説明

触媒湿式酸化システム及び方法

水性混合物中の少なくとも1つの望ましくない成分を、粒子状固体触媒を用いて、処理するためのシステム及び方法。前記水性混合物及び前記粒子状固体触媒からスラリーを形成し、これを湿式酸化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃液流及び/又はプロセス流の処理、より詳しくは、それらに含まれている望ましくない成分を処理するための触媒湿式酸化システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
湿式酸化は、プロセス流を処理するための周知の技術であって、例えば廃水中の汚染物質を分解するために広く利用される。この方法は、酸化剤、一般には酸素含有ガスからの酸素分子、による高温高圧下での望ましくない成分の水相酸化を伴う。このプロセスにより、有機汚染物質を、二酸化炭素、水、及び酢酸等の生分解性短鎖有機酸に転化することができる。スルフィド類及びメルカプチド類を始めとする無機成分も酸化可能である。
【0003】
焼却に代わるものとして、湿式酸化は、それに引き続いて排出するために、プロセス内再利用のために、又は精製のために従来の生物的処理プラントに供給する前処理工程として、多様な用途で利用することができる。触媒湿式酸化は、従来の非触媒湿式酸化を効果的に強化するものとして出現した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つ以上の実施態様によれば、本発明は、触媒湿式酸化システム及び方法に関する。本プロセスは、処理しようとする少なくとも1つの望ましくない成分を含有する水性混合物を供給し、前記水性混合物を粒子状固体触媒と接触させてスラリー混合物を形成することを含んでなる。スラリーを未臨界温度及び超大気圧で酸化して、少なくとも1つの望ましくない成分を処理し、酸化されたスラリー混合物(酸化スラリー混合物)が形成される。粒子状固体触媒は酸化スラリー混合物から分離される。
【0005】
別の実施態様は、湿式酸化ユニットと、湿式酸化ユニットの供給原料入口に流体連通している少なくとも1つの望ましくない成分を含む水性混合物の供給源と、水性混合物の供給源の出口と流体連通している入口及び湿式酸化ユニットの供給原料入口と流体連通している出口を備える水性混合物導管とを、有する触媒湿式酸化システムを対象としている。本システムは、また、湿式酸化ユニットの触媒入口、水性混合物の供給源及び水性混合物導管のうちの少なくとも1つと流体連通している、水性混合物に不溶の粒子状固体触媒の供給源を備える。本システムは、また、湿式酸化ユニットの出口と流体連通している入口と、湿式酸化ユニットへの触媒入口、水性混合物供給源及び水性混合物導管のうちの少なくとも1つと流体連通している触媒スラリー出口とを、備えるセパレータも含む。
【0006】
一部の実施態様では、粒子状固体触媒は、遷移金属元素及びその水不溶性化合物からなる群から選択される。他の実施態様では、粒子状固体触媒は、酸化マグネシウム、酸化セリウム等のその水不溶性化合物を包含する少なくとも2つの遷移金属元素を含有してなる。
【0007】
本発明のその他の利点、新規な特徴及び目的は、発明についての以降の詳細な記述から、添付の図面と併せて考えると明らかになるであろう。
【0008】
添付の図面は、一定の縮尺で描かれたものではない。図面中、同一の又は実質的に同様の構成要素は、それぞれ、同一の数字又は記号で表す。明白にするため、全図面の全ての構成要素に符号を付けてはおらず、また、当業者に本発明を理解させるために例示が必要ない場合は、図示された本発明の各実施態様の構成要素であっても全てに符号を付けているわけではない。本発明の好ましい非限定的な実施態様を、例として、次の添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るプロセスを実施するために用いられる湿式酸化システムの一般的なフローチャートである。
【図2】本発明に係るプロセスの一実施態様を実施するために用いられる湿式酸化システムのフローチャートである。
【図3】本発明に係るプロセスの別の実施態様を実施するために用いられる湿式酸化システムのフローチャートである。
【図4】本発明に係るプロセスの更に別の実施態様を実施するために用いられる湿式酸化システムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、懸濁された粒子状固体触媒を用いる、廃液流及び/又はプロセス流の触媒湿式酸化に関する。湿式酸化は、廃水中の汚染物質を分解するための周知の技術であって、酸化剤、一般には酸素含有ガスからの酸素分子、を用いる高温高圧における廃液流の処理を伴う。水の臨界温度である374℃よりも低い温度での湿式酸化は、未臨界湿式酸化と呼ばれる。未臨界湿式酸化システムは、液状水相を維持するのに十分な圧力で操作されており、ほんの2〜3の応用を挙げると、下水汚泥の調湿、腐食性スルフィド廃液の酸化、粉末化活性炭の再生、及び化学製品の製造廃水の酸化に商業上使用することができる。触媒湿式酸化により、従来の湿式酸化と比べて、コストが削減され、特に、より温度、より低い圧力及び/又はより短い反応時間で許容できる処理水準を達成し得る点で、エネルギーコストが軽減できる。或いは、触媒湿式酸化は、従来の湿式酸化に比べて、一層高い処理水準をもたらす可能性もある。
【0011】
1つ以上の実施態様によれば、本発明は、プロセス流を処理するための1つ以上のシステム及び方法に関する。典型的な運転において、本開示のシステムは、地域社会、工業原料又は家庭からの供給源からのプロセス流を受け取ることができる。例えば、システムで廃水を処理する実施態様では、プロセス流は、都市廃水汚泥又は他の大規模な下水システムが発生源であり得る。プロセス流は、また、例えば食品加工プラント、化学製品製造設備、ガス化事業又は紙パルププラントに起因するものであってもよい。プロセス流は、システムの上流又は下流における操作によって、システム内を移動させることもできる。
【0012】
本明細書において、「プロセス流」という用語は、処理のためにシステムに供給可能な水性混合物を指す。処理後、プロセス流は、上流プロセスに戻しても、廃棄物としてシステムから流出させてもよい。水性混合物には、典型的には、酸化可能な少なくとも1つの望ましくない成分が包含されている。この望ましくない成分は、公衆衛生、プロセス設計及び/又は審美的配慮等のために水性混合物からの除去対象とされた任意の物質又は化合物であってよい。一部の実施態様では、酸化可能な望ましくない成分は有機化合物である。或る無機成分、例えばスルフィド類及びメルカプチド類、も酸化可能である。システムで処理しようとする水性混合物の供給源は、プラントからの直接配管又は保存容器の形態を取ることができる。一実施態様では、水性混合物は、有機酸化合物、フェノール化合物、有機ハロゲン化合物、窒素含有化合物及び硫黄含有化合物のうちの少なくとも1つを含有していてもよい。
【0013】
本発明の1つ以上の実施態様によれば、望ましくない成分又はその分解生成物内の1つ以上の特定の化学結合を切断することが望ましい。本発明の一側面は、1つ以上の望ましくない成分を含有する水性混合物を酸化処理するためのシステム及び方法に関する。
【0014】
一実施態様では、少なくとも1つの望ましくない成分を包含する水性混合物が湿式酸化される。水性混合物は、昇温状態及び超大気圧で、前記少なくとも1つの望ましくない成分を処理するのに十分な時間、酸化剤で酸化される。酸化反応は、望ましくない成分内の1つ以上の化学結合の完全性を実質的に破壊することができる。本明細書において、「実質的に破壊する」という語句は、少なくとも約95%の破壊と定義される。本発明のプロセスは、一般に、酸化可能な任意の望ましくない成分の処理に適用できる。
【0015】
開示された湿式酸化プロセスは、酸化しようとする化合物に適した任意の既知のバッチ式又は連続湿式酸化ユニット内で実行できる。典型的には、水相の酸化は、図1に例示的に示されるような連続流湿式酸化システム内で実行される。任意の酸化剤が利用できる。酸化剤は、通常、空気、酸素富化空気といった酸素含有ガス又は基本的に純粋な酸素である。本明細書において、「酸素富化空気」という語句は、約21%を超える酸素含有量を有する空気と定義される。
【0016】
一実施態様では、少なくとも1つの望ましくない成分を包含する水性混合物を粒子状固体触媒と接触させる。粒子状固体触媒は、水性混合物に不溶性の又は実質的に不溶性の任意の不均一触媒であってよく、水性混合物中の1つ以上の望ましくない成分を処理するのに適している。本明細書において、「実質的に不溶性の触媒」という語句は、水への溶解度が3重量%未満の固体触媒を指す。湿式酸化システム内で有効なことが知られている不均一触媒は、スラリー形態において使用できる。本明細書において、用語スラリーは、液体担体中の不溶性粒子懸濁液と定義される。液体担体は、認識できる程度には粒子を溶解しないという特定目的に適した任意の液体であってよい。一実施態様では、液体は水であってもよい。粒子状固体触媒は、水性混合物へ添加すると水性スラリーを形成する、球体や微小球等の流動化可能な媒体に担持されていてもよい。
【0017】
一実施態様では、触媒は、湿式酸化中、水性混合物に実質的に不溶のままであってよい。粒子状固体触媒は、湿式酸化システム内を流動しているときも水性スラリー中に残存するほど寸法が十分に小さくてもよく、また、酸化スラリー混合物から分離されるほど十分な密度を有していてもよい。一実施態様では、粒子状固体触媒の粒径は、好適な沈降特性を与えるように約5ミクロン〜約500ミクロンの範囲であり得る。別の実施態様では、粒子状固体触媒は、ナノメートルサイズの金属、金属酸化物及び/又は金属塩の粒子を含有していてもよい。ナノメートルサイズの粒子状固体触媒は、約3ナノメートル〜約15ナノメートルの範囲の分離粒子及び/又は約10ナノメートル〜約500ナノメートルの範囲の凝集粒子を含有していてもよい。
【0018】
一実施態様では、粒子状固体触媒は、粒子状形態の又は流動可能な不活性担持体に担持された、金属元素並びに/又は、金属酸化物及び/若しくは金属塩等の、金属元素の化合物であってよい。別の実施態様では、触媒は、少なくとも2つの金属元素及び/又はそれらの化合物を含有する。更に別の実施態様では、触媒は、2つの遷移金属及び/又は貴金属を含有していてもよく、これにより、触媒は、少なくとも2つの遷移金属、少なくとも1つの遷移金属と少なくとも1つの貴金属、又は少なくとも2つの貴金属を含む。前記少なくとも2つの金属は、前記少なくとも2つの金属の混合物及び/又は反応生成物の形態であってよい。一実施態様では、粒子状固体触媒は、1つ以上の金属、金属酸化物及び金属塩であってよい。
【0019】
好適な金属としては、原子番号21〜30の範囲の第一遷移系列、更に詳しくは、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛が挙げられる。好適な金属としては、また、原子番号39〜28の範囲の第二遷移系列、更に詳しくは、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀及びカドミウムも挙げられる。好適な金属としては、更に、原子番号72〜80の範囲の第三遷移系列、更に詳しくは、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金及び水銀が挙げられる。他の好適な金属としては、原子番号57〜71の範囲のランタニド系列金属、更に詳しくは、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムが挙げられる。貴金属は、遷移金属に包含され、パラジウム、銀、白金及び金を包含する。
【0020】
一実施態様では、粒子状固体触媒は酸化マンガンを含有してなる。別の実施態様では、粒子状固体触媒は、酸化セリウムを含有してなる。更に別の実施態様では、粒子状固体触媒は、Mn:Ceモル%比が約70:30の、酸化マンガンと酸化セリウムとの混合物を含有してなる。
【0021】
一実施態様では、触媒は、湿式酸化ユニットに入れる前に水性混合物に添加してもよく、及び/又は、湿式酸化ユニット内の水性混合物に直接添加してもよく、それにより水性スラリーが形成される。触媒の有効量は、一般に、反応速度を増大させるのに十分であるか、及び/又は、化学的酸素要求量(COD)の更なる低下を始めとするシステムの全破壊除去効率を向上させるのに十分である。触媒は、また、湿式酸化システムの全エネルギー要求量を低下させるのに役立ち得る。
【0022】
一実施態様の自由流動不均一触媒は、酸化時に残留する従来の不均一触媒よりも有利である。静止層、内蔵の流動層、又はハニカム構造等の同様の固定構造を使用する湿式酸化ユニット内で不均一触媒を従来のように使用するのとは異なり、本発明の粒子状固体触媒は、湿式酸化システムの至る所まで運ばれる可能性があり、また、触媒湿式酸化プロセスを中断する必要なしに再利用することもできる。自由流動不均一触媒は、スラリー混合物中に粒子を含有する故に、粒子状固体触媒は、水性混合物中の少なくとも1つの望ましくない成分と緊密に接触している。その上、不均一触媒は湿式酸化ユニットから酸化スラリーと共に連続的に除去されるので、使用済みの不均一触媒は連続的に取り除かれて新鮮な触媒と交換され、不均一触媒を交換又は再生するために湿式酸化ユニットの運転を停止する必要がない。また、従来の充填触媒層又は流動触媒層は、水性混合物中に含まれている固体又は湿式酸化処理中に形成される固体による詰まり、触媒粒子の分解、望ましくない圧力低下及び触媒層からの触媒損失に曝される。一実施態様による使用済の不均一触媒は、酸化スラリー混合物から分離され、必要に応じて再生されて、湿式酸化ユニット内にあるか又はそこへ送られてくる水性混合物の上流へ戻すことができ、これにより、原料費が削減され、しかも、詰まり、圧力低下、粒子の分解及び湿式酸化ユニットからの触媒損失を解消し又は十分に軽減することができる。
【0023】
粒子状固体触媒は、静止領域内での固体の重力沈殿のような常套手段又は回収された粒子状固体触媒(スラリー形態であり得るがそうでなくてもよい)をもたらす遠心分離、膜濾過、ハイドロサイクロン等の様々な分離プロセスによって、酸化スラリー混合物から分離することもできる。一実施態様である不均一触媒の酸化スラリー混合物からの物理的分離は、酸化された放出液(酸化放出液)に溶解された従来の均一触媒を除去することほどには難しくはなく、しかも費用が掛からない場合がある。
【0024】
一実施態様では、前記少なくとも1つの望ましくない成分と粒子状固体触媒とを含有する水性スラリーを、加熱反応領域に入れる前に及び/又はその内部で、高温まで、触媒懸濁混合物の一部を液相中に保つのに十分な圧力で、前記少なくとも1つの望ましくない成分を酸化及び処理して酸化スラリー混合物を形成するのに十分な時間、加熱する。次に、酸化スラリー混合物を反応領域から取り出して、反応領域の高温よりも十分に低い温度まで冷却する。冷却された酸化スラリー混合物を減圧すると、オフガス相及び酸化放出液相が生じる。オフガス相は、大気中又は更なる処理工程へ放出される。所望により、酸化放出液相を処理して、スラリー形態であってもよい回収された粒子状固体触媒と、粒子状固体触媒を実質的に含まない酸化放出液相とが、形成される。回収された粒子状固体触媒の少なくとも一部は、追加の触媒懸濁供給混合物を形成するために再利用される。回収された粒子状固体触媒の少なくとも一部は、湿式酸化ユニットの上流の及び/又はその内部の水性混合物の方へ移動させるに先立って、処理によって不活性な固体粒子をそこから除去し及び/又は触媒を再生してもよい。
【0025】
図1は、本発明の一実施態様による湿式酸化システム10の概略図である。第1濃度の1つ以上の望ましくない成分を含有するプロセス流20は、ライン25を経て湿式酸化反応領域50へ移動させて、第1濃度よりも低い第2濃度の1つ以上の望ましくない成分を含有する処理放出液70を生成することができる。酸素含有ガス30は、ライン31を経て湿式酸化反応領域50へ移動させ、酸化供給混合物(oxidation feed mixture)35を形成することができる。酸素含有ガスとプロセス流とをライン25内で混合することに代えて又はそれに加えて、酸素含有ガスを湿式酸化ユニット85へ直接供給してもよい。
【0026】
粒子状固体触媒40は、湿式酸化システムのどの時点で水性混合物に添加してもよい。粒子状固体触媒40を酸化供給混合物35に加えて、水性スラリー供給混合物45を形成してもよい(図1中、経路Aで示す)。一実施態様では、触媒は、図1に示すように、湿式酸化ユニットに供給される水性混合物の供給源へ加えることもでき、この場合、触媒供給源40は貯蔵タンク10と流体連通している。それに加えて又はその代わりに、粒子状固体触媒40は、酸素含有ガス30と混合する前にプロセス流20に添加して、水性スラリー供給混合物45を形成してもよい。更に別の実施態様では、粒子状固体触媒40は、湿式酸化区分85に直接添加してもよい(経路Bで示す)。
【0027】
水性スラリー供給混合物45は、内蔵の反応領域50に、約374℃よりも低い高温及び水性スラリー供給混合物45の一部を液相に保つのに十分な高圧で通過させて、1つ以上の望ましくない成分の一部を処理して、酸化スラリー混合物55を形成することができる。酸化スラリー混合物55は、気相60と酸化スラリー相65とに分離することができる。本方法の更なる実施態様では、酸化スラリー相65は、酸化された液相(酸化液相)70と、スラリーの形態であってもよい粒子状固体触媒相75と、に分離することもできる。
【0028】
図1に示すように、酸化反応領域50は、各種供給混合物25、35又は45の温度を上昇させる加熱区分80、酸化反応領域50内の各種供給混合物25、35又は45について所望の液圧保持時間を与える湿式酸化区分85、及び、酸化スラリー混合物55の温度を下げる冷却区分90を備えることができる。一実施態様では、酸化反応領域50は、冷却区分90で酸化スラリー混合物55から取り除かれた熱を加熱区分80へ移動させて、入ってくる供給混合物25、35又は45を加熱するように構成されていてよく、これにより、湿式酸化システム10のエネルギー効率が改善できる。
【0029】
本方法の更なる実施態様では、酸化反応器区分85は、少なくとも2つの反応器部分85a、85bを含むこともできる。この実施態様では、図1の経路Bによって、粒子状固体触媒40の少なくとも一部を、第1反応器部分85aの下流で酸化供給混合物35に添加することができる。前記少なくとも2つの反応器部分85a、85bは、同一の温度及び圧力で操作してもよく、そうでなくてもよい。
【0030】
一実施態様では、湿式酸化プロセスを、水の臨界温度である374℃よりも低い温度で運転することができる。ある実施態様では、湿式酸化プロセスを約150℃から約373℃の間の温度で運転することができる。別の実施態様では、湿式酸化プロセスを約150℃から約320℃の間の温度で運転することもできる。選択された酸化温度での水性スラリー混合物の保持時間は、少なくとも約15分で最大約6時間までである。一実施態様では、水性スラリー混合物は約15分から約4時間酸化される。別の実施態様では、水性スラリー混合物は約30分から約3時間酸化される。
【0031】
十分な酸素含有ガスをシステムに供給することで湿式酸化システムのオフガス中に酸素を保持させることができ、また、ガス圧は、選択された酸化温度では水を液相に保つのに十分である。例えば、240℃での最低圧力は33気圧であり、280℃での最低圧力は64気圧であり、また、373℃での最低圧力は215気圧である。一実施態様では、水性スラリー混合物を約10気圧〜約275気圧の圧力で酸化する。別の実施態様では、水性スラリー混合物を約10気圧〜約217気圧の圧力で酸化する。
【0032】
本方法の一実施態様では、酸化スラリー混合物55を分離領域95内で気相60、酸化液相70及び粒状固体触媒相75に同時に分離することができる。本方法の別の実施態様では、酸化スラリー混合物55を、多重分離領域95内で気相60、酸化液相70及び粒子状固体触媒相75に分離することもでき、この場合、粒子状固体触媒相75から酸化液相70を分離するのに先立って、酸化スラリー混合物55から気相60を分離してもよい。
【0033】
本方法の更に別の実施態様では、粒子状固体触媒相75の少なくとも一部を酸化反応器区分85及び/又は酸化反応器区分85の上流の任意の地点へ再循環して、水性スラリー混合物45を形成することもできる。再循環に先立って、粒子状固体触媒相75を処理し、そこから不活性固体粒子を除去し、回収粒子状固体触媒相75aを形成してもよく、これを酸化反応器区分85へ再循環して水性スラリー混合物45を形成してもよい。
【0034】
次に図2を参照すると、本発明の方法の一実施態様を実行するのに用いられる湿式酸化システムの略図が示されている。湿式酸化システム100には、少なくとも1つの望ましくない成分を含有する水性混合物が入った供給タンク115が含まれている。水性混合物は、導管120を経て供給ポンプ125に流れ、供給ポンプ125は、水性混合物をシステム操作圧力において湿式酸化システム100へ送る。導管130内の加圧された水性混合物は、加圧ガス供給源135からの酸素含有ガスと混合され、気相と液相とを含む酸化水性混合物(oxidation aqueous mixture)が形成される。酸素含有ガスとしては、空気、酸素富化空気又は基本的に純粋な酸素ガスが挙げられる。粒子状固体触媒が酸化水性混合物に添加されて、水性スラリー混合物が形成される。粒子状固体触媒は、酸化水性混合物へ注入される前に、触媒供給タンク140内でスラリーとして調製されてもよい。粒子状固体触媒は、ポンプ145を用いて加圧された酸化供給混合物に添加して、ポンプ145によって導管150を経て導管130内の酸化水性混合物へ送ることもできる。粒子状固体触媒と水性混合物とから水性スラリー混合物が形成される。一実施態様では、水性スラリー混合物は、触媒粒子の沈降を防止又は軽減するのに十分な速度で導管130を経て移動する。
【0035】
前記に加えて又はそれに代えて、加圧ガス供給源135からの酸素含有ガスと混合して酸化スラリー混合物を形成する前に、前記少なくとも1つの望ましくない成分を含有する水性混合物が入った供給タンク115に、周囲圧力において、粒子状固体触媒を添加してもよい。
【0036】
次に、水性スラリー混合物を反応領域160内で昇温状態まで、水性スラリー混合物の一部を液相に保つのに十分な圧力で、前記少なくとも1つの望ましくない成分を処理して酸化スラリー混合物を形成するのに十分な時間、加熱する。
【0037】
本方法のこの実施態様では、反応領域160にはプロセス熱交換器165が含まれており、これにより、反応領域160から取り出された酸化スラリー混合物からの熱が、反応領域160に入る水性スラリー混合物に移される。酸素含有ガスの酸素による前記1つ以上の望ましくない成分の酸化が発熱性であるので、反応領域160内の温度が選択された値まで上昇する。一実施態様では、反応領域の昇温状態は、約90℃〜約370℃に及ぶ。湿式酸化システム100の操作圧力は、水性スラリー混合物の一部を液相に保ちかつ反応領域160の乾燥を防ぐのに十分である。操作圧力は、約0.3MPa〜約30MPaの範囲であってよい。部分加熱された水性スラリー混合物は、プロセス熱交換器165から導管170を経て湿式酸化反応器175へと移動し、これにより、水性スラリー混合物中の前記少なくとも1つの望ましくない成分の酸化の大部分が生じるのに必要な滞留時間が与えられる。水性スラリー混合物中の酸化可能な望ましくない成分の濃度が、供給混合物を反応器の選択された要求温度まで加熱するのに十分でなければ、補助トリムヒータ180を導管170内で用いて追加エネルギーを加えて、水性スラリー混合物の温度を上昇させてもよい。また、トリムヒータ180を用いて、湿式酸化システム100の起動時に水性スラリー混合物の温度を上昇させてもよい。
【0038】
湿式酸化ユニットは、任意の従来型ユニットであってよい。例えば、湿式酸化ユニットは、鋼鉄、ニッケル、クロム、チタン、及びこれらの組み合わせで製造され得る。湿式酸化反応器175は、その用途に適したいかなる構造を有していてもよい。反応器175は、反応器175の底部又は底部付近に供給原料入口又は反応器入口177を有し、かつ反応器175の頂部又は頂部付近に反応器出口178を有する、縦型円筒形容器であってよい。一実施態様では、粒子状固体触媒の反応器175内での懸濁を、反応器175内に組み込まれた懸濁システムで増強することができる。懸濁システムには、従来型メカニカルミキサー、ガス懸濁システム及び向流構造のうち1つ以上が具備されていてもよい。
【0039】
導管185を経て反応175から出た時点で、望ましくない成分の酸化は実質的に完了している可能性がある。その後、酸化スラリー混合物を反応領域160から取り出して、反応領域160の昇温状態よりも十分に低い温度まで冷却する。冷却するために、酸化スラリー混合物は、導管185を経てプロセス熱交換器165へ流れ、これにより、内蔵の反応領域160から取り出した酸化スラリー混合物からの熱を、内蔵の反応領域160に入ってくる水性混合物又は酸化スラリー混合物へ移す。
【0040】
冷却された酸化スラリー混合物は、導管190を経て、分離タンク200に流体連通された圧力制御弁195の方に流れる。場合により、酸化されたスラリー(酸化スラリー)を追加の冷却装置215を通過させて、圧力制御弁195に到着する前に酸化スラリー混合物からの熱エネルギーを除去してもよい。冷却装置215は、水等の冷媒を用いる従来型熱交換器を含んでよい。圧力制御弁195は、反応器175の頂部付近の放出液導管185でのシステム圧を監視する圧力トランスデューサ205と電子的に通信可能であってよい。冷却された酸化スラリー混合物は、酸化スラリー混合物を圧力制御弁195に通すことによって減圧され、分離タンク200へ移動させることにより、オフガス相と触媒懸濁液を含有する酸化放出液相とが生成される。オフガス相は、分離タンク200から大気中又は更なる処理工程へ放出される。その後、懸濁された粒子状固体触媒を含有する酸化放出液相を処理して、回収された粒子状固体触媒相と粒子状固体触媒を実質的に含まない酸化放出液相とを形成することができる。
【0041】
粒子状固体触媒は、酸化スラリー混合物から任意の常套法で分離することができる。図2に示す実施態様では、触媒分離処理システムは、酸化放出液から触媒粒子相を分離するための重力沈降を備えている。遠心分離等の他の好適な固液分離装置は、酸化された液体(酸化液体)から固体触媒相を分離させる機能を果たすことができる。放出液は、分離タンク200から放出液導管210を経て取り出すことができる。酸化放出液は、触媒粒子を実質的に含んでおらず、環境へ排出しても、必要に応じて更なる処理に付されても、よい。
【0042】
回収された粒子状固体触媒相の少なくとも一部は、湿式酸化用の追加の水性スラリー混合物を形成するために再利用することができる。図2では、スラリー形態の沈降した粒子固体触媒は、分離タンク200から導管225を経て出ていく。固体触媒は、触媒スラリー再循環ポンプ230によって導管235から導管130へと送られ、その中の加圧された酸化スラリー混合物に添加される。再循環触媒スラリーは、水性混合物又は酸化水性混合物に添加された粒子状固体触媒を補ってスラリー混合物を形成することができる。最初の粒子状固体触媒をシステムに添加した後、十分な回収触媒を触媒再循環区分から入手することができ、導管130を流れて反応領域160に入ってくる水性混合物又は酸化水性混合物に添加するのに必要な全ての又は実質的に全ての触媒を賄うことができる。或いは、触媒懸濁液を含有する酸化放出スラリー相は、触媒粒子を回収する必要がなければ、排出してもよい。触媒粒子の費用が十分に安く、回収が経済的に成り立たない場合がある。粒子状固体触媒の費用が高いか又は1つ以上の官庁により排出が規制されているかのいずれかの理由で触媒粒子を回収する必要がある場合は、粒子状固体触媒を分離し回収して、再利用してもよい。別の実施態様では、湿式酸化に再利用する前に、回収された粒子状固体触媒相を処理して不活性な固体微粒子をそこから除去してもよい。
【0043】
一実施態様では、粒子状固体触媒は、1つ以上の望ましくない成分を湿式空気酸化反応で処理する前に、水性混合物中の不均一触媒上の活性部位を失活させる他の成分によって被毒させるか他の方法で無効にしてもよい。不均一触媒の失活を防ぎ又は失活程度を抑えるために、触媒湿式空気酸化法を2段階で行なうこともできる。先ず第1段階では、粒子状固体触媒を添加せずに水性混合物を酸化することができる。次に、粒子状固体触媒を部分酸化された水性混合物に添加することによって、第2段階で触媒酸化が生じ得る。第1段階では、複雑な有機構造物が酸化されて、単純でより処理が困難な(refractory)有機化合物(例えば、酢酸)が生成され得る。また、水性混合物中の還元硫黄化合物も第1段階で酸化されるため、その触媒被毒傾向が解消される可能性がある。第2段階では、生成した処理が困難な有機化合物が触媒酸化されて、第2段階の触媒湿式空気酸化プロセスによって、表面水域へ直接排出するのに環境上適した酸化放出液を生成することができる。前記2段階のフローチャートに従って触媒湿式空気酸化プロセスを行なうことにより、未処理の廃水又はプロセス流中の成分による粒子状固体触媒の被毒をなくすか又は十分に軽減することができ、また、高品質の酸化放出液を生成することができる。不均一粒子状固体触媒は、酸化放出液からスラリー状で回収されて、2段階触媒湿式空気酸化プロセスの第2段階へ再循環することができる。
【0044】
図3は、2段階湿式酸化システムの略図である。湿式酸化システム300には、処理しようとする1つ以上の望ましくない成分を含む水性混合物が入った供給タンク315が具備されている。水性混合物を導管320から供給ポンプ325へ移動すると、供給ポンプ325によって水性混合物が湿式酸化システム300へシステム操作圧力で送られる。導管330内の加圧された水性混合物が加圧ガス供給源335からの酸素含有ガスと混合されて、気相と液相とを含んでなる酸化水性混合物を形成される。酸素含有ガスとしては、空気、酸素富化空気、又は基本的に純粋な酸素ガスが挙げられる。加圧ガス供給源335からの酸素含有ガスを注入した後、酸化水性混合物は、反応領域360内で、昇温状態まで、酸化水性混合物の少なくとも一部を液相に保つのに十分な圧力で、1つ以上の望ましくない成分の一部を酸化するのに十分な時間、加熱されて、酸化スラリー放出液を形成する。この実施態様では、反応領域360には少なくとも2つの湿式酸化反応器375、378が連続して備えられており、これにより、酸化水性混合物中の1つ以上の望ましくない成分が大部分酸化される滞留時間が与えられる。
【0045】
反応領域360には、プロセス熱交換器365が含まれていてもよく、これによって、第2酸化反応器378から取り出されて反応領域360を離れる酸化スラリー放出液からの熱が、反応領域360に入る水性混合物又は酸化水性混合物へと伝達される。水性混合物中の前記少なくとも1つ以上の望ましくない成分を酸素含有ガスの酸素で酸化することは発熱性であるために、反応領域360の温度が選択された値まで上昇する。反応領域の昇温状態は、約90℃〜約370℃の範囲であってよい。湿式酸化システム300の操作圧力は、酸化供給混合物の少なくとも一部を液相に保ち、反応領域360が乾燥するのを防ぐのに十分である。システムの操作圧力は、約0.3MPa〜約30MPaの範囲であってよい。部分加熱された酸化水性混合物は、プロセス熱交換器365から導管370を経て第1酸化反応器375へ移動し、ここで、酸化水性混合物中の1つ以上の望ましくない成分を一部酸化させる滞留時間が与えられ、その結果、1つ以上の望ましくない中間体成分が形成される。これに代えて又は加えて、選択された不均一触媒を汚染する可能性のある他の成分も実質的に酸化され得る。
【0046】
第1酸化反応器375から出る酸化放出液は、導管377及び第2反応器入口379を経て第2酸化反応器378へ移動して、1つ以上の望ましくない中間体成分を更に酸化する。これに加えて又はこれの代わりに、選択された不均一触媒を汚染する可能性がある予め酸化された他の成分を、更に酸化してもよい。第2反応器378への入口379では、粒子状固体触媒のスラリーが、部分的に酸化された混合物(部分酸化混合物)と、合一され、望ましくない成分の酸化が更に促進される。粒子状固体触媒は、触媒供給タンク340内でスラリーとして調製されるが、触媒ポンプ345を用いて導管350を経て加圧システムへ添加されてもよい。触媒ポンプ345は、部分酸化供給混合物が入口379を経て第2反応器378に入るときに、触媒を導管377中の部分酸化供給混合物へ送る。部分酸化水性スラリーは、導管350の中を、触媒粒子の沈降を防止し又は軽減するのに十分な速度で移動する。第2酸化反応器378内では、粒子状固体触媒と追加の液圧保持時間とによって、1つ以上の望ましくない成分が更に酸化される。
【0047】
反応器375、378は、同様の又は同一の(温度、圧力等の)条件下で運転することができるが、そうでなくてもよく、また、同様の又は同一の構造を有していてもよいが、そうでなくてもよい。一実施態様では、各反応器375、378は縦型円筒形容器であり、反応器375、378の底部又は底部付近に、それぞれ、反応器入口376、379が具備され、また、反応器375、378の頂部又は頂部付近に、それぞれ、反応器出口377、380を具備している。別の実施態様では、加圧ガス供給源335からの酸素含有ガスの一部が、第1酸化反応器375の下流のある地点で、部分酸化混合物に添加される。例えば、酸化含有ガスの一部を第2酸化反応器378に添加してもよく、そこで、粒子状固体触媒により1つ以上の望ましくない成分が更に酸化される。
【0048】
反応領域360は、2つの別個の湿式酸化反応器375、378を連続して備えているように示されているが、湿式酸化システムは、例えばバッフル又は仕切りによって、少なくとも2つの反応器区分に仕切られた、単一の酸化反応器を備えていてもよい。粒子状固体触媒は、次に、第1反応器部分の下流のある地点で部分酸化混合物に添加することができる。同様に、加圧ガス供給源335からの酸素含有ガスの一部は、仕切られた湿式酸化反応器の第1区分の下流のある地点で部分酸化混合物に添加することができる。
【0049】
導管385を経て反応器集合体373を出る際に、1つ以上の望ましくない成分の酸化は実質的に完了している可能性があり、スラリー混合物は酸化スラリー混合物と表される。酸化スラリー混合物は、反応領域360から取り出して、反応領域360の昇温状態よりも十分に低い温度まで冷却してもよい。高温の酸化スラリー混合物は、導管385を経てプロセス熱交換器365を通って移動し、プロセス熱交換器365では、内蔵の反応領域360から出た高温の酸化スラリー混合物から、反応領域360に入ってくる水性混合物へ、熱が伝達される。部分的に酸化された(部分酸化)水性混合物が第1湿式酸化反応器375から第2湿式酸化反応器378へ移動するときに通る導管371内に、追加のヒータ/熱交換器を配置してもよい。
【0050】
冷却された酸化スラリー混合物は、導管390を経て、ガス/スラリー分離容器400に接続された圧力制御弁395へ流すことができる。次いで、冷却された酸化スラリー混合物は、これを圧力制御弁395を通ってガス/スラリー分離タンク400へ移すことによって減圧され、これにより、オフガス相と触媒粒子を含有する酸化放出液スラリー相とが生成される。オフガス相は、分離タンク400から大気中又は更なる処理工程へと放出される。触媒懸濁液を含有する酸化放出液スラリー相は、触媒粒子の回収が必要なければ排出してもよい。触媒粒子の費用は、回収が経済的に成り立たないほど十分に安い場合もある。
【0051】
固体粒子触媒の費用が高いか又は排出が官庁により規制されているかのどちらかによって触媒粒子の回収が必要な場合、酸化放出液スラリー相を、スラリー導管405を経て液/固分離タンク410へ移す。酸化放出液スラリーを処理して、回収された粒子状固体触媒相と粒子状固体触媒を実質的に含まない酸化放出液相とが形成される。従来の分離プロセスのいずれを利用してもよい。図3に示す実施態様では、触媒分離処理としては重量沈降が含まれており、分離タンク410内で澄明な酸化放出液から触媒粒子相が分離される。放出液は、放出液導管415を経て分離タンク410から取り出される。或いは、粒子状固体触媒相は、遠心分離又は任意の他の周知の固液分離法によって、酸化放出液から分離することも可能である。酸化放出液は、触媒粒子を実質的に含んでおらず、環境へ排出しても、必要に応じて更なる処理に付しても、よい。
【0052】
回収された粒子状固体触媒相の少なくとも一部を再循環することにより、第2反応器378内で追加のスラリー混合物を形成してもよい。図3では、沈降した粒子状固体触媒が、スラリー形態で、導管425を経て分離タンク400から出ていく。沈降した触媒は、触媒リサイクルポンプ430へ送られ、導管435を経て触媒供給タンク340へ戻され、第2反応器378に入ってくるか又はその中にある加圧された部分酸化水性混合物へ添加される。再循環された触媒は、酸化水性混合物に添加された粒子状固体触媒を補って、スラリー混合物を形成することができる。触媒湿式酸化システムに最初に添加した後、導管371を流れ第2湿式酸化反応器378に入ってくる部分酸化水性混合物へ添加するのに必要な触媒全てを満たすのに十分な量の回収された触媒を、触媒再循環区分から得ることもできる。別の実施態様では、回収された粒子状固体触媒相を処理して、そこから不活性な固体粒子を除去してもよい。処理済の回収された粒子状固体触媒相の少なくとも一部を、第2湿式酸化反応器378内で流入スラリー混合物を形成するために再循環してもよい。
【0053】
図4は、本発明の方法を実施するのに用いられる湿式酸化システムの更に別の実施態様の略図である。湿式酸化システム500は、処理しようとする少なくとも1つの望ましくない成分を含有する水性混合物を含む供給タンク510を具備している。水性混合物は、導管515を経て供給ポンプ520へ流れ、このポンプにより、水性混合物がシステム操作圧力で湿式酸化システム500へ送られる。導管525内の加圧水性混合物が、加圧ガス導管530で運ばれる加圧ガス供給源535からの酸素含有ガスと、混合され、気相と液相とを含有してなる酸化水性混合物が形成される。酸素含有ガスとしては、空気、酸素富化空気又は基本的に純粋な酸素ガスが挙げられ、湿式酸化に先立って及び/又は湿式酸化中のいずれかの時点で注入等の常套法によってシステムに添加することができる。
【0054】
図4では、加圧ガス供給源535から酸素含有ガスを導入した後、酸化供給混合物を反応領域560において昇温状態まで、酸化供給混合物の一部を液相に保つのに十分な圧力で、その中の1つ以上の望ましくない成分の少なくとも一部を酸化するのに十分な時間、加熱する。この実施態様では、反応領域560は、垂直に配置された円筒形の湿式酸化反応器575を備えており、これによって、酸化水性混合物中の1つ以上の望ましくない成分を大部分酸化させる滞留時間が与えられる。
【0055】
酸素含有ガスの酸素による、水性混合物中の汚染物質の酸化は発熱性であるため、内蔵の反応領域560内の温度が選択された値まで上昇する。一実施態様では、反応領域の昇温状態は、約90℃〜約370℃である。湿式酸化システム500の操作圧力は、酸化水性混合物の一部を液相に保ち反応領域560の乾燥を防ぐのに十分である。システムの操作圧力は、約0.3MPa〜約30MPaの範囲であってよい。部分加熱された酸化水性混合物は、プロセス熱交換器565から、導管570を経て、縦型酸化反応器575へ流れ、ここで1つ以上の望ましくない成分を酸化させる滞留時間が与えられる。酸化反応器575は上向きの反応器入口573を備え、酸化供給混合物を垂直に配置された円筒形反応器575の頂部へ仕向ける。
【0056】
酸化供給混合物中の汚染物質を更に分解させるために、粒子状固体触媒のスラリーを縦型酸化反応器575の上部に添加して、スラリー中の1つ以上の望ましくない成分の更なる酸化を促進することもできる。粒子状固体触媒は、触媒供給タンク540内でスラリーとして調製される。スラリーは、触媒ポンプ545によって、タンク540とポンプ545との間の導管550を経て、加圧された湿式酸化反応器575に添加される。触媒ポンプ545は、触媒を、導管580を経て触媒入口610に送る。粒子状固体触媒は、十分に重いので、液相と気相とが湿式酸化反応器の底部から頂部へ向かって移動している間、湿式酸化反応器575内に留まる。粒子状固体触媒は、垂直に配置された円筒形反応器575の底部に集まり、定期的に取り出されて粒子状固体触媒タンク540へ送られる。触媒出口導管630内にある制御弁620によって、触媒粒子相は断続的に取り出されて、再利用のために粒子状固体触媒タンク540へ送られる。
【0057】
垂直に配置された湿式酸化反応器575から導管585を経て出た時点で、少なくとも1つの望ましくない成分の酸化は実質的に完了しており、気液混合物は酸化された水性混合物(酸化水性混合物)と表される。その後、酸化水性混合物を反応領域560から取り出して、反応領域560の昇温状態よりも十分に低い温度まで冷却する。高温の酸化水性混合物は、導管585を経てプロセス熱交換器565まで流れ、プロセス熱交換器565によって、反応領域560から出る高温の酸化水性混合物からの熱が、内蔵の反応領域560に入ってくる酸化水性混合物へと伝達される。
【0058】
冷却された酸化水性混合物は、次に、導管590を経て、気液分離タンク600に接続された圧力制御弁595に流れる。その後、冷却された酸化水性混合物は、圧力制御弁595を通すことによって減圧され、気液分離タンク600に送られ、環境に放出可能なオフガス相と酸化液体相とを生成する。
【0059】
本発明の一実施例では、粒子状固体触媒は、少なくとも酸化マンガンと酸化セリウムとの組み合わせを、含んでいる。更に別の例では、粒子状固体触媒は、少なくとも酸化マンガンと酸化セリウムとの、Mn:Ceモル%比が約70:30の、組み合わせを含有してなる。
【0060】
一部の実施態様では、湿式酸化システムには、システムの少なくとも1つの操作パラメータ又はシステムの構成要素を調節又は制御するための、これらに限らないが、作動弁及び作動ポンプ等の、制御装置(図示せず)、が具備されていてもよい。制御装置は1つ以上の感知器と電子通信可能である。制御装置は、一般に、制御信号を発生して、圧力、温度、pHレベル等の湿式酸化システムの1つ以上の操作パラメータを調節することができる。一部の実施態様では、スラリー混合物のpHを制御して、湿式酸化中に不均一触媒を確実に不溶のままに保つ必要がある。例えば、制御装置によって、pH調整剤供給源(図示せず)を備えた1つ以上の弁に制御信号を送り、pH調整剤を水性混合物供給源及び/又はスラリー混合物へ添加することができる。
【0061】
制御装置は、典型的には、プログラマブル論理制御装置(PLC)又は分散制御システム等の、マイクロプロセッサ搭載装置であって、湿式酸化システムの構成要素への入出力信号を受送信する。通信ネットワークは、感知器又は信号発生装置を制御装置又は関連コンピュータシステムからかなり離れた位置に配置することができ、しかも、それらにデータを提供することもできる。このような通信機構は、無線プロトコルを利用する技術を始めとする、これらに限定されないが、任意の好適な技術を利用して達成してよい。
【0062】
例示するシステム及び方法には、多数の変更、修正及び改良が可能であると理解すべきである。例えば、1つ以上の湿式酸化システムを多重のプロセス流供給源に連結してもよい。一部の実施態様では、湿式酸化システムは、システムの他の特性又は操作条件を測定するための追加の感知器を具備してもよい。例えば、システムは、温度、圧力低下及び流量用の感知器を様々な位置に備えることにより、システム監視を円滑に進めることができる。1つ以上の実施態様によれば、湿式酸化プロセスの間中、触媒を補給することもできる。
【0063】
本発明は、本発明の技術を遂行するために従来の設備を改良して1つ以上のシステム又は構成要素を組み込むことを意図している。本明細書で例として議論した1つ以上の実施態様に従って、既存設備の少なくとも一部を利用して、従来の湿式酸化システムを改良することができる。例えば、1つ以上のpH感知器を付与してもよく、また、本明細書に記載の1つ以上の実施態様による制御装置を既存の湿式酸化システムに設置して、触媒の溶解性を促進することもできる。
【0064】
本発明の前記及び他の実施態様の機能と利点は、以降の実施例から更に十分に理解されるであろう。これら実施例は、本来は例証目的であって、本発明の範囲を制限するものではない。以降の実施例では、化合物を湿式酸化処理して、その中の結合を分解させる。
【実施例】
【0065】
粒子状固体触媒の調製
25.75gのMnCl・4HOと20.88gのCeCl・7HOを脱イオン水100mlに溶解させて、塩化マグネシウム(II)及び塩化セリウム(III)の水溶液を調製した。得られた金属塩溶液を300mlの3M NaOHに注ぎ込んで、Mn(OH)とCe(OH)とのよく混じった混合物を沈降させた。ピンク色がかった沈殿物は、ワットマン(Whatman)#1濾紙を用いて真空濾過によって回収した。沈殿物は、放置により暗色化したが、次いで、50mlずつの脱イオン水で6回洗浄した。沈殿物を100℃のオーブンで4時間乾燥させてから、るつぼに入れて350℃の炉で3時間加熱した。得られた焼成触媒は、重さが14.4gであり、乳鉢と乳棒とを用いて擂り潰して微粒子物質とした。触媒は、出発原料に基づいて、酸化マグネシウムと酸化セリウムとを、約70:30のMn:Ceモル%比で含有すると計算された。
【0066】
触媒は、微粒子物質試料を標準的なスクリーニング装置を用いてふるい分け分析することによって更に特性評価を行なった。粒子状固体触媒材料の寸法分布を次の表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
粒子状固体触媒物質は、3.1g/cmの粒子密度及び47.0ポンド/立方フィートのバルク密度を有することが分かった。粒子状固体触媒材料のバルク試料の沈降を、材料の計量分をメスシリンダー内で水と激しく混合させることによって、評価した。かき回さずに2時間沈降させると、沈降粒子とその上の液体の間に認知可能な界面が現れた。液体を取り除き、沈降した粒子状固体触媒材料を回収し、乾燥し、秤量した。沈降した粒子状固体触媒材料は、初期材料の総重量の92.2%を占めた。2時間の沈降テスト後に懸濁液中に残っている最大粒径は5ミクロンと推定された。従って、触媒粒径は、約5ミクロン〜約500ミクロンの寸法範囲にあり、処理済スラリー混合物からの除去と湿式酸化処理システムの上流のある地点への再循環とに好適な沈降特性をもたらし得る。
【0069】
ベンチスケール湿式酸化(オートクレーブ)反応器
ベンチスケール湿式酸化試験を実験用オートクレーブで行なった。オートクレーブは、バッチ式反応器であるという点で、連続フロー反応器であり得るフルスケールユニットとは異なる。反応の持続のための十分な酸素を与えるために空気を多量にオートクレーブに添加しなければならないため、オートクレーブは、典型的には、フルスケールユニットよりも高圧で操作される。オートクレーブの試験結果は、湿式酸化技術の性能を表示しており、湿式酸化法の操作条件をスクリーニングするのに有用である。
【0070】
使用したオートクレーブはチタン製であり、ヒータ/振とう機装置内に組み込んだ。オートクレーブ構造材料は、廃水供給材料の組成に基づいて選択した。使用するために選んだオートクレーブの総容量は、それぞれ、500mlである。
【0071】
本発明の前記及びその他の実施態様の機能及び利点は、以下の実施例によって更に十分に理解されるであろう。これら実施例は、本来は例証目的であって、本発明の範囲を制限するものではない。
【0072】
実施例1:合成アクリル酸廃水の触媒湿式酸化
合成アクリル酸廃水の湿式酸化について、酸化マンガン/酸化セリウム粒子状固体触媒によるベンチスケール試験を行なった。オートクレーブに、合成アクリル酸廃水100mLと、粒子状固体Mn/Ce触媒5g/L又は10g/Lとを、入れた。粒子状固体Mn/Ce触媒を含まない対照も同様に試験した。次いで、オートクレーブを密封して、合成廃水の化学的酸素要求量(COD)を上回る酸素を供給するのに十分な空気を用いて加圧した。各オートクレーブを選択された温度、240℃、260℃及び280℃まで加熱して、その選択された温度で1.0時間保持した。温度は、熱電対さやに挿入されてオートクレーブ内部にまで及ぶバイヨネット熱電対で監視した。加熱したオートクレーブをヒータ/振とう機装置から取り外して、水道水で冷却した。冷却したオートクレーブから得た気相を、永久気体、炭素酸化物類、水素及び炭化水素について、ガスクロマトグラフィーで分析した。次に、オートクレーブを開けて、デカンテーションによって液相を粒子状固体触媒から取り出した。その後、液相を、COD、全有機炭素(TOC)、pH並びに溶解性マンガン及びセリウムについて分析した。ベンチスケール試験結果を次の表2にまとめる。
【0073】
【表2】

【0074】
Mn/Ce粒子状固体触媒の添加は、触媒なしの湿式酸化と比べると、化学的酸素要求量(COD)及び全有機炭素(TOC)の低下から示されるように、廃水中のアクリル酸除去率をかなり増大させた。特に、41,500mg/Lの初期CODを有するアクリル酸廃水供給原料の280℃における触媒湿式酸化により、触媒を5.0g/L用いた場合は、CODが530mg/Lに低下し、また、触媒を10g/L用いた場合は、<87g/Lに低下した。この98.7%のCOD低下及び99.8%より多いCOD低下は、いずれも、アクリル酸廃水を280℃でのMn/Ce粒子状固体触媒を用いない湿式酸化の結果生じる61.4%低下よりもかなり大きかった。同様に、15,500mg/Lの初期TOCを有するアクリル酸廃水供給原料の280℃での触媒湿式酸化で、触媒を5.0g/L用いた場合はTOCが196mg/Lに、また、触媒を10g/L用いた場合は80g/Lに低下した。この98.7%及び99.5%のTOC低下はいずれも、アクリル酸廃水を280℃でMn/Ce粒子状固体触媒を用いずに湿式酸化した結果生じる60.5%低下よりもかなり大きかった。
【0075】
更に、Mn/Ce粒子状固体触媒を用いることで、Mn/Ce粒子状固体触媒を用いずに湿式酸化した場合と比べて、より低い温度でも廃水中のアクリル酸除去率がかなり増大した。特に、41,500mg/Lの初期CODを有するアクリル酸廃水をMn/Ce粒子状固体触媒5g/Lを用いて触媒湿式酸化することにより、CODが260℃では2,350mg/Lに、また、240℃では6,810mg/Lに低下した。この94.3%及び83.6%のCOD低下は、いずれも、アクリル酸廃水を280℃でMn/Ce粒子状固体触媒を用いずに湿式酸化した結果、生じる61.4%低下よりもかなり大きかった。同様に、Mn/Ce粒子状固体触媒5g/Lを用いた触媒湿式酸化によって、TOCが260℃及び240℃で、それぞれ、650mg/L及び1,850mg/Lに低下した。この95.8%及び83.1%のTOC低下は、いずれも、アクリル酸廃水を280℃でMn/Ce粒子状固体触媒を用いずに湿式酸化した結果、生じる60.5%低下よりもかなり大きかった。
【0076】
実施例2:脂肪酸水性混合物の触媒湿式酸化
脂肪酸水性混合物の湿式酸化について、酸化マンガン/酸化セリウム粒子状固体触媒のベンチスケール試験を行なった。オートクレーブに、酢酸、ギ酸及びプロピオン酸の水性混合物150mLを入れて、水酸化ナトリウムでpHを4.75に調節した。その後、特定量(5g/L)の粒子状固体Mn/Ce触媒をオートクレーブに加えた。次にオートクレーブを密封して、脂肪酸水性混合物の化学的酸素要求量(COD)を上回る酸素を供給するのに十分な空気を用いて加圧した。各オートクレーブを選択された温度(200℃及び250℃)まで加熱して、その選択された温度で1.0時間保持した。温度は、熱電対さやに挿入されてオートクレーブ内部にまで及ぶバイヨネット熱電対で監視した。加熱したオートクレーブをヒータ/振とう機装置から取り出して、水道水で冷却した。冷却したオートクレーブからの気相を、永久気体、炭素酸化物類、水素及び炭化水素について、ガスクロマトグラフィーで分析した。次にオートクレーブを開けて、液相を、粒子状固体触媒からのデカンテーションによって取り出した。その後、液相を、COD、pH及び個々の脂肪酸について分析した。ベンチスケール試験結果を次の表3にまとめる。
【0077】
【表3】

【0078】
Mn/Ce粒子状固体触媒の添加により、廃水中でのCODレベルがかなり低下した。このことは、触媒を用いない湿式酸化と比較したCODレベルの低下から明らかである。特に、8,187mg/Lの初期CODを有する廃水供給原料を触媒湿式酸化により、CODが、200℃では5,180mg/lに、250℃では2,822mg/Lに低下した。この36.7%及び65.5%のCOD低下は、それぞれ、Mn/Ce粒子状固体触媒を用いない280℃での湿式酸化の結果である、200℃における1.9%低下及び250℃における36.7%低下よりもかなり大きかった。
【0079】
実施例3:合成アクリル酸廃水の湿式酸化のための再利用触媒
合成アクリル酸廃水の湿式酸化について、酸化マンガン/酸化セリウム粒子状固体触媒を再利用した、ベンチスケール試験を行なった。試験番号1では、オートクレーブに合成アクリル酸廃水100mLと特定量(10.0g/L)の粒子状固体Mn/Ce触媒とを加えた。次に、オートクレーブを密封して、合成廃水の化学的酸素要求量(COD)を上回る酸素を供給するのに十分な空気を用いて加圧した。各オートクレーブを280℃まで加熱して、その温度で1.0時間保持した。温度は、熱電対さやに挿入されてオートクレーブ内部にまで及ぶバイヨネット熱電対で監視した。加熱したオートクレーブをヒータ/振とう機装置から取り出して、水道水で冷却した。冷却したオートクレーブからの気相を、永久気体、炭素酸化物類、水素及び炭化水素について、ガスクロマトグラフィーで分析した。次に、オートクレーブを開けて、液相を、粒子状固体触媒からのデカンテーションによって取り出した。その後、液相を、COD、全有機炭素(TOC)、pH並びに溶解性マンガン及びセリウムについて、分析した。実験番号2では、回収したMn/Ce粒子状固体触媒の一部(5.0g/L)を、その後、追加の100mLの合成アクリル酸廃水に加えて、同一処理条件下で上述のプロセスを繰り返した。実験番号3では、実験番号2からの回収Mn/Ce粒子状固体触媒を引き続き利用した。同様に実験番号4では、実験番号3からの回収Mn/Ce粒子状固体触媒を引き続き利用した。ベンチスケール試験結果を次の表4にまとめる。
【0080】
【表4】


【0081】
前記ベンチスケール試験からは、湿式酸化処理耐性を示す追加量の廃水を処理するために再利用した場合の、酸化マンガン/酸化セリウム粒子状固体触媒の有効性が示されている。特に、未使用の触媒では99.2%のCOD低下を示したが、回収した触媒を3回継続して使用した結果、それぞれ、99.1%、99.0%及び98.8%のCOD低下となった。同様に、未使用の触媒では99.3%のTOC低下を示したが、回収した触媒を3回継続して使用した結果、TOCは、99.2%、99.3%及び99.15低下した。触媒は、継続して再利用してもその有効性がほとんど低下しなかった。
【0082】
実施例4:硫酸アンモニウム水溶液の触媒湿式酸化
合成アンモニア含有廃水の湿式酸化について、酸化マンガン/酸化セリウム粒子状固体触媒のベンチスケール試験を行なった。オートクレーブに20.0g/Lの硫酸アンモニウムを含有する溶液150mLと5.0g/Lの粒子状固体Mn/Ce触媒とを入れた。一つの試験では、アルカリ条件の効果を評価するために、水溶液は12.1g/Lの水酸化ナトリウムを含む。次に、オートクレーブを密封して、酸素/ヘリウム混合物を用いて加圧して、アンモニア含有廃水の化学的酸素要求量(COD)を上回る酸素を供給した。酸素/ヘリウム混合物により、触媒湿式酸化試験後の気相中の窒素を検出できるようにした。各オートクレーブを280℃まで加熱して、その温度で1.0時間保持した。温度は、熱電対さやに挿入されてオートクレーブ内部にまで及ぶバイヨネット熱電対で監視した。加熱したオートクレーブをヒータ/振とう機装置から取り出して、水道水で冷却した。冷却したオートクレーブから得た気相について、永久気体、炭素酸化物類、水素及び炭化水素を、ガスクロマトグラフィーで分析した。次に、オートクレーブを開けて、液相を、粒子状固体触媒からのデカンテーションによって取り出した。その後、液相について、アンモニア−窒素、pH並びに溶解性マンガン及びセリウムを分析した。ベンチスケール試験結果を次の表5にまとめる。
【0083】
【表5】

【0084】
上記のとおり、酸化マンガン/酸化セリウム粒子状固体触媒はアンモニアを酸化するのに有効であり、その結果、pH10.4及び2.2においてNH−Nを、それぞれ、66.3%及び42.95%低下させた。具体的な理論に何ら縛られるものではないが、pH10.4における溶解性Mn含有量(<0.02)に比べて、より高い溶解性Mn含有量(47mg/L)から分かるように、触媒の一部が可溶であるため、酸性pHでは触媒の効果が低かった可能性がある。pHに関係なく、酸化マンガン/酸化セリウム粒子状固体触媒は、このような触媒の不在下では典型的にアンモニアが酸化耐性を有する湿式酸化条件下でも、アンモニアを酸化するのに有効であった。
【0085】
実施例5:硫酸アンモニウム水溶液の触媒湿式酸化
合成アンモニア含有廃水の湿式酸化について、粒子状固体触媒である白金含浸活性炭のベンチスケール試験を行なった。オートクレーブに20.0g/Lの硫酸アンモニウムを含有する溶液150mLと5.0g/Lの炭素担持Pt粒子状固体触媒とを入れた。水溶液は、湿式酸化試験中の条件をアルカリ性とするために12.1g/Lの水酸化ナトリウムを含有する。次に、オートクレーブを密封し、酸素/ヘリウム混合物で加圧し、アンモニア含有廃水の化学的酸素要求量(COD)を上回る酸素を供給した。各オートクレーブを280℃まで加熱して、その温度で1.0時間保持した。温度は、熱電対さやに挿入されてオートクレーブ内部にまで及ぶバイヨネット熱電対で監視した。加熱したオートクレーブをヒータ/振とう機装置から取り出して、水道水で冷却した。冷却したオートクレーブからの気相を、永久気体、炭素酸化物類、水素及び炭化水素について、ガスクロマトグラフィーで分析した。次に、オートクレーブを開けて、液相を粒子状固体触媒からのデカンテーションによって取り出した。その後、液相を、アンモニア−窒素、pH及び溶解性白金について分析した。比較基準として、炭素担持Pt粒子状固体触媒を加えない試験も実験した。ベンチスケール試験結果を次の表6にまとめる。
【0086】
【表6】

【0087】
上述のベンチスケール試験から、粒子状固体触媒である炭素担持白金は、このような触媒が無ければアンモニアが酸化耐性を有する湿式酸化条件下でも、アンモニウムを酸化するのに有効であることが分かる。NH−窒素含有量は、触媒を用いない場合の僅か8.1%の低下に比べて、触媒を使用すると99.3%低下した。
【0088】
実施例6:ナノメートルサイズの触媒を用いた触媒湿式酸化
ヒータ/振とう機装置に搭載した500mL容量のチタン製オートクレーブを用いて、酢酸の湿式酸化について、ナノメートルサイズの粒子状固体触媒である酸化セリウムのベンチスケール試験を行なった。オートクレーブに酢酸溶液150mLと特定量の触媒(150mg/L)とを加えた。触媒は、米国マサチューセッツ州ワードヒル(Ward Hill)のアルファ・イーサ(Alfa Aesar)から入手したナノテック(NanoTek)(登録商標)CE−6042、即ち、18%酸化セリウム(IV)の水中コロイド分散液、であった。
【0089】
次に、オートクレーブを密封して、十分な空気を用いて加圧して、酢酸溶液の化学的酸素要求量(COD)を上回る酸素を供給した。対照湿式酸化実験を、触媒を添加しないで、同様に、行なった。各オートクレーブを280℃まで加熱して、その温度で1.0時間保持した。温度は、熱電対さやに挿入されてオートクレーブ内部にまで及ぶバイヨネット熱電対で監視した。加熱したオートクレーブをヒータ/振とう機装置から取り出して、水道水で冷却した。冷却したオートクレーブからの気相の酸素濃度をガスクロマトグラフィーで分析した。次にオートクレーブを開けて、液相を、粒子状固体触媒からのデカンテーションによって取り出した。その後、液相を、COD及びpHについて分析した。ベンチスケール試験結果を次の表7にまとめる。
【0090】
【表7】

【0091】
ナノメートルサイズの酸化セリウム触媒は、酢酸が典型的に湿式酸化処理に耐性を有する条件下でも酢酸を酸化するのに有効であった。ナノメートルサイズの酸化セリウム触媒の存在により、CODが、触媒を用いなかった場合の僅か6.5%の低下に比べて、17.8%まで低下した。
【0092】
本発明は、以下の説明に記載するか又は図面に示す構成要素の構造及び配置の詳細への応用に制限されない。本発明は、他の実施態様も可能であり、また、様々な方法で実施又は実行することも可能である。また、本明細書で使用する語句や専門用語は、説明のためであり、制限とみなすべきではない。「包含する」、「含有してなる」又は「有する」、「含有する」、「伴う」、及び本明細書中のそれらの変種の利用は、以降に挙げる項目やその相当語句だけでなく、追加項目をも包含するものとする。
【0093】
請求項中での、請求項の構成要素を修飾する「第1」、「第2」、「第3」等の序数用語の利用は、それだけでは優先性、先行性若しくはある請求項構成要素の他に対する順序又は方法の動作を行なう時間的順序を意味するものではないが、特定の名称が付いた請求項の構成要素を同じ名称(だが、序数詞を用いるため)の別の構成要素と区別して請求項の構成要素を識別するための標識として単に使用している。
【0094】
当業者には、本明細書に記載のパラメータ及び構造が例示であることと、実際のパラメータ及び/又は構造が、本発明のシステムや技術を用いる特定の用途によって異なることとが自明であろう。当業者は、また、通常の実験と同じように使用しても、本発明の特定の実施態様と同等のものに気付くか又はその結果を確認できるであろう。従って、本明細書に記載の実施態様は単に例して示されているのであって、本発明は、添付の請求の範囲及びその等価物の範囲内であれば、具体的に説明した以外の別の方法でも実施可能であると理解すべきである。
【符号の説明】
【0095】
10、100、300、500 触媒湿式酸化システム
20 プロセス流
30 酸素含有ガス
35 水性混合物
40 粒子状固体触媒
45 水性スラリー供給混合物
50 湿式酸化ユニット
55 酸化スラリー混合物
60 気相
65 酸化液相
70 処理済の廃液
75 粒子状固体触媒相
85、85a、85b 湿式酸化ユニット
115、315、510 供給タンク
140、340、540 触媒供給タンク
175、575 湿式酸化反応器
177、376、379、573 供給原料入口/反応器入口
178 反応器出口
375 第1湿式酸化反応器
378 第2湿式酸化反応器
610 触媒入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理しようとする少なくとも1つの望ましくない成分を含有する水性混合物を供給し;
前記水性混合物と粒子状固体触媒とを接触させてスラリー混合物を形成し;
前記スラリー混合物を未臨界温度及び超大気圧で酸化して、前記少なくとも1つの望ましくない成分を処理して、酸化スラリー混合物を形成し;そして、
粒子状固体触媒の少なくとも一部を前記酸化スラリー混合物から分離することを含んでなる
触媒湿式酸化方法。
【請求項2】
前記水性混合物を前記粒子状固体触媒と接触させる工程が、湿式酸化ユニット内で、前記水性混合物を前記粒子状固体触媒と接触させることを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性混合物を前記粒子状固体触媒と接触させる工程が、湿式酸化ユニットに入る前に、前記水性混合物を前記粒子状固体触媒と接触させることを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記湿式酸化ユニットが、少なくとも2つの反応器区分を備える、請求項2及び3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記粒子状固体触媒を前記酸化スラリー混合物から分離する工程が、前記酸化スラリー混合物を、分離領域内で、気相、酸化液相及び粒子状固体触媒相に、本質的に同時に分離することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記粒子状固体触媒を前記酸化スラリー混合物から分離する工程が、前記酸化スラリー混合物を、複数の分離領域内で、気相、酸化液相及び粒子状固体触媒相に、分離することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記粒子状固体触媒を前記酸化スラリー混合物から分離する工程が、前記湿式酸化ユニット内で前記粒子状触媒相を前記酸化スラリー相から分離することを含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記湿式酸化ユニット内で前記粒子状触媒相を前記酸化スラリー相から分離する工程が、前記粒子状固体触媒の流れを前記水性混合物の流れと対向する方向に方向付けることを含んでなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記粒子状固体触媒の流れを方向付けることが、垂直に配置された湿式酸化ユニット内で前記粒子状固体触媒の流れを下向きに方向付けることを含んでなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記水性混合物を前記粒子状固体触媒と接触させる工程が、前記水性混合物を、前記酸化スラリー混合物から分離した前記粒子状固体触媒の少なくとも一部と、接触させることを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記水性混合物を前記粒子状固体触媒の少なくとも一部と接触させる前に、前記粒子状固体触媒の少なくとも一部から不活性固体を除去することを更に含んでなる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水性混合物を前記粒子状固体触媒と接触させる工程が、前記水性混合物を、遷移金属元素及びその水不溶性化合物からなる群より選択される粒子状固体触媒と、接触させることを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記水性混合物を前記粒子状固体触媒と接触させる工程が、前記水性混合物を、その水不溶性化合物を包含する少なくとも2つの遷移金属元素の混合物と、接触させることを含んでなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記水性混合物を前記粒子状固体触媒と接触させる工程が、前記水性混合物を、少なくとも酸化マンガンと酸化セリウムとの混合物に、接触させることを含んでなる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記水性混合物を前記粒子状固体触媒と接触させる工程が、前記水性混合物を、約5ミクロン〜約500ミクロンの範囲の粒径を有する粒子状固体触媒と、接触させることを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記水性混合物を前記粒子状固体触媒と接触させる工程が、前記水性混合物を、約3nm〜約15nmの範囲の粒径を有する粒子状固体触媒と、接触させることを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記水性混合物を供給する工程が、有機酸、フェノール化合物、有機ハロゲン化合物、窒素含有化合物及び硫黄含有化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含んでなる水流を供給することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記水性混合物を前記粒子状固体触媒と接触させる工程が、前記水性混合物を前記粒子状固体触媒の水性スラリーと接触させることを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
湿式酸化ユニット;
前記湿式酸化ユニットの供給原料入口と流体連通している、少なくとも1つの望ましくない成分を含有してなる水性混合物の供給源;
水性混合物導管であって:
前記水性混合物の前記供給源の出口と流体連通している入口;及び
前記湿式酸化ユニットの供給原料入口と流体連通している出口;
を備えてなる水性混合物導管;
前記湿式酸化ユニットの触媒入口、前記水性混合物の前記供給源及び前記水性混合物導管のうちの、少なくとも1つと流体連通している前記水性混合物に不溶性の粒子状固体触媒の供給源;並びに
前記湿式酸化ユニットの出口と流体連通している入口と、前記湿式酸化ユニットの前記触媒入口、前記水性混合物の前記供給源及び前記水性混合物導管のうちの、少なくとも1つと、流体連通している、触媒スラリー出口を具備する分離装置を備えてなる、
触媒湿式酸化システム。
【請求項20】
前記湿式酸化ユニットへの前記供給原料入口と前記湿式酸化ユニットへの前記触媒入口とが同一の入口である、請求項19に記載の触媒湿式酸化システム。
【請求項21】
請求項19に記載の触媒湿式酸化システムであって:
前記供給原料入口と流体連通している第1反応器区分;
前記触媒入口及び前記第1反応器部分の出口と流体連通している第2反応器区分を備えてなる請求項19に記載の触媒湿式酸化システム。
【請求項22】
請求項20に記載の触媒湿式酸化システムであって、前記粒子固体触媒の前記供給源が前記湿式酸化ユニットの前記触媒入口と流体連通しており、前記湿式酸化ユニットが前記第1湿式酸化ユニットであり、
前記システムが更に、
前記水性混合物導管と流体連通している入口;及び
前記第1湿式酸化ユニットの前記供給原料入口と流体連通している出口
を備えてなる
第2湿式酸化ユニットを備えてなる、
請求項20に記載の触媒湿式酸化システム。
【請求項23】
前記分離装置の前記触媒スラリー出口が、前記第1湿式酸化ユニットへの前記触媒入口と流体連通している、請求項22に記載の触媒湿式酸化システム。
【請求項24】
前記第1湿式酸化ユニットへの前記供給原料入口と前記第1湿式酸化ユニットへの前記触媒入口とが同一の入口である、請求項22に記載の触媒湿式酸化システム。
【請求項25】
前記粒子状固体触媒の前記供給源が、遷移金属元素及びその水不溶性化合物からなる群より選択される粒子状固体触媒を含んでなる、請求項19に記載の触媒湿式酸化システム。
【請求項26】
前記粒子状固体触媒が、その水不溶性化合物を包含する少なくとも2つの遷移金属元素を含んでなる、請求項25に記載の触媒湿式酸化システム。
【請求項27】
前記少なくとも2つの遷移金属元素が、酸化マンガン及び酸化セリウムである、請求項26に記載の触媒湿式酸化システム。
【請求項28】
前記粒子状固体触媒が、約5ミクロン〜約500ミクロンの範囲の粒径を有する粒子状固体触媒を含んでなる、請求項19に記載の触媒湿式酸化システム。
【請求項29】
前記粒子状固体触媒が、約3nm〜約15nmの範囲の粒径を有する粒子状固体触媒を含んでなる、請求項19に記載の触媒湿式酸化システム。
【請求項30】
前記水性混合物の前記供給源が、有機酸、フェノール化合物、有機ハロゲン化合物、窒素含有化合物及び硫黄含有化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含んでなる、請求項19に記載の触媒湿式酸化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−517618(P2011−517618A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502990(P2011−502990)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/002105
【国際公開番号】WO2009/123755
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(506355361)シーメンス ウォーター テクノロジース コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】