハニカム構造体と同様の構造を有する(図8〜図10参照)。
【0080】
本例のセラミックハニカム構造体の作製にあたっては、まず、実施例2と同様にしてセラミックハニカム構造体を作製した。
次いで、実施例3で作製した試料E1を水に分散させて触媒分散液を作製し、この触媒分散液中にセラミックハニカム構造体を浸漬させた後、乾燥させた。さらに浸漬と乾燥を繰り返すことにより、触媒材料(試料E1)をセラミックハニカム構造体に担持させた。
このようにして、触媒材料1として試料E1を担持したセラミックハニカム構造体を得た。
【0081】
本例のハニカム構造体においては、実施例3で作製した触媒材料(試料E1)がセル壁に担持されている。そのため、触媒材料(試料E1)の優れた触媒特徴を生かして、本例のハニカム構造体は、腐食を生じることなく、低温で煤を燃焼させることができる。
また、上記試料E1を担持したセラミックハニカム構造体と同様にして、実施例3で作製した試料E2を担持するセラミックハニカム構造体を作製した。このセラミックハニカム構造体においても、試料E2の優れた触媒特性を生かして、腐食を生じることなく、低温で煤を燃焼させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施例1にかかる、触媒材料の断面構造の一例を示す説明図。
【図2】実施例1にかかる、3種類の触媒材料(試料E、試料C1、及び試料C2)についての重量変化(燃焼率)と加熱温度との関係を示す線図。
【図3】実施例1にかかる、触媒材料(試料E、試料C1)のXRD回折パターンを示す線図。
【図4】実施例1にかかる、燃焼前の触媒材料(試料E)をSEMにより観察した様子を示す写真代用図。
【図5】実施例1にかかる、燃焼後の触媒材料(試料E)をSEMにより観察した様子を示す写真代用図。
【図6】実施例1にかかる、燃焼前の触媒材料(試料C1)をSEMにより観察した様子を示す写真代用図。
【図7】実施例1にかかる、燃焼後の触媒材料(試料C1)をSEMにより観察した様子を示す写真代用図。
【図8】実施例2にかかる、セラミックスハニカム構造体の斜視図。
【図9】実施例2にかかる、セラミックハニカム構造体の長手方向の断面図。
【図10】実施例2にかかる、セラミックハニカム構造体内を排ガスが通過する様子を示すセラミックハニカム構造体の断面説明図。
【図11】実施例2にかかる、ハニカム構造体の斜視図。
【図12】実施例2にかかる、ハニカム構造体の端面にマスキングテープを配置する様子を示す斜視図。
【図13】実施例2にかかる、マスキングテープに貫通穴を形成する様子を示す説明図。
【図14】実施例2にかかる、マスキングテープに貫通穴を形成した状態を示すセラミックハニカム構造体の断面説明図。
【図15】実施例2にかかる、セラミックハニカム構造体を栓材に浸漬する様子を示す説明図。
【図16】実施例2にかかる、セラミックハニカム構造体に触媒材料を担持させる様子を示す説明図。
【図17】実施例3にかかる、触媒粒子の断面構造の一例を示す説明図。
【図18】実施例3にかかる、4種類の触媒材料(試料E1、試料E2、試料C3、及び試料C4)についての重量変化(燃焼率)と加熱温度との関係を示す線図。
【図19】実施例3にかかる、触媒材料(試料E1及び試料E2)のXRD回折パターンを示す線図。
【符号の説明】
【0083】
1 触媒材料
11 基材粒子
12 アルカリ層
13 微粒子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスからなるハニカム構造体に担持させて内燃機関から排出される煤を燃焼するために用いられる触媒材料であって、
該触媒材料は、アルミナからなる基材粒子と、該基材粒子上に形成されたアルカリ性アルカリ塩からなるアルカリ層と、上記基材粒子上に分散された酸化銀又は炭酸銀からなる複数の微粒子とからなることを特徴とする触媒材料。
【請求項2】
請求項1において、上記アルカリ性アルカリ塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩から選ばれる1種以上の塩であることを特徴とする触媒材料。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記触媒材料は、粒径0.1〜20μmの粒子からなることを特徴とする触媒材料。
【請求項4】
セラミックスからなるハニカム構造体に担持させて内燃機関から排出される煤を燃焼するために用いられる触媒材料の製造方法であって、
アルミナからなる基材粒子と、該基材粒子上に形成されたアルカリ性アルカリ塩からなるアルカリ層と、上記基材粒子上に分散された酸化銀又は炭酸銀からなる複数の微粒子とからなる触媒材料の製造方法において、
アルミナゾルに、硝酸銀水溶液を混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合することにより、水中に上記触媒材料が分散された分散液を得る混合工程と、
上記分散液から上記触媒材料を分離して水洗後、該触媒材料を乾燥することにより上記触媒材料を得る乾燥工程とを有することを特徴とする触媒材料の製造方法。
【請求項5】
外周壁と、該外周壁の内側においてハニカム状に設けられた隔壁と、該隔壁により仕切られていると共に少なくとも部分的に両端面に貫通してなる複数のセルとを有するセラミックハニカム構造体において、
上記セル壁には、請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒材料あるいは請求項4の製造方法によって得られる触媒材料が担持されていることを特徴とするセラミックハニカム構造体。
【請求項6】
セラミックスからなるハニカム構造体に担持させて内燃機関から排出される煤を燃焼するために用いられる触媒材料であって、
該触媒材料は、Bi2Al4O9にアルカリがドープされたドープ型複合酸化物及び/又はBi2Al4O9相中にアルカリが分散された分散型複合酸化物を含有する触媒粒子からなることを特徴とする触媒材料。
【請求項7】
請求項6において、上記触媒粒子は、アルミナにアルカリがドープされたドープ型アルミナを含有することを特徴とする触媒材料
【請求項8】
請求項7において、上記触媒粒子は、上記ドープ型アルミナからなる基材粒子と、該基材粒子の表面の少なくとも一部に形成された上記ドープ型複合酸化物及び/又は上記分散型複合酸化物からなる複合酸化物層とを有することを特徴とする触媒材料。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項において、上記触媒粒子にはAgを含有する微粒子が担持されていることを特徴とする触媒材料。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項において、上記触媒粒子の粒径は、0.1〜20μmであることを特徴とする触媒材料。
【請求項11】
セラミックスからなるハニカム構造体に担持させて内燃機関から排出される煤を燃焼するために用いられる触媒材料の製造方法であって、
Bi2Al4O9にアルカリがドープされたドープ型複合酸化物及び/又はBi2Al4O9相中にアルカリが分散された分散型複合酸化物を含有する触媒粒子からなる触媒材料を製造する方法において、
アルミナ源と硝酸ビスマス水溶液とを混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合することにより、水中に原料混合物が分散された分散液を得る混合工程と、
上記分散液から上記原料混合物を分離して水洗後、該原料混合物を乾燥し焼成することにより、上記触媒材料を得る乾燥・焼成工程とを有することを特徴とする触媒材料の製造方法。
【請求項12】
請求項11において、上記アルミナ源は、硝酸アルミニウム又はアルミナゾルであることを特徴とする触媒材料の製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12において、上記混合工程においては、上記アルミナ源と上記硝酸ビスマス水溶液との混合時に硝酸銀を混合することを特徴とする触媒材料の製造方法。
【請求項14】
外周壁と、該外周壁の内側においてハニカム状に設けられた隔壁と、該隔壁により仕切られていると共に少なくとも部分的に両端面に貫通してなる複数のセルとを有するセラミックハニカム構造体において、
上記セル壁には、請求項6〜10のいずれか一項に記載の触媒材料あるいは請求項11〜13のいずれか一項に記載の製造方法によって得られる触媒材料が担持されていることを特徴とするセラミックハニカム構造体。
【請求項1】
セラミックスからなるハニカム構造体に担持させて内燃機関から排出される煤を燃焼するために用いられる触媒材料であって、
該触媒材料は、アルミナからなる基材粒子と、該基材粒子上に形成されたアルカリ性アルカリ塩からなるアルカリ層と、上記基材粒子上に分散された酸化銀又は炭酸銀からなる複数の微粒子とからなることを特徴とする触媒材料。
【請求項2】
請求項1において、上記アルカリ性アルカリ塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩から選ばれる1種以上の塩であることを特徴とする触媒材料。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記触媒材料は、粒径0.1〜20μmの粒子からなることを特徴とする触媒材料。
【請求項4】
セラミックスからなるハニカム構造体に担持させて内燃機関から排出される煤を燃焼するために用いられる触媒材料の製造方法であって、
アルミナからなる基材粒子と、該基材粒子上に形成されたアルカリ性アルカリ塩からなるアルカリ層と、上記基材粒子上に分散された酸化銀又は炭酸銀からなる複数の微粒子とからなる触媒材料の製造方法において、
アルミナゾルに、硝酸銀水溶液を混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合することにより、水中に上記触媒材料が分散された分散液を得る混合工程と、
上記分散液から上記触媒材料を分離して水洗後、該触媒材料を乾燥することにより上記触媒材料を得る乾燥工程とを有することを特徴とする触媒材料の製造方法。
【請求項5】
外周壁と、該外周壁の内側においてハニカム状に設けられた隔壁と、該隔壁により仕切られていると共に少なくとも部分的に両端面に貫通してなる複数のセルとを有するセラミックハニカム構造体において、
上記セル壁には、請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒材料あるいは請求項4の製造方法によって得られる触媒材料が担持されていることを特徴とするセラミックハニカム構造体。
【請求項6】
セラミックスからなるハニカム構造体に担持させて内燃機関から排出される煤を燃焼するために用いられる触媒材料であって、
該触媒材料は、Bi2Al4O9にアルカリがドープされたドープ型複合酸化物及び/又はBi2Al4O9相中にアルカリが分散された分散型複合酸化物を含有する触媒粒子からなることを特徴とする触媒材料。
【請求項7】
請求項6において、上記触媒粒子は、アルミナにアルカリがドープされたドープ型アルミナを含有することを特徴とする触媒材料
【請求項8】
請求項7において、上記触媒粒子は、上記ドープ型アルミナからなる基材粒子と、該基材粒子の表面の少なくとも一部に形成された上記ドープ型複合酸化物及び/又は上記分散型複合酸化物からなる複合酸化物層とを有することを特徴とする触媒材料。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項において、上記触媒粒子にはAgを含有する微粒子が担持されていることを特徴とする触媒材料。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項において、上記触媒粒子の粒径は、0.1〜20μmであることを特徴とする触媒材料。
【請求項11】
セラミックスからなるハニカム構造体に担持させて内燃機関から排出される煤を燃焼するために用いられる触媒材料の製造方法であって、
Bi2Al4O9にアルカリがドープされたドープ型複合酸化物及び/又はBi2Al4O9相中にアルカリが分散された分散型複合酸化物を含有する触媒粒子からなる触媒材料を製造する方法において、
アルミナ源と硝酸ビスマス水溶液とを混合し、その後さらに炭酸アルカリあるいは水酸化アルカリを混合することにより、水中に原料混合物が分散された分散液を得る混合工程と、
上記分散液から上記原料混合物を分離して水洗後、該原料混合物を乾燥し焼成することにより、上記触媒材料を得る乾燥・焼成工程とを有することを特徴とする触媒材料の製造方法。
【請求項12】
請求項11において、上記アルミナ源は、硝酸アルミニウム又はアルミナゾルであることを特徴とする触媒材料の製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12において、上記混合工程においては、上記アルミナ源と上記硝酸ビスマス水溶液との混合時に硝酸銀を混合することを特徴とする触媒材料の製造方法。
【請求項14】
外周壁と、該外周壁の内側においてハニカム状に設けられた隔壁と、該隔壁により仕切られていると共に少なくとも部分的に両端面に貫通してなる複数のセルとを有するセラミックハニカム構造体において、
上記セル壁には、請求項6〜10のいずれか一項に記載の触媒材料あるいは請求項11〜13のいずれか一項に記載の製造方法によって得られる触媒材料が担持されていることを特徴とするセラミックハニカム構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2008−100208(P2008−100208A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333225(P2006−333225)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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