説明

記憶装置及びその製造方法

【課題】信頼性が高い記憶装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態に係る記憶装置の製造方法は、複数の微小導電体が隙間を介して集合したナノマテリアル集合層を形成する工程と、前記ナノマテリアル集合層上に、被覆率が相対的に低くなる第1の方法によって導電性材料を堆積させることにより、第1電極層を形成する工程と、前記第1電極層上に、被覆率が相対的に高くなる第2の方法によって導電性材料を堆積させることにより、第2電極層を形成する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、記憶装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特定の金属酸化物系の材料に電圧を印加すると、電圧印加前の抵抗率と印加した電圧の大きさによって、この材料が低抵抗状態と高抵抗状態の2つの状態をもつ現象が発見され、その現象を利用した新たな不揮発性記憶装置が注目を集めている。この不揮発性記憶装置をReRAM(Resistance Random Access Memory)という。ReRAMの実デバイス構造に関しては、高集積化の観点から、WL(ワードライン)とBL(ビットライン)の交点にメモリセルを配置する3次元クロスポイント構造が提案されている。そして、ReRAMの製品化に際しては、高い信頼性が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−252974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の目的は、信頼性が高い記憶装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る記憶装置は、複数の微小導電体が隙間を介して集合したナノマテリアル集合層と、前記ナノマテリアル集合層上に設けられた第1電極層と、前記第1電極層上に設けられた第2電極層と、を備える。そして、前記第2電極層の被覆率は、前記第1電極層の被覆率よりも高い。
【0006】
実施形態に係る記憶装置の製造方法は、複数の微小導電体が隙間を介して集合したナノマテリアル集合層を形成する工程と、前記ナノマテリアル集合層上に、被覆率が相対的に低くなる第1の方法によって導電性材料を堆積させることにより、第1電極層を形成する工程と、前記第1電極層上に、被覆率が相対的に高くなる第2の方法によって導電性材料を堆積させることにより、第2電極層を形成する工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係る記憶装置を例示する斜視図である。
【図2】第1の実施形態におけるピラーを例示する模式的断面図である。
【図3】(a)及び(b)は、第1の実施形態に係る記憶装置の製造方法を例示する工程断面図である。
【図4】(a)及び(b)は、第1の実施形態に係る記憶装置の製造方法を例示する工程断面図である。
【図5】(a)及び(b)は、第1の実施形態に係る記憶装置の製造方法を例示する工程断面図である。
【図6】第2の実施形態におけるピラーを例示する模式的断面図である。
【図7】(a)及び(b)は、第2の実施形態に係る記憶装置の製造方法を例示する工程断面図である。
【図8】(a)及び(b)は、第2の実施形態に係る記憶装置の製造方法を例示する工程断面図である。
【図9】(a)及び(b)は、第2の実施形態に係る記憶装置の製造方法を例示する工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
先ず、第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る記憶装置を例示する斜視図であり、
図2は、本実施形態におけるピラーを例示する模式的断面図である。
本実施形態に係る記憶装置は、ReRAMである。
【0009】
図1に示すように、本実施形態に係る記憶装置1においては、シリコン基板11が設けられており、シリコン基板11の上層部分及び上面上には、記憶装置1の駆動回路(図示せず)が形成されている。シリコン基板11上には、駆動回路を埋め込むように、例えばシリコン酸化物からなる層間絶縁膜12が設けられており、層間絶縁膜12上にはメモリセル部13が設けられている。
【0010】
メモリセル部13においては、シリコン基板11の上面に平行な一方向(以下、「ワード線方向」という)に延びる複数本のワード線WLを含むワード線配線層14と、シリコン基板11の上面に平行な方向であって、ワード線方向に対して交差、例えば直交する方向(以下、「ビット線方向」という)に延びる複数本のビット線BLを含むビット線配線層15とが、絶縁層を介して交互に積層されている。また、ワード線WL同士、ビット線BL同士、ワード線WLとビット線BLとは、相互に接していない。
【0011】
そして、各ワード線WLと各ビット線BLとの最近接点には、シリコン基板11の上面に対して垂直な方向(以下、「上下方向」という)に延びるピラー16が設けられている。ピラー16は、ワード線WLとビット線BLとの間に形成されている。1本のピラー16により、1つのメモリセルが構成されている。すなわち、不揮発性記憶装置1は、ワード線WLとビット線BLとの最近接点毎にメモリセルが配置されたクロスポイント型の装置である。ワード線WL、ビット線BL及びピラー16の相互間は、層間絶縁膜17(図5参照)によって埋め込まれている。
【0012】
以下、図2を参照して、ピラー16の構成を説明する。
図2に示すように、各ピラー16においては、下方から上方に向かって、バリアメタル層21、整流作用を有する整流素子層22、下部電極層23、ナノマテリアル集合層24、低被覆率電極層25及び高被覆率電極層26がこの順に積層されている。低被覆率電極層25及び高被覆率電極層26により、ナノマテリアル集合層24の上部電極層が形成されている。バリアメタル層21は例えばワード線WL(図1参照)に接しており、高被覆率電極層26は例えばビット線BL(図1参照)に接している。また、最下層のワード線WLと層間絶縁膜12との間には、バリアメタル層29(図5参照)が設けられている。
【0013】
バリアメタル層29は、層間絶縁膜12とワード線WLとの間の拡散を防止すると共に、密着性を改善する層であり、バリアメタル層21は、ワード線WLと選択素子層22との間の拡散を防止すると共に、密着性を改善する層である。バリアメタル層29及び21は、例えば窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)又は窒化タングステン(WN)等の導電性材料により形成されている。
【0014】
整流素子層22は、例えばポリシリコンダイオード層からなり、下層側から順に、導電形がn形のn形層、真性半導体からなるi形層、及び導電形がp形のp形層が積層されている。これにより、整流素子層22は、例えば、ビット線BLにワード線WLよりも高い電位が供給された場合にのみ電流を流し、逆方向の電流は流さない選択素子層として機能する。下部電極層23はタングステン又は窒化チタン等の導電性材料によって形成されている。
【0015】
ナノマテリアル集合層24は、例えば、微小導電体としてのCNT(カーボンナノチューブ)31が隙間32を介して集合した層である。隙間32は空気層となっており、従って、ナノマテリアル集合層24の構造は中空構造である。ナノマテリアル集合層24の厚さ方向におけるCNT31の積層数は、例えば、数層〜数十層程度である。
【0016】
また、低被覆率電極層25及び高被覆率電極層26は、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、窒化タングステン(WN)等の金属窒化物、又は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等の金属によって形成されている。低被覆率電極層25及び高被覆率電極層26は、同じ種類の材料によって形成されていてもよく、相互に異なる種類の材料によって形成されていてもよい。低被覆率電極層25の厚さは例えば20nm以上であり、高被覆率電極層26の厚さは例えば5nm以上である。また、低被覆率電極層25の下層25bには、ナノマテリアル集合層24を構成するCNT31の一部が埋め込まれている。
【0017】
但し、低被覆率電極層25と高被覆率電極層26とは、膜質が異なっており、高被覆率電極層26の被覆率は、低被覆率電極層25の被覆率よりも高い。また、低被覆率電極層25及び高被覆率電極層26が同種の材料により形成されている場合は、高被覆率電極層26の密度は低被覆率電極層25の密度よりも高い。更に、低被覆率電極層25及び高被覆率電極層26の結晶構造は共に多結晶構造であるが、高被覆率電極層26の平均結晶粒径は、低被覆率電極層25の平均結晶粒径よりも大きい。又は、低被覆率電極層25の結晶構造は多結晶構造であり、高被覆率電極層26の結晶構造は非晶質構造であってもよい。このような結晶構造の違いは、例えば、ピラー16の上下方向を含む断面をTEM(transmission electron microscopy:透過型電子顕微鏡)によって観察することで、確認することができる。
【0018】
後述するように、低被覆率電極層25は物理気相成長(PVD:physical vapor deposition)法によって形成されたものであり、高被覆率電極層26は化学気相成長(CVD:chemical vapor deposition)法によって形成されたものである。このため、高被覆率電極層26にはハロゲン系の不純物が含有されているが、低被覆率電極層25には不純物は実質的に含有されていない。
【0019】
次に、本実施形態に係る記憶装置の製造方法について説明する。
図3(a)及び(b)、図4(a)及び(b)、図5(a)及び(b)は、本実施形態に係る記憶装置の製造方法を例示する工程断面図である。
なお、図3〜図5においては、CNT31及び隙間32は図示を省略している。
【0020】
先ず、図1に示すように、シリコン基板11の上面に、メモリセル部13を駆動するための駆動回路を形成する。次に、シリコン基板11上に層間絶縁膜12を形成する。次に、層間絶縁膜12内に、駆動回路まで到達するコンタクト(図示せず)を形成する。
【0021】
次に、図3(a)に示すように、層間絶縁膜12の上層部分に、ワード線方向に相互に平行に延びるように複数本の溝を形成する。次に、この溝の内面上にバリアメタル層29を形成する。次に、溝内にタングステンを埋め込むことにより、ワード線WLを形成する。ワード線WLは、ワード線方向に相互に平行に延びるように複数本形成される。これらの複数本のワード線WLにより、ワード線配線層14が形成される。
【0022】
次に、図3(b)に示すように、ワード線配線層14上に、例えばスパッタ法により、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)又は窒化タングステン(WN)等の導電性材料を堆積させて、バリアメタル層21を形成する。次に、例えばLP−CVD(low pressure chemical vapor deposition:低圧化学気相成長)法により、バリアメタル層21上にアモルファスシリコンを堆積させる。このとき、アモルファスシリコンを堆積させながら各不純物を導入して、n形層、i形層及びp形層を連続的に形成して、整流素子層22を形成する。次に、整流素子層22上にタングステン又は窒化チタン等の導電性材料を堆積させて、下部電極層23を形成する。
【0023】
次に、下部電極層23上に、CNT31(図2参照)が分散された分散液をスピンコート法によって塗布し、乾燥させる。これにより、ナノマテリアル集合層24が形成される。図2に示すように、ナノマテリアル集合層24においては、複数本のCNT31が緩く結合しており、CNT31間には隙間32が形成されている。また、分散液が乾燥して厚さが減少する過程で、CNT31が延びる方向は、水平方向、すなわち、ワード線方向とビット線方向がなす平面に平行な方向に近づく。
【0024】
次に、ナノマテリアル集合層24上に、導電性材料、例えば、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、窒化タングステン(WN)等の金属窒化物、又は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等の金属を堆積させて、低被覆率電極層25を形成する。低被覆率電極層25の厚さは、例えば20nm以上とする。低被覆率電極層25を形成するための導電性材料の堆積は、被覆率が相対的に低くなる方法によって行い、例えば、PVD法によって行い、例えば、スパッタ法又は蒸着法によって行う。このとき、この導電性材料の一部はナノマテリアル集合層24の隙間32内に侵入するが、被覆率が低くなる方法によって導電性材料を堆積させることにより、この侵入を抑制することができる。例えば、導電性材料の侵入深さを、20nm以下に抑えることができる。隙間32内に導電性材料が侵入することにより、低被覆率電極層25の下層25b内にCNT31(図2参照)が埋め込まれる。
【0025】
次に、図4(a)に示すように、低被覆率電極層25上に、例えば低被覆率電極層25を形成する導電性材料と同種類の導電性材料を堆積させて、高被覆率電極層26を形成する。なお、低被覆率電極層25を形成する導電性材料とは異なる材料を堆積させてもよい。いずれの場合も、例えば、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、窒化タングステン(WN)等の金属窒化物、又は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等の金属を堆積させることができる。高被覆率電極層26の厚さは、例えば5nm以上とする。
【0026】
高被覆率電極層26を形成するための導電性材料の堆積は、被覆率が相対的に高くなる方法によって行い、例えば、CVD法によって行い、例えば、熱CVD法又はプラズマCVD法によって行う。高被覆率電極層26を被覆率が高い方法によって行うことにより、以後の工程において使用される薬液、及び以後の工程において形成される層に含まれる水分等が、ナノマテリアル集合層24内に侵入することを防止できる。また、高被覆率電極層26とナノマテリアル集合層24との間には低被覆率電極層25が設けられているため、高被覆率電極層26を形成する導電性材料がナノマテリアル集合層24内に侵入することはない。
【0027】
なお、高被覆率電極層26をCVD法によって形成した場合には、CVD法のソースガス中に含まれるハロゲン元素等の不純物が高被覆率電極層26中に残留する。例えば、高被覆率電極層26をタングステン(W)によって形成する場合には、CVD法のソースガスとしてフッ化タングステン(WF)を使用するため、高被覆率電極層26中にはフッ素(F)が残留する。また、高被覆率電極層26を窒化チタン(TiN)によって形成する場合には、CVD法のソースガスとして塩化チタン(TiCl)を使用するため、高被覆率電極層26中には塩素(Cl)が残留する。
【0028】
次に、高被覆率電極層26上に、例えばシリコン酸化物からなるハードマスク41を形成する。次に、ハードマスク41上に、レジスト膜42を形成する。次に、図4(b)に示すように、リソグラフィー法により、レジスト膜42をパターニングして、レジストパターン42aを形成する。そして、レジストパターン42aが正常に形成された場合には、図5(a)に示す工程に進む。一方、レジストパターン42aに不具合が生じた場合、例えば、レジストパターン42aの位置ずれ量が許容範囲を超えた場合には、リワーク工程を実施する。リワーク工程には、不具合が発生したレジストパターン42aの除去と、新たなレジストパターン42aの再形成が含まれる。
【0029】
すなわち、図4(b)に示す工程において形成されたレジストパターン42aに不具合が生じた場合には、例えば硫酸及び過酸化水素水を含む薬液を用いたウェット処理を施し、レジストパターン42aを除去する。そして、図4(a)に示すように、新たにレジスト膜42を形成する。次に、図4(b)に示すように、このレジスト膜42をパターニングして、新たにレジストパターン42aを形成する。なお、この新たに形成されたレジストパターン42aにも不具合が生じた場合には、上述のレジストパターン42aを除去する工程、レジスト膜42を形成する工程、及びレジストパターン42aを形成する工程を再度実施する。
【0030】
そして、不具合の無いレジストパターン42aが形成されたら、図5(a)に示すように、レジストパターン42a(図4参照)をマスクとしてハードマスク41(図4参照)をパターニングする。次に、パターニングされたハードマスク41をマスクとしてRIE(reactive ion etching:反応性イオンエッチング)等のエッチングを施し、高被覆率電極層26、低被覆率電極層25、ナノマテリアル集合層24、下部電極層23、整流素子層22及びバリアメタル層21を選択的に除去する。これにより、ピラー16が形成される。
【0031】
次に、例えば、フッ酸系の薬液、例えば、DHF(diluted hydrofluoric acid:希フッ酸)又はBHF(buffered hydrofluoric acid:バッファードフッ酸)を用いてウェット洗浄し、ピラー16の側面上に付着した副生成物(図示せず)を除去する。次に、例えばシリコン窒化物を堆積させて、ピラー16の側面上に側壁(図示せず)を形成する。次に、シリコン酸化物又はシリコン窒化物等の絶縁材料を堆積させて、ピラー16間を埋め込み、層間絶縁膜17を形成する。次に、高被覆率電極層26をストッパとしてCMP(chemical mechanical polishing:化学的機械研磨)を施し、層間絶縁膜17の上面を平坦化する。このとき、高被覆率電極層26を5nm以上の厚さに残留させる。
【0032】
次に、図5(b)に示すように、高被覆率電極層26上に複数本のビット線BLを形成する。ビット線方向に延びる複数本のビット線BLにより、ビット線配線層15が形成される。次に、上述と同様な方法により、バリアメタル層21、選択素子層22、下部電極層23、ナノマテリアル集合層24、低被覆率電極層25及び高被覆率電極層26をこの順に積層し、パターニングしてピラー16を形成し、洗浄し、側壁を形成し、層間絶縁膜17で埋め込む。このようにして、ビット線BL上にピラー16を形成する。このピラー16を形成する際には、上述のワード線WL上に形成したピラー16に対して、選択素子層22におけるn形層、i形層及びp形層の積層順序を逆にする。以後、同様な方法により、ワード線配線層14、複数本のピラー16、ビット線配線層15及び複数本のピラー16を繰り返し形成する。これにより、本実施形態に係る記憶装置1が製造される。
【0033】
次に、本実施形態の動作について説明する。
本実施形態に係る記憶装置1において、ナノマテリアル集合層24は、「高抵抗状態」と「低抵抗状態」の2つの状態を持つことができる。そのメカニズムは完全には解明されていないが、例えば、以下のように考えられる。
【0034】
ナノマテリアル集合層24の厚さ方向に電圧が印加されていないときは、CNT31同士は概ね相互に離隔した状態にあり、ナノマテリアル集合層24は「高抵抗状態」にある。一方、ナノマテリアル集合層24の厚さ方向に電圧を印加すると、CNT31間にクーロン力が発生して、引きつけ合う。そして、この電圧を一定時間以上継続して印加すると、クーロン力によってCNT31が移動・回転し、隣のCNT31と接触し、下部電極層23と低被覆率電極層25との間に複数本のCNT31を介した電流経路が形成される。この結果、ナノマテリアル集合層24は「低抵抗状態」となる。この状態は、ナノマテリアル集合層24に電圧が印加されなくなっても、維持される。また、ナノマテリアル集合層24の厚さ方向に、例えばナノ秒オーダーの短時間のパルス電圧を印加すると、CNT31同士の接触部分が発熱し、CNT31同士が離れる。この結果、ナノマテリアル集合層24は「高抵抗状態」に戻る。このように、ナノマテリアル集合層24は「高抵抗状態」と「低抵抗状態」の2つの状態を持つことができ、これにより、2値のデータを記憶することができる。このような動作を実現するために、CNT31間には適度な隙間32が形成されていることが必要である。
【0035】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態によれば、カーボンナノチューブ(CNT)31が集合したナノマテリアル集合層24によって抵抗変化層が実現されており、これにより、ReRAMが実現されている。従来の金属酸化物を用いた抵抗変化層は、金属酸化物が本来絶縁体であるため、動作が不安定であるという問題点があった。これに対して、本実施形態によれば、導電体であるCNTを用いて抵抗変化層を形成しているため、低い電圧で駆動することができ、動作が安定する。これにより、信頼性が高い記憶装置を実現することができる。
【0036】
また、本実施形態においては、ナノマテリアル集合層24上に低被覆率電極層25を形成する際には、PVD法等の被覆率が相対的に低くなる方法によって導電性材料を堆積させている。これにより、ナノマテリアル集合層24の隙間32内に導電性材料が侵入することを抑制できる。この結果、隙間32内に侵入した導電性材料がナノマテリアル集合層24を厚さ方向に貫通し、短絡させることを防止できる。一方、低被覆率電極層25上に高被覆率電極層26を形成する際には、CVD法等の被覆率が相対的に高くなる方法によって導電性材料を堆積させている。これにより、高被覆率電極層26の膜密度が高くなり、ピンホールが少なくなる。なお、高被覆率電極層26を形成する際には、下地として低被覆率電極層25が存在するため、高被覆率電極層26を形成する導電性材料がナノマテリアル集合層24内に侵入することはない。
【0037】
高被覆率電極層26を形成することにより、ハードマスク41に含まれる水分、レジスト膜42に含まれる水分、リワーク工程において使用する薬液等が、ハードマスク41のピンホール内及び低被覆率電極層25のピンホール内を通過して、ナノマテリアル集合層24内に侵入することを防止できる。これにより、ナノマテリアル集合層24内に侵入した水分及び薬液等が、ハードマスク41の成膜及びレジスト膜42のベーク等に伴う熱処理によってナノマテリアル集合層24内で気化したり、酸化反応等の反応を生じたりすることがない。この結果、このような気化又は反応によってナノマテリアル集合層24が剥離することがない。また、ナノマテリアル集合層24内に侵入した水分及び薬液等が不均一に分布することにより、メモリセルの電気特性がばらつくことがない。これにより、信頼性が高い記憶装置1を製造することができる。
【0038】
次に、第2の実施形態について説明する。
図6は、本実施形態に係る記憶装置のピラーを例示する模式的断面図である。
図6に示すように、本実施形態に係る記憶装置2は、前述の第1の実施形態に係る記憶装置1(図1及び図2参照)と比較して、ピラー16の上部電極層の構成が異なっている。
【0039】
すなわち、本実施形態においては、前述の第1の実施形態における低被覆率電極層25及び高被覆率電極層26(図2参照)の替わりに、上部電極層27が設けられている。上部電極層27は、例えば、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、窒化タングステン(WN)等の金属窒化物、又は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等の金属によって形成されている。但し、上部電極層27の最上層部分は窒化されている。図6においては、上部電極層27における窒化された部分を、窒化部分27aとして示している。窒化部分27aにおいては、主として上部電極層27の結晶粒界が窒化されている。上部電極層27内の窒素濃度は、上部電極層27の上面において最も高く、下方、すなわち、ナノマテリアル集合層24に向かうほど低くなっている。なお、図示の便宜上、図6においては、上部電極層27における窒化部分27aとそれ以外の部分との境界を破線によって示しているが、実際には、このような明確な境界があるわけではなく、窒素濃度が連続的に変化している。また、上部電極層27の下層27bには、ナノマテリアル集合層24を構成するCNT31が埋め込まれている。後述するように、上部電極層27は、被覆率が低い方法、例えば、PVD法によって形成された層である。本実施形態における上記以外の構成は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0040】
次に、本実施形態に係る記憶装置の製造方法について説明する。
図7(a)及び(b)、図8(a)及び(b)、図9(a)及び(b)は、本実施形態に係る記憶装置の製造方法を例示する工程断面図である。
なお、図7〜図9においては、CNT31及び隙間32(図6参照)は、図示を省略している。
【0041】
本実施形態に係る記憶装置の製造方法のうち、層間絶縁膜12上にワード線配線層14及びビット線配線層15を交互に形成する方法は、前述の第1の実施形態と同様である。また、ピラー16を形成する方法のうち、バリアメタル層21からナノマテリアル集合層24までを形成する方法も、前述の第1の実施形態と同様である。以下、本実施形態における記憶装置の製造方法のうち、前述の第1の実施形態とは異なる部分を中心に説明する。
【0042】
図7(a)に示すように、前述の第1の実施形態と同様な方法により、例えば、ワード線配線層14上に、バリアメタル層21、整流素子層22、下部電極層23及びナノマテリアル集合層24を形成する。
【0043】
次に、ナノマテリアル集合層24上に、上部電極層27を形成する。上部電極層27の形成方法は、前述の第1の実施形態における低被覆率電極層25の形成方法と同様である。すなわち、被覆率が相対的に低くなる方法、例えば、スパッタ法又は蒸着法等のPVD法により、窒化チタン(TiN)等の導電性材料を堆積させる。このとき、導電性材料の一部はナノマテリアル集合層24の隙間32内に侵入するが、被覆率が低い方法によって堆積されているため、この侵入を抑制することができる。ナノマテリアル集合層24における隙間32内に導電性材料が侵入した部分は、上部電極層27の下層27bとなる。逆に言えば、上部電極層27の下層27b内にはCNT31(図2参照)が埋め込まれている。
【0044】
次に、図7(b)に示すように、被覆率が相対的に高くなる方法、例えば、LPCVD法等のCVD法により、シリコン窒化物を堆積させる。これにより、上部電極層27上にシリコン窒化層46が形成される。シリコン窒化層46の厚さは、例えば5nm以上とする。このとき、CVD法のソースガスであるアンモニア(NH)に含まれる窒素が、主に結晶粒界を経由して上部電極層27内に拡散し、上部電極層27の最上層に窒化部分27aを形成する。次に、シリコン窒化層46上に、例えばシリコン酸化物からなるハードマスク41を形成する。次に、ハードマスク41上に、レジスト膜42を形成する。
【0045】
次に、図8(a)に示すように、リソグラフィー法により、レジスト膜42をパターニングし、レジストパターン42aを形成する。そして、レジストパターン42aが正常に形成された場合には、図8(b)に示す工程に進む。一方、レジストパターン42aに不具合が生じた場合、例えば、レジストパターン42aの位置ずれ量が許容範囲を超えた場合には、リワーク工程を実施する。具体的には、薬液によるウェット処理を行ってレジストパターン42aを除去した後、図7(b)に示すレジスト膜42の形成、及び図8(a)に示すレジストパターン42aの形成を再度実施する。
【0046】
そして、正常なレジストパターン42aが形成されたら、図8(b)に示すように、レジストパターン42aをマスクとしてハードマスク41をパターニングし、パターニングされたハードマスク41をマスクとしてRIE等のエッチングを施す。これにより、シリコン窒化層46、上部電極層27、ナノマテリアル集合層24、下部電極層23、整流素子層22及びバリアメタル層21を選択的に除去して、ピラー16を形成する。次に、ピラー16を洗浄し、側壁(図示せず)を形成する。
【0047】
次に、図9(a)に示すように、シリコン酸化物又はシリコン窒化物等の絶縁材料を堆積させてピラー16を埋め込み、層間絶縁膜17を形成する。次に、上部電極層27をストッパとしてCMP等の平坦化処理を施して、層間絶縁膜17の上面を平坦化する。これにより、層間絶縁膜17の上部と共に、ハードマスク41及びシリコン窒化層46(図8参照)も除去して、上部電極層27を露出させる。このとき、シリコン窒化層46は全て除去されるが、上部電極層27の窒化部分27aは残留する。次に、図9(b)に示すように、ピラー16上に複数本のビット線BLを形成して、ビット線配線層15を形成する。本実施形態における上記以外の製造方法は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0048】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、ナノマテリアル集合層24上に上部電極層27を形成する際には、PVD法等の被覆率が相対的に低くなる方法によって導電性材料を堆積させている。これにより、ナノマテリアル集合層24の隙間32内に導電性材料が侵入することを抑制できる。一方、上部電極層27上にシリコン窒化層46を形成する際には、CVD法等の被覆率が相対的に高くなる方法によってシリコン窒化物を堆積させている。これにより、シリコン窒化層46の膜密度が高くなり、ピンホールが少なくなる。なお、シリコン窒化層46を形成する際には、下地として上部電極層27が存在するため、シリコン窒化物がナノマテリアル集合層24内に侵入することはない。
【0049】
シリコン窒化層46を形成することにより、ハードマスク41に含まれる水分、レジスト膜42に含まれる水分、リワーク工程において使用する薬液が、ハードマスク41のピンホール内及び上部電極層27のピンホール内を通過して、ナノマテリアル集合層24内に侵入することを防止できる。なお、シリコン窒化層46は図9(a)に示すCMP工程において除去されるため、製造後の記憶装置2において、ピラー16の導通を妨げることはない。本実施形態における上記以外の動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0050】
なお、前述の第1及び第2の実施形態においては、微小導電体としてカーボンナノチューブ(CNT)を使用する例を示したが、本発明はこれに限定されない。ナノマテリアル集合層24を構成する微小構造体には、フラーレン、グラフェン、カーボンナノリボン等のナノスケールの結晶構造をもつカーボンナノマテリアルを使用してもよく、カーボン以外の導電材料からなるナノスケールの構造体を使用してもよい。また、前述の第1及び第2の実施形態においては、ナノマテリアル集合層24をスピンコート法によって形成する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えばCVD法によって形成してもよい。
【0051】
更にまた、前述の第1及び第2の実施形態においては、整流素子層としてポリシリコンダイオード層を設ける例を示したが、本発明はこれに限定されない。整流素子層はピラー16に電流を流すか否かを選択できる層であればよく、例えば、シリコン層と金属層とからなるショットキーダイオードであってもよく、又は、npn形若しくはpnp形のシリコントランジスタ層であってもよい。
【0052】
以上説明した実施形態によれば、信頼性が高い記憶装置及びその製造方法を実現することができる。
【0053】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びその等価物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1、2:不揮発性記憶装置、11:シリコン基板、12:層間絶縁膜、13:メモリセル部、14:ワード線配線層、15:ビット線配線層、16:ピラー、17:層間絶縁膜、21:バリアメタル層、22:整流素子層、23:下部電極層、24:ナノマテリアル集合層、25:低被覆率電極層、25b:下層、26:高被覆率電極層、27:上部電極層、27a:窒化部分、27b:下層、29:バリアメタル層、31:カーボンナノチューブ(CNT)、32:隙間、41:ハードマスク、42:レジスト膜、42a:レジストパターン、46:シリコン窒化層、BL:ビット線、WL:ワード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の微小導電体が隙間を介して集合したナノマテリアル集合層と、
前記ナノマテリアル集合層上に設けられた第1電極層と、
前記第1電極層上に設けられた第2電極層と、
を備え、
前記第2電極層の被覆率は、前記第1電極層の被覆率よりも高いことを特徴とする記憶装置。
【請求項2】
複数の微小導電体が隙間を介して集合したナノマテリアル集合層と、
前記ナノマテリアル集合層上に設けられた第1電極層と、
前記第1電極層上に設けられた第2電極層と、
を備え、
前記第1電極層は物理気相成長法によって形成されたものであり、前記第2電極層は化学気相成長法によって形成されたものであることを特徴とする記憶装置。
【請求項3】
複数の微小導電体が隙間を介して集合したナノマテリアル集合層と、
前記ナノマテリアル集合層上に設けられた第1電極層と、
前記第1電極層上に設けられた第2電極層と、
を備え、
前記第2電極層の平均結晶粒径は、前記第1電極層の平均結晶粒径よりも大きいことを特徴とする記憶装置。
【請求項4】
複数の微小導電体が隙間を介して集合したナノマテリアル集合層と、
前記ナノマテリアル集合層上に設けられた第1電極層と、
前記第1電極層上に設けられた第2電極層と、
を備え、
前記第1電極層は多結晶構造であり、前記第2電極層は非晶質構造であることを特徴とする記憶装置。
【請求項5】
第1の方向に延びる複数本のワード線を含むワード線配線層と、
前記第1の方向に対して交差する第2の方向に延びる複数本のビット線を含むビット線配線層と、
をさらに備え、
前記ワード線配線層及び前記ビット線配線層は交互に積層されており、
前記ナノマテリアル集合層、前記第1電極層及び前記第2電極層は、各前記ワード線と各前記ビット線との間に積層されてピラーを形成していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の記憶装置。
【請求項6】
複数の微小導電体が隙間を介して集合したナノマテリアル集合層と、
前記ナノマテリアル集合層上に設けられた電極層と、
を備え、
前記電極層の最上層は窒化されていることを特徴とする記憶装置。
【請求項7】
第1の方向に延びる複数本のワード線を含むワード線配線層と、
前記第1の方向に対して交差する第2の方向に延びる複数本のビット線を含むビット線配線層と、
をさらに備え、
前記ワード線配線層及び前記ビット線配線層は交互に積層されており、
前記ナノマテリアル集合層及び前記電極層は、各前記ワード線と各前記ビット線との間に積層されてピラーを形成していることを特徴とする請求項6記載の記憶装置。
【請求項8】
複数の微小導電体が隙間を介して集合したナノマテリアル集合層を形成する工程と、
前記ナノマテリアル集合層上に、被覆率が相対的に低くなる第1の方法によって導電性材料を堆積させることにより、第1電極層を形成する工程と、
前記第1電極層上に、被覆率が相対的に高くなる第2の方法によって導電性材料を堆積させることにより、第2電極層を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする記憶装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2電極層上にハードマスク層を形成する工程と、
前記ハードマスク層上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を選択的に除去することにより、レジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとしてエッチングを施すことにより、前記ハードマスク層をパターニングする工程と、
前記パターニングされたハードマスクをマスクとしてエッチングを施すことにより、前記第2電極層、前記第1電極層及び前記ナノマテリアル集合層を選択的に除去して、ピラーを形成する工程と、
をさらに備え、
前記レジストパターンに不具合が生じた場合には、薬液により前記レジストパターンを剥離し、前記レジスト膜を形成する工程及び前記レジストパターンを形成する工程を再度実施することを特徴とする請求項8記載の記憶装置の製造方法。
【請求項10】
複数の微小導電体が隙間を介して集合したナノマテリアル集合層を形成する工程と、
前記ナノマテリアル集合層上に、被覆率が相対的に低くなる第1の方法によって導電性材料を堆積させることにより、電極層を形成する工程と、
前記第1電極層上に、被覆率が相対的に高くなる第2の方法によってシリコン窒化物を堆積させることにより、シリコン窒化層を形成する工程と、
前記シリコン窒化層上にハードマスク層を形成する工程と、
前記ハードマスク層上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を選択的に除去することにより、レジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとしてエッチングを施すことにより、前記ハードマスク層をパターニングする工程と、
前記パターニングされたハードマスクをマスクとしてエッチングを施すことにより、前記シリコン窒化層、前記電極層及び前記ナノマテリアル集合層を選択的に除去して、ピラーを形成する工程と、
前記ピラーの周囲に層間絶縁膜を形成する工程と、
前記電極層をストッパとして平坦化処理を施すことにより、前記層間絶縁膜の上面を平坦化すると共に、前記ハードマスク及び前記シリコン窒化膜を除去する工程と、
を備え、
前記レジストパターンに不具合が生じた場合には、薬液により前記レジストパターンを剥離し、前記レジスト膜を形成する工程及び前記レジストパターンを形成する工程を再度実施することを特徴とする記憶装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1の方法は物理気相成長法であり、前記第2の方法は化学気相成長法であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1つに記載の記憶装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−99659(P2012−99659A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246525(P2010−246525)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】