説明

記録装置

【課題】従来の記録方法では、記録パターンにおける信頼性を向上させることが困難である。
【解決手段】紫外光の照射を受けて硬化が促進する性質である光硬化性を有する液状体を液滴として吐出する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドから吐出された前記液状体に照射するための前記紫外光を含む光91を放出する光源87と、光源87と前記吐出ヘッドから吐出された前記液状体との間に介在し、光91における前記紫外光の強度を弱める光学フィルター83と、光源87に対する光学フィルター83の相対位置を変化させるガイドレール85と、を含む、ことを特徴とする記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紫外線硬化樹脂を含有するインクでマーキング(記録パターン)を施す(記録する)装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−274335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されたマーキング装置(記録装置)では、マーキングが施されたパッケージ(記録媒体)に紫外光を照射することによって、紫外線硬化樹脂を含有するインク(以下、UVインクと呼ぶ)を固化させることができる。これにより、インクに対する受容性(インクを吸収する性質)が低い材質に施したマーキングの状態を維持させやすくすることができる。
ところで、記録媒体に塗布されたUVインクに紫外光を照射したとき、UVインクの内側(記録媒体側)には、UVインクの表面側(記録媒体とは反対側)に比較して、紫外光が届きにくい。そして、この場合、UVインクは、内側よりも表面側の方が硬化が促進する。内側よりも表面側の方が硬化が促進すると、紫外光は、UVインクの内側に一層届きにくくなる。
このように、記録媒体に塗布されたUVインクにおいて、UVインクの内側は、UVインクの表面側に比較して、硬化率(重合率)が低くなることがある。UVインクの内側において重合率が低くなると、記録媒体とUVインクとの間の結合力が弱くなりやすい。
つまり、従来の記録装置では、記録パターンにおける信頼性を向上させることが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現され得る。
【0006】
[適用例1]紫外光の照射を受けて硬化が促進する性質である光硬化性を有する液状体を液滴として吐出する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドから吐出された前記液状体に照射するための前記紫外光を含む光を放出する光源と、前記光源と前記吐出ヘッドから吐出された前記液状体との間に介在し、前記光源が放出する前記光である放出光における前記紫外光の強度を弱める光学素子と、前記光源に対する前記光学素子の相対位置を変化させる変位装置と、を含む、ことを特徴とする記録装置。
【0007】
この適用例の記録装置は、吐出ヘッドと、光源と、光学素子と、変位装置と、を含む。
吐出ヘッドは、液状体を液滴として吐出する。液状体は、光硬化性を有する。光硬化性は、紫外光の照射を受けて硬化が促進する性質である。
光源は、光を放出する。光源が放出する光である放出光は、吐出ヘッドから吐出された液状体に照射するための紫外光を含む。
光学素子は、光源と吐出ヘッドから吐出された液状体との間に介在している。光学素子は、放出光における紫外光の強度を弱める。
変位装置は、光源に対する光学素子の相対位置を変化させる。
この記録装置では、光源と液状体との間に光学素子が介在しているので、例えば、放出光における紫外光のうち、液状体の硬化を促進させるピーク波長以下の紫外光の強度を弱めることができる。液状体の内部に光源からの光を届かせやすくすることができる。液状体の内部に届く光には紫外光が含まれるので、液状体の内部における硬化が促進する。この結果、液状体の内部の硬化率を高めやすくすることができる。
また、この記録装置では、変位装置によって、光源に対する光学素子の相対位置を変化させることができる。これにより、例えば、放出光におけるピーク波長以下の紫外光の強度を維持した状態で、光源からの光を液状体に照射することができる。この結果、液状体の硬化を促進させやすくすることができる。
この記録装置によれば、液状体の内部の硬化率を高めてから、液状体の硬化を促進させやすくすることができる。この結果、記録媒体と記録パターンとの間の結合力を高めやすくすることができるので、記録パターンにおける信頼性を向上させやすくすることができる。
【0008】
[適用例2]上記の記録装置であって、前記光学素子は、前記放出光における前記紫外光のうち、少なくとも前記液状体の硬化を促進させるピーク波長以下の前記紫外光の強度を弱める、ことを特徴とする記録装置。
【0009】
この適用例では、光学素子が、放出光における紫外光のうち、少なくとも液状体の硬化を促進させるピーク波長以下の紫外光の強度を弱める。これにより、液状体の内部の硬化率を高めてから、液状体の硬化を促進させやすくすることができる。
【0010】
[適用例3]上記の記録装置であって、前記放出光は、紫外光の波長域から可視光の波長域に及ぶ強度分布を有している、ことを特徴とする記録装置。
【0011】
この適用例では、放出光が、紫外光の波長域から可視光の波長域に及ぶ強度分布を有している。これにより、光源を熱源として利用することができる。このため、光学素子を介して光を照射することによって、液状体の硬化を遅らせる間に、液状体を加熱することができる。加熱により、液状体の膜を薄くしやすくすることができる。この結果、液状体の容積を低減することができるので、溶剤などの液体による記録パターンの膨潤の程度を軽減することができる。このため、記録パターンを構成する膜に発生する応力を軽減しやすくすることができるので、記録媒体から記録パターンを剥離させにくくすることができる。従って、記録パターンにおける信頼性を向上させやすくすることができる。
【0012】
[適用例4]上記の記録装置であって、前記光学素子は、前記紫外光の波長域にわたって、前記紫外光の強度を弱める、ことを特徴とする記録装置。
【0013】
この適用例では、光学素子が、紫外光の波長域にわたって、紫外光の強度を弱める。これにより、光学素子を介して光を照射することによって、液状体の硬化を一層遅らせやすくすることができる。
【0014】
[適用例5]上記の記録装置であって、前記光学素子は、前記紫外光の波長域から続く前記可視光の波長域の一部における前記光の強度も弱める、ことを特徴とする記録装置。
【0015】
この適用例では、光学素子が、紫外光の波長域から続く可視光の波長域の一部における光の強度も弱めるので、紫外光の強度を紫外光の波長域にわたって弱めやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態における液滴吐出装置の概略の構成を示す斜視図。
【図2】本実施形態におけるキャリッジを図1中のA視方向に見たときの正面図。
【図3】本実施形態におけるヘッドユニットの底面図。
【図4】図2中のB−B線における断面図。
【図5】図1中のC−C線における断面図。
【図6】本実施形態における光学フィルターの解除位置を説明する図。
【図7】本実施形態における光源からの放出光の強度分布を説明する図。
【図8】本実施形態における液滴吐出装置の概略の構成を示すブロック図。
【図9】本実施形態における記録方法の流れを示す図。
【図10】本実施形態における描画処理の流れを示す図。
【図11】本実施形態における液滴吐出装置の側面図。
【図12】本実施形態における露光処理の流れを示す図。
【図13】本実施形態における液滴吐出装置の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照しながら、記録装置の1つである液滴吐出装置を例に、実施形態について説明する。なお、各図面において、それぞれの構成を認識可能な程度の大きさにするために、構成や部材の縮尺が異なっていることがある。
【0018】
実施形態における液滴吐出装置1は、概略の構成を示す斜視図である図1に示すように、ワーク搬送装置3と、キャリッジ7と、キャリッジ搬送装置9と、メンテナンス装置11と、照射装置15と、を有している。
キャリッジ7には、ヘッドユニット13が設けられている。
液滴吐出装置1では、ヘッドユニット13と基板などのワークWとの平面視での相対位置を変化させつつ、ヘッドユニット13から液状体を液滴として吐出させることによって、ワークWに液状体で所望のパターンを描画することができる。なお、図中のY方向はワークWの移動方向を示し、X方向は平面視でY方向とは直交する方向を示している。また、X方向及びY方向によって規定されるXY平面と直交する方向は、Z方向として規定される。
【0019】
このような液滴吐出装置1は、例えば、液晶表示パネル等に用いられるカラーフィルターの製造や、有機EL(Electro Luminescence)装置の製造などに適用され得る。
赤、緑及び青の3色のフィルターエレメントを有するカラーフィルターの場合、液滴吐出装置1は、例えば、基板に赤、緑及び青の各着色層を形成する工程で好適に使用され得る。この場合、ヘッドユニット13から各着色層に対応する各液状体を、ワークWに液滴として吐出させることによって、ワークWに赤、緑及び青のそれぞれのフィルターエレメントのパターンが描画される。
また、有機EL装置の製造では、例えば、赤、緑及び青の画素ごとに、各色に対応する機能層(有機層)を形成する工程で好適に使用され得る。この場合、ヘッドユニット13から各色の機能層に対応する各液状体を、ワークWに液滴として吐出させることによって、ワークWに赤、緑及び青のそれぞれの機能層のパターンが描画される。
【0020】
ここで、液滴吐出装置1の各構成について、詳細を説明する。
ワーク搬送装置3は、図1に示すように、定盤21と、ガイドレール23aと、ガイドレール23bと、ワークテーブル25と、テーブル位置検出装置27と、を有している。
定盤21は、例えば石などの熱膨張係数が小さい材料で構成されており、Y方向に沿って延びるように据えられている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、定盤21の上面21a上に配設されている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、それぞれ、Y方向に沿って延在している。ガイドレール23aとガイドレール23bとは、互いにX方向に隙間をあけた状態で並んでいる。
【0021】
ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bを挟んで定盤21の上面21aに対向した状態で設けられている。ワークテーブル25は、定盤21から浮いた状態でガイドレール23a及びガイドレール23b上に載置されている。ワークテーブル25は、ワークWが載置される面である載置面25aを有している。載置面25aは、定盤21側とは反対側(上側)に向けられている。ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bによってY方向に沿って案内され、定盤21上をY方向に沿って往復移動可能に構成されている。
テーブル位置検出装置27は、定盤21の上面21aに設けられており、Y方向に延在している。テーブル位置検出装置27は、ガイドレール23aとガイドレール23bとの間に設けられている。テーブル位置検出装置27は、ワークテーブル25のY方向における位置を検出する。
【0022】
ワークテーブル25は、図示しない移動機構及び動力源によって、Y方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、ワークテーブル25をY方向に沿って移動させるための動力源として、後述するワーク搬送モーターが採用されている。ワーク搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
ワーク搬送モーターからの動力は、移動機構を介してワークテーブル25に伝達される。これにより、ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bに沿って、すなわちY方向に沿って往復移動することができる。つまり、ワーク搬送装置3は、ワークテーブル25の載置面25aに載置されたワークWを、Y方向に沿って往復移動させることができる。
【0023】
ヘッドユニット13は、キャリッジ7を図1中のA視方向に見たときの正面図である図2に示すように、ヘッドプレート31と、2個の吐出ヘッド33と、を有している。2個の吐出ヘッド33は、X方向に並んでいる。なお、吐出ヘッド33の個数は、2個に限定されず、1個以上の任意の個数が採用され得る。また、以下においては、2つの吐出ヘッド33のそれぞれを識別する場合に、吐出ヘッド33a及び吐出ヘッド33bという表記が用いられる。
吐出ヘッド33は、底面図である図3に示すように、ノズル面35を有している。ノズル面35には、複数のノズル37が形成されている。なお、図3では、ノズル37をわかりやすく示すため、ノズル37が誇張され、且つノズル37の個数が減じられている。
【0024】
各吐出ヘッド33において、複数のノズル37は、Y方向に沿って配列する2本のノズル列39を構成している。2本のノズル列39は、X方向に互いに隙間をあけた状態で並んでいる。各ノズル列39において、複数のノズル37は、Y方向に沿って所定のノズル間隔Pで形成されている。各吐出ヘッド33において、2本のノズル列39は、互いにY方向にP/2の距離だけずれている。
ヘッドユニット13では、2個の吐出ヘッド33のうちの一方におけるノズル列39と、他方の吐出ヘッド33におけるノズル列39とが、互いにY方向にP/4の距離だけずれている。これにより、本実施形態では、Y方向におけるノズル37の密度が高められている。
【0025】
吐出ヘッド33は、図2中のB−B線における断面図である図4に示すように、ノズルプレート46と、キャビティープレート47と、振動板48と、複数の圧電素子49と、を有している。
ノズルプレート46は、ノズル面35を有している。複数のノズル37は、ノズルプレート46に設けられている。
キャビティープレート47は、ノズルプレート46のノズル面35とは反対側の面に設けられている。キャビティープレート47には、複数のキャビティー51が形成されている。各キャビティー51は、各ノズル37に対応して設けられており、対応する各ノズル37に連通している。各キャビティー51には、図示しないタンクから機能液53(液状体)が供給される。
【0026】
振動板48は、キャビティープレート47のノズルプレート46側とは反対側の面に設けられている。振動板48は、Z方向に振動(縦振動)することによって、キャビティー51内の容積を拡大したり、縮小したりする。
複数の圧電素子49は、それぞれ、振動板48のキャビティープレート47側とは反対側の面に設けられている。各圧電素子49は、各キャビティー51に対応して設けられており、振動板48を挟んで各キャビティー51に対向している。各圧電素子49は、駆動信号に基づいて、伸張する。これにより、振動板48がキャビティー51内の容積を縮小する。このとき、キャビティー51内の機能液53に圧力が付与される。その結果、ノズル37から、機能液53が液滴55として吐出される。吐出ヘッド33による液滴55の吐出法は、インクジェット法の1つである。インクジェット法は、塗布法の1つである。
【0027】
上記の構成を有する吐出ヘッド33は、図2に示すように、ノズル面35がヘッドプレート31から突出した状態で、ヘッドプレート31に支持されている。
キャリッジ7は、図2に示すように、ヘッドユニット13を支持している。ここで、ヘッドユニット13は、ノズル面35がZ方向の下方に向けられた状態でキャリッジ7に支持されている。
上記により、ワークWには、吐出ヘッド33から機能液53が塗布され得る。
なお、本実施形態では、縦振動型の圧電素子49が採用されているが、機能液53に圧力を付与するための加圧手段は、これに限定されず、例えば、下電極と圧電体層と上電極とを積層形成した撓み変形型の圧電素子も採用され得る。また、加圧手段としては、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなども採用され得る。さらに、発熱体を用いてノズル内に泡を発生させ、その泡によって機能液に圧力を付与する構成も採用され得る。
【0028】
本実施形態では、機能液53として、光の照射を受けることによって硬化が促進する液状体が採用されている。本実施形態では、機能液53の硬化を促進させる光として紫外光が採用されている。
機能液53は、樹脂材料、光重合開始剤及び溶媒を、成分として含んでいる。これらの成分に、顔料や染料等の色素や、親液性や撥液性等の表面改質材料などの機能性材料を添加することによって固有の機能を有する機能液53を生成することができる。顔料や染料等の色素を含有する機能液53は、例えば、ワークWに描画する画像を形成するための機能液53として採用され得る。以下において、ワークWに描画する画像を形成するための機能液53は、画像塗料と呼ばれる。
【0029】
また、機能液53の成分としての樹脂材料に、例えば、アクリル系の樹脂材料などの光透過性を有する樹脂材料を採用することによって、光透過性を有する機能液53を構成することができる。このような光透過性を有する機能液53は、例えば、クリアインクとしての用途が考えられる。以下において、光透過性を有する機能液53は、透光塗料と呼ばれる。
クリアインクの用途としては、例えば、画像を被覆するオーバーコート層としての用途や、画像を形成する前の下地層としての用途などが考えられる。以下において、下地層として適用される機能液53は、下地塗料と呼ばれる。
下地塗料としては、透光塗料だけでなく、透光塗料に種々の顔料を添加した機能液53を採用することもできる。
機能液53における樹脂材料は、樹脂膜を形成する材料である。このような樹脂材料としては、常温で液状であり、重合させることによってポリマーとなる材料であれば特に限定されない。樹脂材料としては、粘性が小さいものが好ましく、オリゴマーの形態であるのが好ましい。さらに、樹脂材料としては、モノマーの形態であることが一層好ましい。
光重合開始剤は、ポリマーの架橋性基に作用して架橋反応を進行させる添加剤である。光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが採用され得る。
溶媒は、樹脂材料の粘度を調整するためのものである。
【0030】
キャリッジ搬送装置9は、図1に示すように、架台61と、ガイドレール63と、キャリッジ位置検出装置65と、を有している。
架台61は、X方向に延在しており、ワーク搬送装置3及びメンテナンス装置11をX方向にまたいでいる。架台61は、ワークテーブル25の定盤21側とは反対側で、ワーク搬送装置3及びメンテナンス装置11のそれぞれに対向している。架台61は、一対の支柱67によって支持されている。一対の支柱67は、定盤21を挟んでX方向に互いに対峙する位置に設けられている。
なお、以下においては、一対の支柱67のそれぞれを識別する場合に、支柱67a及び支柱67bという表記が用いられる。支柱67a及び支柱67bは、それぞれ、ワークテーブル25よりもZ方向の上方に突出している。これにより、架台61とワークテーブル25との間、及び架台61とメンテナンス装置11との間には、それぞれ隙間が保たれている。
【0031】
ガイドレール63は、架台61の定盤21側に設けられている。ガイドレール63は、X方向に沿って延在しており、架台61のX方向における幅にわたって設けられている。
前述したキャリッジ7は、ガイドレール63に支持されている。キャリッジ7がガイドレール63に支持された状態において、吐出ヘッド33のノズル面35は、Z方向においてワークテーブル25側に向いている。キャリッジ7は、ガイドレール63によってX方向に沿って案内され、X方向に往復動可能な状態でガイドレール63に支持されている。なお、平面視で、キャリッジ7がワークテーブル25に重なっている状態において、ノズル面35とワークテーブル25の載置面25aとは、互いに隙間を保った状態で対向する。
キャリッジ位置検出装置65は、架台61とキャリッジ7との間に設けられており、X方向に延在している。キャリッジ位置検出装置65は、キャリッジ7のX方向における位置を検出する。
【0032】
キャリッジ7は、図示しない移動機構及び動力源によって、X方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、キャリッジ7をX方向に沿って移動させるための動力源として、後述するキャリッジ搬送モーターが採用されている。キャリッジ搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
キャリッジ搬送モーターからの動力は、移動機構を介してキャリッジ7に伝達される。これにより、キャリッジ7は、ガイドレール63に沿って、すなわちX方向に沿って往復移動することができる。つまり、キャリッジ搬送装置9は、キャリッジ7に支持されたヘッドユニット13を、X方向に沿って往復移動させることができる。
【0033】
メンテナンス装置11は、図1に示すように、定盤71と、ガイドレール73aと、ガイドレール73bと、保守テーブル75と、キャッピングユニット76と、フラッシングユニット77と、ワイピングユニット79と、を有している。
定盤71は、例えば石などの熱膨張係数が小さい材料で構成されており、X方向に支柱67aを挟んで定盤21と対峙する位置に設けられている。
ガイドレール73a及びガイドレール73bは、定盤71の上面71a上に配設されている。ガイドレール73a及びガイドレール73bは、それぞれ、Y方向に沿って延在している。ガイドレール73aとガイドレール73bとは、互いにX方向に隙間をあけた状態で並んでいる。
保守テーブル75は、ガイドレール73a及びガイドレール73bを挟んで定盤71の上面71aに対向した状態で設けられている。保守テーブル75は、定盤71から浮いた状態でガイドレール73a及びガイドレール73b上に載置されている。
【0034】
保守テーブル75には、キャッピングユニット76や、フラッシングユニット77、ワイピングユニット79などの保守ユニットが載置される。本実施形態では、保守ユニットは、キャッピングユニット76と、フラッシングユニット77と、ワイピングユニット79と、を含んでいる。
保守テーブル75は、ガイドレール73a及びガイドレール73bによってY方向に沿って案内され、定盤71上をY方向に沿って往復移動可能に構成されている。
フラッシングユニット77は、保守テーブル75の定盤71側とは反対側に設けられている。
ここで、ワークWへのパターンの描画とは無関係に、吐出ヘッド33から液状体を吐出させる動作は、フラッシング動作と呼ばれる。フラッシング動作には、例えば、ノズル37内に滞留する液状体がノズル37内で固化してしまうことを予防する効果がある。フラッシングユニット77は、フラッシング動作のときに、吐出ヘッド33から吐出される液状体を受ける装置である。
【0035】
キャッピングユニット76は、吐出ヘッド33に蓋をする装置である。吐出ヘッド33から吐出される液状体では、液体成分が蒸発することがある。一般的に、液状体における液体成分が蒸発すると、液状体の粘度が高くなる。吐出ヘッド33内の液状体の粘度が高くなると、ノズル37における液滴55を吐出する性能(以下、吐出性能と呼ぶ)が低下することがある。吐出性能の低下としては、例えば、ノズル37から吐出された液滴55の進行方向が曲がってしまったり(飛行曲がり)、ノズル37から液滴55が吐出されなかったり(不吐出)することなどが挙げられる。なお、キャッピングユニット76で吐出ヘッド33に蓋をする動作は、キャッピング動作と呼ばれる。
【0036】
キャッピングユニット76は、吐出ヘッド33に蓋をすることで、液状体における液体成分がノズルから蒸発することを低く抑える。これにより、吐出ヘッド33における吐出性能を維持しやすくすることができる。
ワイピングユニット79は、吐出ヘッド33のノズル面35を拭く装置である。液滴吐出装置1では、ノズル面35に液状体が付着することがある。ノズル面35に液状体が付着すると、吐出ヘッド33における吐出性能が低下することがある。ワイピングユニット79は、ノズル面35を拭くことによって、ノズル面35に付着している液状体を払拭する。これにより、吐出ヘッド33における吐出性能を維持しやすくすることができる。なお、ワイピングユニット79でノズル面35を拭く動作は、ワイピング動作と呼ばれる。
【0037】
保守テーブル75は、図示しない移動機構及び動力源によって、Y方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、保守テーブル75をY方向に沿って移動させるための動力源として、後述するテーブル搬送モーターが採用されている。テーブル搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
テーブル搬送モーターからの動力は、移動機構を介して保守テーブル75に伝達される。これにより、保守テーブル75は、ガイドレール73a及びガイドレール73bに沿って、すなわちY方向に沿って往復移動することができる。
つまり、メンテナンス装置11は、キャッピングユニット76や、フラッシングユニット77、ワイピングユニット79などの保守ユニットを、Y方向に沿って往復移動させることができる。これにより、平面視で吐出ヘッド33がメンテナンス装置11に重なっている状態において、吐出ヘッド33をキャッピングユニット76、フラッシングユニット77及びワイピングユニット79のそれぞれに対向させることができる。
【0038】
照射装置15は、図1に示すように、光源部81と、光学フィルター83と、一対のガイドレール85と、を有している。
光源部81は、一対の支柱67の架台61側とは反対側において、一対の支柱67に支持されている。従って、光源部81と架台61とは、Y方向に一対の支柱67を挟んで互いに対峙している。
光学フィルター83は、光源部81と定盤21との間に設けられている。本実施形態では、光学フィルター83は、光源部81に設けられている。
一対のガイドレール85は、光源部81に設けられている。一対のガイドレール85は、X方向に光源部81を挟んで互いに対峙している。一対のガイドレール85は、光学フィルター83を、Y方向に沿って進退可能に案内する。なお、以下においては、一対のガイドレール85のそれぞれを識別する場合に、ガイドレール85a及びガイドレール85bという表記が用いられる。
【0039】
光源部81は、図1中のC−C線における断面図である図5に示すように、光源87と、筐体89と、を有している。
光源87は、光91を放出する。光91には、機能液53の硬化を促進させる紫外光が含まれている。光源87は、ワークテーブル25(図1)のX方向における幅にわたる長さを有している。光源87は、筐体89内に収容されている。光源87としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等の種々の光源87が採用され得る。本実施形態では、光源87として、メタルハライドランプが採用されている。
筐体89は、一対の支柱67に支持されている。筐体89は、光91に対する遮光性が高い材料で構成されている。筐体89において、光源87とワークテーブル25との間が開口されている。このため、光源87から放出された光91の少なくとも一部は、ワークテーブル25に届き得る。なお、光91に対する遮光性が高い材料としては、例えば、金属や、プラスチックなどが挙げられる。
【0040】
光学フィルター83は、光91に含まれる紫外光の少なくとも一部を弱める機能を有している。光学フィルター83に入射した光91は、光91に含まれる紫外光の少なくとも一部が弱められてから、光93として光学フィルター83から射出する。
一対のガイドレール85は、光学フィルター83をY方向に沿って進退可能に案内する。光学フィルター83は、平面視で光源87に重なる位置であるフィルタリング位置(図5)と、平面視で光源87からY方向に離間した位置である解除位置との間を進退可能に構成されている。光学フィルター83は、一対のガイドレール85によって案内されることによって、フィルタリング位置から、図6に示すように、解除位置に待避し得る。
光学フィルター83が解除位置に待避している状態では、光源87から放出された光91は、光91のままでワークテーブル25に届き得る。
【0041】
ここで、光91は、図7に示すように、紫外光の波長域から可視光の波長域を経て赤外光の波長域に及ぶ強度分布を有している。
また、本実施形態では、機能液53の硬化を促進させる紫外光のピーク波長が、365〜395nmの範囲内に存在する。これは、光重合開始剤が、365〜395nmの波長の紫外光に最も強く反応することに由来する。つまり、ピーク波長は、紫外光の波長域において、機能液53の硬化を最も促進させる紫外光の波長である。なお、ピーク波長の紫外光は、反応ピークとも呼ばれる。
【0042】
液滴吐出装置1は、図8に示すように、上記の各構成の動作を制御する制御部111を有している。制御部111は、CPU(Central Processing Unit)113と、駆動制御部115と、メモリー部117と、を有している。駆動制御部115及びメモリー部117は、バス119を介してCPU113に接続されている。
また、液滴吐出装置1は、キャリッジ搬送モーター121と、ワーク搬送モーター123と、テーブル搬送モーター125と、フィルター搬送モーター127と、入力装置129と、表示装置131と、を有している。
キャリッジ搬送モーター121及びワーク搬送モーター123は、それぞれ、入出力インターフェース133とバス119とを介して制御部111に接続されている。テーブル搬送モーター125及びフィルター搬送モーター127も、それぞれ、入出力インターフェース133とバス119とを介して制御部111に接続されている。また、入力装置129及び表示装置131も、それぞれ、入出力インターフェース133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
【0043】
キャリッジ搬送モーター121は、キャリッジ7を駆動するための動力を発生させる。ワーク搬送モーター123は、ワークテーブル25を駆動するための動力を発生させる。テーブル搬送モーター125は、保守テーブル75を駆動するための動力を発生させる。フィルター搬送モーター127は、光学フィルター83を進退させるための動力を発生させる。入力装置129は、各種の加工条件を入力する装置である。表示装置131は、加工条件や、作業状況を表示する装置である。液滴吐出装置1を操作するオペレーターは、表示装置131に表示される情報を確認しながら、入力装置129を介して種々の情報を入力することができる。
なお、キャリッジ位置検出装置65、テーブル位置検出装置27及び2個の吐出ヘッド33も、それぞれ、入出力インターフェース133とバス119とを介して制御部111に接続されている。また、光源87、及びメンテナンス装置11も、それぞれ、入出力インターフェース133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
【0044】
CPU113は、プロセッサーとして各種の演算処理を行う。駆動制御部115は、各構成の駆動を制御する。メモリー部117は、RAM(Random Access Memory)や、ROM(Read-Only Memory)などを含んでいる。メモリー部117には、液滴吐出装置1における動作の制御手順が記述されたプログラムソフト135を記憶する領域や、各種のデータを一時的に展開する領域であるデータ展開部137などが設定されている。データ展開部137に展開されるデータとしては、例えば、描画すべきパターンが示される描画データや、描画処理等のプログラムデータなどが挙げられる。
駆動制御部115は、モーター制御部141と、位置検出制御部143と、吐出制御部145と、光源制御部147と、保守制御部149と、表示制御部151と、を有している。
【0045】
モーター制御部141は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ搬送モーター121の駆動と、ワーク搬送モーター123の駆動と、テーブル搬送モーター125の駆動と、フィルター搬送モーター127の駆動とを、個別に制御する。
位置検出制御部143は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ位置検出装置65と、テーブル位置検出装置27とを、個別に制御する。
位置検出制御部143は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ位置検出装置65にキャリッジ7のX方向における位置を検出させ、且つ検出結果をCPU113に出力する。
また、位置検出制御部143は、CPU113からの指令に基づいて、テーブル位置検出装置27にワークテーブル25のY方向における位置を検出させ、且つ検出結果をCPU113に出力する。
【0046】
吐出制御部145は、CPU113からの指令に基づいて、2個の吐出ヘッド33の駆動を個別に制御する。
光源制御部147は、CPU113からの指令に基づいて、光源87の発光状態を制御する。
保守制御部149は、CPU113からの指令に基づいて、メンテナンス装置11におけるキャッピングユニット76や、フラッシングユニット77、ワイピングユニット79などの保守ユニットの駆動を個別に制御する。
表示制御部151は、CPU113からの指令に基づいて、表示装置131の駆動を制御する。
【0047】
ここで、本実施形態における記録方法について説明する。本実施形態における記録方法は、図9に示すように、描画工程S1と、露光工程S2と、を有している。
描画工程S1では、ワークテーブル25に載置されたワークWに、吐出ヘッド33から液滴55を吐出させることによって、ワークWに機能液53でパターンを描画する。
露光工程S2では、ワークWに描画されたパターンを構成する機能液53に光93や光91を照射する。
描画工程S1は、CPU113が、後述する描画処理を実施することによって達成され得る。また、露光工程S2は、CPU113が、後述する露光処理を実施することによって達成され得る。
【0048】
ここで、液滴吐出装置1における描画処理について説明する。
液滴吐出装置1では、制御部111が入力装置129から入出力インターフェース133及びバス119を介して描画データを受け取ると、CPU113によって図10に示す描画処理が開始される。
ここで、描画データは、機能液53(液状体)でワークWに描画すべきパターンを指示するものであり、描画すべきパターンがビットマップ状に表現されている。ワークWへのパターンの描画は、吐出ヘッド33をワークWに対向させた状態で、吐出ヘッド33とワークWとを相対的に往復移動させながら、吐出ヘッド33から液滴55を所定周期で吐出させることによって行われる。
【0049】
描画処理では、CPU113は、まず、ステップS21において、キャリッジ搬送指令をモーター制御部141(図8)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ7を描画エリアの往路開始位置に移動させる。ここで、描画エリアは、図1に示すワークテーブル25によってY方向に沿って描かれる軌跡と、2個の吐出ヘッド33によってX方向に沿って描かれる軌跡とが重なり合う領域である。往路開始位置は、キャリッジ7を往復移動させるときの往路が開始する位置である。本実施形態では、往路開始位置は、X方向において、メンテナンス装置11とワークテーブル25との間に位置している。往路開始位置は、平面視で、ワークテーブル25の外側に位置している。
【0050】
次いで、ステップS22において、CPU113は、ワーク搬送指令をモーター制御部141(図8)に出力する。このとき、モーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWを描画エリアに移動させる。
なお、ワークWは、ワークテーブル25が初期位置に待機している状態でワークテーブル25に載置される。初期位置は、図11に示すように、支柱67の照射装置15側とは反対側の位置である。さらに、本実施形態では、初期位置は、吐出ヘッド33の支柱67側とは反対側に設定されている。これにより、ワークWの載せ替えの際に、ワークWと吐出ヘッド33等との衝突などを避けやすくすることができる。
ステップS22では、ワークWを初期位置から描画エリアに移動させる。
【0051】
次いで、ステップS23において、CPU113は、キャリッジ走査指令をモーター制御部141(図8)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ7の往復移動を開始させる。
ここで、キャリッジ7の往復移動では、キャリッジ7は、上述した往路開始位置と復路開始位置との間を往復移動する。つまり、往路開始位置から復路開始位置で折り返して往路開始位置に戻る経路がキャリッジ7の1往復である。このため、本実施形態では、往路開始位置から復路開始位置に向かう経路がキャリッジ7の往路である。他方で、復路開始位置から往路開始位置に向かう経路がキャリッジ7の復路である。
なお、復路開始位置は、X方向にワークテーブル25(図1)を挟んで往路開始位置に対峙する位置である。復路開始位置は、平面視で、ワークテーブル25の外側に位置している。このため、往路開始位置と復路開始位置とは、平面視で、ワークテーブル25をX方向に挟んで互いに対峙している。
【0052】
次いで、ステップS24において、CPU113は、吐出指令を吐出制御部145(図5)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を制御して、描画データに基づいて、各ノズル37から液滴55を吐出させる。これにより、往路での描画が行われる。
次いで、ステップS25において、CPU113は、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達したか否かを判定する。このとき、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS26に移行する。他方で、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達していない(No)と判定されると、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達するまで処理が待機される。
【0053】
次いで、ステップS26において、CPU113は、改行指令をモーター制御部141(図8)に出力する。このとき、モーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWをY方向に移動(改行)させ、ワークWにおいてパターンを描画すべき新たな領域を描画エリアに移動させる。
次いで、ステップS27において、CPU113は、吐出指令を吐出制御部145(図8)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を制御して、描画データに基づいて、各ノズル37から液滴55を吐出させる。これにより、復路での描画が行われる。
次いで、ステップS28において、CPU113は、キャリッジ7の位置が往路開始位置に到達したか否かを判定する。このとき、キャリッジ7の位置が往路開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS29に移行する。他方で、キャリッジ7の位置が往路開始位置に到達していない(No)と判定されると、キャリッジ7の位置が往路開始位置に到達するまで処理が待機される。
【0054】
次いで、ステップS29において、CPU113は、描画データが終了したか否かを判定する。このとき、描画データが終了した(Yes)と判定されると、処理が終了する。他方で、描画データが終了していない(No)と判定されると、処理がステップS30に移行する。
ステップS30において、CPU113は、改行指令をモーター制御部141(図8)に出力してから、処理をステップS24に移行させる。このとき、モーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWをY方向に移動(改行)させ、ワークWにおいてパターンを描画すべき新たな領域を描画エリアに移動させる。
【0055】
液滴吐出装置1における露光処理について説明する。
液滴吐出装置1では、制御部111が入力装置129から入出力インターフェース133及びバス119を介して露光指令を受け取ると、CPU113によって図12に示す露光処理が開始される。
露光処理では、CPU113は、まず、ステップS51において、フィルター搬送指令をモーター制御部141(図8)に出力する。このとき、モーター制御部141は、フィルター搬送モーター127の駆動を制御して、光学フィルター83をフィルタリング位置(図5)に移動させる。
次いで、ステップS52において、CPU113は、照射指令を光源制御部147(図8)に出力する。このとき、光源制御部147は、光源87の駆動を制御して、光源87を点灯させる。
【0056】
次いで、ステップS53において、CPU113は、ワーク搬送指令をモーター制御部141(図8)に出力する。このとき、モーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWを初期位置から露光エリアを経て折り返し位置に向けて移動させる。これにより、ワークWに描画されたパターン(以下、描画パターンと呼ぶ)に、光93が照射される。
ここで、露光エリアは、平面視で光源部81(図11)に重なる領域である。また、折り返し位置は、図13に示すように、支柱67の吐出ヘッド33側とは反対側の位置である。本実施形態では、折り返し位置は、光源部81の支柱67側とは反対側に設定されている。
ステップS53に次いで、ステップS54では、CPU113は、ワークテーブル25の位置が折り返し位置に到達したか否かを判定する。このとき、ワークテーブル25の位置が折り返し位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS55に移行する。他方で、ワークテーブル25の位置が折り返し位置に到達していない(No)と判定されると、ワークテーブル25の位置が折り返し位置に到達するまで処理が待機される。
【0057】
次いで、ステップS55において、CPU113は、ワーク停止指令をモーター制御部141(図8)に出力する。このとき、モーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を停止する。
次いで、ステップS56において、CPU113は、照射停止指令を光源制御部147(図8)に出力する。このとき、光源制御部147は、光源87の駆動を制御して、光源87を消灯させる。
次いで、ステップS57において、CPU113は、フィルター解除指令をモーター制御部141(図8)に出力する。このとき、モーター制御部141は、フィルター搬送モーター127の駆動を制御して、光学フィルター83を解除位置(図6)に移動させる。
次いで、ステップS58において、CPU113は、照射指令を光源制御部147(図8)に出力する。このとき、光源制御部147は、光源87の駆動を制御して、光源87を点灯させる。
【0058】
次いで、ステップS59において、CPU113は、ワーク搬送指令をモーター制御部141(図8)に出力する。このとき、モーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWを折り返し位置から露光エリアを経て初期位置に向けて移動させる。
次いで、ステップS60において、CPU113は、ワークテーブル25の位置が初期位置に到達したか否かを判定する。このとき、ワークテーブル25の位置が初期位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS61に移行する。他方で、ワークテーブル25の位置が初期位置に到達していない(No)と判定されると、ワークテーブル25の位置が初期位置に到達するまで処理が待機される。
ステップS61において、CPU113は、照射停止指令を光源制御部147(図8)に出力してから、処理を終了させる。このとき、光源制御部147は、光源87の駆動を制御して、光源87を消灯させる。
【0059】
第1実施形態について説明する。
第1実施形態では、光学フィルター83として、機能液53の硬化を促進させるピーク波長以下の紫外光の強度を弱める光学フィルター83が採用されている。前述したように、本実施形態では、機能液53の硬化を促進させる紫外光のピーク波長が、365〜395nmの範囲内に存在している。このため、第1実施形態における光学フィルター83は、波長が395nm以下の紫外光の強度を弱める。
第1実施形態では、露光処理において、まず、機能液53の硬化を促進させるピーク波長以下の紫外光の強度が弱められた光93が機能液53に照射される。これにより、ワークWに付着している機能液53の内側に光93が届きやすくなる。光93には、ピーク波長以下の紫外光が残存しているので、機能液53の内部における硬化を促進させやすくすることができる。この結果、機能液53の内部の重合率を表面側に比較して高めやすくすることができる。
【0060】
そして、光93の照射に次いで、機能液53に光91が照射される。これにより、機能液53の硬化を一層促進させることができる。
第1実施形態では、機能液53の内部の硬化率を高めてから、機能液53の硬化を促進させやすくすることができる。この結果、ワークWと描画パターンとの間の結合力を高めやすくすることができるので、描画パターンにおける信頼性を向上させやすくすることができる。
【0061】
第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、光学フィルター83として、紫外光の波長域にわたって紫外光の強度を弱める光学フィルター83が採用されている。
ここで、本実施形態では、前述したように、光91が、紫外光の波長域から可視光の波長域に及ぶ強度分布を有している。これにより、光源87を熱源として利用することができる。
ところで、本実施形態における記録方法は、電子部品などのパッケージに施すマーキングに適用され得る。つまり、本実施形態における記録方法を用いて、電子部品などのパッケージにマーキングを施すことができる。
このような電子部品では、回路基板などに実装された状態で、洗浄される場合がある。このような洗浄では、一般的に、洗浄剤として溶剤などが使用される。マーキングが施されたパッケージに洗浄を施すと、溶剤によってマーキングが膨潤することがある。マーキングが膨潤すると、マーキングを構成する膜に応力が発生するため、パッケージから剥離しやすくなる。
【0062】
第2実施形態では、紫外光の波長域にわたって紫外光の強度を弱める光学フィルター83が採用されているので、光学フィルター83を介して機能液53に光93を照射することによって、機能液53の硬化を遅らせつつ、機能液53を加熱することができる。
加熱により、機能液53の膜を薄くしやすくすることができる。この結果、機能液53の容積を低減することができるので、溶剤などの液体による描画パターンの膨潤の程度を軽減することができる。このため、描画パターンを構成する膜に発生する応力を軽減しやすくすることができるので、ワークWから描画パターンを剥離させにくくすることができる。従って、描画パターンにおける信頼性を向上させやすくすることができる。
なお、第2実施形態では、紫外光の波長域から続く可視光の波長域の一部における光の強度も弱める光学フィルター83を採用することが、紫外光の波長域にわたる紫外光を確実に弱めやすくすることができる点で好ましい。
【0063】
上述した実施形態において、ワークWが記録媒体に対応し、描画パターンが記録パターンに対応し、機能液53が液状体に対応している。また、光91が放出光に対応し、光学フィルター83が光学素子に対応し、フィルター搬送モーター127及びガイドレール85が変位装置に対応している。また、露光工程が光照射工程に対応している。また、露光処理において、光学フィルター83を介してワークWに光93を照射する工程が第1照射工程に対応し、光学フィルター83を解除した状態でワークWに光91を照射する工程が第2照射工程に対応している。
なお、本実施形態では、描画工程S1において、機能液53を塗布する方法として、塗布法の1つであるインクジェット法が採用されている。しかしながら、塗布法は、インクジェット法に限定されず、ディスペンス法や、印刷法なども採用され得る。しかしながら、インクジェット法を採用することは、ワークWの任意の箇所に任意の量の機能液53を塗布しやすい点で好ましい。
【符号の説明】
【0064】
1…液滴吐出装置、3…ワーク搬送装置、7…キャリッジ、9…キャリッジ搬送装置、11…メンテナンス装置、13…ヘッドユニット、15…照射装置、25…ワークテーブル、33…吐出ヘッド、33a,33b…吐出ヘッド、53…機能液、55…液滴、81…光源部、83…光学フィルター、85,85a,85b…ガイドレール、87…光源、89…筐体、91…光、93…光、127…フィルター搬送モーター、W…ワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光の照射を受けて硬化が促進する性質である光硬化性を有する液状体を液滴として吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドから吐出された前記液状体に照射するための前記紫外光を含む光を放出する光源と、
前記光源と前記吐出ヘッドから吐出された前記液状体との間に介在し、前記光源が放出する前記光である放出光における前記紫外光の強度を弱める光学素子と、
前記光源に対する前記光学素子の相対位置を変化させる変位装置と、を含む、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記光学素子は、前記放出光における前記紫外光のうち、少なくとも前記液状体の硬化を促進させるピーク波長以下の前記紫外光の強度を弱める、
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記放出光は、紫外光の波長域から可視光の波長域に及ぶ強度分布を有している、
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記光学素子は、前記紫外光の波長域にわたって、前記紫外光の強度を弱める、
ことを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記光学素子は、前記紫外光の波長域から続く前記可視光の波長域の一部における前記光の強度も弱める、
ことを特徴とする請求項4に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−152524(P2011−152524A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16403(P2010−16403)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】