説明

記録装置

【課題】搬送経路における加熱手段が設けられた側から記録手段が設けられた側への熱の伝達を抑制することにより、記録手段に対する熱の影響を抑制することができる記録装置を提供する。
【解決手段】プリンター11は、搬送経路に沿って搬送されるシートSを支持する熱伝導性を有した板状の搬送経路形成部材31と、搬送経路の途中においてシートSに対して記録を施す第1記録ヘッド25及び第2記録ヘッド29と、搬送経路の途中における第1記録ヘッド25及び第2記録ヘッド29が配置された位置よりも上流側及び下流側の少なくとも一方においてシートSを加熱する乾燥装置32と、を備え、搬送経路形成部材31は、搬送経路における第1記録ヘッド25及び第2記録ヘッド29が配置された側に位置する第1ガイド板36と乾燥装置32が配置された側に位置する第2ガイド板37とに分割されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体に対して記録を施す記録装置のうちには、記録が施された記録媒体に対して加熱処理を行う加熱手段を備えたものがある(例えば、特許文献1)。
この特許文献1の記録装置には、記録装置の内部空間を記録ヘッド(記録手段)が配置されている記録ヘッド側空間部と加熱手段が配置されている加熱手段側空間部とに仕切る断熱性を有する隔壁が設けられている。そして、この隔壁により、加熱手段からの熱が記録ヘッド側に伝達されることを抑制するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−212950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の記録装置では、記録媒体を上流側の記録ヘッド側空間部から下流側の加熱手段側空間部まで搬送する搬送経路が熱伝導性を有する板状の部材により形成されている。そのため、加熱手段からの熱がこの板状の部材を伝わって記録ヘッド側に伝達される虞があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、搬送経路における加熱手段が設けられた側から記録手段が設けられた側への熱の伝達を抑制することにより、記録手段に対する熱の影響を抑制することができる記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の記録装置は、搬送経路に沿って搬送される記録媒体を支持する熱伝導性を有した板状の搬送経路形成部材と、前記搬送経路の途中において前記記録媒体に対して記録を施す記録手段と、前記搬送経路の途中における前記記録手段が配置された位置よりも上流側及び下流側の少なくとも一方において前記記録媒体を加熱する加熱手段と、を備え、前記搬送経路形成部材は、前記搬送経路における前記記録手段が配置された側に位置する第1の搬送経路形成部材と前記加熱手段が配置された側に位置する第2の搬送経路形成部材とに分割されている。
【0007】
この構成によれば、加熱手段によって加熱される第2の搬送経路形成部材から記録手段が配置された側に位置する第1の搬送経路形成部材に対して熱が直接的には伝達されないため、記録手段側に加熱手段からの熱が伝達されることを抑制することができる。したがって、記録手段に対する熱の影響を抑制することができる。
【0008】
本発明の記録装置において、前記第2の搬送経路形成部材は、前記第1の搬送経路形成部材よりも前記搬送経路の下流側に設けられると共に、該第2の搬送経路形成部材における搬送方向上流側の端部が、前記搬送方向に沿って延びる前記第1の搬送経路形成部材における搬送方向下流側の端部に対して、先端側ほど前記搬送経路から離れるように鋭角状に傾斜している。
【0009】
この構成によれば、搬送経路の途中で分割された第1の搬送経路形成部材と第2の搬送経路形成部材との間には隙間が形成されるものの、その隙間に臨む第2の搬送経路形成部材における搬送方向上流側の端部は先端側ほど搬送経路から離れるように鋭角状に傾斜している。そのため、例えば搬送経路が水平方向に沿う場合において、搬送途中の記録媒体における搬送方向の先端部が鉛直方向下方を向いた場合であっても、その記録媒体の先端部は第2の搬送経路形成部材における搬送方向上流側の傾斜した端部における上り勾配の斜面を摺動して第2の搬送経路形成部材上を搬送方向下流側に搬送される。したがって、記録媒体の先端部を第1の搬送経路形成部材と第2の搬送経路形成部材との間の隙間に引っかけさせることなく、記録媒体を円滑に搬送することができる。
【0010】
本発明の記録装置は、前記搬送経路における前記第1の搬送経路形成部材の搬送方向下流側の端部と対応する位置において前記記録媒体の記録が施された面に当接する第1ローラーと該第1ローラーが当接した面と反対側の面に当接する第2ローラーとにより前記記録媒体を挟持して搬送する搬送手段を更に備え、該搬送手段の前記各ローラーは、前記記録媒体の搬送方向と交差する幅方向に沿うように配置される回転軸と、該回転軸に軸方向へ間隔をおいて支持されるとともに前記記録媒体に当接する複数のローラー本体部とを有し、前記加熱手段は、前記第2の搬送経路形成部材における前記記録媒体を支持する側の面に向かって温風を吹き付けるとともに、前記第1の搬送経路形成部材は、その搬送方向下流側の端部において前記搬送手段における前記ローラー本体部間の領域に前記記録媒体の幅方向で対応する部位が、前記第2の搬送経路形成部材における搬送方向上流側の傾斜した端部と重なるように、前記搬送経路の下流側に向かって延設されている。
【0011】
この構成によれば、第1の搬送経路形成部材における搬送方向下流側の端部のうち、搬送手段におけるローラー本体部間の領域に記録媒体の幅方向で対応する部位が、第2の搬送経路形成部材における搬送方向上流側の傾斜した端部と重なるように延設されている。そのため、加熱手段から吹き出された温風が、第1ローラー及び第2ローラーにおけるローラー本体部間の領域を通過して記録手段が配置された側の領域内に流入することを抑制することができる。
【0012】
本発明の記録装置において、前記記録手段は、前記搬送経路形成部材における前記加熱手段が配置された面側の領域とは反対側の領域に配置されるとともに、前記記録媒体における前記加熱手段が温風を吹き付ける面とは反対側の面に対して記録を施す。
【0013】
この構成によれば、加熱手段と記録手段とは、第1の搬送経路形成部材及び第2の搬送経路形成部材からなる搬送経路形成部材を挟んで互いに反対側の領域に配置されることになるので、記録手段に対する加熱手段の熱の影響を抑制することができる。
【0014】
本発明の記録装置において、前記第1の搬送経路形成部材及び前記第2の搬送経路形成部材は、それぞれステンレス鋼によって形成されている。
この構成によれば、ステンレス鋼は摩擦係数が低く且つ耐摩耗性が高いため、大量の記録媒体を搬送する場合であっても円滑に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態のプリンターの概略正断面図。
【図2】搬送装置における第3搬送ローラー対が配置された領域付近の概略平面図。
【図3】(a)は、図2におけるA−A線矢視断面図、(b)は図2におけるB−B線矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を記録装置の一種であるインクジェット式プリンターに具体化した実施形態を図1〜図3に従って説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」をいう場合は、特に説明がない限り、各図において矢印で示す「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」をいうものとする。また、この場合における「前後方向」は記録媒体の搬送方向と交差する幅方向に相当すると共に、「上下方向」は鉛直方向に相当し、「左右方向」はその右側から左側に向かう方向が記録媒体の搬送方向に相当する。
【0017】
図1に示すように、記録装置としてのインクジェット式プリンター11(以下、「プリンター」ともいう。)は、略直方体状の本体ケース12を備えている。この本体ケース12内には、記録媒体としてのシートSを給紙する給紙部13と、この給紙部13から給紙されたシートSを左右方向に延びる搬送経路に沿って搬送方向X(図1において右側から左側に向かう方向)に搬送する搬送装置14とが設けられている。
【0018】
すなわち、本体ケース12内における右側の位置(すなわち、シートSの搬送方向上流側となる位置)には、給紙部13が配置されている。給紙部13には、シートSの搬送方向Xと交差する前後方向に延びる巻き軸15が回転可能に設けられている。その巻き軸15には、長尺状のシートSが予めロール状に巻き重ねられたロール体の形態で巻き軸15の軸線を中心として一体回転可能に保持されている。そして、巻き軸15の回転に伴って給紙部13から繰り出されたシートSは、給紙部13の搬送方向下流側(図1における左側)に配置されている搬送装置14へ搬送されるようになっている。
【0019】
搬送装置14は、給紙部13から繰り出されたシートSを搬送方向Xに搬送するために、搬送方向の上流側から下流側(図1における右側から左側)へ順番に配置された第1搬送ローラー対16、第2搬送ローラー対17、第3搬送ローラー対18及び第4搬送ローラー対19を備えている。
【0020】
第1〜第4搬送ローラー対16〜19は、シートSの裏面(図1における下面)に当接する駆動ローラー16a〜19aと、シートSの表面(図1における上面)に当接する従動ローラー16b〜19bとで対をなすように構成されている。そして、第1〜第4搬送ローラー対16〜19は、駆動ローラー16a〜19aと従動ローラー16b〜19bの間にシートSを挟持した状態で、駆動ローラー16a〜19aの駆動回転に従動ローラー16b〜19bが従動回転することでシートSの搬送を行うようになっている。
【0021】
搬送経路における第1搬送ローラー対16と第2搬送ローラー対17の間における略中央となる位置には、搬送されるシートSを裏面(下面)側から支持する第1支持部材21が設けられている。第1支持部材21は、搬送経路の下側となる領域に配置されているとともに、この第1支持部材21の上面となる支持面21aに対して搬送途中のシートSの裏面が摺接するようになっている。また、第1支持部材21の支持面21aには複数の吸引孔(図示略)が形成されているとともに、この第1支持部材21には吸引孔を通じて支持面21aにシートSを吸着するための吸引機構22が内蔵されている。
【0022】
この第1支持部材21と搬送経路を挟んで対向する位置(すなわち、搬送経路の上側となる領域)には、搬送されるシートSの表面に対して記録を施す第1記録部23が設けられている。第1記録部23は、シートSの搬送方向Xと交差(略直交)する主走査方向Y(シートSの幅方向に相当する)に沿って往復移動可能なキャリッジ24を備えている。キャリッジ24の下面には、記録手段としての第1記録ヘッド25が支持されている。また、第1記録ヘッド25の下面は、インクを噴射する複数のノズル25aが開口する水平なノズル形成面になっている。そして、ロール体から巻き解かれるとともに第1支持部材21上を通って搬送されるシートSの表面に対して第1記録ヘッド25のノズル25aからインクが噴射されることにより、シートSの表面に記録が施される。なお、本実施形態では、シートSにおける表面の記録として、例えば写真など、高画質の画像が形成されるようになっている。
【0023】
第1記録ヘッド25よりも下流側(左側)であって第2搬送ローラー対17よりも上流側となる位置には、長尺状のシートSを搬送方向Xと交差する幅方向(前後方向)に亘って切断するカッター26が設けられている。すなわち、長尺状のシートSは、このカッター26により、連続紙の状態から単票の状態に切断された後、切断される毎に一枚ずつ下流側に搬送される。なお、シートSの切断は、搬送装置14によりシートSの搬送を停止させ、その停止させたシートSの上流側部分を第1支持部材21の吸引機構22で保持する一方、下流側部分を第2搬送ローラー対17で挟持した状態で行われる。
【0024】
また、カッター26よりも下流側(左側)であって且つ第2搬送ローラー対17と第3搬送ローラー対18の間となる位置には、搬送されるシートSを表面(上面)側から支持する第2支持部材27が設けられている。第2支持部材27は、搬送経路の上側となる領域に配置されているとともに、この第2支持部材27の下面に対して搬送途中のシートSの表面が摺接するようになっている。
【0025】
この第2支持部材27と搬送経路を挟んで対向する位置(すなわち、搬送経路の下側となる領域)には、搬送されるシートSの裏面に対して記録を施す第2記録部28が設けられている。この第2記録部28は、インクを浸透させたインクリボン(図示略)と、第2記録ヘッド29とを備えている。そして、カッター26によって単票の状態に切断されたシートSの裏面に対して記録手段としての第2記録ヘッド29がインクリボンを押し当てることにより、シートSの裏面に例えば整理番号などの記録が施されるようになっている。
【0026】
また、第2記録部28よりも下流側(左側)の位置には、第2記録部28の下流側近傍から第4搬送ローラー対19までの間においてシートSを搬送経路に沿って案内するための搬送経路形成部材31が設けられている。搬送経路形成部材31は、搬送経路の下側となる領域に配置されている。そして、シートSは第2記録ヘッド29によって記録が施された裏面(下面)側が搬送経路形成部材31に摺接しながら、搬送経路を上流側(右側)から下流側(左側)に向かって搬送されるようになっている。
【0027】
この搬送経路形成部材31と搬送経路を挟んで対向する位置(すなわち、搬送経路の上側となる領域)には、搬送されるシートSを加熱する加熱手段としての乾燥装置32が設けられている。乾燥装置32は、ヒーター33と、送風ファン34とを備えている。そして、送風ファン34がヒーター33によって加熱された空気(温風)を、搬送経路形成部材31上を搬送されるシートSの表面側に向けて送風することによりシートSの表面に付着したインクの乾燥が促進される。
【0028】
また、第4搬送ローラー対19よりも下流側(左側)となる位置で本体ケース12の側壁には、本体ケース12内から本体ケース12外にシートSを排出するための排出口35が開口形成され、その排出口35よりも下方位置で本体ケース12の側壁外面には排出口35から排出されたシートSを支持可能な排紙部35aが設けられている。そして、記録及び加熱が施されたシートSは、排出口35からプリンター11の本体ケース12外に排出されるとともに、表面が上方を向いた状態で排紙部35aに載置される。
【0029】
次に、本実施形態の搬送経路形成部材31について詳述する。
図1に示すように、搬送経路形成部材31は、第2記録ヘッド29と第3搬送ローラー対18との間に配置された第1ガイド板36と、第3搬送ローラー対18と第4搬送ローラー対19との間に配置された第2ガイド板37とを備えている。すなわち、搬送経路形成部材31は、搬送方向Xにおいて、第3搬送ローラー対18を間に挟んで第2記録ヘッド29が配置された上流側(右側)に位置する第1ガイド板36と、乾燥装置32が配置された下流側(左側)に位置する第2ガイド板37とに分割されている。この点で、第1ガイド板36は搬送経路における第2記録ヘッド29(記録手段)が配置された側に位置する第1の搬送経路形成部材として、また、第2ガイド板37は乾燥装置(加熱手段)が配置された側に位置する第2の搬送経路形成部材として機能する。
【0030】
ここで、図2及び図3に示すように、第3搬送ローラー対18の従動ローラー18bは、前後方向に延びる回転軸としての従動ローラー軸41と、その従動ローラー軸41に支持された円筒状をなす少なくとも1つ(本実施形態では6つ)のローラー本体部としての従動ローラー本体部42を備えている。従動ローラー本体部42は、従動ローラー軸41に軸線方向に沿って所定の間隔をおいて回転可能に支持されている。
【0031】
また、図3に示すように、第3搬送ローラー対18の駆動ローラー18aは、前後方向に延びる回転軸としての駆動ローラー軸43と、その駆動ローラー軸43に支持された円筒状をなす少なくとも1つ(本実施形態では従動ローラー18bと同様に6つ)のローラー本体部としての駆動ローラー本体部44を備えている。駆動ローラー本体部44は、駆動ローラー軸43に軸線方向に沿って所定の間隔をおいて一体回転可能に支持されている。
【0032】
そして、第3搬送ローラー対18における従動ローラー本体部42と駆動ローラー本体部44とは、従動ローラー軸41及び駆動ローラー軸43の軸方向に沿って互いにシートSを挟んで対向するように配置されている。そして、図3(a)に示すように、従動ローラー本体部42と駆動ローラー本体部44とによりシートSを挟持した状態で、シートSを搬送方向下流側に向けて搬送するようになっている。これらの点で、従動ローラー18bはシートS(記録媒体)において記録が施された面に対して当接する第1ローラーとして機能するとともに、駆動ローラー18aは従動ローラー18b(第1ローラー)が当接した面と反対側の面に当接する第2ローラーとして機能する。また、第3搬送ローラー対18は、従動ローラー18b(第1ローラー)と駆動ローラー18a(第2ローラー)とによりシートS(記録媒体)を挟持して搬送する搬送手段として機能する。
【0033】
図2及び図3に示すように、第1ガイド板36は、熱伝導性を有するステンレス鋼によって略矩形板状に形成されている。ステンレス鋼は、他の金属(例えば鉄やアルミなど)と比較して摩擦係数が低く耐摩耗性に優れている。第1ガイド板36の搬送方向下流側の端部には、その端部が櫛歯状をなすように搬送方向X(左右方向)に沿った矩形状の凹部36aがシートSの幅方向に間隔をおいた複数位置に切欠き形成されている。すなわち、第1ガイド板36の搬送方向下流側の端部において、駆動ローラー本体部44及び従動ローラー本体部42とシートSの幅方向で対応する複数位置には、駆動ローラー本体部44及び従動ローラー本体部42と同数(本実施形態では6つ)の凹部36aが形成されている。換言すると、第1ガイド板36の搬送方向下流側の端部には、搬送方向X(搬送経路の下流側)に向かって複数の矩形状の凸部36bがシートSの幅方向で駆動ローラー本体部44及び従動ローラー本体部42が配置された領域を避けた複数位置(本実施形態では7箇所)に形成されている。そして、図3(b)に示すように、これらの凸部36bは、第3搬送ローラー対18の駆動ローラー軸43と従動ローラー軸41との間の空間を上下方向に区切るように第2ガイド板37に接近する位置まで延設している。
【0034】
また、図1〜図3に示すように、第2ガイド板37は、第1ガイド板36と同様にステンレス鋼によって略矩形板状に形成されている。第2ガイド板37における第3搬送ローラー対18側の端部(すなわち、搬送方向上流側の端部)には、搬送方向上流側(右側)に向かって鉛直方向下方に傾斜した傾斜部37aが設けられている。この傾斜部37aは、第1ガイド板36の凸部36bに対して、先端側ほど第1ガイド板36(すなわち、搬送経路)から離れるように鋭角状に傾斜している。そして、第1ガイド板36の凸部36bと第2ガイド板37の傾斜部37aとは、この傾斜部37aにおける搬送方向上流側の約半分の部分、すなわち傾斜部37aにおける延設方向の中途から先端側の部分と凸部36bの先端側部分とが上下方向で重なるように配置されている。
【0035】
次に、このように構成したプリンター11の作用について、特に搬送経路形成部材31の作用に着目して説明する。
さて、例えばプリンター11において記録処理が開始されると、長尺状のシートSがロール状に巻き重ねられた給紙部13から巻き解かれるとともに、搬送装置14によって搬送方向の上流側から下流側へと搬送される。また、乾燥装置32のヒーター33が発熱しつつ送風ファン34が駆動して温風が吹き出され始める。
【0036】
続いて、シートSが第1記録ヘッド25の下方を通過するときに、第1記録ヘッド25からシートSの表面に対してインクが噴射されることにより、シートSの表面に記録が施される。また、表面にインクが付着したシートSは、カッター26によって任意の大きさの単票に切断される。さらに、単票状に切断されたシートSが第2記録ヘッド29の上方を通過するときに、シートSの裏面に対して第2記録ヘッド29がインクリボンを押し当てることにより、シートSの裏面に対して記録が施される。第2記録ヘッド29により記録が施されたシートSは、搬送経路形成部材31に裏面(下面)側を摺接させつつ、さらに下流側へと搬送される。
【0037】
ここで、図2及び図3に示すように、搬送経路形成部材31は第1ガイド板36と第2ガイド板37とに分割されているため、搬送経路における第1ガイド板36と第2ガイド板37との間には、シートSの先端部を引っ掛ける虞のある隙間が形成されることになる。しかし、第2ガイド板37の搬送方向上流側の端部には、搬送方向Xに向かって上り勾配となる傾斜部37aが設けられている。そのため、搬送途中のシートSにおける搬送方向の先端部が鉛直方向下方を向いた曲がり形状をしている場合であっても、シートSの先端部は第2ガイド板37の傾斜部37aを摺動して第2ガイド板37上を搬送方向下流側に搬送される。
【0038】
また、第1ガイド板36及び第2ガイド板37は共にステンレス鋼によって形成されているため、シートSに対する摩擦が少なく且つシートSによる磨耗が少なくなっている。
そして、第2ガイド板37上を搬送方向下流側に向かって搬送されるシートSが乾燥装置32の下方を通過するときに、乾燥装置32からシートSの表面に対して温風が吹き付けられる。
【0039】
このとき、シートSに加え、乾燥装置32の鉛直方向下方に配置されている搬送経路形成部材31の第2ガイド板37も、乾燥装置32から吹き出された温風によって加熱される。そして、第2ガイド板37に付与された熱は、第2ガイド板37中を全方向に亘って伝達される。しかし、その熱が第2ガイド板37から第1ガイド板36にまで伝達されることはない。なぜなら、図3(a)及び(b)に示すように、第1ガイド板36と第2ガイド板37は分割されて且つ互いに接触していないため、第2ガイド板37における搬送方向上流側(右側)まで伝達された乾燥装置の熱が第1ガイド板36に伝達されることが抑制される。すなわち、搬送経路において第1記録ヘッド25及び第2記録ヘッド29が配置されている側に乾燥装置32からの熱が伝達されることが抑制される。
【0040】
また、図2及び図3に示すように、第1ガイド板36の凸部36bは、第3搬送ローラー対18の駆動ローラー軸43と従動ローラー軸41との間に形成された空間を上下方向に区切るように搬送方向下流側に向かって延設している。そして、第1ガイド板36における凸部36bの先端部分と第2ガイド板37の傾斜部37aとが上下方向に重なっている。すなわち、第1ガイド板36と第2ガイド板37によって、第3搬送ローラー対18付近における搬送経路における上側の領域と下側の領域とを連通する隙間空間の形成が抑制される。そのため、乾燥装置32の熱が第3搬送ローラー対18に形成された搬送経路の上側となる領域と下側となる領域とを連通する隙間空間を通過して第2記録部28が設けられた搬送経路の下側となる領域に流れ込むことが抑制される。
【0041】
そして、乾燥装置32によって表面のインクが乾燥したシートSは、さらに搬送されて排出口35から本体ケース12外に排出されるとともに排紙部35aに積層される。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0042】
(1)乾燥装置32によって加熱される第2ガイド板37から第1記録ヘッド25及び第2記録ヘッド29が配置された側に位置する第1ガイド板36に対して熱が直接的には伝達されないため、第1記録ヘッド25及び第2記録ヘッド29側に乾燥装置32からの熱が伝達されることを抑制することができる。したがって、第1記録ヘッド25及び第2記録ヘッド29に対する熱の影響を抑制することができる。
【0043】
(2)搬送経路の途中で分割された第1ガイド板36と第2ガイド板37との間には搬送経路に沿った隙間が形成されるものの、その隙間に臨む第2ガイド板37における搬送方向上流側の端部は先端側ほど搬送経路から離れるように鋭角状に傾斜している。そのため、例えば搬送経路が水平方向に沿う場合において、搬送途中のシートSにおける搬送方向の先端部が鉛直方向下方を向いた場合であっても、そのシートSの先端部は第2ガイド板37における搬送方向上流側の傾斜部37aにおける上り勾配の斜面を摺動して第2ガイド板37上を搬送方向下流側に搬送される。したがって、シートSの先端部を第1ガイド板36と第2ガイド板37との間の隙間に引っかけさせることなく、シートSを円滑に搬送することができる。
【0044】
(3)第1ガイド板36における搬送方向下流側の凸部36bが第2ガイド板37における搬送方向上流側の傾斜部37aと重なるように延設されている。そのため、乾燥装置32から吹き出された温風が、駆動ローラー18a及び従動ローラー18bにおける各ローラー本体部間の領域を通過して第2記録ヘッド29が配置された側の領域内に流入することを抑制することができる。したがって、乾燥装置32と第1ガイド板36及び第2ガイド板37を挟んで反対側の領域に配置された第2記録ヘッド29に対する乾燥装置32の熱の影響を抑制することができる。
【0045】
(4)ステンレス鋼は摩擦係数が低く且つ耐摩耗性が高いため、搬送経路形成部材31上に大量のシートSを搬送させる場合であっても、シートSを円滑に搬送することができる。
【0046】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・シートSは連続紙に限らず、例えば連続フィルムなどであってもよい。また、シートSは搬送途中で任意の長さに切断されなくてもよい。さらに、シートSは始めから単票状態に形成されたものであってもよい。
【0047】
・第3搬送ローラー対18の駆動ローラー18aと従動ローラー18bがシートSの幅方向全体に亘るローラー本体部42,44を有する構成の場合は、第1ガイド板36における搬送方向下流側の端部に凸部36bを設けなくてもよく、また、第2ガイド板37における搬送方向上流側の端部に傾斜部37aを設けなくてもよい。
【0048】
・第1ガイド板36における搬送方向下流側の端部と第2ガイド板37における搬送方向上流側の端部が鉛直方向(上下方向)において重なっていなくてもよい。但し、その場合は、第1ガイド板36における搬送方向下流側の端部と第2ガイド板37における搬送方向上流側の端部とが櫛歯状に噛み合うなど、平面視において両ガイド板36,37の間に広い隙間が形成されないようになっていることが望ましい。
【0049】
・第1ガイド板36と第2ガイド板37との間に第3搬送ローラー対18を設けなくてもよい。但し、その場合は、搬送方向Xにおいて第1ガイド板36と第2ガイド板37との間となる位置に乾燥装置32が設けられた側の空間領域と記録ヘッド25,29が設けられた側の空間領域とを仕切る仕切り部材を設けることが望ましい。
【0050】
・第3搬送ローラー対18における駆動ローラー18a及び従動ローラー18bにおける各ローラー本体部42,44は、各ローラー軸41,43の軸線方向に複数に分割されたものに限らず、例えば各ローラー軸に沿って延びる長尺状の円筒をなすものなどであってもよい。また、駆動ローラー18aをシートSの表面(上面)に当接させてもよい。さらに、駆動ローラー18aのみでシートSを搬送してもよい。
【0051】
・乾燥装置32は温風を吹き付けるものに限らず、例えば赤外線やハロゲンランプ、シーズヒーターなど温風を吹き付けないものなどであってもよい。また、シートSに当接することによってシートSを加熱するものなどであってもよい。
【0052】
・搬送経路における乾燥装置32と第1ガイド板36及び第2ガイド板37を間に挟んで反対側となる領域に第2記録ヘッド29を設けなくてもよい。
・搬送経路形成部材31(第1ガイド板36及び第2ガイド板37)は、ステンレス鋼によって形成されているものに限らず、例えばニッケルクロム合金などの耐摩耗性を有する異なる金属で形成されていてもよい。また、表面を例えばクロムめっきやアルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜などによりコーティングされていてもよい。また、金属製でなく、例えばガラスなどの耐磨耗性を有する異なる素材で形成されていてもよい。
【0053】
・上記実施形態では、記録装置におけるシートSの表面を記録する方式としてシートS(記録媒体)に対してインクを噴射するインクジェット方式を採用するとともに裏面を記録する方式としてインクリボンをシートS(記録媒体)に対して押し付けるドットインパクト方式を採用したが、この限りではなく、表面又は裏面を記録する方式として、電子写真方式や熱転写方式など、任意の方式を採用することができる。また、記録装置はプリンターに限らず、FAX装置、コピー装置、あるいはこれら複数の機能を備えた複合機などに具体化してもよい。さらに、インクジェット方式においても、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする記録装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記記録装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、記録装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。記録装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する記録装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する記録装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する記録装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する記録装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する記録装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する記録装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の記録装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
S…記録媒体としてのシート、11…記録装置としてのプリンター、14…搬送装置、18…搬送手段としての第3搬送ローラー対、18a…第2ローラーとしての駆動ローラー、18b…第1ローラーとしての従動ローラー、25…記録手段としての第1記録ヘッド、29…記録手段としての第2記録ヘッド、31…搬送経路形成部材、32…加熱手段としての乾燥装置、36…第1の搬送経路形成部材としての第1ガイド板、36b…凸部、37…第2の搬送経路形成部材としての第2ガイド板、37a…傾斜部、41…回転軸としての従動ローラー軸、42…従動ローラー本体部、43…回転軸としての駆動ローラー軸、44…駆動ローラー本体部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路に沿って搬送される記録媒体を支持する熱伝導性を有した板状の搬送経路形成部材と、
前記搬送経路の途中において前記記録媒体に対して記録を施す記録手段と、
前記搬送経路の途中における前記記録手段が配置された位置よりも上流側及び下流側の少なくとも一方において前記記録媒体を加熱する加熱手段と、を備え、
前記搬送経路形成部材は、前記搬送経路における前記記録手段が配置された側に位置する第1の搬送経路形成部材と前記加熱手段が配置された側に位置する第2の搬送経路形成部材とに分割されている
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第2の搬送経路形成部材は、前記第1の搬送経路形成部材よりも前記搬送経路の下流側に設けられると共に、該第2の搬送経路形成部材における搬送方向上流側の端部が、前記搬送方向に沿って延びる前記第1の搬送経路形成部材における搬送方向下流側の端部に対して、先端側ほど前記搬送経路から離れるように鋭角状に傾斜している
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記搬送経路における前記第1の搬送経路形成部材の搬送方向下流側の端部と対応する位置において前記記録媒体の記録が施された面に当接する第1ローラーと該第1ローラーが当接した面と反対側の面に当接する第2ローラーとにより前記記録媒体を挟持して搬送する搬送手段を更に備え、
該搬送手段の前記各ローラーは、前記記録媒体の搬送方向と交差する幅方向に沿うように配置される回転軸と、該回転軸に軸方向へ間隔をおいて支持されるとともに前記記録媒体に当接する複数のローラー本体部とを有し、
前記加熱手段は、前記第2の搬送経路形成部材における前記記録媒体を支持する側の面に向かって温風を吹き付けるとともに、
前記第1の搬送経路形成部材は、その搬送方向下流側の端部において前記搬送手段における前記ローラー本体部間の領域に前記記録媒体の幅方向で対応する部位が、前記第2の搬送経路形成部材における搬送方向上流側の傾斜した端部と重なるように、前記搬送経路の下流側に向かって延設されている
ことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録手段は、前記搬送経路形成部材における前記加熱手段が配置された面側の領域とは反対側の領域に配置されるとともに、前記記録媒体における前記加熱手段が温風を吹き付ける面とは反対側の面に対して記録を施す
ことを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記第1の搬送経路形成部材及び前記第2の搬送経路形成部材は、それぞれステンレス鋼によって形成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−24942(P2012−24942A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162918(P2010−162918)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】