説明

計測出力装置および電力量計量システム

【課題】 実質的に瞬時に計測可能な少なくとも2つの物理量を検出し比較演算して所定の出力処理が可能であり、例えば配電における誤結線を判定用としても利用できる計測出力装置を提供する。
【解決手段】 実質的に瞬時に計測可能な物理量を連続的に検出する少なくとも2つの物理量検出手段と、当該各物理量検出手段からの出力信号をそれぞれ所定の時間間隔で周期的にサンプリングして瞬時値を得る信号処理手段と、前記時系列的に得られる瞬時値または当該瞬時値の変化量を少なくとも前記各検出手段間で同期させて比較演算する演算制御手段と、当該比較演算結果が所定の条件を具備する場合に所定の出力処理を行う出力手段とを含むことを特徴とする計測出力装置。また、この計測出力装置の機能を備えた電力量計量システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に電流などの実質的に瞬時に計測可能な物理量を少なくとも2つ計測取得し、これらの計測結果および/またはその演算結果を比較演算し、所定の条件を具備する場合に所定の信号出力できる計測出力装置、および当該計測出力装置の機能を備えた電力量計量システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現行の電気料金体系では、電力需要家が既存の電力負荷設備に加えて、夜間蓄熱式機器、オフピーク蓄熱式電気温水器や通電制御型蓄熱式機器などの深夜電力負荷機器(以下、単に深夜電力負荷という。)を新設する場合には、予め設定された夜間と昼間との各時間帯における電力使用量をそれぞれ求めることが必要となる。それぞれの時間帯における電力使用量を求めるには、既設の電力量計を時間帯別電力量計にそっくり交換する方法か、あるいは図8に示すように、既設の電力量計30に対してタイムスイッチ32および深夜電力量計量用の電力量計34を並列接続する方法が採用される。
【0003】
後者の場合、タイムスイッチ32および深夜電力計量用電力量計34は、電灯負荷用の電力量計30の電源側において、電力線40,42から深夜電力負荷向けに敷設された電力線46,47の途中に直列に接続される。なお、タイムスイッチ32は、内部にタイマー(不図示)と当該タイマーによって開閉制御されるスイッチSとを含む機器であり、タイマーにおいて予め設定した時間だけスイッチSが閉じ、電力線48,49に通電するように構成されたものである。
【0004】
しかし、このように既設の電力量計30に対して電力量計34およびタイムスイッチ32を新たに併設する場合、これらの設置位置周辺において電力線が複雑に錯綜しているなどの事情があると、結線を誤ることがある。図9は、図8に示すものと同様の構成における電力線の誤結線の一例を示す結線図である。この図に示す例では、電力量計30の負荷側の電力線43、45からそれぞれ電力線46、47が分岐接続されており、その結果タイムスイッチ32内の内部スイッチSが所定の設定時間閉じて深夜電力負荷に通電する間にそこで消費された電力量(以下、深夜電力量という。)が、電力量計34で計量されるだけでなく、電力量計30においても電灯負荷に加算された状態で二重に計量されることになる。深夜電力負荷新設時における各種の試験においてこの二重計量の原因となる誤結線が発見されない場合、その後長期にわたり当該誤結線が発見されないといった事態も生じ得る。そのため、このような誤結線を容易かつ確実に判定できる装置器具の開発が要請されている。
【特許文献1】特開平11−108973号公報
【特許文献2】特開2000−155142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記事情に鑑み、実質的に瞬時に計測可能な少なくとも2つの物理量を検出し比較演算して所定の出力処理が可能であり、例えば前記の配電における誤結線の判定にも利用できる計測出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的は、本発明の一局面によれば、実質的に瞬時に計測可能な物理量を連続的に検出する少なくとも2つの物理量検出手段と、当該各物理量検出手段からの出力信号をそれぞれ所定の時間間隔で周期的にサンプリングして瞬時値を得る信号処理手段と、前記時系列的に得られる瞬時値または当該瞬時値の変化量を少なくとも前記各検出手段間で同期させて比較演算する演算制御手段と、当該比較演算結果が所定の条件を具備する場合に所定の出力処理を行う出力手段とを含むことを特徴とする計測出力装置によって達成される。
【0007】
本発明の計測出力装置は、前記の通り検出した少なくとも2つの実質的に瞬時に計測可能な物理量を同期させて比較し、その結果に応じて出力処理を行なうように構成されている。本発明における物理量としては、実質的に瞬時に計測可能であって公知のものであれば特に限定されず、例えば電流、電圧、電力、磁気、力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、温度、放射線、流量などが含まれる。本発明の計測出力装置における物理量検出手段としてはそれぞれ、これらのうちのいずれかの物理量を検出でき、その大きさに応じた電気信号をそれぞれ出力できるものを用いることができる。本発明の計測出力装置では、物理量検出手段を少なくとも2つ用いたものとされるが、それぞれが検出する物理量は、前記例示の物理量のうち同種であってもよく異種であってもよい。また、物理量検出手段から出力される電気信号もまた互いに同種または異種のいずれであってもよい。このような電気信号としては、例えばアナログの電流信号または電圧信号などが含まれる。
【0008】
また、信号処理手段には、サンプリングして得られる瞬時アナログ信号を得るもののほか、さらに当該瞬時アナログ信号をアナログ、デジタル変換する機能を備えたものも含まれる。また、演算制御手段における前記瞬時値の変化量は、所定の経過時間前後の瞬時値の差分などを指している。また、出力手段は、視覚的または聴覚的に表示出力を備えたもの、外部機器に対して有線または無線にて所定の信号を適宜出力するものあるいはこれら両者を組合せたものなどが含まれる。
【0009】
前記目的はまた、本発明の別の局面によれば、電力線路を構成する電力線に設置され、当該電力線を流れる電流を連続的に検出する少なくとも2つの電流検出手段と、前記電力線路に印加される線間電圧を検出する電圧検出手段と、前記各検出手段からの電気信号を適宜用いて電力量を演算する電力量計量機構部と、前記電流検出手段からの電気信号をそれぞれ所定の時間間隔で周期的にサンプリングして瞬時値を得る信号処理手段と、当該時系列的に得られる瞬時値または当該瞬時値の変化量を少なくとも前記各電流検出手段間で同期させて比較演算する演算制御手段と、前記電力量計量結果とともに、またはこれとは別個に当該比較演算結果が所定の条件を具備する場合の所定の出力を行う出力手段とを含むことを特徴とする電力量計量システムによって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の計測出力装置によれば、その使用目的や用途に応じてどのような比較演算を行なわせるかを予め設定することで、実質的に瞬時に計測可能な少なくとも2つの物理量を検出し、検出結果および/または当該検出結果を用いた演算結果を比較し、比較演算結果が所定の条件を具備する場合に所定の出力処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下の各図では、同一また共通する各部については同一の符号を付しており、以下では重複した説明は省略している。
【0012】
[計測出力装置]
図1は、本発明の計測出力装置の一実施形態として電流計測出力装置の斜視図である。本実施形態の計測出力装置1は、図1に示すように、装置本体10と、その側面から引き出された信号線15a〜15cを介して装置本体10に接続されている電流検出手段としての3個の計器用変流器(以下、CTという。)12〜14とを備えており、例えば電力量計の端子ブロック前面などに固定され、当該電力量計を含む電力線の誤結線判定に主に使用できるものである。
【0013】
本発明の計測出力装置1における装置本体10は、一方向に細長い略直方体の箱体である。図2は、その正面図および背面図をそれぞれ示している。この図(a)に示すように、その前面の中央領域には表示出力の可能な出力手段がその一部に備える表示窓11が露出して設けられ、また表示窓11の長さ方向外側の両端寄りにはそれぞれ前面から背面に貫通する貫通穴10a、10bが穿設されている。これらの貫通穴10a、10bは、電力量計30(電力量計34であってもよい)の端子ブロック前面に装置本体10の後背面が当接した状態で装着固定するのに使用される。具体的には、電力量計30の端子ブロックにおける端子の配列方向両端寄りに穿設されたネジ穴にこれら2つの貫通穴10a、10bをそれぞれ合わせ、当該貫通穴10a、10bに長ねじ(不図示)を挿通してネジ穴のそれぞれに螺合することで、装置本体10を端子ブロックの前面に装着固定されている。
【0014】
装置本体10の背面には、図2(b)に示すように、この本体10を不図示の電力量計の端子ブロック前面に固定した場合に、当該端子ブロック内の電源側の2つの端子の前面に接触可能なように所定位置に接触端子17、18が設けられている。これらの接触端子17、18を端子ブロックの2つの端子に接触させることにより、これらの端子を介して本発明の計測出力装置1はその駆動電源の供給を受けるように構成されている。
【0015】
この装置本体10の内部構成をブロック図で示したものが図3である。この図に示すように、装置本体10は、信号処理手段22〜24と、演算制御手段25と、設定入力手段26と、出力手段27と、接触端子17、18から演算手段25に電源を供給する給電ライン28とが内蔵されている。なお、これら以外にも他の機能を備えた公知の手段を含んでいてもよい。
【0016】
信号処理手段22〜24は、通常、少なくともサンプル・ホールド回路部およびアナログ・デジタル変換回路部(図4では、いずれも不図示)を含んだ構成とされる。サンプル・ホールド回路部は、後述する演算制御手段25からの一定の時間間隔の制御信号の入力を受け、その時点における信号線15a〜15cを流れる電流信号の瞬時値をその都度保持する。サンプル・ホールド回路部は、前記制御信号の入力を受けていない間には、その内部に引き入れられている各信号線15a〜15cの端部がそれぞれ開放されないように短絡状態に維持され、CT12、13または14からの電気信号がそれぞれ入力されず、制御信号の入力があった時点で始めて電気信号が入力されるように機能する構成を含んでいるものとする。当該保持後の電流信号はアナログ・デジタル変換回路部に送られ、そこでデジタル信号に変換され、当該デジタル信号(以下、瞬時値デジタル信号という。)は後続の演算制御手段25に送られる。
【0017】
演算制御手段25は、図3に示すように、信号伝送系251、記憶部252および演算制御回路253を備えている。ここで、信号伝送系251は、記憶部252および演算制御部253と、外部の信号処理手段22〜24,設定入力手段26、出力手段27との間で双方向または一方向の信号伝送機能を備えることができる。さらに、他の回路部や手段が演算制御手段25の内外に存在する場合に、これらの回路部や手段と双方向または一方向に信号を伝送できるものであってもよい。ここで、信号には、信号処理手段22〜24からの瞬時デジタル信号、演算制御回路253からの制御信号などのほか、演算制御手段25から出力手段27に送出される出力信号も含まれる。
【0018】
また、記憶部252は、本実施形態の計測出力装置1の計測手順および演算処理手順のプログラムが格納されるとともに、後述する設定入力手段26から入力された各種設定値および各信号処理手段22〜24からの瞬時デジタル信号が時系列的に格納される。この記憶部252は、前者のプログラムと後者の瞬時デジタル信号とをそれぞれ別個に格納できる領域を備え、または別体の2つのメモリなどの組合せで構成することができる。
【0019】
また、演算制御回路部253は、記憶部252に格納されたプログラムに基づいて後述する種々の演算処理を行うとともに、内部の各回路部や外部の信号処理手段22〜24および出力手段27などの各手段の動作を制御する。信号処理手段22〜24に対しては、所定の時間間隔にてサンプリングのための制御信号を発する。この制御信号送出のタイミングは後述の設定入力手段26から適宜設定できる。演算制御手段25は、この演算結果が所定の条件を具備する場合には、後述する出力手段26に対して所定の信号を出力する。
【0020】
設定入力手段26は、本実施形態の装置1の計測や演算に必要なプログラムや各種設定値を入力するためのものであり、例えばキーボード、他の外部機器と有線または無線によって接続可能なインターフェース装置などが含まれる。前期各種設定には、例えば夜間の時間帯などの1つまたは2つ以上の時間帯の設定(開始時刻および終了時刻)、信号処理手段22〜24におけるサンプリング時間の設定などが含まれる。
【0021】
演算制御手段における設定入力手段26を介して設定入力された設定値やプログラムなどは、このインターフェース装置26を介して内部の演算制御手段25の記憶部252に格納される。また、装置本体10の前面や側面などにボタンなどを配しておき、これによって直接設定値の入力を行なうように構成されていてもよい。その場合、例えば装置本体10の表示窓11に予め作成しておいた設定用画面を表示させるなどユーザーの利便性を向上させることもできる。
【0022】
出力手段27は、前記所定の信号の入力を受けることで、所定の形式にて出力処理を行なうように構成されている。出力の形式としては特に限定されないが、本実施形態では装置本体10の前面に設けられた表示窓11に所定の文字情報などで表示させるだけでなく、例えば別体の装置に対して有線または無線にて所定の信号を伝送可能な信号伝送手段を備えていてもよい。
【0023】
CT12〜14は、図1では、それぞれ円形の貫通穴を中央に備えた円環状の外形を有する(丸窓)貫通形を示しているが、その形状および種類には限定されない。例えば、貫通形CTであっても中央の貫通穴は角型(角窓)その他の形状に形成されたものを使用でき、また円環部分が径方向の分割面によって2つまたはそれ以上に分割可能な分割型も使用できる。貫通穴に予めブスバーや電線などの1次導体が貫通固定されている棒型CTや1次側導体が器体内部で鉄心にコイル状に巻回され、その器体外面に設けられた1次端子および2次端子にそれぞれ被測定回路を構成する電線および2次側の信号線をそれぞれ接続する巻線型のCTも使用できる。CT12〜14における1次側の電力線に負荷電流が流れることで、その大きさに比例する小勢力の電流信号が発生することになる。
【0024】
この小勢力の電流信号は、2次側信号線15a〜15cを介してそれぞれ装置本体10の内部における信号処理手段22〜24に送出される。この信号線15a〜15cとしては特に制限はなく、公知の被覆電線などを用いることができる。各信号線15a〜15cは、現地でのこれらの取り回しや本実施形態1の使用場所などを考慮してその全長を適宜設定できる。また、信号線15a〜15cの途中には、例えば電流、電圧変換器などを設けてもよい。
【0025】
次に、図8に示した従来の一般的な電力量計量システムに誤結線判定用として本実施形態の計測出力装置1を装着した場合を示す図4を参照して、当該計測出力装置1の動作について説明する。図4に示すように、本実施形態の計測出力装置1は、従来の電力量計量システムにおける電灯負荷用電力量計の端子ブロックに装着されている。本実施形態の電流計測出力装置1における3つのCT12〜14は、電灯負荷向け電力線43、45およびこれから分岐された深夜電力負荷向け電力線50に通常の方法により設置されている。それぞれのCTは、これらのどの電力線にも設置できるが、図4では、CT12を電力線50に、CT13、14を電力線43、45にそれぞれ設置することとしている。
【0026】
一般的には、図8に示すような電灯負荷および深夜電力負荷の双方を備えた電力回路において、誤結線がある場合とそうでない正常な結線の(誤結線のない)場合とでは、深夜電力負荷および電灯負荷の日間の使用電力の推移は異なる傾向を示す。図10は、正常な結線の場合(同図(a)参照)および誤結線がある場合(同図(b)参照)の日間の使用電力の推移の一例をそれぞれ示している。また、図11は、図10(b)のグラフにおいて、23時に深夜電力負荷に深夜電力の供給が開始されるとした場合の当該時刻前後の双方の負荷の使用電力の推移をそれぞれ拡大して示したものである。電力線のこれらの機器への結線が正常である場合には、図10(a)に示すように、夜間の時間帯(同図では、凡そ1〜6時の時間帯)には電灯負荷はほとんど稼動しなくなり使用電力は大きく落ち込むのに対して、深夜電力負荷は運転されるため、同時間帯に深夜電力量が電灯負荷電力量を上回る傾向を示す。
【0027】
一方、誤結線により二重計量が生じている場合には、日間の電灯負荷電力と深夜負荷電力の推移において、
(1)深夜電力負荷に23時に深夜電力の供給が開始された場合、図11に示すように、夜間にかけて減少傾向にあった電灯負荷の使用電力に当該時刻直後の微小時間において深夜電力負荷の使用電力の上昇分に相当する上昇変動が生じる、
(2)図10(b)に示すように、夜間の時間帯において、深夜負荷電力よりも電灯負荷電力の方が連続して大きくなる、
など正常に結線された場合とは異なる傾向を示す。
【0028】
したがって、電灯負荷および深夜電力負荷の使用電力やその推移についての前記の(1)若しくは(2)、またはこれら双方の減少を使用電力を検出して比較することで、誤結線の判定を行うことができる。また、深夜電力負荷向けの電力線および電灯負荷向けの電力線のそれぞれの線間には同等の電圧が印加されるのが通常であるので、使用電力ではなく、これらの負荷を流れる電流を検出し比較演算することで、同様に誤結線の判定を行なうことができるようになる。
【0029】
図5は、本実施形態の計測出力装置1の内部における各構成の動作を説明するためのフローチャート図である。本実施形態の計測出力装置1がこのフローチャート図に従い動作するためには、電灯負荷および深夜電力負荷に通じる各電力線(43、45、50)に設置した各CT12〜14の2次側からの電流信号が信号線15a〜15cを介して装置本体10に送出されることが前提となる。
【0030】
昼間の時間帯には、電灯負荷向けの電力線に設置された2つのCT13、14の2次側からの電気信号は信号線15b、15cを介して計測出力装置1に入力されるが、タイムスイッチ32の内部スイッチSが開き深夜電力負荷向けの電力線48,49が通電状態にないため、CT12からの電気信号は入力されない。この場合、計測出力装置1において設定により演算制御手段25から各信号処理手段22〜24に向けて所定の時間間隔で制御信号を送出し、または送出しないように(計測出力装置1にてこれらの電気信号が取得されないように)選択できるようすることができる。前者の場合には信号処理手段23、24から出力される瞬時デジタル信号を演算制御手段25にて格納し、抽出して平均化し、出力手段27における表示窓11において表示させるようにしてもよい。
【0031】
次に、夜間の予め設定された時刻になると、タイムスイッチ32の内部のスイッチSが閉じ(S2)、これにより電力線48(50)、49(51)を通して深夜電力負荷への通電が可能な状態とされる。この場合、当該電力線路48(50)、49(51)にさらに深夜電力負荷を起動する制御機器(スイッチなど)が別途接続されている場合には、当該制御機器の動作によって始めて深夜電力負荷への通電が開始され、特に該電力線にそのような制御機器が設けられていない場合には、直接深夜電力負荷への通電が開始されることになる。
【0032】
深夜電力負荷に通電が開始されると、CT12によって電力線50、51を流れる負荷電流が検出され、当該検出電流に比例する小勢力の電流信号がCT12の2次側から信号処理手段22に送られる。この電流信号は、他の信号処理手段23、24と同様に信号処理手段22において所定のタイミングでサンプリングされた後にデジタル変換され、得られた瞬時デジタル信号はサンプリング時刻と関連付けられて演算制御手段25に送られ、記憶部252の所定の領域に格納される。
【0033】
演算制御手段25では、内部の記憶部252に予め格納されたプログラム手順に従い、記憶部252の別の記憶領域に時系列的に格納された瞬時デジタル信号(以下では、この瞬時デジタル信号を「瞬時値」ということがある。)をCT12〜14ごとに同期させて抽出して、以下の2つの比較演算処理を行う。
【0034】
(1)深夜電力負荷起動時の電灯負荷電流および深夜電力負荷電流の変化についての比較
信号処理手段22を介して記憶部252に時系列的に格納された瞬時デジタル信号から、深夜電力負荷電流を最初にCT12が検出し、2次側の電流信号の送出が開始された時点(この時点を「t」という。)を決定し、当該時点における深夜電力負荷電流の瞬時値In(t)および電灯負荷電流の瞬時値Id(t)を記憶部252からそれぞれ抽出する(S4)。この電灯負荷電流の瞬時値Id(t)は、CT13からの電流信号、若しくはCT14からの電流信号のいずれかを記憶部252から抽出して用いることができ、または両者を抽出した後に平均化演算して得られた信号を用いることもできる。
【0035】
そうして、前記検出時点tから予め設定した微小時間経過後の時点(この時点を「t」とする。)における深夜電力負荷電流の瞬時値In(t)および電灯負荷電流の瞬時値Id(t)を記憶部252から同様に抽出する(S5)。電灯負荷電流の瞬時値Id(t)としては、前記の瞬時値Id(t)と同様にCT13、14のいずれかからの電流信号、または平均化演算して得られた信号を用いることができる。ステップS4およびS5において記憶部252から抽出した各瞬時値を以下の式に代入して、時間(t−t)における電灯負荷Idおよび深夜電力負荷電流Inの変化量の差を求める(S6)。なお、以下の数1において、ΔInおよびΔIdは、時間(t−t)における深夜電力負荷電流および電灯負荷電流の増加量(図11における深夜電力量の増加量D1および電灯負荷電力量の増加量D2に相当)をそれぞれ示す。
【0036】
【数1】

【0037】
この式1の演算結果が約0となるか否かによって以下のように判定する(S7)。なお、「約0」か否かは、予め設定入力手段26において0を含む任意の範囲を設定、記憶部252の所定の領域に格納しておき、演算結果がこの範囲に属するか否かで判断するようにすればよい。
【0038】
演算結果が0でない場合には(ΔIn=D1≠D2=ΔId)、正常な結線と判定し、演算制御手段25による演算処理は終了する。一方、この演算結果が0と判断される(ΔIn=D1≒D2=ΔId)場合には、図11に示すように、増加量D1と増加量D2とがほぼ等しくなるので、誤結線により電力量計30、34でそれぞれ深夜電力量が二重に計量されている可能性が高いと判定する。
【0039】
(2)深夜電力負荷稼動時間における電灯負荷電流および深夜電力負荷電流の比較
次に、後者のΔIn≒ΔIdの場合には、記憶部252の所定の領域にそれぞれ順次格納された時刻t,t,t,・・・,tにおける深夜電力負荷電流の瞬時値(以下、In(t)で表す。)と、電灯負荷電流の瞬時値(以下、Id(t)で表す。)とを同期させてそれぞれ抽出し、両者の大小を比較していく(S8)。その結果、前者が後者と同等かそれ以上、すなわちIn(t)>=Id(t)の条件を具備する場合には、深夜電力負荷電流の瞬時値In(t)が0であるか否かを判断するステップS11に進み、そうでない場合には、出力手段27が所定の出力処理を行うように制御信号を出力する(S10)。この制御信号を出力した後、前記の場合と同様にステップS11に進み、深夜電力負荷電流の瞬時値In(t)が0であると判断した場合には、演算制御手段25による演算処理は終了する。
【0040】
演算制御手段25から制御信号を受けた出力手段27では、例えば図2(a)に示すように、例えば装置本体10の前面の表示部(表示窓)11に例えば「要確認」の文字を表示させるなどの所定の出力処理を行う。この出力処理としては、さらに追加して又は前記表示出力に代えて、例えば、外部の監視機器などに対して有線または無線にて所定の信号を出力することも含まれるものとする。
【0041】
なお、図5において、予め設定された別の時間帯にステップ4において決定された深夜電力負荷電流検出時点(t)が属する場合に、例えば「マイコン型確認」などのメッセージを出力手段の表示部に表示させるように構成することもできる。このような構成とし、深夜電力負荷がマイコン型の温水器などの機器に通電していることを表示させるようにすることで、毎月の検針時などに前記温水器がマイコン型であることを確認でき、結果的に前記割引を加味した正確な電気料金の計算が可能となる。なお、表示部11におけるメッセージは、例えば計測出力装置1の内部においてまたは外部からの適当なリセットがかかるまで表示させておくことが好ましい。
【0042】
また、このフローチャート図の各ステップの処理を確実とするために、公知の方法によりS1からS11の各ステップを複数回繰り返すように構成することもできる。すなわち、通常、S1〜S11のステップは1日に1サイクルするので、数日間にわたり監視し、計測出力装置1の出力処理の確実性を向上させるものである。この繰り返し回数は、設定入力手段26から適宜設定できる。
【0043】
以上説明したように、本発明の計測出力装置によれば、少なくとも2つの同種または異種の物理量を検出して信号処理によって瞬時値を求め、検出手段ごとの当該瞬時値の比較演算を行なってその結果が所定の条件を具備する場合には所定の出力処理を行うことができる。
【0044】
[電力量計量システム]
図6は、前記実施形態に示した誤結線判定用の電流計測出力装置の構成を一部に備える本発明の電力量計量システムの一実施形態を示す接続図である。この図において、電力量計量システムは、この図に示す電力量計2は、電流検出手段として3つのCT12〜14とともに、電灯負荷向け電力線40〜42の線間電圧を電力量計2に引き込む電圧信号線(電圧検出手段)55〜57をそれぞれ電気的に接続可能とされた変成器組合せタイプである。
【0045】
電灯負荷に接続される電力線40〜42には、その途中にそれぞれ電圧信号線55〜57の一端が接続され、また電力線40、42にはCT13、14がそれぞれ設置されている。これら2つのCT13、14の2次側から引き出された電流信号線15b、15cの他端は、電圧信号線55〜57の他端とともに電力量計2の端子ブロックに接続されており、電路の電圧信号および電流信号が電力量計2内に供給されるようになっている。
【0046】
また、電力線40,42からは電力線46、47が分岐されており、当該分岐された電力線46、47がタイムスイッチ32の端子ブロックの電源側端子に接続されている。この端子ブロックの負荷側端子には、電力線48、49の一端が接続され、その他端は深夜電力負荷(またはその制御監視装置)に接続されている。電力線48には、CT12が設置され、その2次側から引き出された電流信号線15aの他端が電力量計2の端子ブロックに接続されている。
【0047】
図6に示すように、電力量計2には、入力された前記の電流信号および電圧信号に基づいて電灯負荷および深夜電力負荷の消費電力量をそれぞれ演算によって求める電力量計量機構部(不図示)が内蔵されている。前記の電流信号および電圧信号は、デジタル、アナログのいずれであってもよい。また、この電力量計2には、前記の計測出力装置1と同様に、CT12〜14の電気信号の処理を行い、両者を比較演算して所定の条件を具備する場合には所定の出力処理を行うように構成されている。図7は、このような機能を備えた電力量計の内部構成の一例を示すブロック図である。この図において、符号55〜57は電圧信号線である。電圧信号線55〜57には、必要な場合には単相用または三相用の計器用変圧器54をその途中に必要数設置することができる。
【0048】
図7に示すように、電流信号線15a〜15cを流れる電流信号は、直接信号処理手段22〜24でサンプリングおよびデジタル変換され、演算制御手段25内の記憶部(不図示、図3、符号252参照)にそれぞれ格納される。なお、信号処理手段22〜24には、公知の電流、電圧変換器を用いて前記各電流信号を一旦電圧信号に変換して当該電圧信号を入力するようにしてもよい。その後、予め格納されているプログラムの手順に従い、電流瞬時値のデジタルデータが記憶部252から抽出、演算制御回路部に送られ、そこで演算処理に用いられる。設定入力手段26から入力された所定の条件を当該演算処理結果が具備する場合には、演算制御手段25は出力手段27に向けて所定の信号を発し、そこで所定の出力処理がなされるように構成されている。なお、電圧信号線55〜57の所定の2線からは、演算制御手段25および電力量計量手段60に電源を供給する給電線59が分岐されている。
【0049】
出力手段27は、図6の構成では演算制御手段25と電力量計量手段60との双方の演算結果を出力処理可能に構成されている。このような出力手段27としては電力量計2の前面に配置された表示部を含み、さらに有線または無線にて外部機器と通信可能に構成することもできる。また、この出力手段27が備える表示部は、演算結果である電灯負荷電力量と深夜電力負荷電力量とをそれぞれ表示可能な2つの表示窓を含むように構成されていてもよく、または1つの表示窓においてこれらの電力量の表示が所定の時間ごとにサイクリックに切り替わるように構成されていてもよい。なお、出力手段は、前記のように視覚的または聴覚的に表示出力可能なものに限定されず、外部機器に対して有線または無線にて所定の信号を適宜出力可能なもの、またはこれら両方の機構を備えるものなどにしてもよい。
【0050】
このような本実施形態の電力量計量システムの構成によれば、電灯負荷電力量および深夜電力負荷電力量をそれぞれ表示するだけでなく、誤結線の判定機能も兼ね備えた電力量計量システムを得ることができる。なお、本発明の電力量計量システムでは、例えば、電流検出手段および電圧検出手段を電力量計の装置本体に内蔵したものであってもよい。
【0051】
なお、本発明の計測出力装置は、前記の物理量が電流である実施形態には限定されず、種々の公知の物理量について同様に適用できる。このような公知の物理量としては、前記の電流のほか、電圧、電力、磁気、力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、温度、放射線、流量などが挙げられる。本発明の計測出力装置における少なくとも2つの検出手段ではそれぞれ、これらの物理量のうち同種または異種の物理量を検出し、その大きさに応じた電気信号を出力できるものを用いればよい。
【0052】
また、物理量検出手段としては、前記物理量を実質的に瞬時に計測可能なセンサを使用できる。例えば、電圧については計器用変圧器(PT)、電力については電力計、磁気については磁気センサなどが挙げられる。また、力についてはストレインゲージ、ロードセル、半導体圧力センサなど;変位についてはポテンショメータ、差動トランス、回転角センサ、リニアエンコーダ、ロータリーエンコーダなど;位置については光位置センサ(PSD)、速度についてはタコジェネレータ、レーザドップラー振動速度計、レーザドップラー流速計など;加速度については加速度センサ、地震センサなど;角速度についてはジャイロセンサなど;回転数についてはタコジェネレータ、ロータリーエンコーダなど;距離については超音波距離計、静電容量変位計などが挙げられる。さらに光量については光センサ、光電素子、フォトダイオードなど;温度についてはサーミスタ、熱電対などの接触式温度センサや放射温度計などの非接触式温度センサーなど;気体または液体中の濃度についてはイオン濃度、ガス濃度;放射線については比例計数管、シンチレーション検出器、ガイガーミュラー計数管、半導体検出器、熱ルミネセンス線量計、チェレンコフ計数管など;流量についてはベンチュリ流量計、オリフィス流量計、層流型流量計、熱線式流量計、カルマン渦流量計、超音波流量計、電磁流量計などが含まれる。また、このような物理量の種類などに応じて予め設定入力手段を介して設定しておくことで、出力手段にて所定の出力処理を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の計測出力装置の一実施形態の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す実施形態の装置本体の正面図および背面図である。
【図3】図1に示す計測出力装置の内部構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す計測出力装置を電力量計量システムへの装着状態を示す図である。
【図5】図1に示す計測出力装置の内部構成の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の電力量計量システムの一実施形態を示す図である。
【図7】本発明の電力量計量システムの内部構成を示すブロック図である。
【図8】従来の電力量計量システムの一例を示す図である。
【図9】図8に示す電力量計量システムにおいて発生しうる給電線の誤結線の一例を示す図である。
【図10】図8および図9に示す電力量計量システムを用いた日間電力使用量の推移を示すグラフである。
【図11】図10(b)のグラフにおける電灯負荷および深夜電力負荷の使用電力の推移をそれぞれ示す拡大図である。
【符号の説明】
【0054】
1 計測出力装置
2 電力量計量システム
10 装置本体
10a、10b ネジ挿通穴
11 表示窓
12、13、14 CT(電流出力手段)
15a、15b、15c 電流信号線
17、18 電源接触端子
22、23,24 信号処理手段
25 演算制御手段
251 信号伝送系
252 記憶回路部
253 制御回路部
26 設定入力手段
27 出力手段
28 電源線
30 電力量計
32 タイムスイッチ
34 電力量計(深夜電力計量用)
54 計器用変圧器
55、56、57 電圧信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に瞬時に計測可能な物理量を連続的に検出する少なくとも2つの物理量検出手段と、当該各物理量検出手段からの出力信号をそれぞれ所定の時間間隔で周期的にサンプリングして瞬時値を得る信号処理手段と、前記時系列的に得られる瞬時値または当該瞬時値の変化量を少なくとも前記各検出手段間で同期させて比較演算する演算制御手段と、当該比較演算結果が所定の条件を具備する場合に所定の出力処理を行う出力手段とを含むことを特徴とする計測出力装置。
【請求項2】
前記物理量検出手段によって検出される少なくとも2つの物理量は互いに同種である請求項1に記載の計測出力装置。
【請求項3】
前記物理量は電流である請求項2に記載の計測出力装置。
【請求項4】
電力線路を構成する電力線に設置され、当該電力線を流れる電流を連続的に検出する少なくとも2つの電流検出手段と、
前記電力線路に印加される線間電圧を検出する電圧検出手段と、
前記各検出手段からの電気信号を適宜用いて電力量を演算する電力量計量機構部と、
前記電流検出手段からの電気信号をそれぞれ所定の時間間隔で周期的にサンプリングして瞬時値を得る信号処理手段と、
当該時系列的に得られる瞬時値または当該瞬時値の変化量を少なくとも前記各電流検出手段間で同期させて比較演算する演算制御手段と、
前記電力量計量結果とともに、またはこれとは別個に当該比較演算結果が所定の条件を具備する場合の所定の出力を行う出力手段とを含むことを特徴とする電力量計量システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−38716(P2010−38716A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201606(P2008−201606)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】