説明

記録装置

【課題】光記録のための光源部にMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)を備える記録装置において、複数ch記録化に伴う装置の大型化の抑制を図る。
【解決手段】MOPAにおけるモードロックレーザ部分(MLLD部分)と光変調部とを分離したMOPA分離構成として、光学ピックアップ外部にMLLD部分を配し、各光学ピックアップには少なくとも光変調部以降の構成を搭載する。MLLD部分が非搭載とされることで各光学ピックアップのサイズの大幅な小型化が図られる。また、MLLD部分については各チャンネルに共通の1つのみを設ければ足ものとできる。記録のためのレーザ光をMOPAにより得る記録装置であって複数チャンネル同時記録が可能とされた記録装置について、光学ピックアップのサイズの小型化及びMLLD数の削減により、記録装置の大幅な小型化が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モードロックレーザと光変調部(光アンプ)とを組み合わせたMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)を記録用光源として用いる記録装置に関する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0002】
【非特許文献1】Seiji Kobayashi, Kimihiro Saito, Takashi Iwamura, Hisayuki Yamatsu, Toshihiro Horigome,Mitsuaki Oyamada, Kunihiko Hayashi, Daisuke Ueda, Norihiro Tanabe and Hirotaka Miyamoto, ISOM2009 Digest Th-l-01, 2009
【非特許文献2】Spectra-Physics社、[online]、[平成22年8月6日検索]、インターネット<URL:http://www.spectra-physics.jp/member/admin/document_upload/Tsunami_Series_Data_Sheet.pdf>
【非特許文献3】M. Kuramoto, T. Oki, T. Sugahara, S. Kono, M. Ikeda, and H. Yokoyama,Appl. Phys. Lett. 96, 051102 _2010_.
【非特許文献4】Rintaro Koda, Tomoyuki Oki, Takao Miyajima, Hideki Watanabe,Masaru Kuramoto, Masao Ikeda, and Hiroyuki Yokoyama,APPLIED PHYSICS LETTERS 97, 021101 _2010_
【背景技術】
【0003】
高いピークパワーのレーザ光、特に超短パルス光は、非線形多光子吸収の過程を実現するために大変有効である。
この吸収過程を用いた、三次元光記録や超微細加工、または非破壊のバイオイメージング等への応用が期待されている。
【0004】
例えば、非線形効果を有する例えば樹脂等で構成されたバルク材料に高出力のレーザ光を照射して、多層記録(三次元記録)を実現する方法が報告されている(非特許文献1を参照)。
この方法は、従来の積層型光ディスクに比べて、安価で大記録容量の光記録媒体の実現を可能とするものとして期待されている。
【0005】
このような三次元光記録(バルク記録とも呼ばれる)に関して、従来の手法では、高出力のレーザ光を出射する光源として、モードロック型のチタンサファイアレーザが用いられていた。
しかしながら、当該チタンサファイアレーザは大きく高価な固体レーザであり、これを実製品として実装することは非常に困難であり、例えば研究室等のデモンストレーション等の用途に限られていた(例えば非特許文献2を参照)。
【0006】
そこで、多くの研究者たちは、実用化へ向けて、さらに小型で安定なパルス光源を半導体ベースで開発することを試みている。
先に挙げたような次世代の光記録においては、高密度記録に有利な青紫色レーザ光源が強く望まれている。
【0007】
例えば、ゲインスイッチング型レーザにおいて、強励起駆動による1MHz繰り返しを行った場合に、55Wのピークパワーを実現することが報告されている(非特許文献3を参照)。
ただし、市場における高い転送レートへの要求により、データ記録用の光源においても、さらに高い繰り返し周波数が必要となる。
【0008】
これらの課題解決を図るパルス光源として、近年、高密度記録に有効な青色レーザであって、1GHzの繰り返し周波数で且つ100W程度のピークパワーを実現するものが報告されている(例えば非特許文献4を参照)。
この光源は、MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)と呼ばれる構成で、半導体レーザを用いたモードロックレーザ(MLLD)と半導体光アンプとを組み合わせたものとなる。
【0009】
このようにMLLDと光アンプとを組み合わせたMOPAとしての光源部を適用することで、上述したバルク記録(三次元光記録)のシステムの実現化をより容易なものとすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、バルク記録のシステムについては、記録チャンネル(以下chと表記)の数を複数として、より高速な記録動作の実現を図ることが構想されている。
このような複数ch記録化の実現にあたっては、光源部を実装した光ピックアップを複数設けて、それぞれの光ピックアップに同時並行的に記録を行わせるという構成を採ることが順当に考えられる。
【0011】
しかしながら、MOPAとしての光源部は、前述のチタンサファイアレーザとの比較では大幅な小型化が図られたものとなるが、MLLD部が外部共振器を備えており、前述の高い繰り返し周波数の実現のためには、その全長が十数cm程度に及ぶものとなる。従って、MOPAを用いる場合に複数ch記録化を実現しようとすると、各ピックアップのサイズが大型化し、結果、記録装置の小型化を図ることが非常に困難となる。
【0012】
本技術はかかる問題点に鑑み為されたもので、光記録のための光源部にMOPAを備える記録装置において、複数ch記録化を図る場合の装置の小型化を図ることをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題の解決のため、記録装置として以下のような構成を提案する。
すなわち、本技術に係る記録装置は、光学ピックアップを複数備えて、光記録媒体に対して複数チャンネル同時記録が可能に構成され、且つ、外部共振器を含むモードロックレーザ部分と当該モードロックレーザ部分から出射されるレーザ光を増幅変調する光変調部とを有して成るMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)により、記録のためのレーザ光を得るように構成されている。
そして、上記光学ピックアップの外部に対して、上記MOPAにおける上記モードロックレーザ部分が配置され、また、複数の上記光学ピックアップのそれぞれに対して、上記MOPAにおける上記光変調部が搭載され、上記モードロックレーザ部分が発光したパルスレーザ光を、各上記光学ピックアップに対して伝送する光伝送部が備えられるものである。
【0014】
このようにMOPAにおけるモードロックレーザ部分(MLLD部分)と光変調部とを分離した構成(MOPA分離構成)とすれば、MLLD部分が非搭載とされることによる各光学ピックアップのサイズの大幅な小型化が図られると共に、MLLD部分については各チャンネルに共通の1つのみを設ければ足ものとできる。このため、記録装置の大幅な小型化が図られる。
なお、光変調部が各光学ピックアップごと(つまり記録チャンネルごと)に搭載されるので、チャンネルごとに独立したデータ記録が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本技術によれば、記録のためのレーザ光をMOPAにより得る記録装置であって複数チャンネル同時記録が可能とされた記録装置について、各光学ピックアップのサイズの小型化及びMLLD部分の実装数の削減により、記録装置の大幅な小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】MOPAの構成を説明するための図である。
【図2】MLLD部が有する半導体レーザの構成例を示した図である。
【図3】SOA部が有する半導体光増幅器の構成例を示した図である。
【図4】半導体光増幅器の入力光と出力光との関係を示した図である。
【図5】複数ch記録化にあたり順当に採り得る記録装置の概要構成を示した図である。
【図6】実施の形態の記録装置の構成概要を示した図である。
【図7】分光部の構成例を示した図である。
【図8】光伝送部の他の構成例を示した図である。
【図9】バルク型記録媒体の断面構造図である。
【図10】バルク型記録媒体に対する記録手法について説明するための図である。
【図11】バルク型記録媒体に対する記録を行う記録装置の主に光学ピックアップの構成と位置制御系の構成について説明するための図である。
【図12】モードロックレーザの発光パルスと半導体光増幅器に与えるデータパルスとの同期の必要性について説明するための図である。
【図13】マスタークロックの位置のバリエーションを示した図である。
【図14】MLLDの駆動手法(通常駆動、外部クロックとレーザ発振パルスの同期駆動)について説明するための図である。
【図15】マスタークロックをディスク基準とする場合において順当に採り得る記録装置の構成例を示した図である。
【図16】マスタークロックをディスク基準とする場合に対応した実施の形態の記録装置の構成例を示した図である。
【図17】マスタークロックをドライブ基準とする場合において順当に採り得る記録装置の構成例を示した図である。
【図18】マスタークロックをドライブ基準とする場合に対応した実施の形態の記録装置の構成例を示した図である。
【図19】マスタークロックをレーザ基準とする場合において順当に採り得る記録装置の構成例を示した図である。
【図20】マスタークロックをレーザ基準とする場合に対応した実施の形態の記録装置の構成例を示した図である。
【図21】光検出不要な発振パルス検出部の構成について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本技術に係る実施の形態(以下、実施の形態とする)について説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。

<1.MOPA分離構成の概要について>
[1-1.MOPAについて]
[1-2.複数ch記録化にあたり順当に採り得る構成]
[1-3.MOPA分離構成の概要]
<2.具体的な実施形態>
[2-1.バルク記録(三次元光記録)について]
[2-2.マスタークロックの位置のバリエーション]
[2-3.ディスク基準とする場合]
( I.順当に採り得る構成)
(II.実施の形態としての構成)
[2-4.ドライブ基準とする場合]
( I.順当に採り得る構成)
(II.実施の形態としての構成)
[2-5.レーザ基準とする場合]
( I.順当に採り得る構成)
(II.実施の形態としての構成)
<3.変形例>
【0018】
<1.MOPA分離構成の概要について>
[1-1.MOPAについて]

図1は、MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)100の構成について説明するための図である。
図1において、MOPA100は、少なくともモードロックレーザ部(MLLD部とも表記する)1と、SOA部(SOA:Semiconductor Optical Amp)4、すなわち半導体光増幅器13とを含んで構成される。
具体的にこの場合のMOPA100には、これらMLLD部1とSOA部4(半導体光増幅器13)と共に、光アイソレータ部2、集光レンズ3、及びビーム整形部5が備えられている。
【0019】
MLLD部1は、半導体レーザ6と外部共振器とを含む。
ここで、図2は、MLLD部1が有する半導体レーザ6の構成例を示している。
なお図2において、図2(a)は半導体レーザ6の斜視図を、図2(b)は半導体レーザ6の断面図をそれぞれ示している。
【0020】
この図2に示すように、半導体レーザ6は、ゲイン部(Gain section)116と過飽和吸収体部(Saturable absorber section)117とを有して構成される。すなわち、BS(bisectional)型の半導体レーザである。
過飽和吸収体部117を設けることで、吸収体に入射する光の強度が大きくなるにつれて吸収率が低下するものとなり、強度の大きいパルスのみが透過する状態が得られる。このため、パルス幅の非常に短いパルスレーザ光を得ることが可能となる。
また、ゲイン部116にはゲイン電流が注入される。
【0021】
図2(a)に示すように、半導体レーザ6においては、n型GaN基板102上に、n型GaN層103、n型クラッド層104、活性層105、p型電子障壁層106、p型クラッド層107が積層されている。
p型クラッド層107の中央部には、図示するようにリッジ構造が形成されている。また、このリッジの側面や、p型クラッド層107のリッジが形成されていない部分の上には、SiO2層108とSi層109が形成されている。
【0022】
p型クラッド層107及びSi層109上には、p型電極113,114がオーミックコンタクトにより形成されている。
すなわち、ゲイン部116上には主電極113が、過飽和吸収体部117上には副電極114が形成されている。これらの電極113,114は、例えば幅20μm程度の溝状の分離部115によって分割されており、互いに電気的に分離されている。主電極113と副電極114の長さは、例えば、それぞれ520μm程度、60μm程度である。
また、n型GaN基板102の下面には、n型の下部電極101がオーミックコンタクトにより形成されている。
【0023】
また、ゲイン部116の前面の劈開面には、反射防止膜118(図2(b)を参照)がコーティングされ、過飽和吸収体部117の後面の劈開面には、高反射膜119(図2(b)を参照)がコーティングされている。
【0024】
図2(b)に示すように、この半導体レーザ6に対しては、副電極114により、過飽和吸収体部117に逆バイアスの電圧Vsaを加える。このとき、ゲイン部116に対して主電極113から電流I(ゲイン電流)を注入することにより、矢印A1に示す方向にレーザ光が出射される。
【0025】
なお、使用する半導体レーザ6の構成は上記により説明したものに限定されるべきものではない。例えば、半導体レーザ6の半導体材料は、記録に使用するレーザ光の波長に応じて選定すればよい。
【0026】
説明を図1に戻す。
図1には、MLLD部1の内部構成が示されている。
図示するようにMLLD部1は、半導体レーザ6を備えると共に、半導体レーザ6から出射された発散光によるレーザ光を集光する集光レンズ7と、集光レンズ7を介したレーザ光が入射するバンドパスフィルタ8と、バンドパスフィルタ8を介したレーザ光が入射するミラー9と、さらにミラー9を一部透過したレーザ光(発散光となる)をコリメートするコリメートレンズ10とを備えている。
図のように集光レンズ2による集光点はミラー9の反射面に一致するようにされる。
また、バンドパスフィルタ3は、所定の波長範囲の光を選択的に透過するように構成される。
【0027】
このようなMLLD部1においては、半導体レーザ6の後方端面のミラー(119)と、ミラー9との間で、外部共振器(空間共振器)が形成される。
この外部共振器の光路長Lにより、MLLD部1から出射されるレーザ光の繰り返し周波数(発振周波数)が決まる。これにより、強制的に特定の周波数にロックさせることができ、レーザ光のモードをロックすることができる。
【0028】
なお、外部共振器の光路長Lは、半導体レーザ6の内部共振器の光路長L0、半導体レーザ6内部の屈折率n0、半導体レーザ6外部の光路長L1、半導体レーザ6外部の屈折率n1とから、下記の[式1]で表されるものである。

L=n0・L0+n1・L1 ・・・[式1]
【0029】
ここで、上記の説明からも理解されるように、MLLD部1において、「モードロックレーザ」として機能する部分は、半導体レーザ6と外部共振器とを併せた部分、すなわち半導体レーザ6からミラー9までの部分である。
この点を踏まえ、以下、当該半導体レーザ6からミラー9までの部分を、「モードロックレーザ部分」(或いはMLLD部分)と表記する。
【0030】
MLLD部1より出射されたレーザ光は、光アイソレータ部2に入射する。
光アイソレータ部2は、光アイソレータ11とミラー12とを備え、当該光アイソレータ部2の後段の光学部品等において反射した光がMLLD部1に入射すること、或いはSOA部4の入射端から出た光が光アイソレータ部2より前段の光学部品等において反射しSOA部4に入射することを防止する機能を有する。
【0031】
光アイソレータ部2を介したレーザ光は、集光レンズ3を介してSOA部4に入射する。
SOA部4において、半導体光増幅器(SOA)13は、MLLD部1から出射されたレーザ光を増幅変調する光変調手段となる。
半導体光増幅器13は、小型かつ低コストの光増幅器であり、光をオン/オフする光ゲート、光スイッチとして用いることができる。
【0032】
本実施の形態においては、半導体光増幅器13による光のオン/オフ機能により、MLLD部1から出射されたレーザ光を記録データに応じて変調する。
【0033】
半導体光増幅器13の構成例を図3に示す。
ここで、通常の半導体レーザでは、両端面のミラーによって構成される共振器内に光を閉じ込めて、バンド間遷移による光学利得によってレーザ光を発振させる。
これに対し、半導体光増幅器13では、上記ミラーの代わりに、図3に示すように両端面に反射防止膜26を設けることによって、レーザ光の発振を抑制して、1パス分の増幅器として動作させている。
また、この半導体光増幅器13は、半導体レーザと同様に活性層25を含む半導体層が積層されて構成されている。
そして、半導体光増幅器13は、上面に上部電極23が形成され、下面に下部電極24が形成されている。上部電極23は電流源27に接続され、下部電極24は接地電位に接続されている。
【0034】
電流源27から上部電極23に駆動電流を注入した状態で、反射防止膜26が形成された入射端面からレーザ光を入射させると、活性層25中を導波される間に、誘導放出によってレーザ光が増幅される。
そして、この半導体光増幅器13に注入する駆動電流の電流量を制御することにより、レーザ光の増幅量を制御することができる。
なお、半導体光増幅器13に入射したレーザ光を必ずしも増幅させる必要はなく、十分なレーザ光パワーが得られる場合には、半導体光増幅器13のゲインを「1」としても良い。
【0035】
図4は、半導体光増幅器13の入力光(図4(a))と出力光(図4(b))との関係を示している。
上記構成による半導体光増幅器13は、キャリア寿命が短いため、電流や光強度の変化に対して高速な応答を示す。
従って、図4(a)に示す入力光、すなわちMLLD部1側から入射するパルスレーザ光に対して、例えば図4(b)に示す波形のパルス光が、半導体光増幅器13からの出力光として得られる。すなわち、駆動電流に応じて、MLLD部1からの入射光を図のようにその一部のパルスを抜き出すようにしてオン/オフすることができる。
このように半導体光増幅器13は、高速な光スイッチとしても機能することができる。
【0036】
ここで、例えば半導体レーザ6から波長405nm程度のレーザ光を出射させる構成とする場合には、半導体光増幅器13も、活性層25やガイド層、クラッド層等を同じ波長の光を放出する青紫色半導体レーザと同様の材料によって構成する。
【0037】
図1に戻り、SOA部4より出射されたレーザ光(発散光)は、ビーム成形部5に入射する。
ビーム成形部5は、SOA部4から入射するレーザ光をコリメートするコリメートレンズ14と、コリメートレンズ14を介したレーザ光についてビーム整形を行うビーム整形素子15とを備える。ビーム整形素子15は、例えばアナモルフィックプリズムなどで構成できる。
図のように当該ビーム成形部5でビーム整形されたレーザ光が、MOPA100の出力光として出射される。
【0038】
以上の前提を踏まえた上で、MOPA100の駆動手法について説明しておく。
図1に示されるように、MOPA100に対しては、MLLD部1(半導体レーザ6)を発光駆動するためのMLLDドライブ回路20と、図中のデータ21に応じてSOA部4(半導体光増幅器13)による光のオン/オフ動作を制御するためのSOAドライブ回路22とが設けられる。
【0039】
MLLDドライブ回路20は、MLLD部1における半導体レーザ6に対し、前述した逆バイアス電圧Vsaの印加と共に、ゲイン電流(電流I)の注入を行って当該半導体レーザ6をパルス発光させる。
【0040】
また、SOAドライブ回路22は、データ21(図中データパルス)に応じた駆動電流を生成し、当該駆動電流をSOA部4(半導体光増幅器13)に対して与える。
これにより、SOA部4の出射光として、データ21に応じた発光パルスが得られるようになる。具体的には、例えばデータ「1」に応じた区間でのみMLLD部1からの入射パルスが抽出された出射光が得られる(図4を参照)。
【0041】
[1-2.複数ch記録化にあたり順当に採り得る構成]

ここで、前述のようにMOPA100を光源部に用いる光ディスクの記録装置については、記録チャンネル(以下chとも表記)を複数として、記録レートの向上を図ることが構想されている。
【0042】
図5は、MOPA100を用いた記録装置として、複数ch記録化を図る場合に順当に採り得る構成を例示している。
先ずこの場合は、複数ch同時記録を可能するために、記録ch数と同数の光学ピックアップOPを設けることになる。ここでは、記録ch数=4である場合を例示しており、4つの光学ピックアップOPについては、それぞれOP-A、OP-B、OP-C、OP-Dと符号を振る。
これら光学ピックアップOP-A〜OP-Dのそれぞれには、MOPA100が搭載される。
【0043】
前述のように、MOPA100の出力光としてデータに応じて変調された光を得るにあたっては、MLLD部1をパルス発光させるための駆動信号(前述の電圧Vsaとゲイン電流)と、SOA部4をデータに応じて駆動するための駆動信号とをMOPA100に与える。
ここで、上記のようにMLLD部1をパルス発光させるための駆動信号については駆動信号Dr_MLと、またSOA部4をデータに応じて駆動するための駆動信号を駆動信号Dr_SOAとする。
【0044】
この場合の駆動部30は、各ピックアップOPにそれぞれMOPA100が搭載されることから、それぞれに上記駆動信号Dr_MLと駆動信号Dr_SOAとを供給することになる。
すなわち、光学ピックアップOP-Aに対しては駆動信号Dr_ML-A及び駆動信号Dr_SOA-Aを、また、光学ピックアップOP-Bに対しては駆動信号Dr_ML-B及び駆動信号Dr_SOA-Bを、また光学ピックアップOP-Cに対しては駆動信号Dr_ML-C及び駆動信号Dr_SOA-Cを、さらに光学ピックアップOP-Dに対しては駆動信号Dr_ML-D及び駆動信号Dr_SOA-Dを供給することになる。
【0045】
[1-3.MOPA分離構成の概要]

ここで、MLLDは、パルスレーザとして従来用いられていたチタンサファイアレーザ等と比較すれば大幅な小型化が図られたものとなるが、前述のようにMLLDは外部共振器を備え、当該外部共振器の光路長は、光ディスクの記録システムの光源部として用いることを想定した場合には例えば十数cm程度を要する場合があり、現状のBD(Blu-ray Disc:登録商標)等の光ディスクシステムで用いられている光源部と比較すると非常に大型となる。
このため、複数ch記録化のため図5のように各光学ピックアップOPにMOPA100を搭載する構成では、各光学ピックアップOPのサイズが大型化し、記録装置の小型化を図ることが非常に困難となる。
【0046】
そこで本実施の形態では、MOPA100により記録光を得る記録装置に関して、このような複数ch記録化を図る場合の装置の小型化を図るべく、以下のような構成を提案する。
【0047】
図6は、実施の形態としての記録装置の構成概要を示した図である。
実施の形態では、各光学ピックアップOPにMOPA100全体を実装するものとはせず、MOPA100における少なくとも「MLLD部分」はピックアップOPの外部に配置し、SOA部4を各ピックアップOPに対して搭載するという、MOPA分離構成を採用する。
【0048】
このとき、各chでは、それぞれ異なるデータを同時並行して記録可能とされることが必要となるので、各光学ピックアップOPには少なくともSOA部4以降の部分が搭載される必要がある。
一方で、これらchごとのSOA部4に対しては、所定の繰り返し周波数で発振でするパルスレーザ光が入力されればよく、従って当該パルスレーザ光の光源である「MLLD部分」については、chごとに独立して設ける必要性はなく、各chに対して共通となる1つの「MLLD部分」のみを設ければ足るものとできる。
【0049】
これらの点より、上記のようなMOPA分離構成を採用すれば、chごとの独立したデータ記録を可能としつつ、各ピックアップOPごとに「MLLD部分」を設ける必要性を無くすことで、「MLLD部分」については少なくとも各chに共通となる1つのみ設ければよいものとできることが分かる。
【0050】
具体的な構成として、本例では、図6に示すようにMLLD部1を光学ピックアップOP外部に配置するものとしている。すなわち、「MLLD部分」にコリメートレンズ10を加えた部分を、光学ピックアップOP外部に配置する。そして、各光学ピックアップOPには、図中のPA部31として、MOPA100におけるMLLD部1以降の部分を搭載するものとしている。具体的には、光アイソレータ部2・集光レンズ3・SOA部4・ビーム整形部5である。
なお以下、MOPA100におけるPA部31のみを搭載した光学ピックアップOPについては、その符号の末尾に「’」を付してこれを表記する。
【0051】
そしてこの場合、共通のMLLD部1により得られたパルスレーザ光は、所定の光伝送部により各PA部31に伝送される。
具体的にこの場合は、MLLD部1で得られたパルスレーザ光は図中の分光部33によって4つの光線に分光された後、それらが光ファイバ32により各PA部31に伝送される。
【0052】
図7は、分光部33の構成例を示している。
例えばこの図7に示すように分光部33としては、MLLD部1から入射したレーザ光をグレーティング34により分光する構成とすることができる。
この場合、グレーティング34により分光されて得られた各光線は、それぞれ対応する集光レンズ35(図中集光レンズ35-1〜35-4のうち対応するもの)で集光された後、それぞれ対応する光ファイバ32に入射する。
【0053】
図6に戻り、この場合の駆動部30’は、各光学ピックアップOPに搭載されたPA部31内の個々のSOA部4に対し、各chごとの記録データに応じて生成した駆動信号Dr_SOA-A〜Dr_SOA-Dのうち対応する駆動信号Dr_SOAを供給する。
また駆動部30’は、光学ピックアップOP外部に設けられたMLLD部1に対し、駆動信号Dr_MLを供給する。
【0054】
上記のような本実施の形態の記録装置によれば、少なくとも「MLLD部分」をピックアップOPの外部に配置するものとしたことで、各ピックアップOPにはMOPA100における少なくとも外部共振器より後段の部分を搭載すればよいものとでき、またMLLLD部分については共通の1つのみを実装すれば済むものとできる。
これにより、光学ピックアップOPの小型化が図られると共に、MLLD部分の実装数も削減できる。これらの結果、記録装置の大幅な小型化が図られる。
【0055】
また、上記のようにMLLD部分の実装数を少なくとも1つとできることによれば、図5の場合では各chごとに必要であったMLLD部分への駆動信号Dr_MLの供給ラインを1系統に削減することができることにより、配線の複雑化の防止、及び駆動部の構成の簡易化が図られる。すなわち、回路実装面積の縮小化、部品点数の削減、及び低コスト化が図られる。
【0056】
ここで、図8は、各PA部31への光伝送を行う光伝送部の他の構成例を示している。
図8に示されるように、MLLD部1にて得られるパルスレーザ光の各PA部31への伝送は、ハーフミラーやミラーを用いて行うこともできる。
具体的にこの場合は、MLLD部1から出射されたレーザ光(平行光)の一部を反射、一部を透過して2光線に分光するハーフミラー36と、該ハーフミラー36で反射されたレーザ光を一部反射して1つ目のPA部31(図中では光学ピックアップOP-D’内のPA部31)に導くハーフミラー37と、該ハーフミラー37を透過したレーザ光を反射して2つ目のPA部31(光学ピックアップOP-A’内のPA部31)に導くミラー38とを設けるものとしている。
さらに、ハーフミラー36を透過したレーザ光を反射するミラー39と、該ミラー39による反射光が入射されこれを一部反射して3つ目のPA部31(光学ピックアップOP-C’内のPA部31)に導くハーフミラー40と、該ハーフミラー40を透過したレーザ光を反射して4つ目のPA部31(光学ピックアップOP-B’内のPA部31)に導くミラー41とを設ける。
この場合、各ハーフミラーやミラーの配置は、各PA部31へのレーザ光の入射方向が、そのPA部31が搭載される光学ピックアップOPの可動方向(スライド駆動される方向)と平行な方向となるように設定する。これにより、記録位置の遷移等に伴って光学ピックアップOPが移動しても、PA部31にレーザ光が入射され続けるようにできる。
【0057】
なお、MLLD部1によるパルスレーザ光のパワーが十分に高い場合等には、ハーフミラーのみを用いた構成とすることもできる。
また、ハーフミラーやミラーを光学ピックアップOPの移動と連動して動かすことにより、光学ピックアップOPが移動してもPA部31にレーザ光が入射され続けるようにする構成も可能である。
【0058】
<2.具体的な実施形態>
[2-1.バルク記録(三次元光記録)について]

以下、実施の形態の記録装置の構成について、より具体的に説明する。
先ずは、実施の形態の記録装置が記録対象とするバルク型記録媒体50について説明する。
【0059】
図9は、バルク型記録媒体50の断面構造を示している。
先ず、バルク記録とは、ピットやグルーブ等の位置案内子が形成されていないバルク状の記録層(バルク層52)に対し、逐次焦点位置を変えてレーザ光照射を行って、バルク層52内に多層記録を行うことで、大記録容量化を図る技術を指す。
【0060】
このようなバルク記録に関しては、微小なホログラムを記録マークとして形成するいわゆるマイクロホログラム方式と呼ばれるものや、微小なボイド(空孔、空包)を記録マークとして形成するボイド方式と呼ばれるものが知られている。
【0061】
マイクロホログラム方式では、バルク層52の記録材料として、いわゆるホログラム記録材料が用いられる。ホログラム記録材料としては、例えば光重合型フォトポリマ等が広く知られている。
マイクロホログラム方式は、対向する2つの光束をバルク層52内における同位置に集光して微細な干渉縞(ホログラム)を形成し、これを記録マークとする手法である。
【0062】
一方、ボイド方式は、例えば樹脂等で構成されたバルク層52に対して、比較的高パワーでレーザ光を集光して空孔を記録する手法である。このように形成された空孔部分は、バルク層52内における他の部分と屈折率が異なる部分となり、それらの境界部分で光の反射率が高められることになる。従って上記空孔部分は記録マークとして機能し、これによって空孔マークの形成による情報記録が実現される。
このようなボイド方式は、ホログラムを形成するものではないため、記録にあたっては片側からの光照射を行えば済むものとでき、上記マイクロホログラム方式の場合のように2つの光束を同位置に集光して記録マークを形成する必要は無いものとできる。
【0063】
ところで、バルク層52には位置案内子が形成されていないため、マークが未形成である記録時においては、フォーカスサーボやトラッキングサーボを行うことができない。
そこで、バルク型記録媒体50には、位置案内子を有する基準となる反射面(基準面Ref)が別途設けられる。
具体的に図9の場合は、カバー層51の下面側に例えばグルーブやピットによる案内溝が形成され、そこに選択反射膜53が成膜されている。そして、このように選択反射膜53が成膜されたカバー層52の下層側に対し、図中の中間層54としての、例えばUV硬化樹脂などの接着材料を介してバルク層52が設けられる。
なお、基準面Refには、グルーブやピットの形成によりアドレス情報が記録される。
【0064】
ここで、上記のような構造とされたバルク型記録媒体50に対しては、次の図10に示されるようにマークの記録用のレーザ光(記録用レーザ光)とは別途に、位置制御用のレーザ光としてのサーボ用レーザ光を照射するようにされる。
図示するようにこれら記録用レーザ光とサーボ用レーザ光とは、共通の対物レンズを介してバルク型記録媒体50に照射される。
【0065】
このとき、仮に、サーボ用レーザ光がバルク層52に到達してしまうと、当該バルク層52内におけるマーク記録に悪影響を与える虞がある。このため、従来よりバルク記録方式では、サーボ用レーザ光として、記録用レーザ光とは波長帯の異なるレーザ光を用いるものとした上で、位置案内子の形成面(基準面Ref)に成膜される反射膜としては、サーボ用レーザ光は反射し、記録用レーザ光は透過するという波長選択性を有する選択反射膜53を設けるものとしている。
【0066】
以上の前提を踏まえた上で、図10を参照し、バルク型記録媒体50に対するマーク記録時の動作について説明する。
先ず、バルク層52に対して多層記録を行うとしたときには、バルク層52内の深さ方向においてマークを記録する層位置を何れの位置とするかを予め設定しておくことになる。図中では、バルク層52内においてマークを形成する層位置(マーク形成層位置:情報記録層位置とも呼ぶ)として、第1情報記録層位置L1〜第5情報記録層位置L5の計5つの情報記録層位置Lが設定された場合を例示している。図示するように第1情報記録層位置L1は、案内溝が形成された選択反射膜53(基準面Ref)からフォーカス方向(深さ方向)に第1オフセットof-L1分だけ離間した位置として設定される。また、第2情報記録層位置L2、第3情報記録層位置L3、第4情報記録層位置L4、第5情報記録層位置L5は、それぞれ基準面Refから第2オフセットof-L2分、第3オフセットof-L3分、第4オフセットof-L4分、第5オフセットof-L5分だけ離間した位置として設定される。
【0067】
マークが未だ形成されていない記録時においては、バルク層52からの反射光に基づいて、所望の層位置Lを対象としたフォーカスサーボ、トラッキングサーボを行うということはできない。従って、記録時におけるフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御については、位置制御用光としてのサーボ用レーザ光の反射光(基準面Refからの反射光)に基づき、当該サーボ用レーザ光のスポット位置が基準面Ref上において案内溝に追従するように対物レンズの位置を制御することで行うことになる。
【0068】
但し、記録用レーザ光は、マーク記録のために選択反射膜53よりも下層側に形成されたバルク層52に到達させる必要がある。このため、この場合の光学系には、対物レンズのフォーカス機構とは別途に、記録用レーザ光の合焦位置を独立して調整するためのフォーカス機構が設けられることになる。
【0069】
ここで、このような記録用レーザ光の合焦位置を独立して調整するための機構を含めた、バルク型記録媒体50の記録装置の内部構成例を図11に示す。
なおこの図11では、記録装置内における光学ピックアップOPの内部構成、及び位置制御に係る構成を主に示している。
また、この図11では、MOPA分離構成を採用していない従来の記録装置の構成を示している。
【0070】
図11において、MOPA100は、記録用レーザ光として設けられる。
前述のようにバルク記録方式として特にボイド方式を採用する場合は、空孔形成のために比較的高パワーのレーザ光を照射することが好ましく、記録用レーザとしてMOPA100を用いることが好適となる。
【0071】
図示するようにMOPA100より出射した記録用レーザ光は、固定レンズ60・可動レンズ61・レンズ駆動部62を有するフォーカス機構に入射する。当該フォーカス機構においては、レンズ駆動部62によって可動レンズ61が記録用レーザ光の光軸に平行な方向に駆動されることで、図中の対物レンズ64に入射する記録用レーザ光のコリメーション状態(収束/平行/発散の状態)が変化し、記録用レーザ光の合焦位置を、対物レンズ64の駆動による合焦位置の変化とは独立して調整することができる。
なお、この意味で、当該フォーカス機構については、記録光用フォーカス機構とも表記する。
【0072】
記録光用フォーカス機構を介した記録用レーザ光は、当該記録用レーザ光と同波長帯による光を透過しそれ以外の波長帯による光は反射するように構成されたダイクロイックミラー(ダイクロイックプリズム)63に入射する。
図示するようにダイクロイックミラー63を透過した記録用レーザ光は、対物レンズ64を介してバルク型記録媒体50に対して照射される。対物レンズ64は、2軸アクチュエータ65によりフォーカス方向及びトラッキング方向に変位可能に保持されている。
【0073】
また、光学ピックアップOP内には、サーボ用レーザ光についての光学系が設けられる。
サーボ用レーザ66は、図10に示したサーボ用レーザ光の光源として設けられ、MOPA100による記録用レーザ光とは波長の異なるレーザ光を発光する。例えば、記録用レーザ光の波長=405nm程度に対し、サーボ用レーザ光の波長=650nm程度などと設定される。
【0074】
サーボ用レーザ66より出射されたサーボ用レーザ光は、コリメートレンズ67を介した後、ビームスプリッタ68を透過し、前述したダイクロイックミラー63に入射する。サーボ用レーザ光は、当該ダイクロイックミラー63にて反射され、その光軸がダイクロイックミラー63を透過した記録用レーザ光の光軸と一致するようにして対物レンズ64に入射する。
対物レンズ64に入射したサーボ用レーザ光は、後述するサーボ回路73によるフォーカスサーボ制御によって2軸アクチュエータ65が駆動されることで、バルク型記録媒体50の選択反射膜53上(基準面Ref)に合焦するようにされている。また同時に、サーボ用レーザ光のトラッキング方向における位置は、サーボ回路73によるトラッキングサーボ制御によって2軸アクチュエータ65が駆動されることで、選択反射膜53に形成された案内溝(トラック)に沿うようにされる。
【0075】
選択反射膜53からのサーボ用レーザ光の反射光は、対物レンズ64を介しダイクロイックミラー63で反射された後、ビームスプリッタ68にて反射される。ビームスプリッタ68にて反射されたサーボ用レーザ光の反射光は、集光レンズを介してフォトディテクタ69の受光面上に集光する。
なお以下、フォトディテクタ69による受光信号は受光信号Dsvと表記する。
【0076】
マトリクス回路70は、フォトディテクタ69による受光信号Dsvに基づきフォーカス、トラッキングの各エラー信号ESを生成する共に、基準面Refに形成されたグルーブのウォブル周期を表すウォブル信号WSを生成する。
各エラー信号ESはサーボ回路73に対して供給される。
またウォブル信号WSはPLL回路71及びアドレス検出回路72に対して供給される。
【0077】
サーボ回路73は上記各エラー信号ESからフォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号を生成する。これらフォーカスサーボ信号、トラッキングエラー信号に基づき上述した2軸アクチュエータ65が駆動されることで、対物レンズ64のフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御が実現される。
【0078】
PLL回路71は、ウォブル信号WSに基づくクロックを生成する。このクロックは、必要な各部の動作クロックとして供給される。特にこの場合は、アドレス検出回路72に対して供給される。
【0079】
アドレス検出回路72は、ウォブル信号WSと上記クロックとに基づき基準面Refに記録されたアドレス情報を検出する。検出したアドレス情報はコントローラ74に対して供給される。
【0080】
コントローラ74は、例えばマイクロコンピュータで構成され、記録装置の全体制御を行う。
例えば、上記アドレス情報に基づく記録位置の制御や、前述した記録光用フォーカス機構におけるレンズ駆動部62を制御することによる情報記録層位置Lの選択制御を行う。
具体的にこのような情報記録位置Lの選択制御としては、予め情報記録層位置Lごとに設定されたオフセット量of-Lに基づいて、レンズ駆動部62を駆動制御することで行う。
【0081】
ここで、記録時における記録用レーザ光のトラッキングサーボに関しては、上述のようにサーボ回路73がサーボ用レーザ光の反射光に基づいて対物レンズ64についてのトラッキングサーボ制御を行うことで、自動的に行われるものとなる。具体的に、記録用レーザ光のトラッキング方向におけるスポット位置は、基準面Refに形成された案内溝の直下となるように制御される。
【0082】
上記のような記録装置の構成により、バルク層52内の所望の層位置Lにおける所望の半径位置に対して情報記録を行うことができる。すなわち、バルク層52に対する三次元記録(多層記録)が実現されるものである。
【0083】
[2-2.マスタークロックの位置のバリエーション]

ここで、MOPA100を記録光源として用いる記録システムにおいては、MOPA100におけるMLLD部1の発振パルスの位相と、半導体光増幅器13の駆動電流の位相(データパルスの位相)とが同期していることを要する。
【0084】
図12は、MLLD部1の発光パルスと半導体光増幅器13に与えるデータパルスとの同期の必要性について説明するための図である。
図12(a)はMLLD部1から半導体光増幅器13に入射するパルスレーザ光を示し、図12(b)はデータパルスを、図12(c)は図12(b)のデータパルスに応じて半導体光増幅器13により変調されたレーザ光を示している。
ここで説明上、図12(b)に示すデータパルスは、例えば5T(Tはチャネルクロック)の符号長に対応するものであるとする。
これら図12(a)〜図12(c)の関係においては、データパルスの位相がMLLD部1の発振パルスの位相と同期しており、5T分のデータパルスに応じて、5つのパルスが抽出されていることが示されている。
【0085】
これに対し、図12(d)では、同じ5T分のデータパルスとして、MLLD部1の発振パルスとの間で位相同期がとられていないデータパルスを示しているが、当該データパルスに応じて半導体光増幅器13が変調動作を行った場合には、本来は先の図12(c)のように5つのパルスが抽出されるべきところが、図12(e)に示されるようにそれよりも少ない数のパルスしか抽出できないこととなる。
この結果、意図したT長によるマーク記録を行うことができないものとなってしまう。
【0086】
このため、MOPA100を記録用光源として用いる記録システムにおいては、MLLD部1の発振パルスとデータパルスとが同期していることを要する。
【0087】
MLLD部1の発振パルスとデータパルスの同期を行うための手法は、そのマスタークロックの位置を何れに設定するかにより、図13に示すような3つの手法に大別することができる。
すなわち、図13(a)に示すディスク基準としての手法、図13(b)に示すドライブ基準としての手法、図13(c)に示すレーザ基準としての手法である。
図13(a)のディスク基準の手法は、バルク型記録媒体50の基準面Refに形成されたグルーブのウォブル周期を表すウォブル信号WSをマスタークロックとして用いる手法である。
また、図13(b)のドライブ基準の手法は、ドライブ(記録装置)に設けた発振器75による発振信号をマスタークロックとして用いる手法である。
また図13(c)のレーザ基準の手法は、MLLD部1の発振パルスをマスタークロックとして用いる手法である。
【0088】
ここで、ディスク基準とドライブ基準の手法では、MLLD部1の発振周波数(位相)をマスタークロックに同期させることになる。
【0089】
図14を参照し、このようにMLLD部1の発振周波数をマスタークロック(外部クロック)に同期させるための具体的な手法について説明する。
先ず、先に説明したように、MLLD部1の半導体レーザ6は、副電極114により過飽和吸収体部117に逆バイアスの電圧Vsaを印加し、主電極113よりゲイン部116に対してゲイン電流I(DC電流)を注入することにより発光する(通常駆動:図14(a))。
これに対し、MLLD部1の発振周波数(位相)を外部クロックに応じて調整するとした場合には、図14(b)に示すように、副電極114より過飽和吸収体部117に逆バイアスの電圧Vsaを印加し、主電極113よりゲイン部116に対してゲイン電流I(DC電流)を注入すると共に、さらに主電極113よりゲイン部116に対してAC電流によるゲイン電流Iを併せて注入する。
このとき、上記AC電流として、マスタークロックに基づく電流を注入することで、MLLD部1の発振周波数をマスタークロックに同期させることが可能となる。
【0090】
説明を図13に戻す。
各手法について具体的に見ていく。
先ず、図13(a)のディスク基準の手法では、ウォブル信号WSに基づき、PLL回路71でマスタークロック(以下、ディスク基準クロックと表記)を生成する。そして、このようなディスク基準クロックにより、データ21の出力タイミングを制御する(つまりディスク基準クロックにデータパルスを同期させる)と共に、当該ディスク基準クロックにMLLD部1の発振パルスを同期させる。
これにより、MLLD部1の発振パルスとデータパルスとを同期させることができ、所望のT長のマークが適正に記録されるようにできる。
【0091】
また、図13(b)のドライブ基準の手法では、発振器75により生成されたマスタークロック(ドライブ基準クロックとする)によりデータ21の出力タイミングを制御すると共に、当該ドライブ基準クロックにMLLD部1の発振パルスを同期させる。これによりMLLD部1の発振パルスとデータパルスとを同期させることができる。
【0092】
また、図13(c)のレーザ基準の手法では、MLLD部1の発振パルスを発振パルス検出部77で検出し、PLL回路78がこのように発振パルス検出部77が検出した発振パルスに基づくマスタークロックを生成する(レーザ基準クロックとする)。そして、当該レーザ基準クロックに基づきデータ21の出力タイミングを制御する。
これによりMLLD部1の発振パルスとデータパルスとを同期させることができる。
【0093】
ここで、図13(b)に示すドライブ基準、及び図13(c)に示すレーザ基準の手法では、バルク型記録媒体50の基準面Refにおける記録信号とデータ21との間で同期はとられていない。
そこで、これらドライブ基準及びレーザ基準の手法では、従来より例えばBD等の光ディスクで行われているように、記録単位毎の繋ぎ部分に、データ21の記録領域としては使用しない領域(いわゆるバッファ領域)を設けておくものとし、記録装置側では、記録単位毎に、記録単位の先頭タイミングとその記録単位のデータ21の先頭タイミングとを同期させるという処理を行う。
【0094】
具体的には、図13(b)及び図13(c)のそれぞれに示すような記録単位毎タイミング同期回路76を設け、当該記録単位毎タイミング同期回路76が、アドレス検出回路72により検出されたアドレス情報に基づき、記録単位毎に、その記録単位のデータ21の先頭タイミングをアドレス情報が示す記録単位の先頭タイミングに同期させる。
これにより、例えばセクター等の所要の記録単位ごとのデータ記録が適正に行われるようにできる。
【0095】
[2-3.ディスク基準とする場合]
( I.順当に採り得る構成)

図15は、図13(a)に示したディスク基準の手法を採用する場合において、複数ch記録化を実現するにあたって順当に採り得る記録装置の構成例を示している。
なお、この図15を始めとして以下で説明する図20までの各図では、記録chの数が2chとされた場合の構成を例示する。
また図15〜図21において、既に説明済みとなった部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0096】
図15に示すように、この場合の記録装置では、光学ピックアップOP-A、光学ピックアップOP-Bのそれぞれに、MOPA100が搭載される。
【0097】
そして、これら光学ピックアップOP-A,OP-Bのうち何れか一方で得られる受光信号Dsvに基づき、マトリクス回路70がウォブル信号WSを生成し、当該ウォブル信号WSに基づきPLL回路71がディスク基準クロックを生成する。
PLL回路71が生成したディスク基準クロックは、データ出力制御部80-Aとデータ出力制御部80-Bとに供給されると共に、MLLDドライブ回路20に供給される。
【0098】
データ出力制御部80-Aには、Achデータ(光学ピックアップOP-A側で記録されるべきデータ)が入力される。データ出力制御部80-Aは、当該Achデータを、上記ディスク基準クロックに従ってSOAドライブ回路22-Aに出力する。
【0099】
また、データ出力制御部80-Bには、Bchデータ(光学ピックアップOP-B側で記録されるべきデータ)が入力され、データ出力制御部80-Bは、当該Bchデータを、上記ディスク基準クロックに従ってSOAドライブ回路22-Bに出力する。
【0100】
前述もしたようにSOAドライブ回路22は、入力されたデータに応じた駆動電流を生成し、当該駆動電流をMOPA100のSOA部4(半導体光増幅器13)に対して与える。
【0101】
この場合のMLLDドライブ回路20は、各MOPA100におけるMLLD部1(半導体レーザ6)を、その発振パルスが上記ディスク基準クロックと同期するように駆動する。
具体的には、先の図14(b)に示したように、半導体レーザ6の副電極114により過飽和吸収体部117に逆バイアスの電圧Vsaを印加し、主電極113よりゲイン部116に対してゲイン電流I(DC電流)を注入すると共に、さらに主電極113よりゲイン部116に上記ディスク基準クロックに応じたAC電流を併せて注入する。
【0102】
上記のような構成により、ディスク基準の手法による複数ch同時記録を行うことが可能となる。
【0103】
(II.実施の形態としての構成)

図16は、ディスク基準の手法を採用する場合に対応した、実施の形態の記録装置の構成例を示している。
先の図6の説明からも理解されるように、この場合、光学ピックアップOP-A’、光学ピックアップOP-B’のそれぞれには、MOPA100に係る構成のうちPA部31のみが搭載されることになる。そして、これら光学ピックアップOPの外部に対してMLLD部1が設けられる。
なおこの図では各PA部31に対する光伝送が分光部33と光ファイバ32とで行われる場合を例示している。
【0104】
なお、図中で破線により囲った部分(マトリクス回路70、PLL回路71、データ出力制御部80-A,80-B、SOAドライブ回路22-A,22-B、MLLDドライブ回路20)の構成は、図15において同じく破線で囲った部分の構成と同様となるので改めての説明は省略する。但し、この場合のMLLDドライブ回路20は、光学ピックアップOP外部に設けられたMLLD部1を駆動することになる。
【0105】
この図16と先の図15とを対比して明らかなように、実施の形態のMOPA分離構成によれば、光学ピックアップOPの小型化が図られる。また、MLLD部1については各chに共通の1つのみを設ければ済むものとできる。
【0106】
[2-4.ドライブ基準とする場合]
( I.順当に採り得る構成)

図17は、図13(b)に示したドライブ基準の手法を採用する場合において、複数ch記録化を実現するにあたって順当に採り得る記録装置の構成例を示している。
先の図15と比較すると、この場合の記録装置には、マトリクス回路70として、各chに対応したマトリクス回路70-Aとマトリクス回路70-Bの2つが設けられる。また、アドレス検出回路72-Aとアドレス検出回路72-Bとが設けられると共に、記録単位毎タイミング同期回路76-Aと記録単位毎タイミング同期回路76-Bとが設けられる。
さらに、この場合のデータ出力制御部80-A、データ出力制御部80-Bには、PLL回路71によるクロックではなく、発振器75により生成されるクロック(ドライブ基準クロック)がそれぞれ入力される。
またMLLDドライブ回路20に対しても、PLL回路71によるクロックではなく発振器75によるドライブ基準クロックが入力される。
【0107】
マトリクス回路70-Aは光学ピックアップOP-Aにて得られる受光信号Dsv(以下、Dsv-Aと表記)に基づき、ウォブル信号WS(WS-Aと表記)を生成する。
そしてアドレス検出回路72-Aはウォブル信号WS-Aに基づき基準面Refに記録されたアドレス情報を検出する。
【0108】
同様にマトリクス回路70-Bは、光学ピックアップOP-Bにて得られる受光信号Dsv(Dsv-Bと表記)に基づき、ウォブル信号WS(WS-Bと表記)を生成し、またアドレス検出回路72-Bは、ウォブル信号WS-Bに基づき基準面Refに記録されたアドレス情報を検出する。
【0109】
記録単位毎タイミング同期回路76-Aは、アドレス検出回路72-Aが検出したアドレス情報に基づき、例えばセクター等の所定の記録単位毎の先頭タイミングを検出し、該先頭タイミングを表すタイミング信号をデータ出力制御部80-Aに供給する。
また、記録単位毎タイミング同期回路76-Bは、アドレス検出回路72-Bが検出したアドレス情報に基づき、同様に所定の記録単位毎の先頭タイミングを検出し、該先頭タイミングを表すタイミング信号をデータ出力制御部80-Bに供給する。
【0110】
この場合のデータ出力制御部80-Aは、発振器75により生成されたドライブ基準クロックに従ってAchデータをSOAドライブ回路22-Aに出力すると共に、このようにSOAドライブ回路22-Aに出力するAchデータに関して、上記所定の記録単位毎のデータの先頭タイミングを、記録単位毎タイミング同期回路76-Aから供給される上記タイミング信号が表すタイミングと逐次一致させる。
また、この場合のデータ出力制御部80-Bとしても、上記と同様に、発振器75により生成されたドライブ基準クロックに従ってBchデータをSOAドライブ回路22-Bに出力すると共に、このようにSOAドライブ回路22-Bに出力するBchデータに関して、上記所定の記録単位毎のデータの先頭タイミングを記録単位毎タイミング同期回路76-Bから供給される上記タイミング信号が表すタイミングと逐次一致させる。
【0111】
また、この場合のMLLDドライブ回路20は、各MOPA100におけるMLLD部1(半導体レーザ6)を、その発振パルスが上記ドライブ基準クロックと同期するように駆動する。すなわち、半導体レーザ6の副電極114により過飽和吸収体部117に逆バイアスの電圧Vsaを印加し、主電極113よりゲイン部116に対してゲイン電流I(DC電流)を注入すると共に、主電極113よりゲイン部116に上記ドライブ基準クロックに応じたAC電流を併せて注入するものである。
【0112】
上記構成により、ドライブ基準の手法による複数ch同時記録を行うことが可能となる。
【0113】
(II.実施の形態としての構成)

図18は、ドライブ基準の手法を採用する場合に対応した、実施の形態の記録装置の構成例を示している。
この場合もMOPA分離構成として、光学ピックアップOP-A’、光学ピックアップOP-B’のそれぞれにはMOPA100に係る構成のうちPA部31のみが搭載され、これら光学ピックアップOPの外部に対して、MLLD部1が設けられる。
なおこの図においても各PA部31に対する光伝送が分光部33と光ファイバ32とで行われる場合を例示している。
また、図中で破線により囲った部分(マトリクス回路70-A,70-B、アドレス検出回路72-A,72-B、記録単位毎タイミング同期回路76-A,76-B、データ出力制御部80-A,80-B、SOAドライブ回路22-A,22-B、MLLDドライブ回路20)の構成は、図16において同じく破線で囲った部分の構成と同様となるので改めての説明は省略する。
但しこの場合、MLLDドライブ回路20は光学ピックアップOP外部に設けられたMLLD部1を駆動することになる。
【0114】
図18と先の図17とを対比して明らかなように、ドライブ基準とする場合にも、実施の形態のMOPA分離構成により、光学ピックアップOPの小型化が図られる。また、MLLD部1については各chに共通の1つのみを設ければ済むものとできる。
【0115】
[2-5.レーザ基準とする場合]
( I.順当に採り得る構成)

図19は、図13(c)に示したレーザ基準の手法を採用する場合において、複数ch記録化を実現するにあたって順当に採り得る記録装置の構成例を示している。
先の図17と比較すると、この場合の記録装置おいては、光学ピックアップOP-A,光学ピックアップOP-Bに、発振パルス検出部77-A、発振パルス検出部77-Bが設けられる。
発振パルス検出部77-Aは、光学ピックアップOP-Aに設けられたMOPA100のMLLD部1の発振パルス(発振周波数)を検出し、発振パルス検出部77-Bは光学ピックアップOP-Bに設けられたMOPA100のMLLD部1の発振パルスを検出する。
これら発振パルス検出部77は、MLLD部1が発光するパルスレーザ光を受光して発振パルスを検出するように構成されている。
【0116】
また、この場合の記録装置には、発振パルス検出部77-Aが検出した発振パルスに同期したレーザ基準クロックを生成するためのPLL回路78-Aと、発振パルス検出部77-Bが検出した発振パルスに同期したレーザ基準クロックを生成するためのPLL回路78-Bとが設けられる。
【0117】
そして、この場合のデータ出力制御部80-Aは、Achデータについて、記録単位毎タイミング同期回路76-Aからのタイミング信号に従った記録単位毎の先頭タイミング同期出力を行うと共に、PLL回路78-Aが生成したレーザ基準クロックに従って、当該AchデータをSOAドライブ回路22-Aに出力する。
またこの場合のデータ出力制御部80-Bは、Bchデータについて記録単位毎タイミング同期回路76-Bからのタイミング信号に従った記録単位毎の先頭タイミング同期出力を行うと共に、PLL回路78-Bが生成したレーザ基準クロックに従って当該BchデータをSOAドライブ回路22-Bに出力する。
【0118】
さらに、この場合のMLLDドライブ回路20は、各MOPA100内のMLLD部1(半導体レーザ6)を通常駆動する。すなわち、図14(a)に示したように、半導体レーザ6の副電極114により過飽和吸収体部117に逆バイアスの電圧Vsaを印加し、主電極113よりゲイン部116に対してゲイン電流I(DC電流)のみを注入することで、当該半導体レーザ6を発光駆動する。
【0119】
上記構成により、レーザ基準の手法による複数ch同時記録を行うことが可能となる。
【0120】
(II.実施の形態としての構成)

図20は、レーザ基準の手法を採用する場合に対応した、実施の形態の記録装置の構成例を示している。
この場合もMOPA分離構成として、光学ピックアップOP-A’、光学ピックアップOP-B’のそれぞれにはMOPA100に係る構成のうちPA部31のみが搭載され、これら光学ピックアップOPの外部に対してMLLD部1が設けられる。
この場合も各PA部31に対する光伝送が分光部33と光ファイバ32とで行われる場合を例示している。
【0121】
ここで、レーザ基準の場合、MOPA分離構成の採用によりMLLD部1を1つのみ設ければよいことに対応して、発光パルス検出部77としても、図のように1つのみを設ければ足ものとできる。
【0122】
またこのことに関連して、レーザ基準とする場合にMOPA分離構成を採用することによっては、ドライブ側で生成するクロックを、1系統のみとすることができるという効果も奏する。
すなわち、図19に示した従来のレーザ基準の構成では、記録chを複数とすることに応じてレーザ基準クロックも複数生成しなければならなかったものが、実施の形態のMOPA分離構成の採用により、MLLD部1を1つのみとできることで、クロックの生成系を1系統のみとすることができる。
この結果、記録chごとにPLL回路78を設ける必要性がなくなり、クロック生成に係る構成を大幅に簡略化することができる。また、これにより部品点数の削減が図られ、回路実装面積の縮小化、及び低コスト化が図られる。
【0123】
なお確認のため述べておくと、この場合のデータ出力制御部80-Aは、Achデータについて記録単位毎タイミング同期回路76-Aからのタイミング信号に従った記録単位毎の先頭タイミング同期出力を行うと共に、上記PLL回路78が生成したレーザ基準クロックに従ってAchデータをSOAドライブ回路22-Aに出力する。
またこの場合のデータ出力制御部80-Bは、Bchデータについて記録単位毎タイミング同期回路76-Bからのタイミング信号に従った記録単位毎の先頭タイミング同期出力を行うと共に、上記PLL回路78が生成したレーザ基準クロックに従ってBchデータをSOAドライブ回路22-Bに出力する。
【0124】
このようにレーザ基準の場合は、実施の形態のMOPA分離構成により、光学ピックアップOPの小型化やMLLD部1を単一にできるという効果と共に、記録クロックの生成系を単一にできるという効果も得られる。
【0125】
ここで、上記による説明では、MLLD部1によるパルスレーザ光を受光して発振パルス検出を行う発振パルス検出部77を例示したが、MLLD部1の発振パルスを検出するための構成としては、図21に示すような構成も可能である。
すなわち、この図21に示す発振パルス検出部81では、半導体レーザ6に対するバイアス電圧Vsaの供給ラインから、コンデンサCを介して当該バイアス電圧Vsaに重畳する交流成分を検出し、その検出結果をPLL回路78に供給するものとしている。
【0126】
ここで、バイアス電圧Vsaの供給ラインには、半導体レーザ6の発振周波数に応じた交流成分が重畳する。従って、この図21に示す発振パルス検出部81の構成により、半導体レーザ6(MLLD部1)の発振パルスを検出できる。
【0127】
図19や図20で示した発振パルス検出部77では、パルスレーザ光を受光するための受光素子や光学系を備える必要があるが、上記構成による発振パルス検出部81によれば、これら受光素子や光学系を備える必要性はなく、この点で部品点数の削減が図られ、結果として装置の小型化及び低コスト化に貢献する。
【0128】
なお、注意すべきは、図21に示す発振パルス検出部81の構成は、図19に示した従来のレーザ基準の構成においては採用し得ないという点である。
すなわち、図19に示す従来の構成では、各MOPA(各MLLD部1)の駆動を1つのMLLDドライブ回路20で共通に行っているので、バイアス電圧Vsaの供給ラインにはそれぞれのMLLD部1の発振成分(交流成分)が重畳してしまうことになる。すなわち、従来のレーザ基準の構成においては、MLLDドライブ回路20を各chごとに独立して設けない限り、図21に示す発振パルス検出部81の構成を採用することはできないものとなる。
【0129】
これに対し実施の形態のMOPA分離構成とすれば、MLLD部1は1つのみとできるため、各chごとにドライブ回路20を設けずとも、図21の発振パルス検出部81を採用することができる。つまり実施の形態のMOPA分離構成によれば、この点でも部品点数の削減及びそれによる小型化、低コスト化が図られるものとなる。
【0130】
<3.変形例>

以上、本技術に係る各実施の形態について説明したが、本技術はこれまでで説明した各具体例に限定されるべきものではない。
例えば記録ch数は2chや4chに限定されるべきものではなく、複数であればよい。
【0131】
また、これまでの説明では、基準面Refに形成される位置案内子としてグルーブ又はピットによる案内子を例示し、ピットの形成やグルーブのウォブリングによりアドレス情報が記録される場合を例示したが、基準面Refの位置案内子としては、例えば相変化材料等の記録膜にマークを記録したものであっても良い。
【0132】
また、本技術は、例えば以下の(1)〜(7)に示す構成を採り得るものである。
(1) 光学ピックアップを複数備えて、光記録媒体に対して複数チャンネル同時記録が可能に構成され、且つ、外部共振器を含むモードロックレーザ部分と当該モードロックレーザ部分から出射されるレーザ光を増幅変調する光変調部とを有して成るMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)により、記録のためのレーザ光を得るように構成されていると共に、
上記光学ピックアップの外部に対して、上記MOPAにおける上記モードロックレーザ部分が配置され、
複数の上記光学ピックアップのそれぞれに対して、上記MOPAにおける上記光変調部が搭載され、
上記モードロックレーザ部分が発光したパルスレーザ光を、各上記光学ピックアップに対して伝送する光伝送部が備えられる
記録装置。
【0133】
(2) 上記光伝送部は、光ファイバにより上記パルスレーザ光を各上記光学ピックアップに伝送する(1)に記載の記録装置。
【0134】
(3) 上記光伝送部は、ミラー及び/又はハーフミラーを用いて上記パルスレーザ光を各上記光学ピックアップに伝送する(1)に記載の記録装置。
【0135】
(4) 上記モードロックレーザ部分の発振周波数と同期した第1のクロックを生成する第1のクロック生成部と、
上記第1のクロックに基づき、上記光変調部に記録データ列に応じた変調動作を実行させる第1の変調制御部と
をさらに備える(1)又は(2)又は(3)に記載の記録装置。
【0136】
(5) 上記第1のクロック生成部は、
上記モードロックレーザ部分が有する半導体レーザに与えられるバイアス電圧の供給ラインに重畳する交流成分を抽出した結果に基づき、上記第1のクロックを生成する
(4)に記載の記録装置。
【0137】
(6) 上記光記録媒体には、位置案内子が形成された基準面が設けられており、
上記基準面からの反射光に基づき、上記基準面の記録信号に同期した第2のクロックを生成する第2のクロック生成部と、
上記第2のクロックに基づく交流電流を上記モードロックレーザ部分が有する半導体レーザのゲイン電流として注入する第2クロック同期電流注入部と、
上記第2のクロックに基づき、上記光変調部に記録データ列に応じた変調動作を実行させる第2の変調制御部と
をさらに備える(1)又は(2)又は(3)に記載の記録装置。
【0138】
(7) 発振器と、
上記発振器が発振した第3のクロックに基づく交流電流を上記モードロックレーザ部分が有する半導体レーザのゲイン電流として注入する第3クロック同期電流注入部と、
上記第3のクロックに基づき、上記光変調部に記録データ列に応じた変調動作を実行させる第3の変調制御部と
をさらに備える(1)又は(2)又は(3)に記載の記録装置。
【符号の説明】
【0139】
1 モードロックレーザ部(MLLD部)、2 光アイソレータ部、3,7,35-1〜35-4 集光レンズ、4 SOA部、5 ビーム整形部、6 半導体レーザ、8 バンドパスフィルタ、9,12,38,39,41 ミラー、10,14,67 コリメートレンズ、11 光アイソレータ、13 半導体光増幅器、15 ビーム整形素子、20 MLLDドライブ回路、21 データ、22 SOAドライブ回路、23 上部電極、24 下部電極、25 活性層、26 反射膜、OP,OP-A〜OP-D,OP-A’〜OP-D’ 光学ピックアップ、30,30’ 駆動部、31 PA部、32 光ファイバ、33 分光部、34 グレーティング、36,37,40 ハーフミラー、50 バルク型記録媒体、51 カバー層、52 バルク層、53 選択反射膜、54 中間層、60 固定レンズ、61 可動レンズ、62 レンズ駆動部、63 ダイクロイックミラー、64 対物レンズ、65 2軸アクチュエータ、66 サーボ用レーザ、68 ビームスプリッタ、69 フォトディテクタ、70,70-A,70-B マトリクス回路、71,78,78-A,78-B PLL回路、72,72-A,72-B アドレス検出回路、73 サーボ回路、74 コントローラ、75 発振器、76,76-A,76-B 記録単位毎タイミング同期回路、77,77-A,77-B,81 発振パルス検出部、80-A,80-B データ出力制御部、100 MOPA、113 主電極、114 副電極、116 ゲイン部、117 過飽和吸収体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学ピックアップを複数備えて、光記録媒体に対して複数チャンネル同時記録が可能に構成され、且つ、外部共振器を含むモードロックレーザ部分と当該モードロックレーザ部分から出射されるレーザ光を増幅変調する光変調部とを有して成るMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)により、記録のためのレーザ光を得るように構成されていると共に、
上記光学ピックアップの外部に対して、上記MOPAにおける上記モードロックレーザ部分が配置され、
複数の上記光学ピックアップのそれぞれに対して、上記MOPAにおける上記光変調部が搭載され、
上記モードロックレーザ部分が発光したパルスレーザ光を、各上記光学ピックアップに対して伝送する光伝送部が備えられる
記録装置。
【請求項2】
上記光伝送部は、光ファイバにより上記パルスレーザ光を各上記光学ピックアップに伝送する請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
上記光伝送部は、ミラー及び/又はハーフミラーを用いて上記パルスレーザ光を各上記光学ピックアップに伝送する請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
上記モードロックレーザ部分の発振周波数と同期した第1のクロックを生成する第1のクロック生成部と、
上記第1のクロックに基づき、上記光変調部に記録データ列に応じた変調動作を実行させる第1の変調制御部と
をさらに備える請求項1に記載の記録装置。
【請求項5】
上記第1のクロック生成部は、
上記モードロックレーザ部分が有する半導体レーザに与えられるバイアス電圧の供給ラインに重畳する交流成分を抽出した結果に基づき、上記第1のクロックを生成する
請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
上記光記録媒体には、位置案内子が形成された基準面が設けられており、
上記基準面からの反射光に基づき、上記基準面の記録信号に同期した第2のクロックを生成する第2のクロック生成部と、
上記第2のクロックに基づく交流電流を上記モードロックレーザ部分が有する半導体レーザのゲイン電流として注入する第2クロック同期電流注入部と、
上記第2のクロックに基づき、上記光変調部に記録データ列に応じた変調動作を実行させる第2の変調制御部と
をさらに備える請求項1に記載の記録装置。
【請求項7】
発振器と、
上記発振器が発振した第3のクロックに基づく交流電流を上記モードロックレーザ部分が有する半導体レーザのゲイン電流として注入する第3クロック同期電流注入部と、
上記第3のクロックに基づき、上記光変調部に記録データ列に応じた変調動作を実行させる第3の変調制御部と
をさらに備える請求項1に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−185888(P2012−185888A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48489(P2011−48489)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】