説明

計器及び文字板

【課題】計器及び文字板において、特殊な着色剤や着色工程を要することなく、奥行き感や立体感、グラデーションを表現する。
【解決手段】文字板14は、目盛部14bが形成されている部位において、外側に向かうにつれて徐々に低くなるようなリング状の斜面部141を有し、斜面部141における数字部14cに近い部位であるR部14rは、照明時の輝度を内外方向に徐々に変化させるために、その断面が曲線的な凸状になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載される計器及びこの計器に用いられる文字板に関し、特に、奥行き感及び立体感を表現することができる計器及び文字板に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載される計器においては、奥行き感や立体感、グラデーションを表現するために、文字板の周縁部に装飾用のリング意匠が印刷されていることが多い。図5は、この種の従来の計器を示す断面図である。図6は、図5の計器の要部を示す斜視図である。
【0003】
図5に示すように、この種の計器9は、各種電子部品を搭載する基板91、基板91に搭載される指針用光源92a、文字板用光源92b、装飾照明用光源92c、ケース93、ケース93の一部に支持されて速度やエンジン回転数等を示す意匠94aが形成された文字板94、文字板94の裏面に取り付けられる拡散板96、意匠94aを指示する指針97、所定の計測値に応じて指針97を回転させるムーブメント98、計器9の前面に取り付けられる見返し99、及び、図示しない表ガラス等を含んで基本構成される。また、指針97には指針キャップ97bが被せられ、指針軸97aには、ムーブメント98の回転軸98aが挿通されている。
【0004】
このような基本構成の計器9に奥行き感や立体感、グラデーションを表現するために、文字板94の周縁部近傍にはリング状の斜面部941が設けられている。そして、斜面部941は、図6に示すように、外側に向かって徐々に明暗が変化する装飾用のリング意匠が印刷されている。また、斜面部941を周回するように、リング状の導光体95が取り付けられている。なお、斜面部941には、エンジン回転数を示す意匠94aに対応する目盛りを示す意匠94bも形成されている。
【0005】
そして、光源92cからの光R9は、導光体95に導光されて、出射光R9′として斜面部941に出射される。これによって、斜面部941に印刷された印刷色の濃淡を有するリング意匠が光輝して、文字板94及び計器9に奥行き感や立体感、グラデーションが付加される。なお、指針用光源92a及び文字板用光源92bによって、それぞれ、指針97及び文字板94上の意匠94aも周知のように照明される。
【0006】
なお、上述の計器は下記特許文献1にて詳細に記載されている。
【特許文献1】特許第3526036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記従来の計器9の計器によると、文字板94の斜面部941に上述のような濃淡が変化する特殊な着色を施さなければならない。したがって、奥行き感や立体感、グラデーションを表現するために、特殊な着色剤や着色工程が必要となる。また、光源92cからの光を導光するリング状の導光体95が必要となる。したがって、部品点数も増加する。
【0008】
よって本発明は、上述した現状に鑑み、特殊な着色剤や着色工程を要することなく、且つ、部品点数増加を抑えつつ、奥行き感や立体感、グラデーションを表現することができる計器及び文字板を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の文字板は、アナログ計器用の文字板であって、外側に向かうにつれて徐々に低くなるような斜面部を有し、装飾照明用の光を前記斜面部で受けるようにした文字板において、前記斜面部の一部又は全部は、照明時の輝度を内外方向に徐々に変化させるために、前記光源からの光路差が該内外方向に沿った外側に向かって徐々に変化するように、その断面形状が曲線的な凸状又は凹状になっている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項1記載の発明によれば、外側に向かうにつれて徐々に低くなるような斜面部の一部又は全部は、照明時の輝度を内外方向に徐々に変化させるために、光源からの光路差が該内外方向に沿った外側に向かって徐々に変化するように、その断面形状が曲線的な凸状又は凹状になっている。
【0011】
上記課題を解決するためになされた請求項2記載の文字板は、請求項1記載の文字板において、前記斜面部に対向するように前記装飾照明用の光を透過させる透過部が形成された、ことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、斜面部に対向するように形成された装飾照明用の光を透過させる透過部が形成されている。よって、部品点数及び組立工数の削減の効果がある。
【0013】
上記課題を解決するためになされた請求項3記載の計器は、装飾照明用の光源と、外側に向かうにつれて徐々に低くなるようなリング状の斜面部を有する文字板と、を備え、前記光源からの光を反射させて前記斜面部に向けて出射するようにした計器において、前記斜面部の一部又は全部は、照明時の明暗を内外方向に徐々に変化させるために、前記光源からの光路差が該内外方向に沿った外側に向かって徐々に変化するように、その断面形状が曲線的な凸状又は凹状になっている、ことを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、装飾照明用の光源と、外側に向かうにつれて徐々に低くなるような斜面部を有する文字板を備えた計器において、文字板の斜面部の一部又は全部は、照明時の明暗を内外方向に徐々に変化させるために、光源からの光路差が該内外方向に沿った外側に向かって徐々に変化するように、その断面形状が曲線的な凸状又は凹状になっている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、外側に向かうにつれて徐々に低くなるような斜面部の一部又は全部は、照明時の輝度を内外方向に徐々に変化させるために、光源からの光路差が該内外方向に沿った外側に向かって徐々に変化するように、その断面形状が曲線的な凸状又は凹状になっている。したがって、この文字板を用いることにより、特殊な着色剤や着色工程を要することなく奥行き感や立体感、グラデーションを表現することができる計器を提供することが可能になる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、斜面部に対向するように形成された装飾照明用の光を透過させる透過部が形成されている。したがって、部品点数及び組立工数の削減の効果があり、且つ、奥行き感や立体感、グラデーションを表現することができる計器を提供することが可能になる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、装飾照明用の光源と、外側に向かうにつれて徐々に低くなるような斜面部を有する文字板を備えた計器において、文字板の斜面部の一部又は全部は、照明時の明暗を内外方向に徐々に変化させるために、光源からの光路差が該内外方向に沿った外側に向かって徐々に変化するように、その断面形状が曲線的な凸状又は凹状になっている。したがって、特殊な着色剤や着色工程を要することなく奥行き感や立体感、グラデーションを表現することができる計器を提供することができる。また、従来のようにリング状の導光部材も不要となるため、部品点数増加を抑えた計器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、本発明の実施形態の概略構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る計器の要部を示す斜視図である。
【0019】
本発明の実施形態に係る計器及び文字板は、図1に示すように、例えば、アナログ式の自動車用のタコメータに適用される。勿論、速度計や水温計、燃料計に適用されてもよい。指針10は、エンジン回転数を示す計測値に応じてムーブメントにより所定角度だけ回転され、黒色ベースの文字板14に形成されたエンジン回転数を示す意匠である目盛部14bや数字部14cを指示する。文字板14は、目盛部14bが形成されている部位において、外側に向かうにつれて徐々に低くなるようなリング状の斜面部141を有し、斜面部141の一部(数字部14cに近い部位)は、照明時の輝度を内外方向に徐々に変化させるために、その断面が曲線的な凸状になっている。
【0020】
また、装飾用のリング部材15がやや内側に傾斜して、リング状の斜面部141を周回するように取り付けられている。このリング部材15の外側は、黒色樹脂製の見返し16で覆われている。更に、これらはスモークガラスで覆われるが、ここでは省略している。なお、指針駆動等に係る基本構成は、図5で示した計器と同様となるので重複説明は省略する。
【0021】
続いて、図2を用いて、本発明の特徴となる部位の構成について説明する。図2は、図1におけるAA線断面図及びその周辺部を示す斜視図を組み合わせた図である。但し、図2において、図1に示した見返し16は省略している。
【0022】
図2において、文字板14は、樹脂製であり、外側に向かうにつれて徐々に低くなるようなリング状の斜面部141を有し、装飾照明用の光を斜面部141で受けるようになっている。文字板14において、斜面部141を周回するような形状の装飾用のリング部材15を支持する穴であるリング部材支持部14hと、このリング部材支持部14hと斜面部141とを連接する部位の一部であって、斜面部141に対向するように形成された装飾照明用の光を透過させる透過部14aと、が一体形成されている。また、文字板14において、透過部14aと斜面部141とは、リング状の底面部14eにて連接されている。すなわち、文字板14は、通常の平板状の文字板とは異なり、図中左から、見返しを取り付ける部位、リング部材支持部14h、透過部14a、斜面部141及び数字部14cが形成される平面部が一体化されたものである。
【0023】
これによって、リング部材支持部を別途設けることなく、斜面部141を周回するような形状の装飾用のリング部材15を有する計器が得られる。したがって、部品点数増加を最小限に抑え、装飾効果の高い計器を提供することが可能になる。
【0024】
文字板14における斜面部141には、エンジン回転数に対応したバー状の複数の目盛部14bが均等間隔で形成されている。目盛部14bは、常用回転数に対応して白色、青色、レッドゾーンに対応して赤色等の透過色で形成されている。文字板14におけるエンジン回転数に対応した数字部14cが形成されている部位は、平面状になっている。目盛部14bもまた、白色、青色、赤色等の透過色で形成されている。文字板14において、透過部14a、目盛部14b及び数字部14c以外の部位は、基本的に黒色等の不透過色で印刷されている。
【0025】
文字板14において、目盛部14b及び数字部14cの間に相当するリング状の部位であるR部14rは、R形状すなわち所定の曲率の凸状になっている。なお、R部14rは、所定の曲率の凹状であってもよい。また、R部14rは、斜面部141全体にわたって形成するようにしてもよい。このような形状は、照明時のR部14rの輝度を内外方向に徐々に変化させるためのものである。その作用については、図3を用いて後述する。なお、本発明において、内外方向とは、指針軸を中心として放射線状に広がる方向又は指針軸に放射線に向かう方向である。これにともない、外側にむかうといえば(請求項1参照)、指針軸から遠ざかる方向に向かうという意味になり、内側にむかうといえばこの逆になる。
【0026】
文字板14において、斜面部141から所定距離はなれた部位には、斜面部141を周回するような形状の装飾用のリング部材15が取り付けられる。リング部材15は、銀色等で塗装されたものでもよいし、図示しない有色光源からの光を導光して、それ自体が光輝するものであってもよい。いずれにしてもリング部材15の背面には、支持足部15hが均等間隔で延設されている。支持足部15hは、穴形状のリング部材支持部14hに挿通された後に加締められて、リング部材15が固定される。
【0027】
文字板14において、リング部材15が取り付けられる部位とは反対側には、樹脂製のケース13の一部が配置されている。このケース13の一部において、文字板14の透過部14aに対向する部位には、光源12aからの光を透過部14aに向けて反射させる反射面13aが形成されている。この反射面13aもリング状になっている。
【0028】
また、文字板14において、目盛部14b及び数字部14cが形成されている部位の下方にも、ケース13の他の一部が配置されている。このケース13の他の一部は、光源12bからの光を効果的に目盛部14b及び数字部14cに反射させるために、リング状且つ曲線凹状になっている。そして、光源12bが配置される底面部には、複数の光源12bに対応するようにそれぞれ開口穴13bが形成されている。
【0029】
ケース13の下には、基板11が配置されている。基板11には、図示しないムーブメントや電子部品等の他に、上記光源12a及び光源12bも搭載される。光源12a及び光源12bは、例えば、白色光を発する発光ダイオードである。光源12aは、図中Laで示すような光路で、斜面部141を装飾照明するためのもので、基板11上にリング状に複数個配置されている。光源12bは、図中Lbで示すような光路や反射光で、目盛部14b及び数字部14cを照明するためのもので、基板11上にリング状に複数個配置されている。
【0030】
続いて、図3及び図4を用いて、本発明の実施形態による作用効果について説明する。図3は、本発明の実施形態による作用を説明するための図である。図4は、本発明の実施形態に係る光路差を説明するための図である。なお、図3は、図2と同様の部位の断面形状に相当し、図4は、図3のR部近傍の断面形状に相当する。
【0031】
図3のLaで示すように、光源12aからの光は、反射面13aにて反射された後、透過部14aを透過して、斜面部141に至る。斜面部141における目盛部14bが形成されている部位は、平面状であるが、反射面13aに比べて傾斜が緩やかである。すなわち、目盛部14bが形成されている部位は、数字部14cに近づくにつれて、光源12aからの距離が遠ざかるように傾斜している。よって、目盛部14bが形成されている部位は、数字部14cに近づくにつれて、徐々に輝度が小さくなる。したがって、照明時には、この部位の明暗は、徐々に変化していく。
【0032】
また、斜面部141におけるR部14rは、上述したように、R形状すなわち所定の曲率の凸状になっている。補足すると、R部14rは、目盛部14b及び数字部14cに連続的に、且つ、凸状になっている。このため、図4のLa1、La2、La3に示すように、光源12aからの距離が、数字部14cに近づくにつれてより遠ざかることになる(目盛部14bが形成されている部位と比較して)。なお、図中141′は、目盛部14bの延長線を参考までに示したものである。よって、R部14rは、数字部14cに近づくにつれて、徐々ではあるが、より明確に輝度が小さくなっていく。したがって、照明時には、この部位の明暗は、徐々ではあるが明確に変化していく。
【0033】
この結果、特殊な着色剤や着色工程を要することなく、照明時において、奥行き感や立体感、グラデーションを表現することができる。特に、R部14rによって、より明確に奥行き感や立体感、グラデーションを表現することができる。
【0034】
なお、図3のLbで示すように、光源12bからの光は、直接又は曲線凹状のケース13の一部に反射されて、目盛部14b及び数字部14cの裏側に至る。これによって、目盛部14b及び数字部14cが照明される。
【0035】
以上説明したように、本発明の実施形態によると、特殊な着色剤や着色工程を要することなく、奥行き感や立体感、グラデーションが表現された計器及び文字板を提供することができる。また、本発明の実施形態によると、従来のようにリング状の導光部材も不要となるため、部品点数増加を抑えた計器を提供することができる。
【0036】
なお、上記実施形態では、R部14rを目盛部14bに相当する部位と数字部14cに相当する部位の中間部のみに形成しているが、中間部のみならず、例えば、目盛部14bに相当する部位及び/又は数字部14cに相当する部位をR部14rと同等の形状にすることも可能である。また、本発明は、例示したタコメータのみの適用に限定されない。また、リング部材15は必ずしも必要でないが、装飾効果を高めるうえであった方がより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る計器の要部を示す斜視図である。
【図2】図1におけるAA線断面図及びその周辺部を示す斜視図を組み合わせた図である。
【図3】本発明の実施形態による作用を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態に係る光路差を説明するための図である。
【図5】この種の従来の計器を示す断面図である。
【図6】図5の計器の要部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 計器
11 基板
12a、12b 光源
13 ケース
14 文字板
14a 透過部
14b 目盛部
14c 数字部
14r R部
15 リング部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ計器用の文字板であって、外側に向かうにつれて徐々に低くなるような斜面部を有し、装飾照明用の光を前記斜面部で受けるようにした文字板において、
前記斜面部の一部又は全部は、
照明時の輝度を内外方向に徐々に変化させるために、前記光源からの光路差が該内外方向に沿った外側に向かって徐々に変化するように、その断面形状が曲線的な凸状又は凹状になっている、
ことを特徴とする文字板。
【請求項2】
請求項1記載の文字板において、
前記斜面部に対向するように前記装飾照明用の光を透過させる透過部が形成された、
ことを特徴とする文字板。
【請求項3】
装飾照明用の光源と、外側に向かうにつれて徐々に低くなるようなリング状の斜面部を有する文字板と、を備え、前記光源からの光を反射させて前記斜面部に向けて出射するようにした計器において、
前記斜面部の一部又は全部は、
照明時の明暗を内外方向に徐々に変化させるために、前記光源からの光路差が該内外方向に沿った外側に向かって徐々に変化するように、その断面形状が曲線的な凸状又は凹状になっている、
ことを特徴とする計器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−17165(P2007−17165A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195854(P2005−195854)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】