説明

記憶装置及びその制御方法

【課題】バックアップ電源の疲弊に応じて機器の動作を変える技術を提供する。
【解決手段】記憶用メモリと、この記憶用メモリへのキャッシュを担うキャッシュメモリ
と、このキャッシュメモリへのキャッシュサイズを制御する制御手段と、電源断時のバッ
クアップを行うバックアップ手段とを備え、このバックアップ手段の疲弊に応じて前記制
御手段は前記キャッシュサイズを変える記憶装置。また、記憶用メモリと、この記憶用メ
モリのキャッシュを担うキャッシュメモリとを備え、電源断時のバックアップを行う記憶
装置の制御方法であって、この記憶装置にバックアップを行うバックアップ電源の疲弊を
予め測定し、この疲弊に応じて前記キャッシュメモリへのキャッシュサイズを調整する制
御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、バックアップ電源付き記憶装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電源の状態に応じて、機器の動作を変える工夫がされてきている。例えば、概要として
バッテリの電圧値に応じてライト動作モードをライトバックモードにしたり、或いはライ
トスルーモードにしたりするというものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、バッテリよりも簡易なキャパシタ(例えば電気二重層コンデンサ)などをバック
アップ電源に利用することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−287108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
他方で、バッテリよりも簡易な電気二重層コンデンサなどによるバックアップ電源にお
いてはより特に、このバックアップ電源の疲弊の問題があり、疲弊に応じて機器の動作を
変えることへの要望があるが、かかる要望を実現するための手段は知られていない。
【0006】
本発明の実施の形態は、バックアップ電源の疲弊に応じて機器の動作を変える技術を提
供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、実施形態によれば記憶装置は、記憶用メモリと、この記憶
用メモリへのキャッシュを担うキャッシュメモリと、このキャッシュメモリへのキャッシ
ュサイズを制御する制御手段と、電源断時のバックアップを行うバックアップ手段とを備
え、このバックアップ手段の疲弊に応じて前記制御手段は前記キャッシュサイズを変える

【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態の電気二重層コンデンサ6の経年劣化のグラフ。
【図3】同実施形態のバックアップ電源付き装置の制御方法の概要を示すフローチャート。
【図4】同実施形態のライトキャッシュ可能なデータ量を調整した場合の効果を示す図。
【図5】同実施形態に用いられるモニタガンマ特性曲線を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態を図1乃至図5を参照して説明する。
図1に不揮発性メモリを搭載した記憶装置の概略図を示す。
NAND型不揮発性メモリを制御するSoC1(System on a chip)には、SDRAM2
、電源監視回路3、DDC(DC−DCコンバータ)4が接続されていて、外部のPC(
パーソナルコンピュータ)などのホストシステムと交信する構成となっている。またDD
C4は、電源監視回路3、DDC5と共に+5Vと+12Vの2種の電圧を供給され、ま
た電気二重層コンデンサ6からも電圧を供給されあるいは供給している。
【0010】
またSoC1内には、NANDC(NAND Controller)11、SASC(
SAS Controller)12、SAS(Serial Attached SC
SI) I/F(インタフェース)13、CPUA14、CPUB15およびBuffe
r Controller16が在る。NANDC11は外部のNAND型不揮発性メモ
リに又Buffer Controller16はSDRAM2に接続されている。
【0011】
電源監視回路3にて電源断を検出時には電気二重層コンデンサ6から各ハードウェアに
電源供給を行い、SDRAM2上にあるライトキャッシュデータを不揮発性メモリに書き込む
処理を行うよう構成されている。電気二重層コンデンサ6の容量は、例えば100mF〜150mF
のものが開発されている。
【0012】
ホストシステムからは、SAS I/F13を経由して後述のコマンドを受け取る。こ
のときSASC12は、SAS I/F13を制御してNANDC11、CPUA14お
よびBuffer Controller16と交信する。
【0013】
例えばコマンドは、Buffer Controller16を経由してSDRAM2
に保持され後にCPUA14でフェッチされ実行に移される。CPUA14は、Buff
er Controller16を通じてCPUB15に働きかけてNANDC11を動
作させ、NAND型不揮発性メモリへの記録またはメモリからの読出しを制御させる。
【0014】
なおNAND型不揮発性メモリに書かれるホストシステムからのユーザデータは、SA
S I/F13、SASC12そしてNANDC11を経由する。このユーザデータの読
み出しは逆のルートとなる。
【0015】
図2に電気二重層コンデンサ6の経年劣化のグラフを示す。横軸は経過時間であり縦軸
はバックアップ時間である。この図では、5段階の温度をパラメータとして表現されてい
る。例えば一番高い温度(100℃)では50,000h後にはバックアップ時間は0.
01(秒)以下に低下しているが、一番低い温度(60℃)では50,000h後でもバ
ックアップ時間は0.09(秒)以上に保たれ、バックアップ時間の低下(疲弊の度合い
、以下では疲弊度)はあまり認められない。
【0016】
一般に従来,ライトキャッシュするデータ量は固定であり,装置の保証期間到達時の疲
弊度を予測して、この固定のデータ量を決めていた。電気二重層コンデンサは上記のよう
に温度や湿度によって疲弊度が変わるため,装置保証内の最悪環境を考慮する必要があり
,実力より非常に低いデータ量を設定する必要があった。
【0017】
対して本実施形態はこのデータ量を可変で使う。この動作について以下に説明する。基
本的には次の2つのデータ量の扱い方法で実施する。
(1)電源投入時および定期的(例えば1日1回)に電気二重層コンデンサの状態をチェ
ックして,ライトキャッシュ可能なデータ量を求める。記憶装置は状態を表す疲弊度の測
定値によってライト処理を行う。
【0018】
(2)(1)に加えて,データ量の確認とこのデータ量の範囲内でのデータ量の指定(容
量または比率)を行うコマンドを用意して,記憶装置はその指定によってライト処理を行
う。
【0019】
図3にバックアップ電源付き装置の制御方法の概要を示す。
即ち、電源投入時および定期的(例えば1日1回)に容量測定(詳細は図5で後述)を
行い、ライトキャッシュ可能なデータ量調整を本実施形態の記憶装置は行う。SAS(SCSI
)規格の場合、コマンド,データ,ステータスの組み合わせでコマンド処理が構成されて
いる。記憶装置が測定したライトキャッシュ可能なデータ量はSCSI規格のLOG SENSE
/ LOG SELECT コマンドを用いて、通知及び参照を可能とすることにより、ホストシステ
ムでの管理が可能となる。
【0020】
SCSI規格のコマンドはSSP フレームのシーケンスで処理される。フレームは,1 つ
またはそれ以上のコネクションの間で送信される。例えば,SSP INIT ポートによって確
立されたコネクションで,COMMAND フレームは送信される(なお、データ,ステータスは
それぞれ、SSP TARG ポートによって確立された1 つまたはそれ以上のコネクションでDAT
A フレームとRESPONSEフレームとして送信される)。
コマンドの形式としてINIT ( initiator )からSSD (Solid State Drive)に対する入
出力動作の指令(コマンド)は、CDB ( command descriptor block )によって行われる
。CDB は、コマンドフレームでINIT からTARGへ転送される情報である。いくつかのコマンドでは、CDB の指定の他にデータフレームで
コマンドの実行に必要なパラメータを指定する場合がある。
4系統のコマンドのうちのコントロール/センス系コマンドの一つであるLOG SENSEコ
マンドは、SSD が保持している統計情報をINIT が収集するための手段を提供する。またL
OG SELECTコマンドは、SSD についてSSD が維持している統計情報をINIT が管理する手段
を提供する。INIT はLOG SENSE コマンドを用いることにより統計情報の種類および現在
保持している統計情報の値を知ることができる。
【0021】
さて図3をステップ毎に述べると、次のようになる。
ステップS31: まず容量測定を行う。
ステップS32: この容量測定の測定結果に応じてライトキャッシュ可能なデータ量調
整を行う。
ステップS33: 次にコマンド受信を行う。コマンドが到来した場合にはステップS3
5へ進む。
ステップS34: ステップS33でコマンドが到来せず指定時間を経過した場合はステ
ップS31に戻り、それまではステップS33に戻る。
ステップS35: コマンド内容を判定しLOG SENSE/ LOG SELECT コマンドであった場
合には、ホストシステムによるライトキャッシュ可能なデータ量の通知もしくは指定を行
い、ステップS33に戻る。また他のコマンドであった場合にはこのコマンドの処理(ホ
ストシステムへキャッシュサイズを通知する、またはホストシステムからキャッシュサイ
ズを指定される交信手段を含む)を行いステップS33に戻る。
【0022】
従来、ライトキャッシュするデータ量は固定であり、電源断時にデータロスする可能性
があったが、本技術では、それを防止することが可能である。
図4にライトキャッシュ可能なデータ量を調整した場合の効果を示す。5段階の温度を
パラメータとして表現してある。
例えば一番高い温度(100℃)ではライトキャッシュ可能なデータ量は1MBに飽和
しており、115mSec後から図4のグラフの斜め線に沿う形でキャッシュされたデー
タが吐き出されてキャッシュ処理が終息に向かう。対して、一番低い温度(60℃)では
ライトキャッシュ可能なデータ量は11.25MBに保たれている(ホスト転送終了(=
0mSec)後すぐに処理が終息に向かう)。なお、縦軸11.25MBと横軸125m
Sec程度を結び、処理が終息に向かう斜めの線は各パラメータ共通の線である(100
℃では115mSec後から電源遮断可となる)。
【0023】
このようにライトキャッシュ可能なデータ量を温度も加味して大きく設定することが可
能となり、結果、データ受信能力があがり、バックアップ電源が疲弊していない状態での
限界に近いライト性能を引き出すことができ、また疲弊時のライト失敗を防止することが
できる。
【0024】
なお、図5にバックアップ電源付き装置の図3の容量測定の制御方法の概要を示す。
これをステップ毎に述べると、次のようになる。
ステップS51: まず電気二重層コンデンサ6の充電処理を行う。
ステップS52: 次に電気二重層コンデンサ6の放電開始電圧(VH)の測定を行う。
ステップS53: 次に「容量測定の設定された測定終了時間を取得し」放電を開始する

ステップS54: 次に電気二重層コンデンサ6の端子電圧(V)の測定を行う。
ステップS55: この端子電圧(V)が測定された電気二重層コンデンサ6の放電終了
電圧(VL)以下であるかの判定を行う。
この判定結果がYesであった場合には、ステップS56に進む。またこの判定結果がN
oであった場合にはステップS54に戻る。
ステップS56: 次に測定終了時間を取得しまた終了電圧を取得する。
ステップS57: 次に容量を測定する。
ステップS58: 最後に再充電処理を行う。
本実施形態は,記憶装置(SSDなど)で性能向上の手段としてライトキャッシュ機能を使
うために,電源断時の未書き込みデータ保証としてバックアップ電源(電気二重層コンデ
ンサなど)を搭載した装置の制御方法に関する。効果として以下の点がある。
【0025】
(1)バックアップ電源の疲弊度に応じてライトキャッシュデータ量を決める。バックア
ップ電源が疲弊していない状態での限界に近いライト性能を引き出すことができ,疲弊時
のライト失敗を防止することができる。
【0026】
(2)ホストシステムヘライトキャッシュ可能なデータ量を通知する手段を持つ。
ライトキャッシュ可能なデータ量についての高性能品をアクセスが高いシステムで使い,
低性能品をアクセスが低いシステムで使う等の振り分けができる。複数の記憶装置を組み
合わせたシステム(例えばRAID)において,性能低下が顕著な装置の置き換えの判断に使
うことができる。
【0027】
(3)ホストシステムからライトキャッシュ可能なデータ量を指定する手段を持つ。
これらのことにより、複数の記憶装置を組み合わせたシステムにおいて,性能をそろえ
る手段に使うことができる。
上記のように、ライトキャッシュ可能なデータ量をバックアップ可能な電源の疲弊度に
応じて調整する。概要として、ライトキャッシュ可能なデータ量をバックアップ電源の疲
弊度に応じて調整する制御、ホストシステムヘライトキャッシュ可能なデータ量を通知す
る手段を有する制御、ホストシステムからライトキャッシュ可能なデータ量を指定する手
段を有する制御について説明した。
【0028】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この外その要旨を逸脱しな
い範囲で種々変形して実施することができる。SCSI規格の他に、SATA規格などを
用いたものであってもよい。
【0029】
また、上記した実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜に組み合わせること
により、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素
から幾つかの構成要素を削除しても良いものである。さらに、異なる実施の形態に係わる
構成要素を適宜組み合わせても良いものである。
【符号の説明】
【0030】
1 SoC(System on a chip)
2 SDRAM
3 電源監視回路
4 DDC
5 DDC
6 電気二重層コンデンサ
11 NANDC
12 SASC
13 SAS I/F
14 CPUA
15 CPUB
16 Buffer Controller

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源断時のバックアップを行うバックアップ手段を備えた記憶装置であって、
情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段のキャッシュを担うキャッシュメモリと、
前記バックアップ手段の疲弊に応じて前記キャッシュメモリへのキャッシュサイズを調
整する制御手段と、
を備える記憶装置。
【請求項2】
前記バックアップ手段の疲弊がより大きい場合に前記制御手段は前記キャッシュサイズ
をより小さくする請求項1に記載の記憶装置。
【請求項3】
前記バックアップ手段はキャパシタを用いて成る請求項1に記載の記憶装置。
【請求項4】
前記記憶手段は不揮発性の半導体メモリである請求項1に記載の記憶装置。
【請求項5】
更に外部のホストシステムへキャッシュサイズを通知する、またはホストシステムから
キャッシュサイズを指定される交信手段を備えた請求項1に記載の記憶装置。
【請求項6】
記憶用メモリと、この記憶用メモリのキャッシュを担うキャッシュメモリとを備え、電
源断時のバックアップを行う記憶装置の制御方法であって、
この記憶装置にバックアップを行うバックアップ電源の疲弊を予め測定し、
この疲弊に応じて前記キャッシュメモリへのキャッシュサイズを調整する制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−174143(P2012−174143A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37605(P2011−37605)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】