記録用シートの製造方法及び装置
【課題】色材受容層が設けられた記録用シートを製造する際の上層塗布において、必要塗布量に対する供給塗布量の過剰分を極力小さい状態で塗布速度を高速化しても安定塗布できる塗布方法。
【解決手段】バックアップローラ50に巻き掛け支持されて連続走行する帯状の支持体12に、無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層を塗布形成した後、生乾き状態の色材受容層の上に上層を塗布形成する記録用シートの製造方法において、上層の塗布形成が支持体12表面に塗布ヘッド42のリップ先端48から吐出した塗布液を液架橋させて支持体12との間にビード52を形成し、該ビード52を介して支持体12表面に塗布液を塗布する共に、支持体12の走行方向から見て、塗布ヘッド42の上流側にサクションチャンバー54を設けてビード52の上流側を大気圧に対する減圧度が0kPaを超えて2.0kPa以下になるように減圧して塗布する。
【解決手段】バックアップローラ50に巻き掛け支持されて連続走行する帯状の支持体12に、無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層を塗布形成した後、生乾き状態の色材受容層の上に上層を塗布形成する記録用シートの製造方法において、上層の塗布形成が支持体12表面に塗布ヘッド42のリップ先端48から吐出した塗布液を液架橋させて支持体12との間にビード52を形成し、該ビード52を介して支持体12表面に塗布液を塗布する共に、支持体12の走行方向から見て、塗布ヘッド42の上流側にサクションチャンバー54を設けてビード52の上流側を大気圧に対する減圧度が0kPaを超えて2.0kPa以下になるように減圧して塗布する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は記録用シートの製造方法及び装置に係り、特に、高品質なインクジェット用の記録用シート等のように支持体上に無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層の上に、該色材受容層が生乾き状態で上層を塗布する際の上層の塗布技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各種のインクジェット方式が開発されており、それに伴い各種のインクジェット用の記録用シートも開発されている。このインクジェット用の記録用シートに使われる支持体としては各種樹脂製フィルムの他、普通紙や上質紙(コート紙)、写真用印画紙などがある。これらのインクジェット用の記録用シートのうち、粒径の細かい無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層が設けられた記録用シートは、高品質なインクジェット用の記録用シートとして使用されている。無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層が設けられた記録用シートとしては、他に熱転写用の記録用シート、電子写真用の記録用シート等がある。
【0003】
この無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層が設けられた記録用シートの製造方法として、本出願人は特許文献1の製造方法及び装置を提案した。この方法及び装置は、無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層を支持体上に塗布形成した後、生乾き状態の色材受容層の上に架橋剤層等の上層を過剰に塗り付ける。即ち、未だ流動性のある色材受容層を傷つけないようにして色材受容層の上にウエットオンウエット方式で上層を過剰塗布する。そして、上層を塗布形成してから30秒以内にバー、ブレード、エアーナイフ等の装置でスムージング・メタリング処理を行い、上層膜面の平滑化と上層の塗布量調整を行うものである。上層の塗布方式としては、カーテンコータ、バーコータ、ロールコータ、スライドビードコータ、エクストルージョンコータ等を使用することができる。
【0004】
このように、上層を過剰に塗り付けた後でスムージング・メタリング処理により最終的な上層塗布量(以下「必要塗布量」という)に調整する理由は、下層である色材受容層は無機微粒子を含むために膜面の面状が悪く、その上に必要塗布量の上層を塗り付けると、特に上層が薄膜の場合には上層の面状も悪くなる。このことから、上層を安定して塗り付けるため、上層を必要塗布量よりも過剰に塗り付けた後、スムージング・メタリング処理により必要塗布量に調整している。以下、上層として塗り付けるために塗布ヘッドから供給する塗布液の量を「供給塗布量」という。
【特許文献1】特開2001−113820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の記録用シートの製造方法において、上層を塗布する塗布装置としてカーテンコータを使用した場合、塗布速度(支持体の走行速度)を上げると、支持体の走行に起因して発生する同伴風によって、塗布液のカーテン膜が支持体の走行方向に強く引かれて乱れ、カーテン膜が切れてしまうという問題がある。対策として、上層の供給塗布量を大過剰に増やし(例えば膜流量1.0cc/cm・秒以上)、カーテン膜を厚くして切れ難くすることが考えられる。しかし、必要塗布量に対する供給塗布量を大過剰にしてカーテン膜を形成すると、塗布後のスムージング・メタリング処理で掻き落とす掻き落とし量が多量になり、塗布液ロスが発生し易いという弊害がある。例えば、必要塗布量が50cc/m2 の場合に、20m/分の塗布速度で塗布しようとすると、必要塗布量の5倍以上の供給塗布量で塗布しなくてはならず、スムージング・メタリング処理による掻き落とし量が極めて多量になり、塗布液ロス等が発生する。この場合、100m/分の塗布速度を行うことにより、掻き落とし量は減るもののカーテン膜が安定せずに安定塗布を行うことができない。
【0006】
また、バーコータ或いはロールコータでは、流動性のある色材受容層を傷つけないように、又は特許文献1のようにバーやロールで掻き上げた塗布液を2mm以下のクリアランスで支持体に塗り付けるが、塗布速度を上げると塗布液が支持体に塗り付かない、所謂液切れ現象が発生する。この対策として、クリアランスを狭くしてバー或いはロールの回転速度を上げる方法があるが、20m/分以上の塗布速度にするには、クリアランスを0.2mm以下にしなくてはならず、バー或いはロールが生乾き状態の色材受容層に接触する危険が大きくなり、製造安定性が極端に悪くなる。更には、バー或いはロールの回転速度を上げると、バー端部やロール端部で塗布液の飛散が大きくなるという問題もある。バーやロールの場合には、塗布液の掻き上げ量を多くするには、バーに巻くワイヤーを太くするか、ロール表面に彫刻を施すことで対応可能であるが、上記のカーテンコータのときと同様に、塗布後のスムージング・メタリング処理での掻き落とし量が多量になるという問題がある。
【0007】
また、スライドコータやエクストルージョンコータのようにビード(塗布液溜まり)を介して塗布液を支持体に塗布する方式は、カーテンコータやバー或いはロールコータに比べて、塗布速度を上げ易いが、従来の標準的なスライドコータやエクストルージョンコータでは、生乾き状態の色材受容層の上に上層を塗布形成するという特殊な条件下では、20m/分以上に塗布速度を上げようとすると、上層塗布においてビードが切れてしまい塗り付け不良が発生するという問題がある。ビード切れによる塗り付け不良が発生すると塗布厚み分布が大きくなり、その後のスムージング・メタリング処理や上層の塗布液処方を変えても解消できない。
【0008】
このように、特許文献1の従来の記録用シートの製造方法では、上層塗布にどの塗布方式を採用しても塗布速度は20m/分までが限界であり、それ以上に上げるためには、供給塗布量を必要塗布量の2倍以上に上げてビードを安定させ、その後のスムージング・メタリング処理で多量の塗布液を掻き落とす方法を行わざるを得ない。掻き落とした塗布液は、回収して再利用するとは言うものの、再利用のためには塗布液の成分や物性を元の状態に戻す調整工程や、ゴミや不純物を除去する濾過工程が必要になり工程数が増えると共に、これらの工程を経ることによって大きな塗布液ロスが発生する。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、無機微粒子と水溶性樹脂とを含む色材受容層が設けられた記録用シートを製造する際の上層塗布において、必要塗布量に対する供給塗布量の過剰分をゼロ又は極力小さい状態で塗布速度を高速化(20m/分以上)しても安定塗布を行うことができるので、掻き落と量を全く発生させないか減少させることができるので、高速塗布でも塗布液ロスを削減して生産性を高めることができる記録用シートの製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記目的を達成するために、バックアップローラに巻き掛け支持されて連続走行する帯状の支持体上に、無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層を塗布形成した後、生乾き状態の前記色材受容層の上に上層を塗布形成する記録用シートの製造方法において、前記上層を塗布形成する塗布装置として、前記支持体表面に塗布ヘッドのリップ先端から吐出した塗布液を液架橋させて前記支持体との間にビードを形成し、該ビードを介して前記支持体表面に塗布液を塗布するエクストルージョンタイプの塗布装置を用いると共に、前記支持体の走行方向から見て、前記塗布ヘッドの上流側にサクションチャンバーを設けて前記ビードの上流側を大気圧に対する減圧度が0kPaを超えて2.0kPa以下になるように減圧して塗布することを特徴とする記録用シートの製造方法を提供する。
【0011】
本発明の請求項1によれば、生乾き状態の色材受容層の上に上層を塗布形成する塗布装置として、塗布ヘッドのリップ先端から吐出した上層用塗布液をビードを介して支持体に塗布するエクストルージョンタイプの塗布装置を用いると共に、支持体の走行方向から見て、塗布ヘッドの上流側にサクションチャンバーを設けてビードの上流側を大気圧に対する減圧度が0kPaを超えて2.0kPa以下になるように減圧して塗布するようにした。
【0012】
これにより、高速塗布を行っても、必要塗布量に対する供給塗布量の過剰分が少ない状態で安定なビードを形成することができるので、従来の塗布速度の限界であった20m/分以上に塗布速度を上げてもビードが切れてしまい塗り付け不良が発生するということがない。従って、掻き落と量を顕著に減少させることができるので、塗布液ロスを削減できると共に、生産性を向上させることができる。
【0013】
サクションチャンバーの減圧度が、大気圧に対して2.0kPaを超えて大きくなると、ビードが引っ張られすぎて上層の膜面にスジ故障が発生し易くなる。従って、減圧度は大気圧に対して2.0kPaであり、より好ましい減圧度は大気圧に対して1.0kPa以下である。
【0014】
請求項2は請求項1において、前記塗布ヘッドのスリットクリアランスは50μmを超えて500μm以下に設定し、前記支持体の走行方向から見て下流側リップの厚みは30μmを超えて500μm以下に設定する。
【0015】
塗布ヘッドのスリットクリアランスは50μmを超えて500μm以下に設定し、支持体の走行方向から見て下流側リップの厚みは30μmを超えて500μm以下に設定することにより、ビードをより安定化させることができる。これにより、必要塗布量に対する供給塗布量の過剰分が少ない状態で一層の高速塗布が可能になる。スリットクリアランスは50μmを超えて300μm以下であることが更に良く、50μmを超えて200μm以下であることが特に良い。また、下流側リップの厚みは30μmを超えて300μm以下が更に良い。
【0016】
請求項3は請求項1又は2において、前記塗布ヘッドのリップ先端の構造を、上流側リップ長さが下流側リップ長さよりも短いオーバーバイト構造にすると共に、該オーバーバイト量を0μmを超えて500μm以下に設定することを特徴とする。
【0017】
リップ先端をオーバーバイト構造とし、上流側リップ長さを下流側リップ長さよりも0μmを超えて500μm以下の範囲で短くすることで更にビードを安定化することができる。これにより、必要塗布量に対する供給塗布量の過剰分が少ない状態で一層の高速塗布が可能になる。
【0018】
請求項4は請求項1〜3の何れか1において、前記上流側リップと前記支持体に塗布されている色材受容層表面との間のリップクリアランスを、50μmを超えて500μm以下に設定することを特徴とする。
【0019】
上流側リップと支持体に塗布されている色材受容層表面との間のリップクリアランスを、50μmを超えて500μm以下に設定することで更にビードを安定化することができる。これにより、必要塗布量に対する供給塗布量の過剰分が少ない状態で一層の高速塗布が可能になる。リップクリアランスは50μmを超えて300μm以下にすると更に良く、50μmを超えて200μm以下にすると特に良い。
【0020】
請求項5は請求項1〜4の何れか1において、前記上層を塗布形成した後、30秒以内にスムージング・メタリング処理を行って前記上層膜面を平滑化と上層塗布量の調整を行うことを特徴とする。
【0021】
請求項5は、必要塗布量に対して供給塗布量を過剰に塗布した後、スムージング・メタリング処理を行って上層面の平滑化と上層の塗布液量調整を行う場合であり、上層を塗布形成した後、30秒以内にスムージング・メタリング処理を行うことが好ましい。このスムージング・メタリング処理により、下層である色材受容層の悪い面状や泡故障等に起因する上層膜面の面状悪化を修復することができるが、30秒を超えると修復効果が低減する。
【0022】
請求項6は請求項1〜5の何れか1において、前記上層は、前記色材受容層を硬膜化するための架橋剤層であることを特徴とする。
【0023】
上層として、別の色材受容層を塗布する場合や、保護層或いは架橋剤層等のオーバーコート層を塗布する場合等があるが、色材受容層を硬膜化する架橋剤層を塗布する場合に、本発明がより有効だからである。
【0024】
請求項7は、前記目的を達成するために、連続走行する帯状の支持体上に、無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層を塗布形成した後、生乾き状態の前記色材受容層の上に上層を塗布形成する記録用シートの製造方法において、前記支持体上に前記色材受容層を塗布形成する色材受容層用塗布装置と、前記色材受容層を生乾き状態に乾燥する第1の乾燥装置と、前記生乾き状態の色材受容層の上に上層を塗布形成するエクストルージョンタイプの上層用塗布装置と、前記上層を塗布した後で乾燥する第2の乾燥装置と、を設け、前記エクストルージョンタイプの上層用塗布装置は、リップ先端から吐出した上層用塗布液をビードを介して前記支持体に塗布する塗布ヘッドと、前記塗布ヘッドに対向配置されて前記支持体を支持するバックアップローラと、前記支持体の走行方向から見て前記塗布ヘッドの上流側に設けられて前記ビードの上流側を減圧するサクションチャンバーと、を備え、前記塗布ヘッドは、スリットクリアランスが50μmを超えて500μm以下、下流側リップの長さが30μmを超えて500μm以下、上流側リップが下流側リップよりも短いオーバーバイト量が0μmを超えて500μm以下に設定され、前記塗布ヘッドの上流側リップと前記支持体との間のリップクリアランスが50μmを超えて500μm以下に設定され、前記サクションチャンバーの減圧度が大気圧に対して0kPaを超えて2.0kPa以下に設定されることを特徴とする記録用シートの製造装置を提供する。
【0025】
請求項7は、上層塗布装置をエクストルージョンタイプとし、サクションチャンバーの減圧度、スリットクリアランス、上流側リップのオーバーバイト量、及びリップクリアランスを上記の如く設定するようにした。これにより、生乾き状態の色材受容層の上に上層を塗布形成する際に、必要塗布量と供給塗布量とが同じであっても安定したビードを形成して塗布を行うことが可能になるので、記録用シートを製造する際に上層塗布の後に通常設けているスムージング・メタリング装置を省略することが可能となる。
【0026】
請求項8は請求項7において、前記上層用塗布装置と前記第2の乾燥装置との間に、前記上層面にスムージング・メタリング処理を施すスムージング・メタリング装置を設けたことを特徴とする。
【0027】
請求項8は、上層塗布において、必要塗布量に対して供給塗布量が過剰になるように塗布した後、スムージング・メタリング装置でスムージング・メタリング処理するように構成したもので、この場合には必要塗布量と供給塗布量とが同じ場合よりもビードが一層安定化するので、安定した高速塗布を行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明の記録用シートの製造方法及び装置によれば、無機微粒子と水溶性樹脂とを含む色材受容層が設けられた記録用シートを製造する際の上層塗布において、必要塗布量に対する供給塗布量の過剰分をゼロ又は極力小さい状態で塗布速度を高速化(20m/分以上)しても安定塗布を行うことができる。これにより、高速塗布しても掻き落と量を全く発生させないか顕著に減少させることができるので、塗布液ロスを削減して生産性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面により本発明の記録用シートの製造方法及び装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0030】
図1は、本発明の記録用シートの製造装置の全体構成を示す概念図である。
【0031】
図1に示すように、送出し装置10から送り出された支持体12は、先ず色材受容層用塗布装置14により、下層である無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層用の塗布液が塗布される。支持体12としては、WP紙やPET等の樹脂フィルムを好適に使用することができるが、これ以外の上質紙等でもよい。また、支持体の幅は500mm〜2000mmのものを好適に使用できる。
【0032】
図1は、色材受容層用塗布装置14としてスライド塗布装置を使用した場合であり、塗布液はスライド塗布装置の塗布ヘッド16内に形成されたマニホールド18に供給されて支持体12の幅方向に拡流された後、スリット20を通ってスライド面22に押し出され、スライド面22を流下する。スライド面22を流下した塗布液は、スライド面先端部と、コーティングロール24に係合支持された支持体12との隙間部分にビードを形成し、このビードを介して支持体12上に塗布される。これにより、支持体12上に、塗布量が例えば100〜300g/m2 程度の色材受容層が形成される。尚、図1では色材受容層用塗布装置14としてスライド塗布装置を使用したが、エクストルージョン塗布装置、カーテン塗布装置、バー塗布装置等の他の塗布装置を使用することもできる。
【0033】
次に、色材受容層が形成された支持体12は、乾燥装置26の乾燥ゾーンを走行して色材受容層が生乾き状態に乾燥され、乾燥装置26の出口側に配置された上層用塗布装置28により架橋剤塗布液がウエットオンウエットで過剰に塗布される。これにより、色材受容層の上に上層が塗布される。尚、本実施の形態では、上層として架橋剤層の例で説明するが、例えば別の色材受容層を塗布する場合や、保護層等でもよい。これら上層用塗布液の粘度は10cP以下が好ましく、最終的に色材受容層の上に塗布される必要塗布量は5〜100cc/m2 の範囲であることが好ましい。
【0034】
そして、架橋剤塗布液の塗布直後に、スムージング・メタリング装置30(図1はバー方式で示してある)によりスムージング・メタリング処理される。この場合、色材受容層を乾燥する過程において、乾燥速度が減率域に入る前までは、乾燥温度20〜180°C、好ましくは30〜150°Cの風で0.5〜5分間程度乾燥させ、減率乾燥速度域前、もしくは色材受容層の含水分(水分/固形分の重量%表示)が200〜600%の範囲内で架橋剤塗布液を塗布する。色材受容層の含水分は、好ましくは200〜500%の範囲内、特に好ましくは250〜450%の範囲内が一層よい。そして、架橋剤塗布直後、好ましくは30秒以内にバー30Aによりスムージング・メタリング処理する。これにより、下層である色材受容層の悪い面状や泡故障等に起因する上層面の面状悪化(スジ、ムラ等の塗布故障)を修復し、面状の良好な且つ高い光沢度を有する塗布面を形成することができる。スムージング・メタリング処理後の乾燥については乾燥装置26により180°C程度の風で行っても良いし、紙などの通気性のある支持体の場合には図2に示すようにキャステイングドラム32を使用しても良い。尚、図1では色材受容層と上層との両方を1つの乾燥装置26で乾燥する場合であるが、色材受容層と上層とを別の乾燥装置で乾燥してもよい。このようにして製造された記録用シートは、巻取り装置34に巻き取られる。また、架橋剤塗布液を塗布する時に、支持体12には、該支持体12の塗布密着性、濡れ性等を改良するための下塗り層、或いは下塗り層以外の場合には含水分が10%以下の塗布膜のもの以外には何も塗布しないことが好ましい。上層を塗布する時に、下層以外に水分の多い塗布膜が支持体12上にあると、下層の含水分に与える影響が大きくなって、上層の乗りが悪くなるためである。尚、符号36は、支持体12の走行経路を形成するガイドローラである。
【0035】
かかる製造装置における上層用塗布装置28として、生乾き状態の色材受容層の上に上層塗布液を安定塗布することができるように塗布装置の諸条件を設定したエクストルージョンタイプの塗布装置を設ける。エクストルージョンタイプの上層用塗布装置28は、図3に示すように、上層用塗布液が塗布ヘッド42のマニホールド44に供給されて支持体幅方向に拡げられた後、スリット46を通ってスリット先端48から吐出される。吐出された塗布液は、バックアップローラ50に巻き掛け支持されて連続走行する帯状の支持体12の表面(本発明では色材受容層が塗布されている)に液架橋して支持体12との間にビード52を形成し、該ビード52を介して支持体12表面に塗布される。
【0036】
このエクストルージョンタイプの上層塗布装置40には、支持体12の走行方向から見て塗布ヘッド42の上流側にビード52の上流側を減圧するサクションチャンバー54が設けられる。サクションチャンバー54の減圧度は、大気圧に対して0kPaを超えて2.0kPa以下の範囲に設定される。これは、減圧度が大気圧に対して2.0kPaを超えて大きくなると、ビード52が上流側に引っ張られすぎて上層の膜面にスジ故障が発生し易くなる。従って、サクションチャンバー54の減圧度を2.0kPa以下、好ましくは1.0kPa以下にすることが好ましい。
【0037】
また、図4に示すように、塗布ヘッド42は、スリットクリアランスAが50μmを超えて500μm以下が好ましく、より好ましくは300μm以下、特に好ましくは200μm以下である。また、リップ先端48における下流側リップ48Aの厚みBが30μmを超えて500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましい。また、上流側リップのオーバーバイト量Cが0μmを超えて500μm以下が好ましい。また、リップ先端48における上流側リップ48Bと色材受容層表面との間のリップクリアランスDが50μmを超えて500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下が特に好ましい。
【0038】
このように、サクションチャンバー54の減圧度、スリットクリアランスA、上流側リップ48Bのオーバーバイト量C、及びリップクリアランスDの各塗布条件を上記の如く設定するようにした。これにより、上層塗布における塗布速度を例えば20m/分以上に上げても必要塗布量に対する供給塗布量を2倍以上にすることなくビード52を安定化させることができるので、スジやムラの塗布故障が発生しなくなる。これにより、高速塗布しても掻き落と量を顕著に減少させることができるので、塗布液ロスを削減して生産性を高めることができる。
【0039】
また、上記塗布条件の設定の仕方によっては、上層を形成する塗布液の必要塗布量と供給塗布量とが同じであっても安定したビードを形成して塗布を行うことが可能である。これにより、本発明の実施の形態ではスムージング・メタリング装置30を設けるようにしたが、このスムージング・メタリング装置30を省略することも可能である。
【0040】
また、走行する支持体12に対する塗布ヘッド42の角度は任意でよいが、バックアップローラ50に巻き掛け支持されている支持体12部分に、塗布ヘッド42から吐出した塗布液でビード52を形成することによりビード圧力を高く保持し、このビード圧力の高い状態でビード52の上流側をサクションチャンバー54で減圧することが、安定したビード形成に必要である。従って、バックアップローラ50に対する塗布ヘッド42の塗り付け角度は±30度の範囲になるように塗布ヘッド42の向きを調整することが好ましい。ここで、塗り付け角度とは、図5に示すように、塗布ヘッド42のスリット46の向きがバックアップローラ50の中心Qを向いている場合を塗り付け角度0度とする。そして、リップ先端48からバックアップローラ50に巻き掛け支持された支持体12への塗布液の塗り付けポイントを揺動点Pとしてスリット46の向きを支持体12の走行方向側に揺動させたときの角度をプラスの塗り付け角度θ1として表し、逆方向側に揺動させたときの角度をθ2塗をマイナスの塗り付け角度として表した。
【0041】
本発明で使用される無機微粒子の例としては、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、白雲母、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ベーマイト、擬ベーマイト等を挙げることができる。透明性を低下させない観点から、屈折率が1.40〜1.60の範囲にあることが好ましい。これらの中で、シリカ微粒子が特に好ましい。また、無機微粒子の平均一次粒子径は、20nm以下、好ましくは10nm以下、特に好ましくは3nm以下が良く、また、屈折率は1.45付近であることが好ましい。
【0042】
本発明で使用される水溶性樹脂の例としては、親水性構造単位として、ヒドロキシル基を有する樹脂である、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等〕、キチン類、及びデンプン;エーテル結合を有する樹脂である、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びポリビニツエーテル(PVE);そしてアミド基又はアミド結合を有する樹脂である、ポリアクリルアミド(PAAM)、及びポリビニルピロリドン(PVP)を挙げることができる。また、解離性基として、カルボキシル基を有する、ポリアクリル酸塩、マレイン酸塩、アルギン酸塩及びゼラチン類;スルホン酸基を有する、ポリスチレンスルホン酸塩、アミノ基、イミノ基、第3アミン及び第4級アンモニウム塩を有するポリアリルアミン(PAA)、ポリエチレンイミン(PEI)、エポキシ化ポリアミド(EPA)、ポリビニルピリジン及びゼラチン類を挙げることができる。
【0043】
本発明で使用される架橋剤の例としては、硼酸、硼酸塩〔例えば、オルト硼酸塩、InBO3 、ScBO3 、YBO3 、LaBO3 、Mg3 (BO3 )2 、Co3 (BO3 )2 〕、二硼酸塩〔例えば、Mg2 B2 O5 、Co2 B2 O5 〕、メタ硼酸塩〔例えば、LiBO2 、Ca(BO2 )2 、NaBO2 、KBO2 〕、四硼酸塩〔例えば、Na2 B4 O7 ・10H2 O〕、五硼酸塩〔例えば、KB5 O8 ・4H2 O、Ca2 B6 O11・7H2 O、CsB5 O5 〕、グリオキザール、ミラミン・ホルムアルデヒド〔例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン、〕、メチロール尿素、レゾール樹脂、ポリイソシアネート等を挙げることができる。これらの中で、硼酸或いは硼酸塩が特に好ましい。
【0044】
スムージング・メタリング処理を行うためのスムージング・メタリング装置としては、バー方式、エアーナイフ方式、ブレード方式のものがある。
【0045】
バー方式とは、丸状棒のバーの軸方向を走行する支持体の幅方向に配置して、該支持体に塗布形成された塗布面に接触させる方式で、バーの径は2〜200mm、好ましくは5〜50mmの丸棒状のものが良い。また、バーを、支持体が走行する速度と同速±50%以内の周速で、支持体と同方向又は逆方向に回転させる。このときの支持体のバーへのラップ角度(θ)は0〜30度以内が適当である。また、必要な塗布量に合わせてワイヤーなどを巻いて巻回したワイヤー同士の間に溝を形成したり、バー自体に溝を刻設したりして、バーと塗布面が接触した際に余剰の塗布液が溝に取り込まれることによりメタリングされる。
【0046】
エアーナイフ方式とは、ナイフ状のエアーを吹き出すスロット状のエアノズルの長尺方向を、走行する支持体の幅方向に配置して、該エアノズルからのナイフ状のエアを塗布面に当てることにより、塗布面を均しながら塗布表層部を掻き取る方式である。エアノズルから吹き出されるエア風速は10〜150m/秒の範囲、エアー圧力は0.01〜10kg/cm2 、特に好ましくは0.5〜5kg/cm2 の範囲がよい。また、エアノズル先端から最上層の塗布面までの距離は1〜30mmの範囲、エアノズルと塗布面とのなす角度は1〜50度の範囲に設定することが好ましい。
【0047】
また、ブレード方式とは、ブレードの幅方向を支持体の幅方向に配置して、該支持体に塗布形成された塗布面に接触させることにより、塗布面を均しながら塗布表層部を掻き取る方式である。これに使用されるブレードは、柔軟性のある樹脂製の材質とし、塗布面への押付け圧力は0.01〜10kg/cm2 が好ましく、特に好ましくは0.1〜5kg/cm2 の範囲がよい。
【0048】
但し、バー方式、エアーナイフ方式、ブレード方式における上記条件は、1)必要な塗布量、2)色材受容層に対する上層である別の色材受容層、オーバーコート層の塗れ性、3)上層を架橋剤層とした場合における色材受容層(下層)の架橋剤(上層)による硬化具合、4)多重塗布する各層の塗布液の組成や物性、5)最上層を塗布形成してからスムージング・メタリング処理までの時間等に応じて、上記条件の範囲内で調整すると更によい。
【実施例】
【0049】
記録用シートの製造は次のように行った。
【0050】
先ず、スライド塗布装置14で表1に示す組成の無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層を、支持体12上に100g/m2 の塗布量になるように幅1.5mで塗布した。尚、色材受容層用塗布液の調製は、表1の無水シリカ微粒子を、イオン交換水(73.3重量部)中に添加して、高速回転湿式コロイトミル〔クレアミックス(エム・テクニック(株)製〕を用いて、10000rpmの条件で20分間分散させた後、ポリビニルアルコール水溶液(イオン交換水の残り62.7重量部に溶解させたもの)を加えて、更に上記と同じ条件で分散を行なって色材受容層のための塗布液を調製した。
【0051】
次に、乾燥装置26の乾燥ゾーンにおいて乾球温度30〜80°C、露点温度0°Cの風を用いて色材受容層を生乾き状態まで乾燥を行い、空隙率60%の多孔質層を形成した。
【0052】
乾燥後、エクストルージョン塗布装置28により、表2に示す組成の上層を生乾き状態の色材受容層の上に、必要塗布量よりも10cc過剰な約60cc/m2 の供給塗布量になるように塗布した。上層の塗布直後、3秒後に径が25mmのバーを備えたバー方式のスムージング・メタリング装置30によりスムージング・メタリング処理した後、再び乾燥装置26で乾燥して記録用シートを製造した。尚、上層用塗布液の調製は、表2のポリビニルアルコールをイオン交換水に中に添加して、高速回転湿式コロイトミル〔クレアミックス(エム・テクニック(株)製〕を用いて色材受容層の場合と同様に分散した。
【0053】
【表1】
(備考)配合割合を示す重量部の値は、全て固形分又は不揮発分を表す。
【0054】
【表2】
(備考)配合割合を示す重量部の値は、全て固形分又は不揮発分を表す。
【0055】
そして、エクストルージョンタイプの上層用塗布装置を以下の条件に設定して上層塗布を行った場合に、必要塗布量と供給塗布量の関係や塗布速度をどこまで高速化できるか等を試験した。
【0056】
(実施例1)
・サクションチャンバー54の減圧度:大気圧に対して0.5kPa
・スリットクリアランスA:300μmと100μmの2条件
・リップ先端の厚み:上流側リップが1mm、下流側リップBが100μm
・上流側リップのオーバーバイト量C:100μm
・リップクリアランスD:300μmと100μmの2条件
・塗布速度:20、30、40、50、60、70、80、90、100m/分まで増加させた。
【0057】
その結果、スリットクリアランスAが300μm、リップクリアランスDが300μmの条件では、塗布速度50m/分までは上層の膜面にスジ、ムラ(塗布厚み分布)のない良好な塗布を行うことができ、スムージング・メタリング処理後の面状も極めて良好であった。次に、スリットクリアランスAを300μmから100μmに狭めると共に、リップクリアランスDを300μmから100μmに狭めて試験を行ったところ、供給塗布量を必要塗布量(50cc/m2 )と同じにしても安定な塗布を行うことができ、スムージング・メタリング処理を行わなくても良好な面状を得ることができた。
【0058】
また、スリットクリアランスAが300μm、リップクリアランスが300μmの条件で塗布速度を50m/分から70m/分に上げたところ、上層の膜面に弱いスジやムラが発生したが、スムージング・メタリング処理を行うことによりスジやムラが解消された。塗布速度を70m/分から更に上げていくと、塗布速度が80m/分を超えた時点でビード52が切れ易くなったので、スリットクリアランスAを300μmから100μmに狭めたところ、ビード52の切れが解消し、上層の膜面にスジやムラ良好な面状の塗布を行うことができた。
【0059】
(比較例1)
比較例1は、実施例1のエクストルージョン塗布装置からサクションチャンバーを取り除いて実施した。その他は実施例1と同様である。また、実施例1では、リップクリアランスDを300μmと100μmの2条件に設定したが、比較例1では300μm、200μm、100μmの3条件に設定した。また、塗布速度は10、20、30、40m/分の4条件で行った。必要塗布量は実施例1と同じ50cc/m2 であるが、必要塗布量に対する供給塗布量は、塗布速度の上昇に伴って1.5から2倍まで増加させた。
【0060】
その結果、スリットクリアランスAが300μm、リップクリアランスDが300μmの条件では、塗布速度が10m/分及び20m/分のときは供給塗布量を必要塗布量の1.5倍にすれば安定塗布を行うことができ、スムージング・メタリング処理で良好な面状を得ることができた。次に、塗布速度を20m/分から30m/分に速くすると、供給塗布量を必要塗布量の2倍に増加し、且つリップクリアランスDを300μmから200μmまで狭めることでようやく安定塗布を行うことができた。しかし、上層の支持体幅方向端部(耳部)の塗布厚みは中央部の塗布厚みの150〜200%程度に厚くなり易く、また中央部に200〜300μmの異物状盛り上がりが出来ることがあり、供給塗布量を必要塗布量の2倍に増やした状態で、リップクリアランスDを300μmから100μmまで狭めると、リップ先端48が色材受容層に接触する危険が大きくなる。事実、試験でも耳部の厚塗りが原因で色材受容層に傷が付き、一度傷がついてしまうと、最初の傷が引き金になって次々に傷が拡大し、製造をストップせざるを得なかった。また、供給塗布量を必要塗布量の2倍に増加させると、多量の塗布液を掻き落とさなくてはならなくなるが、多量の塗布液を掻き落とすには、スムージング・メタリング処理装置30を上層の膜面に強く押し当てなくてはならず、上層に傷が発生し易くなることも分かった。
【0061】
(比較例2)
比較例2は、実施例1のエクストルージョン塗布装置に代えてバー塗布装置で上層塗布を行ったものである。バー塗布装置のバーは、直径が10mm又は20mmの芯金にワイヤーを巻回したワイヤーバー、及び直径が10mm又は20mmのバー表面に彫刻を施した彫刻バーを使用した。
【0062】
バーの回転数は塗布速度の0.5倍、1.0倍、1.5倍、2.0倍、3.0倍の5条件のそれぞれについて、バーの回転方向が支持体の走行方法と同じ順回転と逆な逆回転の両方を行った。
【0063】
また、バーと色材受容層とのクリアランスは、2mm、1mm、300μm、200μm、100μmの順に試験した。また、塗布速度は10、20、30、40m/分の4条件で行った。
【0064】
その結果、ワイヤーバーと彫刻バーの何れの場合も、塗布速度が20m/分までは、バーと色材受容層とのクリアランスを300μmまで狭め、バー回転数を支持体速度の1.5倍まで上げ、供給塗布量を必要塗布量の1.5倍にすることで何とか安定塗布を行うことができた。しかし、塗布速度を20m/分まで上げると、バーと色材受容層とのクリアランスを100μmまで狭めてもビードが安定せずに、液切れを起こした。そこで、バー回転数を支持体速度の2.0倍まで上げたところ、ようやくビードが安定した。
【0065】
更に、塗布速度を40m/分に上げると、ビードを安定化するにはバーの回転数を2倍から更に上げなくてはならず、バー端部からの塗布液の飛散が大きくなって製造を停止しなくてはならなかった。
【0066】
(比較例3)
比較例3は、実施例1のエクストルージョン塗布装置に代えてカーテン塗布装置で上層塗布を行ったものである。
【0067】
カーテン膜高さ(スライド面先端から色材受容層までの塗布液の落下距離)を1cm、10cm、100cmの3条件で行った。供給塗布量は必要塗布量の1.5倍、2.0倍、3.0倍、5.0倍の4条件で行った。塗布速度は、20、40、100m/分の3条件で行った。
【0068】
その結果、カーテン膜を安定に維持するには、膜流量として1cc/cm・秒以上が望ましく、その膜流量に合わせようとすると、塗布される塗布量は塗布速度20m/分の場合で約330cc/m2 、塗布速度40m/分の場合で約165cc/m2 、塗布速度100m/分の場合でようやく約66cc/m2 まで減少する。実際に塗布速度20m/分では塗布量が多過ぎてスムージング・メタリング処理で掻き落とす前に塗布液が支持体から流れ落ちるという問題が生じた。塗布速度40m/分の場合には塗布液が支持体から流れ落ちるということはなかったが、上記比較例1及び2と同様な問題が発生した。更に、塗布速度100m/分の場合には、カーテン膜が支持体の同伴風によって引っ張られ、カーテン膜高さを100cmとしても、時々ビードでエアーを巻き込んでしまった。これ以上カーテン膜高さを高くすると、落下したカーテン膜の液圧力で下層である生乾き状態の色材受容層に凹凸が発生してしまった。また、支持体の走行方向から見てカーテン膜の上流側にサクションチャンバーを設けてカーテン膜の上流側面を引っ張ることで、支持体が走行する同伴風でカーテン膜が支持体走行方向に引っ張られないように試みたが、サクションチャンバーが支持体を引っ張ってしまい支持体とサクションチャンバーとが接触してしまった。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の記録用シートの製造装置の全体構成で、色材受容層と上層とを一つの乾燥装置で乾燥するようにした装置の概念図
【図2】本発明の記録用シートの製造装置の全体構成で、上層をキャスティングドラムで乾燥するようにした装置の概念図
【図3】本発明におけるエクストルージョンタイプの塗布装置の全体構成を説明する説明図
【図4】本発明におけるエクストルージョンタイプの塗布装置のリップクリアランス等の諸条件を説明する説明図
【図5】塗布ヘッドの塗り付け角度を説明する説明図
【符号の説明】
【0070】
10…送出し装置、12…支持体、14…色材受容層用塗布装置、24…コーティングロール、26…乾燥装置、28…上層用塗布装置、30…バー方式のスムージング・メタリング装置、32…キャスティングドラム、34…巻取り装置、42…塗布ヘッド、44…マニホールド、46…スリット、48…リップ先端、50…バックアップローラ、52…ビード、54…サクションチャンバー、A…スリットクリアランス、B…下流側リップの厚み、C…上流側リップのオーバーバイト量、D…リップクリアランス
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は記録用シートの製造方法及び装置に係り、特に、高品質なインクジェット用の記録用シート等のように支持体上に無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層の上に、該色材受容層が生乾き状態で上層を塗布する際の上層の塗布技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各種のインクジェット方式が開発されており、それに伴い各種のインクジェット用の記録用シートも開発されている。このインクジェット用の記録用シートに使われる支持体としては各種樹脂製フィルムの他、普通紙や上質紙(コート紙)、写真用印画紙などがある。これらのインクジェット用の記録用シートのうち、粒径の細かい無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層が設けられた記録用シートは、高品質なインクジェット用の記録用シートとして使用されている。無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層が設けられた記録用シートとしては、他に熱転写用の記録用シート、電子写真用の記録用シート等がある。
【0003】
この無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層が設けられた記録用シートの製造方法として、本出願人は特許文献1の製造方法及び装置を提案した。この方法及び装置は、無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層を支持体上に塗布形成した後、生乾き状態の色材受容層の上に架橋剤層等の上層を過剰に塗り付ける。即ち、未だ流動性のある色材受容層を傷つけないようにして色材受容層の上にウエットオンウエット方式で上層を過剰塗布する。そして、上層を塗布形成してから30秒以内にバー、ブレード、エアーナイフ等の装置でスムージング・メタリング処理を行い、上層膜面の平滑化と上層の塗布量調整を行うものである。上層の塗布方式としては、カーテンコータ、バーコータ、ロールコータ、スライドビードコータ、エクストルージョンコータ等を使用することができる。
【0004】
このように、上層を過剰に塗り付けた後でスムージング・メタリング処理により最終的な上層塗布量(以下「必要塗布量」という)に調整する理由は、下層である色材受容層は無機微粒子を含むために膜面の面状が悪く、その上に必要塗布量の上層を塗り付けると、特に上層が薄膜の場合には上層の面状も悪くなる。このことから、上層を安定して塗り付けるため、上層を必要塗布量よりも過剰に塗り付けた後、スムージング・メタリング処理により必要塗布量に調整している。以下、上層として塗り付けるために塗布ヘッドから供給する塗布液の量を「供給塗布量」という。
【特許文献1】特開2001−113820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の記録用シートの製造方法において、上層を塗布する塗布装置としてカーテンコータを使用した場合、塗布速度(支持体の走行速度)を上げると、支持体の走行に起因して発生する同伴風によって、塗布液のカーテン膜が支持体の走行方向に強く引かれて乱れ、カーテン膜が切れてしまうという問題がある。対策として、上層の供給塗布量を大過剰に増やし(例えば膜流量1.0cc/cm・秒以上)、カーテン膜を厚くして切れ難くすることが考えられる。しかし、必要塗布量に対する供給塗布量を大過剰にしてカーテン膜を形成すると、塗布後のスムージング・メタリング処理で掻き落とす掻き落とし量が多量になり、塗布液ロスが発生し易いという弊害がある。例えば、必要塗布量が50cc/m2 の場合に、20m/分の塗布速度で塗布しようとすると、必要塗布量の5倍以上の供給塗布量で塗布しなくてはならず、スムージング・メタリング処理による掻き落とし量が極めて多量になり、塗布液ロス等が発生する。この場合、100m/分の塗布速度を行うことにより、掻き落とし量は減るもののカーテン膜が安定せずに安定塗布を行うことができない。
【0006】
また、バーコータ或いはロールコータでは、流動性のある色材受容層を傷つけないように、又は特許文献1のようにバーやロールで掻き上げた塗布液を2mm以下のクリアランスで支持体に塗り付けるが、塗布速度を上げると塗布液が支持体に塗り付かない、所謂液切れ現象が発生する。この対策として、クリアランスを狭くしてバー或いはロールの回転速度を上げる方法があるが、20m/分以上の塗布速度にするには、クリアランスを0.2mm以下にしなくてはならず、バー或いはロールが生乾き状態の色材受容層に接触する危険が大きくなり、製造安定性が極端に悪くなる。更には、バー或いはロールの回転速度を上げると、バー端部やロール端部で塗布液の飛散が大きくなるという問題もある。バーやロールの場合には、塗布液の掻き上げ量を多くするには、バーに巻くワイヤーを太くするか、ロール表面に彫刻を施すことで対応可能であるが、上記のカーテンコータのときと同様に、塗布後のスムージング・メタリング処理での掻き落とし量が多量になるという問題がある。
【0007】
また、スライドコータやエクストルージョンコータのようにビード(塗布液溜まり)を介して塗布液を支持体に塗布する方式は、カーテンコータやバー或いはロールコータに比べて、塗布速度を上げ易いが、従来の標準的なスライドコータやエクストルージョンコータでは、生乾き状態の色材受容層の上に上層を塗布形成するという特殊な条件下では、20m/分以上に塗布速度を上げようとすると、上層塗布においてビードが切れてしまい塗り付け不良が発生するという問題がある。ビード切れによる塗り付け不良が発生すると塗布厚み分布が大きくなり、その後のスムージング・メタリング処理や上層の塗布液処方を変えても解消できない。
【0008】
このように、特許文献1の従来の記録用シートの製造方法では、上層塗布にどの塗布方式を採用しても塗布速度は20m/分までが限界であり、それ以上に上げるためには、供給塗布量を必要塗布量の2倍以上に上げてビードを安定させ、その後のスムージング・メタリング処理で多量の塗布液を掻き落とす方法を行わざるを得ない。掻き落とした塗布液は、回収して再利用するとは言うものの、再利用のためには塗布液の成分や物性を元の状態に戻す調整工程や、ゴミや不純物を除去する濾過工程が必要になり工程数が増えると共に、これらの工程を経ることによって大きな塗布液ロスが発生する。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、無機微粒子と水溶性樹脂とを含む色材受容層が設けられた記録用シートを製造する際の上層塗布において、必要塗布量に対する供給塗布量の過剰分をゼロ又は極力小さい状態で塗布速度を高速化(20m/分以上)しても安定塗布を行うことができるので、掻き落と量を全く発生させないか減少させることができるので、高速塗布でも塗布液ロスを削減して生産性を高めることができる記録用シートの製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記目的を達成するために、バックアップローラに巻き掛け支持されて連続走行する帯状の支持体上に、無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層を塗布形成した後、生乾き状態の前記色材受容層の上に上層を塗布形成する記録用シートの製造方法において、前記上層を塗布形成する塗布装置として、前記支持体表面に塗布ヘッドのリップ先端から吐出した塗布液を液架橋させて前記支持体との間にビードを形成し、該ビードを介して前記支持体表面に塗布液を塗布するエクストルージョンタイプの塗布装置を用いると共に、前記支持体の走行方向から見て、前記塗布ヘッドの上流側にサクションチャンバーを設けて前記ビードの上流側を大気圧に対する減圧度が0kPaを超えて2.0kPa以下になるように減圧して塗布することを特徴とする記録用シートの製造方法を提供する。
【0011】
本発明の請求項1によれば、生乾き状態の色材受容層の上に上層を塗布形成する塗布装置として、塗布ヘッドのリップ先端から吐出した上層用塗布液をビードを介して支持体に塗布するエクストルージョンタイプの塗布装置を用いると共に、支持体の走行方向から見て、塗布ヘッドの上流側にサクションチャンバーを設けてビードの上流側を大気圧に対する減圧度が0kPaを超えて2.0kPa以下になるように減圧して塗布するようにした。
【0012】
これにより、高速塗布を行っても、必要塗布量に対する供給塗布量の過剰分が少ない状態で安定なビードを形成することができるので、従来の塗布速度の限界であった20m/分以上に塗布速度を上げてもビードが切れてしまい塗り付け不良が発生するということがない。従って、掻き落と量を顕著に減少させることができるので、塗布液ロスを削減できると共に、生産性を向上させることができる。
【0013】
サクションチャンバーの減圧度が、大気圧に対して2.0kPaを超えて大きくなると、ビードが引っ張られすぎて上層の膜面にスジ故障が発生し易くなる。従って、減圧度は大気圧に対して2.0kPaであり、より好ましい減圧度は大気圧に対して1.0kPa以下である。
【0014】
請求項2は請求項1において、前記塗布ヘッドのスリットクリアランスは50μmを超えて500μm以下に設定し、前記支持体の走行方向から見て下流側リップの厚みは30μmを超えて500μm以下に設定する。
【0015】
塗布ヘッドのスリットクリアランスは50μmを超えて500μm以下に設定し、支持体の走行方向から見て下流側リップの厚みは30μmを超えて500μm以下に設定することにより、ビードをより安定化させることができる。これにより、必要塗布量に対する供給塗布量の過剰分が少ない状態で一層の高速塗布が可能になる。スリットクリアランスは50μmを超えて300μm以下であることが更に良く、50μmを超えて200μm以下であることが特に良い。また、下流側リップの厚みは30μmを超えて300μm以下が更に良い。
【0016】
請求項3は請求項1又は2において、前記塗布ヘッドのリップ先端の構造を、上流側リップ長さが下流側リップ長さよりも短いオーバーバイト構造にすると共に、該オーバーバイト量を0μmを超えて500μm以下に設定することを特徴とする。
【0017】
リップ先端をオーバーバイト構造とし、上流側リップ長さを下流側リップ長さよりも0μmを超えて500μm以下の範囲で短くすることで更にビードを安定化することができる。これにより、必要塗布量に対する供給塗布量の過剰分が少ない状態で一層の高速塗布が可能になる。
【0018】
請求項4は請求項1〜3の何れか1において、前記上流側リップと前記支持体に塗布されている色材受容層表面との間のリップクリアランスを、50μmを超えて500μm以下に設定することを特徴とする。
【0019】
上流側リップと支持体に塗布されている色材受容層表面との間のリップクリアランスを、50μmを超えて500μm以下に設定することで更にビードを安定化することができる。これにより、必要塗布量に対する供給塗布量の過剰分が少ない状態で一層の高速塗布が可能になる。リップクリアランスは50μmを超えて300μm以下にすると更に良く、50μmを超えて200μm以下にすると特に良い。
【0020】
請求項5は請求項1〜4の何れか1において、前記上層を塗布形成した後、30秒以内にスムージング・メタリング処理を行って前記上層膜面を平滑化と上層塗布量の調整を行うことを特徴とする。
【0021】
請求項5は、必要塗布量に対して供給塗布量を過剰に塗布した後、スムージング・メタリング処理を行って上層面の平滑化と上層の塗布液量調整を行う場合であり、上層を塗布形成した後、30秒以内にスムージング・メタリング処理を行うことが好ましい。このスムージング・メタリング処理により、下層である色材受容層の悪い面状や泡故障等に起因する上層膜面の面状悪化を修復することができるが、30秒を超えると修復効果が低減する。
【0022】
請求項6は請求項1〜5の何れか1において、前記上層は、前記色材受容層を硬膜化するための架橋剤層であることを特徴とする。
【0023】
上層として、別の色材受容層を塗布する場合や、保護層或いは架橋剤層等のオーバーコート層を塗布する場合等があるが、色材受容層を硬膜化する架橋剤層を塗布する場合に、本発明がより有効だからである。
【0024】
請求項7は、前記目的を達成するために、連続走行する帯状の支持体上に、無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層を塗布形成した後、生乾き状態の前記色材受容層の上に上層を塗布形成する記録用シートの製造方法において、前記支持体上に前記色材受容層を塗布形成する色材受容層用塗布装置と、前記色材受容層を生乾き状態に乾燥する第1の乾燥装置と、前記生乾き状態の色材受容層の上に上層を塗布形成するエクストルージョンタイプの上層用塗布装置と、前記上層を塗布した後で乾燥する第2の乾燥装置と、を設け、前記エクストルージョンタイプの上層用塗布装置は、リップ先端から吐出した上層用塗布液をビードを介して前記支持体に塗布する塗布ヘッドと、前記塗布ヘッドに対向配置されて前記支持体を支持するバックアップローラと、前記支持体の走行方向から見て前記塗布ヘッドの上流側に設けられて前記ビードの上流側を減圧するサクションチャンバーと、を備え、前記塗布ヘッドは、スリットクリアランスが50μmを超えて500μm以下、下流側リップの長さが30μmを超えて500μm以下、上流側リップが下流側リップよりも短いオーバーバイト量が0μmを超えて500μm以下に設定され、前記塗布ヘッドの上流側リップと前記支持体との間のリップクリアランスが50μmを超えて500μm以下に設定され、前記サクションチャンバーの減圧度が大気圧に対して0kPaを超えて2.0kPa以下に設定されることを特徴とする記録用シートの製造装置を提供する。
【0025】
請求項7は、上層塗布装置をエクストルージョンタイプとし、サクションチャンバーの減圧度、スリットクリアランス、上流側リップのオーバーバイト量、及びリップクリアランスを上記の如く設定するようにした。これにより、生乾き状態の色材受容層の上に上層を塗布形成する際に、必要塗布量と供給塗布量とが同じであっても安定したビードを形成して塗布を行うことが可能になるので、記録用シートを製造する際に上層塗布の後に通常設けているスムージング・メタリング装置を省略することが可能となる。
【0026】
請求項8は請求項7において、前記上層用塗布装置と前記第2の乾燥装置との間に、前記上層面にスムージング・メタリング処理を施すスムージング・メタリング装置を設けたことを特徴とする。
【0027】
請求項8は、上層塗布において、必要塗布量に対して供給塗布量が過剰になるように塗布した後、スムージング・メタリング装置でスムージング・メタリング処理するように構成したもので、この場合には必要塗布量と供給塗布量とが同じ場合よりもビードが一層安定化するので、安定した高速塗布を行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明の記録用シートの製造方法及び装置によれば、無機微粒子と水溶性樹脂とを含む色材受容層が設けられた記録用シートを製造する際の上層塗布において、必要塗布量に対する供給塗布量の過剰分をゼロ又は極力小さい状態で塗布速度を高速化(20m/分以上)しても安定塗布を行うことができる。これにより、高速塗布しても掻き落と量を全く発生させないか顕著に減少させることができるので、塗布液ロスを削減して生産性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面により本発明の記録用シートの製造方法及び装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0030】
図1は、本発明の記録用シートの製造装置の全体構成を示す概念図である。
【0031】
図1に示すように、送出し装置10から送り出された支持体12は、先ず色材受容層用塗布装置14により、下層である無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層用の塗布液が塗布される。支持体12としては、WP紙やPET等の樹脂フィルムを好適に使用することができるが、これ以外の上質紙等でもよい。また、支持体の幅は500mm〜2000mmのものを好適に使用できる。
【0032】
図1は、色材受容層用塗布装置14としてスライド塗布装置を使用した場合であり、塗布液はスライド塗布装置の塗布ヘッド16内に形成されたマニホールド18に供給されて支持体12の幅方向に拡流された後、スリット20を通ってスライド面22に押し出され、スライド面22を流下する。スライド面22を流下した塗布液は、スライド面先端部と、コーティングロール24に係合支持された支持体12との隙間部分にビードを形成し、このビードを介して支持体12上に塗布される。これにより、支持体12上に、塗布量が例えば100〜300g/m2 程度の色材受容層が形成される。尚、図1では色材受容層用塗布装置14としてスライド塗布装置を使用したが、エクストルージョン塗布装置、カーテン塗布装置、バー塗布装置等の他の塗布装置を使用することもできる。
【0033】
次に、色材受容層が形成された支持体12は、乾燥装置26の乾燥ゾーンを走行して色材受容層が生乾き状態に乾燥され、乾燥装置26の出口側に配置された上層用塗布装置28により架橋剤塗布液がウエットオンウエットで過剰に塗布される。これにより、色材受容層の上に上層が塗布される。尚、本実施の形態では、上層として架橋剤層の例で説明するが、例えば別の色材受容層を塗布する場合や、保護層等でもよい。これら上層用塗布液の粘度は10cP以下が好ましく、最終的に色材受容層の上に塗布される必要塗布量は5〜100cc/m2 の範囲であることが好ましい。
【0034】
そして、架橋剤塗布液の塗布直後に、スムージング・メタリング装置30(図1はバー方式で示してある)によりスムージング・メタリング処理される。この場合、色材受容層を乾燥する過程において、乾燥速度が減率域に入る前までは、乾燥温度20〜180°C、好ましくは30〜150°Cの風で0.5〜5分間程度乾燥させ、減率乾燥速度域前、もしくは色材受容層の含水分(水分/固形分の重量%表示)が200〜600%の範囲内で架橋剤塗布液を塗布する。色材受容層の含水分は、好ましくは200〜500%の範囲内、特に好ましくは250〜450%の範囲内が一層よい。そして、架橋剤塗布直後、好ましくは30秒以内にバー30Aによりスムージング・メタリング処理する。これにより、下層である色材受容層の悪い面状や泡故障等に起因する上層面の面状悪化(スジ、ムラ等の塗布故障)を修復し、面状の良好な且つ高い光沢度を有する塗布面を形成することができる。スムージング・メタリング処理後の乾燥については乾燥装置26により180°C程度の風で行っても良いし、紙などの通気性のある支持体の場合には図2に示すようにキャステイングドラム32を使用しても良い。尚、図1では色材受容層と上層との両方を1つの乾燥装置26で乾燥する場合であるが、色材受容層と上層とを別の乾燥装置で乾燥してもよい。このようにして製造された記録用シートは、巻取り装置34に巻き取られる。また、架橋剤塗布液を塗布する時に、支持体12には、該支持体12の塗布密着性、濡れ性等を改良するための下塗り層、或いは下塗り層以外の場合には含水分が10%以下の塗布膜のもの以外には何も塗布しないことが好ましい。上層を塗布する時に、下層以外に水分の多い塗布膜が支持体12上にあると、下層の含水分に与える影響が大きくなって、上層の乗りが悪くなるためである。尚、符号36は、支持体12の走行経路を形成するガイドローラである。
【0035】
かかる製造装置における上層用塗布装置28として、生乾き状態の色材受容層の上に上層塗布液を安定塗布することができるように塗布装置の諸条件を設定したエクストルージョンタイプの塗布装置を設ける。エクストルージョンタイプの上層用塗布装置28は、図3に示すように、上層用塗布液が塗布ヘッド42のマニホールド44に供給されて支持体幅方向に拡げられた後、スリット46を通ってスリット先端48から吐出される。吐出された塗布液は、バックアップローラ50に巻き掛け支持されて連続走行する帯状の支持体12の表面(本発明では色材受容層が塗布されている)に液架橋して支持体12との間にビード52を形成し、該ビード52を介して支持体12表面に塗布される。
【0036】
このエクストルージョンタイプの上層塗布装置40には、支持体12の走行方向から見て塗布ヘッド42の上流側にビード52の上流側を減圧するサクションチャンバー54が設けられる。サクションチャンバー54の減圧度は、大気圧に対して0kPaを超えて2.0kPa以下の範囲に設定される。これは、減圧度が大気圧に対して2.0kPaを超えて大きくなると、ビード52が上流側に引っ張られすぎて上層の膜面にスジ故障が発生し易くなる。従って、サクションチャンバー54の減圧度を2.0kPa以下、好ましくは1.0kPa以下にすることが好ましい。
【0037】
また、図4に示すように、塗布ヘッド42は、スリットクリアランスAが50μmを超えて500μm以下が好ましく、より好ましくは300μm以下、特に好ましくは200μm以下である。また、リップ先端48における下流側リップ48Aの厚みBが30μmを超えて500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましい。また、上流側リップのオーバーバイト量Cが0μmを超えて500μm以下が好ましい。また、リップ先端48における上流側リップ48Bと色材受容層表面との間のリップクリアランスDが50μmを超えて500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下が特に好ましい。
【0038】
このように、サクションチャンバー54の減圧度、スリットクリアランスA、上流側リップ48Bのオーバーバイト量C、及びリップクリアランスDの各塗布条件を上記の如く設定するようにした。これにより、上層塗布における塗布速度を例えば20m/分以上に上げても必要塗布量に対する供給塗布量を2倍以上にすることなくビード52を安定化させることができるので、スジやムラの塗布故障が発生しなくなる。これにより、高速塗布しても掻き落と量を顕著に減少させることができるので、塗布液ロスを削減して生産性を高めることができる。
【0039】
また、上記塗布条件の設定の仕方によっては、上層を形成する塗布液の必要塗布量と供給塗布量とが同じであっても安定したビードを形成して塗布を行うことが可能である。これにより、本発明の実施の形態ではスムージング・メタリング装置30を設けるようにしたが、このスムージング・メタリング装置30を省略することも可能である。
【0040】
また、走行する支持体12に対する塗布ヘッド42の角度は任意でよいが、バックアップローラ50に巻き掛け支持されている支持体12部分に、塗布ヘッド42から吐出した塗布液でビード52を形成することによりビード圧力を高く保持し、このビード圧力の高い状態でビード52の上流側をサクションチャンバー54で減圧することが、安定したビード形成に必要である。従って、バックアップローラ50に対する塗布ヘッド42の塗り付け角度は±30度の範囲になるように塗布ヘッド42の向きを調整することが好ましい。ここで、塗り付け角度とは、図5に示すように、塗布ヘッド42のスリット46の向きがバックアップローラ50の中心Qを向いている場合を塗り付け角度0度とする。そして、リップ先端48からバックアップローラ50に巻き掛け支持された支持体12への塗布液の塗り付けポイントを揺動点Pとしてスリット46の向きを支持体12の走行方向側に揺動させたときの角度をプラスの塗り付け角度θ1として表し、逆方向側に揺動させたときの角度をθ2塗をマイナスの塗り付け角度として表した。
【0041】
本発明で使用される無機微粒子の例としては、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、白雲母、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ベーマイト、擬ベーマイト等を挙げることができる。透明性を低下させない観点から、屈折率が1.40〜1.60の範囲にあることが好ましい。これらの中で、シリカ微粒子が特に好ましい。また、無機微粒子の平均一次粒子径は、20nm以下、好ましくは10nm以下、特に好ましくは3nm以下が良く、また、屈折率は1.45付近であることが好ましい。
【0042】
本発明で使用される水溶性樹脂の例としては、親水性構造単位として、ヒドロキシル基を有する樹脂である、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等〕、キチン類、及びデンプン;エーテル結合を有する樹脂である、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びポリビニツエーテル(PVE);そしてアミド基又はアミド結合を有する樹脂である、ポリアクリルアミド(PAAM)、及びポリビニルピロリドン(PVP)を挙げることができる。また、解離性基として、カルボキシル基を有する、ポリアクリル酸塩、マレイン酸塩、アルギン酸塩及びゼラチン類;スルホン酸基を有する、ポリスチレンスルホン酸塩、アミノ基、イミノ基、第3アミン及び第4級アンモニウム塩を有するポリアリルアミン(PAA)、ポリエチレンイミン(PEI)、エポキシ化ポリアミド(EPA)、ポリビニルピリジン及びゼラチン類を挙げることができる。
【0043】
本発明で使用される架橋剤の例としては、硼酸、硼酸塩〔例えば、オルト硼酸塩、InBO3 、ScBO3 、YBO3 、LaBO3 、Mg3 (BO3 )2 、Co3 (BO3 )2 〕、二硼酸塩〔例えば、Mg2 B2 O5 、Co2 B2 O5 〕、メタ硼酸塩〔例えば、LiBO2 、Ca(BO2 )2 、NaBO2 、KBO2 〕、四硼酸塩〔例えば、Na2 B4 O7 ・10H2 O〕、五硼酸塩〔例えば、KB5 O8 ・4H2 O、Ca2 B6 O11・7H2 O、CsB5 O5 〕、グリオキザール、ミラミン・ホルムアルデヒド〔例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン、〕、メチロール尿素、レゾール樹脂、ポリイソシアネート等を挙げることができる。これらの中で、硼酸或いは硼酸塩が特に好ましい。
【0044】
スムージング・メタリング処理を行うためのスムージング・メタリング装置としては、バー方式、エアーナイフ方式、ブレード方式のものがある。
【0045】
バー方式とは、丸状棒のバーの軸方向を走行する支持体の幅方向に配置して、該支持体に塗布形成された塗布面に接触させる方式で、バーの径は2〜200mm、好ましくは5〜50mmの丸棒状のものが良い。また、バーを、支持体が走行する速度と同速±50%以内の周速で、支持体と同方向又は逆方向に回転させる。このときの支持体のバーへのラップ角度(θ)は0〜30度以内が適当である。また、必要な塗布量に合わせてワイヤーなどを巻いて巻回したワイヤー同士の間に溝を形成したり、バー自体に溝を刻設したりして、バーと塗布面が接触した際に余剰の塗布液が溝に取り込まれることによりメタリングされる。
【0046】
エアーナイフ方式とは、ナイフ状のエアーを吹き出すスロット状のエアノズルの長尺方向を、走行する支持体の幅方向に配置して、該エアノズルからのナイフ状のエアを塗布面に当てることにより、塗布面を均しながら塗布表層部を掻き取る方式である。エアノズルから吹き出されるエア風速は10〜150m/秒の範囲、エアー圧力は0.01〜10kg/cm2 、特に好ましくは0.5〜5kg/cm2 の範囲がよい。また、エアノズル先端から最上層の塗布面までの距離は1〜30mmの範囲、エアノズルと塗布面とのなす角度は1〜50度の範囲に設定することが好ましい。
【0047】
また、ブレード方式とは、ブレードの幅方向を支持体の幅方向に配置して、該支持体に塗布形成された塗布面に接触させることにより、塗布面を均しながら塗布表層部を掻き取る方式である。これに使用されるブレードは、柔軟性のある樹脂製の材質とし、塗布面への押付け圧力は0.01〜10kg/cm2 が好ましく、特に好ましくは0.1〜5kg/cm2 の範囲がよい。
【0048】
但し、バー方式、エアーナイフ方式、ブレード方式における上記条件は、1)必要な塗布量、2)色材受容層に対する上層である別の色材受容層、オーバーコート層の塗れ性、3)上層を架橋剤層とした場合における色材受容層(下層)の架橋剤(上層)による硬化具合、4)多重塗布する各層の塗布液の組成や物性、5)最上層を塗布形成してからスムージング・メタリング処理までの時間等に応じて、上記条件の範囲内で調整すると更によい。
【実施例】
【0049】
記録用シートの製造は次のように行った。
【0050】
先ず、スライド塗布装置14で表1に示す組成の無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層を、支持体12上に100g/m2 の塗布量になるように幅1.5mで塗布した。尚、色材受容層用塗布液の調製は、表1の無水シリカ微粒子を、イオン交換水(73.3重量部)中に添加して、高速回転湿式コロイトミル〔クレアミックス(エム・テクニック(株)製〕を用いて、10000rpmの条件で20分間分散させた後、ポリビニルアルコール水溶液(イオン交換水の残り62.7重量部に溶解させたもの)を加えて、更に上記と同じ条件で分散を行なって色材受容層のための塗布液を調製した。
【0051】
次に、乾燥装置26の乾燥ゾーンにおいて乾球温度30〜80°C、露点温度0°Cの風を用いて色材受容層を生乾き状態まで乾燥を行い、空隙率60%の多孔質層を形成した。
【0052】
乾燥後、エクストルージョン塗布装置28により、表2に示す組成の上層を生乾き状態の色材受容層の上に、必要塗布量よりも10cc過剰な約60cc/m2 の供給塗布量になるように塗布した。上層の塗布直後、3秒後に径が25mmのバーを備えたバー方式のスムージング・メタリング装置30によりスムージング・メタリング処理した後、再び乾燥装置26で乾燥して記録用シートを製造した。尚、上層用塗布液の調製は、表2のポリビニルアルコールをイオン交換水に中に添加して、高速回転湿式コロイトミル〔クレアミックス(エム・テクニック(株)製〕を用いて色材受容層の場合と同様に分散した。
【0053】
【表1】
(備考)配合割合を示す重量部の値は、全て固形分又は不揮発分を表す。
【0054】
【表2】
(備考)配合割合を示す重量部の値は、全て固形分又は不揮発分を表す。
【0055】
そして、エクストルージョンタイプの上層用塗布装置を以下の条件に設定して上層塗布を行った場合に、必要塗布量と供給塗布量の関係や塗布速度をどこまで高速化できるか等を試験した。
【0056】
(実施例1)
・サクションチャンバー54の減圧度:大気圧に対して0.5kPa
・スリットクリアランスA:300μmと100μmの2条件
・リップ先端の厚み:上流側リップが1mm、下流側リップBが100μm
・上流側リップのオーバーバイト量C:100μm
・リップクリアランスD:300μmと100μmの2条件
・塗布速度:20、30、40、50、60、70、80、90、100m/分まで増加させた。
【0057】
その結果、スリットクリアランスAが300μm、リップクリアランスDが300μmの条件では、塗布速度50m/分までは上層の膜面にスジ、ムラ(塗布厚み分布)のない良好な塗布を行うことができ、スムージング・メタリング処理後の面状も極めて良好であった。次に、スリットクリアランスAを300μmから100μmに狭めると共に、リップクリアランスDを300μmから100μmに狭めて試験を行ったところ、供給塗布量を必要塗布量(50cc/m2 )と同じにしても安定な塗布を行うことができ、スムージング・メタリング処理を行わなくても良好な面状を得ることができた。
【0058】
また、スリットクリアランスAが300μm、リップクリアランスが300μmの条件で塗布速度を50m/分から70m/分に上げたところ、上層の膜面に弱いスジやムラが発生したが、スムージング・メタリング処理を行うことによりスジやムラが解消された。塗布速度を70m/分から更に上げていくと、塗布速度が80m/分を超えた時点でビード52が切れ易くなったので、スリットクリアランスAを300μmから100μmに狭めたところ、ビード52の切れが解消し、上層の膜面にスジやムラ良好な面状の塗布を行うことができた。
【0059】
(比較例1)
比較例1は、実施例1のエクストルージョン塗布装置からサクションチャンバーを取り除いて実施した。その他は実施例1と同様である。また、実施例1では、リップクリアランスDを300μmと100μmの2条件に設定したが、比較例1では300μm、200μm、100μmの3条件に設定した。また、塗布速度は10、20、30、40m/分の4条件で行った。必要塗布量は実施例1と同じ50cc/m2 であるが、必要塗布量に対する供給塗布量は、塗布速度の上昇に伴って1.5から2倍まで増加させた。
【0060】
その結果、スリットクリアランスAが300μm、リップクリアランスDが300μmの条件では、塗布速度が10m/分及び20m/分のときは供給塗布量を必要塗布量の1.5倍にすれば安定塗布を行うことができ、スムージング・メタリング処理で良好な面状を得ることができた。次に、塗布速度を20m/分から30m/分に速くすると、供給塗布量を必要塗布量の2倍に増加し、且つリップクリアランスDを300μmから200μmまで狭めることでようやく安定塗布を行うことができた。しかし、上層の支持体幅方向端部(耳部)の塗布厚みは中央部の塗布厚みの150〜200%程度に厚くなり易く、また中央部に200〜300μmの異物状盛り上がりが出来ることがあり、供給塗布量を必要塗布量の2倍に増やした状態で、リップクリアランスDを300μmから100μmまで狭めると、リップ先端48が色材受容層に接触する危険が大きくなる。事実、試験でも耳部の厚塗りが原因で色材受容層に傷が付き、一度傷がついてしまうと、最初の傷が引き金になって次々に傷が拡大し、製造をストップせざるを得なかった。また、供給塗布量を必要塗布量の2倍に増加させると、多量の塗布液を掻き落とさなくてはならなくなるが、多量の塗布液を掻き落とすには、スムージング・メタリング処理装置30を上層の膜面に強く押し当てなくてはならず、上層に傷が発生し易くなることも分かった。
【0061】
(比較例2)
比較例2は、実施例1のエクストルージョン塗布装置に代えてバー塗布装置で上層塗布を行ったものである。バー塗布装置のバーは、直径が10mm又は20mmの芯金にワイヤーを巻回したワイヤーバー、及び直径が10mm又は20mmのバー表面に彫刻を施した彫刻バーを使用した。
【0062】
バーの回転数は塗布速度の0.5倍、1.0倍、1.5倍、2.0倍、3.0倍の5条件のそれぞれについて、バーの回転方向が支持体の走行方法と同じ順回転と逆な逆回転の両方を行った。
【0063】
また、バーと色材受容層とのクリアランスは、2mm、1mm、300μm、200μm、100μmの順に試験した。また、塗布速度は10、20、30、40m/分の4条件で行った。
【0064】
その結果、ワイヤーバーと彫刻バーの何れの場合も、塗布速度が20m/分までは、バーと色材受容層とのクリアランスを300μmまで狭め、バー回転数を支持体速度の1.5倍まで上げ、供給塗布量を必要塗布量の1.5倍にすることで何とか安定塗布を行うことができた。しかし、塗布速度を20m/分まで上げると、バーと色材受容層とのクリアランスを100μmまで狭めてもビードが安定せずに、液切れを起こした。そこで、バー回転数を支持体速度の2.0倍まで上げたところ、ようやくビードが安定した。
【0065】
更に、塗布速度を40m/分に上げると、ビードを安定化するにはバーの回転数を2倍から更に上げなくてはならず、バー端部からの塗布液の飛散が大きくなって製造を停止しなくてはならなかった。
【0066】
(比較例3)
比較例3は、実施例1のエクストルージョン塗布装置に代えてカーテン塗布装置で上層塗布を行ったものである。
【0067】
カーテン膜高さ(スライド面先端から色材受容層までの塗布液の落下距離)を1cm、10cm、100cmの3条件で行った。供給塗布量は必要塗布量の1.5倍、2.0倍、3.0倍、5.0倍の4条件で行った。塗布速度は、20、40、100m/分の3条件で行った。
【0068】
その結果、カーテン膜を安定に維持するには、膜流量として1cc/cm・秒以上が望ましく、その膜流量に合わせようとすると、塗布される塗布量は塗布速度20m/分の場合で約330cc/m2 、塗布速度40m/分の場合で約165cc/m2 、塗布速度100m/分の場合でようやく約66cc/m2 まで減少する。実際に塗布速度20m/分では塗布量が多過ぎてスムージング・メタリング処理で掻き落とす前に塗布液が支持体から流れ落ちるという問題が生じた。塗布速度40m/分の場合には塗布液が支持体から流れ落ちるということはなかったが、上記比較例1及び2と同様な問題が発生した。更に、塗布速度100m/分の場合には、カーテン膜が支持体の同伴風によって引っ張られ、カーテン膜高さを100cmとしても、時々ビードでエアーを巻き込んでしまった。これ以上カーテン膜高さを高くすると、落下したカーテン膜の液圧力で下層である生乾き状態の色材受容層に凹凸が発生してしまった。また、支持体の走行方向から見てカーテン膜の上流側にサクションチャンバーを設けてカーテン膜の上流側面を引っ張ることで、支持体が走行する同伴風でカーテン膜が支持体走行方向に引っ張られないように試みたが、サクションチャンバーが支持体を引っ張ってしまい支持体とサクションチャンバーとが接触してしまった。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の記録用シートの製造装置の全体構成で、色材受容層と上層とを一つの乾燥装置で乾燥するようにした装置の概念図
【図2】本発明の記録用シートの製造装置の全体構成で、上層をキャスティングドラムで乾燥するようにした装置の概念図
【図3】本発明におけるエクストルージョンタイプの塗布装置の全体構成を説明する説明図
【図4】本発明におけるエクストルージョンタイプの塗布装置のリップクリアランス等の諸条件を説明する説明図
【図5】塗布ヘッドの塗り付け角度を説明する説明図
【符号の説明】
【0070】
10…送出し装置、12…支持体、14…色材受容層用塗布装置、24…コーティングロール、26…乾燥装置、28…上層用塗布装置、30…バー方式のスムージング・メタリング装置、32…キャスティングドラム、34…巻取り装置、42…塗布ヘッド、44…マニホールド、46…スリット、48…リップ先端、50…バックアップローラ、52…ビード、54…サクションチャンバー、A…スリットクリアランス、B…下流側リップの厚み、C…上流側リップのオーバーバイト量、D…リップクリアランス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックアップローラに巻き掛け支持されて連続走行する帯状の支持体上に、無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層を塗布形成した後、生乾き状態の前記色材受容層の上に上層を塗布形成する記録用シートの製造方法において、
前記上層を塗布形成する塗布装置として、前記支持体表面に塗布ヘッドのリップ先端から吐出した塗布液を液架橋させて前記支持体との間にビードを形成し、該ビードを介して前記支持体表面に塗布液を塗布するエクストルージョンタイプの塗布装置を用いると共に、前記支持体の走行方向から見て、前記塗布ヘッドの上流側にサクションチャンバーを設けて前記ビードの上流側を大気圧に対する減圧度が0kPaを超えて2.0kPa以下になるように減圧して塗布することを特徴とする記録用シートの製造方法。
【請求項2】
前記塗布ヘッドのスリットクリアランスは50μmを超えて500μm以下に設定し、前記支持体の走行方向から見て下流側リップの厚みは30μmを超えて500μm以下に設定することを特徴とする請求項1の記録用シートの製造方法。
【請求項3】
前記塗布ヘッドのリップ先端の構造を、上流側リップ長さが下流側リップ長さよりも短いオーバーバイト構造にすると共に、該オーバーバイト量を0μmを超えて500μm以下に設定することを特徴とする請求項1又は2の記録用シートの製造方法。
【請求項4】
前記上流側リップと前記支持体に塗布されている色材受容層表面との間のリップクリアランスを、50μmを超えて500μm以下に設定することを特徴とする請求項1〜3の何れか1の記録用シートの製造方法。
【請求項5】
前記上層を塗布形成した後、30秒以内にスムージング・メタリング処理を行って前記上層膜面を平滑化と上層塗布量の調整を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか1の記録用シートの製造方法。
【請求項6】
前記上層は、前記色材受容層を硬膜化するための架橋剤層であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1の記録用シートの製造方法。
【請求項7】
連続走行する帯状の支持体上に、無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層を塗布形成した後、生乾き状態の前記色材受容層の上に上層を塗布形成する記録用シートの製造方法において、
前記支持体上に前記色材受容層を塗布形成する色材受容層用塗布装置と、
前記色材受容層を生乾き状態に乾燥する第1の乾燥装置と、
前記生乾き状態の色材受容層の上に上層を塗布形成するエクストルージョンタイプの上層用塗布装置と、
前記上層を塗布した後で乾燥する第2の乾燥装置と、を設け、
前記エクストルージョンタイプの上層用塗布装置は、
リップ先端から吐出した上層用塗布液をビードを介して前記支持体に塗布する塗布ヘッドと、前記塗布ヘッドに対向配置されて前記支持体を支持するバックアップローラと、前記支持体の走行方向から見て前記塗布ヘッドの上流側に設けられて前記ビードの上流側を減圧するサクションチャンバーと、を備え、
前記塗布ヘッドは、スリットクリアランスが50μmを超えて500μm以下、下流側リップの長さが30μmを超えて500μm以下、上流側リップが下流側リップよりも短いオーバーバイト量が0μmを超えて500μm以下に設定され、
前記塗布ヘッドの上流側リップと前記支持体との間のリップクリアランスが50μmを超えて500μm以下に設定され、
前記サクションチャンバーの減圧度が大気圧に対して0kPaを超えて2.0kPa以下に設定されることを特徴とする記録用シートの製造装置。
【請求項8】
前記上層用塗布装置と前記第2の乾燥装置との間に、前記上層面にスムージング・メタリング処理を施すスムージング・メタリング装置を設けたことを特徴とする請求項7の記録用シートの製造装置。
【請求項1】
バックアップローラに巻き掛け支持されて連続走行する帯状の支持体上に、無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層を塗布形成した後、生乾き状態の前記色材受容層の上に上層を塗布形成する記録用シートの製造方法において、
前記上層を塗布形成する塗布装置として、前記支持体表面に塗布ヘッドのリップ先端から吐出した塗布液を液架橋させて前記支持体との間にビードを形成し、該ビードを介して前記支持体表面に塗布液を塗布するエクストルージョンタイプの塗布装置を用いると共に、前記支持体の走行方向から見て、前記塗布ヘッドの上流側にサクションチャンバーを設けて前記ビードの上流側を大気圧に対する減圧度が0kPaを超えて2.0kPa以下になるように減圧して塗布することを特徴とする記録用シートの製造方法。
【請求項2】
前記塗布ヘッドのスリットクリアランスは50μmを超えて500μm以下に設定し、前記支持体の走行方向から見て下流側リップの厚みは30μmを超えて500μm以下に設定することを特徴とする請求項1の記録用シートの製造方法。
【請求項3】
前記塗布ヘッドのリップ先端の構造を、上流側リップ長さが下流側リップ長さよりも短いオーバーバイト構造にすると共に、該オーバーバイト量を0μmを超えて500μm以下に設定することを特徴とする請求項1又は2の記録用シートの製造方法。
【請求項4】
前記上流側リップと前記支持体に塗布されている色材受容層表面との間のリップクリアランスを、50μmを超えて500μm以下に設定することを特徴とする請求項1〜3の何れか1の記録用シートの製造方法。
【請求項5】
前記上層を塗布形成した後、30秒以内にスムージング・メタリング処理を行って前記上層膜面を平滑化と上層塗布量の調整を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか1の記録用シートの製造方法。
【請求項6】
前記上層は、前記色材受容層を硬膜化するための架橋剤層であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1の記録用シートの製造方法。
【請求項7】
連続走行する帯状の支持体上に、無機微粒子と水溶性樹脂を含む色材受容層を塗布形成した後、生乾き状態の前記色材受容層の上に上層を塗布形成する記録用シートの製造方法において、
前記支持体上に前記色材受容層を塗布形成する色材受容層用塗布装置と、
前記色材受容層を生乾き状態に乾燥する第1の乾燥装置と、
前記生乾き状態の色材受容層の上に上層を塗布形成するエクストルージョンタイプの上層用塗布装置と、
前記上層を塗布した後で乾燥する第2の乾燥装置と、を設け、
前記エクストルージョンタイプの上層用塗布装置は、
リップ先端から吐出した上層用塗布液をビードを介して前記支持体に塗布する塗布ヘッドと、前記塗布ヘッドに対向配置されて前記支持体を支持するバックアップローラと、前記支持体の走行方向から見て前記塗布ヘッドの上流側に設けられて前記ビードの上流側を減圧するサクションチャンバーと、を備え、
前記塗布ヘッドは、スリットクリアランスが50μmを超えて500μm以下、下流側リップの長さが30μmを超えて500μm以下、上流側リップが下流側リップよりも短いオーバーバイト量が0μmを超えて500μm以下に設定され、
前記塗布ヘッドの上流側リップと前記支持体との間のリップクリアランスが50μmを超えて500μm以下に設定され、
前記サクションチャンバーの減圧度が大気圧に対して0kPaを超えて2.0kPa以下に設定されることを特徴とする記録用シートの製造装置。
【請求項8】
前記上層用塗布装置と前記第2の乾燥装置との間に、前記上層面にスムージング・メタリング処理を施すスムージング・メタリング装置を設けたことを特徴とする請求項7の記録用シートの製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2006−247574(P2006−247574A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69880(P2005−69880)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
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