説明

記憶装置、基板、液体容器、システム及び記憶装置の制御方法

【課題】不揮発性の記憶部に記憶されたデータの破壊を抑止できる記憶装置、基板、液体容器、システム及び不揮発性の記憶部の制御方法等を提供すること。
【解決手段】記憶装置20は、不揮発性の記憶部60と、不揮発性の記憶部60を制御する制御部30と、を含む。制御部30は、電源異常状態を検出する検出回路32と、不揮発性の記憶部60に対する読み出し又は書き込みのアクセス制御を行い、検出回路32により電源異常状態が検出された場合に、不揮発性の記憶部60に対する読み出し又は書き込みのアクセス制御を停止するアクセス制御部36と、を有する。アクセス制御部36は、アクセスサイクルの開始後に検出回路32により電源異常状態が検出された場合には、そのアクセスサイクルにおける読み出し又は書き込みのアクセス制御については、停止せずに完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶装置、基板、液体容器、システム及び記憶装置の制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
不揮発性メモリー(広義には、不揮発性の記憶部)として、EEPROMやFERAM等が知られている。これらのメモリーは、ホスト装置とのデータ送受信を行い、そのデータのリード/ライトを行う。例えば、インクジェット方式のプリンター(ホスト装置)には、インクカートリッジ(液体容器)が取り付けられる。このインクカートリッジには、不揮発性メモリーを有する記憶装置が設けられているものがある(例えば、特許文献1)。不揮発性メモリーには、IDや製造情報、インクの残量などの種々の情報が記憶され、記憶装置は、これらの情報をプリンターとの間で送受信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−299405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、記憶装置の電源に異常が生じた場合に、データのリード/ライトが正常に行われないことで、不揮発性メモリーに記憶されたデータが破壊されてしまう場合がある。例えば、インクカートリッジの記憶装置とプリンターは一般に端子の接触により接続され、その端子を介してプリンターから記憶装置に電源が供給される。このとき、不揮発性メモリーへのアクセス中に電源端子がフローティング状態(非接触状態)になる等の電源異常が生じると、不揮発性メモリーに記憶されたデータが破壊されてしまう場合がある。例えば、不揮発性メモリーが、リード時にリライト動作が必要なFERAM等である場合、IDや製造情報等をリードする際にリライトが正常に行われないことで、これらの情報が失われてしまう恐れがある。
【0005】
本発明の幾つかの態様によれば、不揮発性の記憶部に記憶されたデータの破壊を抑止できる記憶装置、基板、液体容器、システム及び不揮発性の記憶部の制御方法等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、不揮発性の記憶部と、前記不揮発性の記憶部を制御する制御部と、を含み、前記制御部は、電源異常状態を検出する検出回路と、前記不揮発性の記憶部に対する読み出し又は書き込みのアクセス制御を行い、前記検出回路により電源異常状態が検出された場合に、前記不揮発性の記憶部に対する読み出し又は書き込みのアクセス制御を停止するアクセス制御部と、を有し、前記アクセス制御部は、アクセスサイクルの開始後に前記検出回路により電源異常状態が検出された場合には、前記アクセスサイクルにおける読み出し又は書き込みのアクセス制御については、停止せずに完了する記憶装置に関係する。
【0007】
本発明の一態様によれば、検出回路により電源異常状態が検出された場合に、不揮発性の記憶部に対するアクセス制御が停止される。そして、アクセスサイクルの開始後に検出回路により電源異常状態が検出された場合には、そのアクセスサイクルにおけるアクセス制御については、停止せずに完了させる。これにより、不揮発性メモリーに記憶されたデータの破壊を抑止することが可能になる。
【0008】
また、本発明の一態様では、前記アクセスサイクルは、読み出し又は書き込みのアクセス制御をイネーブルにするイネーブル信号の論理レベルの変化により開始し、前記アクセスサイクルにおける読み出し動作又は書き込み動作は、読み出し又は書き込みのアクセス制御を行うためのクロックをアクティブにすることで開始し、前記アクセス制御部は、前記アクセスサイクルの開始後に前記検出回路により電源異常状態が検出された場合に、読み出し又は書き込みのアクセス制御を行うための前記クロックをアクティブにすることで、前記アクセスサイクルにおける読み出し又は書き込みのアクセス制御を完了してもよい。
【0009】
このようにすれば、アクセスサイクルの開始後に検出回路により電源異常状態が検出された場合に、アクセス制御を行うためのクロックをアクティブにすることで、そのアクセスサイクルにおけるアクセス制御を開始できる。そして、その開始したアクセス制御を停止せずに完了できる。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記アクセス制御部は、読み出し又は書き込みのアクセス制御を行うための前記クロックのアクティブエッジを遅延した信号に基づいて、前記不揮発性の記憶部の読み出し動作又は書き込み動作の制御信号を生成してもよい。
【0011】
このようにすれば、アクセス制御を行うためのクロックをアクティブにすることで、アクセスサイクルにおける読み出しまたは書き込みのアクセス制御を完了することができる。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記制御部は、前記アクセス制御部に供給されるシステムクロックのマスク処理を行うマスク処理部を含み、前記マスク処理部は、前記検出回路により電源異常状態が検出された場合に、前記システムクロックをマスクしてもよい。
【0013】
このようにすれば、検出回路により電源異常状態が検出された場合に、不揮発性の記憶部に対する読み出しまたは書き込みのアクセス制御を停止できる。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記マスク処理部は、前記検出回路により電源異常状態が検出された場合に、前記システムクロックを1パルスだけ出力した後に前記システムクロックをマスクしてもよい。
【0015】
このようにすれば、システムクロックを1パルスだけ出力した後にシステムクロックをマスクすることで、マスク処理によりシステムクロックにハザードが生じること等を抑止できる。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記検出回路は、ホスト装置からの電源電圧が供給されるホスト側電源端子に接続される電源端子及び、前記ホスト装置からのグランド電圧が供給されるホスト側グランド端子に接続されるグランド端子の少なくとも一方のフローティング状態を検出し、前記マスク処理部は、前記検出回路により前記フローティング状態が検出された場合に、前記システムクロックをマスクしてもよい。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記検出回路は、ホスト装置から供給される電源電圧の低下を検出し、前記マスク処理部は、前記検出回路により、前記ホスト装置から供給される電源電圧の低下が検出された場合に、前記システムクロックをマスクしてもよい。
【0018】
これらの本発明の一態様によれば、電源端子及びグランド端子の少なくとも一方の端子のフローティング状態や、ホスト装置から供給される電源電圧の低下を、電源異常状態として検出できる。そして、これらの電源異常状態を検出した場合に、システムクロックをマスクできる。
【0019】
また、本発明の一態様では、前記不揮発性の記憶部は、読み出し動作において、読み出したデータの再書き込みを必要とする不揮発性メモリーであり、前記アクセス制御部は、読み出しのアクセス制御におけるアクセスサイクルの開始後に電源異常状態が検出された場合に、前記不揮発性メモリーに対する読み出し動作及び再書き込み動作を完了してもよい。
【0020】
また、本発明の一態様では、前記不揮発性メモリーは、強誘電体メモリーであり、前記アクセス制御部は、読み出し又は書き込みのアクセス制御を行うためのクロックのアクティブエッジを遅延した信号に基づいて、前記強誘電体メモリーの読み出し動作又は書き込み動作の制御信号として、前記強誘電体メモリーのワード線及びプレート線に印加する電圧を制御する制御信号を生成してもよい。
【0021】
これらの本発明の一態様によれば、読み出しのアクセス制御におけるアクセスサイクルの開始後に電源異常状態が検出された場合に、そのアクセスサイクルにおけるリライト動作まで完了できる。これにより、データ破壊を抑止できる。
【0022】
また、本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の記憶装置を含む基板に関係する。
【0023】
また、本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の記憶装置を含む液体容器に関係する。
【0024】
また、本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の記憶装置と、ホスト装置と、を含むシステムに関係する。
【0025】
また、本発明の他の態様は、不揮発性の記憶部を制御し、電源異常状態を検出し、前記不揮発性の記憶部に対する読み出し又は書き込みのアクセス制御を行い、電源異常状態が検出された場合に、前記不揮発性の記憶部に対するアクセス制御を停止し、アクセスサイクルの開始後に電源異常状態が検出された場合には、前記アクセスサイクルにおける読み出し又は書き込みのアクセス制御については、停止せずに完了する記憶装置の制御方法に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態の記憶装置の構成例。
【図2】不揮発性メモリーに対するリード制御の信号波形例。
【図3】不揮発性メモリーに対するライト制御の信号波形例。
【図4】電源異常を検出した場合の不揮発性メモリーに対するアクセス制御の信号波形例。
【図5】図5(A)は、強誘電体メモリーの構成例。図5(B)は、強誘電体メモリーセルに対するライト動作の説明図。図5(C)は、強誘電体メモリーセルに対するリード動作の説明図。
【図6】強誘電体メモリーに対するリード動作の詳細な信号波形例。
【図7】信号生成回路の詳細な構成例。
【図8】検出回路の詳細な構成例及び、マスク処理回路の詳細な構成例。
【図9】電源異常検出とマスク処理の動作例。
【図10】電源異常検出とマスク処理の動作例。
【図11】電源異常検出とマスク処理の動作例。
【図12】電源異常検出とマスク処理の動作例。
【図13】電源異常検出とマスク処理の動作例。
【図14】インクカートリッジの詳細な構成例。
【図15】図15(A)、図15(B)は、回路基板の詳細な構成例。
【図16】システムの詳細な構成例。
【図17】記憶装置からデータを読み出す場合の信号波形例。
【図18】プリンターのリード処理のフローチャート例。
【図19】記憶装置のリード処理のフローチャート例。
【図20】記憶装置に対してデータを書き込む場合の信号波形例。
【図21】プリンターのライト処理のフローチャート例。
【図22】記憶装置のライト処理のフローチャート例。
【図23】フローティング検出回路の詳細な構成例。
【図24】図24(A)は、VSS検出回路の詳細な構成例。図24(B)、図24(C)は、VSS検出回路の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0028】
1.構成例
図1に、本実施形態の記憶装置の構成例を示す。図1に示す記憶装置20は、制御部30(メモリー制御部、制御回路)、不揮発性メモリー60(不揮発性の記憶部)、電源端子TV(第1の電源端子、高電圧側電源端子)、グランド端子TG(第2の電源端子、低電圧側電源端子、接地端子)、クロック端子TK(第1の端子)、データ端子TD(第2の端子)、リセット端子TRを含む。なお、本実施形態の記憶装置は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部(例えば、クロック端子、データ端子、マスク処理部)を省略したり、他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。
【0029】
記憶装置20は、電源異常を検出した場合にシステムクロックをマスクすることで、電源異常による不揮発性メモリー60のデータ破壊を抑止するためのものである。なお、以下では、不揮発性の記憶部が不揮発性メモリー60である場合を例に説明する。但し、本実施形態では、不揮発性の記憶部は他のものであってもよく、例えば、ハードディスクドライブ等の磁気ドライブやDVD等の光学ドライブであってもよい。また、以下では、電源電圧、グランド電圧、各種信号が、端子の接触により供給される場合を例に説明する。但し、本実施形態では、電源電圧、グランド電圧、各種信号が、コイル間の電磁誘導等を用いた無接点伝送(非接触伝送)により供給されてもよい。
【0030】
電源端子TV、グランド端子TG、クロック端子TK、データ端子TD、リセット端子TRは、それぞれホスト装置10のホスト側電源端子TVH、ホスト側グランド端子TGH、ホスト側クロック端子TKH、ホスト側データ端子TDH、ホスト側リセット端子TRHに電気的に接続される。例えば、ホスト装置10と記憶装置20の各端子は金属製の端子で構成され、その端子が物理的に接触することで電気的に接続される。ホスト装置10の端子と記憶装置20の端子とが接続されている場合、電源端子TVには、ホスト側電源端子TVHからの電源電圧VDD(第1の電源電圧、高電圧側電源電圧)が供給される。また、グランド端子TGにはホスト側グランド端子TGHからのグランド電圧VSS(第2の電源電圧、低電圧側電源電圧)が供給される。クロック端子TKには、ホスト側クロック端子TKHからのシステムクロックSCK(第1の信号)が供給され、データ端子TDには、ホスト側データ端子TDHからのデータ信号(第2の信号)が供給される。リセット端子TRには、ホスト側リセット端子TRHからのリセット信号XRSTが供給される。
【0031】
制御部30は、不揮発性メモリー60(広義には、不揮発性の記憶部)の制御や、ホスト装置10(ホスト)との間のデータ送受信(データ通信)、電源異常の検出を行う。具体的には、制御部30は、検出回路32(検出部)、マスク処理部34(マスク処理回路)、アクセス制御部36(アクセス制御回路)、送受信部38(通信部、送受信回路)を含む。
【0032】
検出回路32は、記憶装置20に供給される電源の異常を検出し、検出信号(検出結果の情報)をマスク処理部34に出力する。具体的には、検出回路32は、電源端子TVのフローティング状態(オープン状態、非接触状態)や、グランド端子TGのフローティング状態、電源電圧VDDの電圧低下を検出する。例えば、電源端子TVやグランド端子TGのフローティング状態は、異物挿入や端子の接触不良等により生じる。検出回路32は、電源端子TVやグランド端子TGからの電圧に基づいて、これらのフローティング状態を検出する。
【0033】
マスク処理部34は、検出回路32からの検出信号に基づいてシステムクロックSCKのマスク処理を行う。ここで、システムクロックSCKは、記憶装置20の制御に用いられるクロックである。例えば、SCKは、不揮発性メモリーのリード/ライト(読み出し又は書き込み)のアクセス制御等のためのクロックを生成したり、ホスト装置10と記憶装置20とのデータ送受信を行うためのクロックである。このシステムクロックSCKは、図1に示すように端子TKから供給されてもよく、記憶装置20の内部で生成されてもよい。
【0034】
検出回路32により電源異常が検出された場合には、マスク処理部34はクロック端子TKからのシステムクロックSCKをマスクする。すなわち、アクセス制御部36や送受信部38等の制御部30の構成要素に対して、システムクロックSCKを非供給にする。例えば、マスク処理後のシステムクロックをローレベル(第1の論理レベル)やハイレベル(第2の論理レベル)に固定することで、SCKを非供給にする。この場合、記憶装置20の動作は停止する。すなわち、不揮発性メモリー60に対するリード動作/ライト動作や、ホスト装置10との間のデータ送受信は行われない。一方、検出回路32により電源異常が検出されない場合には、マスク処理部34はシステムクロックSCKをマスクせず、制御部30の構成要素に対してSCKを供給する。この場合、記憶装置20は通常動作を行う。
【0035】
アクセス制御部36は、マスク処理部34からのマスク処理後のシステムクロックに基づいて、不揮発性メモリー60に対するアクセス制御(メモリーアクセス制御)を行う。すなわち、システムクロックに同期して、不揮発性メモリー60の各アドレスに記憶されたデータのリード動作(読み出し動作)や、不揮発性メモリー60の各アドレスに対するデータのライト動作(書き込み動作)を行う。具体的には、アクセス制御部36は、ライトイネーブル信号、リードアドレス信号、ライトアドレス信号、ライトデータ信号等を生成し、アクセス制御を行う。なお、アクセス制御部36は、不揮発性メモリー60に対してシーケンシャルアクセスを行ってもよく、ランダムアクセスを行ってもよい。
【0036】
送受信部38(受信部または、送信部)は、マスク処理部34からのマスク処理後のシステムクロックに基づいて、ホスト装置10と記憶装置20の間のデータ送受信を行う。そして、送受信部38は受信したデータをアクセス制御部36に対して出力し、アクセス制御部36は、そのデータを不揮発性メモリー60に書き込む。また、送受信部38は、アクセス制御部36により不揮発性メモリー60から読み出されたデータをホスト装置10に送信する。より具体的には、送受信部38は、データ端子TDを介してホスト装置10からのデータ信号SDAを受信する。受信されるデータ信号SDAには、例えば、リードコマンドやライトコマンド等のコマンド、アドレス信号、データ信号が含まれる。また、送受信部38は、アクセス制御部36により不揮発性メモリー60から読み出されたデータを、データ端子TDを介してホスト装置10に対して送信する。
【0037】
不揮発性メモリー60は、例えばFERAM(強誘電体メモリー)や、フラッシュメモリー等のEEPROMにより構成される。この不揮発性メモリー60は、メモリーアレイ、カラム選択回路、ロー選択回路を含むことができる。不揮発性メモリー60は、製造時に書き込まれたID、製造情報や、ホスト装置10から書き込まれた情報を記憶する。例えばインクカートリッジの場合、不揮発性メモリー60は、製造情報として製造日の情報、インクの色の情報などを記憶し、ホスト装置10から書き込まれる情報としてインクの残量の情報などを記憶する。
【0038】
2.アクセス制御
上述のように、本実施形態では、不揮発性メモリー60の記憶データの破壊を抑止するために、電源異常を検出した場合に不揮発性メモリー60に対するアクセス制御等を停止する。しかしながら、ライト動作中やリード動作中に電源異常が検出された場合、そのライト動作やリード動作を途中で停止すると、かえってデータを破壊するおそれがある。そのため、本実施形態では、そのライト動作やリード動作を停止せず完了(続行)させる。
【0039】
まず、図2〜図4を用いて、本実施形態のアクセス制御について説明する。そして、図5(A)〜図7を用いて、不揮発性メモリー60が強誘電体メモリーである場合を例に、ライト動作やリード動作の完了について具体的に説明する。
【0040】
図2には、不揮発性メモリーに対するリード制御の信号波形例を示す。図2のF1に示すように、アドレス信号AD[0:n]がアドレスAD1[0:n]にされ、F2に示すように、ライトイネーブル信号WEがハイレベルにされる。そして、F3に示すように、メモリーアクセス用のクロックCKの立ち上がりエッジ(または、立ち下がりエッジ)が入力されると、F4に示すように、アドレスAD1[0:n]のデータRD1[0:m]がリードデータRD[0:m]として読み出される。ここで、図2に示すように、クロックCKは、例えばシステムクロックSCK(マスク処理後のシステムクロック)を分周して生成されたクロックである。
【0041】
図3には、不揮発性メモリーに対するライト制御の信号波形例を示す。図3のG1に示すように、アドレス信号AD[0:n]がアドレスAD1[0:n]にされ、G2に示すように、ライトイネーブル信号WEがローレベル(アクティブ)にされる。G3に示すように、データ信号WD[0:m]としてライトデータWD1[0:m]が供給される。そして、G4に示すように、クロックCKの立ち上がりエッジが入力されると、アドレスAD1[0:n]にライトデータWD1[0:m]が書き込まれる。
【0042】
図4には、アクセスサイクルにおいて電源異常を検出した場合のアクセス制御の信号波形例を示す。図4に示すように、アクセスサイクルTa(アクセス期間)におけるタイミングTdにおいて電源異常状態を検出したとする。そうすると、H1に示すように、ライト動作またはリード動作を行うためのクロックCKのエッジが出力され(CKがアクティブにされ)、H2に示すように、システムクロックSCKがマスクされる。システムクロックSCKがマスクされると、クロックCKやアドレス信号AD[0:n]、ライトイネーブル信号WEは変化しなくなる。本実施形態は、ライト動作またはリード動作を行うためのクロックCKのエッジが出力された場合、システムクロックSCKがマスクされても、そのアクセスサイクルTaにおけるライト動作またはリード動作を停止せず完了する。
【0043】
ここで、アクセスサイクルTaは、例えばライトイネーブル信号WEやアドレス信号AD[0:n]が不揮発性メモリー60に供給されるタイミングから開始する期間である。あるいは、システムクロックSCKの立ち下がりエッジ(または立ち上がりエッジ)でSCKがマスクされる場合、ライト動作またはリード動作を行うためのクロックCKのエッジが出力される直前のシステムクロックSCKの立ち下がりエッジから開始する期間である。そして、アクセスサイクルTaは、例えばTaにおけるアクセス対象のアドレスAD1[0:n]に対するライト動作またはリード動作の完了により終了する期間である。あるいは、次のアクセスサイクルの開始により終了する期間である。
【0044】
なお、本実施形態では、アクセスサイクルTaにおいて電源異常状態を検出した場合であっても、ライト動作またはリード動作を行うためのクロックCKのエッジが出力される前にシステムクロックSCKがマスクされた場合には、アクセス制御を停止してもよい。すなわち、そのアクセスサイクルTaにおけるライト動作またはリード動作を行うことなく動作を停止してもよい。
【0045】
3.強誘電体メモリー
次に、図5(A)〜図7を用いて、不揮発性メモリー60が強誘電体メモリーである場合を例に、ライト動作やリード動作の完了について具体的に説明する。但し、本実施形態では、不揮発性メモリー60はEEPROM等の他の不揮発性メモリーであってもよい。
【0046】
図5(A)に、強誘電体メモリーの構成例を示す。この強誘電体メモリーは、強誘電体キャパシターCS、N型トランスファートランジスターTR(広義には、第1導電型トランジスター)、センスアンプSA、第1、第2のトランジスターSW1、SW2、ラッチLTを含む。なお、図5(A)では、メモリーセルが1T1C(1 Transistor 1 Capacitor)型である場合を例に説明するが、本実施形態では、2T2C(2 Transistor 2 Capacitor)型や、FET型等であってもよい。
【0047】
強誘電体キャパシターCSの一端にはノードNCが接続され、他端にはプレート線PLが接続される。トランジスターTRのゲート電極にはワード線WLが接続され、ソース電極(ドレイン電極)にはビット線BL1が接続され、ドレイン電極(ソース電極)にはノードNCが接続される。そして、強誘電体キャパシターCSとトランジスターTRによりメモリーセルが構成され、複数のメモリーセルがビット線BL1及びワード線WLに沿って配置される。
【0048】
センスアンプSAは、ビット線BL1に読み出された電荷(電圧)を増幅し、増幅後の電圧をビット線BL2に出力する。例えば、増幅後の電圧として、論理“1”に対応する電源電圧VCC、または論理“0”に対応する0Vを出力する。トランジスターSW1、SW2は、例えばN型トランジスターにより構成され、信号YSELによりオン・オフが制御される。信号YSELは、メモリーセルからの読み出し時にアクティブになる。ラッチLTは、読み出された論理レベル(電圧レベル)を保持(ラッチ)し、保持した論理レベルを出力信号LTQとして出力する。
【0049】
図5(B)を用いて、強誘電体メモリーセルに対するライト動作について説明する。図5(B)に示すように、メモリーセルに論理“1”を書き込む場合には、ワード線WLに選択電圧を印加し、ビット線BL1に電源電圧VCC(例えば、電源電圧VDD。広義には、第1の電源電圧)の電圧を印加し、プレート線PLに0V(例えば、グランド電圧VSS。広義には。第2の電源電圧)を印加する。これにより、強誘電体キャパシターCSの残留分極が「負」になる。このように、残留分極が「負」である状態を、例えば論理“1”が記憶されている状態と定義できる。
【0050】
一方、メモリーセルに論理“0”を書き込む場合には、ワード線WLに選択電圧を印加し、ビット線BL1に0Vを印加し、プレート線PLにVCC(例えば5V)を印加する。これにより、強誘電体キャパシターCSの残留分極が「正」になる。このように、残留分極が「正」である状態を、例えば論理“0”が記憶されている状態と定義できる。
【0051】
図5(C)を用いて、強誘電体メモリーセルに対するリード動作について説明する。図5(C)に示すように、第1の期間T1において、ワード線WLに選択電圧を印加し、強誘電体キャパシターCSからビット線BL1への電荷の転送が行われる。続く第2の期間T2において、センスアンプSAによりビット線BL1の電圧が増幅される。そして、第3の期間T3において、リードしたデータ(論理“0”または“1”)を保持し、リードにより破壊されたデータを回復するためにリライト動作(再書き込み動作)が行われる。
【0052】
なお、本実施形態では、上述の順序でリード動作が行われてもよく、例えばセンスアンプ増幅とリライト動作が同一期間において行われ、次の期間において保持される等の他の順序でリード動作が行われてもよい。
【0053】
図6に、強誘電体メモリーに対するリード動作の詳細な信号波形例を示す。図6のI1に示すように、クロックCKの立ち上がりエッジが入力されると、I2に示すように、ワード線WLに電源電圧VCCが印加される。そして、I3に示すように、プレート線PLに電源電圧VCCが印加され、I4に示すように、ビット線BL1に強誘電体キャパシターCSの電荷が読み出される。I5に示すように、センスアンプSAがオンし、I6に示すように、センスアンプSAにより増幅(ハイレベル化、またはローレベル化)された電圧がビット線BL2に出力される。なお、I7に示すように、YSELはハイレベル(アクティブ)のため、BL1とBL2は同電圧である。
【0054】
I8に示すように、出力データラッチ信号LATの立ち上がりエッジ(アクティブエッジ)で、読み出された論理レベルがラッチされる。I9に示すように、プレート線PLに0Vが印加され、ビット線BL1(BL2)の電圧が強誘電体キャパシターCSにリライトされる。そして、I10に示すように、出力イネーブル信号OEがハイレベル(アクティブ)にされ、ラッチした論理レベルがリードデータとして出力される。
【0055】
I11に示すように、アクセスサイクルTaにおいて電源異常状態を検出した場合には、クロックCKが立ち下がらなくなる。そのため、本実施形態では、アクセス制御を完了するために、クロックCKの立ち上がりエッジにより上述のアクセス制御を行う。
【0056】
図7には、クロックCKの立ち上がりエッジにより制御信号を生成できる信号生成回路の詳細な構成例を示す。この信号生成回路は、ディレイバッファDB1〜DB20(広義には、DB1〜DBi。iは自然数)、インバーターIB1、IB2、アンド回路AB1、AB2(論理積回路)、セット/リセットラッチSLRを含む。例えば、この信号生成回路は、図1に示すアクセス制御部36や不揮発性メモリー60に含まれることができる。なお、図7では、ワード線WLの制御信号について説明するが、他の制御信号についても同様に生成できる。
【0057】
ディレイバッファDB1〜DB20は、クロックCKを受けて、クロックCKを順次遅延させる。インバーターIB1は、DB4の出力論理レベルを反転する。アンド回路AB1には、DB2の出力信号とインバーターIB1の出力信号とが入力される。インバーターIB2は、DB17の出力論理レベルを反転する。アンド回路AB2には、DB15の出力信号とインバーターIB2の出力信号とが入力される。ラッチSLRのセット端子には、アンド回路AB1の出力信号が入力され、リセット端子には、アンド回路AB2の出力信号が入力される。
【0058】
クロックCKの立ち上がりエッジが入力されると、DB3、DB4の遅延により、AB1はハイパルス(CKの立ち上がりエッジの微分パルス)を出力する。ラッチSLRは、そのハイパルスを受けて、ワード線WLの論理レベルをハイレベルにする。そして、DB5〜DB15の遅延による期間の経過後、アンド回路AB2がハイパルスを出力する。ラッチSLRは、そのハイパルスを受けて、ワード線WLをローレベルにする。このようにして、クロックCKの立ち上がりエッジにより、制御信号を生成できる。
【0059】
さて、上述のように、不揮発性メモリーを有する記憶装置では、電源異常によりデータのリード/ライトが正常に行われない事態が生じると、不揮発性メモリーに記憶されたデータが破壊される場合があるという問題がある。
【0060】
この点、本実施形態によれば、検出回路32により電源異常状態が検出された場合に、不揮発性メモリー60に対するアクセス制御が停止される。そして、アクセスサイクルTaの開始後に検出回路32により電源異常状態が検出された場合には、そのアクセスサイクルTaにおけるリード/ライトのアクセス制御については、停止せずに完了させる。
【0061】
これにより、不揮発性メモリーに記憶されたデータの破壊を抑止することが可能になる。すなわち、一旦開始したライト動作やリード動作を途中で停止せずに完了することで、ライト動作やリード動作が不完全に終了することによるデータ破壊を回避できる。
【0062】
また、本実施形態では、アクセスサイクルTaの開始後に検出回路32により電源異常状態が検出された場合に、リード/ライトのアクセス制御を行うためのクロックCKをアクティブにする。そして、そのアクセスサイクルTaにおけるリード/ライトのアクセス制御を完了する。
【0063】
このようにすれば、アクセス制御を行うためのクロックCKをアクティブにすることで、アクセスサイクルTaにおけるアクセス制御を開始できる。そして、検出回路32により電源異常状態が検出された場合にも、その開始したアクセス制御を停止せずに完了できる。
【0064】
より具体的には、図6等で説明したように、クロックCKのアクティブエッジ(立ち上がりエッジ)を遅延した信号に基づいて、ワード線WL等の制御信号を生成する。すなわち、クロックCKを順次遅延した複数の遅延クロックを生成し、各遅延クロックのアクティブエッジの微分パルスを生成し、その微分パルスにより各制御信号のエッジを生成する。
【0065】
このようにすれば、クロックCKをアクティブにすることで、そのアクセスサイクルTaにおけるリード/ライトのアクセス制御を完了することができる。
【0066】
また、本実施形態では、マスク処理部34が、検出回路32により電源異常状態が検出された場合に、アクセス制御部36に供給されるシステムクロックをマスクする。
【0067】
このようにすれば、アクセス制御部36に供給されるシステムクロックSCKをマスクすることで、検出回路32により電源異常状態が検出された場合に、不揮発性メモリー60に対するリード/ライトのアクセス制御を停止できる。
【0068】
また、本実施形態では、図8等で後述するように、マスク処理部34が、検出回路32により電源異常状態が検出された場合に、システムクロックSCKを1パルスだけ出力した後にシステムクロックSCKをマスクしてもよい。
【0069】
このようにすれば、システムクロックSCKをマスクする前に1パルス出力できる。これにより、マスク処理によりシステムクロックSCKにハザード(ヒゲ)が生じることを防止し、回路の誤動作を抑止できる。また、その1パルスによりクロックCKがアクティブにされる場合であっても、アクセスサイクルTaにおけるリード/ライトのアクセス制御を完了することができる。
【0070】
また、本実施形態では、図23等で後述するように、検出回路32が、電源端子TV及びグランド端子TGの少なくとも一方の端子のフローティング状態を検出してもよい。
【0071】
また、本実施形態では、検出回路32が、ホスト装置10から供給される電源電圧VDDの低下を検出してもよい。
【0072】
このようにすれば、電源端子TV及びグランド端子TGの少なくとも一方の端子のフローティング状態や、ホスト装置10から供給される電源電圧VDDの低下を、電源異常状態として検出できる。そして、これらの電源異常状態を検出した場合に、システムクロックSCKをマスクできる。
【0073】
また、本実施形態では、不揮発性メモリー60が、リード動作において、リードしたデータのリライトを必要とする不揮発性メモリーであってもよい。
【0074】
本実施形態によれば、アクセスサイクルTaの開始後に電源異常状態が検出された場合にリード動作を完了できる。これにより、アクセスサイクルTaにおけるリライト動作まで完了し、リライト動作が行われなかったり、不完全に終わることによるデータ破壊を抑止できる。
【0075】
より具体的には、図6等で上述したように、不揮発性メモリー60が強誘電体メモリーであってもよい。そして、アクセス制御を行うためのクロックCKのアクティブエッジを遅延した信号に基づいて、ワード線及びプレート線に印加する電圧を制御する制御信号が生成されてもよい。
【0076】
このようにすれば、システムクロックSCKがマスクされてクロックCKが生成されなくなった場合であっても、クロックCKのアクティブエッジによりアクセスサイクルTaにおけるアクセス制御を停止せず完了できる。
【0077】
4.検出回路、マスク処理部
図8に、電源異常状態を検出する検出回路32の構成例及び、システムクロックSCKをマスク処理するマスク処理部34の構成例を示す。図8に示す検出回路32は、パワーオンリセット回路110、電源監視回路120(電源電圧低下検出回路)、フローティング検出回路130、AND回路AN1(論理積回路)を含む。また、図8に示すマスク処理部34は、保持回路100(保持部)、AND回路AN2(論理積回路)を含む。なお、本実施形態の検出回路及びマスク処理回路はこの構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり(例えば、パワーオンリセット回路、電源監視回路)、他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。
【0078】
パワーオンリセット回路110は、電源電圧VDDに基づいてパワーオンリセットを行う。具体的には、電源が投入されるまでは記憶装置20をリセット状態にし、電源が投入されたときには記憶装置20のリセットを解除する。パワーオンリセット回路110は、ホスト装置10の電源が投入され、電源電圧VDDとグランド電圧VSSの差分が閾値電圧(所定の電圧)以上となったとき、出力信号POROUTをハイレベル(広義には、第1の論理レベル)にする。
【0079】
電源監視回路120は、電源電圧VDDの電圧低下を検出する。具体的には、電源監視回路120は、電源電圧VDDとグランド電圧VSSの差分が閾値電圧以上の場合には、ハイレベルの出力信号LVDを出力する。一方、電源電圧VDDとグランド電圧VSSの差分が閾値電圧以下の場合には、ローレベル(広義には、第2の論理レベル)の出力信号LVDを出力する。
【0080】
フローティング検出回路130は、電源端子TVとグランド端子TGのフローティング状態を検出する。例えば図17等で後述するように、フローティング検出回路130は、電源電圧VDDまたはグランド電圧VSSとリファレンス信号の電圧とを比較してフローティング状態を検出する。そして、フローティング状態を検出していない場合には、ハイレベルの出力信号FLTOを出力し、フローティング状態を検出した場合には、ローレベルの出力信号FLTOを出力する。
【0081】
AND回路AN1は、パワーオンリセット回路110からの出力信号POROUTと、電源監視回路120からの出力信号LVDと、フローティング検出回路130からの出力信号FLTOの論理積を演算する。すなわち、POROUT、LVD、FLTOの少なくとも1つがローレベル(アクティブ)の場合には、ローレベル(アクティブ)の出力信号QDTを出力する。
【0082】
保持部100(広義には、マスク信号生成回路)は、検出回路32からの検出信号QDTに基づいて、システムクロックSCKをマスク処理するためのマスク信号QMSを出力する。具体的には、フローティング状態が検出されるまではマスク信号QMSを非アクティブにし、フローティング状態が検出された場合にはマスク信号QMSをアクティブにする。そして、一旦マスク信号QMSをアクティブにした後は、QMSをアクティブに保持する。より具体的には、保持部100は、検出信号QDTを保持する。すなわち、検出信号QDTがローレベルに変化すると、その後もローレベルを保持する。保持部100は、セレクターSEL(選択回路)、フリップフロップ回路FFを含む。
【0083】
セレクターSELは、マスク信号QMSに基づいて、検出信号QDT及びマスク信号QMSのいずれか一方を選択し、選択した信号を出力信号QSLとして出力する。具体的には、マスク信号QMSがハイレベルの場合には、検出信号QDTを選択して出力し、マスク信号QMSがローレベルの場合には、マスク信号QMSを選択して出力する。
【0084】
フリップフロップ回路FFは、セレクターSELからの出力信号QSLの論理レベルをシステムクロックSCKの立ち下がりエッジ(または、立ち上がりエッジ)でラッチ(保持)し、ラッチした論理レベルのマスク信号QMSを出力する。また、リセット信号XRST(または、セット信号)がアクティブにされると、ラッチした論理レベルをリセット(または、セット)する。具体的には、リセット信号XRSTがローレベルの場合には、マスク信号QMSをリセット(クリア)し、ハイレベルのマスク信号QMSを出力する。一方、リセット信号XRSTがローレベルの場合には、リセットを解除し、ラッチした論理レベルのマスク信号QMSを出力する。
【0085】
リセット解除直後はハイレベルのマスク信号QMSが出力されるため、セレクターSELにより検出信号QDTが選択される。検出信号QDTがローレベルになると、セレクターSELの出力信号QSLがローレベルとなり、フリップフロップ回路FFによりローレベルがラッチされる。そして、セレクターSELによりローレベルのマスク信号QMSが選択されることで、マスク信号QMSがローレベルに保持される。この保持状態は、リセット信号XRSTによりリセットされるまで維持される。
【0086】
AND回路AN2(広義には、マスク処理回路)は、マスク信号QMSに基づいてシステムクロックSCKのマスク処理を行う。具体的には、AND回路AN2は、マスク信号QMSとシステムクロックSCKとの論理積を演算する。すなわち、マスク信号QMSがローレベルの場合には、マスク処理後のシステムクロックMSCKをローレベルにし、システムクロックSCKを後段の回路に対して非供給にする。一方、マスク信号QMSがハイレベルの場合には、マスク処理後のシステムクロックMSCKとしてシステムクロックSCKを出力し、システムクロックSCKを後段の回路に対して供給する。
【0087】
5.電源異常検出、マスク処理
図9〜図13を用いて、電源異常検出とマスク処理の動作例について説明する。図9には、通常動作時、すなわち電源端子のフローティング等の電源異常が無い場合の動作例を示す。
【0088】
図9のA1に示すように、電源電圧VDDが閾値電圧PORH(第1の閾値電圧)を超えると、A2に示すように、信号POROUTがハイレベルになり、パワーオンリセットが解除される。A3に示すように、VDDが閾値電圧LowVDDを超えると、A4に示すように、信号LVDがハイレベルになり、低電圧検出が非検出状態となる。A5に示すように、信号FLTOにはハイレベルが出力され、フローティング検出は非検出状態となる。そのため、A6に示すように、マスク信号QMSにはハイレベルが出力され、システムクロックSCKが制御部に供給される。
【0089】
そして、A7に示すように、リセット信号XRSTがハイレベルにされてリセットが解除され、データ信号SDA、システムクロックSCKが入力される。A8に示すように、電源がオフされ、VDDが閾値電圧LowVDD以下になると、A9に示すように、信号LVDがローレベルになる。A10に示すように、VDDが閾値電圧PORL(第2の閾値電圧)以下になると、A11に示すように、信号POROUTがローレベルになる。
【0090】
図10には、システムクロックSCKが入力される前に電源端子TVまたはグランド端子TGがフローティング状態となった場合の動作例を示す。
【0091】
図10のB1に示すように、電源端子TVがフローティング状態になると、B2に示すように、信号FLTOがローレベルになる。B3に示すように、システムクロックSCKが入力され、B4に示すように、SCKの最初の立ち下がりエッジでマスク信号QMSがローレベルになる。そのため、B5に示すように、マスク処理後のシステムクロックMSCKには、SCKの最初の立ち下がりエッジまでSCKが出力され、その後はローレベルが出力される。B6に示すように、リセットが解除されると、B7に示すように、マスク信号QMSの保持状態が解除され、QMSがハイレベルになる。他の動作については、図9で説明した動作例と同様である。
【0092】
以上のように、図9に示す通常動作時には、システムクロックSCKが供給され、通常のアクセス制御等を行う。これに対して、図10に示すフローティング状態の検出時には、マスク信号QMSがローレベル(アクティブ)に保持される。これにより、システムクロックSCKがマスクされ、アクセス制御等が停止する。
【0093】
図11には、通常動作中に電源電圧VDDが低下した場合の動作例を示す。図11のC1に示すように、電源電圧VDDが閾値電圧LowVDD以下になると、C2に示すように、信号LVDがローレベルになる。C3に示すように、信号LVDがローレベルになった後、最初のシステムクロックSCKの立ち下がりエッジでマスク信号QMSがローレベルになる。そして、C4に示すように、システムクロックSCKがマスクされ、マスク処理後のシステムクロックMSCKにはローレベルが出力される。他の動作については、図9で説明した動作例と同様である。
【0094】
図12には、通常動作中に電源電圧VDDが低下し、再び電源電圧VDDが復帰した場合の動作例を示す。図12のD1に示すように、電源電圧VDDが閾値電圧LowVDD以下になると、D2に示すように、信号LVDがローレベルになり、D3に示すように、マスク信号QMSがローレベルになる。D4に示すように、再び電源電圧VDDが閾値電圧LowVDD以上になると、D5に示すように、信号LVDがハイレベルになる。このとき、D6に示すように、マスク信号QMSはローレベルに保持され、D7に示すように、システムクロックSCKは非供給状態が維持される。D8に示すように、リセット解除によりマスク信号QMSの保持状態がリセットされる。他の動作については、図11等で説明した動作例と同様である。
【0095】
図13には、動作開始前から電源電圧VDDが閾値電圧LowVDD以下である場合の動作例を示す。図13のE1に示すように、電源電圧VDDが閾値電圧LowVDD以下であるため、E2に示すように、信号LVDにはローレベルが出力される。そして、E3に示すように、最初のシステムクロックSCKの立ち下がりエッジでマスク信号QMSがローレベルにされ、システムクロックSCKがマスクされる。他の動作については、図9で説明した動作例と同様である。
【0096】
なお、上述の図10では、電源端子TVがフローティング状態となった場合を例に説明した。但し、本実施形態では、グランド端子TGがフローティング状態となった場合や、電源電圧VDDが低下した場合にも同様の動作となる。また、上述の図11〜図13では、電源電圧VDDが低下した場合を例に説明した。但し、本実施形態では、電源端子TVまたはグランド端子TGがフローティング状態となった場合にも同様の動作となる。
【0097】
6.液体容器
次に、上述した本実施形態の記憶装置が設けられた液体容器の詳細な構成例について、図14を用いて説明する。なお以下では、ホスト装置がインクジェット方式のプリンターであり、液体容器がインクカートリッジであり、基板が、インクカートリッジに設けられた回路基板である場合を例に説明する。但し、本実施形態では、ホスト装置、液体容器、基板は、他の装置、容器、基板であってもよい。例えば、ホスト装置はメモリーカードのリーダー/ライターであってもよく、基板はメモリーカードに設けられた回路基板であってもよい。
【0098】
図14に示すインクカートリッジ200(広義には、液体容器)の内部には、インクを収容するための図示しないインク室が形成される。また、インクカートリッジ200には、インク室に連通するインク供給口240が設けられる。このインク供給口240は、インクカートリッジ200がプリンターに装着されたときに、印刷ヘッドユニットにインクを供給するためのものである。
【0099】
インクカートリッジ200は、センサー210、回路基板220(広義には、基板)を含む。センサー210は、インク室内のインク残量を検出するためのものである。センサー210は、例えば圧電素子により構成され、インクカートリッジ200の内部に固定される。回路基板220には、本実施形態の記憶装置20が設けられ、データの記憶やホスト装置10とのデータ送受信を行う。回路基板220は、例えばプリント基板により実現され、インクカートリッジ200の表面に設けられる。回路基板220には、電源端子TV等の端子が設けられる。そして、インクカートリッジ200がプリンターに装着されたときに、それらの端子とプリンター側の端子が接触(電気的に接続)することで、電源やデータのやりとりが行われる。
【0100】
7.基板
図15(A)、図15(B)に、本実施形態の記憶装置が設けられた回路基板の詳細な構成例を示す。図15(A)に示すように、回路基板220の表面(プリンターと接続される面)には、複数の端子を有する端子群が設けられる。この端子群は、グランド端子TG、電源端子TV、第1のセンサー駆動用端子TSN、リセット端子TR、クロック端子TK、データ端子TD、第2のセンサー駆動用端子TSPを含む。各端子は、例えば矩形状(略矩形状)に形成された金属端子により実現される。そして、各端子は、回路基板220に設けられた図示しない配線パターン層やスルホールを介して、記憶装置20またはセンサー210に接続される。
【0101】
図15(B)に示すように、回路基板220の裏面(プリンターと接続される面の裏側の面)には、本実施形態の記憶装置20が設けられる。記憶装置20は、例えば、強誘電体メモリーを有する半導体記憶装置により実現できる。この記憶装置20には、インクまたはインクカートリッジ200に関連する種々のデータが格納され、例えば、インクの消費量やインクの色等のデータが格納される。インク消費量のデータは、インクカートリッジ200内に収容されたインクについて、印刷の実行等に伴い消費されるインク量の累計を示すデータである。このインク消費量のデータは、インクカートリッジ200内のインク量を示す情報であってもよく、消費したインク量の割合を示す情報であってもよい。
【0102】
8.システム
図16に、本実施形態の記憶装置が用いられるシステムの詳細な構成例を示す。図16に示すシステム(情報処理システム、印刷システム)は、プリンター10、インクカートリッジ200を含む。プリンター10は、主制御部300、サブ制御部310を含む。インクカートリッジ200は、本実施形態の記憶装置20、及びセンサー210を含む。なお、以下では、1つのインクカートリッジがプリンターに装着される場合を例に説明するが、本実施形態では、複数のインクカートリッジがプリンターに装着されてもよい。
【0103】
サブ制御部310は、電源電圧VDD、グランド電圧VSSを、それぞれ電源端子TVH、グランド端子TGHを介して記憶装置20に供給する。また、サブ制御部310は、記憶装置20に対するデータのリード/ライトや、センサー210を用いたセンサー処理を行う。具体的には、サブ制御部310は、通信処理部312、センサー処理部314を含む。
【0104】
通信処理部312は、記憶装置20及び主制御部300との間の通信処理を行う。具体的には、リセット信号XRST、システムクロックSCK、データ信号SDAを、それぞれリセット端子THR、クロック端子THK、データ端子THDを介して記憶装置20に供給する。そして、図11等で後述するように、これらの信号により記憶装置20とのシリアル通信処理を行う。但し、本実施形態では、通信処理部312と記憶装置20とがパラレル通信処理を行ってもよい。また、通信処理部312は、バスBSを介してコマンドやデータ信号をやりとりすることで、主制御部300との通信処理を行う。例えば、通信処理部312は、インクカートリッジ200とプリンター10の接続または非接続や、記憶装置20との通信エラーを判定し、これらの判定結果を主制御部300に送信する。
【0105】
センサー処理部314は、センサー210によるインク残量の判定処理を行う。センサー処理部314は、主制御部300からのセンサー駆動信号DSを、センサー駆動用端子THSNまたはTHSPを介してセンサー210の電極に印加する。センサー処理部314は、センサー駆動信号DSをセンサー210に印加することで得られた信号に基づいて、インクの残量が閾値以上であるか閾値以下であるかを判定する。この判定結果は、通信処理部312を介して主制御部302に送信される。
【0106】
主制御部300は、プリンター10の制御を行う。例えば、メモリーアクセスを制御したり、サブ制御部310に対して電源電圧VDHやグランド電圧VSHを供給したり、インク残量の判断(算出処理)を行ったりする。より具体的には、主制御部300は、制御回路302、駆動信号生成回路304を含む。
【0107】
制御回路302は、バスBSを介して通信処理部312にコマンドやデータを送信し、通信処理部312と記憶装置20との間の通信処理を制御する。具体的には、通信処理部312によりインクカートリッジ200の接続が検出された場合に、記憶装置20に記憶されたインク残量等のデータを読み出し、そのデータに基づいて新たに算出したインク残量等のデータを記憶装置20に書き込む。また、制御回路302は、駆動信号生成回路304を制御してセンサー駆動信号DSをセンサー210に供給する。そして、制御回路302は、センサー処理部314からのインク残量の判定結果や、印刷によるインク消費推定量に基づいて、インク残量を判断する。インク切れと判断した場合には、図示しない表示部にインク切れの情報を表示してもよい。
【0108】
記憶装置20は、メモリー制御回路30(制御部)、強誘電体メモリーセルアレイ60(強誘電体メモリー)を含む。メモリー制御回路30は、検出回路32、マスク制御回路34、ID比較部40、コマンド解釈部42、アドレスカウンター44、リード/ライト制御部46、データ送受信部38(送受信部)、カウンター制御部48、複製データ生成部50、反転データ生成部52、データ判定部54(判定部)を含む。なお、図1等で前述した構成要素と同一の構成要素(例えば、検出回路)には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0109】
ID比較部40は、サブ制御部310から受信したIDデータ(識別データ)と、記憶装置20に割り当てられているID番号(例えば、インクの色に応じた番号)とを比較して、自身がアクセスの対象であるか否かを判定する。
【0110】
コマンド解釈部42は、サブ制御部310から受信したSOF(通信開始データ)、コマンドデータ、EOF(通信終了データ)を解釈して、アクセス開始、リードやライト等のアクセスの種類、アクセス終了を判断する。アドレスカウンター44は、システムクロックSCKをカウントして、強誘電体メモリーセルアレイ60のアドレス(例えば、ワード線)を指定するためのカウント値を出力する。リード/ライト制御部46は、コマンド解釈部42により解釈されたアクセスの種類や、アドレスカウンター44のカウント値に基づいて、強誘電体メモリーセルアレイ60に対するリード/ライトの制御を行う。カウンター制御部48(シーケンサー)は、システムクロックSCKをカウントし、そのカウント値とコマンド解釈部42によるコマンド解釈に基づいて、メモリーアクセスを制御する。
【0111】
複製データ生成部50は、強誘電体メモリーセルアレイ60から読み出した原データをコピーして、ミラーデータ(複製データ)を生成する。反転データ生成部52は、強誘電体メモリーセルアレイ60から読み出した原データの各ビット値を反転(例えば、0を1に、1を0に反転)して、反転データを生成する。データ判定部54は、原データ及びミラーデータのパリティーチェックや、原データと反転データの排他的論理和の演算を行って、データの整合性を判定する。
【0112】
強誘電体メモリーセルアレイ60は、ワード線及びビット線に沿って配列された複数の強誘電体メモリーセルにより構成される。強誘電体メモリーセルアレイ60は、図示しないローアドレスデコーダー、カラムアドレスデコーダー、センスアンプ等を含むことができる。
【0113】
9.通信処理(リード制御)
上述のように、本実施形態の記憶装置は、電源端子またはグランド端子のフローティング状態を検出すると、強誘電体メモリーに対するアクセス制御を停止する。このとき、プリンターは、フローティング状態が検出されたことを直接には認識できないため、記憶装置との通信処理を通じて認識する必要がある。
【0114】
以下に、プリンター10と記憶装置20の通信処理について、図17〜図22を用いて詳細に説明する。図17には、記憶装置20からデータを読み出す場合の信号波形例を模式的に示す。なお、図17では、データ送受信の方向を矢印で示す。すなわち、HからCに向かう矢印は、サブ制御部310が送信側で記憶装置20が受信側であることを示し、CからHに向かう矢印は、記憶装置20が送信側でサブ制御部310が受信側であることを示す。
【0115】
図17のA1に示すように、通信処理が開始されると、リセット信号がローレベルからハイレベルにされる。A2に示すように、システムクロックSCKが記憶装置20に供給される。そして、A3に示すように、データ信号SDAとして最初にSOF(Start Of Frame)データが記憶装置20に送信される。A4に示すように、オペレーションコードとして、IDデータとリードコマンドデータが記憶装置20に送信される。記憶装置20には、IDデータとして、原IDデータIDと、原IDデータの各ビット値を反転した反転IDデータ/ID(以下、反転データをスラッシュ記号/で示す)が送信される。コマンドデータとして、原コマンドデータCMと反転コマンドデータ/CMが送信される。
【0116】
A5に示すように、記憶装置20からのリードデータ(読み出しデータ)がサブ制御部310に送信される。リードデータとして、16ビットの原データの上位8ビットUD1、その反転データ/UD1、原データの下位8ビットLD1、その反転データ/LD1が送信される。また、UD1のミラーデータUd1、その反転ミラーデータ/Ud1、LD1のミラーデータLd1、その反転ミラーデータ/Ld1が送信される。UD1、LD1、Ud1、Ld1は、記憶装置20から読み出されたデータである。一方、これらの反転データである/UD1、/LD1、/Ud1、/Ld1は、反転データ生成部52により生成されたデータである。A6に示すように、上述のリードデータ(単位リードデータ)の読み出しと送信が繰り返される。A8に示すように、リードデータの送信が終了すると、リセット信号がローレベルにされる。
【0117】
上述のように、原データと反転データによりデータを多重化することで、記憶装置20が誤って動作することを抑制できる。例えば、通信障害によって誤ったコマンドを受信し、不揮発性メモリーに対して誤った書き込みや読み出しが行われることで、不揮発性メモリーのデータが破壊されることを防止できる。
【0118】
ここで、図1等で説明したように、電源端子またはグランド端子のフローティング状態が検出された場合、システムクロックSCKがマスクされ、リード/ライト制御やデータ送受信が行われなくなる。このとき、プリンター10に送信されるリードデータとして、例えばローレベルが出力される。これにより、プリンター10は、電源端子またはグランド端子のフローティング状態を、通信処理のエラーとして検出することができる。
【0119】
図18に、プリンターのリード処理のフローチャート例を示す。図18に示すように、プリンター10は、読み出し処理を開始すると、SOFデータを送信し(S2)、IDデータを送信し(S4)、リードコマンドを送信し(S6)、単位リードデータを受信する(S8)。単位リードデータを受信すると、その単位リードデータのデータ判定処理を行う(S10)。データ判定の結果がエラー(N)の場合には、エラー処理を行い(S12)、通信処理を終了する。データ判定の結果が正常(Y)の場合には、リードデータが全て受信されたかを確認する(S14)。リードデータが全て受信されている場合には(Y)、通信処理を終了し、受信されていない場合には(N)、単位リードデータを受信する(S8)。
【0120】
なお、データ判定処理(S10)では、例えば原データと反転データの排他的論理和や、ミラーデータと反転ミラーデータの排他的論理和、原データと反転ミラーデータの排他的論理和が演算される。読み出しまたはデータ送受信が正常に行われた場合、これらの排他的論理和の各ビットは1となる。データ判定処理では、この演算結果に基づいて、通信エラーやメモリーセルエラーを判断する。また、エラー処理(S12)では、例えば通信エラーの場合、インクカートリッジ200がプリンター10に正しく装着されていない旨をプリンター10の表示部等に表示する。
【0121】
図19には、記憶装置のリード処理のフローチャート例を示す。図19に示すように、記憶装置20は、通信処理が開始されるとSOFデータを受信し(S102)、IDデータを受信し(S104)、受信したIDデータが正常か否かを判定(S106)する。IDデータが異常の場合には(N)通信処理を終了し、IDデータが正常の場合には(Y)IDデータの一致、不一致を判定する(S108)。IDデータと記憶装置20のID番号が不一致の場合には(N)通信処理を終了し、一致の場合には(Y)コマンドデータを受信する(S110)。そして、受信したコマンドデータが正常か否かを判定(S112)する。コマンドデータが異常の場合には(N)通信処理を終了し、正常の場合には(Y)コマンドの種別を判定する(S114)。コマンドがリードコマンドである場合には、リード処理を行い(S120)、通信処理を終了する。リード処理では、原データ等の読み出しと送信や、反転データの生成と送信を行う。
【0122】
なお、記憶装置20は、コマンドがライトコマンドである場合には、図22等で後述するライト処理を行う(S116)。また、コマンドがライトロックコマンドである場合には、ライトロック処理を行う(S118)。ライトロック処理では、強誘電体メモリー60の書き換え可能領域のうちの一部(または全部)の領域を書き込み不可能な領域に設定する処理を行う。具体的には、ライトロックコマンドに続いてアドレスデータを受信する。そして、受信したアドレスデータにより指定された領域をライトロック領域に設定する。例えば、ライトロック領域は、制御レジスターにライトフラグを設定することで強誘電体メモリー60の行単位で設定される。
【0123】
10.通信処理(ライト制御)
図20には、記憶装置20に対してデータを書き込む場合の信号波形例を模式的に示す。図20のB1に示すように、SOFデータ、IDデータID、反転IDデータ/ID、ライトコマンドデータCM、反転ライトコマンドデータ/CMが記憶装置20に送信される。そして、B2に示すように、ライトデータとして、16ビットの原データの上位8ビットUD1、その反転データ/UD1、原データの下位8ビットLD1、その反転データ/LD1が送信される。また、UD1のミラーデータUd1、その反転ミラーデータ/Ud1、LD1のミラーデータLd1、その反転ミラーデータ/Ld1が記憶装置20に送信される。
【0124】
B3に示すように、送信されたデータが正常であるか否かが記憶装置20により判定され、その判定結果に基づいてOK/NGフラグがプリンター10に送信される。例えば、データが正常であると判定された場合には、ハイレベルのOKフラグが送信され、データが異常であると判定された場合には、ローレベルのNGフラグが送信される。そして、B4に示すように、上述のライトデータ(単位ライトデータ)の送信と、OK/NGフラグの送信が繰り返される。B5に示すように、ライトデータの送信が終了すると、EOF(End Of Frame)データが記憶装置20に送信される。
【0125】
ここで、電源端子またはグランド端子のフローティング状態が検出された場合、記憶装置20は、データ信号SDAとして例えばローレベルを出力(判定結果の情報の送信を停止)する。これにより、プリンター10は、OK/NGフラグとしてローレベル(NG)を受信することになり、通信エラーと判断することができる。このようにして、プリンター10は、電源端子またはグランド端子のフローティング状態を、通信処理のエラーとして検出することができる。
【0126】
図21には、プリンターのライト処理のフローチャート例を示す。図21に示すように、プリンター10は、書き込み処理を開始すると、SOFデータを送信し(S202)、IDデータを送信し(S204)、ライトコマンドデータを送信する(S206)。そして、単位ライトデータを送信する処理を行い(S208)、OK/NGフラグを受信し(S210)、受信したOK/NGフラグがOKフラグであるかNGフラグであるかを判定する(S212)。OK/NGフラグがNGフラグの場合には(N)、エラー処理を行って(S214)通信処理を終了する。OK/NGフラグがOKフラグの場合には(Y)、ライトデータを全て送信したか否かを判定する(S216)。ライトデータを全て送信した場合には(Y)、EOFデータを送信して(S218)通信処理を終了する。ライトデータを全て送信していない場合には(N)、単位ライトデータを送信する処理を行う(S208)。
【0127】
図22には、記憶装置のライト処理のフローチャート例を示す。図19等で上述のように、記憶装置20は、ライトコマンドデータを受信すると、ライト処理を行う。図22に示すように、ライト処理では、単位ライトデータを受信する処理を行い(S302)、受信したライトデータが正常か否かを判定する(S304)。ライトデータが異常の場合には(N)、NGフラグを送信し(S306)、通信処理を終了する。ライトデータが正常の場合には(Y)、OKフラグを送信し(S308)、不揮発性メモリーの対象領域にライトデータを書き込む(S310)。EOFデータを受信したか否かを判定し(S312)、受信した場合には(Y)通信処理を終了し、受信していない場合には(N)単位ライトデータを受信する処理を行う(S302)。
【0128】
11.フローティング検出回路
図23に、フローティング検出回路の詳細な構成例を示す。図23に示す記憶装置20は、入力セルICEL、制御回路30、不揮発性メモリー60を含む。制御回路30は、フローティング検出回路130を含む。
【0129】
フローティング検出回路130は、電源端子TVからの電源電圧VDDが供給される電源ラインNV(電源ノード)のフローティング状態及び、グランド端子TGからのグランド電圧VSSが供給されるグランドラインNG(接地ライン、グランドノード)のフローティング状態の少なくとも一方を検出する。具体的には、フローティング検出回路130は、VSS検出回路134、VDD検出回路135を含む。
【0130】
VSS検出回路134は、グランドラインNGの電圧と、第1の端子T1から供給される第1の信号SG1の電圧(グランド電圧)とを比較して、NGのフローティング状態を検出する。例えば、端子T1は、クロック端子TKであり、信号SG1は、システムクロックSCKである。一方、VDD検出回路135は、電源ラインNVの電圧と、第2の端子T2から供給される第2の信号SG2の電圧(電源電圧)とを比較して、NVのフローティング状態を検出する。例えば、端子T2は、リセット端子TRであり、信号SG2は、リセット信号XRST(セット信号)である。
【0131】
入力セルICELは、第3の端子T3(他端子)から供給される第3の信号SG3をバッファリングして、第3の信号SG3を制御回路30に供給するためのものである。例えば、端子T3は、データ端子TDであり、信号SG3は、データ信号SDAである。入力セルICELは、抵抗素子RS、第1のダイオードD1(第1のダイオード素子)、第2のダイオードD2(第2のダイオード素子)、バッファFBを含む。抵抗素子RS、ダイオードD1、D2は、内部回路を静電破壊から保護するためのものである。なお、図23では省略したが、本実施形態では端子SG1、SG2にも入力セルが設けられてもよい。
【0132】
ここで、グランド端子TGが異物の挿入等によりフローティング状態となったとする。このとき、端子T3にローレベル(グランド電圧)が供給されたとする。そうすると、ダイオードD1を介してグランドラインNGから端子T3に電流が流れるため、グランドラインNGの電圧は、グランド電圧VSSからダイオードD1の順方向電圧だけ上昇した電圧となる。VSS検出回路134は、この電圧上昇を検出する。
【0133】
一方、電源端子TVが異物の挿入等によりフローティング状態となったとする。このとき、端子T3にはハイレベル(電源電圧)が供給されているものとする。そうすると、ダイオードD2を介して端子T3から電源ラインNVに電流が流れるため、電源ラインNVの電圧は、電源電圧VDDからダイオードD2の順方向電圧だけ降下した電圧となる。VDD検出回路135は、この電圧降下を検出する。
【0134】
図24(A)〜図24(C)を用いて、VSS検出回路の詳細な構成例について説明する。図24(A)に示すVSS検出回路134は、第1〜第3のN型トランジスターNT1〜NT3(広義には、第1導電型トランジスター)、第1、第2のP型トランジスターPT1、PT2(広義には、第2導電型トランジスター)、第1、第2のインバーターINV1、INV2を含む。
【0135】
VSS検出回路134は、差動対により構成される。具体的には、トランジスターPT1は、電源ラインNVと第1のノードN1との間に設けられる。PT1のゲート電極には、信号SG1が入力される。トランジスターPT2は、電源ラインNVと第2のノードN2との間に設けられる。PT2のゲート電極には、グランドラインNGの電圧が入力される。トランジスターNT1は、ノードN1と第3のノードN3との間に設けられる。トランジスターNT2は、ノードN2とノードN3との間に設けられる。トランジスターNT1、NT2のゲート電極には、ノードN2の電圧が入力される。トランジスターNT3は、ノードN3とグランドラインNGとの間に設けられる。NT3のゲート電極には、イネーブル信号EN(例えば、リセット信号XRST)が入力される。通常動作時には、ENはハイレベルに設定される。インバーターINV1には、ノードN1の電圧が信号Q1として入力される。インバーターINV2には、INV1の出力信号が入力され、INV2は、出力信号Q2を出力する。
【0136】
図24(A)に示すように、グラント端子TGにグランド電圧VSSが供給されている場合には、PT1のドレイン電流Id1とPT2のドレイン電流Id2が釣り合う(等しくなる)。このとき、ノードN1の電圧がインバーターINV1のロジカルスレショルド以下となる(INV1がハイレベルを出力する)ように差動対を設計しておくことで、出力信号Q2はハイレベルとなる。
【0137】
図24(B)に示すように、グランド端子TGがフローティング状態であり、信号SG3がローレベルであるとする。このとき、上述のようにグランドラインNGの電圧が上昇するため、Id1>Id2となり、ノードN1の電圧が上昇する。そのため、インバーターINV2の出力信号Q2はハイレベルとなる。一方、図24(C)に示すように、信号SG3がハイレベルであるとする。このとき、グランドラインNGからVSSへの電流パスがなくなるため、NGの電圧は上昇する。そのため、同様にインバーターINV2の出力信号Q2はハイレベルとなる。
【0138】
なお、VDD検出回路135は、VSS検出回路134と同様に差動対により構成できる。例えば、VDD検出回路135は、第1、第2のN型トランジスターNT1’、NT2’、第1〜第3のP型トランジスターPT1’〜PT3’を含む。そして、NT1’は、グランドラインNGと第1のノードN1’との間に設けられ、そのゲート電極には、信号SG2が入力される。NT2’は、グランドラインNGと第2のノードN2’との間に設けられ、そのゲート電極には、電源ラインNVの電圧が入力される。PT1’、PT2’は、ノードN1’、N2’と第3のノードN3’との間に設けられ、そのゲート電極には、ノードN2’の電圧が入力される。PT3’は、ノードN3’と電源ラインNVとの間に設けられ、そのゲート電極には、イネーブル信号ENの反転信号(通常動作時はローレベルに設定される)が入力される。
【0139】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語(不揮発性の記憶部、フローティング状態、基板、液体容器、ホスト装置等)と共に記載された用語(不揮発性メモリー、オープン状態、回路基板、インクカートリッジ、プリンター等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また制御部、不揮発性の記憶部、記憶装置、基板、液体容器、ホスト装置等の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定に限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0140】
10 ホスト装置、20 記憶装置、30 制御部、32 検出回路、
34 マスク処理部、36 アクセス制御部、38 送受信部、40 ID比較部、
42 コマンド解釈部、44 アドレスカウンター、46 リード/ライト制御部、
48 カウンター制御部、50 複製データ生成部、52 反転データ生成部、
54 データ判定部、60 不揮発性の記憶部、100 保持部、
110 パワーオンリセット回路、120 電源監視回路、
130 フローティング検出回路、134 VSS検出回路、
135 VDD検出回路、200 液体容器、210 センサー、220 基板、
240 インク供給口、300 主制御部、310 サブ制御部、
TV 電源端子、TVH ホスト装置側の電源端子、TG グランド端子、
TGH ホスト装置側のグランド端子、TR リセット端子、
TRH ホスト装置側のリセット端子、VDD 電源電圧、VSS グランド電圧、
SCK システムクロック、Ta アクセスサイクル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不揮発性の記憶部と、
前記不揮発性の記憶部を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、
電源異常状態を検出する検出回路と、
前記不揮発性の記憶部に対する読み出し又は書き込みのアクセス制御を行い、前記検出回路により電源異常状態が検出された場合に、前記不揮発性の記憶部に対する読み出し又は書き込みのアクセス制御を停止するアクセス制御部と、
を有し、
前記アクセス制御部は、
アクセスサイクルの開始後に前記検出回路により電源異常状態が検出された場合には、前記アクセスサイクルにおける読み出し又は書き込みのアクセス制御については、停止せずに完了することを特徴とする記憶装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記アクセスサイクルは、読み出し又は書き込みのアクセス制御をイネーブルにするイネーブル信号の論理レベルの変化により開始し、前記アクセスサイクルにおける読み出し動作又は書き込み動作は、読み出し又は書き込みのアクセス制御を行うためのクロックをアクティブにすることで開始し、
前記アクセス制御部は、
前記アクセスサイクルの開始後に前記検出回路により電源異常状態が検出された場合に、読み出し又は書き込みのアクセス制御を行うための前記クロックをアクティブにすることで、前記アクセスサイクルにおける読み出し又は書き込みのアクセス制御を完了することを特徴とする記憶装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記アクセス制御部は、
読み出し又は書き込みのアクセス制御を行うための前記クロックのアクティブエッジを遅延した信号に基づいて、前記不揮発性の記憶部の読み出し動作又は書き込み動作の制御信号を生成することを特徴とする記憶装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記制御部は、
前記アクセス制御部に供給されるシステムクロックのマスク処理を行うマスク処理部を含み、
前記マスク処理部は、
前記検出回路により電源異常状態が検出された場合に、前記システムクロックをマスクすることを特徴とする記憶装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記マスク処理部は、
前記検出回路により電源異常状態が検出された場合に、前記システムクロックを1パルスだけ出力した後に前記システムクロックをマスクすることを特徴とする記憶装置。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記検出回路は、
ホスト装置からの電源電圧が供給されるホスト側電源端子に接続される電源端子及び、前記ホスト装置からのグランド電圧が供給されるホスト側グランド端子に接続されるグランド端子の少なくとも一方のフローティング状態を検出し、
前記マスク処理部は、
前記検出回路により前記フローティング状態が検出された場合に、前記システムクロックをマスクすることを特徴とする記憶装置。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれかにおいて、
前記検出回路は、
ホスト装置から供給される電源電圧の低下を検出し、
前記マスク処理部は、
前記検出回路により、前記ホスト装置から供給される電源電圧の低下が検出された場合に、前記システムクロックをマスクすることを特徴とする記憶装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記不揮発性の記憶部は、
読み出し動作において、読み出したデータの再書き込みを必要とする不揮発性メモリーであり、
前記アクセス制御部は、
読み出しのアクセス制御におけるアクセスサイクルの開始後に電源異常状態が検出された場合に、前記不揮発性メモリーに対する読み出し動作及び再書き込み動作を完了することを特徴とする記憶装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記不揮発性メモリーは、強誘電体メモリーであり、
前記アクセス制御部は、
読み出し又は書き込みのアクセス制御を行うためのクロックのアクティブエッジを遅延した信号に基づいて、前記強誘電体メモリーの読み出し動作又は書き込み動作の制御信号として、前記強誘電体メモリーのワード線及びプレート線に印加する電圧を制御する制御信号を生成することを特徴とする記憶装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の記憶装置を含むことを特徴とする基板。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれかに記載の記憶装置を含むことを特徴とする液体容器。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれかに記載の記憶装置と、
ホスト装置と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項13】
不揮発性の記憶部を制御し、
電源異常状態を検出し、
前記不揮発性の記憶部に対する読み出し又は書き込みのアクセス制御を行い、
電源異常状態が検出された場合に、前記不揮発性の記憶部に対するアクセス制御を停止し、
アクセスサイクルの開始後に電源異常状態が検出された場合には、前記アクセスサイクルにおける読み出し又は書き込みのアクセス制御については、停止せずに完了することを特徴とする記憶装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−81659(P2011−81659A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234383(P2009−234383)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】