説明

記録媒体

【課題】 光磁気ディスク等の記録媒体において、テスト領域に所定のデータを記録・再生して最適な記録レーザパワーを求める際の時間を短縮すると共により正確な記録レーザパワーを求めることを目的とする。
【解決手段】 光磁気ディスク1において、テスト領域22のトラックピッチをデータ領域23のトラックピッチよりも狭くする。例えば、データ領域23のトラックピッチが0.6μmとすると、テスト領域22のトラックピッチを0.55μmとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録媒体のトラック構造に関し、特にテストトラックのトラックピッチをデータ記録トラックのトラックピッチよりも狭くした記録媒体及びこれを記録再生する記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体(例えば光磁気ディスク)を用いた記録再生装置では、予めディスク内のテスト領域(あるいはテストトラック)と呼ばれる領域に所定のテストデータを記録・再生し、記録・再生時の最適なレーザパワーを決定していた。具体的には、再生時のレーザパワー(以下、再生レーザパワー)を一定とした状態で、記録時のレーザパワー(以下、記録レーザパワー)を段階的に増大させ、各記録レーザパワーで記録した時のデータを再生してそのビットエラーレート(以下、BER)を測定すると、図7に示す実線のように鍋底状に変化する。
【0003】
そこで、例えばE1、E2、E3、E4の4点の記録レーザパワーにおいてBERを測定し、これを図中点線で示す2次曲線で近似して、BERが最低となるときの記録レーザパワーの最適値Pmを決定することができる。ここで、2次曲線で近似して求めた記録レーザパワーの最適値Pmは、前記図7において実線で示したグラフの鍋底の中心付近になることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-113467号公報
【特許文献2】特開平8-45081号公報
【特許文献3】特開平10-222874号公報
【特許文献4】特開平8-203085公報
【特許文献5】特開2000-293898号公報
【特許文献6】特開平11-25538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
然し乍ら、前記E1、E2、E3、E4の4点の記録レーザパワーが図8に示すようにずれていた場合、近似曲線は同図において点線で示したようになり、よって求められた記録レーザパワーの最適値Pnは、実線で示したグラフの鍋底の中心よりずれてしまうことになる。そして、ディスク内において多少の特性変化が存在する場合は、前述のように求められた記録レーザパワーが適切でなくなり、場所によってはBERが増大して安定した記録・再生が行えなくなる恐れがあった。
【0006】
尚、記録レーザパワーを上記のようなE1〜E4の4点よりも多くして広範囲に記録・再生テストを行ってBERを測定し、これに基づいて記録レーザパワーの最適値を求めることも考えられるが、これでは記録レーザパワーの最適値を求めるのに多くの時間がかかってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、短時間で、且つ適切な記録レーザパワーの最適値を求めることができる記録媒体及びこれを記録再生する記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため本発明では、螺旋または同心円状のトラックを有すると共にデータを記録・再生するためのデータ領域及びデータの記録のテストを行うためのテスト領域とを有する記録媒体において、前記テスト領域のトラックピッチを前記データ領域のトラックピッチよりも狭くすると共に、前記テスト領域を記録可能な未記録領域としたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の記録媒体は、前記テスト領域は前記データ領域よりも内周側に設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の記録媒体は、複数の前記テスト領域が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上、詳述した如く本発明に依れば、螺旋または同心円状のトラックを有すると共にデータを記録・再生するためのデータ領域及びデータの記録のテストを行うためのテスト領域とを有する記録媒体において、前記テスト領域のトラックピッチを前記データ領域のトラックピッチよりも狭くすると共に、前記テスト領域を記録可能な未記録領域としたので、短時間で且つ正確な記録レーザパワーの最適値を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の記録媒体(光磁気ディスク)の要部側断面図である。
【図2】本発明の記録媒体(光磁気ディスク)の膜構造を示す図である。
【図3】本発明の記録媒体(光磁気ディスク)の各領域を示す図である。
【図4】本発明の記録媒体(光磁気ディスク)のBER特性を示す図である。
【図5】各トラックピッチにおけるBER特性を示す図である。
【図6】本発明の記録再生装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図7】従来の光磁気ディスクのBER特性を示す図である。
【図8】従来の光磁気ディスクにおける問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態について詳述する。
【0014】
先ず、図1は本発明の光磁気ディスクの要部側断面図である。同図に示すように、光磁気ディスク1にはレーザ光入射側とは反対側にランドLとグルーブGによってトラックが形成されている。そしてそのトラックピッチ(TP)は同図に示す距離tの1/2である(即ち、TP=t/2)。
【0015】
また、光磁気ディスク1は、図2に示すように、ポリカーボネートから成る基板11の上に、SiNから成る下地層12、GdFeCoから成る再生層13、GdFeAlから成るマスク層14、SiNから成る中間層15、TbFeCoから成る記録層16、SiNから成る誘電体層17、Alから成る放熱層18が形成されているが、この膜構造に限定されるものではない。
【0016】
さらに、図3に示すように、光磁気ディスクには、リードイン領域21、データ記録領域22、テスト領域23、リードアウト領域24が設けられている。この例では、データ記録領域22よりも内周側にテスト領域23が設けられている。そして、前記テスト領域23のトラックピッチは、データ記録領域22のトラックピッチよりも狭くなっている。この狭トラックピッチのテスト領域22は、ディスクの内周側に設ければディスクのチルトの影響を受けにくくなり、また、線速度一定で記録・再生を行うディスクでは、テスト領域に使うトラックの容量を少なくすることができるのでデータ領域の容量を増やすことができる。ただし、テスト領域22は同図の場所・数に限られず、ディスク内の複数箇所に設ければシーク時間を短縮することができる。
【0017】
テスト領域22のトラックピッチを狭くした場合、BER特性は図4の実線のような鍋底状にはならず、点線のように2次曲線に近い形となる。このため、テスト領域22においてE1、E2、E3、E4の4点の記録レーザパワーでテストデータを記録し、これを一定の再生レーザパワーでそれぞれ再生してBERを測定した場合、点線で示す近似曲線と実線で示す曲線とが略一致し、適切な記録レーザパワーの最適値Pm’を求めることができる。
【0018】
また、テスト領域22のトラックピッチを狭くしたことによってBER特性が実線Bのように2次曲線に近い形となると、前述のようなE1〜E4の4点でなく、3点であっても適切な記録レーザパワーの最適値を求めることが可能となり、記録レーザパワーの最適値を求めるのに要する時間を短縮することができる。
【0019】
次に、図5はテスト領域22のトラックピッチ(TP)を狭くしていった場合の各BER特性を示している。同図に示すように、トラックピッチが0.6μmの時は鍋底状の特性であっても、トラックピッチが0.55μmになるとこれが2次曲線に近くなり、記録レーザパワーも少し低レーザパワー側にシフトすることがわかる。さらにトラックピッチが狭くなるとBERが上昇し、記録レーザパワーの最適値も低下するようになる。例えば、データ領域のトラックピッチを0.6μm、テスト領域のトラックピッチを0.5μmとすると、テスト領域で求めた記録レーザパワーの最適値とデータ領域における実際の最適な記録レーザパワーとがずれ、実際にデータ領域に最適な記録レーザパワーよりも小さい記録レーザパワーの最適値が求められることになる。然し乍ら、予めテスト領域とデータ領域のトラックピッチの差が判っていればこれを校正することは可能であり、以下、これについて詳述する。
【0020】
図6は本発明の光磁気ディスクを記録・再生するための記録再生装置の概略構成を示すブロック図である。
【0021】
同図において、31はディスクを回転させるスピンドルモータ、32はスピンドル駆動回路、33は光ピックアップ、34はレーザ光駆動回路、35はスレッド駆動回路、36はサーボ回路、37はRF増幅回路、38はPLLおよびエンコード/デコード回路、39は入出力インタフェース回路、40はシステム制御回路である。
【0022】
システム制御回路40内のメモリ領域(図示せず)には、テスト領域のトラックピッチを0.55μm、データ領域のトラックピッチを0.6μmであるとすると、各トラックピッチにおける最適な記録レーザーパワーの標準値に基づいて次式で求められた補正係数nが予め格納されている。
【0023】
【数1】

【0024】
ここで、各記録レーザーパワーPT,PDの標準値は、一例としては複数の光磁気ディスクを用いて実際に記録テストを行って統計的に求めることが考えられる。
【0025】
よって、記録再生装置に実際に装着されている光磁気ディスクに対する最適なレーザパワーを求めるには、上述のように、実際に光磁気ディスクのテスト領域で記録レーザパワーの最適値Pmを求め、これに前記補正係数nを乗じてやれば、データ領域における最適な記録レーザパワーを近似することができる。
【0026】
尚、上記の如き最適な記録レーザパワーを近似する処理については、システム制御回路40内のソフトウエアで実現されている。
【0027】
また、前記記録再生装置の通常の記録及び再生時の動作については、一般的な光磁気ディスク記録再生装置と同様であるのでその詳細な説明は割愛する。
【0028】
さらに、上記の説明では、光磁気ディスク及びその記録再生を例に説明したが、これに限らず、相変化型ディスク等、他の記録媒体及びその記録再生装置にも適用できることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0029】
1 光磁気ディスク
11 基板
12 下地層
13 再生層
14 マスク層
15 中間層
16 記録層
17 誘電体層
18 放熱層
21 リードイン領域
22 データ記録領域
23 テスト領域
24 リードアウト領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋または同心円状のトラックを有すると共にデータを記録・再生するためのデータ領域及びデータの記録のテストを行うためのテスト領域とを有する記録媒体において、
前記テスト領域のトラックピッチを前記データ領域のトラックピッチよりも狭くすると共に、前記テスト領域を記録可能な未記録領域としたことを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
前記テスト領域は前記データ領域よりも内周側に設けられていることを特徴とする請求項1記載の記録媒体。
【請求項3】
複数のテスト領域が設けられていることを特徴とする請求項1記載の記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−3273(P2011−3273A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197960(P2010−197960)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【分割の表示】特願2001−144147(P2001−144147)の分割
【原出願日】平成13年5月15日(2001.5.15)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】