説明

触媒気相反応のための装置とプロセス及びその利用

本発明は、触媒の発熱気相反応のための改良型反応器であって、少なくとも1つの酸化作用物質と少なくとも1つの被酸化性成分を備えている反応ガスの流れ方向に見て、入口ゾーン(1)、少なくとも1つの触媒(4)を備える反応ゾーン(2)、及び生成ガスのための出口ゾーン(3)を有する反応器に関する。反応器は、断熱ジャケット(6)及び/又は冷媒輸送用装置の様な手段を、少なくとも入口ゾーン(1)の領域に有しており、前記冷媒は、反応ゾーン(2)で発生した熱の、入口ゾーン(1)への輸送を減少させ、ひいては使用されている反応ガス混合物の早期発火又は入口ゾーン(1)での望まれない二次反応の発現の危険性を低減し、及び/又は反応器の内壁は、少なくとも入口ゾーン(1)では、不活性材料から設計されている。反応ガスは、その材料組成に関して均質なガス混合物として、1つ又はそれ以上の供給ライン(30)を経由して入口ゾーン(1)へ進入する。反応器は、特にアンモニア酸化のために、例えば硝酸システムなどで使用することができ、好適に、小さい断面を有するハニカム型の遷移金属触媒が従来採用されている白金ネットとして使用されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒気相反応のための改良された反応器、及び同反応器を使って実施されるプロセス、特に、アンモニアを酸化させるためのプロセスなどにおける改良されたプロセスであって、例えばカプロラクタムの調製又は特に硝酸の調製において構成要素として使用することができる改良された反応器及びプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
触媒気相反応を実施すると、多くの場合、反応熱が放出される。反応熱は、例えば、加熱された反応器壁を通っての熱伝導、向流方向に進む反応ガスの渦巻きが媒介する対流、或いは熱放射によって、反応器の反応ゾーンの手前に位置する部分に到達することもある。この熱輸送の結果として、送給ガスは、反応ゾーン到達前ですら極めて強烈に加熱され、このゾーンに到達する以前に、無制御な仕方で進行する望まれない副反応又は早発反応が生じてしまう恐れがある。
【0003】
工業的に大規模に実施されている発熱気相反応の一例に硝酸(「HNO」)の調製がある。これは、一般に、工業規模でオストワルト法に従ってアンモニアを白金/ロジウム触媒上で触媒酸化させることにより実施されている。ここでは、アンモニア(「NH」)は、極めて選択的に一酸化窒素(「NO」)に酸化され、それが次に更なるプロセスの過程で二酸化窒素(「NO」)に酸化され、最終的に吸収塔の中で水と反応してHNOを生じさせる。Pt/Rh触媒は、薄いガーゼとして設計されており、バーナーの中の広い区域に拡げられている。これらのガーゼの通例的な寸法は、直径0.5−5mの範囲にある。ガーゼ充填材の厚さは、通例的には採用されるガーゼの枚数次第で数ミリメートルから最大でも2センチメートルである。
【0004】
ガーゼに、酸素及びアンモニア含有混合物が通される。この混合物の組成は、爆発又は爆轟の危険−機器内及びガーゼより前の配管においても−を回避するために、常に爆発下限値を一定の安全幅だけ下回るように希釈によって制御されている。硝酸の調製、又はカプロラクタムの調製の一部のプロセスでは、使用される希釈剤は、空気の不活性成分、特に窒素であり、即ち大気とアンモニアが、典型的にはアンモニアを大凡8−12%含有する混合物が得られるように混合される。ガーゼ上の反応の発熱のせいで、そこには大凡800℃−950℃の範囲の温度が立ち上がる。カプロラクタムの調製における中間体としての一酸化窒素及び硫酸ヒドロキシルアミンを調製するためのプロセスも知られており、そこでは、アンモニアは、酸素を使用して触媒酸化され、アンモニア/酸素混合物は、蒸気で処理され、その結果、希釈される(これに関しては、英国特許GB−A−1,139,849号及びロシア特許RU−A−2,127,222号を参照)。
【0005】
高温の反応ガスは、その後、熱交換器の中で冷却され、熱交換機の中では蒸気が生成されるか又はプロセスガスが加熱される。
【0006】
触媒の幾何学形状として直径が大きく高さが非常に低いガーゼが選定されている理由は、NH酸化を非常に低い滞留時間で起こさなくてはならないためであって、というのも一方ではNOの後続反応が考えられるからであり、他方ではガーゼの灌流により発生する圧力損失とガーゼの機械的応力をできる限り低く保たなくてはならないからである。従って、工業的HNO調製でのガーゼの灌流は、圧力の範囲にもよるが比較的低い線形速度で起こり、大気条件下では大凡0.4−1.0m/s、3−7バール(絶対圧)の範囲の中圧酸化下では大凡1−3m/s、そして8−12バール(絶対圧)の範囲の高圧酸化下では大凡2−4m/sの範囲にあるが、ここで、速度データは、反応熱により加熱されたガスについての空間速度であると理解されたい。また、入射流が速すぎる場合には、進入してくるガスの流れの冷却効果のせいでPt/Rhガーゼ上の反応が途絶えるとも限らない(「ブローアウト」現象)。
【0007】
アンモニア/酸素不活性混合物についての入射流量の下限は、起こり得る熱によるアンモニア燃焼の火炎速度を指標とし、何れの場合も、触媒上で発火した反応物が触媒床より前の遊離ガス空間へ逆流する余地を与えないように設定されている。
【0008】
科学文献及び特許文献には、古典的なガーゼ触媒に加えて、アンモニア酸化での遷移金属酸化物を基材とする卑金属触媒の使用も記載されている。これらは、それら単独か又はPt/Rhガーゼと組み合わせるか、どちらのやり方で採用することもできる。
【0009】
これに関連した調査は、例えば、Sadykov他、Appl. Catal. General A: 204(2000) 59-87に見つけられる。卑金属触媒の使用を推し進める力になっているのは、貴金属、特に白金の節約である。貴金属触媒は、実際にアンモニア酸化中に消費され、よって、ガーゼの装填に従って大凡3か月から1年までの間隔で取り換えられなくてはならず、相当な費用を生じさせる。
【0010】
通例的に、遷移金属酸化物を基材とする触媒は、Pt/Rhガーゼ触媒でもそうであった様に、同じく比較的低い入射流量で通過される。これは、触媒上で一旦アンモニア酸化に火が付いたら、それを再び立ち消えさせないために、ここでは特に必要である。遷移金属酸化物を基材とする触媒は、実際に、総じて貴金属触媒より活性が低く、これらと比較すると、際立って高い開始温度と高い立ち消え温度を有している。
【0011】
国際特許WO−A−99/25,650号では、「ブローアウト」温度を、「カートリッジ」に収容されている極細粒触媒ペレットの使用によって、ここでは圧力損失を過剰に増加させることなく、どうやって下げることができるかについての方策が説明されている。
【0012】
アンモニアの触媒酸化の場合は、加えて、アンモニアが実際の酸化触媒と接触する前に例えば高温の配管壁で引火し、ここで非選択的に発火して、NとHO又は代わりにNOを生じさせるという問題が常に存在する。
【0013】
欧州特許EP−A−1,028,089号には、アンモニア燃焼がNH/空気混合物供給用の分配器付属品にはね返ることによって、これらの付属品が加熱される事態が起こり、それにより、進入してくるNHの一部がこれらの付属品の表面でNOに酸化されてしまう恐れのあることが記載されている。
【0014】
米国特許US−A−5,266,291号は、入口ゾーン−同文献では混合ゾーンと呼ばれている−の中に不活性材料の充填材を有する反応器を記載している。混合ゾーンには、冷却媒体、例えば水が噴入され、混合ゾーンの温度を下げる。代替的又は追加的に、混合ゾーンの反応器ジャケットを水で冷やすこともできる。当該文献は、反応ゾーンを冷却ジャケットで包囲したり水を反応ゾーンに注入して中の温度を下げたりし、この様にして無制御反応の危険性を減らすことができる可能性についても記載している。反応器では、異なるガス流が混合ゾーンへ送給され、そこに存在する充填材の中で混ざり合い、次に反応ゾーンへ送給される。充填材は、混合器としての機能に加え、爆発の発生も防ぐ。
【0015】
欧州特許EP−A−334,710号は、鋼壁で建造されている反応器を記載している。これは、耐熱性コンクリートの被覆が施された反応器の内側に設けられており、これ自体は内側がムライトのシースによって覆われている。これらの方策は、高圧下で気相反応を行えるようにするために講じられている。当該文献に示されている反応器は、同様に、1つの充填材と、異なる送給ガスを入口ゾーン−同文献では分散ゾーンと呼ばれている−に導入するための2つの送給ラインを有している。この反応器でも、異なるガス流が分散ゾーンに導入され、そこに存在する充填材の中で混ざり合い、次いで反応ゾーンへ送給される。充填材は、混合器としての機能に加え、ここでは爆発の発生も防ぐ。
【0016】
NH事前発火の問題は、技法に関連する8−12体積%という高いNH濃度では、燃焼そのものが維持され、反応の発熱で増大する恐れすらあるので、特に重要である。
【0017】
従って、実際の発火温度、即ちそれより高いとNH分解が起こり得るという臨界表面温度のみならず、NH分解によって放出される熱の除去もまた極めて重要である。
【0018】
この除去はなお都合がよく、アンモニアを積んだガス流は表面をより速く流れ越してゆき(冷却作用)、そしてこれはより冷たい。その上、触媒と接触する前の送給ガス流の滞留時間、ひいては起こり得る非選択的早発反応の反応時間が縮小される。
【0019】
アンモニアをPt/Rhガーゼ上で酸化させることによるHNOの工業的調製では、高活性Pt/Rh触媒の低感応温度は、約200℃という比較的低い進入温度を可能にする。このやり方では、低流入速度にもかかわらず、アンモニアの事前発火がプロセスの工業的実現の障害になることはない。
【0020】
しかしながら、より低い触媒活性を有する触媒を使用した場合、送給ガス混合物の温度を高くする(予加熱)か、流入速度を低くするか、又は望ましくは両方の方策を組み合わせて、作業することが必要となる。これらの条件下では、アンモニア事前発火の危険性が増す。
【0021】
白金ガーゼに比較して、触媒層の断面がより小さく深さがより深いハニカム触媒を使った実験により、今や、低い送給ガス混合物流入速度で所望されるNOの形成の選択性は極僅かしかないことが示されている。従って、その様なプロセスの経済性が疑問視される。この効果は、理論的には、送給ガス混合物の流入速度を増加させることによって補償されないこともない。しかしながら、現実には、流入速度を増加させると、圧力損失の不釣り合いな増加が起こり、その上、或る特定の状況下では不完全なアンモニア反応しか実現されないという具合に制限が課されてしまう。
【0022】
他の工業的に営まれている発熱気相反応、例えば、アンモニア酸化以外の酸化反応、炭化水素のエポキシ化又は遊離基ハロゲン化などには、根本的に同じ問題が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】英国特許GB−A−1,139,849号
【特許文献2】ロシア特許RU−A−2,127,222号
【特許文献3】国際特許WO−A−99/25,650号
【特許文献4】欧州特許EP−A−1,028,089号
【特許文献5】米国特許US−A−5,266,291号
【特許文献6】欧州特許EP−A−334,710号
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Sadykov他、Appl. Catal. General A: 204(2000) 59-87
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的は、触媒の発熱気相反応を実施するための反応器及びプロセスにおいて、採用されている送給ガス又は送給ガス混合物の事前発火又は望まれない副反応の発生の危険性を低くした反応器及びプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、少なくとも1つの酸化性物質と少なくとも1つの被酸化性成分とを含有する送給ガスの変換によって生成ガスを生じさせる触媒の発熱気相反応のための反応器であって、送給ガスの流れ方向に見て、入口ゾーン(1)、少なくとも1つの触媒(4)を備える反応ゾーン(2)、及び生成ガスのための出口ゾーン(3)を備えている反応器において、その物質組成に関して均質なガス混合物が送給ガスとして、入口ゾーン(1)へ、1つ又はそれ以上の送給ライン(3)によって供給されており、少なくとも入口ゾーン(1)の区域又は反応ゾーン(2)の区域には、反応ゾーン(2)で形成された反応熱の入口ゾーン(1)への輸送を減少させる手段が設けられ、及び/又は反応器の内壁は、少なくとも入口ゾーン(1)の区域又は反応ゾーン(2)の区域が、不活性材料から造作されている、反応器に関する。
【0027】
触媒の発熱気相反応のための改良された反応器であって、少なくとも1つの酸化性物質と少なくとも1つの被酸化性成分とを含有する送給ガスの流れ方向に見て、入口ゾーン(1)、少なくとも1つの触媒(4)を備える反応ゾーン(2)、及び生成ガスのための出口ゾーン(3)を備えている反応器を記載している。反応器は、少なくとも入口ゾーン(1)の区域に、反応ゾーン(2)で発生した熱の入口ゾーン(1)への輸送を減少させ、ひいては採用されている反応ガス混合物の事前発火又は入口ゾーン(1)での望まれない副反応の進行の危険性を減少させる手段、例えば断熱ジャケット(6)及び/又は冷却媒体輸送用の装置を有しており、及び/又は反応器の内壁は、少なくとも入口ゾーン(1)の区域が、不活性材料から造作されている。
【0028】
反応ガスは、その物質組成に関して均質なガス混合物として、1つ又はそれ以上の送給ライン(30)を経由して入口ゾーン(1)へ進入する。
【0029】
反応器は、特に、アンモニア酸化、例えば硝酸プラントでのアンモニア酸化に採用することができ、好適にも、通例的に採用されている白金ガーゼより小さい断面積を有するハニカム形態に造作されている遷移金属触媒が使用されている。
【0030】
送給ガスと送給ライン(30)
「送給ガス」又は「送給ガス混合物」は、この説明の文脈では、多数の化学物質から成るガス混合物であって、化学物質の少なくとも1つが、本発明による反応器の反応ゾーン(2)で所望の方式で反応して、1つ又は所望の生成物を形成するが、このとき望まれない副生成物が追加的に形成される余地は残されており、且つガス混合物には、少なくとも1つの酸化性物質と少なくとも1つの被酸化性成分が含有されている、その様なガス混合物を意味していると理解されたい。送給ガスは、反応ゾーン(2)で所望の方式で互いに反応し合う多数の化学物質、即ちアンモニアの様な少なくとも1つの被酸化性化合物と、酸素の様な少なくとも1つの酸化性化合物とを含んでおり、送給ガスには、更に、互いに反応し合う物質に対して不活性な1つ又はそれ以上の物質が含有されているのが望ましい。不活性成分として特に好ましいのは、酸素以外の空気の構成成分、特に窒素である。単数の不活性成分又は複数の不活性成分は、化学的に活性のある物質を希釈することによって、何らかの起こり得る爆発の下限を安全に下回らせ、ひいては送給ライン(30)、入口ゾーン(1)、又は反応ゾーン(2)での爆発の危険を排除する働きをする。必要に応じ(単数又は複数の)不活性成分によって履行される更なる目的は、局所的な過熱による触媒損傷を回避するために反応ゾーンで起こる反応の速度を修正すること、又は、そうでなければ反応器部品又は触媒の有害な高温化につながりかねない反応の発熱による許容され得ない温度上昇を防ぐために、不活性成分の追加の熱容量によって反応ゾーン(2)での温度上昇を低減することである。
【0031】
送給ガス又は送給ガス混合物の特徴は、それが入口ゾーン(1)への進入以前に、又は最遅でも進入時には、反応ゾーン(2)での所望の単数反応又は複数反応を成功裏に実施するのに必要な程度までには均質化されている、即ち物質的に混ざり合っていることである。
【0032】
これは、流れ方向に見て(単数又は複数の)送給ライン(30)より前に配置されている器械で起こる。この代わりに、物質の混ざり合いは、入口ゾーン(1)への導入直前に起こってもよい。殆どの場合、必要な混ざり合いは、反応ゾーンで互いに反応し合う物質の送給ガス中の局所濃度が、<0.1、望ましくは0.05未満、特に望ましくは0.03未満の変動係数を有していれば実現される。混ぜ合わせの実施又はこれに必要な器械及び適切な方策は、当業者には既知である。混ぜ合わせ用のその様な器械には、例えば、静止混合器がある。これらの器械では、混ぜ合わされるガスはチャネルの中へ通されるが、チャネルには堅く作り付けられた金属板、管、又は他の形状物が設置されており、それにガスを通すと、乱流が発生し、ガスが巧く混ざり合うようになっている。混合用の器械の更なる例は、動的混合器である。その様な器械は、1つ又はそれ以上の可動要素を含んでいる。運動は、通例的には電気エネルギーによって引き起こされる。運動が乱流を招き、それが進入してくるガスの良好な混ざり合いをもたらす。
【0033】
物質の局所濃度の変動係数とは、局所物質濃度の標準偏差対局所物質濃度の平均値の比を意味する。物質濃度は、例えば、モル/m、kg/リットル、ppm、又は他の濃度単位で表すことができる。変動係数は、濃度の比から成るので、無次元であり、選定された濃度単位とは無関係である。変動係数は、混合物の品質又は混合器械の効率の通例的な尺度である。チャネル又は管で実現される局所濃度の加重変動係数は、例えば、局所濃度及びガス速度を使って求めることができ、局所濃度及びガス速度は、チャネル又は管の断面に亘ってまんべんなく分布させた適正な数の測定点のサンプリング又はピトー管測定によって求められる。期待される局所物質濃度の変動係数は、算術的に予測することもできる。混合器械の供給業者は、通例的に、彼らの器械で期待される物質濃度の変動係数を表示しているが、それらは供給業者が算術的又は実験により求めたものである。
【0034】
入口ゾーン(1)
入口ゾーン(1)は、本説明の文脈では、反応器の、物質的に混ざり合った送給ガス又は送給ガス混合物導入用の少なくとも1つの送給ライン(30)と反応ゾーン(2)の間に位置する内部空間を意味していると理解されたい。これは、概して、空の空間である。しかしながら、これは、流れ誘導装置の様な、混ぜ合わせのために働くのではない機能的付属品であって、即ち付加的な二次効果としてのみ混ざり合いが生じ得る機能的付属品、を含むこともできる。機能的な付属品の例は、入口ゾーン(1)の断面に亘ってガス流を等化するための付属品、例えばそらせ板又は回転羽根、有孔プレート、金網、ラメラ、又は整流器などがある。更に考えられる機能的付属品は、例えば、圧力又は圧力分布を測定するためのサンプリング探針又は器具の様な測定装置である。更に考えられる機能的付属品は、入口ゾーンの中へ作り付けられている管又は他のチャネルを通って流れている他の媒体との熱交換によってガス混合物を冷却又は加熱するための付属品である。更に考えられる機能的付属品は、ガス混合物を加熱するのに使用される電気加熱要素である。更に考えられる機能的付属品は、触媒反応を開始させるための点火装置である。更に考えられる機能的付属品は、ガス混合物の圧力を増加するための送風器である。更に考えられる機能的付属品は、ガス混合物からエネルギーを回収するためのタービンである。これらの機能的付属品の2つ又はそれ以上を組み合わせたものを採用することもできる。適した点火装置は、圧電的又は誘導的に火花を発生させることができるか、或いはそれらは熱電的に高温を発生させる。それによって、触媒反応を開始させるのに十分なエネルギーが、進入してくるガス混合物中に生成される。更に、エネルギーは、最初に酸化性物質及び随意的には不活性物質だけを反応器へ送給し、例えば水素の様な引火し易いガス(ここでは「点火ガス」と呼ばれる)を別の送給ラインを通して点火装置に導き入れ、それに点火することによって、間接的にガス混合物に移すことができる。点火装置からの燃えている点火ガスの炎は、触媒を必要な反応温度へ加熱する。続いて、酸化させるべきガス混合物の(単数又は複数の)成分が反応器に追加的に送給される。所望される触媒反応が始まったら、点火ガスの供給は終了される。
【0035】
送給ガスは、入口ゾーン(1)への進入以前又は進入時には既に十分に混ざり合っているので、入口ゾーン(1)では混合用の付属品を省略することができる。特に、混合又は分散用の不活性充填材は不要である。
【0036】
入口ゾーン(1)の特徴で、「単数の送給ライン」(30)又は「複数の送給ライン」(30)という用語と区別するための特徴は、反応ゾーン(2)で形成された熱の、反応ゾーン(2)から入口ゾーン(1)への輸送を減少させるためのここで説明されている方策の1つ又はそれ以上の使用が無ければ、入口ゾーンでの望まれない副反応又は事前発火につながりかねない状況が起こり得ることである。単数の送給ライン(30)又は複数の送給ライン(30)は、送給ラインへの悪影響が無いか無視できる程度に反応ゾーン(2)から遠くに隔たっているものと考えてよい。
【0037】
反応ゾーン(2)
本説明の文脈では反応ゾーン(2)は、反応器の、入口ゾーン(1)に続く内部空間であって、発熱気相反応のための1つ又はそれ以上の触媒が入っている内部空間を意味していると理解されたい。反応ゾーン(2)では、送給ガス混合物の成分同士の反応の大部分が起こる。触媒の配置型式は、当業者により、既知の判定基準に従って行われる。通例的には、触媒は、充填材、鋳込材、ガーゼ、又はハニカムの形態で配設されている。
【0038】
必ずしも、入口ゾーン(1)を、空間的に、排他的に、出口ゾーン(3)から反応ゾーン(2)によって分離させなくてはならないわけではない。むしろ、入口ゾーン(1)と出口ゾーン(3)は、他に、反応ゾーン(2)の壁又は触媒や他の付属品用の支持部によって分離させることができる。反応ゾーン(2)の壁又は支持部は、送給ガスが入口ゾーン(1)から反応ゾーン(2)を回避して直接出口ゾーン(3)へ流入するのを確実に防ぎさえすればよい。反応ゾーン(2)の壁又は支持体の、入口ゾーン(1)に面する側は、入口ゾーン(1)に含まれ、出口ゾーン(3)の側は出口ゾーン(3)に面している。
【0039】
反応ゾーン(2)は、従って、本発明による反応器の断面全体を占めていてもよいし、代わりにその一部のみを占めていてもよい。後者の場合には、入口ゾーン(1)は、反応器断面で反応ゾーン(2)に占められていない部分がそのまま出口ゾーン(3)へと変化している。
【0040】
出口ゾーン(3)
本説明の文脈では、出口ゾーン(3)は、反応器の、反応ゾーン(2)に続く内部空間であって、生成物含有ガス混合物が反応器から導き出される内部空間を意味していると理解されたい。これは、概して、同じく空の空間である。しかしながら、これは、触媒保持用の装置や熱回収用の装置の様な機能的付属品を含むこともできる。出口ゾーンでは、更なる反応器又は後反応器が後に続いていてもよい。
【0041】
熱の逆輸送を阻害するための手段
送給ガスは、反応ゾーン(2)において発熱反応で完全に又は部分的に反応し、生成ガスが形成され、それが続いて出口ゾーン(3)を通って反応器から出てゆく。反応ゾーン(2)で発生した熱は、少なくとも一部が、伝導、対流、及び/又は放射によって、送給ガスに向流して入口ゾーン(1)へ輸送され、すると入口ゾーン(1)の送給ガス又は反応器壁の表面がそこで不当なやり方で加熱される、という危険性がある。
【0042】
これを防止するか又はそれを少なくとも阻害するために、本発明によれば、本発明の第1実施形態では、少なくとも入口ゾーン(1)又は反応ゾーン(2)の区域に、反応ゾーン(2)で発生した熱の入口ゾーン(1)への輸送を減少させる手段が提供されている。
【0043】
本発明による反応器は、入口ゾーン(1)の区域に、又は反応ゾーン(2)の区域に、入口ゾーン(1)と反応ゾーン(2)の区域に、又は入口ゾーン(1)と出口ゾーン(3)の区域に、又は入口ゾーン(1)と反応ゾーン(2)と出口ゾーン(3)の区域に、反応ゾーン(2)で発生した熱の入口ゾーン(1)への輸送を減少させる手段を有しているのが望ましい。
【0044】
反応ゾーン(2)で形成された熱の入口ゾーン(1)への輸送を減少させるための手段として、異なる解決手法を使用することができる。
【0045】
1つの実施形態では、入口ゾーン(1)の区域に、又は入口ゾーン(1)と反応ゾーン(2)の区域に、又は入口ゾーン(1)と出口ゾーン(3)の区域に、反応器の内部空間を反応器ジャケット構造(5)に対して断熱する断熱ジャケット(6)が設けられている。この断熱ジャケット(6)は、基本的に、2通りに作用する。熱伝導し易い反応器ジャケット構造(5)に沿って、反応ゾーン(2)又は出口ゾーン(3)から入口ゾーン(1)へ伝わってくる熱は、辛くも熱伝導性に劣る断熱ジャケット(6)を通ってのみ送給ガスに面する面へ輸送され得る。その上、反応ゾーン(2)又は出口ゾーン(3)から入口ゾーン(1)への断熱ジャケット(6)に沿った直接の熱伝導は、断熱ジャケット(6)の低い熱伝導率のために減少する。
【0046】
第2の実施形態では、冷却媒体を通すための装置が、入口ゾーン(1)の区域に、又は入口ゾーン(1)と反応ゾーン(2)の区域に、又は入口ゾーン(1)と出口ゾーン(3)の区域に設けられている。この装置は、反応ゾーン(2)で発生した熱を一部吸収し、よって、この熱は、もはや入口ゾーン(1)への熱輸送に回ることはなく、及び/又はこの熱は反応ゾーン(1)のまだ非常に低温で冷却媒体の導入によって発生する温度上昇が非臨界となる位置で送給ガスに導き入れられるか、又は冷却媒体が反応ゾーン(2)又は出口ゾーン(3)に隣接する入口ゾーン(1)を非常に強力に冷却するので、入口ゾーン(1)の温度は、反応ゾーン(2)から放出された熱にもかかわらず非臨界範囲に保たれる。両方の方策の組合せを備える反応器が、特に好適である。
【0047】
別の好適な実施形態では、本発明による反応器には、少なくとも入口ゾーン(1)の区域又は反応ゾーン(2)の区域に、反応ゾーン(2)で発生した熱の入口ゾーン(1)への輸送を減少させる手段が設けられており、反応器の内壁は、少なくとも入口ゾーン(1)の区域又は反応ゾーン(2)の区域が、不活性材料から造作されている。
【0048】
不活性材料
本発明の別の実施形態では、反応器の内壁は、少なくとも入口ゾーン(1)の区域又は反応ゾーン(2)の区域が、不活性材料から造作されている。この実施形態は、送給ガスの反応器内壁への触媒反応を防止又は阻害する。反応器内壁を不活性材料で造作することは、例えば、被覆によって実施することもできるし、又は不活性材料を反応器の中にシースの形態で存在させる。反応器壁自体を不活性材料で構成することもできる。
【0049】
本発明による反応器は、入口ゾーン(1)の区域、又は反応ゾーン(2)の区域、又は入口ゾーン(1)と反応ゾーン(2)の区域、又は入口ゾーン(1)と反応ゾーン(2)と出口ゾーン(3)の区域が、不活性材料から造作されているのが望ましい。
【0050】
「不活性材料」という用語は、この説明の文脈では、入口ゾーン(1)の送給ガスに敷衍する温度、又は反応器内壁、望ましくは入口ゾーン(1)の内壁の表面の温度での、如何なる望まれない副反応も助長しないあらゆる材料を意味していると理解されたい。これらの材料は、更に、反応ゾーン(2)又は出口ゾーン(3)から入口ゾーン(1)への熱輸送を減少させる。不活性で熱絶縁性の材料が、好適な実施形態である。
【0051】
不活性材料の例に、セラミックス、特に密焼結セラミックスがあり、他にも、石英ガラス、シャモット、エナメル、及び表面が不動態化又は研磨加工された材料、例えば表面が不動態化及び/又は研磨加工された金属など、がある。不動態化は、例えば、酸、アルカリ、又は塩の溶液を用いた処理によってもたらすことができる。
【0052】
本発明は、上述の反応器を使用して触媒の発熱気相反応を実施するためのプロセスにも関する。
【0053】
本プロセスは、以下の方策、即ち、
i)その物質組成に関して均質な少なくとも1つのガス混合物であって、少なくとも1つの酸化性物質と少なくとも1つの被酸化性成分とを含有するガス混合物を、送給ガスとして、少なくとも1つの送給ライン(30)を通して、反応器の入口ゾーン(1)へ導入すること、
ii)送給ガスを入口ゾーン(1)から、触媒(4)を備える反応ゾーン(2)へ、送給ガスが反応ゾーン(4)での発熱反応で完全又は部分的に反応して生成ガスを生じさせる条件下で、供給すること、
iii)生成ガスを、出口ゾーン(3)を通して反応器から導き出すこと、及び
iv)反応ゾーン(2)で形成された反応熱の入口ゾーン(1)への輸送を減少させるための手段を提供し、及び/又は反応器の内壁を、少なくとも入口ゾーン(1)の区域又は反応ゾーン(2)の区域は、不活性材料から造作すること、を有している。
【0054】
本発明による反応器で、又は本発明によるプロセスを使用して、実施することのできる化学反応の例としては、ハロゲン化反応の様な発熱性遊離基気相反応を含むあらゆる種類の酸化反応がある。
【0055】
本発明による反応器又は本発明によるプロセスは、アンモニアの酸化、特にカプロラクタムと硝酸の調製に採用されるのが望ましい。
【0056】
同様に、本発明による反応器又は本発明によるプロセスは、アンドルソウ反応、特に、アンモニアと酸素と炭化水素、好適にはメタンから、シアン化水素を調製するのに採用されるのが望ましい。
【0057】
以下の説明では、モデル反応として一例的に、硝酸調製のためのアンモニアの酸化をより詳細に示している。しかしながら、原則的に、本発明による−以上に説明した−反応器とプロセスは、他の反応にも適している。
【0058】
採用することのできる触媒は、関与する単数の目標反応又は複数の目標反応に適したあらゆる触媒である。これらは、例えば、純粋な形態で非担持触媒として又は担持触媒として使用することができる。更に、あらゆる通例的な触媒幾何学形状を使用することができ、例えば、ペレット、粒体、押出物、又は粉末を、鋳込材、充填材、ガーゼ、又は他の形態、例えば一体化ハニカム体の形態など、で使用することができる。
【0059】
好適に採用される触媒は、酸化物、好適には金属酸化物、特に遷移金属酸化物を、相当な量、例えば少なくとも30重量%含有している。
【0060】
本発明によれば、ここでは、特に遷移金属酸化物含有触媒、例えば、Appl. Catal. General A: 204(2000) 59-87、米国特許US−A−5,690,900号、又は欧州特許EP−A−946,290号に記載のものなどを採用することができる。
【0061】
コバルト含有触媒は、特に適している。構造型式として、ペロフスカイトが特に好都合である。
【0062】
本発明によれば、触媒は、アンモニア酸化ではハニカム形態で採用されるのが望ましい。これらは、例えば、ハニカム型非担持触媒として存在させることもできるし、ハニカム型担体に担持させ、担体の上及び/又は中に触媒活性材料を組み込むこともできる。
【0063】
触媒は、流れ方向に見て、少なくとも3cm、好適には少なくとも5cm、特に少なくとも10cm、極めて好適には10cmから200cmの深さを有している、例えば鋳込材、充填材、又はハニカムの形態で採用されるのが特に望ましい。
【0064】
下の実施例と図面は、本発明を例示しているが、それにより本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明による装置の縦断面図である。
【図2】本発明による別の装置の縦断面図である。
【図3】本発明による別の装置の縦断面図である。
【図4】本発明による別の装置の縦断面図である。
【図5】本発明による別の装置の縦断面図である。
【図6】本発明による、修正されたアンモニア酸化反応器の縦断面図である。
【図7】本発明による別の装置の縦断面図である。
【図8】本発明による別の装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
図面は、以下の実施例で詳細に説明する。
【0067】
実施例1
本発明の基本的な特徴を、図1に、本発明によるアンモニア酸化装置を使って示す。
【0068】
アンモニア酸化装置は、3つのゾーン、即ち、入口ゾーン(1)と、反応ゾーン(2)と、出口ゾーン(3)とに分けることができる。
【0069】
十分に混ざり合ったアンモニア/酸素/不活性物質を含有するガス混合物(以下、「送給ガス混合物」)が、送給ライン(30)を経由して入口ゾーン(1)へ導入され、当該ゾーンの次に続く反応ゾーン(2)でアンモニア酸化触媒(4)に触れる。その後、酸化反応の生成ガス混合物は、反応ゾーン(2)から出口ゾーン(3)を通って出てゆく。入口ゾーン(1)は、この実施形態では空の空間であり、不活性材料の充填材は何も入っていない。
【0070】
図1に示している実施形態では、本発明による装置の全3ゾーン(1、2、3)は、ジャケット構造(5)で囲まれており、同ジャケットは、触媒(4)及び断熱ジャケット(6)の担体を兼ねている。ジャケット構造(5)自体は、高圧容器の壁であってもよいし、代わりに、ジャケット構造(5)を或る空間に収容し、次に当該空間自体を図1に図示されていない圧力ジャケットで囲むようにしてもよい。
【0071】
熱絶縁性の気密材料から成る断熱ジャケット(6)は、入口ゾーン(1)と反応ゾーン(2)を熱的に分断するために働く。断熱ジャケット(6)は、反応ゾーン(2)からのジャケット構造(5)を通っての熱伝導の結果として入口ゾーン(1)に到達する熱が送給ガス混合物に伝わることを防止又は阻害する。ジャケット構造(5)の、入口ゾーンに位置している部分は、反応ゾーン(2)からの反応熱の熱伝導の結果としてより熱くなるが、送給ガス混合物への熱の移動は、熱絶縁性の断熱ジャケット(6)によって強力に阻止される。断熱ジャケット(6)は極僅かの熱伝導性しかないため、断熱ジャケット(6)は、反応ゾーン(2)から入口ゾーン(1)への断熱ジャケット(6)に沿った直接的な熱輸送も防止又は阻害する。断熱ジャケット(6)の材料と厚さを適切に選定することにより、断熱ジャケット(6)の、送給ガス混合物に面する壁の温度は、送給ガス混合物の発火又は反応温度より下に保たれ、望まれない過早反応を抑制することができる。
【0072】
実施例2
本発明の別の考えられる実施形態を図2に示している。この実施形態は、入口ゾーン(1)と反応ゾーン(2)の間の熱的分断の実現を除けば、例1の装置と同様である。
【0073】
このアンモニア酸化装置にも入口ゾーン(1)と反応ゾーン(2)と出口ゾーン(3)が存在している。入口ゾーン(1)は、やはりこの実施形態でも空の空間であり、不活性材料の充填材は入っていない。
【0074】
十分に混ぜ合わされたアンモニア/酸素/不活性物質を含有するガス混合物は、送給ライン(30)を経由して入口ゾーン(1)へ導入される。次いで、混合物は、反応ゾーン(2)でアンモニア酸化触媒(4)に接する。その後、酸化反応の生成混合物は、反応ゾーン(2)から出口ゾーン(3)を通って出てゆく。
【0075】
全3ゾーンのジャケット構造(5)は、触媒(4)を保持している。ジャケット構造(5)自体は、圧力容器の壁であってもよいし、代わりに、ジャケット構造(5)を或る空間に収容して、次に当該空間自体を圧力ジャケット(ここには図示せず)で囲むようにしてもよい。
【0076】
ジャケット構造(5)は、入口ゾーン(1)と反応ゾーン(2)のレベルが二重壁設計である。反応ゾーン(2)のレベルの二重壁の端には、送給ガス混合物、反応器での所望される反応、触媒(4)、及び生成ガス混合物との適合性を有する冷却媒体のための引入れ口(7)が付設されている。硝酸プラントで使用される場合は、適した冷却媒体として、例えば空気を採用することができる。
【0077】
冷却媒体は、二重壁の空間(9)を通って流れ、それにより、ジャケット構造(5)の内壁を冷却する。それにより、反応ゾーン(2)からのジャケット構造(5)を通っての熱伝導の結果として入口ゾーン(1)に到達する熱は冷却媒体へ移るので、入口ゾーン(1)の反応ゾーン(2)からの熱的分断が実現される。
【0078】
入口ゾーン(1)のレベルの二重壁の端の多数の小開口部(10)によって、冷却媒体は入口ゾーン(1)に入り、送給ガス混合物と混ざり合う。
【0079】
引入れ口(7)と開口部(10)を適切に選定すること、及びに冷却媒体の種類、量、流れ速度、及び進入温度を適切に選定することにより、送給ガス混合物の温度及びジャケット構造(5)の内表面の温度は、送給ガス混合物の発火温度又は反応温度より下になるように調節され、望まれない過早反応を抑制することができる。
【0080】
実施例3
図3には、入口ゾーンと反応ゾーンの間の特に効果的な熱的分断を可能にした本発明による装置を示している。
【0081】
このアンモニア酸化装置にも入口ゾーン(1)と反応ゾーン(2)と出口ゾーン(3)が存在している。この実施形態では、入口ゾーン(1)は空の空間であり、不活性材料の充填材は入っていない。
【0082】
十分に混ざり合ったアンモニア/酸素不活性物質を含有するガス混合物は、送給ライン(30)を経由して入口ゾーン(1)へ導入される。次いで、混合物は、反応ゾーン(2)でアンモニア酸化触媒(4)に接する。その後、酸化反応の生成混合物は、反応ゾーン(2)から出口ゾーン(3)を通って出てゆく。
【0083】
全3ゾーンのジャケット構造(5)は、触媒(4)及び断熱ジャケット(6)を保持している。ジャケット構造(5)自体は、圧力容器の壁であってもよいし、代わりに、ジャケット構造(5)を或る空間に収容して、次に当該空間自体を圧力ジャケット(ここには図示せず)で囲むようにしてもよい。
【0084】
ジャケット構造(5)は、入口ゾーン(1)と反応ゾーン(2)のレベルが二重壁設計である。そこには、冷却媒体のための接続部(7a、7b)も付設されている。適した冷却媒体は、例えば、水又は空気である。冷却媒体は、送給ガス混合物の流れ方向に流れていてもよいし、送給ガスの流れ方向に逆らって流れていてもよい。断熱ジャケット(6)と、ジャケット構造(5)の二重壁の間の空間(9)への冷却媒体の詰め込みは、共に、入口ゾーン(1)の反応ゾーン(2)からの熱的分断のために働く。
【0085】
熱絶縁性材料から成り、反応ゾーン(2)と入口ゾーン(1)のレベルでジャケット構造(5)を覆っている断熱ジャケット(6)は、反応ゾーン(2)のジャケット構造(5)を通っての熱伝導により入口ゾーン(1)に到達する熱が、送給ガス混合物へ移るのを防止する。断熱ジャケット(6)は極僅かの熱伝導性しかないため、断熱ジャケット(6)は、反応ゾーン(2)から入口ゾーン(1)への断熱ジャケット(6)に沿った直接的な熱輸送も防止又は阻害する。
【0086】
冷却媒体は、ジャケット構造(5)の二重壁の空間(9)を通って流れ、それにより、ジャケット構造(5)の内壁を冷却する。それにより、反応ゾーン(2)からの熱伝導によってジャケット構造(5)を通って入口ゾーン(1)に到達する熱は冷却媒体へ移るので、入口ゾーン(1)の反応ゾーン(2)からの更なる熱的分断が実現される。冷却媒体は、二重壁を通過した後、一方の接続部(7a、7b)を通って二重壁の間の空間(9)から再び現れる。
【0087】
断熱ジャケット(6)の作用は、その結果、冷却媒体による冷却によって支援される。絶縁性材料及びそれらの厚さ並びに冷却媒体を適切に選定することにより、断熱ジャケット(6)の、送給ガス混合物に面する壁の温度は、送給ガス混合物の発火温度又は反応温度より下に保たれ、望まれない過早反応が抑制される。
【0088】
実施例4
図2と同様の装置を図4に示している。ここでは、入口ゾーン(1)と反応ゾーン(2)の間の熱的分断は、入口ゾーンを冷却することによって行われている。
【0089】
このアンモニア酸化装置にも入口ゾーン(1)と反応ゾーン(2)と出口ゾーン(3)が存在している。入口ゾーン(1)は、この実施形態では空の空間であり、不活性材料の充填材は入っていない。
【0090】
十分に混ざり合ったアンモニア/酸素不活性物質を含有するガス混合物は、送給ライン(30)を経由して入口ゾーン(1)へ導入される。次いで、混合物は、反応ゾーン(2)でアンモニア酸化触媒(4)に接する。その後、酸化反応の生成混合物は、反応ゾーン(2)から出口ゾーン(3)を通って出てゆく。
【0091】
全3ゾーンのジャケット構造(5)は、触媒(4)を保持している。ジャケット構造(5)自体は、圧力容器の壁であってもよいし、代わりに、ジャケット構造(5)を或る空間に収容して、次に当該空間自体を圧力ジャケット(ここには図示せず)で囲むようにしてもよい。
【0092】
ジャケット構造(5)は、入口ゾーン(1)のレベルが二重壁設計である。反応ゾーン(2)の近傍の二重壁の端には、送給ガス混合物、反応器での所望される反応、触媒(4)、及び生成ガス混合物との適合性を有する冷却媒体のための引入れ口(7)が付設されている。硝酸プラントで使用される場合は、適した冷却媒体として、例えば空気を採用することができる。
【0093】
冷却媒体は、二重壁の空間(9)を通って流れ、それにより、ジャケット構造(5)の、入口ゾーン(1)のレベルの内壁を冷却する。それにより、反応ゾーン(2)からのジャケット構造(5)を通っての熱伝導の結果として入口ゾーン(1)に到達する熱は冷却媒体へ移るので、入口ゾーン(1)の反応ゾーン(2)からの熱的分断が実現される。
【0094】
送給ガスの流れ方向に逆らって設置されている、二重壁の端の多数の小開口部(10)によって、冷却媒体は入口ゾーン(1)に入り、送給ガス混合物と混ざり合う。
【0095】
引入れ口(7)と開口部(10)の間隔取りを適切に選定すること、及びに冷却媒体の種類、量、流れの速度、及び進入温度を適切に選定することにより、送給ガス混合物の温度及びジャケット構造(5)の内表面の温度は、送給ガス混合物の発火温度又は反応温度より下になるように調節され、望まれない過早反応を抑制することができる。
【0096】
実施例5
図3と同様の装置を図5に示している。しかしながら、ここでは、断熱ジャケット(6)は、入口ゾーン(1)のレベルにしか延びていない。
【0097】
このアンモニア酸化装置にも入口ゾーン(1)と反応ゾーン(2)と出口ゾーン(3)が存在している。入口ゾーン(1)は、この実施形態では、空の空間であり、不活性材料の充填材は入っていない。
【0098】
十分に混ざり合ったアンモニア/酸素/不活性物質を含有するガス混合物は、送給ライン(30)を経由して入口ゾーン(1)へ導入される。次いで、混合物は、反応ゾーン(2)でアンモニア酸化触媒(4)に接する。その後、酸化反応の生成混合物は、反応ゾーン(2)から出口ゾーン(3)を通って出てゆく。
【0099】
全3ゾーンのジャケット構造(5)は、触媒(4)及び断熱ジャケット(6)を保持している。ジャケット構造(5)自体は、圧力容器の壁であってもよいし、代わりに、ジャケット構造(5)を或る空間に収容して、次に当該空間自体を圧力ジャケット(ここには図示せず)で囲むようにしてもよい。
【0100】
ジャケット構造(5)は、入口ゾーン(1)と反応ゾーン(2)のレベルが二重壁設計である。そこには、冷却媒体のための接続部(7a、7b)も付設されている。冷却媒体は、送給ガス混合物の流れ方向に流れていてもよいし、送給ガスの流れの方向に逆らって流れていてもよい。断熱ジャケット(6)と、ジャケット構造(5)の二重壁の間の空間(9)への冷却媒体の詰め込みは、共に、入口ゾーン(1)の反応ゾーン(2)からの熱的分断に役立つ。
【0101】
熱絶縁性材料から成り、入口ゾーン(1)のレベルでジャケット構造(5)を覆っている断熱ジャケット(6)は、反応ゾーン(2)からジャケット構造(5)を通っての熱伝導の結果として入口ゾーン(1)に到達する熱が、送給ガス混合物へ移るのを防止する。断熱ジャケット(6)は極僅かの熱伝導性しかないため、断熱ジャケット(6)は、反応ゾーン(2)から入口ゾーン(1)への断熱ジャケット(6)に沿った直接的な熱輸送も防止又は阻害する。
【0102】
冷却媒体は、ジャケット構造(5)の二重壁の空間(9)を通って流れ、それにより、ジャケット構造(5)の内壁を冷却する。それにより、反応ゾーン(2)から熱伝導によってジャケット構造(5)を通って入口ゾーン(1)に到達する熱は冷却媒体へ移るので、入口ゾーン(1)の反応ゾーン(2)からの更なる熱的分断が実現される。冷却媒体は、二重壁を通過した後、一方の接続部(7a、7b)を通って二重壁の間の空間(9)から再び現れる。
【0103】
断熱ジャケット(6)の作用は、冷却媒体による冷却によって支援される。絶縁材料及びそれらの厚さ並びに冷却媒体を適切に選定することにより、断熱ジャケット(6)の、送給ガス混合物に面する壁の温度は、送給ガス混合物の発火温度又は反応温度より下に保たれ、望まれない過早反応は抑制される。
【0104】
実施例6
この実施形態は、主として、従来のアンモニア酸化反応器の既設のフードに取って換えるのに適している。本発明によるアンモニア酸化反応器を、図6に示している。
【0105】
十分に混ざり合った酸素/アンモニア/不活性物質を含有する送給ガス混合物は、送給ライン(30)を経由して装置に進入する。混合物は、ここではハニカム設計であるか又はハニカム状担体の上及び/又は中に置かれたアンモニア酸化触媒(4)の上へ導かれる。アンモニアは、そこで、送給ガス混合物中の酸素の一部と反応することにより、一酸化窒素に変換される。発熱反応の結果、反応ゾーン(2)に置かれているアンモニア酸化触媒(4)の温度上昇が起こる。高温の生成混合物は、アンモニア酸化触媒(4)の裏の開口部(13)を通って、出口ゾーンである空間(3)へ進入する。高温の生成ガスは、この空間(3)の次に、エネルギーを回収するためか又はプロセス熱を別のやり方で使用するために、ガスタービン(ここでは図示せず)又は1つ又はそれ以上の熱交換器(ここには図示せず)へ導き入れられる。
【0106】
出発材料供給側の反応ゾーン(2)からの熱的分断を実現するために、アンモニア酸化触媒(4)は、耐熱性で熱絶縁性の材料、例えばセラミック又は石英ガラスから製造されているシース(14)の中に用いられている。送給ガス混合物の起こり得る過早発火は、それにより抑制される。アンモニア酸化触媒(4)は、ここではシース(14)の中に緩く横たえられ、支持環(15)に、−多粒状触媒(4)の場合−耐熱性材料、例えばセラミック又は石英ガラスの複数の支持梁(図示せず)に、載っている。支持環(15)は、起こり得るガスバイパスを防ぐ。支持梁は、設置されている場合は、流れ断面の極僅かな部分しか遮らないように設計されている。
【0107】
シース(14)は、その支持と保護のために、高温耐熱性材料の金属シース(16)で覆われている。金属シース(16)の下端にはリップ(17)が設けられていて、支持梁又は支持環(15)を支持し、ひいては間接的に触媒(4)も支持している。金属シース(16)の下端には、格子(18)が取り付けられており、格子を通って生成ガスはアンモニア酸化触媒(4)から空間(3)へ流れる。格子(18)は、金属シース(16)の機械的安定化及び実施され得る支持梁の支持のために働く。アンモニア酸化触媒(4)がたった1つの部分から成るのではなく、多数の部分で構成されている場合は、格子(18)は、個々の部分を支持梁によって支持する働きをする。万一、シース(14)が、例えば、熱応力のせいで、予想外の仕方で破損してしまうようなことがあっても、金属シース(16)、リップ(17)、及び格子(18)が、なお、シース(14)とアンモニア酸化触媒(4)が空間(3)へ落下するのを防止する。
【0108】
シース(14)と金属シース(16)は、アンモニア酸化反応器の圧力ジャケット(20)に、ナットとボルト(19)を使って接続されている。圧力空間は、容器に付設されている圧力フランジ(23)によって外に対してシールされている。
【0109】
触媒交換の際は、ねじ接続を解くことにより、接続部品(12)を取り外す。続いて、ナットとボルト(19)を取り外し、金属及びセラミック又は石英ガラスのシース(16、14)をアンモニア酸化触媒(4)と共に反応器から取り出す。プラントの停止時間を(従来のアンモニア酸化反応器と比べても)最小限にするためには、停止時間以前に準備しておいた金属及びセラミック又は石英ガラスのシース(16、14)と新しいアンモニア酸化触媒(4)とから構成される第2のユニットを、直ちに反応器に設置すればよい。
【0110】
アンモニア酸化反応を支援するために、必要であれば、運転に入ってい行く間に、アンモニア酸化触媒(4)を点火ランス(25)で予加熱するか又は活性化させてもよい。点火ランス(25)は、水素をアンモニア酸化反応器に導き入れる細い管と、点火ランスの開口端で水素流れに点火することのできる装置とから成る。
【0111】
アンモニア酸化反応器のマニホルドに取り付けられている覗き窓(26)は、点火プロセスの制御と、運転中のアンモニア酸化触媒(4)の状態を監視するのに役立つ。制御は、手動で目視により実施してもよいし、光度計の様な適切な測定装置を用いて実施してもよい。
【0112】
アンモニア酸化触媒(4)の後の空間(3)における圧力容器壁の材料への熱応力を軽減するために、壁には、内側に取り付けられた浮動管冷却機構(27)が設けられている。水又は別の冷却媒体が、浮動壁の管を通って流れる。
【0113】
実施例7
図7に示している本発明によるアンモニア酸化反応器のこの実施形態は、既に存在している熱回収装置、例えば蒸気窯などの直径に適応させる必要に迫られることはもはや無いことから、特にNO調製用の新プラントを備え付けるのに最適である。
【0114】
実施例6の反応器との主な違いは、浮動壁(27)が金属シース(16)に這っており、そのため後で接続される器械の概して大きい直径に適応させる必要がないという事実に在る。この実施形態では、後で接続される器械を、アンモニア酸化反応器に適合させることができる。金属シース(16)の懸架の代わりとして、触媒(4)の支持のために設けられている金属リップ(17)を、金属シース(16)でなく、直接、浮動壁(27)に取り付けてもよい。これには、構造の機械的安定性に対する好ましい効果がある。
【0115】
図7に示している他の要素は、図6の要素に対応している。それらは、開口部(13)、支持環(15)、格子(18)、ナットとボルト(19)、圧力ジャケット(20)、点火ランス(25)、及び覗き窓(26)である。
【0116】
実施例8
本発明によるアンモニア酸化反応器を図8に示している。この実施形態は、主として、既設の従来型アンモニア酸化反応器に、Pt/Rhガーゼを取り出した後で新しい触媒を備え付けるのに適している。
【0117】
酸素/アンモニア/不活性物質を含有する混合物は、送給ライン(30)を経由して本発明による装置に進入する。混合物は、ここではハニカム形態に造作されているか又はハニカム状担体の上及び/又は中に置かれているアンモニア酸化触媒(4)の上へ導かれる。アンモニアは、そこで、供給混合物中の酸素の一部との反応により、一酸化窒素に変換される。反応ゾーン(2)内に置かれているアンモニア酸化触媒(4)の温度上昇が、発熱反応の結果として起こる。高温の生成混合物は、アンモニア酸化触媒(4)の裏の開口部(13)を通って、出口ゾーン(3)である空間へ進入する。高温の生成ガスは、この空間の次に、エネルギーの回収又はプロセス熱の他の使用のために、ガスタービン(ここでは図示せず)又は1つ又はそれ以上の熱交換器(ここには図示せず)へ導き入れられる。
【0118】
触媒は、高温耐熱性の支持部(29)に収容されている。この支持部(29)自体は、容器壁に接続されている支持環(28)上に気密状態に横たえられている。
【0119】
出発材料供給側の、反応ゾーン(2)からの、且つこの場合は同様に出口ゾーン(3)からの、必要な熱的分断を実現するために、アンモニア酸化触媒(4)が収容されている高温耐熱性支持部(29)には、引入れ口(7)に送給された冷却媒体を通過させる1つ又はそれ以上の中空空間(9)が備え付けられている。ここで、使用される冷却媒体は、送給ガス混合物、反応器での所望される反応、触媒(4)、及び生成ガス混合物との適合性を有している。硝酸プラントで使用する場合、適した冷却媒体として、例えば空気を採用することができる。冷却媒体は、支持部(29)の空間(9)を通って流れ、それにより、壁の両側を冷やす。その結果、反応ゾーン(2)からの支持部(29)に沿った入口ゾーン(1)への熱伝導は、支持部(29)の冷却によって抑制されるので、入口ゾーン(1)の、反応ゾーン(2)及び出口ゾーン(3)からの熱的分断が実現される。冷却は、支持部(29)を通っての出口ゾーン(3)から入口ゾーン(1)への熱の流れも抑制する。
【0120】
冷却媒体は、支持部の上側の多数の小開口部(10)を通って入口ゾーン(1)へ進入し、送給ガス混合物と混ざり合う。
【0121】
引入れ口(7)と開口部(10)の間の距離を適切に選定すること、及び冷却媒体の種類、量、流量、及び進入温度を適切に選定することにより、支持部(29)の、入口ゾーン(1)に面する側の温度は、送給ガス混合物の発火温度又は反応温度より下になるように調節され、望まれない過早反応を抑制することができる。
【0122】
入口ゾーン(1)のフード内壁の温度を、送給ガス混合物の発火温度又は反応温度より下になるように調節するために、壁には内側に浮動管冷却機構(27)が取り付けられている。水又は別の冷却媒体は、浮動壁の管を通って流れており、冷却媒体は引入れ口(31)を経由して壁冷却機構へ進入し、引出し口(32)を経由して壁冷却機構から出てゆく。
【0123】
比較実施例9aから9cと本発明による実施例9d
NH酸化に遷移金属酸化物ハニカム触媒を使用した試験で、他の通例的な触媒寸法設定とは異なり、比較的深い触媒床の深さ(5cm)を有する小さい流入面積に流入を集中させることを試みた試験で、実験反応器では、大気条件下、1.0m/sの線形速度で、NO形成に関して低い選択性しか見い出せなかった。
【0124】
線形速度を2.0m/sまで上げても、NO選択性の不十分な改善しか得られなかった。結果を下表1に示している。
【0125】
【表1】

実験の実施
LaCoOペロフスカイトで構成されている非担持ハニカム触媒(200csi、長さ5cm、直径1.8cm)をステンレス鋼又は石英ガラスの管状反応器の中に採用し、当該触媒に空気中10%又は1%のアンモニアの混合物を通過させた。反応器管を管状オーブンの中に配置し、その支援によって、起こり得る熱損失を補償することができた。温度調節は、触媒ハニカムより約0.5cm下(出口側)に配置されている熱電素子を用いて実施した。出口温度は、一様に900℃であった。
【0126】
流入及び流出ガス流の組成は、FTIR分析器(Nicolet社製のAvatarモデル)を用い、ガスキュベットを使用して調べた。
【0127】
表1に示されている実験9aから9cの結果は、空の反応器管での対応する実験で確認された通り、供給されたNHの相当部分が、触媒ゾーンに進入する前にNとHOに分解されたと説明することができる。本質的にNとHOの形成をもたらすNHの完全変換は、ここでは、ハニカム触媒の存在無しにも、外から加熱された反応器管で、1.0m/sの線形速度のときに記録された。
【0128】
実施例9cによる実験を、断熱物質であると同時に不活性である石英ガラス製の反応器で実施すると、意外にも、NO選択性が大幅に増加することが観察された(本発明による実施例9d参照)。
【符号の説明】
【0129】
1 入口ゾーン
2 反応ゾーン
3 出口ゾーン
4 アンモニア酸化触媒
5 ジャケット構造
6 断熱ジャケット
7 引入れ口
7a、7b 接続部
9 二重壁の間の空間
10 開口部
12 接続部品
13 開口部
14 シース
15 支持環
16 金属シース
17 リップ
18 格子
19 ナットとボルト
20 圧力ジャケット
23 圧力フランジ
25 点火ランス
26 覗き窓
27 浮動管冷却機構
28 支持環
29 支持部
30 送給ライン
31 引入れ口
32 引出し口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送給ガスの生成ガスへの変換による触媒の発熱気相反応のための反応器であって、前記送給ガスの流れ方向に見て、入口ゾーン(1)、少なくとも1つの触媒(4)を備える反応ゾーン(2)、及び前記生成ガスのための出口ゾーン(3)を備えている反応器において、
物質組成に関して均質なガス混合物であって、少なくとも1つの酸化性物質と少なくとも1つの被酸化性成分とを含有するガス混合物が送給ガスとして、前記入口ゾーン(1)へ、1つ又はそれ以上の送給ライン(3)によって供給されており、少なくとも前記入口ゾーン(1)又は前記反応ゾーン(2)の区域には、前記反応ゾーン(2)で形成された反応熱の前記入口ゾーン(1)への輸送を減少させる手段が設けられており、及び/又は、前記反応器の内壁は、少なくとも前記入口ゾーン(1)の区域又は前記反応ゾーン(2)の区域が、不活性材料から造作されている、反応器。
【請求項2】
前記入口ゾーン(1)は、混ぜ合わせのために働くのではない機能的付属品を随意的に含んでいる、空の空間である、請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
前記入口ゾーン(1)は、前記均質なガス混合物を混ぜ合わせるための付属品、具体的には前記均質なガス混合物の混合又は分散のための不活性充填材を含んでいない、請求項1及び2のうち1項に記載の反応器。
【請求項4】
前記送給ライン(3)は、前記少なくとも1つの酸化性物質と前記少なくとも1つの被酸化性成分を混合するための1つ又はそれ以上の混合ユニットに接続されている、請求項1から3のうち1項に記載の反応器。
【請求項5】
前記反応ゾーン(2)から前記入口ゾーン(1)への熱の輸送を減少させるための前記手段は、前記入口ゾーン(1)及び前記反応ゾーン(2)の区域に設けられている、請求項1から4のうち1項に記載の反応器。
【請求項6】
少なくとも、前記入口ゾーン(1)の区域又は前記反応ゾーン(2)の区域には、前記反応ゾーン(2)で発生した熱の前記入口ゾーン(1)へ輸送を減少させる手段が設けられており、前記反応器の前記内壁は、前記入口ゾーン(1)の区域及び前記反応ゾーン(2)の区域が、不活性材料から造作されている、請求項1から4のうち1項に記載の反応器。
【請求項7】
前記反応ゾーン(2)で発生した熱の前記入口ゾーン(1)への輸送を減少させるための手段として、前記反応器の、前記入口ゾーン(1)のレベルの、又は前記入口ゾーン(1)と前記反応ゾーン(2)のレベルの、又は前記入口ゾーン(1)と前記出口ゾーン(3)の区域の、又は前記入口ゾーン(1)と前記反応ゾーン(2)と前記出口ゾーン(3)の区域の前記内部空間を、前記反応器ジャケット構造に対して断熱する少なくとも1つの断熱ジャケット(6)が設けられている、請求項1から6のうち1項に記載の反応器。
【請求項8】
前記反応ゾーン(2)で発生した熱の前記入口ゾーン(1)への輸送を減少させるための手段として、冷却媒体を導通するための少なくとも1つの装置が、前記入口ゾーン(1)の区域に、又は前記入口ゾーン(1)と前記反応ゾーン(2)の区域に、又は前記入口ゾーン(1)と前記出口ゾーン(3)の区域に、又は前記入口ゾーン(1)と前記反応ゾーン(2)と前記出口ゾーン(3)の区域に設けられている、請求項1から7のうち1項に記載の反応器。
【請求項9】
冷却媒体の輸送のための前記装置は、前記反応器ジャケット構造(9)に、又は前記反応器ジャケット構造(9)の前記内壁上に置かれている、請求項8に記載の反応器。
【請求項10】
入口ゾーン(1)、反応ゾーン(2)、及び出口ゾーン(3)は、前記触媒(4)と断熱ジャケット(6)のための担体を兼ねる反応器ジャケット構造(5)に囲まれており、前記断熱ジャケット(6)は、前記反応器の、前記入口ゾーン(1)の少なくとも一部の区域又は前記反応ゾーン(2)と前記入口ゾーン(1)の少なくとも一部の区域の内部空間を、前記反応器ジャケット構造(5)から熱的に絶縁し、ひいては前記反応ゾーン(2)から前記入口ゾーン(1)の前記送給ガスへの熱の伝搬を阻止している、請求項1に記載の反応器。
【請求項11】
入口ゾーン(1)、反応ゾーン(2)、及び出口ゾーン(3)は、前記入口ゾーン(1)のレベル又は前記入口ゾーン(1)と前記反応ゾーン(2)のレベルが二重壁として設計されている反応器ジャケット構造(5)で囲まれており、前記二重壁反応器ジャケット構造の少なくとも一方の端には、前記反応器ジャケット構造(5)の前記内壁を冷却するために、前記二重壁反応器ジャケット構造によって形成されている空間(9)へ導入するための冷却媒体用の接続部(7)が設けられている、請求項1に記載の反応器。
【請求項12】
前記二重壁反応器ジャケット構造(5)の前記内壁には、前記冷却媒体を通す少なくとも1つの開口部(10)が設けられており、前記冷却媒体はそこを通って前記入口ゾーン(1)へ進入し前記送給ガスと混ざり合う、請求項11に記載の反応器。
【請求項13】
前記反応器ジャケット構造(5)は、圧力容器の壁として造作されているか又は圧力ジャケットで囲まれた空間に収容されている、請求項10から12のうち1項に記載の反応器。
【請求項14】
少なくとも1つの断熱ジャケット(6)に加え、二重壁として設計されている少なくとも1つの反応器ジャケット構造(5)であって、前記触媒(4)のための担体を兼ねていて、冷却媒体のための少なくとも1つの接続部(7)を有している、反応器ジャケット構造が設けられている、請求項10から13に記載の反応器。
【請求項15】
耐熱性で熱絶縁性の材料から製造されていて、前記触媒(4)が挿入されているシース(14)を有している、請求項1に記載の反応器。
【請求項16】
前記触媒(4)は、ハニカムの形態に設計されているか、又はハニカム形態に造作された担体材料に、及び/又は同担体材料上に、適用されている、請求項1から15のうち1項に記載の反応器。
【請求項17】
前記触媒(4)は、酸化物、好適には金属酸化物、特に遷移金属酸化物を少なくとも30重量%含有している、請求項1から16のうち1項に記載の反応器。
【請求項18】
前記触媒は、前記流れ方向に見て、少なくとも3cmの深さを有する鋳込材又は充填材の形態で存在している、請求項1から17のうち1項に記載の反応器。
【請求項19】
触媒の発熱気相反応を実施するための方法において、
i)その物質組成に関して均質な少なくとも1つのガス混合物であって、少なくとも1つの酸化性物質と少なくとも1つの被酸化性成分とを含有するガス混合物を、送給ガスとして、少なくとも1つの送給ライン(30)を通して、反応器の入口ゾーン(1)へ導入すること、
ii)前記送給ガスを前記入口ゾーン(1)から、触媒(4)を備える反応ゾーン(2)へ、前記送給ガスが前記反応ゾーン(4)での発熱反応で完全又は部分的に反応して生成ガスを生じさせる条件下で、供給すること、
iii)前記生成ガスを、出口ゾーン(3)を通して反応器から導き出すこと、及び
iv)前記反応ゾーン(2)で形成された反応熱の前記入口ゾーン(1)への輸送を減少させるための手段を提供し、及び/又は前記反応器の前記内壁を、少なくとも前記入口ゾーン(1)の区域又は前記反応ゾーン(2)の区域は、不活性材料から造作すること、という方策により請求項1に記載の前記反応器を使用する、方法。
【請求項20】
前記送給ガスの前記成分の局所濃度が、0.1以下、望ましくは0.05未満、特に望ましくは0.03未満の変動係数を有しており、ここに、前記の物質の局所濃度の変動係数は、局所物質濃度の標準偏差対局所物質濃度の平均値の比を表す、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
使用されている前記送給ガスは、アンモニア及び酸素含有ガス混合物である、請求項19及び20のうち1項に記載の方法。
【請求項22】
ハニカム形態に造作された触媒が採用されている、請求項19から21のうち1項に記載の方法。
【請求項23】
酸化物、好適には金属酸化物、特に遷移金属酸化物を少なくとも30重量%含有している触媒が採用されている、請求項19から22のうち1項に記載の方法。
【請求項24】
触媒鋳込材又は触媒充填材の形態の触媒であって、前記流れ方向に見て少なくとも3cmの深さを有する触媒が採用されている、請求項19から23のうち1項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1から18のうち1項に記載の反応器のアンモニア酸化における利用。
【請求項26】
前記反応器が、カプロラクタム又は硝酸の調製ためのプラントに組み入れられている、請求項25に記載の利用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−510356(P2012−510356A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537900(P2011−537900)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008553
【国際公開番号】WO2010/063448
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(504378582)ウーデ・ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】