計数装置および計数方法
【課題】入力信号が時間的に非対称の場合でも計数結果を精度良く補正する。
【解決手段】カウンタ13は2値化信号のランレングスを数える。計数結果補正部14は、ランレングスの度数分布を、信号の立ち上がりから立ち下がりまでの第1のランレングスと立ち下がりから立ち上がりまでの第2のランレングスについて作成し、第1のランレングスの代表値THの0倍以上1倍未満の長さである第1のランレングスの数の総和、第2のランレングスの代表値TLの0倍以上1倍未満の長さである第2のランレングスの数の総和、{TH+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TH+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第1のランレングスの数の総和、{TL+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TL+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第2のランレングスの数の総和を求め計数結果を補正する。
【解決手段】カウンタ13は2値化信号のランレングスを数える。計数結果補正部14は、ランレングスの度数分布を、信号の立ち上がりから立ち下がりまでの第1のランレングスと立ち下がりから立ち上がりまでの第2のランレングスについて作成し、第1のランレングスの代表値THの0倍以上1倍未満の長さである第1のランレングスの数の総和、第2のランレングスの代表値TLの0倍以上1倍未満の長さである第2のランレングスの数の総和、{TH+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TH+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第1のランレングスの数の総和、{TL+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TL+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第2のランレングスの数の総和を求め計数結果を補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号の数を数える計数装置および計数方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体レーザの自己結合効果を用いた波長変調型のレーザ計測器が提案されている(特許文献1参照)。このレーザ計測器の構成を図9に示す。図9のレーザ計測器は、物体210にレーザ光を放射する半導体レーザ201と、半導体レーザ201の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード202と、半導体レーザ201からの光を集光して物体210に照射すると共に、物体210からの戻り光を集光して半導体レーザ201に入射させるレンズ203と、半導体レーザ201に発振波長が連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返させるレーザドライバ204と、フォトダイオード202の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅部205と、電流−電圧変換増幅部205の出力電圧を2回微分する信号抽出回路206と、信号抽出回路206の出力電圧に含まれるモードホップパルス(以下、MHPとする)の数を数える計数装置207と、物体210との距離および物体210の速度を算出する演算装置208と、演算装置208の算出結果を表示する表示装置209とを有する。
【0003】
レーザドライバ204は、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ201に供給する。これにより、半導体レーザ201は、発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返すように駆動される。図10は、半導体レーザ201の発振波長の時間変化を示す図である。図10において、P1は第1の発振期間、P2は第2の発振期間、λaは各期間における発振波長の最小値、λbは各期間における発振波長の最大値、Ttは三角波の周期である。
【0004】
半導体レーザ201から出射したレーザ光は、レンズ203によって集光され、物体210に入射する。物体210で反射された光は、レンズ203によって集光され、半導体レーザ201に入射する。フォトダイオード202は、半導体レーザ201の光出力を電流に変換する。電流−電圧変換増幅部205は、フォトダイオード202の出力電流を電圧に変換して増幅し、信号抽出回路206は、電流−電圧変換増幅部205の出力電圧を2回微分する。計数装置207は、信号抽出回路206の出力電圧に含まれるMHPの数を第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々について数える。演算装置208は、半導体レーザ1の最小発振波長λaと最大発振波長λbと第1の発振期間P1におけるMHPの数と第2の発振期間P2におけるMHPの数に基づいて、物体210との距離および物体210の速度を算出する。このような自己結合型のレーザ計測器の技術を利用して、MHPの数を測定すれば、このMHPの数から物体の振動周波数を算出することが可能である。
【0005】
以上のようなレーザ計測器では、例えば外乱光などのノイズをMHPとして数えたり、信号の歯抜けのために数えられないMHPがあったりして、計数装置で数えるMHPの数に誤差が生じ、算出した距離や振動周波数等の物理量に誤差が生じるという問題点があった。
そこで、発明者は、計数期間中のMHPの周期を測定し、測定結果から計数期間中の周期の度数分布を作成し、度数分布からMHPの周期の代表値を算出し、度数分布から、代表値の第1の所定数倍以下である階級の度数の総和Nsと、代表値の第2の所定数倍以上である階級の度数の総和Nwとを求め、これらの度数NsとNwに基づいてMHPの計数結果を補正することにより、計数時の欠落や過剰な計数の影響を除去することができる計数装置を提案した(特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2に開示された計数装置によれば、SN(Signal to Noise ratio)が極端に低下しない限り、概ね良好な補正を行うことができる。
しかしながら、特許文献2に開示された計数装置では、短距離測定で信号強度がヒステリシス幅と比較して極端に強い場合、計数装置に入力される信号に2値化のしきい値付近でMHPよりも高周波のノイズによってチャタリングが生じ、短い周期の信号やMHPの本来の周期の半分程度の周期の信号が多発する場合がある。この場合、MHPの本来の周期よりも短い周期が周期の分布の代表値になってしまうので、MHPの計数結果を正しく補正することができず、MHPの計数結果が本来の値よりも例えば数倍大きくなってしまうという問題点があった。
【0007】
そこで、発明者は、さらに、入力信号に高周波のノイズが連続して発生している場合であっても、計数誤差を補正することができる計数装置を提案した(特許文献3参照)。特許文献3に開示された計数装置は、計数期間中の入力信号のランレングスの数を数え、計数期間中の入力信号のランレングスを測定し、この測定結果から計数期間中の入力信号のランレングスの度数分布を作成し、この度数分布から入力信号のランレングスの分布の代表値を算出し、代表値の0.5倍未満であるランレングスの数の総和Nsと、代表値の2n倍以上(2n+2)倍未満(nは1以上の自然数)であるランレングスの数の総和Nwnとを求め、これらの度数NsとNwnに基づいてMHPの計数結果を補正するようにしたものである。
【0008】
ところで、MHPなどの干渉波の波形は、搬送波除去回路の特性や対象物の状態によって時間的に非対称になることがある(特許文献4参照)。図11(A)はこのように非対称になった干渉波形を示す図であり、図11(B)は図11(A)の波形を2値化した結果を示す図である。図11(A)におけるTH1,TH2は2値化のためのしきい値である。このように干渉波形が時間的に非対称になると、2値化信号のデューティー比が0.5にならなくなる。これにより、特許文献3に開示された計数装置では、計数補正の精度が低下するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−313080号公報
【特許文献2】特開2009−47676号公報
【特許文献3】特開2011−33525号公報
【特許文献4】特許第3282746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献3に開示された計数装置によれば、入力信号に高周波のノイズが連続して発生している場合であっても、計数誤差を補正することができる。
しかしながら、特許文献3に開示された計数装置では、干渉波形が時間的に非対称になると、干渉波形を2値化した信号のデューティー比が0.5にならず、計数補正の精度が低下するという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、計数装置に入力される信号が時間的に非対称の場合であっても、計数結果を精度良く補正することができる計数装置および計数方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、特定の物理量と信号の数とが線形の関係を有し、前記特定の物理量が一定の場合は略単一周波数となる前記信号を数える計数装置において、入力信号を2値化する2値化手段と、一定の計数期間中に前記2値化手段から出力される2値化信号のランレングスの数を数える信号計数手段と、前記計数期間中の前記2値化信号のランレングスを信号のランレングス分が入力される度に測定するランレングス測定手段と、このランレングス測定手段の測定結果から前記計数期間中の2値化信号のランレングスの度数分布を、2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスと、2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスの各々について作成する度数分布作成手段と、前記第1のランレングスの度数分布から前記第1のランレングスの分布の代表値THを算出すると共に、前記第2のランレングスの度数分布から前記第2のランレングスの分布の代表値TLを算出する代表値算出手段と、前記ランレングス測定手段の測定結果と前記代表値算出手段の算出結果から、前記代表値THの0倍以上1倍未満の長さである第1のランレングスの数の総和NsHと、前記代表値TLの0倍以上1倍未満の長さである第2のランレングスの数の総和NsLと、{TH+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TH+(n+0.5)×(TH+TL)}未満(nは1以上の自然数)の長さである第1のランレングスの数の総和NwnHと、{TL+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TL+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第2のランレングスの数の総和NwnLとを求め、これらの度数NsH,NsL,NwnH,NwnLに基づいて前記信号計数手段の計数結果を補正し前記入力信号の数を算出する補正値算出手段とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の計数装置の1構成例において、前記補正値算出手段は、前記信号計数手段の計数結果をN、前記第1のランレングスと前記第2のランレングスとの和がとり得る最大値を(TH+TL)maxとしたとき、補正後の計数結果N’を、
【数1】
により求めることを特徴とするものである。
また、本発明の計数装置の1構成例において、前記代表値TH,TLは、中央値、最頻値、平均値、階級値と度数との積が最大となる階級値、階級値のa乗(0<a<1)と度数との積が最大となる階級値のうちのいずれか1つである。
また、本発明の計数装置の1構成例において、前記第1のランレングスの数の総和NsHを求めるしきい値は、前記代表値THの0倍以上0.5倍未満、あるいは前記代表値THの0倍以上(TH+TL)/4未満であり、前記第2のランレングスの数の総和NsLを求めるしきい値は、前記代表値TLの0倍以上0.5倍未満、あるいは前記代表値TLの0倍以上(TH+TL)/4未満である。
【0014】
また、本発明は、特定の物理量と信号の数とが線形の関係を有し、前記特定の物理量が一定の場合は略単一周波数となる前記信号を数える計数方法において、入力信号を2値化する2値化ステップと、一定の計数期間中に前記2値化ステップで得られた2値化信号のランレングスの数を数える信号計数ステップと、前記計数期間中の前記2値化信号のランレングスを信号のランレングス分が入力される度に測定するランレングス測定ステップと、このランレングス測定ステップの測定結果から前記計数期間中の2値化信号のランレングスの度数分布を、2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスと、2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスの各々について作成する度数分布作成ステップと、前記第1のランレングスの度数分布から前記第1のランレングスの分布の代表値THを算出すると共に、前記第2のランレングスの度数分布から前記第2のランレングスの分布の代表値TLを算出する代表値算出ステップと、前記ランレングス測定ステップの測定結果と前記代表値算出ステップの算出結果から、前記代表値THの0倍以上1倍未満の長さである第1のランレングスの数の総和NsHと、前記代表値TLの0倍以上1倍未満の長さである第2のランレングスの数の総和NsLと、{TH+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TH+(n+0.5)×(TH+TL)}未満(nは1以上の自然数)の長さである第1のランレングスの数の総和NwnHと、{TL+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TL+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第2のランレングスの数の総和NwnLとを求め、これらの度数NsH,NsL,NwnH,NwnLに基づいて前記信号計数ステップの計数結果を補正し前記入力信号の数を算出する補正値算出ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の計数方法の1構成例において、前記補正値算出ステップは、前記信号計数ステップの計数結果をN、前記第1のランレングスと前記第2のランレングスとの和がとり得る最大値を(TH+TL)maxとしたとき、補正後の計数結果N’を、
【数2】
により求めることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、入力信号を2値化し、一定の計数期間中に2値化手段から出力される2値化信号のランレングスの数を数え、計数期間中の2値化信号のランレングスを測定し、この測定結果から計数期間中の2値化信号のランレングスの度数分布を、2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスと、2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスの各々について作成し、第1のランレングスの度数分布から第1のランレングスの分布の代表値THを算出すると共に、第2のランレングスの度数分布から第2のランレングスの分布の代表値TLを算出し、代表値THの0倍以上1倍未満の長さである第1のランレングスの数の総和NsHと、代表値TLの0倍以上1倍未満の長さである第2のランレングスの数の総和NsLと、{TH+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TH+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第1のランレングスの数の総和NwnHと、{TL+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TL+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第2のランレングスの数の総和NwnLとを求め、これらの度数NsH,NsL,NwnH,NwnLに基づいて信号計数手段の計数結果を補正することにより、計数装置に入力される信号に高周波のノイズが連続して発生し、且つ入力信号の波形が時間的に非対称の場合であっても、計数誤差を高精度に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る計数装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る計数装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係る計数装置の計数結果補正部の構成の1例を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る計数装置のカウンタの動作を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る計数装置のランレングス測定部の動作を説明するための図である。
【図6】計数装置に入力される信号に高周波のノイズが混入した場合のモードホップパルスの周期の度数分布の1例を示す図である。
【図7】モードホップパルスのランレングスの度数分布の1例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る計数装置の計数結果の補正原理を説明するための図である。
【図9】従来のレーザ計測器の構成を示すブロック図である。
【図10】図9のレーザ計測器における半導体レーザの発振波長の時間変化の1例を示す図である。
【図11】時間的に非対称になった干渉波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る計数装置の構成を示すブロック図、図2は計数装置の動作を示すフローチャートである。計数装置1は、2値化部11と、論理積演算部(AND)12と、カウンタ13と、計数結果補正部14と、記憶部15とから構成される。カウンタ13は、信号計数手段を構成している。
【0019】
図3は計数結果補正部14の構成の1例を示すブロック図である。計数結果補正部14は、ランレングス測定部140と、度数分布作成部141と、代表値算出部142と、補正値算出部143とから構成される。
以下、本実施の形態では、計数装置1を図9に示したような自己結合型のレーザ計測器に適用し、自己結合信号であるモードホップパルス(MHP)の数を数える場合を例に挙げて説明する。
【0020】
図4(A)〜図4(D)はカウンタ13の動作を説明するための図であり、図4(A)は計数装置1への入力信号の波形、すなわちMHPの波形を模式的に示す図、図4(B)は図4(A)に対応する2値化部11の出力を示す図、図4(C)は計数装置1に入力されるゲート信号GSを示す図、図4(D)は図4(B)に対応するカウンタ13の計数結果を示す図である。
【0021】
まず、計数装置1の2値化部11は、図4(A)に示す入力信号がハイレベル(H)かローレベル(L)かを判定して、図4(B)のような判定結果を出力する。このとき、2値化部11は、入力信号の電圧が上昇してしきい値TH1以上になったときにハイレベルと判定し、入力信号の電圧が下降してしきい値TH2(TH2<TH1)以下になったときにローレベルと判定することにより、入力信号を2値化する。
【0022】
AND12は、2値化部11の出力と図4(C)のようなゲート信号GSとの論理積演算の結果を出力し、カウンタ13は、AND12の出力(2値化信号)の立ち上がりと立ち下がりをカウントする(図4(D))。ここで、ゲート信号GSは、計数期間(例えば計数装置1を自己結合型のレーザ計測器に適用する場合であれば、第1の発振期間P1または第2の発振期間P2)の先頭で立ち上がり、計数期間の終わりで立ち下がる信号である。したがって、カウンタ13は、計数期間中のAND12の出力の立ち上がりエッジの数と立ち下がりエッジの数(すなわち、MHPのランレングスの数)を数えることになる(図2ステップS100)。
【0023】
図5は計数結果補正部14のランレングス測定部140の動作を説明するための図である。ランレングス測定部140は、計数期間中のMHPのランレングスを測定する(図2ステップS101)。すなわち、ランレングス測定部140は、計数期間中のAND12の出力をしきい値TH3と比較することにより、AND12の出力の立ち上がりを検出すると共に、AND12の出力をしきい値TH4と比較することにより、AND12の出力の立ち下がりを検出する。そして、ランレングス測定部140は、AND12の出力の立ち上がりから次の立ち下がりまでの時間tudを測定し、またAND12の出力の立ち下がりから次の立ち上がりまでの時間tduを測定することにより、計数期間中のAND12の出力のランレングス(すなわち、MHPのランレングス)を測定する。このように、MHPのランレングスとは、時間tud,tduのことである。ランレングス測定部140は、以上のような測定をAND12の出力の立ち上がりまたは立ち下がりのどちらかが検出される度に行う。
記憶部15は、カウンタ13の計数結果とランレングス測定部140の測定結果を記憶する。
【0024】
ゲート信号GSが立ち下がり、計数期間が終了した後、計数結果補正部14の度数分布作成部141は、記憶部15に記憶されたランレングス測定部140の測定結果から計数期間中のMHPのランレングスtud,tduの度数分布を作成する(図2ステップS102)。このとき、度数分布作成部141は、計数期間中のMHPのランレングスの度数分布を、MHPの立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスtudと、MHPの立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスtduの各々について作成する。
【0025】
続いて、計数結果補正部14の代表値算出部142は、度数分布作成部141が作成した第1のランレングスtudの度数分布から第1のランレングスtudの代表値THを算出すると共に、度数分布作成部141が作成した第2のランレングスtduの度数分布から第2のランレングスtduの代表値TLを算出する(図2ステップS103)。ここでは、代表値算出部142は、第1のランレングスtudの最頻値や中央値、あるいは平均値を代表値THとすればよく、階級値と度数との積が最大となる階級値を代表値THとしてもよいし、階級値のa乗(0<a<1)と度数との積が最大となる階級値を代表値THとしてもよい。第2のランレングスtduの代表値TLについても代表値THと同様にして求めることができる。表1に、度数分布の数値例およびこの数値例における階級値と度数との積を示す。
【0026】
【表1】
【0027】
表1の例では、度数が最大である最頻値(階級値)は1である。これに対して、階級値と度数との積が最大となる階級値は6であり、最頻値とは異なる値になっている。階級値と度数との積が最大となる階級値を代表値TH,TLとする理由は、特許文献3に開示されているので、説明は省略する。代表値算出部142が算出した代表値TH,TLは、記憶部15に格納される。代表値算出部142は、このような代表値TH,TLの算出を、度数分布作成部141によって度数分布が作成される度に行う。
【0028】
計数結果補正部14の補正値算出部143は、ランレングス測定部140の測定結果と代表値算出部142の算出結果から、代表値THの0倍以上1倍未満の長さである第1のランレングスtudの数の総和NsHと、代表値TLの0倍以上1倍未満の長さである第2のランレングスtduの数の総和NsLと、{TH+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TH+(n+0.5)×(TH+TL)}未満(nは1以上nmax以下の自然数)の長さである第1のランレングスtudの数の総和NwnHと、{TL+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TL+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第2のランレングスtduの数の総和NwnLとを求め、カウンタ13の計数結果を次式のように補正する(図2ステップS104)。
【0029】
【数3】
【0030】
式(1)において、Nはカウンタ13の計数結果であるMHPのランレングスの数、N’は補正後に得られるMHPの数、(TH+TL)maxは第1のランレングスtudと第2のランレングスtduとの和がとり得る最大値である。第1のランレングスtudの数の総和NsHを求めるしきい値は、代表値THの0倍以上0.5倍未満でもよいし、代表値THの0倍以上(TH+TL)/4未満でもよい。同様に、第2のランレングスtduの数の総和NsLを求めるしきい値は、代表値TLの0倍以上0.5倍未満でもよいし、代表値TLの0倍以上(TH+TL)/4未満でもよい。計数装置1は、以上のような処理を計数期間ごとに行う。
【0031】
次に、計数装置1のカウンタ13の計数結果の補正原理を説明する。式(1)に示した計数結果の補正の基本原理は、特許文献2に開示された計数結果の補正原理と同じである。しかしながら、特許文献2に開示された補正原理によると、計数装置に入力される信号にMHPよりも高周波のバーストノイズが混入した場合、カウンタ13の計数結果を正しく補正できない場合がある。
【0032】
図6は計数装置に入力される信号に高周波のノイズが混入した場合のMHPの周期の度数分布の1例を示す図である。入力信号に高周波のノイズが混入した場合、MHPの周期の度数分布は、図6に示すように、MHPの本来の周期Taに度数の極大値を持つ分布170に加え、周期Taのおよそ半分の周期に度数の極大値を持つ分布171やノイズの短い周期172が現れる。そして、混入した高周波のノイズのためにこれらの度数の極大値はやや時間が短い方へとシフトする傾向にある。さらに、高周波のノイズは、連続で混入することがある。特許文献2に開示された従来の計数装置では、このような高周波の連続したノイズが混入すると、MHPの計数結果を十分に補正することができない。このような問題については、特許文献3で詳細に説明されている。
【0033】
そこで、本実施の形態では、MHPの周期の代表値ではなく、特許文献3と同様にMHPのランレングスの代表値T0を用いて計数結果を補正するようにした。MHPのランレングスの度数分布の例を図7に示す。図7から明らかなように、MHPのランレングスの度数分布を求めると、計数装置1に入力される信号に高周波のノイズが混入している場合であっても、0.5T0付近に度数の極大値が現れることがなくなる。つまり、ランレングスの数の総和NsH,NsLを求めるしきい値付近の度数の極大値が消えたことになるので、上記のNsH,NsLを正しく求めることができ、補正の誤差を抑制することができる。
【0034】
ただし、特許文献3に開示された計数装置では、MHPの波形が時間的に非対称になると、MHPのランレングスの度数分布は、図7、図8(A)に示したような形ではなく、図8(B)に示すようにTHに最頻値をもつ形と図8(C)に示すようにTLに最頻値をもつ形になる。MHPの波形が時間的に対称の場合、ノイズのためにMHPの波形に欠落が生じると、T0の奇数倍のランレングスが発生する。これにより、図8(A)の例では、3T0、5T0に度数の極大値が生じている。
【0035】
一方、図11(A)に示したようにMHPの波形が時間的に非対称の場合、MHPの波形に欠落が生じると、T0の奇数倍ではなく、THに(TH+TL)の整数倍の値を足した長さのランレングスと、TLに(TH+TL)の整数倍の値を足した長さのランレングスとが発生する。MHPの波形に欠落が生じて、2n+1個のランレングスが1個になった場合のランレングスは、第1のランレングスtudの場合、TH+n×(TH+TL)となり、第2のランレングスtduの場合、TL+n×(TH+TL)となる。MHPには様々な周波数のノイズが重畳しているため、ランレングスはTH+n×(TH+TL)を中心としたガウス分布およびTL+n×(TH+TL)を中心としたガウス分布になる。これにより、図8(B)の例では、TH+(TH+TL)とTH+2(TH+TL)に度数の極大値が生じ、図8(C)の例では、TL+(TH+TL)とTL+2(TH+TL)に度数の極大値が生じている。
【0036】
そこで、本実施の形態では、第1のランレングスtudの数の総和NwnHを求めるしきい値を、{TH+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TH+(n+0.5)×(TH+TL)}未満とし、第2のランレングスtduの数の総和NwnLを求めるしきい値を、{TL+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TL+(n+0.5)×(TH+TL)}未満とする。これにより、(NwnH+NwnL)を正しく求めることができ、補正の誤差を抑制することができる。
【0037】
図8(D)の例では、代表値THの0倍以上1倍未満である第1のランレングスtudの数の総和NsHと、{TH+0.5×(TH+TL)}以上{TH+1.5×(TH+TL)}未満である第1のランレングスtudの数の総和Nw1Hとを示し、図8(E)の例では、代表値TLの0倍以上1倍未満である第2のランレングスtduの数の総和NsLと、{TL+0.5×(TH+TL)}以上{TL+1.5×(TH+TL)}未満である第2のランレングスtduの数の総和Nw1Lとを示している。以上が、式(1)に示した計数結果の補正原理である。なお、式(1)の右辺を1/2倍している理由は、MHPのランレングスの数をMHPの数に変換するためである。
【0038】
以上のように、本実施の形態では、計数期間中のMHPのランレングスの数をカウンタ13で数え、計数期間中のMHPのランレングスを測定し、この測定結果から計数期間中のMHPのランレングスの度数分布を、MHPの立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスと、MHPの立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスの各々について作成し、第1のランレングスの度数分布から第1のランレングスの分布の代表値THを算出すると共に、第2のランレングスの度数分布から第2のランレングスの分布の代表値TLを算出し、代表値THの0倍以上1倍未満の長さである第1のランレングスの数の総和NsHと、代表値TLの0倍以上1倍未満の長さである第2のランレングスの数の総和NsLと、{TH+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TH+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第1のランレングスの数の総和NwnHと、{TL+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TL+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第2のランレングスの数の総和NwnLとを求め、これらの度数NsH,NsL,NwnH,NwnLに基づいてカウンタ13の計数結果を補正することにより、計数装置に入力される信号にMHPよりも高周波のノイズが連続して発生し、且つMHPの波形が時間的に非対称の場合であっても、MHPの計数誤差を高精度に補正することができる。
【0039】
なお、本実施の形態において計数装置1は、例えばCPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このようなコンピュータを動作させるためのプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、メモリカードなどの記録媒体に記録された状態で提供される。CPUは、読み込んだプログラムを記憶装置に書き込み、このプログラムに従って本実施の形態で説明した処理を実行する。
【0040】
また、本実施の形態では、本発明の計数装置を自己結合型のレーザ計測器に適用した場合について説明したが、これに限るものではなく、本発明の計数装置は光電センサなどの他の分野にも適用することができる。本発明の計数装置が有効な場合は、計数の対象となる信号の数が特定の物理量(本実施の形態の場合は半導体レーザと物体との距離、および物体の変位)と線形の関係を有し、特定の物理量が一定の場合は信号が略単一周波数となる場合である。
また、信号が単一周波数でなくても、特定の物理量が計数期間と比較して十分低い周波数で、例えば1/10以下の周波数で振動している対象物の速度のように周期分布の広がりが小さい場合も略単一周波数として本発明の計数装置は有効である。
【0041】
また、本実施の形態では、計測装置を適用する物理量センサの例として、特許文献1に開示されているように計数装置の計数結果から物体との距離および物体の速度を算出するレーザ計測器の例を挙げて説明したが、これに限るものではなく、本発明を他の物理量センサに適用してもよい。すなわち、計数装置の計数結果から物体の張力を算出してもよいし、計数装置の計数結果から物体との振動周波数を算出するようにしてもよい。物理量センサが算出する物理量が様々なことから明らかなように、上記の特定の物理量と、物理量センサが算出する物理量とは同じ場合もあるが、異なる場合もある。
なお、本発明における入力信号は、連続的に変化する量(自己結合の場合、自己結合信号)上のイベントや波動(自己結合の場合、干渉縞)のことを指す。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、信号の数を数える計数装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…計数装置、11…2値化部、12…論理積演算部、13…カウンタ、14…計数結果補正部、15…記憶部、140…ランレングス測定部、141…度数分布作成部、142…代表値算出部、143…補正値算出部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号の数を数える計数装置および計数方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体レーザの自己結合効果を用いた波長変調型のレーザ計測器が提案されている(特許文献1参照)。このレーザ計測器の構成を図9に示す。図9のレーザ計測器は、物体210にレーザ光を放射する半導体レーザ201と、半導体レーザ201の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード202と、半導体レーザ201からの光を集光して物体210に照射すると共に、物体210からの戻り光を集光して半導体レーザ201に入射させるレンズ203と、半導体レーザ201に発振波長が連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返させるレーザドライバ204と、フォトダイオード202の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅部205と、電流−電圧変換増幅部205の出力電圧を2回微分する信号抽出回路206と、信号抽出回路206の出力電圧に含まれるモードホップパルス(以下、MHPとする)の数を数える計数装置207と、物体210との距離および物体210の速度を算出する演算装置208と、演算装置208の算出結果を表示する表示装置209とを有する。
【0003】
レーザドライバ204は、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ201に供給する。これにより、半導体レーザ201は、発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返すように駆動される。図10は、半導体レーザ201の発振波長の時間変化を示す図である。図10において、P1は第1の発振期間、P2は第2の発振期間、λaは各期間における発振波長の最小値、λbは各期間における発振波長の最大値、Ttは三角波の周期である。
【0004】
半導体レーザ201から出射したレーザ光は、レンズ203によって集光され、物体210に入射する。物体210で反射された光は、レンズ203によって集光され、半導体レーザ201に入射する。フォトダイオード202は、半導体レーザ201の光出力を電流に変換する。電流−電圧変換増幅部205は、フォトダイオード202の出力電流を電圧に変換して増幅し、信号抽出回路206は、電流−電圧変換増幅部205の出力電圧を2回微分する。計数装置207は、信号抽出回路206の出力電圧に含まれるMHPの数を第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々について数える。演算装置208は、半導体レーザ1の最小発振波長λaと最大発振波長λbと第1の発振期間P1におけるMHPの数と第2の発振期間P2におけるMHPの数に基づいて、物体210との距離および物体210の速度を算出する。このような自己結合型のレーザ計測器の技術を利用して、MHPの数を測定すれば、このMHPの数から物体の振動周波数を算出することが可能である。
【0005】
以上のようなレーザ計測器では、例えば外乱光などのノイズをMHPとして数えたり、信号の歯抜けのために数えられないMHPがあったりして、計数装置で数えるMHPの数に誤差が生じ、算出した距離や振動周波数等の物理量に誤差が生じるという問題点があった。
そこで、発明者は、計数期間中のMHPの周期を測定し、測定結果から計数期間中の周期の度数分布を作成し、度数分布からMHPの周期の代表値を算出し、度数分布から、代表値の第1の所定数倍以下である階級の度数の総和Nsと、代表値の第2の所定数倍以上である階級の度数の総和Nwとを求め、これらの度数NsとNwに基づいてMHPの計数結果を補正することにより、計数時の欠落や過剰な計数の影響を除去することができる計数装置を提案した(特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2に開示された計数装置によれば、SN(Signal to Noise ratio)が極端に低下しない限り、概ね良好な補正を行うことができる。
しかしながら、特許文献2に開示された計数装置では、短距離測定で信号強度がヒステリシス幅と比較して極端に強い場合、計数装置に入力される信号に2値化のしきい値付近でMHPよりも高周波のノイズによってチャタリングが生じ、短い周期の信号やMHPの本来の周期の半分程度の周期の信号が多発する場合がある。この場合、MHPの本来の周期よりも短い周期が周期の分布の代表値になってしまうので、MHPの計数結果を正しく補正することができず、MHPの計数結果が本来の値よりも例えば数倍大きくなってしまうという問題点があった。
【0007】
そこで、発明者は、さらに、入力信号に高周波のノイズが連続して発生している場合であっても、計数誤差を補正することができる計数装置を提案した(特許文献3参照)。特許文献3に開示された計数装置は、計数期間中の入力信号のランレングスの数を数え、計数期間中の入力信号のランレングスを測定し、この測定結果から計数期間中の入力信号のランレングスの度数分布を作成し、この度数分布から入力信号のランレングスの分布の代表値を算出し、代表値の0.5倍未満であるランレングスの数の総和Nsと、代表値の2n倍以上(2n+2)倍未満(nは1以上の自然数)であるランレングスの数の総和Nwnとを求め、これらの度数NsとNwnに基づいてMHPの計数結果を補正するようにしたものである。
【0008】
ところで、MHPなどの干渉波の波形は、搬送波除去回路の特性や対象物の状態によって時間的に非対称になることがある(特許文献4参照)。図11(A)はこのように非対称になった干渉波形を示す図であり、図11(B)は図11(A)の波形を2値化した結果を示す図である。図11(A)におけるTH1,TH2は2値化のためのしきい値である。このように干渉波形が時間的に非対称になると、2値化信号のデューティー比が0.5にならなくなる。これにより、特許文献3に開示された計数装置では、計数補正の精度が低下するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−313080号公報
【特許文献2】特開2009−47676号公報
【特許文献3】特開2011−33525号公報
【特許文献4】特許第3282746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献3に開示された計数装置によれば、入力信号に高周波のノイズが連続して発生している場合であっても、計数誤差を補正することができる。
しかしながら、特許文献3に開示された計数装置では、干渉波形が時間的に非対称になると、干渉波形を2値化した信号のデューティー比が0.5にならず、計数補正の精度が低下するという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、計数装置に入力される信号が時間的に非対称の場合であっても、計数結果を精度良く補正することができる計数装置および計数方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、特定の物理量と信号の数とが線形の関係を有し、前記特定の物理量が一定の場合は略単一周波数となる前記信号を数える計数装置において、入力信号を2値化する2値化手段と、一定の計数期間中に前記2値化手段から出力される2値化信号のランレングスの数を数える信号計数手段と、前記計数期間中の前記2値化信号のランレングスを信号のランレングス分が入力される度に測定するランレングス測定手段と、このランレングス測定手段の測定結果から前記計数期間中の2値化信号のランレングスの度数分布を、2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスと、2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスの各々について作成する度数分布作成手段と、前記第1のランレングスの度数分布から前記第1のランレングスの分布の代表値THを算出すると共に、前記第2のランレングスの度数分布から前記第2のランレングスの分布の代表値TLを算出する代表値算出手段と、前記ランレングス測定手段の測定結果と前記代表値算出手段の算出結果から、前記代表値THの0倍以上1倍未満の長さである第1のランレングスの数の総和NsHと、前記代表値TLの0倍以上1倍未満の長さである第2のランレングスの数の総和NsLと、{TH+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TH+(n+0.5)×(TH+TL)}未満(nは1以上の自然数)の長さである第1のランレングスの数の総和NwnHと、{TL+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TL+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第2のランレングスの数の総和NwnLとを求め、これらの度数NsH,NsL,NwnH,NwnLに基づいて前記信号計数手段の計数結果を補正し前記入力信号の数を算出する補正値算出手段とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の計数装置の1構成例において、前記補正値算出手段は、前記信号計数手段の計数結果をN、前記第1のランレングスと前記第2のランレングスとの和がとり得る最大値を(TH+TL)maxとしたとき、補正後の計数結果N’を、
【数1】
により求めることを特徴とするものである。
また、本発明の計数装置の1構成例において、前記代表値TH,TLは、中央値、最頻値、平均値、階級値と度数との積が最大となる階級値、階級値のa乗(0<a<1)と度数との積が最大となる階級値のうちのいずれか1つである。
また、本発明の計数装置の1構成例において、前記第1のランレングスの数の総和NsHを求めるしきい値は、前記代表値THの0倍以上0.5倍未満、あるいは前記代表値THの0倍以上(TH+TL)/4未満であり、前記第2のランレングスの数の総和NsLを求めるしきい値は、前記代表値TLの0倍以上0.5倍未満、あるいは前記代表値TLの0倍以上(TH+TL)/4未満である。
【0014】
また、本発明は、特定の物理量と信号の数とが線形の関係を有し、前記特定の物理量が一定の場合は略単一周波数となる前記信号を数える計数方法において、入力信号を2値化する2値化ステップと、一定の計数期間中に前記2値化ステップで得られた2値化信号のランレングスの数を数える信号計数ステップと、前記計数期間中の前記2値化信号のランレングスを信号のランレングス分が入力される度に測定するランレングス測定ステップと、このランレングス測定ステップの測定結果から前記計数期間中の2値化信号のランレングスの度数分布を、2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスと、2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスの各々について作成する度数分布作成ステップと、前記第1のランレングスの度数分布から前記第1のランレングスの分布の代表値THを算出すると共に、前記第2のランレングスの度数分布から前記第2のランレングスの分布の代表値TLを算出する代表値算出ステップと、前記ランレングス測定ステップの測定結果と前記代表値算出ステップの算出結果から、前記代表値THの0倍以上1倍未満の長さである第1のランレングスの数の総和NsHと、前記代表値TLの0倍以上1倍未満の長さである第2のランレングスの数の総和NsLと、{TH+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TH+(n+0.5)×(TH+TL)}未満(nは1以上の自然数)の長さである第1のランレングスの数の総和NwnHと、{TL+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TL+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第2のランレングスの数の総和NwnLとを求め、これらの度数NsH,NsL,NwnH,NwnLに基づいて前記信号計数ステップの計数結果を補正し前記入力信号の数を算出する補正値算出ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の計数方法の1構成例において、前記補正値算出ステップは、前記信号計数ステップの計数結果をN、前記第1のランレングスと前記第2のランレングスとの和がとり得る最大値を(TH+TL)maxとしたとき、補正後の計数結果N’を、
【数2】
により求めることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、入力信号を2値化し、一定の計数期間中に2値化手段から出力される2値化信号のランレングスの数を数え、計数期間中の2値化信号のランレングスを測定し、この測定結果から計数期間中の2値化信号のランレングスの度数分布を、2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスと、2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスの各々について作成し、第1のランレングスの度数分布から第1のランレングスの分布の代表値THを算出すると共に、第2のランレングスの度数分布から第2のランレングスの分布の代表値TLを算出し、代表値THの0倍以上1倍未満の長さである第1のランレングスの数の総和NsHと、代表値TLの0倍以上1倍未満の長さである第2のランレングスの数の総和NsLと、{TH+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TH+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第1のランレングスの数の総和NwnHと、{TL+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TL+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第2のランレングスの数の総和NwnLとを求め、これらの度数NsH,NsL,NwnH,NwnLに基づいて信号計数手段の計数結果を補正することにより、計数装置に入力される信号に高周波のノイズが連続して発生し、且つ入力信号の波形が時間的に非対称の場合であっても、計数誤差を高精度に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る計数装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る計数装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係る計数装置の計数結果補正部の構成の1例を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る計数装置のカウンタの動作を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る計数装置のランレングス測定部の動作を説明するための図である。
【図6】計数装置に入力される信号に高周波のノイズが混入した場合のモードホップパルスの周期の度数分布の1例を示す図である。
【図7】モードホップパルスのランレングスの度数分布の1例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る計数装置の計数結果の補正原理を説明するための図である。
【図9】従来のレーザ計測器の構成を示すブロック図である。
【図10】図9のレーザ計測器における半導体レーザの発振波長の時間変化の1例を示す図である。
【図11】時間的に非対称になった干渉波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る計数装置の構成を示すブロック図、図2は計数装置の動作を示すフローチャートである。計数装置1は、2値化部11と、論理積演算部(AND)12と、カウンタ13と、計数結果補正部14と、記憶部15とから構成される。カウンタ13は、信号計数手段を構成している。
【0019】
図3は計数結果補正部14の構成の1例を示すブロック図である。計数結果補正部14は、ランレングス測定部140と、度数分布作成部141と、代表値算出部142と、補正値算出部143とから構成される。
以下、本実施の形態では、計数装置1を図9に示したような自己結合型のレーザ計測器に適用し、自己結合信号であるモードホップパルス(MHP)の数を数える場合を例に挙げて説明する。
【0020】
図4(A)〜図4(D)はカウンタ13の動作を説明するための図であり、図4(A)は計数装置1への入力信号の波形、すなわちMHPの波形を模式的に示す図、図4(B)は図4(A)に対応する2値化部11の出力を示す図、図4(C)は計数装置1に入力されるゲート信号GSを示す図、図4(D)は図4(B)に対応するカウンタ13の計数結果を示す図である。
【0021】
まず、計数装置1の2値化部11は、図4(A)に示す入力信号がハイレベル(H)かローレベル(L)かを判定して、図4(B)のような判定結果を出力する。このとき、2値化部11は、入力信号の電圧が上昇してしきい値TH1以上になったときにハイレベルと判定し、入力信号の電圧が下降してしきい値TH2(TH2<TH1)以下になったときにローレベルと判定することにより、入力信号を2値化する。
【0022】
AND12は、2値化部11の出力と図4(C)のようなゲート信号GSとの論理積演算の結果を出力し、カウンタ13は、AND12の出力(2値化信号)の立ち上がりと立ち下がりをカウントする(図4(D))。ここで、ゲート信号GSは、計数期間(例えば計数装置1を自己結合型のレーザ計測器に適用する場合であれば、第1の発振期間P1または第2の発振期間P2)の先頭で立ち上がり、計数期間の終わりで立ち下がる信号である。したがって、カウンタ13は、計数期間中のAND12の出力の立ち上がりエッジの数と立ち下がりエッジの数(すなわち、MHPのランレングスの数)を数えることになる(図2ステップS100)。
【0023】
図5は計数結果補正部14のランレングス測定部140の動作を説明するための図である。ランレングス測定部140は、計数期間中のMHPのランレングスを測定する(図2ステップS101)。すなわち、ランレングス測定部140は、計数期間中のAND12の出力をしきい値TH3と比較することにより、AND12の出力の立ち上がりを検出すると共に、AND12の出力をしきい値TH4と比較することにより、AND12の出力の立ち下がりを検出する。そして、ランレングス測定部140は、AND12の出力の立ち上がりから次の立ち下がりまでの時間tudを測定し、またAND12の出力の立ち下がりから次の立ち上がりまでの時間tduを測定することにより、計数期間中のAND12の出力のランレングス(すなわち、MHPのランレングス)を測定する。このように、MHPのランレングスとは、時間tud,tduのことである。ランレングス測定部140は、以上のような測定をAND12の出力の立ち上がりまたは立ち下がりのどちらかが検出される度に行う。
記憶部15は、カウンタ13の計数結果とランレングス測定部140の測定結果を記憶する。
【0024】
ゲート信号GSが立ち下がり、計数期間が終了した後、計数結果補正部14の度数分布作成部141は、記憶部15に記憶されたランレングス測定部140の測定結果から計数期間中のMHPのランレングスtud,tduの度数分布を作成する(図2ステップS102)。このとき、度数分布作成部141は、計数期間中のMHPのランレングスの度数分布を、MHPの立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスtudと、MHPの立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスtduの各々について作成する。
【0025】
続いて、計数結果補正部14の代表値算出部142は、度数分布作成部141が作成した第1のランレングスtudの度数分布から第1のランレングスtudの代表値THを算出すると共に、度数分布作成部141が作成した第2のランレングスtduの度数分布から第2のランレングスtduの代表値TLを算出する(図2ステップS103)。ここでは、代表値算出部142は、第1のランレングスtudの最頻値や中央値、あるいは平均値を代表値THとすればよく、階級値と度数との積が最大となる階級値を代表値THとしてもよいし、階級値のa乗(0<a<1)と度数との積が最大となる階級値を代表値THとしてもよい。第2のランレングスtduの代表値TLについても代表値THと同様にして求めることができる。表1に、度数分布の数値例およびこの数値例における階級値と度数との積を示す。
【0026】
【表1】
【0027】
表1の例では、度数が最大である最頻値(階級値)は1である。これに対して、階級値と度数との積が最大となる階級値は6であり、最頻値とは異なる値になっている。階級値と度数との積が最大となる階級値を代表値TH,TLとする理由は、特許文献3に開示されているので、説明は省略する。代表値算出部142が算出した代表値TH,TLは、記憶部15に格納される。代表値算出部142は、このような代表値TH,TLの算出を、度数分布作成部141によって度数分布が作成される度に行う。
【0028】
計数結果補正部14の補正値算出部143は、ランレングス測定部140の測定結果と代表値算出部142の算出結果から、代表値THの0倍以上1倍未満の長さである第1のランレングスtudの数の総和NsHと、代表値TLの0倍以上1倍未満の長さである第2のランレングスtduの数の総和NsLと、{TH+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TH+(n+0.5)×(TH+TL)}未満(nは1以上nmax以下の自然数)の長さである第1のランレングスtudの数の総和NwnHと、{TL+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TL+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第2のランレングスtduの数の総和NwnLとを求め、カウンタ13の計数結果を次式のように補正する(図2ステップS104)。
【0029】
【数3】
【0030】
式(1)において、Nはカウンタ13の計数結果であるMHPのランレングスの数、N’は補正後に得られるMHPの数、(TH+TL)maxは第1のランレングスtudと第2のランレングスtduとの和がとり得る最大値である。第1のランレングスtudの数の総和NsHを求めるしきい値は、代表値THの0倍以上0.5倍未満でもよいし、代表値THの0倍以上(TH+TL)/4未満でもよい。同様に、第2のランレングスtduの数の総和NsLを求めるしきい値は、代表値TLの0倍以上0.5倍未満でもよいし、代表値TLの0倍以上(TH+TL)/4未満でもよい。計数装置1は、以上のような処理を計数期間ごとに行う。
【0031】
次に、計数装置1のカウンタ13の計数結果の補正原理を説明する。式(1)に示した計数結果の補正の基本原理は、特許文献2に開示された計数結果の補正原理と同じである。しかしながら、特許文献2に開示された補正原理によると、計数装置に入力される信号にMHPよりも高周波のバーストノイズが混入した場合、カウンタ13の計数結果を正しく補正できない場合がある。
【0032】
図6は計数装置に入力される信号に高周波のノイズが混入した場合のMHPの周期の度数分布の1例を示す図である。入力信号に高周波のノイズが混入した場合、MHPの周期の度数分布は、図6に示すように、MHPの本来の周期Taに度数の極大値を持つ分布170に加え、周期Taのおよそ半分の周期に度数の極大値を持つ分布171やノイズの短い周期172が現れる。そして、混入した高周波のノイズのためにこれらの度数の極大値はやや時間が短い方へとシフトする傾向にある。さらに、高周波のノイズは、連続で混入することがある。特許文献2に開示された従来の計数装置では、このような高周波の連続したノイズが混入すると、MHPの計数結果を十分に補正することができない。このような問題については、特許文献3で詳細に説明されている。
【0033】
そこで、本実施の形態では、MHPの周期の代表値ではなく、特許文献3と同様にMHPのランレングスの代表値T0を用いて計数結果を補正するようにした。MHPのランレングスの度数分布の例を図7に示す。図7から明らかなように、MHPのランレングスの度数分布を求めると、計数装置1に入力される信号に高周波のノイズが混入している場合であっても、0.5T0付近に度数の極大値が現れることがなくなる。つまり、ランレングスの数の総和NsH,NsLを求めるしきい値付近の度数の極大値が消えたことになるので、上記のNsH,NsLを正しく求めることができ、補正の誤差を抑制することができる。
【0034】
ただし、特許文献3に開示された計数装置では、MHPの波形が時間的に非対称になると、MHPのランレングスの度数分布は、図7、図8(A)に示したような形ではなく、図8(B)に示すようにTHに最頻値をもつ形と図8(C)に示すようにTLに最頻値をもつ形になる。MHPの波形が時間的に対称の場合、ノイズのためにMHPの波形に欠落が生じると、T0の奇数倍のランレングスが発生する。これにより、図8(A)の例では、3T0、5T0に度数の極大値が生じている。
【0035】
一方、図11(A)に示したようにMHPの波形が時間的に非対称の場合、MHPの波形に欠落が生じると、T0の奇数倍ではなく、THに(TH+TL)の整数倍の値を足した長さのランレングスと、TLに(TH+TL)の整数倍の値を足した長さのランレングスとが発生する。MHPの波形に欠落が生じて、2n+1個のランレングスが1個になった場合のランレングスは、第1のランレングスtudの場合、TH+n×(TH+TL)となり、第2のランレングスtduの場合、TL+n×(TH+TL)となる。MHPには様々な周波数のノイズが重畳しているため、ランレングスはTH+n×(TH+TL)を中心としたガウス分布およびTL+n×(TH+TL)を中心としたガウス分布になる。これにより、図8(B)の例では、TH+(TH+TL)とTH+2(TH+TL)に度数の極大値が生じ、図8(C)の例では、TL+(TH+TL)とTL+2(TH+TL)に度数の極大値が生じている。
【0036】
そこで、本実施の形態では、第1のランレングスtudの数の総和NwnHを求めるしきい値を、{TH+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TH+(n+0.5)×(TH+TL)}未満とし、第2のランレングスtduの数の総和NwnLを求めるしきい値を、{TL+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TL+(n+0.5)×(TH+TL)}未満とする。これにより、(NwnH+NwnL)を正しく求めることができ、補正の誤差を抑制することができる。
【0037】
図8(D)の例では、代表値THの0倍以上1倍未満である第1のランレングスtudの数の総和NsHと、{TH+0.5×(TH+TL)}以上{TH+1.5×(TH+TL)}未満である第1のランレングスtudの数の総和Nw1Hとを示し、図8(E)の例では、代表値TLの0倍以上1倍未満である第2のランレングスtduの数の総和NsLと、{TL+0.5×(TH+TL)}以上{TL+1.5×(TH+TL)}未満である第2のランレングスtduの数の総和Nw1Lとを示している。以上が、式(1)に示した計数結果の補正原理である。なお、式(1)の右辺を1/2倍している理由は、MHPのランレングスの数をMHPの数に変換するためである。
【0038】
以上のように、本実施の形態では、計数期間中のMHPのランレングスの数をカウンタ13で数え、計数期間中のMHPのランレングスを測定し、この測定結果から計数期間中のMHPのランレングスの度数分布を、MHPの立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスと、MHPの立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスの各々について作成し、第1のランレングスの度数分布から第1のランレングスの分布の代表値THを算出すると共に、第2のランレングスの度数分布から第2のランレングスの分布の代表値TLを算出し、代表値THの0倍以上1倍未満の長さである第1のランレングスの数の総和NsHと、代表値TLの0倍以上1倍未満の長さである第2のランレングスの数の総和NsLと、{TH+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TH+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第1のランレングスの数の総和NwnHと、{TL+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TL+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第2のランレングスの数の総和NwnLとを求め、これらの度数NsH,NsL,NwnH,NwnLに基づいてカウンタ13の計数結果を補正することにより、計数装置に入力される信号にMHPよりも高周波のノイズが連続して発生し、且つMHPの波形が時間的に非対称の場合であっても、MHPの計数誤差を高精度に補正することができる。
【0039】
なお、本実施の形態において計数装置1は、例えばCPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このようなコンピュータを動作させるためのプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、メモリカードなどの記録媒体に記録された状態で提供される。CPUは、読み込んだプログラムを記憶装置に書き込み、このプログラムに従って本実施の形態で説明した処理を実行する。
【0040】
また、本実施の形態では、本発明の計数装置を自己結合型のレーザ計測器に適用した場合について説明したが、これに限るものではなく、本発明の計数装置は光電センサなどの他の分野にも適用することができる。本発明の計数装置が有効な場合は、計数の対象となる信号の数が特定の物理量(本実施の形態の場合は半導体レーザと物体との距離、および物体の変位)と線形の関係を有し、特定の物理量が一定の場合は信号が略単一周波数となる場合である。
また、信号が単一周波数でなくても、特定の物理量が計数期間と比較して十分低い周波数で、例えば1/10以下の周波数で振動している対象物の速度のように周期分布の広がりが小さい場合も略単一周波数として本発明の計数装置は有効である。
【0041】
また、本実施の形態では、計測装置を適用する物理量センサの例として、特許文献1に開示されているように計数装置の計数結果から物体との距離および物体の速度を算出するレーザ計測器の例を挙げて説明したが、これに限るものではなく、本発明を他の物理量センサに適用してもよい。すなわち、計数装置の計数結果から物体の張力を算出してもよいし、計数装置の計数結果から物体との振動周波数を算出するようにしてもよい。物理量センサが算出する物理量が様々なことから明らかなように、上記の特定の物理量と、物理量センサが算出する物理量とは同じ場合もあるが、異なる場合もある。
なお、本発明における入力信号は、連続的に変化する量(自己結合の場合、自己結合信号)上のイベントや波動(自己結合の場合、干渉縞)のことを指す。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、信号の数を数える計数装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…計数装置、11…2値化部、12…論理積演算部、13…カウンタ、14…計数結果補正部、15…記憶部、140…ランレングス測定部、141…度数分布作成部、142…代表値算出部、143…補正値算出部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の物理量と信号の数とが線形の関係を有し、前記特定の物理量が一定の場合は略単一周波数となる前記信号を数える計数装置において、
入力信号を2値化する2値化手段と、
一定の計数期間中に前記2値化手段から出力される2値化信号のランレングスの数を数える信号計数手段と、
前記計数期間中の前記2値化信号のランレングスを信号のランレングス分が入力される度に測定するランレングス測定手段と、
このランレングス測定手段の測定結果から前記計数期間中の2値化信号のランレングスの度数分布を、2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスと、2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスの各々について作成する度数分布作成手段と、
前記第1のランレングスの度数分布から前記第1のランレングスの分布の代表値THを算出すると共に、前記第2のランレングスの度数分布から前記第2のランレングスの分布の代表値TLを算出する代表値算出手段と、
前記ランレングス測定手段の測定結果と前記代表値算出手段の算出結果から、前記代表値THの0倍以上1倍未満の長さである第1のランレングスの数の総和NsHと、前記代表値TLの0倍以上1倍未満の長さである第2のランレングスの数の総和NsLと、{TH+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TH+(n+0.5)×(TH+TL)}未満(nは1以上の自然数)の長さである第1のランレングスの数の総和NwnHと、{TL+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TL+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第2のランレングスの数の総和NwnLとを求め、これらの度数NsH,NsL,NwnH,NwnLに基づいて前記信号計数手段の計数結果を補正し前記入力信号の数を算出する補正値算出手段とを備えることを特徴とする計数装置。
【請求項2】
請求項1に記載の計数装置において、
前記補正値算出手段は、前記信号計数手段の計数結果をN、前記第1のランレングスと前記第2のランレングスとの和がとり得る最大値を(TH+TL)maxとしたとき、補正後の計数結果N’を、
【数1】
により求めることを特徴とする計数装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の計数装置において、
前記代表値TH,TLは、中央値、最頻値、平均値、階級値と度数との積が最大となる階級値、階級値のa乗(0<a<1)と度数との積が最大となる階級値のうちのいずれか1つであることを特徴とする計数装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の計数装置において、
前記第1のランレングスの数の総和NsHを求めるしきい値は、前記代表値THの0倍以上0.5倍未満、あるいは前記代表値THの0倍以上(TH+TL)/4未満であり、
前記第2のランレングスの数の総和NsLを求めるしきい値は、前記代表値TLの0倍以上0.5倍未満、あるいは前記代表値TLの0倍以上(TH+TL)/4未満であることを特徴とする計数装置。
【請求項5】
特定の物理量と信号の数とが線形の関係を有し、前記特定の物理量が一定の場合は略単一周波数となる前記信号を数える計数方法において、
入力信号を2値化する2値化ステップと、
一定の計数期間中に前記2値化ステップで得られた2値化信号のランレングスの数を数える信号計数ステップと、
前記計数期間中の前記2値化信号のランレングスを信号のランレングス分が入力される度に測定するランレングス測定ステップと、
このランレングス測定ステップの測定結果から前記計数期間中の2値化信号のランレングスの度数分布を、2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスと、2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスの各々について作成する度数分布作成ステップと、
前記第1のランレングスの度数分布から前記第1のランレングスの分布の代表値THを算出すると共に、前記第2のランレングスの度数分布から前記第2のランレングスの分布の代表値TLを算出する代表値算出ステップと、
前記ランレングス測定ステップの測定結果と前記代表値算出ステップの算出結果から、前記代表値THの0倍以上1倍未満の長さである第1のランレングスの数の総和NsHと、前記代表値TLの0倍以上1倍未満の長さである第2のランレングスの数の総和NsLと、{TH+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TH+(n+0.5)×(TH+TL)}未満(nは1以上の自然数)の長さである第1のランレングスの数の総和NwnHと、{TL+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TL+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第2のランレングスの数の総和NwnLとを求め、これらの度数NsH,NsL,NwnH,NwnLに基づいて前記信号計数ステップの計数結果を補正し前記入力信号の数を算出する補正値算出ステップとを備えることを特徴とする計数方法。
【請求項6】
請求項5記載の計数方法において、
前記補正値算出ステップは、前記信号計数ステップの計数結果をN、前記第1のランレングスと前記第2のランレングスとの和がとり得る最大値を(TH+TL)maxとしたとき、補正後の計数結果N’を、
【数2】
により求めることを特徴とする計数方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の計数方法において、
前記代表値TH,TLは、中央値、最頻値、平均値、階級値と度数との積が最大となる階級値、階級値のa乗(0<a<1)と度数との積が最大となる階級値のうちのいずれか1つであることを特徴とする計数方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の計数方法において、
前記第1のランレングスの数の総和NsHを求めるしきい値は、前記代表値THの0倍以上0.5倍未満、あるいは前記代表値THの0倍以上(TH+TL)/4未満であり、
前記第2のランレングスの数の総和NsLを求めるしきい値は、前記代表値TLの0倍以上0.5倍未満、あるいは前記代表値TLの0倍以上(TH+TL)/4未満であることを特徴とする計数方法。
【請求項1】
特定の物理量と信号の数とが線形の関係を有し、前記特定の物理量が一定の場合は略単一周波数となる前記信号を数える計数装置において、
入力信号を2値化する2値化手段と、
一定の計数期間中に前記2値化手段から出力される2値化信号のランレングスの数を数える信号計数手段と、
前記計数期間中の前記2値化信号のランレングスを信号のランレングス分が入力される度に測定するランレングス測定手段と、
このランレングス測定手段の測定結果から前記計数期間中の2値化信号のランレングスの度数分布を、2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスと、2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスの各々について作成する度数分布作成手段と、
前記第1のランレングスの度数分布から前記第1のランレングスの分布の代表値THを算出すると共に、前記第2のランレングスの度数分布から前記第2のランレングスの分布の代表値TLを算出する代表値算出手段と、
前記ランレングス測定手段の測定結果と前記代表値算出手段の算出結果から、前記代表値THの0倍以上1倍未満の長さである第1のランレングスの数の総和NsHと、前記代表値TLの0倍以上1倍未満の長さである第2のランレングスの数の総和NsLと、{TH+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TH+(n+0.5)×(TH+TL)}未満(nは1以上の自然数)の長さである第1のランレングスの数の総和NwnHと、{TL+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TL+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第2のランレングスの数の総和NwnLとを求め、これらの度数NsH,NsL,NwnH,NwnLに基づいて前記信号計数手段の計数結果を補正し前記入力信号の数を算出する補正値算出手段とを備えることを特徴とする計数装置。
【請求項2】
請求項1に記載の計数装置において、
前記補正値算出手段は、前記信号計数手段の計数結果をN、前記第1のランレングスと前記第2のランレングスとの和がとり得る最大値を(TH+TL)maxとしたとき、補正後の計数結果N’を、
【数1】
により求めることを特徴とする計数装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の計数装置において、
前記代表値TH,TLは、中央値、最頻値、平均値、階級値と度数との積が最大となる階級値、階級値のa乗(0<a<1)と度数との積が最大となる階級値のうちのいずれか1つであることを特徴とする計数装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の計数装置において、
前記第1のランレングスの数の総和NsHを求めるしきい値は、前記代表値THの0倍以上0.5倍未満、あるいは前記代表値THの0倍以上(TH+TL)/4未満であり、
前記第2のランレングスの数の総和NsLを求めるしきい値は、前記代表値TLの0倍以上0.5倍未満、あるいは前記代表値TLの0倍以上(TH+TL)/4未満であることを特徴とする計数装置。
【請求項5】
特定の物理量と信号の数とが線形の関係を有し、前記特定の物理量が一定の場合は略単一周波数となる前記信号を数える計数方法において、
入力信号を2値化する2値化ステップと、
一定の計数期間中に前記2値化ステップで得られた2値化信号のランレングスの数を数える信号計数ステップと、
前記計数期間中の前記2値化信号のランレングスを信号のランレングス分が入力される度に測定するランレングス測定ステップと、
このランレングス測定ステップの測定結果から前記計数期間中の2値化信号のランレングスの度数分布を、2値化信号の立ち上がりから次の立ち下がりまでの第1のランレングスと、2値化信号の立ち下がりから次の立ち上がりまでの第2のランレングスの各々について作成する度数分布作成ステップと、
前記第1のランレングスの度数分布から前記第1のランレングスの分布の代表値THを算出すると共に、前記第2のランレングスの度数分布から前記第2のランレングスの分布の代表値TLを算出する代表値算出ステップと、
前記ランレングス測定ステップの測定結果と前記代表値算出ステップの算出結果から、前記代表値THの0倍以上1倍未満の長さである第1のランレングスの数の総和NsHと、前記代表値TLの0倍以上1倍未満の長さである第2のランレングスの数の総和NsLと、{TH+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TH+(n+0.5)×(TH+TL)}未満(nは1以上の自然数)の長さである第1のランレングスの数の総和NwnHと、{TL+(n−0.5)×(TH+TL)}以上{TL+(n+0.5)×(TH+TL)}未満の長さである第2のランレングスの数の総和NwnLとを求め、これらの度数NsH,NsL,NwnH,NwnLに基づいて前記信号計数ステップの計数結果を補正し前記入力信号の数を算出する補正値算出ステップとを備えることを特徴とする計数方法。
【請求項6】
請求項5記載の計数方法において、
前記補正値算出ステップは、前記信号計数ステップの計数結果をN、前記第1のランレングスと前記第2のランレングスとの和がとり得る最大値を(TH+TL)maxとしたとき、補正後の計数結果N’を、
【数2】
により求めることを特徴とする計数方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の計数方法において、
前記代表値TH,TLは、中央値、最頻値、平均値、階級値と度数との積が最大となる階級値、階級値のa乗(0<a<1)と度数との積が最大となる階級値のうちのいずれか1つであることを特徴とする計数方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の計数方法において、
前記第1のランレングスの数の総和NsHを求めるしきい値は、前記代表値THの0倍以上0.5倍未満、あるいは前記代表値THの0倍以上(TH+TL)/4未満であり、
前記第2のランレングスの数の総和NsLを求めるしきい値は、前記代表値TLの0倍以上0.5倍未満、あるいは前記代表値TLの0倍以上(TH+TL)/4未満であることを特徴とする計数方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−220234(P2012−220234A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83425(P2011−83425)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
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