説明

記録装置及び記録装置における記録方法

【課題】取り外し式の給送装置の装着ずれに起因して記録媒体への記録範囲のずれを小さく抑制することができる記録装置及び記録装置における記録方法を提供する。
【解決手段】給送過程において、用紙の設計上の第1側端位置Xsnを計算する(S41)。紙幅検出器により用紙の第1側端位置を検出し(S42)、検出位置を第1側端位置Xd1とする(S43)。増設カセットからの給紙かつ紙端検出フラグF1=1の場合に、噴射開始位置調整量ΔX=Xd1−Xsnを設定する(S49)。但し、ずれ量|Xd1−Xsn|≦Lでない場合は、噴射開始位置調整量ΔXをリミット値Lに制限する(S52,S53)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体を給送するための給送装置を記録装置本体に取り外し可能に装着可能な記録装置に係り、特に記録媒体の搬送方向と交差する幅方向における記録手段の記録範囲の限界位置を調整する機能を備えた記録装置及び記録装置における記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばインクジェット式のシリアルプリンターでは、主走査方向に移動可能なキャリッジを備え、キャリッジを主走査方向に往復移動させつつその下部に設けられた記録ヘッドのノズルからインク滴を噴射することにより、用紙に印刷を施す。
【0003】
従来、多数枚の用紙を収容した給紙トレイや、給紙トレイに収容するサイズ以外の用紙や特殊な用紙類を給紙するための手差しトレイ等の複数の給紙部を備えた画像形成装置が知られている。
【0004】
例えば特許文献1には、キャリッジに設けられたサイズ検知手段(例えば赤外線センサ)で、給紙トレイや手差しトレイなどの複数の給紙部から搬送された用紙のサイズを検知する。サイズ検知手段は、各給紙部から搬送された記録紙が共通して通過する搬送経路上で記録紙のサイズを検知する。また、用紙サイズの検知結果を各給紙部と関連付けて記憶部に記憶する。このため、給紙部の数だけサイズ検知手段を設けなくても、用紙が搬送される毎に用紙サイズ検知を行う必要がないので、画像形成速度を低下させることがなかった。また、複数の給紙部のうち少なくとも一つが、プリンターに給紙カセットの増設などを目的として、給送装置をプリンター本体に取り外し可能に装着する構成のものもある。
【0005】
この種のシリアルプリンターでは、印刷を行うときにキャリッジの主走査方向における記録開始位置(噴射開始位置)を決めるうえで基準とする基準位置として、用紙の設計上(理論上)の側端位置、又はその設計上の側端位置から所定距離の位置を基準位置としている。そして、用紙の幅方向(主走査方向)の余白量や縁なし印刷の有無などのレイアウト等に関する印刷設定条件から決まる所定量だけ基準位置から離れた位置を、記録開始位置として求めるようになっている。なお、記録開始位置とは、記録ヘッドからのインク滴の噴射の開始が許容される主走査方向の最外位置を指し、必ずしも実際のインク噴射開始位置を指すものではない。実際のインク噴射開始位置は印刷データに依存し、白以外の画素であればインクが噴射されるが、白の画素ではインクは噴射されないからである。例えば印刷データがベタ印刷の場合は、記録開始位置と実際の記録開始位置とが一致する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−36429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の増設用の給送装置が装着された場合、その装着位置のばらつきによって実際の用紙の側端位置がずれることになる。実際の用紙の側端位置が、設計上(理論上)の用紙の側端位置からずれると、設計上の側端位置などの基準位置を基に記録開始位置が計算されても、その計算値には、装着ずれ量が考慮されていない。このため、文書や画像などの印刷対象が、余白量等の印刷設定に反して用紙の幅方向にずれた記録範囲に印刷されることになる。このため、増設用の給送装置から給送された用紙に印刷する場合に、印刷設定どおりの余白量が確保されなかったり、縁無し印刷時に縁に微小な余白が生じてしまったりするなどの問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、取り外し式の給送装置の装着ずれに起因する記録媒体への記録範囲のずれを小さく抑制することができる記録装置及び記録装置における記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的の一つを達成するために、本発明の態様の一つは、記録媒体を給送するための給送装置を取り外し可能に装着可能な記録装置であって、記録媒体を搬送する搬送手段と、前記記録媒体に記録を施す記録手段と、記録媒体の搬送方向と交差する幅方向における理論上の側端位置を取得する取得手段と、前記給送装置から給送された記録媒体の側端位置を給送過程で検出する検出手段と、前記検出手段により検出された側端位置と前記理論上の側端位置とのずれ量を調整量として演算する演算手段と、前記調整量を用いて前記記録手段の記録が許容される幅方向における記録範囲の限界位置を調整する調整手段と、を備えたことを要旨とする。
【0010】
本発明の一実施態様によれば、検出手段が、給送装置から給送された記録媒体の側端位置を給送過程で検出する。そして、演算手段が、検出手段により検出された側端位置と理論上の側端位置とのずれ量を調整量として演算する。調整手段は、調整量を用いて記録手段の記録が許容される幅方向における記録範囲の限界位置を調整する。よって、取り外し式の給送装置の装着ずれに起因する記録媒体への幅方向における記録範囲のずれを小さく抑制することができる。
【0011】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記検出手段は、電源投入後において前記給送装置が装着された後における最初の記録の1頁目において、前記給送装置から給送された記録媒体の側端位置を検出することが好ましい。
【0012】
本発明の一実施態様によれば、検出手段は、電源投入後において給送装置が装着された後における最初の記録の1頁目において、給送装置から給送された記録媒体の側端位置を検出する。よって、取り外し式の給送装置からの給送による記録時には、最初の記録の1頁目から、幅方向における記録範囲のずれを小さく抑制することができる。
【0013】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記記録手段は、記録ヘッドを有するとともに前記幅方向に移動可能なキャリッジであり、前記検出手段は、前記キャリッジに設けられるとともに当該キャリッジの移動によって記録媒体の幅方向の両端位置を検出可能な媒体幅検出手段を含み、前記給送装置からの給送過程における記録開始前に前記キャリッジを移動させて前記媒体幅検出手段により前記記録媒体の側端位置を含む両端位置を検出し、前記調整手段は、前記調整量を用いて前記キャリッジと共に移動して記録を行う前記記録ヘッドの記録開始位置を調整することが好ましい。
【0014】
本発明の一実施態様によれば、キャリッジに設けられた媒体幅検出手段により、記録媒体の幅方向の両端位置が検出される。このとき検出される両端位置のうち少なくとも一方の側端位置を用いて調整量が演算される。そして、調整手段により、調整量を用いて記録ヘッドの記録開始位置が調整される。よって、シリアル式の記録装置においては、記録ヘッドの記録開始位置が調整されることにより、記録媒体の幅方向における記録範囲のずれを小さく抑制することができる。
【0015】
本発明の態様の一つである記録装置では、記録媒体の給送エラーを検出するエラー検出手段を更に備え、前記調整手段による調整前に前記記録媒体の給送エラーが検出された場合、前記給送エラーの解除後における次の前記給送装置からの給送過程において前記側端位置の検出を行って取得した前記調整量を用いて、前記調整手段は前記記録範囲の限界位置を調整することが好ましい。
【0016】
本発明の一実施態様によれば、調整手段による調整前に記録媒体の給送エラーが検出された場合、給送エラーの解除後における給送装置からの次の給送過程において検出された側端位置に基づく調整量を用いて、調整手段は記録範囲の限界位置を調整する。よって、給送エラーが発生して、側端位置、調整量、記録範囲の限界位置のうち一つが取得できなくなって、その結果、記録範囲の限界位置の調整ができなくなっても、給送エラー解除後における給送装置からの次の給送過程で、調整量が再度取得される。このため、調整量の最初の取得時にたまたま給送エラーが発生しても、その後の記録時における幅方向の記録範囲のずれを小さく抑制することができる。
【0017】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記ずれ量が制限値を超えるか否かを判定する判定手段を更に備え、前記調整手段は、前記ずれ量が制限値を超えると判定された場合は、前記調整量を前記制限値に制限することが好ましい。
【0018】
本発明の一実施態様によれば、判定手段により、ずれ量が制限値を超えると判定された場合、調整量が制限値に制限される。調整手段は、制限された調整量を用いて記録範囲の限界位置を調整する。例えば、給送装置における記録媒体のセット位置がずれていたことが原因で過大なずれ量が発生した場合でも、制限値に制限された調整量を用いて記録範囲の限界位置が調整される。よって、セット位置のずれに合わせて記録範囲の限界位置が調整されてしまい、その後、その過大な調整量が使用され続けることに起因する不都合を回避できる。
【0019】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記調整手段により前記記録範囲の限界位置が調整された後は、電源が遮断されるまで、前記調整された前記記録範囲の限界位置を用いて前記記録手段による記録を行うことが好ましい。
【0020】
本発明の一実施態様によれば、調整手段により記録範囲の限界位置が調整された後は、電源が遮断されるまで、調整された記録範囲の限界位置を用いて記録手段による記録が行われる。よって、給送装置から給送される記録の度に、側端位置の検出、調整量の演算、記録範囲の限界位置の調整を含む処理を行わずに済む。この結果、例えば給送装置から給送される記録媒体への記録のスループットを向上させることができる。
【0021】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記給送装置は前記記録媒体を中央に寄せてガイドするセンター給送方式であることが好ましい。
本発明の一実施態様によれば、給送装置がセンター給送方式の場合、記録媒体サイズに応じて側端位置が変化するが、記録媒体サイズ毎に記録範囲の限界位置が調整されるので、どの記録媒体サイズであっても記録手段による記録範囲のずれを小さく抑制することができる。
【0022】
本発明の態様の一つは、記録媒体を給送するための給送装置を取り外し可能に装着可能な記録装置における記録方法であって、前記給送装置から給送された記録媒体の搬送方向と交差する幅方向における側端位置を給送過程で検出する検出ステップと、前記検出ステップで検出された側端位置と理論上の側端位置とのずれ量を調整量として演算する演算ステップと、前記調整量を用いて記録手段の記録が許容される幅方向における記録範囲の限界位置を調整する調整ステップと、を備えたことを要旨とする。本発明の一実施態様によれば、上記記録装置に係る発明と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を具体化した一実施形態におけるプリンターの斜視図。
【図2】外装ケースを取り外した状態のプリンターの斜視図。
【図3】プリンターの給送・搬送系を説明するための模式側面図。
【図4】プリンター内部を示す模式平面図。
【図5】プリンターの電気的構成及び一部機能構成を示すブロック図。
【図6】電源オン処理ルーチンを示すフローチャート。
【図7】噴射開始位置算出ルーチンを示すフローチャート。
【図8】増設カセット給紙処理ルーチンを示すフローチャート。
【図9】第1側端位置検出処理ルーチンを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図9に従って説明する。図1に示すように、印刷装置の一例としてのプリンター11における四角箱状の本体12の中央横長凹領域には、キャリッジ13がガイド軸14に案内されて主走査方向(図1における左右方向)に往復動自在に設けられている。
【0025】
図1に示すように、本体12内にはキャリッジ13と対向する下側位置に、長尺板状の支持台15が配置されている。プリンター11の前面(図1における手前側の面)下部には、給紙カセット16が凹状の被装着部12Aに挿抜可能に装着されている。また、本体12の背面側上部には給紙トレイ17が設けられている。本実施形態では、装置前部の給紙カセット16からの給紙と、装置後部の給紙トレイ17からの給紙との選択切り換えが可能となっている。
【0026】
さらに本実施形態のプリンター11は、本体12の下側に増設用の給送装置18を脱着可能な状態で装着することが可能な構成となっている。図1では、プリンター11の本体12の下側に増設用の給送装置18を装着した状態を示している。増設用の給送装置18はその幅方向中央に凹設された被装着部18Aに増設用の給紙カセット19(以下、「増設カセット19」ともいう)が挿抜可能に装着されている。図1に示すように、増設用の給送装置18を装着した状態においては、装置前部の給紙カセット16からの給紙と、増設カセット19からの給紙と、装置後部の給紙トレイ17からの給紙との選択切り換えが可能となっている。
【0027】
また、本体12の右端部前面を覆うカバー12B内には、複数個のインクカートリッジ20が装填されている。各インクカートリッジ20のインクは、フレキシブル配線板21に付設された図示しない複数本のインク供給チューブを通じてキャリッジ13にそれぞれ供給される。そして、キャリッジ13の下部に設けられた記録ヘッド22(図2に示す)からインク滴が噴射(吐出)される。なお、記録ヘッド22には、インクに噴射圧を付与する加圧素子(圧電素子、静電素子、発熱素子等)がノズル毎に内蔵され、加圧素子に所定の電圧が印加されることでそれぞれに対応するノズルからインク滴が噴射(吐出)される。なお、インクカートリッジの装填方式は、キャリッジ13上に装填される所謂オンキャリッジタイプに限定されず、プリンター本体側に設けられたカートリッジホルダー(図示せず)に装填される所謂オフキャリッジタイプでもよい。
【0028】
印刷時は、例えば給紙カセット16又は増設カセット19から給紙されて支持台15上に位置する用紙に対して、キャリッジ13が主走査方向へ移動する過程で記録ヘッド22からインク滴が噴射されることにより、1ライン(1行)分の印刷が施される。この1ライン分の印刷終了後、用紙が次行の印刷位置まで搬送される。こうしてキャリッジ13の一走査による印刷動作と、用紙を次行の印刷位置まで搬送する搬送動作(紙送り動作)とが交互に繰り返されることにより、用紙に対する印刷が進められる。そして、印刷済みの用紙は給紙カセット16の上側に設けられた三段スライド式の排紙トレイ23上へ排出される。ここで、印刷動作と搬送動作は、時間的に排他的に実施されてもよいが、一方の動作終了前に他方の動作が開始されて互いの動作が同時刻に一部重複するタイミングで行われてもよい。
【0029】
また、図1に示すように、本体12の前面左寄り箇所には、電源スイッチを含む各種の操作スイッチからなる操作部24が設けられている。さらに本体12の上面右側には、表示部25が設けられている。
【0030】
次に図2を用いてプリンターの構成を詳細に説明する。図2に示すように、プリンター11は、上側が開口する略四角箱状の本体フレーム12Cを備える。本体フレーム12C内に架設されたガイド軸14に主走査方向(図2におけるX方向)に案内されて往復動可能なキャリッジ13は、本体フレーム12Cの背板面上に配設された一対のプーリー26,27に巻き掛けられた無端状のタイミングベルト28に固定されている。一方のプーリー27に駆動軸が連結されているキャリッジモーター(以下、「CRモーター29」という)が正逆転駆動されることにより、キャリッジ13は主走査方向Xに往復動する。
【0031】
プリンター11の背面側下部には、給紙トレイ17に積重された多数枚の用紙Pのうち最上位の1枚のみを分離して副走査方向Y下流側へ供給するリア給送装置30が設けられている。図2に示す本体フレーム12Cの右側下部には、給送モーター(以下、「ASFモーター31」ともいう)及び紙送りモーター(以下、「PFモーター32」ともいう)がそれぞれ配設されている。
【0032】
ASFモーター31が駆動されることで、給紙カセット16内又は増設カセット19内にセットされた用紙P、あるいはリア給送装置30の給紙トレイ17上に積重された用紙Pのうち、最上位の一枚が給送される。そして、このASFモーター31の駆動と並行してPFモーター32が駆動されることにより、用紙Pが印刷開始位置まで搬送(頭出し)される。用紙Pの頭出し後は、CRモーター29の駆動によるキャリッジ13の主走査方向Xの往復動の過程で行われる記録ヘッド22のインク噴射動作(印刷動作)と、PFモーター32の駆動により用紙Pを副走査方向Yへ次行の印字位置まで搬送する紙送り動作とを略交互に繰り返すことで、用紙Pに印刷データに基づく画像等の印刷が施される。
【0033】
また、図2に示すように、プリンター11には、キャリッジ13の移動距離に比例する数のパルスを出力するリニアエンコーダー33がガイド軸14に沿って延びるように架設されている。リニアエンコーダー33の出力パルスを用いて求められるキャリッジ13の移動位置、移動方向及び移動速度に基づいて、キャリッジ13の速度制御及び位置制御は行われる。なお、プリンター11においてホーム位置(キャリッジ移動経路上の図2における右端位置)に位置した際のキャリッジ13の直下には、記録ヘッド22のノズル目詰まり等を予防・解消するためのクリーニング等を行うメンテナンス装置34が配設されている。
【0034】
図2に示すメンテナンス装置34は、記録ヘッド22のノズル形成面22a(図3、図4参照)に当接することでノズル内のインクの増粘や乾燥を防止する蓋体として機能するキャップ35と、ノズル形成面22aを払拭するためのワイパー36と、吸引ポンプ37とを備える。キャップ35は、記録ヘッド22に当接するキャッピング位置と、記録ヘッド22から離間する退避位置との間を昇降機構34aにより昇降駆動される。
【0035】
また、キャップ35は、蓋体機能(キャッピング機能)の他、記録ヘッド22のノズル形成面22aをキャップしてその内部空間に吸引ポンプ37からの負圧を与えてノズルからインクを強制的に吸引排出させる液体吸引手段の一部としての機能も備えている。ノズルからキャップ35内へ吸引排出された廃インクは、吸引ポンプ37の駆動により、支持台15の下側に配置された廃液タンク38に排出される。
【0036】
次に、図3を用いて、2つの給紙カセット16,19からの給紙及び搬送を行う機構について説明する。本実施形態のプリンター11では、先行紙P1への記録動作中に後続紙P2の給送動作を並行して進める制御が行われる。なお、図3では、リア側の給送装置は省略している。
【0037】
図3に示すように、プリンター11の本体12の底部寄りに設けられたフロント給送装置40は、給紙カセット16と、ピックアップローラー41と、中間ローラー42と、リタードローラー43と、アシストローラー44とを備えている。
【0038】
装置前方側から装着及び取り外し可能な給紙カセット16には、多数枚の用紙Pをセット可能であり、セットされた用紙Pの最上位のものが、ASFモーター31(図2に示す)によって駆動されるピックアップローラー41によって一枚ずつ給紙カセット16から送り出される。ピックアップローラー41は、揺動軸41Aを中心に図示しない付勢手段により用紙側に付勢された状態で揺動可能な揺動部材41Bの先端に設けられたローラー41Cが、常に最上位の用紙に接する状態となっている。
【0039】
ピックアップローラー41によって送り出される用紙Pは、分離斜面16aによる予備分離が行われた後、リタードローラー43へと進む。リタードローラー43は中間ローラー42の外周面と対向する位置に設けられ、且つ、中間ローラー42に対して進退可能に設けられている。リタードローラー43は中間ローラー42に圧接してニップ点を形成することで、給送されるべき最上位の用紙P(先行ページ)と、次ページ以降の用紙Pとを分離する。
【0040】
ピックアップローラー41により給送された用紙Pを更に下流側へ送る搬送手段を構成する中間ローラー42は、PFモーター32(図2に示す)によって駆動され、給送されるべき用紙を湾曲反転させて、用紙Pを下流側の搬送ローラー対45へと送る。アシストローラー44は、中間ローラー42に接して中間ローラー42による用紙Pへの下流側への搬送をアシストする。
【0041】
搬送ローラー対45は、PFモーター32(図2)によって回転駆動される搬送駆動ローラー45Aと、該搬送駆動ローラー45Aに圧接して従動回転する搬送従動ローラー45Bとを備えて構成される。先端が搬送ローラー対45に到達した用紙Pは、搬送駆動ローラー45Aと搬送従動ローラー45Bとによってニップされた状態で搬送駆動ローラー45Aが回転することにより、下流側の記録部46へと搬送される。
【0042】
図3に示す記録部46は、用紙Pに向けてインクを吐出する記録ヘッド22と、用紙Pを支持することにより用紙Pと記録ヘッド22との距離を規制する支持台15とを備えて構成されている。記録ヘッド22はキャリッジ13の底部に設けられ、キャリッジ13は主走査方向(図3の紙面直交方向)に延びるガイド軸14に案内されながら、CRモーター29(図2に示す)によって主走査方向Xに往復動するように駆動される。
【0043】
記録部46の搬送方向下流側(図3では左側)に設けられた排紙ローラー対47は、PFモーター32(図2)によって回転駆動される排出駆動ローラー47Aと、排出駆動ローラー47Aに接して従動回転する排出従動ローラー47Bとを備えて構成される。記録部46によって記録が施された用紙Pは、排出駆動ローラー47Aと排出従動ローラー47Bとによってニップされた状態で排出駆動ローラー47Aが回転駆動されることにより、装置前方側に設けられた排紙トレイ23へ排出される。なお、本実施形態では、PFモーター32、搬送ローラー対45、排紙ローラー対47等により、搬送手段が構成される。
【0044】
一方、増設用のフロント給送装置18は、増設カセット19、ピックアップローラー48と、送りローラー対49とを備えている。また、本体12側にも、送りローラー対50が設けられている。増設用の給送装置18は、本体12の底面に装着されることにより本体12側の端子と電気的に接続されるとともに、ASFモーター31及びPFモーター32の動力を、ピックアップローラー48と送りローラー対49へ伝達可能に接続される。
【0045】
ピックアップローラー48は、揺動軸48Aを中心に図示しない付勢手段により用紙側に付勢された状態で揺動可能な揺動部材48Bの先端に設けられたローラー48Cが、常に最上位の用紙に接する状態となっている。ピックアップローラー48のローラー48Cは、ASFモーター31の動力が不図示の動力伝達機構を介して伝達されることにより回転する。
【0046】
図3に示す送りローラー対49は、ASFモーター31(図2)によって回転駆動される送り駆動ローラー49Aと、該送り駆動ローラー49Aに接して従動回転する送り従動ローラー49Bとを備えて構成される。先端が送りローラー対49に到達した用紙Pは、送り駆動ローラー49Aと送り従動ローラー49Bとによってニップされた状態で送り駆動ローラー49Aが回転することにより、本体12側へと搬送される。
【0047】
また、図3に示す本体12側の送りローラー対50は、PFモーター32(図2)によって回転駆動される送り駆動ローラー50Aと、該送り駆動ローラー50Aに接して従動回転する送り従動ローラー50Bとを備えて構成される。先端が送りローラー対50に到達した用紙Pは、送り駆動ローラー50Aと送り従動ローラー50Bとによってニップされた状態で送り駆動ローラー50Aが回転することにより、リタードローラー43側へと搬送されるようになっている。
【0048】
増設カセット19においてピックアップローラー48によって送り出される用紙Pは、分離斜面19aによる予備分離が行われた後、送りローラー対49,50にニップされつつ中間ローラー42とリタードローラー43との間へと進む。仮に用紙が重送されても、リタードローラー43と中間ローラー42とのニップ点で、給送されるべき最上位の用紙P(先行ページ)と次ページ以降の用紙Pとが分離される。増設カセット19からリタードローラー43まで搬送された用紙は、以降、給送装置40の一部を利用して搬送ローラー対45へ搬送される。
【0049】
用紙搬送経路上においてアシストローラー44と搬送ローラー対45との間における所定位置には、紙検出センサー51が配置されている。紙検出センサー51は、給紙カセット16,19側から給送及び搬送される用紙Pの搬送経路に対向して位置し、用紙Pの先端及び後端を検出可能に構成されている。紙検出センサー51は、その検知状態が「紙なし」→「紙あり」に切り換わったことをもって用紙Pの先端を検出するとともに、その検知状態が「紙あり」→「紙なし」に切り換わったことをもって用紙Pの後端を検出する。
【0050】
本実施形態のプリンター11では、複数の印刷モードのうち高速印刷モード(ドラフト印刷モード)においては、先行紙P1が規定位置まで搬送されればその印刷途中であっても、後続紙P2の給紙を開始する給紙制御を行う。このため、図3に示すように、先行紙P1の後端が規定位置に達したことが不図示のセンサーにより検知されると、ピックアップローラー41又は48を駆動して後続紙P2の給紙を開始する。そして、後続紙P2の先端が先行紙P1の後端と所定間隔を確保しうる待機位置に達したことを不図示のセンサーに検知されると、ピックアップローラー41又は48の駆動が停止される。そして、以後、先行紙の搬送時に先行紙と後続紙は所定間隔を保持しつつ同時並行で搬送される。
【0051】
キャリッジ13には記録ヘッド22より搬送方向上流側の位置に紙幅検出器52が設けられている。紙幅検出器52は、例えば用紙によって光が遮られると検知する透過型の光学センサー、又は用紙の表面で反射した光を検知する反射型の光学センサーからなる。紙幅検出器52は、用紙Pの幅方向(主走査方向X)の両端位置(両側端位置)を検知する。そして、紙幅検出器52の各検知結果に基づき紙幅が求められる。
【0052】
次に図4を用いて記録ヘッド22の噴射開始位置を求める構成について説明する。なお、図4では、増設カセット19が見えるように一部を断面で示している。図4において、記録ヘッド22とキャップ35とが主走査方向Xに一致するときのキャリッジ13の位置(同図における一点鎖線の位置)が、ホーム位置HPとなっている。ホーム位置HPを原点とするキャリッジ13の主走査方向Xの位置(つまりキャリッジ位置)は、リニアエンコーダー33の検出パルスを計数して取得される。
【0053】
リニアエンコーダー33は、一定ピッチ(例えば1/180インチ(=1/(180×2.54)cm))毎に多数のスリットが形成されたテープ状の符号板33a(リニアスケール)と、キャリッジ13に設けられた発光素子と受光素子とを有するセンサー33bとを備え、キャリッジ13が移動するときに発光素子から出射されてスリットを透過した光を受光素子が受光することで、センサー33bが検出パルスを出力する構成である。リニアエンコーダー33から入力した検出パルス(A相とB相の90度位相のずれた2つのパルス)の例えばパルスエッジを計数して、その計数値からキャリッジ位置が求められる。
【0054】
図3に示すように、キャリッジ13がホーム位置HPにある原点を「0」として、反ホーム位置側(図3における左側)に位置するときほど数値が大きくなるようにキャリッジ位置は定義される。なお、本実施形態では、キャリッジ13の移動経路において、ホーム位置HP側を「1桁側」、反ホーム位置側を「80桁側」とも称する。
【0055】
図4に示すように、増設カセット19の底部には、センター給紙を実現可能な用紙ガイド53が設けられている。ここで、センター給紙とは、異なる用紙サイズでも用紙の幅中心が常に同じ位置(センター位置Xc)になるように用紙を幅方向(主走査方向X)にガイドしつつ給紙する方式を指す。用紙ガイド53は、増設カセット19に収容された用紙Pの幅方向両端(両側端)をガイド可能な一対の可動ガイド部53A,53Bを備える。これら一対の可動ガイド部53A,53Bは、センター位置Xcに対して主走査方向Xに左右対称な位置をとりつつスライド可能に構成されている。
【0056】
一対の可動ガイド部53A,53Bにガイドされつつ増設カセット19から給送された用紙P(図4において搬送中の用紙)は、図4に示すように、用紙サイズによらず、その幅中心がセンター位置Xcに一致する。他方の給紙カセット16についても、同様の用紙ガイド53を備え、用紙が一対の可動ガイド部53A,53Bに幅方向にガイドされるため、同様にセンター給紙が可能になっている。また、リア側の給紙トレイ17も同様に一対の可動ガイド部に用紙がガイドされることにより、センター給紙が可能となっている。
【0057】
このようなセンター給紙方式の場合、用紙の設計上(理論上)の側端位置は用紙サイズ毎に決まっている。ここで、用紙の設計上の側端位置を基準に、記録ヘッド22からのインク噴射の開始を許容する噴射開始位置を決めてもよいが、取り外し式の増設カセット19を本体12に装着した際の主走査方向Xにおける装着位置のずれを考慮し、噴射開始位置は実際の用紙の側端位置に応じて決めるようにしている。本実施形態では、噴射開始位置を求めるうえで、主走査方向Xにおける設計上(理論上)の第1側端位置Xsnを用紙サイズ毎に定める。
【0058】
図3に示す例では、センター位置Xcと、そのときの用紙サイズの情報から決まる紙幅PWとを用いて、設計上の第1側端位置Xsnを、式 Xsn=Xc−PW/2により定めている。このように用紙サイズが決まれば、用紙サイズ毎に設計上の第1側端位置Xsnを計算で求めることができる。そして、噴射開始位置は、余白量や縁なし印刷の有無などのレイアウトに関する印刷設定情報と、側端位置とから求めることができる。
【0059】
給紙カセット16は本体12に対して主走査方向X(紙幅方向)における装着位置ずれが発生にくい。そして、印刷設定情報として設定された余白量や縁なし印刷の有無などのレイアウト情報を用いて、第1側端位置に対する設定量ΔBが決まるので、第1側端位置に設定量ΔBを加算することにより、噴射開始位置が求められる。
【0060】
図3における右下に示すように、記録ヘッド22のノズル形成面22aには複数本(例えば4本)のノズル列22bが用紙搬送方向Y方向に沿って配列されている。各ノズル列22bは、例えばY方向に沿って千鳥配置された例えば180個のノズル群より構成されている。記録ヘッド22の複数本のノズル列22bは、それぞれ噴射開始位置Xst(例えばXst=Xd1)に一致するときに、インク滴の噴射の開始が許可される。
【0061】
切換保持装置55は、キャリッジ13がホーム位置HPへ到達する手前の移動過程で係合して押し込み操作可能なレバー式の動力切換部材56を備え、キャリッジ13が動力切換部材56を操作することで切り換えられる。切換保持装置55は、キャリッジ13の配置位置に応じて、ASFモーター31の動力伝達先として、リア給送装置30、フロント給送装置40及び増設用の給送装置18のうちの一つを選択する。
【0062】
印刷中における用紙Pの幅方向(X方向)におけるホーム位置HP側(1桁側)の第1側端位置は、一対のガイド53A,53Bにガイドされる用紙Pの用紙サイズに応じて変化する。第1紙端位置の値Xd1はホーム位置HP(原点O)からの値(距離)として表される。また、用紙Pの幅(X方向の幅)を表現した値をPWとすると、用紙Pの反ホーム位置側(80桁側)の第2側端位置Xd2は、Xd2=Xd1+PWと表される。
【0063】
また、リア給送装置30は、給紙ローラー30Aを備え、この給紙ローラー30Aは切換保持装置55を介して伝達されるASFモーター31の駆動力に基づき回転駆動され、給紙時には給紙トレイ17にセットされた用紙Pのうち最上位の一枚のみ給送する。そして、給送された用紙Pの先端は、記録ヘッド22より搬送方向の上流側に位置する紙検出センサー51により検知されるように構成されている。
【0064】
また、キャリッジ13と共に移動する紙幅検出器52は、その投光器から出射された光が用紙Pに反射した反射光を受光器が受光するときに「紙あり」を検出し、用紙Pがなくその反射光を受光器で受光できないときに「紙なし」を検出する。そして、「紙あり」から「紙なし」に切り換わったときのキャリッジ13の位置から用紙Pの側端位置を検出するようになっている。もちろん、紙幅検出器52は透過型でもよく、用紙搬送経路を挟んだ反対側に反射ミラーが設置され、反射ミラーで反射した反射光が用紙に遮られて受光できなくなると、用紙を検知する構成でもよい。
【0065】
次に、プリンター11の電気的構成を図5に基づき説明する。図5に示すように、プリンター11には、ホスト装置100が通信可能な状態で接続されている。ホスト装置100は、例えばパーソナルコンピューターや携帯端末などからなり、プリンタードライバー(図示せず)を内蔵している。プリンタードライバーは、印刷対象の画像データから印刷データを生成し、その印刷データをプリンター11へ送信(転送)する。このとき、プリンタードライバーは、画像データに、解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理、ラスタライズ処理などの所定の画像処理を施して、CMYK表色系の印刷画像データを生成する。
【0066】
また、ユーザーは印刷を行うときにはホスト装置100に印刷設定情報(印刷条件情報)を入力する。印刷設定情報には、用紙種、用紙サイズ、印刷品質(高品質(写真印刷等)/標準/低品質(ドラフト印刷等))、印刷色(カラー/グレイスケール)などがある。プリンタードライバーは、印刷言語で記述されたコマンドと、少なくとも印刷サイズを含む一部の印刷設定情報とを含むヘッダーを、印刷画像データに付けて印刷データを生成する。そして、プリンタードライバーは、生成した印刷データをプリンター11へ送信する。
【0067】
図5に示すように、プリンター11は、コントローラー60、インターフェイス(以下、「I/P61」と記す)を備え、さらに駆動系として、CRモーター29、ASFモーター31、PFモーター32、検出系として、リニアエンコーダー33、紙検出センサー51、ロータリーエンコーダー62を備えている。さらにプリンター11は、駆動系の各モーター29,31,32を駆動制御するためのASFモーター駆動回路63、PFモーター駆動回路64、CRモーター駆動回路65と、記録ヘッド22を駆動制御するためのヘッド駆動回路66を備える。また、プリンター11は、操作部24及び表示部25を備えている。さらに、プリンター11には、増設用の給送装置18(換言すれば増設カセット19)が本体12に装着されたことを検知する増設カセット検出センサー(以下、単に「増設検出センサー67」と称す)が設けられている。
【0068】
プリンター11は、I/F61を介してホスト装置100(例えばパーソナルコンピュータ等)から印刷データを受信する。この受信した印刷データはコントローラー60に取得される。
【0069】
コントローラー60は、コンピューター70を内蔵している。このコンピューター70は、CPUと、ROM、RAM及び不揮発性メモリーなどを備え、さらに必要に応じてASIC(Application Specific IC(特定用途向けIC))を備える。そして、コンピューター70は、ROM又は不揮発性メモリーに記憶されたプログラムをCPUが実行して実現されるソフトウェアと、必要に応じてASICの各種電子回路により実現されるハードウェアとより実現される各種機能部を有している。図5ではコンピューター70内にこれら各種機能部を示している。すなわち、コンピューター70は、制御部71、バッファー72、画像処理部73及びヘッド制御部74を備えている。バッファー72は、例えばRAMの一部の記憶領域を利用して構成される。
【0070】
次に、コンピューター70を構成する各部71〜74を詳細に説明する。
ホスト装置100からI/F61を介して取り込んだ印刷データは、バッファー72に一時格納される。制御部71は、バッファー72に格納された印刷データ中のコマンドを読み込んでそのコマンドを解釈し、その解釈したコマンドの指示に従って各種モーター29,31,32を駆動制御する。
【0071】
画像処理部73は、バッファー72から印刷データ中の印刷画像データ(ラスタデータ)を読み出して必要な画像処理を施す。これにより、ヘッド駆動回路66が記録ヘッド22の制御に使用可能なデータ形式のヘッド制御データが生成される。画像処理部73は、生成したヘッド制御データをヘッド制御部74へ送る。ヘッド制御部74は、制御部71とタイミングを調整しつつ、ヘッド制御データをヘッド駆動回路66へ転送する。ヘッド駆動回路66は、記録ヘッド22内にノズル毎に設けられた噴射駆動素子をヘッド制御データに基づき駆動させることにより、記録ヘッド22のインク噴射制御を行う。
【0072】
また、制御部71は、給送系・搬送系及びキャリッジ駆動系の各種制御を司る他、表示部25の表示制御も行う。これらの制御を行うため、制御部71は、図5に示すように、主制御部81、給送制御部82、搬送制御部83、キャリッジ制御部84、CRカウンター85及びPFカウンター86を備えている。主制御部81は、給送制御部82、搬送制御部83及びキャリッジ制御部84に、印刷制御に必要な各種の指示を出す。
【0073】
給送制御部82は、ASFモーター駆動回路63を介してASFモーター31を駆動制御し、用紙の給送制御を行う。このとき、ASFモーター31の動力伝達先として、キャリッジ13の配置位置に応じて切換保持装置55が、リア給送装置30、フロント給送装置40及び増設用の給送装置18のうち一つを選択する。また、搬送制御部83は、PFモーター駆動回路64を介してPFモーター32を駆動制御し、用紙の搬送制御(紙送り制御)を行う。また、キャリッジ制御部84は、CRモーター駆動回路65を介してCRモーター29を駆動制御し、キャリッジ13の主走査方向Xの移動を制御する。
【0074】
CRカウンター85は、キャリッジ駆動時に、リニアエンコーダー33から入力する90度位相のずれた2つのパルス信号ES1,ES2のエッジを計数する。CRカウンター85は、キャリッジ13がホーム位置から80桁側へ向かって往動するときに計数値をインクリメントし、キャリッジ13がホーム位置(1桁側)へ向かって復動するときに計数値をデクリメントすることで、ホーム位置を原点とするキャリッジ13の移動位置を管理する。
【0075】
PFカウンター86は、ロータリーエンコーダー62から入力するパルス信号ES3,ES4のエッジを計数することで、用紙Pの搬送位置に応じた計数値を管理する。詳しくは、PFカウンター86は、紙検出センサー51が用紙Pの先端を検知した時にリセットされ、その後、用紙Pの先端がヘッド基準位置に達すると、再リセットされる。この再リセット後の計数値は、用紙の先端がヘッド基準位置に達したときを原点とする用紙の搬送位置を示す。なお、ロータリーエンコーダー62は、図5に示すように、PFモーター32と動力伝達可能に連結された軸部(例えば搬送駆動ローラ45Aの軸部)の端部に固定された符号板62aと、その符号板62aのスリットを透過した光を受光して90度位相のずれた2つのパルス信号ES3,ES4を出力するセンサー62bとを有する。
【0076】
さらに制御部71は、表示制御部87、演算部88、第1判定部89、第2判定部90、第3判定部91及びメモリー92を備えている。表示制御部87は、表示部25に各種メニューやエラー発生時にエラーの内容を表示するなどの表示制御を行う。
【0077】
メモリー92(例えば不揮発性メモリー)には、センター位置Xcの情報が記憶されている。また、メモリー92には、各種のフラグが記憶される。本実施形態では、増設カセット用の紙端検出フラグF1と、リミット判定フラグF2とが設定されている。紙端検出フラグF1は、電源オン後の増設カセット19からの給紙による最初の印刷の1頁目に紙端検出を行ったか否かを判定するためのフラグであり、電源オン時に「1」にセットされ、電源オン後の増設カセット19からの給紙による最初の印刷の1頁目に噴射開始位置調整量ΔXを設定すると「0」とされる。この紙端検出フラグF1は、第1判定部89による判定に用いられる。また、メモリー92は、演算部88の演算結果を保存する記憶領域としても用いられる。
【0078】
演算部88は設計上の第1側端位置Xsnや噴射開始位置の演算をはじめとする各種の演算を行う。また、演算部88は、紙幅検出器52により実際に検出された第1側端位置Xd1と、そのときの用紙サイズに応じた設計上の第1側端位置Xsnとのずれ量ΔX(=|Xd1−Xsn|)を演算する。このとき、用紙サイズは印刷データに含まれる印刷設定情報中のものを使用し、用紙サイズから決まる紙幅PWと、メモリー92から読み出したセンター位置Xcの情報とを用いて、設計上の第1側端位置Xsn(=Xc−PW/2)を取得する。本実施形態では、設計上の第1側端位置Xsnを演算する演算部88により、取得手段の一例が構成される。また、ずれ量ΔX(つまり噴射開始位置調整量)を演算する演算部88により演算手段が構成される。
【0079】
第1判定部89は、増設カセット19からの給紙かつ増設カセット用の紙端検出フラグF1に「1」がセットされているか否かを判定する。つまり、第1判定部89は、電源オン後、増設カセット19からの給紙による最初の印刷の1頁目の紙端検出を行ったか否かを判定する。このフラグF1が「1」であれば、増設カセット19からの給紙による電源オン後の最初の印刷の1頁目の紙端検出が行われていないと判定され、一方、このフラグF1が「0」であれば、増設カセット19からの給紙による電源オン後の最初の印刷の1頁目の紙端検出が既に行われたと判定される。
【0080】
但し、電源オン後に増設用の給送装置18が装着された場合も、給送装置18の検出以後における増設カセット19からの給紙による最初の印刷が、電源オン後の増設カセット19からの給紙による最初の印刷として扱われる。これは、増設用の給送装置18が装着されると、増設カセット検出センサー67からオン信号を入力するので、紙端検出フラグF1を「1」にセットするからである。このように電源オン後に給送装置18が装着された場合は、その装着後の最初の印刷を行う場合の1頁目の紙端検出が行われたか否かが判定されることになる。
【0081】
第2判定部90は、エラー判定を行う。判定されるエラーの内容は、紙詰まりエラー、頭出しエラーなどである。第2判定部90はエラーと判定した場合、その旨を表示制御部87へ通知する。表示制御部87は表示部25にエラー内容を表示してユーザーにエラー発生の旨を報知する。
【0082】
第3判定部91は、紙幅検出器52により検出された第1側端位置Xd1と設計上の第1側端位置Xsnとのずれ量|ΔX|(=|Xd1−Xsn|)が、予め設定されたリミット値L以下(|ΔX|≦L)か否かを判断する。ここで、リミット値Lは、この値を超えるずれ量|ΔX|の場合は、増設カセット19内の用紙のセット位置が幅方向に規定量以上ずれている可能性が高いと判断しうる値に設定されている。リミット値Lを超えるずれ量ΔXは噴射開始位置調整量として採用しない。噴射開始位置調整量ΔXの上限又は下限はリミット値(L又は−L)までとなる。
【0083】
次にプリンター11の作用を、図6〜図9に示すフローチャートに基づいて説明する。
まずプリンター11の操作部24を操作して電源が投入されると、コンピューター70内のCPUは、図6に示す電源オン処理ルーチンを実行する。まずステップS11において、増設カセット19が装着されているか否かを判断する。すなわち、増設検出センサー67から、増設用の給送装置18が装着されていることを示すオン信号を入力しているか否かを判断する。増設カセット19が装着されていれば、増設カセット用の紙端検出フラグF1に「1」をセットする。一方、増設カセット19が装着されていなければ、増設カセット用の紙端検出フラグF1を「0」のままとする。
【0084】
次にホスト装置100の入力装置を用いてユーザーが文書又は画像などの印刷対象を印刷するための操作を行うと、プリンタードライバーが起動されてホスト装置100のモニターに設定画面が表示される。ユーザーは設定画面で用紙サイズを含む印刷設定情報を入力する。その後、ユーザーが印刷の実行を指示する操作を行うと、プリンタードライバーは印刷対象の画像データから印刷データを生成し、プリンター11へ送信する。このとき、プリンター11へ送信される印刷データには用紙サイズの情報が含まれている。
【0085】
印刷データを受信したプリンター11内では、コンピューター70が印刷データに基づく印刷処理を行う。コンピューター70は、指定の用紙サイズの情報に基づいて使用する給紙カセットを選択する。例えば指定の用紙サイズが増設カセット19に収容された用紙Pの用紙サイズと同じであるとき、増設カセット19が選択される。増設カセット19が選択された場合、コンピューター70は、図8及び図9に示す増設カセット給紙処理ルーチンに従って給紙処理を行う。以下、増設カセット給紙処理を、図8及び図9に基づいて説明する。
【0086】
まず図8におけるステップS21において、ローラー食付き位置まで用紙を搬送(給送)する。ここで、ローラー食付き位置とは、用紙のスキュー取りのため、用紙Pの先端部が搬送ローラー対45に挟持(ニップ)される位置、つまり搬送ローラー対45が用紙Pの先端部に食付く位置(ローラー食付き位置)まで用紙Pを給送する。
【0087】
そして、次のステップS22では、ローラー食付き位置まで用紙を搬送できたか否かを判断する。ここで、ローラー食付き位置まで給送される途中で用紙Pの先端が紙検出センサー51に検知された時点でPFカウンター86がリセットされ、以後、残りの給送過程でこの検知位置を原点とする用紙の搬送位置がPFカウンター86により計数される。紙検出センサー51と搬送ローラー対45との距離は既知である。そのため、ステップS22では、PFカウンター86の計数値がローラー食付き位置に相当する値に達したか否かを判断する。そして、PFカウンター86の計数値がローラー食付き位置に相当する値に達すれば、ローラー食付き位置まで用紙を搬送できたと判断する。また、ASFモーター31の駆動開始時からの回転量又は駆動時間が、用紙の先端をローラー食付き位置へ搬送するために必要な回転量又は時間より長い値に設定された閾値を超えているにも関わらず、紙検出センサー51が用紙Pの先端を検知しない場合は、ローラー食付き位置まで用紙を搬送できなかった給送エラーであると判断する。この給送エラーの判定は、第2判定部90が行う。そして、ローラー食付き位置まで用紙を搬送できた場合はステップS23に進み、ローラー食付き位置まで用紙を搬送できなかった場合はステップS31に進む。
【0088】
ここで、ローラー食付き位置まで用紙を搬送できなかった場合とは、増設カセット19に用紙が収容されていない紙無しの場合と、給送された用紙が途中で詰まった紙詰まりが発生した場合とがある。ステップS31では、表示部25に紙無し又は紙詰まりの旨のエラー表示を行う。この表示処理は、第2判定部90によるエラー判定結果の通知を受け付けた表示制御部87が行う。なお、ローラー食付き位置まで搬送された用紙は、搬送ローラー対45の逆転により先端部側に撓みを形成し、再び搬送ローラー対45が正転してその撓みが開放されるときに用紙Pのスキューが取り除かれる。
【0089】
ステップS23では、増設カセット19からの給紙かつ紙端検出フラグF1=1であるか否かを判断する。電源オン(電源投入)後の最初の印刷(印刷ジョブ)における1頁目なので、電源オン時にセットした紙端検出フラグF1=1のままである。また、増設カセット19からの給紙である。よって、ステップS23における判定条件が成立するので、ステップS24に進む。なお、増設カセット19以外の給紙カセット16又はリア側の給紙トレイ17が選択されている場合、あるいは紙端検出フラグF1がステップS26の処理を経た後にとりうる値「0」である場合は、ステップS25〜S28の処理を省略してステップS29に進む。
【0090】
ステップS24では、用紙先端位置検出処理を行う。すなわち、キャリッジ13をセンター位置Xc付近の所定位置に移動させ、この位置でキャリッジ13を待機させつつ、用紙をスキュー取り完了位置から紙幅検出器52の検知対象位置を先端が搬送方向に超える所定位置まで搬送する。この結果、紙幅検出器52により用紙Pの先端が検知される。紙幅検出器52が検知したときのPFカウンター86の計数値を用紙先端検出位置として取得する。この用紙先端検出位置は、用紙Pの頭出しに利用される。
【0091】
次のステップS25では、用紙先端位置を検出できたか否かを判断する。すなわち、用紙Pを紙幅検出器52の検知対象位置まで搬送するために十分な回転量又は駆動時間だけPFモーター32を駆動させたにも関わらず、紙幅検出器52が検知しなかったか否かを判断する。用紙先端位置を検出できた場合はステップS26に進み、検出できなかった場合はステップS32に進む。ここで、用紙先端位置を検出できなかった場合とは、用紙を紙幅検出器52の検知対象位置まで搬送する途中で紙詰まりが発生した場合が挙げられる。そのため、ステップS32では、表示部25に紙詰まりエラーを表示する。
【0092】
一方、用紙先端位置を検出できた場合は、ステップS26において、第1側端位置検出処理を行う。このステップS26では、詳しくは、図9に示す第1側端位置検出処理ルーチンを行う。以下、第1側端位置検出処理を図9に基づいて説明する。
【0093】
まずステップS41では、設計上の第1側端位置Xsnを計算する。すなわち、演算部88は、設計上の第1側端位置Xsnを、式 Xsn=Xc−PW/2により計算する。ここで、Xcは設計上の用紙の幅方向におけるセンター位置(幅中心位置)、PWは紙幅である。紙幅PWは、用紙サイズの情報から例えばテーブルを参照して求められる。
【0094】
次のステップS42では、紙幅検出器52により用紙の第1側端を検出する。すなわち、キャリッジ13を用紙先端位置検出処理時のセンター付近の所定位置からホーム位置HP近くの目標位置へ向かって移動させる。この目標位置は、そのときの用紙の用紙サイズに応じて、紙幅検出器52が用紙の第1側端を確実に通過しうる位置に決められる。キャリッジ13が目標位置まで移動する途中で紙幅検出器52は第1側端を検知する。
【0095】
次のステップS43では、第1側端を検出できたか否かを判断する。第1側端を検出できた場合はステップS44に進み、検出できなかった場合はステップS45に進む。ここで、紙幅検出器52が第1側端を検知できない場合としては、用紙が幅方向に異常に大きくずれた場合や、用紙が濃色のため、用紙Pからの反射光を紙幅検出器52が検出できない場合などが挙げられる。
【0096】
第1側端を検出できた場合は、ステップS44において、検出位置を第1側端位置Xd1に設定する。一方、第1側端を検出できなかった場合は、ステップS45において、第1側端位置Xd1として設計上の第1側端位置Xsnを設定する。ステップS44又はS45で第1側端位置Xd1を設定した後は、ステップS46に進む。
【0097】
ステップS46では、増設カセット19からの給紙かつ紙端検出フラグF1=1であるか否かを判断する。電源オン(電源投入)後の最初の印刷(印刷ジョブ)における1頁目なので、電源オン時にセットした紙端検出フラグF1=1のままであり、かつ増設カセット19からの給紙である。よって、今回は、ステップS46における判定条件が成立するので、ステップS47に進む。なお、増設カセット19以外の給紙カセット16又はリア側の給紙トレイ17が選択されている場合、あるいは紙端検出フラグF1が、当該ルーチン中のステップS49の処理を終えた後にとりうる値「0」の場合は、当該ルーチンを終了する。
【0098】
ステップS47では、リミット判定フラグF2を「0」にする(F2=0)。
そして、次のステップS48では、|Xd1−Xsn|≦Lであるか否かを判定する。すなわち、第3判定部91が、第1側端位置Xd1と設計上の第1側端位置Xsnとの差の絶対値、つまり、ずれ量ΔXの絶対値を計算し、その絶対値がリミット値L以下であるか否かを判断する。換言すれば、ずれ量ΔX=Xd1−Xsnが、−L≦ΔX≦Lの範囲内にあるか否かを判定する。|Xd1−Xsn|≦Lが成立すればステップS49に進み、不成立であればステップS50に進む。
【0099】
ステップS49では、噴射開始位置調整量ΔXとして、ΔX=Xd1−Xsnを設定する。つまり、第1側端位置Xd1と設計上の第1側端位置Xsnとのずれ量を、噴射開始位置調整量ΔXとして設定する。
【0100】
一方、ステップS50では、リミット判定フラグF2を「1」にする(F2=1)。F2=1は、|Xd1−Xsn|がリミット値Lを超えたことを意味する。例えば、増設カセット19内の用紙のセット位置が幅方向にずれていたときには、|Xd1−Xsn|がリミット値Lを超える場合がある。このため、増設カセット19内の用紙のセット位置のずれが原因である可能性がある場合は、噴射開始位置調整量ΔXをリミット値Lに制限する。
【0101】
このため、ステップS51では、Xd1−Xsn≧0が成立するか否かを判断する。Xd1−Xsn≧0の判断により、検出された第1側端位置Xd1が設計上の第1側端位置Xsnに対して、正側(反ホーム位置側)にずれているか(条件成立)、負側(ホーム位置側)にずれているか(条件不成立)を判断する。Xd1−Xsn≧0が成立の場合はステップS52に進み、不成立の場合はステップS53に進む。
【0102】
ステップS52では、噴射開始位置調整量ΔXとして、ΔX=Lを設定する。つまり、噴射開始位置調整量ΔXをリミット値Lに制限する。
また、ステップS53では、噴射開始位置調整量ΔXとして、ΔX=−Lを設定する。つまり、噴射開始位置調整量ΔXをリミット値−Lに制限する。
【0103】
そして、噴射開始位置調整量ΔXの設定(算出)を終えると、ステップS54において、リミット判定フラグF2が「0」(F2=0)であるか否かを判断する。F2=0であれば、ステップS55に進んで、紙端検出フラグF1を「0」にする(F1=0)。一方、F2=1であれば当該ルーチンを終了する。F1=0にした場合は、噴射開始位置調整量の再設定は行われることはなく、電源オフ(電源遮断)時まで今回設定された噴射開始位置調整量ΔXが使用されることになる。一方、F1=1のままの場合は、次回以降に、噴射開始位置調整量ΔXの再設定が行われることになる。以上で第1側端位置検出処理を終える。
【0104】
図8に戻って、次のステップS27では、第2側端位置検出処理を行う。すなわち、キャリッジ13を、第1側端位置検出処理を終えた位置から反ホーム位置側の目標位置まで移動させる。この目標位置は、そのときの用紙の用紙サイズに応じて、紙幅検出器52が用紙の第2側端を確実に通過しうる位置に決められる。キャリッジ13が目標位置まで移動する途中で紙幅検出器52は第2側端を検知する。
【0105】
次のステップS28では、用紙の両側端位置を検出できたか否かを判断する。用紙の両側端位置を検出できた場合はステップS29に進み、検出できなかった場合はステップS32に進む。ここで、用紙の両側端位置を検出できなかった場合とは、紙詰まりが発生した場合が挙げられる。このため、ステップS32では、表示部25に紙詰まりの旨のエラー表示を行う。
【0106】
一方、ステップS29では、印刷開始位置まで用紙を搬送する。すなわち、用紙の頭出しを行う。
そして、次のステップS30では、印刷開始位置まで用紙を搬送できたか否かを判断する。印刷開始位置まで用紙を搬送できた場合は当該ルーチンを終了する。一方、印刷開始位置まで用紙を搬送できなかった場合はステップS33に進んで、表示部25に給紙エラーの旨を表示する。
【0107】
こうして電源オン後において増設カセット19からの給紙での最初の印刷の1頁目において、給送エラーが発生しなければ、噴射開始位置調整量ΔXが設定される。噴射開始位置調整量ΔXは、|Xd1−Xsn|≦Lが成立する場合には、ΔX=Xd1−Xsnが設定される。一方、|Xd1−Xsn|≦Lが不成立の場合は、ΔX=L又はΔX=−Lが設定される。そして、ΔX=Xd1−Xsnが設定された場合は紙端検出フラグF1=0に更新されるが、ΔX=L又はΔX=−Lが設定された場合は紙端検出フラグF1=1のままで更新されない。
【0108】
こうして噴射開始位置調整量ΔXが設定されると、次にコンピューター70は図7に示す噴射開始位置算出ルーチンを行う。
まずステップS61において、設計上の第1側端位置Xsnに対する噴射開始位置の設定量ΔBを取得する。この設定量ΔBは、印刷設定情報中のレイアウト情報(幅方向の余白情報や縁なし印刷の有無など)に基づいて決まる調整値である。この設定量ΔBは、例えばプリンタードライバーが計算した印刷データのヘッダー中の一情報として取得されるか、印刷データのヘッダー中の一情報として含まれるレイアウト情報を基に演算部88が計算することにより取得される。設定量ΔBは、用紙の側端位置からの調整値として与えられる。例えば幅方向の余白量Bmmが設定されている場合は、その余白が確保されるような値として与えられる(例えばΔB=Bmm)。縁なし印刷が設定されている場合は確実に縁なし印刷がなされるように側端位置の外側(負側)へ所定距離Gmm(例えば1〜3mm)の値として与えられる(例えばΔB=−Gmm)。
【0109】
次のステップS62では、噴射開始位置Xstを算出する。すなわち、噴射開始位置Xstを、式 Xst=Xsn+ΔX+ΔBにより計算する。こうして用紙が印刷開始位置に頭出しされて1パス目(1ライン目)の印刷が開始される前に、噴射開始位置Xstが求められる。そして、キャリッジ13がホーム位置HP側から1パス目の移動をする過程で、ノズル列22bが噴射開始位置Xstに一致するキャリッジ位置に達すると、制御部71からヘッド制御部74へインク滴噴射を許可する噴射許可信号が出力される。ヘッド制御部74は噴射許可信号を入力すると、ヘッド駆動回路66へ噴射開始許可信号を送る。ヘッド駆動回路66は噴射開始許可信号を入力すると、ヘッド制御データに基づく記録ヘッド22のインク滴の噴射制御を開始する。
【0110】
こうして以後、設定された噴射開始位置Xstを基に1パス毎の印刷を繰り返し、用紙Pに印刷を施す。ここで、印刷方式には、印刷モードに応じて、キャリッジ13がホーム位置側から反ホーム位置側へ向かう往動過程のみ印刷を行う一方向印刷方式と、往動過程の印刷に加えて、キャリッジ13が反ホーム位置側からホーム位置側へ向かう復動過程でも印刷を行う双方向印刷方式とがある。双方向印刷方式の場合、往動過程の噴射開始位置Xstは、例えば設計上の第1側端位置Xsn、紙幅PW、噴射開始位置調整量ΔX、第2側端位置側の設定量ΔBを用いて、式 Xst=Xsn+PW+ΔX−ΔBにより算出される。もちろん、第2側端位置検出処理(S27)で取得した第2側端位置Xd2を用いて復動過程の噴射開始位置Xstを算出してもよい。
【0111】
こうして、一方向印刷方式又は双方向印刷方式で複数パスの印刷を行って1頁の印刷を終えると、印刷済みの用紙Pが排紙される。そして、複数枚印刷であれば、2頁目の用紙が増設カセット19から給送される。この給送時には1頁目と同様に、図8及び図9に示す増設カセット給紙処理が行われる。
【0112】
例えば1頁目の給紙処理において、噴射開始位置調整量ΔXが設定された場合は、紙端検出フラグF1=0であるため、図8におけるステップS23において、増設カセット19からの給紙かつ紙端検出フラグF1=1であるという判定条件が不成立となる。このため、給送過程でスキュー取り(S21)が行われた後、紙端検出処理(S24〜S28)が省略され、ステップS29において印刷開始位置まで用紙を搬送する。つまり、噴射開始位置調整量ΔXの再設定(S26)が行われることはなく、1頁目の給送時に設定された噴射開始位置調整量ΔXが使用される。
【0113】
一方、1頁目の給紙処理において、噴射開始位置調整量ΔXが設定されてもそれがリミット値である場合(ΔX=L又はΔX=−L)は、紙端検出フラグF1=1であるため、2頁目の給送過程におけるステップS23において、増設カセット19からの給紙かつ紙端検出フラグF1=1であるという判定条件が成立する。このため、2頁目の給送過程において図8のステップS26、すなわち図9のルーチンが再び行われる。そして、図9のステップS48において、|Xd1−Xsn|≦Lが成立すれば(S48で肯定判定)、ステップS49において噴射開始位置調整量ΔX=Xd1−Xsnが設定される。この場合、紙端検出フラグF1=0に更新される(S55)。
【0114】
また、1頁目で給送エラーが発生した場合も、紙端検出フラグF1=1のままなので、給送エラーが解除された後の1頁目の再度の給送過程で図9のルーチンが行われることになる。そして、図9のステップS48において、|Xd1−Xsn|≦Lが成立すれば(S48で肯定判定)、ステップS49において噴射開始位置調整量ΔX=Xd1−Xsnが設定される。この場合、紙端検出フラグF1=0に更新される(S55)。例えば給送エラーが連続した場合は、給送エラーが解除される度の再度の給送過程で、図9のルーチンが行われ、噴射開始位置調整量ΔX(=Xd1−Xsn)が設定されるまで毎回の給送過程で当該ルーチンが繰り返し行われる。
【0115】
また、増設カセット19内の用紙のセット位置が幅方向にずれていて、|Xd1−Xsn|≦Lが不成立で噴射開始位置調整量ΔX(=L又は−L)が設定された場合は、毎回の給送過程で図9のルーチンが行われ、用紙のセット位置のずれが解消されるまで毎回の給送過程で当該ルーチンが行われる。そして、増設カセット19内の用紙のセット位置が正しく直されると、次回の増設カセット給紙処理ルーチンにおいて、噴射開始位置調整量ΔX(=Xd1−Xsn)が設定される(S49)。
【0116】
こうして電源オン後、噴射開始位置調整量ΔX(=Xd1−Xsn)が設定された後は、電源オフまで噴射開始位置調整量ΔXが採用される。
また、電源オン後に増設用の給送装置18が装着された場合は、その給送装置18の装着が増設検出センサー67により検知された後、最初に増設カセット19からの給紙が選択されたときに、図8及び図9に示す増設カセット給紙処理ルーチンが行われる。このため、電源オン後に増設用の給送装置18が装着された場合も、噴射開始位置調整量ΔXが設定されることで、用紙の幅方向における適切な印刷範囲に印刷が施される。
【0117】
以上詳述したように、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)電源オン後において紙幅検出器52が、給送装置18から給送された用紙Pの第1側端位置Xd1を、印刷開始前の給送過程において検出する。そして、演算部88が、紙幅検出器52により検出された第1側端位置Xd1と、設計上(理論上)の側端位置Xsnとのずれ量ΔXを演算する。主制御部81(調整手段)は、ずれ量ΔX(調整量)を用いて記録ヘッド22の印刷が許容される幅方向における印刷範囲の限界位置を調整する。よって、取り外し式の給送装置18の装着ずれに起因して用紙Pへの幅方向における印刷範囲のずれを小さく抑制することができる。
【0118】
(2)紙幅検出器52は、電源オン後において給送装置18が装着された後における最初の印刷(印刷ジョブ)の1頁目において、給送装置18から給送された用紙Pの第1側端位置を検出する。よって、取り外し式の給送装置18からの給送による印刷時には、最初の印刷の1頁目から、幅方向における印刷範囲のずれを小さく抑制することができる。
【0119】
(3)キャリッジ13に設けられた紙幅検出器52により、用紙Pの幅方向の両端位置が検出される。このとき検出される両端位置のうち少なくとも第1側端位置Xd1を用いて、ずれ量ΔXが演算される。そして、主制御部81により、ずれ量ΔXを用いてキャリッジ13と共に移動して印刷を行う記録ヘッド22の噴射開始位置(記録開始位置)が調整される。よって、シリアル式のプリンター11においては、記録ヘッド22の噴射開始位置が調整されることにより、用紙Pの幅方向における印刷範囲のずれを小さく抑制することができる。
【0120】
(4)主制御部81による調整前に用紙Pの給送エラーが検出された場合、給送エラーの解除後における給送装置18からの次の給送過程において第1側端位置Xd1の検出を行ってずれ量ΔXを取得し、その取得したずれ量ΔXを用いて、主制御部81は印刷範囲の限界位置を調整する。よって、給送エラーが発生して、第1側端位置Xd1、ずれ量ΔX、記録範囲の限界位置のうち一つが取得できなって、その結果、噴射開始位置(印刷範囲の限界位置)の調整ができなくなっても、給送エラー解除後における給送装置18からの次の給送過程で、噴射開始位置の調整量の再度の調整が行われる。よって、調整処理を行う際の給送でたまたま給送エラーが発生しても、その後の印刷において用紙Pの幅方向の記録範囲のずれを小さく抑制することができる。
【0121】
(5)第3判定部91により、ずれ量|ΔX|がリミット値L(制限値)を超えると判定された場合、主制御部81は、噴射開始位置調整量ΔXとしてリミット値Lを設定し、噴射開始位置調整量ΔX(=L又は−L)を用いて、噴射開始位置Xstを調整する。例えば、給送装置18内の用紙Pのセット位置が幅方向にずれていたことが原因で過大なずれ量ΔXが演算された場合でも、噴射開始位置調整量ΔXがリミット値Lに制限されるので、適切な噴射開始位置に調整できる。よって、増設カセット19内の用紙Pのセット位置のずれに合わせて過大な噴射開始位置調整量ΔXが設定されてしまい、その後、その過大な噴射開始位置調整量ΔXが使用され続けて不適切な噴射開始位置Xstに調整されてしまうことに起因する用紙Pへの幅方向の印刷範囲のずれを回避することができる。
【0122】
(6)主制御部81により噴射開始位置調整量ΔXが設定された後は、電源オフされるまで、噴射開始位置調整量ΔXに基づく噴射開始位置Xst(記録範囲の限界位置)が採用されて記録ヘッド22による印刷(インク滴噴射)が行われる。よって、増設用の給送装置18から給送される印刷の度に、第1側端位置Xd1の検出、噴射開始位置調整量ΔXの演算、噴射開始位置Xst(記録範囲の限界位置)の調整を含む処理を行わずに済む。この結果、例えば増設用の給送装置18からの給送時における印刷のスループットを向上させることができる。
【0123】
(7)増設用の給送装置18がセンター給送方式の場合、用紙サイズに応じて第1側端位置が変化するが、用紙サイズが異なっても、同じ噴射開始位置調整量ΔXを用いて噴射開始位置Xst(印刷範囲の限界位置)を調整できる。よって、どの用紙サイズであっても記録ヘッド22による用紙Pへの幅方向の印刷範囲のずれを小さく抑制することができる。
【0124】
(8)ずれ量|ΔX|がリミット値Lを超えた場合は、噴射開始位置調整量ΔX=L又はΔX=−Lを採用するので、適切な噴射開始位置Xstを採用できる。仮に増設カセット19内の用紙Pのセット位置が幅方向にずれていた場合、より適切な噴射開始位置Xstを採用して適切な印刷を行うことができ、一方、仮に増設カセット19内の用紙Pのセット位置が正しく給送装置18の装着ずれが原因である場合にも、より適切な噴射開始位置Xstを採用して適切な印刷を行うことができる。
【0125】
(9)ずれ量|ΔX|がリミット値Lを超えた場合は、紙端検出フラグF1を「0」にしないので、ずれ量|ΔX|がリミット値L以下に収まるまで、紙端検出処理(S24〜S28)を繰り返し行う。このため、仮に増設カセット19内の用紙Pのセット位置が幅方向にずれていた場合、そのセット位置が直されるまでの間、毎回、紙端検出が行われ、そのときの用紙Pの第1側端位置Xd1に応じた噴射開始位置調整量ΔXを用いて噴射開始位置Xstが求められる。このため、より適切な噴射開始位置Xstから印刷を行うことができる。そして、増設カセット19内の用紙Pのセット位置が直された後は、増設カセット19からの給紙による印刷の1頁目の紙端検出において、ずれ量|ΔX|がリミット値L以下に収まるので、以後、このときに設定された噴射開始位置調整量ΔXが採用されて、適切な噴射開始位置Xstから印刷を行うことができる。
【0126】
なお、上記実施形態は以下のような形態に変更することもできる。
・第2側端位置Xd2を採用して噴射開始位置調整量ΔXを求める構成でもよい。また、基準位置は、ホーム位置側の設計上の側端位置に限定されず、反ホーム位置側の設計上の側端位置でもよい。さらに、ホーム位置側と反ホーム位置側の両方の設計上の側端位置、つまり設計上の第1側端位置と設計上の第2側端位置とを採用してもよい。この場合、各設計上の側端位置と、実際に検出した第1側端位置Xd1及び第2側端位置Xd2とを用いて取得される各ずれ量をそれぞれ調整量とし、各調整量を用いて、往動過程の記録開始位置と、復動過程の記録開始位置とを求める構成も採用できる。
【0127】
・噴射開始位置調整量ΔXに替えて、用紙サイズ毎に設計上の第1側端位置Xsnに補正を加えた補正後の第1側端位置Xsn(=Xsn+ΔX)を設定するようにし、補正後の第1側端位置Xsnを用いて噴射開始位置Xstを求める構成としてもよい。
【0128】
・ずれ量|ΔX|がリミット値Lを超えた場合は、噴射開始位置調整量ΔXをリミット値Lとするのではなく、噴射開始位置調整量ΔX=0としてもよい。
・ずれ量|ΔX|がリミット値L以下であるか否かの判定を無くし、リミット値Lを噴射開始位置調整量ΔXの上限又は下限とする制限を解除してもよい。
【0129】
・設計上の第1側端位置Xsnを計算する処理(S41)において使用する紙幅PWを用紙サイズから求めたが、紙幅検出器52が検出した両側端位置から計測される紙幅PW(=Xd2−Xd1)を用いて、設計上の第1側端位置Xsnを計算してもよい。
【0130】
・増設用の給送装置18(つまり増設カセット19)はセンター給紙方式(中央寄せ給紙方式)に限定されない。例えば用紙ガイドが固定ガイドと可能ガイドとを備え、用紙の一方の側端を固定ガイドに当てることで用紙を片側へ寄せた位置にガイドしつつ給紙する片側寄せ給紙方式を採用してもよい。このように片側寄せ給紙方式の場合も、増設用の給送装置18を装着した場合の装着ずれ分が調整された噴射開始位置(記録開始位置)から、より適切な印刷を行うことができる。
【0131】
・紙端検出フラグF1を廃止し、増設カセット19から給紙する印刷の度に、毎回、噴射開始位置調整量ΔXを求めてもよい。この場合、印刷ジョブ毎の最初の1頁目で噴射開始位置調整量ΔXを設定する構成でもよいし、1頁毎に噴射開始位置調整量ΔXを設定する構成としてもよい。
【0132】
・用紙の先端と第1側端と第2側端とを検出する紙端検出に替えて、噴射開始位置の補正に必要な一つの側端位置のみを検出する構成としてもよい。
・給送エラーは前記実施形態のものに限定されない。例えば、紙幅検出器52(媒体幅検出手段)が検出した両側端位置に基づいて用紙サイズ(記録媒体サイズ)を検出し、その検出した用紙サイズが、印刷設定情報中の用紙サイズと異なる給送エラーでもよい。そして、このような給送エラーの場合に、噴射開始位置調整量ΔXを再設定する構成でもよい。この構成によれば、紙幅検出器52が検出した両側端位置に基づいて用紙サイズを検出し、検出した用紙サイズが、設定された用紙サイズと異なる場合、増設用の給送装置18から次の用紙が給送されるときに、側端位置の検出、ずれ量|Δx|(つまり噴射開始位置調整量ΔX)の演算及び噴射開始位置Xstの調整が再度行われる。よって、印刷設定の用紙サイズと実際の用紙サイズとが一致せずこの種の給送エラーが発生したときにも、噴射開始位置Xst(記録範囲の限界位置)が再度調整されるので、用紙に幅方向における適切な印刷範囲に印刷を施すことができる。
【0133】
・図5におけるコンピューター70内の制御部71の各機能部を、プログラムを実行するCPUにより主にソフトウェアで実現したが、ASIC等の集積回路によりハードウェアで実現したり、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現したりしてもよい。
【0134】
・記録装置は、シリアルプリンターに限定されず、ラテラル式プリンター、ラインプリンター、ページプリンターでもよい。さらにインクジェット式に限定されず、ドットインパクト式の記録装置にも適用できる。要するに、記録装置本体に取り外し可能に給送装置を装着可能な記録装置であって、給送装置を本体に装着するときの装着ずれにより、給送カセットに用紙が幅方向に正しい位置にセットされているにも関わらず、記録媒体における幅方向の記録範囲の限界位置がずれる構成の記録装置において広く適用することができる。例えばラインプリンターの場合、検出手段として幅方向に延びるラインセンサーを設け、ラインセンサーにより用紙の側端位置を検出する。そして、増設用の給送装置を実装した場合におけるこの給送装置のプリンター本体に対する実装ずれに起因する、設計上の側端位置と検出された側端位置とのずれ量を調整量として設定する。さらに、調整量を用いてライン式の記録ヘッドによる記録が許可される記録範囲(インク噴射範囲)の限界位置を調整する構成とする。
【0135】
・前記実施形態では、記録装置として、インクジェット式のプリンター11が採用されているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置を採用してもよい。また、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。この場合、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態を言い、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置が挙げられる。さらに、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。また、流体は、トナーなどの粉粒体でもよい。なお、本明細書でいう流体には、気体のみからなるものは含まないものとする。
【符号の説明】
【0136】
11…記録装置の一例であるプリンター、13…記録手段を構成するキャリッジ、18…取り外し可能な給送装置の一例である増設用の給送装置、20…インクカートリッジ、22…記録手段を構成する記録ヘッド、22b…ノズル列、24…操作部、25…表示部、29…キャリッジモーター、31…給送モーター(ASFモーター)、32…紙送りモーター(PFモーター)、33…リニアエンコーダー、52…紙幅検出器、53…用紙ガイド、60…コントローラー、63…ASFモーター駆動回路、64…PFモーター駆動回路、65…CRモーター駆動回路、66…ヘッド駆動回路、67…増設カセット検出センサー、70…コンピューター、71…制御部、74…ヘッド制御部、81…調整手段の一例である主制御部、82…給送制御部、83…搬送制御部、84…キャリッジ制御部、85…CRカウンター87…表示制御部、88…取得手段及び演算手段の一例である演算部、89…第1判定部、90…エラー検出手段の一例である第2判定部、91…判定手段の一例である第3判定部、92…記憶手段の一例であるメモリー、100…ホスト装置、P…記録媒体の一例である用紙、Xsn…理論上(設計上)の側端位置、Xd1…第1側端位置、ΔX…調整量の一例である噴射開始位置調整量(ずれ量)、Xst…記録開始位置の一例である噴射開始位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を給送するための給送装置を取り外し可能に装着可能な記録装置であって、
記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記記録媒体に記録を施す記録手段と、
記録媒体の搬送方向と交差する幅方向における理論上の側端位置を取得する取得手段と、
前記給送装置から給送された記録媒体の側端位置を給送過程で検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された側端位置と前記理論上の側端位置とのずれ量を調整量として演算する演算手段と、
前記調整量を用いて前記記録手段の記録が許容される幅方向における記録範囲の限界位置を調整する調整手段と、
を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記検出手段は、電源投入後において前記給送装置が装着された後における最初の記録の1頁目において、前記給送装置から給送された記録媒体の側端位置を検出することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記記録手段は、記録ヘッドを有するとともに前記幅方向に移動可能なキャリッジであり、
前記検出手段は、前記キャリッジに設けられるとともに当該キャリッジの移動によって記録媒体の幅方向の両端位置を検出可能な媒体幅検出手段を含み、
前記給送装置からの給送過程における記録開始前に前記キャリッジを移動させて前記媒体幅検出手段により前記記録媒体の側端位置を含む両端位置を検出し、
前記調整手段は、前記調整量を用いて前記キャリッジと共に移動して記録を行う前記記録ヘッドの記録開始位置を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
記録媒体の給送エラーを検出するエラー検出手段を更に備え、
前記調整手段による調整前に前記記録媒体の給送エラーが検出された場合、前記給送エラーの解除後における次の前記給送装置からの給送過程において前記側端位置の検出を行って取得した前記調整量を用いて、前記調整手段は前記記録範囲の限界位置を調整することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記ずれ量が制限値を超えるか否かを判定する判定手段を更に備え、
前記調整手段は、前記ずれ量が制限値を超えると判定された場合は、前記調整量を前記制限値に制限することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記調整手段により前記記録範囲の限界位置が調整された後は、電源が遮断されるまで、前記調整された前記記録範囲の限界位置を用いて前記記録手段による記録を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記給送装置は前記記録媒体を中央に寄せてガイドするセンター給送方式であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項8】
記録媒体を給送するための給送装置を取り外し可能に装着可能な記録装置における記録方法であって、
前記給送装置から給送された記録媒体の搬送方向と交差する幅方向における側端位置を給送過程で検出する検出ステップと、
前記検出ステップで検出された側端位置と理論上の側端位置とのずれ量を調整量として演算する演算ステップと、
前記調整量を用いて記録手段の記録が許容される幅方向における記録範囲の限界位置を調整する調整ステップと、
を備えたことを特徴とする記録装置における記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−111093(P2012−111093A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260940(P2010−260940)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】